説明

分散補償を備えるパルススプリッタ

本発明は、パルス照射源2から中心波長1を持つ照射パルス10を入力し、各々の入力する照射パルスに対し複数のサブパルス11、12、15、17を出力するのに適したパルススプリット装置5に関する。前記入力した照射パルス及び前記パルススプリッタ5は、第1及び第2のサブパルス11、12が第1の領域における第1の光路長OP1及び第2の領域における第2の光路長OP2により夫々、時間的に分離されるように相互作用する。前記第1の材料における波長に対して第1の光路長OP1かける群速度分散GVD1は、第2の材料における波長に対して第2の光路長OP2かける群速度分散GVD2に均衡しているので、前記第1及び第2のサブパルス11、12の分散の広がりは略等しい。これは、両方のサブパルスにより改善される後続する分散補償を容易にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分散補償を備えるパルススプリッタに関し、このパルススプリッタは特に、非線形の光学撮像、特に多光子顕微鏡法に適している。本発明は、対応する光学撮像システム及び対応する撮像方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
生物組織を調査するために、多光子顕微鏡検査は定評のある技術である。例えば組織のような混濁媒体における大きな侵入深さ、小さな励起負荷及び自然深さ切片効果を持つ共焦点蛍光顕微鏡法より勝る利点を持っている。
【0003】
非線形撮像の欠点は、2つの光子の励起に対する蛍光体(fluorophore)の小さな吸収断面積である。これは、励起電力を増大させることにより補償されるが、この電力の増大は実際には、80MHzの繰り返し率を持つ従来のレーザシステムを用いたサブミクロン焦点において約10mWの平均電力でいわゆるブリーチング(bleaching)する損傷しきい値に制限される。それ故にパルスエネルギーは1nJより下に制限されるべきである。しかしながら、利用可能なレーザシステムは、もっと大きな平均電力、及び結果としてもっと大きなパルスエネルギーを示す。余剰エネルギーは、各々のパルスを同じエネルギーを持つ等間隔パルスの組に、好ましくはエネルギーを損失することなく分割することにより用いられることができる。繰り返し率N−foldを加速させることにより、
−信号強度N−foldを増大させる、
−データ取得速度N−foldを増大させる、若しくは
−光障害確率を減少させる、又は
−これら何れかの組み合わせ
をすることができる。
【0004】
2つの平行な部分反射ミラーを備えるファブリ・ペロー・エタロン(Fabry-Perot etalons)、又は平行なエタロンの積層が利用されるいわゆる光ラトラ(optical rattler)の使用のようなパルススプリッタに対し様々な解決法が存在する。
【0005】
最新のモノリシックパルススプリッタは、Na Ji, Jeffrey C. Magee & Eric Betzing著、Nature Methods 5(2) 2008, pp197-202 タイトル"High-speed, low-photodamage nonlinear imaging using passive pulse splitters"により開示されている。さらに、対応する米国特許出願US 2009/0067458号も見ると、装置は、入力繰り返し率及び入力パルス電力でパルスレーザを生成するパルスレーザ源、前記パルスレーザビームを入力し、このパルスレーザビームの各々の入力パルスに対し複数のサブパルスを含む信号を出力する(50%のビームスプリッタを持つ境界面の2つの異なる材料を備える)パッシブ型のビームスプリッタ、試料(sample)並びに検出器を含んでいる。前記出力信号は、入力繰り返し率より高い繰り返し率を持ち、前記サブパルスの各々の電力は入力パルス電力よりも小さい。
【0006】
Na他著によるパルススプリッタの本質は、2つの材料層は、50%のビームスプリッタの境界面に屈折が存在するように、異なる屈折率を持つという事実である。異なる屈折率の材料は、異なる群速度分散を持つ傾向がある。これは、超短パルスは媒体内を進むとき、このパルスを構成する全ての光周波数は、同じ速度ではないことを意味している。その結果、パルスは広くなる。この広がり効果は、2つの媒体、すなわち媒体1及び媒体0内を進むビームに対し異なっている。パルススプリッタの出力ポートにおいて前記パルスは混合され、代わりにその分広げられたパルスを生じる。Na Ji他著は、低分散材料、例えば空気又はシリカを使用して、群速度分散を減少させることを提案しているが、これは単に分散を減少させるだけであり、それを除去しない、並びにこの分散はさらにサブパルスの数N、及び利用可能な対のパルス内(intra-pair pulse)の間隔時間Δtに制限も設ける。
【0007】
故に、改善されたパルススプリッタ装置が有利であり、特により効果的な及び/又は信頼できる装置が有利である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
改善されたパルススプリッタを達成することが有利である。一般に、本発明は好ましくは、上述した欠点の1つ以上を個々に又は何れか組み合わせて軽減、改善又は削除しようと努める。特に、従来技術の上述した問題又は他の問題を解決するパルススプリッタ装置を供給することが本発明の目的と見なされる。特にこれら問題は分散に関する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本目的及び幾つかの他の目的は、関連するパルス照射源から中心波長(λ)を持つ照射パルスを入力し、各々の入射する照射パルスに対し複数のサブパルスを出力するのに適したパルススプリット装置を供給することにより、本発明の第1の態様において得られ、前記パルススプリッタは、
第1の屈折率(n)を持つ第1の材料(m)の第1の領域、及び
第2の屈折率(n)を持つ第2の材料(m)の第2の領域、
を有し、前記入力した照射パルス及びパルススプリッタは、
少なくとも第1及び第2のサブパルスが前記第1の領域における第1の光路長(OP1)及び前記第2の領域における第2の光路長(OP2)により夫々、時間的に分割されるように相互作用するように構成され、並びに
前記第1の材料における波長に対して前記第1の光路長(OP1)かける群速度分散(GVD1)は、前記第2の材料における波長に対して前記第2の光路長(OP2)かける群速度分散(GVD2)と均衡しているので、前記第1及び第2のサブパルスの分散の広がりは略等しい。
【0010】
本発明は、前記第1及び第2のサブパルスの分散の広がりが略同じであるパルススプリッタを得るのに特に有利であるが、それに限らない。いわゆるチャープ(chirp)の後続の分散補償に対し、例えば一対の回折格子(grating)若しくは一組のチャープミラー又は超高速光学の分野において良く知られる他の技術のような様々な標準的な技術がこの分散の補償に利用されるため、サブパルスの実質的に同じ分散の広がりが本発明により得られるという事実を述べている。
【0011】
前記第1の材料における波長に対して第1の光学路(OP1)かける群速度分散と、第2の材料における波長に対して第2の光学路(OP2)かける群速度分散との均衡は、十分にコンパクトなスプリッタを持つために通常は第1の材料と第2の材料との間の屈折率が大きく異なることが望ましい一方、高い屈折率は通常高い群速度分散を暗に意味しているので、パルススプリッタを設計する当業者にとって直接的な選択ではない、しかしながら、これは本発明の教示及び原理に従って適切な設計検討の単なる一部である。
【0012】
本発明の文脈において、"パスル照射源"という言葉は、例えば80MHz若しくはそれ以上の繰り返し率を持つチタン・サファイア(Ti-sapphire)レーザ、又は20MHz若しくはそれ以上の繰り返し率を持つファイバーレーザのような、非線形の光学撮像の技術範囲における多光子顕微鏡法に適したパルスレーザを含むと考えられるが、それに限定されない。
【0013】
本発明の文脈において、第1及び/又は第2の材料は、前記照射源の中心波長前後で透明である何れかの種類の材料でよい。それ故に、これら材料は、例えばガラスのような固体とすることができるが、流体、すなわち液体及び気体とすることもできる。
【0014】
本発明のパルススプリット装置は、前記第1及び第2のサブパルスは、このパルススプリット装置により時間的に分離される、すなわちこれらサブパルスは時間領域で分離されるが、これらサブパルスはパルススプリット装置を離れた後、実質的に同じ空間的方向に伝播している点で特有である。しかしながら、前記第1及び第2のサブパルスは、前記パルススプリット装置内において、前記第1及び第2の光路に沿って夫々伝播しているとき、これらサブパルスは空間的に分離される。
【0015】
ある実施例において、前記第1及び第2の領域は、前記第1及び第2の材料により形成される共通の境界面を有し、好ましくは第1の光路長(OP1)及び第2の光路長(OP2)は、この共通の境界面により互いに分離されている。これは例えば共通の境界面における例えば50%のような半反射又は半透明ミラーでもよい。
【0016】
好ましくは、この共通の境界面は、略平坦な境界面であり、この共通の境界面はさらに、前記第1及び第2のサブパルスをこの共通の境界面に向けて反射するために配される一対の略平行な反射面の間に位置決められる。これは専用のミラーとすることもできるが、代わりに、屈折率の差が、完全な内部反射が前記反射を行うように大きくてもよい。この共通の境界面は好ましくは反射面に平行でもよい。
【0017】
特定の実施例において、前記第1及び/又は第2の材料における波長に対して群速度分散(GVD1/GVD2)は、中心波長において、前記第1及び/又は第2の屈折率の二次導関数により夫々近似される。それ故に、1つの群速度分散が近似されるが、必ずしも両方である必要はない。高次分散効果がますます重要になり、本来のパルス幅は小さくなる、すなわちスペクトル成分が広がる。前記二次導関数は、材料に対する標準的なテーブル、いわゆる"M定数(M-constant)"から取り出すことができる。
【0018】
特に、前記第1及び第2のサブパルスの分散の広がりは、以下の数式
【数1】

が中心波長又はその周辺で満たされることを要求することにより略等しくなり、ここで第1の屈折率はnであり、第2の屈折率はnである。
【0019】
好ましくは、前記分散の広がりは、関連する照射源の調整可能な中心波長の範囲により規定される波長間隔に実質的に等しい。従って、例えば前記範囲は、チタン・サファイアレーザの700−950nmでもよく、しかし他の間隔、例えば中心波長(λ)周辺の50、100又は150nmも考えられる。代わりに、中心波長(λ)の10、20又は30nmのスペクトル幅が考えられる。
【0020】
有利なことに、第1の材料における波長に対して第1の光路長(OP1)かける群速度分散は、第2の材料における波長に対して第2の光路長(OP2)かける群速度分散は均衡しているので、前記第1及び第2のサブパルスの最も狭いパルス幅に対して前記第1及び第2のサブパルスの最も広いパルス幅の比は、2、1.6、1.3又は1.1倍内にある。この幅は、例えばガウス形式のビームの半値全幅(FWHM)として測定される。パルス幅の定義が何であろうとも、その幅は、前記第1及び第2のサブパルスに対し同じにすべきであり、本発明の結果は、パルススプリット装置により誘発される前記広がりは、実質的に同じだということである。
【0021】
第2の態様において、本発明は物体を撮像するための光学系に関し、この光学系は、
−中心波長(λ)持つ照射パルスを放射するのに適したパルス照射源、
−前記第1の態様に従うパルススプリット装置、及び
−前記物体からの反射放射線を検出することが可能である光検出器
を有する。
【0022】
それ故に、本発明は、例えばフェムト秒(10−15秒)のレーザ、多光子顕微鏡法、共焦点顕微鏡法等のような様々な光学撮像技術と組み合わせて実施されてもよい。
【0023】
好ましくは、前記光学系はさらに、一対の光学部品(P1、P2)を備える第1の分散補償ユニット及び高次分散補償装置を有し、前記装置は、異なる波長を空間的に分離することにより一次分散を補償するために配される前記対の光学部品(P1、P2)と協働するのに適し、前記補償装置は、位相板の形式を持ち、ここで各波長に対する位相の変化は、高次分散を実質的に補償するように、前記位相板の対応する位置の高さを設計することにより調節される。
【0024】
第3の態様において、本発明は物体の光学撮像を行うための方法に関し、この方法は、
−パルス照射源から中心波長(λ)を持つ照射パルスを入力し、各々の入射する照射パルスに対し複数のサブパルスを出力するのに適したパルススプリット装置を供給するステップ、並びに
−少なくとも、第1及び第2のサブパルスは、前記第1の領域における第1の光路長(OP1)及び前記第2の領域における第2の光路長(OP2)により夫々、時間的に分離されるように相互作用するために、前記入力した照射パルス及びパルススプリット装置を構成するステップ
を有し、前記パルススプリット装置は、第1の屈折率(n)を持つ第1の材料(m0)の第1の領域、及び第2の屈折率(n)を持つ第2の材料の第2の領域を有し、ここで、第1の材料における波長に対して第1の光路長(OP1)かける群速度分散(GVD1)は、第2の材料における波長に対して第2の光路長(OP2)かける群速度分散(GVD2)と均衡しているので、前記第1及び第2のサブパルスの分散の広がりは略等しい。
【0025】
一般に、本発明の様々な態様は、本発明の範囲内において可能な如何なる方法で組み合わされ、結合されてもよい。本発明のこれら及び他の態様、特徴及び/又は利点は、以下に説明される実施例から明らかであり、これを用いて説明される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明による物体の光学撮像のためのシステムの概略図。
【図2】本発明によるパルススプリット装置の概略図。
【図3】本発明によるパルススプリット装置の別の概略図。
【図4】多数の材料を積層構造で示す、本発明によるパルススプリット装置のさらに別の概略図。
【図5】本発明に利用される材料の対を見つけるのに適したグラフ。
【図6】本発明を用いて実施するのに有用な分散補償装置の概略図。
【図7】本発明による方法のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の実施例は、単なる例として、図面を参照して説明される。
【0028】
図1は、本発明に従って物体8、例えば組織を光学撮像するためのシステム1の概略図である。このシステム1は、中心波長λを持つ照射パルスを放射するのに適したパルス照射源2を有する。この照射源2は、本発明によるパルススプリッタ5とミラー3又は同様の装置を介して光学的に接続される。パルススプリット装置5の後、サブパルス(この図には示されない)は、分散補償装置6(例えば図6)を通り、例えば集束レンズ及び/又はカテーテルアームのような光学製品(optics)7を操作することによって物体8に照射される。(2つの矢印を用いて概略的に示される)物体8から反射した放射は次いで、前記物体8から反射した放射を検出することが可能である適切な光検出器4において検出される。特に、本発明は、様々な種類の生物学的組織の多光子顕微鏡法におけるフェムト秒のレーザを用いた応用に有利であるが、例えば(生物)医学撮像用のコンパクトなファイバスキャナのような、他の応用もまた当業者が容易に理解できる。
【0029】
図2は、本発明によるパルススプリット装置5の概略図であり、このパルススプリット装置5は、関連するパルス照射源2から中心波長(λ)を持つ照射パルスを入力し、各々の入射する照射パルスに対し、複数のサブパルス11及び12を出力するのに適している。
【0030】
前記パルススプリッタは、第1の屈折率nを持つ第1の材料mの第1の領域、及び第2の屈折率nを持つ第2の材料mの第2の領域を有する。これら第1及び第2の屈折率は、境界面9において光の屈折を提供するために異なっている。特に、第1及び第2の領域は、第1及び第2の材料により形成される共通の境界面9を有し、ここで、第1の光路長OP1及び第2の光路長OP2は、前記共通の境界面により互いに分離されている。境界面9は好ましくは、パルス10を2つのサブパルスに分割するために、50%の半透明ミラー又はそれに同等なものである。
【0031】
入力した照射パルス及びパルススプリッタ5は、少なくとも第1のサブパルス11及び第2のサブパルス12が、対のパルス内の間隔時間Δtで図2に概略的に示されるように、前記第1の領域において第1の光路長OP1により、及び前記第2の領域において第2の光路長OP2により夫々、時間的に分離されるよう相互作用するために構成される。この時間的な分離に関するさらなる詳細のために、当業者は、米国特許出願番号US 2009/0067458を参照し、これは参照することにより、そのまま含まれるものとする。
【0032】
本発明は特に、第1の材料における波長に対して第1の光路長OP1かける群速度分散(GVD1)は、第2の材料における波長に対して第2の光路長OP2かける群速度分散(GVD2)と均衡しているので、第1のサブパルス11及び第2のサブパルス12の分散の広がりは略等しい、従って
【数2】

は中心波長(λ)の周りで満たされるべき制約である。
【0033】
図3は、本発明によるパルススプリット装置5の別の概略的な図面である。この図の装置は、図2の装置と似ているが、ここでは光路OP1及びOP2は、境界面9により分離される第1の領域13及び第2の領域23により明確に実施及び示され、共通の境界面9は、略平坦な境界面であり、この共通の境界面はさらに、図3に概略的に示されるように、サブパルス14及び15をこの共通の境界面に向けて反射するために配される、一対の略平行な反射面25及び35(例えばミラー)の間に位置決められている。この境界面9に衝突すると、前記サブパルス14及び15は共に、2つの別のサブパルスに分割され、図3に示されるように、時間的に分離したサブパルス11及び12のある上部分岐、並びに時間的に分離したサブパルス15及び17の下部分岐となる。各分岐において、前記サブパルスは、図1に示されるように、サブパルスのさらなる光学処理を容易にするために、空間的に重畳している。
【0034】
同じ方向に生じるサブパルス11及び12は、パルス10の入射角Θが以下の条件
【数3】

を満たす場合、空間的に重畳していることが示される。
【0035】
ここで、右側に双頭の矢印により示されるように、dは第1の材料の厚さであり、dは第2の材料の厚さである。この条件は、前記スプリッタが例えば回転台の上に取り付けられる場合、d、dのいい加減な公差でさえも満たされる。
【0036】
群速度分散GVD1又はGVD2が対応する二次導関数により近似され得ると仮定される場合、パルスの広がり又はチャープは、光路長OP1又はOP2、及び波長に対する屈折率の二次導関数に比例する。パルススプリッタ5がこの装置のポート全てにおいて同じ広がり効果で出力するために、以下の条件が満たされなければならない。
【数4】

ΘとΘとの間における既知の関係、すなわちスネルの法則:nsin(Θ)=nsin(Θ)、並びに上記数式(2)に与えられるcos(Θ)の値を考慮すると、前記屈折率の条件
【数5】

を得ることができる。
【0037】
本実施例の本質は、図3に示されるような4倍のパルススプリッタであり、ここで2つの層の屈折率はかなり異なっているが、屈折率と二次導関数との積は略同じである。実用的な実施のために、品質は正確に満たされる必要はないが、それにもかかわらず、本発明を実現するのに有用である範囲の材料が見つけられる。
【0038】
図4は、図3の実施例に類似する多数の材料を積層構造で示している、本発明によるパルススプリット装置のさらに別の概略図であり、ここで第2の領域23は、その上に層状に積み重ねられる第3の領域33及び第3の領域43を持つ。材料の組18は、さらに別のパルススプリットサブ装置を実施するように屈折率n及びnを選択する。材料の組i−1及びiは、サブパルス11、12及び19により概略的に示される、全ての入射パルス10に対しN個のサブパルスを生じさせるような一般的な構造で積層化されることができる。入射パルスからかなり多くのサブパルスNを得るための他の光学的構造は、米国特許出願番号第US 2009/0067458、例えば図6及び7並びに対応する記述に見られ、これは参照することにより、そのまま含まれるものとする。
【0039】
図5は、本発明に利用される材料の対を見つけるのに適したグラフである。
【0040】
媒体1及び0に対し2つの異なるガラス形式を使用することが有利である。一般に、異なるガラスは、いわゆるアッベダイヤグラム(Abbe diagram)又が材料の組を見つけるのに適した他の表現で表されてよい。
【0041】
アッベ数は、フラウンホーファー(Fraunfofer)線の3波長における屈折率の相対差である。高分散ガラスは低いアッベ数を意味し、低分散ガラスは高いアッベ数を意味している。図4の実施例のような4倍のパルススプリッタの条件は、アッベダイヤグラムの右下隅(低屈折率及び高分散)からのガラス形式をアッベダイヤグラムの左上隅(高屈折率及び低分散)の1つのガラス形式と組み合わせようとすることを意味している。前記分散の条件をより定量的にさせるために、屈折率とその屈折率に対する二次導関数との積がプロットされてよい。Ohara社製の様々なガラス形式に対する結果が図5に示されている。
【0042】
パルススプリッタ5のために図5のガラス形式から選択したとき、このスプリッタは屈折率が最も異なる2つのガラスを選択することにより最適化し、これら表示地点はグラフにおいて同一水平線上にある。このようなガラスの組の一例は、
S-LAH66 n=1.761及びnd2n/dλ2=0.1796@800nm
S-FTM16 n=1.581及びnd2n/dλ2=0.1762@800nm
の組である。
【0043】
明らかに、これら材料の選択がこの組み合わせに制限されることも、同じ製造業者からガラスを得る必要も、2つのガラスを得ることが義務でもなく、その材料は、含まれる中心波長に対し透明である何れかの材料である。
【0044】
図6は、例えば図1のような本発明を用いて実施するのに有用な分散補償装置の概略図であり、図1において補償装置は、6が付けられるエンティティとして実施されている。図6は、本発明による位相板を備える分散補償システム200の概略図である。分散を補償するための光学系200は、異なる波長を空間的に分離することにより、一次導関数を補償するように構成される一対の光学部品P1及びP2を有する。しかしながら、この一次補償は代わりに、他の光学的に等価な要素、すなわち一対の回折格子により達成されることができ、各々の回折格子は、それ自体は例えば、R.L. Fork, C.H. Brito Cruz, P.C. Becker and C.V. Shank著、"Compression of optical pulses to six femtoseconds using cubic phase compensation", Optics Letters 12(7) (1987)pp 483-485のような光学における当業者には良く知られるような、レンズ又は湾曲ミラーを持ち、これは参照することにより、そのまま含まれるものとする。
【0045】
高次分散補償装置210は光路内に取り入れられ、この補償装置は、位相板の形状を有する。ここで、各々の波長λに対する位相の変化Δφは、高次分散、すなわち位相φのテイラー展開における項、
【数6】

及びさらに高次の項を実質的に補償するように、前記位相板210の対応する位置の高さを設計することにより調節される。
【0046】
高次分散補償装置210は、前記対の光学部品、すなわちプリズムP1及びP2の光学的特徴O_Prop、すなわちプリズムの屈折率nを考慮することにより、前記対の光学部品と協働するのに適する。通例、これら2つの光学部品は同一又は略同一であるけれど、これが常にそうである必要はない。前記光路に沿った前記高次分散補償装置210の線形変位は通常、前記装置210とプリズムとの間における前記協働を変更しないが、前記装置210と、対の光学部品P1及びP2との間の相対位置RPも考慮される。もちろん、入射する放射線の実際の波長も考慮されるべきである。この装置は、この断面図において、略平坦な背面211及び階段状の高さを持つ前面212を持つ。
【0047】
図7は、物体の光学撮像を行うための本発明による方法のフローチャートであり、この方法は、
パルス照射源2から中心波長λを持つ照射パルス10を入力し、各々の入射する照射パルスに対し複数のサブパルス11、12、15又は17を出力するのに適したパルススプリット装置5を供給するステップS1であり、前記パルススプリッタは、第1の屈折率nを持つ第1の材料mの第1の領域13及び第2の屈折率nを持つ第2の材料mの第2の領域23を有する、ステップS1、並びに
少なくとも、第1及び第2のサブパルス11及び12は、前記第1の領域における第1の光路長OP1及び前記第2の領域における第2の光路長OP2により夫々、時間的に分離されるように相互作用するために、前記入力した照射パルス及びパルススプリッタ5を構成するステップS2、
を有し、ここで第1の材料における波長に対して第1の光路長OP1かける群速度分散GVDは、第2の材料における波長に対して第2の光路長OP2かける群速度分離GVDと均衡しているので、第1及び第2のサブパルス11及び12の分散の広がりは略等しい。
【0048】
本発明が図面及び上記記載において詳細に説明及び開示されていたとしても、このような説明及び開示は、説明的又は例示的であり、限定的ではないと考えるべきであり、本発明が開示した実施例に限定されない。開示される実施例以外の変更は、図面、本開示及び添付の特許請求の範囲の研究から当業者により理解及びもたらされ得る。請求項において、"有する"という言葉は、それ以外の要素又はステップを排除するものではなく、複数あることを言わないことはそれらが複数あることを排除するものではない。単一の処理器又は他のユニットが請求項に列挙される幾つかのアイテムの機能を果たしてもよい。ある方法が互いに異なる従属請求項に列挙されるという単なる事実は、これらの方法の組み合わせが有利に使用されないことを示しているのではない。請求項における如何なる符号もその範囲を制限すると考えるべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
関連するパルス照射源から中心波長を持つ照射パルスを入力し、各々の入射する照射パルスに対し複数のサブパルスを出力するのに適したパルススプリット装置において、前記パルススプリッタは、
第1の屈折率を持つ第1の材料の第1の領域、及び
第2の屈折率を持つ第2の材料の第2の領域
を有し、前記入力した照射パルス及び前記パルススプリッタは、少なくとも第1及び第2のサブパルスが前記第1の領域における第1の光路長及び前記第2の領域における第2の光路長により夫々、時間的に分離されるように相互作用するように構成され、並びに
前記第1の材料における波長に対して前記第1の光路長かける群速度分散は、前記第2の材料における波長に対して前記第2の光路長かける群速度分散と均衡しているので、前記第1及び第2のサブパルスの分散の広がりは略等しい、
パルススプリット装置。
【請求項2】
前記第1及び第2の領域は、前記第1及び第2の材料により形成される共通の境界面を有し、前記第1及び第2の光路長は前記共通の境界面により互いに分離されている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記共通の境界面は、略平坦な境界面であり、前記共通の境界面は、前記第1及び第2のサブパルスを前記共通の境界面に向けて反射するために配される一対の略平行な反射面の間に位置決められる、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記第1及び/又は第2の材料における波長に対して前記群速度分散は、中心波長において、前記第1及び/又は第2の屈折率の二次導関数により夫々近似される、請求項1又は3に記載の装置。
【請求項5】
前記第1及び第2のサブパルスの分散の広がりは、数式
【数1】

が中心波長で満たされることを要求することにより略等しくなり、ここで第1の屈折率はnであり、第2の屈折率はnである、請求項3及び4に記載の装置。
【請求項6】
前記分散の広がりは、前記関連する照射源の調整可能な中心波長の範囲により規定される波長間隔において略等しい、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記第1の材料における波長に対して前記第1の光路長かける群速度分散は、前記第2の材料における波長に対して前記第2の光路長かける群速度分散と均衡しているので、前記第1及び第2のサブパルスの最も狭い幅に対して前記第1及び第2のサブパルスの最も広いパルス幅の比は、2、1.6、1.3又は1.1倍内にある、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
物体を撮像するための光学系において、
中心波長を持つ照射パルスを放射するのに適したパルス照射源、
請求項1に記載のパルススプリッタ、及び
前記物体からの反射放射線を検出することが可能である光検出器
を有する光学系。
【請求項9】
一対の光学部品を備える第1の分散補償ユニット、及び
高次分散補償装置
をさらに有し、
前記装置は、異なる波長を空間的に分離することにより一次分散を補償するために配される前記対の光学部品と協働するのに適し、前記補償装置は、位相板の形式を持ち、各々の波長に対する位相の変化は、高次分散を実質的に補償するように、前記位相板の対応する位置の高さを設計することにより調節される、請求項8に記載の光学系。
【請求項10】
物体の光学撮像を行うための方法において、
−パルス照射源から中心波長を持つ照射パルスを入力し、各々の入射する照射パルスに対し複数のサブパルスを出力するのに適したパルススプリット装置を供給するステップであり、前記パルススプリッタは、第1の屈折率を持つ第1の材料の第1の領域及び第2の屈折率を持つ第2の材料の第2の領域を有するステップ、並びに
−少なくとも、第1及び第2のサブパルスは、前記第1の領域における第1の光路長及び前記第2の領域における第2の光路長により夫々、時間的に分離されるように相互作用するために、前記入力した照射パルス及びパルススプリッタを構成するステップ、
を有し、前記第1の材料における波長に対して前記第1の光路長かける前記群速度分散は、前記第2の材料における波長に対して全k第2の光路長かける前記群速度分散と均衡しているので、前記第1及び第2のサブパルスの分散の広がりは略等しい、
方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2013−506157(P2013−506157A)
【公表日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−530387(P2012−530387)
【出願日】平成22年9月15日(2010.9.15)
【国際出願番号】PCT/IB2010/054162
【国際公開番号】WO2011/036608
【国際公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】