説明

分析システム

【課題】分析依頼時に容易に分析可能なテスト数を判断できる分析システムを実現する。
【解決手段】項目選択画面9−6は分析項目依頼手段として分析項目を割り当てた分析項目ボタン9−9を備え、オペレータが分析項目ボタン9−9を選択的に押下することによって、分析システムの処理部は依頼を受け付け、分析依頼の記憶手段に登録する。分析項目依頼手段(分析項目ボタン9−9)の近傍の一つの例として、分析項目ボタン9−9の右上に分析可能テスト数9−10を表示する。例えば、分析項目ボタン9−9のうちの項目TCHの右上に分析可能テスト数として10、項目LAPの右上にテスト数として230が表示される。これにより、オペレータが分析依頼時に容易に同一画面にて依頼が可能なテスト数を判断することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試薬等を使用して分析対象を分析する分析システムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動分析装置を有する分析システムは、分析すべき特定成分に応じた試薬と、血清、尿などの生体試料を反応させることによって定量・定性分析を行う。
【0003】
分析装置に搭載された試薬の残量よりも分析依頼が多くなった場合、分析装置を停止させる等によって、試薬を登録する必要があるが、分析装置の動作停止は、ルーチン業務の妨げる要因となっていた。このため、分析途中に試薬量が不足しないように、予め試薬の過不足判定を行う分析装置が、例えば特許文献1に開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2003−315344号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1には、過去の試薬情報を使用して、試薬量の不足を算出し、表示する技術について記載されている。
【0006】
この場合、オペレータは、試薬の過不足を判断するために、一日の各項目の使用予定量を予測して予め分析システムに入力することが必要である。
【0007】
そこで、最近では、試料の分析中であっても、分析動作を停止することなく、試薬の追加、交換可能な自動分析システムが開発されている。
【0008】
この自動分析システムにおいては、各試薬容器の残量情報を記憶し、表示装置に残量を表示し、試薬を使用した結果、試薬が一定量以下になるか、無くなった場合には、ユーザに試薬の不足を通知する。
【0009】
しかし、実試薬残量は、試薬画面などで確認可能であるが、依頼数とテスト数との関連から試薬を登録すべきかどうかを判断することはできなかった。
【0010】
つまり、実際に試薬を使用した結果についての試薬不足通知であるため、その試薬を使用する分析が、それ以降予定されているか否かをユーザが認識することができない。このため、適切な量の試薬の追加、交換が困難であり、試薬不足によって分析できない依頼が発生する可能性があった。
【0011】
本発明の目的は、分析依頼時に容易に分析可能なテスト数を判断できる分析システムを実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の分析システムは、分析装置を少なくとも1つ備え、この分析装置の処理手段は、分析する項目を表示手段に表示させると共に、記憶手段に記憶された試薬情報に基づいて、分析可能なテスト数を算出し、算出した分析可能テスト数を、表示手段に表示された分析項目の近辺に表示させる。
【0013】
好ましくは、表示手段に表示される分析項目は複数であり、算出した分析可能テスト数のそれぞれを対応する分析項目の近辺に表示させる。
【0014】
また、好ましくは、処理手段は、算出した実行可能なテスト数が一定値以下になった場合、表示手段に警告を表示させる。
【0015】
また、好ましくは、処理手段は、記憶された試薬情報及び分析依頼に関する情報に基づいて、試薬が不足する予測時期を算出し、算出した予測時期を対応する分析項目の近傍に表示させる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、依頼可能なテスト数を分析依頼手段の近傍に表示することによって、分析依頼時に容易に同一画面にて依頼が可能なテスト数を判断でき、試薬不足による分析動作の停止を回避することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照して説明する。
【0018】
図1は、本発明が適用される分析システムの概略構成図である。図1において、分析システムは、一つ又は複数の分析装置1を備えている。分析すべき検体は、検体ピペッティング機構2により分取され、反応ディスク機構3に配列された容器(図示せず)に注入される。試薬容器は、試薬ディスク機構4に格納される。試薬ディスク機構4の試薬容器に収容された試薬は、試薬を分取する試薬ピペッティング機構5によって分取され、反応ディスク機構3に配列された反応容器に注入される。
【0019】
オペレータ(操作者)が試薬投入エリア6に試薬を設置すると、試薬設置取り出し機構7によって、試薬の種類等が判断された後、試薬ディスク機構4に搬入される。処理部10に内蔵する記憶装置8は、分析システムに依頼されたテスト情報や、一つ又は複数の分析装置の試薬情報を格納する。ユーザインターフェース9は、分析依頼の入力や試薬の残量、過不足等を表示する。処理部10は、分析の動作制御、試薬や試料に関する情報の表示や格納動作の制御を行うとともに、試料の分析処理を行う。
【0020】
試薬不足がユーザインターフェース9に表示された場合、操作者が不足する試薬を追加する為、新たな試薬が収容された容器を試薬投入エリア6に設置すると、試薬設置取り出し機構7は、分析装置の分析動作を停止させることなく、試薬をディスク4に配列された試薬容器に注入する、又は、試薬容器を新たなものに交換する。
【0021】
図2は、本発明による分析システムの処理部10の説明図である。
【0022】
分析システムは、上述したように、複数の分析装置の情報を管理する処理部10及び表示部(ユーザインターフェース)9を備える。処理部10は、試薬残量の記憶手段8−1及び分析依頼の記憶手段8−2を備える。
【0023】
分析システムが立ち上がると、処理部10は、試薬残量の記憶手段8−1の情報を用いて、各項目と分析可能なテスト数との対応を導出し、テスト数管理テーブル8−3に格納する。
【0024】
分析可能なテスト数は、試薬の実残量を試薬使用量で除算して導出するものとし、複数試薬を用いる分析項目については、各試薬の実残量を試薬使用量で除算した結果、最も小さい値を採用する。
【0025】
複数の分析装置によって構成される分析システムにおいては、各項目について、全分析装置の分析可能なテスト数の和とする。他の案として、試薬残量の記憶手段8−1は、試薬の残量ではなく、残テスト数を記憶してもよい。
【0026】
導出した分析可能なテスト数は、表示部9の分析項目依頼手段の近傍に表示する。
【0027】
オペレータが表示部9から分析依頼(依頼登録10−1)を行うと、各項目の依頼数は、テスト数管理テーブル8−3に記録される。このとき、表示部9は、テスト数から依頼数を減算した結果を新たな分析可能なテスト数(依頼可能数10−2)として、処理部10から表示部9に送り、各項目の分析項目依頼手段の近傍に表示する。分析可能テスト数≦依頼数の場合には、0を表示する。
【0028】
次に、分析項目依頼手段の近傍に、分析可能なテスト数を表示する例について、図3を参照して説明する。
【0029】
図3において、分析システムの表示部9には、ルーチン操作画面9−1、試薬管理画面9−2、キャリブレーション画面9−3、精度管理画面9―4、ユーティリティ画面9−5が選択的に表示される。
【0030】
ルーチン操作画面9−1は、項目選択画面9−6、測定結果画面9−7を備える。
【0031】
項目選択画面9−6は、図示したように、検体ID9−8によって特定できる患者検体に対する分析依頼を表示する。さらに、項目選択画面9−6は、分析項目依頼手段として、分析項目を割り当てた分析項目ボタン9−9を備え、オペレータ(ユーザ)が分析項目ボタン9−9を選択的に押下することによって、分析システムの処理部10は依頼を受け付け、分析依頼の記憶手段8−2に登録する。
【0032】
分析項目依頼手段(分析項目ボタン9−9)の近傍の一つの例として、分析項目ボタン9−9の右上に分析可能テスト数9−10を表示する。図示した例では、例えば、分析項目ボタン9−9のうちの項目TCHの右上に分析可能テスト数として10、項目LAPの右上にテスト数として230が表示される。
【0033】
図4は、分析項目依頼手段の近傍に分析可能テスト数等を表示する他の例の説明図である。この図4に示した例は、分析項目の試薬情報詳細を表示するウィンドウである。図示した例の分析項目はTCHの場合であり、項目名、依頼可能数、残テスト数、ポジション、残量が表示されている。
【0034】
図4に示した試薬情報詳細画面は、項目選択画面9−6(図3)にて、フォーカスが当てられる分析項目ボタン9−9(図4に示した例であれば、項目TCHの分析項目ボタン)について、その表示を妨げない位置に表示する。
【0035】
なお、HOSTシステムなどと接続された分析システムの場合は、HOSTシステムが表示部9を備える形態であってもよい。
【0036】
ここで、オペレータの依頼によっては、実行可能なテスト数が一定以下になる場合がある。この場合には、オペレータに試薬の追加登録を促すための警告を行う。
【0037】
図3に示した項目選択画面9−6にて、分析項目ボタン9−9が押下されると、処理部10は、分析依頼記憶手段8−2に分析依頼を格納し、テスト数管理テーブル8−3の該当する依頼数に1を加算する。このとき、「テスト数−依頼数≦一定量」ならば、ユーザに警告を出力する。
【0038】
例えば、分析可能テスト数が、図3に示した分析可能テスト数9−10である場合(10テストの場合)、オペレータが分析項目として、TCHを依頼したとすると、表示された分析可能テスト数は10であるから、依頼したタイミングで、分析可能テスト数9−10は、「10−1=9」となる。上記警告出力を行なう一定量が、9テスト以下と設定されているならば、オペレータに試薬の追加登録を促すための警告を出力する。
【0039】
警告の出力方法としては、図3に示した分析項目ボタン9−9や分析可能テスト数9−10の色や形状を変化する方法や、システムアラームを出力する方法などが考えられる。
【0040】
次に、オペレータに試薬追加登録を促す判定レベルの設定について説明する。
【0041】
図5は、オペレータに試薬追加登録を促す判定レベルの設定表示(試薬残量警告レベル設定)の一例を示す図である。図5において、分析項目ごとに、試薬残量警告レベルを設定する。また、全項目を一括で同じテスト数に設定できるように構成することもできる。
【0042】
分析可能テスト数が一定数以下となったときに、オペレータに試薬の追加登録を警告することの他に、試薬が不足することなく、分析を継続するために必要な試薬登録タイミングをオペレータ(ユーザ)に通知することが考えられる。
【0043】
次に、上述した、分析を継続するために必要な試薬登録タイミングをオペレータに通知する例について説明する。
【0044】
多数の患者検体についての依頼を一度に実施する場合を例として説明する。試薬の採取回数等の情報を記憶し、その記憶情報から、分析可能テスト数を算出する機能を、処理部10が有するか、検出器などによって現在の試薬量から分析可能テスト数を認識する手段を分析システムが備える。
【0045】
分析が依頼されたとき、「依頼数−分析可能テスト数≧一定量」ならば、「分析可能実残テスト数×分析サイクル」で求まる時間が試薬が最も早くなくなる時間である。
【0046】
したがって、オペレータが分析を依頼したタイミングで、「依頼数−分析可能テスト数≧一定量」となるかを確認し、この条件が成立した場合、オペレータに「分析可能テスト数×分析サイクル」で求まる時間が経過すると、その試薬がなくなる可能性があることをオペレータに通知する。他に、「現在時刻+分析可能テスト数×分析サイクル」によって、試薬がなくなる予想時刻をオペレータに通知してもよい。
【0047】
試薬がなくなる時刻の通知手段については、分析項目依頼手段9−9の近傍(分析可能テスト数の隣)に時間または時刻を表示する方法や、システムアラームによってオペレータに警告する方法などが考えられる。
【0048】
また、試薬がなくなる時期と、その試薬名を表示するように構成することもできる。
【0049】
以上のように、本発明の一実施形態によれば、分析可能テスト数を分析項目ボタン9−9の近傍に表示する構成としたので、オペレータ(ユーザ)が分析依頼時に容易に同一画面にて依頼が可能なテスト数を判断することができる。
【0050】
さらに、分析依頼数が分析可能なテスト数を一定数以上超えるときには、オペレータに警告する構成としたので、試薬不足により分析動作が中断されるという事態を回避することが可能となる。
【0051】
さらに、試薬が不足する予測時期を予め警告表示するように構成すれば、早期の試薬の準備等を行なうことができ、試薬不足により分析動作が中断されるという事態を確実に回避することが可能となる。
【0052】
なお、分析可能テスト数は、分析システム立ち上げ時に記憶されている試薬残量から算出するか、試薬量チェックを実施する分析システムの場合には、測定結果から算出するものとする。
【0053】
また、分析可能テスト数の表示は、数字だけでなく、ヒストグラム等、量を認識できるもので表示してもよく、単位はテスト数だけでなくmlなどの単位でもよい。
【0054】
また、分析システムが複数の自動分析装置を備える場合、各自動分析装置毎の分析可能テスト数を、各自動分析装置の表示部における分析項目ボタン9−9の近傍に表示してもよいし、メインの表示部を設定し、そのメインの表示部に、分析システム全体の分析可能テスト数を表示すると共に、個々の自動分析装置の分析可能テスト数を表示するように構成することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明が適用される自動分析システムの概略構成図である。
【図2】本発明の一実施形態における分析システムの処理部の説明図である。
【図3】本発明の一実施形態における分析可能テスト数の表示画面例を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態における分析項目依頼手段の近傍に分析可能テスト数等を表示する他の例の説明図である。
【図5】本発明の一実施形態における試薬残量警告レベル設定画面例を示す図である。
【符号の説明】
【0056】
1・・・分析装置、2・・・検体ピペッティング機構、3・・・反応ディスク機構、4・・・試薬ディスク機構、5・・・試薬ピペッティング機構、6・・・試薬投入エリア、7・・・試薬設置取り出し機構、8−1・・・試薬残量記憶手段、8−2・・・分析依頼記憶手段、8−3・・・テスト数管理テーブル、9・・・表示部、9−1・・・ルーチン操作画面、9−2・・・試薬管理画面、9−3・・・キャリブレーション画面、9−4・・・精度管理画面、9−5・・ユーティリティ画面、9−6・・・項目選択画面、9−9・・・分析項目ボタン、9−10・・・分析可能テスト数、10・・・処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試薬搭載手段と、試薬と試料とを反応させる反応手段と、試薬搭載手段に搭載された試薬情報及び分析依頼に関する情報を格納する記憶手段と、表示手段と、上記試薬搭載手段、上記反応手段、上記記憶手段及び表示手段の動作を制御すると共に試料分析処理を行なう処理手段とを有する分析装置を少なくとも1つ備える分析システムにおいて、
上記処理手段は、
分析する項目を上記表示手段に表示させると共に、上記記憶手段に記憶された試薬情報に基づいて、分析可能なテスト数を算出し、算出した分析可能テスト数を、上記表示手段に表示された分析項目の近辺に表示させることを特徴とする分析システム。
【請求項2】
請求項1記載の分析システムにおいて、
上記表示手段に表示される分析項目は複数であり、上記処理手段は、上記記憶手段に記憶された試薬情報に基づいて、分析可能なテスト数を分析項目毎に算出し、算出した分析可能テスト数のそれぞれを、対応する分析項目の近辺に表示させることを特徴とする分析システム。
【請求項3】
請求項1記載の分析システムにおいて、
上記処理手段は、算出した実行可能なテスト数が一定値以下になった場合、上記表示手段に警告を表示させることを特徴とする分析システム。
【請求項4】
請求項3記載の分析システムにおいて、
上記一定値は、上記表示手段を介して設定可能であることを特徴とする分析システム。
【請求項5】
請求項3記載の分析システムにおいて、
上記処理手段は、上記記憶手段に記憶された試薬情報及び分析依頼に関する情報に基づいて、分析動作が継続された場合に、試薬が不足する予測時期を算出し、算出した予測時期と対応する分析項目とを上記表示手段に表示させることを特徴とする分析システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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