説明

切削加工用の回転工具及びルーズトップ並びに基体

【課題】本発明は、切削加工用の回転工具及びルーズトップ並びに基体を提供する。
【解決手段】工具は、中心孔(18)を有する基体(1)と、中心孔に挿入可能な芯出しピン(30)を有するルーズトップから構成され、芯出しピン(30)は、中心孔の筒状の第1の面部分(33)に押される接触面(38)と、中心孔の内側の逃げ面(35)に接触しない逃げ面(39)とを有する。本発明によれば、中心孔の逃げ面(35)は第1の面部分(33)に内接する内接する内接円の半径方向外側にあり、同時に、芯出しピン(30)の逃げ面(39)は少なくとも部分的に接触面(39)に外接する外接円の半径方向外側にある。このようにして、ルーズトップの間違った取り付けのリスクが回避される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切削加工用の回転工具に関する。また、本発明は、回転工具用のルーズトップ及び基体に関する。この種の回転工具は、例えば、鋼、鋳鉄、アルミニウム、チタン、金などの金属の切削加工に適用され得る。また、回転工具は、異なる種類の複合材料の加工に使用され得る。
【背景技術】
【0002】
一体化された無垢の回転工具とは異なり、二つの部品、すなわち、基体と着脱可能に基体に装着される頭部とで構成された穴明け工具及びフライス工具が開発されている。頭部には切れ刃が含まれている。回転工具の大部分は、鋼などの適度の弾性を有する相対的に高価な材料で作られている。一方、小さい部分、すなわち頭部は、良好な切り屑除去能力、良好な加工精度及び長い工具寿命を切れ刃に与える超硬合金、サーメット、セラミックスなどのより硬く、より高価な材料で作られている。言い換えると、頭部は摩耗した後に廃棄される摩耗部分を形成し、一方、基体は何度でも使用可能である。このような切れ刃を備える頭部は”ルーズトップ”と言われ、”ルーズトップ工具”として使用される。
【0003】
ルーズトップ型の回転工具において、幾つかの要件があり、その一つは、ルーズトップが基体に対して正確かつ信頼性良く中心に保持されるということである。したがって、ルーズトップの中心軸と基体の中心軸との間の意図しない偏心は0.01mmを越えるべきではない。他の要件又は使用者からの要求は、間違って取り付けることなく、ルーズトップを素早く容易に取り付け/取り外しできることである。好ましくは、取り付け/取り外しは、基体が機械から取り外されることなく、実施されることである。
【0004】
ルーズトップ型の穴明け工具とフライス工具(シャンクエンドミル)は、特許文献に広く記載されており、設計上のアイデアに基づき多数の異なるカテゴリに分けられている。したがって、ある回転工具は、全体的又は部分的(他の連結部品とともに)に基体に対してルーズトップを芯出しする後方のピンを有するルーズトップを使用する。このカテゴリに属する特許文献1で開示された工具は、ルーズトップドリルを開示し、ルーズトップの後方連結部分が二つの突出部の間で谷部に軸方向から挿入される。突出部の内側は、軸方向に延びるトルク伝達尾根部を含み、トルク伝達尾根部はルーズトップに含まれる連結部分の対応する溝に係合する。一方、後方に突出する芯出ピンは谷部の底面に開口する中心孔に挿入される。ピンと共に、基体内の半径方向のねじ孔に装着されたねじは、基体に対してルーズトップを固定する目的を持っている。芯出ピンは、筒状であり、同様の筒状中心孔に嵌入され、突出部及び連結部品の凹状接触面及び凸状接触面と共に、ルーズトップを芯出しする。しかしながら、芯出ピンと孔との間だけでなく、突出部と連結部品との間での嵌合要件は、製造精度の要件に大きな負担を強いる。さらに、偶然に良い精度が得られても矛盾が生じる。すなわち、ルーズトップの取り付け/取り外しは、芯出ピンを孔の中へ押したり、孔から出したりするのに大きな力を必要とするため、実施することを難しくする。
【0005】
特許文献2及び3により、特許文献1の回転工具の上記不利益を取り除く目的で、ルーズトップの中心軸と同心の半筒状接触面と直径方向に対向する逃げ面とでルーズトップの芯出ピンを形成することが提案され、前者は工具のねじによって基体内の筒状の中心孔の内側に押し付けられる。このようにして、芯出ピンは、孔の断面積より小さい断面積を与えられ、ルーズトップの取り付け/取り外しが、ルーズトップの正確な芯出しが損なわれることなく、容易に実施される。しかしながら、この場合、芯出ピンを孔の中に挿入する際、50%のリスクでルーズトップの間違った取り付けを生じ、ピンの接触面が内側の筒状の孔壁の半分に向かって回転する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】アメリカ合衆国特許番号第6012881号明細書
【特許文献2】欧州特許第2266736号明細書
【特許文献3】欧州特許第2266734号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、特許文献1のルーズトップ工具の問題点だけでなく、特許文献2及び3に記載されているとともに、本願の請求項1及び7の前提部分で規定される工具及びルーズトップについて生じる実際の取り付けの不便さの問題点を取り除くことを目的とする。したがって、本発明の第1の目的は、一方において、ルーズトップが工具の基体に対して正確な方法で芯出しされ、他方において、間違った取り付けのリスクなしに簡単な方法で取り付けることができるルーズトップ工具を提供することである。言い換えると、作業者は、神経を使うことなく、安全な方法で、ルーズトップを唯一の所望の位置に取り付けることができる。別の目的は、ルーズトップの二つの主な構成部品、すなわち、基体とルーズトップとが、それぞれ効率的で経済的方法で製造される、ルーズトップを提供することである。さらに、本発明は、芯出ピンが強く堅固であるルーズトップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によると、少なくとも上記主目的は、請求項1の特徴部分で規定される特徴によって解決される。本発明による工具の好ましい実施形態は従属請求項2〜7に規定されている。
【0009】
第2の態様において、本発明はルーズトップに関する。ルーズトップの特徴は独立請求項8で示されている。一方、その好ましい実施形態は従属請求項9〜12で規定されている。
第3の態様において、請求項13〜15に規定されている基体に関する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】基体とルーズトップが組み立てられた、使用できる状態にあるドリルの形態であるルーズトップ工具の斜視図である。
【図2】基体から分離されたルーズトップを示す部分的に切断された拡大図である。
【図3】基体に含まれる谷部とルーズトップ示す拡大分解図である。
【図4】装着されたルーズトップを有する基体の前部を部分的に示す側面図図である。
【図5】ルーズトップの芯出ピンと接触するロックねじを示す図4のV−V線に沿って切断した断面図である。
【図6】基体から分離されたねじを示す断面図である。
【図7】基体の断面図である。
【図8】ルーズトップの芯出ピンの断面図である。
【図9】中心孔の形状を詳細に示す図である。
【図10】芯出ピンの形状を示す図である。
【図11】中心孔の他の形態を示す基体の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図面において、本発明によるルーズトップ工具は、ツイストドリルの形態で例示されている。ツイストドリルは、基体1と、切れ刃3を有するルーズトップ2とを備えている。図1に示す組み立てられた状態において、工具は、中心軸Cの回りを回転可能であり、回転方向Rに回転する。基体1は前端4と後端5とを含み、前端4と後端5との間で基体の中心軸C1が延びる。前端4から後方において、筒状又は回転対称の包絡面6が延び、二つの切り屑フルート7が凹設されている。この場合、切り屑フルート7はらせん形であるが、直線形とすることもできる。切り屑フルート7は、基体の前部9と前部9より大きな直径を有し、機械(不図示)に装着される後部10とを分けるカラー8まで延びる。
【0012】
ルーズトップ2は、前端11と、後端12と、中心軸C2とを有する。二つの包絡面部分13は中心軸C2に対して同心である。二つの包絡面部分の間で、二つのらせん形の切り屑フルートが、凹面14の形態で凹設されている。凹面14は、ルーズトップが基体に装着されたとき、基体1の切り屑フルート7の延長部を形成する。ルーズトップ2が基体1に対して正しく芯出しされるとき、中心軸C1とC2は組み立てられた工具の中心軸Cに一致する。
【0013】
基体1の主な部分は、本発明とは関係しないため、前部のみがルーズトップ2とともに、拡大された倍率で示されている。
【0014】
図3に示すように、谷部15は基体1の前端に形成され、二つの直径方向に対向する突出部16a,16bと、中心軸C1に対して垂直に延びる平面の形態である中間の底面17とによって範囲が定められる。突出部16a,16bは弾性を有しない突起である。底面17において、基体の軸方向に延びる中心孔18が開口し、ねじ孔19(図5〜7)がそこに連通している。ねじ孔19は、めねじ20であり、基体の半径方向内側へ延び、基体の中心軸C1に対して垂直である中心軸C3と同心である。ねじ孔19は、切り屑フルート7を形成する凹面の間に存在する凹みである。図7において、ねじ孔19は、中心孔18に連通する内側の開口19aと、基体の包絡面6に開口する外側の開口19bとの間で延びる。ねじ孔19のめねじ20は、ねじ22のおねじ21(図6)と協働する。ねじ22は、後端23において、ねじをねじ孔19の中で締め付けたり緩めたりする工具(不図示)用のキーグリップ24を有している。ねじ22の前端は、平らな端面25と、端面25とおねじ21との間で移行面を形成する円錐面26を含んでいる。
【0015】
ルーズトップ2は、二つの平坦な接触面27と、包絡面部分13と、切り屑フルート形成する凹面14とによって、範囲を定められる一つの簡易な頭部である。頭部は、中心軸C2に垂直に延びる平面によって範囲を定められ、ルーズトップの後端12を形成する。前述したように、二つの切れ刃3は、ルーズトップの中心軸C2上に配置された中心先端28に集中する。ルーズトップの接触面27は、突出部16a,16bの内側の平坦面29(図3参照)と協働する。工具の使用状態において、ルーズトップの後端面12は、谷部15の底面17に対して押され、同時にルーズトップの二つの接触面27が突出部内側の支持面29に対して押される。使用状態において、芯出ピン30は中心孔18に挿入され、ルーズトップ2の後端面12から軸方向後方に突出する。ピン30の後方の端面は平坦な端面31によって示され、前端32はルーズトップの一体化された部分であり、ピン30と端面12との間の境界線によって示されている。
【0016】
図5〜10は、芯出ピン30と中心孔18をより詳細に示す。
【0017】
中心孔18の断面形状は、図7及び9に最も良く示されている。孔(孔壁)の内側に含まれている第1の面部分33は、筒状であり、軸方向及び周方向に延長し、芯出ピン30の支持面として機能する。第1の面部分33の筒形状を規定する円は、基体の中心軸C1と一致する中心MP1を有している。第1の面部分33の半径はr1で示され、周方向の延長部は、この場合、180゜よりも大きい円弧角度αの間の二つの境界点34a,34bとによって画定されている。したがって、図7及び9の具体例において、角度αは約230゜になる。さらに、中心孔18の内側において、逃げ面35の形態である面部分を含んでいる。逃げ面35は、第1の面部分33と同様に、軸方向及び周方向に延長する。逃げ面35には、複数の面部分36a,36b、36cが含まれている。面部分36aは凹面であり、この場合筒状であり、面部分36b、36cは、平坦であり、第1の面部分33と面部分36aとの間で移行面を形成する。図9において示されるように、面部分36aの半径は第1の面部分33の半径r1より小さい。二つの面部分36b、36cは、面部分36aの方に収束し、中心孔18は滴下状の断面形状になる。
【0018】
さらに、図9では、S1が第1の面部分33に沿う内接円を示し、第1の面部分33と同じ半径r1を有する。また、対称平面SP1は中心孔18を鏡面対称の二つの部分に分ける。
【0019】
図8及び10は、芯出しピン30の形状を示す。中心孔18と同様に、ピン30は滴下状の断面形状であり、接触面38と逃げ面39とによって範囲が定められる。接触面38は、筒状であり、境界点40a、40bとの間を延び、より詳細には180゜より小さい円弧角度βに沿って延びる。図10の例では、βが約140゜である。
【0020】
しかしながら、βは、180゜より小さいという条件で、140゜より大きくも小さくも成り得る。
【0021】
芯出しピンの逃げ面39において、複数の面部分、すなわち、一対の凸状の移行面41と、接触面38から凸状の後面43の方へ集中する一対の平坦な面部分42が含まれている。図8には、一対の面部分42の間の収束の角度γは約60゜になることが示されている。円の中心MP2は、ルーズトップ2の中心軸C2に一致する接触面38の筒形状を規定する。言い換えると、面38はルーズトップ中心軸と同心であり、半径r2を有する。したがって、筒状の接触面38に沿う外接円S2は半径r2を有する。
【0022】
接触面38は必ずしも筒状である必要はなく、例えば、中心MP2と二つの境界点40a、40bとの間で半径r2が等しい大きさであるという条件で楕円形を有する。
【0023】
本発明の特徴は、図7に示すように、中心孔18の断面積が芯出しピン30の断面積より大きいことであり、芯出しピンの逃げ面39が中心孔の内側の逃げ面35から離れている。また、接触面38の外接円S2が、第1の面部分33の内接円S1の半径r1と同じ半径r2を有することである(すなわち、r1とr2とが等しい)。さらに、一方において、ルーズトップの中心軸、すなわち、図10の中心MP2と、逃げ面39上の点との間の最も大きい半径RD2は外接円S2の半径r2より大きく、他方において、基体の中心軸C1(図9のMP1)と内側の逃げ面35との間の最も大きい半径RD1よりは小さい。結果的に、芯出しピンは中心孔に一つの方法で挿入され、相対的に細い後面43が中心孔の内側の逃げ面35に対向する。間違いによって、ルーズトップが図7の位置に対して180゜回転した位置で保持されると、芯出しピン30が中心孔18に挿入することが出来なくなる。
【0024】
また、芯出しピン30の断面は、対称平面SP2によって鏡面対称の二つの部分に分けられている。
【0025】
図3に最も良く示すように、芯出しピン30、より詳細には、その逃げ面39において、座44は凹んでいると共に底面45を有し、ピンの自由端31から離れている。底面45は、この例において、平坦であり、底面45に対して鈍角を形成する二つの面取り面46a,46bに移行する。二つの面取り面の一つ、すなわち、面取り面46b(図2参照)は、ねじ22に対する停止面を形成する。より詳細には、ねじの円錐面26は面46bに対して押し付け、それによって、芯出しピンか中心孔から出るのを防ぐ。さらに、ねじ前端面25は部分的に、座44の底面45を押し、より詳細には、ピンにトルクを加えて、ルーズトップの二つの接触面が突出部16a,16bの内側の支持面29を押す。このようにピンを回転させるために、ねじは座の底面45に対して傾いている。したがって、図7は、ねじ孔19の中心軸C3とねじ孔18を通る対称面SP1とが、互いに対して角度δをなすことがわかる。図7では、分かりやすくするために、角度δが誇張されている(約20゜)が、実際には、2〜5゜に制限される。
【0026】
好ましい実施形態において、芯出しピンの後面43は自由端となる(座44を除き、ルーズトップの後端面まで延びる)。このようにして、芯出しピン30は、間違って中心孔18に挿入されることがなくなる。したがって、正しくない向きのルーズトップは、芯出しピンの自由端が中心孔に挿入されず、作業者は素早く間違いを直すことができる。
【0027】
さらに、図3では、中心孔18の開口が円錐面47であり、孔に正しい向きの芯出しピンを容易に挿入することができる。
【0028】
(発明の作用及び効果)
ルーズトップ2が基体1の谷部15に装着されるとき、ねじ22はねじ孔19から少し抜き出され、中心孔18に突き出さないようにされる。ルーズトップ2が正しい向きにあるとき、ルーズトップ後端面12が谷部の底面17を押し付けるまで、芯出しピン30は中心孔に挿入される。次に、ねじ22が締結され、前述したように、少しの回転動作(例えば、2〜5゜)がルーズトップに作用し、ルーズトップの二つの接触面27が突出部16a,16bの内側の支持面29に押される。同時に、ねじ22の前側の円錐面26が座44の後側の面取り面46bにより押される。このようにして、軸方向の力がルーズトップに働き、ルーズトップの端面12が、機械的に谷部の底面17により押される。この状態で、ルーズトップは固定され、使用できる状態となる。穴明け加工中、突出部16a,16bを介してルーズトップに作用するトルクは、接触面27により押される突出部を保持するのに十分な強さであり、ねじの助けを必要としない。さらに、谷部からルーズトップが外れることを防止する(例えば、穴明けされた孔からドリルを抜き出すことに関して)ことに加えて、ねじがルーズトップをクランプする目的を有し、加工時に、ルーズトップはクランプされた位置から動かない。
【0029】
ルーズトップ2が交換されるとき、ねじ孔19からねじ22を少し緩める簡単な方法で、芯出しピン30は中心孔18から容易に引っ張り出される。中心孔18の断面積が芯出しピン30の断面積より大きいため、これは、摩擦抵抗なしで行われる。偶然に、正しくない向き、すなわち、芯出しピン30の後面39が中心孔の逃げ面35に対向せずに第1の面部分33に対向している状態のルーズトップを保持している作業者は、少しの長さでさえ、芯出しピンを孔の中へ挿入することが難しくなる。
【0030】
安全な方法でルーズトップを間違った取付のリスクを取り除く本発明に加えて、本発明は、ルーズトップの取り付けと取り外しを素早く容易な方法で実施することができると同時に、基体に対してルーズトップの非常に精度の高い芯出しを行うことができる。
【0031】
半径方向のねじによって、ルーズトップの簡単な軸方向のロックを行う本発明の他の利点は、ルーズトップの接触面と突出部の内側の協働する支持面(第1の面部分)とが高精度で簡単な方法で作られるということである。特に、基体の谷部が、一つの簡単な加工、例えば、スリットカッター又は研削砥石による加工で形成される。さらに、ルーズトップの芯出しピンは、たくさんの材料(超硬合金)が受け入れられるため、より詳細には、芯出しピンの逃げ面が支持面の円の半径方向外側に配置されている逃げ面に対応するので(芯出しピンの断面積の減少を必要とする円筒状の中心孔に反して)、非常に強い材料で作られる。
【0032】
図11は、前述した実施形態において、滴下状でない孔形状の中心孔18を有する基体1を示している。したがって、凹んでいる筒状の面部分36aと共に逃げ面35に含まれる二つの平坦な面部分36b,36cは、互いに平行である。これは、中心孔18が長円形の断面形状を有し、支持面(第1の面部分)33だけでなく面部分36aが半円形になることを意味する。しかしながら、点線で示された芯出しピン30は、前と同様に、滴下状の断面形状である。孔18の長円形の断面形状は、実際に、内側の逃げ面35と芯出しピン30の外側の逃げ面との間の三日月形状の隙間が、前述した形態よりも、より大きくなることを意味する。
【0033】
(本発明の実施可能な変更)
本発明は、従属する請求項の範囲内で種々の方法で変更可能である。例えば、ルーズトップは、芯出しピンと切れ刃が含まれる前部との間の特別な連結部分で形成可能である。さらに、ねじ孔は、基体の中心軸に対して直角ではなく鋭角に、より詳細には、包絡面から後方/内方に傾斜する方向に配置し、ねじにより芯出しピンに適用される軸方向力の成分を強くすることも可能である。締結ねじの前端面は、実施形態に示された形状とは異なる他の形状にすることもでき、同時に、芯出しピンの座は、効果的にねじと協働するように変更可能である。例えば、後方の停止面は、平面に代えて凹面にすることができる。前述したように、芯出しピンの接触面は、筒状以外の他の形状、例えば長円形にすることもできる。芯出しピン及び中心孔の逃げ面は、請求項に規定される限りにおいて、形状を変えることも可能である。
【符号の説明】
【0034】
1 基体
2 ルーズトップ
3 切れ刃
6 包絡面
7 切り屑フルート
13 包絡面部分
15 谷部
16a,16b 突出部
17 底面
30 芯出しピン
33 第1の面部分(支持面)
34a,34b 境界点
35 逃げ面
36a,36b,36c 面部分
38 接触面
39 逃げ面
40a,40b 境界点
44 座
46a,46b 面取り面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
切削加工用の回転工具であって、
前端(4)及び後端(5)を有する基体(1)であって、前端(4)及び後端(5)の間で第1の中心軸(C1)が延び、第1の中心軸(C1)の回りで所定の回転方向(R)に回転する基体(1)と、
前端(11)及び後端(12)を有するルーズトップ(2)であって、前端(11)及び後端(12)の間で第2の中心軸(C2)が延びるルーズトップ(2)とを備え、
基体(1)の前端(4)が、二つの突出部(16a,16b)と底面(17)とにより範囲を定められ、ルーズトップ(2)の一部分を受け入れる谷部(15)と、ルーズトップから軸方向後方に突出し、谷部(15)の底面(17)に開口する軸方向の中心孔(18)に挿入される芯出しピン(30)とを備え、
基体(1)には芯出しピン(30)と協働するねじ(22)のためのねじ孔(19)が開口し、
中心孔(18)は基体(1)の第1の中心軸(C1)と同心である筒状の第1の面部分(33)を含み、第1の面部分(33)に対してルーズトップ(2)の芯出しピン(30)がねじ(22)によって押され、
ルーズトップ(2)の芯出しピン(30)が、軸方向と周方向にそれぞれ延長し、直径方向に対向する二つの外側の面(38,39)を含み、
第1の面(38)が中心孔(18)の第1の面部分(33)に対して押されると共に軸方向に延びる二つの境界点(40a,40b)の間を接線方向に延びる接触面(38)を形成し、二つの境界点(40a,40b)はルーズトップ(2)の第2の中心軸(C2)と一致する中心(MP2)を有する仮想的な外接円(S2)に沿って配置され、二つの境界点(40a,40b)の間で円弧角(β)が180゜より小さく、
第2の面(39)は、芯出しピン(30)の断面積が中心孔の断面積より小さいために、中心孔(18)の内側と接触しない逃げ面(39)を形成する、回転工具において、
外接円(S2)が、中心孔(18)の筒状の第1の面部分(33)に沿う内接円(S1)の半径(r1)と等しい大きさの半径(r2)を有し、ルーズトップ(2)の第2の中心軸(C2)と芯出しピン(30)の逃げ面としての後面(43)上の点との間の半径方向の距離(RD2)が、外接円(S2)の半径(r2)より大きく、基体(1)の第1の中心軸(C1)と中心孔(18)の第1の面部分(33)に対向する逃げ面(35)との間の対応する半径(RD1)より小さく、所定の向き以外の他の向きで芯出しピン(30)を中心孔(18)に挿入できなくする、ことを特徴とする回転工具。
【請求項2】
芯出しピン(30)の接触面(38)と逃げ面(39)が、芯出しピン(30)の自由端(31)から延び、芯出しピン(30)が中心孔(18)に間違った向きで挿入されないようにする、ことを特徴とする請求項1に記載の回転工具。
【請求項3】
芯出しピン(30)の逃げ面(39)において、芯出しピン(30)の自由端(31)から離れた位置に座(44)が凹設され、座(44)が、底面(45)と、座(44)の軸方向の後方に設けられねじ(22)に当接する停止面(46)とを有する、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の回転工具。
【請求項4】
座(44)の底面(45)と停止面(46)とが、平面であり、互いに鈍角をなす、ことを特徴とする請求項3に記載の回転工具。
【請求項5】
基体(1)の中心孔(18)が、くさび形で収束する二つの面部分を含む逃げ面によって、滴下状の断面形状を有する、ことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の回転工具。
【請求項6】
基体(1)の中心孔(18)が、第1の面部分(33)から共通の移行面に向かう方向で互いに平行な二つの面部分を含む逃げ面によって、長円形の断面形状を有する、ことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の回転工具。
【請求項7】
ルーズトップ(2)の芯出しピン(30)が、接触面(38)から共通の後面(43)に向かう方向に収束する二つの面部分(42)を含む逃げ面(39)によって、滴下状の断面形状を有する、ことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の回転工具。
【請求項8】
切削加工用の回転工具のルーズトップであって、
前端(11)及び後端(12)を備え、前端(11)及び後端(12)の間で第2の中心軸(C2)が延び、
軸方向後方に突出する芯出しピン(30)が、軸方向及び周方向にそれぞれ延長し、直径方向に対向する二つの外側の面(38,39)を含み、
第1の面(38)が、第2の中心軸(C2)に一致する中心(MP2)を有する仮想的な外接円(S2)上に配置された軸方向に延びる二つの境界点(40a,40b)の間を周方向に延びる接触面(38)を形成し、二つの境界点(40a,40b)の間で円弧角(β)が180゜より小さく、第2の面(39)が逃げ面(39)を形成する、回転工具において、
第2の中心軸(C2)と逃げ面(39)上の点との間の半径方向の距離(RD2)が、外接円(S2)の半径(r2)より大きい、ことを特徴とする回転工具。
【請求項9】
芯出しピン(30)の接触面(38)と逃げ面(39)とが、ピンの自由端(31)から軸方向前方に延びている、請求項8に記載のルーズトップ。
【請求項10】
芯出しピン(30)の逃げ面(39)において、芯出しピン(30)の自由端(31)から離れた位置に座(44)が凹設され、座(44)が、底面(45)と、座(44)の軸方向の後方に設けられねじ(22)に当接する停止面(46)とを有する、ことを特徴とする請求項8又は9に記載のルーズトップ。
【請求項11】
座(44)の底面(45)と停止面(46)とが、平面であり、互いに鈍角をなす、ことを特徴とする請求項10に記載のルーズトップ。
【請求項12】
芯出しピン(30)が、接触面(38)から共通の後面(43)に向かう方向に収束する二つの面部分(42)を含む逃げ面(39)によって、滴下状の断面形状を有する、ことを特徴とする請求項8〜11の何れか1項に記載のルーズトップ。
【請求項13】
切削加工用の回転工具の基体であって、
包絡面(6)と前端(4)及び後端(5)を備え、前端(4)及び後端(5)の間で第1の中心軸(C1)が延び、
基体(1)の前端(4)が、二つの突出部(16a,16b)と底面(17)とにより範囲を定められる谷部(15)を含み、谷部(15)には軸方向に延びる中心孔(18)が開口し、ねじ(22)用の孔(19)が中心孔(18)と包絡面(6)との間を延びる、基体において、
中心孔(18)が、筒状の第1の面部分(33)であって、第1の中心軸(C1)と同心であり、所定の半径(r1)を有する円(S1)が内接する筒状の第1の面部分(33)と、内接円(S1)の外側の対向する逃げ面(35)とによって範囲を定められ、ことを特徴とする基体。
【請求項14】
中心孔(18)が、凹状の面部分(36a)の方に収束する二つの面部分(36b,36c)を含む逃げ面(35)によって、滴下状の断面形状を有する、ことを特徴とする請求項13に記載の基体。
【請求項15】
中心孔(18)が、第1の面部分(33)から対向する半円の面部分(36a)の方へ互いに平行に延びる二つの面部分(36b,36c)を含む逃げ面によって、長円形の断面形状を有する、ことを特徴とする請求項13に記載の基体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−206906(P2011−206906A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−68282(P2011−68282)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(505277521)サンドビック インテレクチュアル プロパティー アクティエボラーグ (284)
【Fターム(参考)】