説明

分水栓ユニット

【課題】従来、サドル取付け前の分水栓本体の在庫保管は、内部装嵌部材を本体内に仮組みし、部材散逸防止のため本体下部の組み付け口に雌ねじを刻設し、サドルの支受け面とを接合する環状保持体の上部に雄ねじをを刻設螺合してユニット化してきたが、螺合に手間が掛り装嵌部材が劣化するという問題があった
【解決手段】分水栓本体下部の組み付け口と環状保持体3上部の分水栓本体との接合部を着脱可能な嵌着構造とし、組み付け口下面嵌入部14の、ボールシートを過度に圧縮しない部位に仮止めOリングを係止する係止溝を設定し、環状保持体の外周に仮止めOリング32を設定して装嵌スペースに余裕を与えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水道配管の本管から支管に分岐して配水される際に、支管基部に配設されて支管への給水を開閉制御する分水栓について、本管取付け具の取付け前に嵌装部材を内装した分水栓本体を在庫保管する際の分水栓ユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
既設の水道本管から支管に分岐して配水する場合、本管の分岐位置にサドル等により分水栓を取付け、分水栓の取付部に穿孔具を取付けると共に分水栓内部のボールバルブを本管取付部に対して開放して穿孔具を挿入して取付部に分水口を穿孔すると共に、防食と水密保持のための密着コアを穿孔部に挿入して挿入取付け具を抜去する方法によるが、分水栓本体をサドル等の取付け具は施工環境に応じて多様であり嵩張るため、分水栓本体とサドル等の取付け具は別々に保管され、出荷時に組み合わされる。
【0003】
従来、サドル等と別々に在庫保管される分水栓本体については、例えば、特許文献1に記載されるように、内部に設定されるボールバルブ等を本体内に仮組みし、仮組みした内部部材の散逸を防止するため本体下部の組み付け口に雌ねじを刻設し、取付け具の支受け面との接合部を構成する環状保持体の上部に刻設した雄ねじを螺合して組み付け口を封止することによって分水栓ユニットに構成して在庫保管することが行われてきた。
【特許文献1】第3768329号特許公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、分水栓本体とサドル等の本管取付け具との接合は、分水栓フランジ部と本管取付け具上部の支受け面とをボルト締めして行われるので、分水栓本体下部組み付け口の雌ねじと環状保持体上部の雄ねじは、在庫保存時における仮組みのためだけに刻設されるもので、ねじ厚分の材料と刻設作業に要する時間と労力は目的に比して余りにも過大なものである。
【0005】
また、仮組みの際と仮組みを解く際に螺合のための回動作業を行わなければならないので、その時間と労力も大きく、仮組みから直接、取付け具との接合を行う前提として仮組み段階で水圧検査を行い、取付け具との接合完了後も再度水圧検査を行わなければならないという二度手間の問題もあった。
【0006】
更に、分水栓下部の組み付け口に環状保持体をきっちりと螺合して封止してしまうと、素材として膨張率の高い四ふっ化エチレン樹脂等が用いられるボールシートが圧縮された状態で封止されるため、温度変化の激しい倉庫内では膨縮によるボールシートの品質低下が発生するという問題もある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記した問題に鑑みこれに対応しようとするものであり、分水栓本体下部の組み付け口と環状保持体上部の分水栓本体との接合部を着脱可能な嵌着構造とすることにより、従来回動螺合によって多くの労力を要していた分水栓本体と環状保持体との接合をワンタッチで行えるようにした。
【0008】
また、本組み付け完了時における水密性保持のためのOリングのほかに、分水栓本体下面嵌入部の、ボールシートを過度に圧縮しない部位に仮止めOリングを係止する係止溝を設定し、環状保持体の外周に仮止めOリングを設定して分水栓本体と環状保持体とを嵌着係止する構成とし、仮組みの段階では仮止めOリングの係止によって品質低下し易いボールシートに圧迫が加わらないようにし、本組みのときに初めて本来の水密性保持のためのOリングが機能する2段階方式としたものである。

【実施例】
【0009】
以下、図面を参照して分水栓の設置から密着コアの装着を行う本発明の実施例を説明する。1は分水栓本体で、中央部に弁室11、その一側に分水のための通水路12、上方に本管の分水栓取付部を穿孔する際に穿孔具を挿入する穿孔具挿入口13が開口し、他の一側に弁室11に設定されるボールバルブ2を回動操作するステム機構23が設定されている。
【0010】
弁室11の上面にはボールシート21、下面にはボールシート22が敷設され、ステム23を介して回動する三方口を備えたボールバルブ2が収容されて回動によって通水路閉鎖、穿孔具挿入口13の開口、通水路開口の切替えが行われるようになっており、分水栓本体1の下部は環状保持体3と接合する下面嵌入部14となっている。
【0011】
分水栓本体の下面嵌入部14には、環状保持体3の接合部31との嵌入度においてボールシート21、22を過度に圧縮しない部位に仮止めOリング32を係止する係止溝32aが設定され、環状保持体3の外周に設定される仮止めOリング32を嵌着係止するようになっている。
【0012】
仮止めOリング32の設定部位上部には、本管取付けのためのサドル4との本組み付け完了時における水密性保持のためのOリング33が設定され、本発明による仮組みユニットの段階では、仮止めOリング32により分水栓本体1と環状保持体3を係止し、余裕のある状態で本体1内の内装部材を組み付けて在庫保存するようにした。
【0013】
分水栓本体1の下側部には本管取付けのためのサドル4の支受け面41に重合してボルト42で固定するフランジ部15が設けられており、出荷時等本組み付けの際にボルト42、42・・によるボルト締めが行われると、仮止めOリング32を圧締してOリング33との共働により分水栓本体と環状保持体間の水密性が完全に保持される。
【0014】
分水栓ユニットの組み付けは、本体弁室11の上面にボールシート21を敷設し、ステム23の先端嵌合部24をボールバルブ2の挿嵌部に挿嵌してボールバルブ2を弁室11内に収嵌する。一方、環状保持体3にOリング32、33と必要な場合にはブッシュ34等を装嵌して上面にボールシート22敷設して接合部31を分水栓本体1の下面嵌入部14に嵌入して係止溝32aに仮止めOリング32を係止する。
【0015】
以上により図2に示す状態で分水栓ユニットは完成し、長期に渡って倉庫内に在庫保存しても、膨張率の高いボールシート等の内装部材について品質低下を防止することができ、施工業者への引渡し時等本組み付けの際には、そのままの状態でサドル4との本組み付けをして水圧検査を行えば製品として完成し、水圧検査の重複を避けることができる。
【0016】
ユニットとサドル4との本組み付けは、図3に示すようにサドル4の支受け面41上にアングル状の樹脂ワッシャー43を敷設し、サドル下方からガスケット44を挿入設定してフランジ部15を支受け面41に重合してボルト42、42・・によるボルト締め行って一体化する。
【0017】
更に、これを本管分岐部に取付け分水穿孔をしてコア部材の挿入取付け等の一連の作業により支管への分水と分水栓の設定が行われるものである。
【0018】
本発明は以上のように構成したので、分水栓本体1の内部に組み付けた部材の散逸を防ぎ、サドル4との本組み付けまでコンパクトなユニットとして分水栓本体を保持する環状保持体3の着脱を、面倒な螺合回動によることなくワンタッチで行うことができ、更に、仮止めOリング32によるスペースの余裕により膨縮や温度変化による素材の劣化を抑止して長期の在庫保存に対応することができたものである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明による分水栓ユニットの実施例を示すもので、分水栓本体 と環状保持体の着脱関係を示す分水栓本体と環状保持体の分解縦断側面図
【図2】同じく、分水栓本体に環状保持体を着合した状態を示す縦断側面 図
【図3】同じく、本管取付けサドルと本組み付けを行った状態を示す分水 栓本体と環状保持体及びサドル上端部接合部分の縦断側面図
【図4】同じく、本管取付けサドルと本組み付けを行った状態を示す外観 の全体平面図
【符号の説明】
【0020】
1 分水栓本体
11 ボールバルブ弁室
12 支管への分水通水路
13 穿孔具挿入口
14 分水栓の下面嵌入部
15 サドル締着フランジ部
2 ボールバルブ
21 上面ボールシート
22 下面ボールシート
23 ボールバルブの回動操作ステム機構
24 ボールバルブの回動操作ステムの先端嵌合部
3 環状保持体
31 環状保持体の嵌入接合部
32 仮止めOリング
32a 仮止めOリング係止溝
33 水密性保持Oリング
34 環状保持体装嵌ブッシュ
4 本管取付けサドル
41 サドルの分水栓支受け面
42 分水栓本体締着ボルト
43 アングル状の樹脂ワッシャー
44 ガスケット



【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面にボールシートを敷設した弁室に、ステムを介して回動する三方口を備えたボールバルブを設定し、下部に環状保持体との接合部とフランジ部を設けた分水栓本体と、上面にボールバルブの下面を支持するボールシートを敷設し、サドル等本管取付け具の上面に形成された支受面と分水栓本体との接合部を形成して成る環状保持体とを着脱可能に嵌着したことを特徴とする分水栓ユニット
【請求項2】
分水栓本体の下面嵌入部の、ボールシートを過度に圧縮しない部位に仮止めOリングを係止する係止溝を設定し、環状保持体の外周に仮止めOリングを設定して分水栓本体と環状保持体とを嵌着係止するようにした請求項1記載の分水栓ユニット

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2009−103191(P2009−103191A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−274602(P2007−274602)
【出願日】平成19年10月23日(2007.10.23)
【出願人】(000201593)前澤給装工業株式会社 (78)
【Fターム(参考)】