説明

分解可能な内部人工器官

内部人工器官は、第1の生体内分解性の金属材及び表面を有する本体と、前記表面に堆積した第2の生体内分解性の金属材によって形成されたカプセルとを含む。前記カプセルは、多孔質の周囲領域、及び薬剤収容中心部を含む。こうした内部人工器官を製造する方法も開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部人工器官等の医療装置、及びこれらを製造、使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人体は、動脈等の血管及び他の管腔を含む多数の通路を有している。これらの通路は、時々閉塞されたり、弱くなったりする。例えば、これらの通路は、腫瘍により閉塞されたり、プラークにより制限されたり、又は動脈瘤により弱くなったりすることがある。これが発生した場合、医療用の内部人工器官によりその通路を再開、補強、又は交換することができる。内部人工器官は、一般的に人体の通路又は管腔に設置される人工移植物である。多くの内部人工器官はチューブ状であり、例としては、ステント、ステントグラフト及びカバーのあるステントが挙げられる。
【0003】
多くの内部人工器官は、カテーテルにより人体の内部に搬送されることが可能である。典型的には、そのカテーテルは、内部人工器官を所望の箇所、例えば人体の管腔における弱い箇所又は閉塞した箇所に搬送する際に、その内部人工器官を小型化した又は圧縮した形式で保持する。この内部人工器官が所望の箇所に到着したときに、管腔の壁に接触できるように取り付けられる。ヒース(Heath)氏による米国特許第6,290,721号において、ステントの転送が更に説明されており、該出願の全ての内容は、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0004】
1つの取付け方法として、内部人工器官を拡張する方法が挙げられる。内部人工器官を取り付けるための拡張機構は、その器官を強制的に径方向に拡張することができる。例えば、その拡張は、バルーンを運ぶカテーテルにより実現することができ、このバルーンは、人体における最終形態に対して縮小されて、バルーン拡張型の内部人工器官と連結している。内部人工器官を所定の位置に固定して管腔の壁に接触させるために、このバルーンは、膨張して内部人工器官を変形させ、且つ/又は拡張する。そして、そのバルーンが収縮させられ、カテーテルが回収される。
【0005】
内部人工器官を含む通路は、再度に閉塞される可能性がある。このような通路の再度閉塞は、再狭窄として知られている。内部人工器官に特定の薬剤が含まれる場合には、再狭窄の開始がその薬剤により抑制されることが可能である。場合によっては、内部人工器官が一旦移植された後、内部人工器官に含まれる治療薬又は薬剤が所定の形で体液に溶出することが望ましい。
【0006】
時々、移植された内部人工器官が時間とともにその通路において浸食されることも望ましい。例えば、完全に浸食され得る内部人工器官は、永続的なものとして人体に残存せず、通路がその自然の状態に回復することを促進することができる。浸食され得る内部人工器官は、例えばポリ乳酸等の重合体材料、マグネシウム等の金属材料、又はそれらの合金により形成されることが可能である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本書は、1つの形態において、第1の生体内分解性の金属材及び表面を有する本体と、前記表面に堆積した第2の生体内分解性の金属材によって形成されたカプセルとを含む内部人工器官の特徴を記載する。前記カプセルは、多孔質の周囲領域及び薬剤収容中心部を含む。
【0008】
本書は、別の形態において、内部人工器官を形成する方法の特徴を記載し、この方法は、犠牲テンプレートを所定の表面に付けることと、前記テンプレートの外側に複数の金属ナノクラスターを付けることと、前記犠牲テンプレートを除去し、前記金属ナノクラスターによって区画される空洞を形成することと、前記空洞に薬剤を装着することとを含む。
【0009】
実施例は、以下の付加的な特徴の1つ又は2つ以上を含むことができる。前記第1の金属材は、マグネシウム、鉄、亜鉛、アルミニウム、カルシウム、タングステン、及びこれらの合金から選択される。前記第2の金属材は、マグネシウム、鉄、亜鉛、アルミニウム、カルシウム、タングステン、及びこれらの合金から選択される。前記第1及び第2の生体内分解性の金属材は同じである。前記内部人工器官はポリマーを含んでいない。前記カプセルの前記多孔質の周囲領域は、相互に接続された複数の孔を有し、これらの孔は、約0.5nmから100nmまでの幅を有する。前記多孔質の周囲領域は、約70%以下の孔隙率を有する。前記カプセルは、中空球の形状を有する。前記中空球は、約20nmから約10μmまでの外径を有する。前記中空球は、約10nmから約5μmまでの内径を有する。前記多孔質の周囲領域は、約1nmから約1μmまでの厚さを有する。
【0010】
実施例は、以下の付加的な特徴の1つ又は2つ以上を更に含むことができる。この方法は、生体内分解性の金属材を含む前記複数の金属ナノクラスターを付けることを更に含む。この方法は、前記犠牲テンプレートを高分子電解質層に付ける前に、該高分子電解質層を前記表面に付けることを更に含む。この方法は、加熱、紫外線暴露、又は溶解により前記高分子電解質層及び犠牲テンプレートを除去することを更に含む。この方法は、交互積層(LBL)堆積により前記高分子電解質層及び前記犠牲テンプレートを付けることを含む。前記犠牲テンプレートは、ポリマー粒子である。前記ポリマー粒子は、約10nmから約10μmまでのサイズを有する。前記犠牲テンプレートは、球体である。前記犠牲テンプレートは、高分子電解質で前処理され、高分子電解質コーティングによりカプセル化される。この方法は、電界において複数の金属ナノクラスターを付けることを含む。この方法は、前記薬剤を有する溶液に前記内部人工器官を浸すことにより、前記薬剤を付けることを含む。前記複数の金属ナノクラスターは、第1の多孔質コーティングを形成する。本発明は、第2の複数の金属ナノクラスターを付けることにより、前記第1のコーティングの外側において第2のコーティングを形成することを更に含む。前記第2のコーティングの孔隙率は前記第1のコーティングよりも低く、且つ/或いは前記第2のコーティングの孔のサイズは前記第1のコーティングよりも小さい。前記第2のコーティングは無孔のものである。
【0011】
ステント等の、浸食され得る内部人工器官又は生体内分解性の内部人工器官は、所定の装置又は該装置の一部を意味し、この装置は、例えば人間患者等の患者に取り入れられた後に、大幅の質量又は密度の減少、或いは化学変換を表す。質量の減少は、その装置及び/又は該装置の破片を形成する材料の溶解により発生し得る。化学変換は、酸化/還元、加水分解、置換、電気化学反応及び/又は付加反応、或いはその装置又は該装置の一部を形成した材料の他の化学反応を含む。浸食は、その装置と生体環境との化学及び/又は生物学相互作用により発生し得る。生体環境は、例えば生体自体、又は体液であり、この生体環境においてその装置が移植されている。更に/又は、浸食は、例えば反応の速度を向上させるために化学反応物又はエネルギ等の誘発作用を利用することにより誘発されることが可能である。例えば、装置又はその一部は、マグネシウム又はカルシウム又はこれらの合金等の活性金属により形成されることが可能であり、これらの金属は、水と反応することにより浸食され、対応する金属酸化物及び水素ガス(酸化還元反応)を生成することができる。例えば、装置又はその一部は、浸食され得るポリマー又は生体内分解性のポリマー、或いは水で加水分解により浸食されるポリマーの合金又は混合体により形成されることが可能である。浸食は、所定の期間に、治療効果を提供できる所望の範囲において発生する。例えば、所定の実施形態では、所定の時間が経過した後に装置の質量が大幅に減少し、その後に、例えば管腔の壁への支持又は薬剤送達等の機能がもはや必要でない、又は所望されない。特定の実施形態においては、移植後1日以上、例えば60日以上、180日以上、600日以上、或いは1000日以下が経過した後に、装置の質量が約10%以上、例えば約50%以上に減少する。所定の実施形態では、装置が浸食処理により分解する。この分解は、例えば装置の所定の部分が他の部分よりも早く浸食されることに起因する。より早く浸食される部分は、遅く浸食される部分と比較して内部人工器官の本体及び破片にわたって早い浸食により弱くなる。より早く浸食される部分、及びより遅く浸食される部分は、ランダムであってもよく、予め設定されてもよい。例えば、より早く浸食される部分は、化学反応性を高めるためにその部分を処理することにより、予め設定されることが可能である。代わりに、所定の実施形態では、例えばコーティング等を用いて所定の部分を処理することにより、浸食の速度を低減することができ、これにより、その装置の一部のみが浸食され得る。例えば、外側の層又はコーティングが浸食され得るが、内側の層又は本体は浸食されない。所定の実施形態では、内部人工器官は、浸食されない材料に分散した浸食され得る材料により形成され、これにより、浸食の後に、浸食され得る材料の浸食により、装置の孔隙率が増大する。
【0012】
浸食速度は、0.2m/秒の速度で流動するリンガー溶液の流れに懸濁する測定装置により検出されることができる。測定の間に、測定装置の全ての表面がその流れに露出してもよい。この露出のために、リンガー溶液は、沸騰させられて蒸留された直後の水の溶液であり、1リットルの溶液には、8.60グラムの塩化ナトリウム、0.30グラムの塩化カリウム、及び0.33グラムの塩化カルシウムが含まれている。
【0013】
各形態及び/実施形態は、以下の利点の1つ又は2つ以上を有することができる。内部人工器官は、治療薬を搬送するように構成されることが可能である。内部人工器官は、細胞の成長(内皮化)をサポートする表面を有することができる。内部人工器官、例えば薬剤溶出生体内分解性のステントは、その生体内分解性のステントに付着する、又はそのステントに埋め込まれる大量の多孔質生体内分解性カプセルを有することができる。これらのカプセルは、ステントの薬剤装着容量を増大させることができる。カプセルを形成する生体内分解性の金属、カプセル壁の孔隙率、及びカプセル壁の厚さを選択することにより、薬剤の経時的な溶出特性を制御することができる。ステントに衝突するナノクラスターの運動エネルギを低減することにより、カプセル壁の孔隙率を調整、具体的には増大させることができる。増大した孔隙率は、薬剤の装着を促進する。カプセル壁の厚さを調整し、薬剤の溶出速度と、カプセル及びステントの浸食速度との双方を制御することができる。例えば、同じ生体内分解性の金属からなり、より厚い壁を有するカプセルは、より薄い壁を有するカプセルと比較して、相対的に遅い速度で薬剤を放出することができる。従って、異なる金属、異なるサイズ、異なる壁の厚さ、又は形状を有するカプセルを導入することにより、様々な薬剤放出特性を得ることができる。内部人工器官は、所定の形で、且つ/又は被験対象、例えば被験者に移植された後の所定の時間に浸食されるように、構成されることが可能である。例えば、浸食の所定の形は、内部人工器官の内側から外側へ、又は内部人工器官の第1の端部から第2の端部へという形式であってもよい。内部人工器官は、身体上の物質に接触することが所望されるまで、その身体上の物質に接触することから保護される部分を有することができる。移植の後に、内部人工器官を人体から除去する必要がない場合もある。このような内部人工器官が移植された管腔は、再狭窄を低減するこができる。内部人工器官は、実質的にポリマーを含んでいないため、ポリマーに起因する全ての悪影響の可能性を低減することができる。内部人工器官においては、血栓が形成する可能性が低い。
【0014】
本発明の他の態様、要素、目的、及び利点は、実施形態及び図面、並びに権利請求の範囲において明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1A−1C】折り畳まれた状態にあるステントの搬送、ステントの拡張、及びそのステントの展開をそれぞれ示す長手方向の断面図である。
【図2】ステントの斜視図。
【図3】表面に付着した薬剤収容カプセルを有するステントの部分断面図。
【図3A】薬剤収容カプセルの断面図。
【図3B】ステントの表面に、又はその近傍に位置する薬剤収容カプセルを有するいくつかのステントの概略側面図。
【図3C】ステントの表面に付着した薬剤収容カプセルを有するいくつかのステントの概略側面図。
【図4A−4C】人体の管腔における内部人工器官の時間の推移に伴う態様変化を示す縦方向の断面図。
【図5A−5F】ステントを形成する実施形態を示す断面図。
【図6A−6B】ステントを形成する別の実施形態を示す断面図。
【0016】
異なる図面における同じ参照記号は同じ部材を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1A〜図1Cに示されるように、カテーテル14の先端近傍に保持されたバルーン12の外側には、生体内分解性のステント10が設けられており、このステント10は、バルーン12及びステント10を支持する部分が閉塞部18の領域に着くまで、管腔16(図1A)の中を通って移動せられる。そしてバルーンを膨張させることにより、ステント10が径方向に拡張して血管の壁に押し付けられる。その結果、閉塞部が押し付けられ、その周囲における血管の壁が径方向に拡張する(図1B)。そして、バルーン12における圧力が放出されてカテーテル14が血管(図1C)から回収され、拡張したステント10が管腔16に残される。
【0018】
図2に示されるように、ステント10は、壁23において複数の開口部22を含んでいる。ステント10はいくつかの表面領域を有し、これらの表面領域は、外部の、即ち管腔の外面24と、内部の、即ち内腔表面26と、複数の切断表面28とを含んでいる。以上に示されるように、このステントは、バルーン拡張型、又は自己拡張型のステントであってもよい。ステントの例は、ヒース(Heath)氏による上述の文献’721において記載されている。
【0019】
大きく拡大された断面図である図3に示されるように、ステント壁23がステント本体25を含み、このステント本体25は、例えば金属又は合金等の、生体内分解性の材料によって形成されている。このような生体内分解性の材料は、例えばハーダー(Harder)氏等による米国特許出願公開第2006/0052863Al及び2006/0052864Alに定義されている。ステント壁23は、ステントの表面において複数のカプセル27を更に含んでおり、そのステントの表面は、例えば管腔の外側及び/又はステントの他の表面である。図3Aは一つのカプセルの断面図であり、同図に示されるように、カプセル27は、例えば金属等の生体内分解性の材料によって形成されている。カプセル27により空洞31が区画されており、この空洞31の内部には、薬剤33が保持されている。このカプセル27の壁は、相互に接続した多孔質構造(図示略)を有してもよく、この多孔質構造は、薬剤を装着すること、及び薬剤がカプセルの内部から溶出することを許容する。このカプセル壁の孔の大きさ及び孔隙率を設定することにより、薬剤の放出速度及び浸食速度を調整することができる。以下により詳細に説明する。カプセル壁の孔の平均値を0.5nmから25nmまでの範囲内に設定することができる。また、完全密閉のカプセルを採用することもでき、これにより、薬剤はその殻が部分的に分解されたときのみに放出される。
【0020】
所定の実施形態において、中空の金属球体27等の生体内分解性のカプセルは、例えば封入結合コーティング26(図3B)によりステント本体25に取り付けられることが可能である。例えば、中空の金属球体は、例えば金属−金属結合等の化学結合、又は結合層によりステントの表面に取り付けられることが可能である。また、中空の金属球体27は、生体内分解性のステント本体、例えばステントの表面の近傍(図3C)に埋め込まれることもできる。また、例えば中空の金属球体は、ステント及びステントの表面における溝、穴、空きスペース又は他の構成要素に組み込まれてもよい。
【0021】
図4A〜図4Cに示されるように、カプセル27を含むステント10は、所定の時間にわたって浸食される。例えば所定の実施形態では、例えば管腔壁に対するサポート及び/又は薬剤の搬送等の、ステント又はカプセルの機能が必要でなくなる、又は望まれなくなるまで、そのステント及び/又はカプセルにおいて相当量の質量減少、例えば20%を超える質量、50%を超える質量、又は80%を超える質量の減少が発生する。例えば、人体血管29に移植されたステント10は、その端部34,36からその中間部分37へ、又は一方の端部34から他方の端部36へ徐々に浸食されるように構成されることが可能である。これにより、例えばステントがより長期に人体管腔の開通性を維持し、且つ/又は内部人工器官の内皮化を実現することができる。特に図4Bに示されるように、ステント10の浸食過程において、ステントに取り付けられた生体内分解性のカプセル27のいくつかが、生体内分解性の殻(「27’」により示される)の一部を失い、カプセルの空洞に保持される薬剤が周囲の環境に放出されながら、例えば最初に端部34及び36に取り付けられたカプセル等の他のカプセルが除去されて人体の血管に放出されることが可能である。除去されたカプセルは、更に浸食されて、最終的にカプセルに包まれた薬剤(上記参照)を放出することができる。これらのカプセルは、まず多孔質のカプセルに薬剤を充填し、その後に、その外層に第2の金属層を堆積させることにより、完全に密閉される構造に形成されてもよい。例えば本願と同一出願人による以下の出願、即ち2006年1月15日に出願された米国特許出願第11/327,149号(米国特許出願公開第2007−0156231号)と、2006年2月16日に出願された米国特許出願第11/355,368号(米国特許出願公開第2007−0191931号)と、2006年9月18日に出願された特許仮出願第60/845,341号(米国特許出願公開第2008−0071350号と対応する)とにおいても、生体内分解性のステントが記載されている。これらの出願の弁理士事件番号はそれぞれ、10527−656001、10527−730001、10527−712P01である。
【0022】
図5A〜5Fは、生体内分解性のステントを形成する特定の方法の異なる段階におけるステント壁23を大きく拡大して示す断面図である。この方法は、例えばイオンのナノサイズのラテックス粒子球等の犠牲的重合テンプレート、及び重合結合層をステントの表面に付ける工程と、そのテンプレート及び結合層の外側に金属ナノクラスターを堆積させる工程と、犠牲テンプレート及び結合層を除去し、ステントの表面に取り付けられた多孔質の壁を有する中空の金属カプセルを形成する工程と、治療薬又は薬剤を装着する工程とを含んでいる。
【0023】
特に図5Aに示されるように、例えばポリスチレン微小球又はナノ粒子等のテンプレート球53、及び重合結合層が例えば交互積層(LBL)技術等の自己集合法により、ステント壁23の表面、例えば管腔の外面に付けられている。その交互積層技術により、それらの層、例えば高分子電解質51及び球53は、静電的に自己集合している。LBL技術では、第1の正味表面電荷を有する第1の層は、プラズマ処理法により最終的に活性化された下層の基質に堆積し、その後に、第2の正味表面電荷を有する第2層が続いて堆積し、その第2の正味表面電荷は、第1の層の正味表面電荷と符号が逆である。従って、順次に上に堆積する外側の層の電荷が逆の符号になる。そして、追加の第1及び第2層をその基質に交互に堆積させることにより、多層構造を所定の又は所望の厚さに形成することができる。例えば図5Aにおいて、高分子電解質層51は、0.3nmから1μmまでの範囲内の厚さ、例えば1nmから500nmの厚さを有する高分子電解質の単分子層、又は高分子電解質の多分子層(PEM)であってもよい。その厚さは、犠牲テンプレートを堆積させるために必要な電荷密度により決定されることが可能である。高分子電解質層51の頂部には、帯電した犠牲テンプレート53、例えばポリスチレン球、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、又はシリカテンプレート等が堆積しており、この犠牲テンプレート53の正味表面電荷の符号は、層51の正味表面電荷の符号と逆である。
【0024】
所定の実施形態では、LBLアセンブリは、交互正味電荷種を有する溶液又は懸濁液に帯電した基質(例えばステント)を露呈することにより実施されることが可能であり、その溶液又は懸濁液は、帯電したテンプレート(例えばポリスチレン球)、高分子電解質、及び任意選択の帯電した治療薬を含む。それらの溶液及び懸濁液における荷電種の濃度は、例えば約0.01mg/mLから100mg/mLまで(又は約50mg/mLまで、又は30mg/mLまで)の範囲にあってもよい。なお、その荷電種の濃度は、堆積した種のタイプに依存することができる。溶液及び懸濁液の酸性は、テンプレート、高分子電解質、及び任意選択の治療薬が帯電状態を維持するように設定されることが可能である。電荷を保持するために緩衝系を採用することができる。荷電種を含む溶液及び懸濁液(例えばテンプレート、高分子電解質、又は帯電した治療薬等の他の任意選択の荷電種の溶液及び懸濁液)は、様々な技術を用いて帯電した基質の表面に付けられることが可能である。これらの技術の例としては、噴射技術と、浸漬技術と、ロールブラシコーティング技術と、例えば空気サスペンション等の機械式サスペンションによるコーティング、インクジェット技術、スピンコーティング技術、ウェブコーティング技術、及びこれらの工程の組み合わせを含む技術とが挙げられる。荷電種を含む溶液又は懸濁液に基質(例えばステント)の全体を浸すこと、或いはその基質の半分をその溶液又は懸濁液に浸した後に、同基質を反転させてその残りの半分をその溶液又は懸濁液に浸してコーティングを完成させることにより、その層を下層の基質に付けることができる。所定の実施形態では、各荷電種層が付けられた後に、基質は、例えば外側の層の電荷を保持可能な酸性を有する洗浄溶液等により洗浄される。
【0025】
適切な犠牲テンプレートは、高分子球、シリカ球、ナノ粒子、炭素繊維、重合体繊維、又は炭素ナノチューブを含む。本明細書に記載の犠牲テンプレートは、選択された形状、例えば球状、立方体状、棒状、繊維状、チューブ状等を有することができる。犠牲テンプレートは、一旦所望の構成、多くの場合はそのテンプレートの形状を補完する構成が形成された後に除去可能なものである。所定の実施形態では、補完的な構造が一旦形成されると、テンプレートが完全に除去される。別の実施形態では、テンプレートは、少なくとも部分的に最終製品に保持される。特定の実施形態では、球状の犠牲テンプレート、例えばポリスチレン球が使用される。ポリスチレン球がテンプレートとして使用される場合、ポリスチレン球が除去された後に、球状の空洞を有する構造又は中空の構造が得られる。所定の実施形態では、ポリスチレン球は、約10nm〜10μm、例えば約20nm〜500nmの半径を有している。適切なポリスチレン球は、独国D−12489ベルリン フォルマーストラッセ 9A UTZ Geb.3.5.1(Volmerstr.9A,UTZ,Geb.3.5.1,D−12489 Berlin)に所在するマイクロパーティクルズ・ゲーエムベーハー リサーチ・アンド・デヴェロップメント・ラボラトリー(Microparticles Gmbh,Research and Development Laboratory)から入手できる。特定の実施形態では、犠牲テンプレートは、LBLアセンブリを用いて高分子電解質によって前処理されることにより、PEMコーティングを備えることができる。そして、PEMのコーティングが施されたテンプレートは、溶媒に懸濁又は溶解され、基質に付けられる。PEMのコーティングが施されたテンプレートが使用される場合、層51が任意選択のものである。
【0026】
高分子電解質は、帯電した(例えばイオン解離性)基を有する重合体である。高分子電解質における基の数は、イオン解離性の形態(ポリイオンとも呼ばれる)である際には、重合体が極性溶媒(水を含む)に溶解できるように設定されることが可能である。解離性基の種類に基づき、高分子電解質が多価酸と多塩基混合物とに分類される。解離性の形態である際に、プロトンが分離することに伴い、多価酸が多価陰イオンを形成する。多価酸は、無機酸、有機酸、及びバイオポリマーを含む。多価酸の例としては、ポリリン酸、ポリビニル硫酸、ポリビニルスルホン酸、ポリビニルホスホン酸、及びポリアクリル酸が挙げられる。ポリ塩と呼ばれる対応の塩の例としては、ポリリン酸塩、ポリビニル硫酸塩、ポリビニルスルホン酸塩、ポリビニルホスホン酸塩、及びポリアクリル酸塩である。多塩基混合物は、例えば塩が生成する酸との反応により、プロトンを受容できる基を含む。骨格及び/又は側基において解離性基を有する多塩基混合物の例としては、ポリアリルアミン、ポリエチルイミン、ポリビニルアミン、及びポリビニルピリジンが挙げられる。プロトンを受容することにより、多塩基混合物がポリカチオンを生成する。所定の高分子電解質は、陰イオン基及び陽イオン基の双方を有するが、それにもかかわらず、正味の正電荷又は正味の負電荷を有している。
【0027】
高分子電解質は、バイオポリマーに基づくものを含むことができる。例としては、アルギン酸、アラビアゴム、核酸、ペクチン、及びタンパク質、カルボキシメチルセルロース及びリグニンスルホン酸塩等の化学修飾されたバイオポリマー、ポリメタクリル酸、ポリビニルスルホン酸、ポリビニルホスホン酸等の合成ポリマー、及びポリエチレンイミンが挙げられる。線状の高分子電解質又は分岐した高分子電解質を使用することができる。分岐した高分子電解質を使用することにより、壁の密度が高く、コンパクトな高分子電解質多層を減少させることができる。所定の実施形態では、高分子電解質分子を各層内に、又は/及び各層の間に架橋し、例えばアルデヒドによりアミノ基を架橋することにより、安定性を促進することができる。更に、例えば両親媒性ブロック又はランダム共重合体等の両親媒性高分子電解質は、部分的な高分子電解質の特性を有し、所定の実施形態に使用されることにより、極小な分子に透過性の影響を及ぼす。
【0028】
高分子電解質の別の例は、低分子量の高分子電解質(例えば、数百ダルトンの分子量を有する高分子電解質)から、高分子量の高分子電解質(例えば、通常数百万ダルトンの分子量を有する合成物又は生物由来の高分子電解質)までを含む。高分子電解質の陽イオン(ポリカチオン)の更に別の例は、硫酸プロタミンポリカチオン、ポリ(アリルアミン)ポリカチオン(例えば、ポリ(アリルアミン塩酸塩)(PAH))、ポリジアリルジメチルアンモニウムポリカチオン、ポリエチレンイミンポリカチオン、キトサンポリカチオン、ゼラチンポリカチオン、スペルミジンポリカチオン、及びアルブミンポリカチオンを含む。高分子電解質の陰イオン(ポリアニオン)の例は、スチレンスルホンポリアニオン(例えば、ポリ(スチレンスルホン酸ナトリウム)(PSS))、ポリアクリル酸ポリアニオン、アルギン酸ナトリウムポリカチオン、オイドラギットポリアニオン、ゼラチンポリアニオン、ヒアルロン酸ポリアニオン、カラギーナンポリアニオン、コンドロイチン硫酸ポリアニオン、及びカルボキシメチルセルロースポリアニオンを含む。
【0029】
高分子電解質の更に別の例は、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリ(アリルアミン塩酸塩)(PAH)、及びポリアクリル酸を含み、他の高分子電解質及びLBLアセンブリは、本願と同一出願人による米国特許出願第10/985,242号(米国特許出願公開第2006−0100696号)に開示されており、該出願の全ての内容は、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0030】
特に図5Bに示されるように、負に帯電した金属ナノクラスター55は、加速電場においてテンプレート粒子53の頂部及びステントの表面に堆積する。なお、その金属ナノクラスター55は、例えばマグネシウム、鉄、カルシウム、アルミニウム、タングステン、又はこれらの合金等の、生体内分解性の金属からなる。片矢によって示されるように、ナノクラスターが全ての方向からテンプレート粒子及びステントに衝突するように、ステントを回転させ(又は揺動させ)、或いは代わりに、偏向器の使用によりナノ粒子を加速する電場を、方向及び強度について動的に変更することができる。従って、テンプレート粒子に堆積した金属のコーティング56は、実質的に均一の厚さを有している。
【0031】
適切なナノクラスター堆積システムは、例えば英国に所在するマンティスデポジションリミテッド(Mantis Deposition Ltd.)社(http://www.mantisdeposition.com)から入手することができる。そのシステムでは、例えば銅、金、ルテニウム、又はステンレス鋼等の電離金属ナノクラスターは、マグネトロンスパッタリングによって生成されることが可能である。そのマグネトロンパッタリングの後に、相対的に高圧の領域(例えば約0.1から何百パスカル(何ミリバール))における熱化及び凝縮が実行され、ナノクラスターは、応用された電界により例えばステント等の基質に向かって加速される。殆どの生成されたナノクラスターが帯電されるため、これらを直線四重極又は質量フィルタによって質量選別し、選択的にその基質に堆積させることができる。例えば、生成されたナノクラスターの典型的な直径は、約0.7から20nmであってもよく、そのナノクラスターのサイズ分布を選択的に約+/−20%に、更に+/−2%に縮小することができる。適用された電界によって部分的に制御される運動エネルギ(例えば、約10eVから10keV)は、ナノクラスターがその基質及び他のナノクラスターとともに衝撃により部分的に融解することを誘発し、これにより、ナノクラスターがその基質に付着し、例えばその基質と融合するとともに、他のクラスターと融合して多孔質の金属製コーティングを形成する。その穴のサイズ及び多孔質のコーティングの孔隙率は、ナノクラスターのサイズ及びそれらの運動エネルギの双方によって調整されることが可能である。一般的には、運動エネルギが大きいほど、その金属コーティングの孔が少なくなる。所定の実施形態において、例えば100nmの直径を有するより大きなナノクラスターの第1集積体がテンプレート粒子に堆積する。電圧(「V+」で示される)は、ナノクラスターが高分子電解質51を通ってステントの表面に堆積するのに十分な高さに制御されることが可能である。一般的には、ナノクラスターが大きいほど、堆積した金属コーティングの孔が大きくなり、薬剤を金属性のカプセルに装着することが簡単になる。所定の実施形態では、図5Fに示されるように、より小さな直径を有するナノクラスターの第2集積体は、その後に第1集積体の表面に体積することにより、より小さな孔を有する最上層を形成し、薬剤の放出を更に制限することができる。ナノクラスターの体積は、2006年11月9日に出願されたウェーバー(Weber)氏等による米国仮出願第60/857,849号(米国特許出願公開第2008−0147177号に対応する)[BSC Docket No.06−01579]、A. H. Kean, Mantis Deposition Ltd., NSTI NanoTech 2006, Boston, May 7th-l1th 2006、及びY. Qiang, Surface and Coating Technology, 100-101, 27-32 (1998)によって、更に開示されている。
【0032】
次のステップ(図5Cに示される)としては、テンプレート粒子53及び高分子電解質51は、例えば熱、紫外線暴露、プラズマ、又は溶液に基づく方法により除去され、多孔質の中空金属カプセル56がステントの表面に残される。特に図5Dに示されるように、所定の実施形態では、薬学活性のある物質又は薬剤57をカプセル56の空洞に装着することができる。その薬剤は、金属カプセルが設けられたステントに対する浸漬及と乾燥との繰り返されるサイクルにより、装着されることが可能である。所定の実施形態では、例えばこの工程において超臨界流体を溶液として採用し、或いは最初にその空洞から空気を除去するために真空装置を採用することにより、薬剤の装着を容易にすることができる。例えば最初に、カプセルの多孔質の壁を貫通する超臨界流体(二酸化炭素と10重量%のエタノールの共溶媒)等の溶液を用いて薬剤を装着することができる。図5Eに示されるように、この装着工程により薬剤がカプセルの内部及び外部の双方に堆積した場合、外部に堆積した薬剤は機構59によって除去されることが可能である。例えば、コーティングの外面における薬剤のみを除去するエネルギを有する融除レーザ加工、又はジメチル・スルホキシド等、金属製のカプセルの壁を貫通できないが、薬剤を溶解させられる溶液によりステントを簡単に洗う。所定の実施形態において、薬剤がカプセルの壁の孔に装着されることが可能である。更に、そのステントは、各カプセルにおいて2つ以上の薬剤を有する構成、又はカプセルによって異なる薬剤を有する構成を採用することにより、2つ以上の治療薬を含むことができる。更に、図5Fに示されるように、上述のようにナノクラスター堆積システムにおいてステントを回転させることで、より細かいナノクラスター61の第2層を金属製のカプセル56の外側に堆積させ、薬剤がより小さな孔から放出されることを更に規制することができる。代わりに、例えばそれらのカプセルを形成したナノクラスターと同じくらいのサイズのナノクラスターにより高い加速電圧を印加し、金属製のカプセルの外側に孔がより少ない最上層を形成することにより、薬剤の放出率及び/又はカプセル及びステントの浸食率を低減することができる。
【0033】
生体内分解性の金属によって形成されたステントは、ナノクラスター堆積工程のパラメータを調整することにより、特有の浸食特性を有することができる。例えば、図6Aに示されるように、薬剤が装着された金属製のカプセル56によって被覆されたステントは、ナノクラスター61の第2集積体の速度方向(片矢によって示される)に対して平行な方向に沿って固定され、これによりナノクラスター膜63が形成される。ナノクラスター61の運動エネルギは、多孔質のカプセル56の外側において、隣接のカプセル56の間に実質的に無孔の最上膜63を形成するのに十分に大きい値に設定される。その結果、図6Bに示されるように、これらのカプセルの間における表面が少なくとも一時的に無孔層63によって保護されるが、流体69がカプセル56の両側のみから通過し、カプセルの下にあるステントの表面を浸食して穴を形成することができる。
【0034】
別の実施形態では、最初に中空の金属製カプセルの集積体が形成され、そして例えば浸漬、回転、或いは選択された薬剤を含む溶液におけるカプセルに対して浸漬及と乾燥とのサイクルを繰り返すことにより、薬剤を装着することができる。一旦形成された薬剤装着済みの金属製カプセルは、ブドウ糖等の生分解可能なマトリックスに混合されて、ステントの表面に適用することができる。中空の金属製カプセルは、例えばポリマー球等の犠牲テンプレートにより形成されることが可能である。1つの例としては、ニッケル、コバルト、又はニッケルーコバルト合金からなる中空の金属製球は、最初に形成された均一、且つ安定したコアシェルの微小球によって得られ、これらの微小球は、ポリ(メタクリル酸メチル)(PMMA)コア、及びニッケルーリン、コバルトーリン、又は混合された金属合金(CoNip、NiFeP、CoFeP)からなる。そのコアシェル微小球は、メタクリル酸メチルの分散重合により形成されることが可能であり、その分散重合の後に、金属/合金の殻を形成する無電解鍍金が行われる。その金属/合金の殻の厚さは、無電解鍍金浴におけるポリマー微小球の浸漬時間を調整することにより、正確に調整されることが可能である。所定の実施形態において、堆積する金属材料によって、例えば磁性、常磁性体から強磁性体まで等の、異なる特性を得ることができる。最後に、金属又は合金からなる均一の中空金属球は、ポリマーコアを溶解させることにより得られる。更なる情報は、例えば「J. Phys. Chem. B, 110, 3043-3050 (2006)」におけるTierno氏等による論文"Using Electroless Deposition for the Preparation of Micron Sized Polymer/Metal Core/Shell Particles and Hollow Metal Spheres"に記載されており、この論文の内容は、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0035】
所定の実施形態では、生体内分解性の金属ナノクラスター及びカプセルは、ステントの管腔の外面のみに付着されている。この構造は、例えば孔を形成する前にステントに対してコーティングを行うことにより得られる。別の実施形態では、生体内分解性の金属ナノクラスター及びカプセルは、管腔の外面及びステントの切断表面に付着されている。この構造は、例えば内腔表面を保護する心棒を有するステントに対してコーティングを行うことにより得られる。ステントの選択された部分を保護するために、マスクを使用することができる。所定の実施形態では、ステントの金属は、生体内分解性を有し、1つ又は2つ以上の金属部材(例えば金属或いは合金)を含む。生体内分解性の材料は、例えば上述したとおり、本願と同一出願人による米国特許出願第11/327,149号(米国特許出願公開第2007−0156231号)、第11/355,368号(米国特許出願公開第2007−0191931号)、及び米国仮出願第60/845,341号(米国特許出願公開第2008−0071350号に対応)、並びに、ボルズ(BoLz)による米国特許第6,287,332号、ヒューブライン(Heublein)による米国特許出願公開第2002−0004060Al、コーン(Kohn)等による米国特許第5,587,507号及び第6,475,477号に記載されている。生体内分解性の材料の例としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属(例えばマグネシウム)、鉄、亜鉛、及びアルミニウムを含む。生体内分解性の金属合金の例としては、アルカリ金属合金、アルカリ土類金属合金(例えばマグネシウム合金)、鉄合金(例えば鉄と最大7%の炭素とを含む合金)、及び亜鉛合金を含む。生体内分解性の非金属の例としては、例えばポリ酸無水物、ポリオルトエステル、ポリラクチド、ポリグリコール酸、ポリシロキサン、セルロース誘導体、又はこれらの任意の共重合体等の生体内分解性のポリマーを含む。
【0036】
別の実施形態では、ステントは、1つ又は2つ以上の生体内分解性の材料に加えて、1つ又は2つ以上の生体安定性の材料を含む。例えば、生体安定性のステント体におけるコーティングとして生体内分解性の材料を採用することができる。生体安定性の材料の例としては、ステンレス鋼、タンタル、Elgiloy(登録商標)、Phynox(登録商標)、Nitinol(例えば、55%ニッケル、45%チタニウム)等のニッケルークロム、コバルトークロム合金、又はニッケルチタニウム合金及び熱記憶合金材料を含むチタニウム系の別の合金を含む。生体安定性の部分及び生体内分解性の部分を含むステントは、例えば2004年12月3日に出願の米国特許出願第11/004,009号、権利が与えられた「医学装置及びこれを製造する方法(Medical Devices and Methods of Making the same)(米国特許出願公開第2006−0122694)において記載されている。この材料は、例えばバルーン拡張ステント、自己拡張型ステント、又はこれらの組み合わせ(米国特許第5,366,504号を参照)に適用することができる。
【0037】
用語「治療薬」、「薬学活性のある物質」、「薬学活性のある材料」、「薬学活性のある要素」、「薬剤」、及び他の関連する用語は、本明細書において交換することができ、有機小分子、ベプチド、オリゴペプチド、タンパク質、核酸、オリゴヌクレオチド、遺伝治療薬、非遺伝治療薬、遺伝治療薬の搬送のためのベクター、細胞、血管治療計画のための候補、例えば、再狭窄を低減、又は抑制する物質として特定された治療薬を含むが、これらに限定されるものではない。有機小分子は、合計で、50以下の炭素原子、及び100未満の非水素原子を有する有機分子を意味する。
【0038】
典型的な治療薬は、例えば抗血栓薬(例えばヘパリン)、抗増殖/抗有糸分裂剤(例えばパクリタキセル、5フルオロウラシル、シスプラチン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、平滑筋細胞増殖の抑制剤(例えば単クローン抗体)、チミジンキナーゼ抑制剤)、抗酸化物質、抗炎症性薬(例えばデキサメタゾン、プレドニゾロン、コルチコステロン)、麻酔薬(例えばリドカイン、ブピバカイン、ロピバカイン)、抗凝固剤、抗生物質(例えばエリスロマイシン、トリクロサン、セファロスポリン、及びアミノグリコシド抗生物質)、及び内皮細胞の成長及び/又は付着を刺激する物質を含む。治療薬は、非イオンのものであってもよく、或いは事実上陰イオン及び/又は陽イオンのものであってもよい。治療薬は、単独で使用されてもよく、組み合わせて使用されてもよい。好ましい治療薬は、再狭窄の抑制剤(例えばパクリタキセル)、抗増殖性剤(例えばシスプラチン)、エベロリムス、及び抗生物質(例えばエリスロマイシン)を含む。治療薬の更なる例は、米国特許出願公開第2005/0216074Al号に記載されている。薬剤溶出コーティングのためのポリマーは、米国特許出願公開第2005/019265Al号にも記載されている。機能分子、例えば有機体、薬剤、ポリマー、タンパク質、DNA、及び類似の材料は、溝、穴、空きスペース又はステントの他の構成要素に組み込まれてもよい。
【0039】
本明細書に記載の全てのステントは、着色されてもよく、又は輻射が透過しない材料、例えば硫酸バリウム、白金、又は金を添加することにより、或いは輻射が透過しない材料によってコーティングを行うことにより、ステントを輻射が透過しないものにすることができる。
【0040】
本明細書に記載の全てのステント、又は全てのステントの任意の部位は、生体内分解性の材料、或いは非生体内分解性の材料によってコーティングされることが可能である。例えば、コーティングは、薬の搬送に用いられてステントの一部を保護することにより、規制されていない分解を低減し、及び/又は、ステント或いはステントの一部と管腔との接触を抑制することができる。
【0041】
本明細書に記載のステントは、冠状動脈、及び末梢血管系等の血管のために構成されてもよく、血管以外の管腔のために構成されてもよい。例えば、ステントは、食道又は前立腺での使用のために構成されてもよい。他の管腔は、胆管の管腔、肝臓の管腔、膵臓の管腔、及び尿道の管腔を含む。
【0042】
ステントは、所望の形状及びサイズ(例えば、冠状動脈のステント、大動脈のステント、末梢血管のステント、胃腸のステント、泌尿器のステント、気管/気管支のステント、及び神経のステント)を有することができる。ステントは、応用によって、例えば約1mmから約46mmまでの間の直径を有することができる。特定の実施形態では、冠状動脈のステントは、約2mmから約6mmまでの直径を有することができる。所定の実施形態では、末梢部位のステントは、約4mmから約24mmまでの直径を有することができる。所定の実施形態では、胃腸の、及び/又は尿道のステントは、約6mmから約30mmまでの直径を有することができる。所定の実施形態では、神経用のステントは、約1mmから約12mmまでの直径を有することができる。腹部大動脈瘤(AAA)用のステント及び胸部大動脈瘤(TAA)用のステントは、約20mmから約46mmまでの直径を有することができる。ステントは、バルーン拡張型、自己拡張型、及びこれらの組み合わせ(例えば、米国特許第6,290,721号)の何れであってもよい。
【0043】
本明細書に記載の工程又は方法は、他の内部人工器官又は医療装置、例えば金属チューブ、カテーテル、誘導線、フィルタ等のステント前駆体においても実行されることが可能である。
【0044】
全ての公報、特許出願、及び特許が参照によって本明細書に組み込まれる。
また、他の実施形態は、以下の請求項に含まれる。
【図1A】

【図1B】

【図1C】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の生体内分解性の金属材及び表面を有する本体と、前記表面に堆積した第2の生体内分解性の金属材によって形成されたカプセルとを含む内部人工器官において、
前記カプセルは、少なくとも1つの多孔質の周囲領域、及び薬剤収容中心部を含む
ことを特徴とする内部人工器官。
【請求項2】
請求項1に記載の内部人工器官において、
前記第1の金属材は、マグネシウム、鉄、亜鉛、アルミニウム、カルシウム、タングステン、及びこれらの合金から選択される
ことを特徴とする内部人工器官。
【請求項3】
請求項2に記載の内部人工器官において、
前記第2の金属材は、マグネシウム、鉄、亜鉛、アルミニウム、カルシウム、タングステン、及びこれらの合金から選択される
ことを特徴とする内部人工器官。
【請求項4】
請求項1に記載の内部人工器官において、
前記第1及び第2の生体内分解性の金属材は同じである
ことを特徴とする内部人工器官。
【請求項5】
請求項1に記載の内部人工器官において、
前記内部人工器官はポリマーを含んでいない
ことを特徴とする内部人工器官。
【請求項6】
請求項1に記載の内部人工器官において、
前記カプセルの前記多孔質の周囲領域は、相互に接続された複数の孔を有し、これらの孔は、約0.5nmから100nmまでの幅を有する
ことを特徴とする内部人工器官。
【請求項7】
請求項1に記載の内部人工器官において、
前記多孔質の周囲領域は、約70%以下の孔隙率を有する
ことを特徴とする内部人工器官。
【請求項8】
請求項1に記載の内部人工器官において、
前記カプセルは、中空球の形状を有する
ことを特徴とする内部人工器官。
【請求項9】
請求項8に記載の内部人工器官において、
前記中空球は、約20nmから約10μmまでの外径を有する
ことを特徴とする内部人工器官。
【請求項10】
請求項8に記載の内部人工器官において、
前記中空球は、約10nmから約5μmまでの内径を有する
ことを特徴とする内部人工器官。
【請求項11】
請求項1に記載の内部人工器官において、
前記多孔質の周囲領域は、約1nmから約1μmまでの厚さを有する
ことを特徴とする内部人工器官。
【請求項12】
内部人工器官を製造する方法であって、
犠牲テンプレートを所定の表面に付けることと、
前記テンプレートの外側に複数の金属ナノクラスターを付けることと、
前記犠牲テンプレートを除去し、前記金属ナノクラスターによって区画される空洞を形成することと、
前記空洞に薬剤を装着することとを含む方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法において、
生体内分解性の金属材を含む前記複数の金属ナノクラスターを付けることを更に含む
ことを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項12に記載の方法において、
前記犠牲テンプレートを高分子電解質層の外側に付ける前に、該高分子電解質層を前記表面に付けることを更に含む
ことを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法において、
加熱、紫外線暴露、又は溶解により前記高分子電解質層及び犠牲テンプレートを除去することを更に含む
ことを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項14に記載の方法において、
交互積層(LBL)堆積により前記高分子電解質層及び前記犠牲テンプレートを付けることを含む
ことを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項12に記載の方法において、
前記犠牲テンプレートは、ポリマー粒子である
ことを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法において、
前記ポリマー粒子は、約10nmから約10μmまでのサイズを有する
ことを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項12に記載の方法において、
前記犠牲テンプレートは、球体である
ことを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項12に記載の方法において、
前記犠牲テンプレートは、高分子電解質で前処理され、高分子電解質コーティングによりカプセル化される
ことを特徴とする方法。
【請求項21】
請求項12に記載の方法において、
電界において複数の金属ナノクラスターを付けることを含む
ことを特徴とする方法。
【請求項22】
請求項12に記載の方法において、
前記薬剤を有する溶液に前記内部人工器官を浸すことにより、前記薬剤を付けることを含む
ことを特徴とする方法。
【請求項23】
請求項12に記載の方法において、
前記複数の金属ナノクラスターは、第1の多孔質コーティングを形成する
ことを特徴とする方法。
【請求項24】
請求項23に記載の方法において、
第2の複数の金属ナノクラスターを付けることにより、前記第1のコーティングの外側において第2のコーティングを形成することを更に含む
ことを特徴とする方法。
【請求項25】
請求項24に記載の方法において、
前記第2のコーティングの孔隙率は前記第1のコーティングよりも低く、且つ/或いは前記第2のコーティングの孔のサイズは前記第1のコーティングよりも小さい
ことを特徴とする方法。
【請求項26】
請求項24に記載の方法において、
前記第2のコーティングは無孔のものである
ことを特徴とする方法。

【図2】
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【図3】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図5E】
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【図5F】
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【図6A】
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【図6B】
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【公表番号】特表2011−502577(P2011−502577A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−532263(P2010−532263)
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【国際出願番号】PCT/US2008/081910
【国際公開番号】WO2009/059081
【国際公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【出願人】(500332814)ボストン サイエンティフィック リミテッド (627)
【Fターム(参考)】