説明

分析装置

【課題】小型化したキュベットに対しても洗浄ノズルとキュベットとの間のクリアランスを確保できる分析装置を提供すること。
【解決手段】本発明にかかる分析装置は、吸引ノズル132および吐出ノズル131にそれぞれ昇降機構を設け、吸引ノズル132の昇降動作および吐出ノズル131の昇降動作を別個に制御し、吸引ノズル132がキュベット5内の排出対象である液体Laの吸引とキュベット5から溢れる洗浄液Lsの吸引との双方を行なえるようにすることによって、洗浄ノズルを吸引ノズル132および吐出ノズル131の2本に削減して、小型化したキュベットに対しても洗浄ノズルとキュベットとの間のクリアランスを確保している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分析処理が終了したキュベットを洗浄してキュベットを繰り返し使用する分析装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、血液や体液等の検体を自動的に分析する装置として、試薬が分注されたキュベットに検体を加え、キュベット内の試薬と検体の間で生じた反応を光学的に検出する分析装置が知られている。このような分析装置においては、光学的測定が終了したキュベット内の混合液を吸引して排出するとともに、洗剤や洗浄水等の洗浄液を注入および吸引することで洗浄を行ない、キュベットを繰り返し利用している。このため、分析装置は、排出対象の液体をキュベットから吸引する吸引ノズルおよび空になったキュベット内に洗浄液を注入する吐出ノズルを備える。分析装置は、洗浄効率を高めるためにキュベットの容積以上の洗浄液を注入していることから、キュベットから洗浄液が溢れ出ないように、吸引ノズルおよび吐出ノズルに加え、洗浄液の溢れ分を吸引するオーバーフロー吸引ノズルをさらに備えた構成を有する(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平6−230014号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年では、血液などの体液を分析する分析装置に対し、患者からの血液採取の負担軽減などのために分析処理に使用する検体の微量化が要求されている。この検体の微量化を実現するには、検体の攪拌性能および測光性能を確保するために、キュベットの小型化が必要である。
【0005】
しかしながら、従来の分析装置では、吸引ノズル、吐出ノズルおよびオーバーフロー吸引ノズルの3本のノズルで洗浄機構が構成されているため、この構成のままキュベットを小型化した場合にはキュベット洗浄時における3本の洗浄ノズルとキュベットとの間のクリアランスが確保できなくなり、キュベット内に3本の洗浄ノズルが挿入できずキュベットの洗浄処理そのものが実行できなくなるという問題があった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、小型化したキュベットに対しても洗浄ノズルとキュベットとの間のクリアランスを確保できる分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、この発明にかかる分析装置は、分析処理が終了したキュベットを洗浄してキュベットを繰り返し使用する分析装置において、キュベット内の液体を吸引する吸引ノズルと、洗浄液をキュベット内に注入する吐出ノズルと、前記吐出ノズルを鉛直方向に昇降させる吐出ノズル昇降機構と、前記吐出ノズルとは独立して前記吸引ノズルを鉛直方向に昇降させる吸引ノズル昇降機構と、前記吸引ノズルが前記吐出ノズルによる洗浄液注入処理に応じて前記キュベット内の排出対象である液体の吸引と前記キュベットから溢れる洗浄液の吸引との双方を行なえるように前記吸引ノズル昇降機構による前記吸引ノズルの昇降動作および前記吐出ノズル昇降機構による前記吐出ノズルの昇降動作を制御する制御機構と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
また、この発明にかかる分析装置は、前記制御機構は、前記キュベット内の排出対象である液体を吸引する場合には前記吸引ノズル昇降機構に前記吸引ノズルを前記キュベット内に下降させ、前記吐出ノズルから洗浄液の注入が開始された場合には、前記キュベットから溢れる洗浄液を吸引するために前記吸引ノズルに洗浄液を吸引させるとともに前記吸引ノズル昇降機構に前記吸引ノズルをオーバーフロー高さまで上昇させることを特徴とする。
【0009】
また、この発明にかかる分析装置は、前記制御機構は、前記吐出ノズルによる洗浄液の吐出が終了した場合、前記吸引ノズル昇降機構に前記吸引ノズルをキュベット外に上昇させるとともに、前記吐出ノズル昇降機構に前記吐出ノズルをキュベット外に上昇させることを特徴とする。
【0010】
また、この発明にかかる分析装置は、前記吸引ノズル昇降機構は、前記吸引ノズルが取り付けられた吸引ノズル支え部材と、前記吸引ノズル支え部材に接続し該吸引ノズル支え部材を上下させる吸引ノズル昇降用モーターと、前記吸引ノズル支え部材の高さを検出することによって該吸引ノズル支え部材に取り付けられた前記吸引ノズル先端の高さを検出する吸引ノズル高さ検出部と、を備え、前記制御機構は、前記吸引ノズル高さ検出部が検出した前記吸引ノズル先端の高さをもとに前記吸引ノズル昇降用モーターを動作させて前記吸引ノズルの昇降動作を制御することを特徴とする。
【0011】
また、この発明にかかる分析装置は、前記吐出ノズル昇降機構は、前記吐出ノズルが取り付けられた吐出ノズル支え部材と、前記吐出ノズル支え部材に接続し該吐出ノズル支え部材を上下させる吐出ノズル昇降用モーターと、前記吐出ノズル支え部材の高さを検出することによって該吐出ノズル支え部材に取り付けられた前記吐出ノズル先端の高さを検出する吐出ノズル高さ検出部と、を備え、前記制御機構は、前記吐出ノズル高さ検出部が検出した前記吐出ノズル先端の高さをもとに前記吐出ノズル昇降用モーターを動作させて前記吐出ノズルの昇降動作を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明にかかる分析装置においては、吸引ノズルおよび吐出ノズルにそれぞれ昇降機構を設け、吸引ノズルの昇降動作および吐出ノズルの昇降動作を独立して制御し、吸引ノズルがキュベット内の排出対象である液体の吸引とキュベットから溢れる洗浄液の吸引との双方を行なえるようにすることによって、洗浄ノズルを吸引ノズルおよび吐出ノズルのみに削減でき、小型化したキュベットに対しても洗浄ノズルとキュベットとの間のクリアランスを確保することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して、この発明の実施の形態である分析装置について、血液または尿などの体液を分析する分析装置を例に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一部分には同一の符号を付している。
【0014】
図1は、実施の形態にかかる分析装置を示す概略構成図である。図1に示すように、実施の形態にかかる分析装置1は、試薬テーブル2,3、反応槽4、検体容器移送機構8、分析光学系12、洗浄機構13および制御部15を備える。
【0015】
試薬テーブル2,3は、図1に示すように、それぞれ周方向に配置される複数の試薬容器2a,3aを保持し、駆動手段に回転されて試薬容器2a,3aを周方向に搬送する。反応槽4は、図1に示すように、複数のキュベット5が周方向に沿って配列され、試薬テーブル2,3の駆動手段とは異なる駆動手段によって正転或いは逆転されてキュベット5を搬送する。反応槽4は、一周期で時計方向に(1周−1キュベット)/4周回転し、四周期で(1周−1キュベット)周回転する。
【0016】
キュベット5は、容量が数nL〜数十μLと微量な容器であり、分析光学系12の発光部12aから出射された分析光(340〜800nm)に含まれる光の80%以上を透過する透明素材、例えば、耐熱ガラスを含むガラス,環状オレフィンやポリスチレン等の合成樹脂が使用される。キュベット5は、側壁と底壁とによって液体を保持する水平断面が四角形の液体保持部が形成され、液体保持部の上部に開口を有する四角筒形状のキュベットである。キュベット5は、反応槽4に配置され、反応槽4の近傍に設けた試薬分注機構6,7によって試薬テーブル2,3の試薬容器2a,3aから試薬が分注される。キュベット5は、内壁には検体や試薬等の液体に対する親和性処理が施されていてもよい。
【0017】
試薬分注機構6,7は、それぞれ水平面内を矢印方向に回動するアーム6a,7aに試薬を分注するノズル6b,7bが設けられ、洗浄水によってノズル6b,7bを洗浄する洗浄手段を有している。
【0018】
検体容器移送機構8は、図1に示すように、フィーダ9に配列した複数のラック10を矢印方向に沿って1つずつ移送する移送手段であり、ラック10を歩進させながら移送する。ラック10は、血液や尿などの体液である検体を収容した複数の検体容器10aを保持している。検体容器10aからは、検体容器移送機構8によって移送されるラック10の歩進が停止するごとに、水平方向に回動する駆動アーム11aとノズル11bとを有する検体分注機構11によって検体が各キュベット5へ分注される。検体分注機構11は、洗浄水によってノズル11bを洗浄する洗浄手段を有している。
【0019】
分析光学系12は、試薬と検体とが反応したキュベット5内の液体を分析するための分析光(340〜800nm)を出射するもので、図1に示すように、発光部12a,分光部12bおよび受光部12cを有している。発光部12aから出射された分析光は、キュベット5内の液体を透過し、分光部12bと対向する位置に設けた受光部12cによって受光される。受光部12cは、制御部15と接続され、受光した分析光の光量信号を制御部15へ出力する。
【0020】
洗浄機構13は、吸引ノズルによってキュベット5内の液体を吸引して排出した後、吐出ノズルから洗剤や洗浄水等の洗浄液を注入し、そして注入した洗浄液を吸引ノズルから吸引する動作を複数回繰り返すことにより、分析光学系12による測光が終了したキュベット5内を洗浄する。キュベット5は、洗浄機構13によって洗浄された後に、再利用される。
【0021】
制御部15は、例えば、CPUなどによって構成され、図1に示すように、分析装置1の各構成部と接続されてこれらの作動を制御する。制御部15は、キーボード等の入力部16から入力される分析指令に基づいて分析装置1の各構成部の作動を制御しながら分析動作を実行させるとともに、分析結果や警告情報の他、入力部16から入力される表示指令に基づく各種情報等をディスプレイパネル等の表示部17に表示する。分析部18は、発光部12aの出射光量と受光部12cが受光した光量に基づくキュベット5内の液体の吸光度に基づいて検体の成分濃度等を分析する。
【0022】
つぎに、図1に示す洗浄機構13について説明する。図2に示すように、洗浄機構13は、洗浄液をキュベット5内に注入する吐出ノズル131およびキュベット5内の液体を吸引する吸引ノズル132の2本の洗浄ノズルを備え、この吐出ノズル131および吸引ノズル132をキュベット5内に挿入してキュベット5の洗浄を行なう。吐出ノズル131および吸引ノズル132は、それぞれ独立して昇降可能である。すなわち、吸引ノズル132は、矢印Y1のように昇降する吐出ノズル131とは、独立して矢印Y2のように昇降する。
【0023】
分析装置1においては、洗浄機構13として、この吐出ノズル131および吸引ノズル132にそれぞれ昇降機構を設けて、吸引ノズル132の昇降動作および吐出ノズル131の昇降動作を独立して制御可能としている。
【0024】
図3に示すように、洗浄機構13は、吐出ノズル131を鉛直方向に昇降させる吐出ノズル駆動部133と、吐出ノズル131とは独立して吸引ノズル132を鉛直方向に昇降させる吸引ノズル駆動部136とを備える。吐出ノズル駆動部133は、吐出ノズル131を鉛直方向に昇降できる吐出ノズル昇降部134と、吐出ノズル131の高さを検出する吐出ノズル高さ検出部135とを有し、吸引ノズル駆動部136は、吐出ノズル131とは独立して吸引ノズル132を鉛直方向に昇降できる吸引ノズル昇降部137と、吸引ノズル132の高さを検出する吸引ノズル高さ検出部138とを有する。また、洗浄機構13は、吐出ノズル131と洗浄液タンクとに接続するチューブを介して洗浄液タンクから吐出ノズル131に洗浄液を送出する吐出ポンプを駆動する吐出ポンプ駆動部139aと、吸引ノズル132に接続するチューブを介して吸引ノズル132にキュベット5内の液体を吸引させる吸引ポンプを駆動する吸引ポンプ駆動部139bとを有する。なお、吸引ノズル132から吸引されたキュベット5内の液体は、図示しない排管を介して分析装置1外に排出される。
【0025】
吐出ノズル昇降部134は、図4に示すように、吐出ノズル131が取り付けられた吐出ノズル支え板1341と、この吐出ノズル支え板1341に一体となって設けられた支柱1343と、この支柱1343を支えるカム付きモーター1342とを備える。カム付きモーター1342が制御部15の制御によって駆動した場合、このカム付きモーター1342におけるカムの回転によって、カム付きモーター1342上の支柱1343が矢印Y3のように上昇または下降する。この支柱1343の上昇または下降にともなって支柱1343と一体である吐出ノズル支え板1341が上昇または下降することによって、吐出ノズル131が矢印Y1のように上昇または下降する。
【0026】
支柱1343側面には、複数のマークが付されており、吐出ノズル高さ検出部135は、このマークをカウントすることによって、支柱1343の高さを求め、求めた支柱1343の高さをもとに吐出ノズル支え板1341に取り付けられた吐出ノズル131先端の高さを取得する。たとえば、吐出ノズル高さ検出部135は、光を照射し、支柱1343におけるマーク付与部分からの反射光を処理して、カウントしたマーク数を検出する。吐出ノズル高さ検出部135は、取得した吐出ノズル131先端の高さを制御部15に出力する。
【0027】
制御部15は、吐出ノズル高さ検出部135が検出した吐出ノズル131先端の高さをもとに、カム付きモーター1342を動作させて吐出ノズル131の昇降動作を制御する。なお、支柱1343には、吐出ノズル131の昇降範囲を制限するためのストッパー1351が設けられている。
【0028】
吸引ノズル昇降部137は、図4に示すように、吸引ノズル132が取り付けられた吸引ノズル支え板1371と、この吸引ノズル支え板1371に一体となって設けられた支柱1373と、この支柱1373を支えるカム付きモーター1372とを備える。カム付きモーター1372が制御部15の制御によって駆動した場合、このカム付きモーター1372におけるカムの回転によって、カム付きモーター1372上の支柱1373が矢印Y4のように上昇または下降する。この支柱1373の上昇または下降にともなって支柱1373と一体である吸引ノズル支え板1371が上昇または下降することによって、吸引ノズル132も矢印Y2のように上昇または下降する。吸引ノズル昇降部137は、吐出ノズル支え板1341上に設けられているため、吐出ノズル昇降部134に対して相対的に昇降動作を独立して行なうこととなる。
【0029】
支柱1373側面には、複数のマークが付されており、吸引ノズル高さ検出部138は、このマークをカウントすることによって、支柱1373の高さを求め、求めた支柱1373の高さをもとに吸引ノズル支え板1371に取り付けられた吸引ノズル132先端の高さを取得する。たとえば、吸引ノズル高さ検出部138は、光を照射し、支柱1373におけるマーク付与部分からの反射光を処理して、カウントしたマーク数を検出する。ここで、吸引ノズル高さ検出部138は、吸引ノズル昇降部137が吐出ノズル支え板1341上に設けられているため、吐出ノズル支え板1341からの吸引ノズル132先端の高さを求めることとなる。吸引ノズル高さ検出部138は、取得した吸引ノズル132先端の高さを制御部15に出力する。
【0030】
制御部15は、吸引ノズル高さ検出部138が検出した吸引ノズル132先端の吐出ノズル支え板1341からの高さおよび吐出ノズル高さ検出部135が検出した吐出ノズル131先端の高さを用いて求めた吸引ノズル132先端の高さをもとに、カム付きモーター1372を動作させて吸引ノズル132の昇降動作を制御する。なお、支柱1373には、吸引ノズル132の昇降範囲を制限するためのストッパー1381が設けられている。
【0031】
このように構成された洗浄機構13は、図3に示す反応槽4の回動動作の停止を検出した反応槽停止センサ4aからキュベット洗浄開始信号が制御部15に送出されることによって、制御部15の制御のもと開始される。
【0032】
ここで、制御部15は、吸引ノズル132が吐出ノズル131による洗浄液注入処理に応じてキュベット5内の排出対象である液体の吸引とキュベット5から溢れる洗浄液の吸引との双方を行なえるように、吐出ノズル駆動部133による吐出ノズル131の昇降動作および吸引ノズル駆動部136による吸引ノズル132の昇降動作などの洗浄機構13の各構成部位の処理動作を制御している。
【0033】
具体的に、図5を参照して、洗浄機構13による洗浄処理について詳細に説明する。まず、図5(1)に示すように、反応槽停止センサ4aの洗浄開始信号を受信することによって、制御部15は、反応槽4の停止によって洗浄対象であるキュベット5が吐出ノズル131および吸引ノズル132の下方で配置されたことを認識する。
【0034】
そして、制御部15は、このキュベット5内における排出対象の液体を吸引する工程を行なうために、吸引ポンプ駆動部139bに吸引ポンプの駆動を開始させ、さらに吸引ノズル駆動部136および吐出ノズル駆動部133に対してそれぞれ吸引ノズル132、吐出ノズル131をキュベット5内に下降させる。この結果、図5(2)の矢印Y11および矢印Y12に示すように、吸引ノズル132は、キュベット5内の排出対象の液体Laを吸引しながら、吐出ノズル131とともにキュベット5内に下降する。このように、制御部15は、キュベット5内の排出対象である液体を排出する場合には、吸引ノズル駆動部136に吸引ノズル132をキュベット5内に下降させてキュベット5内の排出対象である液体を吸引ノズル132に吸引させる。
【0035】
次いで、制御部15は、吸引ノズル高さ検出部138の検出結果をもとに、図5(3)に示すように、吸引ノズル132がキュベット5底壁の近傍まで下降したと判断した場合、吸引ノズル駆動部136および吐出ノズル駆動部133に対して吸引ノズル132、吐出ノズル131への下降処理を停止させる。この結果、吸引ノズル132は、キュベット5の底壁近傍で停止した状態で、キュベット5内の液体を吸引するため、排出対象であるキュベット5内の液体をほぼ吸引して排出することができる。
【0036】
そして、制御部15は、所定時間経過し吸引ノズル132による吸引によってキュベット5内における排出対象である液体を排出した後、このキュベット5内に洗浄液Lsを注入する工程を行なう。
【0037】
まず、制御部15は、吐出ポンプ駆動部139aに吐出ポンプの駆動を開始させ、図5(4)に示すように吐出ノズル131から洗浄液を注入させる。さらに、制御部15は、吸引ノズル132に吐出ノズル131が注入した洗浄液のうちキュベット5から溢れる洗浄液を吸引させるため、矢印Y13のように吸引ノズル駆動部136に対してキュベット5側壁の上端近傍であるオーバーフロー高さ位置まで吸引ノズル132を上昇させる。この場合、吸引ポンプ駆動部139bは吸引ポンプの駆動を継続したままであるため、吸引ノズル132は、図5(4)および図5(5)に示すように、吐出ノズル131からキュベット5内に注入された洗浄液を吸引しながら、オーバーフロー高さ位置まで上昇する。制御部15は、吸引ノズル高さ検出部138の検出結果をもとに吸引ノズル132がオーバーフロー高さ位置まで上昇したと判断した場合、吸引ノズル駆動部136に対して吸引ノズル132の上昇を停止させる。この結果、吸引ノズル132は、吐出ノズル131から注入される洗浄液がキュベット5から溢れないように、オーバーフロー高さ位置で洗浄液の吸引を行なう。なお、吐出ノズル131の高さは、特に変わらない。このように、制御部15は、吐出ノズル131から洗浄液の注入が開始された場合には、吸引ノズル駆動部136に吸引ノズル132をオーバーフロー高さまで上昇させてキュベット5から溢れる洗浄液を吸引ノズル132に吸引させる。
【0038】
そして、制御部15は、所定時間経過しキュベット5内に洗浄液が所定量注入された後、吐出ポンプ駆動部139aおよび吸引ポンプ駆動部139bに対して吐出ポンプおよび吸引ポンプの駆動を停止させ、吸引ノズル駆動部136および吐出ノズル駆動部133に吸引ノズル132、吐出ノズル131を所定位置まで上昇させる。この結果、図5(6)に示すように、矢印Y16のように吐出ノズル131が上昇するとともに、矢印Y15のように吸引ノズル132も上昇し、図5(7)に示すように、吸引ノズル132、吐出ノズル131はキュベット5上の所定位置で停止する。制御部15は、吐出ノズル131による洗浄液の吐出が終了した場合、吸引ノズル駆動部136に吸引ノズル132をキュベット5外に上昇させるとともに、吐出ノズル駆動部133に吐出ノズル131をキュベット5外に上昇させる。なお、制御部15は、吐出ノズル駆動部133に対して吐出ノズル131および吸引ノズル132の双方を上昇させた後、吸引ノズル駆動部136に対して吸引ノズル132のみを下降させることによって、吸引ノズル132、吐出ノズル131をそれぞれ対応する所定位置まで上昇させる。次いで、反応槽4が回転し、次に洗浄対象となるキュベット5を吸引ノズル132、吐出ノズル131の下方に移送し、洗浄機構13は、図5(1)〜(7)に示す各処理を行って次のキュベット5を洗浄する。
【0039】
このように、分析装置1においては、吸引ノズル132がキュベット5内の排出対象である液体の吸引とキュベット5から溢れる洗浄液の吸引との双方を行なうように洗浄機構13の各構成部位の処理動作を制御することによって、吐出ノズル131および吸引ノズル132の2本のノズルのみでキュベット5の洗浄処理を行なっている。
【0040】
ここで、従来の分析装置においては、洗浄機構は、図6に示すように、吐出ノズル231および吸引ノズル232に加え、キュベットから洗浄液が溢れ出ないように洗浄液の溢れ分を吸引するオーバーフロー吸引ノズル233を有し、この3本のノズルを一体として昇降させることによってキュベットの洗浄処理を行なっていた。
【0041】
具体的には、従来の分析装置においては、図7(1)のように吐出ノズル231、吸引ノズル232およびオーバーフロー吸引ノズル233の下方に配置された洗浄対象のキュベット5に対し、排出対象である液体を吸引ノズル232で吸引するために、図7(2)の矢印Y21および図7(3)の矢印Y22に示すように、吸引ノズル232に液体の吸引を行なわせた状態で吐出ノズル231、吸引ノズル232およびオーバーフロー吸引ノズル233を一体として下降させている。そして、吸引ノズル232による液体吸引が終了した後、図7(4),(5)に示すように、オーバーフロー吸引ノズル233で洗浄液を吸引してキュベット5から洗浄液が溢れ出ないようにしながら、吐出ノズル231から洗浄液を注入する。そして、洗浄液のキュベット5への注入が終了した後、図7(6)の矢印Y26に示すように、吐出ノズル231、吸引ノズル232およびオーバーフロー吸引ノズル233を一体となって上昇させ、このキュベット5の洗浄処理を終了する。
【0042】
このように、従来の分析装置においては、キュベット内に洗浄ノズルが挿入された場合に、吐出ノズル231が洗浄液を吐出できるように、また、吸引ノズル232がキュベット内の全ての液体を吸引できるように、さらにオーバーフロー吸引ノズル233がオーバーフロー高さ位置で溢れた液体を吸引できるように、3本の洗浄ノズルがそれぞれ対応する高さ関係を保持した状態で一体となって昇降して洗浄処理を行なっている。すなわち、従来の分析装置においては、洗浄ノズルを一体として昇降させていたため、洗浄処理を行なうには、排出対象の液体吸引処理、洗浄液の注入処理およびキュベット5から溢れた液体の吸引処理のそれぞれ処理を実行する3本の洗浄ノズルを備える必要があった。
【0043】
したがって、従来の分析装置においては、図8に示すように、3本の洗浄ノズルで洗浄機構が構成されているため、洗浄ノズルとキュベット5の内壁間のクリアランスD11,D12がもともと小さいことから、使用検体の微量化の要請に応えるためにキュベットを小型化した場合、3本の洗浄ノズルとキュベットとの間のクリアランスが確保できなくなり、キュベットに3本のノズルが挿入できずキュベットの洗浄処理そのものが実行できなくなるという問題があった。
【0044】
これに対し、本実施の形態にかかる分析装置1においては、吸引ノズル132および吐出ノズル131にそれぞれ昇降機構を設け、吸引ノズル132の昇降動作および吐出ノズル131の昇降動作を独立して制御し、吸引ノズル132がキュベット5内の排出対象である液体の吸引とキュベット5から溢れる洗浄液の吸引との双方を行なえるようにしている。すなわち、本実施の形態によれば、図9に示すように、洗浄ノズルを吸引ノズル132および吐出ノズル131のみの2本に削減できる。このため、本実施の形態においては、従来の3本の洗浄ノズルを備えた場合と比較し、洗浄ノズルとキュベット5の内壁間のクリアランスD1,D2のうち特に横方向のクリアランスD2を従来における横方向のクリアランスD12よりも広げることが可能になる。したがって、本実施の形態によれば、小型化したキュベットに対しても洗浄ノズルとキュベットとの間のクリアランスを確保することが可能になり、キュベットに2本の洗浄ノズルを確実に挿入して円滑に洗浄処理を実行することが可能になる。
【0045】
また、本実施の形態においては、洗浄ノズルを従来の3本から2本に削減できるため、各洗浄ノズルに接続する配管も減らすことができ、配管構成が単純化できる。したがって、本実施の形態によれば、分析装置全体の装置構成も簡易化でき、分析装置の小型化も実現可能になる。
【0046】
また、本実施の形態においては、キュベット5の洗浄処理中、吸引ノズル132は、液体の吸引開始後、洗浄処理が終了するまで吸引を継続しているおり、キュベット5下方からオーバーフロー高さ位置に移動するまでも吸引を継続している。このため、本実施の形態によれば、吸引停止によるキュベット5内への排液の液だれを抑制することができ、キュベット5に対する洗浄能力を高めることができる。
【0047】
なお、本実施の形態においては、図3および図4に示すように吸引ノズル132を吐出ノズル131に対して相対的に昇降させた洗浄機構13について説明したが、これに限らず、図10および図11に示すように、吸引ノズル132を吐出ノズル131の昇降動作に相対させることなく昇降させる洗浄機構313であってもよい。
【0048】
図10に示すように、洗浄機構313は、図3に示す吐出ノズル駆動部133および吸引ノズル駆動部136に代えて、吐出ノズル131を昇降できる吐出ノズル昇降部334と吐出ノズル高さ検出部135とを備え、吐出ノズル131の昇降動作を駆動する吐出ノズル駆動部333と、吸引ノズル132を昇降できる吸引ノズル昇降部337と吸引ノズル高さ検出部138とを備え、吸引ノズル132の昇降動作を駆動する吸引ノズル駆動部336とを有する。そして、制御部315は、吐出ノズル駆動部333の昇降動作を制御する吐出制御部315aと、吸引ノズル駆動部336の昇降動作を制御する吸引制御部315bとを有する。
【0049】
吐出ノズル昇降部334は、図11に示すように、吐出ノズル131が取り付けられた吐出ノズル支え板3341と、この吐出ノズル支え板3341に一体となって設けられた支柱3343と、この支柱3343を支えるカム付きモーター3342とを備える。カム付きモーター3342が吐出制御部315aの制御によって駆動した場合、このカム付きモーター3342におけるカムの回転によって、矢印Y33のようにカム付きモーター3342上の支柱3343が上昇または下降する。この支柱3343の上昇または下降にともなって吐出ノズル131も矢印Y1のように上昇または下降する。支柱3343側面には、複数のマークが付されており、吐出ノズル高さ検出部135は、このマークをカウントすることによって吐出ノズル131先端の高さを取得し、取得した吐出ノズル131の高さを吐出制御部315aに出力する。
【0050】
吐出制御部315aは、吐出ノズル高さ検出部135が検出した吐出ノズル131先端の高さをもとに、カム付きモーター3342を動作させて吐出ノズル131の昇降動作を制御する。なお、支柱3343には、吐出ノズル131の昇降範囲を制限するためのストッパー1351が設けられている。
【0051】
吸引ノズル昇降部337は、図11に示すように、吸引ノズル132が取り付けられた吸引ノズル支え板3371と、この吸引ノズル支え板3371に一体となって設けられた支柱3373と、この支柱3373を支えるカム付きモーター3372とを備える。カム付きモーター3372が吸引制御部315bの制御によって駆動した場合、このカム付きモーター3372におけるカムの回転によって、矢印Y34のようにカム付きモーター3372上の支柱3373が上昇または下降する。この支柱3373の上昇または下降にともなって吸引ノズル132も矢印Y2のように上昇または下降する。吸引ノズル昇降部337は、吐出ノズル昇降部334とは独立して設けられているため、吐出ノズル昇降部334の昇降動作とは完全に独立して吸引ノズル132を昇降させることができる。支柱3373側面には、複数のマークが付されており、吸引ノズル高さ検出部138は、このマークをカウントすることによって吸引ノズル132先端の高さを取得し、取得した吸引ノズル132の高さを吸引制御部315bに出力する。
【0052】
吸引制御部315bは、吸引ノズル高さ検出部138が検出した吸引ノズル132先端の高さをもとに、カム付きモーター3372を動作させて吸引ノズル132の昇降動作を制御する。なお、支柱3373には、吸引ノズル132の昇降範囲を制限するためのストッパー1381が設けられている。
【0053】
このように、図10および図11のように吸引ノズル132を吐出ノズル131の昇降動作に相対させることなく昇降させる洗浄機構313であっても図5に示す各処理と同様の処理を行なうことによって、吸引ノズル132に対してキュベット5内の排出対象である液体の吸引とキュベット5から溢れる洗浄液の吸引との双方を行なわせることができる。なお、図4および図11においては、カム付きモーターによって吐出ノズル131、吸引ノズル132を昇降させた場合を示したが、もちろんステッピングモーターによって吐出ノズル131、吸引ノズル132を昇降させてもよい。
【0054】
また、上記実施の形態で説明した分析装置1は、あらかじめ用意されたプログラムをコンピュータシステムで実行することによって実現することができる。このコンピュータシステムは、所定の記録媒体に記録されたプログラムを読み出して実行することで分析装置の処理動作を実現する。ここで、所定の記録媒体とは、フレキシブルディスク(FD)、CD−ROM、MOディスク、DVDディスク、光磁気ディスク、ICカードなどの「可搬用の物理媒体」の他に、コンピュータシステムの内外に備えられるハードディスクドライブ(HDD)などのように、プログラムの送信に際して短期にプログラムを保持する「通信媒体」など、コンピュータシステムによって読み取り可能なプログラムを記録する、あらゆる記録媒体を含むものである。また、このコンピュータシステムは、ネットワーク回線を介して接続した管理サーバや他のコンピュータシステムからプログラムを取得し、取得したプログラムを実行することで分析装置の処理動作を実現する。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】実施の形態にかかる分析装置を示す概略構成図である。
【図2】図1に示す洗浄機構における洗浄ノズルを説明する図である。
【図3】図1に示す洗浄機構の構成を模式的に示したブロック図である。
【図4】図1に示す洗浄機構を示す概略構成図である。
【図5】図1に示す洗浄機構の洗浄処理を説明する図である。
【図6】従来の分析装置の洗浄機構における洗浄のノズルを説明する図である。
【図7】従来の分析装置の洗浄機構における洗浄処理を説明する図である。
【図8】図6に示す洗浄ノズルの反応容器挿入時における平面図である。
【図9】図2に示す洗浄ノズルの反応容器挿入時における平面図である。
【図10】図1に示す洗浄機構の他の構成を模式的に示したブロック図である。
【図11】図1に示す洗浄機構の他の例を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0056】
1 分析装置
2,3 試薬テーブル
2a,3a 試薬容器
4 反応槽
4a 反応槽停止センサ
5 キュベット
6a,7a アーム
6b,7b ノズル
6,7 試薬分注機構
8 検体容器移送機構
9 フィーダ
10 ラック
10a 検体容器
11b ノズル
11 検体分注機構
11a 駆動アーム
12 分析光学系
12a 発光部
12b 分光部
12c 受光部
13 洗浄機構
15 制御部
16 入力部
17 表示部
18 分析部
131 吐出ノズル
132 吸引ノズル
133 吐出ノズル駆動部
134 吐出ノズル昇降部
135 吐出ノズル高さ検出部
136 吸引ノズル駆動部
137 吸引ノズル昇降部
138 吸引ノズル高さ検出部
139a 吐出ポンプ駆動部
139b 吸引ポンプ駆動部
231 吐出ノズル
232 吸引ノズル
233 オーバーフロー吸引ノズル
313 洗浄機構
315 制御部
315a 吐出制御部
315b 吸引制御部
333 吐出ノズル駆動部
334 吐出ノズル昇降部
336 吸引ノズル駆動部
337 吸引ノズル昇降部
1341 吐出ノズル支え板
1342 カム付きモーター
1351 ストッパー
1371 吸引ノズル支え板
1372 カム付きモーター
1373 支柱
1381 ストッパー
3341 吐出ノズル支え板
3342 カム付きモーター
3343 支柱
3371 吸引ノズル支え板
3372 カム付きモーター
3373 支柱
La 液体
Ls 洗浄液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析処理が終了したキュベットを洗浄してキュベットを繰り返し使用する分析装置において、
キュベット内の液体を吸引する吸引ノズルと、
洗浄液をキュベット内に注入する吐出ノズルと、
前記吐出ノズルを鉛直方向に昇降させる吐出ノズル昇降機構と、
前記吐出ノズルとは独立して前記吸引ノズルを鉛直方向に昇降させる吸引ノズル昇降機構と、
前記吸引ノズルが前記吐出ノズルによる洗浄液注入処理に応じて前記キュベット内の排出対象である液体の吸引と前記キュベットから溢れる洗浄液の吸引との双方を行なえるように前記吸引ノズル昇降機構による前記吸引ノズルの昇降動作および前記吐出ノズル昇降機構による前記吐出ノズルの昇降動作を制御する制御機構と、
を備えたことを特徴とする分析装置。
【請求項2】
前記制御機構は、前記キュベット内の排出対象である液体を排出する場合には、前記吸引ノズル昇降機構に前記吸引ノズルを前記キュベット内に下降させて前記キュベット内の排出対象である液体を前記吸引ノズルに吸引させ、前記吐出ノズルから洗浄液の注入が開始された場合には、前記吸引ノズル昇降機構に前記吸引ノズルをオーバーフロー高さまで上昇させて前記キュベットから溢れる洗浄液を前記吸引ノズルに吸引させることを特徴とする請求項1に記載の分析装置。
【請求項3】
前記制御機構は、前記吐出ノズルによる洗浄液の吐出が終了した場合、前記吸引ノズル昇降機構に前記吸引ノズルをキュベット外に上昇させるとともに、前記吐出ノズル昇降機構に前記吐出ノズルをキュベット外に上昇させることを特徴とする請求項1または2に記載の分析装置。
【請求項4】
前記吸引ノズル昇降機構は、
前記吸引ノズルが取り付けられた吸引ノズル支え部材と、
前記吸引ノズル支え部材に接続し該吸引ノズル支え部材を上下させる吸引ノズル昇降用モーターと、
前記吸引ノズル支え部材の高さを検出することによって該吸引ノズル支え部材に取り付けられた前記吸引ノズル先端の高さを検出する吸引ノズル高さ検出部と、
を備え、前記制御機構は、前記吸引ノズル高さ検出部が検出した前記吸引ノズル先端の高さをもとに前記吸引ノズル昇降用モーターを動作させて前記吸引ノズルの昇降動作を制御することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の分析装置。
【請求項5】
前記吐出ノズル昇降機構は、
前記吐出ノズルが取り付けられた吐出ノズル支え部材と、
前記吐出ノズル支え部材に接続し該吐出ノズル支え部材を上下させる吐出ノズル昇降用モーターと、
前記吐出ノズル支え部材の高さを検出することによって該吐出ノズル支え部材に取り付けられた前記吐出ノズル先端の高さを検出する吐出ノズル高さ検出部と、
を備え、前記制御機構は、前記吐出ノズル高さ検出部が検出した前記吐出ノズル先端の高さをもとに前記吐出ノズル昇降用モーターを動作させて前記吐出ノズルの昇降動作を制御することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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