説明

分配機構および熱交換装置

【課題】熱交換装置において容器内に流入する流体の分配を改善する。
【解決手段】 容器(27)内において該容器(27)の流体入口(26)から流体(15)を分配するための分配機構(1)が、案内部(2)と該案内部(2)に隣接する分配部(3)とを備えた少なくとも1つの案内板を有する。この分配部(3)は、流体(17)を通過させるための開口部(8、9)を備えた領域(4、5)を有する。
流体入口(26)を備えた容器(27)と、該容器(27)内に配置された少なくとも1つの熱交換器ブロック(28)とを有する熱交換装置(100)において、該容器(27)内に該熱交換器ブロック(28)上方に配置された分配機構(101)が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に液体成分と気体成分とを含む流体を分配するための分配機構に関する。さらに、本発明は、適当な分配機構を備えた熱交換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
分配機構は、例えば、二相または多相の流体が容器内に導入される際の入口分配器として公知である。気体/液体分離容器に関しては、例えば、流体の等分配および改良した分離を実現するためのいわゆる羽根入口装置(Vane Inlet Device)が公知である。特許文
献1は、例えば、ベースプレートに配置した、鈎状突起部を備えた薄層形式の案内羽根を分配機構として開示している。
【0003】
特に熱交換器では、ジャケット室内で冷媒を可能な限り均質に分配することが望ましい。例えば、特許文献2は、ジャケット室内を貫通する管を備え、その中を冷却されるべき媒体が流れる熱交換器を開示している。周りを取り囲む流動室内において入口ノズルを起点に均一な冷媒分配を実現できるように、衝突板が提案されている。開示されているこの衝突板は孔を有し、流動室内に水平平面に配置されている。
【0004】
例えば、熱交換器ブロックを容器内に組み込んだ構造(容器内ブロック組み込み式)の熱交換器の場合、冷却流体のさらに改善した分配を実現することが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】独国特許出願公開第102009022673号
【特許文献2】独国特許出願公開第3913579号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、容器内に流入する流体の分配を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そのために、容器内で容器の流体入口から流体を分配するための分配機構が提案される。その際、この分配機構は、案内部とこの案内部に隣接する分配部とを備えた少なくとも1つの案内板を有する。この案内部は、流体を通すための開口部を備えた領域を持つ。
【0008】
本分配機構の側部は、流体が専ら開口部からのみ下方へ進むことができてそれ以外は分配機構によって保持されるように、流体密に閉塞しておくことが可能である。
【0009】
流体は、特に液体成分と気体成分とを含んでいてもよい。例えば、流体は、気体/液体混合物として容器としてのジャケット室内へ流入する冷媒であってもよい。
【0010】
一般的に、適当な流体は、ただ局所的に容器の流体入口または入口ノズルの領域から流入するので、入口分流器(Inlet Flow Diverter )とも呼ぶことができる分配機構によって特に有利な均質の流体分配が実現される。
【0011】
本分配機構は、特に低温設備での利用に適している。しかし、利用分野には、熱交換器が用いられる他のプロセス設備も含まれ、例えば、ガス液化や空気分別などでの利用が考えられる。
【0012】
本分配機構の一実施形態では、案内板が、異形断面を有する曲げ加工した薄板として実施されている。この場合、異形断面は、例えば、弓形や屈曲した山形、あるいはエッジ形状、例えばL字角の形状であってもよい。
【0013】
本分配機構の一実施形態では、案内部と分配部とが、互いに隣接しかつ互いにほぼ垂直に配置された少なくとも2つの案内板によって形成されている。
【0014】
案内板の形状は例えば矩形であってもよい。
【0015】
分配板は、孔、間隙、スロット、あるいは、例えば、材料を除去することによって作られた他の形状の開口部を有し、これにより、特に流体を下方へ通過させることができる。好ましくは、本分配機構は水平に配置されている。分配部は、例えば孔またはスロット開口部を有する水平面を形成する。
【0016】
従って、容器内で容器の流体入口から流体を分配するための本分配機構の実施形態は、互いに隣接してかつ互いにほぼ垂直に配置された少なくとも2つの案内板を含む。その際、一方の案内板は、流体を通過させるための開口部を備えた領域を有する。この第1の案内板は特に衝突板として構成可能であり、第2の案内板は分配薄板として構成可能である。衝突板として構成された案内板は好ましくは垂直に延在し、分配薄板として構成された案内板は水平に延在する。
【0017】
好ましくは、本分配機構の側部が垂直方向に全体的または部分的に閉塞されており、これにより、流体の流れがほぼ分配薄板の開口部を通るように案内される。
【0018】
案内板は、材料を一体的に用いて、屈曲した薄板として構成することが可能である。
【0019】
本分配機構の一態様では、2つの案内板がL形材を形成し、このL形材の端面に側部板が配置されている。側部板は、例えば本分配機構の側部を流体密に封止する。特に側部板を有する屈曲した態様によって、例えば分配通路として機能する部分スペースを容器内に画成することができる。
【0020】
好ましくは、開口部はスロットとして構成されている。スロットは、特に分配薄板に、この薄板のエッジに対してまたは形材の角に対してほぼ垂直方向に形成されている。
【0021】
本分配機構は、好ましくは、少なくとも部分的にアルミニウムまたは特殊鋼から成る。材料は、本分配機構のそれぞれの用途に合わせて、例えば低温設備での利用に適合するように選定できる。
【0022】
さらに、流体入口を有する容器と、この容器内に配置された少なくとも1つの熱交換器ブロックと、この容器内において熱交換器ブロックの上方に配置された分配機構とを備えた熱交換装置が提案される。
【0023】
この熱交換装置は、特に容器内ブロック組み込み式の熱交換器として構成される。これはまた、コア・イン・シェル式(Core-in-Shell)またはブロック・イン・ケトル式(Block-in-Kettle)の熱交換器構成とも呼ぶ。この場合、一般的に、通例プレート式熱交換器として構成された複数の熱交換器ブロックが、1つの容器内あるいは1つのジャケット室内に並べて配置されている。ジャケット室は例えば冷媒用の流動室を形成し、冷媒は大抵の場合等温蒸発され、その際、熱交換器ブロック内を流れる流体が冷却される。これらの熱交換器ブロックは、好ましくは同じ高さに配置されている。また、非等温蒸発を行うことも可能である。
【0024】
上記の通り、本熱交換装置の実施形態は、流体入口を備えた容器と、この容器内に配置された複数の熱交換器ブロックとを有し、かつ、流体入口を貫流する流体を分配するための分配機構を前記熱交換器ブロックの上方に有する。その際、分配機構は、案内部とこの案内部に隣接する分配部とを備えた少なくとも1つの案内板を有し、かつ、この分配部が流体を通過させるための開口部を備えた領域を有する。
【0025】
一実施形態では、容器は円筒状に構成されており、冷媒用流動領域のためのジャケット室を形成する。その際、円筒軸は、好ましくは水平に配置されている。
【0026】
好適な一実施形態では、分配機構が、円筒軸に対して垂直方向に延在する衝突板と、円筒軸に沿って水平方向にまたは円筒軸に対して平行に延在する分配薄板とから成る。分配薄板における下向きの開口部は、複数または単一の熱交換器ブロックの上方に位置している。上方とは、垂直方向に、より高い位置であることを意味する。本分配機構は、必ずしも熱交換器ブロック全体にわたって延在している必要はない。
【0027】
好ましくは、本熱交換装置の場合、分配機構は、流体入口を通って容器内へ流入する流体が、分配部の開口部を通って意図通りに所定のジャケット領域へ流入するように容器内に配置されている。例えば、流入する流体は、少なくとも一部が熱交換器ブロック上へ落下する。開口部のこの配置および構成によって、ジャケット室内において、流体の液体成分を開口部を通じて単一または複数の熱交換器ブロックの上面または横へ所望通りに分配することが可能となる。
【0028】
好ましくは、分配機構を用いて、流体、特に液体がジャケット室の領域内へ案内または分配され、そこでは、例えば熱交換器ブロックによる蒸発によって生成される気体は可能な限りわずかであるか、あるいは全く生成されない。気相と液相の分離はこれにより改善される。
【0029】
熱交換装置の一実施形態では、本分配機構は、容器の壁部およびオプションの側部板と共に容器内に部分スペースを画成する。分配機構と容器の壁部とが例えば部分スペースを包囲する。例えば分配通路としてのこの部分スペースは、分配機構の分配部にある開口部によって容器壁部の流体入口を流動室に接続する。
【0030】
例として、この部分スペースは流入側が流体入口に連結され、流出側が出口としての開口部に連結されている。
【0031】
本熱交換装置の一実施形態では、流体入口は一定の入口断面と入口方向とを有する。分配機構は、好ましくは、容器の長手延在方向に沿って水平および平行に構成された長手軸を有する。
【0032】
好ましくは、分配機構の長手方向延在部が入口方向に対して垂直に位置する。一実施形態では、開口部がスロットとして容器の長手軸に対して垂直に形成されている。スロットは、例えば、容器の長手軸に対して垂直に形成された部分スペース断面または容器断面に対して平行に延在する。
【0033】
本熱交換装置の好適な一実施形態では、分配機構と容器壁部とによって形成された分配通路の断面が、流体入口の入口断面に一致する。これにより、特に有利なことに、例えば、適当なノズルからの大量の流れを流体入口によって左右に分割することが実現できる。
【0034】
好適な一実施形態では、分配機構がL字形薄板として構成されている。好ましくは、スロット幅が30mmから70mmの間である。特に好ましくは、スロット幅が50mmである。
【0035】
本熱交換装置の一実施形態では、開口部がスロットとして構成されており、このスロットからL字形薄板のエッジまたは角までの距離が40mmから100mmの間である。特に好ましくは、上記距離が60mmから80mmの間である。
【0036】
本熱交換装置の更なる一実施形態では、全開口部の総断面積が流体入口の断面積の150%から250%の間である。特に好ましくは、全開口部の総断面積が流体入口の断面積の2倍である。分配機構の側部は、好ましくは側部板で閉塞される。この場合、原理上、複数の入口ノズルも考えられる。
【0037】
本熱交換装置の更なる一実施形態では、分配機構の分配部が、流体密な領域を有してこれらの流体密な領域の下に熱交換器ブロックが存在しないように構成されている。
【0038】
例えば、分配機構の前記分配部は、専ら単一または複数の熱交換器ブロックの直接上方にのみ開口部を備えており、それ以外は流体密に構成されている。これにより、容器内において互いに並んで位置する熱交換器ブロックの間の領域に流体が滴下あるいは流入することがない。
【0039】
特に、本熱交換装置の場合、熱交換器ブロックの上方に分配部の開口部が存在してそれ以外では分配部が閉塞されるように、熱交換器ブロックと分配機構とが配置されている。
【0040】
あるいはまた、分配機構の分配部が、専ら熱交換器ブロックの横または間にのみ開口部を備えており、それ以外は流体密に構成されている。これにより、容器内の熱交換器ブロックの上方の領域に流体が滴下あるいは流入することがない。
【0041】
特に、本熱交換装置の場合、熱交換器ブロックの横または側方に分配部の開口部が存在してそれ以外では分配部が閉塞されるように、熱交換器ブロックと分配機構とが配置されている。
【0042】
本熱交換装置の別の一態様では、流体入口の横に1つまたは複数の流体出口が設けられている。容器の、特に気体状流体用の流体出口ノズルの下方には、分配機構の分配部の開口部は設けられていない。
【0043】
ここに提案する熱交換装置の場合、冷媒としての流体は、分配機構によって上方から水平の分配通路を介して分配され、熱交換器ブロックの周囲を有利に流動できる位置へと至る。開口部の上記配置によって、流体を、熱交換器ブロックを備えた流動領域へ所望通りに案内することができ、そこで気体/液体分離を効率的に行うことが可能である。
【0044】
本分配機構または本熱交換装置の可能なその他の実施態様または変形態様には、上記または実施形態に関する下記説明に記載された特徴を、明示的には挙げていない形で組み合わせたものも含まれるものとする。その際、当業者は、本分配機構または本熱交換装置の各基本形態に対して改良または補完のために個々の特徴を付け加えることになるであろう。
【0045】
本発明のその他の構成は、従属請求項および以下に説明する本発明の実施形態に記載されている。さらに以下において、添付した図を参照しながら本発明について詳述する。
【発明の効果】
【0046】
ここに提案する熱交換装置の場合、冷媒としての流体は、分配機構によって上方から水平の分配通路を介して分配され、熱交換器ブロックの周囲を有利に流動できる位置へと至る。開口部の上記配置によって、流体を、熱交換器ブロックを備えた流動領域へ所望通りに案内することができ、そこで気体/液体分離を効率的に行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】分配機構の第1の実施形態を示す模式図である。
【図2】分配機構の第2の実施形態を示す模式図である。
【図3】分配機構の第3の実施形態を示す模式図である。
【図4】熱交換装置の実施形態を示す長手方向断面図である。
【図5】熱交換装置の実施形態を示す断面図である。
【図6】分配機構の第4の実施形態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
図1は、分配機構の第1の実施形態を示す模式的な斜視図である。この分配機構1は垂直の案内薄板と水平の案内薄板とを有し、これらは共通のエッジ13に沿ってL字角を形成する。垂直の案内薄板2は案内部として、水平の分配薄板3は分配部として働く。例えば、図1の向きの場合、流体は右から左に案内薄板2の面法線の方向へ流入する。分配薄板3は、開口部8、9を備えた領域4、5を持つ。開口部8、9を備えた領域4、5の間には、流体密な領域10が設けられている。図1の後方領域4ではスロット8として構成され、前方領域5では孔9として形成されている開口部を通過することで、流体は下方へ進むことができる。
【0049】
図1に示されている分配機構1では、容器の流入ノズルの近傍において、有孔衝突板の機能と入口分流器の機能、すなわち分配器の機能とが一つに統合されている。案内部2は、実質的に流体をそらす働きあるいは偏向させる働きをする。分配部3は、開口部8、9によって、流体を所望通りに分配機構1の下方に伝えることを可能にする。
【0050】
図2は、分配機構の第2の実施形態を示す模式的な斜視図である。この分配機構18は、曲げ加工した案内薄板として形成されている。この図2には、案内薄板の、図2の向きにおいて垂直方向の案内部2と水平方向の分配部3とが示されている。分配部3には、スロットの形で長手開口部8を備えた領域4、5が設けられている。分配部3の中央領域10には孔あるいはスロットは存在しない。
【0051】
図2には、生じ得る流体の流れが矢印で示されている。例えば、容器の入口ノズルを通じて流入する流体15は、分配機構18の案内薄板に到達する。この流れによって、矢印16が示すように、流体はほぼ水平に左および右へ押される。重力によって、この流体は流体密な領域10に沿って開口部8を備えた領域4、5の方向へ流れる。その領域で、流体は開口部8を通って下方へ進む。これが矢印17で示されている。
【0052】
図3は、分配機構の第3の実施形態を示す模式的な断面図である。図3に示された分配機構24は、例えばアルミニウムや特殊鋼の薄板から成る弓形の形材として製作されている。
【0053】
図1および図2に示された実施形態と同様、分配機構24の形状も、容器壁部25と共に分配通路を形成することを可能にする。曲げ加工したこの案内薄板は、図3に矢印で示されているように、ここでは丸く示された容器壁部25と流体密に閉じている。スペース領域23は水平方向の分配通路とみなせる。
【0054】
分配部2は、容器開口部または流体入口26に対向して設けられている。流体入口26を通って流入する流体15は、分配機構24の分配部2にぶつかる。下部領域において、下向きの開口部が分配機構24の薄板に設けられており、これが点線で示されている。弓形のほぼ下向き部分は分配部3と呼ばれる。領域4において開口部を備えた薄板領域を通って、流体17は下方へ流出することができる。
【0055】
分配通路23内に開口部をこのように配置および位置決めすることによって、流体を所望通りに例えば熱交換器ブロックの方向に送給することができる。「上方」および「下方」は、ここおよび以下において、一般的に垂直方向に示される重力加速度を基準にして理解されるものとする。従って、「水平」は重力加速度に対して垂直方向を意味する。
【0056】
以下において、熱交換装置の実施形態について図4から図6を用いて詳述する。この図4には、熱交換装置100の長手方向断面が示されている。図5は、熱交換装置100の対称軸に対して横向きの断面A−Aを示す。図6には、熱交換装置100に設けられた分配機構101の第4の実施形態が斜視図として示されている。
【0057】
熱交換装置100は、容器内ブロック組み込み構造として構成されている。すなわち、複数の熱交換器ブロック28、29、30が、ジャケットとも呼ばれる円筒状の容器27の中に組み込まれている。コア・イン・シェルまたはブロック・イン・ケトルとも呼ばれるこの容器内ブロック組み込み式構成の利点は、特に、プレート式熱交換器の様式の熱交換器ブロックがとりわけ効率的に利用できるという点にある。プレート式熱交換器の場合、熱交換路の複数の層が分離板によって互いに区切られており、これにより、通常は直方体のブロックとなる。
【0058】
図4から分かるように、円筒状の容器27(その長手軸34は対称軸でもあり、水平方向に延びている)の中に3つの熱交換器ブロック28、29、30が設けられている。例えば、液化されるべき流体、例えば天然ガスやプロセスガスが熱交換器ブロック28、29、30によって冷却される際、流体は、上部領域においてジャケットまたは容器27を貫通する入口ノズル31を通じて熱交換器ブロック28、29、30に送給され、そして、冷却された流体として、ジャケット27の下部領域に設けられた出口ノズル32を介して導出される。
【0059】
流動室とも呼ばれるジャケット27の内部スペースでは、大抵の場合、主として液状の冷媒が等温蒸発される。そのために、ジャケット27には流体入口26が上部領域のほぼ中央に設けられている。流体は、以降、冷媒と呼ぶ。冷媒は、そこでは局所的に気体/液体混合物として流入する。液体成分は、熱交換器ブロック28、29、30で蒸発され、気体として流体出口開口部33を通ってジャケット室から再び外へ出る。ここでは、流体入口26は冷媒用の流体出口33よりも低い位置に設けられている。専ら冷媒の気体成分だけがジャケット室から排出ノズルまたは流体出口33を介して排出されることが望ましい。一緒に引き連れて行かれる液状の冷媒の量を可能な限り低減するために、流体入口ノズル26を通って流入する気体/液体混合物の分配を改善することが望まれる。このような理由で、容器27に分配機構101が設けられている。
【0060】
特に図5の断面図から、容器であるシリンダジャケット27の円形の断面と、内部スペースに設けられた、冷却されるべき流体用の流入口31および流出口32を備えた熱交換器ブロック28とが見て取れる。図5の向きの場合、上方左側に位置する円弧部分に流体入口26が設けられている。冷媒15はそこから分配通路23内に流入する。分配通路23はジャケット27の内側の部分スペースによって形成されており、この部分スペースは、ジャケット壁部25と、案内部および分配部3から成るL字状に形成された案内薄板とによって形成されている。
【0061】
図6は、分配機構101の実施形態を示す斜視図である。図6には、垂直方向に設けられた案内薄板2と水平方向に設けられた分配薄板3とを備えた分配機構101が示されている。さらに、側部薄板19、20が設けられており、これらは、L字形エッジ上に載置されて流体密に結合され、案内板2及び分配板3に結合されている。側部薄板19、20のエッジまたは輪郭21、22は、容器壁部25(図5を参照)に密着しており、容器壁部あるいはジャケット壁部25と流体密のシールを形成する。
【0062】
これにより、形成された上記部分スペースあるいは分配通路23は、分配板3の開口部8によって流体入口26とジャケット27の内部スペースとを結合する。開口部8はスロット状に設けられており、分配機構101の長手方向延在部に対してほぼ垂直方向に、かつ、容器27の対称軸34に対してほぼ垂直方向に延在する。
【0063】
図4、図5および図6を合わせて参照することで分かるように、流体密の領域10、11、12が分配板3に設けられており、そこでは、一方において分配板3の下方には熱交換器ブロック28、29、30が存在せず、もう一方において分配板3の上方には入口ノズル26または出口ノズル33が配置されている。開口部8を備えた領域4、5、6、7は、熱交換器ブロック28、29、30のほぼ上方ではあるがこれらのブロックの間にのみ設けられている。これにより、冷媒の気体/液体分離が容器の全長にわたって均一に行われること、かつ、液状の冷媒が熱交換器ブロック上に直接流れ落ちないことが保証されている(矢印17)。
【0064】
さらに見て取れることは、流体入口が、分配機構101の長手方向延在部のほぼ中央に分配機構101の方へ向かって配置されていることである。これによって、流入する流体がそれぞれほぼ半分ずつ2つの部分流に分割される。例えば、入口ノズル26は所定の入口断面積を有する。円形の入口ノズルの場合、断面積A=π/4×dである。ただし、dは入口ノズル26の直径とする。好ましくは、開口部8の断面積Aの総和は、流体入口の断面積Aの2倍、すなわち、Σ=2×Aである。つまり、スロット8の個数および幾何学的形状は、入口ノズル26の断面積に基づいて選定されている。
【0065】
本出願人の研究では、エッジ13から、すなわちL字形の内側の角からスロット8までの距離を最小にすべきことが明らかになった。
【0066】
L形材を通る分配通路23の幾何学的形状および寸法は、ジャケット室において冷媒の可能な限り均一な分配が実現されるように選定されている。例えば、流体の気体含有量が熱交換器ブロック28、29、30での冷媒の蒸発によって特に高くなる領域では、分配板3の長手方向の単位部分当たりにおけるスロットの個数またはスロットの断面積を低減することができる。これにより、冷媒入口から導入される蒸気による気体成分の量を、開口部においてより制御しやすくなる。
【0067】
実施形態を用いて説明してきたような分配機構を利用して流路を組み入れることで、冷媒の気相成分および液相成分の効率的な分配が実現できる。容器壁部を利用して分配機構を容器内に組み込むことによって、適切な分配通路を設ける際の重量およびコストが低く抑えられる。
【0068】
本発明について実施形態を用いて説明してきたが、本発明は、これらの実施形態に限定されるわけではなく、多様に変更可能である。薄板に関して提案された材料および示された幾何学的形状は、単に典型例として解されるべきものである。分配機構または熱交換装置に関して明示的に述べた以外の利用例も考えられる。
【符号の説明】
【0069】
1:分配機構
2:案内部
3:分配部
4,5,6,7:開口部を備えた領域
8:スロット
9:孔
10,11,12:閉塞された領域
13:エッジ
14:角
15,16,17:流体の流れ
18:分配機構
19,20:側部薄板
21,22:側部薄板のエッジ
23:分配通路
24:分配機構
25:容器壁部
26:流体入口
27:ジャケット
28,29,30:熱交換器ブロック
31:入口
32:出口
33:流体出口
34:ジャケット軸
100:熱交換装置
101:分配機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器(27)内において該容器(27)の流体入口(26)から流体(15)を分配するための分配機構(1)であって、該分配機構(1)が案内部(2)と該案内部(2)に隣接する分配部(3)とを備えた少なくとも1つの案内板を有し、かつ、前記分配部(3)が流体(17)を通過させるための開口部(8、9)を備えた領域(4、5)を有することを特徴とする分配機構(1)。
【請求項2】
前記案内部(2)と前記分配部(3)とが、互いに隣接しかつ互いにほぼ垂直方向に配置された少なくとも2つの案内板によって形成されていることを特徴とする請求項1に記載の分配機構(1)。
【請求項3】
前記2つの案内板(2、3)がL形材を形成し、該L形材の端面に側部板(19、20)が配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の分配機構(1)。
【請求項4】
前記開口部(8)が、特に分配薄板において該分配薄板のエッジまたは形材の角に対してほぼ垂直方向にスロットとして構成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の分配機構(1)。
【請求項5】
前記分配機構(1)が少なくとも部分的にアルミニウムまたは特殊鋼から成ることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の分配機構(1)。
【請求項6】
流体入口(26)を有する容器(27)と、該容器(27)内に配置された少なくとも1つの熱交換器ブロック(28)と、該容器(27)内において該熱交換器ブロック(28)の上方に配置された請求項1〜5のいずれか1項に記載の分配機構(101)とを備えた熱交換装置(100)。
【請求項7】
前記流体入口(26)を通じて前記容器(27)内に流入する流体(15)が前記分配部(3)の開口部(8)を通って少なくとも部分的に前記熱交換器ブロック(28)上に落下するように、前記分配機構(101)が前記容器(27)内に配置されていることを特徴とする請求項6に記載の熱交換装置(100)。
【請求項8】
前記分配機構(101)が、前記容器(27)の壁部(25)と共に前記容器(27)内に部分スペース(23)を画成することを特徴とする請求項6または7に記載の熱交換装置(100)。
【請求項9】
前記分配部(3)が流体密な領域(10、11、12)を備えており、該流体密な領域(10、11、12)の下に少なくとも部分的に1つまたは複数の熱交換器ブロック(28)が配置されるように、前記分配部が形成されていることを特徴とする請求項6〜8のいずれか1項に記載の熱交換装置(100)。
【請求項10】
前記開口部(8)の総断面積が、前記流体入口(26)の断面積の150%から250%の間に相当することを特徴とする請求項6〜9のいずれか1項に記載の熱交換装置(100)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−141126(P2012−141126A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−285531(P2011−285531)
【出願日】平成23年12月27日(2011.12.27)
【出願人】(391009659)リンデ アクチエンゲゼルシャフト (106)
【氏名又は名称原語表記】Linde Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Klosterhofstrasse 1, D−80331 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】