説明

分枝鎖又は環状のC4〜C10アルキル単位を有する複屈折ナフタレートコポリエステルを含む光学フィルム

本発明は、多層光学フィルム及び複屈折コポリエステルフィルムに関する。複屈折コポリエステル光学層又は複屈折コポリエステルフィルムは、多量のナフタレート単位、エチレン単位、及び微量の分枝鎖又は環状C4〜C10アルキル単位を含む。ジメチルスルホナトリウムイソフタレートアイオノマーなどのフタレートアイオノマーサブユニットを更に含むある種のコポリエステル高分子材料についても記載されている。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
高分子フィルムは、様々な用途に使用される。多層ポリマー光学フィルムは、ミラー及び偏光子を含む様々な目的のために広く使用されている。これらのフィルム類は、極めて高い反射率を有することが多く、同時に軽量でありかつ耐破損性を有する。多種多様な多層膜の例は、同一出願人による米国特許第5,882,774号(名称「光学フィルム」)に包含される。代表的な用途としては、コンパクトな電子ディスプレイがあり、それには携帯電話、携帯情報端末、コンピュータ、テレビ及び他のデバイスに設置される液晶ディスプレイ(LCD)が挙げられる。
【0002】
偏光子又はミラーフィルムの作製に有用な高分子の1つは、ポリエステルである。ポリエステル系偏光子の1つとしては、例えば、米国特許第6,641,900号(ヘブリンク(Hebrink)ら)に記載されているような、異なる組成のポリエステル層の積層体が挙げられる。このような積層体は、一般に、多層反射フィルムとも呼ばれる。多層反射フィルムは更に、例えば処理中又は処理後に積層体が損傷することを防止するために、積層体の少なくとも1つの表面を被覆する、1種以上の追加の層を含んでもよい。
【0003】
ポリエステルは、1種以上の異なるカルボキシレートモノマー(例えば、2種以上のカルボン酸又はエステル官能基との化合物)と1種以上の異なるグリコールモノマー(例えば、2種以上のヒドロキシ官能基との化合物)との反応によって調製される。多層光学フィルムにおいて有用なポリエステルの一例は、例えば、ナフタレンジカルボン酸とエチレングリコールとの反応によって製造することができるポリエチレンナフタレート(PEN)である。ポリエステルポリマー又はポリエステルフィルムの性質は、モノマー分子の種類及び量の特定の選択に伴って変化する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
一実施形態では、40〜50モル%のナフタレート単位、35〜49モル%のエチレン単位、及び1〜8モル%の分枝鎖又は環状のC4〜C10アルキル単位を含むコポリエステルを含む少なくとも1つの第1複屈折光学層;並びに、第1光学層よりも小さい複屈折を有する少なくとも1つの第2光学層を含む多層光学フィルムについて記載する。
【0005】
別の実施形態では、40〜50モル%のナフタレート単位、35〜49モル%のエチレン単位、及び1〜8モル%の分枝鎖又は環状のC4〜C10アルキル単位を含む複屈折コポリエステルフィルム(ここで当該コポリエステルフィルムは、632.8nmにて少なくとも0.10の面内複屈折を有する)について記載する。
【0006】
更に別の実施形態では、コポリエステル高分子材料は、40〜50モル%のナフタレート単位、35〜48.95モル%のエチレン単位、及び1〜8モル%の分枝鎖又は環状のC4〜C10アルキル単位並びに0.05〜1モル%のジメチルスルホナトリウムイソフタレートアイオノマー単位を含む(comprising)。
【0007】
これらの実施形態のそれぞれにおいて、コポリエステルは、ネオペンチルグリコールから誘導されるような、分枝鎖C4〜C10アルキル単位を2〜4モル%含んでよい。コポリエステルは、好ましくは、シクロヘキサンジメタノールから誘導されるような、環状C4〜C10アルキル単位を2〜8モル%含む。コポリエステルは、所望により、8モル%以下のテレフタレート単位を更に含んでよい。幾つかの実施形態では、コポリエステルは、カルボキシレートサブユニット及びグリコールサブユニットを含み、80〜100モル%のカルボキシレート単位はナフタレートサブユニットを含み;70〜98モル%のグリコールサブユニットは、エチレングリコールから誘導され;2〜16モル%のグリコールサブユニットは、1種以上の分枝鎖又は環状のC4〜C10アルキルグリコールから誘導される。
【0008】
更に、これらの実施形態のそれぞれにおいて、コポリエステルは、225℃〜260℃の範囲の融解温度を有することが好ましい。本明細書に記載するような好ましいコポリエステル高分子材料は、示差走査熱量計により、毎分20℃の速度で加熱した場合に、2J/g未満の第2走査融解熱を示すことができる。好ましいコポリエステル高分子材料は熱的に安定であるため、コポリエステルの溶融温度より高い温度にて、100s−1の剪断速度で測定した場合、窒素下にて1時間後に、コポリエステルは15%未満の粘度変化を示す。
【0009】
幾つかの実施形態では、多層の光学又は複屈折(例えば、モノリシック)フィルムの複屈折層は、偏光子に有用な比較的大きな面内複屈折を有する。その他の実施形態では、多層光学フィルム又は複屈折フィルムの複屈折層は、鏡に有用な比較的大きな面外複屈折を有する。幾つかの実施形態では、複屈折層又は複屈折フィルムは、比較的大きな面内及び面外複屈折を有する。
【0010】
別の実施形態では、(nx1−ny1)/(ny1−nz1)で定義される複屈折対軸外屈折率不一致(index mismatch)率が少なくとも2.5である少なくとも1つの第1光学層(ここで、当該第1光学層が、示差走査熱量計により、毎分20℃の速度で加熱した場合に、2J/g未満の第2走査融解熱を示すようなコポリエステルを含む)、及び第1光学層よりも小さい複屈折を有する少なくとも1つの第2光学層を含む多層フィルムについて記載する。
【0011】
更に別の実施形態では、(nx1−ny1)/(ny1−nz1)で定義される複屈折対軸外屈折率不一致率が少なくとも2.5である少なくとも1つの第1光学層(ここで、当該第1光学層が、225℃〜260℃の範囲の融解温度を有するコポリエステルを含む)及び第1光学層よりも小さい複屈折を有する少なくとも1つの第2光学層を含む多層フィルムについて記載する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】多層光学フィルムの一実施形態の横断面図。
【図2】表6にしたがって処理した際の各種延伸温度でのコポリエステル光学フィルム実施形態の面内複屈折を示す。
【図3】表6にしたがって処理した際の各種延伸温度でのコポリエステル光学フィルム実施形態の面内複屈折を示す。
【図4】表6にしたがって処理した際の各種延伸温度でのコポリエステル光学フィルム実施形態の面内複屈折を示す。
【図5】表6にしたがって処理した際の各種延伸温度でのコポリエステル光学フィルム実施形態の面内複屈折を示す。
【図6】代表的コポリエステル高分子材料の示差走査熱量測定特性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、多層光学フィルム及び複屈折コポリエステルフィルムに関する。複屈折コポリエステル光学層又は複屈折コポリエステルフィルムは、多量のナフタレート単位、エチレン単位、及び微量の分枝鎖又は環状C4〜C10アルキル単位を含む。ジメチルスルホナトリウムイソフタレート(isophthtalate)アイオノマーなどのフタレートアイオノマー単位を更に含むある種のコポリエステル高分子材料についても記載されている。
【0014】
多層フィルム実施形態としては、2つ又はそれ以上の層を有するフィルムが挙げられる。例えば、多層光学フィルムは、高効率ミラー及び/又は偏光子として有用である。多層光学フィルムを本開示と併せて使用した場合、入射光線の比較的低い吸収及び軸外での通常光線の高反射率を示す。
【0015】
本出願にて使用する場合:
「屈折率」とは、特に指示がない限り、材料の平面内における、633nmの光を法線入射させた場合の材料の屈折率を意味する。
【0016】
「複屈折」とは、直交するx、y、及びz方向における屈折率が、全て同じではないことを意味する。本明細書で記載されるポリマー層においては、軸は、x及びy軸が、層平面内にあり、かつz軸が、層平面に対して直角でありかつ典型的には層の厚み又は高さに相当するように選択される。1面内方向での屈折率が、別の面内方向での屈折率より大きい場合、x軸は、一般に、最大屈折率を持つ面内方向となるように選択され、これが場合により、光学フィルムが配向する(例えば、延伸する)方向の1つに相当する。複屈折値は、特に指示がない限り、633nmの光及び法線入射に対して報告されている。
【0017】
「高屈折率」及び「低屈折率」は、相対的な語句であり;2つの層を、関心のある少なくとも1つの方向で比較した場合、より大きな面内屈折率を有する層が高屈折率層であり、より小さな面内屈折率を有する層が低屈折率層である;
「ポリマー」とは、特に指示がない限り、ポリマー類及びコポリマー類(即ち、2種類又はそれ以上のモノマー類又はコモノマー類から形成されたポリマー類であり、例えば、ターポリマー類を包含する)を意味し、同様に例えば、共押出又は反応(例えば、エステル交換を包含する)による混和性ブレンドに形成可能なコポリマー類又はポリマー類を意味する。特に指示がない限り、ブロック、ランダム、グラフト、及び交互ポリマー類が包含され;
「拘束一軸延伸」とは、外部応力を適用して、主として2方向、面内延伸方向(即ち、x)及び面内に対して直角方向(即ち、y)に寸法変化を生じさせる、フィルム延伸加工を意味する。具体的には、それは、面内非延伸方向でフィルム幅を実質的に維持しながらの面内延伸方向での寸法伸びを意味する。その結果、フィルムの厚み減少は通常、フィルム延伸比に対応しており、構造は主に平面であり;かつ
「非拘束一軸延伸」とは、外部応力が適用されて3方向全てに寸法変化が生じる、フィルム延伸加工を意味する。フィルム幅は、延伸方向長さに比較して(compare to)、通常は小さい。具体的には、それは、フィルム厚及びフィルム幅の両方が減少しながらの、面内延伸方向での寸法伸びを意味する。その結果、フィルム厚の減少は、同一延伸比にて拘束一軸延伸フィルムより小さい。更に、フィルム構造はより円筒形かつ繊維様である。
【0018】
図1は、例えば、光偏光器又はミラーとして使用できる多層ポリマーフィルム10を示す。フィルム10は、1つ以上の第1光学層12、1つ以上の第2光学層14、及び所望により、1つ以上の(例えば、非光学的な)追加の層18を含む。フィルム1は、少なくとも2種の材料からなる交互層12、14を有する多層スタックを含む。一実施形態では、層12及び14の材料は、ポリマーである。一般的に、米国特許第6,827,886号(名称「多層光学フィルムの作製方法」)(参照として本明細書に援用する)は、多層膜10の作製に適合可能な方法について記載する。加えて、フィルム10及び層12,14は、平面を有するように図示されてはいるが、フィルム10又は層12,14又は追加の層の少なくとも1つの表面が構造化されてよい。
【0019】
高屈折率層12の面内屈折率n1は、低屈折率層14の面内屈折率n2より大きい。層12,14間の各境界での屈折率差によって、光線の一部が反射される。多層膜10の透過特性及び反射特性は、層12,14間の屈折率差によって生じる光のコヒーレント干渉及び層12,14の層厚に依存する。等価屈折率(又は法線入射の場合の面内屈折率)が、層12,14間で異なる場合、隣接層12,14間の界面は、反射面を形成する。界面の反射能層は、層12,14の等価屈折率間の差の二乗(例、(n1〜n2))に依存する。層12,14間の屈折率差を増大させることによって、屈折力(より高い反射率)、より薄いフィルム(より薄い又はより少ない層)、及びより広い帯域幅性能を向上させることができる。したがって、多層膜10は、例えば、反射偏光子又はミラーとして有用となり得る。代表的実施形態における屈折率差は、少なくとも約0.05、好ましくは約0.10超、より好ましくは約0.20超、更により好ましくは約0.30超である。
【0020】
一実施形態では、層12,14の材料は本来的に異なった屈折率を有する。別の実施形態では、層12,14の材料の少なくとも1つが、応力誘発性複屈折の性質を有し、前記材料の屈折率(n)が、延伸加工の影響を受けるようにする。多層膜10を1軸方向乃至2軸方向の範囲に亘って延伸することによって、異なった配向をした面−偏光入射光に対して様々な反射率を持つフィルムを作製することができる。
【0021】
代表的実施形態では、多層膜10は、数十、数百又は数千の層を包含し、各層は多数の異なった材料のいずれかから作製することができる。特定スタックのための材料選択を決定する特性は、多層膜10の望ましい光学性能による。多層膜10は、前記スタック内の層が多くなればなる程、多くの材料を含有することができる。しかし、図示を容易にするために、光学薄膜スタックの代表的実施形態は、わずか2〜3種類の異なった材料を示す。
【0022】
一実施形態では、多層膜10内の層の数は、フィルム厚、柔軟性及び経済性の理由により、最小数の層を使用して所望の光学特性を達成するように選択する。偏光子及びミラーなどの反射フィルムの場合、層の数は、より好ましくは約2,000未満、より好ましくは約1,000未満、更により好ましくは約500未満である。
【0023】
幾つかの実施形態では、多層高分子フィルムは、任意の追加の非光学層又は光学層を更に含む。追加の層18は、積層体16内に配置されたポリマー層である。このような追加の層は、光学層12,14を損傷から保護し、共押出加工に役立ち、かつ/又は後工程の機械的特性を向上させ得る。追加の層18は多くの場合、光学層12,14より厚い。追加の(例えば、皮膚)層18の厚みは通常、個々の光学層12,14の厚みの少なくとも2倍、好ましくは少なくとも4倍、より好ましくは少なくとも10倍である。付加層の厚み18は、特定の厚みを有する多層高分子フィルム10を作製するために変化し得る。典型的に、1種以上の追加の層18は、光学層12,14によって透過、偏光及び/又は反射される光の少なくとも一部もまた、当該追加の層を通って伝わるように定置される(即ち、追加の層は、光学層12,14を通って伝わる又は光学層12,14によって反射される光路内に定置される)。
【0024】
多層膜10の一実施形態は、低屈折率/高屈折率フィルム層の複数ペアから成り、ここでは、各低屈折率/高屈折率層のペアが、反射するように設計された帯域の中心波長の1/2の光学的な結合厚さを有する。このようなフィルムの積層体は、通常、四分の一波長積層体と呼ばれている。可視波長及び近赤外波長に対応する多層光学フィルムの場合、4分の1波長積層の設計は、約0.5マイクロメートル以下の平均厚さを有する多層スタック内の各層12,14をもたらす。その他の代表的実施形態では、例えば、広帯域反射光学フィルムが所望される場合、異なる低屈折率/高屈折率層のペアは、異なる光学的な結合厚さを有してよい。
【0025】
反射フィルム(例えば、ミラー又は偏光子)が所望されるような用途においては、各ポラライゼーション及び入射平面についての所望の平均光透過率は、一般に、反射フィルムの使用目的による。多層ミラーフィルムを作製するための1つの方法は、多層積層体を二軸延伸することである。高効率反射フィルムには、法線入射での可視スペクトル(約380nm〜750nm)にまたがる各延伸方向に沿った平均透過率は、望ましくは約10%未満(約90%超の反射率)、好ましくは約5%未満(約95%超の反射率)、より好ましくは約2%未満(約98%超の反射率)、更により好ましくは約1%未満(約99%超の反射率)である。法線方向から約60度での可視スペクトルに亘る平均透過率は、望ましくは約20%未満(約80%超の反射率)、好ましくは約10%未満(約90%超の反射率)、より好ましくは約5%未満(約95%超の反射率)、更により好ましくは約2%未満(約98%超の反射率)、更により好ましくは約1%未満(約99%超の反射率)である。ミラーフィルムの幾つかの例は、共有米国特許第5,882,774号(ジョンザ(Jonza)ら)に、更に記載されている。
【0026】
更に、非対称反射フィルム(不均衡二軸延伸から生じたフィルムなど)が、特定の応用には望ましい場合がある。その場合、例えば、可視スペクトル(約380nm〜750nm)の帯域幅に亘って、又は可視スペクトル及び近赤外(例えば、約380nm〜850nm)に亘って、1つの延伸方向に沿った平均透過率は、望ましくは、例えば、約50%未満であってよく、一方で、その他の延伸方向に沿った平均透過率は、望ましくは、例えば、約20%未満であってよい。
【0027】
多層光学フィルムはまた、反射性偏光子として作用するように設計することもできる。多層反射性偏光子を作成する1つの方法は、多層積層体を単軸延伸することである。得られた反射偏光子は、光に対する高い反射率を有し、広範囲の入射角度に対して、第1面内軸線(通常は、延伸方向)と平行する偏光面を持ち、同時に、光に対する低い反射率及び高い透過率を有し、広範囲の入射角度に対して、前記第1面内軸線と直交する第2面内軸線(通常は、非延伸方向)と平行する偏光面を持つ。各フィルムの3つの屈性率nx、ny及びnzを制御することによって、所望の偏光子挙動を得ることができる。例えば、米国特許第5,882,774号(ジョンザ(Jonza)ら)を参照のこと。
【0028】
光学層12,14及び多層高分子フィルム10の任意の追加の層18は通常、ポリエステルなどのポリマーで構成されている。ポリエステルは、カルボキシレート及びグリコールサブユニットを含み、カルボキシレートモノマー分子とグリコールモノマー分子とを反応させることによって生成される。各カルボキシレートモノマー分子は、2種又はそれ以上のカルボン酸又はエステル官能基を有し、かつ各グリコールモノマー分子は、2種又はそれ以上のヒドロキシ官能基を有する。前記カルボキシレートモノマー分子は、全て同一であってもよく、又は2種又はそれ以上の異なったタイプの分子であってもよい。グリコールモノマー分子についても同様である。ポリマー層又はフィルムの特性は、ポリエステルのモノマー分子における特定の選択によって異なる。
【0029】
ここでは、1種以上の複屈折コポリエステル層、複屈折コポリエステルフィルム、及びある種のコポリエステル高分子材料を含む多層光学フィルムについて述べる。
【0030】
コポリエステル高分子材料は、全組成物、即ち、50モル%カルボキシレート単位及び50モル%グリコール単位から誘導される100モル%単位に関して、本明細書で記載される。コポリエステル高分子材料もまた、カルボキシレートサブユニットのモル%及びグリコールサブユニットのモル%(即ち、コポリエステルの調製において、100モル%のカルボキシレートサブユニットは100モル%のグリコールサブユニットと反応する)に関して、本明細書で記載される。
【0031】
コポリエステルは一般に、ナフタレンジカルボン酸とエチレングリコール及び分枝鎖又は環状のC4〜C10アルキル単位に寄与する少なくとも1種の追加の(例えば、グリコール)コモノマーとの反応によって製造される。
【0032】
ポリエステル層のカルボキシレートサブユニットの形成に用いるのに好適なカルボキシレートモノマー分子としては、例えば、2,6−ナフタレンジカルボン酸モノマー及びその異性体などのナフタレンジカルボン酸が挙げられる。2,6−ナフタレンジカルボン酸モノマー及び/又はその異性体は、80〜100モル%のカルボキシレートサブユニット(又は40〜50モル%のコポリエステル)がナフタレートサブユニットを含むような濃度にて用いられる。好ましくは、カルボキシレートサブユニットの少なくとも81,82,83,84,又は85モル%は、ナフタレートサブユニットを含む。
【0033】
幾つかの実施形態では、コポリエステルは、2,6−ナフタレンジカルボン酸又はその異性体を、1種以上のその他の(即ち、ナフタレンジカルボン酸モノマー及びその異性体とは異なる)カルボキシレートモノマー分子と組み合わせて形成される。コポリエステルが複数タイプのカルボキシレートサブユニットを含有する実施形態の場合、コポリエステルはブロック又はランダムコポリエステルであってもよい。その他のカルボキシレートモノマー(類)の総量は、20モル%以下(又はコポリエステルの10モル%以下)の範囲であってよい。通常は、その他のカルボキシレートモノマーの総量は、19,18,17,16,又は15モル%以下(又はコポリエステルの9.5,9,8.5,8,若しくは7.5モル%以下)である。
【0034】
好適なその他カルボキシレートモノマーとしては、例えば、テレフタル酸;イソフタル酸;フタル酸;アゼライン酸;アジピン酸;セバシン酸;ノルボルネンジカルボン酸;ビ−シクロオクタンジカルボン酸;t−ブチルイソフタル酸、トリ−メリト酸、スルホン化イソフタル酸ナトリウム;4,4’−ビフェニルジカルボン酸及びその異性体;並びにこれらの酸の低級アルキルエステル(メチル又はエチルエステルなど)が挙げられる。この文脈において、「低級アルキル」という用語は、C1〜C10の、好ましくはC1〜C4の、より好ましくはC1〜C2の直鎖又は分枝状アルキル基を指す。
【0035】
幾つかの実施形態では、コポリエステルは、ジメチルテレフタル酸(DMT)などのテレフタル酸から誘導されるカルボキシレートサブユニットを含む。コポリエステルは、共通のモノマー単位の存在ゆえに、テレフタレートを含有するコポリエステルから製造された第2光学層に対してより良好な接着性を示すことができる。本実施形態では、少なくとも1,2,3,4,又は5モル%の、典型的には、15モル%以下の総カルボキシレートサブユニットが、テレフタル酸から誘導される。したがって、本実施形態では、コポリエステルは、0.5,1.0,1.5,2.0、又は2.5モル%の、典型的には、7.5モル%以下のテレフタレート単位を含む。幾つかの実施形態では、ジメチルテレフタル酸などのテレフタル酸から誘導されるカルボキシレートサブユニットの量は、14,13,又は12モル%未満である。このため、コポリエステルは、7.0,6.5,又は6.0モル%未満のテレフタレート単位を含む。
【0036】
幾つかの実施形態では、コポリエステルは、ナフタレンジカルボン酸及びその異性体によってもたらされたナフタレートサブユニットをより一層高濃度で含む。例えば、ナフタレートサブユニットの濃度は、少なくとも90,91,92,93,94,95,96,97,又は98モル%であってよい。このような実施形態では、分枝鎖又は環状のC4〜C10アルキル単位は一般に、分枝鎖又は環状のC4〜C10アルキルグリコール(ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール又はこれらの混合物など)から誘導される。
【0037】
しかし、特に、低濃度のナフタレート単位を用いる実施形態の場合、少なくとも部分的に、得られたコポリエステルにて、大きな複屈折及び/又は低下した熱加工温度などの所望の特性が得られる程度まで、好適なカルボキシレートモノマー分子によって、代替的に分枝鎖又は環状のC4〜C10アルキル単位を提供することができる。例えば、シクロヘキサンジカルボン酸及びこの酸の低級アルキルエステル(メチル又はエチルエステルなど)によって、少なくとも部分的には、環状C4〜C10アルキル単位が寄与し得る。
【0038】
コポリエステルのグリコールサブユニットの形成に用いるのに好適なグリコールモノマー分子としては、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、及びこれらの混合物などの分枝鎖又は環状のC4〜C10アルキルグリコールと組み合わされたエチレングリコールが挙げられる。エチレングリコールモノマーは通常、70〜98モル%のグリコールサブユニット(又は35〜49モル%のコポリエステル)がエチレンサブユニットを含むような濃度で用いられる。典型的には、少なくとも1又は2モル%及び16モル%以下のグリコールサブユニットが、分枝鎖及び/又は環状のC4〜C10アルキルグリコールから誘導される。したがって、コポリエステルは、少なくとも0.5〜1モル%及び8モル%以下の、分枝鎖及び/又は環状のC4〜C10アルキル単位を含む。
【0039】
幾つかの実施形態では、コポリエステルは、シクロヘキサンジメタノールなどの環状C4〜C10アルキルグリコールの不存在下にて、エチレングリコール及びネオペンチルグリコールなどの分枝鎖C4〜C10アルキルグリコール(類)から誘導されるグリコールサブユニットを含む。本実施形態では、コポリエステルは通常、5モル%未満(例えば、10モル%のグリコールサブユニット)の分枝鎖C4〜C10アルキル単位を含む。コポリエステルの分枝鎖C4〜C10アルキル単位(例えば、ネオペンチルグリコール)の量は、好ましくは約2〜4モル%(例えば、4〜8モル%のグリコールサブユニット)の範囲である。
【0040】
好ましい実施形態では、コポリエステルは、ネオペンチルグリコールなどの環状C4〜C10アルキルグリコールの不存在下にて、エチレングリコール及びシクロヘキサンジメタノールなどの環状C4〜C10アルキルグリコール(類)から誘導されるグリコールサブユニットを含む。本実施形態では、コポリエステルは、シクロヘキサンジメタノール単位などの環状C4〜C10アルキル単位を2〜8モル%含むことが好ましい。
【0041】
コポリエステルは所望により、1種以上のその他グリコールモノマー分子から形成されてよい。好適なグリコールモノマー分子としては、例えば、プロピレングリコール;1,4−ブタンジオール及びその異性体;1,6−ヘキサンジオール;ポリエチレングリコール;ジエチレングリコール;トリシクロデカンジオール;並びにこれらの異性体;ノルボルナンジオール;ビシクロ−オクタンジオール;トリメチロールプロパン;ペンタエリスリトール;1,4−ブタンジオール及びその異性体;ビスフェノールA;1,8−ジヒドロキシビフェニル及びその異性体;並びに1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンが挙げられる。通常は、その他グリコールモノマー(即ち、エチレングリコール及びネオペンチルグリコール、又はシクロヘキサングリコールなどのC4〜C10アルキルグリコール(類)と異なる)から誘導されたユニットの量は、5モル%以下である。幾つかの実施形態では、その他のグリコールモノマーから誘導されたユニットは、1又は2モル%以下である。合成においてその他グリコールモノマーが存在しない場合、コポリエステルポリマーは通常、副反応副生成物として、約0.5〜3モル%のジエチレングリコールを含有する。
【0042】
複屈折第1光学層の製造に使用するコポリエステルは、加工性を向上させるために、硫酸ナトリウムイソフタレート(SSIP)などのフタレートアイオノマーを少濃度で更に含んでよい。イオン性コモノマーは通常、フタレート、イソフタレート、テレフタレート、及び/又はナフタレートから誘導される、1つ以上のジカルボン酸部分を含む。対イオンは、H+又はカリウム、リチウム、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、コバルト、鉄、及び/若しくはアンチモンなどのその他の金属イオンであり得る。アイオノマーの濃度は一般に、約0.005モル%〜2モル%の範囲である。幾つかの実施形態では、コポリエステルアイオノマーの濃度は、1モル%以下である。その他の実施形態では、コポリエステルアイオノマーの濃度は、0.5モル%以下である。
【0043】
好ましい実施形態では、本明細書で記載されるコポリエステルは、PENに匹敵する複屈折性を有する。好ましい実施形態では、本明細書で記載されるコポリエステルは、より低融点の(lower melting)複屈折コポリエステル(本明細書においては、「90/10coPEN」と称する)よりも大きな複屈折を有する。90/10coPENは、約10%のカルボキシレート単位がテレフタレートサブユニットであるという点で、PENとは異なる。
【0044】
前述したように、面内複屈折性は、偏光子として利用される多層光学フィルムなどの多くのタイプの多層光学フィルムにとって重要である。図2〜5に示すように、本明細書で記載される複屈折コポリエステルから製造される高屈折率層12は、632.8nmにて0.05以上配向後、面内複屈折(nx−nyの絶対値)を有する。好ましくは、面内複屈折は、約0.10以上である。延伸方向に平行な平面内で偏光した632.8nmの光でのコポリエステルの屈折率は、約1.62から約1.87の大きさまで増大することが可能である。可視スペクトル内では、コポリエステルは、典型的な高い配向延伸(orientation stretch)(例えば、材料は、100〜150℃の温度及び5〜150%/秒の初期ひずみ速度にて、その原寸の5倍以上まで伸ばされる)について、400〜700nmの波長帯にわたって0.20〜0.40の複屈折を示す。
【0045】
複屈折を表す別の方法は、フィルム形成(即ち、125〜150℃の範囲の温度範囲のガラス転移温度近傍で延伸された)後の、平均面内複屈折(拘束一軸又は非拘束一軸)に関してである。複屈折コポリエステルの第2走査ガラス転移温度(Tg)は通常、実施例にて記載した試験方法にしたがって示差走査熱量計(DSC)によって決定されるように、少なくとも105℃であり、一般に約125℃以下である。
【0046】
表6及び7に示すように、本明細書で記載されるコポリエステルから形成された光学層は、少なくとも0.10,0.15,又は0.20の平均面内(例えば、拘束)一軸複屈折を示すことができる。幾つかの実施形態では、平均面内拘束一軸複屈折は、少なくとも0.21又は少なくとも0.22である。更に、平均面内非拘束一軸複屈折は、少なくとも0.25,0.30,0.31,又は0.31であり得る。
【0047】
ミラーフィルムとして利用されるものなどの他のタイプの多層光学フィルムについては、面外複屈折性が重要である。表5に示すように、本明細書で記載されるコポリエステルから形成された光学層は、少なくとも0.10の平均面外複屈折を示すことができる。幾つかの実施形態では、平均面外複屈折は、少なくとも0.18又は少なくとも0.20である。更に、平均面外複屈折は、少なくとも0.16又は0.17であり得る。
【0048】
反射偏光子などの多層光学フィルムのスペクトル特性を測定して、複屈折(nx1,ny1,nz1)及び第2(例えば、等方性)層(nx2,ny2,nz2)の実効屈折率を推定するのに使用できる。第2(例えば、等方性)層の好ましい実効屈折率は通常、ny1,nz1又はその両方(X方向に延伸されたフィルムに関して)にほぼ等しくなるように選択される。本明細書で記載するコポリエステルから製造されたフィルム層の屈折率成分は、PENと比較して、屈折率の減少したny1及び増加したnz1成分と共に、増加したnx1成分を提供することができる。これら両特性は、反射偏光子がLCDディスプレイにて使用される場合には非常に望ましいが、それは(nx1−ny1)が偏光子の輝度量増大又は効率に多大な貢献をするためであり(即ち、(nx1−ny1)の値が大きいほうが望ましい)、かつ(ny1−nz1)が、多層反射偏光子が、通過状態の光にオフアングル(off angle)反射率を有する傾向と関係し、したがってディスプレイが好ましくない色特性(即ち、(ny1−nz1)が低い値であることが望ましい)を有する傾向があることと関係しているためである。(即ち、(ny1−nz1)が低い値であることが望ましい)を有する傾向があることと関係しているためである。この特性は、式(nx1−ny1)/(ny1−nz1)で定義される複屈折対軸外屈折率不一致率を使用して定量化できる。好ましい実施形態では、(nx1−ny1)/(ny1−nz1)で定義される複屈折対軸外屈折率不一致率は、少なくとも2.5である。より好ましい実施形態では、(nx1−ny1)/(ny1−nz1)で定義される複屈折対軸外屈折率不一致率は、少なくとも2.7である。
【0049】
第2光学層の第1高分子材料のコポリエステルの、並びに任意の共押出可能な追加の(例えば、皮膚)層の固有粘度は、ポリマーの分子量(分岐モノマーは存在しない)に関係している。通常は、ポリエステルは、約0.4dL/gより大きい固有粘度を有する。好ましくは、固有粘度は約0.4〜0.9dL/gである。本開示では、固有粘度は、特に指示がない限り、60/40重量%・フェノール/o−ジクロロベンゼン溶媒中、30℃にて測定する。
【0050】
更に、第1光学層、第2光学層、及び共押出可能な追加の層は、類似した流動学的性質(例えば、溶融粘度)を有するように選択される。通常は、第2光学層及び共押出可能な追加の層は、ガラス転移温度(Tg)を有し、それは、第1光学層のガラス転移温度を約40℃未満で超える温度、又はガラス転移温度を約40℃以下で超える温度のいずれかであってよい。好ましくは、第2光学層及び任意の追加層のガラス転移温度は、第1光学層のガラス転移温度より低い。
【0051】
しかし、ちょうど今述べた複屈折性に代えて又はそれに加えて、本明細書に記載されるコポリエステルは、PENと比較して、低温(reduced temperatures)でのコポリエステル加工の影響を受けやすい各種熱的特性を有する。
【0052】
図6を参照すると、本明細書で記載する代表的複屈折コポリエステルをPENとの比較でDSC走査すると、本明細書で記載されるコポリエステル材料の好ましい実施形態は、第2走査結晶化ピークを示さず、したがって相当な(substanial amounts of)結晶性を含有しない。熱誘導結晶化の不存在にもかかわらず、第1走査によって明らかなように、非常に強い発熱ピークが高配向性サンプルにて観察された。これは、高複屈折を示す、本明細書に記載されるコポリエステルのひずみ硬化性を示す。融解熱は、このようなヒンダード結晶化(hindered crystallization)を定量するための1つの方法である。表3を参照すると、コポリエステルは、実施例にて更に詳細に説明する試験方法にしたがって測定した場合、毎分20℃の速度で加熱する示差走査熱量計によれば、2J/g未満の第2走査融解熱を示す。
【0053】
表3を参照すると、コポリエステルは通常、PENより低く、270℃未満の融解温度(Tm、DSCにて決定)を有する。融解温度は通常、少なくとも225℃であり、好ましくは260℃以下である。本明細書に記載されるコポリエステルの熱特性の観点から、低温加工温度にてコポリエステルをフィルムへと成形することができる。例えば、次表は、PEN、90/10coPEN、並びに本明細書で記載される複屈折コポリエステルの典型的加工条件について示す。
【0054】
【表1】

【0055】
本明細書で記載されるコポリエステルは、250℃〜280℃の範囲のプロセス温度にて熱的に安定である。表4に示すように、本明細書で記載されるコポリエステルは、わずかな融解粘度上昇を示す場合がある。理論に束縛されるものではないが、粘度上昇は、溶解物中での追加の重合に起因すると思われる。通常は、コポリエステルは、実施例にて更に記載されている試験方法にしたがって、100s−1の剪断速度で測定した場合、250℃、255℃、260℃、265℃、270℃、275℃、又は280℃にて、窒素下、1時間後15%未満の粘度変化を示す。
【0056】
本明細書に記載されるコポリエステルの加工温度を下げることは、多層光学フィルムの第2層又はスキン層などのその他の隣接層の熱劣化を低減するために特に有利である。例えば、多層光学フィルムの第2層として用いるのに適した1つの代表的コポリエステルは、イーストマン・ケミカル社(テネシー州キングズポート)から「SA115」の商標名で市販されている。280℃、60分の持続時間にて、SA115は66.3%の粘度減少・(初期粘度−最終粘度)/初期粘度×100%を示す。しかし、この同一材料は、250℃の温度にて、13.1%の粘度減少を示す。したがって、SA115の熱分解は、低い加工温度に晒した場合には、大幅に少ない。同様に、多層光学フィルムの第2層として用いる別の代表的なコポリエステルである、イーストマン(Eastman)から「PETG 6763」の商標名で市販されているコポリエステルは、280℃で52%、250℃で6.4%の粘度減少を示す。したがって、第1光学層及び第2光学層の組み合わせは、250℃の温度で窒素下1時間後100s−1の剪断速度で測定した場合に、15%未満の粘度変化を示すことができる。フィルム欠陥の主要な原因の1つが分解であるため、熱安定性を向上させると、フィルム欠陥が減少しかつ製造歩留まりが向上しやすい。
【0057】
上記の有利な複屈折及び減少した加工温度属性に加えて、本明細書に記載されるコポリエステルは更に、第2等方性光学層(特に、ネオペンチルグリコール又はシクロヘキサンジメタノールなどの、分枝鎖又は環状のC4〜C10アルキル単位)に対する接着性を向上させ、PEN又は90/10coPENに対する層間剥離性能を向上させると推測される。
【0058】
幾つかの実施形態では、第2光学層14は、一軸又は二軸配向可能である。しかし、より典型的には、第2光学層14は、延伸される場合であっても、比較的等方性の屈折率を維持する。第2光学層は、632.8nmにて、約0.04未満の、より好ましくは約0.02未満の複屈折を有する。
【0059】
第2光学層14は、様々なポリマーから作製され得る。好適なポリマーの例としては、ビニルナフタレン、スチレン、無水マレイン酸、アクリレート、及びメタクリレートなどのモノマーから生成されるビニルポリマー及びコポリマーが挙げられる。好適なポリマーの例としては、ポリアクリレート、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)などのポリメタクリレート、及びアイソタクチック又はシンジオタクチックポリスチレンが挙げられる。その他のポリマーとしては、ポリスルホン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリアミック酸、ポリイミドなどの縮合ポリマー、及び米国特許公開公報第2007/0177272号に記載されているようなポリジオルガノシロキサンポリアミドブロックコポリマーが挙げられる。加えて、第2光学層14は、ポリエステル及びポリカーボネートなどのポリマー及びコポリマーから形成され得る。第2光学層14は、ポリエステル類のコポリマーによって以下で例示される。しかしながら、上述で記載される他のポリマーも使用し得ることが理解されるであろう。以下で記載されるようなコポリエステルにおける光学特性に関する同様の考察は、典型的には他のポリマー及びコポリマーにも当てはまるであろう。
【0060】
第2光学層14において好適な材料の例は、PEN、PBN、PET、又はPBTのコポリマーである。典型的には、これらのコポリマーは、20〜100モル%の(coPEN又はcoPBNのための)ナフタレートサブユニット又は(coPET又はcoPBTのための)テレフタレートサブユニットのような第2カルボキシレートサブユニット、及び、0〜80モル%の第2コモノマーカルボキシレートサブユニットであるカルボキシレートサブユニットを含む。コポリマーは更に、40〜100モル%の(coPEN又はcoPETのための)エチレン又は(coPBN又はcoPBTのための)ブチレンであるグリコールサブユニット、及び0〜60モル%の第2コモノマーグリコールサブユニットであるグリコールサブユニットを含む。少なくとも約20モル%の、カルボキシレートサブユニットとグリコールサブユニットとの結合体は、複屈折低減コモノマーから誘導される第2コモノマーカルボキシレートサブユニット又はグリコールサブユニットである。コモノマーは、coPENポリエステル中でランダムに分布するか、又はブロックコポリマー中で1つ以上のブロックを形成することがある。
【0061】
カルボキシレートサブユニットとして使用するのに好適な複屈折を削減するコモノマー材料の例は、t−ブチル−イソフタル酸、フタル酸、及びそれらの低級アルキルエステルから得られる。複屈折コポリエステルは、15モル%以下のテレフタレートサブユニットを含有してよいけれども、等方性コポリエステルは通常、少なくとも25,30,35,40,45若しくは50モル%のテレフタレート及び/又はイソフタレートサブユニットを含有する。
【0062】
典型的には複屈折低減カルボキシレートサブユニットと組み合わされて使用されるジオールサブユニットとして使用するのに好適な複屈折低減コモノマー材料の例は、1,6−ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、及び分枝鎖又は環状のC4〜C10アルキルジオールから誘導される。幾つかの実施形態では、等方性層のコポリエステルは、2〜46モル%の、好ましくは4〜15モル%の、これら複屈折低減ジオールを含む。
【0063】
3個以上の、カルボキシレート、エステル、又はヒドロキシ官能基を有する化合物から誘導されるコモノマーサブユニットの付加によって、第2層のコポリエステルの複屈折もまた低減し得る。好適なコモノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパン及びペンタエリスリトールが挙げられる。これらの化合物は、他のポリマー分子と分岐又は架橋を形成するために、分岐剤として機能する。幾つかの実施形態では、第2層のコポリエステルは、0.01〜5モル%の、好ましくは0.1〜2.5モル%のこれら分岐剤を含む。
【0064】
図1を再度参照すると、多層フィルムは、図1に示すように、積層体16の少なくとも1つの表面上へと積層され又はスキン層として形成された1つ以上の追加の層18を任意に含んでもよい。同一又は異なった材料からなる層を、スタック並びに1つ又は2つの主表面内に分配してよい。
【0065】
幾つかの実施形態では、追加の層18は典型的には、少なくとも関心のある波長領域内では、多層高分子フィルム10の光学特性の決定において決定的な要因とはならない。追加の層18は典型的には、複屈折でも配向可能でもない。このような追加の層は、光学層を損傷から保護し、共押出加工に役立ち、かつ/又は後工程の機械的特性を向上させ、かつ/又はより大きな機械的強度を積層体に付与し得る。
【0066】
あるいは、多層膜の外観及び/又は性能は、主表面上のスキン層又はフィルム層積層体内のスキン層と接触しているアンダースキン層などの追加の層を包含させることによって変更してもよい。
【0067】
通常は、追加の層18がスキン層として使用される場合、少なくとも若干の表面反射があり得る。多層高分子フィルム10が偏光子となる場合、追加の層が、比較的小さい屈折率を有することが好ましい。これにより、表面反射量が減少する。多層高分子フィルム10がミラーとなる場合、追加の層18は、光反射を増大させるために、大きな屈折率を有することが好ましい。
【0068】
追加の層18が積層体16内に見出される場合、追加の層18に隣接した光学層12,14と組み合わされた追加の層18によって、通常、光の偏光又は反射が少なくとも若干存在し得る。しかし、通常は、追加の層18は、積層体16内の追加の層18によって反射された光が、関心のある領域の外側の波長、例えば、可視光偏光子又はミラーのための赤外線領域となるような厚みを有する。
【0069】
追加の層は、coPENなどのポリエステルから調製してよい。追加の層は更に、第2低屈折率層として使用する、先に記載した高分子材料のいずれかから調製されてよい。
【0070】
スキン層及び内部層は、フィルム形成時(共押出により、又は別個のコーティング又は押出工程のいずれかで)に一体化されてよく、あるいは、それらは後になって、完成フィルムへ適用してよく、例えばスキン層をコーティング又はラミネーションによって、予め形成されたフィルムへと適用してよい。追加の層の総厚は通常、多層膜の総厚の約2%〜約50%の範囲である。
【0071】
追加の層又はコーティングの例は、米国特許第6,368,699号及び同第6,459,514号(共に、名称「追加のコーティング又は層を備えた多層高分子フィルム(Multilayer Polymer Film with Additional Coatings or Layers)」)、並びに米国特許第6,783,349号(ニーヴィン(Neavin)ら)(名称「「多層光学フィルムの作製装置(Apparatus for Making Multilayer Optical Films)」」)に記載されている。
【0072】
追加の層の組成物は、例えば、加工中又は加工後において、層12,14の一体性を保護するため、多層膜10へ機械的性質又は物理的性質を加えるため、又は多層膜10へ光学的機能を加えるため選択されてよい。機能性構成成分、例えば、帯電防止剤、紫外線吸収剤(UVA)、ヒンダードアミン光安定剤(HALS)、染料、着色剤、色素、酸化防止剤、スリップ剤、低接着性材料、導電性材料、耐摩耗性材料、光学素子、寸法安定剤、接着剤、粘着付与剤、難燃剤、燐光材料、蛍光材料、ナノ粒子、落書き防止剤、結露防止剤、耐荷重剤、シリケート樹脂、光拡散材料、光吸収材料及び蛍光増白剤が、これらの層内に包含されてもよく、それらが、得られた生成物の所望の光学的性質又はその他の性質を実質的に妨害しないことが好ましい。幾つかの代表的実施形態では、1つ以上の追加の層は、ディフューザ、例えば、粗い、光沢が無い又は構造化された表面、数珠状ディフューザ又は有機粒子及び/若しくは無機粒子を包含するディフューザ、又はこれらのうちの任意の数の組み合わせであってもよく、あるいはそれらを包含してもよい。
【0073】
1つの代表的スキン層は、(例えば、約2〜3重量%の)2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−(ヘキシルオキシ−フェノール)などの紫外線吸収剤(チバ(Ciba)から「チヌビン1577」の商標名で市販されている);(例えば、約0.5重量%の)ヒンダードアミン光安定剤、例えば、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノール中10重量%のジメチルサクシネートポリマー、90重量%のN,N’’’−[1,2−エタンジイルビス[[[4,6−ビス[ブチル(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)アミノ]−1,3,5−トライジン(traizin)−2−イル]イミノ]−3,1−プロパンジイル]]ビス[N’N’’−ジブチル−N’N’’−ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)]−1(チバ(Ciba)から「チムソルブ(Chimmasorb)119 FL」の商標名で市販されている)及び(例えば、約0.1重量%の)酸化防止剤、例えば、ベンゼンプロパン酸、3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシ−2,2−ビス[3−[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]−1−オキソプロポキシ]m(3,5-bis(1,1-dimethylethyl)-4-hydroxy-,2,2-bis[[3-[3,5-bis(1,1-dimethylethyl)-4-hydroxyphenyl]-1-oxopropoxy]m)(チバ(Ciba)から「イルガノックス(Irganox)1010 FF」の商標名で市販されている)又はビス(2,4−ジ−3級−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト(ケムチュラ(Chemtura Corporation)から「ウルトラノックス(Ultranox)626」の商標名で市販されている)と組み合わされた、PMMA又はポリカーボネート/コポリエステルブレンドポリマー(SA115)を含む。
【0074】
一実施例では、スキン層は、押出後加工に役立てるために使用され、例えば、フィルムが熱ローラー又はテンタークリップに粘着するのを防ぐのに役立つ。別の実施形態では、所望のバリア性を多層膜へ付与するために、スキン層が加えられる。例えば、バリア膜又はコーティング材は、スキン層として又はスキン層の構成成分として追加してもよく、これにより多層膜の透過性を、液体例えば水若しくは有機溶媒、又は気体例えば酸素若しくは二酸化炭素へと変更する。
【0075】
得られた多層膜の磨耗耐性を付与し又は改善するために、スキン層を追加してもよい。例えば、ポリマーマトリックス内に埋め込まれたシリカ粒子などの無機粒子を含むスキン層を使用してもよい。別の実施形態では、スキン層は、米国特許第5,677,050号に記載されているような耐摩耗性コーティングを含んでよい。得られた多層膜に耐破壊性及び/又は引裂き抵抗を付与し又は向上させるために、スキン層を追加してもよい。耐破壊性又は耐引裂性スキン層を製造工程中に適用するか、その後に、多層膜10上にコーティングするか又は積層してよい。製造工程中に、同時押出プロセスなどによって、これらの層を多層膜10へ接着することで、多層膜10が、製造工程中に保護されるという利点を提供する。
【0076】
一実施例では、追加の層は、1つ以上のスペクトル選択領域で吸光する染料又は色素を含む。スペクトルの代表的選択領域としては、紫外線及び赤外と同様に可視スペクトルの一部又は全部を挙げることができる。可視スペクトルの全てが吸収される場合、当該層は不透明に見える。層のための材料は、多層膜により透過又は反射された光の見かけの色を変えるために選択できる。特に、フィルムが幾つかの光周波数を透過させ、一方で他を反射する場合に、当該フィルムの性質を補うためにそれらを使用することもできる。別の実施形態では、紫外線吸収材料をスキンカバー層内で使用することは特に望ましい。というのも、それが紫外線にさらされた場合にしばしば不安定となる内層を保護するために使用してもよいからである。一実施形態では、蛍光材料が、追加の層中に組み込まれる。蛍光材料は、紫外線スペクトル領域で電磁エネルギーを吸収し、可視スペクトル領域で再放射する。
【0077】
感圧性接着剤を包含する接着剤類は、スキン層として多層スタックへ適用してよい、別の望ましい一群の材料を形成する。一般に、感圧性接着剤は、多層膜が後でガラス又は金属基材などの別の材料へ積層されることが意図されている場合に、適用される。
【0078】
スキン層内に組み込まれてよい別の材料は、スリップ剤である。スリップ剤は、製造工程中に多層膜をより扱い易くする。通常、スリップ剤は、フィルムに照射される光の一部を透過することを目的としているフィルムというよりむしろ、ミラーフィルムとともに使用される。前記スリップ剤を包含する側面は、前記スリップ剤が、反射と関係したかすみを増大させるのを防止するために、通常、支持基材へ積層されることを目的としている側面である。
【0079】
スキン層に由来する多くの利点は、類似の内部層にも由来し得る。このため、スキン層に関する前述の説明は、内部層にもまたあてはまる。
【0080】
その他の追加の層は、ホログラフィー像、ホログラフィーディフューザ、又はその他の拡散層を含有する層を包含する。上の記述においては、多層膜スタックに適用して、その性質を変更することができる様々な層の例を記載した。一般的に、任意の追加の層を追加してもよく、通常、層12,14のそれとは異なった機械的、化学的、又は光学特性を提供してよい。
【0081】
代表的実施形態では、追加の層は、例えば、米国特許第6,096,375号(アウダーカーク(Ouderkirk)ら)(名称「光学的偏光子(Optical Polarizer)」)に記載されているような、吸収層又はダイクロイック偏光子層であってよい。幾つかのこのような構成においては、ダイクロイック偏光子の透過軸は、反射偏光子の透過軸と位置を合わせる。
【0082】
多層高分子フィルム形成のためのプロセス条件及び問題点についての説明は、米国特許出願シリアル番号第09/006,288号(名称「多層光学フィルムの製造方法(Process for Making Multilayer Optical Film)」)内に見出される。
【0083】
フィルムは一般に、個別のポリマーを共押出して、多層フィルムを形成し、次いで選択された温度で延伸することによってフィルムを配向させ、所望により選択された温度でヒートセットすることによって作製される。この代わりに、押出成形及び配向工程を同時に行ってもよい。偏光子の場合、フィルムは実質的に一方向に延伸されるが(1軸配向)、ミラーフィルムの場合には、フィルムは実質的に2方向に延伸され(二軸配向)、それは、同時に又は連続的に実施してよい。
【0084】
異なる加工実施形態では、多層膜は、延伸方向と交差する方向での寸法的緩和をさせてもよく、結果として、延伸交差方向での自然減をもたらし(延伸比の平方根に相当する)、多層膜を制約して、延伸交差寸法の大幅な変化をいかなる場合も制限してよく、あるいは多層膜の延伸交差寸法を動的に延伸させてもよい。例えば、多層膜は、長さ方向配向機を使用して機械方向に延伸させても、あるいは幅出し機を使用して幅方向に延伸させてもよい。
【0085】
所望の屈折率相互関係及び物理的寸法を有する多層膜を作製するために、延伸工程前の温度、延伸温度、延伸速度、延伸比、ヒートセット温度、ヒートセット時間、ヒートセット緩和、及び延伸交差緩和が選択される。これらの変数は、相互依存性であり、したがって、例えば、比較的低い延伸温度で連結される場合、例えば、比較的低い延伸温度が使用可能である。一般的に、延伸方向での約1:2〜約1:10(より好ましくは、約1:3〜約1:7)の範囲の延伸比及び延伸方向に直交する方向での約1:0.2〜約1:10(より好ましくは、約1:0.5〜約1:7)の範囲の延伸比が、代表的実施形態において選択される。
【0086】
適した多層フィルムは、複屈折性ポリイミド類についてはスピンコーティング(例えば、Boeseら、J.Polym.Sci.:Part B,30:1321(1992)に記載されている)及び結晶構造有機化合物については真空蒸着(例えば、Zangら、Appl.Phys.Letters,59:823(1991)に記載されている)のような技法を用いて作成してもよい。後者の技法は、結晶構造有機化合物と無機材料の特定の組み合わせに特に有用である。
【0087】
試験方法
示差走査熱量計(DSC):
DSC(Q2000、ティー・エイ・インスツルメンツ(TA Instruments)(デラウェア州ニューカッスル)から市販されている)を使用して、材料を試験した。各組成物について、約5〜10mgのサンプルを使用した。試験では、30〜290℃の温度範囲にて、3段階・加熱−冷却−加熱の温度傾斜を使用した。第1加熱後、サンプルは290℃にて3分間維持した。加熱及び冷却の両方について、傾斜率は20℃/分であった。第1加熱走査及び第2加熱走査の両方を分析した。
【0088】
屈折率(RI)測定:
種々のサンプルの屈折率を、メトリコン・プリズム・カプラー(Metricon Prism coupler)(Metricon Corporation,Pennington,N.J.)を用いて、MD、TD、及びTM方向において測定した。MD及びTDは面内方向であり、TMは膜表面に対して垂直である。MD、TD及びTMの屈折率は、それぞれn、n、及びnと表記する。
【0089】
面内複屈折、Δnin
一軸延伸フィルムの複屈折性を測定するために、面内複屈折が使用される。
【0090】
面内複屈折は、直交面内方向での屈折率(n及びn)の差に関する。一軸延伸フィルムについてより具体的にいうと、面内複屈折とは、延伸方向と非延伸方向との間の差を意味する。例えば、フィルムがMD方向に一軸延伸すると仮定すれば、面内複屈折は次のように表現される。
【0091】
【数1】

【0092】
ここで、nは延伸方向(この場合、MD)での屈折率であり、nは非延伸方向(この場合、TD)での屈折率である。
【0093】
二軸延伸フィルムの場合、面内複屈折は比較的小さく、バランスがとれている時にはほぼゼロの場合もある。その代わりに、面外複屈折は延伸フィルムの複屈折性をより明確に示す。
【0094】
面外複屈折、Δnout
二軸配向フィルムの複屈折性を測定するために、面外複屈折が使用される。
【0095】
面外複屈折は、面内屈折率(MD及びTD)の平均とフィルム(TM)に対して直角方向の屈折率との差に関する。面外複屈折は、次のように表現することができる。
【0096】
【数2】

【0097】
ここで、nはMDのRIであり、nはTDのRIであり、nはTMのRIである。
【0098】
面外複屈折は、一軸延伸フィルムの複屈折性を測定するために使用することもできる。結果は、表5〜7に要約されている。
【0099】
熱安定性:
熱劣化は、溶融温度を超える温度にて(at a temperature above melt)、時間関数としての粘度降下をモニタリングすることによって測定した。これは、レオメーター(ARES、ティー・エイ・インスツルメンツ(TA Instruments)(デラウェア州ニューカッスル)から市販されている)を使用し、時間掃引走査によって達成された。温度は、それぞれ250℃及び280℃であった。粘度を測定した(振動モード)剪断速度は、100s−1であった。試験前に、70℃にて48時間、材料を真空乾燥させた。窒素を使用して試験用器具をパージして、全ての酸素を置換した。
【0100】
化学組成を決定するためのNMR
材料サンプルは、重水素化クロロホルム及びトリフルオロ酢酸の1:1混合物中に溶解させた。デュアルチャンネル・バリアン(Varian)チリ(Chili)プローブを装備した500MHz装置にて、1D NMRスペクトルを収集した。一体化されたモノマー組成物が、既知の特定のケミカルシフト及びピーク面積に基づいて抽出される。フェージング及びベースライン補正後、インテグレーションを実施した。
【0101】
モノマー略称−一般的な化学的記載−供給元(所在地)
NDC−ナフタレンジカルボン酸−BPアモコ(BP Amoco)(イリノイ州ネーパービル(Naperville))
DMT−ジメチルテレフタレート−インヴィスタ(Invista)(カンザス州ウィチタ(Wichita))
DMSSIP−ジメチルスルホナトリウムイソフタレート(アイオノマー)−デュポン(DuPont)(デラウェア州ウィルミントン)
EG−エチレングリコール−MEグローバル(ミシガン州ミッドランド)
NPG−ネオペンチルグリコール−イーストマン(Eastman)(テネシー州キングズポート)
CHDM−シクロヘキサンジメタノール−イーストマン(Eastman)(テネシー州キングズポート)
触媒&安定剤
TEPA−トリエチルホスホノアセテート−ローディア(Rhodia)(ニュージャージー州クランベリー(Cranbury))
NaOAc−酢酸ナトリウム−アルファ・エイサー(マサチューセッツ州ワードヒル(Ward Hill))
Co(OAc)2−酢酸コバルト−シェパード・ケミカル(Shepherd Chemical)(オハイオ州シンシナティ)
Zn(OAc)2−酢酸亜鉛−マリンクロット・ベーカー(Mallinckrodt Baker)(ニュージャージー州フィリップスバーグ)
Sb(OAc)3−三酢酸アンチモン−アルケマ(Arkema)(ペンシルベニア州フィラデルフィア)
複屈折コポリマー材料の合成:
実施例中の全てのコポリマーは、以下の手順にしたがって合成された。
【0102】
各組成物について、ステンレス鋼、オイルジャケット付回分反応器に、表1に示したモノマー量及び以下の触媒:2gのCo(OAc)、1.6gのZn(OAc)、8.9gのSb(OAc)、及び3.6gのトリエチルホスホノアセテート(TEPA)を充填した。圧力下(239.2kPa)で、混合物を約257℃に加熱し、7〜8kgのエステル化反応副生成物であるメタノールを除去した。メタノールが完全に除去された後、3.6gのTEPAを反応器に充填し、次いで277℃まで加熱しながら圧力を徐々に500Pa未満まで低下させた。60/40重量%のフェノール/o−ジクロロベンゼン中にて30℃で測定した場合に、固有粘度が約0.50dL/gの樹脂が生成されるまで、縮合反応副生成物であるエチレングリコールを継続的に除去した。
【0103】
【表2】

【0104】
【表3】

【0105】
【表4】

【0106】
【表5】

【0107】
【表6】

【0108】
多層フィルム製造手順:
実施例12〜34の3層共押出フィルムは、以下の手順で作製した。
【0109】
3層収容共押出フィルムは、3つの層・ABA(スキン/コア/スキン)フィードブロックを使用して、パイロット押出成形ラインで作製された。A層ポリマーは、エクソン(Exxon)からエスコレン(Escorene)PP1024の商標名(grade name)にて市販されているポリプロピレンであり、一軸スクリュー押出機にてこれをフィードブロックのスキンチャネルへと供給した。B層ポリマーは、各サンプルの複屈折コポリエステルであり、二軸押し出し機によりフィードブロックのコアチャネルへと供給した。スキン/コア/スキンの供給比は1:1:1(容量)であった。総押し出し速度は、毎時13kg(30ポンド)であった。押出品は、フィルムダイを使用して冷却ロール上で鋳造し、鋳造ウェブを作製した。次に、キャストウェブの検査用サンプルを、KARO IVバッチ延伸機(ブルックナー・マシネンゲヴァウ(Bruckner Maschinengebau)(ドイツ、ジーグスドルフ(Siegsdorff)))にて、延伸した。延伸条件は、各フィルムサンプルについて表中に示している。
【0110】
コポリエステルの複屈折を評価するために、延伸後、ポリプロピレンスキン層をはがして、コア複屈折層を露出させる。コア層の屈折率を、メトリコン・プリズム・カプラー(Metricon Prism coupler)(メトリコン(Metricon Corporation)(ニュージャージー州ペニントン(Pennington)))を用いて、MD、TD、及びTM方向において測定する。試験方法セクションに記載された式に基づいて、面内及び面外複屈折を計算した。
【0111】
【表7】

【0112】
【表8】

【0113】
【表9】

【0114】
重合反応において、等方性coPEN1は、コポリエステルであったが、ナフタレンジカルボン酸又はそのエステル類を使用することによって55モル%の二塩基酸部分が生じ、テレフタル酸又はそのエステル類を使用することによって45モル%の二塩基酸部分が生じ、1,6−ヘキサンジオールを含むジオールの混合物を使用することによってジオール部分が生じる。等方性coPEN1は、以下のように生成された。バッチ反応器に88.5kgのジメチル2,6−ナフタレンジカルボキシレート、57.5kgのジメチルテレフタレート、81kgのエチレングリコール、4.7kgの1,6−ヘキサンジオール、239gのトリメチロールプロパン、22gの亜鉛(II)アセテート、15gのコバルト(II)アセテート、及び51gのアンチモン(III)アセテートを充填した。137kPa(20psig)の圧力下でこの混合物を254℃まで加熱し、エステル化反応副生成物であるメタノールを除去した。39.6kgのメタノールを除去後、反応器に37gのトリエチルホスホノアセテートを充填し、次いで290℃まで加熱しながら、圧力を徐々に131N/m(1トール)まで下げた。60/40重量%のフェノール/o−ジクロロベンゼン内にて23℃で測定した場合に、固有粘度が0.56dl/gのポリマーが生成されるまで、縮合反応副生成物であるエチレングリコールを継続的に除去した。この方法によって生成されたコポリエステルポリマーは、温度ランプ速度20℃/分で示差走査熱量測定したところ、94℃のガラス転移温度(Tg)を有した。
【0115】
重合反応において、等方性coPEN2は、コポリエステルであったが、ナフタレンジカルボン酸又はそのエステル類を使用することによって50モル%の二塩基酸部分が生じ、テレフタル酸又はそのエステル類を使用することによって50モル%の二塩基酸部分が生じ、1,6−ヘキサンジオールを含むジオールの混合物を使用することによってジオール部分が生じる。等方性coPEN2は、以下の原材料を充填することにより製造することができる。ジメチル2,6−ナフタレンジカルボキシレート(80.0kg)、ジメチルテレフタレート(63.6kg)、1,6−ヘキサンジオール(15.5kg)、エチレングリコール(85.0kg)、トリメチロールプロパン(880g)、コバルト(II)アセテート(29g)、酢酸亜鉛(33g)、及びアンチモン(III)アセテート(59g)。混合物を254℃の温度まで137kPa(20psig)の圧力にて加熱し、メタノール反応生成物を除去しながら、混合物を反応させた。反応完了後及びメタノール(約42kg)除去後、反応槽にトリエチルホスホノアセテート(56g)を充填し、290℃まで加熱しながら、圧力を131N/m(1トール)まで下げた。フェノール及びo−ジクロロベンゼンの60/40重量%混合物中で測定して、約0.5dL/gの固有粘度を持つポリマーが生成するまで、縮合副生成物であるエチレングリコールを連続的に除去した。
【0116】
等方性coPEN3は、イーストマン・ケミカル(Eastman Chemical Company)から「PETG 6763」の商標名で市販されている非晶質ポリエステル樹脂と等方性coPEN2との溶融ブレンドであり、両樹脂を25/75の重量比で押出成形機へ供給したものである。
【0117】
等方性coPEN4は、PETg 6763及び等方性coPEN2の溶融ブレンドであり、両樹脂を37/63の重量比で押出成形機内へと供給したものである。
【0118】
反射偏光子比較実施例(RPA):PENをベースにした多層光学フィルム
反射偏光子は、第1複屈折層としてのPEN及び第2層としての等方性coPEN1を、層を交互に配置させて全体で約900層を持つように同時押出成形することにより、次にフィルムを横断方向に、標準的幅出し機フレーム内で延伸することにより作製した。
【0119】
反射偏光子比較実施例(RPB):
反射偏光子は、第1複屈折層としての90/10coPEN及び第2層としての等方性coPEN3を、層を交互に配置させて全体で275層を持つように同時押出成形することにより、次に、横断方向に標準的幅出し機フレームプロセスにて、毎秒約100%の平均速度、約6:1の延伸比、及び148℃(300°F)の温度にて、フィルムを延伸することにより作製した。
【0120】
反射偏光子(Relective Polarizer)多層実施例(RP1)
反射偏光子は、第1複屈折層としてのPEN−CHDM10及び第2層としての等方性coPEN3を、層を交互に配置させて全体で275層を持つように同時押出成形することにより、次に、横断方向に標準的幅出し機フレームプロセスにて、毎秒約100%の平均速度、約6:1の延伸比、及び140℃(285°F)の温度にて、フィルムを延伸することにより作製した。
【0121】
反射偏光子(Relective Polarizer)多層実施例(RP2)
反射偏光子は、第1複屈折層としてのPEN−CHDM5及び第2層としての等方性coPEN4を、層を交互に配置させて全体で275層を持つように同時押出成形することにより、次に、横断方向に標準的幅出し機フレームプロセスにて、毎秒約100%の平均速度、約6:1の延伸比、及び140℃(285°F)の温度にて、フィルムを延伸することにより作製した。
【0122】
多層反射偏光子フィルムのスペクトル特性(spectral characteristics the multilayer reflective polarizer film)を測定し、以下の表8にて報告するように、複屈折(nx1,ny1,nz1)及び等方性層(nx2,ny2,nz2)の実効屈折率並びに(nx1−ny1)/(ny1−nz1)で定義される複屈折(birefringen)対軸外屈折率不一致率を推定するのに使用した。
【0123】
【表10】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
40〜50モル%のナフタレート単位、
35〜49モル%のエチレン単位、及び
1〜8モル%の分枝鎖又は環状のC4〜C10アルキル単位を含むコポリエステルを含む第1複屈折光学層の少なくとも1つと、
該第1光学層よりも小さい複屈折を有する第2光学層の少なくとも1つと、
を含む、多層光学フィルム。
【請求項2】
前記コポリエステルがカルボキシレートサブユニット及びグリコールサブユニットを含み、該カルボキシレートサブユニットの80〜100モル%がナフタレートサブユニットを含み、該グリコールサブユニットの70〜98モル%がエチレングリコールから誘導され、かつ該グリコールサブユニットの2〜16モル%が1種以上の分枝鎖又は環状のC4〜C10アルキルグリコールから誘導される、請求項1に記載の多層光学フィルム。
【請求項3】
前記第1複屈折光学層が、前記多層膜形成後、632.8nmにて少なくとも0.10の面内複屈折を有する、請求項1に記載の多層光学フィルム。
【請求項4】
前記第2光学層が、前記多層膜形成後、632.8nmにて0.040未満の面内複屈折を有する、請求項1に記載の多層光学フィルム。
【請求項5】
前記第1複屈折光学層が、前記多層膜形成後、632.8nmにて少なくとも0.20の面内複屈折を有する、請求項1に記載の多層光学フィルム。
【請求項6】
前記多層光学フィルムが偏光子である、請求項5に記載の多層光学フィルム。
【請求項7】
前記第1複屈折光学層が、前記多層膜形成後、632.8nmにて少なくとも0.10の面外複屈折を有する、請求項1に記載の多層光学フィルム。
【請求項8】
前記第1複屈折光学層が、前記多層膜形成後、632.8nmにて少なくとも0.16の面外複屈折を有する、請求項1に記載の多層光学フィルム。
【請求項9】
前記多層光学フィルムがミラーである、請求項8に記載の多層光学フィルム。
【請求項10】
前記コポリエステルが少なくとも105℃のガラス転移温度を有する、請求項1に記載の多層光学フィルム。
【請求項11】
前記第1光学層が少なくとも2.5の、(nx1−ny1)/(ny1−nz1)で定義される複屈折対軸外屈折率不一致(index mismatch)率を有する、請求項1に記載の多層フィルム。
【請求項12】
前記第1光学層が少なくとも2.7の、(nx1−ny1)/(ny1−nz1)で定義される複屈折対軸外屈折率不一致(index mismatch)率を有する、請求項1に記載の多層フィルム。
【請求項13】
前記コポリエステルが、示差走査熱量計により、毎分20℃の速度で加熱した場合に、2J/g未満の第2走査融解熱を示す、請求項1に記載の多層光学フィルム。
【請求項14】
前記コポリエステルが、225℃〜260℃の範囲の融解温度を有する、請求項1に記載の多層光学フィルム。
【請求項15】
前記コポリエステルが2〜4モル%の分枝鎖C4〜C10アルキル単位を含む、請求項1に記載の多層光学フィルム。
【請求項16】
前記コポリエステルが2〜4モル%のネオペンチルグリコール単位を含む、請求項15に記載の多層光学フィルム。
【請求項17】
前記コポリエステルが2〜8モル%の環状C4〜C10アルキル単位を含む、請求項1に記載の多層光学フィルム。
【請求項18】
前記コポリエステルが2〜8モル%のシクロヘキサンジメタノール単位を含む、請求項17に記載の多層光学フィルム。
【請求項19】
前記コポリエステルが8モル%以下のテレフタレート単位を更に含む、請求項1に記載の多層光学フィルム。
【請求項20】
前記コポリエステルが1.0モル%以下のジメチルスルホナトリウムイソフタレートアイオノマー単位を更に含む、請求項1に記載の多層光学フィルム。
【請求項21】
前記多層が複数の第2光学層と交番する複数の第1光学層を含む、請求項1に記載の多層光学フィルム。
【請求項22】
250℃の温度で窒素下1時間後100s−1の剪断速度で測定した場合に、少なくとも1つの第1光学層及び少なくとも1つの第2光学層の組み合わせが、15%未満の粘度変化を示す、請求項1に記載の多層光学フィルム。
【請求項23】
少なくとも2.5の、(nx1−ny1)/(ny1−nz1)で定義される複屈折対軸外屈折率不一致率を有する、少なくとも1つの第1光学層(ここで該第1光学層は、示差走査熱量計に従い毎分20℃の速度で加熱した場合に2J/g未満の第2走査融解熱を示すコポリエステルを含む)、及び第1光学層よりも小さい複屈折を有する第2光学層の少なくとも1つを含む多層フィルム。
【請求項24】
少なくとも2.5の、(nx1−ny1)/(ny1−nz1)で定義される複屈折対軸外屈折率不一致率を有する、少なくとも1つの第1光学層(ここで、当該第1光学層は、225℃〜260℃の範囲の融解温度を有するコポリエステルを含む)、及び第1光学層よりも小さい複屈折を有する第2光学層の少なくとも1つを含む多層フィルム。
【請求項25】
40〜50モル%のナフタレート単位、
35〜49モル%のエチレン単位、及び
1〜8モル%の分枝鎖又は環状のC4〜C10アルキル単位を含む複屈折コポリエステルフィルムであって、
該コポリエステルフィルムが632.8nmにて少なくとも0.10の面内複屈折を有する、複屈折コポリエステルフィルム。
【請求項26】
40〜50モル%のナフタレート単位、
35〜48.95モル%のエチレン単位、及び
1〜8モル%の分枝鎖又は環状のC4〜C10アルキル単位と、
0.05〜1モル%のジメチルスルホナトリウムイソフタレートアイオノマー単位と、
を含む、コポリエステル高分子材料。
【請求項27】
前記コポリエステルが、225℃〜260℃の範囲の融解温度を有する、請求項26に記載のコポリエステル高分子材料。
【請求項28】
前記コポリエステルが、窒素雰囲気で1時間後、前記コポリエステルの溶融温度を超える50℃以下の温度にて、100s−1の剪断速度で測定した場合、15%未満の粘度変化を示す、請求項26に記載のコポリエステル高分子材料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2011−520141(P2011−520141A)
【公表日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−507524(P2011−507524)
【出願日】平成21年4月7日(2009.4.7)
【国際出願番号】PCT/US2009/039736
【国際公開番号】WO2009/134595
【国際公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】