説明

切り替えバルブ

【課題】多様な温度下においてシャフトの調整や交換を行うことなく切り替えを行うことのできる、切り換えバルブを提供する。
【解決手段】上記目的を達するため、バルブ本体2と、このバルブ本体に挿入され、回動することにより材料の流路を切り換える切り換えシャフト3とを備え、切り換えシャフトには、材料が流通するための流通路4aと、切り換えシャフトの膨張を逃がすための切欠き4bとが設けられている、切り換えバルブ1を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、材料を容器に充填するための切り換えバルブに関するものである。
【背景技術】
【0002】
化粧品などの製造工程において、材料を所定の量だけ容器に充填するための充填機には、切り換えバルブが使用されている。
【0003】
図3は、このような充填機における切り換えバルブの作用を示す図である。
【0004】
図3(a),(b)に示すように、切り換えバルブ101は、バルブ本体102と、このバルブ本体102に対し水平方向、図において奥行き方向に挿入される切り換えシャフト103とを有する。
【0005】
バルブ本体102は、上側に上部開口102a、側面側に側部開口102b、下側に下部開口102cを有する。それぞれの開口はバルブ本体102の中心で連通しており、この連通部分に切り換えシャフト103の長さ方向中心部が位置する。
【0006】
上部開口102aには、材料を供給するための漏斗状のホッパー104が連結されている。このホッパー104内に材料を流し込むことで、材料がバルブ本体102内に供給される。
【0007】
側部開口102bには、ピストン機構105が接続されている。このピストン機構105は、ピストンとシリンダーとの作用により、材料を吸引し、吐出する。
【0008】
下部開口102cからは、材料が吐出され、容器106に供給される。
【0009】
切り換えシャフト103は、バルブ本体102に穿設された切り換えシャフト挿通孔102dに挿通される。上部開口102a、側部開口102b、下部開口102cは、この切り換えシャフト挿通孔102dを介して連通している。切り換えシャフト103は、切り換えシャフト挿通孔102dの内径とほぼ同じ、厳密には切り換えシャフト挿通孔102dの内径より0.01mmほど小さい外径を有し、そのため、切り換えシャフト103が切り換えシャフト挿通孔102dに挿通された状態においては、原則的には、各開口同士は連通しない。
【0010】
切り換えシャフト103は、軸方向中央部分に、流通路103aを備える。流通路103aは、切り換えシャフト103の表面に彫られた溝状の部分であり、全周の四分の一程度の角度にわたり設けられている。切り換えシャフト103を回転させることにより、バルブ本体102に対するこの流通路103aの位置が変わる。
【0011】
図3(a)に示すように、流通路103aが上部開口102aと側部開口102bとに対して開いている場合には、上部開口102aと側部開口102bとが互いに連通し、下部開口102cは閉じた状態となる。この状態でピストン機構105を吸引方向に作動させると、ホッパー104から供給された材料がピストン機構105内に供給される。
【0012】
続いて、図3(b)に示すように、切り換えシャフト103を図において時計回りに90度程度回転させ、流通路103aが側部開口102bと下部開口102cとに対して開いている場合には、側部開口102bと下部開口102cとが互いに連通し、上部開口102aは閉じた状態となる。この状態でピストン機構105を吐出方向に作動させると、ピストン機構105内から材料が吐出し、下部開口102cから流出して、容器106に供給される。以上のような構造は、特許文献1に示されているコックの構造をさらに発展させたものである。また、図3(c),(d)に示すような三方切り換え切り換えシャフト113を備えた切り換えバルブ111もある。この切り換えバルブ111は、流通路が切り換えシャフトをT字状に貫通しており、側部に設けられた側部開口112cから材料を吐出する。
【0013】
以上のような切り換えバルブ101によれば、ホッパー104から供給された材料を常に定量ずつ容器106に供給することができる。切り換えバルブ101は、バルブ本体102及び切り換えシャフト103を共にステンレス等の金属で形成することができる。
【0014】
一方、化粧品に使われる、いわゆるラメなどの金属片を含む材料に対して使用する際には、この金属片がバルブ本体102と切り換えシャフト103との間隙に入り込んで動きが悪くなる、すなわちカジるのを防ぐため、切り換えシャフト103に、テフロン(登録商標)やPEEK(ポリエーテル・エーテル・ケトン)等の樹脂素材が利用される。樹脂素材はある程度の弾性を備えるため、金属片がバルブ本体102と切り換えシャフト103との間隙に入り込んでも動きが悪くなることがなく、かつ、バルブ本体102と切り換えシャフト103との密着性を保つことができる。
【0015】
また、口紅やファンデーションなどの、常温下において固体である材料に対してこの切り換えバルブ101を使用する場合には、それらの材料が液体化する程度の温度、例えば摂氏80度に加熱した状態で使用される。加熱により、切り換えシャフト103は径方向に膨張する。特に樹脂素材の場合は膨張率が大きく、具体的には鉄の5〜10倍ほど膨張率が大きいため、常温下においてバルブ本体102と切り換えシャフト103とが適度に密着するように構成されていても、加熱すると切り換えシャフト103の膨張により、密着が過度になり、切り換えシャフト103が動かなくなることが考えられる。そのため、切り換えシャフト103は、使用時と同様の温度下においてバルブ本体102との密着度が最適になるよう、調整する必要がある。
【0016】
しかしながら、加熱した状態で切り換えシャフト103の外径を調整するための削りだしを行うのは非常に困難である。また、バルブ本体102を複数の材料について使用する場合には、使用する材料によって使用時の温度が異なり、厳密には、使用時の温度ごとに、これに合わせた切り換えシャフト103を用意しなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特願平4−218681号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は、以上のような課題に鑑みてなされたものであり、多様な温度下においてシャフトの調整や交換を行うことなく切り替えを行うことのできる、切り換えバルブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の切り換えバルブは、上記目的を達するため、バルブ本体と、このバルブ本体に挿入され、回動することにより材料の流路を切り換える切り換えシャフトとを備え、切り換えシャフトには、材料が流通するための流通路と、切り換えシャフトの膨張を逃がすための切欠きとが設けられている。
【0020】
また、切り換えシャフトは、金属製の軸部と、これを包囲する樹脂製の筒部とからなり、前記流通路及び前記切欠きは、前記筒部に設けられている。
【発明の効果】
【0021】
本発明の切り換えバルブによれば、加熱により切り換えシャフトが膨張した場合であっても、この膨張が切欠きにより吸収されるから、外径がほとんど変化せず、シャフトの調整や交換を行うことなく切り替えを行うことができる。
【0022】
また、切り換えシャフトが、金属製の軸部と、これを包囲する樹脂製の筒部とからなる場合には、筒部の膨張が主に円周方向への膨張となり、切欠きによってこの膨張を吸収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態の切り換えシャフトを示す図である。(a)は平面図、(b)は左側面図、(c)は正面から見た断面図、(d)は右側面図、(e)軸部を示す平面図である。
【図2】本発明の実施形態の切り換えバルブを示す図である。(a)は平面図、(b)は左側面図、(c)は正面図、(d)は右側面図である。
【図3】従来例及び本発明の実施形態の切り換えバルブの動作を示す説明図である。(a)及び(b)は第一の形態、(c)及び(d)は第二の形態である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施形態の切り換えバルブ1は、図2に示すバルブ本体2に、図1に示す切り換えシャフト3を挿入して成る。切り換えバルブ1において、材料を容器に供給する手順については、従来例と同様であるから、適宜説明を省略する。
【0025】
図2に示すように、バルブ本体2は、上側に上部開口2a、側面側に側部開口2b、下側に下部開口2cを有し、奥行き方向に切り換えシャフト挿通孔2dが穿設されている。それぞれの開口はバルブ本体2の中心で連通しており、切り換えシャフト挿通孔2dに切り換えシャフト3が挿通された際には、この連通部分に切り換えシャフト3の長さ方向中心部が位置する。バルブ本体2の構造は従来のものと同様であってよい。なお、バルブ本体2を固定するためのボルト孔や、ヒーターを通すためのヒーター孔は図示を省略する。
【0026】
図1(b),(c)に示すように、切り換えシャフト3は中空の筒状構造である筒部4と、図1(e)に示す、この筒部4の筒内に嵌合する軸部5とからなる。軸部5は筒部4の全長より短いが、切り換えシャフト3のうちバルブ本体2内に挿入される部分以上の長さであり、膨張率の小さい素材、例えばステンレスで形成される。
【0027】
図1(a),(b),(c)に示すように、筒部4は、軸方向中央部分の表面に、流通路4aを備える。流通路4aは、筒部4の表面に円周方向に沿って彫られた溝状の部分であり、全周の四分の一程度の角度にわたり設けられている。切り換えシャフト3を回転させることにより、バルブ本体2に対するこの流通路4aの位置が変わる。
【0028】
図1(b),(c)に示すように、筒部4は、回転軸を挟んで流通路4aと相対する位置に、軸方向に平行にスリット4bが設けられている。このスリット4bは、軸部5のほぼ全長にわたって設けられる。
【0029】
筒部4は、軸部5を挿入した状態で常温下で削り出しを行い、筒部4の外径がバルブ本体2の内径とほぼ同じ、厳密には0.2mmほど小さい程度になるよう、調整される。
【0030】
高温下での使用時、筒部4は膨張するが、筒部4は、無垢の切り換えシャフトに比べて径方向の厚みが小さいから、切り換えシャフト3の径方向への膨張は無視できる程度にしか発生しない。一方、筒部4の円周方向に膨張が発生するが、この膨張はスリット4bの幅が狭くなることにより吸収され、シャフト3の径寸法には影響を及ぼさない。そのため、高温下で使用した場合でも、切り換えシャフト3が膨張によりバルブ本体2に圧着してしまい動かなくなるといった事態が発生しない。
【0031】
また、切り換えシャフト3の外径は軸部5の径と筒部4の厚みにより規定され、軸部5は膨張率が低く、筒部4の厚みの変化は無視できる程度であることから、多様な温度下でも切り換えシャフト3の外径がほぼ変化しない。そのため、使用する温度に合わせて切り換えシャフトを調整したり、別に用意する必要もない。
【0032】
以上のように、本発明の実施形態の切り換えバルブ1によれば、様々な温度下での使用時においても切り換えシャフトの調整や交換を行う必要がなく、工数、材料を減らすことができると共に安全かつ円滑な作業を可能とするものである。本発明は実施形態の態様に限らず、その趣旨を逸脱しない範囲において様々な形態で実施することができる。例えば、切り換えシャフトの流通路は上述のものに限られず、図3の(c),(d)に示すような三方切り換えのものでもよく、複数の流通路を有する多連切り換えシャフトであってもよい。切り換えシャフトに設けられる切欠きは、筒部4におけるスリット4bのような直線状のものに限らず、円周方向の幅が変化することで筒部の円周方向への膨張を吸収することのできるものであればよいから、ジグザグや曲線にしたり、複数にしたり、格子状にすることができる。また、比較的膨張率の小さい樹脂素材を使用する場合には、軸部をなくし、切り換えシャフト全体を樹脂素材で形成することもできる。この場合であっても、切欠きがあることにより、膨張を逃がすことができるから、切り換えシャフトの調整や交換を行う必要がない。
【符号の説明】
【0033】
1 切り換えバルブ

2 バルブ本体

2a 上部開口

2b 側部開口

2c 下部開口

3 切り換えシャフト

4 筒部

4a 流通路

4b スリット

5 軸部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルブ本体と、このバルブ本体に挿入され、回動することにより材料の流路を切り換える切り換えシャフトとを備え、
切り換えシャフトには、材料が流通するための流通路と、切り換えシャフトの膨張を逃がすための切欠きとが設けられている、切り換えバルブ。
【請求項2】
前記切り換えシャフトは、金属製の軸部と、これを包囲する樹脂製の筒部とからなり、前記流通路及び前記切欠きは、前記筒部に設けられている、切り換えバルブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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