説明

分画方法および分画装置

【課題】タンパク質またはペプチドを含有する水溶液から、不要タンパク質またはペプチドを高率に除去し、必要とするタンパク質またはペプチドを高回収率で回収するための分画装置または分画方法の提供。
【解決手段】複数の種類のタンパク質またはペプチドを含有する水溶液を分離膜に接触させて処理し、この処理によって得られた濾液を、更に孔径の小さい分離膜に接触させる。この時得られるタンパク質またはペプチドを含有する水溶液が、濃度50mmol/l以上、500mmol/l以下の塩を含有し、該水溶液のpHが5より高く、10より低いことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は生体成分含有溶液、特にヒトの血液、血漿、尿等の原液からタンパク質などの生体分子を分画して、原液から組成を変化せしめた試料を得るための方法およびそのための装置に関する。特に、臨床プロテオーム解析を目的とし、微量成分の検出に対して妨害する成分、特に高分子量のタンパク質を除去し、生体成分の組成を変化させた溶液を分画する方法およびそのための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ポストゲノム研究として、プロテオーム解析研究(プロテオミクス)が注目され始めた。遺伝子産物であるタンパク質は遺伝子よりも疾患の病態に直接リンクしていると考えられることから、タンパク質を網羅的に調べるプロテオーム解析の研究成果は診断と治療に広く応用できると期待されている。しかも、ゲノム解析では発見できなかった病因タンパク質や疾患関連因子を多く発見できる可能性が高い。
【0003】
プロテオーム解析の急速に進展しだしたのは、技術的には質量分析装置(mass spectrometer: MS)による高速構造分析が可能となってきたことが大きく、MALDI-ToF-MS (matrix assisted laser desorption ionization time-of-flight mass spectrometry) 等の実用化によって、ポリペプチドのハイスループット超微量分析が可能となり、従来検出し得なかった微量タンパク質までが同定可能となり、疾患関連因子の探索に強力なツールとなってきている。
【0004】
プロテオーム解析の臨床応用の第一目的は、疾患によって誘導あるいは消失するバイオマーカータンパク質の発見である。バイオマーカーは、病態に関連して挙動するため、診断のマーカーとなり得るほか、創薬ターゲットとなる可能性も高い。すなわち、プロテオーム解析の成果は、特定遺伝子よりも診断マーカーや創薬ターゲットとなる可能性が高いため、ポストゲノム時代の診断と治療の切り札(エビデンス)技術となり、同定されたバイオマーカーは患者の薬剤応答性評価や副作用発現予測という直接的に患者が享受しえる利益につながることから、いわゆるテーラーメード医療(オーダーメード医療)の推進に大きな役割を果たすといえる。
【0005】
臨床研究にプロテオーム解析(臨床プロテオミクス)を導入する場合には、大量の検体を迅速、確実に解析することが求められており、しかも臨床検体は微量で貴重なために高分解能・高感度・高機能測定を迅速に行う必要がある。この大きな推進力となったのは質量分析(mass spectrometry)であり、質量分析装置のもつ超高感度でハイスループットの特性の貢献するところが大きい。しかしながら、その手法や機器が急速に改良されてきてはいるものの、プロテオーム解析が臨床現場で簡便かつ迅速に実施できる状況には、まだない。
【0006】
その原因のひとつに臨床検体の前処理が挙げられる。質量分析にかける前の処理として臨床検体のタンパク質を分画し精製することが必要で、この処理にはまだ数日かかるのが実態であり、さらに前処理の操作が煩雑で経験も必要とされることが、臨床への応用の大きな障害となっている。少量の血液や体液から全身の疾患の診断や病態管理ができれば、その有用性は極めて大きいものの、血漿中に含まれるタンパク質の多様性のために、多くの課題を生じている。
【0007】
ヒト・タンパク質は10万種以上とも推定されているが、血清中に含まれるタンパク質だけでも約1万種類にものぼるといわれ、総量としての血清中濃度は約60〜80mg/mLである。血清中の高含量のタンパク質は、アルブミン(分子量66kDa)、免疫グロブリン(150〜190kDa)、トランスフェリン(80kDa)、ハプトグロビン(>85kDa)、リポタンパク質(数100kDa)等であり、いずれも大量(>mg/mL)に存在する。一方、病態のバイオマーカーや病因関連因子と考えられているペプチドホルモン、インターロイキン、サイトカイン等の生理活性タンパク質の多くは、極微量 (<ng/mL)にしか存在しない。その含有量比は高分子の高含量成分に比べて、実にnanoからpicoレベルである。タンパク質の大きさという点では、タンパク質全種類の70%以下は分子量60 kDa以下であり、上記の極微量なバイオマーカータンパク質はいずれもこの領域に含まれる場合がほとんどである(例えば非特許文献1)。これらのタンパク質は腎臓を通過して尿中に一部排泄されるため、血液のみならず尿を検体として測定することも可能である。
【0008】
一般的な血清学的検査でプロテオーム解析するには、1)病因関連の微量成分検出の妨害となる分子量6万以上の高分子量成分を除外すること、2)分離された分子量6万未満の病因関連の微量成分を確実に回収することが重要となる。
【0009】
高分子量タンパク質の分離手段として、現状では高速液体クロマトグラフィー (liquid chromatography: LC)や二次元電気泳動(2 dimensional-polyacrylamide gel electrophoresis: 2D-PAGE) が用いられているが、LCや2D-PAGEの作業だけでも1〜2日を要している。この所要時間は、MALDI-TOF-MSやESI-MS (electrospray ionization mass spectrometry) 等の数分という分析時間に比べて非常に長く、MSのもつハイスループットという大きな利点が臨床プロテオーム解析では十分発揮できずにいる。このため、医療現場で診断や治療のためにできるだけ短時間に分析結果がほしいという目的には、現時点では実用性に極めて乏しいといわざるを得ず、日常の臨床検査にMSが利用しにくいひとつの大きな原因になっている。この点が解決されると、臨床プロテオーム解析による臨床検査の診断の迅速性は飛躍的に向上すると期待できる。具体的には、LCや2D-PAGEの代替となるような、微量の検体で高速に目的タンパク質群を分画・分離できるデバイス・装置があればよい。
【0010】
またLCや2D-PAGEは、微量のサンプルしか処理できないために、得られるサンプル中に含まれるバイオマーカーの量も少なく、これまで開示された試料の調整方法では、MS分析、2次元電気泳動分析などのタンパク質分析を行ってもマーカーが検出されない場合がある。
【0011】
タンパク質溶液から分離膜を使ってタンパク質を分離・回収する方法については、例えば、特許文献1、2に開示されている。特許文献1は方法のみを開示し、タンパク質分離に必須の構造を有する具体的装置までは開示していない。また特許文献2では、必須構成部分を全て備えてなる1台の分離装置については言及されていない。
【0012】
また、特許文献2に示すように、中空糸膜を用いて目的タンパク質を分離・精製する技術が知られている。
【0013】
アルブミンを主な除去対象物質として、すでに実用化されている製品あるいは開示されている技術として、高分子量成分を遠心分離ろ過によって分画する遠心管形式の装置(非特許文献2)、膜分離と電気泳動原理を組み合わせた分画方法(特許文献3)、しかしこれらは、いずれも分離分画性能が十分ではなかったり、微量サンプルには不適当であったり、分析の対象となるタンパク質が希釈されてしまったり、あるいは質量分析等に障害となる薬剤が混入したり、再現性に乏しいなどの問題点があった。
【0014】
液体を循環可能な濾過装置としては、らせん状に巻かれた平膜をハウジング中に装填したろ過装置が開示されている(特許文献4)が、このままでは分離性能が十分でなかった。また、分離膜モジュールと濃縮膜モジュールとを組み合わせ、生理食塩水またはpH緩衝水溶液を用いてクロスフロー方式によりタンパク質を分画するシステムが開示されている(特許文献5)が、回収率を得るための最適条件については言及されていない。
【0015】
これらの公知の膜分離装置は、不溶成分の分離除去性能だけでなく、必要成分の回収性能についても十分な性能が得られていない。分離除去性能が低い主な理由は、膜表面でのタンパク質が蓄積し、膜表面近傍に向かってタンパク濃度に勾配(濃度分極)ができ、濾過の方向とは逆向きの、濃度勾配に起因する拡散が発生することである。また、膜近傍で蛋白濃度が上昇すれば目詰まりが発生することも性能低下の一因である。更に、タンパク質やペプチドは、その粗水的・電気的性質のために凝集しやすく、凝集物は膜を通過できない。必要成分の回収性能が低い理由は、前記濃度分極により蓄積したタンパク自身がフィルターの役目をし、本来膜を通過できる大きさのタンパクも通過できなくなることである。また、膜の素材は疎水的であるためタンパクが非特異的に吸着することも低回収の理由である。従来の技術にはこのような問題を解決できる機構が無い。
【0016】
これらを解決する方法や装置の開発により、医学研究ならびに臨床現場でプロテオーム解析が広く行われるようになり、より迅速で高精度な検査や診断が可能となって、有用な治療法がない難治性の疾患の原因究明や早期の診断法の開発には強力なツールとなると期待できる。
【非特許文献1】アンダーソン・NL(Anderson NL),アンダーソン・NG( Anderson, NG)著,「ザ・ヒューマン・プラズマ・プロテオーム:ヒストリー・キャラクター・アンド・ダイアグノスティック・プロスペクツ (The human plasma proteome: history, character, and diagnostic prospects)」,モレキュラー・アンド・セルラー・プロテオミクス(Molecular & Cellular Proteomics),(米国),ザ・アメリカン・ソサエティー・フォー・バイオケミストリー・アンド・モレキュラー・バイオロジー・インコーポレーテッド(The American Society for Biochemistry and Molecular Biology, Inc.),2002年,第1巻,p845-867
【非特許文献2】ラダークリシュナ エス ティルマライ(Radhakrishna S. Tirumalai)ら著,「キャラクタリゼーション オブ ザ ロー モレキュラー ウェイト ヒューマン シーラム プロテオーム(Characterization of the low molecular weight human serum proteome)」,モレキュラー・アンド・セルラー・プロテオミクス(Molecular & Cellular Proteomics),(米国),ジ・アメリカン・ソサエティー・フォー・バイオケミストリー・アンド・モレキュラー・バイオロジー・インコーポレーテッド(The American Society for Biochemistry and Molecular Biology, Inc.),2003年,第2巻,p1096-1103
【特許文献1】特開昭59-116223号公報
【特許文献2】特開平7-133289号公報
【特許文献3】特表2002-542163号公報
【特許文献4】特開平04-330921号公報
【特許文献5】国際公開第05/028500号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の課題は、タンパク質またはペプチドを含有する水溶液から、不要タンパク質またはペプチドを高率に除去し、必要とするタンパク質またはペプチドを高回収率で回収するための分画装置または分画方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明では以下を開示する。
(1)複数の種類のタンパク質またはペプチドを含有する水溶液を分離膜に接触させて処理し、この処理によって得られた濾液を、更に孔径の小さい分離膜に接触させて、タンパク質またはペプチドに対し分画および/または濃縮を行う分画方法であって、複数の種類のタンパク質またはペプチドを含有する水溶液が、濃度50mmol/l以上、500mmol/l以下の塩を含有し、該水溶液のpHが5より高く、10より低いことを特徴とする分画方法。
(2)塩が揮発性である(1)に記載の分画方法。
(3)揮発性の塩が重炭酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、ギ酸アンモニウムまたは酢酸アンモニウム、塩化アンモニウムから選ばれる(2)に記載の分画方法。
(4)複数の種類のタンパク質またはペプチドを含有する水溶液をクロスフロー濾過方式で分離膜に接触させる(1〜3のいずれかに記載の分画方法。
(5)分離膜が中空糸膜である(1)〜(4)のいずれかに記載の分画方法。
(6)中空糸膜がセルロース、セルロースアセテート、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリメチルメタクリレート、ポリメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリアクリレート、ポリアミド、ナイロン、ポリ弗化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリエステル、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリエチレンおよびポリプロピレンからなることを特徴とする(5)に記載の分画方法。
(7)体液を含む水溶液を処理するための(1)〜(6)のいずれかに記載の分画方法。
(8)(1)に記載の分画方法を行うことを特徴とする分画装置。
【発明の効果】
【0019】
分子量の異なる複数の種類のタンパク質またはペプチドを含有する溶液から効率よく高分子量のタンパク質を除去し、微量の低分子量タンパク質を高回収率で得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明は、複数の種類のタンパク質またはペプチドを含有する水溶液を分離膜に接触させて処理し、この処理によって得られた濾液を、更に孔径の小さい分離膜に接触させて、タンパク質またはペプチドの分子量の大きさによって分画および/または濃縮する装置および方法であって、複数の種類のタンパク質またはペプチドを含有する水溶液が濃度50mmol/l以上、500mmol/l以下の塩を含有し、該水溶液のpHが5より高く、10より低いことを特徴とするタンパク質の分画装置および分画方法である。
【0021】
タンパク質は疎水性の相互作用により、他のタンパク質と結合するだけでなく、材料表面にも吸着する。溶液の塩濃度を高めることにより、この疎水性相互作用を阻害し、高分子量のタンパク質を原液側に残し、低分子量のタンパク質を効率よく透過させることができる。
【0022】
本発明でいう「分画」とは溶液中の溶質を分離することであり、溶質が複数種類含まれている場合には、その全部または一部を分離することを指す。体液成分をMS分析法によってプロテオーム解析するための試料を調製する場合には、回収目的のタンパク質またはペプチドと廃棄目的のタンパク質またはペプチドを弁別することになる。
【0023】
本発明の塩とは、正電荷を帯びた陽イオンと負電荷を帯びた陰イオンがイオン対を形成してなる化合物である。陽イオンとしては、ナトリウムイオン、カリウムイオン、アンモニウムイオンなどが挙げられ、陰イオンとしては、塩化物イオン、リン酸イオン、酢酸イオン、炭酸水素イオン、ギ酸イオンなどが挙げられる。これらが対をなし、例えば、塩化ナトリウム、炭酸水素アンモニウムと呼ばれるのが塩である。
【0024】
本発明でいう「クロスフロー濾過方式」とは、タンパク質またはペプチドを含有する液体を分離膜の面に対して平行な方向に高速で再循環させ、逆拡散の物質移動係数が増加する方法を意味する。このような濾過方式においては、差圧を分離膜の長さ方向に適用して、液体および濾過可能な溶質をフィルター通過させる。分離膜に対して平行な方向に流れる液体は連続的にフィルター表面を清浄し、濾過できない溶質による目詰まりを防ぐことができ、分離膜の分別能力を一層高める方法として知られている。接線フロー、タンジェンシャルフローという語もクロスフローと同義である。
【0025】
本発明の分画装置および分画方法においては、分離膜を有するものであり、分離膜に対して複数の種類のタンパク質またはペプチドを搬送する液体として、濃度50mmol/l以上、500mmol/l以下の塩を含有する水溶液を用いることが必須である。
【0026】
タンパク質またはペプチドを分画した後、質量分析で解析する場合、凍結乾燥機やエバポレーターを用いて溶媒成分を除去することにより、サンプルを濃縮する場合があることを考慮すると、本発明における塩は、サンプル中に残留しない点から揮発性であることが特に好ましい。その条件を満たすものとしては、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、ギ酸アンモニウム、塩化アンモニウム等が挙げられる。
【0027】
例えば炭酸水素アンモニウム水溶液を用いて分画し、得られたサンプルを凍結乾燥すると、アンモニウム塩はアンモニアと二酸化炭素、水となり揮発する。塩濃度が低すぎるとタンパク質やペプチドの非特異的吸着を抑制する効果が小さく、また塩濃度が高すぎると、いわゆる塩析効果でタンパクが凝集してしまうばかりか、揮発性塩といえども揮発しにくくなる。従って、塩濃度が50mmol/l以上、300mmol/l以下の揮発性塩溶液がさらに好ましい。
【0028】
塩の濃度は、イオンクロマトグラフィーで各成分毎に同定・定量することが可能である。本発明でいう塩の濃度とは、水溶液中に含まれる、タンパク質またはペプチドを除く、全ての塩の濃度を合計した総濃度である。
【0029】
本発明の分画装置および分画方法に用いる塩を含有する水溶液のpHは、分画するタンパク質やペプチドの電気的な性質、すなわち等電点に応じて適宜選択できるが、pHが5以下であったり、10以上であると、タンパク質が変性するため高い性能が得られない場合がある。また、pHが5以下であるとタンパク質が強い正電荷を帯び、一般的に負に帯電している基材表面に吸着しやすくなる場合があるため、5より高く、10より低いことが必要である。とりわけ6以上、9以下であることが最も好ましい。
【0030】
本発明の分画装置および分画方法においては、揮発性塩を含有する水溶液中に有機溶媒が添加されていても良い。有機溶媒を添加することで、分離膜、チューブ等の回路や分画した溶液を回収する容器へタンパク質やペプチドが吸着する現象を著しく抑制することができる。本発明における有機溶媒の濃度は1容量%以上20容量%未満が好ましく、3容量%以上19容量%未満がより好ましい。いっそう好ましくは、5容量%以上18容量%未満である。濃厚なタンパク質やペプチド溶液を有機溶媒を添加した緩衝液で希釈する場合、緩衝液に過剰量の有機溶媒が混入すると、その影響でタンパク質やペプチドが凝集する。さらに、血清タンパク質のプロテオーム解析の前処理用途において本発明の分画装置または分画方法で分離膜として中空糸膜を用いてタンパク質またはペプチド分画を行う場合、有機溶媒が過剰量混入するとタンパク質やペプチドが凝集することがあり、それらは濾過されないため、その結果分画処理液に含まれるタンパク質やペプチドの数が激減する可能性がある。
【0031】
したがって、タンパク質やペプチドが凝集しない程度に有機溶媒を添加する必要があり、そうすることで分離膜(中空糸膜)、回路、回収容器等へタンパク質やペプチドが吸着するのを抑制しつつ、タンパク質やペプチドの回収率を格段に向上させることが可能となる。
【0032】
有機溶媒は水溶性である必要があり、例えばアセトニトリル、ピリジン等の含窒素化合物、1,4−ジオキサン、プロピレンオキシド等の環状エーテル化合物、アセトン、エチルメチルケトン等のケトン化合物、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N’−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−メチル−2−ピロリドンなどのアミド類、スルホラン、ジメチルスルホキシドなどの含硫黄化合物、メタノール、エタノール、2−プロパノール等の一価アルコール類、2−メトキシエタノール(メチルセロソルブ)、2−エトキシエタノール(エチルセロゾルブ)などのセロソルブ類、2−アミノエタノール(モノエタノールアミン)、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のエタノールアミン類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリンなどの多価アルコール類が利用できるが、このうち非アルコール系の有機溶媒を用いることがより好ましい。また、揮発性塩溶液中に含まれる有機溶媒は1種類でもよく、2種類以上でもよい。有機溶媒の沸点は100℃以下が好ましく、80℃以下がより好ましい。いっそう好ましくは60℃以下である。沸点が低いほど、凍結乾燥やエバポレーターによる溶媒除去が容易であり、さらには溶媒除去時に低温で操作できればタンパク質やペプチドの変性を最小限に抑えることができるため好ましい。
【0033】
移動相の水溶液には、界面活性剤、乳化剤、有機溶媒、アルコール、エチレングルコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレンイミン、アミノメチルピリジン、硫酸プロタミン、硫酸アンモニウム、ポリフェノール、ブルー色素、カオトロピック塩および疎水性化合物からなる群より1種類以上選択される物質を含むことにより、高分子成分のタンパク質の凝集による巨大分子化を促進し、吸着の促進や分離膜からの漏出を抑制し、高分子成分を効率的にカットオフし最終的な分離性能を向上させることができる。界面活性剤(両性界面活性剤や陰イオン性海面活性剤等)はタンパク質間の相互作用を抑制する効果があり、分子分画を効率的に行うことができる。
【0034】
本発明の分画装置および分画方法においては、分離膜を内蔵したモジュールを用いることが好ましい。ここでいうモジュールとは、タンパク質またはペプチドを含む水溶液が分離膜に接触し、分離膜を透過した濾液を回収できるように、分離膜と液体が流れる流路とが固定・設置された濾過器のことである。モジュールには分離される溶液が流入する入口および流出する出口と分離された濾液が流出する分離液流出口が備えられていることが好ましい。
【0035】
ここでモジュールに充填する分離膜は、充填した際に脱離が起きないこと、また充填物由来の溶出物がないようにすることが好ましい。
【0036】
分離膜としては、中空糸膜や平膜を用いることができるが、処理量が高く、圧力損失が小さいという理由で中空糸膜がより好ましく用いられる。分離膜の原液側には原液入口と原液出口を有し、また分離膜の濾過側には濾過成分出口を有していることが好ましい。原液入口と原液出口とはチューブなどにより流路を構成し、その流路に対して送液ポンプが設置設けられ、ポンプによって被処理液がモジュール内の分離膜の原液側を循環する構造になっていることが好ましい。それにより、クロスフロー濾過方式が達成され、被処理液は濾過操作が繰り返し行われることになる。濾過成分出口からは、分離の目的としない溶媒や極めて低分子量の成分が出てくる。好ましい流速は0.1〜20mL/minで搬送が行われ、さらに好ましくは0.2〜10mL/minで行われる。
【0037】
本発明の方法でタンパク質溶液を処理する場合、モジュールを多段組み合わせて使用することも好ましい。そうすることで、1本のモジュールで除去しきれなかった高分子量タンパク質を次の段のモジュールで除去することができ、分画処理後試料から得られる分析データーのS/N比を向上させることが可能となる。これらのモジュールは直列に接続されていてもよく、並列に接続されていてもよい。
【0038】
分離膜の分画分子量は、回収対象となるタンパク質やペプチドの分子量に応じて選択することが好ましい。ここでいう分画分子量とは、分離膜の性能を評価するために用いられる指標であり、その分離膜を用いて濾過を行ったときに、見かけの阻止率が0.9となる溶液中の溶質の分子量で表される。分離膜には孔径の分布があり、実際は分画分子量より大きな分子が通過できる場合が多いため、使用する分離膜の分画分子量は、回収対象となるタンパク質群の中で最も小さい分子量の1/2〜1/4であることが好ましい。分離膜の分画分子量が大きすぎると回収対象となるタンパク質が漏洩し、回収率が低下する原因となることがあり、逆に小さすぎると透過性能が低くなり圧力上昇や処理速度低下の原因となることがある。分離膜の分子分画性能に関しては、生理的食塩水中でアルブミンを50%以上通過させない程度の分子分画能(カットオフ値:30kDa以上、60kDa以下)が通常用いられる。
【0039】
本発明の分画装置または分画方法は、タンパク質やペプチドを含有した水溶液から水を除去して溶質を濃縮する場合にも使用できる。濃縮においても濾過器を用いることが好ましい。濾過器に使用できる分離膜の分子量分画性能に関しては、生理的食塩水中でペプチドを通過させない程度の分子量分画能(カットオフ値:0.05kDa、0.5kDa以下)を有する分離膜か限外ろ過膜を用いる。濃縮部においては、中空糸膜または平膜などの分離膜を備えた濃縮モジュールを有することが好ましい。濾過器においても、分離膜を内蔵したモジュールを使用することが好ましい。濃縮モジュールに用いる分離膜としては、前述と同様に処理量が高く、圧力損失が小さいという理由で中空糸膜がより好ましく用いられる。また濃縮モジュールにおいても、分離膜の原液側には原液入口と原液出口を有し、また分離膜の濾過側には濾過成分出口を有していることが好ましい。原液入口と原液出口とはチューブなどにより流路を構成し、その流路に対して送液ポンプが設置設けられ、ポンプによって被処理液がモジュール内の分離膜の原液側を循環する構造になっていることが好ましい。それにより被処理液は濾過操作が繰り返し行われることになる。濾過成分出口からは、分離の目的としない溶媒や極めて低分子量の成分が出てくる。
【0040】
本発明の分画装置または分画方法に使われる分離膜の素材は特に限定しないが、セルロース、セルローストリアセテート等のセルロースアセテート系ポリマー、ポリカーボネート、ポリスルホンやポリエーテルスルホンなどのポリスルホン系ポリマー、ポリメチルメタクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリアミド、ナイロン、ポリ弗化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリエステル、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリエチレンおよびポリプロピレンからなる群より1種類以上選択される素材を含むフィルターあるいは中空糸を用いることにより一層効率的に目的とする溶質成分を分離することができる。平面フィルター、カートリッジ式フィルター等の平膜型分離膜(フィルター)、中空糸等の中空状分離膜(中空糸)のいずれも用いることができる。とりわけ、処理液量あたりの表面積が大きく、操作上の圧損が少ないという理由で特に中空糸膜が好ましく用いられる。分離膜構造に関しては、均一構造に近いスポンジ構造を有するものや、緻密層と、空隙率が高く膜強度を維持する支持層の非対称構造からなるもののいずれも用いることができる。分離膜の表面の性質は分離するタンパク質やペプチドの性質によって選ばれ、親水性であっても疎水性であっても良い。
【0041】
親水性膜では、親水性の単量体と疎水性の単量体を共重合させたものや、親水性の高分子と疎水性の高分子をブレンド製膜したもの、あるいは疎水性の高分子からなる膜の表面に親水性ポリマーを結合、付着させたもの、疎水性の高分子からなる膜の表面を化学処理、プラズマ処理、放射線処理したものなどがあげられるが、親水化されていればその方法は特に限定されない。親水性成分は特に限定しないが、ポリエチレングリコールなどのポリアルキレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリアクリルアミドなどの親水性高分子が好ましい。これらの親水性膜は必要とするタンパク質の吸着を抑え、無駄なく回収する効果がある。
【0042】
さらには、ポリエチレンイミン、アミノメチルピリジン、ポリフェノール、ブルー色素、2価金属イオン(Zn2+, Ni2+, Co2+, Cu2+等)、疎水性化合物(メチル基、ベンジル基、フェニル基、クロロメチル基、オクチル基、ラウリル基等)、抗体およびそのフラグメントなどのうち、少なくともいずれかひとつ以上を固定化した素材を用いることもできる。
【0043】
本発明の分画装置および分画方法は生体成分を含有する原液、特にヒトの血漿、血清、尿、唾液、涙液、脳脊髄液、腹水、胸水、羊水、リンパ液等の体液の生体分子の分画および/または濃縮に適する。上記の各フィルターならびに中空糸膜モジュールのサイズならびに還流液の流速それぞれは、原料とする血漿や尿等の生体材料の質と量に依存して適宜決められる。
【0044】
本発明の分画装置および分画方法に対し、生体成分を含有する原液を投入し、運転することにより最終的には回収部に得られた試料は、液体クロマトグラフ、電気泳動、MS等の各種のタンパク質分析に有用であるが、特に好ましくは電気泳動やMSを用いたプロテオーム解析に有用である。
【0045】
本発明の分画装置および分画方法で得られた試料を適用できるMSは特に限定されないが、イオン化部分として、電子スプレーイオン化型、大気圧イオン化型、高速原子衝突型、四重極型、サイクロトロン共鳴型、磁気セクター型、マトリックス支援レーザー破壊イオン化型などが、イオン補足型、飛行時間型、フーリエ変換型などの質量分析部と適宜組み合わせて用いられる。この場合、MS/MS、MSなどのタンデムMSやFT-MSとして用いることもできる。タンデムMSの場合は、全てのタイプのMSが適用可能であるが、特にイオン捕捉型、四重極−飛行時間(Q-TOF)型、FT-MSなどの組合せで使用することが効率がよい。
【0046】
本発明の分画装置および分画方法との組み合わせによる分析により、各種微量タンパク質成分の構造情報を集めることができるが、それらはペプチド・マスフィンガープリント(peptide-mass fingerprint: PMF)のみならず、各ペプチドの一次構造情報(アミノ酸配列)も含まれる。
【実施例】
【0047】
図1は、本発明の分画装置を説明する図である。図1は分離部が3つのモジュールによって構成されていることを示す。
【0048】
図1を参照されたい。供給部に相当するゴムボタン2bに対して3方継手2aと継手2cが接続されている。フレキシブルなチューブ3が継手2cと分離部中空糸膜モジュール5aの下ノズル6aを多チャンネル式圧搾部材8の曲面に這うようにして接続されている。更に、3方継手2aにチューブ付きバック12が接続されている。圧搾部材各分離部中空糸膜モジュール5a、5b、5cおよび濃縮部中空糸膜モジュール5dの各上端に備えた各上ノズル4a、4b、4c、4dにはフレキシブルなチューブが接続されている。これらのチューブは、多チャンネル式の圧搾部材8の曲面に這うようにして配設され下ノズル6a、6b、6c、6dに各々接続されている。分離部中空糸膜モジュール5aの胴体下ノズル7aと分離部中空糸膜モジュール5bの下ノズル6bとの間に、また分離部中空糸膜モジュール5bの胴体下ノズル7bと分離部中空糸膜モジュール5cの下ノズル6cとの間に、また分離部中空糸膜モジュール5cの胴体下ノズル7cと濃縮部中空糸膜モジュール5dの下ノズル6dとの間に各々チューブが接続されている。濃縮部中空糸膜モジュール5dの胴体下ノズル7dと3方継手2aとがチューブで接続されている。更に濃縮部中空糸膜モジュール5dの下ノズル6dと回収容器10の上部にある回収容器キャップ11とがチューブで接続されている。濃縮部中空糸膜モジュール5dの上ノズル4dと回収容器キャップ11とも接続されている。
【0049】
分画にあたってはこの閉鎖回路内には移動相として揮発性塩の水溶液が充填される。
【0050】
液の流れを矢印で示してある。タンパク質やペプチドを含む原液を封入したシリンジ1の針を供給部のゴムボタン2bに刺した後、検体はシリンジポンプによって予定の速度で投入された。投入後シリンジ1はゴムボタン2bからはずされた。投入された原液は移動相と混じり合いながら、モーターによって駆動される回転ローラー9aの回転によって搬送されながら分離部中空糸膜モジュール5aに送液された。モーターによって駆動される回転ローラー9bの回転によって分離部中空糸膜モジュール5aを循環する間に生成した濾液は胴体下ノズル7aから出て、後段の分離部中空糸膜モジュール5bに回転ローラー9bの回転によって搬送された。分離部中空糸膜モジュール5bの濾液は、更に後段の分離部中空糸膜モジュール5cに搬送された。
【0051】
このように原液の溶質は、分離部を構成する分離部中空糸膜モジュール5a、5b、5cで分画された。分離部中空糸膜モジュール5cからの濾液は、濃縮部中空糸膜モジュール5dに搬送された。濃縮部中空糸膜モジュール5dを循環する間に生成した濾液は胴体下ノズル7dから出て3方継手2aを介して供給部に返送された。分離部と濃縮部における液の循環と送液は回転ローラー9bによって行われた。指定された時間が経過した後、回転ローラー9a、9bは停止し、モーターによって駆動される回転ローラー9cが始動した。これにより回収容器10内にある空気が濃縮部内の回路にある濃縮液を押し出し、濃縮液は下ノズル6dを通り回収容器10に回収された。
【0052】
(実施例1)
ヒトIL-8を添加したヒト健常血清(SIGMA;カタログ番号H1383)を100mmol/l炭酸水素アンモニウム(和光純薬)水溶液(pH8.2)で4倍に希釈し、そのうちの4mLをシリンジに採取して上記装置に投入し、下記条件で運転して分画処理を行った。
【0053】
濾過流量:0.6mL/分
各モジュール循環回路の循環流量:3mL/分
シリンジ送り流量:0.48mL/分
処理時間:1時間
温度:25℃
分画処理する前の希釈血清と、分画処理して得られた回収溶液中のアルブミン、β2-ミクログロブリン、IL-8の濃度を下記の市販ELISAキットで定量し、4mLの希釈血清中に存在するアルブミン、β2-ミクログロブリン、IL-8全体の何%が回収液中に回収できるかを示す回収率をそれぞれのタンパク質について算出した。結果を表1に示す。
【0054】
アルブミン:Human Albumin ELISA Quantitation Kit (BETHYL)
β2-ミクログロブリン:グラザイムβ2-Microglobulin-EIA TEST(和光純薬工業)
IL-8:human IL-8 ELISA(PIERCE)
(実施例2)
150mmol/l炭酸水素アンモニウム水溶液(pH8.2)を使用する以外は全て実施例1同様に分画処理、定量操作を行った。結果を表1に示す。
【0055】
(実施例3)
300mmol/l炭酸水素アンモニウム水溶液(pH8.2)を使用する以外は全て 実施例1同様に分画処理、定量操作を行った。結果を表1に示す。
【0056】
(実施例4)
リン酸緩衝生理食塩水(PBS(−):日水)(塩濃度150mmol/l、pH7.4)を使用する以外は全て実施例1同様に分画処理、定量操作を行った。結果を表1に示す。
【0057】
(実施例5)
塩酸でpHを6.0に調整した300mmol/l炭酸水素アンモニウム水溶液を使用する以外は全て 実施例1同様に分画処理、定量操作を行った。結果を表1に示す。
【0058】
(実施例6)
塩酸でpHを7.0に調整した300mmol/l炭酸水素アンモニウム水溶液を使用する以外は全て 実施例1同様に分画処理、定量操作を行った。結果を表1に示す。
【0059】
(実施例7)
塩酸でpHを8.0に調整した300mmol/l炭酸水素アンモニウム水溶液を使用する以外は全て 実施例1同様に分画処理、定量操作を行った。結果を表1に示す。
【0060】
(実施例8)
水酸化ナトリウムでpHを9.0に調整した300mmol/l炭酸水素アンモニウム水溶液を使用する以外は全て 実施例1同様に分画処理、定量操作を行った。結果を表1に示す。
【0061】
(実施例9)
塩酸でpHを6.0に調整した300mmol/l炭酸水素アンモニウム水溶液を使用する以外は全て 実施例1同様に分画処理、定量操作を行った。結果を表1に示す。
【0062】
(比較例1)
25mmol/l炭酸水素アンモニウム水溶液(pH8.2)を使用する以外は全て実施例1同様に分画処理、定量操作を行った。結果を表1に示す。
【0063】
(比較例2)
塩酸でpHを4.0に調整した300mmol/l炭酸水素アンモニウム水溶液を使用する以外は全て 実施例1同様に分画処理、定量操作を行った。結果を表1に示す。
【0064】
(比較例3)
塩酸でpHを5.0に調整した300mmol/l炭酸水素アンモニウム水溶液を使用する以外は全て 実施例1同様に分画処理、定量操作を行った。結果を表1に示す。
【0065】
表1に示したように、塩濃度が100mmol/L以上のときに、アルブミンを高率に除去しつつ、β2-ミクログロブリンとIL-8が非常に高い回収率で回収できた。リン酸緩衝溶液を用いた場合は、凍結乾燥したときに塩が析出した。また、pH6以上、9以下の範囲でアルブミンを高率に除去しつつ、β2-ミクログロブリンを非常に高い回収率で回収できた。
【0066】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0067】
これら発明は、プロテオーム解析を行う際の試料の作成において非常に有用なものであり、医学、特にヒトの病気の発見に大いに利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】図1は実施例に使用した装置の斜視図である
【符号の説明】
【0069】
1 シリンジ
2a 3方継手
2b ゴムボタン(供給部)
2c 継手
5a、5b、5c 分離部中空糸膜モジュール
5d 濃縮部中空糸膜モジュール
6a、6b、6c、6d 下ノズル
7a、7b、7c、7d 胴体下ノズル
8 圧搾部材
8a、8b ガイド軸
9 多チャンネル式回転ローラー
9a、9b、9c 回転ローラー
10 回収容器
11 回収容器キャップ
12 チューブ付きバック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の種類のタンパク質またはペプチドを含有する水溶液を分離膜に接触させて処理し、この処理によって得られた濾液を、更に孔径の小さい分離膜に接触させて、タンパク質またはペプチドに対し分画および/または濃縮を行う分画方法であって、複数の種類のタンパク質またはペプチドを含有する水溶液が、濃度50mmol/l以上、500mmol/l以下の塩を含有し、該水溶液のpHが5より高く、10より低いことを特徴とする分画方法。
【請求項2】
塩が揮発性である請求項1に記載の分画方法。
【請求項3】
揮発性の塩が重炭酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、ギ酸アンモニウムまたは酢酸アンモニウム、塩化アンモニウムから選ばれる請求項2に記載の分画方法。
【請求項4】
複数の種類のタンパク質またはペプチドを含有する水溶液をクロスフロー濾過方式で分離膜に接触させる請求項1〜3のいずれかに記載の分画方法。
【請求項5】
分離膜が中空糸膜である請求項1〜4のいずれかに記載の分画方法。
【請求項6】
中空糸膜がセルロース、セルロースアセテート、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリメチルメタクリレート、ポリメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリアクリレート、ポリアミド、ナイロン、ポリ弗化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリエステル、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリエチレンおよびポリプロピレンからなることを特徴とする請求項5に記載の分画方法。
【請求項7】
体液を含む水溶液を処理するための請求項1〜6のいずれかに記載の分画方法。
【請求項8】
請求項1記載の分画方法を行うことを特徴とする分画装置。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2007−16016(P2007−16016A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−154362(P2006−154362)
【出願日】平成18年6月2日(2006.6.2)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】