説明

切断装置

【課題】被切断材に対する切断時に発生した粉塵によって送風用のファンやモーターを損傷する虞のない切断装置を提供することにある。
【解決手段】切断装置Aは、一方向に往復走行する走行台車2と、走行台車2の走行方向に対し交差する方向に横行可能に搭載され切断トーチ6を搭載した横行キャリッジ3と、切断トーチの移動領域に対応して配置され被切断材を載置する差し板10を有し内部が複数の室12に分割された槽部材1と、槽部材1の外部であって走行台車2の走行方向に沿って配置された送風ダクト20及び排気ダクト21と、槽部材1に形成された複数の室12毎に配置され個々の室12と送風ダクト20、排気ダクト26とを連通又は遮断する送風側開閉部材25、排気側開閉部材26と、送風ダクト20に接続された送風装置23とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被切断材に対する切断に伴って発生した粉塵を含む煙を効率良く排除し得るようにした切断装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鋼板からなる被切断材をプラズマ切断、レーザ切断、ガス切断し、或いは鋼板やステンレス鋼板或いは非鉄金属板等の被切断材をプラズマ切断、レーザ切断することが行われている。このような被切断材を切断する際には、母材から排除された微細な粒子を含む粉塵や煙が発生する。特に、被切断材をプラズマ切断する際には大量の粉塵を含む煙が発生するため、プラズマ切断装置では排煙設備を設置するのが一般的である。
【0003】
排煙設備を有するプラズマ切断装置として多くの提案がなされているが、その中で特許文献1に記載された発明がある。特許文献1に記載された発明は熱切断加工機に関するものであり、従来より提案されていた集塵装置に生じている問題点を解決しようとするものである。
【0004】
特許文献1に記載された熱切断加工機の構成は、ワークを載置するテーブルの内部を仕切ることで複数の排気室を形成し、この排気室の一方に開閉可能に構成した排気口を形成し、該排気口を排気ダクトに接続して排気手段と連通させる。また個々の排気室に於ける排気口と対向する位置にプッシュエアを送風するファン又はブロアを設ける。そして、トーチの位置に対応してファン又はブロアの駆動、停止と排気口の開閉を制御することで、排気室内に送風し、排煙と共に排気手段に排気する。
【0005】
上記の如く構成された熱切断加工機では、ワークの切断により発生している排煙をファン又はブロアから送風されたプッシュエアの流れに乗せて排気口に送り、渦やよどみなどの気流の乱れを起こすことなく、効率良く排気手段で吸引排気することができる。
【0006】
【特許文献1】特許第3678693号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記技術であっても全く問題がない訳ではなく、特にトーチが送風口に近い部位を切断しているとき、切断時に生じたスパッタを含む粉塵がプッシュエアの流れに逆らって送風口から送風室内に入り込んで電動ファンを損傷する虞があるという問題がある。
【0008】
本発明の目的は、被切断材に対する切断時に発生した粉塵によって送風用のファンやモーターを損傷する虞のない切断装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明に係る切断装置は、一方向に往復走行する走行台車と、前記走行台車の走行方向に対し交差する方向に横行可能に搭載されると共に被切断材を切断する切断トーチを搭載した横行キャリッジと、前記切断トーチの移動領域に対応して配置され上部に被切断材を載置する載置部材を有し且つ内部が走行台車の走行方向と交差する方向の複数の室に分割された槽部材と、前記槽部材の外部であって走行台車の走行方向に沿って一方側に配置された送風ダクト及び他方側に配置された排気ダクトと、前記槽部材に形成された複数の室毎に配置され個々の室と前記送風ダクトとを連通又は遮断する送風側開閉部材と、前記槽部材に形成された複数の室毎に配置され個々の室と前記排気ダクトとを連通又は遮断する排気側開閉部材と、前記送風ダクトに接続された送風装置とを有するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る切断装置では、被切断材に対し切断を行っているときに発生した粉塵等が送風ダクトに飛び込んだとしても、送風装置に損傷を与えることがない。
【0011】
即ち、切断装置は、走行台車の走行方向と交差する方向の複数の室を有する槽部材の外部であって走行台車の走行方向に沿った一方側に送風ダクトを設けると共に他方側に排気ダクトを設けている。そして、各室毎に送風ダクト、排気ダクトとを連通、遮断する送風側開閉部材、排気側開閉部材を設け、送風ダクトに送風装置を接続すると共に、排気ダクトに集塵装置を接続している。このため、送風装置を駆動して送風ダクトに送風すると共に、集塵装置を駆動して集塵ダクトを吸引しつつ、切断トーチの近くの室の各開閉部材を同期して開放することで、室を介して送風ダクトと排気ダクトが連通し、排煙を排除することができる。
【0012】
切断時に発生した粉塵が送風に逆らって送風ダクトに飛び込んだとしても、送風装置が送風ダクトに接続されるものの、槽部材からは離隔して配置されているため、飛び込んだ粉塵が送風装置に達することがない。このため、送風装置に損傷を与えることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明に係る切断装置の最も好ましい実施の形態について説明する。本発明に係る切断装置は、被切断材を切断する際に発生する微細な粉塵や煙を合理的に排除することが可能で、且つ切断装置を構成する送風装置に損傷を与えることを防止し得るようにしたものである。
【0014】
本発明に於いて、切断トーチとしてはガス切断トーチ、プラズマ切断トーチ、レーザ切断トーチを含み、被切断材の材質に応じて適切な切断トーチが選択される。また被切断材としても特に限定するものではなく、鋼板やステンレス鋼板、或いは銅やアルミニウム等の非鉄金属板を含む。特に、プラズマ切断トーチを利用して鋼板を切断する場合、大量の粉塵と煙が発生するため、このプラズマ切断トーチを用いた切断装置であると好ましい。
【0015】
走行台車は一方向に往復走行し得るように構成されている。走行台車の走行方向を規定する構成は特に限定するものではなく、敷設したレール上を往復走行し得るような構成や、レールを必要とせずに一方向に往復走行し得るような構成であって良い。またレール上を走行する場合であっても、槽部材の両側に一対のレールを敷設してこのレール上に走行し得るような門型架構を有する構造や、槽部材の一方側に一対のレールを敷設してこのレール上に走行し得るような構造であっても良い。
【0016】
横行キャリッジは切断トーチを搭載し、且つ走行台車の走行方向に対し交差する方向に横行する。この横行キャリッジの横行を規制する構造は、走行台車から走行方向に対し交差する方向に突出させた横行レールを有するものが好ましい。この横行レールは、走行台車が門型架構を有する構造である場合、門型架構の水平方向に配置されたガーターに設置される。また走行台車が槽部材の一方側に敷設したレール上を走行し得るような構造である場合、該走行台車から槽部材の上方に水平方向に突出して配置された片持ち梁状のブームに設置される。
【0017】
上記何れの場合であっても、走行台車の走行方向と速度及び横行キャリッジの横行方向と速度、を合成することによって、走行台車の走行範囲と横行キャリッジの横行範囲とによって制限された領域内で切断トーチを目的の方向に移動させることが可能である。従って、切断トーチを前記移動領域(切断トーチの移動領域、切断可能領域)内で移動させつつ作動させることで、被切断材に対する切断を実行することが可能である。
【0018】
槽部材は上方に被切断材を載置すると共に、上方に被切断材を載置したとき、該被切断材によって上方が蓋された室を形成し、この室の一方側から送風して他方側に排気する機能を有するものである。このため、槽部材は前記機能を有する構造であれば良く、特に構造を限定するものではない。
【0019】
また切断装置では、被切断材に対する切断に伴って、寸法の小さい製品やスクラップが落下することがある。このため、槽部材の底面上であって被切断材の下方に移動可能なバケットを配置しておき、このバケットに落下させて回収すると共に槽部材の外部に取り出せるように構成することが好ましい。
【0020】
また、送風及び吸引によって切断に伴って発生する粉塵や排煙を排除する場合、送風すべき室の容量及び吸引すべき室の容量が無制限に大きいことは好ましくはない。このため、槽部材は、内部が走行台車の走行方向に対して交差する方向に複数の室に分割されていることが好ましい。槽部材の内部をこのように構成することによって、差し板に被切断材を載置したとき、槽部材の内部に形成された複数の室は、上部が被切断材によって蓋された閉鎖空間として構成される。
【0021】
槽部材の外部であって走行台車の走行方向に沿った一方側に送風ダクトが設けられ、他方側に排気ダクトが設けられる。これらのダクトの構造は特に限定するものではなく、充分な送風能力又は排気能力を発揮し得る断面積を有するものであれば良い。これらのダクトは走行台車の走行範囲に対応して設けられ、一端が閉塞されると共に他端に送風装置又は集塵装置或いは排気装置が接続される。従って、送風装置が接続されたダクトは送風ダクトとして機能し、集塵装置或いは排気装置が接続されたダクトは排気ダクトとして機能する。
【0022】
送風ダクトは一端が閉塞され他端が送風装置に接続されるが、槽部材に沿った部分では密閉された筒状であることが好ましい。例えば特許文献1に記載されているように、ダクトが大気に開放された構造である場合、ファンによって送風していても、ダクトの開放部分から排煙が逆流してくる虞を排除し得ない。
【0023】
送風ダクトに接続される送風装置の構成は特に限定するものではなく、被切断材に対する切断に伴って発生する粉塵や排煙を確実に排気ダクト側へ流すことが可能な風量を生じさせるものであれば良い。このような送風装置としては軸流型のファンがある。
【0024】
また、排気ダクトに接続される集塵装置或いは排気装置の構成も特に限定するものではなく、従来よりプラズマ切断装置の集塵装置として採用されている集塵装置、或いは送風装置と同様の構造を持った排気装置を採用することが可能である。
【0025】
槽部材に形成された各室は送風ダクト及び排気ダクトと接続され、送風ダクトから排気ダクトへと送風し得るように構成される。送風装置による送風と、集塵装置或いは排気装置による吸引とが効率良く行われるように、各室に設けた送風ダクト、排気ダクトとの連通孔は夫々開閉可能に構成することが好ましい。
【0026】
各室と各ダクトとの開閉機構は特に限定するものではなく、各室に切断トーチが接近してきたとき、夫々の開閉機構が作動して送風ダクト、排気ダクトとの連通孔を開放し、切断トーチが離れたとき、連通孔を閉鎖し得る構成であれば良い。
【0027】
このような開閉機構としては、各連通孔毎にシャッターを配置しておき、切断トーチの位置に対応させてシャッターを開閉し得るような構造がある。前記シャッターを開閉する駆動部材としては、エアシリンダーや電動モーターがあり、これらの駆動部材を走行台車の接近離隔を検知するセンサーからの信号に応じて駆動し得るように構成することが好ましい。また、走行台車にドッグを形成しておき、このドッグに接触して移動するカムを設け、該カムによってシャッターの開閉を行うようにすることも可能である。
【実施例1】
【0028】
次に、第1実施例に係る切断装置の構成について図を用いて説明する。図1は切断装置の平面図である。図2は切断装置の側面図である。図3は切断装置の正面図である。図4は送風ダクトの構成を説明する平面図である。図5は送風ダクトの構成を説明する側面図である。図6は送風ダクトの構成を説明する正面図である。図7は排気ダクトの構成を説明する平面図である。図8は排気ダクトの構成を説明する側面図である。図9は排気ダクトの構成を説明する正面図である。
【0029】
図に示す切断装置Aは槽部材1と走行台車2とが一体的に構成されている。通常の切断装置では、槽部材1と走行台車2とは寸法的には密接な関係を有するものの、構造的には槽部材とレールとが互いに別の構造体として構成される。しかし、本実施例では、槽部材1の上方に走行台車2が走行するレール4が設けられており、このレール4に沿って走行台車2が走行し得るように構成されている。
【0030】
図に於いて、切断装置Aは、予め設定された仕様に基づく被切断材に対する切断が可能な領域としての切断トーチの移動領域(以下、単に「移動領域」という)が設定されている。そして、この移動領域の寸法に基づいて槽部材1の大きさや走行台車2の走行範囲、横行キャリッジ3の横行範囲が夫々設定されている。
【0031】
走行台車2は、槽部材1の長手方向の両側に配置されたレール4に載置されたサドル2aと、レール4に対し直交する方向に配置されたガーター2bと、からなる門型架構を有して構成されている。そして、走行モーター2cを目的の切断に対応させた回転方向と回転速度を持って駆動することで、走行台車2を槽部材1の長手方向(移動領域の長手方向)に沿って往復走行し得るように構成されている。
【0032】
横行キャリッジ3はガーター2bに沿って設けたレール5に載置され、横行モーター3aを目的の切断に対応させた回転方向と回転速度を持って駆動することで、槽部材1の幅方向(移動領域の幅方向)に沿って往復横行し得るように構成されている。
【0033】
従って、走行モーター2cと横行モーター3aの回転方向と回転速度を制御することによって、横行キャリッジ3に搭載した切断トーチ6を移動領域に於ける所望の方向に所望の速度で移動させることが可能である。
【0034】
尚、切断トーチ6はトーチ上下装置7を介して横行キャリッジ3に搭載されており、被切断材に対して待避する際に上昇し、切断を開始するのに伴って下降し、更に、切断中は被切断材の表面からの高さを一定の範囲に保持し得るように昇降させる。
【0035】
また切断トーチ6の先端部分にはフード8が装着されている。このフード8は切断トーチ6が被切断材に対し切断高さに下降したとき、該切断トーチ6のノズル部分を覆うことで、切断に伴って発生した粉塵や排煙が被切断材の上面に飛散することを防ぐ機能を有するものである。特に、槽部材1に於ける切断トーチ6に対向する室に空気の流れが生じているような場合、この流れによって被切断材に形成された切溝を介してフード8の内部に吸引作用を及ぼすことも可能である。
【0036】
槽部材1の上面であって移動領域に対応する部位は大気に向けて開放されており、この開放面に被切断材を載置するための複数の差し板10が設けられている。差し板10は載置した被切断材に対する切断と同時に切断され、或いは溶融した部材が付着して消耗するため、槽部材1の上部に設けた装着部に対し着脱可能に装着されている。
【0037】
槽部材1の内部は仕切部材11によって複数の室12に分割されている。仕切部材11は走行台車2の走行方向に対し直交する方向に配置されており、これにより、槽部材1の内部に形成された複数の室12も走行台車2の走行方向に対し直交する方向に形成されている。従って、槽部材1の内部に形成された複数の室12は夫々が走行台車2のガーター2bと同じ方向に配置されている。
【0038】
各室12の底部には落下した製品やスクラップを槽部材1から取り出すためのバケット15が配置されている。各バケット15は周囲が起立した壁部15aを有する上部開放型の容器状に形成されており、上部開放部の寸法は室12の底面の開口面よりも大きくなるように設定されている。特に、各仕切部材11の下端部分にはバケット15の上部開放部に向けて傾斜した傾斜部11aが形成されており、該傾斜部11aによって各室12の底部分の開口寸法は上面部分の開口寸法よりも小さく形成されている。従って、切断の進行に伴って被切断材から切断された製品、或いはスクラップが仕切部材11の近傍から落下しても、傾斜部11aに規制されて確実にバケット15に収容される。
【0039】
またバケット15の底面にはローラー15bが設けられており、各バケット15が夫々仕切部材11の配置方向と平行な方向に移動し得るように構成されている。各バケット15は自走式であっても良いが、被切断材に対する切断時に熱の影響を受ける虞があるため、図示しない牽引、押込部材によって往復移動し得るように構成されていても良い。
【0040】
上記の如く構成されたバケット15を有することによって、被切断材に対する切断が終了したとき、バケット15を槽部材1の室12から引き出して落下した製品やスクラップを回収すると共に内部に付着したスラグを除去することが可能である。そして、バケット15に収容されている製品やスクラップ等を回収或いは除去した後、再度、室12に挿入することで該室12の底部を閉鎖することが可能である。
【0041】
槽部材1は、底部にバケット15が配置されたとき、移動領域に対応する上面が開放されるほかは略閉鎖された状態に構成されている。即ち、槽部材1は底板1aの周囲に起立した壁板1bを設け、一方の壁板1bにバケット15の挿入口が形成された全体として直方体容器状に構成されている。
【0042】
上記の如く構成された槽部材1では、該槽部材1にバケット15を挿入することによって上面の開放部分を覗いて略閉鎖される。従って、上面に設けた差し板10に被切断材を載置することによって、槽部材1は略密閉された空間を構成することなる。このため、被切断材に対して切断を実施したときに発生した粉塵や排煙の槽部材1(室12)からの漏れを可及的に減少させることが可能である。
【0043】
槽部材1の走行台車2の走行方向に沿った両外側に、送風ダクト20と排気ダクト21が設けられている。各ダクト20、21は夫々所定の形状に成形された板材によって構成されており、槽部材1の壁板1bに固定されることで、該壁板1bと共に筒状の空間を形成している。また各ダクト20、21の一方の端部は板材によって閉塞され、他方側の端部が開放している。
【0044】
送風ダクト20の開放した端部には蛇腹状の送風部材22が接続され、この送風部材22に送風装置23が接続されている。前述したように、送風装置23として構造を特に限定するものではなく、切断装置Aが設置される場所の周囲の環境等を考慮して設定することが可能である。本実施例では送風装置23として軸流ファンを採用している。
【0045】
排気ダクト21の開放した端部には図示しない集塵装置が接続されている。この集塵装置は吸引機能を有しており、排気ダクト21内を吸引することによって送風装置23による送風との協働で粉塵や排煙を円滑に行うことが可能である。
【0046】
各ダクト20、21と、槽部材1に形成された室12とは夫々開閉部材25、26を介して接続され、開閉部材25、26を選択的に作動させることによって連通し或いは遮断し得るように構成されている。即ち、各室12の各ダクト20、21との間を隔てる両側の壁板1bには、対向する位置に夫々穴20a、21aが形成されている。従って、各穴20a、21aが開放されているとき、送風ダクト20と室12は穴20aを介して連通し、室12と排気ダクト21とは穴21aを介して連通し、これにより送風ダクト20と排気ダクト21は室12を介して連通することとなる。
【0047】
送風ダクト20と室12とを連通する穴20aは、送風側開閉部材25によって開閉し得るように構成されている。送風側開閉部材25は、送風ダクト20の内部に収容されると共に該送風ダクト20に固定されたエアシリンダー25aと、該エアシリンダー25aによって駆動される閉塞部材25bとによって構成されている。エアシリンダー25aは比較的に小さいストローク(約50mm)を有しており、このストロークで閉塞部材25bを往復移動させることで穴20aを開閉し得るように構成されている。
【0048】
特に、エアシリンダー20aはベースプレート25cに取り付けられている。送風ダクト20の穴20aと対向する位置には閉塞部材25bを通過させることが可能な穴が設けられている。そして、前記穴を介してエアシリンダー25a、閉塞部材25bを送風ダクト20の内部に挿入した後、ベースプレート25cを送風ダクト20の側壁部分に固定することで、送風側開閉部材25が構成されている。
【0049】
従って、送風側開閉部材25はエアシリンダー25aを含めて送風ダクト20内に配置される。このため、送風ダクト20には大気に通じた穴が形成されることがなく、被切断材に対する切断に伴って発生する粉塵や排煙が室12から送風ダクト20に逆流したとしても、これらの粉塵や排煙が大気に漏れることがない。
【0050】
また排気ダクト21と室12とを連通する穴21aは排気側開閉部材26によって開閉し得るように構成されている。排気側開閉部材26は、排気ダクト21の外部に露出して配置されると共に該排気ダクト21に固定されたエアシリンダー26aと、エアシリンダー26aに駆動される閉塞部材26bとによって構成されている。エアシリンダー26aは閉塞部材26bを穴21aから充分に離隔させて該閉塞部材26bが排気の際の抵抗とならない程度のストローク(約125mm)を有している。
【0051】
エアシリンダー26aはベースプレート26cに取り付けられている。排気ダクト21の穴21aと対向する位置には閉塞部材26bを通過させることが可能な穴が設けられている。そして、前記穴を介して閉塞部材26bを排気ダクト21の内部に挿入し、ベースプレート26cを排気ダクト21の側壁部分に固定することで排気側開閉部材26が構成されている。
【0052】
上記の如く構成された排気側開閉部材26では、穴21aを開放する際に、閉塞部材26bは該穴21aから充分に離隔した位置まで待避する。このため、穴21aを通って排気ダクト21に入り込む粉塵が閉塞部材26bに衝突する虞がなく、排煙が流通する際の抵抗となる虞がない。従って、送風装置23による風圧や集塵装置による吸引圧の余分な損失がなく、圧損を軽減することが可能となる。
【0053】
特に、閉塞部材26bが穴21aから充分に離隔することで粉塵が衝突する虞が軽減することから、排気ダクト21内に落下する粉塵の量も少なくなり、排気ダクト21に対する清掃の頻度を増やすこともない。
【0054】
各開閉部材25、26は、一つの室12に対応した一対が同期して作動し得るように構成されている。即ち、走行台車2が走行して切断トーチ6が特定の室12に接近してきたとき、このときの走行台車2の位置を検知して信号が発生し、この信号に応じてエアシリンダー25a、26aが作動して閉塞部材25b、26bを駆動して穴20a、21aを開放し得るように構成されている。
【0055】
従って、走行台車2が特定の室12に対し隣接する室12から接近した位置にあることを検知したとき各開閉部材25、26が作動して穴20a、21aを開放し、特定の室12から隣接する室12へと移動した位置にあることを検知したとき各開閉部材25、26が作動して穴20a、21aを閉鎖する。
【0056】
走行台車2の位置を検知する機構としては特に限定するものではなく、槽部材1の上方であってレール4に対応した位置に設けたセンサー類、走行台車2の走行位置を検知し得るようにしたロータリーエンコーダ等を適宜選択して採用することが可能である。
【0057】
尚、図に於ける符号30は切断装置Aの動作を制御する制御盤である。
【0058】
上記の如く構成された切断装置Aでは、差し板10に被切断材を載置し、制御盤30を操作して被切断材から切断すべき製品の形状等、所定の切断情報を入力して切断作業を開始させる。切断作業の開始に伴って、送風装置23、集塵装置が作動を開始する。
【0059】
また、走行台車2の走行モーター2c、横行キャリッジ3の横行モーター3aが駆動されて切断トーチ6を指定された切断開始位置に移動させる。走行台車2の移動に伴って、該走行台車2の位置がセンサーによって検知され、切断トーチ6の下方の室12に対応する各開閉部材25、26が選択される。
【0060】
切断トーチ6が指定された切断開始位置に到着し、該切断トーチ6の作動が開始すると、この開始と同時に或いは開始に先立って下方の室12に対応する各開閉部材25、26のエアシリンダー25a、26aが作動して穴20a、21aを夫々開放する。これにより、送風装置23からの送風は、送風ダクト20、室12、排気ダクト21を介して集塵装置に吸引される。
【0061】
上記の如く送風されている状態で、被切断材に対する切断が開始されると、発生した粉塵や排煙は室12内に流れる風によって排気ダクト21に入り込み、集塵装置に吸引されて集塵される。このとき発生した粉塵が送風ダクト20に逆流した場合であっても、送風ダクト20は槽部材1に沿って略密閉された空間として形成されるため、大気に飛び出すことがない。
【0062】
そして切断の進行に伴って走行台車2が移動すると、この移動を検知して隣接する室12に対応した各開閉部材25、26が開放し、隣接する室12を介して送風ダクト20、排気ダクト21が連通する。更に、走行台車2が隣接する室12から更に隣接した室12に接近したとき、最初の室12に対応する各開閉部材25、26が作動して穴20a、21aが閉鎖し、最初の室12に作用していた送風、排気が遮断される。
【0063】
被切断材に対する一連の切断が終了したとき、制御盤30からの指令に応じて走行台車2は移動領域から待避し、全ての室12は各開閉部材25、26によって対応する穴20a、21aが閉鎖される。また送風装置23、集塵装置の作動も停止する。
【0064】
上記の如くして被切断材に対する一連の切断作業を行うことが可能であり、この切断過程で発生した粉塵や排煙を槽部材1から漏らすことなく集塵し排煙することが可能である。
【0065】
更に、切断が終了している間にバケット15を槽部材1から引きだし、収容されている製品やスクラップを回収することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明に係る切断装置は、切断に伴って粉塵や排煙が発生するような被切断材を切断する際に利用して有利である。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】切断装置の平面図である。
【図2】切断装置の側面図である。
【図3】切断装置の正面図である。
【図4】送風ダクトの構成を説明する平面図である。
【図5】送風ダクトの構成を説明する側面図である。
【図6】送風ダクトの構成を説明する正面図である。
【図7】排気ダクトの構成を説明する平面図である。
【図8】排気ダクトの構成を説明する側面図である。
【図9】排気ダクトの構成を説明する正面図である。
【符号の説明】
【0068】
A 切断装置
1 槽部材
1a 底板
1b 壁板
2 走行台車
2a サドル
2b ガーター
2c 走行モーター
3 横行キャリッジ
3a 横行モーター
4、5 レール
6 切断トーチ
7 トーチ上下装置
8 フード
10 差し板
11 仕切部材
11a 傾斜部
12 室
15 バケット
15a 壁部
15b ローラー
20 送風ダクト
20a 穴
21 排気ダクト
21a 穴
22 送風部材
23 送風装置
25 送風側開閉部材
26 排気側開閉部材
25a、26a エアシリンダー
25b、26b 閉塞部材
25c、26c ベースプレート
30 制御盤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方向に往復走行する走行台車と、前記走行台車の走行方向に対し交差する方向に横行可能に搭載されると共に被切断材を切断する切断トーチを搭載した横行キャリッジと、前記切断トーチの移動領域に対応して配置され上部に被切断材を載置する載置部材を有し且つ内部が走行台車の走行方向と交差する方向の複数の室に分割された槽部材と、前記槽部材の外部であって走行台車の走行方向に沿って一方側に配置された送風ダクト及び他方側に配置された排気ダクトと、前記槽部材に形成された複数の室毎に配置され個々の室と前記送風ダクトとを連通又は遮断する送風側開閉部材と、前記槽部材に形成された複数の室毎に配置され個々の室と前記排気ダクトとを連通又は遮断する排気側開閉部材と、前記送風ダクトに接続された送風装置と、を有することを特徴とする切断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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