説明

分級機

【課題】生産性を低下させずに、原料粉体の微粉を除去できる分級機を提供する。
【解決手段】1つのケーシング内に、複数の分級羽根を有する分級ロータが同軸上に複数個配置され、前記分級ロータの外周部に所定の間隔をもって気体導入口に連通する複数の案内羽根を設けて環状の分級空間を形成し、前記案内羽根環を通じて供給された気体とともに微粉を前記分級ロータ内部に流入させ、粗粉を前記案内羽根の下方に設けた粗粉貯留室に流入させて排出する構成の分級機において、互いに隣接する各分級ロータ間の前記分級空間に、前記案内羽根環の内径よりも小径の開口を有する環状の突起部を内面全周にわたって設けることで、前記分級空間における粉体の滞留を調節し、かつ、粉体の流れを分級ロータ近傍へと導き、微粉を効率的に取り除くことで分級精度を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉体を微粉と粗粉とに分別する分級機に関するものであり、更に詳しくは、所定の粒径よりも小さい微粉を除去して所定の粒径範囲の製品を得るものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、粉体を微粉と粗粉に分別する分級手段として、円筒状のケーシング内において、垂直方向に延びる中心軸周りに回転する円筒状の分級ロータによって粉体に遠心力を付与し、分級ロータの周囲に形成された分級空間に原料粉体を供給するとともに、分級ロータの半径方向外側から内側に向けて気体を流し、微粉のみを気体とともに分級ロータ内部に搬送し、粗粉を下方排出口より排出して分別するようにした鉛直軸式の分級機が、トナーや粉体塗料等の製造分野で使用されている。例えば、トナーの製造工程においては、近年、高速印字と高解像度を実現するため、平均粒径が5μm〜7μmで、かつ、4μm以下の微粉のないトナーが求められている。
【0003】
このような分級においては、効率よく微粉を除去するため、分級機内における原料粉体の分散を強めるほか、滞留時間を長くしたり、あるいは短くしたりして分級ロータ周辺を旋回する粉体の滞留量を最適に調節することが有効な方法である。
このような分級機として、例えば、前記分級空間における粉体の分散状態が分級精度や製品収率に大きく影響することから、ひとつのケーシング内に回転軸方向を同じくする複数の分級ロータを備えることで、分級空間における分散性を向上させた特許文献1記載のタンデム型の分級機も知られている。
【0004】
そして、前記特許文献においては、分散性を向上させるために、分級ロータの外周面の外側に気体導入口に連通する複数の案内羽根をスリット状の隙間をあけて設け、このスリット状の隙間から分級空間内に気体を流入させることで、分級ロータ周辺の原料粉体を分散させるようにしている。また、前記案内羽根の内周部に螺旋状部材を設け、螺旋状部材に沿って原料粉体が確実に排出されることによって、原料粉体の滞留時間を調節する装置が報告されている。
【0005】
しかしながら、上記分級機においても、原料投入口から投入される原料粉体が多くなると粗粉(製品)中への4μm以下の微粉の混入が増えてしまう。一方、粗粉(製品)中への4μm以下の微粉を減少させるため、分級ロータの回転速度を低下させると、製品となるべき粒径のものが、微粉とともに排出されることになり、その結果、粗粉(製品)収率が低下することとなる。このように、いずれの場合においても生産性という点では十分ではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−157934号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記課題に鑑み、生産性を低下させることなく、かつ、粗粉(製品)中への微粉の混入を防止することができる分級機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の特徴は、1つのケーシング内に、複数の分級羽根を有する分級ロータが同軸上に複数個配置され、前記各分級ロータの外周部に所定の間隔をもって気体導入口に連通する複数の案内羽根からなる案内羽根環を設けて環状の分級空間を形成し、前記案内羽根環を通じて供給された気体とともに微粉を前記各分級ロータ内部に流入させ、粗粉を前記案内羽根環の下方に設けた粗粉貯留室に流入させて排出する構成の分級機において、互いに隣接する前記各分級ロータ間の前記分級空間に、前記案内羽根環の内面よりも小径の開口を有する環状の突起部を内面全周にわたって設けたことを特徴とする。
【0009】
前記分級空間に小径の開口を有する環状の突起部を設けることにより、粉体は上部分級空間から下部分級空間へとそのまま移動できず、前記突起部によって一旦堰き止められ、その後、突起部に沿ってその開口より下方に連接された分級ロータの外周部の分級空間へと導かれる。そのため、分級空間における粉体の滞留時間を長くすることができる。そして、突起部を通過するときに粉体は突起部に沿って中心側に引き寄せられて、次の分級ロータ近傍を通過することになる。その結果、粉体は分級ロータの分級羽根との衝突により凝集がほぐされて分散されるため、粗粉中の微粉は分級ロータ内へと流入し易くなり、分級精度が向上する。
【0010】
また、前記突起部を設けたことによって、前記突起部と前記分級ロータとの間には狭い隙間が生じる。そのため、その隙間を流れる気体流の速度は速くなっている。さらに、前記分級ロータの回転によって生じる旋回気流により、上部分級空間から下部分級空間へと移動する粉体は、その隙間を通る際に、旋回気流によっても凝集がほぐされて分散性が向上し、効率的に微粉が除去され分級精度が向上する。
【0011】
本発明の第2の特徴は、前記環状の突起部を案内羽根環の内面に形成したことを特徴とする。
【0012】
前記環状の突起部を案内羽根環の内面に形成することで、粉体を確実に堰き止めることができる。すなわち、粉体は案内羽根環の内面を旋回しながら上部分級空間から下部分級空間へと移動していくため、案内羽根環の内面に突起部を形成することで、粉体は前記突起部で一旦堰き止められた後、前記突起部に沿って前記分級ロータ近傍へと移動することになるため、前記分級羽根との衝突によって分散と分級の両作用を受けることになる。
【0013】
本発明の第3の特徴は、前記環状の突起部を、前記案内羽根環の内径よりも小径の開口を有する円板を各分級ロータと対応する各案内羽根環の間で挟持させて形成したことを特徴とする。
【0014】
前記環状の突起部を円板で構成することで、当該突起部の製作が容易であるほか、原料毎又は運転条件毎に突起部の開口径を変える場合にも、開口径の異なる円板に取り替えることで、容易に突起部の開口径を変更することができる。
【0015】
本発明の第4の特徴は、前記環状の突起部の開口が、分級ロータの外径よりも小径であることを特徴とする。
【0016】
前記環状の突起部の開口を分級ロータの外径よりも小径にすることで、上部分級空間と下部分級空間とをより確実に区画して、上部分級空間における粉体の滞留を良好に調節することができる。また、粉体が上部分級空間から下部分級空間へと移動する際には、より分級ロータ近傍を通過することになり、分級羽根との衝突回数も増えることで凝集がほぐされて分散されるため、粗粉中の微粉は分級ロータ内へと流入し易くなり、分級精度が向上する。
【0017】
本発明の第5の特徴は、さらに前記案内羽根環の内周面に螺旋状部材を取り付けたことを特徴とする。
【0018】
前記案内羽根環の内周面に螺旋状部材を設けることによって、分級空間内の粉体は螺旋状部材に沿って下降していくため、螺旋状部材の傾斜勾配を選択することによって、前記環状の突起部による堰き止め作用とも併せ、粉体の滞留時間や滞留量を効果的に調節することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本実施形態の分級機の縦断面図
【図2】突起部の形成方法の他の実施形態を表す断面図
【図3】突起部の形成方法の他の実施形態を表す断面図
【図4】螺旋状部材の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0020】
本実施形態を以下に示す。
図1に示す分級機では、ヒンジ28を介して上下に開く旋回可能な上部及び下部ケーシング1a、1bから成っており、この上部ケーシング1aと下部ケーシング1bの内部には、それぞれに分級ロータ2が収容されている。同図では両ケーシング1a、1bが閉じた状態を示している。
【0021】
下部ケーシング1b内には分級ロータ2の下部に同軸中に結合された排出ロータ4と、排出ロータ4を軸支し分級ロータ2および排出ロータ4を回転させる駆動軸3とが設けられ、分級ロータ2の外周側には分級ロータ2と間隔をおいて環状に配置された複数の案内羽根を有する案内羽根環5が備えられている。上部ケーシング1a内の分級ロータ2は、下部ケーシング1bの分級ロータ2を上下反転させたもので、両者は同軸上に対称的に配置されている。
【0022】
下部ケーシング1b内の分級ロータ2の駆動は駆動モータ29によって行われ、この駆動モータ29は駆動軸3を介して分級ロータ2と接続されている。同様に、上部ケーシング1a内の分級ロータ2の駆動は駆動モータ29によって行われ、この駆動モータ29は駆動軸3を介して分級ロータ2と接続されている。
【0023】
分級ロータ2は、片持ち支持されており、上部円板6と、この上部円板6に対して間隔をおいて配置された下部円板7と、上部円板6と下部円板7との間を連結し、これら円板6と7の外周側に放射状に配置された複数の分級羽根8とから形成されている。各分級ロータ2には駆動軸3、微粉貯留室17が、それぞれ対称的に配置されている。
【0024】
分級羽根8は、分級ロータ2の外周面に沿って放射状に等間隔をもって環状に配列され、その横断面の形状及び向きは、公知の分級羽根の形態の中から任意に選択することができ、互いに隣接する二つの分級羽根8間に形成されるスリット状の隙間が、気体の流れに適した形状となるように設計されている。
【0025】
排出ロータ4は、前記下部円板7と開口を同じくする環状の天板9と、この天板9に対して間隔をおいて配置された円形の底板10と、天板9と底板10の間を連結する複数のブレード11を、互いに隣接するブレード11同士の間隔を設けて放射状に等間隔で配置させている。底板10には駆動軸3が連結され、排出ロータ4および分級ロータ2を回転自在に軸支させている。なお、排出ロータ4は分級ロータ2を回転支持する部材としての機能も兼ねるもので、ブレード11は、その材質、幅、厚さ、長さ等において支持部材として十分な強度を有するもので構成されている。
【0026】
ここで、分級ロータ2と排出ロータ4とは、分級ロータ2の下部円板7に形成された開口13によって連通している。開口13の径を排出ロータ4の内径よりも小さくすることで、分級ロータ2内の気体が排出ロータ4内に流入しにくくなり、分級ロータ2内に流入しようとする気体の流れが抑制されることで、粗粉が分級ロータ2内部に入り込みにくくなる。また、開口13の径を小さくすることで、排出ロータ4内に流入する気体が加速され、排出ロータ4内の微粉の排出も促進される。
【0027】
案内羽根環5は複数の案内羽根が垂直方向にのびる状態で分級ロータ2の外周面に沿って等間隔に配置され、各案内羽根同士の隙間の方向が、例えば分級空間14a、14b内を旋回流動する粉体に対する分散効果を高めるため、分級ロータ2の外周面に向けて接線方向に配置している。なお、案内羽根の枚数や形状、案内羽根同士の間隔は適宜変えることができ、それらを調節することで、案内羽根を通過する空気の通過速度を変化させ、その結果、分級時の粉体の分散性を良好な状態にすることができる。
【0028】
案内羽根環5の外周部には、案内羽根環5を通して分級空間14a、14bに分級用空気を供給するための気体導入室16が設けられている。この気体導入室16は、案内羽根環5の外側のケーシング1に案内羽根環5に対して同軸上に形成されており、この気体導入室16には気体導入口19が設けられている。
【0029】
上部ケーシング1aに設けられた原料供給口12から原料粉体が上部分級空間14aへ供給され、上部分級空間14aへ供給された粉体は、分級ロータ2の外周部に配置された案内羽根環5から流入する気体と、分級ロータ2の回転とによって形成される遠心力により、粗粉と微粉とに分級される。
【0030】
上部ケーシング1a内の案内羽根環5と下部ケーシング1b内の案内羽根環5との間には、中央部に円形の開口を有する円板26が取り付けられており、この円板26の開口は、案内羽根環5の内径よりも小さくなっている。この円板26によって、隣接する分級空間14a、14b間に突起部が形成されることになる。ここで、円板26の開口が案内羽根環5の内径よりも小さくなっているため、分級羽根8によってはじかれた粉体は、そのまま案内羽根環5の内周面に沿って上部分級空間14aから下部分級空間14bへと移動していくことができず、上部ケーシング1a内の案内羽根環5の内周面に沿って下降した後、粉体は円板26によって一旦堰き止められる。つまり、円板26を取り付けることによって、円板26が上部分級空間14aと下部分級空間14bとを隔てる仕切板となり、滞留時間を調節することができる。粉体の分級空間における滞留時間の調節は、円板26の開口の大きさを変えることで可能となる。すなわち、この開口を小さくすれば滞留時間は長くなり、逆に大きくすれば滞留時間は短くなる。
【0031】
また、一旦堰き止められた粉体は、その後突起部に沿って下部ケーシング1b内の分級空間14bへと導かれることになるが、この突起部を通過するときに粉体は突起部に沿って中心側に引き寄せられて、分級ロータ2近傍を通過することになり、分級ロータ2の分級羽根8と衝突し易くなる。そして、分級羽根8と衝突した粉体は、凝集がほぐされて分散性が良好になり、微粉は分級ロータ2内へと流入し易くなるため、分級精度が向上する。
【0032】
上部ケーシング1a及び下部ケーシング1b内の分級ロータ2はそれぞれ同じ回転速度で運転してもよいが、異なる回転速度で運転してもよい。従来は、各分級空間での粉体の滞留時間を調節することが困難であったため、各分級ロータ2をそれぞれ異なる回転速度で運転した場合には、各分級空間で十分な分級が行われず、その結果、各分級ロータの回転速度に応じた粒度の異なる製品を得ることは難しかった。しかしながら、上述したように、円板26を設けることによって、上部の分級空間14aと下部の分級空間14bとを区画することができる。その結果、各分級ロータ2において所定の回転速度に応じた粒径の製品を得ることができるようになる。例えば、上部ケーシング1a内の分級ロータ2の回転速度を下部ケーシング1b内の分級ロータ2の回転速度よりも速くして運転を行った場合、上部ケーシング1a内の分級ロータ2内へと流入した粉体は微粉となり、下部ケーシング1b内の分級ロータ2内へと流入した粉体は微粉と粗粉の間の粒度をもつ中間粉となり、下部ケーシング1b内の分級ロータ2によってはじかれた粉体は、粗粉として粗粉排出口21より排出される。
【0033】
また、前記円板26を取り付けたことによって、前記円板26と前記分級ロータ2との間には狭い隙間が生じ、その結果、その隙間を流れる気体流の速度は速くなっている。さらに、前記分級ロータ2の回転によって生じる旋回気流により、上部分級空間14aから下部分級空間14bへと移動する粉体は、その隙間を通過する際にも、旋回気流により凝集がほぐされ分散性が向上し、その結果、微粉が除去され分級精度が向上する。
【0034】
なお、本実施形態では円板26を上部ケーシング1a及び下部ケーシング1b内の案内羽根環5との間に取り付けることで突起部を形成しているが、別の実施態様として、例えば図2乃至3に示すように、円板26を取り付ける代わりに、上部ケーシング1a内の案内羽根環5の下端部もしくは下部ケーシング1b内の案内羽根環5の上端部のどちらか一方の内周面に直接環状の突起27a又は27bを形成してもよい。
【0035】
また、開口の大きさは特に限定されるものではないが、粉体が移動するのに十分な大きさが必要である。開口が小さすぎると、粉体が上部分級空間14aから下部分級空間14bへの移動が難しくなるため、上部分級空間14aでの滞留量が増え、その結果、粉体の分散性が低下し微粉が凝集したまま粗粉中に混入したり、あるいは滞留量増加によって分級空間14aにおける粉体濃度が高くなり過ぎて粗粉が微粉中に流入し易くなるなど、分級精度に悪影響を及ぼすおそれがでてくる。
【0036】
また、分級空間14a、14bにおける粉体の滞留時間を調節する手段として、当該分級空間14a、14bに、図4に示す螺旋状部材15を設けることも有効である。
【0037】
前記螺旋状部材15は帯状部材を螺旋状に加工し形成したもので、案内羽根環5の内周面に固定され、分級空間14a、14bの高さ方向にほぼ全長にわたって延びている。螺旋状部材15の内周面と分級ロータ2の外周面との間には、接触しない程度の微小な隙間が形成されている。
【0038】
この分級空間14a、14bに螺旋状部材15を設け、その傾斜勾配を適切に選択することによって、分級空間14a、14bでの粉体の滞留時間を調節することができる。すなわち、勾配を大きくすると滞留時間が短くなり、勾配を小さくすると滞留時間が長くなる。
【0039】
螺旋状部材15は複数枚の帯状部材で構成してもよく、その場合には複数枚を円周方向に間隔をずらせて取り付けることで、案内羽根環5の内周面に略全周にわたって螺旋状部材15を付設させることができ、かつ所望の勾配形成への選択を広げることができる。なお、螺旋状部材15は必ずしも分級羽根8の高さ方向の全長にわたって延びている必要はなく、分級羽根8の高さ方向の一部の区画領域にのみ設けるようにしてもよいが、前記突起部を設けたときには、突起部周辺で粉体の滞留が増え過ぎるのを抑制するためにも、その下端は突起部面まで延長されていることが好ましい。また、螺旋状部材15は案内羽根環5に直接取り付けて一体化させてもよい。
【0040】
上部ケーシング1aの内部には、分級ロータ2によって選別された微粉と粗粉を排出するための通路が形成されている。微粉は、分級ロータ2の内部に流入し、排出ロータ4の外周部に設けた環状の微粉貯留室17を経て微粉排出口20より排出される。
【0041】
上部分級空間14aより下部分級空間14bへと送られた粉体は、分級ロータ2によって微粉と粗粉とに分級され、微粉は分級ロータ2の内部に流入し、排出ロータ4の外周部に設けた環状の微粉貯留室17に送られ微粉排出口20より排出される。また粗粉は、下部分級空間14bの下方に連通して配置された環状の粗粉貯留室18に送られ粗粉排出口21より排出される。
【0042】
下部円板7の下面と下部ケーシング1bの間にはシール部22が設けられている。このシール部22に通路25より加圧気体を送り込むことで、微粉貯留室17および粗粉貯留室18に対して微粉の漏れ込みや粗粉が漏れ出るのを阻止すべくエアシールしている。この加圧気体をリンシングエアと呼び、シール部22からそれぞれ微粉貯留室17および粗粉貯留室18に流出するようになっている。
【0043】
粗粉貯留室18内部にはセントリフューガルリングと呼ばれる断面L字型の環状円盤23が設けられている。この環状円盤23は、粗粉貯留室18の内側側面及び底面に沿った形状に形成されており、その上端が分級ロータ2の下部円板7に取り付けられ、分級ロータ2と一体的に回転する。環状円盤23と粗粉貯留室18の内側側面及び底面との隙間は、前記リンシングエアの通路となる。これによって、通路25から粗粉貯留室18に入って来るリンシングエアは、粗粉貯留室18の内側側面及び底面とこの環状円盤23下方の通路を抜けて粗粉貯留室18内に流出する。
【0044】
また、この環状円盤23の上面には、複数の排出羽根24が配置されている。排出羽根24が分級ロータ2と一体的に回転することによって、粗粉貯留室18内で粗粉に強い遠心力を付与することができ、粗粉貯留室18内及び粗粉排出口21周辺での詰まりや滞留を防止し、粗粉を速やかに分級機外へ排出させることができる。
【0045】
こうして、粗粉貯留室18内部の粗粉は環状円盤23によって遠心方向に押し出されたところでリンシングエアの流出によって巻き上げられることで流動化され、粗粉同士の凝集や付着が効果的に抑制されて粗粉貯留室18からの排出が円滑に行われる。また、流動化による、凝集塊の解砕、粗粉中に混在している微粉と粗粉の分離によって、粗粉中への微粉の混入を防止して分級精度の向上効果も期待できる。
【0046】
以上の構成において、上部ケーシング1aに設けられた原料供給口12から原料粉体が上部分級空間14aへ供給され、上部分級空間14aへ供給された粉体は、分級ロータ2の外周面に配置された案内羽根環5から流入する気体と、分級ロータ2の回転とによって形成される遠心力により、第一の分級が行われる。微粉は分級ロータ2の内部へと流入し、排出ロータ4から微粉貯留室17を経て、微粉排出口20から排出され、図示省略の公知の捕集機やサイクロン等によって回収される。
【0047】
一方、粗粉は案内羽根環5と分級ロータ2との間の上部分級空間14aに設けられた螺旋状部材15に沿って下方へと移動し、案内羽根環5との間に取り付けられた円板26の開口を通過し、下部分級空間14bへと送られる。
【0048】
下部分級空間14bでも上部分級空間14aと同様にして第二の分級が行われ、微粉は分級ロータ2の内部へと流入し、排出ロータ4から微粉貯留室17を経て、微粉排出口20から排出され、図示省略の公知の捕集機やサイクロンによって回収される。また粗粉は案内羽根環5と分級ロータ2との間の下部分級空間14bに設けられた螺旋状部材15に沿って下方へと移動し、下部分級空間14bの下方に連通して配置された環状の粗粉貯留室18に送られた後、粗粉貯留室18内で環状円盤23とリンシングエアとによって流動化され、排出羽根24によって遠心力を付与されて、粗粉排出口21から外部に排出され回収される。
【実施例】
【0049】
図1に示す分級ロータ2を上下に連設させたタンデム型分級機(200TTSP、ホソカワミクロン株式会社製)を用いて、トナーの分級を行った。上部ケーシング1a及び下部ケーシング1b内には、内径が220mmである案内羽根環5をそれぞれ取り付けた。原料トナーには平均粒径5.1μm(重量基準)、4μm以下の微粉の含有率が65.2%(個数基準)であるカラートナーを使用した。なお、以下の本実施例1、2及び比較例1とも、粗粉が製品となる。
【0050】
(実施例1)
上部ケーシング1a内の案内羽根環5と下部ケーシング1b内の案内羽根環5との間に、開口の直径が200mmである円板26を取り付けた。各分級ロータ2の回転速度はともに5000rpmで運転を行った。また、原料の供給速度は、80kg/hとした。その結果、粗粉収率は53.0%、平均粒径5.9μm(重量基準)、粗粉に含まれる4μm以下の微粉の含有率は6.5%(個数基準)であった。
【0051】
(実施例2)
上部ケーシング1a内の案内羽根環5と下部ケーシング1b内の案内羽根環5との間に、開口の直径が180mmである円板26を取り付けた。それ以外は実施例1と同じ条件で運転を行った。その結果、粗粉収率は57.0%、平均粒径6.1μm(重量基準)、粗粉に含まれる4μm以下の微粉の含有率は4.2%(個数基準)であった。
【0052】
(比較例1)
円板26を取り付けていないタンデム型分級機を用いて、トナー粉体の分級を行った。原料の供給速度は60kg/hとして運転を行った。その結果、粗粉収率は56.0%、平均粒径5.6μm(重量基準)、粗粉に含まれる4μm以下の微粉の含有率は12.5%(個数基準)であった。原料の供給速度が実施例1、2と比べて低いにも関わらず、粗粉中への微粉の混入が多く、分散が不十分で良好な分級結果は得られていない。
【0053】
このように、上部ケーシング1a内の案内羽根環5と下部ケーシング1b内の案内羽根環5との間に、円板26を取り付けることによって、粗粉に含まれる4μm以下の微粉の含有率を大幅に低下させることができた。特に実施例2においては、比較例1と比べて原料の供給速度を上昇させているにも関わらず、粗粉収率が高く、かつ4μm以下の微粉の含有率も低くなった。また、実施例1と実施例2を比較した結果、実施例2の方が粗粉収率が高く、かつ4μm以下の微粉の含有率も低くなった。これは、実施例2において実施例1よりも開口径の小さな円板26を取り付けたことによって、粉体の滞留時間が延びるとともに粉体がより分級ロータ近傍を旋回することになり、その結果、分散と分級の両作用により微粉が減少したものと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の分級機は、特に粗大粒子を排除した後の粉体中の微粉を取り除き、粗粉を製品とするトナーや粉体塗料、鉱物、食品、飼料のほか、各種粉体材料の分級を効率よく行うことができる。
【符号の説明】
【0055】
1a 上部ケーシング
1b 下部ケーシング
2 分級ロータ
3 駆動軸
4 排出ロータ
5 案内羽根環
6 上部円板
7 下部円板
8 分級羽根
9 天板
10 底板
11 ブレード
12 原料供給口
13 開口
14a 上部分級空間
14b 下部分級空間
15 螺旋状部材
16 気体導入室
17 微粉貯留室
18 粗粉貯留室
19 気体導入口
20 微粉排出口
21 粗粉排出口
22 シール部材
23 環状円盤(セントリフューガルリング)
24 排出羽根
25 通路
26 円板(突起部)
27a 突起(突起部)
27b 突起(突起部)
28 ヒンジ
29 駆動モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つのケーシング内に、複数の分級羽根を有する分級ロータが同軸上に複数個配置され、前記各分級ロータの外周部に所定の間隔をもって気体導入口に連通する複数の案内羽根からなる案内羽根環を設けて環状の分級空間を形成し、前記各分級ロータと前記案内羽根環を通じて供給された気体とともに微粉を前記各分級ロータ内部に流入させ、粗粉を前記案内羽根環の下方に設けた粗粉貯留室に流入させて排出する構成の分級機において、互いに隣接する前記各分級ロータ間の前記分級空間に、前記案内羽根環の内径よりも小径の開口を有する環状の突起部を設けたことを特徴とする分級機。
【請求項2】
前記環状の突起部を案内羽根環の内面に形成したことを特徴とする請求項1記載の分級機。
【請求項3】
前記環状の突起部を、前記案内羽根環の内径よりも小径の開口を有する円板を、各分級ロータと対応する各案内羽根環の間で挟持させて形成したことを特徴とする請求項1記載の分級機。
【請求項4】
前記環状の突起部の開口は、分級ロータの外径よりも小径であることを特徴とする前記請求項1乃至3いずれか一項に記載の分級機。
【請求項5】
前記案内羽根環の内周面に、螺旋状部材を取り付けたことを特徴とする前記請求項1乃至4いずれか一項に記載の分級機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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