説明

分離容器、アタッチメントおよび分離方法

【課題】 不要な成分の混入を防止できる分離容器を提供する。
【解決手段】 遠心分離により試料から分離対象物を底部に集めて分離するための分離容器1であって、容器本体11と、区画部とを有し、前記容器本体11が、上端が開口し、かつ下端が底部である軸方向に長尺の筒状容器であり、前記区画部が、前記容器本体の前記軸方向に沿って形成された隔壁12を有し、前記容器本体11内部が、前記隔壁12により、試料導入室14および分離対象物導出室15に区画され、前記試料導入室14および前記分離対象物導出室15は、隔壁12の下部の貫通孔13によって連通しており、前記分離対象物導出室15の下部には前記開口部から採取管が挿入可能であり、前記分離対象物導出室15の下部に位置する前記分離対象物を前記採取管により採取して前記容器本体11外に回収可能であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分離容器、アタッチメントおよび分離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
不妊症では、男性側に原因があると考えられるケースが50%以上を占めるといわれている。男性不妊症としては、例えば、造精機能障害および性機能障害があげられる。精液所見から見た男性不妊症としては、精液中の精子濃度が低い乏精子症、精液中に精子が全く存在しない無精子症、精子の運動能力が乏しい精子無力症等があげられる。これらの男性不妊症に対しては、ホルモン療法等で精子の増加を図る方法がある。精索静脈瘤等の閉塞性の疾患の場合は、精路再建術等の手術療法が適用される。これらの療法では効果が得られない場合や無精子症の場合は、人工授精法(artificial insemination : AI)、体外受精法(in vitro fertilization : IVF)および顕微授精法(intracytoplasmic sperm injection : ICSI)等の生殖補助医療(Assisted Reproductive Technology : ART)が適用されている。
【0003】
生殖補助医療に供する精子の調製方法としては、密度勾配遠心による分離法(密度勾配遠心法)、および、精子の運動性を利用した分離法(スイムアップ法)が挙げられる。前者の方法は、一般的に、パーコール(percoll)が使用される。具体的には、パーコールに精液または精巣組織を重層し、遠心分離によって密度勾配を形成し、精液もしくは精巣組織中に含まれる不純物を取り除き、成熟した精子のみを最下層に分離する方法である。この操作の過程で、精子は、洗浄および濃縮され、精子の運動率および濃度が高まる。後者の方法は、まず、精液から遠心分離により、精液のうち精子を除いた液体成分である精漿を除去し、精子を含む精液内固形物の濃度が高い状態にする。ついで、上清(精漿)を除去した後、培地の入った試験管等の容器の底部に、前記精子を含む精液内固形物を沈め、良好で高活性の精子だけが直線運動で前記培地の上部に泳いで浮かび上がってくることを利用して、成熟運動精子を得る。これらの方法では、精子を洗浄および濃縮することで、受精機会が増し、受精確率の向上に繋がるのに加え、受精の障害となる精漿や雑菌等を除去することが可能となる。
【0004】
しかしながら、前者の密度勾配遠心法においては、遠心管の底部に沈殿した精子を、遠心管の上部の開口からピペットを挿入して採取する際、パーコールの中層付近に存在する成分がピペットに付着し、これらが精子中に混入するという問題がある。パーコールの中層付近には、精漿もしくは精巣組織成分が存在しており、場合によっては、細菌、ウイルスが存在する。精漿および精巣組織成分の混入は、精子の希釈化につながり、精子の運動性に影響を及ぼす恐れがある。また、細菌もしくはウイルスの混入は、受精卵および生まれてくる子供の安全性に影響を及ぼす恐れがあり、また、精子の調製を行う操作者の安全性にも影響を及ぼす恐れがある。また、同じ理由により、後者のスイムアップ法にも同様の影響を及ぼす恐れがある。この問題を解決するために、密度勾配遠心法に適用する精子採取用具が提案されている。
【0005】
特許文献1には、ガラス製の遠心管の底部を細径化し、前記底部に折切りを容易にするための脆弱部が形成された採取具が開示されている。この採取具は、まず、精子を遠心分離で沈殿させた後、上部開口にスポイトゴムを装着する。そして、前記底部の前記脆弱部を折切って、前記採取具の下端を開口し、ついで、前記スポイトゴムを圧縮して前記採取具内部に陽圧を発生させ、前記下端の開口から沈殿した精子を外部に導出する。また、特許文献2には、前記採取具を改良したものであって、前記脆弱部を有する細径の底部を保護する保持具を備える採取具が開示されている。しかしながら、特許文献1および2に開示された採取具は、前記脆弱部を折切って精子を導出するため、折切りの際に生じる破断片が精子に混入する恐れがある。また、前記採取具では、折切りの操作が必要なため、操作者が操作を誤れば指等に傷を負う恐れがある。
【0006】
特許文献3には、容器本体の中に内筒が挿入された採取具が開示されている。この採取具では、内筒の底部は開口しており、遠心分離の際には、前記開口は栓で閉塞されている。前記内筒の開口を栓で閉塞した状態で、前記容器本体と前記内筒の間にパーコールを入れ、その上に試料を重層し、遠心分離により前記容器本体の底部に精子を沈殿させる。そして、前記内筒にピペットを挿入し、前記ピペットの先端で前記栓を前記容器本体側に押して外し、前記ピペット先端を容器本体の底部に移動させ、精子を吸引して採取する。また、特許文献4には、前記採取具を改良したものであって、栓の先端形状を尖角形状にして、前記栓が前記内筒下端の開口から脱落して前記容器本体底部に落下した場合、前記栓が、脱落位置から左右のいずれかに倒れるようにしたものである。改良した採取具では、脱落させた栓に妨害されることなく、ピペットを容器本体底部に挿入可能である。しかしながら、特許文献3および4に開示された採取具では、内筒の下端開口が栓で閉塞されているが、遠心処理の際に、栓が遠心力で脱落する恐れがある。
【0007】
特許文献5には、遠心管の中に採取管を配置した採取具が開示されている。この採取具では、遠心分離後、前記採取管にシリンジを接続し、前記遠心管の底部に沈殿した精子を吸引して採取する。しかしながら、この採取具では、前記採取管が一点で支持されているため、遠心分離時の遠心力により脱落する恐れがある。また、前記採取管の先端が前記遠心管の底部に位置しているため、遠心分離時に、前記採取管の先端によって精子が物理的損傷を受けるおそれもある。
【0008】
特許文献6には、有底管の中に、先端および後端が開口したチューブ体が着脱可能に配置された採取具が開示されている。この採取具では、前記有底管および前記チューブ体にパーコールを充填し、内側に位置する前記チューブ体のパーコールの上に試料を重層して遠心分離し、外側に位置する前記有底管の底部に精子を沈殿させる。そして、前記チューブ体を取り外した後、ピペットで、前記有底管の底部の精子を採取する。しかしながら、この採取具では、前記チューブ体を取り外すという煩雑な操作が必要である。
【0009】
これらの採取具の問題は、生殖補助医療における精子の調製の際の問題であるが、遠心分離により試料から分離対象物を分離する分野においても共通する問題でもある。
【特許文献1】特開2000−288082号公報
【特許文献2】特開2006−305237号公報
【特許文献3】特開平9−285740号公報
【特許文献4】特開2001−46915号公報
【特許文献5】特開2004−313500号公報
【特許文献6】再公表特許WO2005/030399号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明は、不要な成分の混入を防止でき、遠心時に部材の脱落がなく、安全性に優れ、簡単な操作で試料から分離対象物を分離可能な分離容器の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、本発明の分離容器は、
遠心分離により試料から分離対象物を底部に集めて分離するための分離容器であって、
容器本体と、区画部とを有し、
前記容器本体が、上端が開口し、かつ下端が底部である、軸方向に長尺の筒状容器であり、
前記区画部が、前記容器本体の前記軸方向に沿って形成された隔壁を有し、
前記容器本体の内部が、前記隔壁により二つ以上の室に区画され、
前記隔壁により区画されて形成された二つ以上の室の少なくとも一つが、試料導入室であり、
残りの室の少なくとも一つが、分離対象物導出室であり、
前記試料導入室および前記分離対象物導出室が、それぞれの下部で連通可能とされており、
前記試料導入室および前記分離対象物導出室が、それぞれ遠心処理液が充填可能であり、
前記分離対象物導出室には、前記開口部から採取管が挿入可能であり、前記分離対象物導出室内の前記分離対象物を、前記採取管により採取して、前記容器本体外に回収可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
前記のように、本発明の分離容器では、前記区画部によって、容器内部が、前記試料導入室および前記分離対象物導出室の二つに区画され、かつ、前記両室は、その下部で連通可能とされている。したがって、試料を前記試料導入室に入れ、遠心分離すると、分離対象物は、前記分離容器本体の下部、すなわち、前記試料導入室および前記分離対象物導出室の双方か、少なくとも分離対象物導出室の下部に沈殿する。試料が不要成分を含む場合、前記遠心分離において、前記試料導入室では、例えば、上層もしくは中層に、前記試料由来の不要成分が存在するが、前記分離対象物導出室には、前記試料由来の不要成分が存在しない。したがって、前記分離対象物導出室に、採取管を挿入して、沈殿している分離対象物を採取して回収すれば、前記試料由来の不純物等の不要成分の混入を防止して、分離対象物を得ることができる。また、本発明の分離容器によれば、前記試料から前記分離対象物を濃縮することが可能である。本発明の分離容器を、例えば、精子の洗浄および濃縮に使用すれば、精液または精巣組織由来の不要成分や細菌等の不純物の混入を防止して、濃縮精子を得ることができる。また、本発明の分離容器は、後述のように、スイムアップ法にも適用することができる。スイムアップ法に適用する場合、まず、試料導入室に試料を導入して遠心分離すると、成熟精子は、容器本体下部、すなわち、前記試料導入室および前記分離対象物導出室の双方か、少なくとも分離対象物導出室の下部に沈殿する。前記試料導入室には、試料由来の不純物が存在するが、前記分離対象物導出室には、不純物が存在しない。成熟精子は、不純物が存在しない前記分離対象物導出室を遊泳して浮上してくるので、これを採取して回収すれば、不純物の混入を防止して成熟精子を得ることができる。そして、本発明の分離容器は、単純で強固な構造をとることが可能であるため、遠心分離の際の部材の脱落を防止でき、かつ、簡単な操作で、分離対象物を採取回収可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明において、「試料導入室および分離対象物導出室が連通可能とされている」とは、例えば、前記試料導入室と前記分離対象物導出室とが、その間の隔壁に形成された貫通孔等により、最初から連通されていてもよいし、前記試料導入室と前記分離対象物導出室とを、完全に隔てた状態で形成しておき、所望に応じて連通させてもよいことを意味する。後者の場合、前記試料導入室と前記分離対象物導出室とを連通させる方法は、特に制限されず、例えば、前記試料導入室と前記分離対象物導出室との間の隔壁に、ピペット等の採取管により孔を開ける方法等が挙げられる。
【0014】
<分離容器>
本発明の分離容器は、前述のように、遠心分離により試料から分離対象物を底部に集めて分離するための分離容器であって、
容器本体と、区画部とを有し、
前記容器本体が、上端が開口し、かつ下端が底部である、軸方向に長尺の筒状容器であり、
前記区画部が、前記容器本体の前記軸方向に沿って形成された隔壁を有し、
前記容器本体の内部が、前記隔壁により二つ以上の室に区画され、
前記隔壁により区画されて形成された二つ以上の室の少なくとも一つが、試料導入室であり、
残りの室の少なくとも一つが、分離対象物導出室であり、
前記試料導入室および前記分離対象物導出室が、それぞれの下部で連通可能とされており、
前記試料導入室および前記分離対象物導出室が、それぞれ遠心処理液が充填可能であり、
前記分離対象物導出室には、前記開口部から採取管が挿入可能であり、前記分離対象物導出室内の前記分離対象物を、前記採取管により採取して、前記容器本体外に回収可能であることを特徴とする。
【0015】
本発明の分離容器としては、例えば、以下に示す第一から第四の分離容器があげられる。なお、本発明の分離容器は、これらの形態には制限されない。
【0016】
本発明の第一の分離容器は、前記容器本体の内部断面形状と略同一形状の平板状の隔壁を有する形態である。
【0017】
本発明の第一の分離容器としては、例えば、前記隔壁が、前記容器本体の内部断面形状と略同一形状の平板状の隔壁であり、前記隔壁の下部には貫通孔が形成され、前記貫通孔により、前記試料導入室および前記分離対象物導出室が連通可能とされているという形態があげられる。
【0018】
また、本発明の第一の分離容器は、例えば、前記隔壁の下部の貫通孔に代えて、または、これに加えて、前記隔壁の底辺と前記容器本体の内壁とにより形成された貫通孔を有する形態があげられる。すなわち、本発明の第一の分離容器としては、例えば、前記隔壁が、前記容器本体内部の断面形状と略同一形状の平板状の隔壁であり、前記隔壁の高さが、前記容器本体の深さよりも短く、前記隔壁の底辺よりも下側に、前記隔壁の底辺と前記容器本体の内壁とにより貫通孔が形成され、前記貫通孔により、前記試料導入室および前記分離対象物導出室が連結可能とされているという形態であってもよい。
【0019】
本発明の第一の分離容器において、前記隔壁は、例えば、前記容器本体内部の径方向中心よりも前記試料導入室側に偏って配置され、前記隔壁は、その長手方向の途中から前記試料導入室側に向かって傾斜した形状であってもよい。本形態によれば、本発明の分離容器を、例えば、スイムアップ法による精子の洗浄濃縮に適用した場合、成熟精子の回収効率をさらに向上可能である。
【0020】
本発明の第一の分離容器において、前記区画部は、さらに、隔壁固定部を有し、前記隔壁固定部により、前記隔壁が、前記容器本体内部に支持固定されていることが好ましい。前記区画部は、例えば、前記隔壁自体によって、前記容器本体内に支持固定されていてもよいが、別途、前記隔壁固定部を用いて前記隔壁を支持固定すれば、例えば、遠心分離の際の脱落をより一層防止可能となる。
【0021】
本発明の第二の分離容器は、前記区画部が、以下に示す第一の内容器を有する形態である。
【0022】
本発明の第二の分離容器としては、例えば、
前記区画部が、第一の内容器を有し、
前記内容器は、軸方向に長尺の筒状であり、かつ前記容器本体内部に挿入可能な外径および高さを有し、
前記内容器の上部が開口し、前記内容器の下部が開口し、もしくは前記内容器の下部に貫通孔が形成され、
前記内容器の外周面の一部の形状が、前記容器本体の内周面の一部の形状と略同形状であり、
前記内容器の外周面のその他の部分の形状は、平面形状であり、
前記内容器の平面形状の側壁部分が、前記隔壁であり、
前記内容器の外周面と前記容器本体内周面の同形状部分が相互に接した状態で、かつ、前記内容器の平面形状の外周面と、前記容器本体の前記同形状部分以外の内周面とが、一定の距離をおいた状態で、前記内容器が前記容器本体内に配置され、
前記内容器が内容器固定部を有し、前記内容器固定部により、前記内容器が、前記容器本体内で支持固定され、
前記内容器内部の室が、前記試料導入室であり、
前記内容器の平面形状の外周面と前記容器本体の内周面の前記接した面以外の面とにより形成された室が、前記分離対象物導出室であるという形態があげられる。
【0023】
本発明の第二の分離容器において、前記内容器の平面形状の外周面は、前記軸方向の途中から前記内容器内部に向かって傾斜した形状であってもよい。本形態によれば、本発明の分離容器を、例えば、スイムアップ法による精子の洗浄濃縮に適用した場合、成熟精子の回収効率を、さらに向上可能である。
【0024】
本発明の第三の分離容器は、前記区画部が、以下に示す第二の内容器を有する形態である。
【0025】
本発明の第三の分離容器としては、例えば、
前記区画部が、第二の内容器を有し、
前記内容器は、軸方向に長尺の筒状であり、かつ前記容器本体の内径より小さい外径と、前記容器本体の深さより小さい高さとを有し、
前記内容器の上部が開口し、前記内容器の下部が開口し、もしくは前記内容器の下部に貫通孔が形成され
前記内容器の側壁全体が、前記隔壁であり、
前記内容器の外周面と、前記容器本体の内周面とが、一定の距離をおいた状態で、前記内容器が前記容器本体内に配置され、
前記内容器が内容器固定部を有し、前記内容器固定部により、前記内容器が前記容器本体内で支持固定され、
前記内容器内部の室が、前記試料導入室であり、
前記内容器の外周面と前記容器本体の内周面とにより形成された室が、前記分離対象物導出室であるという形態があげられる。
【0026】
本発明の第四の分離容器は、前記区画部に代えて、以下に示す第三の内容器を有する形態である。
【0027】
本発明の第四の分離容器としては、例えば、
前記区画部に代えて、第三の内容器を有し、
前記内容器は、軸方向に長尺の筒状であり、かつ前記容器本体内部に挿入可能な外径および高さを有し、
前記内容器の上部が開口し、前記内容器の下部が開口し、もしくは前記内容器の下部に貫通孔が形成され、
前記内容器の外周面形状が、前記容器本体の内周面形状と略同形状であり、
前記内容器は、前記容器本体内部に挿入された場合、前記内容器外周面が前記容器本体内周面に当接することにより、前記容器本体内部で支持固定され、
前記内容器は、陽圧発生部を有し、
前記陽圧発生部は、前記内容器の上部開口に着脱自在であり、
前記内容器を前記容器本体内に挿入した状態で、前記内容器内部に前記試料を導入し、前記試料中の分離対象物を、遠心分離により前記内容器の下部に移動させ、この状態で、前記内容器を前記容器本体から取り出し、前記陽圧発生により発生した圧力で、前記内容器の下部開口から、前記分離対象物を導出可能であるという形態であってもよい。
【0028】
本発明の分離容器において、例えば、前記隔壁固定部または前記内容器固定部は、例えば、前記固定部の全体が前記容器本体内に挿入されることで、前記隔壁または前記内容器が前記容器本体内に支持固定されてもよいし、前記固定部の一部が前記容器本体内に挿入されることで、前記隔壁または前記内容器が前記容器本体内に支持固定されてもよい。
【0029】
本発明の分離容器において、前記区画部(例えば、前記隔壁、または、前記第一、第二もしくは第三の内容器)は、例えば、それぞれ前記容器本体と一体化した形態であってもよいし、前記容器本体から着脱可能な形態であってもよい。後者の場合、前記区画部を有する部材として、後述する本発明のアタッチメントを容器本体に装着することが好ましい。
【0030】
本発明の分離容器において、前記区画部は、さらに、把持部を有してもよい。前記把持部は、例えば、前記区画部を前記容器本体に装着した際、前記容器本体の外部に露出していることが好ましい。前述のように、前記区画部が前記容器本体から着脱可能な場合、露出した前記把持部を持つことで、前記容器本体への着脱操作がより一層容易となる。
【0031】
本発明の分離容器は、さらに、前記容器本体の上端の開口を閉塞可能な蓋部を備えることが好ましい。このように蓋部を有することで、例えば、前記分離容器内部に充填した遠心処理液や試料等が外部に飛散すること、また、不純物が外部から前記分離容器内部に混入することを、より一層防止可能となる。
【0032】
前記蓋部は、例えば、前記容器本体と部分的に連結された形態でもよいし、前記容器本体とは別個の部材であり、使用時に前記容器本体に装着する形態であってもよい。また、前記内容器を有する第二、第三および第四の分離容器の場合、前記蓋部は、前記形態の他に、例えば、前記内容器に装着する形態であってもよい。具体例として、前記第二および第三の分離容器の場合、前記蓋部は、例えば、内容器と部分的に連結された形態でもよいし、前記内容器とは別個の部材であり、使用時に前記内容器に装着する形態であってもよい。前記第四の分離容器の場合、例えば、前記容器本体および前記内容器とは別個の部材であり、使用時に前記内容器に装着する形態があげられる。前記蓋部の装着形態は、特に制限されず、例えば、螺合、咬合、嵌合、圧接等があげられる。
【0033】
本発明の分離容器において、前記第一、第二および第三の内容器が、前述のように、前記容器本体に着脱可能な場合、後述するように、遠心分離後に前記内容器を前記容器本体から取り出すことが好ましい。前記内容器を取り出すことによって、前記容器本体内部に、分離対象物を回収するための採取管をより一層挿入し易くなる。これによって、前記容器本体における前記分離対象物導出室に充填する遠心処理液の量も低減可能である。この際、例えば、前記内容器内部の前記試料導入室に残存する液体(例えば、不純物を含む試料等)が、前記内容器の取り出しによって、前記内容器下部の貫通孔または開口から、前記容器本体内部の分離対象物を含む遠心処理液中に混入することを防止することが好ましい。そこで、このような方法を採用する際には、前記蓋部は、例えば、前記内容器に装着され、且つ、前記内容器上部の開口、具体的には、前記試料導入室の上部の開口が、前記蓋部との接触により実質的に塞がれていることが好ましい。このような形態であれば、前記内容器の内部は気密性が保たれるため、前記内容器下部の貫通孔または開口から、前記内容器内部の試料導入室の不純物を含有する液体が漏れることを、十分に防止できる。
【0034】
また、本発明の分離容器は、例えば、上部に、前記試料導入室と前記分離容器外部とを連通可能な貫通孔および前記分離対象物導出室と前記分離容器外部とを連通可能な貫通孔を有してもよい。前記貫通孔は、前者および後者のいずれか一方でもよいが、両者であることが好ましい。本発明の分離容器が前記蓋部を備える場合、このような貫通孔を設けることで、例えば、遠心時における前記試料導入室内部の圧と前記分離対象物導出室内部の圧を調整可能である。また、前記貫通孔は、例えば、閉塞可能であってもよく、また、開閉程度を調整可能であってもよい。このように開閉可能とすることで、必要に応じて、適宜、前記試料導入室内部の圧と前記分離対象物導出室の圧を調整できる。例えば、前記試料導入室に充填した試料を前記試料導入室内に留める場合は、貫通孔を閉じた状態で遠心分離を行うことが好ましい。そして、遠心後、前記試料導入室の下部の貫通孔または開口部の近傍に分離対象物が残存する場合には、前記上部の貫通孔を開くことで、残存する分離対象物を前記試料導入室から前記分離対象物導出室に導出できる。他方、例えば、前記試料導入室に充填した液体の液面と、前記分離対象物導出室に充填した液体との液面とを平衡にする場合は、前記上部の貫通孔を開いた状態で遠心分離を行うことが好ましい。前記貫通孔の開閉は、例えば、手や指で行ってもよいし、前記貫通孔に開閉調整部を設け、例えば、それによって貫通孔の開口程度を調整することもできる。
【0035】
また、本発明の分離容器が、前述のように、容器本体から露出した前記把持部を有する場合、前記把持部に前記貫通孔が設けられてもよい。そして、前述のように、遠心後、分離対象物を回収する前に、前記分離容器から前記内容器を取り出す場合には、例えば、前記試料導入室と外部とを連通可能な貫通孔を塞ぎ、前記把持部を持って前記内容器を取り出すことが好ましい。このように貫通孔を塞ぐことで前記試料導入室内部の気密性が維持されるため、前記試料導入室内部から不純物等を含む液体が漏れることを十分に防止できる。
【0036】
前記貫通孔の大きさは、特に制限されないが、空気が通過可能であり、不純物が外部から侵入しない大きさであることが好ましい。また、前記貫通孔は、通気フィルターによって構成されてもよい。前記通気フィルターとしては、例えば、多孔性フィルターや不織布等があげられる。また、疎水性フィルターが好ましく、例えば、フッ素系樹脂等の疎水性ポリマーからなるフィルターや、前記疎水性ポリマーでコーティングされたフィルター等があげられる。
【0037】
本発明の分離容器の用途は、特に制限されないが、例えば、試料からの精子の分離用であることが好ましい。本発明の分離容器を、試料からの精子の分離に用いる場合、その分離方法は、特に制限されず、例えば、密度勾配遠心法や、スイムアップ法等に用いることができる。本発明の分離容器を密度勾配遠心法に使用する場合、精子の分離以外にも、例えば、細胞小器官の分離、DNAまたはRNAの分離、血液の特定成分(例えば、白血球)の分離等にも使用可能である。本発明の分離容器をスイムアップ法に使用する場合、例えば、前記分離対象物導出室に液体を注入し、前記分離対象物導出室の下部に沈殿して分離された精子を、前記液体中を遊泳して前記分離対象物導出室の上部に浮上させ、前記浮上した精子を採取して回収できる。本発明において、前記遠心処理液は、特に制限されず、例えば、遠心分離において容器本体内に注入される液が使用でき、具体例としては、例えば、パーコール等の密度勾配担体、培地、緩衝液等があげられる。前記培地としては、例えば、精子等の分離対象物に適した液体があげられる。また、スイムアップ法の場合、前記分離対象物導出室には、前記液体として、例えば、精子が遊泳可能な液体を注入することが好ましく、例えば、前記培地があげられる。前記培地の具体例としては、例えば、HEPESを含有した液体等があげられる。
【0038】
<アタッチメント>
つぎに、本発明のアタッチメントは、本発明の分離容器に使用するアタッチメントであって、
前記アタッチメントが、区画部を有し、
前記区画部が、前記容器本体の前記軸方向に沿って形成された隔壁を有し、
前記容器本体の内部が、前記隔壁により二つ以上の室に区画可能であり、
前記区画部の隔壁により区画されて形成された二つ以上の室の少なくとも一つが、試料導入室となり、
残りの室の少なくとも一つが、分離対象物導出室となり、
前記試料導入室と前記分離対象物導出室とが、それぞれの下部で連通可能とされているという構成である。
【0039】
本発明のアタッチメントとしては、例えば、以下に示す第一から第四のアタッチメントがあげられる。なお、本発明のアタッチメントは、これらの形態には制限されない。
【0040】
本発明の第一のアタッチメントは、前記容器本体の内部断面形状と略同一形状の平板状の隔壁を有する形態であり、本発明の第一の分離容器に使用できる。
【0041】
本発明の第一のアタッチメントとしては、
前記隔壁が、前記容器本体内部の断面形状と略同一形状の平板状の隔壁であり、
前記隔壁の下部には貫通孔が形成され、
前記貫通孔により、前記試料導入室および前記分離対象物導出室が連通可能とされている形態があげられる。
【0042】
また、本発明の第一のアタッチメントとしては、例えば、前記隔壁の下部の貫通孔に代えて、または、これに加えて、前記容器本体に配置された際、前記隔壁の底辺と前記容器本体の内壁とにより貫通孔が形成される形態であってもよい。すなわち、本発明の第一のアタッチメントとしては、例えば、前記隔壁が、前記容器本体内部の断面形状と略同形状の平板状の隔壁であり、
前記隔壁の高さが、前記容器本体の深さよりも短く、前記隔壁の底辺よりも下側に、前記隔壁の底辺と前記容器本体の内壁とにより貫通孔が形成され、
前記貫通孔により、前記試料導入室および前記分離対象物導出室が連結可能とされているという形態であってもよい。
【0043】
本発明の第一のアタッチメントにおいて、前記隔壁は、前記容器本体内部の径方向中心よりも前記試料導入室側に偏って配置可能であり、前記隔壁は、その長手方向の途中から前記試料導入室側に向かって傾斜した形状であってもよい。本形態によれば、例えば、本発明のアタッチメントを使用した分離容器を、スイムアップ法による精子の洗浄濃縮に適用した場合、成熟精子の回収効率をさらに向上可能である。
【0044】
本発明の第一のアタッチメントにおいて、前記区画部は、さらに、隔壁固定部を有し、前記隔壁固定部により、前記隔壁が、前記容器本体内部に支持固定可能であることが好ましい。前記隔壁は、例えば、前記隔壁自体によって、前記容器本体内に支持固定されていてもよいが、別途、前記隔壁固定部を用いて前記隔壁を支持固定すれば、例えば、遠心分離の際の脱落をより一層防止可能となる。
【0045】
本発明の第二のアタッチメントは、前記区画部が、以下に示す第一の内容器を有する形態であり、本発明の第二の分離容器に使用できる。
【0046】
本発明の第二のアタッチメントとしては、例えば、
前記区画部が、第一の内容器を有し、
前記内容器は、軸方向に長尺な筒状であり、かつ前記容器本体内部に挿入可能な外径および高さを有し、
前記内容器の上部が開口し、前記内容器の下部が開口し、もしくは前記内容器の下部に貫通孔が形成され、
前記内容器の外周面の一部の形状が、前記容器本体の内周面の一部の形状と略同形状であり、
前記内容器の外周面のその他の部分の形状は、平面形状であり、
前記内容器の平面形状の側壁部分が、前記隔壁であり、
前記内容器の外周面と前記容器本体内周面の同形状部分が相互に接した状態で、かつ、前記内容器の平面形状の外周面と、前記容器本体の前記同形状部分以外の内周面とが、一定の距離をおいた状態で、前記内容器が前記容器本体内に配置可能であり、
前記内容器が内容器固定部を有し、前記内容器固定部により、前記内容器が、前記容器本体内で支持固定可能であり、
前記内容器内部の室が、前記試料導入室となり、
前記内容器の平面形状の外周面と前記容器本体の内周面の前記接した面以外の面とにより形成された室が、前記分離対象物導出室となるという構成である。
【0047】
本発明の第二のアタッチメントにおいて、前記内容器の平面形状の外周面が、前記軸方向の途中から前記内容器内部に向かって傾斜した形状であるという形態であってもよい。本形態によれば、本発明のアタッチメントを使用した分離容器を、例えば、スイムアップ法による精子の洗浄濃縮に適用した場合、成熟精子の回収効率をさらに向上可能である。
【0048】
本発明の第三のアタッチメントは、前記区画部が、以下に示す第二の内容器を有する形態であり、本発明の第三の分離容器に使用できる。
【0049】
本発明の第三のアタッチメントとしては、例えば、
前記区画部が、第二の内容器を有し、
前記内容器は、軸方向に長尺の筒状であり、かつ前記容器本体の内径より小さい外径と、前記容器本体の深さより小さい高さとを有し、
前記内容器の上部が開口し、前記内容器の下部が開口し、もしくは前記内容器の下部に貫通孔が形成され
前記内容器の側壁全体が、前記隔壁であり、
前記内容器の外周面と、前記容器本体の内周面とが、一定の距離をおいた状態で、前記内容器が前記容器本体内に配置可能であり、
前記内容器が内容器固定部を有し、前記内容器固定部により、前記内容器が前記容器本体内で支持固定可能であり、
前記内容器内部の室が、前記試料導入室となり、
前記内容器の外周面と前記容器本体の内周面とにより形成された室が、前記分離対象物導出室となるという構成である。
【0050】
本発明の第四のアタッチメントは、前記区画部に代えて、以下に示す第三の内容器を有する形態であり、本発明の第四の分離容器に使用できる。
【0051】
本発明の第四のアタッチメントとしては、例えば、
前記区画部に代えて、第三の内容器を有し、
前記内容器は、前記軸方向に長尺な筒状であり、かつ前記容器本体内部に挿入可能な外径および高さを有し、
前記内容器の上部が開口し、前記内容器の下部が開口し、もしくは前記内容器の下部に貫通孔が形成され、
前記内容器の外周面形状が前記容器本体の内周面形状と略同形状であり、
前記内容器は、前記容器本体内部に挿入された場合、前記内容器外周面が前記容器本体内周面に当接することにより、前記容器本体内部で支持固定可能であり、
前記内容器は、陽圧発生部を有し、
前記陽圧発生部は、前記内容器の上部開口に着脱自在であるという構成である。
【0052】
本発明のアタッチメントは、さらに、把持部を有してもよく、前記把持部は、例えば、前記アタッチメントを前記容器本体に装着した際、前記容器本体の外部に露出していることが好ましい。露出した前記把持部を持つことで、本発明のアタッチメントの前記容器本体への着脱操作がより一層容易となる。
【0053】
本発明のアタッチメントは、さらに、前記上端の開口を閉塞可能である蓋部を備えてもよい。このように蓋部を有することで、例えば、前記アタッチメントを装着した分離容器内部に充填した遠心処理液や試料等が外部に飛散すること、また、不純物が外部から前記分離容器内部に混入することを、より一層防止可能となる。
【0054】
前記蓋部は、例えば、内容器と部分的に連結された形態でもよいし、前記内容器とは別個の部材であり、使用時に前記内容器に装着する形態であってもよい。前記内容器に装着する蓋部は、例えば、前記内容器への装着により、前記容器本体の上端の開口を閉塞可能であることが好ましい。前記蓋部の装着形態は、特に制限されず、例えば、螺合、咬合、嵌合、圧接等があげられる。
【0055】
本発明のアタッチメントは、後述するように、遠心分離後、前記容器本体から取り出すことが好ましい。前記アタッチメントを取り出すことによって、前記容器本体内部に、外部から分離対象物を回収するための採取管を、より一層挿入し易くなる。また、前記容器本体における前記分離対象物導出室に充填する遠心処理液の量も低減可能である。この際、例えば、前記アタッチメント内部の前記試料導入室に残存する液体(例えば、不純物を含む試料等)が、前記アタッチメントの取り出しによって、前記アタッチメント下部の貫通孔または開口から、前記容器本体内部の分離対象物を含む遠心処理液中に混入することを防止することが好ましい。そこで、このような方法を採用する際には、前記蓋部の前記アタッチメントへの装着により、前記アタッチメント上部の開口が、前記蓋部との接触により実質的に塞がれていることが好ましい。このような形態であれば、前記アタッチメントの内部は気密性が保たれるため、前記アタッチメント下部の貫通孔または開口から、前記アタッチメント内部の試料導入室の不純物を含有する液体が漏れることを、十分に防止できる。
【0056】
また、本発明のアタッチメントが、前述のように、容器本体から露出した前記把持部を有する場合、前記把持部に前記貫通孔が設けられてもよい。前記貫通孔としては、例えば、前記試料導入室と前記分離容器外部とを連通可能な貫通孔および前記分離対象物導出室と前記分離容器外部とを連通可能な貫通孔があげられる。前記貫通孔は、前者および後者のいずれか一方でもよいが、両者であることが好ましい。前記貫通孔については、前記本発明の分離容器についての説明と同様である。
【0057】
本発明のアタッチメントの用途は、特に制限されないが、本発明の分離容器と同様に、試料からの精子の分離用であることが好ましい。本発明のアタッチメントを使用した分離容器を、試料からの精子の分離用に用いる場合、その分離方法は、特に制限されず、例えば、密度勾配遠心法や、スイムアップ法等に用いることができる。本発明の分離容器を密度勾配遠心法に使用する場合、精子の分離以外にも、例えば、細胞小器官の分離、DNAまたはRNAの分離、血液の特定成分(例えば、白血球)の分離等にも使用可能である。本発明の分離容器をスイムアップ法に使用する場合、例えば、前記分離対象物導出室に液体を注入し、前記分離対象物導出室の下部に沈殿して分離された精子を、前記液体中を遊泳して前記分離対象物導出室の上部に浮上させ、前記浮上した精子を採取して回収できる。本発明において、前記遠心処理液ならびにスイムアップ法に使用する液体は、特に制限されず、前述と同様である。
【0058】
<分離方法>
本発明の分離方法は、試料から分離対象物を分離する分離方法であって、本発明の分離容器を使用することを特徴とする。以下に、本発明の分離方法として、本発明の第一、第二、第三または第四の分離容器を使用する例にあげて説明する。
【0059】
まず、本発明の第一の分離方法は、前述の本発明の第一、第二または第三の分離容器を使用する方法である。具体的に本発明の第一の分離方法は、下記(A)から(D)の工程を有する。
(A)本発明の第一、第二または第三の分離容器を使用し、前記分離容器の前記試料導入室および前記分離対象物導出室の双方に、遠心処理液を充填する工程
(B)前記(A)工程の前記試料導入室に、前記試料を導入する工程
(C)前記(B)工程後の前記分離容器を遠心分離に供して、前記試料から分離対象物を前記分離対象物導出室の下部に移動させて分離する工程
(D)前記(C)工程後の前記分離容器において、採取管を前記分離容器の前記開口部から前記分離対象物導出室に挿入し、前記分離対象物導出室内の前記分離対象物を、前記採取管により採取して前記容器本体外に回収する工程
【0060】
本発明において、前記遠心処理液は、特に制限されないが、例えば、前述と同様に、パーコール等の密度勾配担体、精子等の分離対象物に適した液体、精子が遊泳可能な液体、緩衝液等があげられる。なお、以下の他の分離方法においても同様である。
【0061】
本発明の第一の分離方法は、例えば、密度勾配遠心法に適用することが好ましい。この場合、本発明の第一の分離方法において、前記遠心処理液は、前記密度勾配担体であることが好ましい。また、前記(B)工程において、前記試料導入室の前記密度勾配担体の上に、前記試料を重層することが好ましい。
【0062】
本発明の第一の分離方法は、例えば、前記分離対象物として精子を試料から回収する際に適用することが好ましい。前記分離対象物が精子の場合、前記試料としては、特に制限されず、精子を含む試料があげられる。前記試料としては、例えば、精液、精巣組織またはこれらを含む試料があげられ、好ましくは精液である。
【0063】
本発明の第一の分離方法について、精子の分離に適用する例として、第二、第三および第四の分離方法を説明する。なお、本発明は、これらの形態には制限されない。
【0064】
本発明の第二の分離方法としては、分離対象物が精子であり、例えば、前記(C)工程および(D)工程が、下記(C2)工程および(D2)工程である形態があげられる。
(A)本発明の第一、第二または第三の分離容器を使用し、前記分離容器の前記試料導入室および前記分離対象物導出室の双方に、遠心処理液を充填する工程
(B)前記(A)工程の前記試料導入室に、前記試料を導入する工程
(C2)前記(B)工程後の前記分離容器を遠心分離に供して、前記試料中の精子を前記試料導入室の下部に沈殿させる工程
(D2)前記(C2)工程後の前記分離容器において、採取管を前記分離容器の前記開口部から前記分離対象物導出室に挿入し、前記分離対象物導出室内の前記精子を、前記採取管により採取して前記容器本体外に回収する工程
【0065】
本発明の第二の分離方法は、例えば、前記密度勾配法を適用した形態である。この場合、前記遠心処理液としては、例えば、パーコール等の密度勾配担体が好ましく、前記(B)工程において、前記試料は、前記試料導入室の前記密度勾配担体の上に重層することが好ましい。
【0066】
本発明の第三の分離方法としては、分離対象物が精子であり、例えば、前記(C)工程および(D)工程が、下記(C3)工程および(D3)工程である形態があげられる。
(A)本発明の第一、第二または第三の分離容器を使用し、前記分離容器の前記試料導入室および前記分離対象物導出室の双方に、遠心処理液を充填する工程
(B)前記(A)工程の前記試料導入室に、前記試料を導入する工程
(C3)前記(B)工程後の前記分離容器を遠心分離に供して、前記試料中の精子を前記試料導入室の下部に沈殿させる工程
(D3)前記(C3)工程後の前記分離容器において、前記試料導入室の下部から前記分離対象物導出室の上部に遊泳してきた精子を採取して回収する工程
【0067】
本発明の第三の分離方法は、例えば、スイムアップ法を適用した形態である。
【0068】
前記第三の分離方法は、例えば、前記(C3)工程および(D3)工程が、下記(C3’)工程および(D3’)工程であってもよい。
(C3’)前記遠心分離後、上清の前記遠心処理液を除去し、ついで、精子が遊泳可能な液体を前記試料導入室および分離対象物導出室の双方に充填する工程
(D3’)前記(C3’)工程後の前記分離容器において、前記試料導入室の下部から前記分離対象物導出室の上部に遊泳してきた精子を採取して回収する工程
【0069】
本形態は、例えば、前記密度勾配法とスイムアップ法との組み合わせを適用した形態である。このように、密度勾配法を行った後、前記遠心処理液を除去し、さらに、前記液体を充填することによって、より効率良く成熟精子の洗浄ならびに回収を行うことができる。この場合、前記遠心処理液としては、例えば、パーコール等の密度勾配担体が好ましい。また、前記(C3’)工程において充填する液体は、精子が遊泳可能な液体であればよく、特に制限されないが、例えば、前述の精子の培地があげられる。
【0070】
また、本発明の分離方法において、前記第一の内容器を有する本発明の第二の分離容器、または、前記第二の内容器を有する本発明の第三の分離容器を使用する場合は、例えば、以下の処理を行うことが好ましい。すなわち、遠心分離を行う前記(C)工程後且つ分離対象物を採取する前記(D)工程前、前記分離容器における前記内容器内部の気密性を維持した状態で、前記内容器を前記分離容器の外部に取り出すことが好ましい。このように、本発明の分離容器内から前記各内容器を取り出すことで、前記容器本体における前記分離対象物導出室が広くなり、前記(D)工程において、採取管の挿入がより一層容易になる。そして、これに伴い、前記分離対象物導出室に充填する遠心処理液の量もさらに低減することが可能となる。また、前記内容器は、その内部に試料導入室を有することから、前記内容器内部の気密性を維持して前記内容器を取り出すことによって、前記試料導入室内の液体が前記容器本体の分離対象物導出室内に漏れることを防止できる。これによって、前記分離対象物導出室の遠心処理液内に、前記試料導入室内の試料由来の不純物等が混入することを十分に防止できる。
【0071】
このように内容器を取り出す形態において、本発明の分離容器としては、例えば、さらに蓋部を備え、前記蓋部が、前記内容器の開口部への脱着により、前記分離容器の容器本体の上端を開閉可能である分離容器が好ましい。この場合、前記内容器に前記蓋部を装着した状態で、前記内容器を前記分離容器の外部に取り出すことが好ましい。また、前記分離容器は、前述のように、前記試料導入室と前記分離容器外部とを連通可能な貫通孔および前記分離対象物導出室と前記分離容器外部とを連通可能な貫通孔を有してもよい。このように、本発明の分離容器が貫通孔を有する場合は、例えば、前記試料導入室と外部とを連通可能な貫通孔を塞いだ状態で、前記内容器を容器本体から取り出すことが好ましい。
【0072】
本発明の第四の分離方法としては、分離対象物が精子であり、例えば、(C)工程および(D)工程が、下記(C4)工程および(D4)工程であり、さらに(E)〜(G)工程を有する形態があげられる。
(A)本発明の第一、第二または第三の分離容器を使用し、前記分離容器の前記試料導入室および前記分離対象物導出室の双方に、遠心処理液を充填する工程
(B)前記(A)工程の前記試料導入室に、前記試料を導入する工程
(C4)前記(B)工程後の前記分離容器を遠心分離に供して、前記試料中の精子を前記試料導入室の下部に沈殿させる工程
(D4)前記(C4)工程後の前記分離容器において、採取管を前記分離容器の前記開口部から前記分離対象物導出室の下部に挿入し、前記分離対象物導出室の下部に位置する前記精子を含む精液内固形物を前記採取管により採取し、前記採取管内に前記精子を含む精液内固形物を保持した状態で、前記採取管を前記容器本体から取り出す工程
(E)前記(A)工程の分離容器とは別に、本発明の第一、第二または第三の分離容器を新たな分離容器として新たに使用し、前記新たな分離容器の前記試料導入室および前記分離対象物導出室の双方に、液体を充填する工程
(F)前記(E)工程後の前記新たな分離容器において、前記(D4)工程後の前記採取管を前記新たな分離容器の前記開口部から前記試料導入室の下部に挿入し、前記採取管内の前記精子を含む精液内固形物を、前記試料導入室の下部に導出する工程
(G)前記(F)工程後の前記新たな分離容器において、前記試料導入室の下部から前記分離対象物導出室の上部に遊泳してきた精子を採取して回収する工程
【0073】
本形態は、例えば、一つの分離容器において密度勾配遠心法を適用した後、別の分離容器においてスイムアップ法を適用した形態である。
【0074】
つぎに、本発明の第五の分離方法は、前述の本発明の第四の分離容器を使用する方法である。具体的に本発明の第五の分離方法としては、前記(A)から(D)工程を有し、前記(D)工程が、下記(D5)工程である形態があげられる。
(A)本発明の第一、第二または第三の分離容器を使用し、前記分離容器の前記試料導入室および前記分離対象物導出室の双方に、遠心処理液を充填する工程
(B)前記(A)工程の前記試料導入室に、前記試料を導入する工程
(C)前記(B)工程後の前記分離容器を遠心分離に供して、前記試料から分離対象物を前記分離対象物導出室の下部に移動させて分離する工程
(D5)前記(C)工程後の前記分離容器において、前記内容器の上部開口に前記陽圧発生手段を装着し、前記内容器を前記容器本体から取り出し、前記陽圧発生手段により発生した圧力により、前記内容器の下部開口から前記分離対象物を導出して回収する工程
【0075】
本発明の第五の分離方法において、前記分離対象物は特に制限されないが、前記第一の分離方法と同様に、精子であることが好ましい。また、本形態に適用する試料も、特に制限されず、前述と同様である。
【0076】
本発明において、前記密度勾配担体は、特に制限されず、例えば、パーコール、修飾コロイドシリカ、ショ糖重合体、フィコール等があげられる。前記パーコールは、通常、ポリビニルピロリドン皮膜を持つコロイド状シリカゾルである。前記パーコールとしては、エンドトキシンを除去した後、HEPES含有液等の培地を添加して等張化したパーコールが好ましい。パーコールの濃度は、特に制限されないが、例えば、90〜98%が好ましい。本発明の分離方法において、遠心分離の条件は、特に制限されず、例えば、1000G(1000×9.80665m/s)で20〜30分間の条件である。
【0077】
本発明において、前記分離容器を形成するための材料は、特に制限されない。前記分離容器を形成する材料は、例えば、合成樹脂材料、金属材料、ガラス材料等があげられる。これらの中でも、材料の加工性(例えば、成形性、組立性、必要に応じて接着性等)、衛生面(例えば、添加物の試料への溶出等)、機能性(例えば、視認性等)、コスト面等の観点から、前記合成樹脂材料が好ましい。また、本発明の分離容器は、前記容器本体と、前記隔壁、第一の内容器、第二の内容器または第三の内容器を構成要素とし、任意に固定部を有するが、これらは、同一の材料で形成されていてもよいし、異なる材料で形成されてもよい。前記容器本体を形成する材料は、例えば、フッ素樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリウレタン、ポリメチルペンテン、メタクリル、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、ポリ塩化ビニル、シリコーン、エチレン酢酸ビニル共重合体、合成ゴム、各種エラストマー等の合成樹脂があげられ、これらの中でも、フッ素樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネートが好ましい。前記フッ素樹脂の中でも、疎水性フッ素樹脂が好ましく、特に、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が好ましい。前記隔壁を形成する材料は、例えば、フッ素樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリメチルペンテン、メタクリル、ABS、PET樹脂、ポリ塩化ビニル等の合成樹脂があげられ、これらの中でも、比較的硬質な合成樹脂が好ましい。前記隔壁の形成材料として、比較的硬質な合成樹脂を用いれば、より気密性に優れた分離容器を得ることができる。前記内容器を形成する材料は、前記容器本体と同様である。前記固定部の形成材料は、前記隔壁または前記内容器と同様である。
【実施例】
【0078】
つぎに、本発明の実施例について説明する。ただし、本発明は、以下の実施例により制限されない。
【0079】
(実施例1)
図1の断面図に、本発明の実施例1の分離容器を示す。図示のように、本例の分離容器1は、容器本体11と、隔壁12を有する。前記容器本体11は、軸方向に長尺の有底円筒状容器であり、上端が開口し、かつ下端部は先端に行くに従い細径になっており、下端先端部は尖頭状となっている。前記隔壁12は、前記容器本体11内部において、前記軸方向に沿って形成されている。前記隔壁12の形状は、前記容器本体11の内部断面形状と略同形状であり、平板状で、下部はテーパー状に幅が細くなっており、下部先端部は尖頭状である。前記隔壁12によって、前記容器本体11内部が、略中央部を境に、試料導入室14および分離対象物導出室15の二室に区画されている。前記隔壁12の下部には、貫通孔13が形成されており、前記貫通孔13により、前記試料導入室14および前記分離対象物導出室15は、それぞれの下部で連通している。前記隔壁12は、その側面部分で前記容器本体11と接しており、これによって、前記容器本体11内で支持固定されている。前記隔壁12と容器本体11との接触部は、例えば、接着剤で接着固定されていてもよいが、隔壁12と容器本体11とを別部材とし、前記隔壁12の幅サイズを、前記容器本体11の内径よりも若干大きくし、前記隔壁12の側面を前記容器本体11の内周面に圧接することで支持固定してもよい。本発明において、容器本体11と隔壁12とを別部材とする場合、前記隔壁12をアタッチメントとしてもよい。また、本発明において、前記容器本体11と隔壁12とが一体物であってもよい。本例の分離容器の隔壁12には、貫通孔が一つ形成されているが、本発明は、これに限定されず、複数の貫通孔が形成されていてもよい。例えば、前記隔壁12において、その長手方向に直列状に貫通孔を形成してもよく、後述の内容器の例も同様である。このように、貫通孔を隔壁の長手方向に直列状に形成すれば、例えば、密度勾配遠心した場合、中間層や上層に存在する成分も採取可能となる。また、前記貫通孔13の形状は、特に制限されず、例えば、円形、多角形などの形状であってもよい。
【0080】
本発明の分離容器のサイズは、特に制限されない。例えば、容器本体の容積は、例えば、0.1〜50mLの範囲であり、好ましくは、0.2〜20mLの範囲であり、より好ましくは、1〜15mLの範囲である。前記容器本体の最大内径(例えば、上部開口内径)は、例えば、5〜30mmの範囲である。隔壁の大きさは、例えば、前記容器本体の内面形状の大きさによって、適宜決定される。前述のように、隔壁の幅は、前記容器本体の内径よりも、若干大きめにすることが好ましい。前記隔壁の貫通孔の大きさは、特に制限されず、例えば、円形の貫通孔の場合、直径が、0.05〜5mmの範囲であり、好ましくは、0.1〜3mmの範囲であり、より好ましくは、0.5〜2mmの範囲である。
【0081】
本例の分離容器を用いた試料からの分離対象物の分離方法について、パーコールを用いた精子の分離法を例に挙げて、図2の断面図を基づき、説明する。図2において、図1と同一部分には、同一符号を付している。
【0082】
図2(A)に示すように、本例の分離容器1の試料導入室14および分離対象物導出室15の双方に、パーコール16を注入する。そして、前記試料導入室14の前記パーコール16の上に、精液等の精子含有試料17を重層する。この状態で、前記分離容器1を遠心分離すると、図2(B)に示すように、前記試料17から精子17aが分離されて前記分離容器1の底部に沈降する。しかし、前記試料導入室14と前記分離対象物導出室15とが、前記貫通孔13によって連通しているため、前記試料導入室14および前記分離対象物導出室15の双方の底部に、精子17aが沈殿する。そして、図2(B)に示すように、前記分離対象物導出室15の上部開口から、ピペット等の採取管18を挿入し、前記分離対象物導出室15の底部に沈殿した精子を採取して回収する。ついで、前記採取管18を前記分離対象物導出室15から引き抜くが、前記分離対象物導出室15に存在するパーコール16は、前記試料由来の不純物を含まない。したがって、採取回収された精子が、前記試料由来の不純物により汚染されることが防止できる。このようにして、汚染が防止された精子を分離できる。
【0083】
(実施例2)
つぎに、図3、図4および図5に、本発明の実施例2の分離容器を示す。図3、図4および図5において、図1および図2と同一部分には同一符号を付している。本例では、容器本体にアタッチメントを取り付けて分離容器を構成する。本例の分離容器は、本発明の第一の分離容器の実施例であり、本例のアタッチメントは、本発明の第一のアタッチメントの実施例である。
【0084】
図3の正面図に、本例の容器本体を示す。図示のように、本例の容器本体100は、軸方向に長尺の有底円筒状容器101と、キャップ102とを有する。前記有底円筒状容器101は、上端が開口し、かつ下端部は先端に行くに従い細径になっており、下端先端部は尖頭状となっている。また、キャップ102は、連結部を介して前記上部開口の一部と連結しており、前記上部開口を閉塞可能である。本例の容器本体は、いわゆる遠心チューブを適用できる。なお、前記キャップは、例えば、有底円筒状容器101と分離した部材であってもよい。以下の実施例においても同様である。
【0085】
図4(A)、(B)、(C)および(D)に、本例のアタッチメントを示す。図4(A)は、本例のアタッチメントの斜視図であり、図4(B)は、本例のアタッチメントの正面図であり、図4(C)は、図4(A)のI−I方向に見た断面図であり、図4(D)は、本例のアタッチメントの上面図である。図4(A)〜(D)に示すように、本例のアタッチメント21は、平板状の隔壁12と、板状の固定部材121とから構成される。前記隔壁12は、図3に示す前記容器本体100の有底円筒状容器101の内部断面形状と略同形状であり、下部はテーパー状に幅が細くなっており、下部先端部は尖頭状である。また、前記隔壁12の下部には、一つの円形の貫通孔13が形成されている。前記板状固定部材121は、前記隔壁12の上部に、前記隔壁12の両面から突き出るように取り付けられている。なお、図4(E)は、本例のアタッチメントにおいて、貫通孔13を、隔壁12の長手方向に従って直列に複数個(同図では、4個)形成したものである。前述のように、貫通孔を複数個形成することで、密度勾配担体の上層および中層に存在する成分を採取して回収することが可能となる。
【0086】
つぎに、本例のアタッチメント21を、本例の容器本体100に挿入して分離容器を構成した例を、図5に示す。なお、図5では、アタッチメントの構成がわかりやすいように、容器本体100は、有底円筒状容器101のみ点線で示している。図5(A)は、アタッチメント21を容器本体100に挿入した状態の正面図であり、図5(B)は、図4(A)のI−I方向に見た断面図である。図示のように、前記アタッチメント21を前記有底円筒状容器101に挿入した場合、前記隔壁12の側面が前記有底円筒状容器101の内周面に当接すると共に、前記板状固定部材121の両端側面も前記内周面に当接している。したがって、前記隔壁12は、強固に前記有底円筒状容器101内に支持固定される。また、前記アタッチメント21のサイズを、前記有底円筒状容器101の内径よりも若干大きめにすれば、前記隔壁12の側面および前記板状固定部材121の両端側面が、前記有底円筒状容器101の内周面に圧接するため、さらに、強固に支持固定されることになる。
【0087】
本例の分離容器において、前記容器本体100およびアタッチメント21の大きさは、特に制限されないが、例えば、実施例1と同じ構成の部分は、同様にすることができる。前記板状固定部材121の幅は、例えば、5〜30mmの範囲である。前記容器本体100の前記キャップ102において、前記キャップ102が前記有底円筒状容器101に嵌入する部分の外形は、例えば、前記有底円筒状容器101の上部開口の内径と同じか若干大きめにすればよい。
【0088】
本例の分離容器によるパーコールを用いた精子の分離法は、アタッチメントを容器本体の有底円筒状容器に挿入して分離容器を形成し、遠心分離時には、前記有底円筒状容器の上部開口をキャップで閉塞する以外は、実施例1と同様にして実施できる。
【0089】
(実施例3)
つぎに、図6および図7に、本発明の実施例3の分離容器を示す。図6および図7において、図1から図5と同一部分には同一符号を付している。本例では、容器本体にアタッチメントを取り付けて分離容器を構成する。本例の分離容器は、本発明の第一の分離容器の実施例であり、本例のアタッチメントは、本発明の第一のアタッチメントの実施例である。
【0090】
本例において、容器本体は、実施例2と同様に、図3に示すものが使用できる。
【0091】
図6(A)、(B)、(C)および(D)に、本例のアタッチメントを示す。図6(A)は、本例のアタッチメントの斜視図であり、図6(B)は、本例のアタッチメントの正面図であり、図6(C)は、図6(A)のI−I方向に見た断面図であり、図6(D)は、本例のアタッチメントの上面図である。図6(A)〜(D)に示すように、本例のアタッチメント22は、板状固定部材に代えて、円環状の固定部材122を、隔壁12の上部に取り付けている以外は、実施例2のアタッチメントと同様の構成である。
【0092】
つぎに、本例のアタッチメント22を、図3に示す容器本体100に挿入して分離容器を構成した例を、図7に示す。なお、図7では、アタッチメントの構成がわかりやすいように、容器本体100は、有底円筒状容器101のみ点線で示している。図7(A)は、アタッチメント22を容器本体100に挿入した状態の正面図であり、図7(B)は、図6(A)のI−I方向に見た断面図である。図示のように、前記アタッチメント22を前記有底円筒状容器101に挿入した場合、前記隔壁12の側面が前記有底円筒状容器101の内周面に当接すると共に、前記円環状固定部材122の外周面全体も前記内周面に当接している。したがって、前記隔壁12は、強固に前記有底円筒状容器101内に支持固定される。また、実施例2と同様に、前記アタッチメント22のサイズを、前記有底円筒状容器101の内径よりも若干大きめにすれば、前記隔壁12の側面および前記円環状固定部材122の外周面全体が、前記有底円筒状容器の内周面に圧接するため、さらに、強固に支持固定されることになる。
【0093】
本例の分離容器において、容器本体およびアタッチメントの大きさは、特に制限されないが、例えば、実施例1と同じ構成の部分は、同様にすることができる。円環状固定部材122の幅は、例えば、5〜30mmの範囲である。
【0094】
本例の分離容器によるパーコールを用いた精子の分離法は、前記アタッチメントを前記容器本体の有底円筒状容器に挿入して前記分離容器を形成し、遠心分離時には、前記有底円筒状容器の上部開口を前記キャップで閉塞する以外は、実施例1と同様にして実施できる。
【0095】
(実施例4)
つぎに、図8および図9に、本発明の実施例4の分離容器を示す。図8および図9において、図1から図7と同一部分には同一符号を付している。本例では、容器本体にアタッチメントを取り付けて分離容器を構成する。本例の分離容器は、本発明の第二の分離容器の実施例であり、本例のアタッチメントは、本発明の第二のアタッチメントの実施例である。
【0096】
本例において、容器本体は、実施例2と同様に、図3に示すものが使用できる。
【0097】
図8(A)、(B)、(C)および(D)に、本例のアタッチメントを示す。図8(A)は、本例のアタッチメントの斜視図であり、図8(B)は、本例のアタッチメントの正面図であり、図8(C)は、図8(A)のI−I方向に見た断面図であり、図8(D)は、本例のアタッチメントの上面図である。図8(A)〜(D)に示すように、本例のアタッチメント23は、前記第一の内容器であり、前記内容器は、軸方向に長尺で半円筒状であり、上部が開口し、下部は、先端に行くにしたがって細径になっており、下部先端は尖頭状である。また、前記内容器の下部には貫通孔13が形成されている。前記内容器の半円筒状の半円の外周曲面部124は、前記容器本体100の有底円筒状容器101の内周面の一部と略同形状である。前記内容器の半円筒状の平面部の側壁が、隔壁12である。前記内容器の上部には、円環状固定部材123が取り付けられている。
【0098】
つぎに、本例のアタッチメント23を、図3に示す容器本体100に挿入して分離容器を構成した例を、図9に示す。なお、図9では、アタッチメントの構成がわかりやすいように、容器本体100は、有底円筒状容器101のみ点線で示している。図9(A)は、アタッチメント23を容器本体100に挿入した状態の正面図であり、図9(B)は、図8(A)のI−I方向に見た断面図である。図示のように、アタッチメント23を前記有底円筒状容器101に挿入した場合、前記内容器の半円部の外周面は、前記有底円筒状容器101の内周面に当接し、かつ、前記内容器の上部に取り付けられた円環状固定部材123の外周面全体も、前記有底円筒状容器101の内周面に当接している。これによって、前記アタッチメント23が前記容器本体中で強固に支持固定されることになる。また、前記アタッチメント23の前記内容器内部が試料導入室14であり、前記内容器の平面状側壁(隔壁12)と、前記容器本体の内周面における前記内容器が接している面以外の面とで形成される空間が、分離対象物導出室15となる。また、実施例2と同様に、前記アタッチメント23のサイズを、前記有底円筒状容器101の内径よりも若干大きめにすれば、前記内容器の半円部の外周面および前記円環状固定部材123の外周面全体が、前記有底円筒状容器101の内周面に圧接するため、さらに、強固に支持固定されることになる。
【0099】
本例の分離容器において、前記容器本体の大きさは、特に制限されないが、例えば、実施例1と同様にすることができる。前述のように、前記アタッチメント23の大きさは、前記有底円筒状容器の内径よりも若干大きめにすることが好ましい。その他、実施例1から実施例3と同様の構成の部分は、同様にすることができる。
【0100】
本例の分離容器によるパーコールを用いた精子の分離法は、前記アタッチメントを前記容器本体の有底円筒状容器に挿入して分離容器を形成し、遠心分離時には、前記有底円筒状容器の上部開口を前記キャップで閉塞する以外は、実施例1と同様にして実施できる。
【0101】
(実施例5)
つぎに、図10および図11に、本発明の実施例5の分離容器を示す。図10および図11において、図1から図9と同一部分には同一符号を付している。本例では、容器本体にアタッチメントを取り付けて分離容器を構成する。本例の分離容器は、本発明の第三の分離容器の実施例であり、本例のアタッチメントは、本発明の第三のアタッチメントの実施例である。
【0102】
本例において、容器本体は、実施例2と同様に、図3に示すものが使用できる。
【0103】
図10(A)および(B)に、本例のアタッチメントを示す。図10(A)は、本例のアタッチメントの斜視図であり、図10(B)は、図10(A)のI−I方向に見た断面図である。図10(A)および(B)に示すように、本例のアタッチメント24は、前記第二の内容器126を有し、前記内容器126は、軸方向に長尺の円筒状容器であり、上部は開口し、下部は、先端に行くにしたがい細径であり、下部先端部は開口している。前記内容器126の側壁全体が隔壁である。前記内容器126は、前記容器本体の内径より小さい外径と、前記容器本体の深さより小さい高さとを有する。前記内容器126の上部には、上部板状固定部材125が、四方向(例えば、東西南北の各方向)に突き出るように取り付けられている。前記内容器126の下部には、円環状部材に、板状部材が四方向(例えば、東西南北の各方向)に突き出るように取り付けられている下部固定部材128が、着脱自在に装着されている。
【0104】
つぎに、本例のアタッチメント24を、図3に示す容器本体100に挿入して分離容器を構成した例を、図11に示す。なお、図11では、アタッチメントの構成がわかりやすいように、容器本体100は、有底円筒状容器101のみ点線で示している。図11は、図10(A)のI−I方向に見た断面図である。図示のように、前記アタッチメント24を前記有底円筒状容器101に挿入した場合、前記上部板状固定部材125および前記下部固定部材128により、前記内容器126の外周面が有底円筒状容器101内周面から一定の距離をおいて支持固定された状態で、前記内容器が前記有底円筒状容器101内部に配置されることになる。そして、前記内容器126の外周面と前記有底円筒状容器101の内周面との間の空間が、試料導入室14であり、前記内容器126内部が、分離対象物導出室15となる。
【0105】
本例の分離容器において、容器本体の大きさは、特に制限されないが、例えば、実施例1と同様にすることができる。前述のように、前記アタッチメント24は、前記容器本体の内径より小さい外径と、前記容器本体の深さより小さい高さとを有し、上部開口および下部開口の大きさは適宜決定される。その他、実施例1から実施例4と同様の構成の部分は、同様にすることができる。
【0106】
本例の分離容器によるパーコールを用いた精子の分離法は、前記アタッチメントを前記容器本体の有底円筒状容器に挿入して分離容器を形成し、遠心分離時には、前記有底円筒状容器の上部開口をキャップで閉塞する以外は、実施例1と同様にして実施できる。
【0107】
(実施例6)
つぎに、図12に、本発明の実施例6の分離容器を示す。図12において、図1から図11と同一部分には同一符号を付している。本例の分離容器は、スイムアップ法に適したものである。ただし、本例の分離容器は、密度勾配遠心法にも適用できる。
【0108】
図12(A)は、本例の分離容器の断面図である。図示のように、本例の分離容器1aは、平板状の隔壁12が、試料導入室14側に偏って配置され、かつ前記隔壁12の下部が、試料導入室14側に折れ曲がっている。これら以外は、本例の分離容器は、実施例1で示した分離容器と同様の構成である。
【0109】
図12(B)および図12(C)の断面図に基づき、本例の分離容器を用いたスイムアップ法による精子の分離法を説明する。図12(B)に示すように、前記試料導入室14および前記分離対象物導出室15の双方に、HEPES含有液等の培地16を入れる。前記試料導入室14の培地には、精子を含む試料17を入れる。この状態で、遠心分離すると、精子17aが前記試料17から分離して沈降し、図12(C)に示すように、前記試料導入室14および前記分離対象物導出室15の双方の底部に沈殿する。ここで、前述のように、前記隔壁12を偏って配置し、かつ前記隔壁12の下部を折り曲げているため、多くの精子は、前記分離対象物導出室15側に沈殿し、つぎの工程のスイムアップがしやすくなる。つぎに、沈殿した精子を放置すると、図12(C)の矢印Xで示すように、沈殿した精子が、培地中を遊泳して浮上してくる。浮上した精子を採取して回収する。このように、前記試料導入室14で遠心分離し、前記分離対象物導出室15でスイムアップを実施すれば、精子の回収の際に、試料由来の不純物の混入が防止できる。なお、遠心分離時において、前記培地の代わりに、パーコール等の密度勾配担体を使用して密度勾配遠心により精子を沈殿させ、密度勾配担体を除去し、前記培地を分離容器に入れて、スイムアップ法を実施してもよい。本例の分離容器によるパーコールを用いた精子の分離法は、実施例1と同様にして実施できる。
【0110】
つぎに、スイムアップ法に適したアタッチメントの例を、図13、図14、図15および図16に示す。
【0111】
まず、本発明の第二のアタッチメントにおいて、スイムアップ法に適した形態の例を、図13および図14に示す。図13および図14において、図1から図12と同一部分には同一符号を付している。
【0112】
図13(A)、(B)、(C)および(D)に、本例のアタッチメントを示す。図13(A)は、本例のアタッチメントの斜視図であり、図13(B)は、本例のアタッチメントの正面図であり、図13(C)は、図13(A)のI−I方向に見た断面図であり、図13(D)は、本例のアタッチメントの上面図である。図示のように、本例のアタッチメントは、実施例4のアタッチメントにおいて、内容器の隔壁部を、軸方向に平行な平行隔壁部12aと、内容器内部側にテーパー状に傾けたテーパー隔壁部12bとなるように構成しており、これ以外は、実施例4のアタッチメントと同様である。
【0113】
本例のアタッチメントを、図3に示す容器本体100に挿入して分離容器を構成した例を、図14に示す。なお、図14では、アタッチメントの構成がわかりやすいように、容器本体100は、有底円筒状容器101のみ点線で示している。図14(A)は、アタッチメントを容器本体100に挿入した状態の正面図であり、図14(B)は、図13(A)のI−I方向に見た断面図である。図示のように、本例のアタッチメントは、前記隔壁12bが前記試料導入室14側にテーパー状に折れ曲がっているため、前記分離対象物導出室15の底部が広くなっており、多くの精子が前記分離対象物導出室15に沈殿するようになっている。
【0114】
つぎに、本発明の第二のアタッチメントにおいて、スイムアップ法に適した別の形態の例を、図15の斜視図に示す。図15において、図1から図14と同一部分には同一符号を付している。
【0115】
図15(A)に示すアタッチメントは、内容器の下端が開口しており、これ以外は、実施例4のアタッチメントと同様である。図15(B)に示すアタッチメントは、貫通孔13が、内容器の隔壁12の下端先端部において切り欠くように大きく形成されており、これ以外は、実施例4のアタッチメントと同様である。図15(A)および(B)に示す形態のアタッチメントも、例えば、多くの精子を分離対象物導出室の底部に沈殿させることができる。
【0116】
つぎに、本発明の第一のアタッチメントにおいて、スイムアップ法に適した別の形態の例を、図16の斜視図に示す。図16において、図1から図15と同一部分には同一符号を付している。
【0117】
図16(A)に示すアタッチメントは、隔壁12の長さが容器本体の深さよりも短くなっており、これ以外は、実施例2のアタッチメントと同様である。図16(B)に示すアタッチメントは、貫通孔13が、隔壁12の下部先端部において切り欠くように大きく形成されており、これ以外は、実施例2のアタッチメントと同様である。図16(A)および(B)に示す形態のアタッチメントも、例えば、多くの精子を分離対象物導出室の底部に沈殿させることができる。
【0118】
図13、図14、図15および図16に示したアタッチメントは、スイムアップ法に好ましく適用できるが、本発明はこれに限定されず、密度勾配遠心法にも好ましく適用できる。
【0119】
(実施例7)
前記スイムアップ法により精液から精子を分離する場合には、前記遠心分離時に、精子を含む精液内固形物が沈降することがある。この場合には、精子の遊泳・浮上が妨げられ、精子の回収が困難となる。また、この状態で分離対象物導出室に培地等を導入すれば、前記精液内固形物が培地中に舞い上がり、精子に不純物が混入する恐れもある。これらの問題を回避するには、例えば、つぎのような方法がある。すなわち、まず、図2(A)に示すように、実施例1で示した前記分離容器1の前記試料導入室14および前記分離対象物導出室15の双方に、パーコール16を注入する。そして、前記試料導入室14の前記パーコール16の上に、精液17を重層する。この状態で、前記分離容器1を遠心分離すると、図2(B)に示すように、前記精液17から精子を含む精液内固形物17aが分離されて前記分離容器1の底部に沈降する。しかしながら、前記試料導入室14と前記分離対象物導出室15とは、貫通孔13によって連通しているため、前記精液内固形分17aは、前記試料導入室14および前記分離対象物導出室15の双方の底部に沈殿する。そして、図2(B)に示すように、前記分離対象物導出室15の上部開口から、ピペット等の採取管18を挿入し、前記分離対象物導出室15に沈殿した精子を含む精液内固形物を採取して回収する。ついで、前記採取管18を、前記分離対象物導出室15から引き抜く。この際、前記分離対象物導出室15に存在するパーコール16は、前記精液由来の不純物を含まない。したがって、採取回収された精子を含む前記精液内固形物が、前記精液由来の不純物により汚染されることを防止できる。このようにして、汚染が防止された精子を含む精液内固形物を分離できる。つぎに、図12(A)に示す前記分離容器1aの前記試料導入室14および前記分離対象物導出室15の双方に、精子が遊泳可能な培地を入れる。ついで、前記採取管18を前記分離容器1aの開口部から前記試料導入室14の下部に挿入し、前記採取管18内の前記精子を含む精液内固形物を、前記試料導入室14の下部に導出する。前記精子を含む精液内固形物は、前記試料導入室14および前記分離対象物導出室15の双方の底部に沈殿する。ここで、前述のように、前記隔壁12を偏って配置し、かつ前記隔壁12の下部を折り曲げているため、多くの精子を含む精液内固形物は、前記分離対象物導出室15側に沈殿し、つぎの工程のスイムアップがしやすくなる。つぎに、沈殿した精子を含む精液内固形物を放置すると、前記精液内固形物に含まれる精子が、培地中を遊泳して浮上してくる。浮上した精子を採取して回収する。このように、一つの分離容器において密度勾配遠心法を適用した後、別の分離容器においてスイムアップ法を適用することで、精液から精子を分離する場合においても、不純物を混入させることなく、容易に精子を回収できる。
【0120】
(実施例8)
つぎに、図17に、本発明の実施例8の分離容器を示す。図17において、図1から図16と同一部分には同一符号を付している。本例では、容器本体にアタッチメントを取り付けて分離容器を構成する。本例の分離容器は、本発明の第四の分離容器の実施例であり、本例のアタッチメントは、本発明の第四のアタッチメントの実施例である。
【0121】
本例において、容器本体は、実施例2と同様に、図3に示すものが使用できる。
【0122】
図17(A)の断面図に、本例のアタッチメントを示す。図示のように、本例のアタッチメントは、第三の内容器51である。前記内容器51は、軸方向に長尺の円筒状であり、上部は開口し、下部は、先端部に行くにしたがい細径であり、下部先端は開口している。前記内容器51は、前記容器本体内部に挿入可能な外径および高さを有し、前記内容器の外周面形状が前記容器本体の内周面形状と略同形状である。また、内容器51の上部には、上部開口を覆うように陽圧発生部であるスポイトゴム52が、取り付けられている。前記陽圧発生部としては、特に制限されないが、前述のスポイトのような陽圧発生手段があげられる。
【0123】
つぎに、本例のアタッチメントを、図3に示す容器本体100に挿入して分離容器を構成した例を、図17(B)の断面図に示す。なお、図17(B)では、アタッチメントの構成がわかりやすいように、容器本体100は、有底円筒状容器101のみ点線で示している。図示のように、前記アタッチメントを前記有底円筒状容器101に挿入した場合、前記内容器51の外周面が前記有底円筒状容器101の内周面に当接し、これによって、アタッチメントが前記容器本体中で強固に支持固定されることになる。実施例2と同様に、本例のアタッチメントのサイズを、例えば、前記有底円筒状容器101の内径よりも若干大きめにすれば、前記内容器51の外周面が、前記有底円筒状容器101の内周面に圧接するため、さらに、強固に支持固定されることになる。
【0124】
つぎに、本例の分離容器を用いた精子の分離方法について、説明する。まず、図17(B)に示すように、本例のアタッチメント51を前記有底円筒状容器101に挿入し、前記内容器51内に、パーコール16を入れ、前記パーコール16の上に、精子を含む試料17を重層する。そして、キャップで前記有底円筒状容器101の上部開口を閉塞した状態で遠心分離し、精子17aを沈殿させる。遠心分離後、図17(C)の断面図に示すように、前記内容器51の上部開口を塞ぐようにスポイトゴム52を取り付け、前記内容器51を前記有底円筒状容器101から取り出す。そして、図17(D)の断面図に示すように、指等でスポイトゴム52を凹ませることにより陽圧を発生させ、前記陽圧により、前記内容器51の底部に沈殿していた精子17aを、下部開口から導出し、回収する。このようにすれば、パーコールの上層および中層に試料由来の不純物が存在していても、精子に混入することなく、精子を回収することが可能となる。
【0125】
本例の分離容器において、容器本体の大きさは、特に制限されないが、例えば、実施例1と同様にすることができる。前述のように、アタッチメントの大きさは、有底円筒状容器の内径よりも若干大きめにすることが好ましい。
【0126】
(実施例9)
つぎに、図18に、本発明の実施例9の分離容器を示す。図18において、図1から図17と同一部分には同一符号を付している。本例では、容器本体にアタッチメントおよびキャップを取り付けて分離容器を構成する。本例の分離容器は、本発明の第二の分離容器の実施例であり、本例のアタッチメントは、本発明の第二のアタッチメントの実施例である。
【0127】
図18(A)および(B)に、本例の分離容器を示す。図18(A)および(B)は、本例の分離容器の構成部材、すなわち、容器本体200、アタッチメント25およびキャップ103を分離して表した図である。図18(A)は、容器本体200、アタッチメント25およびキャップ103の斜視図であり、図18(B)は、図18(A)における容器本体のI−I方向に見た断面図、アタッチメント25のII−II方向に見た断面図、キャップのIII−III方向に見た断面図である。図18(A)および(B)に示すように、本例の分離容器において、前記容器本体200は、軸方向に長尺の有底円筒状容器であり、上端が開口し、かつ下端部は先端に行くに従い細径になっており、下端先端部は尖頭状となっている。本例のアタッチメント25は、前記第一の内容器であり、前記内容器は、軸方向に長尺で半円筒状であり、上部が開口し、下部は、先端に行くにしたがって細径になっており、下部先端は開口している。前記内容器の半円筒状の半円の外周曲面部124は、有底円筒状である前記容器本体200の内周面の一部と略同形状である。前記内容器の半円筒状の平面部の側壁が、隔壁12である。前記内容器の上部には、円環状固定部材222が取り付けられている。円環状固定部材222における上部222aは、円筒状であり、前記上部の外周直径は、前記容器本体200の上部開口よりも大きい直径である。他方、円環状固定部材222における下部222bは、円筒状であり、その外周直径は、前記容器本体200の上部開口の内径よりも、若干大きいことが好ましい。なお、前記下部222bの一部は、前記内容器の外周面124が兼ねている(同図において左側)。キャップ103は、前記容器本体200およびアタッチメント25の上部開口を閉塞可能である。
【0128】
つぎに、アタッチメント25を容器本体200に挿入し、さらにキャップ103を装着して分離容器を構成した例を、図19に示す。図19において、図18と同一部分には、同一符号を付している。図19は、アタッチメント25を容器本体200に挿入して、さらにキャップ103を装着した状態の分離容器2の断面図である。図示のように、アタッチメント25を前記有底円筒状の容器本体200に挿入した場合、前記内容器の半円部の外周面124は、前記容器本体200の内周面に当接し、かつ、前記内容器上部の円環状固定部材222の下部222bの外周面全面も、前記容器本体の200の内周面に当接している。これによって、前記アタッチメント25が前記容器本体200中で強固に支持固定されることになる。また、前記アタッチメント25の前記内容器内部が試料導入室14であり、前記内容器の平面状側壁(隔壁12)と、前記容器本体の内周面における前記内容器が接している面以外の面とで形成される空間が、分離対象物導出室15となる。また、実施例2と同様に、前記アタッチメント25のサイズを、前記容器本体200の内径よりも若干大きめにすれば、前記内容器の半円部の外周面および前記円環状固定部材222における下部222bの外周面全体が、前記容器本体200の内周面に圧接するため、さらに、強固に支持固定されることになる。また、本例において、前記円環状固定部材222における上部222aは、前記容器本体200の開口部に引っかかる形状であるため、例えば、前記アタッチメント25全体が容器本体200内部に嵌ることを防止できる。また、前記円環状固定部材222における上部222aは、前記容器本体200から露出しており、前記アタッチメント25の把持部を兼ねる。この把持部を持って前記アタッチメント25の着脱を行えることから、より一層取り扱いが簡便となる。
【0129】
本例の分離容器2において、前記容器本体200の大きさは、特に制限されないが、例えば、実施例2における、有底円筒状容器101と同様にすることができる。前述のように、前記アタッチメント25の大きさは、前記有底円筒状容器の内径よりも若干大きめにすることが好ましい。前記円環状固定部材222において、円筒状の上部222aの外周直径は、例えば、5〜50mmの範囲であり、円筒状の下部222bの外周直径は、例えば、3〜48mmの範囲である。キャップ103は、その内径が、例えば、アタッチメント25の円環状固定部材222における上部222aの外周直径と同じか若干小さめにすればよい。その他、実施例1から実施例7と同様の構成の部分は、同様にすることができる。
【0130】
本例の分離容器を用いた試料からの分離対象物の分離方法について、パーコールを用いた精子の分離法を例に挙げて、図19の断面図を基づき、説明する。なお、特に示さない限り、例えば、実施例1〜7と同様にして、実施できる。
【0131】
まず、図19に示すように、前記容器本体200の内部に前記アタッチメント25を装着する。そして、前記試料導入室14および前記分離対象物導出室15の双方に、パーコール16を注入する。さらに、前記試料導入室14の前記パーコール16の上に、精液等の精子含有試料を重層した後、前記アタッチメント25の開口上部にキャップ103を装着する。これにより、本例の分離容器内部の液体が外部に漏れること、また、外部から本例の分離容器内部に不純物等が混入することを十分に防止できる。この状態で、前記分離容器2を遠心分離すると、同図に示すように、前記試料から精子17aが分離されて前記分離容器2の底部に沈降する。続いて、前記アタッチメント25に前記キャップ103を装着した状態で、前記アタッチメント25を前記容器本体200から取り出す。前記アタッチメント25の取り出しにより、前記容器本体内部の底部全体が、前記分離対象物導出室となる。そして、前記容器本体200の上部開口から、ピペット等の採取管を挿入し、前記容器本体200の底部に沈殿した精子を採取して回収する。前述のように前記アタッチメント25を取り出ししているため、前記容器本体内部において前記採取管を挿入可能な領域が拡大され、操作のし易さがさらに向上する。
【0132】
つぎに、本発明の第二の分離容器ならびに第二のアタッチメントの別の形態の例を、図20の断面図に示す。図20において、図18および図19と同一部分には同一符号を付している。
【0133】
図20に示す分離容器3において、アタッチメントは、円環状固定部材223の上部223aに、二つの貫通孔223cおよび223dを有しており、これ以外は、前記図18および図19に示す分離容器と同様である。図20において、貫通孔223cは、前記分離対象物導出室15と前記分離容器3外部とを連通可能な貫通孔であり、貫通孔223dは、前記試料導入室14と前記分離容器3外部とを連通可能な貫通孔である。そして、前記貫通孔223cおよび223dは、閉塞可能であってもよい、また、開閉状態を調整可能であってもよい。このように、貫通孔を設けることで、例えば、分離容器3内部の圧力、具体的には、前記試料導入室14内部と前記分離対象物導出室15内部の圧力を調整可能である。
【0134】
前記貫通孔223cおよび223dの形状、大きさ、数は特に制限されない。前記貫通孔の形状は、例えば、円形形状、楕円形状等が好ましいが、その他の形状であってもよい。前記貫通孔が円形形状の場合、前記貫通孔の大きさは、直径が、例えば、0.1〜10mmである。前記貫通孔がその他の形状の場合、前記貫通孔の大きさは、最長開口部が、例えば、0.1〜10mmである。また、貫通孔の数は、開閉が容易であることから、例えば、前記分離対象物導出室15と前記分離容器3外部とを連通可能な貫通孔と、前記試料導入室14と前記分離容器3外部とを連通可能な貫通孔とが、それぞれ一個ずつであることが好ましい。
【0135】
本例の分離容器3を用いた試料からの分離対象物の分離方法について、パーコールを用いた精子の分離法を例に挙げて、図20の断面図を基づき、説明する。なお、特に示さない限り、例えば、前記図19に示す分離容器を用いた方法と同様にして、実施できる。
【0136】
本例の分離容器3の場合、例えば、貫通孔223cおよび223dを開口した状態で、遠心分離を行う。そして、前記試料導入室14と前記分離容器3外部とを連通可能な前記貫通孔223dを塞いだ状態で、前記容器本体200から、前記キャップ103を装着した前記アタッチメント25を取り出す。遠心時においては、貫通孔223cおよび223dを開口しているため、気密状態を解除できる。他方、アタッチメント25を取り出す際には、貫通孔223dを閉塞することにより、前記分離容器3内部の気密性が維持されるため、前記アタッチメント25の前記試料導入室14から液体が漏れ落ちることを防止できる。
【0137】
また、例えば、前記貫通孔223cおよび223dの開閉により、遠心後、前記アタッチメント25の前記試料導入室14下部に残存する分離対象物を、前記分離対象物導出室15に導出することもできる。この場合、前記貫通孔223cおよび貫通孔223d、もしくは、いずれか一方を閉塞した状態で遠心分離を行う。そして、前記アタッチメント25の前記試料導入室14内部に分離対象物が残存している場合には、前記貫通孔223cおよび223dの両方を開口することによって、前記試料導入室14下部に残存する分離対象物を、前記分離対象物導出室15に導出できる。続いて、前述と同様に、前記貫通孔223dを塞いだ状態でアタッチメント25を取り出せばよい。なお、完全に開口または閉塞することで、前述のように、内部の圧力を調整してもよいし、開口や閉塞の程度を変化させることで、同様に調整を行うこともできる。
【産業上の利用可能性】
【0138】
本発明の分離容器は、不要な成分の混入を防止でき、遠心分離時に部材の脱落がなく、安全性に優れ、簡単な操作で試料から分離対象物を分離可能である。本発明の分離容器は、試料からの精子の分離(例えば、洗浄、濃縮)に好ましく使用できるが、これに限定されず、広い分野に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0139】
【図1】図1は、本発明の実施例1の分離容器の構成を示す断面図である。
【図2】図2(A)および(B)は、実施例1の分離容器を用いて試料から精子を分離する方法の例を示す断面図である。
【図3】図3は、本発明の実施例2の分離容器の容器本体の一例を示す正面図である。
【図4】図4(A)は、実施例2のアタッチメントの斜視図であり、図4(B)は、本例のアタッチメントの正面図であり、図4(C)は、図4(A)のI−I方向に見た断面図であり、図4(D)は、本例のアタッチメントの上面図であり、図4(E)は、本例のアタッチメントの別の形態を示す斜視図である。
【図5】図5(A)は、実施例2において、アタッチメントを容器本体100に挿入した状態の正面図であり、図5(B)は、図4(A)のI−I方向に見た断面図である。
【図6】図6(A)は、実施例3のアタッチメントの斜視図であり、図6(B)は、本例のアタッチメントの正面図であり、図6(C)は、図6(A)のI−I方向に見た断面図であり、図6(D)は、本例のアタッチメントの上面図である。
【図7】図7(A)は、実施例3において、アタッチメントを容器本体100に挿入した状態の正面図であり、図7(B)は、図6(A)のI−I方向に見た断面図である。
【図8】図8(A)は、実施例4のアタッチメントの斜視図であり、図8(B)は、本例のアタッチメントの正面図であり、図8(C)は、図8(A)のI−I方向に見た断面図であり、図8(D)は、本例のアタッチメントの上面図である。
【図9】図9(A)は、実施例4において、アタッチメントを容器本体100に挿入した状態の正面図であり、図9(B)は、図8(A)のI−I方向に見た断面図である。
【図10】図10(A)は、実施例5のアタッチメントの斜視図であり、図10(B)は、図10(A)のI−I方向に見た断面図である。
【図11】図11は、図10(A)のI−I方向に見た断面図である。
【図12】図12(A)は、本発明の実施例6の分離容器の構成を示す断面図であり、図12(B)および(C)は、実施例6の分離容器を用いた試料からの精子の分離方法の例を示す断面図である。
【図13】図13(A)は、実施例6のアタッチメントの斜視図であり、図13(B)は、本例のアタッチメントの正面図であり、図13(C)は、図13(A)のI−I方向に見た断面図であり、図13(D)は、本例のアタッチメントの上面図である。
【図14】図14(A)は、実施例6において、アタッチメントを容器本体100に挿入した状態の正面図であり、図14(B)は、図13(A)のI−I方向に見た断面図である。
【図15】図15(A)および(B)は、実施例6において、別の構成のアタッチメントを示す斜視図である。
【図16】図16(A)および(B)は、実施例6において、さらに別の構成のアタッチメントを示す斜視図である。
【図17】図17(A)は、本発明の実施例8のアタッチメントの構成を示す断面図であり、図17(B)、(C)および(D)は、本例の分離容器を用いた試料からの精子の分離方法の例を示す断面図である。
【図18】図18(A)は、本発明の実施例9の分離容器の構成を分離して示す斜視図であり、図18(B)は、図18(A)のI−I方向から見た断面図である。
【図19】図19は、実施例9の分離容器を用いた試料からの精子の分離方法の例を示す断面図である。
【図20】図20は、本発明の実施例9のその他の分離容器を用いた試料からの精子の分離方法の例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0140】
1、1a、2 分離容器
11、100、200 容器本体
12、12a、12b 隔壁
13、223c、223d 貫通孔
14 試料導入室
15 分離対象物導出室
16 パーコールまたは培養液
17 試料
17a 精子
18 採取管
21、22、23、24、25 アタッチメント
51、126 内容器
52 スポイトゴム(陽圧発生手段)
101、200 有底円筒状容器
102、103 キャップ
121 板状固定部材
122、123、222、222a、222b、223、223a、223b 円環状固定部材
124 半円状外周面
125 上部板状固定部材
128 下部固定部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠心分離により試料から分離対象物を底部に集めて分離するための分離容器であって、
容器本体と、区画部とを有し、
前記容器本体が、上端が開口し、かつ下端が底部である、軸方向に長尺の筒状容器であり、
前記区画部が、前記容器本体の前記軸方向に沿って形成された隔壁を有し、
前記容器本体の内部が、前記隔壁により二つ以上の室に区画され、
前記隔壁により区画されて形成された二つ以上の室の少なくとも一つが、試料導入室であり、
残りの室の少なくとも一つが、分離対象物導出室であり、
前記試料導入室および前記分離対象物導出室が、それぞれの下部で連通可能とされており、
前記試料導入室および前記分離対象物導出室が、それぞれ遠心処理液を充填可能であり、
前記分離対象物導出室には、前記開口部から採取管が挿入可能であり、前記分離対象物導出室内の前記分離対象物を、前記採取管により採取して、前記容器本体外に回収可能であることを特徴とする分離容器。
【請求項2】
前記隔壁が、前記容器本体内部の断面形状と略同一形状の平板状の隔壁であり、
前記隔壁の下部には貫通孔が形成され、
前記貫通孔により、前記試料導入室および前記分離対象物導出室が連通可能とされている、請求項1記載の分離容器。
【請求項3】
前記隔壁が、前記容器本体内部の断面形状と略同一形状の平板状の隔壁であり、
前記隔壁の高さが、前記容器本体の深さよりも短く、前記隔壁の底辺よりも下側に、前記隔壁の底辺と前記容器本体の内壁とにより貫通孔が形成され、
前記貫通孔により、前記試料導入室および前記分離対象物導出室が連結可能とされている、請求項1または2記載の分離容器。
【請求項4】
前記隔壁が、前記容器本体内部の径方向中心よりも前記試料導入室側に偏って配置され、前記隔壁が、その長手方向の途中から前記試料導入室側に向かって傾斜した形状である、請求項1から3のいずれか一項に記載の分離容器。
【請求項5】
前記区画部が、さらに、隔壁固定部を有し、前記隔壁固定部により、前記隔壁が、前記容器本体内部に支持固定されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の分離容器。
【請求項6】
前記区画部が、第一の内容器を有し、
前記内容器は、軸方向に長尺の筒状であり、かつ前記容器本体内部に挿入可能な外径および高さを有し、
前記内容器の上部が開口し、前記内容器の下部が開口し、もしくは前記内容器の下部に貫通孔が形成され、
前記内容器の外周面の一部の形状が、前記容器本体の内周面の一部の形状と略同形状であり、
前記内容器の外周面のその他の部分の形状は、平面形状であり、
前記内容器の平面形状の側壁部分が、前記隔壁であり、
前記内容器の外周面と前記容器本体内周面の同形状部分が相互に接した状態で、かつ、前記内容器の平面形状の外周面と、前記容器本体の前記同形状部分以外の内周面とが、一定の距離をおいた状態で、前記内容器が前記容器本体内に配置され、
前記内容器が内容器固定部を有し、前記内容器固定部により、前記内容器が、前記容器本体内で支持固定され、
前記内容器内部の室が、前記試料導入室であり、
前記内容器の平面形状の外周面と前記容器本体の内周面の前記接した面以外の面とにより形成された室が、前記分離対象物導出室である、請求項1記載の分離容器。
【請求項7】
前記内容器の平面形状の外周面が、前記軸方向の途中から前記内容器内部に向かって傾斜した形状である、請求項6記載の分離容器。
【請求項8】
前記区画部が、第二の内容器を有し、
前記内容器は、軸方向に長尺の筒状であり、かつ前記容器本体の内径より小さい外径と、前記容器本体の深さより小さい高さとを有し、
前記内容器の上部が開口し、前記内容器の下部が開口し、もしくは前記内容器の下部に貫通孔が形成され
前記内容器の側壁全体が、前記隔壁であり、
前記内容器の外周面と、前記容器本体の内周面とが、一定の距離をおいた状態で、前記内容器が前記容器本体内に配置され、
前記内容器が内容器固定部を有し、前記内容器固定部により、前記内容器が前記容器本体内で支持固定され、
前記内容器内部の室が、前記試料導入室であり、
前記内容器の外周面と前記容器本体の内周面とにより形成された室が、前記分離対象物導出室である、請求項1記載の分離容器。
【請求項9】
前記試料導入室と前記分離容器外部とを連通可能な貫通孔および前記分離対象物導出室と前記分離容器外部とを連通可能な貫通孔の少なくとも一方を有する、請求項1から8のいずれか一項に記載の分離容器。
【請求項10】
前記区画部に代えて、第三の内容器を有し、
前記内容器は、軸方向に長尺の筒状であり、かつ前記容器本体内部に挿入可能な外径および高さを有し、
前記内容器の上部が開口し、前記内容器の下部が開口し、もしくは前記内容器の下部に貫通孔が形成され、
前記内容器の外周面形状が、前記容器本体の内周面形状と略同形状であり、
前記内容器は、前記容器本体内部に挿入された場合、前記内容器外周面が前記容器本体内周面に当接することにより、前記容器本体内部で支持固定され、
前記内容器は、陽圧発生部を有し、
前記陽圧発生部は、前記内容器の上部開口に着脱自在であり、
前記内容器を前記容器本体内に挿入した状態で、前記内容器内部に前記試料を導入し、前記試料中の分離対象物を、遠心分離により前記内容器の下部に移動させ、この状態で、前記内容器を前記容器本体から取り出し、前記陽圧発生により発生した圧力で、前記内容器の下部開口から、前記分離対象物を導出可能である、請求項1記載の分離容器。
【請求項11】
さらに、蓋部を備え、前記蓋部が、前記容器本体の上端の開口を閉塞可能である、請求項1から10のいずれか一項に記載の分離容器。
【請求項12】
用途が、試料からの精子の分離用である、請求項1から11のいずれか一項に記載の分離容器。
【請求項13】
前記分離対象物導出室に液体が注入された場合、前記分離対象物導出室の下部に沈殿して分離された精子が、前記液体中を遊泳して前記分離対象物導出室の上部に浮上し、前記浮上した精子を採取して回収可能である、請求項12記載の分離容器。
【請求項14】
請求項1記載の分離容器に使用するアタッチメントであって、
前記アタッチメントが、区画部を有し、
前記区画部が、前記容器本体の前記軸方向に沿って形成された隔壁を有し、
前記容器本体の内部が、前記隔壁により二つ以上の室に区画可能であり、
前記区画部の前記隔壁により区画されて形成された二つ以上の室の少なくとも一つが、試料導入室となり、
残りの室の少なくとも一つが、分離対象物導出室となり、
前記試料導入室と前記分離対象物導出室とが、それぞれの下部で連通可能とされているアタッチメント。
【請求項15】
前記隔壁が、前記容器本体内部の断面形状と略同一形状の平板状の隔壁であり、
前記隔壁の下部には貫通孔が形成され、
前記貫通孔により、前記試料導入室および前記分離対象物導出室が連通可能とされている、請求項14記載のアタッチメント。
【請求項16】
前記隔壁が、前記容器本体内部の断面形状と略同一形状の平板状の隔壁であり、
前記隔壁の高さが、前記容器本体の深さよりも短く、前記隔壁の底辺よりも下側に、前記隔壁の底辺と前記容器本体の内壁とにより貫通孔が形成され、
前記貫通孔により、前記試料導入室および前記分離対象物導出室が連結可能とされている、請求項14または15記載のアタッチメント。
【請求項17】
前記隔壁が、前記容器本体内部の径方向中心よりも前記試料導入室側に偏って配置可能であり、前記隔壁が、その長手方向の途中から前記試料導入室側に向かって傾斜した形状である、請求項14から16のいずれか一項に記載のアタッチメント。
【請求項18】
前記区画部が、さらに、隔壁固定部を有し、前記隔壁固定部により、前記隔壁が、前記容器本体内部に支持固定可能である、請求項14から17のいずれか一項に記載のアタッチメント。
【請求項19】
前記区画部が、第一の内容器を有し、
前記内容器は、軸方向に長尺な筒状であり、かつ前記容器本体内部に挿入可能な外径および高さを有し、
前記内容器の上部が開口し、前記内容器の下部が開口し、もしくは前記内容器の下部に貫通孔が形成され、
前記内容器の外周面の一部の形状が、前記容器本体の内周面の一部の形状と略同形状であり、
前記内容器の外周面のその他の部分の形状は、平面形状であり、
前記内容器の平面形状の側壁部分が、前記隔壁であり、
前記内容器の外周面と前記容器本体内周面の同形状部分が相互に接した状態で、かつ、前記内容器の平面形状の外周面と、前記容器本体の前記同形状部分以外の内周面とが、一定の距離をおいた状態で、前記内容器が前記容器本体内に配置可能であり、
前記内容器が内容器固定部を有し、前記内容器固定部により、前記内容器が、前記容器本体内で支持固定可能であり、
前記内容器内部の室が、前記試料導入室となり、
前記内容器の平面形状の外周面と前記容器本体の内周面の前記接した面以外の面とにより形成された室が、前記分離対象物導出室となる、請求項14記載のアタッチメント。
【請求項20】
前記内容器の平面形状の外周面が、前記軸方向の途中から前記内容器内部に向かって傾斜した形状である、請求項19記載のアタッチメント。
【請求項21】
前記区画部が、第二の内容器を有し、
前記内容器は、軸方向に長尺の筒状であり、かつ前記容器本体の内径より小さい外径と、前記容器本体の深さより小さい高さとを有し、
前記内容器の上部が開口し、前記内容器の下部が開口し、もしくは前記内容器の下部に貫通孔が形成され
前記内容器の側壁全体が、前記隔壁であり、
前記内容器の外周面と、前記容器本体の内周面とが、一定の距離をおいた状態で、前記内容器が前記容器本体内に配置可能であり、
前記内容器が内容器固定部を有し、前記内容器固定部により、前記内容器が前記容器本体内で支持固定可能であり、
前記内容器内部の室が、前記試料導入室となり、
前記内容器の外周面と前記容器本体の内周面とにより形成された室が、前記分離対象物導出室となる、請求項14記載のアタッチメント。
【請求項22】
前記区画部に代えて、第三の内容器を有し、
前記内容器は、前記軸方向に長尺な筒状であり、かつ前記容器本体内部に挿入可能な外径および高さを有し、
前記内容器の上部が開口し、前記内容器の下部が開口し、もしくは前記内容器の下部に貫通孔が形成され、
前記内容器の外周面形状が前記容器本体の内周面形状と略同形状であり、
前記内容器は、前記容器本体内部に挿入された場合、前記内容器外周面が前記容器本体内周面に当接することにより、前記容器本体内部で支持固定可能であり、
前記内容器は、陽圧発生部を有し、
前記陽圧発生部は、前記内容器の上部開口に着脱自在である、請求項14記載のアタッチメント。
【請求項23】
用途が、試料からの精子の分離用である請求項14から22のいずれか一項に記載のアタッチメント。
【請求項24】
試料から分離対象物を分離する分離方法であって、下記の(A)から(D)の工程を有する分離方法。
(A)請求項1から13のいずれか一項に記載の分離容器を使用し、前記分離容器の前記試料導入室および前記分離対象物導出室の双方に、遠心処理液を充填する工程
(B)前記(A)工程の前記試料導入室に、前記試料を導入する工程
(C)前記(B)工程後の前記分離容器を遠心分離に供して、前記試料から分離対象物を前記分離対象物導出室の下部に移動させて分離する工程
(D)前記(C)工程後の前記分離容器において、採取管を前記分離容器の前記開口部から前記分離対象物導出室に挿入し、前記分離対象物導出室内の前記分離対象物を、前記採取管により採取して前記容器本体外に回収する工程
【請求項25】
前記遠心処理液が、密度勾配担体、培地および緩衝液からなる群から選択された少なくとも一つである、請求項24記載の分離方法。
【請求項26】
前記遠心処理液が、密度勾配担体であり、
前記(B)工程において、前記試料導入室の前記密度勾配担体の上に、前記試料を重層する、請求項24または25記載の分離方法。
【請求項27】
前記分離対象物が、精子であり、
前記(C)工程において、前記(B)工程後の前記分離容器を遠心分離に供して、前記試料中の精子を前記試料導入室の下部に沈殿させ、
前記(D)工程において、前記(C)工程後の前記分離容器において、採取管を前記分離容器の前記開口部から前記分離対象物導出室に挿入し、前記分離対象物導出室内の前記精子を、前記採取管により採取して前記容器本体外に回収する、請求項24から26のいずれか一項に記載の分離方法。
【請求項28】
前記分離対象物が、精子であり、
前記(C)工程において、前記(B)工程後の前記分離容器を遠心分離に供して、前記試料中の精子を前記試料導入室の下部に沈殿させ、
前記(D)工程において、前記(C)工程後の前記分離容器において、前記試料導入室の下部から前記分離対象物導出室の上部に遊泳してきた精子を採取して回収する、請求項24から26のいずれか一項に記載の分離方法。
【請求項29】
前記(C)工程において、前記遠心分離後、上清の前記遠心処理液を除去し、ついで、精子が遊泳可能な液体を前記試料導入室および分離対象物導出室の双方に充填し、
前記(D)工程において、前記(C)工程後の前記分離容器において、前記試料導入室の下部から前記分離対象物導出室の上部に遊泳してきた精子を採取して回収する、請求項24から26のいずれか一項に記載の分離方法。
【請求項30】
前記試料が精液であり、
前記(C)工程において、前記(B)工程後の前記分離容器を遠心分離に供して、前記試料中の精子を前記試料導入室の下部に沈殿させ、
前記(D)工程において、前記(C)工程後の前記分離容器において、採取管を前記分離容器の前記開口部から前記分離対象物導出室の下部に挿入し、前記分離対象物導出室の下部に位置する前記精子を含む精液内固形物を前記採取管により採取し、前記採取管内に前記精子を含む精液内固形物を保持した状態で、前記採取管を前記容器本体から取り出し、
さらに、下記(E)〜(G)工程を有する、請求項24から27のいずれか一項に記載の分離方法。
(E)前記(A)工程の分離容器とは別に、請求項1から13のいずれか一項に記載の分離容器を新たな分離容器として新たに使用し、前記新たな分離容器の前記試料導入室および前記分離対象物導出室の双方に、精子が遊泳可能な液体を充填する工程
(F)前記(E)工程後の前記新たな分離容器において、前記(D)工程後の前記採取管を前記新たな分離容器の前記開口部から前記試料導入室の下部に挿入し、前記採取管内の前記精子を含む精液内固形物を、前記試料導入室の下部に導出する工程
(G)前記(F)工程後の前記新たな分離容器において、前記試料導入室の下部から前記分離対象物導出室の上部に遊泳してきた精子を採取して回収する工程
【請求項31】
前記分離容器が、請求項6から8のいずれか一項に記載の分離容器であって、
前記(C)工程後且つ前記(D)工程前、前記分離容器における前記第一の内容器内部または第二の内容器内部の気密性を維持した状態で、前記第一の内容器または第二の内容器を前記分離容器の外部に取り出す、請求項24から30のいずれか一項に記載の分離方法。
【請求項32】
前記分離容器が、請求項10記載の分離容器であって、
前記(D)工程において、前記(C)工程後の前記分離容器において、前記内容器の上部開口に前記陽圧発生部を装着し、前記内容器を前記容器本体から取り出し、前記陽圧発生部により発生した圧力により、前記内容器の下部開口から前記分離対象物を導出して回収する、請求項24から30のいずれか一項に記載の分離方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate


【公開番号】特開2009−119457(P2009−119457A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−272929(P2008−272929)
【出願日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【出願人】(000153030)株式会社ジェイ・エム・エス (452)
【Fターム(参考)】