説明

分析用デバイスと分析方法

【課題】慣性力の影響があっても試料液の定量性のばらつきを低減できる分析用デバイスを提供することを目的とする。
【解決手段】Y字形流路群201とダミー流路38a,38bとで分配流路を構成し、Y字形流路群201の始端側に供給された試料液を、Y字形流路群201の区間とダミー流路38a,38bに毛細管力で吸い上げ、この保持された試料液を、測定セル40a〜40fに遠心力によって移送するとともに、ダミー流路38a,38bによって試料液を吸収または字形流路群201に補給して測定セルに定量の試料液を分配する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、種々の生物学的及び化学的組成物の分析に適用されるような多項目生体液分析装置(マルチバイオセンサ)の分野に関する。より具体的には、本発明は、印加される遠心力及び装置中の通路の表面特性や液体の表面張力によって生じる毛細管力を利用して液体の計量・移送・混合・攪拌等の動作を行い分析を実施する分析用デバイスと分析方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、試料液を内部に収集した分析用デバイスを用い、この分析用デバイスを軸中心周りに回転させながら、分析装置の光学スキャン技術を用いて、試料液の特性を分析する分析装置が実用化されている。
【0003】
近年、試料液の少量化、装置の小型化、短時間測定、多項目同時測定など、市場からの要求も多く、少量の試料液を正確に計量・分配し、血液等の試料液を複数の分析試薬と反応させ、その混合物を検出し、短時間で複数の測定項目を高精度に測定できる分析装置が望まれている。
【0004】
通常、このような分析用デバイスでは試料液を単一項目の試薬と反応させることは少なく、分析の目的に応じて複数の項目を測定できるようにするために、試料液の計量・分配を行った上で、分析試薬と反応させて測定を行う場合が多い。
【0005】
このような試料液の計量・分配を行っている例として特許文献1の分析用デバイスがある。
図25は特許文献1の分析用デバイスを示す。
【0006】
遠心移送式バイオセンサー400では、試料を入口ポート409から蛇行した連続微小導管401の中を出口ポート410まで毛細管力で移送し、各毛細管キャビティ404a〜404fを試料液で満たした後、バイオセンサー400の回転によって発生する遠心力によって、それぞれの毛細管キャビティ404a〜404f内の試料液を各通気孔406a〜406gの位置で分配し、各連結微小導管407a〜407fを通って、次の処理室(図示省略)へ移送される。408a〜408fはバルブ機能部である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4181497号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の構成では、入口ポート409,出口ポート410に隣接する計量部の連結微小導管407a,407fから次の処理室へそれぞれ分配される試料液の量と、連結微小導管407b〜407eから次の処理室へそれぞれ分配される試料液の量とが、慣性力の影響のためにばらつく課題を有している。
【0009】
本発明は、慣性力の影響があっても試料液の定量性のばらつきを低減できる分析用デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の請求項1記載の分析用デバイスは、試料液を遠心力によって測定セルに向かって移送するマイクロチャネル構造を有し、前記測定セルにおける液体にアクセスする読み取りに使用される分析用デバイスであって、周方向に配置された複数の前記測定セルと、前記測定セルよりも内周側に配置され、前記測定セルに試料液を分配する分配流路とを有し、前記分配流路は、内周側に2つの屈曲部が形成され外周側に流路端が形成されたY字形状の流路を1区間としこれを複数区間有し、隣接する前記屈曲部を接続し、外周側の前記流路端が前記測定セルに接続されたY字形流路群を有し、かつ、内周側から外周側に延びるとともに毛細管力が作用する隙で前記Y字形流路群の始端側の屈曲部と前記Y字形流路群の終端側の屈曲部との少なくとも一方に接続されたダミー流路を設け、前記屈曲部が回転中心から同一の半径位置に配置され、前記流路端が回転中心から同一の半径位置に配置され、前記Y字形流路群の始端側に供給され前記Y字形流路群の前記各区間に保持された試料液を、外周側の前記流路端を介して前記測定セルに遠心力によって移送し、前記測定セルに分配された試料液を分析することを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項2記載の分析用デバイスは、請求項1において、前記Y字形流路群の複数の前記屈曲部と、前記ダミー流路の内周側の端部とが、回転中心からの距離が同一の半径位置に配置されていることを特徴とする。
【0012】
本発明の請求項3記載の分析用デバイスは、請求項1において、前記Y字形流路群の外周側の前記流路端の外周端と、前記ダミー流路の外周側の端部とが、回転中心からの距離が同一の半径位置に配置されていることを特徴とする。
【0013】
本発明の請求項4記載の分析方法は、試料液を遠心力によって測定セルに向かって移送するマイクロチャネル構造を有し、前記測定セルにおける液体にアクセスするに際し、周方向に配置された複数の前記測定セルよりも内周側に配置された分配流路が、内周側に2つの屈曲部が形成され外周側に流路端が形成されたY字形状の流路を1区間としこれを複数区間有し、隣接する前記屈曲部を接続し、外周側の前記流路端が前記測定セルに接続されたY字形流路群と、内周側から外周側に延びるとともに毛細管力が作用する隙で前記Y字形流路群の始端側の屈曲部と前記Y字形流路群の終端側の屈曲部との少なくとも一方に接続されたダミー流路とで形成され、前記Y字形流路群の始端側に供給された試料液を、前記Y字形流路群の前記各区間と前記ダミー流路に毛細管力で吸い上げ、前記Y字形流路群の前記各区間に保持された試料液を、外周側の前記流路端を介して前記測定セルに遠心力によって移送するとともに、前記遠心力に伴う慣性力による前記Y字形流路群における試料液の移送分を、前記ダミー流路によって吸収または補給して前記測定セルに定量の試料液を分配して分析することを特徴とする。
【0014】
本発明の請求項5記載の分析用デバイスは、試料液を遠心力によって測定セルに向かって移送するマイクロチャネル構造を有し、前記測定セルにおける液体にアクセスする読み取りに使用される分析用デバイスであって、周方向に配置された複数の前記測定セルと、前記測定セルよりも内周側に配置され、前記測定セルに試料液を分配する分配流路とを有し、前記分配流路は、内周側に2つの屈曲部が形成され外周側に流路端が形成された多角形状の流路を1区間としこれを複数区間有し、隣接する前記屈曲部を接続し、外周側の前記流路端が前記測定セルに接続された多角形流路群を有し、かつ、内周側から外周側に延びるとともに毛細管力が作用する隙で前記多角形流路群の始端側の屈曲部と前記多角形流路群の終端側の屈曲部との少なくとも一方に接続されたダミー流路を設け、前記屈曲部が回転中心から同一の半径位置に配置され、前記流路端が回転中心から同一の半径位置に配置され、前記多角形流路群の始端側に供給され前記多角形流路群の前記各区間に保持された試料液を、外周側の前記流路端を介して前記測定セルに遠心力によって移送し、前記測定セルに分配された試料液を分析することを特徴とする。
【0015】
本発明の請求項6記載の分析用デバイスは、請求項5において、前記多角形流路群の複数の前記屈曲部と、前記ダミー流路の内周側の端部とが、回転中心からの距離が同一の半径位置に配置されていることを特徴とする。
【0016】
本発明の請求項7記載の分析用デバイスは、請求項5において、前記多角形流路群の外周側の前記流路端の外周端と、前記ダミー流路の外周側の端部とが、回転中心からの距離が同一の半径位置に配置されていることを特徴とする。
【0017】
本発明の請求項8記載の分析方法は、試料液を遠心力によって測定セルに向かって移送するマイクロチャネル構造を有し、前記測定セルにおける液体にアクセスするに際し、周方向に配置された複数の前記測定セルよりも内周側に配置された分配流路が、内周側に2つの屈曲部が形成され外周側に流路端が形成された多角形状の流路を1区間としこれを複数区間有し、隣接する前記屈曲部を接続し、外周側の前記流路端が前記測定セルに接続された多角形流路群と、内周側から外周側に延びるとともに毛細管力が作用する隙で前記多角形流路群の始端側の屈曲部と前記多角形流路群の終端側の屈曲部との少なくとも一方に接続されたダミー流路とで形成され、前記多角形流路群の始端側に供給された試料液を、前記多角形流路群の前記各区間と前記ダミー流路に毛細管力で吸い上げ、前記多角形流路群の前記各区間に保持された試料液を、外周側の前記流路端を介して前記測定セルに遠心力によって移送するとともに、前記遠心力に伴う慣性力による前記多角形流路群における試料液の移送分を、前記ダミー流路によって吸収または補給して前記測定セルに定量の試料液を分配して分析することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
この構成によれば、分配流路を、Y字形流路群とY字形流路群の終端側の屈曲部との少なくとも一方に接続されたダミー流路とで構成し、前記Y字形流路群の始端側に供給された試料液を、前記Y字形流路群の前記各区間と前記ダミー流路に毛細管力で吸い上げてY字形流路群の前記各区間に保持された試料液を、測定セルに遠心力によって移送するとともに、前記遠心力に伴う慣性力による前記Y字形流路群における試料液の移送分を、前記ダミー流路によって吸収または補給して前記測定セルに定量の試料液を分配でき、少量の試料液を正確に計量・分配し、複数の測定項目を高精度に測定することができる。
【0019】
また、分配流路を、多角形流路群と多角形流路群の終端側の屈曲部との少なくとも一方に接続されたダミー流路とで構成し、前記多角形流路群の始端側に供給された試料液を、前記多角形流路群の前記各区間と前記ダミー流路に毛細管力で吸い上げて多角形流路群の前記各区間に保持された試料液を、測定セルに遠心力によって移送するとともに、前記遠心力に伴う慣性力による前記多角形流路群における試料液の移送分を、前記ダミー流路によって吸収または補給して前記測定セルに定量の試料液を分配でき、少量の試料液を正確に計量・分配し、複数の測定項目を高精度に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態1の分析用デバイスの保護キャップを閉じた状態と開いた状態の外観斜視図
【図2】同実施の形態の分析用デバイスの分解斜視図
【図3】保護キャップを閉じた状態の分析用デバイスを背面から見た斜視図
【図4】同実施の形態の希釈液容器の説明図
【図5】同実施の形態の保護キャップの説明図
【図6】同実施の形態の分析用デバイスの使用前と試料液を点着する際ならびに点着後に保護キャップを閉じた状態の断面図
【図7】出荷状態にセットする工程の断面図
【図8】分析用デバイスを分析装置にセットする直前の斜視図
【図9】分析用デバイスを分析装置にセットした状態の断面図
【図10】同実施の形態の分析装置の構成図
【図11】同実施の形態の分析デバイスの要部の拡大説明図
【図12】分析用デバイスを分析装置にセットして回転開始前の断面図
【図13】分析用デバイスを分析装置にセットして回転開始前の断面図
【図14】分析用デバイスを分析装置にセットして回転後と遠心分離後の断面図
【図15】希釈液容器の断面図
【図16】工程2と工程3の断面図
【図17】工程4と工程5の断面図
【図18】毛細管キャビティ33とその周辺の拡大斜視図とE−E断面図
【図19】工程6と工程7の断面図
【図20】図12におけるY字形流路群とその周辺の拡大平面図
【図21】同実施の形態のベース基板の要部の拡大図
【図22】図19におけるF−F断面図とG−G断面図
【図23】実施の形態2の要部の拡大平面図
【図24】同実施の形態のベース基板の要部の拡大図
【図25】特許文献1の説明図
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の各実施の形態を図面に基づいて説明する。
(実施の形態1)
図1〜図22は本発明の実施の形態1を示す。
【0022】
図1(a)(b)は分析用デバイス1の保護キャップ2を閉じた状態と開いた状態を示している。図2は図1(a)における下側を上に向けた状態で分解した状態を示し、図3はその組立図を示している。
【0023】
ベース基板3とカバー基板4は、希釈液容器5などを内部にセットした状態で接合され、この接合されたものに保護キャップ2が取り付けられている。ベース基板3の上面に形成されている数個の凹部の開口をカバー基板4で覆うことによって、後述の複数の収容エリア(後述の測定セルと同じ)とその収容エリアの間を接続するマイクロチャネル構造の流路などが形成されている。収容エリアのうちの必要なものには各種の分析に必要な試薬が予め担持されている。保護キャップ2の片側は、ベース基板3とカバー基板4に形成された軸6a,6bに係合して開閉できるように枢支されている。検査しようとする試料液が血液の場合、毛細管力の作用する前記マイクロチャネル構造の各流路の隙間は、50μm〜300μmに設定されている。
【0024】
この分析用デバイス1を使用した分析工程の概要は、希釈液が予めセットされた分析用デバイス1に試料液を点着し、この試料液の少なくとも一部を前記希釈液で希釈した後に測定しようとするものである。
【0025】
図4は希釈液容器5の形状を示している。
図4(a)は平面図、図4(b)は図4(a)のA−A断面図、図4(c)は側面図、図4(d)は背面図、図4(e)は開口部7から見た正面図である。この開口部7は希釈液容器5の内部5aに、図6(a)に示すように希釈液8を充填した後にシール部材としてのアルミシール9によって密封されている。希釈液容器5の開口部7とは反対側には、ラッチ部10が形成されている。この希釈液容器5は、ベース基板3とカバー基板4の間に形成され希釈液室11にセットされて図6(a)に示す液保持位置と、図6(c)に示す液放出位置とに移動自在に収容されている。
【0026】
図5は保護キャップ2の形状を示している。
図5(a)は平面図、図5(b)は図5(a)のB−B断面図、図5(c)は側面図、図5(d)は開口2aから見た正面図である。保護キャップ2の内側には、図1(a)に示した閉塞状態で図6(a)に示すように、希釈液容器5のラッチ部10が係合可能な係止用溝12が形成されている。
【0027】
この図6(a)は使用前の分析用デバイス1を示す。この状態では保護キャップ2が閉塞されており、保護キャップ2の係止用溝12に希釈液容器5のラッチ部10が係合して希釈液容器5が矢印J方向に移動しないように液保持位置に係止されている。この状態で利用者に供給される。
【0028】
試料液の点着に際して保護キャップ2が図6(a)でのラッチ部10との係合に抗して図1(b)に示したように開かれると、保護キャップ2の係止用溝12が形成されている底部2bが弾性変形して図6(b)に示すように保護キャップ2の係止用溝12と希釈液容器5のラッチ部10との係合が解除される。
【0029】
この状態で、分析用デバイス1の露出した注入口13に試料液を点着して保護キャップ2を閉じる。この際、保護キャップ2を閉じることによって、係止用溝12を形成していた壁面12aが、希釈液容器5のラッチ部10の保護キャップ2の側の面5bに当接して、希釈液容器5を前記矢印J方向(液放出位置に近づく方向)に押し込む。希釈液室11には、ベース基板3の側から突出部としての開封リブ14が形成されており、希釈液容器5が保護キャップ2によって押し込まれると、希釈液容器5の斜めに傾斜した開口部7のシール面に張られていたアルミシール9が図6(c)に示すように開封リブ14に衝突して破られる。
【0030】
なお、図7は分析用デバイス1を図6(a)に示した出荷状態にセットする製造工程を示している。先ず、保護キャップ2を閉じる前に、希釈液容器5の下面に設けた溝42(図2と図4(d)参照)と、カバー基板4に設けた孔43とを位置合わせして、この液保持位置において孔43を通して希釈液容器5の溝42に、ベース基板3またはカバー基板4とは別に設けられた係止治具44の突起44aを係合させて、希釈液容器5を液保持位置に係止した状態にセットする。そして、保護キャップ2の上面に形成されている切り欠き45(図1参照)から、押圧治具46を差し入れて保護キャップ2の底面を押圧して弾性変形させた状態で保護キャップ2を閉じてから押圧治具46を解除することによって、図6(a)の状態にセットできる。
【0031】
この分析用デバイス1を図8と図9に示すように、カバー基板4を下側にして分析装置100のロータ101にセットすることで、試料液の成分分析を行うことができる。
ロータ101の上面には溝102が形成されており、分析用デバイス1をロータ101にセットした状態では分析用デバイス1のカバー基板4に形成された回転支持部15と保護キャップ2に形成された回転支持部16が溝102に係合してこれを収容している。
【0032】
ロータ101に分析用デバイス1をセットした後に、ロータ101の回転させる前に分析装置のドア103を閉じると、セットされた分析用デバイス1は、ドア103の側に設けられた可動片104によって、ロータ101の回転軸心上の位置がバネ105の付勢力でロータ101の側に押さえられて、分析用デバイス1は、回転駆動手段106によって回転駆動されるロータ101と一体に回転する。107はロータ101の回転中の軸心を示している。保護キャップ2は注入口13の付近に付着した試料液が、分析中に遠心力によって外部へ飛散を防止するために取り付けられている。
【0033】
分析用デバイス1を構成する部品の材料としては、材料コストが安価で量産性に優れる樹脂材料が望ましい。前記分析装置100は、分析用デバイス1を透過した光を測定する光学的測定方法によって試料液の分析を行うため、ベース基板3およびカバー基板4の材料としては、PC,PMMA,AS,MSなどの透明性が高い合成樹脂が望ましい。
【0034】
また、希釈液容器5の材料としては、希釈液容器5内部に希釈液8を長期間封入しておく必要があるため、PP,PEなどの水分透過率の低い結晶性の合成樹脂が望ましい。保護キャップ2の材料としては、成形性のよい材料であれば特に問題がなく、ABS,PP,PEなどの安価な樹脂が望ましい。
【0035】
ベース基板3とカバー基板4との接合は、前記収容エリアに担持された試薬の反応活性に影響を与えにくい方法が望ましく、接合時に反応性のガスや溶剤が発生しにくい超音波溶着やレーザー溶着などが望ましい。
【0036】
また、ベース基板3とカバー基板4との接合によって両基板3,4の間に形成される微小な流路の毛細管力によって溶液を移送させる部分には、毛細管力を高めるための親水処理がなされている。具体的には、親水性ポリマーや界面活性剤などを用いた親水処理が行われている。ここで、親水性とは水との接触角が90°未満のことをいい、より好ましくは接触角40°未満である。
【0037】
図10は分析装置100の構成を示す。
この分析装置100は、ロータ101を回転させるための回転駆動手段106と、分析用デバイス1内の反応物にアクセスして分析する分析手段としての光学測定部108と、ロータ101の回転速度や回転方向および光学測定部108の測定タイミングなどを制御する制御手段109と、光学測定部108によって得られた信号を処理し測定結果を演算するための演算部110と、演算部110で得られた結果を表示するための表示部111とで構成されている。
【0038】
回転駆動手段106は、ロータ101を介して分析用デバイス1を回転軸心107の回りに任意の方向に所定の回転速度で回転させるだけではなく、所定の停止位置で回転軸心107を中心に所定の振幅範囲、所定の周期で左右に往復運動をさせて分析用デバイス1を揺動させることができるように構成されている。
【0039】
光学測定部108には、分析用デバイス1の測定セルに光を照射する光源112aと、光源112aから照射された光のうち、分析用デバイス1を通過した透過光の光量を検出するフォトディテクタ113aと、分析用デバイス1の測定セルとは別の測定部に光を照射する光源112bと、光源112bから照射された光のうち、分析用デバイス1を通過した透過光の光量を検出するフォトディテクタ113bとを備えている。
【0040】
回転駆動手段106は、分析用デバイス1をロータ101によって回転駆動して、注入口13から内部に取り込んだ試料液を、回転軸心107を中心に分析用デバイス1を回転させて発生する遠心力と、分析用デバイス1内に設けられた毛細管流路の毛細管力を用いて、分析用デバイス1の内部で溶液を移送していくよう構成されている。
【0041】
以下に、分析用デバイス1のマイクロチャネル構造を分析工程とともに詳しく説明する。
図11は分析用デバイス1の注入口13の付近を示している。
【0042】
図11(a)は注入口13を分析用デバイス1の外側から見た拡大図を示し、図11(b)は前記マイクロチャネル構造をロータ101の側からカバー基板4を透過して見たものである。
【0043】
注入口13は、ベース基板3とカバー基板4との間に形成された微小な隙間δの毛細管力の作用する誘導部17を介して、この誘導部17と同様に毛細管力の作用する隙間で必要量の試料液18を保持できる容積の試料液室19と接続されている。誘導部17の流れ方向と直交する断面形状(図11(b)のD−D断面)は、奥側が垂直な矩形ではなくて、図11(c)に示すように奥端ほどカバー基板4に向かって次第に狭くなる傾斜面20で形成されている。誘導部17と試料液室19と接続部にはベース基板3に凹部21を形成して通路の向きを変更する屈曲部22が形成されている。
【0044】
誘導部17から見て試料液室19を介してその先には、毛細管力が作用しない隙間の試料液保持室23が形成されている。試料液室19と屈曲部22および誘導部17の一部の側方には、一端が試料液保持室23に接続され、他端が大気に開放したキャビティ24が形成されている。
【0045】
図12,図13は試料液と希釈液の計量、混合、分配、試薬反応、測定にかかわるマイクロチャネル構成を示している。25a〜25g,25h,25i1,25i2,25j〜25nはベース基板3に形成された空気孔である。希釈液容器5から流れ出した希釈液が通過していく流路と、希釈液または受け入れた希釈液と試料液とを攪拌混合する混合室29の周辺を図13に示す。希釈液室11から流れ出た希釈液を、希釈液定量室27と混合室29に分配できるよう分配流路が次のように構成されている。
【0046】
混合室29よりも内周側に配置された希釈液定量室27は、排出流路26を介して希釈液室11と連結され、流入した希釈液を必要量だけ定量して希釈液の余剰分を溢流させる。希釈液定量室27から溢流した余剰分の希釈液は、溢流流路28を介して混合室29に分配される。
【0047】
また、希釈液定量室27の外周側は、サイフォン構造を有している第2連結流路41を介して混合室29に連結されている。混合室29の外周側底部のサイフォン構造を有している第3連結流路34aを介して、混合室29の外周側に流入口を設けた溢流室36bに連通している。溢流室36bは、毛細管力が作用する隙に形成された逆流防止流路35aを介して溢流室36a,36cに接続されている。また、第3連結流路34aのサイフォンの最内周位置よりも更に内周側には、混合室29での過剰量の希釈液を溢流室36aに溢流させる第4連結流路34bが設けられている。
【0048】
一方、混合室29の最外周底部からは、毛細管流路37を介して分配流路200(図21参照)に接続されている。この分配流路200は、ダミー流路38aと、内周側が直列に接続された複数のY字形流路で構成されるY字形流路群201と、ダミー流路38bとで形成されている。
【0049】
Y字形流路群201と外周側に向かって延びるダミー流路38a,38bは、何れも毛細管力が作用する隙で形成されている。ダミー流路38aはY字形流路群201の始端に接続され、ダミー流路38bはY字形流路群201の終端に接続されている。混合室29から毛細管流路37で吸い上げられた試料液は、ダミー流路38aの途中に供給されている。一端がY字形流路群201に接続されたダミー流路38aの他端は、溢流室36dに接続されている。
【0050】
計量・分配を行うY字形流路群201は、図20に示すように内周側の二つの屈曲部49a,49bと外周側の流路端50aとを一つのY字形流路として、屈曲部49b,49cを内周側とし流路端50bを外周側としたY字形流路、屈曲部49c,49dを内周側とし流路端50cを外周側としたY字形流路、屈曲部49d,49eを内周側とし流路端50dを外周側としたY字形流路、屈曲部49e,49fを内周側とし流路端50eを外周側としたY字形流路、屈曲部49f,49gを内周側とし流路端50fを外周側としたY字形流路とを、屈曲部49b〜49fにおいて連結した形状である。ダミー流路38aの内周側の端部は屈曲部49aに接続されている。ダミー流路38bの内周側の端部は屈曲部49gに接続されている。
【0051】
図21はベース基板3の表面の凹凸形状を示しており、ハッチング150で示す個所がカバー基板4との貼り合わせ面である。ハッチング151で示す個所がカバー基板4との貼り合わせ面よりも僅かに低く形成された個所を示しており、カバー基板4との貼り合わせ後に毛細管力が作用する隙となる個所である。
【0052】
屈曲部49a〜49gと、ダミー流路38a,38bの内周側の端部は周方向に沿って回転中心107から同一半径上に配置されている。例えば、分析デバイスの大きさがφ60mm、厚み5mmとした場合、前記Y字流路の幅が0.8mm、前記Y字流路の深さが0.2mmであって、屈曲部49a〜49gとダミー流路38a,38bの内周側の端部は回転中心107から半径12mmの位置に配置した。端部の半径位置は12mm±0.5mmで配置されることが望ましいが、12mm±1mm以内でも良い。
【0053】
流路端50a〜50fと、ダミー流路38a,38bの外周側の端部も、周方向に沿って回転中心107から同一半径上に配置されている。
屈曲部49a〜49gの内周端と希釈液室11との間のスペースには、毛細管流路37よりも深く毛細管力の作用しない隙の大気開放キャビティ48に連通している。大気開放キャビティ48は、空気孔25f,25nを介して大気と連通している。
【0054】
外周側の流路端50a〜50fは、その流路よりも十分深さの深く毛細管力の作用しない隙の測定セル40a〜40fに接続されている。ダミー流路38bの外終端は、その流路よりも十分深さの深く毛細管力の作用しない隙の測定セル40gに接続されている。
【0055】
このような構成にすることにより、遠心力によって毛細管流路37に満たされた混合液を分配する際に、混合液の排出と各Y字形状の流路の接続端においての混合液の移送タイミングを同一にすることができ、計量精度を向上することが可能となる。
【0056】
さらに、通常は混合室29と最も近接したY字形状の流路と、混合室29から最も離れた位置のY字流路では慣性力の影響により、計量性が悪化するが、ダミー流路38a,38bの形成により、計量精度の必要な領域では、精度よく計量された混合液が分配できる。このメカニズムは後述の“ 工程6”において説明する。
【0057】
分析工程を、回転駆動手段106の運転を制御している制御手段109の構成と共に説明する。
− 工程1 −
検査を受ける試料液が注入口13に点着された分析用デバイス1は、図14(a)に示すように試料液室19内に試料液を保持し、希釈液容器5のアルミシール9が破られた状態でロータ101にセットされる。
【0058】
− 工程2 −
ドア103を閉じた後にロータ101を時計方向(C2方向)に回転駆動すると、保持されている試料液が屈曲部22の位置で破断し、誘導部17内の試料液は保護キャップ2内に排出され、試料液室19内の試料液18は図14(b)に示すように試料液保持室23に流入して一定量が一時的に保持される。
【0059】
希釈液容器5から流出した希釈液8は、排出流路26を介して希釈液定量室27に流入する。なお、希釈液容器5は、アルミシール9でシールされている開口部7とは反対側の底部の形状が、図4(a)(b)に示すように円弧面32で形成され、かつ図14(b)に示す状態の希釈液容器5の液放出位置においては、図15に示すように円弧面32の中心mが回転軸心107よりも排出流路26側に近づくよう距離dだけオフセットするように形成されているため、この円弧面32に向かうように流れた希釈液8が円弧面32に沿って外側から開口部7に向かう流れ(矢印n方向)に変更されて、希釈液容器5の開口部7から効率よく希釈液室11に放出される。
【0060】
希釈液定量室27に流入した希釈液8が所定量を超えると、超えた希釈液8は溢流流路28を介して図14(b)に示すように混合室29に流れ込み、さらに混合室29に流入した希釈液8が所定量を超えると、超えた希釈液8は第3連結流路34a,第4連結流路34bおよびダミー流路38aを介して溢流室36a,36b,36c,36dに流れ込む。溢流室36a,36b,36cに流入した希釈液8は逆流防止流路35a,35bの毛細管力によって溢流室36a,36b,36cから流出しないように保持される。
【0061】
ここで、希釈液8は特定の波長域で規定の吸光度を有する溶液であり、混合室29に流入した希釈液8が混合室29に滞在している間に、希釈液8の吸光度が測定(一次測光)される。具体的には、分析用デバイス1を時計方向(C2方向)に回転駆動して、希釈液8だけが入った混合室29が光源112bとフォトディテクタ113bの間を通過するタイミングに、演算部110がフォトディテクタ113bの検出値を読み取る。図14(b)のP1が一次測光の光の透過位置を表している。
【0062】
第3連結流路34aは混合室29の最外周部から内周方向に屈曲部をもつサイフォン構造を有しており、第3連結流路34aの屈曲部を超える希釈液8が流入してくると、サイフォン効果によって混合室29内の希釈液8が溢流室36a,36b,36cに排出される。また、第3連結流路34aのさらに内周位置に所定量を超えた希釈液を排出するための第4連結流路34bを設けることで、過剰な希釈液が流入した際に混合室29から試料液保持室23へ流入するのを防いでいる。
【0063】
混合室29に滞在していた希釈液8は、時間の経過と共に溢流室36a,36b,36cにすべて排出されて、図16(a)に示すように試料液保持室23と、希釈液定量室27にそれぞれ所定量の試料液18と希釈液8が保持された状態になる。
【0064】
− 工程3 −
次に、ロータ101の回転を停止させると、試料液18は図16(b)に示すように試料液保持室23と混合室29を連結しているサイフォン形状を有する第1連結流路30に呼び水され、同様に、希釈液8も希釈液定量室27と混合室29を連結しているサイフォン形状を有する第2連結流路41に呼び水される。
【0065】
− 工程4 −
ロータ101を反時計方向(C1方向)に回転駆動すると、試料液保持室23の試料液18と希釈液定量室27の希釈液8は図17(a)に示すように混合室29に流入するとともに、混合室29で希釈血漿成分18aと血球成分18bとに遠心分離される。18cは希釈血漿成分18aと血球成分18bとの分離界面を表している。ここで、試料液18と希釈液8はリブ31に一旦衝突してから混合室29に流入させるので、試料液18中の血漿成分と希釈液8とを均一に攪拌できる。
【0066】
− 工程5 −
次に、ロータ101の回転を停止させると、希釈血漿成分18aは、混合室29の壁面に形成された毛細管キャビティ33に吸い上げられ、毛細管キャビティ33と連通する毛細管流路37を介して図17(b)に示すようにダミー流路38a,Y字形流路群201の各計量流路39a,39b,39c,39d,39e,39f,39gに流れて、計量流路39a〜39gに定量が保持される。
【0067】
なお、図18(a)に毛細管キャビティ33とその周辺の斜視図を示す。図18(a)におけるE−E断面を図18(b)に示す。この毛細管キャビティ33とその周辺を詳しく説明する。
【0068】
毛細管キャビティ33は、混合室29の底部29bから内周側に向かって形成されている。換言すると、毛細管キャビティ33の最外周の位置は、図17(a)に示す希釈血漿成分18aと血球成分18bとの分離界面18cよりも外周方向に伸長して形成されている。このように毛細管キャビティ33の外周側の位置を上記のように設定することによって、毛細管キャビティ33の外周端が、混合室29において分離された希釈血漿成分18aと血球成分18bに浸かっており、希釈血漿成分18aは血球成分18bに比べて粘度が低いため、希釈血漿成分18aの方が優先的に毛細管キャビティ33によって吸い出され、毛細管流路37とダミー流路38a、計量流路39a,39b,39c,39d,39e,39f,39gを介して測定セル40a〜40f,40gに向かって希釈血漿成分18aを移送できる。
【0069】
また、希釈血漿成分18aが吸い出された後、血球成分18bも希釈血漿成分18aの後を追って吸い出されるため、毛細管キャビティ33および毛細管流路37の途中までの経路を血球成分18bで置換することができ、ダミー流路38aおよび計量流路39a〜39gが希釈血漿成分18aで満たされると、毛細管流路37および毛細管キャビティ33内の液の移送も止まるため、ダミー流路38aおよび計量流路39a〜39gに血球成分18bが混入することはない。
【0070】
− 工程6 −
更に、ロータ101を反時計方向(C1方向)に回転駆動すると、図19(a)に示すように、計量流路39a〜39gとダミー流路に保持されていた希釈血漿成分18aは、大気と連通する大気開放キャビティ48との連結部である屈曲部49a,49b,49c,49d,49e,49f,49gの位置で破断して測定セル40a〜40f,40gに流れ込む。ここでは測定セル40a〜40fのそれぞれに同じ量の希釈血漿成分18aが流れ込む。
【0071】
また、このときダミー流路38aの希釈血漿成分18aは、溢流室36dと逆流防止通路35bを介して溢流室36c,36aに流れ込む。また、このとき混合室29内の試料液は、サイフォン形状の第3連結流路34aと溢流室36bを介して溢流室36a,36cに流れ込む。
【0072】
なお、混合室29で混合された試料液が、毛細管力によって複数のY字形状の毛細管流路とダミー流路38a,38bに充填された後、回転中心107を軸にして分析デバイス1を回転させると、充填されている試料液は遠心力により外周方向に接続された測定セル(40a〜40g)に移送される。その際に、試料液には分析デバイス1の回転方向とは逆方向に慣性力がかかるため、試料液は分析デバイスの円周方向にも移動しようとする力が発生する。
【0073】
例えば、図17(b)の状態から、図19(a)のC1の方向に分析デバイスを回転させた場合、複数のY字形状の毛細管流路とダミー流路に充填された試料液は、混合室の方に移送される力が発生するため、ダミー流路49gがない場合は、計量流路39fで計量された試料液が計量流路39eの方向に流れ込み測定セル40fに導入される試料液が減ってしまう。逆に図19(a)のC1と逆の方向C2に回転させた場合は、複数のY字形状の毛細管流路とダミー流路に充填された試料液は、円周方向の測定セル40g側に慣性力が発生するためダミー流路38bがない場合は、計量流路39eの試料液が計量流路39fに流れ込みそのまま測定セル40fに移送されてしまうため、測定セル40fの試料液が増加してしまう。さらに、ダミー流路38aがない場合は、混合室29や毛細管流路37に満たされた試料液が計量流路39aに流れ込みそのまま測定セル40aに移送されるため、測定セル40aの液量も増加してしまう。これに対して、ダミー流路38a,38bを形成したことにより、慣性力による試料液の移送分をダミー流路38a,38bで吸収および補給することができ、測定セル40a〜40fでは精度よく試料液を計量移送することが可能となる。
【0074】
測定セル40a〜40f,40gの形状は、遠心力の働く方向に伸長した形状で、具体的には、分析用デバイス1の回転中心から最外周に向かって分析用デバイス1の周方向の幅が細く形成されている。複数の測定セル40a〜40f,40gの外周側の底部は分析用デバイス1の同一半径上に配置されているため、複数の測定セル40a〜40f,40gを測定するのに同一波長の光源112aやそれに対応するフォトディテクタ113aを別の半径距離に複数個配置する必要が無く、装置のコストを削減できると共に、同一測定セル内に複数の異なる波長を用いて測定することもできるため、混合溶液の濃度に応じて最適な波長を選択することで測定感度を向上させることができる。
【0075】
さらに、各測定セル40a,40b,40d〜40fの周方向に位置する側壁の一側壁には、前記測定セルの外周位置から内周方向に伸長するように毛細管エリア47a,47b,47d,47e,47fが形成されている。図19(a)におけるF−F断面を図22(a)に示す。
【0076】
また、測定セル40cの周方向に位置する側壁の両側壁には、前記測定セルの外周位置から内周方向に伸長するように毛細管エリア47c1,47c2が形成されている。図19(a)におけるG−G断面を図22(b)に示す。
【0077】
なお、測定セル40gには測定セル40a〜40fに見られたような毛細管エリアは形成されていない。
毛細管エリア47aの吸い上げ可能な容量は、測定セル40aに保持される試料液を全て収容できる容量よりも少ない容量に形成されている。毛細管エリア47b,47d〜47fも同様に、それぞれの測定セル40b,40d〜40fに保持される試料液を全て収容できる容量よりも少ない容量に形成されている。測定セル40cの毛細管エリア47c1,47c2については、毛細管エリア47c1の吸い上げ可能な容量と毛細管エリア47c2の吸い上げ可能な容量との加算値が、測定セル40cに保持される試料液を全て収容できる容量に形成されている。測定セル40b〜40f,40gの光路長は互いに同じ長さに形成されている。
【0078】
また、図20に示すように毛細管エリア47a,47b,47c1,47c2,47d,47e,47fには、試料液と反応させる試薬T1が担持されている。
− 工程7 −
次に、分析用デバイス1の回転を減速または停止、または所定の停止位置で回転軸心107を中心に所定の振幅範囲、周期で左右に往復運動をさせて分析用デバイス1を揺動させることによって、各測定セル40a〜40fに移送された試料液または試薬と試料液の混合溶液が、毛細管力によって図19(b)に示すように毛細管エリア47a〜47fに吸い上げられ、この時点で試薬T1の溶解が開始され、希釈血漿成分18a内に含まれる特定の成分と試薬の反応が開始される。
【0079】
− 工程8 −
図19(b)に示したように、試料液または試薬と試料液の混合溶液が毛細管エリア47a〜47fに吸い上げられた状態から、分析用デバイス1の回転を加速させて、分析用デバイス1を反時計方向(C1方向)または時計方向(C2方向)に回転駆動すると、図19(a)に示すように、毛細管エリア47a〜47fに保持されていた液が遠心力によって、測定セル40a〜40fの外周側に移送することで、試薬T1と希釈血漿成分18aの攪拌が行われる。
【0080】
ここでは、工程7と工程8の動作を繰り返し行うことで、試薬と希釈血漿成分18aの攪拌を促進し、拡散のみの攪拌に比べて確実に且つ短時間で攪拌を行う。
上記の実施の形態1ではY字形流路群201の始端側の屈曲部49aにダミー流路38aを接続し、Y字形流路群201の終端側の屈曲部49gにダミー流路38bを接続したが、Y字形流路群201の始端側の屈曲部49aにダミー流路38aを接続し、Y字形流路群201の終端側の屈曲部49gにダミー流路38bを接続しない場合、またはY字形流路群201の始端側の屈曲部49aにダミー流路38aを接続せずに毛細管流路37から直接に屈曲部49aに試料液を供給し、Y字形流路群201の終端側の屈曲部49gにダミー流路38bを接続した場合であっても、従来例に比べて定量性の改善を実現できる。
【0081】
(実施の形態2)
図23と図24は本発明の実施の形態2を示す。
実施の形態1では分配流路200を、ダミー流路38aと、Y字形流路群201と、ダミー流路38bとで形成したが、この実施の形態2ではY字形流路群201が次のように変更されている点だけが実施の形態1とは異なっている。
【0082】
実施の形態2の分配流路200は、図23と図24に示すように、実施の形態1におけるY字形流路群201の屈曲部49a−49bの間に形成されカバー基板4と接合されていた小三角エリア(図23と図24に仮想線で図示)Nを無くした形状に変更されている。
【0083】
屈曲部49b−49cの間に形成されカバー基板4と接合されていた小三角エリアN,屈曲部49c−49dの間に形成されカバー基板4と接合されていた小三角エリアN,屈曲部49d−49eの間に形成されカバー基板4と接合されていた小三角エリアN,屈曲部49e−49fの間に形成されカバー基板4と接合されていた小三角エリアN,屈曲部49f−49gの間に形成されカバー基板4と接合されていた小三角エリアNも同様に無くした形状に変更されている。
【0084】
つまり、この形状の変更よって、分配流路200は、内周側の二つの屈曲部49a,49bと外周側の流路端50aとを一区間Rとして、これを複数を連結した多角形流路群202と、ダミー流路38a,38bとで形成されている。
【0085】
なお、図23,図24で図示された多角形流路群202の一区間Rの形状が、外周側に頂点をもつ三角形状であったが、内周側に比べて外周側の幅が狭くなった台形状であっても実現できる。
【0086】
上記の実施の形態2では多角形流路群202の始端側の屈曲部49aにダミー流路38aを接続し、多角形流路群202の終端側の屈曲部49gにダミー流路38bを接続したが、多角形流路群202の始端側の屈曲部49aにダミー流路38aを接続し、多角形流路群202の終端側の屈曲部49gにダミー流路38bを接続しない場合、または多角形流路群202の始端側の屈曲部49aにダミー流路38aを接続せずに毛細管流路37から直接に屈曲部49aに試料液を供給し、多角形流路群202の終端側の屈曲部49gにダミー流路38bを接続した場合であっても、従来例に比べて定量性の改善を実現できる。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明は、計量精度の必要な複数の分析を必要とする血液・尿・唾液などの生体液の医療分析検査装置などの用途に適用できる。
【符号の説明】
【0088】
1 分析用デバイス
3 ベース基板
4 カバー基板
5 希釈液容器
18 試料液
18a 希釈血漿成分
18b 血球成分
19 試料液室
20 傾斜面
21 凹部
22 屈曲部
23 試料液保持室
24 キャビティ
25a〜25h,25i1,25i2,25j〜25n 空気孔
26 排出流路
27 希釈液定量室
28 溢流流路
29 混合室
30 第1連結流路
34a 第3連結流路
34b 第4連結流路
35a,35b 逆流防止通路
36a,36b,36c,36d 溢流室
37 毛細管流路
38a,38b ダミー流路
39a,39b,39c,39d,39e,39f,39g 計量流路
40a,40b,40c,40d,40e,40f,40g 測定セル
41 第2連結流路
42 溝
43 孔
44 係止治具
44a 突起
45 切り欠き
46 押圧治具
47a,47b,47c1,47c2,47d,47e,47f 毛細管エリア
48 大気開放キャビティ
49a,49b,49c,49d,49e,49f,49g 屈曲部
50a〜50f 流路端
100 分析装置
200 分配流路
201 Y字形流路群
202 多角形流路群

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料液を遠心力によって測定セルに向かって移送するマイクロチャネル構造を有し、前記測定セルにおける液体にアクセスする読み取りに使用される分析用デバイスであって、
周方向に配置された複数の前記測定セルと、
前記測定セルよりも内周側に配置され、前記測定セルに試料液を分配する分配流路と
を有し、前記分配流路は、
内周側に2つの屈曲部が形成され外周側に流路端が形成されたY字形状の流路を1区間としこれを複数区間有し、隣接する前記屈曲部を接続し、外周側の前記流路端が前記測定セルに接続されたY字形流路群を有し、
かつ、内周側から外周側に延びるとともに毛細管力が作用する隙で前記Y字形流路群の始端側の屈曲部と前記Y字形流路群の終端側の屈曲部との少なくとも一方に接続されたダミー流路を設け、
前記屈曲部が回転中心から同一の半径位置に配置され、
前記流路端が回転中心から同一の半径位置に配置され、
前記Y字形流路群の始端側に供給され前記Y字形流路群の前記各区間に保持された試料液を、外周側の前記流路端を介して前記測定セルに遠心力によって移送し、前記測定セルに分配された試料液を分析する
分析用デバイス。
【請求項2】
前記Y字形流路群の複数の前記屈曲部と、前記ダミー流路の内周側の端部とが、回転中心からの距離が同一の半径位置に配置されている
請求項1記載の分析用デバイス。
【請求項3】
前記Y字形流路群の外周側の前記流路端の外周端と、前記ダミー流路の外周側の端部とが、回転中心からの距離が同一の半径位置に配置されている
請求項1記載の分析用デバイス。
【請求項4】
試料液を遠心力によって測定セルに向かって移送するマイクロチャネル構造を有し、前記測定セルにおける液体にアクセスするに際し、
周方向に配置された複数の前記測定セルよりも内周側に配置された分配流路が、内周側に2つの屈曲部が形成され外周側に流路端が形成されたY字形状の流路を1区間としこれを複数区間有し、隣接する前記屈曲部を接続し、外周側の前記流路端が前記測定セルに接続されたY字形流路群と、内周側から外周側に延びるとともに毛細管力が作用する隙で前記Y字形流路群の始端側の屈曲部と前記Y字形流路群の終端側の屈曲部との少なくとも一方に接続されたダミー流路とで形成され、
前記Y字形流路群の始端側に供給された試料液を、前記Y字形流路群の前記各区間と前記ダミー流路に毛細管力で吸い上げ、
前記Y字形流路群の前記各区間に保持された試料液を、外周側の前記流路端を介して前記測定セルに遠心力によって移送するとともに、前記遠心力に伴う慣性力による前記Y字形流路群における試料液の移送分を、前記ダミー流路によって吸収または補給して前記測定セルに定量の試料液を分配して分析する
分析方法。
【請求項5】
試料液を遠心力によって測定セルに向かって移送するマイクロチャネル構造を有し、前記測定セルにおける液体にアクセスする読み取りに使用される分析用デバイスであって、
周方向に配置された複数の前記測定セルと、
前記測定セルよりも内周側に配置され、前記測定セルに試料液を分配する分配流路と
を有し、前記分配流路は、
内周側に2つの屈曲部が形成され外周側に流路端が形成された多角形状の流路を1区間としこれを複数区間有し、隣接する前記屈曲部を接続し、外周側の前記流路端が前記測定セルに接続された多角形流路群を有し、
かつ、内周側から外周側に延びるとともに毛細管力が作用する隙で前記多角形流路群の始端側の屈曲部と前記多角形流路群の終端側の屈曲部との少なくとも一方に接続されたダミー流路を設け、
前記屈曲部が回転中心から同一の半径位置に配置され、
前記流路端が回転中心から同一の半径位置に配置され、
前記多角形流路群の始端側に供給され前記多角形流路群の前記各区間に保持された試料液を、外周側の前記流路端を介して前記測定セルに遠心力によって移送し、前記測定セルに分配された試料液を分析する
分析用デバイス。
【請求項6】
前記多角形流路群の複数の前記屈曲部と、前記ダミー流路の内周側の端部とが、回転中心からの距離が同一の半径位置に配置されている
請求項5記載の分析用デバイス。
【請求項7】
前記多角形流路群の外周側の前記流路端の外周端と、前記ダミー流路の外周側の端部とが、回転中心からの距離が同一の半径位置に配置されている
請求項5記載の分析用デバイス。
【請求項8】
試料液を遠心力によって測定セルに向かって移送するマイクロチャネル構造を有し、前記測定セルにおける液体にアクセスするに際し、
周方向に配置された複数の前記測定セルよりも内周側に配置された分配流路が、内周側に2つの屈曲部が形成され外周側に流路端が形成された多角形状の流路を1区間としこれを複数区間有し、隣接する前記屈曲部を接続し、外周側の前記流路端が前記測定セルに接続された多角形流路群と、内周側から外周側に延びるとともに毛細管力が作用する隙で前記多角形流路群の始端側の屈曲部と前記多角形流路群の終端側の屈曲部との少なくとも一方に接続されたダミー流路とで形成され、
前記多角形流路群の始端側に供給された試料液を、前記多角形流路群の前記各区間と前記ダミー流路に毛細管力で吸い上げ、
前記多角形流路群の前記各区間に保持された試料液を、外周側の前記流路端を介して前記測定セルに遠心力によって移送するとともに、前記遠心力に伴う慣性力による前記多角形流路群における試料液の移送分を、前記ダミー流路によって吸収または補給して前記測定セルに定量の試料液を分配して分析する
分析方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2011−21955(P2011−21955A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−166212(P2009−166212)
【出願日】平成21年7月15日(2009.7.15)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】