説明

切換弁装置及びその設置方法

【課題】簡素な構造で流路の切換えを行うことが可能な切換弁装置及びその設置方法を提供すること。
【解決手段】一端部が筐体3の内面に密封状に固定された固定壁10と、固定壁10の他端部との間で摺接しながら筐体3の内面間を所定方向にスライド移動可能な移動壁9と、から構成されており、移動壁9が筐体3内面の一方に密封状に当接することで、一方の流路Aを開放するとともに、移動壁9と固定壁10とにより他方の流路Bを閉止し、移動壁9が筐体3内面の他方に密封状に当接することで、他方の流路Bを開放するとともに、移動壁9と固定壁10とにより一方の流路Aを閉止するようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体管に取付けた筐体内において流路の切換えを行う切換弁装置及びその設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の切換弁装置には、給水本管(流体管)に密封ハウジング(筐体)を取り付けて、この密封ハウジング内において流路の切換えを行うものがある。この密封ハウジング1には、3つの開口部を有する弁箱と、この弁箱内で回動する切換弁本体とからなる分岐弁(切換弁装置)が備えられており、弁箱に設けられた3つの開口部のうち一つを選択的に閉塞するものがある。(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−60689号公報(第2頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1にあっては、切換弁本体の回動操作により流路の切換えを行う際、密封ハウジング(筐体)とは別体で弁箱内を必要とするため、構造が複雑となるため作業が面倒であったり、製造コストがかかる等の問題がある。
【0005】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、簡素な構造で流路の切換えを行うことが可能な切換弁装置及びその設置方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明の切換弁装置は、
流体管の外面に密封状に取り付けられた筐体内において、流体管が構成する一方及び他方の流路の開閉切換を行う切換弁装置であって、
一端部が前記筐体の内面に密封状に固定された固定壁と、該固定壁の他端部との間で摺接しながら前記筐体の内面間を所定方向にスライド移動可能な移動壁と、から構成されており、
前記移動壁が前記筐体内面の一方に密封状に当接することで、一方の流路を開放するとともに、該移動壁と前記固定壁とにより他方の流路を閉止し、
前記移動壁が前記筐体内面の他方に密封状に当接することで、前記他方の流路を開放するとともに、該移動壁と前記固定壁とにより前記一方の流路を閉止するようになっていることを特徴としている。
この特徴によれば、流体管に密封状に取り付けられた筐体内において、流路の開閉切換を行う切換弁装置が、一端部が前記筐体の内面を密封した固定壁と、該固定壁の他端部との間で摺接しながら前記筐体の内面間を所定方向にスライド移動可能な移動壁と、から構成されており、スライド移動する移動壁が筐体内面に直接に当接することで、固定壁と移動壁とによって流路の開放・閉止の切換ができるため、筐体と弁体との間に従来介在した弁箱を必要とせずに、簡素な構造で流路の切換を行なうことができる。
【0007】
本発明の切換弁装置は、
前記移動壁が、前記一方及び他方のいずれの流路方向に対しても非直交方向である斜方向にスライド移動可能となっていることを特徴としている。
この特徴によれば、移動壁が、いずれの流路方向に対しても非直交の斜方向にスライド移動可能となっているため、流路方向の流体の力が、移動壁の壁面に対し斜方向に加わり分散されるばかりか、移動壁の位置によらず常に力が一定の負荷で移動壁のスライド移動が可能であるため、移動壁の急激な開閉動作を未然に防止することができる。
【0008】
本発明の切換弁装置は、
前記筐体内面の一方または他方に当接した前記移動壁のスライド移動が、それぞれ規制若しくは規制解除可能な規制手段を有することを特徴としている。
この特徴によれば、規制手段により、筐体内面に当接した移動壁のスライド移動を自在に規制若しくは規制解除できるため、流路の切換状態を維持することができる。
【0009】
本発明の切換弁装置は、
前記規制手段が、前記固定壁に設けられていることを特徴としている。
この特徴によれば、筐体の内面に固定された固定壁を利用して、規制手段がこの固定壁に設けられているため、切換弁装置の構造を簡素化することができる。
【0010】
本発明の切換弁装置は、
前記固定壁の上部に、前記筐体の内面と周方向に亘り密封状に当接する弁蓋部が延設されていることを特徴としている。
この特徴によれば、固定壁の上部に延設された弁蓋部により、筐体内部を密封状に閉塞できるばかりか、筐体内における固定壁のガタつきを防止できる。
【0011】
本発明の切換弁装置の設置方法は、
既設の流体管の外面に密封状に取り付けられた筐体内において、流体管を不断流状態で切断し、流体管が構成する一方及び他方の流路の開閉切換を行う切換弁装置を設置する切換弁装置の設置方法であって、
前記切換弁装置は、一端部が前記筐体の内面に密封状に固定される固定壁と、該固定壁の他端部との間で摺接しながら前記筐体の内面間を所定方向にスライド移動可能な移動壁と、前記固定壁の上方に延設され、前記筐体の内面と周方向に亘り密封状に当接する弁蓋部と、から構成されており、
前記移動壁が前記筐体内面の一方に密封状に当接することで、一方の流路を開放するとともに、該移動壁と前記固定壁とにより他方の流路を閉止し、
前記移動壁が前記筐体内面の他方に密封状に当接することで、前記他方の流路を開放するとともに、該移動壁と前記固定壁とにより前記一方の流路を閉止するようになっていることを特徴としている。
この特徴によれば、既設の流体管を不断流状態で切断して切換弁装置を取り付ける際に、流体管の外面に密封状に取り付けられた筐体内において、弁蓋部により筐体が密封状に閉塞され、移動壁が筐体内面に直接に当接することで、固定壁と移動壁によっての流路の閉止・開放の切換ができるため、既設の流体管に対し、筐体と弁体との間に介在した弁箱を必要とせずに、簡素な構造で流路の開閉切換を行うことが可能な切換弁装置を容易に設置できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例1における切換弁装置を示す正面一部断面図である。
【図2】切換弁装置を示す平面視の一部断面図である。
【図3】図2のJ−J断面図である。
【図4】図2のH−H断面図である。
【図5】(a)は、図2のK−K断面図であり、(b)は、固定壁の一方の壁面を示す図である。
【図6】一方の流路を開放した状態を示す図4のL−L断面図である。
【図7】他方の流路を開放した状態を示す図4のL−L断面図である。
【図8】移動壁が受ける流体の力の方向を示す図4のL−L断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る切換弁装置及びその設置方法を実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例1】
【0014】
実施例1に係る切換弁装置1及びその設置方法につき、図1から図8を参照して説明する。
【0015】
図1に示されるように、本実施例における本発明の切換弁装置の設置方法は、内部に流体である上水が流れ、略水平方向に延びた既設の流体管2の外周の一部に取り付けられる筐体3内において、流体管2を不断流状態で切断した後に、筐体3に後述する固定壁10及び移動壁9を取り付け、流体管2の分岐及び筐体3内において流路の切換えを行えるようにするものである。尚、本実施例では流体管2は、コンクリート、鉄筋コンクリート、石綿、ダクタイル鋳鉄、その他鋳鉄、鋼、塩化ビニール、ポリエチレン若しくはポリオレフィン製等からなる。更に尚、本実施例では流体管2内の流体は上水であるが、流体管の内部を流れる流体は必ずしも上水に限らず、例えば工業用水や下水等の他、ガスやガスと液体との気液混合体であっても構わない。
【0016】
切換弁装置1を構成する筐体3は、流体管2の管軸を含む水平面を境にして上下2分割構造の部材で形成され、当該部材の接合面同士を溶接加工で互いを結合することにより、筐体3の外方に向け開口する分岐口30を形成するようになっている(図2参照)。また、筐体3の管軸方向の両端内周部に取り付けられるゴム輪5を押輪4で押圧することで、筐体3と流体管2とが密封状態で取り付けられる(図6参照)。尚、上下2分割構造の筐体3の上下部材の結合は溶接加工に限らず、例えばボルトナットなどにより結合されるようになっていてもよい。
【0017】
図1は、流体管2に筐体3が取り付けられた後に筐体3の上端開口部に切断装置6及び作業弁装置7を密封状に取り付け、流体管2を切断するカッタ部材6aを下降するために作業弁7aを開操作した状態を示しており、切断装置6による切断後は、カッタ部材6aを流体管2の切片とともに上方に引き上げた後、作業弁7aを閉操作して筐体3内の止水を行う。続いて切断装置6に替えて、図2及び図3に示す固定壁10、移動壁9が筐体3の上端開口部より内部に密封状に設置された後、作業弁装置7が取外され、更に上蓋8が筐体3の上端開口部の開口フランジ3aに対しボルト17で固定され、切換弁装置1の設置が完了する。尚、特に図示しないが、上述した流体管2の切断前に、分岐口30に対し流路B(図6参照)を構成する分岐管等を適宜接続する。
【0018】
図2及び図3に示すように、筐体3内底面には、後述する一方の流路A及び他方の流路Bのいずれの流路に対しても非直交方向である斜方向に延びるレール16が、筐体3内面間にかけて、平面視略直線状に設けられている。より詳しくはレール16は、筐体3内底面に上方に突出形成され平行に延びた2条の突出壁16a,16aにより構成されている。このレール16には、レール16上を水平移動可能な移動壁9が遊嵌設置されている。
【0019】
移動壁9は略矩形状の板状部材で形成されており、移動壁9の全周に亘る縁部にはゴム状のパッキン25が周設され、後述する弁蓋部10b、レール16及び筐体3内側面と密封状に当接し、流体の漏溢を防止するようになっている。
【0020】
レール16に対し平面視略直角に延びる固定壁10が筐体3内底面に密封状に当接するように設置されている。固定壁10は略矩形状の板状部材で形成された壁部10aと、壁部10aの上部に延設された、筐体3の内面と周方向に亘り密封状に当接する弁蓋部10bと、から構成されており、この固定壁10の上部に延設された弁蓋部10bにより、筐体3内部を密封状に閉塞できるばかりか、弁蓋部10bと筐体3内面との密封状の当接によって固定壁10が保持され、筐体3内における壁部10aのガタつきが防止されている。
【0021】
弁蓋部10bの外周には凸部10c,10dが形成されており、凸部10c,10dそれぞれの下方及び、固定壁10の縁部に亘ってゴム状のパッキン26が周設されている。固定壁10の両側面には後述する規制用ラック11,12がそれぞれ設けられている。
【0022】
また、筐体3上部外周には径方向に延びるネジ筒3bが、周方向に複数設けられている。図3に示されるように、このネジ筒3bは筐体3内に連通しており、ネジ筒3b内部に螺合された固定ネジ31の締め込みにより、固定ネジ31の先端部が筐体3内方に突出するようになっている。この固定ネジ31の先端部側面31aが弁蓋部10b外周に設けられた凸部10bの上面に当接し係合することで、弁蓋部10bの上方への移動が規制されている。更に、ネジ筒3b端部にはゴムリング312を有するシールキャップ311が密封状態で取り付けられている。
【0023】
図3及び図5に示されるように、弁蓋部10b上面には後述する規制用ピニオン13,14及び移動用ピニオン15を下方先端にそれぞれ固着した棒状部材13a,14a及び15aが、弁蓋部10bに形成され内部に2つのOリングを有する筒状支持孔10e及び開口フランジ3aに固定される上蓋8を貫通し突出して回転可能に枢支されている。
【0024】
より詳しくは図3に示されるように、棒状部材15aには、筒状支持孔10eの内径よりも大径の外径を有したリング状凸部15bが形成され、このリング状凸部15bが筒状支持孔10eの上端周縁に係止している。また、リング状凸部15bの上方よりリング状のカバー部材10fが筒状支持孔10eの上端周囲にネジで取り付けられているため、棒状部材15aの上下動が規制され回転可能に枢支される。尚、ここでは棒状部材15aを用いて説明したが、棒状部材13a,14aも同じ態様で筒状支持孔及びカバー部材10fにより回転可能に枢支されている。
【0025】
上記態様によれば、弁蓋部10b及び上蓋8より突出した棒状部材13a,14a及び15aのそれぞれの回転操作によって、筐体3の外方から規制用ピニオン13,14及び移動用ピニオン15の回転動作が行えるようになる。
【0026】
図3に示されるように、移動壁9の一方の側面には前述した移動用ピニオン15と噛合する移動用ラック19が、レール16の延設方向と同じ方向に固設されており、したがって移動用ピニオン15の軸回転に連動して水平移動する移動用ラック19とともに、移動壁9がレール16上で筐体3の内面間をスライド移動するようになっている。
【0027】
また、図4に示されるように、固定壁10の両側面には規制用ラック11,12が、それぞれ固定壁10に対し、レール16の延設方向と直交する方向に摺動可能に設けられており、前述した規制用ピニオン13,14とそれぞれ噛合して連動するようになっている。より詳しくは図5(a)に示されるように、固定壁10両壁面には鉤状の支持部材21,22が固着されており、規制用ピニオン13,14に噛合する規制用ラック11,12が、それぞれ支持部材21,22に遊嵌支持されている。
【0028】
図5(b)に示されるように、規制用ラック11は規制用ピニオン13に噛合するギア部11a、規制用ラック11がレール16方向に押し出された際に移動壁9縁部に当接する当接部11b、また規制用ラック11が所定距離移動した際に、規制用ラック11が脱落するのを防止する留め具11cにより構成されている。
【0029】
上記の構造によれば、棒状部材13aの回転操作に伴う規制用ピニオン13の軸回転により、これに噛合されたギア部11aに連動し、規制用ラック11がレール16に沿う移動壁9の移動方向と略直交方向に水平移動するようになっている。ここでは規制用ラック11を用いて説明したが、規制用ラック12も同じ態様で固定壁10の反対側の壁面に固着された支持部材22に遊嵌支持されている。
【0030】
すなわち、規制用ラック11,12、規制用ピニオン13,14及び棒状部材13a,14aは、本発明の規制手段を構成している。
【0031】
続いて、本発明における切換弁装置1による流路の開閉切換えを図6及び図7を用いて説明する。以下、本実施例では図6の紙面左側を流体管2の上流側、紙面右側を下流側として説明し、流体管2の上流側から下流側へ向かう一方の流路を流路Aとし、上述した筐体3内の流体管2の切断により形成された、流体管2の上流側から分岐口30を介し筐体3の外方へ向かう他方の流路を流路Bとして説明する。図6は、流路Aを選択している状態、すなわち流路Aを開放するとともに流路Bを閉止している状態であり、図7は、流路Bを選択している状態、すなわち流路Bを開放するとともに流路Aを閉止している状態である。
【0032】
先ず、一方の流路Aを開放するとともに他方の流路Bを閉止する操作について、図6を用いて説明する。
【0033】
図6に示すように、まず棒状部材13aの回転操作に伴い規制用ピニオン13を矢印方向に軸回転させる。これにより規制用ピニオン13の軸回転に連動し、規制用ラック11が固定壁10に沿って移動壁9から引き離される。続いて棒状部材15aの回転操作に伴う移動用ピニオン15の矢印方向への軸回転により、移動用ラック19に連動した移動壁9が、固定壁10の縁部に周設したパッキン26との間で摺接しながら、レール16に沿って矢印方向に移動させられ、移動壁9の移動方向の端部に設けられたパッキン25が、筐体3内側面に密封状に当接する。
【0034】
移動壁9のパッキン25が筐体3内側面に密封状に当接した後、棒状部材14aの回転操作に伴い規制用ピニオン14を矢印方向に軸回転させる。これにより規制用ピニオン14の軸回転に連動し、規制用ラック12がレール16に向けて突出し、移動壁9の他方端部を係止することで、筐体3内側面に密封状に当接した移動壁9の移動が規制される。特に、規制用ラック12が移動壁9を筐体3内側面に向けて押圧保持することで、移動壁9が筐体3内側面に密接し、移動壁9と筐体3との密封性がより高まる。こうして、移動壁9が矢印方向に移動させることで、流路Aが開放操作されるとともに、流路Bが閉止操作されることになる。
【0035】
次に、上記の操作とは逆に、他方の流路Bを開放するとともに一方の流路Aを閉止する操作について、図7を用いて説明する。
【0036】
図7に示すように、まず棒状部材14aの回転操作に伴い規制用ピニオン14を矢印方向に軸回転させる。これにより規制用ピニオン14の軸回転に連動し、規制用ラック12が固定壁10に沿って移動壁9から引き離される。続いて棒状部材15aの回転操作に伴う移動用ピニオン15が矢印方向に軸回転により、移動用ラック19に連動した移動壁9が、固定壁10の縁部に周設したパッキン26との間で摺接しながら、レール16に沿って矢印方向に移動させられ、移動壁9の移動方向の端部に設けられたパッキン25が、筐体3内側面に密封状に当接する。
【0037】
移動壁9のパッキン25が筐体3内側面に密封状に当接した後、棒状部材13aの回転操作に伴い規制用ピニオン13を矢印方向に軸回転させる。これにより規制用ピニオン13の軸回転に連動し、規制用ラック11がレール16に向けて突出し、移動壁9の他方端部を係止することで、筐体3内側面に密封状に当接した移動壁9の移動が規制される。特に、規制用ラック11が移動壁9を筐体3内側面に向けて押圧保持することで、移動壁9が筐体3内側面に密接し、移動壁9と筐体3との密封性がより高まる。こうして、移動壁9が矢印方向に移動させることで、流路Bが開放操作されるとともに、流路Aが閉止操作されることになる。
【0038】
このとき移動壁9は、流路A及び流路Bのいずれの流路に対しても非直交方向である斜方向にスライド移動可能となっているため、流路A若しくは流路Bを流れる流体の力は、移動壁9の壁面9aに対し、前記した斜方向にかかることになる。そのため、流路A若しくは流路B方向の流体の力が、移動壁9の壁面9aに対し斜方向に加わり分散されるばかりか、移動壁9の開閉位置によらず常に一定の負荷で移動壁9のスライド移動が可能であるため、移動壁9と筐体3内面との衝突等の移動壁9の急激な開閉動作を未然に防止することができる。
【0039】
次に図8を用いて、流路Bを開放操作するとともに流路Aを閉止操作する際に、移動壁9が受ける流体の力の方向を説明する。図8におけるXは、流路Aに沿って流れる流体の力を表し、Yは、移動壁9が平面視壁面9aの直交方向に受ける力Xの分力を表し、更にZは、分力Yの平面視直交方向の力Xの分力を表している。力Xよりも小さい分力Yが移動壁9の壁面9aにかかるため、移動壁9への負荷が小さいばかりか、特に流路Bを開放操作する場合においては、分力Zが移動壁9の矢印方向へのスライド移動を助ける助力になり、より小さい力で移動壁9の移動を行うことができるようになっている。
【0040】
また図8に示されるように、移動壁9の水平移動の際に生じる抵抗力は、流体の力Xよりも小さい分力Yが移動壁9の壁面に加わることで、移動壁9がレール16の下流側の突出壁16aに押し付けられ生じる摩擦力のみであるため、移動用ピニオン15の軸回転操作に加わる流体の力の影響が小さく、移動壁9のスライド移動の負荷を抑えることができる。
【0041】
以上説明したように、本発明の切換弁装置によれば、流体管2に取り付けられる筐体3内において、流路A若しくは流路Bの開閉切換を行う切換弁装置1が、一端部が筐体3の内面を密封した固定壁10と、固定壁10の他端部との間で摺接しながら筐体3の内面間を所定方向にスライド移動可能な移動壁9と、から構成されており、スライド移動する移動壁9が筐体3内面に直接に当接することで、固定壁10と移動壁9とによって流路A及び流路Bの開放・閉止の切換ができるため、筐体と弁体との間に従来介在した弁箱を必要とせずに、簡素な構造で流路A及び流路Bの開閉切換を行なうことができる。
【0042】
また、本発明の規制手段である規制用ラック11,12、規制用ピニオン13,14及び棒状部材13a,14aにより、筐体3内面に当接した移動壁9のスライド移動を自在に規制若しくは規制解除できるため、流路A及び流路Bの切換状態を維持することができる。特に、規制用ラック11,12が、規制状態において移動壁9を筐体3内側面に向けて押圧保持することで、移動壁9が筐体3内側面に密接し、移動壁9と筐体3との密封性がより高まる。
【0043】
また、筐体3の内面に固定された固定壁10を利用して、規制手段である規制用ラック11,12が、この固定壁10に設けられているため、切換弁装置1の構造を簡素化することができる。
【0044】
更に、本発明の切換弁装置の設置方法によれば、既設の流体管2を不断流状態で切断して切換弁装置1を取り付ける際に、流体管2の外面に密封状に取り付けられた筐体3内において、弁蓋部10bにより筐体3が密封状に閉塞され、移動壁9が筐体3内面に直接に当接することで、固定壁10と移動壁9とによる流路A及び流路Bの開放・閉止の切換ができるため、既設の流体管2に対し、筐体と弁体との間に従来介在した弁箱を必要とせずに、簡素な構造で流路A及び流路Bの開閉切換を行うことが可能な切換弁装置1を容易に設置できる。
【0045】
更に、本発明の切換弁装置にあっては、流体管2に沿う流路A及び分岐口に沿う流路Bの何れの流路に対しても斜方向に固定壁10が設けられ、かつ移動壁9が流体管2の切断面及び分岐口30を避ける斜方向に移動する態様で流路A,Bの切換えが完了するため、固定壁10及び移動壁9と流体管2の切断面との干渉がなく、切換え作業を簡略化することが可能である。
【0046】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0047】
例えば、前記実施例では、切換弁装置1が、内部に流体が流れている既設の流体管2の外周の一部に取り付けられる略T字状の筐体3内において流体管2を不断流状態で切断した後に、筐体3に後述する固定壁10及び移動壁9を取り付け、流体管2の分岐及び筐体3内において流路の切換えを行う態様が説明されているが、流体管2の流体管2の分岐及び筐体3内において流路の切換えを行うものであれば、既設の流体管2に限られず、例えば設置前の新規の流体管に接続する態様等、多岐に渡り用いることができる。
【0048】
また例えば、前記実施例では、移動壁9及び本発明の規制手段が、ラック・ピニオン構造により移動操作可能に構成されているが、移動壁若しくは規制手段は、切換弁装置の外方から操作可能であれば、ラック・ピニオン構造に限らず、例えばリンク構造やカム構造等、他の周知の構造であっても構わない。
【符号の説明】
【0049】
1 切換弁装置
2 流体管
3 筐体
6 切断装置
9 移動壁
10 固定壁
10a 壁部
10b 弁蓋部
11,12 規制用ラック
13,14 規制用ピニオン
15 移動用ピニオン
16 レール
19 移動用ラック
21、22 支持部材
30 分岐口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体管の外面に密封状に取り付けられた筐体内において、流体管が構成する一方及び他方の流路の開閉切換を行う切換弁装置であって、
一端部が前記筐体の内面に密封状に固定された固定壁と、該固定壁の他端部との間で摺接しながら前記筐体の内面間を所定方向にスライド移動可能な移動壁と、から構成されており、
前記移動壁が前記筐体内面の一方に密封状に当接することで、一方の流路を開放するとともに、該移動壁と前記固定壁とにより他方の流路を閉止し、
前記移動壁が前記筐体内面の他方に密封状に当接することで、前記他方の流路を開放するとともに、該移動壁と前記固定壁とにより前記一方の流路を閉止するようになっていることを特徴とする切換弁装置。
【請求項2】
前記移動壁が、前記一方及び他方のいずれの流路方向に対しても非直交方向である斜方向にスライド移動可能となっていることを特徴とする請求項1に記載の切換弁装置。
【請求項3】
前記筐体内面の一方または他方に当接した前記移動壁のスライド移動が、それぞれ規制若しくは規制解除可能な規制手段を有することを特徴とする請求項1または2に記載の切換弁装置。
【請求項4】
前記規制手段が、前記固定壁に設けられていることを特徴とする請求項3に記載の切換弁装置。
【請求項5】
前記固定壁の上部に、前記筐体の内面と周方向に亘り密封状に当接する弁蓋部が延設されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の切換弁装置。
【請求項6】
既設の流体管の外面に密封状に取り付けられた筐体内において、流体管を不断流状態で切断し、流体管が構成する一方及び他方の流路の開閉切換を行う切換弁装置を設置する切換弁装置の設置方法であって、
前記切換弁装置は、一端部が前記筐体の内面に密封状に固定される固定壁と、該固定壁の他端部との間で摺接しながら前記筐体の内面間を所定方向にスライド移動可能な移動壁と、前記固定壁の上方に延設され、前記筐体の内面と周方向に亘り密封状に当接する弁蓋部と、から構成されており、
前記移動壁が前記筐体内面の一方に密封状に当接することで、一方の流路を開放するとともに、該移動壁と前記固定壁とにより他方の流路を閉止し、
前記移動壁が前記筐体内面の他方に密封状に当接することで、前記他方の流路を開放するとともに、該移動壁と前記固定壁とにより前記一方の流路を閉止するようになっていることを特徴とする切換弁装置の設置方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−87864(P2013−87864A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−228794(P2011−228794)
【出願日】平成23年10月18日(2011.10.18)
【出願人】(000105556)コスモ工機株式会社 (270)
【Fターム(参考)】