説明

分解を促進するための複合構造を有する生体吸収性装置

【課題】所望の機能効果を果たすかまたは機能の目的または実用寿命が終わると、促進された分解によって所望の質量減少を実現できる新規の有用な生体吸収性医療装置を提供すること。
【解決手段】第1の生分解性および/または生体吸収性材料および第2の生分解性および/または生体吸収性材料からなる構造を有する医療装置。この第1の生分解性および/または生体吸収性材料は、その分解速度が、第2の生分解性および/または生体吸収性材料の分解速度よりも速い。そして、この構造は、第1の生分解性および/または生体吸収性材料の露出で分解促進期間が始まる。

【発明の詳細な説明】
【開示の内容】
【0001】
〔発明の分野〕
本発明は、概して、植え込み可能な医療装置に関し、詳細には、所望の機能効果を果たすか、または機能の目的または実用寿命が終わると、促進された分解によって所望の質量減少を実現できる新規の有用な生体吸収性医療装置に関する。
【0002】
〔発明の背景〕
ポリマーが、医療分野において適切であって実用性に優れていることが広く受け入れられている。したがって、このような生分解につながるポリマーの不安定性が、過去数十年にわたって、医療用途で非常に重要になってきていることが認められている。
【0003】
例えば、グリコール酸や乳酸から生成されたポリマーは、1960年代にはじめて承認された生体分解性縫合糸を始め、医療分野で様々に利用できることが分かっている。それ以来、乳酸やグリコール酸などの材料、およびポリ(ジオキサノン)、ポリ(トリメチレンカーボネート)コポリマー、ポリ(ε‐カプロラクトン)ホモポリマー、およびポリ(ε‐カプロラクトン)コポリマーを含む、他の材料を用いた多様な製品が、医療装置としての使用が認められるようになってきた。このような承認された装置に加えて、ポリ無水物、ポリオルトエステル、ポリホスファゼン(polyphosphazenes)、および他の生体分解性ポリマーに対して様々な研究が続けられている。
【0004】
なぜ医師が分解する材料から形成された医療装置を望むかには多数の理由がある。最も一般的な理由として、まず、インプラントとして使用することができ、除去するために2回目の外科手術を必要としない装置を医師が単に望むことが挙げられる。生分解は、2回目の外科手術が必要ないことに加えて、別の利点も付与する。例えば、硬質の非生分解性ステンレス鋼インプラントで固定された骨折した骨は、このインプラントを除去する際に再び骨折することがある。硬質ステンレス鋼に応力がかかり、治癒過程で骨が十分な荷重を受けることができないためである。
【0005】
しかしながら、生分解性ポリマーから形成されたインプラントは、荷重が徐々に治癒中の骨に転移する速度で分解するように設計することができる。生分解性ポリマーが提供する様々な可能性の他の刺激的な利用は、薬物送達システム単独かまたは医療装置としても機能する薬物送達の基礎である。
【0006】
生体分解性インプラントは、通常はラクトン系ポリエステルなどのポリマー材料から形成される。このようなバルク侵食材料は、化学反応である加水分解によって水溶性の低分子量断片に時間と共に分解されていく。このような断片は、酵素によって低分子量代謝物に代謝される。
【0007】
これまで、所望の機能効果を果たすかまたは機能の目的または実用寿命が終わると、分解の促進によって所望の質量減少を実現できる生体吸収性医療装置は知られていない。
【0008】
〔発明の概要〕
本発明は、動脈や静脈などの血管、管路、または心臓などの器官に配置される医療装置を含め、体内に配置される、すなわち植え込まれる医療装置に関する。詳細には、本発明は、医療装置が所望の機能効果を果たすかまたは機能の目的または実用寿命が終わると、促進された分解によって所望の質量減少を実現するために、生分解性および/または生体吸収性材料の混合物、コーティング、または層を含め、生分解性および/または生体吸収性材料を含む複合構造からなる医療装置である。
【0009】
加えて、本発明は、医療装置が所望の機能効果を果たすかまたは機能の目的または実用寿命が終わると、促進された分解によって所望の質量減少を実現するために、医療装置の構造すなわち構成要素の分解の促進に寄与する封入された分解添加剤を有する、生分解性および/または生体吸収性材料の混合物、コーティング、または層を含む生分解性および/または生体吸収性材料を含む構造からなる医療装置である。一部の実施形態では、本発明に従った医療装置は、この医療装置から放出される治療薬、ならびに放射線不透過性物質や緩衝剤などのほかの添加剤を含む。
【0010】
本発明は、第1の生分解性および/または生体吸収性材料および第2の生分解性および/または生体吸収性材料からなる構造を有する医療装置に関する。第1の生分解性および/または生体吸収性材料は、その分解速度が、第2の生分解性および/または生体吸収性材料の分解速度よりも速い。そして、この構造は、第1の生分解性および/または生体吸収性材料の露出で分解促進期間(a period of accelerated degradation)が始まる。
【0011】
本発明はまた、一方の生分解性および/または生体吸収性材料からなる構造を有する医療装置に関する。分解添加剤は、ナノ粒子または微小粒子を形成する他方の生分解性および/または生体吸収性材料によって被包される。ナノ粒子または微小粒子は、構造をなす一方の生分解性および/または生体吸収性材料に結合(together with)している。ナノ粒子または微小粒子の他方の生分解性および/または生体吸収性材料は、その分解速度が、一方の生分解性および/または生体吸収性材料の分解速度よりも速い。この構造は、ナノ粒子または微小粒子からの分解添加剤の露出で分解促進期間が始まる。
【0012】
〔詳細な説明〕
本発明の新規の特徴は、添付の特許請求の範囲に記載されている。しかしながら、本発明の構造および操作方法の両方、ならびに本発明の他の目的および利点は、添付の図面を参照しながら以下の詳細な説明を読めば理解できるであろう。
【0013】
本発明は、動脈や静脈などの血管、管路、または心臓などの器官内に配置される医療装置を含め、体内に配置すなわち植え込まれる医療装置に関する。詳細には、本発明は、所望の機能効果を果たすかまたは機能の目的または実用寿命が終わると、促進された分解によって所望の質量減少を実現するために、生体適合性および/または生体吸収性材料の混合物、コーティング、または層を含め、生体分解性および/または生体吸収性材料を含む複合構造から形成された医療装置に関する。
【0014】
加えて、本発明は、所望の機能効果を果たすか、または機能の目的または実用寿命が終わると、促進された分解によって所望の質量減少を実現するために、生体適合性および/または生体吸収性材料の混合物、コーティング、または層を含め、生体分解性および/または生体吸収性材料を含む複合構造から形成された、医療装置の構造や構成要素の分解の促進に寄与する被包化分解添加剤を有する医療装置である。ある実施形態では、本発明に従った医療装置は、この医療装置から放出される治療薬、および放射性不透過物質や緩衝剤などの他の添加剤を含む。
【0015】
本明細書で用いる語「生分解性」、「生分解」、「分解性」、「分解」、「分解された」、「生侵食性」、「侵食性」、および「侵食」は、互いに置き替え可能であり、材料または成分が、時間、例えば数日、数週間、数ヶ月、数年、が経過すると、産物、副産物、成分、または小成分へ分解される、または分解されやすいと定義する。
【0016】
本明細書で用いる語「生体吸収性」、「吸収性」、「再吸収性」、および「生体再吸収性」は、互いに置き替え可能であり、代謝および/または排出によるあらゆる産物の分解である生物学的除去と定義する。
【0017】
本明細書で用いる語「分解添加剤」、「選択酵素」、および「高pH物質」は、互いに置き替え可能であり、医療装置の構造、成分、または材料の分解を促進させるあらゆる材料、作用物質、化合物、または物質と定義する。
【0018】
本明細書で用いる語「緩衝剤」、「緩衝化合物」、「緩衝液」、「中和剤」、「中和化合物」、「中和物質」、または「中和化合物」は、互いに置き替え可能であり、酸または塩基にさらされると医療装置またはその一部または近傍のpHの変化の速度を制限または緩和するあらゆる材料、作用物質、化合物、または物質と定義する。
【0019】
本明細書で用いる語「生分解性材料」、「生分解性ポリマー」、「生体吸収性材料」、「生体吸収性ポリマー」、「生体材料」、「生分解性および/または生体吸収性材料」、および「生分解性および/または生体吸収性ポリマー」は、互いに置き替え可能であり、体内で生分解性または生体吸収性であるあらゆるポリマー材料と定義する。
【0020】
本明細書で用いる語「複合材」、「複合生分解性材料」、「複合生分解性ポリマー」、「複合生体吸収性材料」、「複合生体吸収性ポリマー」、「複合生体材料」、「複合生分解性および/または生体吸収性材料」、または「複合生分解性および/または生体吸収性ポリマー」は、互いに置き替え可能であり、組み合わせて用いることができる、体内で生分解性または生体吸収性である2種類以上のポリマー材料と定義する。
【0021】
本明細書で用いる語「作用物質」、「治療物質」、「活性物質」、「薬物」、「活性薬物」、および「医薬品」は、互いに置き替え可能であり、有用である場合が多いある種の治療効果を付与する作用物質、薬物、化合物、物質の成分、またはこれらの組合せと定義する。このような例として、殺虫剤、除草剤、殺菌剤、殺生剤、除藻剤、殺鼠剤、殺真菌剤、防虫剤、酸化防止剤、植物成長促進剤、植物成長抑制剤、保存剤、抗保存剤(antipreservatives)、殺菌剤、滅菌剤、触媒、化学作用物質、発酵剤、食品、食品サプリメント、栄養物、化粧品、薬物、ビタミン、不妊剤(sex sterilants)、妊娠抑制剤、妊娠促進剤、微生物減弱剤(microorganism attenuators)、および使用環境を改善する他の作用物質を挙げることができる。このような語には、温血動物、人間、および霊長類;鳥類;猫、犬、羊、ヤギ、牛、馬、および豚などのペットや家畜;マウス、ラット、およびモルモットなどの実験動物;魚類;爬虫類;動物園の動物および野生動物などを含む動物に対して局所効果または全身効果を与える生理学的および薬理学的に活性なあらゆる物質も含まれる。送達できる活性薬物には、限定するものではないが、末梢神経、アドレナリン受容体、コリン作動性受容体、骨格筋、心血管系、平滑筋、血液循環系、シナプス部位、神経効果器接合部位、内分泌系およびホルモン系、免疫系、生殖系、骨格系、オータコイド系、消化系および排出系、ヒスタミン系、および中枢神経に作用する薬物を含む無機化合物および有機化合物が含まれる。適当な作用物質は、例えば、タンパク質、酵素、ホルモン、ポリヌクレオチド、核タンパク質、多糖、糖タンパク質、リポタンパク質、ポリペプチド、ステロイド、催眠薬、鎮静薬、精神賦活薬、精神安定剤、抗痙攣薬、筋弛緩剤、抗パーキンソン病薬、鎮痛剤、抗炎症剤、局所麻酔薬、筋収縮剤、スタチンを含む血圧薬およびコレステロール降下剤、抗菌剤、抗マラリア薬、避妊薬を含むホルモン剤、交感神経様作動薬、生理的効果を誘導するポリペプチドおよびタンパク質、利尿薬、脂質調節剤、抗男性ホルモン剤、駆虫薬、腫瘍薬、抗腫瘍薬、血糖降下薬、栄養剤、サプリメント、成長補助剤、脂肪、点眼薬(ophthalmics)、抗腸炎薬、電解液、および診断薬から選択することができる。
【0022】
本発明に有用な治療薬すなわち薬物99の例として、エジシル酸プロクロルペラジン(prochlorperazine edisylate)、硫酸鉄、アミノカプロン酸、塩酸メカキシルアミン(mecaxylamine hydrochloride)、塩酸プロタインアミド、硫酸アンフェタミン、塩酸メタンフェタミン、塩酸ベンズフェタミン、硫酸イソプロテロノール(isoproteronol sulfate)、塩酸フェンメトラジン、塩化ベタネコール、塩化メタコリン、塩酸ピロカルピン、硫酸アトロピン、臭化スコポラミン(scopolamine bromide)、ヨウ化イソプロパミド、塩化トリジヘキセチル、塩酸フェンホルミン、塩酸メチルフェニデート、テオフィリンコリネート(theophylline cholinate)、塩酸セファレキシン(cephalexin hydrochloride)、ジフェニドール、塩酸メクリジン、マレイン酸プロクロルペラジン、フェノキシベンザミン、マレイン酸チエチルペラジン、アニシンジオン、ジフェナジオン、硝酸エリスリチル、ジゴキシン、イソフルロフェート、アセタゾラミド、メタゾルアミド、ベンドロフルメサイアザイド(bendroflumethiazide)、クロルプロパミド、トラザミド、酢酸クロルマジノン、フェナグリコドール、アロプリノール、アスピリンアルミニウム、メトトレキセート、アセチルスルフィソキサゾール、ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチコステロン(hydrocorticosterone acetate)、酢酸コルチゾン、ベタメタゾンなどのデキサメタゾンおよびその誘導体、トリアムシノロン、メチルテストステロン、17‐β‐エストラジオール、エチニルエストラジオール、エチニルエストラジオール3‐メチルエーテル、プレドニゾロン、17‐β‐酢酸ヒドロキシプロゲステロン、19‐ノルプロゲステロン、ノルゲストレル、ノルエチンドロン、ノルエチステロン、ノルエチエデロン(norethiederone)、プロゲステロン、ノルゲステロン(norgesterone)、ノルエチノドレル、インドメタシン、ナプロキセン、フェノプロフェン、スリンダク、インドプロフェン、ニトログリセリン、イソソルビドジニトレート、プロプラノロール、チモロール、アテノロール、アルプレノロール、シメチジン、クロニジン、イミプラミン、レボドパ、クロルプロマジン、メチルドパ、ジヒドロキシフェニルアラニン、テオフィリン、グルコン酸カルシウム、ケトプロフェン、イブプロフェン、アトルバスタチン(atorvastatin)、シンバスタチン、プラバスタチン、フルバスタチン(fluvastatin)、ロバスタチン、セファレキシン、エリスロマイシン、ハロペリドール、ゾメピラック(ゾメピラック)、乳酸鉄、ビンカミン(vincamine)、フェノキシベンザミン、ジルチアゼム、ミルリノン、カプトロピリル(captropril)、マンドール(mandol)、クアンベンズ(quanbenz)、ヒドロクロロチアジド、ラニチジン、フルルビプロフェン、フェンブフェン、フルプロフェン(fluprofen)、トルメチン、アルクロフェナック、メフェナミック(mefenamic)、フルフェナミック(flufenamic)、ジフュニナル(difuninal)、ニモジピン、ニトレンジピン、ニソルジピン、ニカルジピン、フェロジピン、リドフラジン、ティアパミル(tiapamil)、ガロパミル(gallopamil)、アムロジピン、ミオフラジン(mioflazine)、リシノプリル、エナラプリル、カプトプリル、ラミプリル(ramipril)、エナラプリラート、ファモチジン、ニザチジン、スクラルファート、エチンチジン、テトラトロール(tetratolol)、ミノキシジル、クロルジアゼポキシド、ジアゼパム、アミトリプチリン、およびイミプラミンを挙げることができる。別の例として、タンパク質およびペプチド、例えば、限定するものではないが、インスリン、コルヒチン、グルカゴン、甲状腺刺激ホルモン、副甲状腺ホルモン、脳下垂体ホルモン、カルシトニン、レニン、プロラクチン、コルチコトロピン、甲状腺ホルモン、卵胞刺激ホルモン、絨毛性性腺刺激ホルモン、性腺刺激ホルモン放出ホルモン、ウシのソマトロピン、ブタのソマトロピン、オキシトシン、バゾプレシン、プロラクチン、ソマトスタチン、リプレシン、パンクレオチミン、黄体ホルモン、LHRH、インターフェロン、インターロイキン、ヒト成長ホルモン、ウシ成長ホルモン、およびブタ成長ホルモンなどの成長ホルモン、プロスタグランジンなどの受精抑制剤、受精促進剤、成長因子、およびヒトの膵臓ホルモン放出因子を挙げることができる。
【0023】
医療装置50に有用な薬物または医薬品99として、例えば、ビンカアルカロイド(すなわち、ビンブラスチン、ビンクリスチン、およびビノレルビン)、パクリタキセル、エピジポドフィルロトキシン(epidipodophyllotoxins)(すなわち、エトポシド、テニポシド)、抗生物質(ダクチノマイシン(アクチノマイシンD)、ダウノルビシン、ドキソルビシン、イダルビシン)、アントラサイクリン、マイトキサントロン、ブレオマイシン、プリカマイシン(ミトラマイシン)、マイトマイシン、酵素(L−アスパラギンを全身的に代謝し、それ自体でアスパラギンを合成できない細胞を除去するL−アスパラギナーゼ)などの天然生成物を含む抗増殖/有糸分裂阻害剤;G(GP)IIbIIIa阻害薬およびビトロネクチン受容体拮抗剤などの抗血小板剤;ナイトロジェンマスタード(メクロレタミン、シクロホスファミドおよびその類似体、メルファラン、クロランブシル)、エチレンイミン(ethylenimines)およびメチルメラミン(ヘキサメチルメラミン、およびチオテパ)、スルホン酸ブスルファンアルキル(alkyl sulfonates-busulfan)、ニルトソウレア(nirtosoureas)(カルムスチン(BCNU)および類似体、ストレプトゾシン)、トラゼン(trazenes)−デカルバジン(DTIC)などの抗増殖/抗有糸分裂アルキル化剤;葉酸類似体(メトトレキサート)、ピリミジン類似体(フルオロウラシル、フロクシウリジン、およびシタラビン)、プリン類似体およびこれらに関連した阻害薬(メルカプトプリン、チオグアニン、ペントスタチン、および2−クロロデオキシアデノシン{クラドリビン})などの抗増殖/抗有糸分裂代謝拮抗剤;プラチナ配位化合物(錯体)(シスプラチン、カルボプラチン)、プロカルバジン、ヒドロキシ尿素、ミトタン、アミノグルテチミド;ホルモン(すなわち、エストロゲン);抗凝血剤(ヘパリン、合成ヘパリン塩、およびトロンビンの他の阻害薬);血栓溶解剤(例えば、組織プラスミノーゲン活性化因子、ストレプトキナーゼ、およびウロキナーゼ)、アスピリン、ジピリダモール、チクロピジン、クロピドグレル(clopidogrel)、アブシキシマブ(abciximab);抗遊走性薬;抗分泌性薬(ブレベルディン(breveldin);抗炎症薬:副腎皮質ステロイド(コルチゾール、コルチゾン、フルドロコルチゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、6α−メチルフレドニゾロン、トリアムシノロン、ベタメタゾン、およびデキサメタゾン)、非ステロイド剤(サリチル酸誘導体、すなわちアスピリン;パラアミノフェノール誘導体、すなわちアセトミノフェン(acetominophen);インドールおよびインデン酢酸(indene acetic acids)(インドメタシン、スリンダク、およびエトダラック(etodalac))、ヘテロアリール酢酸(heteroaryl acetic acids)(トルメチン、ジクロフェナク、およびケトロラク)、アリールプロピオン酸(イブプロフェンおよび誘導体)、アントラニル酸(メフェナム酸、およびメクロフェナム酸)、エノール酸(enolic acids)(ピロキシカム、テノキシカム、フェニルブタゾン、およびオキシフェンタトラゾン(oxyphenthatrazone))、ナブメトン、金化合物(オーラノフィン、アウロチオグルコース、金チオリンゴ酸ナトリウム);免疫抑制剤:(シクロスポリン、タクロリムス(FK−506)、シロリムス類似体(ラパマイシン)、アザチオプリン、ミコフェノレートモフェチル(mycophenolate mofetil));血管形成剤;血管内皮成長因子(VEGF)、線維芽細胞成長因子(FGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、エリスロポイエチン;アンギオテンシン受容体遮断薬;酸化窒素供与体:アンチセンスオリジオヌクレオチド(anti-sense oligionucleotides)およびこれらの混合物;細胞周期阻害薬、mTOR阻害薬、成長因子シグナル伝達キナーゼ阻害薬、化学化合物、生体分子、DNAおよびRNAなどの核酸、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、またはこれらの組み合わせを挙げることができる。
【0024】
「作用物質」、「治療薬」、「活性物質」、「薬物」、「活性薬物」、および「医薬品」は、全ての誘導体、類似体、およびその塩を含み、このような作用物質、治療薬、活性物質、薬物、活性薬物、または医薬品を2種以上使用することを排除するものではないことを理解されたい。
【0025】
本発明は、図1〜図9に最もよく例示されているように、天然または合成の生分解性および/または生体吸収性ポリマーからなる医療インプラントなどの医療装置50である。一般に、合成ポリマーは、広範囲の特性を有するように製造することができ、天然起源の材料よりも各ロットの均一性がより予測可能である点で、天然材料よりも多くの利点が得られる。合成ポリマーは、より信頼できる原材料であり、免疫抗原性の心配がないものもある。
【0026】
生体材料(生分解性および/または生体吸収性材料)として使用するためのポリマーの選択の一般的な基準は、機械特性および分解時間を用途の必要性に一致させることである。特定の用途に理想的なポリマーは、(i)用途にあった機械特性を有し、周囲組織が治癒するまで十分な強度を維持する、(ii)炎症や有毒反応を引き起こさない、(iii)目的を果たした後に体内で代謝されて跡を残さない、(iv)最終産物の形態に容易に加工できる、(v)許容される保管寿命を有する、(vi)滅菌が容易である、ように形成される。
【0027】
生分解性ポリマーの機械特性に影響を与える因子は、ポリマーの研究者に良く知られており、モノマーの選択、開始剤の選択、加工条件、および添加剤の存在を挙げることができる。このような因子は、ポリマーの親水性、結晶性、溶解およびガラス転移温度、分子量、分子量の分布、末端基、配列の分布(ランダムとブロック)、および残存モノマーや添加剤の存在に代わる代わる影響を与える。
【0028】
加えて、生分解性材料を研究しているポリマーの研究者は、このような各変量の生分解に対する影響を評価しなければならない。生分解は、主鎖に加水分解的に不安定な結合を有するポリマーの合成によって実現できる。このような特性を有する最も一般的な化学官能基は、エステル、無水物、オルトエステル、およびアミドである。
【0029】
医療装置50は、結晶特性、半結晶特性、および非晶質特性を有する少なくとも1つの生分解性および/または生体吸収性ポリマーの構造、成分、または特徴を有するのが好ましい。半結晶生体吸収性ポリマーの分解機序は、主として、エステル結合や他の不安定な結合、または加水分解的に不安定な主鎖の加水分解によるものである。これは、ポリマーの分解の最も一般的な機序である。一般に、このような分解は2つの段階で起こる。第1の段階では、非晶質相の加水分解が起こり、例えば乳酸などの低分子量の水溶性断片が形成される。非晶質相における分子量の低減は、結晶領域が構造に必要な強度を付与するため、機械特性の低下は起こらない。次に、結晶相の加水分解が起こり、分子量および機械特性が低下する。次に、断片の代謝につながる酵素の作用により、ポリマーの質量の低下が促進される。次に、このような断片は、クレブスサイクルに入り、二酸化炭素と水として排出される。この分解過程は、数日から、数ヶ月、数年にまで変化し、ポリマーの種類に依存する。ポリマーの分解を促進する因子には、親水性主鎖および末端基、低い結晶性、高い間隙率および広い表面積、非配向性(no orientation)、非物理年齢(no physical aging)、低密度、可塑剤および水溶性または浸出性物質などの添加剤の存在が含まれる。
【0030】
加えて、ポリ乳酸(PLA)およびポリグリコール酸(PGA)などのポリマーの分解は、鎖の切断によって形成されるカルボキシル末端基によって触媒され、非晶質領域が優先的に分解されることが良く知られている。サミング・リー(Suming Li)著、「乳酸およびグリコール酸由来の脂肪族ポリエステルの加水分解特性(Hydrolitic Degradation Charcteristics of Aliphatic Polyesters Derived from Lactic and Glycolic Acids)」、ジャーナル・オブ・バイオメディカル・マテリアルズ・リサーチ(J Biomed Mater Res)(アプライド・バイオマター(Appl Biomatter))、1999年、48:342‐353を参照されたい。一般に、エステル結合の切断により、カルボキシル末端基およびヒドロキシル末端基が生成され、生成されたカルボキシル末端基は、他のエステル結合の加水分解を触媒する。この過程は、一般に自触媒作用と呼ばれる。
【0031】
PLAポリマーの迅速な分解の一例として、リン酸緩衝液中のPLAの分解を挙げることができる。約5週間の分解で、PLA材料が、様々な粘性オリゴマーからなる内部の物質によって不均一となる。この分解は、「不均一分解(heterogeneous degradation)」または「迅速内部分解(faster internal degradation)」として知られている。
【0032】
したがって、水性媒体中では、水がポリマー材料中に進入して、エステル結合が加水分解で切断される。このエステル結合の切断により、新しいカルボキシル末端基が形成され、自触媒作用によって他のエステル結合の反応が促進される。初めに、この過程の一部として、分解がバルク中で生じ、肉眼的に均質である。しかしながら、可溶性オリゴマーが生成されると、基質の表面に近いこのようなオリゴマーは、完全に分解される前に基質から逃避するが、基質内にトラップされたこのようなオリゴマーは、ポリマー基質内を基質の表面よりも高い酸性にする。したがって、自触媒作用は、基質の表面よりもバルク中(基質内)で起こり、ポリマーの分解が進むにつれて、より多くのカルボキシル末端基が基質内に形成され、内部の分解が促進される。最終的に、この分解現象によって中空構造が材料内に形成される。
【0033】
上記のように説明した分解過程が、例えば、PLA75GA25、PLA85GA15、PLA87.5、PLA96、およびPLA100などのPLAおよびPGAを含むポリマーで確認された。
【0034】
生体吸収性および/または生分解性ポリマーは、バルク侵食材料および表面侵食材料からなる。表面侵食ポリマーは通常、水不安定結合を備えた疎水性である。バルク中には水が進入しないで、このような表面侵食ポリマーの表面で加水分解が迅速に起こる傾向にある。しかしながら、このような表面侵食ポリマーの初期強度は低い傾向にあり、このような表面侵食ポリマーは入手が困難である。しかし、表面侵食ポリマーの例として、ポリ(カルボキシフェノキシヘキサン‐セバシン酸)などのポリ無水物、ポリ(フマル酸‐セバシン酸)、ポリ(カルボキシフェノキシヘキサン‐セバシン酸)、ポリ(イミド‐セバシン酸)(50‐50)、ポリ(イミド‐カルボキシフェノキシヘキサン)(33‐67)、およびポリオルトエステル(ジケテンアセタール系ポリマー)を挙げることができる。
【0035】
他方、バルク侵食ポリマーは通常、水不安定結合を備えた親水性である。バルク侵食ポリマーの加水分解は、医療装置のポリマー基質全体でより均一な速度で起こる傾向にある。バルク侵食ポリマーは、優れた初期強度を有し、入手が容易である。
【0036】
バルク侵食ポリマーの例として、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、ポリ(p‐ジオキサノン)、ポリトリメチレンカーボネート、ポリオキサエステル(poly (oxaesters))、ポリオキサアミド(poly (oxaamides))、およびこれらのコポリマーや混合物などのポリ(α‐ヒドロキシエステル)を挙げることができる。容易に入手可能なバルク侵食ポリマーおよびその一般的な医療用途の例として、ポリジオキサノン[ニュージャージー州ソマービルに所在のエシコン社(Ethicon, Inc.)が販売するPDS(登録商標)縫合糸]、ポリグリコリド[コネチカット州ノース・ヘイブンに所在のユナイテッド・ステイツ・サージカル社(United States Surgical Corporation)が販売するDexon(登録商標)縫合糸]、ポリラクチド‐PLLA[骨修復]、ポリ(ラクチド/グリコリド)[ニュージャージー州ソマービルに所在のエシコン社(Ethicon, Inc.)が販売するVicryl(登録商標)(10/90)およびPanacryl(登録商標)(95/5)縫合糸]、ポリ(グリコリド/カプロラクトン(75/25))[ニュージャージー州ソマービルに所在のエシコン社(Ethicon, Inc.)が販売するMonocryl(登録商標)縫合糸]、およびポリ(グリコリド/トリメチレンカーボネート)[コネチカット州ノース・ヘイブンに所在のユナイテッド・ステイツ・サージカル社(United States Surgical Corporation)が販売するMaxon(登録商標)縫合糸]を挙げることができる。
【0037】
他のバルク侵食ポリマーの例として、チロシン由来ポリアミノ酸[例:ポリDTHカーボネート、ポリアクリレート、およびポリイミノ‐カーボネート]、リン酸含有ポリマー[例:ポリリン酸エステルおよびポリホスファゼン]、ポリエチレングリコール[PEG]系ブロックコポリマー[PEG‐PLA、PEG‐ポリプロピレングリコール、PEG‐ポリブチレンテレフタレート]、ポリ(α‐リンゴ酸)、ポリエステルアミド、およびポリアルカノエート(polyalkanoates)[例:ポリヒドロキシブチレート(HB)およびポリヒドロキシバレレート(HV)コポリマー]を挙げることができる。
【0038】
もちろん、医療装置は、所望の物理特性を得るため、および分解機序を制御するために、表面侵食ポリマーとバルク侵食ポリマーから形成することができる。例えば、所望の物理特性および装置の分解速度を得るために2種類以上のポリマーを混合することができる。別法では、医療装置は、表面侵食ポリマーでコーティングされたバルク侵食ポリマーから形成することができる。薬物送達装置を、薬物含有表面侵食ポリマーでコーティングしたバルク侵食ポリマーから形成することができる。例えば、薬物コーティングは、多量の薬物を含むことができる十分な厚みにすることができ、バルク侵食ポリマーは、全ての薬物が放出されて表面が侵食されても医療装置の機械特性を維持できる十分な厚みにすることができる。別法では、医療装置は、異なるポリマーと薬物の組合せの層から形成して、ポリマーの吸収の際にプログラム可能な薬物放出を実現することができる。したがって、本発明に従ったこれらの実施形態では、薬物99(唯1種類の薬物または異なる薬物の組合せ、すなわち2種類以上の薬物99を含むことができる)は、異なるポリマー層として第1の生分解性および/または生体吸収性材料75および第2の生分解性および/または生体吸収性材料80の一方または両方からプログラム可能に放出される。
【0039】
ここで図1を参照すると、本発明は、患者の体内に配置すなわち植え込むための生分解性および/または生体吸収性医療装置50である。この医療装置50は、医療インプラントなどのあらゆるタイプの医療装置であり、この例では、医療装置50は、脈管内に配置するためのステントである。医療装置50は、第1の分解速度で分解する第1の生分解性および/または生体吸収性材料75とこの第1の生分解性および/または生体吸収性材料75に積層、コーティング、または混合する第2の生分解性および/または生体吸収性材料80の複合構造を有する。本発明に従って、第1の生分解性および/または生体吸収性材料75の第1の分解速度は、第2の生分解性および/または生体吸収性材料80の第2の分解速度よりも速い。
【0040】
具体的には、医療装置50は、それぞれが異なる生分解性および/または生体吸収性材料75および80のコーティング、層、または混合物を含む異なる生分解性および/または生体吸収性材料75および80を含む複合構造から形成されている。各生分解性および/または生体吸収性材料75および80は、異なる分解速度を有する。そして、医療装置50は、第2の生分解性および/または生体吸収性材料80が、第1の生分解性および/または生体吸収性材料75の分解速度よりも遅い分解速度を有するように設計されている。そして、詳細を後述するように、第2の生分解性および/または生体吸収性材料80は、第1の生分解性および/または生体吸収性材料75にコーティングまたは積層され、第1の生分解性および/または生体吸収性材料75と第2の生分解性および/または生体吸収性材料80の両方は、医療装置が所望の機能効果を果たすかまたは機能の目的または実用寿命が終わると、所望の質量減少が生じて促進された分解が起こるように選択、構成、または配置されている。第2の生分解性および/または生体吸収性材料80のコーティングまたは層が分解された後に、この促進された分解の期間が始まって、第1の生分解性および/または生体吸収性材料75が露出される。したがって、医療装置50が機能の目的または実用寿命が終わった時点で、この促進された分解の期間が始まる。
【0041】
本発明に従った一実施形態では、医療装置50(図1〜図5)は、複合構造から形成されている。第1の構造(第1の生分解性および/または生体吸収性材料75)は、ポリマーコアまたはポリマーバックボーンとして機能し、露出されると加水分解によって迅速な分解が可能となる物理特性および特徴を有する。第1の構造に設けられる第2の生分解性および/または生体吸収性材料80のコーティングまたは層は、第1の構造75の分解速度よりも遅い分解速度となる物理特性および特徴を有する。一例では、表面にポリ‐L‐乳酸(PLLA)を用いて(例えば、厚い層またはコーティングとして)、医療装置50の第2の生分解性および/または生体吸収性材料80として機能するようにし、ポリ(グリコール酸)(PGA)を第1の生分解性および/または生体吸収性材料75として用いて、医療装置50のコアまたはバックボーンとして機能するようにする。これらの材料75および80の両方は、医療装置50の機能効果が達成されるかまたは医療装置50が機能の目的または実用寿命が終わるまで、装置50に剛性を付与する(この例では、ステント50が脈管を支持して開いた状態に維持する)。したがって、医療装置50は、この医療装置50の機能が終了すると、PLLA材料80が分解し、PGAコア材料75が露出されて極めて迅速に、すなわちPLLAコーティング材料80よりも格段に速い速度で分解されるように設計されている。PGAの吸収によって、医療装置に多数の孔が形成され、医療装置の表面積が大きくなり、残っている全てのPLLAの吸収速度が加速される。これにより、医療装置50が機能の目的または実用寿命を終えると、全ての装置50が患者の体から完全に除去されることが可能になる。PLLAおよびPGAの他の誘導体を他のポリマーに加えて用いて、所望の吸収プロフィールを実現することができる。材料80の他の例として、PLLAよりも吸収時間が遅いDLPLA;PLA/PGAコポリマー(95/5;85/15);PLA‐PCLコポリマーを挙げることができる。したがって、第2の生分解性および/または生体吸収性材料80の適当な例として、ポリ乳酸系ポリマー、ポリグリコリド系ポリマー、ポリ(α‐ヒドロキシエステル)、例えば、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、ポリ(p‐ジオキサノン)、ポリトリメチレンカーボネート、ポリオキサエステル(poly (oxaesters))、ポリオキサアミド(poly (oxaamides))、ポリ乳酸‐PLLA、ポリ(ラクチド/グリコリド)、ポリ(グリコリド/カプロラクトン)(75/25)、ポリ(グリコリド/トリメチレンカーボネート)、チロシン由来ポリアミノ酸、ポリDTH‐カーボネート、ポリアリレート(poly (arylates))、ポリイミノ‐カーボネート、リン酸含有ポリマー、ポリリン酸エステルおよびポリホスファゼン、ポリエチレングリコール系ブロックコポリマー、PEG‐PLA、PEG‐ポリプロピレングリコール、PEG‐ポリブチレンテレフタレート、ポリ(α‐リンゴ酸)、ポリエステルアミド、ポリアルカノエート(polyalkanoates)、ポリヒドロキシブチレート(HB)、ポリヒドロキシバレレート(HV)コポリマー、DLPLA;PLA/PGAコポリマー(95/5;85/15);PLLAよりも吸収時間が遅いPLA‐PCLコポリマーおよびこれらのコポリマーや混合物を挙げることができる。
【0042】
材料75の他の例として、PGA/PLA(90/10);PGA/PCL(75/25;50/50;65/35);PGAよりも吸収時間が長いポリ(p‐ジオキサノン)およびこれらの誘導体を挙げることができる。材料75の他の例として、ポリエチレングリコール;クエン酸エステル、および材料80の速い吸収のために分解して表面積を広くする他の水溶性材料を挙げることができる。したがって、第1の生分解性および/または生体吸収性材料75の適当な例として、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ(α‐ヒドロキシエステル)、ポリ(カルボキシフェノキシヘキサン‐セバシン酸)などのポリ無水物、ポリ(フマル酸‐セバシン酸)、ポリ(カルボキシフェノキシヘキサン‐セバシン酸)、ポリ(イミド‐セバシン酸)(50‐50)、ポリ(イミド‐カルボキシフェノキシヘキサン)(33‐67)、チロシン由来ポリアミノ酸、ポリオルトエステル(ジケテンアセタール系ポリマー)、リン酸含有ポリマー、ポリエチレングリコール;クエン酸エステル、および迅速な吸収のために分解して表面積を大きくする他の水溶性材料、およびこれらのコポリマーや混合物を挙げることができる。
【0043】
医療装置50は、特定の構造に限定されるものではないが、本発明に従った一部の実施形態では、医療装置50は、実質的に円筒状の構造を有しており、その長手方向軸に沿って実質的に中空であり、この円柱構造の両端部で開口している。したがって、上記した本発明に従った医療装置50の構造は、再狭窄、アテローム性動脈硬化症、脆弱性プラーク、または虚血性心疾患などの心疾患の治療のために脈管内に配置するステントとして、または血流を調節するための心臓弁などの弁として最適である。
【0044】
医療装置50は、1または複数の層、コーティング、または混合物の形態にすることができる第1の生分解性および/または生体吸収性材料75から形成されるフープ、ループ、可撓性リンク、ブリッジ、または延長部(不図示)をオプションとして含む構造、外形、および構成要素70を有する。加えて、第1の生分解性および/または生体吸収性材料75は、第2の生分解性および/または生体吸収性材料80、すなわち第1の生分解性および/または生体吸収性材料75の初期保護コーティングとして機能する第2の材料80でコーティングされたコアである(材料75および80の分解速度の著しい差に基づいている)。
【0045】
第1の生分解性および/または生体吸収性材料75は、ステント50のフープ、ループ、可撓性リンク、ブリッジ、または延長部などの医療装置50の構造70、または所望の医療装置50のハウジング、フラップ、または他の構成要素70の基材として用いられる。コーティング80として施す場合は、第2の生分解性および/または生体吸収性材料80は、ステント50のフープ、ループ、可撓性リンク、ブリッジ、または延長部などの医療装置またはステント50の構造75、または所望の医療装置50の他の構成要素70をコーティングして初期の保護とするためにコーティング材料80として用いられる。
【0046】
一例として、第1の生分解性および/または生体吸収性材料75は、ポリ(α‐ヒドロキシ酸)群に属する任意のポリエステルなどのバルク侵食ポリマー(ホモポリマー、コポリマー、またはポリマーの混合物)である。バルク侵食ポリマーの例として、ポリ乳酸などの脂肪族ポリエステル;ポリグリコール酸;ポリカプロラクトン;ポリ‐p‐ジオキサノンおよびポリトリメチレンカーボネート;およびこれらのコポリマーや混合物を挙げることができる。第1の生体吸収性材料75として有用な他のポリマーの例として、アミノ酸由来ポリマー[例えば、ポリイミノカーボネート]、リン酸含有ポリマー[例えば、ポリホスファゼン;ポリホスホエステル]およびポリエステルアミドを挙げることができる。
【0047】
第1の生分解性および/または生体吸収性材料75の加水分解の速度は、バルク侵食ポリマーを製造するために用いられるモノマーの種類で決まる。例えば、吸収時間(分解を完了するまでの時間すなわち完全に分解するまでの時間)は、以下のように推定される。すなわち、ポリカプロラクトン、ポリトリメチレンカーボネート、およびポリ乳酸は約2〜4年かかり、ポリジオキサノンは約7ヶ月かかり、ポリグリコール酸は約3〜6ヶ月かかる。好ましくは、第1の生分解性および/または生体吸収性材料75の分解速度は、約1日〜3ヶ月である。
【0048】
ポリ(乳酸‐コ‐グリコール酸);ポリ(グリコール酸‐コ‐カプロラクトン);およびポリ(グリコール酸‐コ‐トリメチレンカーボネート)などのモノマーから製造したコポリマーの吸収速度はモノマーのモル量で決まる。ポリマーの分解は、加水分解によるものであり、副産物は通常、酵素の作用によって代謝されてクレブスサイクルに入り、二酸化炭素と水として排出されるポリマー[例えば、ポリ乳酸からの乳酸;ポリグリコール酸からのグリコール酸]を製造するために用いられるモノマーなどの水溶性断片である。
【0049】
本発明に従えば、第2の生分解性および/または生体吸収性材料80は、第1の生分解性および/または生体吸収性材料75よりも加水分解の速度(分解速度)が格段に遅い。例えば、上記した加水分解速度に基づくと、PLLAが、コーティング80の適当な材料の1つであり、PGAが、医療装置50のコア75の適当な材料である。例えば、第2の生分解性および/または生体吸収性材料80の分解速度は3ヶ月〜48ヶ月であるのが好ましい。
【0050】
図3は、図1の医療装置50の別の実施形態を例示している。この医療装置50は、その1または複数の部分の中に混入される薬物99をさらに含む。例えば、薬物99は、第2の生分解性および/または生体吸収性材料80の外側コーティング層またはポリマーコアすなわちバックボーン材料75(医療装置50の構造、構成要素、または外形の基礎となる第1の生分解性および/または生体吸収性材料75)に混入されるか、または材料75と80の両方に混入される。
【0051】
したがって、医療装置50がステントである例では、図3に示されている装置50は、所定の薬物放出プロフィールに従って薬物99がステント50から放出される薬物溶出ステントである。さらに、外側材料80および内側コア75の分解すなわち加水分解速度は、所望の薬物放出プロフィールに一致する速度である。所望の薬物放出プロフィールが達成された後、すなわちステント50が植え込まれた脈管壁に薬物99を送達する機能を果たした後の促進された分解段階を含め、ステント50自体の所望または所定の質量減少曲線に従った分解パラメータに基づいた薬物送達システムとしてステント50と共に用いられる例示的なステント50の細部を以降に詳細に説明する。加えて、1つまたは複数の薬物99を、本発明に従って医療装置50に用いることができる。
【0052】
図4は、図1の医療装置50の別の実施形態である。この医療装置50は、本発明に従った材料80および/または材料75の分解時に放出される分解添加剤、緩衝剤、または放射線不透過性物質などの添加剤95を含む。加えて、1つまたは複数の添加剤95を、本発明に従った医療装置50に用いることができる。例えばプロティナーゼKなどの反応性の高い酵素は、本発明に従った医療装置50に用いる分解添加剤95として特に有用である。
【0053】
図5は、図1の医療装置50の別の実施形態である。この医療装置50は、本発明に従った材料80および/または材料75の分解時に放出される分解添加剤、緩衝剤、または放射線不透過性物質などの添加剤95および薬物99の両方を含む。加えて、1または複数の薬物99を1つまたは複数の添加剤95と共に本発明に従った医療装置50に用いることができる。
【0054】
加えて、図6および図7に最もよく例示されているように、本発明は、生分解性および/または生体吸収性材料80の1または複数のコーティング、混合物、または層とすることができ、医療装置50の主構造70とすることができる生分解性および/または生体吸収性材料80から形成された新規の有用な医療装置50にも関する。PLLAは、主構造70の生分解性および/または生体吸収性材料80として特に有用であることが確認されたポリマーの一例である。加えて、装置50は、放出時(被包材料75の加水分解時)にポリマーのバックボーン材料80を優先的に切断する生分解性および/または生体吸収性材料75内に封入される封入分解添加剤95をさらに含む。PGAは、主構造70の生分解性および/または生体吸収性材料75として特に有用であると確認されたポリマーの一例である。分解添加剤95の例には、選択された酵素や高pH材料が含まれる。分解添加剤95として特に有用な酵素は、PGA中に封入されるプロティナーゼKである。
【0055】
生体吸収性材料の分解のために用いることができる酵素がいくつか存在する。ポリマーの酵素による分解は、酵素の特性によって決まる。酵素を用いインビトロでの分解試験は、通常は、アジ化ナトリウムを含む緩衝液(リン酸またはTris/HCl)中で、pH約6〜8.6、37℃で行われる。PLLAの酵素分解を実証するために用いた第1の酵素には、プロティナーゼK、ブロメライン、およびプロナーゼが含まれる。酵素は、アミドとエステルの結合を加水分解する。プロティナーゼKは、非常に有効であり、PLLAおよびコポリマーの分解を研究するために用いた。セリンプロテアーゼが、炭水化物と窒素のみを供給源とするため天然ケラチンで成長する真菌トリチラチウムアルブム(Tritirachium album)によって産生される。この酵素は、D‐ラクチルユニットではなく、L‐ラクチルユニットを優先的に分解し、ポリD‐ラクチドが分解されないことが確認された。この酵素は、D‐D結合ではなく、L‐L、L‐D、およびD‐L結合を分解する。この分解は、半結晶性PLLAの非晶質領域で優先的に起こる。PLLAとPCLの結晶ドメインを分解することはできない。これは、プロティナーゼKの活性部位が、単結晶の鎖折り畳み表面ではなく、結晶の縁の無秩序鎖充填領域(disordered chain-packing regions)で優先的に加水分解するためである。水の吸収によってポリマーが膨張し、酵素の攻撃が促進される。
【0056】
PCLの酵素分解が、リパーゼ型酵素の存在下で研究された。このような酵素は、疎水性表面におけるエステル結合を切断できる。R.delemerリパーゼ、Rhizopus arrhizusリパーゼ、およびPseudomonaseリパーゼの3種類のリパーゼがPCLの分解を著しく促進する。結晶性の高いPCLは、4日で完全に分解されるため、このような酵素は、ポリマーの非晶質相および結晶相を分解することができる。このような酵素はPLLAを分解することができない。
【0057】
HT‐32株Amycolatopsis sp.を単離するのに成功し、これをPLLAの分解を実証するために用いた。微生物を分解するPLLAの単離により、4種類の放線菌と4種類の細菌がさらに単離された。1種類の放線菌が、形態の観察と16s RNAの分析に基づいてAmycolatopsis sp.(株41)と同定された。放線菌を分解するPLLAの単離は、Amycolatopsis株と分類学上類似している。Amycolatopsis株は、PLLAを分解することができる。Amycolatopsis属に属する25の基準株のうち15は、PLLAで乳化された寒天平板上に透明な領域を形成することができた。したがって、Amycolatopsisは、PLLAの生分解で大きな役割を果たす。酵素を、推定分子量が約40KDa〜42KDa、pHが最適な6.0、温度が37℃〜45℃で、活性が最も高いAmycolatopsis sp.(株41)から生成できる。この酵素は、ポリ(ε‐カプロラクトン)およびポリ(β‐ヒドロブチレート)ではなくPLLAを優先的に分解する。
【0058】
ポリヒドロキシブチレート(PHB)およびそのコポリマーを、様々な環境、例えばシュードモナス‐レモイネイ(Pseudomonas lemoignei)、アルカリ大便菌、好気性土壌菌(Comamonas testosteroni)、シュードモナス‐スタッツェリ(Pseudomonas stutzeri)、シュードモナス‐ピケッティイ(Pseudomonas picketii)、およびComamonas acidovoransから単離した細胞外PHBデポリメラーゼによって酵素分解することができる。このような酵素は、結晶構造の鎖折り畳み表面ではなく、結晶の縁の無秩序鎖充填領域(disordered chain-packing regions)で優先的に攻撃する。
【0059】
したがって、酵素または分解添加剤の選択は、短時間で分解する必要がある材料の種類に基づいている。
【0060】
ポリマー材料75の分解速度が、ポリマーコア材料80の分解速度よりも速いため、被包材料75が十分に分解されるとすぐに分解添加剤95が放出され、この分解添加剤95がポリマーコア材料80に作用して、装置50の所望の質量減少を達成するために、ポリマーコア材料80の分解速度が促進される。
【0061】
同様に、この実施形態でも、添加剤95は、本発明に従った被包材料75の分解時に放出される分解添加剤、緩衝剤、または放射線不透過性物質などとすることができる。加えて、1つまたは複数の添加剤95を、本発明に従った医療装置50に用いることができる。例えばプロティナーゼKなどの高活性酵素は、発明に従った医療装置50に用いる分解添加剤95として特に有用である。
【0062】
さらに、図8および図9に示されているように、薬物99は、装置50の1つまたは複数の部分内に混入される。例えば、薬物99を、生分解性および/または生体吸収性材料80(図8に示されているように医療装置50の構造、構成要素、または外形の基となる)内に直接に混入するか、または図9に示されているように生分解性および/または生体吸収性材料75内の分解添加剤95と共に封入する。加えて、薬物99は、材料75と80の両方に混入することもできる。
【0063】
したがって、医療装置50がステントである例では、図8及び図9に示されている装置50は、所定の薬物放出プロフィールに従って薬物99がステント50から放出される薬物溶出ステントである。さらに、封入ポリマー材料75、そして最終的には主構造ポリマー材料80の分解すなわち加水分解速度は、所望の薬物放出プロフィールに一致する速度である。所望の薬物放出プロフィールが達成された後、すなわちステント50が植え込まれた脈管壁に薬物99を送達する機能を果たした後の促進された分解段階を含め、ステント50自体の所望または所定の質量減少曲線に従った分解パラメータに基づいた薬物送達システムとしてステント50と共に用いられる例示的なステント50の細部を以降に詳細に説明する。加えて、1つまたは複数の薬物99を、本発明に従って医療装置50に用いることができる。
【0064】
したがって、図6〜図9の医療装置の実施形態では、ステント構造の生分解性および/または生体吸収性材料80は、封入材料として用いられる生分解性および/または生体吸収性材料75よりも加水分解の速度(分解速度)が格段に遅い。例えば、上記した加水分解速度に基づくと、PLLAが、装置50の主構造80に適した材料であり、PGAが、封入材料75に適した材料の1つである。したがって、封入材料75のPGAが格段に速い速度で分解し、装置50の加水分解を促進するために、PLLA構造材料80と酵素的に反応するプロティナーゼK(および内部に封入される1または複数の薬物ならびに緩衝剤や放射線不透過物質などの他の所望の添加剤95)などの分解添加剤95を放出する。
【0065】
分解添加剤95または他の添加剤(緩衝剤や放射線不透過物質など)の封入は、装置50の物理特性に悪影響を与えない微小粒子やナノ粒子の形態にすることができる。
【0066】
無機塩基性充填剤などの異なるタイプの緩衝剤95を、本発明に従った装置50の全ての実施形態に用いることができる。緩衝剤として用いるこのような塩基性化合物の例として、カルシウムヒドロキシアパタイト;炭酸アパタイト;リン酸三カルシウム;炭酸カルシウム;炭酸水素ナトリウム;リン酸カルシウム;炭酸リン酸カルシウムおよび水酸化マグネシウムを挙げることができる。また、酸性/塩基性滴定化合物(acid/based titrating compounds)(アミンモノマー)および乳酸デヒドロゲナーゼ(乳酸を、糖分解の最終産物でありクエン酸回路の開始成分であるピルビン酸に変換する)を緩衝剤95として用いることもできる。
【0067】
無機充填剤95は、ポリマー75および80の吸収の際に生成される酸に反応して、この酸を中和する。したがって、これら無機充填剤は、緩衝剤として働き、直近の環境の酸成分を中和して、pHを約5〜約7の範囲、より好ましくは約6〜約7.4の範囲に維持する。無機充填剤または緩衝剤95の総量は、吸収過程中に生成される酸を全て中和するのに十分な量にすべきである。例えば、2モルの乳酸と反応するのに1モルの炭酸カルシウムが必要である(以下参照)。
CaCO3(solid)+2CH3CH(OH)−COOH(aqueous)⇒
Ca2+(aq)+H2O+CO2(aq)+2CH3CH(OH)−COO−(aq)
【0068】
医療装置50の生体材料構造、材料、コーティング、または混合物75および80を製造する方法を詳細に後述する。この方法は、分解添加剤95(または緩衝剤や放射線不透過性物質などの他の添加剤)と、一部の実施形態の装置50のポリマー材料または分解添加剤95およびオプションの薬物99の両方を封入するための生分解性および/または生体吸収性材料75と混合できる治療薬または薬物との化合に用いることもできる。
【0069】
適当な分解添加剤95の例として、医療装置50の生体材料構造、材料、コーティング、または混合物75および80の分解を制御するべく、医療装置50の周囲環境のpHを安定させるために用いられる生体活性ガラス、セラミック、およびリン酸カルシウムなどの緩衝剤を挙げることができる。ケー・レツワン(K. Rezwan)ら著、「骨組織工学用の生体分解性および生体活性多孔質ポリマー/無機複合足場(Biodegradable and Bioactive Porous Polymer/Inorganic Composite Scaffolds for Bone Tissue Engineering)」、バイオマテリアルズ(Biomaterials)、2006年、第27、3413〜3431を参照されたい。一般に、本発明に従った医療装置50に有用な生体活性ガラスの基本成分は、SiO2、NA2O、CaO、およびP25である。分解添加剤95として有用な生体活性ガラスの例として、重量パーセントでSiO2を45%、NA2Oを24.5%、CaOを24.4%、P25を6%含む生体活性ガラスである45S5 BIOGLASS(登録商標)(フロリダ大学)を挙げることができる。
【0070】
医療装置50の分解を制御するために医療装置50の足場材料の一部として生体活性ガラスを使用するのは、様々な化学特性や医療装置50の分解時の吸収の速度を制御するためである。したがって、ゾルゲル由来ガラスなどの本発明に用いる生体活性ガラスの構造および化学は、組成、熱特性、または環境的な加工歴などの因子を変更することによって分子レベルでカスタマイズすることができる。
【0071】
加えて、本発明に従った医療装置50の分解は、生分解性および/または生体吸収性材料75および80に生体活性相を添加して達成することもできる。材料75および80に用いられるポリマーへの生体活性相の添加により、ガラスまたはセラミック中のアルカリに対する水中のプロトンの迅速な交換を可能にして、ポリマー分解の作用を変更する。この機序は、ポリマー表面におけるpH緩衝効果を付与して、酸性ポリマーの分解を変更することを示唆している。医療装置50内に生体活性ガラスを含めることにより、疎水性ポリマー基質の親水性および水吸収性を改善して、医療装置50の分解速度を変更し、あらゆる複合足場を含め、医療装置50自体の表面およびバルク特性自体を変更することができる。具体的には、45S5 BIOGLASS(登録商標)粒子は、PDLLAやPLGAなどの純粋なポリマーフォームに比べて水の吸収を増大せることができる。ヒアルロン酸(HA)粒子が充填されたポリマー複合体は、足場の内部に水が浸透しているため、均一に加水分解される。
【0072】
前記したケー・レツワン(K. Rezwan)らによる文献に記載されているように、37℃のリン酸緩衝生理食塩水中でのインビトロ試験で、BIOGLASS(登録商標)などの生体活性ガラスを添加すると、純粋なポリマーフォームに比べて、水の吸収が増大し、質量が低下することが確認された。
【0073】
別の種類の分解添加剤95も、本発明に従った医療装置50にとって重要である。例えば、酸性化合物かまたは塩基性化合物を医療装置50のポリマー基質内に混入させることができる。酸性化合物を混入させると、装置50に用いるポリマーの分解を促進することができる。他方、塩基性化合物を混入させると、2つの効果、すなわち塩基触媒作用とカルボキシル末端基の中和とを同時に達成することができる。装置50の分解が促進または抑制されるかは、このような効果の相対的重要度によって決まる。
【0074】
例えば、珊瑚(炭酸カルシウムの顆粒を含む)の無機化合物などの緩衝剤95を、骨組織の生成を促進するべく、ポリマーインプラントの分解を遅くするためにPLAと珊瑚の混合物からなる医療インプラントにまず用いた。そして、多量の珊瑚の顆粒が、ポリマーの混合物の内部と外部媒体との間のイオン交換を促進する界面を形成し、カルボキシル末端基が中和され、自触媒効果がなくなるため、均一に分解された混合物となる。
【0075】
本発明の医療装置50の緩衝剤95として有用なポリマーの分解を遅くするとして知られている別の化合物は、カフェインである。カフェインを多量に含むポリマー装置は、カルボキシル末端基の中和によって分解を抑制するが、カフェインを含まないポリマーインプラントは、自触媒作用によって促進された分解を示す。
【0076】
上記したような塩基性化合物の存在下でのPLAやPGAポリマーなどのポリマーの分解は、基触媒作用、カルボキシル末端基の中和、多孔性、装置の寸法、混入される化合物の荷重および形態などのパラメータによって決まる。
【0077】
ポリマーインプラントの分解に対する他の影響は分子量(MW)である。したがって、ポリマーのMWが大きくなればなる程、カルボキシル末端基の濃度が低くなるため、(初期段階の)分解が遅くなる。しかしながら、ポリマー基質中の環状または非環状のモノマーおよびオリゴマーの存在により、ポリマーインプラントが迅速に分解することができる。
【0078】
さらに、ポリマーインプラント50の大きさおよび形状も重要である。例えば、微小粒子、細い繊維、または薄膜からなる非常に小さいポリマー装置は、オリゴマーの拡散およびカルボキシル末端基の中和が容易で自触媒分解が抑制されるため、大きいポリマーインプラントよりも分解が遅い。
【0079】
医療装置の滅菌などのγ線照射も、ポリマー医療装置インプラントの分解に影響を与える。例えば、Dexon(登録商標)(デイビス・アンド・ジャック(Davis &Geck))およびVicryl(登録商標)(エシコン社(Ethicon, Inc.))繊維のガンマ線照射は、分解媒体の早いpHの低下、引張り強さのより急速な低下をもたらす。
【0080】
当業者であれば、生分解性および/または生体吸収性材料80に対する生分解性および/または生体吸収性材料75の相対量および本発明の複合体中の分解添加剤95および/または薬物99の相対量は、特に、要求される強度、剛性、および他の物理および温度特性の値、吸収および再吸収速度、固化または硬化速度、および送達性などを含む様々なパラメータによって決まることが、分かるであろう。本発明の実施形態の複合体の所望の特性および要求される値は、医療装置50および/または分解添加剤95(および/または緩衝剤および/または放射線不透過性物質および/または薬物99)を必要とする体の構造部位や解剖学的構造によって決まる。
【0081】
図10は、植え込み用の生分解性および/または生体吸収性医療装置の時間の関数として物理的構造の分解の異なる移行段階を模式的に例示するグラフである。このグラフは、本発明に関連した植え込み用の生分解性および/または生体吸収性医療装置50の所望の質量減少曲線に対する既知の生体吸収性医療インプラントに関連した現行の質量減少曲線の比較を含む。
【0082】
図10に示されているように、ポリマーが分解される際の植え込まれた生分解性および/または生体吸収性装置の異なる段階が、このポリマー装置が異なる特性および/または特徴を有する物理的状態である。加えて、所定の植え込み用生体吸収性装置(例えば、図10の一例としてステント)の機能的な特徴は、装置が「硬質」すなわち硬い状態100(段階I)から「柔軟」すなわち柔軟な状態200(段階II)を経て、「スポンジ」形態すなわちスポンジ状または高吸収状態300(段階III)への移行に制限されている。段階IIIでは、装置が、物理的特性を維持できなくなると、断片状態400(段階IV)へ移行して、装置が、体内に吸収される断片に加水分解される。既知のポリマー医療装置インプラントのこの過程が、「現行の質量減少」曲線Aとして模式的に示されている。このような状況では、従来技術のポリマー装置は、たとえ体内で必要なくなっても完全に吸収されるまで体内に残存する。このため、たとえ必要であっても、その部位の再手術が不可能であり、患者に対して利用できる治療方法が制限される。これは、インプラントに関連した組織に炎症を引き起こすこともあるが、本発明(医療装置50)の促進された分解過程すなわち所望の質量減少曲線Bでは回避することができる。
【0083】
したがって、本発明に従った医療装置50の分解プロフィールは、「所望の質量減少」曲線Bに従う。このようにして、医療装置50は、曲線Bに示されているように、従来のポリマー装置よりも早く(短時間で)体から排出される。
【0084】
使用される医療装置50の一例は、医療装置50が、図10に例示されている所望の質量減少曲線Bに従ってステント(図3、図5、図8、および図9)のポリマー材料から溶出される薬物99を用いたステントである実施形態のためのものである。この例(薬物99を用いる全ての実施形態)では、薬物99はラパマイシンである。ラパマイシンは、米国特許第3,929,992号に開示されているようにストレプトミセス・ハイグロスコピクス(Streptomyces hygroscopicus)によって生成される大環状トリエン(macrocyclic triene)抗生物質である。特に、ラパマイシンは、インビボで脈管平滑筋細胞の増殖を阻害することが知られている。したがって、ラパマイシンは、哺乳動物の内膜平滑筋細胞過形成、再狭窄、および脈管の閉塞、特に生物学的または機械的な脈管傷害の治療、または哺乳動物がこのような脈管傷害になりやすい条件下で用いることができる。ラパマイシンは、平滑筋細胞の増殖を阻害し、脈管壁の再内皮化(re-endothelialization)を妨げないように機能する。
【0085】
ラパマイシンは、脈管形成による傷害の際に放出される細胞分裂促進信号に応答して平滑筋細胞の増殖を抑制して脈管過形成を緩和する。細胞周期のG1後期における成長因子およびサイトカインによる平滑筋細胞の増殖の阻害は、ラパマイシンの作用の主な機序と考えられる。しかしながら、ラパマイシンは、全身投与されると、T細胞の増殖および分化を防止することも知られている。これは、免疫抑制作用および植え込み片拒絶防止機能の基礎である。
【0086】
本明細書において、ラパマイシンは、ラパマイシンと、FKBP12および他のイムノフィリンに結合してTORの阻害を含むラパマイシンと同じ薬学特性を有するラパマイシンの全ての類似体、誘導体、および接合体を含む。
【0087】
ラパマイシンの抗増殖効果は、全身投与で達成することができるが、優れた効果は、化合物の局所送達によって達成することができる。本質的に、ラパマイシンは、化合物に近接した組織に作用し、送達装置から距離が離れるにつれて効果が減少する。この効果をうまく利用するために、腔内壁にラパマイシンを直接に接触させたいと考えるであろう。したがって、好適な実施形態では、ラパマイシンを、ステントの表面またはその一部に含める。本質的に、ラパマイシンは、上記したように、ステント50が治療すべき脈管の腔内壁に接触している図3、図5、図8、および図9に最もよく例示されているように、ステント50に混入するのが好ましい。
【0088】
ラパマイシンは、いくつかの方法でステント50に混入する、または取り付けることができる。例示的な実施形態では、ラパマイシンは、上記したように、ポリマー材料75および/または80のポリマー基質内に直接に混入されている。ラパマイシンは、時間と共にポリマー基質から溶出し、周囲組織に進入する。ラパマイシンは、少なくとも1日〜約6ヶ月、より好ましくは約7日〜60日、ステントに維持されるのが好ましい。したがって、このような期間が、本発明のこのような例のステント50の機能目的、機能寿命、または有効寿命を構成する。
【0089】
ラパマイシンは、いくつかの機序によって平滑筋細胞の増殖を阻害するように機能する。加えて、ラパマイシンは、例えば炎症などによる脈管の傷害によって起こる他の影響を緩和する。ラパマイシンの作用の機序および様々な機能を以下に詳述する。本明細書で用いるラパマイシンは、ラパマイシン、詳細を後述するようにFKBP12に結合してラパマイシンと同じ薬学特性を有するラパマイシンの類似体、誘導体、および接合体を含む。
【0090】
ラパマイシンは、脈管形成の際に放出される細胞分裂信号に応答して平滑筋細胞の増殖を抑制して脈管過形成を緩和する。細胞周期のG1後期における成長因子およびサイトカインによる平滑筋細胞の増殖の阻害は、ラパマイシンの作用の主な機序と考えられる。しかしながら、ラパマイシンは、全身投与されると、T細胞の増殖および分化を防止することも知られている。これは、免疫抑制作用および植え込み片(graft)拒絶防止機能の基礎である。
【0091】
新生内膜過形成の大きさおよび期間を縮減するように作用する既知の増殖抑制であるラパマイシンの作用に応答する分子作用は、まだ解明の途上にある。しかしながら、ラパマイシンが細胞内に進入し、FKBP12と呼ばれる高親和性サイトゾルタンパク質に結合することが知られている。そして、ラパマイシンとFKBP12の複合体が、「ラパマイシンの哺乳動物ターゲット」すなわちTORと呼ばれるホスホイノシチド(PI)‐3キナーゼに結合して阻害する。TORは、平滑筋細胞およびTリンパ球における分裂促進因子およびサイトカインに関連した下流へのシグナル伝達の仲介に重要な役割を果たすプロテインキナーゼである。このような作用には、タンパク質の翻訳の重要なレギュレータであるp27のリン酸化、p70 s6キナーゼのリン酸化、および4BP‐1のリン酸化が含まれる。
【0092】
ラパマイシンは、新生内膜過形成を阻害して再狭窄を緩和することが分かっている。しかしながら、ラパマイシンは、再狭窄の他の重要な成分を阻害(すなわち、負のリモデリング)しうることも分かっている。リモデリングは、明確には分かっていないが、外部弾性層が収縮し、腔内領域が時間と共に(通常は、ヒトでは約3ヶ月〜6ヶ月)減失する過程である。
【0093】
負すなわち収縮性の脈管リモデリングは、この過程を阻害するステントが存在しない病変部位における直径狭窄率として血管造影法で定量することができる。後に病変部位での内腔の減失が止まったら、負のリモデリングが阻止されたと推定できる。リモデリングの程度を決定する別の方法では、脈管内超音波(IVUS)を用いて病変外部の弾性層領域を測定することを伴う。脈管内超音波は、外部弾性層および脈管内腔を画像化できる技術である。手術終了時点から4ヵ月後および12ヵ月後の追跡調査におけるステントの近位側および遠位側の外部弾性層における変化は、リモデリングの変化を反映する。
【0094】
ラパマイシンがリモデリングに影響を与える証拠は、ヒトのインプラントの研究で、ラパマイシンがコーティングされたステントが病変内およびステント内で再狭窄が極めて低い程度であることを示していることである。病変内パラメータは、通常は、ステントの両側すなわち近位側と遠位側で約5mmと測定される。バルーンの膨張による影響をまだ受けているこのような領域にリモデリングを制御するためにステントが存在しないために、ラパマイシンが脈管のリモデリングを防止していると推定できる。
【0095】
以下の表1のデータは、ラパマイシンで治療した群は、例えば12ヶ月経っても、病変内の直径狭窄率が低く維持されていることを例示している。したがって、このような結果は、ラパマイシンがリモデリングを抑制するという仮定を肯定している。
【表1】

【0096】
ラパマイシンによる負のリモデリングの抑制を肯定する別の証拠は、以下の表2に例示されているように、First‐in‐Man臨床プログラムから得られた脈管内超音波データである。
【表2】

【0097】
データは、ラパマイシンでコーティングされたステントで治療された脈管で、負のリモデリングが抑制されたことを示す脈管の近位側または遠位側の最小限の低下を例示している。
【0098】
ステント自体以外には、脈管のリモデリングの問題に対する有効な解決策が存在しない。したがって、ラパマイシンは、脈管のリモデリング現象を制御する生物学的手法を代表することができる。
【0099】
ラパマイシンが、いくつかの方法で負のリモデリングを緩和するように作用すると仮定することができる。ラパマイシンは、傷害に応答して脈管壁における線維芽細胞の増殖を特異的に阻害して、脈管の傷ついた組織の形成を抑制することができる。ラパマイシンは、コラーゲンの産生または代謝に関与する重要なタンパク質の翻訳に影響を与えることができる。
【0100】
本明細書の文脈で用いるラパマイシンは、ラパマイシンと、FKBP12に結合してラパマイシンと同じ薬学特性を有するラパマイシンの類似体、誘導体、および接合体を含む。
【0101】
好適な実施形態では、ラパマイシンは、再狭窄を軽減または防止する手段としてバルーン血管形成術の後に動脈部分の負のリモデリングを制御するために局所送達装置によって送達される。あらゆる送達装置を用いることができるが、図3、図5、図8、および図9に例示した実施形態および上記したように、ラパマイシンを溶出すなわち放出する生分解性および/または生体吸収性ステント50を含む送達装置が好ましい。
【0102】
ブタモデルおよびウサギモデルで得られたデータは、薬物溶出ステントから所定範囲の用量(35μ〜430μg/15mm〜18mm冠動脈ステント)のラパマイシンを脈管壁に放出することにより、新生内膜過形成を最大50%〜55%軽減することを示している。この軽減は、ブタモデルでは、約28日〜30日で最大となり、通常は90日〜180日の範囲までは持続されない。
【0103】
ラパマイシンは、ステントから送達されると、少なくとも1年は持続するステント内の新生内膜過形成の大幅な軽減を可能にする予期せぬ利点をヒトに付与する。ヒトにおけるこの利点の程度および期間は、動物モデルのデータから予測されなかった。この文脈に用いるラパマイシンは、ラパマイシンと、FKBP12に結合してラパマイシンと同じ薬学特性を有するラパマイシンの類似体、誘導体、および接合体を含む。
【0104】
上記したように、ラパマイシンは、脈管形成による傷害の際に放出される細胞分裂信号に応答して平滑筋細胞の増殖を抑制して脈管過形成を緩和する。また、ラパマイシンは、全身投与されると、T細胞の増殖および分化を防止することも知られている。さらに、ラパマイシンは、約2週間〜6週間に亘って連続してステントから少用量が投与されると、脈管壁に局所的な抗炎症効果を果たすことが分かっている。この局所的な抗炎症効果の利点は、重要であり、予想外であった。この効果と平滑筋抗増殖効果の2つの効果により、ラパマイシンが、例外的な効果を発揮する。
【0105】
したがって、局所送達構造から送達されるラパマイシンは、抗炎症効果と平滑筋抗増殖効果の組合せによって新生内膜過形成を軽減する。この文脈に用いるラパマイシンは、ラパマイシンと、FKBP12に結合してラパマイシンと同じ薬学特性を有するラパマイシンの全ての類似体、誘導体、および接合体を含む。
【0106】
ラパマイシンは、ステントから送達されると、脈管組織におけるサイトカインのレベルを低減することも分かった。データは、ラパマイシンが、脈管壁における単球走化性タンパク質(MCP‐1)のレベルの低減に極めて有効であることが示された。MCP‐1は、脈管の傷害の際に産生される炎症誘発性/走化性サイトカインの一例である。MCP‐1の低減は、炎症誘発性メディエータの発現の削減、およびステントから局所的に送達されるラパマイシンの抗炎症効果への寄与におけるラパマイシンの有利な効果を例示している。傷害に応答した脈管の炎症は、新生内膜過形成発症の主な原因であることが分かっている。
【0107】
ラパマイシンが、脈管における局所炎症作用を阻害することが明らかであるため、これが、新生内膜の阻害におけるラパマイシンの予想外の優位性の理由であると考えられる。
【0108】
上記したように、ラパマイシンは、T細胞の増殖の防止、負のリモデリングの阻害、炎症の軽減、および平滑筋細胞の増殖の防止などの所望の効果を様々な程度に付与するように作用する。このような作用の正確な機序は完全には分かっていないが、解明された機序を詳述することはできる。
【0109】
ラパマイシンの研究から、細胞周期の妨害による平滑筋細胞の増殖の防止が、新生内膜過形成を軽減するための有効な手段であることが分かった。ラパマイシンがステントから局所的に送達された患者で、後期内腔減失および新生内膜プラークの体積の大幅かつ持続的な減少が観察された。本発明は、細胞周期を阻害して、毒を発生させることなく新生内膜過形成を軽減する別の手法を含むラパマイシンの機序を詳細に説明する。
【0110】
細胞周期は、細胞の複製の過程を制御する事象を厳密に制御する生化学カスケードである。細胞が適当な成長因子によって刺激されると、細胞は、細胞周期のG0期(休止状態)からG1期に移行する。DNA複製(S期)の前のG1期における細胞周期の選択的な阻害は、細胞周期の後期すなわちS期、G2期、またはM期で作用する治療薬に比べて、抗増殖効果を維持すると共に細胞を温存する治療上の利点を提供する。
【0111】
したがって、血管および体内の他の管腔における内膜過形成の防止は、細胞周期のG1期で選択的に作用する細胞周期阻害剤で達成することができる。細胞周期のG1期のこのような阻害剤は、小分子、ペプチド、タンパク質、オリゴヌクレオチド、またはDNA配列とすることができる。より具体的には、このような薬物すなわち作用物質として、G1期を通る細胞周期の進行に関与するサイクリン依存性キナーゼ(cdk’s)、特にcdk2およびcdk4などの阻害剤を挙げることができる。
【0112】
細胞周期のG1期に選択的に作用する薬物99の例として、サイクリン依存性キナーゼの拮抗作用によって後期G1期における細胞周期を阻害することが分かっているフラボピリドール(flavopiridol)およびその構造類似体などの小分子を挙げることができる。サイクリン依存性キナーゼを選択的に阻害する、P27と呼ばれ、p27kiplとも呼ばれる内因性キナーゼ阻害タンパク質kipを増大させる治療物質を利用することができる。このような治療物質には、p27を産生するために遺伝子を形質移入できる遺伝子ベクターを含め、p27の分解を阻害するかまたはp27の細胞の生成を促進する小分子、ペプチド、およびタンパク質が含まれる。プロテインキナーゼ阻害して細胞周期を止めるスタウロスポリンおよび関連した小分子を用いることができる。PDGFやFGFなどの広範囲の成長因子に応答して、プロテインキナーゼを選択的に阻害して平滑筋におけるシグナル伝達を弱めるチルホスチン(tyrphostins)のクラスを含むプロテインキナーゼ阻害剤を用いることもできる。
【0113】
上記したように、ラパマイシンとFKPB12の複合体は、ラパマイシンの哺乳動物ターゲットすなわちTORと呼ばれるホスホイノシチド(PI)‐3キナーゼに結合してこれを阻害する。活性部位阻害剤またはアロステリック調節物質、すなわちアロステリック的に調節する間接的な阻害剤のいずれかとして機能する上記TORの触媒活性の拮抗物質は、ラパマイシンの作用に類似しているが、FKBP12の要求を満たしていない。TORの直接的な阻害剤の潜在的な利点には、比較良好な組織への浸透性および比較良好な物理的/化学的な安定性が含まれる。加えて、他の潜在的な利点には、様々な組織に存在しうるTORの複数のイソ型の1つの拮抗物質の特異性による作用の比較的高い選択性および特異性、および比較的高い薬物の有効性および/または安全性につながる下流側の作用の潜在的に異なる範囲が含まれる。
【0114】
加えて、この阻害剤は、3日〜8週間の範囲の期間(すなわち、この例では、医療装置50の機能的な寿命すなわち有効寿命)に亘ってラパマイシンまたはその他の薬物、作用物質、または化合物を標的組織に接触した状態に維持することを目的として、本発明の医療装置50から迅速にまたは徐々に放出できるように調製することができる。
【0115】
上記したように、バルーン血管形成術に関連した冠動脈ステントの植え込みは、急性の血管の閉塞の治療に極めて有効であり、再狭窄のリスクを軽減することができる。血管内超音波研究から、冠動脈のステント術によって血管の収縮を効果的に防止することができ、ステント植え込み後の殆どの後期の内腔減失が、新生内膜過形成に関連している可能性が高いプラークの成長によるものであることが分かった。冠動脈ステント術後の後期の内腔減失は、従来のバルーン血管形成術後に観察される内腔減失のほぼ2倍である。したがって、ステントが再狭窄の過程の少なくとも一部を防止するため、炎症や増殖を抑制する、または複数の機序によって増殖を抑制する薬物、作用物質、または化合物をステントと共に用いることにより、血管形成術後の再狭窄の最も有効な治療となる。
【0116】
本発明の医療装置50の一部の好適な実施形態の第1の生分解性および/または生体吸収性材料75および第2の生分解性および/または生体吸収性材料80のために選択されるポリマーは、以下に概説する特性に基づいて選択した。例えば、迅速に分解するポリマーであるポリグリコリド(PGA)を、本発明のいくつかの実施形態の生分解性および/または生体吸収性材料75として選択した。
【0117】
PGAは、最も単純な直鎖状の脂肪族ポリエステルであり、コネチカット州ダンバーリー(Danbury)に所在のデイビス・アンド・ゲック社(Davis and Geck, Inc.)によって1960年代にDexonとして販売され、最初の完全に合成の吸収性縫合糸を開発するために用いられた。グリコリドモノマーは、グリコール酸の二量体化によって合成される。開環重合により、約1%〜3%のモノマーが残存する高分子量物質が生成される。PGAは、融点が220℃〜225℃と高く、ガラス転移温度が35℃〜40℃で、45%〜55%の高結晶性である。PGAの結晶性が高いため、ヘキサフルオロイソプロパノールなどの高度にフッ素化された有機物を除き、大抵の有機溶媒に溶解しない。PGA繊維は、強度および弾性率が高いため、ブレード材料の形態を除き、縫合糸として用いるには硬すぎる。PGA製縫合糸は、その強度が、2週間で約50%、4週間で100%低下し、4ヶ月〜6ヶ月で完全に吸収される。グリコリドは、他のモノマーと共重合し、得られる繊維の剛性が低下する。
【0118】
(PGAに関連した分解速度に比べて)分解が遅いポリマーであるポリ乳酸(PLA)およびポリ‐L‐ラクチド(PLLA)を、本発明のいくつかの実施形態の生分解性および/または生体吸収性材料80として選択した。知られているように、ラクチドは、D‐ラクチドとL‐ラクチドの2つの光学異性体として存在する乳酸の環状二量体である。L‐ラクチドは、天然の異性体であり、DL‐ラクチドは、D‐ラクチドとL‐ラクチドの合成混合物である。L‐ラクチドのホモポリマー(LPLAまたはPLLA)は、半結晶性ポリマーである。この種の材料は、引張り強さが高く、伸び率が低く、そして整形外科の固定および縫合などの荷重がかかる用途に適した高い弾性率を有する。ポリ(DL‐ラクチド)(DLPLA)は、乳酸の両方のイソ型がランダムに分布した非晶質ポリマーであるため、組織された結晶構造にすることができない。この材料は、引張り強さが低く、伸び率が高く、分解速度が格段に速いため、薬物送達システムとしてより魅力的である。ポリ(L‐ラクチド)(PLLA)は、結晶度が約37%、融点が175℃〜178℃、ガラス転移温度が60℃〜65℃である。LPLA(PLLA)の分解時間は、DLPLAよりも大幅に遅く、完全に吸収されるまで2年以上必要である。L‐ラクチドとDL‐ラクチドのコポリマーを、L‐ラクチドの結晶を破壊して分解の過程を促進するために調製した。
【0119】
ホモポリマーの特性の範囲を広げるために、ポリ(ラクチド‐コ‐グリコリド)[PLGA]コポリマーを調製することができる。L‐ラクチドおよびDL‐ラクチドの両方とグリコリドのコポリマーを、装置と薬物送達の両方の用途のために開発した。コポリマー成分と材料の機械特性および分解特性との間の関係が線形でないことに留意することが重要である。例えば、グリコリド50%とDL‐ラクチド50%のコポリマーは、いずれのホモポリマーよりも速く分解する。グリコリド25%〜70%とL‐ラクチドのコポリマーは、その他のモノマーによるポリマー鎖の規則的な分布によって非晶質である。グリコリド90%とL‐ラクチド10%のコポリマーが、Vicrylという商用名の吸収性縫合糸材料としてエシコン社(Ethicon)によって開発された。このコポリマーは、3ヶ月〜4ヶ月で吸収されるが、強度保持期間がやや長い。
【0120】
ポリジオキサノンは、p‐ジオキサノンの開環重合によって調製することができる。このポリジオキサノンが、エシコン社(Ethicon)が販売するPDSとして知られる、初めに臨床試験されたモノフィラメント合成縫合糸となった。この材料は、結晶度が約55%、ガラス転移温度が−10℃〜0℃である。このポリマーは、解重合してモノマーに戻るのを防止するために最低温度で処理すべきである。ポリジオキサノンは、植え込みに対して急性または毒性の影響を示さなかった。このモノフィラメントは、3週間後にその初めの破壊強さを50%喪失し、6ヶ月以内に吸収されるため、治癒が遅い創傷用の他の製品よりも有利である。
【0121】
ポリ(ε‐カプロラクトン)を、融点が59℃〜64℃、ガラス転移温度が−60℃の半結晶性ポリマーを生成するε−カプロラクトンの開環重合によって調製することができる。このポリマーは、組織適合性と見なされ、欧州では生体分解性縫合糸として用いられている。このホモポリマーは、約2年の分解時間を有するため、生体吸収速度を促進するためにコポリマーを合成した。例えば、ε‐カプロラクトンとDL‐ラクチドのコポリマーで、分解速度がより速い材料を調製した。純粋なPGAに比べて剛性が低いε‐カプロラクトンとグリコリドのブロックコポリマーが、ニュージャージー州ソマービルに所在のエシコン社(Ethicon, Inc.)によってMonocrylの商用名でモノフィラメント縫合糸として販売されている。
【0122】
本発明の複合材料は、一例として以下の手順で製造することができる。予め調製したポリマー、すなわち第1の生分解性および/または生体吸収性材料75、第2の生分解性および/または生体吸収性材料80、分解添加剤95(または他の添加剤)、オプションの薬物99、および要求されるあらゆる賦形剤を、インペラーなどの従来の混合装置が内部に取り付けられた従来の混合装置内に別々に導入する。すなわち、ポリマー材料75、分解添加剤95、および薬物99(含める場合)をまず混合して、封入された分解添加剤95および薬物99(含める場合)を形成する。分解添加剤95および薬物99が、オプションとして生分解性および/または生体吸収性ポリマー75による封入の一部として確実に含められるように(図6〜図9)、生分解性および/または生体吸収性材料ポリマー75、分解添加剤95、およびオプションの薬物99を、均一に分散するまで当分野で周知の所定のポリマーに適した温度で混合する。次に、この混合物を混合装置から取り出し、室温まで冷却し、グラインディングし、所定期間に亘って高温で、大気圧より低い圧力で乾燥させる。噴霧乾燥やコアセルベーションなどの一般的な封入法を用いることができる。別法では、押出し、トレー乾燥、またはドラム乾燥などによって固体にし、これを所望の大きさに砕いて封入を行うことができる。次に、封入された分解添加剤95および薬物99(含む場合)を、適当な温度で、上記および後述する加工ステップで生分解性および/または生体吸収性材料80と混合する。
【0123】
本発明に用いる全ての加工技術は、薬物99、分解添加剤95、ポリマー材料75、およびポリマー材料80を絶対に分解しない温度であることに留意することが重要である。
【0124】
上記したように、医療装置50自体などの製品は、様々な従来の射出成型および押出成型加工、および許容される温度の乾燥窒素大気圧チャンバを備えた成型設備を用いて、本発明の複合材料から成型することができる。
【0125】
本発明の複合材料は、大きなアレイの有用な装置50を形成するために様々な従来の方法で溶融加工することができる。このような材料を射出成型または圧縮成型して、植え込み可能な生分解性および/または生体吸収性医療装置および外科器具、具体的には、薬物99を溶出できる心臓弁を含む心臓弁などの生分解性および/または生体吸収性心血管装置、および溶出ステントを含むステントなどの生分解性および/または生体吸収性血管装置を形成することができる。
【0126】
別法では、本複合材料(融液または溶液)を押出して繊維や膜を形成することができる。このように形成されたフィラメントを、マルチフィラメント糸として紡ぐ、メッシュにする、編む、または織って、従来の成型技術で強化装置50に形成し、引張り強さが高くて所望のレベルのコンプライアンスおよび/または延性を有する構造が望ましい場合に用いる。有用な実施形態は、損傷したかまたは損傷しやすく外科的に除去される心臓弁を含む心組織および血管の領域に用いられる、予備成形された弁またはステントを含む。
【0127】
本発明のシステムおよび方法に従えば、生体吸収性ポリマー材料からなる薬物送達装置は、任意の様々な加工法によって形成することができる。薬物送達装置を形成するために用いられる加工法は、装置を構成する生体吸収性ポリマー材料の基質に混入される、高温では不安定な薬物または他の生体活性物質の分解を最小限にするために低温加工法とするのが好ましい。このような加工法は、例えば、乾式紡糸および湿式紡糸を含む紡糸、静電紡糸(electrostatic fiber spinning)、混合繊維(co-mingled fibers)、溶剤抽出、コーティング、ワイヤコーティング、中空繊維および膜紡糸、円盤紡糸(厚みが均一の薄い膜)、インクジェット印刷(三次元印刷など)、凍結乾燥、押出しおよび共押出し、超臨界流体、溶媒キャストフィルム、または溶媒キャストチューブなどとして溶媒を用いた低温溶媒式加工法によって生体吸収性ポリマー材料から装置を形成することを含むことができる。別法では、薬物送達装置は、例えば、紡糸、押出し、共押出し、射出成型、吹込み成型、連続引抜きおよび圧縮成型(plutrusion and compression molding)、などによって、高温で安定する薬物または作用物質が溶融状態での従来のポリマー処理方法によっても形成することができる。別法では、薬物は、ポリマー基質内で拡散させて薬物送達装置に混入することもできる。これは、薬物を多く含む溶液中で装置を膨張させて高圧で拡散させる、または超臨界流体を用いて装置内の薬物を膨張させて拡散させるなどのいくつかの方法によって達成することができる。別法では、装置を生体吸収性ポリマーから形成した後に、薬物または作用物質を、装置にスプレー、浸漬、またはコーティングすることができる。いずれの場合も、薬物または作用物質が用いられる場合は、ポリマー基質と薬物または作用物質の混合物を、例えば、所望に応じて、後に様々なジオメトリまたは構造に操作できる繊維、膜、ディスク/リング、またはチューブなどの構造に変化させる。
【0128】
様々な加工法により、加工する生体吸収性ポリマーに様々な構造、ジオメトリ、または構成を付与することができる。例えば、硬質ポリマーから加工されたチューブは、極めて硬質になる傾向にあるが、静電法または凍結乾燥によって加工すると極めて柔軟にすることができる。硬質ポリマーから形成する場合、チューブは中実であり、静電法または凍結乾燥による場合、チューブは多孔質である。他の加工法により、繊維、超極細繊維、薄膜および厚膜、ディスク、発泡体、微小球、さらに複雑なジオメトリまたは構成さえも含みうる別のジオメトリおよび構造を付与することができる。溶融物または溶液から加工した繊維、膜、およびチューブは、編組みおよび/またはレーザーカットによって、管状、スライドとロック、螺旋、または他の形などの様々なデザインにさらに加工することができる。様々な加工法によって形成される構造、ジオメトリ、または構成における差異は、所望の寸法、強度、薬物送達、および視覚の特性を有する様々な薬物送達装置を形成するのに有用である。繊維、膜、またはチューブは、ステントの形状などの所望のジオメトリまたは構造にレーザーカットすることができる。他の機械加工技術を用いることもできる。
【0129】
異なる加工法も同様に、加工する生体吸収性ポリマーの形態の特性を変更することができる。例えば、ポリマーの希釈溶液を急速に攪拌すると、ポリマーは、構造の全体の軸に概ね平行なポリマー鎖を有する傾向にある。他方、ポリマー溶液またはポリマー溶融物を剪断し、熱安定状態に急冷すると、ポリマー鎖は、剪断方向に平行に延びる傾向にある。さらに他の形態の変化も、他の加工技術によって生じさせることができる。このような変化の例として、例えば、球晶からフィブリルへの変換、多形結晶の構成の変化、既に形成された結晶ラメラの再配向、配向された晶子の形成、非晶性ポリマー鎖の配向、結晶化、および/またはこれらの組合せを挙げることができる。
【0130】
超臨界二酸化炭素などの超臨界流体によって形成される生体吸収性ポリマー材料からなるステントの場合、超臨界流体を用いて、押出し、成型、または他の従来の加工法の際に処理温度を下げることができる。繊維、チューブ、膜、または発泡体などの様々な構造は、超臨界流体を用いて形成することができ、超臨界流体を用いる低温法では、形成される構造内に混入される薬物の分解が最小限になる傾向にある。
【0131】
本発明に従った薬物送達装置を構成する生体吸収性ポリマー材料は、装置の放射線不透過性を向上させるために、生体吸収性ポリマー材料の基質の加工中に直接に添加される放射線不透過性添加剤を含むことができる。放射線不透過性添加剤の例として、硫酸バリウム、次炭酸ビスマス、酸化ビスマス、および/またはヨウ素化合物などの無機充填材を含むことができる。放射線不透過性添加剤は、代わりに、タンタル、タングステン、または金などの金属粉末、あるいは金、プラチナ、イリジウム、パラジウム、ロジウム、これらの組合せ、または当分野で周知の他の材料を有する金属合金を含むことができる。放射線不透過性材料の粒子の大きさは、ナノメーターからミクロンの範囲とすることができ、より好ましくは約1μm〜約5μmであり、放射線不透過性材料の量は、0wt%〜99wt%の範囲とすることができる。
【0132】
放射線不透過性材料が生体吸収性材料の基質全体に分散すると、放射線不透過性添加剤の密度が、通常は極めて高くなるため、所望に応じて、分散技術を利用して、放射線不透過性添加剤を生体吸収性材料全体に分散させるのが好ましい。このような技術の例として高剪断混合(high shear mixing)、界面活性剤および潤滑剤の添加、粘度の制御、添加剤の表面の改変、および他の粒子の大きさ、形状、および分散の技術を挙げることができる。これに関して、放射線不透過性材料は、装置の生体吸収性材料全体に均一に分布させるか、または上記と同様にマーカーと見えるように装置の特定の部分に集中させることもできることを理解されたい。
【0133】
本発明のシステムおよび方法に従った薬物送達装置内に含められる薬物または他の作用物質の量は、薬物送達装置の約0wt%〜99wt%(装置の重量パーセント)の範囲とすることができる。このような薬物または他の作用物質は、様々な方法で装置内に混入することができる。例えば、このような薬物または他の作用物質は、装置が形成された後にその装置にコーティングすることができる。この場合、コーティングは、このような薬物または他の作用物質が混入された生体吸収性ポリマーからなる。別法では、薬物または他の作用物質は、装置を構成する生体吸収性材料の基質に混入することができる。生体吸収性ポリマーの基質に含められた薬物または作用物質の量は、所望に応じて、前記したコーティング技術で設けられる薬物または作用物質の量と同じでも異なってもよい。薬物送達装置内またはその表面に薬物または他の作用物質を混入するこれらの様々な技術を組み合わせて、装置の性能を最適化し、装置からの薬物または他の作用物質の放出の制御を容易にすることができる。
【0134】
薬物または作用物質が、装置を構成する生体吸収性ポリマーの基質内に混入されている場合、例えば、薬物または作用物質が、装置の分解の際に拡散によって放出される。拡散によって放出される薬物または作用物質は、コーティング技術を用いた場合に比べて放出期間が長くなり、局所的な病変および拡散した病変またはその状態をより効率的に治療することができる傾向にある。薬物または作用物質の広域送達の場合、このような薬物または作用物質の拡散放出は効果的である。ポリマーの組成およびそれらの拡散および吸収の特性により、このような装置の薬物溶出プロフィールが制御される。薬物放出動態は、薬物の拡散およびポリマーの吸収によって制御される。当初は、ほとんどの薬物が、装置表面およびバルクからの拡散によって放出され、次いで、ポリマーの吸収による薬物の放出に徐々に移行する。薬物の放出を制御する他の因子も存在するであろう。ポリマーの組成が、同じモノマーユニット(例えば、ラクチド、グリコリド)からなる場合、拡散特性および吸収特性は、混合されたモノマーから形成されたポリマーに比べてより均一である。また、各層で異なる薬物が設けられた種々のポリマーの層が存在する場合、各層からの薬物の放出がより一層制御される。ポリマーが完全に吸収されるまで装置に薬物を残存させることが可能であるため、装置の寿命に亘って薬物を放出することができる。
【0135】
本発明のシステムおよび方法に従った薬物送達装置は、装置の活発な薬物送達段階で、装置の機械的な完全性が維持されるのが好ましい。薬物送達が完了すると、装置の構造が、装置を構成している材料が生体吸収されて消失するのが理想である。薬物送達装置を構成する生体吸収性材料は、たとえ装置が患者の体内に配置されても、装置が植え込まれる組織と装置との相互作用が最小限となるように、装置が組織に対して生体適合性であるのが好ましい。組織が配置される組織の炎症を最小限にすることが、同様に、たとえ装置の生体吸収性材料の分解が起こったとしても好ましい。複数の薬物治療を行うために、濃縮または封入された薬物粒子またはカプセルをポリマー基質に含めることができる。このような一部の活性成分が、炎症の抑制および血栓の抑制などの様々な治療効果を果たすことができる。
【0136】
上記したように、ポリマーステントは、例えば表面改変などのコーティングとして治療薬を含むことができる。別法では、治療薬を、例えばコーティングを必要としないバルク改変などでステント構造内に混入することができる。生物学的安定性(biostable)および/または生体吸収性ポリマーから形成されたステントの場合は、コーティングが用いられる場合、そのコーティングを生物学的安定性または生体吸収性とすることができる。しかしながら、上記したように、装置自体が送達デポーから形成されるため、コーティングは必要ないであろう。この実施形態により、様々な利点が得られる。例えば、1または複数の治療薬は、約50wt%超の高い濃度にすることができる。加えて、濃度の高い1つまたは複数の治療薬により、長い期間に亘って広域薬物送達(5mm超)が可能となる。これにより、拡散した病変、分岐した病変、小さくて蛇行した血管、および脆弱なプラークなどの様々な病変を治療することができるこのような薬物を含むステントは、バルーン拡張型、自己拡張型、またはバルーン補助自己拡張型システムなどの様々な送達システムによって送達することができる。
【0137】
上記したように、本発明の複合材料は、基材をコーティングするために用いることもできる。すなわち、本複合材料は、例えばステント50のフープ、ループ、可撓性リンク、ブリッジ、または延長部、または心臓弁50のハウジング、フラップ、または他の構成要素などの医療装置のメッシュ、様々な構造部品、および要素などの生体適合性基材などの生分解性および/または生体吸収性ポリマーコーティングや生分解性および/または生体吸収性薬物溶出ポリマーコーティングとして役割を果たす。コーティングすなわち混合物70は、本発明の液体複合材料を用いて調製して、浸漬、吹付け、はけ塗り、またはローラー塗りなどの従来のコーティング技術によって基材に付着させることができる。
【0138】
加えて、例えば、心臓の血管、心筋層、心内膜および心外膜、または囲心腔を含む心組織における脈管形成および/または筋発生を実現するべく、組織の薬物送達基質(例えば、成長因子)が望ましい用途に特に適している膜を形成するために本複合材料を成型することができる。
【0139】
さらに、本発明の複合材料は、うっ血性心不全(CHF)または虚血性疾患などの心血管疾患の治療のための筋形成や血管形成を含む心組織のリモデリングなどの組織の速い速度での成長が望ましい用途に有用な、連続気泡または独立気泡(open or closed cells)を備えた気泡体に形成することができる。
【0140】
より詳細には、本発明のフィラメント、膜、気泡体、成型製品、および注入可能な装置の外科手術用途および医療用途は、脈管や心組織に限定されるものではない。本発明に従った医療装置50は、クランプ、ネジ、およびプレートなどの装置;クリップ;ステープル;フック、ボタン、およびスナップ;プロテーゼや植え込み片などの予備成形組織代用品;注入可能なポリマー;椎間板;縫合糸アンカーなどのアンカー装置;中隔閉塞装置(septal occlusion devices);注入可能な欠損部充填剤;予備形成された欠損部充填剤;骨蝋;軟骨置換材;脊椎固定装置;薬物送達装置;連続気泡または独立気泡のフォームなどに用いることもできる。
【0141】
本発明の全ての実施形態では、医療装置50の機能が果たされたら、生分解性および/または生体吸収性材料75および80の全てを短時間の内に患者の体内から除去すなわち排除することができる。したがって、本発明により、医師が同じ治療部位を再び処置して、様々なケース(医療装置50がステントである場合など)の脈管の疾患組織(または器官)を治療することができる。したがって、本発明は、装置50(図3、図5、図8、および図9)から薬物99をプログラム可能に放出させることができる。
【0142】
上記した説明は、本発明の好適な実施形態を包含するが、本発明の概念から逸脱することなく、開示した本発明の原理に従って変更形態および改良形態が可能であることを理解されたい。
【0143】
本発明の好適な実施形態を図示および説明したが、当業者には、このような実施形態が単なる一例であることが明らかであろう。当業者であれば、本発明から逸脱することなく、様々な変更形態、変形形態、および置換形態に想到するであろう。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲および概念によってのみ限定されるものである。
【0144】
〔実施の態様〕
(1)医療装置において、
第1の生分解性および/または生体吸収性材料と、第2の生分解性および/または生体吸収性材料とからなる構造、
を含み、
前記第1の生分解性および/または生体吸収性材料は、その分解速度が、前記第2の生分解性および/または生体吸収性材料の分解速度よりも速く、
前記構造は、前記第1の生分解性および/または生体吸収性材料の露出で分解促進期間が始まる、医療装置。
(2)実施態様(1)に記載の医療装置において、
前記分解促進期間は、前記医療装置が機能の目的を果たした時点で始まる、医療装置。
(3)実施態様(2)に記載の医療装置において、
前記第2の生分解性および/または生体吸収性材料の分解速度は、3ヶ月〜48ヶ月である、医療装置。
(4)実施態様(3)に記載の医療装置において、
前記第1の生分解性および/または生体吸収性材料の分解速度は、1日〜3ヶ月である、医療装置。
(5)実施態様(4)に記載の医療装置において、
前記第2の生分解性および/または生体吸収性材料は、ポリ乳酸系ポリマー、ポリグリコリド系ポリマー、ポリ(α‐ヒドロキシエステル)、例えば、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、ポリ(p‐ジオキサノン)、ポリトリメチレンカーボネート、ポリオキサエステル(poly (oxaesters))、ポリオキサアミド(poly (oxaamides))、ポリ乳酸‐PLLA、ポリ(ラクチド/グリコリド)、ポリ(グリコリド/カプロラクトン)(75/25)、ポリ(グリコリド/トリメチレンカーボネート)、チロシン由来ポリアミノ酸、ポリDTH‐カーボネート、ポリアリレート(poly (arylates))、ポリイミノ‐カーボネート、リン酸含有ポリマー、ポリリン酸エステルおよびポリホスファゼン、ポリエチレングリコール系ブロックコポリマー、PEG‐PLA、PEG‐ポリプロピレングリコール、PEG‐ポリブチレンテレフタレート、ポリ(α‐リンゴ酸)、ポリエステルアミド、ポリアルカノエート(polyalkanoates)、ポリヒドロキシブチレート(HB)、ポリヒドロキシバレレート(HV)コポリマー、DLPLA;PLA/PGAコポリマー(95/5;85/15);PLLAよりも吸収時間が遅いPLA‐PCLコポリマー、ならびにこれらのコポリマーおよび混合物からなる群から選択される、医療装置。
【0145】
(6)実施態様(5)に記載の医療装置において、
前記第1の生分解性および/または生体吸収性材料は、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ(α‐ヒドロキシエステル)、ポリ無水物、例えば、ポリ(カルボキシフェノキシヘキサン‐セバシン酸)、ポリ(フマル酸‐セバシン酸)、ポリ(カルボキシフェノキシヘキサン‐セバシン酸)、ポリ(イミド‐セバシン酸)(50‐50)、ポリ(イミド‐カルボキシフェノキシヘキサン)(33‐67)、チロシン由来ポリアミノ酸、ポリオルトエステル(ジケテンアセタール系ポリマー)、リン酸含有ポリマー、PGA/PLA(90/10);PGA/PCL(75/25;50/50;65/35);PGAよりも吸収時間が長いポリ(p‐ジオキサノン)およびこれらの誘導体、ポリエチレングリコール;クエン酸エステル、およびより迅速な吸収のために溶解してより大きい表面積を形成する他の水溶性材料、ならびにこれらのコポリマーおよび混合物からなる群から選択される、医療装置。
(7)実施態様(6)に記載の医療装置において、
前記第1の生分解性および/または生体吸収性材料、および、前記第2の生分解性および/または生体吸収性材料の一方または両方と共に(together with)、少なくとも1種類の薬物をさらに含む、医療装置。
(8)実施態様(7)に記載の医療装置において、
前記医療装置の機能の目的は、少なくとも1日〜最大約6ヶ月の期間に亘って前記少なくとも1種類の薬物を送達することである、医療装置。
(9)実施態様(8)に記載の医療装置において、
前記医療装置の機能の目的は、7日〜60日の期間に亘って前記少なくとも1種類の薬物を送達することである、医療装置。
(10)実施態様(9)に記載の医療装置において、
前記少なくとも1種類の薬物は、ラパマイシンである、医療装置。
【0146】
(11)実施態様(4)に記載の医療装置において、
前記第1の生分解性および/または生体吸収性材料、および、前記第2の生分解性および/または生体吸収性材料の少なくとも一方は、結晶特性を有する、医療装置。
(12)実施態様(4)に記載の医療装置において、
前記第1の生分解性および/または生体吸収性材料、および、前記第2の生分解性および/または生体吸収性材料の少なくとも一方は、半結晶特性を有する、医療装置。
(13)実施態様(4)に記載の医療装置において、
前記第1の生分解性および/または生体吸収性材料、および、前記第2の生分解性および/または生体吸収性材料の少なくとも一方は、非晶質特性を有する、医療装置。
(14)実施態様(4)に記載の医療装置において、
前記第1の生分解性および/または生体吸収性材料は、前記医療装置のポリマーコアとして機能する、医療装置。
(15)実施態様(4)に記載の医療装置において、
前記第1の生分解性および/または生体吸収性材料、および、前記第2の生分解性および/または生体吸収性材料の一方または両方と共に、少なくとも1種類の添加剤をさらに含む、医療装置。
【0147】
(16)実施態様(15)に記載の医療装置において、
前記少なくとも1種類の添加剤は、分解添加剤である、医療装置。
(17)実施態様(16)に記載の医療装置において、
前記分解添加剤は、プロティナーゼK、ブロメライン、リパーゼ型酵素、R. delemerリパーゼ、Rhizopus arrhizusリパーゼ、Pseudomonaseリパーゼ、微生物型酵素、Amycolatopsis型酵素、およびPHBデポリメラーゼからなる群から選択される、医療装置。
(18)実施態様(17)に記載の医療装置において、
前記少なくとも1種類の添加剤は、生体活性ガラス、セラミック、リン酸カルシウム、無機珊瑚、カフェイン、無機塩基性充填材、カルシウムヒドロキシアパタイト(calcium hydroxyapatite)、炭酸アパタイト(carbonated apatite)、リン酸三カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸リン酸カルシウム(carbonated calcium phosphates)、水酸化マグネシウム、酸性/塩基性滴定化合物、アミンモノマー、および乳酸デヒドロゲナーゼからなる群から選択される緩衝剤をさらに含む、医療装置。
(19)実施態様(17)に記載の医療装置において、
前記少なくとも1種類の添加剤は、無機充填剤、硫酸バリウム、次炭酸ビスマス、酸化ビスマス、ヨウ素化合物、金属粉末、タンタル、タングステン、金、金属合金、プラチナ、イリジウム、パラジウム、およびロジウムからなる群から選択される放射線不透過性物質をさらに含む、医療装置。
(20)実施態様(4)に記載の医療装置において、
前記医療装置は、ステントを含む、医療装置。
【0148】
(21)実施態様(10)に記載の医療装置において、
前記医療装置は、ステントを含む、医療装置。
(22)実施態様(7)に記載の医療装置において、
前記少なくとも1種類の薬物は、異なるポリマー層として前記第1の生分解性および/または生体吸収性材料、および、前記第2の生分解性および/または生体吸収性材料の一方または両方からプログラム可能に放出される、医療装置。
【図面の簡単な説明】
【0149】
【図1】第1の分解速度で分解する第1の生分解性および/または生体吸収性材料、およびこの第1の生分解性および/または生体吸収性材料の上に積層またはコーティングされた第2の生分解性および/または生体吸収性材料からなる複合構造を有しており、この第1の生分解性および/または生体吸収性材料の第1の分解速度が、第2の生分解性および/または生体吸収性材料の第2の分解速度よりも速い、本発明に従った医療装置の模式図である。
【図2】本発明に従った図1の医療装置の構造の一部の模式図である。
【図3】本発明に従った、放出するために薬物を内部に含む図1の医療装置の構造の一部の模式図である。
【図4】本発明に従った、放出するために分解添加剤、緩衝剤、または放射線不透過性物質などの添加剤を内部に含む図1の医療装置の構造の一部の模式図である。
【図5】本発明に従った、放出するために分解添加剤、緩衝剤、または放射線不透過性物質などの添加剤と薬物の両方を内部に含む図1の医療装置の構造の一部の模式図である。
【図6】本発明に従った、第1の生分解性および/または生体吸収性材料および封入された分解添加剤からなる複合構造を有する円筒状の医療装置を示す模式図である。
【図7】本発明に従った、図6の医療装置の構造の一部の模式図である。
【図8】本発明に従った、放出するために薬物を内部に含む図6の医療装置の構造の一部の模式図である。
【図9】本発明に従った、放出するために分解添加剤および薬物の両方が内部に封入された図6の医療装置の構造の一部の模式図である。
【図10】本発明に従った、植え込み用生分解性および/または生体吸収性医療装置の所望の質量減少曲線に対する既知の生体吸収性医療インプラントに関連した現行の質量減少曲線の比較を含む、植え込み用生分解性および/または生体吸収性医療装置の時間の関数である物理的構造の分解の様々な移行段階を例示するグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療装置において、
第1の生分解性および/または生体吸収性材料と、第2の生分解性および/または生体吸収性材料とからなる構造、
を含み、
前記第1の生分解性および/または生体吸収性材料は、その分解速度が、前記第2の生分解性および/または生体吸収性材料の分解速度よりも速く、
前記構造は、前記第1の生分解性および/または生体吸収性材料の露出で分解促進期間が始まる、医療装置。
【請求項2】
請求項1に記載の医療装置において、
前記分解促進期間は、前記医療装置が機能の目的を果たした時点で始まる、医療装置。
【請求項3】
請求項2に記載の医療装置において、
前記第2の生分解性および/または生体吸収性材料の分解速度は、3ヶ月〜48ヶ月である、医療装置。
【請求項4】
請求項3に記載の医療装置において、
前記第1の生分解性および/または生体吸収性材料の分解速度は、1日〜3ヶ月である、医療装置。
【請求項5】
請求項4に記載の医療装置において、
前記第2の生分解性および/または生体吸収性材料は、ポリ乳酸系ポリマー、ポリグリコリド系ポリマー、ポリ(α‐ヒドロキシエステル)、例えば、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、ポリ(p‐ジオキサノン)、ポリトリメチレンカーボネート、ポリオキサエステル、ポリオキサアミド、ポリ乳酸‐PLLA、ポリ(ラクチド/グリコリド)、ポリ(グリコリド/カプロラクトン)(75/25)、ポリ(グリコリド/トリメチレンカーボネート)、チロシン由来ポリアミノ酸、ポリDTH‐カーボネート、ポリアリレート、ポリイミノ‐カーボネート、リン酸含有ポリマー、ポリリン酸エステル、およびポリホスファゼン、ポリエチレングリコール系ブロックコポリマー、PEG‐PLA、PEG‐ポリプロピレングリコール、PEG‐ポリブチレンテレフタレート、ポリ(α‐リンゴ酸)、ポリエステルアミド、ポリアルカノエート、ポリヒドロキシブチレート(HB)、ポリヒドロキシバレレート(HV)コポリマー、DLPLA;PLA/PGAコポリマー(95/5;85/15);PLLAよりも吸収時間が遅いPLA‐PCLコポリマー、ならびにこれらのコポリマーおよび混合物からなる群から選択される、医療装置。
【請求項6】
請求項5に記載の医療装置において、
前記第1の生分解性および/または生体吸収性材料は、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ(α‐ヒドロキシエステル)、ポリ無水物、例えば、ポリ(カルボキシフェノキシヘキサン‐セバシン酸)、ポリ(フマル酸‐セバシン酸)、ポリ(カルボキシフェノキシヘキサン‐セバシン酸)、ポリ(イミド‐セバシン酸)(50‐50)、ポリ(イミド‐カルボキシフェノキシヘキサン)(33‐67)、チロシン由来ポリアミノ酸、ポリオルトエステル(ジケテンアセタール系ポリマー)、リン酸含有ポリマー、PGA/PLA(90/10);PGA/PCL(75/25;50/50;65/35);PGAよりも吸収時間が長いポリ(p‐ジオキサノン)およびこれらの誘導体、ポリエチレングリコール;クエン酸エステル、およびより迅速な吸収のために溶解してより大きい表面積を形成する他の水溶性材料、ならびにこれらのコポリマーおよび混合物からなる群から選択される、医療装置。
【請求項7】
請求項6に記載の医療装置において、
前記第1の生分解性および/または生体吸収性材料、および、前記第2の生分解性および/または生体吸収性材料の一方または両方と共に、少なくとも1種類の薬物をさらに含む、医療装置。
【請求項8】
請求項7に記載の医療装置において、
前記医療装置の機能の目的は、少なくとも1日〜最大約6ヶ月の期間に亘って前記少なくとも1種類の薬物を送達することである、医療装置。
【請求項9】
請求項8に記載の医療装置において、
前記医療装置の機能の目的は、7日〜60日の期間に亘って前記少なくとも1種類の薬物を送達することである、医療装置。
【請求項10】
請求項9に記載の医療装置において、
前記少なくとも1種類の薬物は、ラパマイシンである、医療装置。
【請求項11】
請求項4に記載の医療装置において、
前記第1の生分解性および/または生体吸収性材料、および、前記第2の生分解性および/または生体吸収性材料の少なくとも一方は、結晶特性を有する、医療装置。
【請求項12】
請求項4に記載の医療装置において、
前記第1の生分解性および/または生体吸収性材料、および、前記第2の生分解性および/または生体吸収性材料の少なくとも一方は、半結晶特性を有する、医療装置。
【請求項13】
請求項4に記載の医療装置において、
前記第1の生分解性および/または生体吸収性材料、および、前記第2の生分解性および/または生体吸収性材料の少なくとも一方は、非晶質特性を有する、医療装置。
【請求項14】
請求項4に記載の医療装置において、
前記第1の生分解性および/または生体吸収性材料は、前記医療装置のポリマーコアとして機能する、医療装置。
【請求項15】
請求項4に記載の医療装置において、
前記第1の生分解性および/または生体吸収性材料、および、前記第2の生分解性および/または生体吸収性材料の一方または両方と共に、少なくとも1種類の添加剤をさらに含む、医療装置。
【請求項16】
請求項15に記載の医療装置において、
前記少なくとも1種類の添加剤は、分解添加剤である、医療装置。
【請求項17】
請求項16に記載の医療装置において、
前記分解添加剤は、プロティナーゼK、ブロメライン、リパーゼ型酵素、R. delemerリパーゼ、Rhizopus arrhizusリパーゼ、Pseudomonaseリパーゼ、微生物型酵素、Amycolatopsis型酵素、およびPHBデポリメラーゼからなる群から選択される、医療装置。
【請求項18】
請求項17に記載の医療装置において、
前記少なくとも1種類の添加剤は、生体活性ガラス、セラミック、リン酸カルシウム、無機珊瑚、カフェイン、無機塩基性充填材、カルシウムヒドロキシアパタイト、炭酸アパタイト、リン酸三カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸リン酸カルシウム、水酸化マグネシウム、酸性/塩基性滴定化合物、アミンモノマー、および乳酸デヒドロゲナーゼからなる群から選択される緩衝剤をさらに含む、医療装置。
【請求項19】
請求項17に記載の医療装置において、
前記少なくとも1種類の添加剤は、無機充填剤、硫酸バリウム、次炭酸ビスマス、酸化ビスマス、ヨウ素化合物、金属粉末、タンタル、タングステン、金、金属合金、プラチナ、イリジウム、パラジウム、およびロジウムからなる群から選択される放射線不透過性物質をさらに含む、医療装置。
【請求項20】
請求項4に記載の医療装置において、
前記医療装置は、ステントを含む、医療装置。
【請求項21】
請求項10に記載の医療装置において、
前記医療装置は、ステントを含む、医療装置。
【請求項22】
請求項7に記載の医療装置において、
前記少なくとも1種類の薬物は、異なるポリマー層として前記第1の生分解性および/または生体吸収性材料、および、前記第2の生分解性および/または生体吸収性材料の一方または両方からプログラム可能に放出される、医療装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2008−110204(P2008−110204A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−262362(P2007−262362)
【出願日】平成19年10月5日(2007.10.5)
【出願人】(597041828)コーディス・コーポレイション (206)
【氏名又は名称原語表記】Cordis Corporation
【Fターム(参考)】