説明

分電盤

【課題】小型化を可能とする分電盤を提供する。
【解決手段】分電盤100は、主幹ブレーカ11の二次側で分岐し、主幹ブレーカ11と接続可能に構成された複数の分岐ブレーカ13a,13b,・・・,13nと、複数の分岐ブレーカ13a〜13nのうち、所定数の分岐ブレーカの各々に取り付けられた複数の電流センサ14a,14b,・・・,14nと、各電流センサ14a,14b,・・・,14nで検出された値に基づいて、各分岐ブレーカ13a〜13nの負荷側の電力の使用状態を演算する演算装置15a,・・・,15gとを含む。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明は、分電盤に関し、特に分岐ブレーカの二次側の電流値を検出する電流センサを備えた分電盤に関する。
【0002】
従来、電流センサを分電盤に取り付けることによって分岐系統の電流値を計測し、分岐系統の電流値を監視する分電盤が知られている。例えば、特許文献1では、複数の分岐ブレーカと、各分岐ブレーカに設けられた電流センサと、各電流センサの出力値から電力使用量を演算するサーバとを備えた分電盤が開示されている。
【0003】
また、特許文献2では、複数の分岐ブレーカと、各分岐ブレーカに導電バーを介して接続された複数の電流センサとを備えた分電盤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−120428号公報
【特許文献2】特開2011−36050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1、2に開示された分電盤のように、電流センサを利用することによって分岐系統の電流値を監視する分電盤は従来から存在したものの、通常使用されるコイル式の電流センサはサイズが大きく、また分岐ブレーカ毎に電力演算をする周辺回路を設けているので、分電盤の小型化を実現できていない。
【0006】
そこで本発明は、小型化が可能な分電盤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するための分電盤は、主幹ブレーカの二次側で分岐し、上記主幹ブレーカと接続可能に構成された複数の分岐ブレーカと、上記複数の分岐ブレーカのうち、所定数の分岐ブレーカの各々に取り付けられた複数の電流センサと、上記各電流センサで検出された値に基づいて、上記各分岐ブレーカの負荷側の電力の使用状態を演算する演算装置と、を含む。
【0008】
上記電流センサとしては、例えばシャント抵抗やコイル式の電流センサ、磁気センサを用いた電流センサなどがある。上記電流センサにおいて、直流電流および交流電流の計測が可能であるようにしてもよい。この場合、直流成分のオフセット電圧の検出が可能になる等、より好適な分電盤を構成することとなる。あるいは、上記電流センサを、磁気センサを用いた構成としてもよい。この場合、シャント抵抗で発生する電力ロスもなく、発熱も起きないこととなるのでより好ましい。あるいは、上記電流センサは、上記分岐ブレーカに組み込むようにしてもよい。この場合、分電盤を小型化することが可能になる。
【0009】
上記分岐ブレーカは、スイッチを有しており、上記電流センサは、上記スイッチの作動方向とは直交するように取り付けてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、分電盤の小型化を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1実施形態における分電盤の構成例を示す図である。
【図2】第1実施形態における電流センサの構成例を示す図である。
【図3】図2の電流センサにおける側面および断面の一例を示す図である。
【図4】第2実施形態における分電盤の概略構成例を示す図である。
【図5】第2実施形態における分岐ブレーカの構成例を示す図である。
【図6】第2実施形態において、複数の分岐ブレーカ内の各電流センサの位置関係の一例を示す図である。
【図7】第2実施形態において、分岐ブレーカに磁気シールドが施された場合の磁気シールドの設置例を示す図である。
【図8】磁気シールドが施された分岐ブレーカの例を示す斜視図である。
【図9】電流センサの変形例1を示す図である。
【図10】図9のX−X線に沿った電流センサの断面図である。
【図11】電流センサの変形例2を示す図である。
【図12】図11の電流センサにおける側面および断面の一例を示す図である。
【図13】電流センサの変形例3を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<第1実施形態>
以下、本発明の分電盤の一実施形態を、図面を参照して説明する。実施形態に係る分電盤100は、例えば家庭等に設けられ、分岐系統の電流値から分岐系統の電力使用量等を演算するための分電盤である。
【0013】
[分電盤の構成]
図1は、第1実施形態における分電盤100の構成例を示す図である。
【0014】
図1に示すように、この分電盤100は、主幹ブレーカ11と、この主幹ブレーカ11の二次側で分岐し、主幹ブレーカ11と接続された複数の分岐ブレーカ13a,13b,・・・,13nと、各分岐ブレーカ13a,13b,・・・,13nの負荷側(二次側)に接続された複数の電流センサ14a,14b,・・・,14nと、複数の電流センサ14a,14b,・・・,14nのうちのいずれかの電流センサの出力値を入力する演算装置15a,・・・,15gとを備える。
【0015】
なお、図1では、電流センサ13a,13b,・・・,13nは、それぞれ、分岐ブレーカ13a,13b,・・・,13nに対応して設けられている場合について示しているが、所定数(例えば、分岐ブレーカの総数の一部)の分岐ブレーカに対応して電流センサを設けるようにしてもよい。
【0016】
図1において、主幹ブレーカ11の一次側はケーブル10を介して電源供給を受け、二次側はケーブル12を介して複数の分岐ブレーカ13a,13b,・・・,13nと接続される。
【0017】
各分岐ブレーカ13a,13b,・・・,13nは、電路のオンまたはオフを切り替えるスイッチを備える。分岐ブレーカ13a,13b,・・・,13nの各スイッチは、通常はオン状態となっており、分岐ブレーカ13a,13b,・・・,13nの各負荷側に接続される機器(不図示)に電源を供給するようになっている。これにより、分岐ブレーカ13a,13b,・・・,13nの各負荷側に接続された機器に流れる電流の総和の電流として、負荷電流が流れる。なお、機器としては、例えば、照明器具、冷蔵庫、エアコン、洗濯機などがある。
【0018】
各電流センサ14a,14b,・・・,14nは、分岐ブレーカ13a,13b,・・・,13nの各負荷電流値が検出可能となっている。各電流センサ14a,14b,・・・,14nとしては、例えば、シャント抵抗やコイル式の電流センサ、磁気センサを用いた電流センサなど、さまざま種類の電流センサを適用することが可能であるが、例えば、直流と交流のいずれも検知可能で、かつ、発熱や電力の損失の少ない磁気センサを用いた電流センサを適用するのが好ましい。その中でも、磁性体コアを有さない磁気センサを用いた電流センサを用いると、分電盤の小型化を実現し易くなるので好ましい。各電流センサ14a,14b,・・・,14nの構成については、後に詳細に説明する。
【0019】
また、電流センサ14a,14b,・・・,14nは、演算装置15a,・・・,15gのいずれかと接続され、各演算装置15a,・・・,15gは、接続される電流センサから、負荷電流に応じた値を入力するようになっている。これにより、演算装置と電流センサの数は同じではなく、演算装置の数(図1では、例えば、演算装置15a,・・・,15gの7台)は、電流センサの数(図1では、例えば、電流センサ14a,14b,・・・,14nの14台)より少なくすることができる。演算装置の数と電流センサの数の比は、1:2とした上記の例に限定されない。演算装置の数と電流センサの数の比において、演算装置の数の比を1としたときに、電流センサの数の比を3以上としてもよい。この場合において、例えば電流センサの数の比を4以上とすれば、周辺回路の規模やプリント基板の面積を大幅に削減できるという効果がある。
【0020】
なお、図1では電流センサ14a,14b,・・・,14nのうちの一部の電流センサの接続先のみを表示してある。すなわち、演算装置15aは、例えば電流センサ14a,14bと接続され、演算装置15gは、例えば電流センサ14nと接続されている
【0021】
[演算装置の構成]
各演算装置15a,・・・,15gは、各電流センサ14a,14b,・・・,14nで検出された値に基づいて、分岐ブレーカ13a,13b,・・・,13nの各負荷側の電力の使用状態を演算する。電力の使用状態としては、瞬時電力や積算の電力使用量、電気料金、負荷電流値などがある。
【0022】
各演算装置15a,・・・,15gは、例えばLSI(Large Scale Integration)で構成されており、AC/DC回路、メモリおよびプロセッサなどを備える。
【0023】
メモリは、例えば電流センサの温度特性データを保持しており、プロセッサは、その温度特性データに基づいて、電流センサの出力値を補正するようにしてもよい。この場合、電流センサの出力値が補正されることになるので、各演算装置15a,・・・,15gでは、より正確な電力の使用状態が得られ、好ましい結果を得る。
【0024】
なお、図1では、複数の演算装置の各々が複数の電流センサからの信号をモニタ(監視)する場合について説明したが、例えば1つの演算装置が、複数の電流センサからの信号をモニタするように構成してもよい。この構成を採用し、さらに演算装置に高精度の補正回路を設けるようにしてもよい。この場合、各電流センサに高精度の補正回路を各々設ける必要がなくなるので、分電盤システムトータルの最適化や、分電盤システムの小型化を実現できる。
【0025】
1つの演算装置が複数の電流センサからの信号を読みとるには、例えばマルチプレクサなどを利用し、シリアル通信で当該信号のやり取りを行うようにしてもよいし、アナログ信号を複数並列処理してもよい。
【0026】
電流センサからの信号については、演算装置に内蔵したADコンバータでデジタル化し、温度補正などを行うようにすれば、高精度に電力演算を行うことも可能である。
【0027】
本実施形態では、各演算装置15a,・・・,15gは、例えば、接続先の電流センサに電源を供給するようになっている。このような構成をとることで、電流センサ14a,14b,・・・,14nの電源変動に連動して、各演算装置15a,・・・,15gが電力演算を行うようにし、電流センサ14a,14b,・・・,14nへの電源変動が生じた場合でも、より高精度な電力演算が可能となる。なお、電流センサ14a,14b,・・・,14nへの電源供給は、図1に示した構成に限られず、周辺ノイズの影響をうけない電源回路(レギュレータなど)を設けておき、その電源回路から行う構成を適用することもできる。
【0028】
[電流センサの構成]
次に、本実施形態の電流センサ14a,14b,・・・,14nの構成について図2および図3を参照して説明する。本実施形態では、電流センサ14a,14b,・・・,14nは、磁気センサを用いており、磁性体コアを有さない構成を例にとって説明するが、それ以外の電流センサを適用することも可能である。ただし、本実施形態の電流センサ14a,14b,・・・,14nが、電力損失や発熱を生じない電流センサであり、分電盤のサイズを最小とすることができるので好適である。
【0029】
分電盤の小型化は年々進められており、1つの分岐ブレーカの幅は、16mm程度まで小さくなっている。従来のコイル式電流センサの場合、一辺の長さが20mmを超えるため、分岐ブレーカ内にコイル式電流センサを設置することができなかった。一方、本実施形態の電流センサ14a,14b,・・・,14nの場合は、厚さを例えば0.5〜3mm程度とすることができるので、各分岐ブレーカ内に電流センサ14a,14b,・・・,14nを設置することが可能となる。したがって、分電盤100全体の小型化に大きく貢献することができる。
【0030】
なお、以下の説明において、電流センサ14a,14b,・・・,14nの各々に共通の説明では、各電流センサが電流センサ200として参照される。
【0031】
図2は、電流センサ200の構成例を示す図である。図3の電流センサ200における側面および断面の一例を示す図であって、(A)は電流センサ200の側面図、(B)は図2のIIIB-IIIB線に沿った断面図を示す。
【0032】
図2に示すように、電流センサ200は、U字形の電流経路210Aを有する一次導体210と、ホール素子等の磁電変換素子230Aを支持するための支持部220Aおよびリード端子220Bを有する信号端子側部材220と、支持部220Aに配置され、電流経路210Aを流れる電流から生じる磁束を検出する磁電変換素子230Aを有するICチップ230とを備える。一次導体210、信号端子側部材220、およびICチップ230を樹脂240でモールドして、電流センサ200が形成される。ICチップ230および樹脂240を除いた部分が電流センサ用基板である。
【0033】
電流経路210Aは、平面視において支持部220Aと重複しないように、支持部220Aに近接して配置されている。また、電流経路210Aは、図3(A)の側面図及び図3(B)の断面図から分かるように、側面視において支持部220Aと高さが異なる。
【0034】
電流経路210Aに被測定電流が流れると、U字形の電流経路210A内側の中心付近は磁束密度が高くなり電流検出感度が向上するため、磁電変換素子230Aは、平面視において、電流経路210AのU字形の内側に配置されている。また、ICチップ230は、側面視において支持部220Aから突出しており、平面視において電流経路210Aと重複する。
【0035】
電流センサ200においては、信号端子側部材220が、支持部220Aとリード端子220Bとの間に段差部220Cを有する。例えば信号端子側部材220のフォーミングにより、20〜100μm程度の段差部220Cを設けることができる。これにより、電流経路210AとICチップ230との間にクリアランスが得られる。このクリアランスは、一次導体210とICチップ230との間の絶縁を保証し、パッケージ内部における高い耐圧の維持を可能にする。段差部220Cが存在しない場合、一次導体210の導電経路210AとICチップ230が接触することになり、ICチップ230の裏面に予め絶縁シートを貼ったとしても絶縁耐圧が低く、絶縁破壊し易くなってしまう。改善策として、予め一次導体210に絶縁シートを貼ることも考えられる。
【0036】
また、電流センサ200は、一次導体210と信号処理回路で使用している電源の0Vに接続されたICチップ210の裏面とが向き合っているため、ICチップ210の表面に形成したIC回路は一次導体210からシールドされる構造となり、一次導体210に流れる被測定電流源に含まれる電圧ノイズを新たな部品を用いることなく効率的に遮断することが可能となるため、分電盤を小型化する上でより適した電流センサである。
【0037】
また、電流センサ200は、電流経路に流れる被測定電流に比例した出力のみならず、電流センサ200の周辺温度信号も出力することで、各演算装置15a,・・・,15gは、電流センサ200の温度特性を考慮することができ、高精度な電力演算が可能となる。各分岐ブレーカ13a,13b,・・・,13nに流れる電流値が異なっている場合は、各分岐ブレーカ13a,13b,・・・,13nに設けられた電流センサ200の内部温度は、発熱量が違い結果として異なる。各電流センサ200に一律の温度補正を考慮する場合と比較し、各電流センサ200の周辺温度信号が得られることで、高精度な電力演算が実現できる。
【0038】
以上説明したように、本実施形態の分電盤100によれば、各演算装置15a,・・・,15gは、電流センサ14a,14b,・・・,14nのいずれかの電流センサと接続され、接続先の電流センサの出力値に基づいて各分岐系統の電力の使用状態を演算する。すなわち、演算装置は、電流センサの数よりも少なくなるように設けられる。したがって、演算装置の数を少なくすることができるため、分電盤100の小型化を実現できる。
【0039】
<第2実施形態>
以下、第2実施形態について説明する。本実施形態における分電盤100Aは、分岐ブレーカ内に電流センサを組み込んだ構成が第1実施形態のものと異なる。
【0040】
以下では、本実施形態における分電盤の構成について、第1実施形態のものとの差異を中心に説明する。まず、本実施形態における分岐ブレーカの構成について、図4を参照して説明する。
【0041】
図4は、第2実施形態における分電盤100Aの構成例を示す図である。
分電盤100Aは、図1に示したものと同様に、主幹ブレーカ11と、この主幹ブレーカ11の二次側で分岐し、主幹ブレーカ11と接続された複数の分岐ブレーカ16a,16b,・・・,16nと、分岐ブレーカ16a,16b,・・・,16nの負荷側に接続された複数の電流センサ17a,17b,・・・,17nと、電流センサ17a,17b,・・・,17nのうちのいずれかの電流センサの出力値を入力する演算装置15a,・・・,15gとを備える。
【0042】
一方、図1に示したものと異なり、本実施形態の分電盤100Aでは、電流センサ17a,17b,・・・,17nは、それぞれ、分岐ブレーカ16a,16b,・・・,16nに組み込まれる。
【0043】
[分岐ブレーカの構成]
次に、本実施形態における分岐ブレーカ16a,16b,・・・,16nの構成について、図5を参照して説明する。
【0044】
図5は、分岐ブレーカ16aを正面からみたときの分岐ブレーカ16aの構成例を示す図である。なお、各分岐ブレーカ16a,16b,・・・,16nの構成は同一である。
【0045】
図5に示すように、分岐ブレーカ16aは、プリント基板201と、ケーブル12で接続されるスイッチ211と、電流センサ17aとを有する。プリント基板201には、プリント配線202が施され、電流センサ17aは、プリント配線202を介してスイッチ211に接続される。
【0046】
この分岐ブレーカ16aでは、スイッチ211は、スイッチの作動方向が正面となるように配置されるとともに、プリント基板201および電流センサ17aは、そのスイッチ211の作動方向とは直交するように配置される。すなわち、プリント基板201および電流センサ17aは、分岐ブレーカ17aの側面に設けられる。これにより、分岐ブレーカ16aの幅Wを小さくすることが可能となる。本実施形態では、一例として、概ねW=16mmとする。
【0047】
図5において、Hは、プリント基板201の底面からプリント配線202の露出面までの距離を表している。本実施形態では、一例として、概ねH=5mmとする。なお、上述したW、Hの値は、変更することもできる。
【0048】
[分岐ブレーカ内の各電流センサの位置関係]
次に、分岐ブレーカ16a,16b,・・・,16n内の各電流センサ17a,17b,・・・,17nの位置関係について、図6を参照して説明する。
【0049】
図6は、分岐ブレーカ16a,16b,・・・,16n内の各電流センサ17a,17b,・・・,17nの位置関係の一例を示す図である。
【0050】
図6の例では、分岐ブレーカ16a,16b,・・・,16nは連結され、隣接する分岐ブレーカ内の各電流センサ17a,17b,17c,・・・,17nは、取り付け位置が互いに異なるように配置されている。例えば、電流センサ17b,17cの中心のずれは、距離dとなっている。これにより、隣接する分岐ブレーカから生じる漏れ磁束の影響を低減させることが可能となる。この実施形態では、距離dを、例えば5mm以上とした場合に、シミュレーションの結果から、漏れ磁束の影響をほぼ無視することができるようになる。
【0051】
さらに分岐ブレーカ16a,16b,・・・,16nは、磁気シールドを施してもよい。
【0052】
図7は、分岐ブレーカ16aに磁気シールドが施された場合の磁気シールドの設置例を示す図であって、(a)は分岐ブレーカ16aのフレーム枠の一側面に磁気シールド203を施した場合と、(b)は分岐ブレーカ16aのフレーム枠の両側面に磁気シールド203,204を施した場合と、(c)は電流センサ17aを覆うように磁気シールド205を施した場合と、(d)は分岐ブレーカ16aのフレーム枠の内面全部に磁気シールド206を施した場合とを示す。なお、分岐ブレーカ16b,・・・,16nについても、分岐ブレーカ16aと同様の方法で磁気シールドを施すことができる。
【0053】
図7に示すように、分岐ブレーカ16aでは、フレーム枠の一部または全部に、例えば磁気シールドシートが取り付けられることによって、上述した磁気シールド203,204,205,206が施される。磁気シールドシート以外に、鉄やケイ素鋼板など磁性体の薄板で構成することも可能である。なお、磁気シールドシートの位置は、電流センサに外乱の磁気ノイズが発生しないようにすることができれば、上述した例に限られない。
【0054】
図8は、磁気シールドが施された分岐ブレーカ16aの例を示す斜視図であって、(a)は分岐ブレーカ16aのフレーム枠の一側面に磁気シールド203を施した場合と、(b)は分岐ブレーカ16aのフレーム枠の両側面に磁気シールド203,204を施した場合とを示す。なお、図8の(a)は図7(a)に表示された例を示し、(b)は図7(b)に表示された例に対応して示している。
【0055】
図8に示すように、分岐ブレーカ16aでは、フレーム枠の一側面または両側面に、磁気シールド203,204が施されることによって、シールド効果が得られる。
【0056】
以上説明したように、本実施形態の分電盤100Aによれば、電流センサと磁気シールドを分岐ブレーカ内に設けることができる。
【0057】
次に、電流センサ200の変形例1,2,3について説明する。
(変形例1)
図9(A)は、図3の電流センサ200の変形例1を示す図である。図9(A)に示す電流センサ600は、ICチップ630を除いて電流センサ200と同一である。ICチップ630は、支持部220Aに配置した際に、第1の磁電変換素子630Aが、平面視において、電流経路210AのU字形の内側に配置されるとともに、第2の磁電変換素子630Bが、電流経路210AのU字形の外側であって、電流経路210Aに近接する位置に配置されるように設計されている。図10に、図9(A)のX-X線に沿った断面図を示す。1次導体210に電流が流れることにより発生する第1の磁電変換素子630Aの位置の磁束密度をB1s、第2の磁電変換素子630Bの位置の磁束密度をB2sとする。外来磁気ノイズにより発生する磁束密度をそれぞれB1n、B2nとすると、第1の磁電変換素子630A、第2の磁電変換素子630Bの出力Vo1、Vo2は、
Vo1=k1×(B1s+B1n)+Vu1
Vo2=k2×(-B2s+B2n)+Vu2
となる。但し、k1、k2は各々の磁電変換素子の感度係数、Vu1、Vu2は各々の磁電変換素子のオフセット値である。
【0058】
ここで、双方の磁電変換素子の特性にばらつきが極めて小さく、k1=k2=k、Vu1=Vu2が成り立つとし、
双方の磁電変換素子の距離が近いのでB1n=B2nと近似したときのVo1−Vo2の値を出力電圧Voとすると、
Vo=Vo1-Vo2=k×(B1s+B2s)
となり、外来磁場によるノイズが消えるとともに、U字形内側の第1の磁電変換素子630Aのみの場合よりも大きな信号が得られるので、電流センサの感度向上につながる。
【0059】
また、図9(B)に第1の実施形態に係る電流センサ200のもう一つの変形例として磁電変換素子を3つ用いた例を示す。電流センサ700は、ICチップ730を除いて電流センサ200と同一である。ICチップ730は、支持部220Aに配置された際に、第1の磁電変換素子730Aが平面視において、電流経路210AのU字形の内側に配置されるとともに、第2の磁電変換素子730B及び第3の磁電変換素子730Cが、電流経路210AのU字形の両端の外側であって、電流経路210Aに近接する位置に配置されるように設計されている。1次導体210に電流が流れることにより発生する第3の磁電変換素子730Cの位置の磁束密度をB3sとし、外来磁気ノイズにより第3の磁電変換素子730Cの位置で発生する磁束密度をB3nとする。
ここで、3つの磁電変換素子の特性にばらつきが極めて小さく、k1=k2=k3=k、Vu1=Vu2=Vu3が成り立つとし、3つの磁電変換素子の距離が近いのでB1n=B2n=B3nと近似して、Vo1−(Vo2+Vo3)/2の値を出力電圧Voとすると、
Vo=Vo1-(Vo2+Vo3)/2=k×(B1s+(B2s+B3s)/2)
となり、2つの場合と同様に外来磁場によるノイズが消え電流センサの感度も向上するとともに、1次導体210とICチップ730の位置関係が3つの磁電変換素子の配置方向にズレが生じた場合でも、出力Voの変動レベルを極力抑えることができるようになる。
【0060】
また、電流経路の構成は、磁電変換素子を囲むように構成することができれば、電流経路210AにはU字形電流経路の一形態であるコの字形の電流経路を使用しても良い。
【0061】
(変形例2)
図11は、電流センサ200の変形例2を示す図である。図11に示す電流センサ800が、図3の電流センサ200と異なるのは、ICチップ230が側面視において支持部220Aから突出する代わりに、信号端子側部材220の支持部820Aが、切欠部820A’を有し、電流経路210Aが、平面視において切欠部820A’部分に突出している点である。したがって、ICチップ230は突出しないものの、平面視において、ICチップ230と電流経路210Aは重複する。図12(A)に側面図、図12(B)に断面図を示す。第1の実施形態と比較して側面視において高さの異なる電流経路210Aが、平面視において切欠部820A’に突出しているため、ICチップ内の磁電変換素子の配置に自由度が生まれ、ICチップのより内側に磁電変換素子を配置できるようになるため、応力起因によるオフセットへの影響を低減することができる。また支持部とICチップとの接着面積が増えるためICチップをより安定に支持することが可能となり、製造工程上余裕のある構成といえる。
【0062】
なお、第1の実施形態と同様に、ICチップ230を、磁電変換素子を2つ有するICチップ630や磁電変換素子を3つ有するICチップ730とすることもできる。
【0063】
(変形例3)
図13は、電流センサ200の変形例3を示す図である。図13に示す電流センサ300では、図3の電流センサ200と異なり、ホール素子等の磁電変換素子330AがICチップ330に含まれておらず、別個に設けられている。この実施形態の電流センサ300は、ICとのハイブリッド構造で構成されている。
【0064】
支持部220Aは、U字形の開口部210Cに挿入された第1の支持部220A’と、第1の支持部220A’に隣接し、開口部210Cに挿入されていない第2の支持部220A”とを有する。第1の支持部220A’には、電流経路210Aを流れる電流から誘導される磁束を検出する磁電変換素子330Aが配置され、第2の支持部220A”には、磁電変換素子330Aからの出力信号を処理するためのICチップ330が配置される。磁電変換素子330Aは、平面視において電流経路210AのU字形の内側に配置されている。
【0065】
変形例3の電流センサ300は、磁電変換素子330Aのみが配置され、電流経路210Aの開口部210Cに挿入される第1の支持部220A’と、信号処理用のICチップ330が配置され、開口部210Cに挿入されない第2の支持部220A”とに分け、磁電変換素子330Aとして、InSb、InAs、GaAs等の感度の高い化合物半導体の磁気センサを用いる。これにより、電流経路210Aを流れる電流の測定精度を向上させることができる。
【0066】
加えて、開口部210Cに挿入する必要があるのはICチップ330ではなく磁場変換素子330Aのみであるため、U字形の電流経路210Aを小さく、且つ全長を短くすることができる。電流経路210Aが小型化すると、U字形の内側における磁場集中が高まり、電流の検出感度向上が得られるうえ、発熱の影響も軽減することが可能である。
【0067】
変形例3の電流センサ300では、一次導体210と磁電変換素子330Aが電流センサ300の上面から見て二次元的に重なる配置になっておらず、一次導体210と磁電変換素子330Aの間隔が広がるため、一次導体210に対してより高い耐圧を確保することができる。また微細プロセスからなるICチップ330が一次導体210から更に遠くに離れているため、一次導体210から発生するノイズの影響を低減することができ、しかも一次導体210に電流が流れることによる発熱の影響も小さくなることから信頼性が更に高まる。そのため、電流センサ300は、小型分電盤を実現するのにより適した電流センサである。
【0068】
以上、実施形態1,2および変形例1〜3を詳述してきたが、具体的な構成は上述の例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更や、他の用途への適用なども含まれる。
【0069】
例えば、電流センサ200は、直流電流および交流電流の計測が可能な構成を例にとって説明したが、例えば、直流電流のみ、または、交流電流のみの計測が可能な構成としてもよい。あるいは、電流センサ200は、ホールセンサ以外の磁気センサを用いて構成するようにしてもよい。
【0070】
分電盤100,100Aは、主幹ブレーカ11を含んでいる場合を例にとって説明したが、主幹ブレーカ11を有しないで構成してもよい。
【符号の説明】
【0071】
11 主幹ブレーカ
13a〜13n,16a〜16n 分岐ブレーカ
14a〜14n,17a〜17n,200,300,600 電流センサ
15a〜15g 演算装置
100,100A 分電盤
210 一次導体
210A 電流経路
220 信号端子側部材
220A 支持部
220B リード端子
220C 段差部
230 ICチップ
230A 磁電変換素子
630 ICチップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主幹ブレーカの二次側で分岐し、前記主幹ブレーカと接続可能に構成された複数の分岐ブレーカと、
前記複数の分岐ブレーカのうち、所定数の分岐ブレーカの各々に取り付けられた複数の電流センサと、
前記各電流センサで検出された値に基づいて、前記各分岐ブレーカの負荷側の電力の使用状態を演算する演算装置と、
を含むことを特徴とする分電盤。
【請求項2】
前記電流センサは、直流電流および交流電流の計測が可能であることを特徴とする請求項1に記載の分電盤。
【請求項3】
前記電流センサが、周囲温度信号も出力することを特徴とする請求項1または2に記載の分電盤。
【請求項4】
前記電流センサは、磁気センサを用いて構成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の分電盤。
【請求項5】
前記電流センサは、前記分岐ブレーカに組み込まれていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の分電盤。
【請求項6】
前記分岐ブレーカは、スイッチを有しており、前記電流センサは、前記スイッチの作動方向とは直交するように取り付けられることを特徴とする請求項5に記載の分電盤。
【請求項7】
前記電流センサの厚さが0.5mm以上〜3mm以下であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の分電盤。
【請求項8】
前記電流センサは、磁性体コアを有さないことを特徴とする請求項4ないし7のいずれかに記載の分電盤。
【請求項9】
前記電流センサは、電流センサ用基板、および、ICチップを備え、
前記電流センサ用基板は、U字形の電流経路を有する一次導体と、磁電変換素子が内蔵された信号処理ICを支持するための支持部およびリード端子を有する信号端子側部材とを備え、前記電流経路は、平面視において前記支持部と重複しないように前記支持部に近接して配置され、側面視において前記支持部と高さが異なる電流センサ用基板とを有し、
前記ICチップは、前記支持部に配置され、前記電流経路を流れる電流から生じる磁束を検出する磁電変換素子を有することを特徴とする請求項4ないし8のいずれかに記載の分電盤。
【請求項10】
前記電流センサは、化合物半導体を磁電変換素子に用い、信号処理用のICとのハイブリッド構造で構成し、前記電流センサ用基板は、U字形の電流経路を有する一次導体と、磁電変換素子を支持するための第1の支持部と信号処理ICを支持するための第2の支持部およびリード端子を有する信号端子側部材とを備え、前記電流経路は、平面視において前記第1の支持部と重複しないように前記第1の支持部に近接して配置された電流センサ用基板とを有し、前記電流経路を流れる電流から生じる磁束を検出する磁電変換素子を有することを特徴とする請求項4ないし8のいずれかに記載の分電盤。
【請求項11】
前記複数の分岐ブレーカが連結して取り付けられる場合、隣接する分岐ブレーカ内の各電流センサは、取り付け位置が互いに異なるように配置されていることを特徴とする請求項4ないし10のいずれかに記載の分電盤。
【請求項12】
前記分岐ブレーカは、フレーム枠で構成されており、前記フレーム枠に磁気シールド処理が施されていることを特徴とする請求項4ないし11のいずれかに記載の分電盤。
【請求項13】
前記演算装置は、ADコンバータ回路を備えることを特徴とする請求項1ないし12のいずれかに記載の分電盤。
【請求項14】
前記演算装置は、前記電流センサの温度特性データを保持するメモリを備え、前記温度特性データに基づいて、前記電流センサの出力を補正するように構成されている請求項1ないし13のいずれかに記載の分電盤。
【請求項15】
前記演算装置は、前記電流センサに電源を供給することを特徴とする請求項1ないし14のいずれかに記載の分電盤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−99020(P2013−99020A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−237107(P2011−237107)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(303046277)旭化成エレクトロニクス株式会社 (840)
【Fターム(参考)】