説明

分解処理剤及び分解処理方法

【課題】低コストで環境に優しい植物性物質の分解処理剤、ないし当該分解処理剤を用いた植物性物質の分解処理方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る分解処理剤は、光合成細菌の培養液を体積比で15〜20含むと共に、発酵菌の培養液を15〜45含み、更に放線菌の培養液を10〜30含んで構成される。又、本発明に係る分解処理方法は、本発明に係る分解処理剤を植物性物質に散布して成る。
【効果】強繊維性で難分解性の処理対象であっても十分速い分解速度において分解可能でありながら、低コストで環境に優しい分解処理剤ないし分解処理方法を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芝カス(サッチ)や枯れ草、落ち葉等の植物性繊維(植物性物質)を分解する分解処理剤及び分解処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴルフ場のグリーンや庭園等において生育する芝は、定期的に刈り込まれ、あるいは枯死部の除去がなされ、刈りカスや枯れカスといった芝カスが生じる。芝カスは、天然の微生物では分解が難しい強い繊維質であり、集積のうえ長期間放置しても分解されず、サッチと呼ばれる残渣となって存続する。芝カスやサッチは、芝が生育する限り追加される一方、なかなか消失していかないため、それらの分解を促進する有効な分解処理剤の開発が望まれている。
【0003】
従来のサッチの分解処理剤として、下記特許文献1に記載のものが知られている。この分解処理剤は、ペニシリウム・ビライ(Penicilium bilaii)を芝に散布して芝根圏に寄生させ、有機酸を産生させてリグニン等を分解する微生物の活動する環境を調整するものであり、適宜スキムミルクや水、表面滑濯剤、崩壊剤、結合成型剤、粘度鉱物、水溶性高分子固着剤を含むものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4467945号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような分解処理剤では、ペニシリウム・ビライを培養しなければならないし、有効な分解速度を持たせるために様々な添加物を配合しなければならず、コストがかかるし、添加物によっては環境に影響を及ぼす可能性がある。
【0006】
そこで、請求項1,3に記載の発明は、低コストで環境に優しい植物性物質の分解処理剤,方法を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、分解処理剤にあって、光合成細菌の培養液を体積比で15〜20含むと共に、発酵菌の培養液を15〜45含み、更に放線菌の培養液を10〜30含むことを特徴とするものである。
【0008】
請求項2に記載の発明は、上記目的に加えて、更に分解処理能力を高くする目的を達成するため、上記発明にあって、黒糖及び/又は蜂蜜を添加することを特徴とするものである。
【0009】
上記目的を達成するために、請求項3に記載の発明は、分解処理方法にあって、上記の分解処理剤を、植物性物質に散布することを特徴とするものである。
【0010】
請求項4に記載の発明は、上記目的に加えて、更に分解処理能力を高くする目的を達成するため、上記発明にあって、植物性物質に腐葉土を混合させることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、植物性物質の分解処理剤において適切な種類の菌をそれぞれ適切な分量で配合し、あるいは植物性物質の分解処理方法においてその分解処理剤を用いたので、強繊維性で難分解性の処理対象であっても十分速い分解速度において分解可能でありながら、低コストで環境に優しい分解処理剤を提供することができる、という効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る実施の形態の例につき、適宜表に基づいて説明する。なお、当該形態は、下記の例に限定されない。
【0013】
本発明に係る分解処理剤は、光合成細菌、発酵菌、放線菌を含む。これらの配合比は、それぞれの菌を飽和状態まで培養した液体の体積比で、15〜20:15〜45:10〜30とする。
【0014】
光合成細菌は、有機化合物を光合成する細菌であり、次の4科で構成される。即ち、紅色非硫黄細菌(Rhodospirillum科Purple nonsulfur bacteria)、紅色硫黄細菌(Chromatiaceae科Purple sulfur bacteria)、緑色硫黄細菌(Chlorobiaceae科Green sulfur bacteria)、骨走性糸状緑色硫黄細菌(Chlorof lexaceae科Gliding filametous green sulfur bacteria)である。分解処理剤は、光合成細菌として、少なくとも何れかの科に属する細菌を含む。
【0015】
光合成細菌は、地球上に広く分布し、太陽光線のエネルギーを利用して有機化合物を生成し、又窒素固定を行う。光合成細菌は、炭酸同化とその逆の脱炭酸、窒素固定とその逆の脱窒、硫化物の酸化還元に関わっており、地球上の炭素、窒素、硫黄の循環に大きな役割を果たしていて、水質汚染箇所を始めとする環境悪化箇所に散布すると効果的である。
【0016】
又、特に紅色非硫黄細菌は、水田にも多く存在し、生活環境に適応範囲が広く、有機化合物の還元力が強い。よって、田畑牧場等に散布すると効果的で、有機酸の代謝と高い同化効率で農業用土壌の蓄積汚染を代謝により改善することが可能であり、塩基性肥料等の蓄積による連作障害の解消にも役立つ。
【0017】
発酵菌は、発酵作用を行う微生物で、乳酸菌、酵母菌、麹菌、ケカビ、メタン細菌、酢酸菌、クロカビ、アオカビ、アスペルギルス、クロストデイウム、コリネバクテリウムの少なくとも何れかから成る。
【0018】
乳酸菌(Lactobacyllus casei)は、古くから乳製品の原料として用いられ、登録されている菌類は数万類にのぼり、利用範囲の非常に広いものである。
【0019】
この内、Steptococcus lactisは、球形の乳酸菌で、チーズやヨーグルトの製造における種菌(スターター)に用いられている。又、Lactobacillus acidophilusは、乳児の腸から分離された菌で、有害菌の生育を抑える作用がある。Lactobacillus prantarumは、糠漬の発酵菌である。Pediococcus halophilusは、15%を超える食塩環境でも発酵し、みそや醤油の発酵に用いられる。Lactobacillus caseiは、棒状の乳酸菌で、乳酸飲料の発酵に用いられており、強い抗癌作用が認められるものである。Lactobacillus delbrueckilは、有機物の分解能力に優れている菌であり、抗癌作用を持つ。本発明の分解処理剤では、好ましくはこれらの少なくとも何れか1つが乳酸菌として用いられる。
【0020】
酵母菌(サッカロミケス科)は、大きさが5〜10ミクロンで、形が種類によって異なり、球型、卵形、レモン形等があるが、固定的なものではなく培養条件によって変化し、外界の状況により胞子を細胞内に形成する。酵母菌は、PH4.2付近の微酸性培地で良く繁殖し、その適温は27〜30℃である。酵母菌は、硫酸アンモニウムや尿酸等を同化してタンパク質を合成する。又、酵母菌は、糖類をアルコールと炭酸ガスに分解し、その際に熱を発生する。更に、酵母菌は、酸素を培養基の中に当てるとブドウ糖を酸化分解し、その際炭素ガスと水を生じ同時に多量の熱を発生する。
【0021】
酵母の成分は、培養法や種類によって異なるものの、タンパク質(特に核タンパク質)、ビタミン酵素類を含み、栄養価が高い。酵母菌の種類としては、アルコールを生成するアルコール酵母、清酒酵母、ブドウ酵母、ビール酵母や、パン酵母(イースト)、乾燥酵母、食用酵母、飼料酵母が例示される。酵母は、医薬品としてビタミン剤、酵素剤、栄養剤にも利用される。
【0022】
麹菌は、コウジカビ科に属し、納豆菌等が知られている。菌糸は無色で仕切があり、集まって綿毛状からフェルト状になる。分生子(無性のものでは胞子)ができると、黄色から黄緑色となり最後に又黄色となる。分生子や胞子の付き方は、まず菌糸上に単一で長さ2mm(ミリメートル)から数mmの分生子等を放出し、次いで球状又はフラスコ状に膨らむ。分生子や胞子は、径が0.03〜0.5mmで、全表面に棒状で長さ0.15〜0.2mmの分子を一重又は二重の放射状に出て、鎖のように並ぶ。分生子はナシ形で、大きさが4〜9ミクロン程度であり、発育の適温が37℃である。麹菌は、菌糸中に酵素を含み、デンプンやセルロース、タンパク質を分解し、又コウジ酸、シュウ酸、グルコン酸等の有機酸を作る。
【0023】
発酵菌は、発酵作用を行う微生物で、酵母、乳酸菌、ケカビ、メタン細菌、酢酸菌、黒カビ、アオカビ、アスペルギルス、クロストデイウム、コリネバクテリウムが含まれる。
【0024】
又、本発明に係る分解処理剤として、上述の通り光合成細菌、発酵菌、放線菌を含有させたものに、蜂蜜あるいは糖類の内少なくとも何れか一方を添加したものを採用して良い。これらの天然添加物を加える際、好適には加熱し及び/又は加水する。
【0025】
本発明に係る分解処理剤は、好適には次のように使用する。芝、枯れ草、落ち葉等の分解処理対象物に適宜土や砂等を加えて混ぜたものに対し、体積比で10〜200倍(より好適には50〜100倍)に希釈した本発明に係る分解処理剤を散布し、適宜掻き混ぜる。
【0026】
上記の性質を持つ光合成細菌、発酵菌、放線菌は調達ないし培養が比較的容易で、本発明に係る分解処理剤の製造は比較的容易である。又、本発明に係る分解処理剤は、微生物ないし天然物に由来しているため、散布により環境を汚染することがない。そして、分解処理された対象物は、バイオ肥料として用いることができる。当該肥料においては、微生物が入っており、土壌を蘇生型に改良することができ、当該土壌にて生育する植物につき病気にかかり難くすることが可能である。
【0027】
なお、本発明に係る植物性物質の分解処理剤の散布や、分解処理対象(植物性物質)に対する土等の混合等につき、分解処理方法として捉えることも可能である。
【実施例】
【0028】
続いて、微生物や天然添加物の配合比等を変化させてそれぞれ生成した、本発明に係る実施例と、本発明に属さない比較例につき説明する。なお、本発明は、これらの実施例に限定されない。
【0029】
[実施例1]
植物性物質としての、ゴルフ場で多用される各種の柴(刈り取り後通常の試験管と同等の大きさのケース内に入れたもの)に対し、腐葉土を若干量(柴に粗くまぶされる程度)混合し、更に体積比で光合成細菌20、発酵菌45、放線菌15、蜂蜜10、黒糖10である分解処理剤を水で100倍に希釈して投入した。そして、投入後経過日数、及びその日の最高最低気温、並びに外観により判定した分解率(分解の様子)を観察した。その観察の結果を、[表1]〜[表3]に示す。
【0030】
【表1】

【表2】

【表3】

【0031】
以上によれば、葉色を保ち密に生え高耐性・高環境適応性を持つように改良された、繊維質の強い難分解性のゴルフ場の芝(ペンクロス、L−93、ペンリンクス、ペンA−2、クレンショ、その他の芝)であっても、21日程度で分解を完了し、繊維質を消滅させることができる。
【0032】
なお、気温により分解日数が変化し、暑い程短くなるが、微生物の活動にとって暑すぎる希有な状態となると再び長くなる。又、本発明の分解処理剤を処理対象の芝に対して複数回散布しても良く、例えば臭気を消すため7日後程度に再度同種の分解処理剤をかけても良い。更に、高温環境として微生物の働きを良好にするため、処理対象に対してシートをかぶせても良い。好ましくは、分解処理剤の散布後よくかき混ぜてシートをかぶせ、7日後程度にシートを取り再度散布のうえ混ぜてシートをかぶせないこととする。
【0033】
[実施例2]
実施例1と同様の分解処理剤(希釈後)を、腐葉土ではなく川砂(一般用目土)を混合のうえ、同様に各種の刈り取り後の芝にかけ、同様に観察した結果を、[表4]〜[表6]に示す。
【0034】
【表4】

【表5】

【表6】

【0035】
以上によれば、繊維質の強い難分解性のゴルフ場の芝であっても、40日程度で8割以上分解でき、繊維質を大方消滅させることができる。又、繊維質の大半が分解した30日目以降の芝は、目土として使用可能である。但し、比較をすると腐葉土の方が速い分解速度となる傾向にある。これは、腐葉土の方が微生物を種別的にも量的にも多く保有しており、これらの微生物と本発明の分解処理剤の微生物が互いに活性化し効用を促進しているからと考えられる。
【0036】
[実施例3]
混合する土砂を川砂及び山砂の体積比1:1の混合物としたことを除き実施例1,2と同様の観察をし、その結果を、[表7]〜[表9]に示す。
【0037】
【表7】

【表8】

【表9】

【0038】
以上によれば、繊維質の強い難分解性のゴルフ場の芝であっても、31日程度で2割以上程度分解できる。
【0039】
[実施例4]
実施例1〜3と同様の分解処理剤(希釈後)を、腐葉土を混合のうえ、クレンショとその他の芝にかけ、実施例1より高温の環境で観察した結果を、[表10]に示す。
【0040】
【表10】

【0041】
以上によれば、気温が比較的高ければ、繊維質の強い難分解性のゴルフ場の芝であっても、18日程度で完全に分解(消滅)させることができる。
【0042】
[実施例5]
実施例1〜4と同様の分解処理剤(希釈後)を、腐葉土を混合のうえ、クレンショとその他の芝にかけ、実施例1より高温の環境で観察した結果を、[表10]に示す。
【0043】
【表10】

【0044】
以上によれば、気温が比較的高ければ、繊維質の強い難分解性のゴルフ場の芝であっても、18日程度で完全に分解(消滅)させることができる。
【0045】
[実施例6]
実施例1〜5と同様の分解処理剤(希釈後)を、腐葉土あるいは川砂を混合のうえ、芝ではなく枯れ草や落ち葉にかけ観察した結果を、[表11]に示す。
【0046】
【表11】

【0047】
以上によれば、枯れ草や落ち葉であっても、芝と同様に20日程度で完全に分解(消滅)させることができる。
【0048】
[比較例1]
体積比で光合成細菌10、発酵菌10、放線菌15、蜂蜜10、黒糖10である、本発明に属さない比較例1としての分解処理剤を水で100倍に希釈して、実施例1と同様、腐葉土入りの芝に投入し、分解率を観察した。その観察の結果を、[表12]〜[表14]に示す。
【0049】
【表12】

【表13】

【表14】

【0050】
以上によれば、繊維質の強い難分解性のゴルフ場の芝について、どの芝も30日後にようやく分解が始まり、40日経っても1割程度しか分解せず、比較例1の分解処理剤は分解速度の遅い非実用的なものとなっている。
【0051】
[比較例2]
体積比で光合成細菌10、発酵菌10、放線菌5、蜂蜜10、黒糖10である比較例2としての分解処理剤を水で100倍に希釈して、実施例1と同様、腐葉土入りの芝に投入し、分解率を観察した。その観察の結果を、[表15]〜[表17]に示す。
【0052】
【表15】

【表16】

【表17】

【0053】
以上によれば、繊維質の強い難分解性のゴルフ場の芝について、どの芝も30日経過後でも分解が始まらず、比較例2の分解処理剤は分解速度の遅い非実用的なものとなっている。
【0054】
[比較例3]
比較例2と同様の分解処理剤を水で100倍に希釈して、川砂入りの芝に投入し、分解率を観察した。その観察の結果を、[表18]〜[表20]に示す。
【0055】
【表18】

【表19】

【表20】

【0056】
以上によれば、繊維質の強い難分解性のゴルフ場の芝について、どの芝も30日経過後でも分解が始まらず、比較例3の分解処理剤は分解速度の遅い非実用的なものとなっている。
【0057】
[比較例4]
比較例2と同様の分解処理剤を水で100倍に希釈して、半々で混ぜた川砂及び山砂入りの芝に投入し、分解率を観察した。その観察の結果を、[表21]〜[表23]に示す。
【0058】
【表21】

【表22】

【表23】

【0059】
以上によれば、繊維質の強い難分解性のゴルフ場の芝について、どの芝も30日経過後でも分解が始まらず、比較例4の分解処理剤は分解速度の遅い非実用的なものとなっている。
【0060】
[比較例5]
体積比で光合成細菌10、発酵菌10、放線菌35、蜂蜜10、黒糖10である比較例5としての分解処理剤を水で100倍に希釈して、腐葉土入りの芝に投入し、分解率を観察した。その観察の結果を、[表24]〜[表26]に示す。
【0061】
【表24】

【表25】

【表26】

【0062】
以上によれば、繊維質の強い難分解性のゴルフ場の芝について、どの芝も25日後にようやく分解が始まるものとなっており、比較例5の分解処理剤は分解速度の遅い非実用的なものとなっている。
【0063】
[比較例6]
比較例5と同様の分解処理剤を水で100倍に希釈して、川砂入りの芝に投入し、分解率を観察した。その観察の結果を、[表27]〜[表29]に示す。
【0064】
【表27】

【表28】

【表29】

【0065】
以上によれば、繊維質の強い難分解性のゴルフ場の芝について、どの芝も25日後にようやく分解が始まるものとなっており、比較例6の分解処理剤は分解速度の遅い非実用的なものとなっている。
【0066】
[比較例7]
比較例5と同様の分解処理剤を水で100倍に希釈して、半々で混ぜた川砂及び山砂入りの芝に投入し、分解率を観察した。その観察の結果を、[表30]〜[表32]に示す。
【0067】
【表30】

【表31】

【表32】

【0068】
以上によれば、繊維質の強い難分解性のゴルフ場の芝について、どの芝も25日後にようやく分解が始まるものとなっており、比較例7の分解処理剤は分解速度の遅い非実用的なものとなっている。
【0069】
[比較例8]
体積比で光合成細菌20、発酵菌10、放線菌10、蜂蜜10、黒糖10である比較例8としての分解処理剤を水で100倍に希釈して、腐葉土入りの芝に投入し、分解率を観察した。その観察の結果を、[表33]〜[表35]に示す。
【0070】
【表33】

【表34】

【表35】

【0071】
以上によれば、繊維質の強い難分解性のゴルフ場の芝について、どの芝も28日経過後にようやく分解が始まることとなっており、比較例8の分解処理剤は分解速度の遅い非実用的なものとなっている。
【0072】
[比較例9]
比較例8と同様の分解処理剤を水で100倍に希釈して、川砂入りの芝に投入し、分解率を観察した。その観察の結果を、[表36]〜[表38]に示す。
【0073】
【表36】

【表37】

【表38】

【0074】
以上によれば、繊維質の強い難分解性のゴルフ場の芝について、どの芝も30日経過後でも分解されないものとなっており、比較例9の分解処理剤は分解速度の遅い非実用的なものとなっている。
【0075】
[比較例10]
比較例8と同様の分解処理剤を水で100倍に希釈して、半々で混ぜた川砂及び山砂入りの芝に投入し、分解率を観察した。その観察の結果を、[表39]〜[表41]に示す。
【0076】
【表39】

【表40】

【表41】

【0077】
以上によれば、繊維質の強い難分解性のゴルフ場の芝について、どの芝も30日経過後でも分解されないものとなっており、比較例10の分解処理剤は分解速度の遅い非実用的なものとなっている。
【0078】
[比較例11]
体積比で光合成細菌10、発酵菌20、放線菌10、蜂蜜10、黒糖10である比較例8としての分解処理剤を水で100倍に希釈して、腐葉土入りの芝に投入し、分解率を観察した。その観察の結果を、[表42]〜[表44]に示す。
【0079】
【表42】

【表43】

【表44】

【0080】
以上によれば、繊維質の強い難分解性のゴルフ場の芝について、どの芝も27日経過後にようやく分解が始まり、30日経過後で1割程度の分解に留まることとなっており、比較例11の分解処理剤は分解速度の遅い非実用的なものとなっている。
【0081】
[比較例12]
比較例11と同様の分解処理剤を水で100倍に希釈して、川砂入りの芝に投入し、分解率を観察した。その観察の結果を、[表45]〜[表47]に示す。
【0082】
【表45】

【表46】

【表47】

【0083】
以上によれば、繊維質の強い難分解性のゴルフ場の芝について、どの芝も29日経過後にようやく分解が始まることとなっており、比較例12の分解処理剤は分解速度の遅い非実用的なものとなっている。
【0084】
[比較例13]
比較例11と同様の分解処理剤を水で100倍に希釈して、半々で混ぜた川砂及び山砂入りの芝に投入し、分解率を観察した。その観察の結果を、[表48]〜[表50]に示す。
【0085】
【表48】

【表49】

【表50】

【0086】
以上によれば、繊維質の強い難分解性のゴルフ場の芝について、どの芝も26日経過後にようやく分解が始まることとなっており、比較例13の分解処理剤は分解速度の遅い非実用的なものとなっている。
【0087】
[参考例]
上記の各実施例や各比較例の分解処理剤の配合から蜂蜜のみを除いたものについて、同様に分解率を調べたところ、3〜10日の分解の進行遅れがみられた。又、同様に黒糖のみを除いたものについて調べたところ、3〜10日の分解の遅れがみられた。更に、同様に蜂蜜及び黒糖のみを除いたものについて調べたところ、5〜20日の分解の遅れがみられた。
【0088】
[まとめ]
実施例1〜5と比較例1を比較すると、比較例1〜3が、光合成細菌及び発酵菌の割合の少なさから、分解速度が不十分となっているのに対し、実施例1〜5は、光合成細菌及び発酵菌の割合が比較的に大きいことから、強繊維性の芝でも分解速度が十分に速いものとなっている。
【0089】
実施例1〜5と比較例2〜4を比較すると、比較例2〜4が、光合成細菌、発酵菌及び放線菌の割合の少なさから、分解速度が不十分となっているのに対し、実施例1〜5は、光合成細菌及び発酵菌の割合が比較的に大きいことから、強繊維性の芝でも分解速度が十分に速いものとなっている。
【0090】
実施例1〜5と比較例5〜7を比較すると、比較例5〜7が、放線菌の割合の多さから、分解速度が不十分となっているのに対し、実施例1〜5は、放線菌の割合が比較的に小さいことから、強繊維性の芝でも分解速度が十分に速いものとなっている。
【0091】
実施例1〜5と比較例8〜10を比較すると、比較例8〜10が、発酵菌及び放線菌の割合の小ささから、分解速度が不十分となっているのに対し、実施例1〜5は、放線菌の割合が比較的に多いことから、強繊維性の芝でも分解速度が十分に速いものとなっている。
【0092】
実施例1〜5と比較例11〜13を比較すると、比較例11〜13が、光合成細菌の割合の小ささから、分解速度が不十分となっているのに対し、実施例1〜5は、光合成細菌の割合が比較的に多いことから、強繊維性の芝でも分解速度が十分に速いものとなっている。
【0093】
以上等を総合すると、本発明に係る分解処理剤を、体積比で、光合成細菌が15〜20とし、且つ発酵菌が15〜45とし、更に放線菌が10〜30とするようにして、これらの菌を含むように構成すれば、強繊維性の芝であっても分解速度が十分に速い分解処理剤を提供することができる。
【0094】
又、黒糖や蜂蜜を添加したり、分解処理対象に腐葉土を混合させたりすれば、菌がこれらを栄養源とし活性度合を高める等して、更に分解速度を向上することができる。腐葉土に関し、それ自体に微生物が存在し、細菌に係る栄養価も比較的に高いため、相性が良いと考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の菌の培養液を下記の体積比で混合したことを特徴とする植物性物質の分解処理剤。
光合成細菌を15〜20
発酵菌を15〜45
放線菌を10〜30
【請求項2】
更に、黒糖及び/又は蜂蜜を添加した
ことを特徴とする請求項1に記載の分解処理剤。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の分解処理剤を、植物性物質に散布する
ことを特徴とする分解処理方法。
【請求項4】
植物性物質に腐葉土を混合させる
ことを特徴とする請求項3に記載の分解処理方法。

【公開番号】特開2012−135269(P2012−135269A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−290363(P2010−290363)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(397007848)有限会社サンアートエクステリア (1)
【Fターム(参考)】