説明

分析装置用冷却機構

【課題】消費電力を低減する。
【解決手段】蛍光X線センサ部Dを冷却する前方ペルチェ素子(1)と、前方ペルチェ素子(1)を冷却する後方ペルチェ素子(2)と、後方ペルチェ素子(2)を冷却する水冷手段(6,7,8)と、前方ペルチェ素子(1)を駆動する前方温度制御部(3)と、後方ペルチェ素子(2)の高温側温度が外気温度よりも高温になるように後方ペルチェ素子(2)を駆動する後方温度制御部(4)とを具備する。
【効果】後方ペルチェ素子(2)の高温側を経た冷却水は外気へ放熱し、外気から熱を受けないので、水冷手段(6,7,8)での消費電力を低減できる。前方ペルチェ素子(1)を駆動する前方温度制御部(3)と、後方ペルチェ素子(2)を駆動する後方温度制御部(4)とを独立に備えているので、前方ペルチェ素子(1)と後方ペルチェ素子(2)とを1個の温度制御部で駆動するよりも効率を向上でき、消費電力を低減できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分析装置用冷却機構に関し、さらに詳しくは、消費電力を低減することが出来る分析装置用冷却機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、X線センサ部を冷却する多段ペルチェ素子と、多段ペルチェ素子を冷却する水冷ユニットとを具備したX線検出器が知られている(特許文献1参照。)。
また、多段ペルチェ素子において、試料に近いペルチェ素子ほど駆動電流を小さくする必要があることが知られている(特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−308632号公報(図4)
【特許文献2】特開2003−258324号公報([0007])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来のX線検出器では、多段ペルチェ素子および水冷ユニットにおいて消費する電力が大きい問題点があった。
そこで、本発明の目的は、消費電力を削減することが出来る分析装置用冷却機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の観点では、本発明は、冷却対象(D)を冷却するために冷却対象(D)と熱的に連結された前方ペルチェ素子(1)と、前方ペルチェ素子(1)を冷却するために前方ペルチェ素子(1)と熱的に連結された後方ペルチェ素子(2)と、後方ペルチェ素子(2)を冷却するために後方ペルチェ素子(2)と熱的に連結された水冷手段(6,7,8)と、前方ペルチェ素子(1)を駆動する前方温度制御部(3)と、後方ペルチェ素子(2)の高温側温度が外気温度よりも高温になるように後方ペルチェ素子(2)を駆動する後方温度制御部(4)とを具備したことを特徴とする分析装置用冷却機構(10)を提供する。
上記第1の観点による分析装置用冷却機構では、後方ペルチェ素子(2)は、その高温側温度が外気温度よりも高温になるように駆動される。この結果、後方ペルチェ素子(2)の高温側を経た冷却水は外気へ放熱し、外気から熱を受けないので、水冷手段での消費電力を低減できる。また、前方ペルチェ素子(1)を駆動する前方温度制御部(3)と、後方ペルチェ素子(2)を駆動する後方温度制御部(4)とを独立に備えているので、前方ペルチェ素子(1)と後方ペルチェ素子(2)とを1個の温度制御部で駆動するよりも効率を向上でき、この点でも消費電力を低減できる。
【0006】
第2の観点では、本発明は、前記第1の観点による分析装置用冷却機構であって、後方ペルチェ素子(2)の高温側温度が分析装置の仕様における動作環境温度の最大値より高いことを特徴とする分析装置用冷却機構(10)を提供する。
上記第2の観点による分析装置用冷却機構では、外気温が分析装置の仕様における動作環境温度の最大値(例えば38℃)以下である場合に対応できる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の分析装置用冷却機構によれば、多段ペルチェ素子および水冷ユニットにおいて消費する電力を低減することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施例1に係る分析装置用冷却機構の構成を示す断面図である。
【図2】実施例1に係る分析装置用冷却機構の各部の温度および電力を示す説明図である。
【図3】比較例に係る分析装置用冷却機構の構成を示す断面図である。
【図4】比較例に係る分析装置用冷却機構の各部の温度及び電力を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図に示す実施例により本発明をさらに詳細に説明する。なお、これにより本発明が限定されるものではない。
【実施例】
【0010】
−実施例1−
図1は、実施例1に係る蛍光X線分析装置用冷却機構10を示す構成説明図である。
この蛍光X線分析装置用冷却機構10は、真空容器Cの検出窓Bから入射する蛍光X線を検出する蛍光X線センサ部Dの温度を測定するための温度センサ55と、蛍光X線センサ部Dを冷却するための前方ペルチェ素子1と、熱的に連結されるように前方ペルチェ素子1が取り付けられた金属またはセラミックの伝熱板9と、伝熱板9を介して前方ペルチェ素子1を冷却するために伝熱板9に熱的に連結されるように取り付けられた後方ペルチェ素子2と、伝熱板9の温度(=前方ペルチェ素子1の高温側温度=後方ペルチェ素子2の低温側温度)を測定するための温度センサ56と、後方ペルチェ素子2を冷却するために後方ペルチェ素子2に熱的に連結されるように取り付けられた水冷ブロック6と、真空容器Cの外側から水冷ブロック6へ冷却水を循環させるための冷却水管7と、真空容器Cの外側で冷却水の放熱を行う簡易排熱ユニット8と、前方ペルチェ素子1を駆動する前方温度制御部3と、後方ペルチェ素子2を駆動する後方温度制御部4とを具備している。
【0011】
図2に示すように、前方温度制御部3は、温度センサ55で測定される温度(=蛍光X線センサ部Dの温度)が−100℃となるように前方ペルチェ素子1を駆動する。前方ペルチェ素子1の高温側温度が15℃とするとき、これに要する電力は例えば31Wである。
後方温度制御部4は、温度センサ56で測定される温度(=伝熱板9の温度=前方ペルチェ素子1の高温側温度=後方ペルチェ素子2の低温側温度)が15℃になるように且つ高温側温度が外気温度以上になるように後方ペルチェ素子2を駆動する。後方ペルチェ素子2の高温側温度が例えば50℃とするとき、これに要する電力は例えば51Wである。
簡易排熱ユニット8は、水冷ブロック6で外気温度以上になった冷却水の温度を外気温度(図2の場合38℃)程度まで下げるものであり、例えば市販のパソコン用水冷ユニットを使用できる。水冷ブロック6で冷却水温度が例えば50℃になったとするとき、これに要する電力は例えば25Wである。
冷却水の温度は外気温度以下にならないため、外気から熱が流入することはない。
従って、全体で要する電力は、31W+51W+25W=107Wとなる
【0012】
−比較例−
図3は、比較例にかかる蛍光X線分析装置用冷却機構50を示す構成説明図である。
この蛍光X線分析装置用冷却機構50は、真空容器Cの検出窓Bから入射する蛍光X線を検出する蛍光X線センサ部Dの温度を測定するための温度センサ55と、蛍光X線センサ部Dを冷却するための前方ペルチェ素子1と、前方ペルチェ素子1を冷却するために前方ペルチェ素子1に熱的に連結されるように取り付けられた水冷ブロック6と、真空容器Cの外側から水冷ブロック6へ冷却水を循環させるための冷却水管7およびポンプ51と、真空容器Cの外側で冷却水の冷却を行うために冷却管7に熱的に連結されるように取り付けられた冷却ブロック52と、冷却ブロック52の温度(=後方ペルチェ素子2の低温側温度)を測定するための温度センサ56と、冷却ブロック52で冷却水を冷却するために冷却ブロック52に熱的に連結されるように取り付けられた後方ペルチェ素子2と、後方ペルチェ素子2を冷却するために後方ペルチェ素子2に熱的に連結されるように取り付けられたラジエータ53と、前方ペルチェ素子1を駆動する前方温度制御部3と、後方ペルチェ素子2を駆動する後方温度制御部4とを具備している。
【0013】
図4に示すように、前方温度制御部3は、温度センサ55で測定される温度(=蛍光X線センサ部Dの温度)が−100℃となるように前方ペルチェ素子1を駆動する。前方ペルチェ素子1の高温側温度が30℃とするとき、これに要する電力は例えば60Wである。
後方温度制御部4は、温度センサ56で測定される温度(=後方ペルチェ素子2の低温側温度)が25℃になるように後方ペルチェ素子2を駆動する。外気温度が例えば38℃とするとき、これに要する電力は例えば180Wである。
冷却水の温度は25℃〜30℃である。外気温度が例えば38℃とすると、外気から熱が流入する。冷却水に対して外気から流入する熱量は例えば15Wである。
また、ポンプ51でも冷却水に熱が流入する。これは例えば15Wである。
従って、全体で要する電力は、60W+180W+15W+15W=270Wとなってしまう。
【0014】
実施例1に係る蛍光X線分析装置用冷却機構10によれば次の効果が得られる。
(1)後方ペルチェ素子2は、その高温側温度が外気温度よりも高温になるように駆動される。この結果、後方ペルチェ素子2の高温側を経た冷却水は外気へ放熱し、外気から熱を受けないので、水冷手段での消費電力を低減できる。結露対策も不要になる。
(2)前方ペルチェ素子1を駆動する前方温度制御部3と、後方ペルチェ素子2を駆動する後方温度制御部4とを独立に備えているので、前方ペルチェ素子1と後方ペルチェ素子2とを1個の温度制御部で駆動するよりも効率を向上でき、この点でも消費電力を低減できる。
(3)簡易放熱ユニット8で済み、小型・安価になる。
【産業上の利用可能性】
【0015】
本発明の分析装置用冷却機構は、蛍光X線分析装置用冷却機構として利用できる。
【符号の説明】
【0016】
1 前方ペルチェ素子
2 後方ペルチェ素子
3 前方温度制御部
4 後方温度制御部
6 水冷ブロック
7 冷却水管
8 簡易排熱ユニット
10 蛍光X線分析装置用冷却機構
55,56 温度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却対象(D)を冷却するために冷却対象(D)と熱的に連結された前方ペルチェ素子(1)と、前方ペルチェ素子(1)を冷却するために前方ペルチェ素子(1)と熱的に連結された後方ペルチェ素子(2)と、後方ペルチェ素子(2)を冷却するために後方ペルチェ素子(2)と熱的に連結された水冷手段(6,7,8)と、前方ペルチェ素子(1)を駆動する前方温度制御部(3)と、後方ペルチェ素子(2)の高温側温度が外気温度よりも高温になるように後方ペルチェ素子(2)を駆動する後方温度制御部(4)とを具備したことを特徴とする分析装置用冷却機構(10)。
【請求項2】
請求項1に記載の分析装置用冷却機構であって、搭載される分析装置の仕様における動作環境温度の最大値より後方ペルチェ素子(2)の高温側温度が高いことを特徴とする分析装置用冷却機構(10)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−255915(P2010−255915A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−105759(P2009−105759)
【出願日】平成21年4月24日(2009.4.24)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】