説明

分析装置、分析方法および分析プログラム

【課題】検出したピンポンハンドオーバの傾向を判別し、適切なエリア設計を行うことが可能な分析装置を提供すること。
【解決手段】本願の開示する分析装置は、ピンポンハンドオーバが検出された時刻毎の移動端末の位置、移動方位および移動速度を含むピンポンHO履歴情報と、各時刻における通信先基地局の位置とに基づいて、時刻毎に進入速度を求め、また、ピンポンHO履歴情報と、各時刻におけるハンドオーバ元基地局の位置とに基づいて、時刻毎に脱出速度を求めるUE移動特性分析部45と、時刻毎に求められる進入速度および脱出速度に基づいて、ピンポンハンドオーバの傾向を分析するピンポンHO傾向分析部44と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動端末における無線通信履歴を分析する分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話等の移動端末は、通信中に歩行や交通機関等の移動手段により移動した場合であっても、ハンドオーバ(以下、HOと呼ぶ場合もある)により移動通信ネットワークとの接続を維持することが可能である。ハンドオーバとは、移動端末の移動に応じて接続先の基地局を切り替える技術であり、移動端末は、この技術により途切れることなく通信を継続することができる。一方で、2つのセル間(基地局間やバンド間等)のハンドオーバを短周期で繰り返す現象は、ピンポンハンドオーバと呼ばれる。このピンポンハンドオーバは、移動通信ネットワークにおけるトラヒックの増大の原因となり、また、輻輳や通信品質低下の原因ともなっている。
【0003】
上記トラヒックの増大,輻輳,通信品質低下の原因となっているピンポンハンドオーバを回避可能な従来の技術として、以下の技術が開示されている。たとえば、従来の移動通信ネットワークにおいて、基地局は、移動端末の移動特性情報等に基づいて移動端末のピンポンハンドオーバを検出することが可能である。そのため、ハンドオーバ元の基地局は、ピンポンハンドオーバを回避するために、ハンドオーバ先のセルを、自セルと異なるセル層(マクロセル,マイクロセル,ピコセル等)に切り替えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2010−501132号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の移動通信ネットワークにおいては、同一の大きさのセル層間、たとえば、マクロセル間でハンドオーバを行う場合にはエリア境界上のピンポンハンドオーバを回避することができない。
【0006】
また、移動通信ネットワークにおいては、同一の大きさのセル層間のエリア境界は必ず存在する。そして、エリア境界に沿って移動する移動端末のピンポンハンドオーバを回避することは困難である。そのため、エリア設計では、エリア境界を、できるだけ人の移動の少ない位置に設定することが重要である。一方、ピンポンハンドオーバの傾向によりエリア設計の設定条件が異なるため、たとえば、エリア境界に沿った移動以外でのピンポンハンドオーバについては、エリア境界に沿って移動する移動端末のピンポンハンドオーバを回避するための設定条件は適用できない。しかしながら、従来の移動通信ネットワークにおいて検出されるピンポンハンドオーバは、エリア境界に沿って移動する移動端末のピンポンハンドオーバなのか、それ以外の移動によるピンポンハンドオーバなのか、を判別することができない。すなわち、従来の移動通信ネットワークにおいては、ピンポンハンドオーバの検出は行っているが分析はしていないため、ピンポンハンドオーバの傾向が判別できず、適切なエリア設計を行うことが困難である、という問題があった。
【0007】
開示の技術は、上記に鑑みてなされたものであって、適切なエリア設計を実現可能な分析装置、分析方法および分析プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願の開示する分析装置は、一つの態様において、ピンポンハンドオーバが検出された時刻毎の移動端末の位置、移動方位および移動速度を含む通信履歴情報と、当該各時刻における通信先基地局の位置とに基づいて、前記時刻毎に、通信先基地局へ近づく速度の指標となる進入速度を求め、また、前記通信履歴情報と、前記各時刻におけるハンドオーバ元基地局の位置とに基づいて、前記時刻毎に、ハンドオーバ元基地局から離れる速度の指標となる脱出速度を求める第1の分析部と、前記時刻毎に求められる進入速度および脱出速度に基づいて、ピンポンハンドオーバの傾向を分析する第2の分析部と、を有する。
【発明の効果】
【0009】
本願の開示する分析装置の一つの態様によれば、検出したピンポンハンドオーバの傾向を判別することができるので、適切なエリア設計を行うことができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、移動通信システムの構成例を示す図である。
【図2】図2は、分析装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【図3】図3は、分析装置の機能ブロック構成の一例を示す図である。
【図4】図4は、分析装置による分析方法を示すシーケンス図である。
【図5】図5は、無線通信履歴情報の一例(事例#1)を示す図である。
【図6】図6は、HO履歴情報の一例(事例#1)を示す図である。
【図7−1】図7−1は、ピンポンHO履歴情報の一例(事例#1)を示す図である。
【図7−2】図7−2は、事例#1のピンポンハンドオーバの発生箇所を示す図である。
【図8】図8は、基地局情報の一例を示す図である。
【図9−1】図9−1は、移動端末から見た基地局の方位の求め方の一例を示す図である。
【図9−2】図9−2は、移動端末から見た基地局の方位の求め方の一例を示す図である。
【図9−3】図9−3は、移動端末から見た基地局の方位の求め方の一例を示す図である。
【図9−4】図9−4は、移動端末から見た基地局の方位の求め方の一例を示す図である。
【図10】図10は、進入角度および脱出角度の求め方の一例を示す図である。
【図11】図11は、ピンポンHO履歴情報の一例(事例#1)を示す図である。
【図12】図12は、無線通信履歴情報の一例(事例#2)を示す図である。
【図13】図13は、HO履歴情報の一例(事例#2)を示す図である。
【図14−1】図14−1は、ピンポンHO履歴情報の一例(事例#2)を示す図である。
【図14−2】図14−2は、事例#2のピンポンハンドオーバの発生箇所を示す図である。
【図15】図15は、ピンポンHO履歴情報の一例(事例#2)を示す図である。
【図16】図16は、事例#1における標準偏差の算出過程を示す図である。
【図17】図17は、事例#2における標準偏差の算出過程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本願の開示する分析装置、分析方法および分析プログラムの実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0012】
図1は、移動通信システムの構成例を示す図である。このシステムは、移動端末の無線通信履歴を分析する分析装置1と、WCDMA(Wideband Code Division Multiple Access)を採用する3Gネットワークと、次世代通信規格のLTE(Long Term Evolution)を採用するLTEネットワークとを有する。3Gネットワークは、一例として、移動端末(UE)11と基地局(NodeB)12,13と無線ネットワーク制御装置(RNC)14と3Gコアネットワーク15を含む移動通信ネットワークである。また、LTEネットワークは、一例として、移動端末(UE)21と基地局(eNodeB)22,23とLTEコアネットワーク24を含む移動通信ネットワークである。
【0013】
図1において、携帯電話に代表される移動通信ネットワーク(3Gネットワーク,LTEネットワーク)では、基地局と移動端末が、無線通信インターフェースで接続する。そして、移動端末が、自身の移動通信ネットワーク、およびPSTN(公衆交換電話網)またはインターネット網を介して、音声通信,電子メール,ウェブサイトアクセス等の無線通信を行う。この際、移動端末は、通信中に歩行や交通機関等の移動手段により移動した場合であっても、ハンドオーバにより、移動通信ネットワークとの接続を維持することが可能であり、通信を継続することができる。たとえば、WCDMAを採用する3Gネットワークにおいては、基地局12,13と3Gコアネットワーク15との間の無線ネットワーク制御装置14がハンドオーバの制御を行う、中央集中型のアーキテクチャが用いられている。一方、LTEネットワークでは、ハンドオーバを管理するためのノードを持たず基地局のローカル制御により基地局間でハンドオーバを実現する、分散型のアーキテクチャが用いられている。
【0014】
また、移動端末11,21は、時刻情報,緯度経度で表現された位置情報,移動速度,移動方位,通信先基地局セルID等を含む通信履歴を定期的に収集し、収集した通信履歴を無線通信履歴情報として外部メディアに蓄積する。分析装置1では、外部メディアに記憶された無線通信履歴情報を読み出し、その情報に基づいて移動端末のピンポンハンドオーバを検出し、さらに、検出したピンポンハンドオーバの傾向を分析する。
【0015】
図2は、本実施例の分析装置1のハードウェア構成の一例を示す図である。図2において、本実施例の分析装置1は、CPU(Central Processing Unit)31とメモリ32と表示部33と外部メディアI/F部34と記憶部35とHID(Human Interface Device)36とを有する。CPU31は、メモリ32に記憶された「ピンポンハンドオーバの傾向を分析するためのプログラム(以下、分析プログラムと呼ぶ)」に関する各種処理を実行する。メモリ32には、予め決められた手順で記憶部35から読みされた分析プログラムが記憶される。表示部33は、ピンポンハンドオーバの傾向の分析結果を表示する。外部メディアI/F部34は、外部メディアに記憶されている無線通信履歴情報を読み出して入力する。記憶部35は、ハードディスクやフラッシュメモリ等であり、OS(基本ソフト)、分析プログラム、および基地局情報等の各種データが記憶される。また、記憶部35には、処理の過程で得られる、後述するHO履歴情報やピンポンHO履歴情報が記憶される。HID36は、キーボードやマウス等のヒューマンインタフェースであり、たとえば、ピンポンハンドオーバの傾向の分析指示等のユーザ操作を受け付ける。
【0016】
つづいて、本実施例の分析装置1の動作を図面に従い詳細に説明する。図3は、本実施例の分析装置1の機能ブロック構成の一例を示す図である。図3において、本実施例の分析装置1は、CPU31により実現される各種の機能ブロックを含む。具体的には、分析装置1は、HO分析制御部41とHO履歴抽出部42とピンポンHO判定部43とピンポンHO傾向分析部44とUE移動特性分析部45を機能ブロックとして含んでいる。また、分析装置1は、記憶部35に対応する構成として、基地局情報記憶部46とHO履歴情報記憶部47とピンポンHO履歴情報記憶部48を含むこととする。
【0017】
図3において、HO分析制御部41は、ユーザ操作によりHID36からピンポンハンドオーバの傾向の分析指示を受け付けた場合に、ピンポンハンドオーバの傾向を分析するための制御を開始する。そして、HO分析制御部41は、分析結果として得られる情報を表示部33に表示するための制御を行う。HO履歴抽出部42は、外部メディアI/F部34から読み出した無線通信履歴情報から、ハンドオーバが行われていることを示す履歴(レコード)のみを抽出し、抽出したレコードに基づいてHO履歴情報を作成する。無線通信履歴情報は、たとえば、時刻,位置情報,移動速度,移動方位,通信先基地局セルID等を含むレコードの蓄積であり、移動端末(11,21等)で定期的に測定されたものである。ピンポンHO判定部43は、HO履歴情報から、ピンポンハンドオーバが行われていることを示すレコードのみを抽出し、抽出したレコードに基づいてピンポンHO履歴情報を作成する。
【0018】
また、ピンポンHO傾向分析部44は、ピンポンHO履歴情報に基づいてピンポンハンドオーバが行われていることを検出した場合に、UE移動特性分析部45に対し、ハンドオーバ時刻毎の基地局進入情報および基地局脱出情報の算出を指示する。そして、UE移動特性分析部45から得られる基地局進入情報および基地局脱出情報に基づいて、ピンポンハンドオーバの傾向を分析する。UE移動特性分析部45は、ピンポンHO傾向分析部44からの指示に従い、ピンポンHO履歴情報に基づきハンドオーバ時刻毎の基地局進入情報および基地局脱出情報を算出する。
【0019】
また、基地局情報記憶部46には、移動通信ネットワーク内の複数の基地局に関する情報が記憶される。具体的には、基地局情報記憶部46には、少なくとも、基地局を無線上で識別するための情報である基地局セルIDと、このIDに対応する基地局の位置情報、が記憶される。HO履歴情報記憶部47には、HO履歴抽出部42にて生成されたHO履歴情報が記憶される。HO履歴情報は、たとえば、時刻,位置情報,移動速度,移動方位,通信先基地局セルID,HO元基地局セルID等を含む履歴情報である。ピンポンHO履歴情報記憶部48には、HO履歴情報の内容に、さらに、基地局進入情報,基地局脱出情報等を加えた情報である、ピンポンHO履歴情報が記憶される。
【0020】
ここで、本実施例の分析装置1による分析方法を図4に示す動作シーケンスに従って説明する。図4は、本実施例の分析装置1による分析方法を示すシーケンス図である。なお、本実施例の分析方法は、図1に示す3Gネットワーク,LTEネットワークのいずれの移動通信ネットワークにおいても適用可能である。
【0021】
まず、ユーザ操作によりHID36からピンポンハンドオーバの傾向の分析指示を受け付けたHO分析制御部41は、HO履歴抽出部42に対し、HO履歴情報の生成を指示する(S1)。
【0022】
HO履歴抽出部42は、外部メディアI/F部34から無線通信履歴情報を読み出し、読み出した無線通信履歴情報から、ハンドオーバが行われていることを示すレコードを抽出する。そして、HO履歴抽出部42は、抽出したレコードに基づいてHO履歴情報を作成する(S2)。図5は、無線通信履歴情報の一例(事例#1)を示す図である。図5では、無線通信履歴情報として、定期的(たとえば2秒毎)に移動端末で記録された位置情報(緯度(度),経度(度)),移動速度(m/sec),移動方位(度),通信先基地局セルID(200,201,202等)が、時刻ごとに記録されている。なお、移動方位は、0度〜360度の値をとり、北を0度,東を90度,南を180度,西を270度で表示する。したがって、HO履歴抽出部42は、図5に示す無線通信履歴情報における時刻毎のレコードを参照し、通信先基地局セルIDが変更されているレコードがある場合に、ハンドオーバが行われたものと判断する。そして、HO履歴抽出部42は、変更された後の新たな通信先基地局セルIDに対応する無線通信履歴情報のレコードをHO履歴情報記憶部47に記憶する。さらに、HO履歴抽出部42は、記憶したレコードに関連付けて、変更される直前の通信先基地局セルIDをHO元基地局セルIDとしてHO履歴情報記憶部47に記憶する。図6は、HO履歴情報記憶部47に記憶されたHO履歴情報の一例(事例#1)を示す図である。図6では、HO履歴情報として、ハンドオーバが行われた時刻毎に、位置情報(緯度(度),経度(度)),移動速度(m/sec),移動方位(度),通信先基地局セルID,HO元基地局セルID(200,201,202等)が記録されている。
【0023】
無線通信履歴情報のすべてのレコードについてハンドオーバが行われたかどうかを判断し、HO履歴情報の生成が完了した後、HO履歴抽出部42は、その旨をHO分析制御部41に通知する(S3)。そして、HO履歴情報の生成が完了した旨の通知を受けた場合、HO分析制御部41は、ハンドオーバが行われていたことを示す分析結果を表示部33に出力する(S4,Yes、S5)。なお、ハンドオーバが行われていない場合、HO履歴抽出部42は、その旨をHO分析制御部41に通知し(S3)、HO分析制御部41はその旨を分析結果として表示部33に出力する(S4,No、S5)。
【0024】
また、HO履歴情報の生成が完了した旨の通知を受けたHO分析制御部41は、つぎに、ピンポンHO判定部43に対し、ピンポンハンドオーバが発生しているかどうかの判断を指示する(S4,Yes、S6)。
【0025】
ピンポンHO判定部43は、HO履歴情報記憶部47からHO履歴情報を読み出し、読み出したHO履歴情報を参照して、通信先基地局セルIDが特定時間内に繰り返し切り替えられているレコードを検索する。そして、ピンポンHO判定部43は、検索結果に基づいてピンポンHO履歴情報を生成する(S7)。具体的には、ピンポンHO判定部43は、まず、読み出したHO履歴情報から1番上のレコードとその次のレコードを抽出し、たとえば、1番上のレコードのHO元基地局セルIDが次のレコードの通信先基地局セルIDと一致しているかどうかを確認する。そして、一致している場合において、さらに、1番上のレコードと次のレコードとの時間差が予め定めておいた一定時間以内であれば、ピンポンHO判定部43は、この2つのレコードのハンドオーバの関係をピンポンハンドオーバと見なす。一方、一致していない場合や、一致していても1番上のレコードと次のレコードとの時間差が上記一定時間以内でない場合には、ピンポンHO判定部43は、この2つのレコードのハンドオーバの関係はピンポンハンドオーバではないと判定する。その後、ピンポンHO判定部43は、上記のような確認および判定処理を、HO履歴情報の2番目と3番目のレコード,3番目と4番目のレコード,…の順に、HO履歴情報のすべてのレコードに対して行う。なお、隣接するレコードの関係ではない場合であっても、上記一定時間内で一致していることが確認できれば、ピンポンハンドオーバであると判断してもよい。たとえば、特定のレコードのHO元基地局セルIDと次のその次のレコードの通信先基地局セルIDとが上記一定時間以内で一致していれば、この2つのレコードのハンドオーバの関係をピンポンハンドオーバと見なす。
【0026】
ここで、図6のHO履歴情報を用いて、ピンポンハンドオーバが発生しているかどうかの判断処理を具体的に説明する。本実施例では、上記一定時間を、一例として3秒とする。たとえば、1番上のレコードのHO元基地局セルIDと2番目のレコードの通信先基地局セルIDは「201」で一致しているが、時間差が3秒以内ではないので、ピンポンHO判定部43は、ピンポンハンドオーバが発生していないと判断する。また、2番目のレコードのHO元基地局セルIDと3番目のレコードの通信先基地局セルIDは一致していないので、ピンポンHO判定部43は、ここでもピンポンハンドオーバが発生していないと判断する。一方、3番目のレコードのHO元基地局セルIDと4番目のレコードの通信先基地局セルIDは「201」で一致し、かつ各レコードの時間差が3秒以内であるので、ピンポンHO判定部43は、ここではピンポンハンドオーバが発生していると判断する。そして、ピンポンHO判定部43は、ピンポンハンドオーバが発生していると判断した2つのレコードをピンポンHO履歴情報記憶部47に記憶する。図7−1は、ピンポンHO履歴情報記憶部48に記憶されたピンポンHO履歴情報の一例(事例#1)を示す図である。図7−1では、ピンポンHO履歴情報の生成過程として、ハンドオーバが行われた時刻毎に、位置情報(緯度(度),経度(度)),移動速度(m/sec),移動方位(度),通信先基地局セルID,HO元基地局セルIDが記憶されている。
【0027】
ステップS7において、HO履歴情報のすべてのレコードについてピンポンハンドオーバの発生の有無を判断し、ピンポンHO履歴情報の生成が完了した後、ピンポンHO判定部43は、その旨をHO分析制御部41に通知する(S8)。そして、HO分析制御部41は、ピンポンハンドオーバの発生の有無の判断結果として、たとえば、図7−1に示すピンポンHO履歴情報に基づいてピンポンハンドオーバの発生箇所を表示部33に表示する(S9,Yes、S5)。図7−2は、事例#1のピンポンハンドオーバの発生箇所を示す図であり、図7−1に示す7箇所の位置でピンポンハンドオーバが発生していることがわかる。なお、ピンポンハンドオーバが発生していない場合、ピンポンHO判定部43は、その旨をHO分析制御部41に通知し(S8)、HO分析制御部41はその旨を分析結果として表示部33に出力する(S9,No、S5)。
【0028】
また、HO分析制御部41は、ピンポンHO履歴情報の生成完了を通知された場合(S9,Yes)、ピンポンHO傾向分析部44に対し、ピンポンハンドオーバの傾向分析を指示する(S10)。そして、この指示を受けたピンポンHO傾向分析部44は、UE移動特性分析部45に対し、移動端末の移動特性の分析を指示する(S11)。
【0029】
UE移動特性分析部45は、ピンポンHO履歴情報記憶部48からピンポンHO履歴情報のレコードを順に読み出し、レコード毎に移動端末の移動特性を分析する(S12)。本実施例では、移動特性の分析として、進入角度と進入速度を含む基地局進入情報、および脱出角度と脱出速度を含む基地局脱出情報を算出する。
【0030】
ここで、UE移動特性分析部45による基地局進入情報および基地局脱出情報の算出処理について、詳細に説明する。UE移動特性分析部45は、まず、ピンポンHO履歴情報記憶部48から読み出したレコードから、移動端末の位置情報(緯度、経度)を抽出する。つぎに、UE移動特性分析部45は、上記読み出したレコードから通信先基地局セルIDを抽出し、そのIDに対応する位置情報(緯度、経度)を基地局情報記憶部46から読み出す。図8は、基地局情報記憶部46に記憶された基地局情報の一例を示す図である。図8では、基地局セルIDと位置情報(緯度、経度)が基地局毎に記憶されている。
【0031】
その後、UE移動特性分析部45は、移動端末の位置情報と通信先基地局の位置情報に基づいて、移動端末−通信先基地局間の距離D(1)と経度差D(2)を算出する。そして、UE移動特性分析部45は、上記で算出した距離D(1)と経度差D(2)に基づいて、移動端末から見た通信先基地局の方位(θ)を算出する。
【0032】
また、UE移動特性分析部45は、上記の処理でピンポンHO履歴情報記憶部48から読み出したレコードから、HO元基地局セルIDを抽出し、そのIDに対応する位置情報(緯度、経度)を基地局情報記憶部46から読み出す。その後、UE移動特性分析部45は、移動端末の位置情報とHO元基地局の位置情報に基づいて、移動端末−HO元基地局間の距離D(1)と経度差D(2)を算出する。そして、UE移動特性分析部45は、上記で算出した距離D(1)と経度差D(2)に基づいて、移動端末から見たHO元基地局の方位(θ)を算出する。
【0033】
具体的には、UE移動特性分析部45は、移動端末から見た通信先基地局の方位(θ)および移動端末から見たHO元基地局の方位(θ)を、以下のように算出する。なお、以下の方位(θ)の算出の説明では、通信先基地局およびHO元基地局を単に基地局と呼ぶ。また、本実施例では、移動端末の緯度を「Lat(1)」とし、移動端末の経度を「Lon(1)」とし、基地局の緯度を「Lat(2)」とし、基地局の経度を「Lon(2)」とする。また、移動端末−基地局間の距離D(1)は、OSのライブラリで提供されている「API distanceBetween」を用いて、下記(1)式に従い算出される。また、移動端末−HO元基地局間の経度差D(2)についても、同様に下記(2)式に従い算出される。
D(1)=API distanceBetween(Lat(1),Lon(1),Lat(2),Lon(2))…(1)
D(2)=API distanceBetween(Lat(2),Lon(1),Lat(2),Lon(2))…(2)
【0034】
たとえば、基地局が北東方向に存在する場合、すなわち、「Lon(1)<Lon(2)」かつ「Lat(1)<Lat(2)」の場合、移動端末から見た基地局の方位(θ)は、図9−1のように表すことができる。図9−1は、移動端末から見た基地局の方位(θ)の求め方の一例を示す図である。すなわち、D(1),D(2),θについては、下記(3)式の関係が成立するため、移動端末から見た基地局の方位(θ)は、下記(4)式のように表すことができる。
D(2)/D(1)=sin(θ) …(3)
θ=arcsin(D(2)/D(1)) …(4)
【0035】
また、基地局が北西方向に存在する場合、すなわち、「Lon(2)<Lon(1)」かつ「Lat(1)<Lat(2)」の場合、移動端末から見た基地局の方位(θ)は、図9−2のように表すことができる。図9−2は、移動端末から見た基地局の方位(θ)の求め方の一例を示す図である。すなわち、D(1),D(2),φ(φは「θ=φ−360°」の関係を有する角度を表す)については、下記(5)式の関係が成立するため、移動端末から見た基地局の方位(θ)は、下記(6)式のように表すことができる。
φ=arcsin(D(2)/D(1)) …(5)
θ=arcsin(D(2)/D(1))−360° …(6)
【0036】
また、基地局が南東方向に存在する場合、すなわち、「Lon(1)<Lon(2)」かつ「Lat(2)<Lat(1)」の場合、移動端末から見た基地局の方位(θ)は、図9−3のように表すことができる。図9−3は、移動端末から見た基地局の方位(θ)の求め方の一例を示す図である。すなわち、D(1),D(2),φ(φは「θ=180°−φ」の関係を有する角度を表す)については、下記(7)式の関係が成立するため、移動端末から見た基地局の方位(θ)は、下記(8)式のように表すことができる。
φ=arcsin(D(2)/D(1)) …(7)
θ=180°−arcsin(D(2)/D(1)) …(8)
【0037】
また、基地局が南西方向に存在する場合、すなわち、「Lon(2)<Lon(1)」かつ「Lat(2)<Lat(1)」の場合、移動端末から見た基地局の方位(θ)は、図9−4のように表すことができる。図9−4は、移動端末から見た基地局の方位(θ)の求め方の一例を示す図である。すなわち、D(1),D(2),φ(φは「θ=180°+φ」の関係を有する角度を表す)については、下記(9)式の関係が成立するため、移動端末から見た基地局の方位(θ)は、下記(10)式のように表すことができる。
φ=arcsin(D(2)/D(1)) …(9)
θ=180°+arcsin(D(2)/D(1)) …(10)
【0038】
上記のように移動端末から見た基地局の方位(θ)を算出したUE移動特性分析部45は、つぎに、方位(θ)と移動端末の移動方位(図10の「→」に相当)に基づいて、進入角度および脱出角度を算出する。図10は、進入角度および脱出角度の求め方の一例を示す図である。図10では、一例として、図1の移動端末21が、基地局22から基地局23へハンドオーバを行った場合を想定する。本実施例では、UE移動特性分析部45が、移動端末21を中心にかつ通信先基地局である基地局23の方位を基点として、基地局23の方位を時計回りに移動端末21の移動方位まで回転したときの角度を求める(図10の進入角度に相当)。すなわち、UE移動特性分析部45では、上記の角度の求め方に従い、基地局23の方位と移動端末21の移動方位との差分である進入角度を算出する。
【0039】
そして、UE移動特性分析部45は、上記で算出した進入角度および移動端末21の移動速度に基づいて、下記(11)式のように進入速度を算出する。なお、進入速度は、通信先基地局へ近づく速度を表すものである。
進入速度=COS(進入角度)×移動速度 …(11)
【0040】
また、本実施例では、UE移動特性分析部45が、移動端末21を中心にかつHO元基地局である基地局22の方位を基点として、基地局22の方位を時計回りに移動端末21の移動方位まで回転したときの角度を求める(図10の脱出角度に相当)。すなわち、UE移動特性分析部45は、上記の角度の求め方に従い、基地局22の方位と移動端末21の移動方位との差分である脱出角度を算出する。
【0041】
そして、UE移動特性分析部45は、上記で算出した脱出角度および移動端末21の移動速度に基づいて、下記(12)式のように脱出速度を算出する。なお、脱出速度は、HO元基地局から離れる速度を表すものである。
脱出速度=−COS(脱出角度)×移動速度 …(12)
【0042】
本実施例のUE移動特性分析部45では、上記で説明した基地局進入情報および基地局脱出情報の算出処理を、ピンポンHO履歴情報記憶部48から順に読み出したすべてのレコードについて実行する(S12)。そして、UE移動特性分析部45は、レコード毎に算出した基地局進入情報および基地局脱出情報を、ピンポンHO履歴情報記憶部48の対応する欄にそれぞれ記憶し(S12)、ピンポンHO履歴情報の生成を完了させる。図11は、ピンポンHO履歴情報記憶部48に記憶されたピンポンHO履歴情報の一例(事例#1)を示す図である。図11では、ピンポンHO履歴情報の生成過程として得られた図7−1の情報に加え、さらに、各レコードに対応した基地局進入情報および基地局脱出情報が記憶されている。
【0043】
その後、UE移動特性分析部45は、移動端末の移動特性の分析が完了した旨をピンポンHO傾向分析部44に通知する(S13)。
【0044】
つぎに、ピンポンHO傾向分析部44は、ピンポンHO履歴情報記憶部48に記憶されたピンポンHO履歴情報に基づいて、ピンポンハンドオーバの傾向を分析する(S14〜S17)。本実施例では、分析処理として、セルの境界であるエリア境界に沿って移動したときに発生したピンポンハンドオーバであるのか、エリア境界に沿った移動以外で発生したピンポンハンドオーバであるのか、を判断する。
【0045】
具体的には、まず、ピンポンHO傾向分析部44は、ピンポンHO履歴情報の各レコードに含まれる進入速度、脱出速度の情報を読み出す。そして、ピンポンHO傾向分析部44は、読み出した進入速度に基づいて、通信先基地局に近づいているにもかかわらず他の基地局へハンドオーバを行っているケースを、ピンポンHO履歴情報のレコード毎に調査する(S14)。また、ピンポンHO傾向分析部44は、読み出した脱出速度に基づいて、HO元基地局から離れていっているにもかかわらずその基地局へハンドオーバを行っているケースを、ピンポンHO履歴情報のレコード毎に調査する(S14)。すなわち、ここでは、移動端末が好ましくないハンドオーバを行っているかどうかをレコード毎に分析している。なお、本実施例では、上記の調査を行う上で、判断の基準となるしきい値を導入する。たとえば、進入速度が−3m/sec以下の場合に、ピンポンHO傾向分析部44は、通信先基地局に近づいているにもかかわらず他の基地局へハンドオーバを行っているケース、であると判断する。また、脱出速度が−3m/sec以下の場合に、ピンポンHO傾向分析部44は、HO元基地局から離れていっているにもかかわらずその基地局へハンドオーバを行っているケース、であると判断する。図11には、ピンポンHO履歴情報のすべてのレコードについて調査が完了した状態、が示されている。調査の結果、ピンポンHO傾向分析部44は、実線で囲われたレコードを上記の好ましくないハンドオーバであると判断する。
【0046】
その後、ピンポンHO傾向分析部44は、図11に示すピンポンHO履歴情報を参照し、上記の好ましくないハンドオーバの割合が、予め決めておいた割合以下であるかどうかを確認する(S15)。たとえば、移動端末がエリア境界に沿って移動した場合には、進入速度および脱出速度は、0に近い値をとる。一方で、エリア境界に沿った移動以外の移動の場合には、基地局に近づく方向への移動や、基地局から離れる方向への移動が想定されるため、進入速度および脱出速度は、エリア境界に沿った移動よりも大きい値をとる。そのため、進入速度や脱出速度が−3m/sec以下となる割合は、エリア境界に沿った移動以外で発生したピンポンハンドオーバの方が必然的に大きくなる。そこで、本実施例では、エリア境界に沿って移動したときに発生したピンポンハンドオーバか、エリア境界に沿った移動以外で発生したピンポンハンドオーバか、を判断するために、好ましくないハンドオーバの割合のしきい値を予め決めておく。本実施例では、上記の割合のしきい値を、たとえば、4割とする。なお、このしきい値は、判断の精度に応じて適宜変更可能である。
【0047】
したがって、上記の確認の結果、好ましくないハンドオーバの割合が4割以下の場合(S15,Yes)、ピンポンHO傾向分析部44は、エリア境界に沿って移動したときに発生したピンポンハンドオーバである、と判断する(S16)。一方、4割を超える場合(S15,No)、ピンポンHO傾向分析部44は、エリア境界に沿った移動以外で発生したピンポンハンドオーバである、と判断する(S17)。図11においては、好ましくないハンドオーバが8件(斜線部分に相当)あり、その割合は、進入速度の件数と脱出速度の件数の合計である14件の4割を超えている。そのため、ピンポンHO傾向分析部44では、事例#1はエリア境界に沿った移動以外で発生したピンポンハンドオーバである、と判断する。
【0048】
S14〜S17の処理によりピンポンハンドオーバの傾向の分析が完了した後、ピンポンHO傾向分析部44は、分析結果をHO分析制御部41に通知する(S18)。本実施例では、ピンポンHO傾向分析部44は、分析結果として、事例#1が、エリア境界に沿った移動以外で発生したピンポンハンドオーバである旨を、HO分析制御部41に通知する。そして、HO分析制御部41では、通知された分析結果を表示部33に出力する(S5)。
【0049】
つづいて、上記事例#1とは異なる事例#2を用いてピンポンハンドオーバの傾向を分析した場合について説明する。なお、ここでは、上述した事例#1の説明と異なる部分について説明する。
【0050】
図12は、無線通信履歴情報の一例(事例#2)を示す図である。図12では、無線通信履歴情報として、定期的(たとえば2秒毎)に移動端末で記録された位置情報(緯度(度),経度(度)),移動速度(m/sec),移動方位(度),通信先基地局セルIDが、時刻ごとに記録されている。
【0051】
また、図13は、HO履歴情報記憶部47に記憶されたHO履歴情報の一例(事例#2)を示す図である。図13では、HO履歴情報として、ハンドオーバが行われた時刻毎に、位置情報(緯度(度),経度(度)),移動速度(m/sec),移動方位(度),通信先基地局セルID,HO元基地局セルIDが記録されている。
【0052】
また、図14−1は、ピンポンHO履歴情報記憶部48に記憶されたピンポンHO履歴情報の一例(事例#2)を示す図である。図14−1では、ピンポンHO履歴情報の生成過程として、ハンドオーバが行われた時刻毎に、位置情報(緯度(度),経度(度)),移動速度(m/sec),移動方位(度),通信先基地局セルID,HO元基地局セルIDが記憶されている。また、図14−2は、事例#2のピンポンハンドオーバの発生箇所を示す図であり、図14−1に示す8箇所の位置でピンポンハンドオーバが発生していることがわかる。
【0053】
また、図15は、ピンポンHO履歴情報記憶部48に記憶されたピンポンHO履歴情報の一例(事例#2)を示す図である。図15では、ピンポンHO履歴情報の生成過程として得られた図14−1の情報に加え、さらに、各レコードに対応した基地局進入情報および基地局脱出情報が記憶されている。なお、図15では、実線で囲われたレコードが、好ましくないハンドオーバに該当する。
【0054】
図15により、事例#2では、好ましくないハンドオーバが3件(斜線部分に相当)あり、その割合は、進入速度の件数と脱出速度の件数の合計である16件の4割以下であることがわかる。そのため、ピンポンHO傾向分析部44では、事例#2は、エリア境界に沿って移動したときに発生したピンポンハンドオーバである、と判断する。そして、ピンポンHO傾向分析部44は、その判断結果をピンポンハンドオーバの傾向の分析結果として、HO分析制御部41に通知する。
【0055】
上述してきたように、本実施例の分析装置1は、ピンポンハンドオーバであると判定されたハンドオーバ時の通信履歴に含まれた移動端末の位置情報,移動方位,移動速度と、既知の基地局位置情報に基づいて、基地局進入情報および基地局脱出情報を算出する。そして、分析装置1は、上記通信履歴毎に算出される基地局進入情報および基地局脱出情報に基づいて、検出したピンポンハンドオーバの傾向を分析することとした。これにより、検出したピンポンハンドオーバの傾向を判別することができる。すなわち、検出したピンポンハンドオーバが、エリア境界に沿って移動したときに発生したピンポンハンドオーバであるのか、エリア境界に沿った移動以外で発生したピンポンハンドオーバであるのか、を判断することが可能となる。また、本実施例では、ピンポンハンドオーバの傾向が判別できるため、適切なエリア設計を行うことが可能となり、ひいては、ピンポンハンドオーバを回避することが可能となる。
【0056】
なお、本実施例では、一例として、基地局進入情報および基地局脱出情報の両方の情報を用いてピンポンハンドオーバの傾向を分析したが、これに限らず、基地局進入情報または基地局脱出情報のいずれか一方の情報を用いて分析することとしてもよい。この場合においても、好ましくないハンドオーバの割合のしきい値を予め決めておくことによって、ピンポンHO傾向分析部44は、上記同様、このしきい値によりピンポンハンドオーバの傾向を分析可能である。また、基地局進入情報および基地局脱出情報の両方を算出する場合と比較して演算量を削減することが可能となる。
【実施例2】
【0057】
実施例2では、実施例1とは異なる分析方法でピンポンハンドオーバの傾向を分析する。具体的には、進入速度および脱出速度の値の分布に着目し、ばらつきの指標である標準偏差が所定のしきい値以下の場合に、エリア境界に沿って移動したときに発生したピンポンハンドオーバであると判断する。一方、所定のしきい値よりも標準偏差が大きい場合には、エリア境界に沿った移動以外で発生したピンポンハンドオーバであると判断する。なお、実施例2の移動通信システムの構成および分析装置の構成は、前述した実施例1の図1〜図3と同様である。実施例2においては、実施例1と処理の異なるピンポンHO傾向分析部44とUE移動特性分析部45の動作について説明する。
【0058】
以下、本実施例の分析装置1の動作を詳細に説明する。図3において、ピンポンHO傾向分析部44は、実施例1と同様の動作を行うとともに、さらに、UE移動特性分析部45に対し、進入速度および脱出速度における標準偏差の算出を指示する。そして、UE移動特性分析部45にて算出される標準偏差に基づいて、ピンポンハンドオーバの傾向を分析する。UE移動特性分析部45は、ピンポンHO傾向分析部44からの指示に従い、ピンポンHO履歴情報に基づきハンドオーバ時刻毎の進入速度および脱出速度を算出するとともに、進入速度および脱出速度のばらつきの指標となる標準偏差を算出する。
【0059】
ここで、本実施例の分析装置1による分析方法を説明する。なお、本実施例の分析方法において、ピンポンHO傾向分析部44がUE移動特性分析部45に対して移動端末の移動特性の分析を指示するまでの動作、すなわち、図4のS1〜S11の処理については、実施例1と同様であるため、重複する説明を省略する。ここでは、実施例1と処理の異なるS11以降の処理について説明する。
【0060】
移動端末の移動特性の分析を指示されたUE移動特性分析部45は、ピンポンHO履歴情報記憶部48からピンポンHO履歴情報(図7−1参照)のレコードを順に読み出し、レコード毎に移動端末の移動特性を分析する。
【0061】
具体的には、UE移動特性分析部45は、まず、進入角度と進入速度を含む基地局進入情報、および脱出角度と脱出速度を含む基地局脱出情報を算出する。なお、ピンポンHO履歴情報の生成を完了させるまでの動作(図11参照)については、実施例1のS12と同様であるため、重複する説明を省略する。
【0062】
ピンポンHO履歴情報の生成を完了させた後、UE移動特性分析部45は、さらに、進入速度および脱出速度のばらつきの指標となる標準偏差を算出する。
【0063】
図16および図17は、標準偏差の算出過程を示す図である。詳細には、図16には、事例#1における標準偏差の算出過程が示されており、図17には、事例#2における標準偏差の算出過程が示されている。図16,図17において、偏差は、それぞれ下記(13)式,下記(14)式により求められる。UE移動特性分析部45では、ピンポンHO履歴情報のレコード毎に、下記(13)式,下記(14)式を実行することによって、図16および図17に示す進入速度の偏差,脱出速度の偏差を算出する。
進入速度の偏差=進入速度−全レコードの進入速度の平均値 …(13)
脱出速度の偏差=脱出速度−全レコードの脱出速度の平均値 …(14)
【0064】
つぎに、UE移動特性分析部45は、レコード毎に偏差の二乗を計算し、その計算結果に基づいて、進入速度の標準偏差,脱出速度の標準偏差をそれぞれ計算する。進入速度の標準偏差,脱出速度の標準偏差は、それぞれ下記(15),下記(16)式により求められる。
進入速度の標準偏差=√(「進入速度の偏差」の二乗の平均値) …(15)
脱出速度の標準偏差=√(「脱出速度の偏差」の二乗の平均値) …(16)
【0065】
したがって、上記(13)〜(16)式に基づいてUE移動特性分析部45が標準偏差を求めると、図16に示す事例#1では、進入速度の標準偏差が14.91となり、脱出速度の標準偏差が14.82となる。一方、図17に示す事例#2では、進入速度の標準偏差が2.76となり、脱出速度の標準偏差が2.65となる。
【0066】
その後、UE移動特性分析部45は、移動端末の移動特性の分析が完了した旨の情報として、上記で求めた進入速度の標準偏差と脱出速度の標準偏差をピンポンHO傾向分析部44に通知する。
【0067】
つぎに、ピンポンHO傾向分析部44は、通知された進入速度の標準偏差と脱出速度の標準偏差に基づいて、ピンポンハンドオーバの傾向を分析する。本実施例では、分析処理として、エリア境界に沿って移動したときに発生したピンポンハンドオーバであるのか、エリア境界に沿った移動以外で発生したピンポンハンドオーバであるのか、を判断する。
【0068】
ここで、進入速度の標準偏差と脱出速度の標準偏差に基づく分析処理を、前述した事例#1および事例#2のピンポンハンドオーバを前提として具体的に説明する。たとえば、移動端末がエリア境界に沿って移動した場合には、進入速度および脱出速度は、0に近い値をとる。一方で、エリア境界に沿った移動以外の移動の場合には、基地局に近づく方向への移動や、基地局から離れる方向への移動が想定されるため、進入速度および脱出速度は、エリア境界に沿った移動よりも大きい値をとる。そのため、進入速度や脱出速度の分布のばらつきは、エリア境界に沿った移動以外で発生したピンポンハンドオーバの方が必然的に大きくなる。そこで、本実施例では、エリア境界に沿って移動したときに発生したピンポンハンドオーバか、エリア境界に沿った移動以外で発生したピンポンハンドオーバか、を判断するために、ばらつきの指標となる標準偏差のしきい値を予め決めておく。本実施例では、このしきい値を、たとえば、10とする。なお、このしきい値は、分析の精度に応じて適宜変更可能である。
【0069】
したがって、ピンポンHO傾向分析部44は、進入速度の標準偏差がしきい値10以下の場合には、通信先基地局のエリア境界に沿って移動したときに発生したピンポンハンドオーバである、と判断する。また、脱出速度の標準偏差がしきい値10以下の場合には、HO元基地局のエリア境界に沿って移動したときに発生したピンポンハンドオーバである、と判断する。一方、進入速度の標準偏差がしきい値10を超える場合には、ピンポンHO傾向分析部44は、通信先基地局のエリア境界に沿った移動以外で発生したピンポンハンドオーバである、と判断する。また、脱出速度の標準偏差がしきい値10を超える場合には、HO元基地局のエリア境界に沿った移動以外で発生したピンポンハンドオーバである、と判断する。
【0070】
たとえば、図16に示す事例#1の場合は、上述したように、進入速度の標準偏差が14.91であり、脱出速度の標準偏差が14.82である。この場合、進入速度の標準偏差および脱出速度の標準偏差の両方がしきい値10を超えているため、ピンポンHO傾向分析部44は、エリア境界に沿った移動以外で発生したピンポンハンドオーバである、と判断する。
【0071】
一方、図17に示す事例#2の場合は、上述したように、進入速度の標準偏差が2.76であり、脱出速度の標準偏差が2.65である。この場合、進入速度の標準偏差および脱出速度の標準偏差の両方がしきい値10以下であるため、ピンポンHO傾向分析部44は、通信先基地局とHO元基地局の両方のエリア境界に沿って移動したときに発生したピンポンハンドオーバである、と判断する。
【0072】
上記処理によりピンポンハンドオーバの傾向の分析が完了した後、ピンポンHO傾向分析部44は、分析結果をHO分析制御部41に通知する。そして、HO分析制御部41では、通知された分析結果を表示部33に出力する。
【0073】
上述してきたように、本実施例の分析装置1は、ピンポンハンドオーバであると判定されたハンドオーバ時の通信履歴に含まれた移動端末の位置情報,移動方位,移動速度と、既知の基地局位置情報に基づいて、進入速度および脱出速度を算出する。また、分析装置1は、進入速度および脱出速度に基づいて、それぞれの速度の標準偏差を算出する。そして、分析装置1は、進入速度の標準偏差および脱出速度の標準偏差に基づいて、検出したピンポンハンドオーバの傾向を分析することとした。これにより、検出したピンポンハンドオーバの傾向を判別することができる。すなわち、検出したピンポンハンドオーバが、エリア境界に沿って移動したときに発生したピンポンハンドオーバであるのか、エリア境界に沿った移動以外で発生したピンポンハンドオーバであるのか、を判断することが可能となる。また、本実施例では、ピンポンハンドオーバの傾向が判別できるため、適切なエリア設計を行うことが可能となり、ひいては、ピンポンハンドオーバを回避することが可能となる。
【0074】
なお、本実施例では、一例として、基地局進入情報および基地局脱出情報の両方の情報を用いてピンポンハンドオーバの傾向を分析したが、これに限らず、基地局進入情報または基地局脱出情報のいずれか一方の情報を用いて分析することとしてもよい。この場合においても、標準偏差のしきい値を予め決めておくことによって、ピンポンHO傾向分析部44は、上記同様、このしきい値によりピンポンハンドオーバの傾向を分析可能である。また、基地局進入情報および基地局脱出情報の両方を算出する場合と比較して演算量を削減することが可能となる。
【0075】
以上の実施例を含む実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0076】
(付記1)ピンポンハンドオーバが検出された時刻毎の移動端末の位置、移動方位および移動速度を含む通信履歴情報と、当該各時刻における通信先基地局の位置とに基づいて、前記時刻毎に、通信先基地局へ近づく速度の指標となる進入速度を求め、また、前記通信履歴情報と、前記各時刻におけるハンドオーバ元基地局の位置とに基づいて、前記時刻毎に、ハンドオーバ元基地局から離れる速度の指標となる脱出速度を求める第1の分析部と、
前記時刻毎に求められる進入速度および脱出速度に基づいて、ピンポンハンドオーバの傾向を分析する第2の分析部と、
を有することを特徴とする分析装置。
【0077】
(付記2)前記第1の分析部は、
ピンポンハンドオーバが検出された時刻の移動端末の位置、およびそのときの通信先基地局の位置に基づいて、当該移動端末から見た通信先基地局の方位を算出し、
前記移動端末から見た通信先基地局の方位と前記時刻における移動方位とのなす角である進入角度を算出し、
前記進入角度および前記時刻における移動速度に基づいて前記進入速度を算出し、
また、ピンポンハンドオーバが検出された時刻の移動端末の位置、およびそのときのハンドオーバ元基地局の位置に基づいて、当該移動端末から見たハンドオーバ元基地局の方位を算出し、
前記移動端末から見たハンドオーバ元基地局の方位と前記時刻における移動方位とのなす角である脱出角度を算出し、
前記脱出角度および前記時刻における移動速度に基づいて前記脱出速度を算出する、
ことを特徴とする付記1に記載の分析装置。
【0078】
(付記3)ピンポンハンドオーバが検出された時刻毎の移動端末の位置、移動方位および移動速度を含む通信履歴情報と、当該各時刻における通信先基地局の位置とに基づいて、前記時刻毎に、通信先基地局へ近づく速度の指標となる進入速度を求める第1の分析部と、
前記時刻毎に求められる進入速度に基づいて、ピンポンハンドオーバの傾向を分析する第2の分析部と、
を有することを特徴とする分析装置。
【0079】
(付記4)前記第1の分析部は、
ピンポンハンドオーバが検出された時刻の移動端末の位置、およびそのときの通信先基地局の位置に基づいて、当該移動端末から見た通信先基地局の方位を算出し、
前記移動端末から見た通信先基地局の方位と前記時刻における移動方位とのなす角である進入角度を算出し、
前記進入角度および前記時刻における移動速度に基づいて前記進入速度を算出する、
ことを特徴とする付記3に記載の分析装置。
【0080】
(付記5)ピンポンハンドオーバが検出された時刻毎の移動端末の位置、移動方位および移動速度を含む通信履歴情報と、当該各時刻におけるハンドオーバ元基地局の位置とに基づいて、前記時刻毎に、ハンドオーバ元基地局から離れる速度の指標となる脱出速度を求める第1の分析部と、
前記時刻毎に求められる脱出速度に基づいて、ピンポンハンドオーバの傾向を分析する第2の分析部と、
を有することを特徴とする分析装置。
【0081】
(付記6)前記第1の分析部は、
ピンポンハンドオーバが検出された時刻の移動端末の位置、およびそのときのハンドオーバ元基地局の位置に基づいて、当該移動端末から見たハンドオーバ元基地局の方位を算出し、
前記移動端末から見たハンドオーバ元基地局の方位と前記時刻における移動方位とのなす角である脱出角度を算出し、
前記脱出角度および前記時刻における移動速度に基づいて前記脱出速度を算出する、
ことを特徴とする付記5に記載の分析装置。
【0082】
(付記7)前記第2の分析部は、
前記ピンポンハンドオーバの傾向として、エリア境界に沿って移動したときに発生したピンポンハンドオーバであるのか、エリア境界に沿った移動以外で発生したピンポンハンドオーバであるのか、を判断し、その判断結果を分析結果として出力する、
ことを特徴とする付記1〜6のいずれか1つに記載の分析装置。
【0083】
(付記8)前記第2の分析部は、
前記第1の分析部において求められたそれぞれの速度と、好ましくないハンドオーバを行っているかどうかを判断するために規定された第1のしきい値とを比較し、当該求められた速度が当該第1のしきい値以下の場合に、好ましくないハンドオーバを行っているケースであると判断し、
前記好ましくないハンドオーバの割合が、ピンポンハンドオーバの傾向を分析するために規定された第2のしきい値以下の場合に、エリア境界に沿って移動したときに発生したピンポンハンドオーバであると判断し、一方、前記第2のしきい値を超える場合には、エリア境界に沿った移動以外で発生したピンポンハンドオーバであると判断する、
ことを特徴とする付記7に記載の分析装置。
【0084】
(付記9)前記第2の分析部は、
前記第1の分析部において求められた各速度のばらつきの指標である標準偏差を求め、
前記標準偏差が、ピンポンハンドオーバの傾向を分析するために規定された第1のしきい値以下の場合に、エリア境界に沿って移動したときに発生したピンポンハンドオーバであると判断し、一方、前記第1のしきい値を超える場合には、エリア境界に沿った移動以外で発生したピンポンハンドオーバであると判断する、
ことを特徴とする付記7に記載の分析装置。
【0085】
(付記10)分析装置における分析方法であって、
ピンポンハンドオーバが検出された時刻毎の移動端末の位置、移動方位および移動速度を含む通信履歴情報と、当該各時刻における通信先基地局の位置とに基づいて、前記時刻毎に、通信先基地局へ近づく速度の指標となる進入速度を求め、
前記通信履歴情報と、前記各時刻におけるハンドオーバ元基地局の位置とに基づいて、前記時刻毎に、ハンドオーバ元基地局から離れる速度の指標となる脱出速度を求め、
前記時刻毎に求められる進入速度および脱出速度に基づいて、ピンポンハンドオーバの傾向を分析する、
ことを特徴とする分析方法。
【0086】
(付記11)分析装置における分析方法であって、
ピンポンハンドオーバが検出された時刻毎の移動端末の位置、移動方位および移動速度を含む通信履歴情報と、当該各時刻における通信先基地局の位置とに基づいて、前記時刻毎に、通信先基地局へ近づく速度の指標となる進入速度を求め、
前記時刻毎に求められる進入速度に基づいて、ピンポンハンドオーバの傾向を分析する、
ことを特徴とする分析方法。
【0087】
(付記12)分析装置における分析方法であって、
ピンポンハンドオーバが検出された時刻毎の移動端末の位置、移動方位および移動速度を含む通信履歴情報と、当該各時刻におけるハンドオーバ元基地局の位置とに基づいて、前記時刻毎に、ハンドオーバ元基地局から離れる速度の指標となる脱出速度を求め、
前記時刻毎に求められる脱出速度に基づいて、ピンポンハンドオーバの傾向を分析する、
ことを特徴とする分析方法。
【0088】
(付記13)前記ピンポンハンドオーバの傾向を分析する処理として、
前記求められた各速度と、好ましくないハンドオーバを行っているかどうかを判断するために規定された第1のしきい値とを比較し、当該求められた速度が当該第1のしきい値以下の場合に、好ましくないハンドオーバを行っているケースであると判断し、
前記好ましくないハンドオーバの割合が、ピンポンハンドオーバの傾向を分析するために規定された第2のしきい値以下の場合に、エリア境界に沿って移動したときに発生したピンポンハンドオーバであると判断し、一方、前記第2のしきい値を超える場合には、エリア境界に沿った移動以外で発生したピンポンハンドオーバであると判断する、
ことを特徴とする付記10、11または12に記載の分析方法。
【0089】
(付記14)前記ピンポンハンドオーバの傾向を分析する処理として、
前記求められた各速度のばらつきの指標である標準偏差を求め、
前記標準偏差が、ピンポンハンドオーバの傾向を分析するために規定された所定のしきい値以下の場合に、エリア境界に沿って移動したときに発生したピンポンハンドオーバであると判断し、一方、前記所定のしきい値を超える場合には、エリア境界に沿った移動以外で発生したピンポンハンドオーバであると判断する、
ことを特徴とする付記10、11または12に記載の分析方法。
【0090】
(付記15)ピンポンハンドオーバが検出された時刻毎の移動端末の位置、移動方位および移動速度を含む通信履歴情報と、当該各時刻における通信先基地局の位置とを記憶部から読み出し、
前記通信履歴情報および前記通信先基地局の位置に基づいて、前記時刻毎に、通信先基地局へ近づく速度の指標となる進入速度を求め、
前記各時刻におけるハンドオーバ元基地局の位置を前記記憶部から読み出し、
前記通信履歴情報および前記ハンドオーバ元基地局の位置に基づいて、前記時刻毎に、ハンドオーバ元基地局から離れる速度の指標となる脱出速度を求め、
前記時刻毎に求められる進入速度および脱出速度に基づいて、ピンポンハンドオーバの傾向を分析する、
処理をコンピュータに実行させることを特徴とする分析プログラム。
【0091】
(付記16)ピンポンハンドオーバが検出された時刻毎の移動端末の位置、移動方位および移動速度を含む通信履歴情報と、当該各時刻における通信先基地局の位置とを記憶部から読み出し、
前記通信履歴情報および前記通信先基地局の位置に基づいて、前記時刻毎に、通信先基地局へ近づく速度の指標となる進入速度を求め、
前記時刻毎に求められる進入速度に基づいて、ピンポンハンドオーバの傾向を分析する、
処理をコンピュータに実行させることを特徴とする分析プログラム。
【0092】
(付記17)ピンポンハンドオーバが検出された時刻毎の移動端末の位置、移動方位および移動速度を含む通信履歴情報と、当該各時刻におけるハンドオーバ元基地局の位置とを記憶部から読み出し、
前記通信履歴情報および前記ハンドオーバ元基地局の位置に基づいて、前記時刻毎に、ハンドオーバ元基地局から離れる速度の指標となる脱出速度を求め、
前記時刻毎に求められる脱出速度に基づいて、ピンポンハンドオーバの傾向を分析する、
処理をコンピュータに実行させることを特徴とする分析プログラム。
【0093】
(付記18)前記ピンポンハンドオーバの傾向を分析する処理として、
前記求められた各速度と、好ましくないハンドオーバを行っているかどうかを判断するために規定された第1のしきい値とを比較し、当該求められた速度が当該第1のしきい値以下の場合に、好ましくないハンドオーバを行っているケースであると判断し、
前記好ましくないハンドオーバの割合が、ピンポンハンドオーバの傾向を分析するために規定された第2のしきい値以下の場合に、エリア境界に沿って移動したときに発生したピンポンハンドオーバであると判断し、一方、前記第2のしきい値を超える場合には、エリア境界に沿った移動以外で発生したピンポンハンドオーバであると判断する、
処理をコンピュータに実行させることを特徴とする付記15、16または17に記載の分析プログラム。
【0094】
(付記19)前記ピンポンハンドオーバの傾向を分析する処理として、
前記求められた各速度のばらつきの指標である標準偏差を求め、
前記標準偏差が、ピンポンハンドオーバの傾向を分析するために規定された所定のしきい値以下の場合に、エリア境界に沿って移動したときに発生したピンポンハンドオーバであると判断し、一方、前記所定のしきい値を超える場合には、エリア境界に沿った移動以外で発生したピンポンハンドオーバであると判断する、
処理をコンピュータに実行させることを特徴とする付記15、16または17に記載の分析プログラム。
【符号の説明】
【0095】
1 分析装置
11,21 移動端末
12,13,22,23 基地局
14 無線ネットワーク制御装置
15 3Gコアネットワーク
24 LTEコアネットワーク
31 CPU
32 メモリ
33 表示部
34 外部メディアI/F部
35 記憶部
36 HID
41 HO分析制御部
42 HO履歴抽出部
43 ピンポンHO判定部
44 ピンポンHO傾向分析部
45 UE移動特性分析部
46 基地局情報記憶部
47 HO履歴情報記憶部
48 ピンポンHO履歴情報記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピンポンハンドオーバが検出された時刻毎の移動端末の位置、移動方位および移動速度を含む通信履歴情報と、当該各時刻における通信先基地局の位置とに基づいて、前記時刻毎に、通信先基地局へ近づく速度の指標となる進入速度を求め、また、前記通信履歴情報と、前記各時刻におけるハンドオーバ元基地局の位置とに基づいて、前記時刻毎に、ハンドオーバ元基地局から離れる速度の指標となる脱出速度を求める第1の分析部と、
前記時刻毎に求められる進入速度および脱出速度に基づいて、ピンポンハンドオーバの傾向を分析する第2の分析部と、
を有することを特徴とする分析装置。
【請求項2】
ピンポンハンドオーバが検出された時刻毎の移動端末の位置、移動方位および移動速度を含む通信履歴情報と、当該各時刻における通信先基地局の位置とに基づいて、前記時刻毎に、通信先基地局へ近づく速度の指標となる進入速度を求める第1の分析部と、
前記時刻毎に求められる進入速度に基づいて、ピンポンハンドオーバの傾向を分析する第2の分析部と、
を有することを特徴とする分析装置。
【請求項3】
ピンポンハンドオーバが検出された時刻毎の移動端末の位置、移動方位および移動速度を含む通信履歴情報と、当該各時刻におけるハンドオーバ元基地局の位置とに基づいて、前記時刻毎に、ハンドオーバ元基地局から離れる速度の指標となる脱出速度を求める第1の分析部と、
前記時刻毎に求められる脱出速度に基づいて、ピンポンハンドオーバの傾向を分析する第2の分析部と、
を有することを特徴とする分析装置。
【請求項4】
前記第2の分析部は、
前記ピンポンハンドオーバの傾向として、エリア境界に沿って移動したときに発生したピンポンハンドオーバであるのか、エリア境界に沿った移動以外で発生したピンポンハンドオーバであるのか、を判断し、その判断結果を分析結果として出力する、
ことを特徴とする請求項1、2または3に記載の分析装置。
【請求項5】
前記第2の分析部は、
前記第1の分析部において求められたそれぞれの速度と、好ましくないハンドオーバを行っているかどうかを判断するために規定された第1のしきい値とを比較し、当該求められた速度が当該第1のしきい値以下の場合に、好ましくないハンドオーバを行っているケースであると判断し、
前記好ましくないハンドオーバの割合が、ピンポンハンドオーバの傾向を分析するために規定された第2のしきい値以下の場合に、エリア境界に沿って移動したときに発生したピンポンハンドオーバであると判断し、一方、前記第2のしきい値を超える場合には、エリア境界に沿った移動以外で発生したピンポンハンドオーバであると判断する、
ことを特徴とする請求項4に記載の分析装置。
【請求項6】
前記第2の分析部は、
前記第1の分析部において求められた各速度のばらつきの指標である標準偏差を求め、
前記標準偏差が、ピンポンハンドオーバの傾向を分析するために規定された第1のしきい値以下の場合に、エリア境界に沿って移動したときに発生したピンポンハンドオーバであると判断し、一方、前記第1のしきい値を超える場合には、エリア境界に沿った移動以外で発生したピンポンハンドオーバであると判断する、
ことを特徴とする請求項4に記載の分析装置。
【請求項7】
分析装置における分析方法であって、
ピンポンハンドオーバが検出された時刻毎の移動端末の位置、移動方位および移動速度を含む通信履歴情報と、当該各時刻における通信先基地局の位置とに基づいて、前記時刻毎に、通信先基地局へ近づく速度の指標となる進入速度を求め、
前記通信履歴情報と、前記各時刻におけるハンドオーバ元基地局の位置とに基づいて、前記時刻毎に、ハンドオーバ元基地局から離れる速度の指標となる脱出速度を求め、
前記時刻毎に求められる進入速度および脱出速度に基づいて、ピンポンハンドオーバの傾向を分析する、
ことを特徴とする分析方法。
【請求項8】
前記ピンポンハンドオーバの傾向を分析する処理として、
前記求められた各速度と、好ましくないハンドオーバを行っているかどうかを判断するために規定された第1のしきい値とを比較し、当該求められた速度が当該第1のしきい値以下の場合に、好ましくないハンドオーバを行っているケースであると判断し、
前記好ましくないハンドオーバの割合が、ピンポンハンドオーバの傾向を分析するために規定された第2のしきい値以下の場合に、エリア境界に沿って移動したときに発生したピンポンハンドオーバであると判断し、一方、前記第2のしきい値を超える場合には、エリア境界に沿った移動以外で発生したピンポンハンドオーバであると判断する、
ことを特徴とする請求項7に記載の分析方法。
【請求項9】
前記ピンポンハンドオーバの傾向を分析する処理として、
前記求められた各速度のばらつきの指標である標準偏差を求め、
前記標準偏差が、ピンポンハンドオーバの傾向を分析するために規定された所定のしきい値以下の場合に、エリア境界に沿って移動したときに発生したピンポンハンドオーバであると判断し、一方、前記所定のしきい値を超える場合には、エリア境界に沿った移動以外で発生したピンポンハンドオーバであると判断する、
ことを特徴とする請求項7に記載の分析方法。
【請求項10】
ピンポンハンドオーバが検出された時刻毎の移動端末の位置、移動方位および移動速度を含む通信履歴情報と、当該各時刻における通信先基地局の位置とを記憶部から読み出し、
前記通信履歴情報および前記通信先基地局の位置に基づいて、前記時刻毎に、通信先基地局へ近づく速度の指標となる進入速度を求め、
前記各時刻におけるハンドオーバ元基地局の位置を前記記憶部から読み出し、
前記通信履歴情報および前記ハンドオーバ元基地局の位置に基づいて、前記時刻毎に、ハンドオーバ元基地局から離れる速度の指標となる脱出速度を求め、
前記時刻毎に求められる進入速度および脱出速度に基づいて、ピンポンハンドオーバの傾向を分析する、
処理をコンピュータに実行させることを特徴とする分析プログラム。
【請求項11】
前記ピンポンハンドオーバの傾向を分析する処理として、
前記求められた各速度と、好ましくないハンドオーバを行っているかどうかを判断するために規定された第1のしきい値とを比較し、当該求められた速度が当該第1のしきい値以下の場合に、好ましくないハンドオーバを行っているケースであると判断し、
前記好ましくないハンドオーバの割合が、ピンポンハンドオーバの傾向を分析するために規定された第2のしきい値以下の場合に、エリア境界に沿って移動したときに発生したピンポンハンドオーバであると判断し、一方、前記第2のしきい値を超える場合には、エリア境界に沿った移動以外で発生したピンポンハンドオーバであると判断する、
処理をコンピュータに実行させることを特徴とする請求項10に記載の分析プログラム。
【請求項12】
前記ピンポンハンドオーバの傾向を分析する処理として、
前記求められた各速度のばらつきの指標である標準偏差を求め、
前記標準偏差が、ピンポンハンドオーバの傾向を分析するために規定された所定のしきい値以下の場合に、エリア境界に沿って移動したときに発生したピンポンハンドオーバであると判断し、一方、前記所定のしきい値を超える場合には、エリア境界に沿った移動以外で発生したピンポンハンドオーバであると判断する、
処理をコンピュータに実行させることを特徴とする請求項10に記載の分析プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7−1】
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【図7−2】
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【図8】
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【図9−1】
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【図9−2】
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【図9−3】
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【図9−4】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14−1】
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【図14−2】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−93732(P2013−93732A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−234339(P2011−234339)
【出願日】平成23年10月25日(2011.10.25)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】