分析装置のカバー開閉機構
【課題】開閉カバーを任意の位置で静止させることが可能な分析装置のカバー開閉機構を提供する。
【解決手段】開口部を有する筐体と、水平方向の回転軸周りに回転して開口部を開閉するカバーと、基端部が前記筐体に、先端部がカバーに取り付けられたガススプリングを備える分析装置のカバー開閉機構であって、回転軸に垂直な面において、カバーの回転中心とカバーの全閉位置における重心位置を通る直線と、回転中心とカバーの全開位置における重心位置を通る直線で挟まれる領域のうち、回転中心の直下位置を含む領域内に基端部固定位置を、回転中心を基点として重心位置を通る半直線の略直線上に先端部固定位置を設け、カバーの自重によるトルク値とガススプリングの弾性反力によるトルク値との合計値を、伸縮双方向に働くガススプリングの静摩擦力によるトルク値の範囲内になるよう設定する。
【解決手段】開口部を有する筐体と、水平方向の回転軸周りに回転して開口部を開閉するカバーと、基端部が前記筐体に、先端部がカバーに取り付けられたガススプリングを備える分析装置のカバー開閉機構であって、回転軸に垂直な面において、カバーの回転中心とカバーの全閉位置における重心位置を通る直線と、回転中心とカバーの全開位置における重心位置を通る直線で挟まれる領域のうち、回転中心の直下位置を含む領域内に基端部固定位置を、回転中心を基点として重心位置を通る半直線の略直線上に先端部固定位置を設け、カバーの自重によるトルク値とガススプリングの弾性反力によるトルク値との合計値を、伸縮双方向に働くガススプリングの静摩擦力によるトルク値の範囲内になるよう設定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分析装置の筐体の開口部を覆うカバーを開閉させる、分析装置の開閉カバー機構に関する。
【背景技術】
【0002】
分析装置では必要に応じて装置の筐体に開口部を設け、その開口部を開閉可能なカバーで覆うことが一般的に行われている。例えば質量分析装置では、所定時間使用する度に取り外して清掃する必要があるイオン源の取出口に、ヒンジを介して上下方向に開閉可能なカバーが取り付けられている(特許文献1参照)。また、蛍光X線分析装置では、試料室における試料の取出口に、ヒンジを介して上下方向に開閉可能なカバーが取り付けられている(特許文献2参照)。また、特許文献2に記載されているように、カバーの重量が大きい場合には、カバーを開閉するための補助機構としてガススプリングを用いることがある。
【0003】
ガススプリングの基本的な構造を図1(a)に示す。ガススプリング10aは、シリンダ11とその内部に挿入されるロッド16、及びロッドの先端に固定されたピストン13から成る。シリンダ11内には気体12が充填されている。ピストン13は外径部がシリンダ11の壁に密に接触するように設けられており、シリンダ11内部を先端側(図の上方)区画と基端側(下方)区画に2区分しているが、ピストン13にはシリンダ11内の気体が両区画間で自由に流通可能となるようにオリフィス14が設けられている。ロッド16をシリンダ11に押し込むと、シリンダ11内部の気体12は狭くなる方の区画からオリフィス14を通じて広くなる方の区画に流通するが、シリンダ11内部全体としては、押し込まれたロッドの体積分だけ気体12が圧縮され、その圧縮反力がバネとして作用する。ロッド16を引き出すときは、その逆に、引き出されたロッド16の体積分に相当する気体12の拡張反力がバネとして作用する。そして、ガススプリング10aの伸縮動作時にはそれらに加え、ピストン13の移動に伴うシリンダ11の内壁とピストン13の外径部との摺動による所定の摺動抵抗が生じる。
【0004】
ガススプリングの別の例を図1(b)に示す。このガススプリング10bは、上記ガススプリング10aで用いられているシリンダ11、ロッド16及びピストン13の他に、シリンダ11の先端側にフリーピストン17が設けられており、フリーピストン17よりも先端側に気体が、基端側(ロッド16側)にはオイル15が封入されている。ピストン13には上記ガススプリング10aと同様、オリフィス14が設けられている。このガススプリング10bでは、ロッド16に接続されたピストン13の押し込みによって、押し込まれたロッド16の体積分だけ、気体12が圧縮される構造である点に関しては、上述のガススプリング10aと同じである。しかし、図1(b)のガススプリング10bでは、伸縮動作時に上記摺動抵抗に加えて、基端側に封入されたオイル15のオリフィス14通過に伴う所定の流通抵抗も生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001-74695号公報
【特許文献2】実登3140800号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ガススプリングを用いた従来の分析装置では、作業者がカバーから手を離すと、カバーは全閉状態、或いは全開状態になるまで緩やかに移動し続けて静止する。しかし、種々の分析装置では、筐体内に埃等が入ることをできる限り防ぐために、カバーを途中まで開けた状態で、機器の接続状態の確認や試料の載置位置の微調整等を行うことがある。その際、機器使用者は途中まで開けたカバーを手で支えながら作業をしなければならず、作業性の点で問題があった。
【0007】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、作業者がカバーから手を離しても、任意の開閉位置でカバーを静止させることができる分析装置のカバー開閉機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために成された本発明に係る分析装置のカバー開閉機構は、
a) 分析装置の筐体の開口部を覆い、水平方向の回転軸を中心とする回転により該開口部を開閉するカバーと、
b) 基端部が前記筐体に、先端部が前記カバーに取り付けられ、伸縮に対して所定の弾性反力特性を有し、伸縮の双方向の外力に対して所定の静摩擦力を有するガススプリングと、
を備え、
前記回転軸に垂直な面において、
前記カバーの回転中心と前記カバーの全閉位置における重心位置を通る直線と、前記回転中心と前記カバーの全開位置における重心位置を通る直線と、により挟まれる領域のうち、前記回転中心の直下位置を含む領域内に前記ガススプリングの基端部固定位置を有し、
前記回転中心を基点とし、前記カバーの重心位置を通る半直線の略直線上に前記ガススプリングの先端部固定位置を有するものであり、
前記カバーの回転に伴って変化する、カバーの自重に起因して生じる前記回転軸周りのカバートルク値と、前記ガススプリングの弾性反力により生じる前記回転軸周りのガススプリングトルク値との合計値が、前記ガススプリングの伸縮の双方向の外力に対する前記ガススプリングの静摩擦力から求められる前記回転軸周りの静止トルク値の範囲内となるように設定されている
ことを特徴とする。
【0009】
なお、上記「基端部」「先端部」は、先にガススプリングの構造を説明する際に使用した「基端部」「先端部」と一致していてもよいし、逆でもよい。また、「弾性反力」とは、ガススプリングの伸縮距離に比例する反力のことをいう。さらに、上記の静止トルク値は、ガススプリングを伸縮のいずれかの方向に動かそうとする際に生じる前記静摩擦力を、前記回転軸周りのトルク値に換算した値のことである。前記回転中心を基点とし、前記カバーの重心位置を通る半直線上の略直線上に前記ガススプリングの先端部固定位置を有するとは、前記半直線上に前記先端部固定位置を有するものに限らず、前記半直線から少し外れた位置に前記先端部固定位置を有するものを含むことをいう。
【0010】
前記ガススプリングの基端部は前記回転中心の直下位置に、先端部は前記開閉カバーの回転中心を基点として重心位置とを結ぶ半直線上の位置に、それぞれ固定することが望ましい。これにより、前記カバーの重心位置が前記回転中心の直上にあるときを中心として、前記スプリングトルク値は開閉カバーの開閉角に対して対称に変化する。これにより、ガススプリングの仕様の選定、ガススプリングの基端部、先端部固定位置等の設定に係る計算を容易に行うことができ、また、これらのパラメータの許容範囲を広げることができる。さらに、前記回転中心から、ガススプリングの基端部、先端部の固定位置への距離を同一に設定すれば、より一層容易に上記の設定に係る計算を行うことができる。
【0011】
本発明に係る分析装置のカバー開閉機構は更に、
c) 前記基端部の固定位置を変化させる機構
を備えてもよい。
この構成によれば、経時変化等によりガススプリングの弾性反力特性や静止摩擦特性が変化した場合に、前記ガススプリングの基端部固定位置を変更することにより、前記カバートルク値と、前記ガススプリングの弾性反力特性により生じる前記回転軸周りのガススプリングトルク値との合計値が、前記ガススプリングの伸縮の双方向の外力に対する前記回転軸周りの前記ガススプリングの静摩擦力から求められる静止トルク値の範囲内である状態が維持されるように、ガススプリングの基端部の固定位置を再調整することが可能である。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る分析装置のカバー開閉機構では、開閉カバーが全閉位置から全開位置の間のいずれの位置にあっても、前記カバートルク値と、前記ガススプリングトルク値との合計値が、前記ガススプリングの伸縮の双方向の外力に対する前記静止トルク値の範囲内となる。従って、上記のように、前記カバーの全閉位置から全開位置の間のいずれの位置においても、前記カバートルク値と前記ガススプリングトルク値との合計値が0でなくとも、ガススプリングが有する静摩擦力の効果によって、開閉カバーを全ての位置で静止させることができる。このため、機器の接続状態の確認や試料の載置位置の微調整等の作業を行う際に、機器使用者がカバーを支えることなく、前記の各種作業のために必要な任意の開度でカバーを静止させて作業を行うことができる。これにより、機器への埃等の進入を最小限に抑え、かつ機器使用者の作業効率を格段に向上させることができる。
【0013】
また、ガススプリングの基端部の固定位置を調整する機構を備えておくことにより、長期間使用した際にガススプリングの弾性反力が低下した場合や、新たなガススプリングに取り替えた場合であっても、上述の特徴を満たすようにガススプリングの基端部の固定位置を再調整することが可能となり、再び開閉カバーをいずれの位置においても静止させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】ガススプリングの一例を示す図。
【図2】ガススプリングの動作特性を説明するグラフ。
【図3】本発明に係る分析装置のカバー開閉機構の断面を示す図。
【図4】開閉カバーが全閉位置と全開位置の中間位置にある時に生じる力を示す図。
【図5】開閉カバートルク値とガススプリングトルク値の算出に係るベクトルの関係を示す図。
【図6】実施例1における開閉カバートルク値、ガススプリングトルク値、及びこれらの合計値の計算結果を示す図。
【図7】実施例1における開閉カバートルク値とガススプリングトルク値の合計値、及び静止トルク値の計算結果を示す図。
【図8】実施例1における開閉カバートルク値と、ガススプリングトルク値と静止トルク値の合計値の関係を示す図。
【図9】実施例2において、基端部固定位置を再調整する前の開閉カバートルク値とガススプリングトルク値の合計値、及び静止トルク値の計算結果を示す図。
【図10】実施例2において、基端部固定位置を再調整した後の開閉カバートルク値とガススプリングトルク値の合計値、及び静止トルク値の計算結果を示す図。
【図11】基端部固定可能範囲の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
はじめに、ガススプリングのストローク長−反力特性について説明する。前述の通り、ガススプリングは、ロッドが押し込まれると、シリンダ内部に充填された気体が押し込まれたロッドの体積分だけ圧縮され、圧縮反力を増大させる特性を有する。また、ガススプリングが伸縮する際には、シリンダの内壁とピストン外径部等の摺動による摺動抵抗、及び内部に封入されたオイルのオリフィス部通過による流通抵抗に起因する静摩擦力が生じる。従って、ガススプリングのストローク長−反力は図2に示すような特性を示す。図2に示すfがガススプリングの静摩擦力の値であり、ガススプリングの仕様に応じて決まっている。
【0016】
図2に示すようなストローク長−反力、静摩擦力特性を有するガススプリングの動作について説明する。ガススプリングのストローク長がkのとき、図2に示す特性を有するガススプリングの弾性反力はFkである。ガススプリングのロッド押し込み方向に加わる力の大きさがFk-f以下になるとストローク長が伸びる方向に、Fk+f以上になるとストローク長が縮む方向にそれぞれ変動するが、ガススプリングのロッド押し込み方向にかかる力がFk-fからFk+fの範囲内である場合には、ガススプリングが有する静摩擦力fのため、ガススプリングは伸縮しないで静止状態を保つ。
【0017】
本発明に係る分析装置のカバー開閉機構の一実施例の断面図を図3に示す。この分析装置のカバー開閉機構20は、開口部を有する分析装置の筐体21と、開口部を覆う開閉カバー22、ガススプリング23により構成される。図3(a)は開閉カバー22の全閉状態を示す。図中の点Oは開閉カバー22の回転中心、点Aはガススプリング23の基端部固定位置、点Bはガススプリング23の先端部固定位置、点Cは開閉カバー22の重心位置を示す。この例では、図3に示すように、ガススプリング23は、基端部が回転中心Oに対して鉛直方向の下方位置Aに、先端部が回転中心Oを中心として前記基端部固定位置Aを含む円周と、線分OCの交点位置Bに固定されている。なお、ここでは説明を簡便に行うために回転中心Oからガススプリング23の基端部固定位置A、先端部固定位置Bへの距離を同一にしたが、ガススプリング23の基端部の固定位置A、先端部の固定位置Bはこれに限定されるものではない。
【0018】
図3に示す実施例において、開閉カバー22が全閉と全開の間の位置にある時に生じている力を図4により説明する。図中のrは開閉カバーの回転中心Oからガススプリング先端部固定位置Bへのベクトル、Rは前記回転中心Oから開閉カバーの重心位置Cへのベクトル、Fbはガススプリングの弾性反力ベクトル、Fcは開閉カバーの自重により生じる力のベクトルである。このガススプリングの弾性反力ベクトルFbは、ガススプリングが有する静摩擦力fに係るベクトル成分を含まない。また、開閉カバーの重心位置Cと回転中心Oを結ぶ線分OCと開閉カバーの全閉方向の水平面がなす角をθ、ガススプリングの基端部Aと回転中心Oを結ぶ線分AOとガススプリングの基端部Aと先端部Bを結ぶ線分ABがなす角(∠OAB)をαとする。なお、Tbはガススプリングの弾性反力により生じるトルク(以下、ガススプリングトルクとする)が働く方向、Tcは開閉カバーの自重により生じるトルク(以下、開閉カバートルクとする)が働く方向を示す。
【0019】
次に、ガススプリングトルクTb、開閉カバートルクTcについて説明する。ガススプリングトルクTbはrとFbの両ベクトルの外積、開閉カバートルクTcはRとFcの両ベクトルの外積によりそれぞれ算出される。図5(a)に開閉カバートルクTcを生じさせるベクトルR、Fcとこれらの成す角度、図5(b)、(c)にガススプリングトルクTbを生じさせるベクトルr、Fbとこれらの成す角度をそれぞれ示す。図5(b)は開閉カバーがθ<90度の位置にある場合であり、図5(c)は開閉カバーがθ>90度の位置にある場合である。これらを用いると、θ<90度の範囲では、θの増加と共にαは減少し、
Tc=R*Fc=|R||Fc|sin(90°+θ)=|R||Fc|cosθ、
Tb=r*Fb=|r||Fb|sin{270°+(θ+α)}=-|r||Fb|cos(θ+α)
となり、θ>90度の範囲では、θの増加と共にαも増加し、
Tc=R*Fc=|R||Fc|sin(90°+θ)=|R||Fc|cosθ、
Tb=r*Fb=|r||Fb|sin{θ-(90°+α)}=-|r||Fb|cos(θ-α)
となる。θ=90度の時、即ち開閉カバー22が図3(b)で示した位置にある時には、Tc、Tbの値は共に0となる。なお、上式中の*はベクトルの外積を示す。
【0020】
まず、開閉カバートルクTcの値について説明する。開閉カバーの重量をM、重力加速度ベクトルをgとすると、Fc=Mgとなる。従って、開閉カバーの自重に起因して生じるトルクTcは
Tc=|R|M|g|cosθ
となる。従って、開閉カバートルクTcの値は開閉カバーの開閉角のみに依存して変化し、cos曲線を描く。
【0021】
続いて、ガススプリングトルクTbの値について説明する。ガススプリングトルクTbは、図4に示したように、開閉カバートルクTcと反対方向に働くトルクである。ガススプリングトルクTbの値は、上述した角度αだけでなく、ガススプリングの伸縮に伴う弾性反力Fbの変化にも依存して変化するため、後述する具体的な実施例において計算結果を説明する。しかし、ガススプリングトルクTbの値は、ガススプリングのストローク長−反力特性、及び基端部固定位置、先端部固定位置を適宜設定することにより、本発明の特徴を満たすように調整することができる。
【0022】
ガススプリングトルクTbの値と開閉カバートルクTcの値の合計値が0であれば、ガススプリングが有する静摩擦力の大きさに関係なく開閉カバーはその位置で静止する。しかし、一般にこれを満たす位置は開閉カバー22の図3(b)に示した位置のみであり、それ以外の中間位置ではTbとTcの合計値は0にはならず、開閉カバーの開方向あるいは閉方向へのトルク値が残る。
【0023】
さらに静止トルクTfについて説明する。ガススプリングの静摩擦力fは、上述の通り、ガススプリングの伸縮の双方向に働く力である。ガススプリングの縮み方向に対して働く静摩擦力をf+、伸長方向に対して働く静摩擦力をf-とし、これらから算出される静止トルク値をそれぞれTf+、Tf-とすると、θ<90度の範囲では、
Tf+=r*f+=-|r||f|cos(θ+α)、
Tf-=r*f-=|r||f|cos(θ+α)
となり、θ>90度の範囲では、
Tf+=r*f+=-|r||f|cos(θ-α)、
Tf-=r*f-=|r||f|cos(θ-α)
となる。
【0024】
ガススプリングトルクTbの値と開閉カバートルクTcの値の合計値が、静止トルクTf+の値とTf-の値の間の値であれば、ガススプリングが有する静摩擦力により、開閉カバーは開閉せずに静止する。即ち、開閉カバーの全閉位置から全開位置の全ての位置において、開閉カバートルクTcとガススプリングトルクTbの合計値が、静止トルク値Tf+とTf-の間の値になるようにガススプリングの仕様、固定位置を設定すれば、開閉カバーを任意の位置において静止させることができる。
【0025】
また、分析装置のカバー開閉機構には、ガススプリングの基端部固定位置を調整する機構を備えることが望ましい。こうした機構を備えておけば、経時変化等によってガススプリングの弾性反力や静止摩擦力が変化した場合や、新しいガススプリングに交換した場合等であっても、開閉カバートルクTcの値とガススプリングトルクTbの値の合計値が、静止トルクTf+の値とTf-の値の間の値になるようにガススプリングの基端部の固定位置を変化させることが可能であり、再び開閉カバーを任意の位置において静止させることができる。
【実施例1】
【0026】
以下、具体的な数値を用いた実施例においてトルク値を計算した結果である図6〜図8を用いて説明する。本実施例においても、開閉カバーの重心位置Cと回転中心O、及びガススプリングの基端部固定位置A、先端部固定位置Bの関係や、これらが成す角θ、αの表記は図3、4と同じである。この実施例では、分析装置の開閉カバーの重量を2kg、開閉カバーの回転中心Oと開閉カバーの重心位置Cの距離を30cmとする。また、開閉カバーの回転軸に垂直な断面において、開閉カバーの全閉時に、開閉カバーの回転中心Oと重心Cを結ぶ線分OCは、開閉カバーの全閉方向の水平面と45度の角度をなし、開閉カバーの全開時に、前記線分OCは開閉カバーの全開方向の水平面と45度の角度をなすものとする。即ち、開閉カバーが全閉状態から全開状態に移動するのに伴い、θは45度から135度の範囲内で変化する。
【0027】
ガススプリングは、基端部Aを開閉カバーの回転中心Oから9cm離れた直下の位置に固定し、先端部Bを、開閉カバーの回転中心Oと開閉カバーの重心位置Cを結ぶ線分OC内で、前記回転中心Oから9cm離れた位置に固定する。従って、開閉カバーの全閉状態から全開状態の範囲内で、θが90度になるとき、即ち、開閉カバーの重心位置C及び回転中心Oと、ガススプリングの先端部B及び基端部Aの4点が一直線上にあるとき、ガススプリングのストロークABの長さは最長の18cmとなる。本実施例で使用するガススプリングの反力は、ストローク長18cmのときに125Nであり、ストローク長が1mm縮む(或いは伸びる)毎に反力が0.30N増加(或いは減少)する。さらに、このガススプリングが有する静摩擦力fは、ガススプリングのストローク長に関わらず、その伸縮方向にそれぞれ15Nとする。
【0028】
上記の条件により、開閉カバートルクTcの値、ガススプリングトルクTbの値、及びこれらの合計値Tb+Tcを計算した結果が、図6である。ここでは、開閉カバーが閉じる方向に働くトルクの値を正のトルク値として取り扱っている。また、ここでのガススプリングトルクTbの値には、ガススプリングが有する静摩擦力fに起因する成分は含んでいない。
【0029】
次に、上述の開閉カバートルクTcの値とガススプリングトルクTbの値の合計値Tb+Tcと、ガススプリングの静止トルクTf+、Tf-の値とを計算した結果を図7に示す。図7から明らかなように、θが45度から135度の範囲、即ち本実施例における開閉カバーの全閉状態から全開状態の間の全ての範囲において、開閉カバートルクの値とガススプリングトルクの値の合計値Tb+Tcは、静止トルクTf+、Tf-の値の範囲内にある。従って、開閉カバーは全閉位置から全開位置の間の任意の位置で静止する。
【0030】
図8は、上述のパラメータを用いて、開閉カバートルクTcがθが45度から135度の間のいずれの位置においてもガススプリングトルクTbと静止トルクTf+、Tf-の合計値の範囲内にあることを示す図である。開閉カバートルクとガススプリングトルクは正負が逆の値を有するトルクであるが、より分かりやすくするため、ここではガススプリングトルクの正負を逆にして示している。図8から分かるように、開閉カバーがいずれの位置で、開閉カバートルクTcの値は、ガススプリングトルクTbの値と静止トルクTf+、Tf-の値の合計値の範囲内にある。
【0031】
なお、上記の実施例では、説明を簡便に行うため、ガススプリングの基端部固定位置を開閉カバーの回転中心Oに対して鉛直方向の下方位置Aとし、先端部固定位置を開閉カバーの回転中心Oと開閉カバーの重心位置Cが成す線分OB内の位置とした。また、回転中心Oからガススプリングの基端部固定位置A、先端部固定位置Bへの距離を同一にした。しかし、上述したように、開閉カバートルクTcの値とガススプリングトルクTbの値の合計値が、静止トルクTf+、Tf-の値の範囲内になるように計算された配置であれば、適宜、ガススプリングの基端部、先端部の固定位置を変更することができる。例えば、開閉カバーの構造上、上記実施例において示した位置にガススプリングの先端部を固定することが不可能な場合には、開閉カバーの回転中心を基点とし、前記カバーの重心位置を通る半直線を、開閉カバーの開閉方向に±5度程度回転させた範囲内の位置にガススプリングの先端部固定位置を設けても良い。
【実施例2】
【0032】
実施例1の構成に加えて、ガススプリングの基端部固定位置Aを変化させることが可能な機構をさらに備える分析装置のカバー開閉機構について、実施例1と同様、具体的な数値を用いて説明する。実施例2においても、開閉カバーに関する各パラメータ、及びガススプリングの先端部固定位置は実施例1と同じであるが、実施例1において説明した分析装置のカバー開閉機構の長期間使用に伴い、ガススプリングの反力が低下し、ストローク長が18cmのときの反力が110Nまで低下した場合を例に説明する。
【0033】
上記のとおり反力が低下すると、図9に示すように、開閉カバートルクTcの値とガススプリングトルクTbの値の合計値が、静止トルクTf+、Tf-の値の範囲を超える角度が現れる。このように、ガススプリングの反力が、上述した要件を満たす反力以下まで低下すると、前記角度の位置において開閉カバーを静止させることができなくなる。
【0034】
このような場合であっても、ガススプリングの基端部固定位置Aを再調整する機構を備えておけば、再度、任意の位置において開閉カバーを静止させることができる位置にガススプリングの基端部Aを固定することができる。本実施例の場合、例えばガススプリングの基端部固定位置Aを開閉カバーの回転中心Oの直下で11cm離れた位置に再調整すれば、図10に示すように、開閉カバートルクTcの値とガススプリングトルクTbの値の合計値が、静止トルクTf+、Tf-の値の範囲内となり、再び、全ての位置において開閉カバーを静止させることが可能になる。
【0035】
なお、実施例2においても、説明を簡便に行うために、ガススプリングの基端部固定位置を開閉カバーの回転中心を含む鉛直方向の下方位置A、先端部固定位置を前記回転中心Oと開閉カバーの重心Cが成す線分OC内の位置Bとしたが、実施例1と同様、開閉カバートルクの値とガススプリングトルクの値の合計値が、静止トルクの2つの値の範囲内になる位置であれば、適宜、ガススプリングの基端部、先端部の固定位置を変更することが可能である。
【0036】
上述したように、ガススプリングの基端部固定位置A、先端部固定位置Bは実施例に示したものに限定されないが、本発明を実現するためには、ガススプリングの反力ベクトルFbが、開閉カバーの全閉から全開の間のいずれの位置においてもベクトルOCよりも鉛直上方を向くように、ガススプリングの基端部固定位置A、先端部固定位置Bを設定する必要がある。これは、ガススプリングトルクTbを開閉カバートルクTcを相殺するように働かせる、即ちガススプリングトルクTbと開閉カバートルクTcの値が常に正負逆の値とするための要件である。
【0037】
一例として、ガススプリングの先端部Bを開閉カバーの回転中心Oを基点とし、重心Cを通る半直線上の位置に固定した場合を説明する。開閉カバーの全閉時の重心位置をCc、開閉カバーの全開時の重心位置をCoとすると、図11に示すように、開閉カバーの回転中心O及び開閉カバーの全閉時の重心位置Ccを通る直線と、開閉カバーの回転中心O及び開閉カバーの全開時の重心位置Coを通る直線と、により挟まれる領域であって、前記回転中心Oの鉛直方向の下方位置を含む領域24の範囲内にガススプリングの基端部固定位置Aを設定することができる。しかし、開閉カバーの構造や分析装置筐体の構造等の制約がない場合には、ガススプリングの基端部固定位置Aを開閉カバーの回転中心Oを含む鉛直方向の下方位置とすることが望ましい。これにより、最低限のガススプリングの静摩擦力により、任意の位置で開閉カバーを静止させることができ、使用者が開閉する際に要する力も最小限に留めることができる。
【0038】
上記実施例は一例であって、本発明の趣旨に沿って適宜変形や修正を行うことが可能である。例えば、上記実施例2では、ガススプリングの弾性反力が変化した場合に、基端部固定位置Aを変化させる機構を設けることにより、再び開閉カバーを静止可能とするようにしたが、先端部固定位置Bを変化させる機構を設けることにより、再び開閉カバーを静止可能とするような構成にすることもできる。上述したように、先端部固定位置Bは、ガススプリングの反力ベクトルFbが、開閉カバーの全閉から全開の間のいずれの位置においてもベクトルOCよりも鉛直上方を向くような位置である限り、適宜設定することが可能である。
【0039】
また、開閉カバーの回動に対して静摩擦力を有する静止補助機構を備えてもよい。これにより、カバー開閉機構の静止トルク値を大きくすることができ、開閉カバーをより一層安定して静止させることができる。このような静止補助機構は、例えば開閉カバーの回転軸にロータリーダンパーを設けることや、ガススプリングの基端部固定位置A及び/又は先端部固定位置Bに開閉カバーの回動と同期するガススプリングの回動に対して静摩擦力を有する機構を設けることにより構成することができる。
【符号の説明】
【0040】
10a、10b、23…ガススプリング
11…シリンダ
12…気体
13…ピストン
14…オリフィス
15…オイル
16…ロッド
17…フリーピストン
20…分析装置のカバー開閉機構
21…筐体
22…開閉カバー
24…基端部固定可能範囲
【技術分野】
【0001】
本発明は、分析装置の筐体の開口部を覆うカバーを開閉させる、分析装置の開閉カバー機構に関する。
【背景技術】
【0002】
分析装置では必要に応じて装置の筐体に開口部を設け、その開口部を開閉可能なカバーで覆うことが一般的に行われている。例えば質量分析装置では、所定時間使用する度に取り外して清掃する必要があるイオン源の取出口に、ヒンジを介して上下方向に開閉可能なカバーが取り付けられている(特許文献1参照)。また、蛍光X線分析装置では、試料室における試料の取出口に、ヒンジを介して上下方向に開閉可能なカバーが取り付けられている(特許文献2参照)。また、特許文献2に記載されているように、カバーの重量が大きい場合には、カバーを開閉するための補助機構としてガススプリングを用いることがある。
【0003】
ガススプリングの基本的な構造を図1(a)に示す。ガススプリング10aは、シリンダ11とその内部に挿入されるロッド16、及びロッドの先端に固定されたピストン13から成る。シリンダ11内には気体12が充填されている。ピストン13は外径部がシリンダ11の壁に密に接触するように設けられており、シリンダ11内部を先端側(図の上方)区画と基端側(下方)区画に2区分しているが、ピストン13にはシリンダ11内の気体が両区画間で自由に流通可能となるようにオリフィス14が設けられている。ロッド16をシリンダ11に押し込むと、シリンダ11内部の気体12は狭くなる方の区画からオリフィス14を通じて広くなる方の区画に流通するが、シリンダ11内部全体としては、押し込まれたロッドの体積分だけ気体12が圧縮され、その圧縮反力がバネとして作用する。ロッド16を引き出すときは、その逆に、引き出されたロッド16の体積分に相当する気体12の拡張反力がバネとして作用する。そして、ガススプリング10aの伸縮動作時にはそれらに加え、ピストン13の移動に伴うシリンダ11の内壁とピストン13の外径部との摺動による所定の摺動抵抗が生じる。
【0004】
ガススプリングの別の例を図1(b)に示す。このガススプリング10bは、上記ガススプリング10aで用いられているシリンダ11、ロッド16及びピストン13の他に、シリンダ11の先端側にフリーピストン17が設けられており、フリーピストン17よりも先端側に気体が、基端側(ロッド16側)にはオイル15が封入されている。ピストン13には上記ガススプリング10aと同様、オリフィス14が設けられている。このガススプリング10bでは、ロッド16に接続されたピストン13の押し込みによって、押し込まれたロッド16の体積分だけ、気体12が圧縮される構造である点に関しては、上述のガススプリング10aと同じである。しかし、図1(b)のガススプリング10bでは、伸縮動作時に上記摺動抵抗に加えて、基端側に封入されたオイル15のオリフィス14通過に伴う所定の流通抵抗も生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001-74695号公報
【特許文献2】実登3140800号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ガススプリングを用いた従来の分析装置では、作業者がカバーから手を離すと、カバーは全閉状態、或いは全開状態になるまで緩やかに移動し続けて静止する。しかし、種々の分析装置では、筐体内に埃等が入ることをできる限り防ぐために、カバーを途中まで開けた状態で、機器の接続状態の確認や試料の載置位置の微調整等を行うことがある。その際、機器使用者は途中まで開けたカバーを手で支えながら作業をしなければならず、作業性の点で問題があった。
【0007】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、作業者がカバーから手を離しても、任意の開閉位置でカバーを静止させることができる分析装置のカバー開閉機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために成された本発明に係る分析装置のカバー開閉機構は、
a) 分析装置の筐体の開口部を覆い、水平方向の回転軸を中心とする回転により該開口部を開閉するカバーと、
b) 基端部が前記筐体に、先端部が前記カバーに取り付けられ、伸縮に対して所定の弾性反力特性を有し、伸縮の双方向の外力に対して所定の静摩擦力を有するガススプリングと、
を備え、
前記回転軸に垂直な面において、
前記カバーの回転中心と前記カバーの全閉位置における重心位置を通る直線と、前記回転中心と前記カバーの全開位置における重心位置を通る直線と、により挟まれる領域のうち、前記回転中心の直下位置を含む領域内に前記ガススプリングの基端部固定位置を有し、
前記回転中心を基点とし、前記カバーの重心位置を通る半直線の略直線上に前記ガススプリングの先端部固定位置を有するものであり、
前記カバーの回転に伴って変化する、カバーの自重に起因して生じる前記回転軸周りのカバートルク値と、前記ガススプリングの弾性反力により生じる前記回転軸周りのガススプリングトルク値との合計値が、前記ガススプリングの伸縮の双方向の外力に対する前記ガススプリングの静摩擦力から求められる前記回転軸周りの静止トルク値の範囲内となるように設定されている
ことを特徴とする。
【0009】
なお、上記「基端部」「先端部」は、先にガススプリングの構造を説明する際に使用した「基端部」「先端部」と一致していてもよいし、逆でもよい。また、「弾性反力」とは、ガススプリングの伸縮距離に比例する反力のことをいう。さらに、上記の静止トルク値は、ガススプリングを伸縮のいずれかの方向に動かそうとする際に生じる前記静摩擦力を、前記回転軸周りのトルク値に換算した値のことである。前記回転中心を基点とし、前記カバーの重心位置を通る半直線上の略直線上に前記ガススプリングの先端部固定位置を有するとは、前記半直線上に前記先端部固定位置を有するものに限らず、前記半直線から少し外れた位置に前記先端部固定位置を有するものを含むことをいう。
【0010】
前記ガススプリングの基端部は前記回転中心の直下位置に、先端部は前記開閉カバーの回転中心を基点として重心位置とを結ぶ半直線上の位置に、それぞれ固定することが望ましい。これにより、前記カバーの重心位置が前記回転中心の直上にあるときを中心として、前記スプリングトルク値は開閉カバーの開閉角に対して対称に変化する。これにより、ガススプリングの仕様の選定、ガススプリングの基端部、先端部固定位置等の設定に係る計算を容易に行うことができ、また、これらのパラメータの許容範囲を広げることができる。さらに、前記回転中心から、ガススプリングの基端部、先端部の固定位置への距離を同一に設定すれば、より一層容易に上記の設定に係る計算を行うことができる。
【0011】
本発明に係る分析装置のカバー開閉機構は更に、
c) 前記基端部の固定位置を変化させる機構
を備えてもよい。
この構成によれば、経時変化等によりガススプリングの弾性反力特性や静止摩擦特性が変化した場合に、前記ガススプリングの基端部固定位置を変更することにより、前記カバートルク値と、前記ガススプリングの弾性反力特性により生じる前記回転軸周りのガススプリングトルク値との合計値が、前記ガススプリングの伸縮の双方向の外力に対する前記回転軸周りの前記ガススプリングの静摩擦力から求められる静止トルク値の範囲内である状態が維持されるように、ガススプリングの基端部の固定位置を再調整することが可能である。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る分析装置のカバー開閉機構では、開閉カバーが全閉位置から全開位置の間のいずれの位置にあっても、前記カバートルク値と、前記ガススプリングトルク値との合計値が、前記ガススプリングの伸縮の双方向の外力に対する前記静止トルク値の範囲内となる。従って、上記のように、前記カバーの全閉位置から全開位置の間のいずれの位置においても、前記カバートルク値と前記ガススプリングトルク値との合計値が0でなくとも、ガススプリングが有する静摩擦力の効果によって、開閉カバーを全ての位置で静止させることができる。このため、機器の接続状態の確認や試料の載置位置の微調整等の作業を行う際に、機器使用者がカバーを支えることなく、前記の各種作業のために必要な任意の開度でカバーを静止させて作業を行うことができる。これにより、機器への埃等の進入を最小限に抑え、かつ機器使用者の作業効率を格段に向上させることができる。
【0013】
また、ガススプリングの基端部の固定位置を調整する機構を備えておくことにより、長期間使用した際にガススプリングの弾性反力が低下した場合や、新たなガススプリングに取り替えた場合であっても、上述の特徴を満たすようにガススプリングの基端部の固定位置を再調整することが可能となり、再び開閉カバーをいずれの位置においても静止させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】ガススプリングの一例を示す図。
【図2】ガススプリングの動作特性を説明するグラフ。
【図3】本発明に係る分析装置のカバー開閉機構の断面を示す図。
【図4】開閉カバーが全閉位置と全開位置の中間位置にある時に生じる力を示す図。
【図5】開閉カバートルク値とガススプリングトルク値の算出に係るベクトルの関係を示す図。
【図6】実施例1における開閉カバートルク値、ガススプリングトルク値、及びこれらの合計値の計算結果を示す図。
【図7】実施例1における開閉カバートルク値とガススプリングトルク値の合計値、及び静止トルク値の計算結果を示す図。
【図8】実施例1における開閉カバートルク値と、ガススプリングトルク値と静止トルク値の合計値の関係を示す図。
【図9】実施例2において、基端部固定位置を再調整する前の開閉カバートルク値とガススプリングトルク値の合計値、及び静止トルク値の計算結果を示す図。
【図10】実施例2において、基端部固定位置を再調整した後の開閉カバートルク値とガススプリングトルク値の合計値、及び静止トルク値の計算結果を示す図。
【図11】基端部固定可能範囲の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
はじめに、ガススプリングのストローク長−反力特性について説明する。前述の通り、ガススプリングは、ロッドが押し込まれると、シリンダ内部に充填された気体が押し込まれたロッドの体積分だけ圧縮され、圧縮反力を増大させる特性を有する。また、ガススプリングが伸縮する際には、シリンダの内壁とピストン外径部等の摺動による摺動抵抗、及び内部に封入されたオイルのオリフィス部通過による流通抵抗に起因する静摩擦力が生じる。従って、ガススプリングのストローク長−反力は図2に示すような特性を示す。図2に示すfがガススプリングの静摩擦力の値であり、ガススプリングの仕様に応じて決まっている。
【0016】
図2に示すようなストローク長−反力、静摩擦力特性を有するガススプリングの動作について説明する。ガススプリングのストローク長がkのとき、図2に示す特性を有するガススプリングの弾性反力はFkである。ガススプリングのロッド押し込み方向に加わる力の大きさがFk-f以下になるとストローク長が伸びる方向に、Fk+f以上になるとストローク長が縮む方向にそれぞれ変動するが、ガススプリングのロッド押し込み方向にかかる力がFk-fからFk+fの範囲内である場合には、ガススプリングが有する静摩擦力fのため、ガススプリングは伸縮しないで静止状態を保つ。
【0017】
本発明に係る分析装置のカバー開閉機構の一実施例の断面図を図3に示す。この分析装置のカバー開閉機構20は、開口部を有する分析装置の筐体21と、開口部を覆う開閉カバー22、ガススプリング23により構成される。図3(a)は開閉カバー22の全閉状態を示す。図中の点Oは開閉カバー22の回転中心、点Aはガススプリング23の基端部固定位置、点Bはガススプリング23の先端部固定位置、点Cは開閉カバー22の重心位置を示す。この例では、図3に示すように、ガススプリング23は、基端部が回転中心Oに対して鉛直方向の下方位置Aに、先端部が回転中心Oを中心として前記基端部固定位置Aを含む円周と、線分OCの交点位置Bに固定されている。なお、ここでは説明を簡便に行うために回転中心Oからガススプリング23の基端部固定位置A、先端部固定位置Bへの距離を同一にしたが、ガススプリング23の基端部の固定位置A、先端部の固定位置Bはこれに限定されるものではない。
【0018】
図3に示す実施例において、開閉カバー22が全閉と全開の間の位置にある時に生じている力を図4により説明する。図中のrは開閉カバーの回転中心Oからガススプリング先端部固定位置Bへのベクトル、Rは前記回転中心Oから開閉カバーの重心位置Cへのベクトル、Fbはガススプリングの弾性反力ベクトル、Fcは開閉カバーの自重により生じる力のベクトルである。このガススプリングの弾性反力ベクトルFbは、ガススプリングが有する静摩擦力fに係るベクトル成分を含まない。また、開閉カバーの重心位置Cと回転中心Oを結ぶ線分OCと開閉カバーの全閉方向の水平面がなす角をθ、ガススプリングの基端部Aと回転中心Oを結ぶ線分AOとガススプリングの基端部Aと先端部Bを結ぶ線分ABがなす角(∠OAB)をαとする。なお、Tbはガススプリングの弾性反力により生じるトルク(以下、ガススプリングトルクとする)が働く方向、Tcは開閉カバーの自重により生じるトルク(以下、開閉カバートルクとする)が働く方向を示す。
【0019】
次に、ガススプリングトルクTb、開閉カバートルクTcについて説明する。ガススプリングトルクTbはrとFbの両ベクトルの外積、開閉カバートルクTcはRとFcの両ベクトルの外積によりそれぞれ算出される。図5(a)に開閉カバートルクTcを生じさせるベクトルR、Fcとこれらの成す角度、図5(b)、(c)にガススプリングトルクTbを生じさせるベクトルr、Fbとこれらの成す角度をそれぞれ示す。図5(b)は開閉カバーがθ<90度の位置にある場合であり、図5(c)は開閉カバーがθ>90度の位置にある場合である。これらを用いると、θ<90度の範囲では、θの増加と共にαは減少し、
Tc=R*Fc=|R||Fc|sin(90°+θ)=|R||Fc|cosθ、
Tb=r*Fb=|r||Fb|sin{270°+(θ+α)}=-|r||Fb|cos(θ+α)
となり、θ>90度の範囲では、θの増加と共にαも増加し、
Tc=R*Fc=|R||Fc|sin(90°+θ)=|R||Fc|cosθ、
Tb=r*Fb=|r||Fb|sin{θ-(90°+α)}=-|r||Fb|cos(θ-α)
となる。θ=90度の時、即ち開閉カバー22が図3(b)で示した位置にある時には、Tc、Tbの値は共に0となる。なお、上式中の*はベクトルの外積を示す。
【0020】
まず、開閉カバートルクTcの値について説明する。開閉カバーの重量をM、重力加速度ベクトルをgとすると、Fc=Mgとなる。従って、開閉カバーの自重に起因して生じるトルクTcは
Tc=|R|M|g|cosθ
となる。従って、開閉カバートルクTcの値は開閉カバーの開閉角のみに依存して変化し、cos曲線を描く。
【0021】
続いて、ガススプリングトルクTbの値について説明する。ガススプリングトルクTbは、図4に示したように、開閉カバートルクTcと反対方向に働くトルクである。ガススプリングトルクTbの値は、上述した角度αだけでなく、ガススプリングの伸縮に伴う弾性反力Fbの変化にも依存して変化するため、後述する具体的な実施例において計算結果を説明する。しかし、ガススプリングトルクTbの値は、ガススプリングのストローク長−反力特性、及び基端部固定位置、先端部固定位置を適宜設定することにより、本発明の特徴を満たすように調整することができる。
【0022】
ガススプリングトルクTbの値と開閉カバートルクTcの値の合計値が0であれば、ガススプリングが有する静摩擦力の大きさに関係なく開閉カバーはその位置で静止する。しかし、一般にこれを満たす位置は開閉カバー22の図3(b)に示した位置のみであり、それ以外の中間位置ではTbとTcの合計値は0にはならず、開閉カバーの開方向あるいは閉方向へのトルク値が残る。
【0023】
さらに静止トルクTfについて説明する。ガススプリングの静摩擦力fは、上述の通り、ガススプリングの伸縮の双方向に働く力である。ガススプリングの縮み方向に対して働く静摩擦力をf+、伸長方向に対して働く静摩擦力をf-とし、これらから算出される静止トルク値をそれぞれTf+、Tf-とすると、θ<90度の範囲では、
Tf+=r*f+=-|r||f|cos(θ+α)、
Tf-=r*f-=|r||f|cos(θ+α)
となり、θ>90度の範囲では、
Tf+=r*f+=-|r||f|cos(θ-α)、
Tf-=r*f-=|r||f|cos(θ-α)
となる。
【0024】
ガススプリングトルクTbの値と開閉カバートルクTcの値の合計値が、静止トルクTf+の値とTf-の値の間の値であれば、ガススプリングが有する静摩擦力により、開閉カバーは開閉せずに静止する。即ち、開閉カバーの全閉位置から全開位置の全ての位置において、開閉カバートルクTcとガススプリングトルクTbの合計値が、静止トルク値Tf+とTf-の間の値になるようにガススプリングの仕様、固定位置を設定すれば、開閉カバーを任意の位置において静止させることができる。
【0025】
また、分析装置のカバー開閉機構には、ガススプリングの基端部固定位置を調整する機構を備えることが望ましい。こうした機構を備えておけば、経時変化等によってガススプリングの弾性反力や静止摩擦力が変化した場合や、新しいガススプリングに交換した場合等であっても、開閉カバートルクTcの値とガススプリングトルクTbの値の合計値が、静止トルクTf+の値とTf-の値の間の値になるようにガススプリングの基端部の固定位置を変化させることが可能であり、再び開閉カバーを任意の位置において静止させることができる。
【実施例1】
【0026】
以下、具体的な数値を用いた実施例においてトルク値を計算した結果である図6〜図8を用いて説明する。本実施例においても、開閉カバーの重心位置Cと回転中心O、及びガススプリングの基端部固定位置A、先端部固定位置Bの関係や、これらが成す角θ、αの表記は図3、4と同じである。この実施例では、分析装置の開閉カバーの重量を2kg、開閉カバーの回転中心Oと開閉カバーの重心位置Cの距離を30cmとする。また、開閉カバーの回転軸に垂直な断面において、開閉カバーの全閉時に、開閉カバーの回転中心Oと重心Cを結ぶ線分OCは、開閉カバーの全閉方向の水平面と45度の角度をなし、開閉カバーの全開時に、前記線分OCは開閉カバーの全開方向の水平面と45度の角度をなすものとする。即ち、開閉カバーが全閉状態から全開状態に移動するのに伴い、θは45度から135度の範囲内で変化する。
【0027】
ガススプリングは、基端部Aを開閉カバーの回転中心Oから9cm離れた直下の位置に固定し、先端部Bを、開閉カバーの回転中心Oと開閉カバーの重心位置Cを結ぶ線分OC内で、前記回転中心Oから9cm離れた位置に固定する。従って、開閉カバーの全閉状態から全開状態の範囲内で、θが90度になるとき、即ち、開閉カバーの重心位置C及び回転中心Oと、ガススプリングの先端部B及び基端部Aの4点が一直線上にあるとき、ガススプリングのストロークABの長さは最長の18cmとなる。本実施例で使用するガススプリングの反力は、ストローク長18cmのときに125Nであり、ストローク長が1mm縮む(或いは伸びる)毎に反力が0.30N増加(或いは減少)する。さらに、このガススプリングが有する静摩擦力fは、ガススプリングのストローク長に関わらず、その伸縮方向にそれぞれ15Nとする。
【0028】
上記の条件により、開閉カバートルクTcの値、ガススプリングトルクTbの値、及びこれらの合計値Tb+Tcを計算した結果が、図6である。ここでは、開閉カバーが閉じる方向に働くトルクの値を正のトルク値として取り扱っている。また、ここでのガススプリングトルクTbの値には、ガススプリングが有する静摩擦力fに起因する成分は含んでいない。
【0029】
次に、上述の開閉カバートルクTcの値とガススプリングトルクTbの値の合計値Tb+Tcと、ガススプリングの静止トルクTf+、Tf-の値とを計算した結果を図7に示す。図7から明らかなように、θが45度から135度の範囲、即ち本実施例における開閉カバーの全閉状態から全開状態の間の全ての範囲において、開閉カバートルクの値とガススプリングトルクの値の合計値Tb+Tcは、静止トルクTf+、Tf-の値の範囲内にある。従って、開閉カバーは全閉位置から全開位置の間の任意の位置で静止する。
【0030】
図8は、上述のパラメータを用いて、開閉カバートルクTcがθが45度から135度の間のいずれの位置においてもガススプリングトルクTbと静止トルクTf+、Tf-の合計値の範囲内にあることを示す図である。開閉カバートルクとガススプリングトルクは正負が逆の値を有するトルクであるが、より分かりやすくするため、ここではガススプリングトルクの正負を逆にして示している。図8から分かるように、開閉カバーがいずれの位置で、開閉カバートルクTcの値は、ガススプリングトルクTbの値と静止トルクTf+、Tf-の値の合計値の範囲内にある。
【0031】
なお、上記の実施例では、説明を簡便に行うため、ガススプリングの基端部固定位置を開閉カバーの回転中心Oに対して鉛直方向の下方位置Aとし、先端部固定位置を開閉カバーの回転中心Oと開閉カバーの重心位置Cが成す線分OB内の位置とした。また、回転中心Oからガススプリングの基端部固定位置A、先端部固定位置Bへの距離を同一にした。しかし、上述したように、開閉カバートルクTcの値とガススプリングトルクTbの値の合計値が、静止トルクTf+、Tf-の値の範囲内になるように計算された配置であれば、適宜、ガススプリングの基端部、先端部の固定位置を変更することができる。例えば、開閉カバーの構造上、上記実施例において示した位置にガススプリングの先端部を固定することが不可能な場合には、開閉カバーの回転中心を基点とし、前記カバーの重心位置を通る半直線を、開閉カバーの開閉方向に±5度程度回転させた範囲内の位置にガススプリングの先端部固定位置を設けても良い。
【実施例2】
【0032】
実施例1の構成に加えて、ガススプリングの基端部固定位置Aを変化させることが可能な機構をさらに備える分析装置のカバー開閉機構について、実施例1と同様、具体的な数値を用いて説明する。実施例2においても、開閉カバーに関する各パラメータ、及びガススプリングの先端部固定位置は実施例1と同じであるが、実施例1において説明した分析装置のカバー開閉機構の長期間使用に伴い、ガススプリングの反力が低下し、ストローク長が18cmのときの反力が110Nまで低下した場合を例に説明する。
【0033】
上記のとおり反力が低下すると、図9に示すように、開閉カバートルクTcの値とガススプリングトルクTbの値の合計値が、静止トルクTf+、Tf-の値の範囲を超える角度が現れる。このように、ガススプリングの反力が、上述した要件を満たす反力以下まで低下すると、前記角度の位置において開閉カバーを静止させることができなくなる。
【0034】
このような場合であっても、ガススプリングの基端部固定位置Aを再調整する機構を備えておけば、再度、任意の位置において開閉カバーを静止させることができる位置にガススプリングの基端部Aを固定することができる。本実施例の場合、例えばガススプリングの基端部固定位置Aを開閉カバーの回転中心Oの直下で11cm離れた位置に再調整すれば、図10に示すように、開閉カバートルクTcの値とガススプリングトルクTbの値の合計値が、静止トルクTf+、Tf-の値の範囲内となり、再び、全ての位置において開閉カバーを静止させることが可能になる。
【0035】
なお、実施例2においても、説明を簡便に行うために、ガススプリングの基端部固定位置を開閉カバーの回転中心を含む鉛直方向の下方位置A、先端部固定位置を前記回転中心Oと開閉カバーの重心Cが成す線分OC内の位置Bとしたが、実施例1と同様、開閉カバートルクの値とガススプリングトルクの値の合計値が、静止トルクの2つの値の範囲内になる位置であれば、適宜、ガススプリングの基端部、先端部の固定位置を変更することが可能である。
【0036】
上述したように、ガススプリングの基端部固定位置A、先端部固定位置Bは実施例に示したものに限定されないが、本発明を実現するためには、ガススプリングの反力ベクトルFbが、開閉カバーの全閉から全開の間のいずれの位置においてもベクトルOCよりも鉛直上方を向くように、ガススプリングの基端部固定位置A、先端部固定位置Bを設定する必要がある。これは、ガススプリングトルクTbを開閉カバートルクTcを相殺するように働かせる、即ちガススプリングトルクTbと開閉カバートルクTcの値が常に正負逆の値とするための要件である。
【0037】
一例として、ガススプリングの先端部Bを開閉カバーの回転中心Oを基点とし、重心Cを通る半直線上の位置に固定した場合を説明する。開閉カバーの全閉時の重心位置をCc、開閉カバーの全開時の重心位置をCoとすると、図11に示すように、開閉カバーの回転中心O及び開閉カバーの全閉時の重心位置Ccを通る直線と、開閉カバーの回転中心O及び開閉カバーの全開時の重心位置Coを通る直線と、により挟まれる領域であって、前記回転中心Oの鉛直方向の下方位置を含む領域24の範囲内にガススプリングの基端部固定位置Aを設定することができる。しかし、開閉カバーの構造や分析装置筐体の構造等の制約がない場合には、ガススプリングの基端部固定位置Aを開閉カバーの回転中心Oを含む鉛直方向の下方位置とすることが望ましい。これにより、最低限のガススプリングの静摩擦力により、任意の位置で開閉カバーを静止させることができ、使用者が開閉する際に要する力も最小限に留めることができる。
【0038】
上記実施例は一例であって、本発明の趣旨に沿って適宜変形や修正を行うことが可能である。例えば、上記実施例2では、ガススプリングの弾性反力が変化した場合に、基端部固定位置Aを変化させる機構を設けることにより、再び開閉カバーを静止可能とするようにしたが、先端部固定位置Bを変化させる機構を設けることにより、再び開閉カバーを静止可能とするような構成にすることもできる。上述したように、先端部固定位置Bは、ガススプリングの反力ベクトルFbが、開閉カバーの全閉から全開の間のいずれの位置においてもベクトルOCよりも鉛直上方を向くような位置である限り、適宜設定することが可能である。
【0039】
また、開閉カバーの回動に対して静摩擦力を有する静止補助機構を備えてもよい。これにより、カバー開閉機構の静止トルク値を大きくすることができ、開閉カバーをより一層安定して静止させることができる。このような静止補助機構は、例えば開閉カバーの回転軸にロータリーダンパーを設けることや、ガススプリングの基端部固定位置A及び/又は先端部固定位置Bに開閉カバーの回動と同期するガススプリングの回動に対して静摩擦力を有する機構を設けることにより構成することができる。
【符号の説明】
【0040】
10a、10b、23…ガススプリング
11…シリンダ
12…気体
13…ピストン
14…オリフィス
15…オイル
16…ロッド
17…フリーピストン
20…分析装置のカバー開閉機構
21…筐体
22…開閉カバー
24…基端部固定可能範囲
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a) 分析装置の筐体の開口部を覆い、水平方向の回転軸を中心とする回転により該開口部を開閉するカバーと、
b) 基端部が前記筐体に、先端部が前記カバーに取り付けられ、伸縮に対して所定の弾性反力特性を有し、伸縮の双方向の外力に対して所定の静摩擦力を有するガススプリングと、
を備え、
前記回転軸に垂直な面において、
前記カバーの回転中心と前記カバーの全閉位置における重心位置を通る直線と、前記回転中心と前記カバーの全開位置における重心位置を通る直線と、により挟まれる領域のうち、前記回転中心の直下位置を含む領域内に前記ガススプリングの基端部固定位置を有し、
前記回転中心を基点とし、前記カバーの重心位置を通る半直線の略直線上に前記ガススプリングの先端部固定位置を有するものであり、
前記カバーの回転に伴って変化する、カバーの自重に起因して生じる前記回転軸周りのカバートルク値と、前記ガススプリングの弾性反力により生じる前記回転軸周りのガススプリングトルク値との合計値が、前記ガススプリングの伸縮の双方向の外力に対する前記ガススプリングの静摩擦力から求められる前記回転軸周りの静止トルク値の範囲内となるように設定されている
ことを特徴とする分析装置のカバー開閉機構。
【請求項2】
更に、
c) 前記基端部の固定位置を変化させる機構、
を備えることを特徴とする、請求項1に記載の分析装置のカバー開閉機構。
【請求項3】
更に、
d) 前記先端部の固定位置を変化させる機構、
を備えることを特徴とする、請求項1又は2に記載の分析装置のカバー開閉機構。
【請求項4】
更に、
e) 前記開閉カバーの回転に対する静摩擦力を生じさせる静止補助機構、
を備えることを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の分析装置のカバー開閉機構。
【請求項5】
前記ガススプリング基端部の固定位置が、前記開閉カバーの回転中心を通る鉛直線上の下方位置であることを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載の分析装置のカバー開閉機構。
【請求項1】
a) 分析装置の筐体の開口部を覆い、水平方向の回転軸を中心とする回転により該開口部を開閉するカバーと、
b) 基端部が前記筐体に、先端部が前記カバーに取り付けられ、伸縮に対して所定の弾性反力特性を有し、伸縮の双方向の外力に対して所定の静摩擦力を有するガススプリングと、
を備え、
前記回転軸に垂直な面において、
前記カバーの回転中心と前記カバーの全閉位置における重心位置を通る直線と、前記回転中心と前記カバーの全開位置における重心位置を通る直線と、により挟まれる領域のうち、前記回転中心の直下位置を含む領域内に前記ガススプリングの基端部固定位置を有し、
前記回転中心を基点とし、前記カバーの重心位置を通る半直線の略直線上に前記ガススプリングの先端部固定位置を有するものであり、
前記カバーの回転に伴って変化する、カバーの自重に起因して生じる前記回転軸周りのカバートルク値と、前記ガススプリングの弾性反力により生じる前記回転軸周りのガススプリングトルク値との合計値が、前記ガススプリングの伸縮の双方向の外力に対する前記ガススプリングの静摩擦力から求められる前記回転軸周りの静止トルク値の範囲内となるように設定されている
ことを特徴とする分析装置のカバー開閉機構。
【請求項2】
更に、
c) 前記基端部の固定位置を変化させる機構、
を備えることを特徴とする、請求項1に記載の分析装置のカバー開閉機構。
【請求項3】
更に、
d) 前記先端部の固定位置を変化させる機構、
を備えることを特徴とする、請求項1又は2に記載の分析装置のカバー開閉機構。
【請求項4】
更に、
e) 前記開閉カバーの回転に対する静摩擦力を生じさせる静止補助機構、
を備えることを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の分析装置のカバー開閉機構。
【請求項5】
前記ガススプリング基端部の固定位置が、前記開閉カバーの回転中心を通る鉛直線上の下方位置であることを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載の分析装置のカバー開閉機構。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−32232(P2012−32232A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−170866(P2010−170866)
【出願日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】
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