説明

分析試験テープ機器

本発明は、体液が付与されうる複数の試験要素18を備えた試験テープ16を有し、交換可能な試験テープユニット14と、試験要素18が付与箇所で連続的に利用可能となるように、試験テープ16に巻くために試験テープユニット14に連結可能なテープドライブ12とを有する分析試験テープ機器に関する。本発明によれば、テープドライブ12が、直流モータ26と、直流モータ26と試験テープユニット14との間に配置された減速ギアユニット28とを有することが提案される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体液が付与されうる複数の試験要素を備えた試験テープを有し、好ましくはテープカセット形状で交換可能な試験テープユニットと、試験要素が付与箇所で連続的に利用可能となるように、試験テープに巻くために試験テープユニットに連結可能なテープドライブとを有する、特に、血糖検査用の携帯機器のような分析試験テープ機器に関する。
【背景技術】
【0002】
こうした試験テープシステムは、市販の試験テープシステムと比較して使用者にとってさらなる利点を得るために、本願出願人から多くの特許出願の中ですでに提案されてきた。信頼性のある試験要素の位置決めに加えて、実用的な目的のために、現場で使用する際に、過度なノイズの発生によって正常に機能しないことがないように保証することも必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1760469号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これに基づき、本発明の目的は、従来技術の中で提案されているシステムをさらに改良すること、及び、コンパクトな組立体内に妨害ノイズがほとんどない信頼性のある試験要素の位置決めを達成することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的を達成するために、特許請求の範囲の請求項1に記載された特徴の組み合わせが提案される。本発明の有利な実施形態及びさらに発展した形態は、特許請求の範囲の従属項から得られる。
【0006】
本発明は、コンパクトな高速モータを使用するという考えに基づいている。従って、本発明によれば、テープドライブが直流モータと直流モータ及び試験テープユニット間に配置された減速ギアとを有することが提案される。直流モータは、その小さい設置スペース及び低いエネルギー必要量に起因して携帯機器に容易に組み込むことができ、且つ、低ノイズで低振動の動作を可能にする一方で、減速ギアユニットは、信頼性のあるテープの位置決めのために、適切な回転速度及びトルクを保証する。費用効率の高い製造方法と併用される簡略化された製造プロセスは、別の利点である。
【0007】
直流モータは、トルク変動がほとんどない均一なノイズ挙動を達成するために、機械的に整流された断面の薄いロータの形状であることが好ましい。また、こうしたモータは、少ない部品から簡単に組み立てることができ、特に、電池運転にとって適している。また、電気的に整流された直流モータを使用することも考えられる。
【0008】
妨害ノイズ及び汚染に関する別の改良が、ギアハウジング内の環境に抗して好ましくは直流モータを備えた減速ギアユニットを封入することによって達成される。
【0009】
特にコンパクト且つ正確な組立は、直流モータがギアハウジングのハウジング壁によって形成されるモータのハウジング部分を有する点で達成されるので好ましい。
【0010】
別の有利な実施形態は、直流モータのロータがギアハウジング内に配置されたベアリングを有することを提供する。これは下流のギアユニットと接続する公差のあるチェーンのさらなる短縮を可能にする。これに関する別の改良は、直流モータがモータハウジング部材内に配置されたロータ用のベアリングを有し且つモータハウジング部材がギアハウジング内に把持されていることから生じる。また、直流モータに直接連結された減速ギアユニットの歯車部材が直流モータのハウジング部分に取り付けられている場合には、有利である。
【0011】
本体に対する音響ブリッジを回避するために、試験テープユニットが機器の筐体上に配置可能な場合において、ギアハウジングが空隙をクリアに維持している間に所定の箇所で機器の筐体にのみ接続されるので有利である。
【0012】
駆動力を確実に伝達することを可能にするために、減速ギアユニットが、歯車ギアユニットの形状、特に、例えば横方向にオフセットした入力及び出力を備えた多段階の平歯車ユニットの形状である場合には、有利である。これに関してまた、歯車ギアユニットの歯車が、プラスチック、特にポリオキシメチレン(POM)で作られた射出成型部品からなるので有利である。
【0013】
スプールの径に関係なく可能な限り均一に試験テープを移送するために、テープドライブが、供給されている試験テープの試験要素の数に応じて直流モータの回転速度を制御する速度コントローラを有する場合には、有利である。別の有利な実施形態は、直流モータのモータ回転速度が100〜200回転/秒の範囲内であり、且つ、減速ギアユニットから出力された回転速度が0.2〜0.5回転/秒であることを提供する。
【0014】
直流モータは、ブラシを介して電池式のエネルギー供給源に接続され、ブラシホルダが、ブラシの振動を緩和するためにギアハウジング内に組み込まれていることが好ましい。
【0015】
モータの振動は、直流モータが公差を補償するベアリングボア内に挿入可能なように長手方向に穴のある端部を備えたモータシャフトを有することによって、さらに最小化され得る。
【0016】
低減されたベアリングの摩擦及び運動の変速機の角度の正確性に関し、直流モータのモータシャフトが、プラスチック、特にポリオキシメチレン(POM)で作られた駆動ピニオンと一体の単一部品として好ましくは構成されている場合には、有利である。
【0017】
本発明によるテープドライブの主な利点は、ノイズの低減は別として、コンパクトなデザインにもある。従って、テープドライブを包装し且つ試験テープユニットを収容するハウジングは、150cm3未満、好ましくは約135cm3未満の構成空間を囲むことが可能である。
【0018】
テープドライブは、試験要素を備えた試験テープを巻き取るためのテープカセットの巻取りスプールを回転させるように構成されていることが好ましい。それによって、使用済みの試験要素を簡単に廃棄することができる。
【0019】
本発明は、図面に示された実施形態の例示に基づいて以下にさらに説明されている。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】交換可能なテープカセットを備えた分析試験テープ機器の斜視図である。
【図2】分析試験テープ機器のテープドライブの図1の一部における拡大図である。
【図3】複数の歯車の回転軸を通って交わる線に沿ったテープドライブの断面図である。
【図4】テープドライブのモータの軸方向断面図である。
【図5】端部に穴のあるモータシャフトの図4の部分的な拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1に示された分析試験テープ機器は、特に滑らかに運転するように設計されたテープドライブ12を備えた機器ユニット10と、テープドライブと連結可能で交換可能なテープカセット14とを有する。明瞭性のために、機器ユニット10の筐体は、収容するハウジング15の一部とのみ示されている。分析試験テープ機器は、使用者自身によって現場で実行可能な血糖測定用の携帯機器として使用可能である。これに関する詳細は、例えば、これに関してここで参照される特許文献1から導かれ得る。
【0022】
回転された斜視図で下方より図1に示されたテープカセット14は、付与箇所として偏向した先端の領域において血液又は体液が付与されうる前側に向かう試験領域18が設けられた試験テープ16の部分を含む。それと同時に、試験領域18は、測定ユニット19を用いて後側からこの箇所で測定可能である。このために、互いに離間した試験領域18が、連続的な試験用の付与箇所で連続的に使用が開始されるように、試験テープ16は、巻き送りスプール20から巻き取りスプール22上に巻かれる。これに関し、巻き取りスプール22のみが、固定手段の形状で係合する駆動ピン24によって駆動される。
【0023】
図2にも示されているように、テープドライブ12は、直流モータ26の形状の電気モータと、下流の減速ギアユニット28とを有する。減速ギアユニット28は、ギアハウジング30内に直流モータ26に伴う環境に抗して封入及び遮蔽がなされる。構造的に生じるノイズを抑制するために、ギアハウジング30は、空隙を自由な状態に維持している間に少数の取り付け場所で下部の筐体10にのみ接続されている。
【0024】
ギアハウジングは、LCP(液晶高分子)、すなわち狭い公差を可能にする高融点材料から形成されることが好ましい。必要に応じて、筐体10上に他の上部構造は、対応する線膨脹率を保証するために、この材料で構成される。
【0025】
減速ギアユニット28は、互いに平行で、従って多段階の平歯車ユニットのように横方向にオフセットした入力及び出力を備えた回転軸を有するいくつかの歯車34、36、38、40から構成される。筐体10の底面に別の歯車42が、駆動ピン24に対して同軸上に接続されている。射出成形部品としての歯車は、POM(ポリオキシメチレン)からなることが好ましい。さらなるノイズ低減に関し、ロータと係合する第1歯車34の歯の深さが、歯が若干長く構成されるように増大していると好ましい。その結果、歯の剛性が小さくなり、従って振動が緩和される。
【0026】
予期せぬ変速機の音をさらに制限するために、直流モータ26が振動クッション性のブラシ44を介してエネルギーが供給されることが好ましい。このために、十分な剛性のブラシホルダ45が、高周波数振動を回避するためにギアハウジング30内に組み込まれている。さらにまた、ブラシ44の部品は、特に高周波数振動を緩和するために、下部ケース48の領域内に潤滑油を備えている。
【0027】
図3に示されているように、ギアハウジング30は、上部ケース46及び下部ケース48を有し、これらの間には歯車36、38及び40が取り付けられている。一方、直流モータ26に直接連結された第1歯車34の下方に突出した軸は、位置決め交差がそこで略最小化されるように、モータハウジング52のハウジング部材50内に取り付けられている。モータのロータ56用の上部ベアリングを形成するさらなるドーム型のモータハウジング部材54が、この位置での正確なセンタリングと安定化とを確実にするために、上部ケース46の開口内にしっかりと把持される。
【0028】
モータハウジング52は、全ての面で閉じているのではなく、むしろその端面が、最もコンパクトとなる可能性のある配置を形成するために、底部に対して開放している。開口は、下部ケース48によって覆われていることから、モータハウジング52を完成させ且つロータ56用のベアリング58を形成している。
【0029】
上部ケース46は、点接続部60を介して、象徴的にのみ示され且つ直流モータ26用の回転速度コントローラ64を有する制御回路基板62に接続される。このようにして、直流モータの回転速度は、約15回転/秒の一定のテープ移送速度が達成される方法で、使用される試験の数に依存するスプール径に応じて制御される。これに関し、モータ速度は、約100〜200回転/秒の範囲内であり、それによってまた、必要なトルクは、減速に起因して、約0.2〜0.4回転/秒の駆動ピン24の出力速度で利用可能である。
【0030】
図4に最も示されているように、モータシャフト66及びピニオン68は、プラスチック、特にポリオキシメチレン(POM)で作られ、ピニオンが第1歯車34と噛合するように一体に形成されている。鉄が含まれていないロータは、高ダイナミクスに加え、小休止の運動量を含まない動作を生じさせる。機械的に整流された断面の薄いロータ70は、小さい全体の長さに加え、電池運転用の携帯機器において特に有利な低エネルギー消費を備えた低始動電圧を有する。
【0031】
ロータ56の下方のベアリング58は、下部ケース48内のボアによって形成される。図5の詳細な図において示されるように、モータシャフト66は、長手方向に細長い穴が設けられ、且つ、特に完全に運転することを保証するために、公差を補償して径方向に広がることによってベアリングのボア内に挿入可能な端面70を有してもよい。なお、これに関し、モータシャフトのこの領域での振動は、高ノイズの発生を引き起こすのに対し、モータシャフトの上側部分において、歯車の力が、ベアリングの好適な幾何学的配置をもたらす。
【0032】
特に、高速で回転する第1歯車34は、好適な幾何学的配置において噛み合いに起因する径方向の力を受ける。これに関するベアリングの配置を改善するために、ギアシャフト用の角柱ガイドを備えたハブが、円筒形のベアリングボアの内側に設けられてもよい。
【0033】
使用者にとって主な利点は、コンパクトなテープドライブ12によって、機器のハウジング15を非常に小さくすることもできるということである。封入された機器の体積は約135cm3であるのに対し、付加的に連結された槍形の補助器具(任意。図示せず)が、約20cm3の構造上の体積を有し、その結果全部で約155〜160cm3の体積となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
体液が付与されうる複数の試験要素(18)を備えた試験テープ(16)を有し、好ましくはテープカセット形状で交換可能な試験テープユニット(14)と、前記試験要素(18)が付与箇所で連続的に利用可能となるように、前記試験テープ(16)に巻くために前記試験テープユニット(14)に連結可能なテープドライブ(12)とを有する、特に、血糖検査用の携帯機器のような分析試験テープ機器において、
前記テープドライブ(12)が、直流モータ(26)と、該直流モータ(26)と前記試験テープユニット(14)との間に配置された減速ギアユニット(28)とを有することを特徴とする分析試験テープ機器。
【請求項2】
前記直流モータ(26)が、機械的に整流された断面の薄いロータの形状であることを特徴とする請求項1に記載の分析試験テープ機器。
【請求項3】
前記減速ギアユニット(28)が、好ましくは前記直流モータ(26)と共に、ギアハウジング(30)内の環境に抗して封入されることを特徴とする請求項1又は2に記載の分析試験テープ機器。
【請求項4】
前記直流モータ(26)が、前記ギアハウジング(30)のハウジング壁(48)によって形成されるモータのハウジング(52)部分を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の分析試験テープ機器。
【請求項5】
前記直流モータ(26)の前記ロータ(56)が前記ギアハウジング(30)内に配置されたベアリング(58)を有することを特徴とする請求項1から4のいずれか1つに記載の分析試験テープ機器。
【請求項6】
前記直流モータ(26)がモータハウジング部材(54)内に配置されたそのロータ(56)用のベアリングを有すること、及び、前記モータハウジング部材(54)が前記ギアハウジング(30)内に把持されることを特徴とする請求項1から5のいずれか1つに記載の分析試験テープ機器。
【請求項7】
前記直流モータ(26)に直接連結された前記減速ギアユニット(28)の歯車部材(34)が、前記直流モータ(26)のハウジング部分内に取り付けられることを特徴とする請求項1から6のいずれか1つに記載の分析試験テープ機器。
【請求項8】
前記試験テープユニット(14)が機器の筐体(10)上に配置されること、及び、前記ギアハウジング(30)が空隙をクリアに維持している間に所定の箇所で前記機器の筐体(10)にのみ接続されることを特徴とする請求項1から7のいずれか1つに記載の分析試験テープ機器。
【請求項9】
前記減速ギアユニット(28)が、歯車ギアユニットの形状で、特に、横方向にオフセットした入力及び出力を備えた多段階の平歯車ユニットであることを特徴とする請求項1から8のいずれか1つに記載の分析試験テープ機器。
【請求項10】
前記歯車ギアユニットの歯車(34,36,38,40)が、プラスチック、特にポリオキシメチレン(POM)で作られた射出成型部品からなることを特徴とする請求項9に記載の分析試験テープ機器。
【請求項11】
前記テープドライブ(12)が、供給されている前記試験テープユニット(14)の試験要素の数に応じて前記直流モータ(26)の回転速度を制御する速度コントローラ(64)を有することを特徴とする請求項1から10のいずれか1つに記載の分析試験テープ機器。
【請求項12】
前記直流モータ(26)のモータ回転速度が100〜200回転/秒の範囲内であり、且つ、前記減速ギアユニット(28)から出力された回転速度が0.2〜0.5回転/秒であることを特徴とする請求項1から11のいずれか1つに記載の分析試験テープ機器。
【請求項13】
前記直流モータ(26)がブラシ(44)を介して電池式のエネルギー供給源に接続されること、及び、ブラシホルダ(45)がブラシの振動を緩和するために前記ギアハウジング(30)内に組み込まれていることを特徴とする請求項1から12のいずれか1つに記載の分析試験テープ機器。
【請求項14】
前記直流モータ(26)が、公差を補償するベアリングボア内に挿入可能なように長手方向に穴のある端部(70)を備えたモータシャフト(66)を有することを特徴とする請求項1から13のいずれか1つに記載の分析試験テープ機器。
【請求項15】
前記直流モータ(26)のモータシャフト(66)が、プラスチック、特にポリオキシメチレン(POM)で作られた駆動ピニオン(68)と一体の単一部品として好ましくは構成されていることを特徴とする請求項1から14のいずれか1つに記載の分析試験テープ機器。
【請求項16】
包装ハウジング(15)が、150cm3未満、好ましくは約135cm3未満の構成空間を囲むことを特徴とする請求項1から15のいずれか1つに記載の分析試験テープ機器。
【請求項17】
前記テープドライブ(12)が、銭試験要素(18)を備えた前記試験テープ(16)を巻き取るための巻取りスプール(22)を回転させるように構成されていることを特徴とする請求項1から16のいずれか1つに記載の分析試験テープ機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−506038(P2012−506038A)
【公表日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−531511(P2011−531511)
【出願日】平成21年10月16日(2009.10.16)
【国際出願番号】PCT/EP2009/063618
【国際公開番号】WO2010/046323
【国際公開日】平成22年4月29日(2010.4.29)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】