説明

分離膜のリーク検査方法

【課題】 簡易にかつ低コストで分離膜のリークの有無を判別することができるとともに、分離膜の種類によってはリーク部位の特定をも行うことができる分離膜のリーク検査方法を提供する。
【解決手段】 着色性物質を含有する検査液を分離膜に供給し、前記分離膜を透過した透過液の着色の有無により分離膜のリークの有無を判別するとともに、透過液について濾材を用いて濾過処理を行い、濾材の着色の有無により分離膜のリークの有無を判別する。また、分離膜の接合部の着色部位により分離膜のリーク部位を特定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分離膜におけるリークの有無を判別することのできるリーク検査方法、及びさらにリーク部位の特定をも行うことのできる分離膜のリーク検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液体や気体の濾過、固液分離や物質の濃縮、菌体の除去や濃縮などの用途で分離膜がしばしば用いられている。分離膜は目的とする分画性能によって、精密濾過膜、限外濾過膜、逆浸透膜、透析膜など種々のものがあり、また、その形態も平膜、中空糸膜、管状膜など様々である。このような分離膜は、単に膜だけで使用される場合は少なく、分離膜モジュールとして使用され、その製造時における品質検査、使用前又は使用中におけるリークの有無の検査などが行われている。
【0003】
このようなリーク検査方法としては、例えば、濁質又は微粒子を含む液体を分離膜の一次側に供給し、分離膜を透過した透過液の濁度又は透過液中の粒子数を測定することにより分離膜におけるリークの有無を判別する方法が提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−343320号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の検査方法では、透過液中の平均粒子数は濁度計やパーティクルカウンターを用いて測定し、これに基づいてリークの有無を判別するものであり、検査方法としては煩雑でコスト高になるという問題点がある。また、上記の検査方法では、リークの有無は判別できるもののリーク部位の特定まではできないという問題点もある。
【0005】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、簡易にかつ低コストで分離膜のリークの有無を判別することができるとともに、分離膜の種類によってはリーク部位の特定をも行うことができる分離膜のリーク検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の分離膜のリーク検査方法は、着色性物質を含有する検査液を分離膜に供給し、前記分離膜を透過した透過液の着色の有無により分離膜のリークの有無を判別することを特徴とする(請求項1)。
【0007】
上記発明(請求項1)によれば、分離膜を透過した透過液の着色の有無を判断するという簡易で低コストな方法で分離膜のリークの有無を判別することができる。
【0008】
上記発明(請求項1)においては、前記透過液の着色の有無を、前記透過液について濾材を用いて濾過し、前記濾材の着色の有無により判断してもよいし(請求項2)、あるいは、前記透過液の着色の有無を、目視による透過液の着色の有無で判断し、目視により透過液の着色の確認ができない場合に、さらに、濾材を用いて前記透過液を濾過し、前記濾材の着色の有無により分離膜のリークの有無を判別してもよい(請求項3)。
【0009】
上記発明(請求項2,3)によれば、分離膜からのリーク量が少ない場合であっても、分離膜のリークの有無を簡易にかつ低コストで判別することができる。
【0010】
上記発明(請求項1〜3)において、前記分離膜が接合部を有する分離膜である場合には、前記分離膜についてリーク有りと判断した場合に、前記分離膜の接合部における着色部位により前記分離膜のリーク部位を特定することが好ましい(請求項4)。
【0011】
上記発明(請求項4)によれば、分離膜の接合部における着色部位を確認するという簡易な方法で分離膜のリーク部位を特定することができる。
【0012】
上記発明(請求項1〜4)においては、前記着色性物質が、分離膜の孔径よりも大きい粒径を有する物質(請求項5)又はベンガラ(請求項6)であることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、簡易にかつ低コストで分離膜のリークの有無を判別することができるとともに、分離膜の種類によってはリーク部位の特定をも行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態に係る分離膜のリーク検査方法について説明する。
【0015】
本実施形態に係る分離膜のリーク検査方法を適用し得る分離膜としては特に限定されることはなく、例えば、精密濾過膜、限外濾過膜、逆浸透膜、透析膜などの分離膜に適用し得る。また、分離膜の形態も特に限定されるものではなく、平膜、中空糸膜、管状膜などに適用し得る。それら各種分離膜の中でも、特に接合部を有するものは、その接合部におけるリーク部位の特定まで行うことができるため、本実施形態では、接合部を有する分離膜を一例に挙げて説明する。
【0016】
本実施形態においてリーク検査対象とする分離膜1は、図1に示すように、二枚の略方形状の膜素材2を重ね合わせ、3辺の接合部5にて接合して袋状にした膜部材3と、膜部材3の一辺が接続されたコアバー4とを有し、分離膜1の二次側には濃縮水出口6が設けられている。
【0017】
本実施形態に係る分離膜のリーク検査方法では、図2に示すように、まず、検査液調製工程(S1)において検査液の調製を行う。検査液の調製は、通常、工業用水、水道水などの水に着色性物質を含有させることにより行う。
【0018】
上記着色性物質としては、分離膜1及び後述する濾材に着色し得るものであれば特に限定されるものではなく、例えば、ベンガラ(赤色酸化鉄)、黒色酸化鉄、黄色酸化鉄などを用いることが好ましく、特に、着色性に優れるベンガラを用いることが好ましい。
【0019】
上記着色性物質の粒径は、分離膜1(の膜素材2)及び後述する濾材の孔径よりも大きいことが好ましい。着色性物質の粒径が分離膜1及び濾材の孔径以下である場合には、着色性物質が分離膜1や濾材に残存せず、分離膜1のリークの有無の判別やリーク部の特定をすることができなくなるおそれがある。ベンガラは、その粒度分布が0.2μm以上に偏っているため、ベンガラを分離膜の孔径よりも大きい粒径にふるい分けることにより、孔径が0.2μm以上の分離膜1及び濾材に対しても使用することが可能である。
【0020】
上記検査液における着色性物質の濃度は、リークの有無の判別及びリーク部位の特定ができる程度の濃度であれば特に限定されることはないが、通常は、0.02〜0.1g/L程度とすることが好ましい。
【0021】
次に、検査液供給工程(S2)において、着色性物質を含有する検査液を分離膜1の一次側(分離膜処理を行うに際して被処理液が導入される側)に供給する。検査液の供給量は、分離膜1の種類によっても異なるが、通常、分離膜1の膜素材2の単位面積当たり、100〜1000L/hr・m程度供給することが好ましい。
【0022】
次に、透過液着色検査工程(S3)においては、上記検査液供給工程(S2)により分離膜1を透過した透過液の着色の有無を目視により検査する。この検査の結果、透過液が着色している場合には、分離膜1にリークが有ると判断することができる。通常、分離膜1からのリーク量が多いときにはこのように目視でも透過液の着色を確認することができるため、この場合には、分離膜1においてリーク部位が大きいか多数あることが予測される。
【0023】
一方、上記検査の結果、目視により透過液の着色の確認ができない場合には、次の濾過工程(S4)により透過液を濾過する。この濾過工程(S4)を行うことにより、分離膜1からのリーク量が少ない場合であっても、分離膜1のリークの有無を判別することができる。
【0024】
濾過工程(S4)においては、透過液について、常法により濾材を用いて濾過処理を行う。例えば、透過液を濾過装置に導入し、吸引濾過をすることにより濾過処理を行うことができる。上記濾過工程(S4)に用いられる濾材としては、着色性物質の粒径よりも小さい孔径を有し、着色性物質による着色が確認できるものであれば特に限定されるものではないが、濾紙(MF紙)などを用いるのが好ましい。濾材の色は、着色の有無を容易に判別し得る色が好ましく、特に白であることが好ましい。
【0025】
上記濾過工程(S4)は、例えば、濾材としてMF紙(孔径:0.45μm,材質:酢酸セルロース,色:白)を用いて、透過液1Lを圧力66.7kPa(500mmHg)で吸引濾過することにより行うことができる。
【0026】
上記濾過処理が終了した後、濾材着色検査工程(S5)において、上記濾過工程(S4)で用いられた濾材の着色の有無を検査する。濾材に着色がある場合には、透過液中に着色性物質が存在しており、分離膜1にリークが有ると判断することができ、濾材に着色がない場合には、透過液に着色性物質が存在しておらず、分離膜1にリークが無いと判断することができる。
【0027】
なお、透過液中に着色性物質が存在している場合には、着色性物質が存在していない場合に比して濾過工程(S4)における濾過時間が遅くなるため、その濾過時間を測定することによって分離膜1のリークの有無を判断することも可能である。
【0028】
上記透過液着色検査工程(S3)又は濾材着色検査工程(S5)においてリーク有りと判断した場合には、リーク部位特定工程(S6)により、分離膜1のリーク部位を特定する。
【0029】
リーク部位特定工程(S6)においては、図3に示すように、分離膜1の接合部5を剥がし、接合部5における着色部位を目視により確認しリーク部位7の特定を行う。分離膜1の接合部5にリーク部位7が存在している場合には、着色性物質を含有する検査液が接合部5のリーク部位7に侵入し、接合部5が着色されるため、接合部5の着色部位を目視により確認することでリーク部位7を特定することができる。
【0030】
このようにしてリーク部位7を特定することにより、リーク原因を推測することができる。例えば、図3に示すように、分離膜1の縦方向(コアバー4と直交する方向)の接合部5にリーク部位7が存在する場合には、分離膜製造過程における膜素材2の接合時の圧力が高いことが原因であると推測することができ、分離膜1の横方向(コアバー4と並行の方向)の接合部5にリーク部位7が存在する場合には、分離膜製造過程における膜素材2の接合時の圧力が低いことが原因であると推測することができる。
【0031】
このように、本実施形態に係る分離膜のリーク検査方法によれば、着色性物質を含有する検査液を分離膜に供給し、透過液又は濾材の着色の有無により分離膜のリークの有無の検査及びーク部位の特定が可能であるため、簡易に、かつ低コストで分離膜の品質検査をすることができる。
【0032】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0033】
例えば、透過液着色検査工程(S3)は省略して、検査液供給工程(S2)で分離膜1に供給し分離膜1を透過した透過液を直接濾過工程(S4)に付してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、精密濾過膜、限外濾過膜、逆浸透膜、透析膜などの分離膜の品質検査に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本実施形態に係る分離膜のリーク検査方法の適用を受け得る分離膜を示す斜視図である。
【図2】本実施形態に係る分離膜のリーク検査方法を示すフローチャートである。
【図3】本実施形態に係る分離膜のリーク検査方法におけるリーク部位特定方法を示す概念図である。
【符号の説明】
【0036】
1…分離膜
5…接合部
7…リーク部位

【特許請求の範囲】
【請求項1】
着色性物質を含有する検査液を分離膜に供給し、前記分離膜を透過した透過液の着色の有無により分離膜のリークの有無を判別することを特徴とする分離膜のリーク検査方法。
【請求項2】
前記透過液の着色の有無を、前記透過液について濾材を用いて濾過し、前記濾材の着色の有無により判断することを特徴とする請求項1に記載の分離膜のリーク検査方法。
【請求項3】
前記透過液の着色の有無を、目視による透過液の着色の有無で判断し、
目視により透過液の着色の確認ができない場合に、さらに、濾材を用いて前記透過液を濾過し、前記濾材の着色の有無により分離膜のリークの有無を判別することを特徴とする請求項1に記載の分離膜のリーク検査方法。
【請求項4】
前記分離膜が、接合部を有する分離膜であって、
前記分離膜についてリーク有りと判断した場合に、前記分離膜の接合部における着色部位により前記分離膜のリーク部位を特定することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の分離膜のリーク検査方法。
【請求項5】
前記着色性物質が、前記分離膜の孔径よりも大きい粒径を有する物質であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の分離膜のリーク検査方法。
【請求項6】
前記着色性物質が、ベンガラであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の分離膜のリーク検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−258764(P2006−258764A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−80509(P2005−80509)
【出願日】平成17年3月18日(2005.3.18)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【Fターム(参考)】