説明

切削工具、切削装置、及びそれを用いた切削加工物の製造方法

【課題】 優れた穴加工性と優れた耐折損性とを兼ね備えた切削工具を提供する。
【解決手段】 円柱状の本体部10と、 本体部10の回転軸S方向の一端部1aに位置しているとともに第1切刃11aを有する第1切削部11と、 本体部10の回転軸S方向の他端部1bに位置しているとともに第2切刃12aを有する第2切削部12と、 本体部10の第1切削部11と第2切削部12との間に位置しているシャンク部13と、を備え、 本体部10の回転軸S方向の中点Cを通るとともに回転軸Sに直交する基準線Lを基準にして反転したときに、反転前の第1切刃11aと反転後の第2切刃12aとが異なる位置に存在する切削工具1とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切削工具、切削装置、及びそれを用いた切削加工物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、特許文献1には、両端部に切刃が形成された刃部を有するスローアウェイ式リーマーであって、刃部の端部を刃部とは別体であるシャンク部に固定する構成を有するものが開示されている。
【0003】
しかしながら、このように刃部が別体のシャンク部に固定されているリーマーにおいて、一端から他端に渡る形状が対称であるため、一端側の刃部を用いて被削材を切削加工する際に、他端側が固定端となっているため、自由端である一端側の刃部のブレが増幅して、被削材の穴の仕上げ精度が低減する可能性があった。また、シャンク部で固定される他端側の刃部に切削力が加わることによって、他端側の刃部が損傷するおそれもあった。
【0004】
そのため、優れた穴加工性と優れた耐折損性とを兼ね備えた切削工具、切削装置及びこれを用いた切削加工物の製造方法が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平1−84920号公報
【発明の概要】
【0006】
本発明の第1の実施形態に係る切削工具は、 円柱状の本体部と、 前記本体部の回転軸方向の一端部に位置しているとともに第1切刃を有する第1切削部と、 前記本体部の回転軸方向の他端部に位置しているとともに第2切刃を有する第2切削部と、 前記本体部の前記第1切削部と前記第2切削部との間に位置しているシャンク部と、を備え、 前記本体部の回転軸方向の中点を通るとともに前記回転軸に直交する基準線を基準にして反転したときに、反転前の前記第1切刃と反転後の前記第2切刃とが異なる位置に存在する。
【0007】
本発明の第2の実施形態に係る切削工具は、 円柱状の本体部と、 前記本体部の回転軸方向の一端部に位置しているとともに第1切刃および前記第1切刃に対応する第1溝を有する第1切削部と、 前記本体部の回転軸方向の他端部に位置しているとともに第2切刃および前記第2切刃に対応する第2溝を有する第2切削部と、 前記本体部のうち前記第1切削部と前記第2切削部との間に位置しているシャンク部と、を備え、側面視において、前記第1溝の形状と前記第2溝の形状とが異なる。
【0008】
本発明の一の実施形態に係る切削装置は、 上記の切削工具と、 前記切削工具の前記シャンク部を固定するホルダと、を備え、 前記第1切削部および前記第2切削部のいずれか一方が前記ホルダから突出している。
【0009】
本発明の一の実施形態に係る切削加工物の製造方法は、 上記の切削装置を、前記ホルダの回転軸まわりに回転させる工程と、 回転している前記切削装置の前記第1切削部および前記第2切削部のいずれか一方を、被削材に接触させる工程と、 前記被削材と前記切削装置とを相対的に離隔させる工程と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明の各実施形態に係る切削工具によれば、本体部の回転軸方向の中点を通るとともに回転軸に直交する基準線を基準にして反転したときに、反転前の第1切削部の第1切刃と反転後の第2切削部の第2切刃とが異なる位置に存在することから、第1切削部と第2切削部との間で生じ得るブレの増幅を抑制あるいは低減することができるため、優れた穴加工性と優れた耐折損性とを兼ね備えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る切削工具を示す側面図である。
【図2】図1の切削工具を示す図であり、(a)は第1切削部を拡大して示す側面図、(b)は第1切削部側の先端図、(c)は第2切削部側の先端図、(d)は図1のX−X線で切断した断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る切削装置を示す側断面図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る切削工具を示す図であり、(a)は側面図、(b)は第1切削部側の先端図、(c)は第2切削部側の先端図、(d)は(a)のY−Y線で切断した断面図、(e)は(a)のZ−Z線で切断した断面図である。
【図5】本発明の他の実施形態に係る切削工具を示す図であり、(a)は一端部側と他端部側とで溝の捩れ方向が異なるリーマーを示す側面図、(b)は一端部側と他端部側で径が異なるリーマーを示す側面図、(c)は一端部側にドリルを有し他端部側にリーマーを有する切削工具を示す側面図である。
【図6】本発明の第1の実施形態に係る切削加工物の製造方法を示す図であり、(a)は切削装置を、ホルダの回転軸まわりに回転させる工程を示す図、(b)回転している切削装置の第1切削部を被削材に接触させる工程を示す図、(c)被削材と切削工具とを相対的に離隔させる工程を示す図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る切削加工物の製造方法を示す図であり、(a)は切削装置を、ホルダの回転軸まわりに回転させる工程を示す図、(b)回転している切削装置の第1切削部を被削材に接触させる工程を示す図、(c)被削材と切削工具とを相対的に離隔させる工程を示す図である。
【図8】本発明の第3の実施形態に係る切削加工物の製造方法を示す図であり、(a)は切削装置を、ホルダの回転軸まわりに回転させる工程を示す図、(b)回転している切削装置の第1切削部を被削材に接触させる工程を示す図、(c)被削材と切削工具とを相対的に離隔させる工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<切削工具>
(第1の実施形態)
以下、本発明に係る切削工具の第1の実施形態について、リーマーを例にとって、図1及び図2を参照して詳細に説明する。
【0013】
本実施形態の切削工具1は、図1に示すように、本体部10の一端部1a側と他端部1b側のそれぞれをリーマーとして用いて被削材100を切削加工することができる、所謂両頭リーマー1(以下、単にリーマーとも言う。)である。そして、リーマー1は、円柱状の本体部10と、本体部10の回転軸S方向の一端部に位置しているとともに第1切刃11aを有する第1切削部11と、本体部10の回転軸S方向の他端部に位置しているとともに第2切刃12aを有する第2切削部12と、本体部10の前1切削部11と第2切削部12との間に位置しているシャンク部13とを備えている。また、図1に示すように、側面視で、回転軸S方向において、第1切削部11の長さL1と第2切削部12の長さL2とは同一である。
【0014】
本実施形態のリーマー1は、例えば、本体部10の外径φを0.2mm〜20mmとし、切削部11、12の長さL1、L2を1mm〜250mmとし、回転軸Sの長さ(切刃
11、12から溝11c、12cが終了するまでの長さ)をLとし、直径(切刃11、12の外径)をDとするとき、L/Dを1〜30とすればよい。被削材100としては、例えば、鋼、鋳鉄等の鉄鋼材料やアルミニウム合金等の非鉄金属材料に好適に用いることができる。
【0015】
シャンク13は、図1に示すように、本体部10の回転軸S方向の中央部1cに位置しており、ホルダ21に把持等されることによってリーマー1をホルダ21に固定する役割を有するものである。シャンク部13は、ホルダ21の形状に応じて適宜設計される。
【0016】
第1切削部11は、図1および図2に示すように、被削材100の切削加工において主たる役割を有する部位であり、本体部10の回転軸S方向の一端部1aに位置しており第1切刃11aを有している。
【0017】
また、第1切削部11は、図2(b)に示すように、一端部1a側からの先端視において、中央領域に回転軸Sに直交する平坦面11Xを有し、平坦面11Xの周囲に第1切刃11aが位置している。また、図2(a)に示すように、外周には、第1切刃11aに対応するように、一端部1aからシャンク部13側に向かって第1溝11cが形成されている。第1溝11cは、第1切刃11aから生成される切屑を排出することを主目的としている。以上のような本実施形態の第1切削部11は、いわゆる右刃左捩れの構成である。なお、本実施形態においては、第1溝11cは、第1すくい面11bなどの第3の構成を介して、第1切刃11aに連続している。
【0018】
なお、第1切削部11の外周は、図2(b)等に点線Pで示されている。本実施形態において、第1切削部11の形状は円柱状である。すなわち、第1切削部11は、回転軸Sに垂直な断面において、図2(b)に示すように一端部1aにおける直径をD1aとし、図2(c)に示すように一端部1a以外の部位における直径をD1bとしたとき、D1a及びD1bがD1a=D1bの関係を有している。また、第1切削部11は、回転軸Sに垂直な断面において、その直径D1が一端部1aからシャンク部13側に渡って一定である。
【0019】
第1切刃11aは、図2(b)に示すように、第1切削部11の一端部1aに4つの刃部11a1で形成されている。4つの刃部11a1は、第1切削部11の回転軸S(軸線)を基準にして90°の回転対称となるように位置している。すなわち、4つの刃部11a1は、互いに回転軸Sに対して4回対称である。このような配置にすることで、被削材100を加工する際の直進安定性を向上させることができる。また、切削加工時において、第1切刃11aで形成された切屑は、第1すくい面11bおよび第1溝11cを通ってシャンク部13側に排出される。すなわち、各刃部11a1で形成された切屑は、対応する第1溝11aを通って別個にシャンク部13側に排出される。なお、図2に示されている矢印aは、第1および第2切削部11、12の回転方向を示している(以下において同じ。)。
【0020】
また、図2(b)に示すように、第1切削部11の外周のうち第1溝11cが形成されていない領域であって第1切刃11aの回転方向の前方には、第1マージン11dが存在している。すなわち、第1マージン11dは、断面視において第1切削部11の外周に相当する部位であり、円弧状をなしている。本明細書において、「断面視」とは、回転軸Sに垂直な断面のことをいう。本実施形態において、リーマー1の径(外径)の大きさは、第1マージン11dの大きさと同一である。
【0021】
本実施形態のリーマー1において、第1切刃11aの回転方向と第1溝11cの捩れ方向とは同じである。従って、第1溝11cの捩れ方向、すなわち第1マージン11dの捩
れ方向も、第1切刃11aの回転方向と同じである。これにより、第1切刃11aを用いて切削加工を行なう場合に、第1マージン11dが被削材100の加工穴101の内壁101aを押圧することによって平滑化する効果、いわゆるバニシング効果を得ることが可能となる。特に、加工穴101が被削材100を貫通している貫通孔である場合には、被削材100の加工に伴なって第1切刃11aによって切屑が生成されたとしても、貫通孔のうちリーマー1の挿入口とは逆の開口から切屑が排出されるため、切屑排出による影響を抑制しつつ第1マージン11dによるバニシング効果をより効率的に発揮することが可能となるため好ましい。
【0022】
第2切削部12は、図1に示すように、本体部10の回転軸S方向の他端部1bに位置しているとともに第2切刃12aを有する。本実施形態において、第2切削部12は、基本的な構成が第1切削部11と同等であるため説明を省略する。
【0023】
そして、本実施形態のリーマー1は、図1を参照すると、本体部10の回転軸S方向の中点Cを通るとともに回転軸Sに直交する基準線Lを基準にして反転したときに、図2(b)に示すような反転前の第1切刃11aと図2(c)に示すような反転後の第2切刃12aとが異なる位置に存在する。これによれば、第1切削部11および第2切削部12のいずれかを用いて加工している時に第1切削部11と第2切削部12との間で生じ得るブレの増幅を抑制あるいは低減することができる。それ故、優れた穴加工性と優れた耐折損性とを兼ね備えることが可能となる。
【0024】
上述の異なる位置の例として、図2(b)および図2(c)に示すように、一端部1aの側から見たときに、反転前の第1切刃11aと反転後の第2切刃12aとが、回転軸Sを基準にした回転対称の位置に存在することが好ましい。この場合には、両頭リーマーにおいて、第1切削部11および第2切削部12の切刃形状を同一にしつつ、上述のような優れた穴加工性と優れた耐折損性とを兼ね備えることが可能となる。
【0025】
この点、本実施形態においては、第1切刃11aは複数の刃部11a1を有し、第2切刃12aは複数の刃部12a1を有している。そして、一端部1aの側から見たときに、反転前の第1切刃11aの複数の刃部11a1と反転後の第2切刃12aの複数の刃部12a1とがそれぞれ、回転軸Sを基準にした回転対称の位置に存在するように構成されている。
【0026】
他方、本実施形態においては、上述のように、第1切削部11は第1切刃11aに対応する第1溝11cを有し、第2切削部12は第2切刃12aに対応する第2溝12cを有しており、図1に示すように、側面視で第1溝11cの形状と第2溝12cの形状とが異なっている。このように溝形状の設計によっても、上述のような優れた穴加工性と優れた耐折損性とを兼ね備えることが可能となる。
【0027】
なお、本実施形態では、図1に示すように、第1溝11cの捩れ角と第2溝12cの捩れ角とは同一である。上述のように本実施形態の第1切削部11は、いわゆる右刃左捩れの構成であり、捩れ角は、上述のバニシング効果をより効率的に得る観点から、例えば5度〜15度に設定されることが好ましい。
【0028】
なお、本実施形態では、図1および図2に示すように、回転軸S方向の各端部1a、1bから見たときに、第1溝11cの捩れ方向と第2溝12cの捩れ方向とが同一である。
【0029】
また、本実施形態では、図2(b)および図2(c)に示すように、回転軸Sに直交する断面において、第1切削部11の直径D1と第2切削部11の直径D2とが同一である。
【0030】
(第2の実施形態)
次に、本発明に係る切削工具の第2の実施形態について、図4を参照して説明する。なお、基本的な構成については、第1の実施形態に係る切削工具と同様であるため、図1および図2を適宜参照しつつ説明する。
【0031】
本実施形態の切削工具1は、円柱状の本体部10と、本体部10の回転軸S方向の一端部に位置しているとともに第1切刃11aおよび第1切刃11に対応する第1溝11cを有する第1切削部11と、本体部10の回転軸S方向の他端部に位置しているとともに第2切刃12aおよび第2切刃12aに対応する第2溝12cを有する第2切削部12と、本体部10のうち第1切削部11と第2切削部12との間に位置しているシャンク部13と、を備え、側面視において、第1溝11cの形状と第2溝12cの形状とが異なっている。
【0032】
このような構成を有するリーマー1においても、上述の第1の実施形態に係るリーマー1と同様の効果を奏することができる。すなわち、第1溝11cの形状と第2溝12cの形状とが異なることによって、第1切削部11および第2切削部12のいずれかを用いて加工している時に、第1切削部11と第2切削部12との間で生じ得るブレの増幅を抑制あるいは低減することができるため、優れた穴加工性と優れた耐折損性とを兼ね備えることが可能となる。
【0033】
本実施形態のリーマー1は、図4に示すように、第1切刃11aは少なくとも1以上の刃部11a1を有し、第2切刃12aは少なくとも1以上の刃部12a1を有し、第1切刃11aの刃部11a1の数と第2切刃12aの刃部12a1の数とが異なっている。これによっても、上述のブレの増幅を抑制あるいは低減することができる。具体的には、第1切削部11は、図4(b)に示すように6つの刃部11a1を有し、第2切削部12は、図4(c)に示すように4つの刃部11a1を有している。
【0034】
なお、その他の構成は、上述の第1の実施形態に係るリーマー1と同様であるので、説明を省略する。すなわち、説明を省略した構成については、適宜、第1の実施形態に係るリーマー1と同様の構成を採用することができる。
【0035】
<切削装置>
次に、本発明の実施形態に係る切削装置について、図3を参照して説明する。なお、切削工具として、上述の第1の実施形態のリーマー1を用いた場合を例に挙げて、詳細に説明する。
【0036】
本実施形態の切削装置20は、図3に示すように、上述の各実施形態に係るリーマー1と、リーマー1のシャンク部13を固定するホルダ21とを備え、第1切削部11および第2切削部12のいずれか一方がホルダ21から突出するようにしてリーマー1が固定されている。
【0037】
すなわち、リーマー1は、第1切削部11およびシャンク部13をホルダ21のリーマー保持部21a、21bに挿入される。そして、シャンク部13をホルダ21のコレットチャックなどの固定手段21bを用いて固定されるとともに、第1切削部11の平坦面11Xをホルダ21の当接部21aに当接される。第1切削部11の平坦面11Xをホルダ21の当接部21aに当接することで、第2切削部12の突き出し量の調整が不要で簡単に工具の取り付け調整が可能となる。このようにして本実施形態の切削装置20が構成される。なお、ホルダ21は、当業者が通常用いるものであればよく特に制限されないが、例えば、マシニングセンタ等の種々の機械が用いられる。
【0038】
なお、変形例として、図3(b)に示すように、第1切削部11および第2切削部12のいずれか一方のうちホルダ21から突出していない方の切削部11、12において、その端部1a、1bがホルダ21の当接部21aに接触しないようにしてもよい。この場合には、第2切削部12の突き出し量の調整が容易となる。
【0039】
以上のような図3(a)および図3(b)に示される切削装置20によれば、切削工具1のうちホルダ21から突き出している第2切削部12が、第1切削部12との関係において、上述のようなブレの増幅を抑制あるいは低減することが可能となる。
【0040】
<切削加工物の製造方法>
次に、本発明に係る切削加工物の製造方法の一実施形態について、図6を参照して説明する。なお、上述の第1の実施形態に係るリーマー1を用いる場合を例に挙げて詳細に説明する。
【0041】
本発明の実施形態に係る切削加工物の製造方法は、上述の切削装置20を、ホルダ21の回転軸Sまわりに回転させる工程と、回転している切削装置20の第1切削部11および第2切削部12のいずれか一方を、被削材100に接触させる工程と、被削材100と切削工具1とを相対的に離隔させる工程と、を備えている。
【0042】
具体的には、以下の(i)〜(iv)の工程を備える。
【0043】
(i)加工穴101が形成されている被削材100の上方に切削装置20を配置する
工程。
【0044】
(ii)次に、切削装置20のリーマー1を、回転軸Sを中心に矢印a方向に回転させるとともに、リーマー1をX方向に移動させて被削材100に近づける工程。
【0045】
本工程は、例えば、被削材100を、リーマー1を取り付けた切削装置20のテーブル上に固定し、リーマー1を回転した状態で被削材100に近づけることにより行なえばよい。なお、本工程において、被削材100とリーマー1とは相対的に近づけばよく、上述の例とは逆に、例えば被削材100をリーマー1に近づけるようにしてもよい。
【0046】
(iii)次に、リーマー1をさらに被削材100に近づけることによって、回転して
いるリーマー1の第1切刃11aあるいは第2切刃12aを、被削材100の加工穴101の内壁101aに接触させる工程。これによって、被削材100の加工穴101に残存するバリを除去するとともに、加工穴101の内壁101aを平滑にすることができる。なお、本工程において、被削材100の加工穴101よりも径の大きなリーマー1を用いることによって、加工穴101の孔径を広げるような切削加工を行なうようにしても良い。
【0047】
(iv)リーマー1をY方向に移動させて被削材100から離隔する工程。
【0048】
なお、上述の(ii)の工程と同様に、本工程においても、被削材100とリーマー1とは相対的に離隔すればよく、例えば被削材100をリーマー1から離隔させてもよい。
【0049】
以上のような工程を経ることによって、第1切削部11と第2切削部12との間で生じ得るブレの増幅を抑制あるいは低減することができるため、加工穴101の内壁101aを平滑化すること、すなわち優れた穴加工性を発揮することができるとともに、優れた耐折損性とを兼ね備えることが可能となる。それ故、長期に渡り安定して被削材100の加
工穴101の内壁101aを切削することが可能となる。
【0050】
なお、以上のような被削材100の切削加工を複数回行なう場合、例えば複数の加工穴101に対して内壁101aを平滑化する場合には、リーマー1を回転させた状態を保持しつつ、被削材100の異なる箇所に位置している加工穴101の内壁101aにリーマー1の第1切刃11a及び第2切刃12aを接触させる工程を繰り返せばよい。
【0051】
以上、本発明に係るいくつかの実施形態について例示したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限り任意のものとすることができることは言うまでもない。以下に各種変形例を例示するが、これらの変形例を互いに組み合わせたり、上述の実施形態のいずれかと組み合わせることができる。
【0052】
例えば、上述の実施形態に代えて、図5(a)に示すように、回転軸S方向の各端部1a、1bから見たときに、第1溝11cの捩れ方向と第2溝12cの捩れ方向とが異なる構成としてもよい。これにより、例えば、切屑排出性が比較的高い第1切削部11とバニシング効果が比較的高い第2切削部12とを有するため、一つのリーマー1によって、目的とする加工の種類に応じた使い分けを行なうことが可能となる。ここでいう第1切削部11は、いわゆる右刃右捩れの構成であり、第1溝11cの捩れ角は、上述のバニシング効果をより効率的に得る観点から、例えば5度〜30度に設定されることが好ましい。なお、第1および第2切刃11、12の回転方向と第1溝および第2溝11c、12cの捩れ方向がそれぞれ同じ場合において、被削材100を加工し、切削加工物を製造する方法については、図7に示す通りである。これによれば、生成された切屑の排出性を向上させることができる。
【0053】
また、図5(b)に示すように、回転軸Sに直交する断面において、第1切削部11の直径D1と第2切削部11の直径D2とが異なる構成としてもよい。これにより、例えば、一つのリーマー1によって、被削材に形成されている2種の大きさの加工穴に対してそれぞれ内壁の平滑化加工を行なうことができる。さらに他の使用方法として、直径が小さい方の切削部を用いて前加工を行ない、続いて直径が大きい方の切削部を用いて前加工で得られた加工穴の径を大きくしたり、加工穴の内壁を平滑化したりすることが可能となる。
【0054】
また、上述の実施形態では、本体部10の一端部1a側と他端部1b側のそれぞれをリーマーとして用いて被削材100を切削加工することができる切削工具1を示したが、これに代えて、図5(c)に示すように、第1切削部11および第2切削部12のいずれか一方がリーマーで他方がドリルであるような切削工具としてもよい。これにより、例えば、一つの切削工具1によって、第1切削部(ドリル)11を用いて加工穴を形成し、続いて第2切削部(リーマー)12を用いて第1切削部(ドリル)11で得られた加工穴の径を大きくしたり、加工穴の内壁を平滑化したりすることが可能となる。この例による切削工具1のうち第1切削部(ドリル)11を用いて被削材100を加工し、加工穴(貫通孔)101を有する切削加工物を製造する方法については、図8に示す通りである。なお、このようにして得られた加工穴(貫通孔)101の内壁101aは、第2切削部(リーマー)12を用いて平滑化する方法については、図6あるいは図7に示す通りである。
【0055】
また、上述の実施形態のように第1切削部11の第1溝11cおよび第2切削部12の第2溝12cの少なくとも一方を螺旋状に捩るのに代えて、第1溝11cおよび第2溝12cの少なくとも一方を捩れずに回転軸S方向に平行に延びる構成、いわゆる直刃構成としてもよい。
【0056】
また、第1溝11cの捩れ角と第2溝12cの捩れ角とが異なる構成としてもよい。こ
れにより、切屑排出性および内壁平滑性のうち主たる加工目的に応じた使用方法を採用することが可能となる。
【0057】
また、側面視で、回転軸S方向において、第1切削部11の長さL1と第2切削部12の長さL2とが異なる構成としてもよい。このように切削部の長さを設計することによって、上述のような優れた穴加工性と優れた耐折損性とを兼ね備えることが可能となる。
【符号の説明】
【0058】
1 切削工具
1a 一端部
1b 他端部
1c 中央部
10 本体部
11 第1切削部
11a 第1切刃
11a1 刃部
11b 第1すくい面
11c 第1溝
11d 第1マージン
11X 第1平坦面
L1 長さ
D1 直径
12 第2切削部
12a 第2切刃
12a1 刃部
12b 第2すくい面
12c 第2溝
12d 第2マージン
12X 第2平坦面
L2 長さ
D2 直径
13 シャンク部
S 回転軸
20 切削装置
21 ホルダ
21a 当接部
21b 固定手段
100 被削材
101 加工穴
101a 内壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円柱状の本体部と、
前記本体部の回転軸方向の一端部に位置しているとともに第1切刃を有する第1切削部と、
前記本体部の回転軸方向の他端部に位置しているとともに第2切刃を有する第2切削部と、
前記本体部の前記第1切削部と前記第2切削部との間に位置しているシャンク部と、を備え、
前記本体部の回転軸方向の中点を通るとともに前記回転軸に直交する基準線を基準にして反転したときに、反転前の前記第1切刃と反転後の前記第2切刃とが異なる位置に存在する、切削工具。
【請求項2】
前記一端部の側から見たときに、前記反転前の前記第1切刃と前記反転後の前記第2切刃とが、前記回転軸を基準にした回転対称の位置に存在する、請求項1に記載の切削工具。
【請求項3】
前記第1切刃は複数の刃部を有し、前記第2切刃は複数の刃部を有し、
前記一端部の側から見たときに、前記反転前の前記第1切刃の複数の刃部と前記反転後の前記第2切刃の複数の刃部とがそれぞれ、前記回転軸を基準にした回転対称の位置に存在する、請求項1または2に記載の切削工具。
【請求項4】
前記第1切刃は少なくとも1以上の刃部を有し、前記第2切刃は少なくとも1以上の刃部を有し、
前記第1切刃の前記刃部の数と前記第2切刃の前記刃部の数とが異なる、請求項1に記載の切削工具。
【請求項5】
前記第1切削部は、前記第1切刃に対応する第1溝と、前記第1溝の前記第1切刃の回転方向の前方であって前記本体部の外周に位置している第1マージンとをさらに有し、
前記第2切削部は、前記第2切刃に対応する第2溝と、前記第2溝の前記第2切刃の回転方向の前方であって前記本体部の外周に位置している第2マージンとをさらに有し
前記第1切刃の回転方向と前記第1溝の捩れ方向と、および前記第2切刃の回転方向と前記第2溝の捩れ方向とのうち少なくとも一方が同じである、請求項1〜4のいずれかに記載の切削工具。
【請求項6】
前記第1切削部は前記第1切刃に対応する第1溝をさらに有し、前記第2切削部は前記第2切刃に対応する第2溝をさらに有し、
側面視において、前記第1溝の形状と前記第2溝の形状とが異なる、請求項1〜4のいずれかに記載の切削工具。
【請求項7】
前記第1切削部は、前記第1切刃と前記第1溝とを連結する第1すくい面をさらに有し、前記第2切削部は、前記第2切刃と前記第2溝とを連結する第2すくい面をさらに有する、請求項5または6に記載の切削工具。
【請求項8】
前記第1溝の捩れ角と前記第2溝の捩れ角とが異なる、請求項5〜7のいずれかに記載の切削工具。
【請求項9】
前記回転軸方向の各端部から見たときに、前記第1溝の捩れ方向と前記第2溝の捩れ方向とが異なる、請求項5〜8のいずれかに記載の切削工具。
【請求項10】
側面視で、前記回転軸方向において、前記第1切削部の長さと前記第2切削部の長さとが異なる、請求項1〜9のいずれかに記載の切削工具。
【請求項11】
前記回転軸に直交する断面において、前記第1切削部の直径と前記第2切削部の直径とが異なる、請求項1〜10のいずれかに記載の切削工具。
【請求項12】
前記第1切削部および前記第2切削部のうち少なくとも一方は、前記回転軸方向の各端部に前記回転軸に直交する平坦面をさらに有する、請求項1〜11のいずれかに記載の切削工具。
【請求項13】
前記第1切削部および前記第2切削部のいずれか一方はリーマーであり、他方はドリルである、請求項1〜12のいずれかに記載の切削工具。
【請求項14】
円柱状の本体部と、
前記本体部の回転軸方向の一端部に位置しているとともに第1切刃および前記第1切刃に対応する第1溝を有する第1切削部と、
前記本体部の回転軸方向の他端部に位置しているとともに第2切刃および前記第2切刃に対応する第2溝を有する第2切削部と、
前記本体部のうち前記第1切削部と前記第2切削部との間に位置しているシャンク部と、を備え、
側面視において、前記第1溝の形状と前記第2溝の形状とが異なる、切削工具。
【請求項15】
前記本体部の回転軸方向の中点を通るとともに前記回転軸に直交する基準線を基準にして反転したときに、反転前の前記第1切刃と反転後の前記第2切刃とが同一位置に存在する、請求項14に記載の切削工具。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれかに記載の切削工具と、
前記切削工具の前記シャンク部を固定するホルダと、を備え、
前記第1切削部および前記第2切削部のいずれか一方が前記ホルダから突出している、切削装置。
【請求項17】
前記第1切削部および前記第2切削部のいずれか一方のうち前記ホルダから突出していない切削部は、端部が前記ホルダに接触していない、請求項16に記載の切削装置。
【請求項18】
請求項16または17に記載の切削装置を、前記ホルダの回転軸まわりに回転させる工程と、
回転している前記切削装置の前記第1切削部および前記第2切削部のいずれか一方を、被削材に接触させる工程と、
前記被削材と前記切削装置とを相対的に離隔させる工程と、
を備える、切削加工物の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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