説明

分注精度管理方法、分注量補正方法、攪拌性能管理方法、自動分析装置および分析キット

【課題】分注精度の確認を含むメンテナンスの時間を大幅に削減することができる分注精度管理方法、分注量補正方法、攪拌性能管理方法、自動分析装置および分析キットを提供する。
【解決手段】本発明の自動分析装置1は、1の反応容器20内に、分注プローブにより異なるラマン試薬を分注し、分注された反応容器20内のラマン試薬を攪拌し、測光部34により測光し、分析部43により分析するよう制御する分注制御部46aと、前記ラマン試薬の濃度から前記分注プローブの分注量を算出する算出部46bと、算出した前記分注プローブの分注量に基づき、分注異常か否かを判定する判定部46cと、判定部46cが分注異常であると判定した場合、分注異常のアラートを出力する出力部45と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分注精度管理方法、分注量補正方法、攪拌性能管理方法、自動分析装置および分析キットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動分析装置は、1日の分析開始時や、試薬切れによってロット番号の異なる試薬ボトルに試薬が変更された場合等に標準試料や精度管理試料を分析し、オペレータが分析結果に基づく測定値から正確性を確認した後、検体の分析を続行している。そして、自動分析装置は、分析中も、所定検体数を分析する都度、精度管理試料を自動的に分析することによって正確性の確認、即ち、精度管理を行っている。
【0003】
精度管理試料の測定結果が管理範囲外となった場合、該測定結果に基づき試薬交換や検量線校正の要否、精度管理試料の再調整の要否等の判定を自動的に行なう自動分析装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、複数の不良要因別の吸光度パターンを記憶し、精度管理試料を多重測定して得た吸光度変化パターンと比較して不良要因を自動判定する自動分析装置が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−36515号公報
【特許文献2】特許第4006203号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1および2に記載のものでは、分注不良と判定された場合であっても、検体分注ユニットと試薬分注ユニットのいずれに原因があるのか判定することはできない。
【0007】
分注不良の原因を判定するには、個々の分注ユニットの分注精度を確認する必要がある。そのためには、分注ユニット毎に試料の分注・分析を行って分注精度を確認する必要があり、該作業に多くの時間を要する。
【0008】
さらにまた、分注精度の確認結果に基づいて分注量補正を行う場合には、異なる複数の分注量で同様の作業を行い、直線性を確認した後分注量補正を行なうため、さらなる手間と時間を要する。
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、分注精度の確認を含むメンテナンスの時間を大幅に削減することができる分注精度管理方法、分注量補正方法、攪拌性能管理方法、自動分析装置および分析キットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の分注精度管理方法は、分注機構により反応容器に分注された検体および試薬との反応物をラマン散乱光により分析する自動分析装置における分注精度管理方法であって、1の反応容器内に分注プローブにより異なるラマン試薬を分注する分注ステップと、分注された前記反応容器内のラマン試薬を攪拌する攪拌ステップと、前記反応容器内の各ラマン試薬について、ラマン分光計により測光分析する測定ステップと、前記測定ステップで測定したデータに基づき、各ラマン試薬の濃度を求める分析ステップと、前記分析ステップで求めた各ラマン試薬の濃度から各ラマン試薬の分注量を算出する算出ステップと、前記算出ステップにより算出した分注量に基づき、分注異常であるか否かを判定する判定ステップと、前記判定ステップにより分注異常であると判定された場合、分注異常のアラートを出力する出力ステップと、を含むことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の分注精度管理方法は、上記発明において、前記分注ステップは、前記分注プローブとして2以上の試薬プローブを用いて分注し、前記算出ステップは、前記各ラマン試薬の濃度から前記各試薬プローブの分注量を算出し、前記判定ステップは、前記算出ステップにより算出した前記各試薬プローブの分注量が所定範囲内であるかを判定し、前記出力ステップは、前記判定ステップにより前記各試薬プローブの分注量が所定範囲外であると判定された場合、所定範囲外である試薬プローブについて分注異常のアラートを出力することを特徴とする。
【0012】
前また、本発明の分注精度管理方法は、上記発明において、記分注ステップと前記測定ステップとを所定回数繰り返し行ない、前記算出ステップは、前記分析ステップで求めた前記各ラマン試薬の濃度から前記各試薬プローブの平均分注量を算出し、前記判定ステップは、前記各試薬プローブの平均分注量が所定範囲内であるかを判定することを特徴とする。
【0013】
また、本発明の分注精度管理方法は、上記発明において、前記分注ステップと前記測定ステップとを所定回数繰り返し行ない、前記算出ステップは、前記分析ステップで求めた前記各ラマン試薬の濃度から夫々の分注量を求め、該分注量に基づき前記各試薬プローブの分注量の変動係数を算出し、前記判定ステップは、前記変動係数が所定値以下であるか否かを判定し、前記出力ステップは、前記判定ステップにより前記変動係数が所定値より大きいと判定された場合、分注プローブ毎に分注異常のアラートを出力することを特徴とする。
【0014】
また、本発明の分注精度管理方法は、上記発明において、前記分注ステップは、1の反応容器内に、1の分注プローブにより同量の異なるラマン試薬を夫々分注し、前記算出ステップは、前記各ラマン試薬の濃度から前記分注プローブの夫々の分注量を求め、該分注量に基づき変動係数を算出し、前記判定ステップは、前記変動係数が所定値以下であるか否かを判定し、前記出力ステップは、前記判定ステップにより前記変動係数が所定値より大きいと判定された場合、分注量異常のアラートを出力することを特徴とする。
【0015】
また、本発明の分注精度管理方法は、上記発明において、前記算出ステップは、前記分析ステップで求めた前記各ラマン試薬の濃度から前記分注プローブの平均分注量を算出し、前記判定ステップは、前記平均分注量が所定範囲内であるかを判定し、前記出力ステップは、前記判定ステップにより前記分注プローブの平均分注量が所定範囲外であると判定された場合、分注量異常のアラートを出力することを特徴とする。
【0016】
また、本発明の分注精度管理方法は、上記発明において、前記分注ステップは、1の反応容器内に、1の分注プローブにより異なるラマン試薬を、夫々分注量を変更して分注し、前記算出ステップは、前記分析ステップで求めた前記各ラマン試薬の濃度から各ラマン試薬の分注量を夫々算出し、前記判定ステップは、前記算出ステップにより算出した各分注量と予定分注量との関係が直線性を保っているか否かを判定し、前記出力ステップは、前記判定ステップにより直線性から乖離があると判定された場合、分注量異常のアラートを出力することを特徴とする。
【0017】
また、本発明の分注精度管理方法は、上記発明において、前記分注ステップと前記測定ステップとを所定回数繰り返し行ない、前記算出ステップは、前記分析ステップで求めた前記各ラマン試薬の濃度から各ラマン試薬の平均分注量を夫々算出し、前記判定ステップは、前記算出ステップにより算出した各平均分注量と予定分注量との関係が直線性を保っているか否かを判定することを特徴とする。
【0018】
また、本発明の分注精度管理方法は、上記発明において、前記ラマン試薬は、前記測定ステップで同時に使用される他のラマン試薬と異なるラマン散乱スペクトルを有することを特徴とする。
【0019】
また、本発明の分注精度管理方法は、上記発明において、前記ラマン試薬は、ラマン活性分子を修飾した金、銀、銅またはプラチナ粒子、あるいは銀/金、プラチナ/金、銅/金合金粒子であることを特徴とする。
【0020】
また、本発明の自動分析装置における分注量補正方法は、上記の自動分析装置の分注精度管理方法に使用するすべてのラマン試薬を、個別の反応容器に所定量収容した分析キットを使用する自動分析装置における分注量補正方法であって、各ラマン試薬を収容する反応容器を測光手段に搬送して、そのままラマン分光計により各ラマン試薬の濃度を測定する分析キット測定ステップと、上記の自動分析装置の分注精度管理を行なう分注精度管理ステップと、前記分注管理ステップにおいて分注精度異常とされた分注機構について、前記分析キット測定ステップで測定した各ラマン試薬の濃度に基づき補正を行う補正ステップと、を含むことを特徴とする。
【0021】
また、本発明の自動分析装置の攪拌性能管理方法は、分注機構により反応容器に分注された検体および試薬との反応物をラマン散乱光により分析する自動分析装置における攪拌性能管理方法であって、1の反応容器内に標的粒子で修飾された2種以上のラマン試薬を所定量分注する試薬分注ステップと、前記反応容器内に、前記標的分子と結合する反応物質で修飾された磁性粒子を所定量分注する磁性粒子分注ステップと、前記反応容器内の溶液を所定様式で攪拌する攪拌ステップと、前記反応容器外に設置された磁性体により前記反応容器内の前記磁性粒子を集磁する集磁ステップと、集磁された磁性粒子と結合する各ラマン試薬をラマン分光計により測光分析する測定ステップと、前記測定ステップで測定したデータに基づき、各ラマン試薬の濃度を求める分析ステップと、前記分析ステップで求めた前記各ラマン試薬の濃度から前記磁性粒子との反応比を算出する算出ステップと、
前記反応比が所定範囲内であるか否かを判定する判定ステップと、前記判定ステップにより前記反応比が所定範囲外と判定された場合、攪拌異常のアラートを出力する出力ステップと、を含むことを特徴とする。
【0022】
また、本発明の自動分析装置は、分注機構により反応容器に分注された検体および試薬との反応物をラマン分光により分析する自動分析装置であって、所定のタイミングで、1の反応容器内に、分注プローブにより異なるラマン試薬を分注し、攪拌した後、前記反応容器内の各ラマン試薬について、ラマン分光計により測光分析し、各ラマン試薬の濃度を分析するよう制御する制御手段と、前記反応容器内の各ラマン試薬について、ラマン分光計により測光分析するよう制御する制御手段と、前記測光分析により測定されたデータに基づき、ラマン試薬の濃度を求める分析手段と、前記分析手段により求めた前記ラマン試薬の濃度から前記ラマン試薬の分注量を算出する算出手段と、前記算出手段が算出した前記ラマン試薬の分注量に基づき、分注異常であるか否かを判定する判定手段と、前記判定手段が分注異常であると判定した場合、分注異常のアラートを出力する出力手段と、を備えることを特徴とする。
【0023】
また、本発明の自動分析装置は、上記発明において、前記制御手段は、1の反応容器内に、2以上の試薬プローブにより異なるラマン試薬を夫々分注し、分注された前記反応容器内のラマン試薬を攪拌後、ラマン分光計により前記各ラマン試薬を測光分析するよう制御し、前記算出手段は、前記分析手段が求めた各ラマン試薬の濃度から前記各試薬プローブの分注量を算出し、前記判定手段は、前記算出手段が算出した前記各試薬プローブの分注量が所定範囲内であるかを判定し、前記出力手段は、前記判定手段が前記各試薬プローブの分注量が所定範囲外であると判定した場合、所定範囲外である試薬プローブについて分注量異常のアラートを出力することを特徴とする。
【0024】
また、本発明の自動分析装置は、上記発明において、前記制御手段は、1の反応容器内に、1の分注プローブにより同量の異なるラマン試薬を夫々分注し、分注された前記反応容器内のラマン試薬を攪拌後、ラマン分光計により前記各ラマン試薬を測光分析するよう制御し、前記算出手段は、前記分析手段が求めた各ラマン試薬の濃度から前記分注プローブの夫々の分注量を求め、該分注量に基づき変動係数を算出し、前記判定手段は、前記変動係数が所定値以上であるか否かを判定し、前記出力手段は、前記判定手段が前記変動係数が所定値以上であると判定した場合、分注量異常のアラートを出力することを特徴とする。
【0025】
また、本発明の自動分析装置は、上記発明において、前記制御手段は、1の反応容器内に、1の分注プローブにより異なるラマン試薬を、夫々分注量を変更して分注し、分注された前記反応容器内のラマン試薬を攪拌後、ラマン分光計により前記各ラマン試薬を測光分析するよう制御し、前記算出手段は、前記分析手段が求めた各ラマン試薬の濃度から各ラマン試薬の分注量を夫々算出し、前記判定手段は、前記算出手段が算出した各分注量と予定分注量との関係が直線性を保っているか否かを判定し、前記出力手段は、前記判定手段が、各分注量が直線性から乖離があると判定した場合、分注量異常のアラートを出力することを特徴とする。
【0026】
また、本発明の自動分析装置は、上記発明において、前記制御手段は、分析キットを構成する、所定量の異なるラマン試薬を夫々収容する反応容器毎に、ラマン分光計により前記各ラマン試薬を測光分析するよう制御し、前記分析手段は、前記分析キットの測定により得られたデータに基づき、各ラマン試薬の濃度を求め、前記判定手段が前記分注プローブについて分注異常と判定した場合、前記分析キットの分析により得られた前記各ラマン試薬の濃度に基づき、記憶手段に記憶される前記各ラマン試薬の検量線を補正する補正手段と、を備えることを特徴とする。
【0027】
また、本発明の分析キットは、上記の自動分析装置において分注量を補正するための分析キットであって、前記分析キットは、自動分析装置において分注精度管理用に使用するすべてのラマン試薬について個別の反応容器に所定量収容したものであることを特徴とする。
【0028】
また、本発明の自動分析装置は、分注機構により反応容器に分注された検体および試薬との反応物をラマン散乱光により分析する自動分析装置であって、所定のタイミングで、1の反応容器内に、標的粒子で修飾された2種以上のラマン試薬を分注し、さらに前記標的分子と結合する反応物質で修飾された磁性粒子を分注する分注機構と、所定様式で前記反応容器に分注されたラマン試薬と磁性粒子とを所定様式で攪拌する攪拌手段と、前記反応容器内の磁性粒子を集磁する集磁手段と、前記集磁手段により集磁された磁性粒子と結合する各ラマン試薬をラマン分光計により測光分析する測光手段と、前記測光手段により測光されたデータに基づき、各ラマン試薬の濃度を分析する分析手段と、前記分析手段により分析した前記各ラマン試薬の濃度から前記磁性粒子との反応比を算出する算出手段と、前記反応比が所定範囲内であるか否かを判定する判定手段と、前記判定手段により前記反応比が所定範囲外と判定された場合、攪拌異常のアラートを出力する出力手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0029】
本発明は、分注部によりラマン試薬を分注して、分注されたラマン試薬を分析することにより、分注部の分注異常を簡易に判定することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】図1は、本発明の実施の形態1にかかる自動分析装置の構成を示す模式図である。
【図2】図2は、第1試薬分注部の構成を示す模式図である。
【図3】図3は、検体内の測定対象物と、試薬中に含まれる磁性粒子および標識粒子との反応を説明する図である。
【図4】図4は、図1に示す集磁機構の構成を示す図である。
【図5】図5は、図1に示す測光部の構成を示す図である。
【図6】図6は、各ラマン試薬のラマンシフトを示す図である。
【図7】図7は、本実施の形態1にかかるラマン標準粒子の生成方法を示す模式図である。
【図8】図8は、本実施の形態1にかかる各試薬プローブによるラマン試薬の分注動作図である。
【図9】図9は、本実施の形態1にかかる分注精度管理処理のフローチャートである。
【図10】図10は、本発明の実施の形態2にかかる自動分析装置の構成を示す模式図である。
【図11】図11は、本実施の形態2にかかる分注プローブによるラマン試薬の分注動作図である。
【図12】図12は、本実施の形態2にかかる分注精度管理処理のフローチャートである。
【図13】図13は、本発明の実施の形態3にかかる自動分析装置の構成を示す模式図である。
【図14】図14は、本実施の形態3にかかる分注精度管理処理のフローチャートである。
【図15】図15は、本発明の実施の形態4にかかる自動分析装置の構成を示す模式図である。
【図16】図16は、本実施の形態4にかかる分注精度管理処理のフローチャートである。
【図17】図17は、本発明の実施の形態5にかかる自動分析装置の構成を示す模式図である。
【図18】図18は、図17の自動分析装置で使用される分析キットを示す図である。
【図19】図19は、本実施の形態5にかかる分注部補正処理のフローチャートである。
【図20】図20は、図19の分析キット分析処理のフローチャートである。
【図21】図21は、本発明の実施の形態6にかかる自動分析装置の構成を示す模式図である。
【図22】図22は、本実施の形態6にかかる攪拌性能管理処理の動作図である。
【図23】図23は、本実施の形態6にかかる攪拌性能管理処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面を参照して、本発明の分注精度管理方法、分注量補正方法、攪拌性能管理方法、自動分析装置および分析キットについて説明する。なお、本明細書の記載によりこの発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一の部分には同一の符号を付している。
【0032】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1にかかる自動分析装置1の構成を示す模式図である。図1に示すように、本発明の実施の形態1にかかる自動分析装置1は、検体と標識物質との複合体の凝集体に対してレーザ光を発し、凝集体からの表面増強されたラマン散乱光を測定する測定機構2と、測定機構2を含む自動分析装置1全体の制御を行なうとともに測定機構2における測定結果の分析を行なう制御機構4とを備える。自動分析装置1は、これらの二つの機構が連携することによって複数の検体に対する分析を自動的に行なう。
【0033】
測定機構2について説明する。測定機構2は、大別して、検体移送レーン21、検体分注部22、チップ格納部23、反応容器移送レーン24、第1試薬庫25、第2試薬庫26、第1試薬分注部27および28、第2試薬分注部29および30、集磁テーブル31、第1容器移送部32、第2容器移送部33および測光部34を備える。
【0034】
検体移送レーン21は、検体を収容した複数の検体容器21aを保持し、図中の矢印方向に順次移送する複数の検体ラック21bを備える。検体容器21aに収容された検体は、検体の提供者から採取した血液、尿および唾液などの体液である。
【0035】
検体分注部22は、鉛直方向への昇降および自身の基端部を通過する鉛直線を中心軸とする回転を自在に行うアームを備える。このアームの先端部には、検体の吸引及び吐出を行なうチップが着脱自在に取り付けられる。検体分注部22は、図示しない吸排シリンジまたは圧電素子を用いた吸排機構を備える。検体分注部22は、上述した検体移送レーン21上の所定位置に移送された検体容器21aの中から検体プローブによって検体を吸引し、アームを図中時計回りに旋回させ、反応容器移送レーン24上の反応容器20内に検体を吐出する。反応容器20は、1回の分析ごとに使い捨てられる合成樹脂製の容器である。
【0036】
チップ格納部23は、複数のチップを整列したチップケースが設置されている。チップ格納部23は、このケースからチップを検体分注部22のノズルに供給する。このチップは、感染症項目測定時のキャリーオーバー防止のため、検体分注部22のノズル先端に装着され、検体分注ごとに交換されるディスポーザブルタイプの検体分注用チップである。
【0037】
反応容器移送レーン24は、複数の反応容器20を保持し、各反応容器20を、図中の矢印方向に沿って、検体分注位置、第1試薬分注位置、第2試薬分注位置に順次移送する。
【0038】
第1試薬庫25は、反応容器移送レーン24上の反応容器20内に分注する第1試薬を収容した第1試薬容器25aが複数収納され、図示しない駆動部によって中心を通る回転軸の周りに回転される。この回転により、第1試薬庫25は、収納した第1試薬容器25aを矢印で示す周方向に搬送する。検体内の測定対象物は、たとえば、抗体、タンパク質、ペプチド、アミノ酸、炭水化物、ホルモン、ステロイド、ビタミン、細菌、DNA、RNA、細胞、ウィルスに加え、任意の抗原物質、ハプテン、抗体およびこれらの組み合わせなどがある。第1試薬は、分析対象である検体内の測定対象物と結合する反応物質、もしくは、分析対象である検体内の測定対象物またはそのアナログを固相した磁性粒子を含む試薬である。また、第1試薬庫25は、後述する第1試薬分注部27および28の分注精度確認試薬であるラマン試薬を収容したラマン試薬容器25bを収容する。
【0039】
第2試薬庫26は、反応容器移送レーン24上の反応容器20内に分注する第2試薬を収容した第2試薬容器26aを複数収納する。第2試薬庫26は、図示しない駆動部によって中心を通る回転軸の周りに回転され、収納した第2試薬容器26aを矢印で示す周方向に搬送する。第2試薬は、検体内の測定対象物と結合する標識物質、もしくは、分析対象である検体内の測定対象物またはそのアナログを結合させた標識物質を含む試薬である。標識物質は、原子レベルの表面粗さを持つ金または銀を含む粒子であり、この金または銀を含む粒子の表面には、測定対象物と結合可能である反応物質、もしくは、分析対象である検体内の測定対象物またはそのアナログがコーティングされている。なお、第1試薬と第2試薬とは逆の試薬であってもよい。すなわち、第1試薬が検体内の測定対象物と結合する標識物質を含む試薬であって、第2試薬が分析対象である検体内の測定対象物と結合する反応物質を固相した磁性粒子を含む試薬であってもよい。また、第1試薬庫26は、後述する第2試薬分注部30および31の分注精度確認試薬であるラマン試薬を収容した試薬容器26bを収容する。
【0040】
第1試薬分注部27および28は、第1試薬の吸引および吐出を行なうプローブが先端部に取り付けられ鉛直方向への昇降および自身の基端部を通過する鉛直線を中心軸とする回転を自在に行なうアームを備える。第1試薬分注部27および28は、第1試薬庫25によって所定位置に移動された第1試薬容器25a内の第1試薬を、プローブによって吸引し、アームを旋回させ、反応容器移送レーン24によって第1試薬吐出位置に搬送された反応容器20に分注する。
【0041】
第1試薬分注部27は、図2に示すように、第1試薬を分注する分注プローブ27a、分注プローブ27aを支持するアーム27b、アームと駆動部を連結する連結部27c、分注プローブ27aを移送する駆動部27d、圧力を伝達する押し出し液L1を送液する配管27e、第1試薬の吸引および吐出圧を印加するシリンジポンプ27f、シリンジポンプ27fを駆動するプランジャー駆動部27h、押し出し液L1の送液操作を管理する電磁弁27i、押し出し液L1を送液する送液ポンプ27j、および押し出し液L1を貯留するタンク27kを有する。
【0042】
第1試薬分注部28は、第1試薬分注部27と同様の構成を有し、第1試薬を分注する分注プローブ28a、分注プローブ28aを支持するアーム28b、アームと駆動部を連結する連結部28c、分注プローブ28aを移送する駆動部28d、圧力を伝達する押し出し液L1を送液する配管28e、第1試薬の吸引および吐出圧を印加するシリンジポンプ28f、シリンジポンプ28fを駆動するプランジャー駆動部28h、押し出し液L1の送液操作を管理する電磁弁28i、押し出し液L1を送液する送液ポンプ28j、および押し出し液L1を貯留するタンク28kを有する。
【0043】
第2試薬分注部29および30は、第1試薬分注部27および28と同様の構成を有し、第2試薬庫26によって所定位置に移動された第2試薬容器26a内の試薬を、プローブによって吸引し、アームを旋回させ、反応容器移送レーン24によって第2試薬吐出位置に搬送された反応容器20に分注する。
【0044】
第2試薬分注部29は、第1試薬分注部27と同様の構成を有し、第2試薬を分注する分注プローブ29a、分注プローブ29aを支持するアーム29b、アームと駆動部を連結する連結部29c、分注プローブ29aを移送する駆動部29d、圧力を伝達する押し出し液L1を送液する配管29e、第2試薬の吸引および吐出圧を印加するシリンジポンプ29f、シリンジポンプ28fを駆動するプランジャー駆動部29h、押し出し液L1の送液操作を管理する電磁弁29i、押し出し液L1を送液する送液ポンプ29j、および押し出し液L1を貯留するタンク29kを有する。
【0045】
第2試薬分注部30は、第1試薬分注部27と同様の構成を有し、第2試薬を分注する分注プローブ30a、分注プローブ30aを支持するアーム30b、アームと駆動部を連結する連結部30c、分注プローブ30aを移送する駆動部30d、圧力を伝達する押し出し液L1を送液する配管30e、第2試薬の吸引および吐出圧を印加するシリンジポンプ30f、シリンジポンプ30fを駆動するプランジャー駆動部30h、押し出し液L1の送液操作を管理する電磁弁30i、押し出し液L1を送液する送液ポンプ30j、および押し出し液L1を貯留するタンク30kを有する。
【0046】
第1容器移送部32は、検体、第1試薬および第2試薬が分注された反応容器20を、所定タイミングで、反応容器移送レーン24から集磁テーブル31に移送する。第1容器移送部28は、反応容器20を把持可能である把持装置を先端に有するアームを備える。第1容器移送部32は、アームをステッピングモータ等の駆動手段により鉛直方向への昇降及び自身の基端部を回転軸として回転することにより、反応容器20を反応容器移送レーン24から集磁テーブル31に移送する。
【0047】
集磁テーブル31は、複数の反応容器20を周方向に沿って収納できるとともに、回転することによって反応容器20を周方向に沿って移送する。集磁テーブル31は、反応容器20内の反応液を攪拌する攪拌機構35を備える。また、反応容器収納箇所にそれぞれ対応した位置に、複数の集磁機構31aが設けられている。この集磁機構31aは、収納された各反応容器20の底面に近接または接触するように、集磁テーブル31底部に設けられている。したがって、集磁テーブル30は、二以上の集磁機構31を有し、二以上の反応容器20に対して並行して集磁処理を行なうことができる。
【0048】
ここで、図3を参照して、集磁テーブル31による集磁処理について説明する。図3は、検体内の測定対象物と、試薬中に含まれる磁性粒子61および標識粒子62との反応を説明する図である。まず、集磁テーブル31に移送される反応容器20内の状態について説明する。集磁テーブル31内の反応容器20には、検体移送レーン21の吸引位置に移動された検体容器21a内の検体を検体分注部22により注入されるとともに、図3(1)に示すように、第1試薬分注装置27または28により磁性粒子61を含む第1試薬が分注され、第2試薬分注装置29または30により標識物質である金粒子62を含む第2試薬が分注される。この磁性粒子61および金粒子62は、検体中の測定対象物60と反応し、この結果、図3(2)に示すように、磁性粒子61、金粒子62および測定対象物60が結合した複合体63が形成される。
【0049】
集磁テーブル31の集磁位置には、図4に示すように、全体が磁石で形成された集磁機構31aが設けられている。図4は、図1に示す集磁機構31aの構成を示す図である。集磁機構31aは、たとえば円柱上に一体として円錐が形成された形状である。集磁機構31aにおいては、円錐部の頂点が磁極として機能する。そして、この集磁機構31aの円錐部の頂点が集磁テーブル31の底面に近接または接触するように設けられている。なお、集磁機構31aは、円柱上に一体として円錐が形成された形状に限らず、角柱上に錐形状が一体として形成された形状であってもよい。
【0050】
反応容器20内で形成された複合体63は、磁性粒子を含むことから、集磁テーブル31の集磁位置に搬送された場合に反応容器20の底面に近接または接触した集磁機構31aから磁力を受けて引き寄せられる。そして、複合体63は、図4のように、集磁機構31aの円錐部の先端に近接するように反応容器20底面に徐々に凝集する。この結果、所定時間経過後、反応容器20内には凝集体64が形成される。このように、集磁機構31aは、反応容器20の底面に磁極を近接または接触させて、反応容器20の底面にそれぞれ凝集体64を形成する。なお、集磁機構31aの磁力は、ターゲットとなる凝集体径に対応させて設定される。この凝集体の径は、後述する測光部34におけるレーザ光のスポット径に応じて、たとえば、200μm以上2000μm以下、10μm以上1000μm以下、また、50μm以上500μm以下、または、100μm以上500μm以下に設定される。また、集磁機構31aの円錐部先端の頂点角度θは、凝集体形成が円滑に進むよう、90°以下である必要があり、さらには、60°以下であることが望ましい。
【0051】
そして、第2容器移送部33は、集磁テーブル31によって集磁処理が行なわれ凝集体64が形成された反応容器20を、所定タイミングで、集磁テーブル31の取出位置から測光部34による測光位置に移送する。第2容器移送部33は、第1容器移送部32と同様の構成を有し、反応容器20を把持可能である把持装置を先端に有するアームを備える。第2容器移送部33は、アームをステッピングモータ等の駆動手段により鉛直方向への昇降及び自身の基端部を回転軸として回転することにより、反応容器20を集磁テーブル31から測光部34に移送する。
【0052】
測光部34は、集磁機構31aによって集磁処理が行なわれた反応容器20であって第2容器移送部33によって移送された反応容器20における凝集体に対し測光処理を行なって、凝集体64の光学的特性を測定する。測光部34は、磁性粒子、測定対象物および標識粒子の複合体を集磁処理によって反応容器20内で凝集させた状態で、この凝集体64の光学的特性を測定している。図5は、図1に示す測光部の構成を示す図である。測光部34は、図5に示すように、レーザ光源34aと、レンズ34b,34d,34eと、ダイクロイックミラー34cと、ラマン分光計34fとを備える。レーザ光源34aから発せられたレーザ光は、光路L1に示すように、レンズ34bにおいて平行光に収束され、ダイクロイックミラー34cで反射した後に、レンズ34dで集光され凝集体64に入射する。そして、凝集体64で表面増強されたラマン散乱光は、光路L2に示すように、レンズ34dにおいて平行光に収束され、ダイクロイックミラー34cを透過した後、レンズ34eで集光され、ラマン分光計34fに入射する。ラマン分光計34fの測定結果は、制御部41に出力され、分析部43において分析される。なお、測光部34によって測光処理が終了した反応容器20は、図示しない移送機構によって測光部34から取り出され、廃棄される。
【0053】
つぎに、制御機構4について説明する。制御機構4は、制御部41、入力部42、分析部43、記憶部44、出力部45および分注精度管理部46を備える。測定機構2および制御機構4が備えるこれらの各部は、制御部41に電気的に接続されている。
【0054】
制御部41は、CPU等を用いて構成され、分析装置1の各部の処理および動作を制御する。制御部41は、これらの各構成部位に入出力される情報について所定の入出力制御を行い、かつ、この情報に対して所定の情報処理を行う。
【0055】
入力部42は、キーボード、マウス等を用いて構成され、検体の分析に必要な諸情報や分析動作の指示情報等を外部から取得する。分析部43は、測光部34から取得したラマン分光分析結果に基づいて検体の分析を行う。
【0056】
記憶部44は、情報を磁気的に記憶するハードディスクと、分析装置1が処理を実行する際にその処理にかかわる各種プログラムをハードディスクからロードして電気的に記憶するメモリとを用いて構成され、検体の分析結果等を含む諸情報を記憶する。記憶部44は、CD−ROM、DVD−ROM、PCカード等の記憶媒体から情報を読み取ることができる補助記憶装置を備えてもよい。また、記憶部44は、後述する試薬分注部の分注精度管理用の各ラマン試薬についての検量線を記憶する。
【0057】
出力部45は、プリンタ、スピーカー等を用いて構成され、検体の分析結果を含む諸情報を出力する。出力部45は、図示しない通信ネットワークを介して所定の形式にしたがった情報を外部装置に出力してもよい。また、後述する分注管理部46の判定部46cが、試薬プローブの分注量が所定範囲外であると判定した場合、出力部45は、所定範囲外である試薬プローブについて分注量異常のアラートを出力する。
【0058】
分注精度管理部46は、分注制御部46aと、算出部46bと、判定部46cとを備え、自動分析装置1が備える第1試薬分注部27および28、ならびに第2試薬分注部29および30の各試薬プローブの分注精度を確認する。
【0059】
分注制御部46aは、所定のタイミングまたはオペレータが指示するタイミングで、1の反応容器20内に、第1試薬分注部27および28、ならびに第2試薬分注部29および30により、第1試薬庫25および第2試薬庫26内のラマン試薬容器25bおよび26bに収容される異なるラマン試薬を夫々分注させ、分注された反応容器20内のラマン試薬を攪拌後、測光部34により前記各ラマン試薬を測光分析し、分析部43で各ラマン試薬の濃度を分析するよう制御する。
【0060】
本明細書において、分注精度管理に使用されるラマン試薬は、ラマン活性を有する、コアとなるナノ粒子(ナノコロイド、ナノロッド、ビーズ、GAN粒子を含む)に、ラマン活性分子を修飾したものをいう。ここで、修飾とは、コアナノ粒子とラマン活性分子が結合した状態、またはコアナノ粒子にラマン活性分子が会合した状態をいう。
【0061】
ナノ粒子は、金、銀、銅またはプラチナ粒子、あるいは銀/金、プラチナ/金、銅/金合金などが使用され、特に金ナノ粒子が安定性の点で好ましい。
【0062】
本明細書において、ラマン活性分子は、コアナノ粒子を修飾することにより、コアナノ粒子の散乱光をラマンシフトさせることができる物質をいい、たとえば、多環式芳香族化合物または複素環式芳香族化合物であり、好ましくは、ベンゾトリアゾール、trans―1―(2―ピリジル)―2−(4−ピリジル)エチレン、1,2−ジ(4−ジピリジル)エチレン、2−イミノチオラン、2−ナフタレンチオール、ローダミン6G、ピリジン、4−メルカプト安息香酸、3−メルカプト安息香酸、チオフェノール、4−アミノベンゼンチオール、2−アミノベンゼンチオール、ベンゼンチール、オクタデカンチール、11−アミノー1−ウンデカンチールから選択される。
【0063】
本実施の形態1の自動分析装置1では、コアナノ粒子にラマン活性分子を修飾したラマン試薬であって、ラマンシフトが異なるものを試薬プローブ数だけ用意し、各試薬プローブで夫々異なるラマン試薬を1の反応容器20に分注し、攪拌した後、測光部34で分析を行う。図6は、各ラマン試薬のラマンシフトを示す図である。図6(6−1)はラマン試薬Aのラマンシフト、図6(6−2)はラマン試薬Bのラマンシフト、図6(6−3)はラマン試薬Cのラマンシフト、図6(6−4)はラマン試薬Dのラマンシフトを示す。図6(6−5)は、試薬A、B、CおよびDの混合溶液のラマンシフトである。各ラマン試薬のラマンシフトは、図6に示すように、主ピークの位置が異なる。したがって、同一の反応容器20に各ラマン試薬を分注しても、図6(6−5)に示すように、主ピークの位置が重なることがないため1度に多重分析を行うことができ、分注精度確認に要する時間が大幅に短縮できる。
【0064】
本実施の形態1で使用されるラマン試薬は、上述したようにナノ粒子にラマン活性分子を修飾したものが使用可能であるが、ラマン試薬のスペクトル強度はその濃度に比例するため、少量のラマン試薬でスペクトル強度を稼ぐことを目的として、上記ラマン試薬と磁性粒子を結合させ(以後、ラマン試薬と磁性粒子との結合体を「ラマン標準粒子」という)、集磁後ラマン散乱光分析を行うことにより少量のラマン標準粒子で分析精度を向上することも可能である。
【0065】
ここで、本実施の形態1にかかるラマン標準粒子の生成方法の概要について、図7を参照して説明する。図7は、本発明の実施の形態1にかかるラマン標準粒子の生成方法を示す模式図である。
【0066】
まず、図7(a)において、金属粒子71に対し、少なくとも一つのラマン活性分子72を接触させて反応させる。具体的には、金属粒子71の表面に、ラマン活性分子72を吸着させる。これにより、金属粒子71と少なくとも一つのラマン活性分子72とが共有結合したSERS粒子である第1複合体73が生成される(図7(b))。ここで、金属粒子71は、金粒子、銀粒子、銅粒子または白金粒子であり、表面プラズモン増強を生じさせる粒子である。ラマン活性分子72は、4−メルカプト安息香酸、3−メルカプト安息香酸、4−アミノベンゼンチオール、2−アミノベンゼンチオール、ベンゼンチール、オクタデカンチール、11−アミノー1−ウンデカンチールなどであり、金属粒子71に対して特徴的なラマンピークを生じさせる。
【0067】
次に、第1複合体73に対し、縮合剤により架橋剤74を接触させて反応させる(図7(c))。具体的には、縮合剤の存在下でラマン活性分子72のカルボキシル基またはチオール基に架橋剤74を共有結合させる。これにより、第1複合体73に架橋剤74が共有結合した第2複合体75が生成される(図7(d))。ここで、縮合剤は、N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミド(EDC,WSC)、1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチル(EDC methiodide)、N’−(エチルカルボンイミドイル)−N,N−ジメチル−1,3−ポロパンジアミン/塩酸(EDC hydrochloride,EDAC)、N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)、1−エチル−3−tert−ブチルカルボジイミド(BEC)、1−シクロヘキシル−3−(2−モルホリノエチル)カルボジイミド−p−トルエンスルホナート(CMC)、N,N’−ジ−tert−ブチルメタンジイミン、1,3−ビス(p−トリル)カルボジイミドまたはN,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)である。架橋剤74は、エチレンジアミン、3,3’−ジアミノジプロピルアミン、1,6−ジアミンノヘキサンまたは1,2−ビス(2−アミノエトキシ)エタンである。
【0068】
最後に、第2複合体75に対し、磁性粒子76を接触させて反応させる(図7(e))。具体的には、第2複合体75の架橋剤74のアミノ基を反応させて、表面官能基にトシル基を持つ磁性粒子76を共有結合させる。これにより、第2複合体75に磁性粒子76が共有結合したラマン標準粒子77が生成される(図7(f))。ここで、磁性粒子76は、核がフェライトであり、この核を樹脂またはシリカで被覆した粒子である。また、磁性粒子76は、核が樹脂またはシリカであり、この核をフェライトで被覆した粒子でもよい。
【0069】
算出部46bは、分注制御部46aの制御のもと測光部34で測定され、分析部43で求められた前記各ラマン試薬またはラマン標準粒子の濃度から、第1試薬分注部27および28、ならびに第2試薬分注部29および30の各試薬プローブから実際に分注されたラマン試薬の分注量を算出する。
【0070】
判定部46cは、算出部46bが算出した前記各試薬プローブの分注量が所定範囲内であるか否かを判定する。
【0071】
以上のように構成された自動分析装置1では、順次搬送される反応容器20に対して、検体分注部22が検体容器21a中の検体を分注し、第1試薬分注部27または28が第1試薬容器25a中の第1試薬を分注した後、第2試薬分注部29または30が第2試薬容器26a中の第2試薬を分注し、攪拌された後、集磁テーブル31に搬送されて集磁処理の後、測光部34が検体と試薬とを反応させた形成した凝集体64のラマン散乱光測定を行い、この測定結果を分析部43が分析することで、検体の抗原抗体反応分析等が自動的に行われる。
【0072】
続いて、図8を参照して、本実施の形態1にかかる分注精度管理処理について説明する。図8は、各試薬プローブによるラマン試薬の分注動作図である。
【0073】
まず、本実施の形態1にかかる分注精度管理を行うために、分注精度管理部46は、試薬分注部の分注精度管理のタイミングあるいはオペレータの分注精度確認の指示がなされた場合、第1試薬分注部27および28、第2試薬分注部29および30により、異なるラマン試薬を、所定量同一の反応容器20に分注させるよう制御する。
【0074】
始めに、分注精度管理部46の分注制御部46aは、第1試薬分注部27の分注プローブ27aにより、第1試薬庫25内のラマン試薬容器25bに収容されるラマン試薬Aを反応容器20に所定量分注させる(図8(8−1)参照)。次に、分注制御部46aは、第1試薬分注部28の分注プローブ28aにより、第1試薬庫25内の別のラマン試薬容器25bに収容されるラマン試薬Bを、分注プローブ28aによりラマン試薬Aが分注された反応容器20に所定量分注させる(図8(8−2)参照)。続いて、分注制御部46aは、第2試薬分注部29の分注プローブ29aにより、第2試薬庫26内のラマン試薬容器26bに収容されるラマン試薬Cを、分注プローブ29aによりラマン試薬AおよびBが分注された反応容器20に所定量分注させる(図8(8−3)参照)。そして、分注制御部46aは、第2試薬分注部30の分注プローブ30aにより、第2試薬庫26内の別のラマン試薬容器26bに収容されるラマン試薬Dを、分注プローブ30aによりラマン試薬A、BおよびCが分注された反応容器20に所定量分注させる(図8(8−4)参照)。反応容器20に分注されたラマン試薬A、B、CおよびDについて(図8(8−5)参照)、攪拌機構35により攪拌後、測光部34にてラマン散乱光分析を行ない、分析部43によりラマン試薬A、B、CおよびDの各濃度を分析した後、算出部46bがラマン試薬A、B、CおよびDの濃度に基づき各分注プローブの分注量を算出することにより、各分注プローブの分注精度を確認することができる。ラマン試薬のかわりにラマン標準粒子を使用する場合は、攪拌機構35により攪拌し、集磁機構31aによって集磁処理をした後、測光部34にてラマン散乱光分析を行なう。
【0075】
次に、図9を参照して、本実施の形態1にかかる分注精度管理処理について説明する。図9は、本実施の形態1にかかる分注精度管理処理のフローチャートである。
【0076】
第1および第2試薬分注部の分注精度管理のタイミングあるいはオペレータの分注精度確認の指示がなされた場合、まず、分注制御部46aは、第1試薬分注部27の分注プローブ27aにより、第1試薬庫25内の試薬容器25bに収容されるラマン試薬Aを吸引し(ステップS101)、反応容器移送レーン24上の反応容器20に吐出するよう制御する(ステップS102)。分注制御部46aは、自動分析装置1が備えるすべての試薬分注プローブによるラマン試薬の分注が終了したか否かを確認する(ステップS103)。本実施の形態1では、図7に示すように、試薬分注プローブの数が4の場合について説明するが、これに限定されるものではなく、2以上であれば本実施の形態1を適用しうる。
【0077】
すべての試薬分注プローブによるラマン試薬の分注が終了するまで(ステップS103、No)、ステップS101およびステップS102が繰り返され、分注制御部46aが、すべての試薬分注プローブによるラマン試薬の分注が終了したと確認した後(ステップS103、Yes)、第1容器移送部32は、反応容器20を反応容器移送レーン24から集磁テーブル31に移送する。集磁テーブル31に反応容器20が移送された後、攪拌機構35により反応容器20内のラマン試薬を攪拌する(ステップS104)。第2容器移送部33は、反応容器20を集磁テーブルから測光部34へ移送し、その後、測光部34は、反応容器20内のラマン試薬A、B、CおよびDについて、ラマン散乱光分析を行う(ステップS105)。分析部43は、測光部で測光したラマン測光分析のデータに基づき、各ラマン試薬A、B、CおよびDの濃度を分析する(ステップS106)。続いて算出部46bは、各ラマン試薬A、B、CおよびDの濃度から試薬プローブ27a、28a、29aおよび30aの分注量を算出する(ステップS107)。
【0078】
判定部46cは、算出部46bが算出した試薬プローブ27a、28a、29aおよび30aから分注されたラマン試薬A、B、CおよびDの分注量が、所定範囲内であるか否かを判定する(ステップS108)。すべてのラマン試薬の分注量が所定範囲内である場合には(ステップS108、Yes)、分注精度管理処理を終了する。一方、所定範囲外のラマン試薬の分注量がある場合には(ステップS108、No)、所定範囲外となったラマン試薬を分注下試薬プローブを備える第1および/または第2試薬分注部について分注精度が範囲外である旨のアラートを出力部45により出力して(ステップS109)、分注精度管理処理を終了する。
【0079】
本実施の形態1にかかる分注精度管理によれば、異なるラマン試薬を複数の試薬分注部により分注させラマン散乱光分析を行うことにより、多重測定を行うことが可能となるため、1度の分析で複数の試薬分注部の精度管理を行なうことができる。これにより、試薬分注部のメンテナンスにかかる時間を大幅に低減することが可能となる。
【0080】
(実施の形態2)
本実施の形態2にかかる自動分析装置1Aは、1の分注プローブにより同量の異なるラマン試薬を夫々分注させ、測光部34により各ラマン試薬の濃度を分析し、各ラマン試薬の分注量および該分注量の変動係数を算出することにより、該分注プローブの分注精度を確認する。
【0081】
図10は、本発明の実施の形態2にかかる自動分析装置1Aの構成を示す模式図である。自動分析装置1Aは、分注精度管理部47を有する点で、実施の形態1の自動分析装置1と異なる。
【0082】
実施の形態2の分注精度管理部47は、分注制御部47aと、算出部47bと、判定部47cとを備え、自動分析装置1Aが備える第1試薬分注部27および28、第2試薬分注部29および30から選択されるいずれか1つの分注プローブの分注精度を確認する。
【0083】
分注制御部47aは、所定のタイミングまたはオペレータが指示するタイミングで、オペレータから指示された分注プローブまたはあらかじめ定められた順番の分注プローブにより、1の反応容器20内に、第1試薬庫25または第2試薬庫26内のラマン試薬容器25bおよび26bに収容される異なるラマン試薬を夫々分注させ、分注された反応容器20内のラマン試薬を攪拌後、測光部34により前記各ラマン試薬を測光分析し、分析部43で各ラマン試薬の濃度を分析するよう制御する。
【0084】
算出部47bは、分析部43で求めた前記各ラマン試薬の濃度から分注プローブの夫々の分注量を求め、該分注量の変動係数を算出する。
【0085】
判定部47cは、算出部47bが算出した変動係数が所定値以下であるか否かを判定する。
【0086】
続いて、図11を参照して、本実施の形態2にかかる分注精度管理処理について説明する。図11は、実施の形態2にかかる指定された分注プローブによるラマン試薬の分注動作図である。
【0087】
まず、本実施の形態2にかかる分注精度管理を行うために、分注精度管理部47は、試薬分注部の分注精度管理のタイミングあるいはオペレータの分注精度確認の指示がなされた場合、オペレータから指示された分注プローブまたは予め定められた順番の分注プローブにより、異なるラマン試薬を、所定量同一の反応容器20に分注をさせる。
【0088】
以下、第1試薬分注部27の分注プローブ27aの分注精度を管理する場合について説明する。始めに、分注制御部47aは、分注プローブ27aにより、第1試薬庫25内のラマン試薬容器25bに収容されるラマン試薬Aを、反応容器20に所定量分注させる(図11(11−1)参照)。次に、分注制御部47aは、同様に、分注プローブ27aにより、第1試薬庫25内の別のラマン試薬容器25bに収容されるラマン試薬Bを、ラマン試薬Aが分注された反応容器20に所定量分注させる(図11(11−2)参照)。続いて、同様に、分注プローブ27aにより、第1試薬庫25内の別のラマン試薬容器25bに収容されるラマン試薬Cを、ラマン試薬AおよびBが分注された反応容器20に所定量分注させる(図11(11−3)参照)。実施の形態2では、変動係数をn=5で算出しているため、引き続き分注プローブ27aにより、ラマン試薬Dおよびラマン試薬Eを同一の反応容器20に所定量分注させる(図11(11−4)および(11−5)参照)。実施の形態2では、1の分注プローブ27aにより異なるラマン試薬を分注するため、分注間には分注プローブ27aの洗浄を行なうことが好ましい。また、変動係数により分注精度を管理するため、各ラマン試薬の分注量を同量に設定する。なお、変動係数の算出においてn=5に限定されるものではなく、オペレータが所望する精度管理のための数を任意に設定できるものであり、たとえば、n=10の場合は、異なる10のラマン試薬を使用して行ってもよい。
【0089】
反応容器20に分注されたラマン試薬A、B、C、DおよびEについて(図11(11−6)参照)、攪拌機構35で攪拌後、測光部34にてラマン散乱光分析を行ない、分析部43によりラマン試薬A、B、C、DおよびEの各濃度を分析した後、算出部47bがラマン試薬A、B、C、DおよびEの濃度に基づき分注プローブ27aによる各ラマン試薬の分注量および該分注量の変動係数を算出することにより、各分注プローブの分注精度を確認する。
【0090】
次に、図12を参照して、本実施の形態2にかかる分注精度管理処理について説明する。図12は、本実施の形態2にかかる分注精度管理処理のフローチャートである。
【0091】
まず、分注制御部47aは、第1試薬分注部27の分注プローブ27aにより、第1試薬庫25内のラマン試薬容器25bに収容されるラマン試薬Aを吸引し(ステップS201)、反応容器移送レーン24上の反応容器20に吐出するよう制御する(ステップS202)。分注制御部47aは、分注プローブ27aにより設定された回数のラマン試薬の分注が終了したか否かを確認する(ここではn=5)(ステップS203)。
【0092】
設定された回数のラマン試薬の分注が終了するまで(ステップS203、No)、ステップS201およびステップS202が繰り返され、分注制御部47aが、設定された回数の分注プローブ27aによるラマン試薬の分注が終了したと確認した後(ステップS203、Yes)、第1容器移送部32は、反応容器20を反応容器移送レーン24から集磁テーブル31に移送する。集磁テーブル31に反応容器20が移送された後、攪拌機構35により反応容器20内のラマン試薬を攪拌する(ステップS204)。第2容器移送部33は、反応容器20を集磁テーブルから測光部34へ移送し、その後測光部34は、反応容器20内のラマン試薬A、B、C、DおよびEについて、ラマン散乱光分析を行う(ステップS205)。分析部43は、測光部で測光したラマン散乱光のデータに基づき、各ラマン試薬A、B、C、DおよびEの濃度を分析する(ステップS206)。続いて算出部47bは、各ラマン試薬A、B、C、DおよびEの濃度から試薬プローブ27aによる各ラマン試薬A、B、C、DおよびEの分注量と、該分注量の変動係数を算出する(ステップS207)。
【0093】
判定部47cは、算出部47bが算出した試薬プローブ27aにより分注された所定分注量の変動係数が、所定値以下であるか否かを判定する(ステップS208)。所定値以下である場合には(ステップS208、Yes)、分注精度管理処理を終了する。所定値より大きい場合には(ステップS208、No)、試薬プローブ27aを備える第1試薬分注部27について分注精度が範囲外である旨のアラートを出力部45により出力して(ステップS209)、分注精度管理処理を終了する。
【0094】
本実施の形態2にかかる分注精度管理によれば、異なるラマン試薬を、1の分注部により分注させてラマン散乱光分析を行うことにより、多重測定を行うことが可能となるため、1度の分析で所定分注部における分注量の変動係数による精度管理を行なうことが可能となり、分注部のメンテナンスにかかる時間を大幅に低減することが可能となる。また、本実施の形態2によれば、特定の分注部を指定して、単独で分注精度管理を行なうことも可能であるため、メンテナンス時間を短縮するだけでなく、より簡易に個々の分注部についてメンテナンスを行なうことができる。
【0095】
さらに、本実施の形態2では、第1および第2試薬分注部のみならず検体分注部22の分注プローブの精度管理を行うことも可能である。検体分注部22の分注精度管理を行なう場合は、検体移送レーン21に、検体移送レーン21で移送可能な形状の、ラマン試薬を収容するラマン試薬容器を設置して、該ラマン試薬容器からラマン試薬を吸引させて分析を行なえばよい。
【0096】
また、本実施の形態2にかかる自動分析装置1Aの変形例として、1の分注プローブにより、同量の異なるラマン試薬を反応容器20に夫々分注し、測光部34により各ラマン試薬の濃度を分析し、算出部47bは各ラマン試薬の平均分注量を算出して、該平均分注量が所定範囲内であるか否かにより該分注プローブの分注精度を確認するものが例示される。また、分析した各ラマン試薬の濃度により、算出部47bは平均分注量と変動係数との両方を算出し、平均分注量と変動係数とのいずれかが範囲外の場合に、出力部45によりアラートを出すこととしてもよい。
【0097】
(実施の形態3)
本実施の形態3にかかる自動分析装置1Bは、実施の形態1と同様に、異なる試薬プローブにより異なるラマン試薬を夫々分注させ、測光部34により各ラマン試薬の濃度を分析する処理を複数回繰り返すことにより、試薬プローブ毎に平均分注量と各分注量の変動係数とを算出して、各試薬プローブの分注精度を確認する。
【0098】
図13は、本発明の実施の形態3にかかる自動分析装置1Bの構成を示す模式図である。自動分析装置1Bは、分注精度管理部48を有する点で、実施の形態1の自動分析装置1と異なる。
【0099】
実施の形態3の分注精度管理部48は、分注制御部48aと、算出部48bと、判定部48cとを備え、第1試薬分注部27および28、第2試薬分注部29および30の分注プローブ27a、28a、29aおよび30aの分注精度を確認する。
【0100】
分注制御部48aは、所定のタイミングまたはオペレータが指示するタイミングで、分注プローブ27a、28a、29aおよび30aにより、1の反応容器20内に、第1試薬庫25または第2試薬庫26内の試薬容器25bおよび26bに収容される異なるラマン試薬を夫々分注させ、分注された反応容器20内のラマン試薬を攪拌後、測光部34により前記各ラマン試薬を測光分析し、分析部43で各ラマン試薬の濃度を分析するよう制御する。分注制御部48aは、分注プローブ27a、28a、29aおよび30aによるラマン試薬の分注、および測光部34による分析を所定回数繰り返す。ここで、分注プローブ27a、28a、29aおよび30aのラマン試薬の分注量は異なっていてもよいが、所定回数繰り返される各分注プローブの分注量は、平均分注量および変動係数を算出するため同量とする。
【0101】
算出部48bは、分析部43で求めた前記各ラマン試薬の濃度から分注プローブ27a、28a、29aおよび30aの夫々の分注量を求め、該分注量から平均分注量と該分注量の変動係数とを算出する。
【0102】
判定部48cは、算出部48bが算出した平均分注量が所定範囲内であるか、および変動係数が所定値以下であるか否かを判定する。
【0103】
以下、図14を参照して、本実施の形態3にかかる分注精度管理処理について説明する。図14は、本実施の形態3にかかる分注精度管理処理のフローチャートである。
【0104】
まず、分注制御部48aは、第1試薬分注部27の分注プローブ27aにより、第1試薬庫25内のラマン試薬容器25bに収容されるラマン試薬Aを吸引し(ステップS401)、反応容器移送レーン24上の反応容器20に吐出するよう制御する(ステップS402)。分注制御部48aは、自動分析装置1Bが備えるすべての試薬分注プローブによるラマン試薬の分注が終了したか否かを確認する(ステップS403)。
【0105】
すべての試薬分注プローブによるラマン試薬の分注が終了するまで(ステップS403、No)、ステップS401およびステップS402が繰り返され、分注制御部48aが、すべての試薬分注プローブによるラマン試薬の分注が終了したと確認した後(ステップS403、Yes)、第1容器移送部32は、反応容器20を反応容器移送レーン24から集磁テーブル31に移送する。集磁テーブル31に反応容器20が移送された後、攪拌機構35により反応容器20内のラマン試薬を攪拌する(ステップS404)。第2容器移送部33は、反応容器20を集磁テーブルから測光部34へ移送し、その後測光部34は、反応容器20内のラマン試薬A、B、CおよびDについて、ラマン散乱光分析を行う(ステップS405)。分析部43は、測光部で測光したラマン散乱光分析のデータに基づき、各ラマン試薬A、B、CおよびDの濃度を分析する(ステップS406)。
【0106】
その後、分注制御部48aは、測光部34による分析が所定回数(n回)行なわれたか否かを確認する(ステップS407)。分注制御部48aが、ラマン試薬の分注、測光処理が所定回数(n回)行なわれていないと判定した場合(ステップS407、No)、ステップS401〜ステップS406を繰り返す。分注制御部48aが、ラマン試薬の分注、測光処理が所定回数(n回)行なったと判定した場合(ステップS407、Yes)、算出部48bは、各ラマン試薬A、B、CおよびDの濃度(n回分)から試薬プローブ27a、28a、29aおよび30aの平均分注量と変動係数とを算出する(ステップS408)。
【0107】
判定部48cは、算出部48bが算出した試薬プローブ27a、28a、29aおよび30aから分注されたラマン試薬A、B、CおよびDの平均分注量が、所定範囲内であるか否かを判定する(ステップS409)。所定範囲内である場合には(ステップS409、Yes)、算出部48bが算出した変動係数が、所定値以下であるか否かを判定する(ステップS411)。ステップS409で所定範囲外の場合には(ステップS409、No)、所定範囲外となった試薬プローブを備える試薬分注部について分注精度が範囲外である旨のアラートを出力部45により出力する(ステップS410)。ステップS411で所定値以下である場合には(ステップS411、Yes)、分注精度管理処理を終了し、所定値より大きい場合には(ステップS411、No)、所定値より大きい試薬プローブを備える試薬分注部について分注精度が範囲外である旨のアラートを出力部45により出力して(ステップS412)、分注精度管理処理を終了する。
【0108】
(実施の形態4)
本実施の形態4にかかる自動分析装置1Cは、実施の形態2と同様に、1の分注プローブにより、異なるラマン試薬について分注量を変更して夫々分注させ、測光部34により各ラマン試薬の濃度を分析し、各ラマン試薬の分注量を算出することにより、各分注量と予定分注量との関係が直線性を保っているかを判定することにより、分注プローブの分注精度を確認する。
【0109】
図15は、本発明の実施の形態4にかかる自動分析装置1Cの構成を示す模式図である。自動分析装置1Cは、分注精度管理部49を有する点で、実施の形態1の自動分析装置1と異なる。
【0110】
実施の形態4の分注精度管理部49は、分注制御部49aと、算出部49bと、判定部49cとを備え、第1試薬分注部27および28、第2試薬分注部29および30の分注プローブ27a、28a、29aおよび30aから選択されるいずれか1つの分注プローブの分注量の直線性により分注精度を確認する。
【0111】
分注制御部49aは、所定のタイミングまたはオペレータが指示するタイミングで、オペレータから指示された分注プローブまたはあらかじめ定められた順番の分注プローブにより、1の反応容器20内に、第1試薬庫25または第2試薬庫26内のラマン試薬容器25bおよび26bに収容される異なるラマン試薬を、分注量を変更して夫々分注させ、分注された反応容器20内のラマン試薬を攪拌後、測光部34により前記各ラマン試薬を測光分析し、分析部43で各ラマン試薬の濃度を分析するよう制御する。
【0112】
算出部49bは、分析部43で求めた前記各ラマン試薬の濃度から分注プローブの夫々の分注量を算出する。
【0113】
判定部49cは、算出部49bが算出した各分注量が直線性を保っているか否かを判定する。
【0114】
以下、図16を参照して、本実施の形態4にかかる分注精度管理処理について説明する。図16は、本実施の形態4にかかる分注精度管理のフローチャートを示す。
【0115】
まず、分注制御部49aは、指定されたまたは所定の分注プローブにより、第1試薬庫25内のラマン試薬容器25bに収容されるラマン試薬Aを所定量吸引し(ステップS501)、反応容器移送レーン24上の反応容器20に吐出するよう制御する(ステップS502)。分注制御部49aは、分注プローブが、設定されたすべての分注量のラマン試薬の分注を終了したか否かを確認する(ステップS503)。ここで、直線性を確認するためには、少なくとも3点以上の分注量を選択するが、5点以上の分注量で確認するのが好ましい。
【0116】
設定されたすべての分注量のラマン試薬の分注が終了するまで(ステップS503、No)、ステップS501およびステップS502が繰り返され、分注制御部49aが、設定されたすべての分注量の分注が終了したと確認した後(ステップS503、Yes)、第1容器移送部32は、反応容器20を反応容器移送レーン24から集磁テーブル31に移送する。集磁テーブル31に反応容器20が移送された後、攪拌機構35により反応容器20内のラマン試薬を攪拌する(ステップS504)。第2容器移送部33は、反応容器20を集磁テーブルから測光部34へ移送し、その後測光部34は、反応容器20内の各ラマン試薬について、ラマン散乱光分析を行う(ステップS505)。分析部43は、測光部で測光したラマン測光分析のデータに基づき、各ラマン試薬の濃度を分析する(ステップS506)。続いて、算出部49bは、各ラマン試薬の濃度から分注プローブによる各ラマン試薬の分注量を算出する(ステップS507)。
【0117】
判定部49cは、算出部49bが算出した分注プローブの各分注量と予定分注量との関係が、直線性を保っているか否か判定する(ステップS508)。各分注量と予定分注量との関係が直線性から乖離している場合には(ステップS508、Yes)、乖離が認められる分注量について出力部によりアラートが出力される。または、1点でも乖離している場合には、該分注プローブについて、分注精度が範囲外である旨のアラートを出力部45により出力してもよい(ステップS509)。各分注量の直線性が保たれている場合には(ステップS208、No)、分注精度管理処理を終了する。
【0118】
本実施の形態4は、試薬分注部のみならず検体分注部22の分注プローブの分注量の直線性を判定して精度管理することもできる。検体分注部22の分注精度管理を行なう場合は、検体移送レーン21に、検体移送レーンで移送可能な形状の、ラマン試薬を収容するラマン試薬容器を設置して、該ラマン試薬容器からラマン試薬を吸引させてラマン分析を行なえばよい。
【0119】
(実施の形態5)
本実施の形態5は、自動分析装置で分注精度管理用に使用する各ラマン試薬を、個別の反応容器20に所定量収容した分析キットを使用して、各分注部の分注量を補正する自動分析装置である。
【0120】
図17は、本発明の実施の形態5にかかる自動分析装置1Dの構成を示す模式図である。自動分析装置1Dは、分注精度管理部50を有する点で、実施の形態1の自動分析装置1と異なる。
【0121】
実施の形態5の分注精度管理部50は、分注制御部50aと、算出部40bと、判定部50cと、補正部50dとを備え、第1試薬分注部27および28、第2試薬分注部29および30の分注プローブ27a、28a、29aおよび30aの分注量または該分注量の変動係数に基づき分注精度を管理するとともに、分注異常の場合、分析キットの分析結果に基づき各分注部を補正することにより分析精度の向上を図ることができる。
【0122】
分注制御部50aは、所定のタイミングまたはオペレータが指示するタイミングで、1の反応容器20内に、第1試薬分注部27および28、ならびに第2試薬分注部29および30により、第1試薬庫25および第2試薬庫26内のラマン試薬容器25bおよび26bに収容される異なるラマン試薬を夫々分注させ、分注された反応容器20内のラマン試薬を攪拌後、測光部34により前記各ラマン試薬の濃度を測定するよう制御する。また、分注制御部50aは、分析キット100を構成する所定量の異なるラマン試薬を夫々収容する反応容器20について、反応容器移送レーン24に設置された反応容器20を測光部34に搬送し、測光部34によりラマン散乱光分析を行い、分析部43により前記各ラマン試薬の濃度を分析するよう制御する。
【0123】
本実施の形態5で使用する分析キット100は、図18に示すように、分注精度確認用試薬として使用するラマン試薬A、B、C、Dを所定量収容する反応容器20からなる。各反応容器20の上部は、蓋またはシールにより密閉されている。
【0124】
算出部50bおよび判定部50cは、実施の形態1と同様の役割を担う。
【0125】
補正部50dは、分析キット100の測定により得られた各ラマン試薬A、B、C、Dの濃度に基づき、記憶部44dに記憶される各ラマン試薬A、B、C、Dの検量線を補正する。
【0126】
以下、図19および図20を参照して、本実施の形態5にかかる分注部補正処理について説明する。図19は、本実施の形態5にかかる分注部補正処理のフローチャートを示す。図20は、図19の分析キット分析処理のフローチャートを示す。
【0127】
本実施の形態5にかかる分注精度管理処理において、まず、分注制御部50aは、分析キット100の分析処理を行う(ステップS601)。ステップS601の分析キットの分析処理では、分析キット100を反応容器移送レーン24にセット後、第1容器移送部32および第1容器移送部33により、ラマン試薬を収容した反応容器20を測光部34に搬送し(ステップS701)、測光部34によりラマン測光分析を行う(ステップS702)。分注制御部50aは、分析キット100のすべての反応容器20について分析が終了したかを確認し(ステップS703)、終了していない場合は(ステップS703、No)、ラマン試薬A、B、C、Dを夫々収容する反応容器20について分析が終了するまで、ステップS701およびステップS702を繰り返す。分析が終了した場合は(ステップS703、Yes)、図19のステップS602に移行する。なお、分析キット100は、測光部34で測光処理後、廃棄せずに冷暗所に保存することにより、繰り返し使用が可能である。
【0128】
ステップ602の分注精度管理処理は、実施の形態1で説明したステップS101〜ステップS109(図9参照)を行う(ステップS602)。
【0129】
ステップ602の分注精度管理処理終了後、分注制御部50aは、判定部46cにより分注異常と判定された試薬プローブがあるか否かを確認し(ステップS603)、分注異常と判定された試薬プローブがある場合は(ステップS603、Yes)、該分注プローブの分注精度管理用のラマン試薬についての、ステップS601で分析した分析キット100の分析結果に基づき、ラマン試薬の検量線を補正する(ステップS604)。分注異常と判定された試薬プローブがない場合は(ステップS603、No)、実施の形態5にかかる分注精度管理処理を終了する。
【0130】
本実施の形態5の自動分析装置1Dは、分注異常の試薬分注部を出力部45により報知できるだけでなく、分析キット100の分析結果に基づき、分注異常の第1および/または第2試薬分注部について検量線を補正することにより、メンテナンス処理で中断することなく分析を続行することができる。なお、分析キット100は、各ラマン試薬を個別の反応容器20に収容して組み合わせたものが好ましいが、各ラマン試薬の濃度が既知のラマン試薬混合液を1の反応容器20に収容したものであってもよい。
【0131】
本実施の形態5の変形例として、実施の形態4の分注精度管理処理用の分析キットを使用する検量線補正処理が例示される。該分析キットは、分注量の直線性確認用の分析キットであり、各反応容器20には、分注量を変更したラマン試薬A、B、C、DおよびEが夫々収容されている。本変形例では、該分析キットを使用して分析処理を行った後、実施の形態4の分注精度管理処理(ステップS501〜ステップS509、図16参照)を行い、直線性から乖離する分注量について検量線の補正を行うことができる。
【0132】
(実施の形態6)
本実施の形態6の自動分析装置は、複数の異なるラマン試薬を使用して、装置内の攪拌機構の攪拌性能を自動的に管理する。
【0133】
図21は、本発明の実施の形態6にかかる自動分析装置1Eの構成を示す模式図である。自動分析装置1Eは、攪拌性能管理処理に使用するラマン試薬を収容するラマン試薬容器25cを収納する第1試薬庫25eと、攪拌性能管理部51を備える。
【0134】
本実施の形態6の攪拌性能管理処理は、第1試薬として試薬容器25a内に収容される磁性粒子61と、該磁性粒子61と特異的に反応するラマン試薬を使用する。攪拌性能管理処理に使用するラマン試薬は、ラマン活性を有する、コアとなるナノ粒子(ナノコロイド、ナノロッド、ビーズ、GAN粒子を含む)に、ラマン活性分子を修飾したものに、前記磁性粒子と特異的に反応する標的分子をさらに修飾したものをいう。ここで、前記磁性粒子61と特異的に反応するラマン試薬を、ラマン試薬FおよびGとして以下説明する。ラマン試薬FおよびGは、ラマン散乱光測定時の主ピークの位置が異なるラマン活性分子を修飾したラマン試薬である。
【0135】
攪拌性能管理部51は、分注制御部51aと、算出部51bと、判定部51cとを備え、攪拌機構35の攪拌性能を管理する。
【0136】
分注制御部51aは、所定のタイミングまたはオペレータが指示するタイミングで、1の反応容器20内に、標的粒子で修飾されたラマン試薬FおよびGを分注し、前記標的分子と結合する反応物質で修飾された磁性粒子61をさらに分注後、所定様式で攪拌し、反応させて複合体を形成させ、反応容器20外に設置された集磁機構31aにより反応容器20内の磁性粒子61を含む複合体を集磁した後、集磁により生成した凝集体中のラマン試薬FおよびGを測光部34により測光し、分析43により各ラマン試薬の濃度を分析するよう制御する。
【0137】
算出部51bは、分析部43により求めたラマン試薬FおよびGの濃度から、磁性粒子61とラマン試薬FおよびGとの反応比を算出する。
【0138】
判定部51cは、算出部51bが算出した反応比が所定範囲内であるか否かを判定する。
【0139】
図22を参照して、本実施の形態6にかかる攪拌性能管理処理について説明する。図22は、実施の形態6にかかる攪拌性能管理処理における動作図である。
【0140】
本実施の形態6の自動分析装置1Eでは、まず、第1試薬分注部27または28の試薬プローブ27aまたは28aにより、ラマン試薬容器25cに収容されるラマン試薬Fを反応容器20に所定量分注する(図22(22−1)参照)。その後、同一の反応容器20に、別のラマン試薬容器25cに収容されるラマン試薬Gを試薬プローブ27aまたは28aにより所定量分注する(図22(22−2)参照)。さらに、試薬プローブ27aまたは28aにより、第1試薬容器に収容される磁性粒子61を所定量分注する(図22(22−3)参照)。ここで、磁性粒子61の分注量は、ラマン試薬FおよびGの合計量以下とする。各試薬を分注後、攪拌機構35により攪拌し、所定時間反応させると、ラマン試薬Fと磁性粒子61とが反応した複合物65と、ラマン試薬Gと磁性粒子61とが反応した複合物66とが生成する(図22(22−4)参照)。生成した複合体65および66を、集磁機構31aにより集磁する。複合体65および66は、磁性粒子を含むことから、集磁位置に搬送された場合に反応容器20の底面に近接または接触した集磁機構31aの磁力に引き寄せられ、反応容器20底面に徐々に凝集して、凝集体67が形成される(図22(22−5)参照)。この凝集体67中のラマン試薬FおよびGの濃度を分析することにより、磁性粒子61とラマン試薬FおよびGとの反応比を算出して、該反応比に基づき攪拌機構35の攪拌性能を管理する。
【0141】
以下、図23を参照して、本実施の形態6にかかる攪拌性能管理処理について説明する。図23は、本実施の形態6にかかる攪拌性能管理処理のフローチャートを示す。
【0142】
本実施の形態6にかかる攪拌性能管理処理において、まず、分注制御部51aは、第1試薬分注部27または28の試薬プローブ27aまたは28aにより、第1試薬庫25内のラマン試薬容器25cに収容されるラマン試薬Fを吸引し(ステップS801)、反応容器移送レーン24上の反応容器20に吐出するよう制御する(ステップS802)。分注制御部51aは、すべてのラマン試薬の分注が終了したか否かを確認する(ステップS803)。本実施の形態6では、2種のラマン試薬FおよびGを使用し、各ラマン試薬と第1試薬である磁性粒子61との反応比を算出する。
【0143】
すべてのラマン試薬の分注が終了するまで(ステップS803、No)、ステップS801およびステップS802を繰り返し、分注制御部51aが、すべてのラマン試薬の分注が終了したと確認した後(ステップS803、Yes)、分注制御部51aは、第1試薬分注部27または28の試薬プローブ27aまたは28aにより、第1試薬庫25内の第1試薬容器25aに収容される磁性粒子61を吸引し(ステップS804)、反応容器移送レーン24上の反応容器20に吐出するよう制御する(ステップS805)。ラマン試薬FおよびG、ならびに磁性粒子61を同一の試薬プローブで分注する場合には、各試薬の分注間に試薬プローブの洗浄を行なうものとする。磁性粒子61の分注後、第1容器移送部32は、反応容器20を反応容器移送レーン24から集磁テーブル31に移送する。反応容器20の移送後、攪拌機構35により反応容器20内のラマン試薬を攪拌し(ステップS806)、磁性粒子61とラマン試薬FおよびGとを所定時間反応させて、複合体65および66とを生成させる(ステップS807)。所定の反応時間経過後、集磁機構31aにより生成した複合体65および66を反応容器20底部に集磁し、凝集体67を形成する(ステップS808)。
【0144】
その後、第2容器移送部33は、反応容器20を集磁テーブルから測光部34へ移送し、測光部34は、反応容器20内の凝集体67についてラマン散乱光分析を行う(ステップS809)。分析部43eは、測光部34で測光したラマン散乱光分析のデータに基づき、凝集体67内のラマン試薬FおよびGの濃度を分析し(ステップS810)、算出部51bは、ラマン試薬FおよびGの濃度から、磁性粒子61とラマン試薬FおよびGとの反応比を算出する(ステップS811)。
【0145】
判定部51cは、算出部51bが算出したラマン試薬FおよびGの磁性粒子61との反応比が、所定範囲内であるか否かを判定する(ステップS812)。所定範囲内である場合には(ステップS812、Yes)、攪拌性能管理処理を終了する。所定範囲外の場合には(ステップS812、No)、攪拌機構35の攪拌性能が不良である旨のアラートを出力部45により出力して(ステップS813)、攪拌性能管理処理を終了する。
【0146】
本実施の形態6にかかる自動分析装置1Eは、ラマン試薬と磁性粒子との反応を利用して、装置内の攪拌機構の攪拌性能を、簡易な手法で自動的に管理することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0147】
以上のように、本発明の分注性能管理方法、分注量補正方法、攪拌性能管理方法、自動分析装置および分析キットは、メンテナンスに要する時間を低減するために非常に有用であり、特に、分析精度が要求される分野に適している。
【符号の説明】
【0148】
1、1A、1B、1C、1D、1E 自動分析装置
2 測定機構
4、4a、4b、4c、4d、4e 制御機構
20 反応容器
21 検体移送レーン
21a 検体容器
21b 検体ラック
22 検体分注部
23 チップ格納部
24 反応容器移送レーン
25 第1試薬庫
25a 第1試薬容器
25b、26b ラマン試薬容器
26 第2試薬庫
26a 第2試薬容器
27、28 第1試薬分注部
29、30 第2試薬分注部
31 集磁テーブル
31a 集磁機構
32 第1容器移送部
33 第2容器移送部
34 測光部
34a レーザ光源
34b,34d,34e レンズ
34c ダイクロイックミラー
34f ラマン分光計
41、41a、41b、41c、41d、41e 制御部
42 入力部
43 分析部
44 記憶部
45 出力部
46、47、48、49、50 分注精度管理部
46a、47a、48a、49a、50a、51a 分注制御部
46b、47b、48b、49b、50b、51b 算出部
46c、47c、48c、49c、50c、51c 判定部
50d 補正部
51 攪拌性能管理部
60 測定対象物
61、76 磁性粒子
62 金粒子
63、65、66 複合体
64、67 凝集体
71 金属粒子
72 ラマン活性粒子
74 架橋剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分注機構により反応容器に分注された検体および試薬との反応物をラマン散乱光により分析する自動分析装置における分注精度管理方法であって、
1の反応容器内に分注プローブにより異なるラマン試薬を分注する分注ステップと、
分注された前記反応容器内のラマン試薬を攪拌する攪拌ステップと、
前記反応容器内の各ラマン試薬について、ラマン分光計により測光分析する測定ステップと、
前記測定ステップで測定したデータに基づき、各ラマン試薬の濃度を求める分析ステップと、
前記分析ステップで求めた各ラマン試薬の濃度から各ラマン試薬の分注量を算出する算出ステップと
前記算出ステップにより算出した分注量に基づき、分注異常であるか否かを判定する判定ステップと、
前記判定ステップにより分注異常であると判定された場合、分注異常のアラートを出力する出力ステップと、
を含むことを特徴とする自動分析装置の分注精度管理方法。
【請求項2】
前記分注ステップは、前記分注プローブとして2以上の試薬プローブを用いて分注し、
前記算出ステップは、前記各ラマン試薬の濃度から前記各試薬プローブの分注量を算出し、
前記判定ステップは、前記算出ステップにより算出した前記各試薬プローブの分注量が所定範囲内であるかを判定し、
前記出力ステップは、前記判定ステップにより前記各試薬プローブの分注量が所定範囲外であると判定された場合、所定範囲外である試薬プローブについて分注異常のアラートを出力することを特徴とする請求項1に記載の自動分析装置の分注精度管理方法。
【請求項3】
前記分注ステップと前記測定ステップとを所定回数繰り返し行ない、
前記算出ステップは、前記分析ステップで求めた前記各ラマン試薬の濃度から前記各試薬プローブの平均分注量を算出し、
前記判定ステップは、前記各試薬プローブの平均分注量が所定範囲内であるかを判定することを特徴とする請求項1または2に記載の自動分析装置の分注精度管理方法。
【請求項4】
前記分注ステップと前記測定ステップとを所定回数繰り返し行ない、
前記算出ステップは、前記分析ステップで求めた前記各ラマン試薬の濃度から夫々の分注量を求め、該分注量に基づき前記各試薬プローブの分注量の変動係数を算出し、
前記判定ステップは、前記変動係数が所定値以下であるか否かを判定し、
前記出力ステップは、前記判定ステップにより前記変動係数が所定値より大きいと判定された場合、分注プローブ毎に分注異常のアラートを出力することを特徴とする請求項2に記載の自動分析装置の分注精度管理方法。
【請求項5】
前記分注ステップは、1の反応容器内に、1の分注プローブにより同量の異なるラマン試薬を夫々分注し、
前記算出ステップは、前記各ラマン試薬の濃度から前記分注プローブの夫々の分注量を求め、該分注量に基づき変動係数を算出し、
前記判定ステップは、前記変動係数が所定値以下であるか否かを判定し、
前記出力ステップは、前記判定ステップにより前記変動係数が所定値より大きいと判定された場合、分注量異常のアラートを出力することを特徴とする請求項1に記載の自動分析装置の分注精度管理方法。
【請求項6】
前記算出ステップは、前記分析ステップで求めた前記各ラマン試薬の濃度から前記分注プローブの平均分注量を算出し、
前記判定ステップは、前記平均分注量が所定範囲内であるかを判定し、
前記出力ステップは、前記判定ステップにより前記分注プローブの平均分注量が所定範囲外であると判定された場合、分注量異常のアラートを出力することを特徴とする請求項5に記載の自動分析装置の分注精度管理方法。
【請求項7】
前記分注ステップは、1の反応容器内に、1の分注プローブにより異なるラマン試薬を、夫々分注量を変更して分注し、
前記算出ステップは、前記分析ステップで求めた前記各ラマン試薬の濃度から各ラマン試薬の分注量を夫々算出し、
前記判定ステップは、前記算出ステップにより算出した各分注量と予定分注量との関係が直線性を保っているか否かを判定し、
前記出力ステップは、前記判定ステップにより直線性から乖離があると判定された場合、分注量異常のアラートを出力することを特徴とする請求項1に記載の自動分析装置の分注精度管理方法。
【請求項8】
前記分注ステップと前記測定ステップとを所定回数繰り返し行ない、
前記算出ステップは、前記分析ステップで求めた前記各ラマン試薬の濃度から各ラマン試薬の平均分注量を夫々算出し、
前記判定ステップは、前記算出ステップにより算出した各平均分注量と予定分注量との関係が直線性を保っているか否かを判定することを特徴とする請求項7に記載の自動分析装置の分注精度管理方法。
【請求項9】
前記ラマン試薬は、前記測定ステップで同時に使用される他のラマン試薬と異なるラマン散乱スペクトルを有することを特徴とする請求項1〜8のいずれか一つに記載の自動分析装置の分注精度管理方法。
【請求項10】
前記ラマン試薬は、ラマン活性分子を修飾した金、銀、銅またはプラチナ粒子、あるいは銀/金、プラチナ/金、銅/金合金粒子であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一つに記載の自動分析装置の分注精度管理方法。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一つに記載の自動分析装置の分注精度管理方法に使用するすべてのラマン試薬を、個別の反応容器に所定量収容した分析キットを使用する自動分析装置における分注量補正方法であって、
各ラマン試薬を収容する反応容器を測光手段に搬送して、そのままラマン分光計により各ラマン試薬の濃度を測定する分析キット測定ステップと、
請求項1〜10のいずれか一つに記載の方法により、自動分析装置の分注精度管理を行なう分注精度管理ステップと、
前記分注精度管理ステップにおいて分注精度異常とされた分注機構について、前記分析キット測定ステップで測定した各ラマン試薬の濃度に基づき補正を行う補正ステップと、
を含むことを特徴とする自動分析装置における分注量補正方法。
【請求項12】
分注機構により反応容器に分注された検体および試薬との反応物をラマン散乱光により分析する自動分析装置における攪拌性能管理方法であって、
1の反応容器内に標的粒子で修飾された2種以上のラマン試薬を所定量分注する試薬分注ステップと、
前記反応容器内に、前記標的分子と結合する反応物質で修飾された磁性粒子を所定量分注する磁性粒子分注ステップと、
前記反応容器内の溶液を所定様式で攪拌する攪拌ステップと、
前記反応容器外に設置された磁性体により前記反応容器内の前記磁性粒子を集磁する集磁ステップと、
集磁された磁性粒子と結合する各ラマン試薬をラマン分光計により測光分析する測定ステップと、
前記測定ステップで測定したデータに基づき、各ラマン試薬の濃度を求める分析ステップと、
前記分析ステップで求めた前記各ラマン試薬の濃度から前記磁性粒子との反応比を算出する算出ステップと、
前記反応比が所定範囲内であるか否かを判定する判定ステップと、
前記判定ステップにより前記反応比が所定範囲外と判定された場合、攪拌異常のアラートを出力する出力ステップと、
を含むことを特徴とする自動分析装置の攪拌性能管理方法。
【請求項13】
分注機構により反応容器に分注された検体および試薬との反応物をラマン分光により分析する自動分析装置であって、
所定のタイミングで、1の反応容器内に、分注プローブにより異なるラマン試薬を分注し、攪拌した後、前記反応容器内の各ラマン試薬について、ラマン分光計により測光分析し、各ラマン試薬の濃度を分析するよう制御する制御手段と、
前記分析手段により求めた前記ラマン試薬の濃度から前記ラマン試薬の分注量を算出する算出手段と、
前記算出手段が算出した前記ラマン試薬の分注量に基づき、分注異常であるか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段が分注異常であると判定した場合、分注異常のアラートを出力する出力手段と、
を備えることを特徴とする自動分析装置。
【請求項14】
前記制御手段は、1の反応容器内に、2以上の試薬プローブにより異なるラマン試薬を夫々分注し、分注された前記反応容器内のラマン試薬を攪拌後、ラマン分光計により前記各ラマン試薬を測光分析するよう制御し、
前記算出手段は、前記分析手段が求めた各ラマン試薬の濃度から前記各試薬プローブの分注量を算出し、
前記判定手段は、前記算出手段が算出した前記各試薬プローブの分注量が所定範囲内であるかを判定し、
前記出力手段は、前記判定手段が前記各試薬プローブの分注量が所定範囲外であると判定した場合、所定範囲外である試薬プローブについて分注量異常のアラートを出力することを特徴とする請求項13に記載の自動分析装置。
【請求項15】
前記制御手段は、1の反応容器内に、1の分注プローブにより同量の異なるラマン試薬を夫々分注し、分注された前記反応容器内のラマン試薬を攪拌後、ラマン分光計により前記各ラマン試薬を測光分析するよう制御し、
前記算出手段は、前記分析手段が求めた各ラマン試薬の濃度から前記分注プローブの夫々の分注量を求め、該分注量に基づき変動係数を算出し、
前記判定手段は、前記変動係数が所定値以上であるか否かを判定し、
前記出力手段は、前記判定手段が前記変動係数が所定値以上であると判定した場合、分注量異常のアラートを出力することを特徴とする請求項13に記載の自動分析装置。
【請求項16】
前記制御手段は、1の反応容器内に、1の分注プローブにより異なるラマン試薬を、夫々分注量を変更して分注し、分注された前記反応容器内のラマン試薬を攪拌後、ラマン分光計により前記各ラマン試薬を測光分析するよう制御し、
前記算出手段は、前記分析手段が求めた各ラマン試薬の濃度から各ラマン試薬の分注量を夫々算出し、
前記判定手段は、前記算出手段が算出した各分注量と予定分注量との関係が直線性を保っているか否かを判定し、
前記出力手段は、前記判定手段が、各分注量が直線性から乖離があると判定した場合、分注量異常のアラートを出力することを特徴とする請求項13に記載の自動分析装置。
【請求項17】
前記制御手段は、分析キットを構成する、所定量の異なるラマン試薬を夫々収容する反応容器毎に、ラマン分光計により前記各ラマン試薬を測光分析するよう制御し、
前記分析手段は、前記分析キットの測定により得られたデータに基づき、各ラマン試薬の濃度を求め、
前記判定手段が前記分注プローブについて分注異常と判定した場合、前記分析キットの分析により得られた前記各ラマン試薬の濃度に基づき、記憶手段に記憶される前記各ラマン試薬の検量線を補正する補正手段と、
を備えることを特徴とする請求項13〜16のいずれか一つに記載の自動分析装置。
【請求項18】
請求項13〜17に記載の自動分析装置において分注量を補正するための分析キットであって、
前記分析キットは、自動分析装置において分注精度管理用に使用するすべてのラマン試薬について個別の反応容器に所定量収容したものであることを特徴とする分析キット。
【請求項19】
分注機構により反応容器に分注された検体および試薬との反応物をラマン散乱光により分析する自動分析装置であって、
所定のタイミングで、1の反応容器内に、標的粒子で修飾された2種以上のラマン試薬を分注し、さらに前記標的分子と結合する反応物質で修飾された磁性粒子を分注する分注機構と、
所定様式で前記反応容器に分注されたラマン試薬と磁性粒子とを所定様式で攪拌する攪拌手段と、
前記反応容器内の磁性粒子を集磁する集磁手段と、
前記集磁手段により集磁された磁性粒子と結合する各ラマン試薬をラマン分光計により測光分析する測光手段と、
前記測光手段により測光されたデータに基づき、各ラマン試薬の濃度を分析する分析手段と、
前記分析手段により分析した前記各ラマン試薬の濃度から前記磁性粒子との反応比を算出する算出手段と、
前記反応比が所定範囲内であるか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段により前記反応比が所定範囲外と判定された場合、攪拌異常のアラートを出力する出力手段と、
を備えることを特徴とする自動分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2011−163910(P2011−163910A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−26705(P2010−26705)
【出願日】平成22年2月9日(2010.2.9)
【出願人】(510005889)ベックマン コールター, インコーポレイテッド (174)
【Fターム(参考)】