説明

分析テストストリップ

【課題】酵素試薬インク、関連する製造方法及び関連する分析テストストリップを提供する。
【解決手段】酵素試薬インク中の疎水性シリカ材料及び界面活性剤の量は、第一の関係及び第二の関係を使用して予め定められる。第一の関係は、代表的な疎水性シリカ材料の濡れ性と、この代表的な疎水性シリカ材料を含有する酵素試薬インクを含む分析テストストリップの少なくとも第一のキャリブレーション特性との間に存在する。加えて、第一の関係は、許容可能な第一のキャリブレーション特性を提供する最小濡れ性を規定する。第二の関係は、疎水性シリカ材料と界面活性剤とのある範囲の相対量における、疎水性シリカ材料と界面活性剤との混合物の濡れ性を規定する。酵素試薬インク中に採用される疎水性シリカ材料及び界面活性剤の予め定められた量は、酵素試薬インクの製造中に第一の関係により規定される最小濡れ性を少なくとも提供する。

【発明の詳細な説明】
【開示の内容】
【0001】
〔発明の背景〕
〔発明の分野〕
本発明は、広くは試薬インク、特に酵素試薬インク、関連する製造方法及び関連する分析テストストリップに関する。
【0002】
〔関連技術の説明〕
分析テストストリップにおける酵素試薬インクの使用は、広範な商用利用を経験してきた。例えば、酵素試薬インクは、全血試料中のグルコースの判定のための電気化学的分析テストストリップにおいて採用されてきた。このような酵素試薬インク及び分析テストストリップは、例えば、米国特許第7,465,380号、同第7,462,265号、同第7,291,256号、同第7,112,265号、同第5,708,247号、同第7,250,105号、米国特許出願公開第2004/0026243号及び国際特許公開第2004039600号に記載されており、これらはそれぞれ全体が参照により本明細書に組み込まれる。したがって、酵素試薬インクの商用利用は、このようなインクを製造するために使用される方法への関心の増加を導いている。
【図面の簡単な説明】
【0003】
本発明の新規な特徴は、添付の「特許請求の範囲」に詳細に記載される。本発明の特徴及び利点は、本発明の原理が利用される例示的な実施形態を記載する、以下の詳細な説明、及び添付の図面を参照することによって、より理解されるであろう。
【図1】本発明の一実施形態による酵素試薬インクを製造するためのプロセスにおける段階を示すフローチャート。
【図2】代表的な疎水性シリカ材料の濡れ性(30%メタノール水溶液中のゲル層高さ(mm)として測定)と、代表的な親水性シリカ材料を含む酵素試薬インクを採用する電気化学的分析テストストリップのキャリブレーション特性(すなわち、キャリブレーション勾配)との間の関係を示すグラフ。
【図3】H18とテルギトール(Tergitol)体積百分率として表されるテルギトールとのある範囲の相対量における、特定の疎水性シリカ材料(すなわち、H18)と特定の界面活性剤(すなわち、テルギトール)との混合物の濡れ性(30%メタノール溶液中のゲル体積として測定)の棒グラフ。
【図4】特定の疎水性シリカ材料(すなわち、Cab−o−Sil)の、全て0.1体積%の相対濃度における種々の特定の界面活性剤との混合物についての濡れ性(30%メタノール溶液中のゲル体積として測定)の棒グラフ。
【図5】Cab−o−Sil疎水性シリカ材料とテルギトール界面活性剤とを含む酵素試薬インクについての界面活性剤百分率(体積)に対するキャリブレーション勾配のプロット。
【図6】本発明の一実施形態による分析テストストリップの簡略化した分解斜視図。
【図7】本発明による方法における濡れ性の尺度としてゲル高さ及び体積を使用する際に採用できる、ゲル体積とゲル高さとの間の関係を示すグラフ。
【0004】
〔例示的な実施形態の詳細な説明〕
以下の詳細な説明は、図面を参照しながら読むべきである。図面は、あくまで説明を目的として例示的な実施形態を示したものであり、本発明の範囲を限定することを目的としたものではない。詳細な説明は本発明の原理を限定するものではなく、あくまでも例として記載するものである。この説明文は、当業者による発明の製造、実施を明確に可能ならしめるものであり、出願時における発明を実施するための最良の形態と考えられるものを含む、発明の複数の実施形態、適応例、変形例、代替例、並びに使用例を述べるものである。
【0005】
図1は、本発明の一実施形態による分析テストストリップにおける使用のための酵素試薬インク(36,000〜48,000cPの範囲の粘度を有するスクリーン印刷可能な酵素試薬インクなど)を製造するためのプロセス100における段階を示すフローチャートである。方法100により製造される酵素試薬インクは、例えば、全血試料中のグルコースの判定のために構成されている電気化学的分析テストストリップにおいて使用することができる。このような電気化学的分析テストストリップは、従来の試薬インクに関して、例えば米国特許第5,120,420号、同第5,288,636号、同第5,628,890号及び同第6,461,496号に記載されている。
【0006】
加えて、本発明による酵素試薬インクを採用する本発明の一実施形態による分析テストストリップは、図6に示され、下記の関連する議論で説明される。しかしながら、本開示を知り得れば、当業者は、本発明の実施形態による方法を採用して、任意の好適な型の分析テストストリップのための酵素試薬インクを製造することができる。
【0007】
プロセス100は、代表的な疎水性シリカ材料(例えば、疎水性ヒュームドシリカ材料)の濡れ性と、この代表的な疎水性シリカ材料を含有する酵素試薬インクを含む分析テストストリップの少なくとも第一のキャリブレーション特性(例えば、キャリブレーション勾配及び/又はキャリブレーション切片(calibration intercept))との間の第一の関係を決定することを含む(図1の工程110を参照されたい)。更に、このようにして決定された第一の関係は、許容可能な第一のキャリブレーション特性を提供する最小濡れ性を規定する。当業者であれば、「許容可能な」キャリブレーション特性が、対象とする検体(例えば、グルコース)の好適に正確で精密な判定を提供する特性を指すことを理解するであろう。
【0008】
図2は、商標名Cab−o−Sil(キャボット・コーポレーション(Cabot Corp)、米国マサチューセッツ州ビレリカ(Billerica))の下で市販されている代表的な疎水性シリカ材料の濡れ性と、この代表的な疎水性シリカ材料を含有する酵素試薬インクを利用する血中のグルコースの判定のために構成されている電気化学的分析テストストリップのキャリブレーション勾配との間の1つのこのような第一の関係を示すグラフである。図2では、濡れ性は、以下に記載される手順によりゲル層高さとして測定される。図2を作成するのに採用される分析テストストリップ構成に関して、許容可能なキャリブレーション勾配は、約0.017uA/mg/dLを超えるキャリブレーション勾配であり、図2では水平な破線により示されている。
【0009】
代表的な疎水性シリカ材料(Cab−o−Silなど)に関して得られた第一の関係は、予期せぬことに、後続の工程において異なる(すなわち、同一でない)特定の疎水性シリカ材料を採用する方法にとって有益であることが判明した。例えば、代表的な疎水性シリカ材料がCab−o−Sil TS610であるとき、第一の関係は、第二の関係の決定及び組み合わせ工程(以下で更に説明)が市販の疎水性シリカ材料H15、H18(共にワッカー・ケミー社(Wacker Chemie AG)(ドイツ、シュトゥットガルト(Stuttgart))から入手可能)又はアエロジル(Aerosil)(エボニック・デグサ社(Evonik Degussa LTD)(ドイツ、デュッセルドルフ(Dusseldorf))から入手可能)を使用するときでも、採用することができる。したがって、本発明の実施形態による方法は、例えば、ヒュームドシリカが挙げられる、広範な疎水性シリカ材料と共に使用することが簡単で容易である。
【0010】
図2は、キャリブレーション勾配が、(直線の実線により示されているように)疎水性シリカ材料の濡れ性の線形関数であることを明瞭に示す。図2を作成するために、代表的な疎水性シリカ材料の種々の製造バッチが採用されたことに留意すべきである。疎水性シリカ材料の濡れ性におけるこのようなバッチ毎の変動性は、従来の製造技術が採用されるとき、特定のバッチに対しては許容可能なキャリブレーション特性(図2における0.017を超える勾配など)を、又は他のバッチに対しては許容不可能な特性(すなわち、図2における0.017未満の勾配)を有する酵素試薬インクを生じ得る。しかしながら、本発明の実施形態による方法は、親水性シリカ材料におけるバッチ毎の変動性に対応しながら、広範囲の疎水性シリカ材料を良好に使用することを有利に可能にする。
【0011】
本開示を知り得れば、当業者であれば、ゲル層高さ又はゲル層体積以外の濡れ性を測定する好適な手段が本発明による方法で採用できることを認識するであろう。例えば、分光学的技術を採用して濡れ性を測定することができる。加えて、他の好適な、代表的な疎水性シリカ材料を採用でき、他の好適なキャリブレーション特性(キャリブレーション切片など)を本発明の実施形態に採用することができる。
【0012】
図1の工程120では、プロセス100は、特定の疎水性シリカ材料と特定の界面活性剤とのある範囲の相対量における、特定の疎水性シリカ材料と特定の界面活性剤との混合物の濡れ性を規定する第二の関係を決定することを含む。
【0013】
上記のように、特定の疎水性シリカ材料は、工程110で採用された代表的な疎水性材料と同一であってもよいし、又は異なる(すなわち、同一でない)疎水性シリカ材料であってもよい。本発明による方法で採用できる疎水性シリカ材料の例には、例えば、市販の疎水性シリカ材料H15及びH18(ワッカー・ケミー社(Wacker Chemie AG)、ドイツ、シュトゥットガルト(Stuttgart);火炎加水分解を介して製造される合成疎水性非晶質シリカ)及び市販の疎水性シリカ材料アエロジル(Aerosil)(エボニック・デグサ社(Evonik Degussa LTD)、ドイツ、デュッセルドルフ(Dusseldorf))が挙げられる。Cab−o−Sil、H15及びH18は、ヒュームドシリカ材料の例であり、発熱性シリカとしても知られる。
【0014】
図3は、H18とテルギトール体積百分率として示されるテルギトールとのある範囲の相対量における、特定の疎水性シリカ材料(すなわち、H18)と特定の界面活性剤(すなわち、テルギトール)との混合物の濡れ性(30%メタノール溶液中のゲル体積として測定)の棒グラフである。したがって、図3は、特定の親水性シリカ(すなわち、H18)と特定の界面活性剤(テルギトール)との混合物の濡れ性と、混合物中での特定の親水性シリカ材料と特定の界面活性剤との相対量と、の間の例示的な第二の関係を表す役割を果たす。図3では、表記v/v(体積)は、界面活性剤が0.1gの一定重量で存在するメタノール水溶液8mL中での、界面活性剤の体積比率を指すことに留意すべきである(後述の濡れ性手順を参照されたい)。
【0015】
非イオン性界面活性剤が本発明による方法での使用に特に好適であることが判明した。例えば、図4は、特定の疎水性シリカ材料(すなわち、Cab−o−Sil)の、全て0.1体積%の相対濃度における種々の界面活性剤との混合物についての濡れ性(30%メタノール溶液中のゲル体積として測定)の棒グラフである。図4の水平破線は、許容可能なキャリブレーション特性(キャリブレーション勾配及び/又はキャリブレーション切片など)を提供するために必要とされる最小濡れ性を示す。図4では、表記v/v(体積)はやはり、界面活性剤が0.1gの一定重量で存在するメタノール水溶液8mL中での、界面活性剤の体積比率を指す(後述の濡れ性手順を参照されたい)。
【0016】
図4の対照群は、界面活性剤が添加されておらず、許容可能なキャリブレーション特性を提供するのに不十分である濡れ性を有した。図4は、種々の界面活性剤の添加が、様々な程度で疎水性シリカ材料の濡れ性の増加を生じさせることを表す。テルギトール及びイゲパール(Igepal)は、0.1体積%の最終濃度まで添加されると、濡れ性において最大の増加をもたらす。ニアプルーフ(Niaproof)(イオン性界面活性剤)は、濡れ性において最低限の増加しかもたらさない。
【0017】
イゲパール及びテルギトールは共に、ポリグリコールエーテル芳香環含有(非イオン性)界面活性剤である。このような非イオン性界面活性剤は、最大濡れ性を達成するために最も好適な試薬であると思われる。トリトン(Triton)X100は、ポリエチレングリコールtert−オクチルフェニルエーテル(非イオン性)界面活性剤である。この部類の界面活性剤は、イゲパール及びテルギトールと同程度まで濡れ性を向上させないが、本発明による方法での使用に好適であり得る。7−エチル−2−メチル−4−ウンデシル硫酸ナトリウムであるニアプルーフは、アニオン性界面活性剤であり、0.1体積%で採用されたときに最小の濡れ性増加を生じた。
【0018】
図3と図4とを比較するとき、H18が極度に疎水性のシリカ材料であり、したがって、Cab−o−Silと比較して、許容可能なキャリブレーション特性を達成するのに必要な程度まで濡れ性を増加させるために、より大きな相対量の界面活性剤が必要とされることに留意すべきである。しかしながら、H18などの極度に疎水性のシリカ材料でさえ、本発明の実施形態による方法によって酵素試薬インク中での使用に好適な状態にすることができる。
【0019】
図1を再び参照すると、プロセス100の工程130では、ある量の特定の疎水性シリカ材料、ある量の特定の界面活性剤及びある量の酵素を組み合わせて、酵素試薬インクを形成する。更に、特定の疎水性シリカ材料及び特定の界面活性剤の量は、第一の関係、したがって許容可能で予め定められたキャリブレーション特性、により規定される最小濡れ性を少なくとも提供するように、第二の関係に基づいて予め定められる。例えば、界面活性剤の量は、その濃度が、酵素試薬インクの製造時の組み合わせ工程中に、ある量の疎水性シリカ材料の所望の濡れ性を提供し、それにより許容可能で予め定められたキャリブレーション特性を提供するのに適切であるように、予め定めることができる。
【0020】
本発明による方法が有益である点は、疎水性材料の疎水性が普通はこれらの使用を排除するにもかかわらず、これらの方法が、酵素試薬インクでの疎水性シリカ材料の即時使用を可能にすることである。換言すれば、即時使用には過度に疎水性であるシリカ材料は、本明細書に記載されている第一及び第二の関係により定められる量の界面活性剤を組み込むことにより、使用に向けて好適化される。例えば、図4は、Cab−o−Sil疎水性シリカ材料の対照バッチが酵素試薬インクでの良好な使用には過度に疎水性であることを示す。しかしながら、およそ0.1%(体積)の量での(すなわち、組み合わせ工程中、0.1%の体積濃度での)テルギトールの組み込みは、コスト又は時間がかかる製造プロセスなしで、疎水性シリカを使用に好適な状態にする。この結論は、テルギトールのCab−o−Silへの添加が、好適なキャリブレーション勾配(すなわち、0.017を超えるキャリブレーション勾配)を可能にし、一方で、界面活性剤の不在が許容不可能なキャリブレーション勾配(すなわち、0.017未満のキャリブレーション勾配)を生じることを表す、図5のデータにより裏付けられる。この点で、図5では、テルギトールの体積%は、Cab−o−Silとの組み合わせに先行する緩衝溶液へのテルギトールの添加に基づく体積パーセントであることに留意すべきである(下記の酵素試薬インクの調製の部分を参照されたい)。
【0021】
本発明の実施形態による量での疎水性シリカ材料と界面活性剤との組み合わせが、許容可能なキャリブレーション特性をもたらす好適に開口した構造(多孔性)及び/又は密度を有する分析テストストリップ上の試薬層を作ることが、束縛されることなく仮定される。このような密度及び多孔性は、酵素インク調製中にいろいろと混合時間を延長させることによりある程度までは制御できるが、このような延長は、分解性の加熱、並びに調製にかかる時間及びコストの増大を導き得る。
【0022】
更に、実験結果は、本発明の実施形態による界面活性剤の含有が、分析テストストリップの機能性に悪影響を与えないことを示す。例えば、潜在的な干渉化合物(L−ドーパミン、尿酸、アスコルビン酸、パラセタモール(アセトアミノフェン)及びゲンチシン酸など)に関して悪影響がないことが判明しており、分析テストストリップの安定性は、界面活性剤を全く含有していない分析テストストリップと同一であった。
【0023】
本明細書に記載されている第一及び第二の関係は、簡単な実験室装置を使用して決定することができる。したがって、本発明による方法は、有利にも安価である。更に、本方法は簡単な疎水性シリカ材料(ヒュームドシリカ材料など)を採用するので、これらは親水性及び疎水性の両方の特性を有する複雑なシリカ材料を採用するいかなる必要性も除去する。
【0024】
本発明の実施形態による酵素試薬インクは、ある量の疎水性シリカ材料(例えば、ある量のヒュームドシリカ材料)と、ある量の界面活性剤(非イオン性界面活性剤など)と、ある量の酵素(例えば、グルコースオキシダーゼ)と、を含む。酵素試薬インク中に存在する疎水性シリカ材料及び界面活性剤の量は、第一及び第二の関係に基づいて予め定められる。第一の関係は、代表的な疎水性シリカ材料の濡れ性と、この代表的な疎水性シリカ材料を含有する酵素試薬インクを含む分析テストストリップの第一のキャリブレーション特性との間の関係である。加えて、このような第一の関係は、許容可能な第一のキャリブレーション特性を提供する最小濡れ性を規定する。第二の関係は、疎水性シリカ材料と界面活性剤とのある範囲の相対量における、疎水性シリカ材料と界面活性剤との混合物の濡れ性を規定する関係である。酵素試薬インク中の疎水性シリカ材料と界面活性剤との相対量は、第一の関係、したがって許容可能な第一のキャリブレーション特性、により規定される最小濡れ性を少なくとも提供するように、予め定められる。
【0025】
本開示を知り得れば、当業者であれば、本発明による酵素試薬インクが、本発明の方法により製造されるインクであることを認識するであろう。したがって、本発明の方法に関して本明細書に記載されている成分、特性及び利益は、本発明の酵素試薬インクにも適合する。
【0026】
本発明による酵素試薬インクの例は、以下の配合を有する。
【表1】

【0027】
直前に上述した酵素試薬インクを調製する好適な方法は、以下で詳述される。下記の酵素試薬インクの調製の説明を含む本開示を知り得れば、当業者であれば、本発明による方法で採用される特定の界面活性剤の具体的な量が、本明細書に記載されている第一及び第二の関係だけでなく、当業者に容易に理解可能である製造プロセスの詳細にも依存することを認識するであろう。例えば、下記の酵素試薬インクの調製の説明では、およそ10,000mLの体積の緩衝液に10mLという具体的な量のテルギトールを添加して、所望の0.1体積%の量を達成し、この0.1体積%は、本発明の一実施形態による方法の第一及び第二の関係に基づいて定められている。このようにして、界面活性剤は、疎水性シリカ材料と組み合わせられるときに所望の体積%(0.10体積%を超える体積%など)で存在する。
【0028】
広くは、本発明による分析テストストリップは、基板と、この基板の一部分の上に配置される試薬層と、を含む。試薬層は、ある量の疎水性シリカ材料、ある量の界面活性剤及びある量の酵素を含む、酵素試薬インクを含む。酵素試薬インク中の疎水性シリカ材料と界面活性剤との相対量は、第一の関係及び第二の関係を使用して予め定められる。第一の関係は、代表的な疎水性シリカ材料の濡れ性と、この代表的な疎水性シリカ材料を含有する酵素試薬インクを含む分析テストストリップの少なくとも第一のキャリブレーション特性(キャリブレーション勾配及び/又はキャリブレーション切片など)との間にある。加えて、第一の関係は、許容可能な第一のキャリブレーション特性を提供する最小濡れ性を規定する。
【0029】
第二の関係は、疎水性シリカ材料と界面活性剤とのある範囲の相対量における、疎水性シリカ材料と界面活性剤との混合物の濡れ性を規定する。酵素試薬インク中に採用される疎水性シリカ材料と界面活性剤との予め定められた相対量は、第一の関係、したがって許容可能な第一のキャリブレーション特性、により規定される最小濡れ性を少なくとも提供する。
【0030】
図6は、血液試料中のグルコースを判定するために構成されている本発明による電気化学的分析テストストリップ200の簡略化した分解斜視図である。
【0031】
電気化学的分析テストストリップ200は、電気絶縁基板212(簡単に基板とも呼ばれる)、パターン導電層214(3つの電極を規定する)、絶縁層216(これを通って電極露出窓217が延びる)、試薬層218、パターン接着層220、親水性層222及び上部フィルム224を含む。
【0032】
電気絶縁基板212は、例えば、ナイロン基板、ポリカーボネート基板、ポリイミド基板、ポリ塩化ビニル基板、ポリエチレン基板、ポリプロピレン基板、グリコール変性ポリエステル(PETG)基板又はポリエステル基板などの、当業者に既知の任意の好適な電気絶縁基板を使用することができる。電気絶縁基板は、例えば、約5mmの幅、約27mmの長さ、約0.5mmの厚みといったように、任意の適当な寸法を有し得る。
【0033】
絶縁層216は、例えばスクリーン印刷可能な絶縁インクから形成することができる。このようなスクリーン印刷可能な絶縁インクは、米国マサチューセッツ州ウェアハム(Wareham)のアーコン社(Ercon)から「インシュレーヤー」(Insulayer)の名で市販されている。パターン接着層220は、例えば、アポロ・アドヒーシブズ社(Apollo Adhesives)(英国、スタッフォードシャー、タムワース(Tamworth))から市販されているスクリーン印刷可能な感圧接着剤から形成することができる。
【0034】
親水性層222は、例えば、流体試料(例えば、全血試料)による電気化学的分析テストストリップ200の湿潤及び充填を促す親水性を有する透明フィルムとすることができる。このような透明フィルムは、例えば、米国ミネソタ州ミネアポリス(Minneapolis)の3Mから市販されている。上部フィルム224は、例えば、黒い装飾インクにより刷り重ねられた透明なフィルムとすることができる。好適な透明フィルムは、テープ・スペシャリティーズ社(Tape Specialities)(英国、ハートフォードシャー、トリング(Tring))から市販されている。
【0035】
試薬層218は任意の好適な酵素試薬を含むことができ、酵素試薬の選択は判定する検体に依存する。例えば、血液試料中でグルコースを判定する場合、試薬層218は、オキシダーゼ又はグルコースデヒドロゲナーゼを、機能操作に必要な他の成分と共に含むことができる。しかしながら、本発明の実施形態によれば、試薬層218は、少なくとも本発明の一実施形態による酵素試薬インクを含む。
【0036】
電気化学的分析テストストリップ200は、例えば、パターン導電層214、絶縁層216(これを通って電極露出窓217が延びる)、試薬層218、パターン接着層220、親水性層222及び上部フィルム224を電気絶縁基板212上に順次整列させて形成することによって製造することができる。例えば、スクリーン印刷、フォトリソグラフィ、グラビア印刷、化学蒸着及びテープ積層法などの当業者に既知の任意の好適な技術を使用して、このような順次整列の形成を達成することができる。
【0037】
ゲル高さ又はゲル体積として濡れ性を測定するための手順
物品及び試薬:化学てんびん、ガラス秤量ボート、サイエンティフィック・インダストリーズ社のボルテックス・ジニー2(Scientific Industries Vortex Genie 2)、ヘチッヒ社のユニバーサル16旋回式遠心分離機(Hettich Universal 16 swing-out centrifuge)、ミツトヨ社のアブソリュート・デジマチック・キャリパ(Mitutoyo Absolute Digimatic calipers)、TPP 91015目盛り付きプラスチック遠心管、AnalaR水、メタノール(分光光度グレード)、疎水性シリカ材料及び必要に応じて界面活性剤。
【0038】
方法:化学てんびん及びガラス秤量ボートを使用して、0.1gの疎水性シリカ材料、及び適切な場合には所望の量の界面活性剤を計量する。疎水性シリカ材料、及び所望の場合には界面活性剤を、プラスチック遠心管に移す。8mLの30%(体積)メタノール水溶液を添加する。遠心管を振盪することにより疎水性シリカ材料、及び存在する場合には界面活性剤を分散させ、次いで、サイエンティフィック・インダストリーズ社のボルテックス・ジニー2の最大設定を使用して3分間にわたって、得られた混合物を撹拌する。次に、遠心管をヘチッヒ社のユニバーサル16旋回式遠心分離機の中に置き、遠心バケットが安定していることを確実にする。4,500rpmで5分間にわたって遠心分離にかける。
【0039】
遠心管を取り出し、ミツトヨ社のアブソリュート・デジマチック・キャリパで、ゲル層(管の底にある)の高さ及び濡れていないヒュームドシリカ(管の上部)の高さを測定する。所望の場合には、図6のグラフ又は等式を採用して、ゲル高さ(mm単位)をゲル体積(mL単位)に変換することができる。
【0040】
疎水性シリカ材料を使用する酵素試薬インクの調製
以下の手順を採用して、本明細書に記載されている例示的な酵素試薬インクを調製した。
【0041】
0.5mLのDC 1500消泡剤(BDH/メレック社(BDH/Merek Ltd.)から市販)を7500グラムの水(AnalaR、BDH/メレック社から入手可能)と組み合わせることにより、PVA−消泡剤−クエン酸溶液を調製した。次に、この溶液に90グラムのポリビニルアルコール(「PVA」、シグマ・アルドリッチ(Sigma-Aldrich)、分子量85,000〜124,000、87%〜89%加水分解化)を添加し、7000RPM超で2時間にわたって均質化した。均質化の後、81.5グラムのクエン酸を溶液中に混合した。
【0042】
270グラムのクエン酸三ナトリウムを1000mLの水の中に混合することにより、pH調整液を調製した。次いで、十分な量のクエン酸三ナトリウム溶液を添加することにより、PVA−消泡剤−クエン酸溶液のpHをpH5に調整した。
【0043】
125マイクロメートル篩を通してpH5溶液を濾過し、30リットルのステンレス鋼ポットに移した。溶液総重量が9250グラムになるまで、追加的な水を30リットルの鋼ポットに加えた。次いで、44.5mLのDC 1500消泡剤をステンレス鋼ポットに加えた。10mLのテルギトールをステンレス鋼ポットに加えた。
【0044】
90mm直径のミキサーブレードをディスパースマット(Dispersmat)ミキサーに取り付け、ミキサーブレードがポットの底の2センチメートル上にあるようにステンレス鋼ポットに固定した。ミキサーを800RPMに設定し、次いで、混合の最初の2分間に90グラムのポリビニルピロリドン−ビニルアセテート(PVP/VA S−630コポリマー、ISP社(ISP Company)から市販、60/40の比及び24,000〜30,000の分子量を有する)及び449グラムのヒドロキシル−エチルセルロース(「HEC」、ナトロゾル(Natrosol)250Gとして市販)を添加した。次に、混合速度を5500RPMに上げ、更に5分にわたって続け、HEC溶液を得た。
【0045】
混合時間後、HEC溶液を15リットルのケグに移し、12〜25時間にわたって穏やかに混合した(すなわち、揺らす)。次いで、粘度を測定し、13,000〜17,000cPの範囲内であることを確認した(25℃及び5RPMで測定)。
【0046】
揺らされたHEC溶液を7℃〜10℃に平衡化させた。次に、30リットルのステンレス鋼ポットの中で、揺らされて平衡化した9000グラムのHEC溶液を675グラムの疎水性シリカ材料(Cab−o−Sil、キャボット・コーポレーション(Cabot Corp.)(米国マサチューセッツ州ビレリカ(Billerica)、01821−7001)から市販)と混合して、HEC/シリカ混合物を形成した。
【0047】
175mm直径のミキサーブレードをディスパースマットミキサーに取り付け、ミキサーブレードがポットの底にあるようにステンレス鋼ポットに固定した。組み合わせたHEC/シリカ混合物を2600RPMで16分間にわたって混合した。次いで、配合物の密度を測定(コール−パーマーのピクノメータ(Cole-Parmer Pycnometer)を使用)して、約0.85g/cm〜約1.015g/cmの範囲にあることが判明した。
【0048】
次いで、HEC/シリカ混合物を15リットルのケグに移し、8〜16時間にわたって穏やかに揺らした。次いで、粘度を測定し、37,000〜50,000cP内であることを確認した(25℃及び10RPMで測定)。
【0049】
15リットルのステンレス鋼ポットの中で、4515グラムのHEC/シリカ混合物を、1386グラムのフェリシアン化カリウム及び126グラムのグルコースオキシダーゼと組み合わせた。125mm直径のミキサーブレードをディスパースマットミキサーに取り付け、ミキサーブレードがポットの底にあるようにステンレス鋼ポットに固定し、混合物を1500RPMで15分間にわたって混合した。混合後、pHは約4.8〜5.4の範囲であり、粘度は約36,000〜48,000cPの範囲内であった(25℃及び10RPMで測定)。その後、酵素試薬インクは、血液試料中のグルコースの判定のために構成されている電気化学的分析テストストリップの製造時の電極及び/又は基板の上へのスクリーン印刷に対して、準備が整った。
【0050】
本明細書では、本発明の好ましい実施形態が図示、説明されているが、こうした実施形態はあくまで例として与えられたものであることは当業者には明らかであろう。当業者であれば、本発明から逸脱することなく多くの変形、変更、及び代用が想到されるであろう。本発明の実施に際し本明細書で述べた実施形態には、様々な代替例を用い得る点が理解されるべきである。以下の「特許請求の範囲」は、本発明の範囲を規定しており、特許請求の範囲内の装置及び方法、組成物及び装置、並びにそれらの均等物はこれによって網羅されることを意図している。
【0051】
〔実施の態様〕
(1) 分析テストストリップにおいて、
基板と、
前記基板の一部分の上に配置される試薬層と、
を含み、前記試薬層は、
ある量の疎水性シリカ材料と、
ある量の界面活性剤と、
ある量の酵素と、
を含む、酵素試薬インクを含み、
前記酵素試薬インク中の前記疎水性シリカ材料及び前記界面活性剤の前記量が、
代表的な疎水性シリカ材料の濡れ性と、前記代表的な疎水性シリカ材料を含有する酵素試薬インクを含む分析テストストリップの少なくとも第一のキャリブレーション特性との間の第一の関係であって、前記第一の関係が、許容可能な第一のキャリブレーション特性を提供する最小濡れ性を規定する、第一の関係と、
前記疎水性シリカ材料と前記界面活性剤とのある範囲の相対量における、前記疎水性シリカ材料と前記界面活性剤との混合物の濡れ性を規定する第二の関係と
を使用して、
前記疎水性シリカ材料及び前記界面活性剤の前記量が、前記酵素試薬インクの製造中に、前記第一の関係によって規定される前記最小濡れ性を少なくとも提供するように、予め定められる、分析テストストリップ。
(2) 前記代表的な疎水性シリカ材料及び前記特定の疎水性シリカ材料が、疎水性ヒュームドシリカ材料である、実施態様1に記載の分析テストストリップ。
(3) 前記特定の界面活性剤が、非イオン性界面活性剤である、実施態様1に記載の分析テストストリップ。
(4) 前記非イオン性界面活性剤が、ポリグリコールエーテル芳香環含有非イオン性界面活性剤である、実施態様3に記載の分析テストストリップ。
(5) 前記少なくとも第一のキャリブレーション特性が、キャリブレーション勾配である、実施態様1に記載の分析テストストリップ。
(6) 前記少なくとも第一のキャリブレーション特性が、キャリブレーション切片である、実施態様1に記載の分析テストストリップ。
(7) 前記濡れ性が、メタノール水溶液中のゲル高さとして測定される、実施態様1に記載の分析テストストリップ。
(8) 前記濡れ性が、メタノール水溶液中のゲル体積として測定される、実施態様1に記載の分析テストストリップ。
(9) 前記酵素試薬インクが、36,000〜48,000cPの範囲の粘度を有するスクリーン印刷可能な酵素試薬インクである、実施態様1に記載の分析テストストリップ。
(10) 前記分析テストストリップが、血液試料中のグルコースの判定のために構成されている電気化学的分析テストストリップである、実施態様1に記載の分析テストストリップ。
【0052】
(11) 前記酵素が、グルコースオキシダーゼである、実施態様1に記載の分析テストストリップ。
(12) 前記界面活性剤の量は、前記界面活性剤が前記酵素試薬インクの製造中に少なくとも0.10体積%の濃度で存在し、前記酵素試薬インク中に少なくとも0.07質量%の濃度で存在するような量である、実施態様1に記載の分析テストストリップ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析テストストリップにおいて、
基板と、
前記基板の一部分の上に配置される試薬層と、
を含み、前記試薬層は、
ある量の疎水性シリカ材料と、
ある量の界面活性剤と、
ある量の酵素と、
を含む、酵素試薬インクを含み、
前記酵素試薬インク中の前記疎水性シリカ材料及び前記界面活性剤の前記量が、
代表的な疎水性シリカ材料の濡れ性と、前記代表的な疎水性シリカ材料を含有する酵素試薬インクを含む分析テストストリップの少なくとも第一のキャリブレーション特性との間の第一の関係であって、前記第一の関係が、許容可能な第一のキャリブレーション特性を提供する最小濡れ性を規定する、第一の関係と、
前記疎水性シリカ材料と前記界面活性剤とのある範囲の相対量における、前記疎水性シリカ材料と前記界面活性剤との混合物の濡れ性を規定する第二の関係と
を使用して、
前記疎水性シリカ材料及び前記界面活性剤の前記量が、前記酵素試薬インクの製造中に、前記第一の関係によって規定される前記最小濡れ性を少なくとも提供するように、予め定められる、分析テストストリップ。
【請求項2】
前記代表的な疎水性シリカ材料及び前記特定の疎水性シリカ材料が、疎水性ヒュームドシリカ材料である、請求項1に記載の分析テストストリップ。
【請求項3】
前記特定の界面活性剤が、非イオン性界面活性剤である、請求項1に記載の分析テストストリップ。
【請求項4】
前記非イオン性界面活性剤が、ポリグリコールエーテル芳香環含有非イオン性界面活性剤である、請求項3に記載の分析テストストリップ。
【請求項5】
前記少なくとも第一のキャリブレーション特性が、キャリブレーション勾配である、請求項1に記載の分析テストストリップ。
【請求項6】
前記少なくとも第一のキャリブレーション特性が、キャリブレーション切片である、請求項1に記載の分析テストストリップ。
【請求項7】
前記濡れ性が、メタノール水溶液中のゲル高さとして測定される、請求項1に記載の分析テストストリップ。
【請求項8】
前記濡れ性が、メタノール水溶液中のゲル体積として測定される、請求項1に記載の分析テストストリップ。
【請求項9】
前記酵素試薬インクが、36,000〜48,000cPの範囲の粘度を有するスクリーン印刷可能な酵素試薬インクである、請求項1に記載の分析テストストリップ。
【請求項10】
前記分析テストストリップが、血液試料中のグルコースの判定のために構成されている電気化学的分析テストストリップである、請求項1に記載の分析テストストリップ。
【請求項11】
前記酵素が、グルコースオキシダーゼである、請求項1に記載の分析テストストリップ。
【請求項12】
前記界面活性剤の量は、前記界面活性剤が前記酵素試薬インクの製造中に少なくとも0.10体積%の濃度で存在し、前記酵素試薬インク中に少なくとも0.07質量%の濃度で存在するような量である、請求項1に記載の分析テストストリップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−266434(P2010−266434A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−99594(P2010−99594)
【出願日】平成22年4月23日(2010.4.23)
【出願人】(510108582)ライフスキャン・スコットランド・リミテッド (5)
【氏名又は名称原語表記】LifeScan Scotland, Ltd.
【住所又は居所原語表記】Beechwood Park North, Inverness, Inverness−shire  IV23ED, UK
【Fターム(参考)】