刈取収穫機
【課題】走行機体に刈取部が上昇非作業高さと下降作業高さとに昇降操作自在に連結され、刈取部に対する伝動を入り切りする刈取クラッチ、走行機体の走行装置を変速駆動する走行変速装置を備えた刈取収穫機において、移動走行を行なう作業形態を採用して作業を行うに当たり、能率よくかつ操作簡単に行なうことができるようにする。
【解決手段】刈取クラッチ17と走行変速装置7とを連係させた連係手段71を備えてある。連係手段71は、刈取クラッチ17を入り状態に切り換える操作によって走行変速装置7を設定高速位置から減速操作させる。
【解決手段】刈取クラッチ17と走行変速装置7とを連係させた連係手段71を備えてある。連係手段71は、刈取クラッチ17を入り状態に切り換える操作によって走行変速装置7を設定高速位置から減速操作させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行機体に刈取部が上昇非作業高さと下降作業高さとに昇降操作自在に連結され、前記刈取部に対する伝動を入り切りする刈取クラッチ、前記走行機体の走行装置を変速駆動する走行変速装置を備えた刈取収穫機に関する。
【背景技術】
【0002】
上記した刈取収穫機では、刈取部による刈り取りを行いながらの走行、いわゆる作業走行を行なう場合、走行速度の速すぎに起因した茎稈の押し倒しなどの刈取り不良が発生することを防止できるように、走行装置を走行変速装置によって低速側に変速して駆動することが可能となり、刈取部を上昇非作業高さに上昇させて行う走行、いわゆる移動走行を行なう場合、作業走行時よりも高速で迅速に移動できるように、走行装置を走行変速装置によって高速側に変速して駆動することが可能となったものである。
この種の刈取収穫機として、従来、たとえば特許文献1に記載されたコンバインがあった。特許文献1に記載されたコンバインでは、エンジン8の出力軸8aの回動力を、伝動ベルト17を介して走行用変速装置18の入力軸18aに伝達し、この走行用変速装置18の出力軸18bの回動力を、走行用ミッションMを介して左右の走行装置1に伝達する。走行用変速装置18の出力軸18bの回動力を、刈取クラッチ19を介して刈取部3の入力軸3dに伝達する。(各符号は、公報に記載されたものである。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−262643号公報(段落〔0021〕、図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図16は、コンバインによる収穫作業において採用されることがある作業形態を示す説明図である。
この図に示すように、畦80に沿った作業走行を行なって未刈り地81の一辺側および他辺側と畦80との間に移動走行地82ができると、未刈り地81の移動走行地82に沿った方向での一端部に位置する作業対象列に対する作業走行を行なう。この作業走行を終えて一方の移動走行地82に至ると、この移動走行地82を未刈り地81の他端部に向けて移動走行する。未刈り地81の他端部に到達すると、この端部に位置する作業対象列に対する作業走行を行う。この作業走行を終えて他方の移動走行地82に至ると、この移動走行地82を未刈り地81の一端部に向けて移動走行してこの端部に位置する作業対象列に対する作業走行を行う。このように、未刈り地81の両端部での作業走行と、各移動走行地82での移動走行とを繰り返して行なうという作業形態を採用されることがある。
つまり、作業走行を終えて枕地に至ると、枕地で旋回を行なって先の作業走行箇所に隣り合って位置する次の作業対象列に対する作業走行を行なうという作業形態を採用した場合、枕地での旋回に前後進の繰り返しが必要になるなどによって時間が掛かりがちになる。これに対し、上記した如く未刈り地の一端部と他端部の間を移動走行する作業形態を採用した場合、枕地での煩わしい旋回が不要になる。
【0005】
上記した如き移動走行を行なう作業形態を採用した場合、走行装置を作業走行時よりも高速側に変速して駆動して移動走行すれば、移動走行を迅速に行なって作業をより能率よく行なうことができる。
【0006】
しかし、移動走行を作業走行よりも高速で行なった場合、移動走行を終えて作業走行に入る際、走行装置を減速して駆動する必要がある。この減速を専用の操作によって行なう必要があるとなれば、煩わしい減速操作のために良好な作業能率を得にくくなる。
【0007】
本発明の目的は、上記した如き移動走行を採用して作業を行うに当たり、能率よくかつ操作簡単に行なうことができる刈取収穫機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本第1発明は、走行機体に刈取部が上昇非作業高さと下降作業高さとに昇降操作自在に連結され、前記刈取部に対する伝動を入り切りする刈取クラッチ、前記走行機体の走行装置を変速駆動する走行変速装置を備えた刈取収穫機であって、
前記刈取クラッチを入り状態に切り換える操作によって前記走行変速装置が設定高速位置から減速操作されるように、前記刈取クラッチと前記走行変速装置とを連係させた連係手段を備えてある。
【0009】
本第1発明の構成によると、刈取クラッチを入り状態に切り換える操作が行われると、連係手段による刈取クラッチと走行変速装置との連係により、走行変速装置が自ずと設定高速位置から減速操作される。上記した作業形態での作業を行なわれる場合、移動走行を終えて作業走行に入る際、刈取部を移動走行の停止状態から駆動状態に切り換えるように、刈取クラッチの入り状態への切り換えが行われる。これにより、本第1発明の構成によると、設定高速位置を適切に設定しておけば、移動走行を作業走行よりも高速で行なっても、移動走行を終えた際、刈取クラッチを入り状態に切り換える操作を行えば、走行変速装置を減速するための特別な変速操作を行わなくとも、走行装置が移動走行の速度よりも減速して駆動されて作業走行に適切な走行速度で入ることができる。
【0010】
したがって、上記した作業形態での作業を行う場合、移動走行を作業走行よりも高速で迅速に行なって、さらに移動走行を終えて走行速度を移動用から作業用に減速するのに刈取クラッチを入り状態に切り換える操作を行うだけで済ませて、能率よくかつ操作簡単に行なうことができる。
【0011】
本第2発明は、前記刈取部を前記上昇非作業高さから前記下降作業高さに下降させる操作によって前記刈取クラッチが入り状態に切換え操作されるように、前記刈取部と前記刈取クラッチとを連係させたオートクラッチ手段を備えている。
【0012】
本第2発明の構成によると、刈取部を上昇非作業高さから下降作業高さに下降させる操作が行われると、オートクラッチ手段による刈取部と刈取クラッチとの連係により、刈取クラッチが自ずと入り状態に切り換え操作される。上記した作業形態での作業が行なわれる場合、移動走行を終えて作業走行に入る際、刈取部を移動走行の上昇非作業高さから下降作業高さに切り換えるように、刈取部を下降させる操作が行われる。これにより、本第2発明の構成によると、上記した作業形態での作業が行なわれる場合、移動走行を終えて作業走行に入る際、刈取部を移動走行時の上昇非作業高さから作業用の下降作業高さに切り換えるように刈取部を下降させる操作を行えば、刈取クラッチを入り状態に切り換えるための特別な切り換え操作を行わなくとも、刈取クラッチが移動走行の切り状態から作業用の入り状態に切り換えられ、刈取部が駆動されて作業走行に入ることができる。
【0013】
本第2発明の構成によると、刈取部を下降させる操作によって刈取クラッチが入り状態に切り換え操作されるものだから、刈取部を下降させる操作を行えば、この操作を基に行われる刈取クラッチの入り状態への切り換え操作が行われ、この切り換え操作を基に、連係手段による刈取クラッチと走行変速装置との連係によって走行変速装置が自ずと設定高速位置から減速操作される。
【0014】
したがって、上記した作業形態での作業を行う場合、移動走行を作業走行よりも高速で迅速に行なって、さらに移動走行を終えて走行速度を移動用から作業用に減速し、かつ刈取部を切り状態から入り状態に切り換えるのに刈取部を下降させる操作を行うだけで済ませて、能率よくかつ操作簡単に行なうことができる。
【0015】
本第3発明では、前記連係手段は、前記刈取クラッチが入り状態に切り換わるに先立って前記走行変速装置が減速操作目標の速度位置に切り換わるように、前記刈取クラッチと前記走行変速装置とを連係させている。
【0016】
本第3発明の構成によると、刈取クラッチを入り状態に切り換える操作によって走行変速装置が減速操作されるものでありながら、移動走行を終えて刈取走行に入る際、刈取部の駆動トラブルの発生を回避しながら刈取走行に入ることができる。
【0017】
つまり、走行装置の変速に同調して刈取部が変速されるように、走行変速装置の出力が刈取部に伝達されるものにあっては、走行変速装置が減速位置に切り換わるよりも先に刈取クラッチが入り状態に切り換わる事態が発生した場合、走行装置を移動走行の速度で駆動するよう走行変速装置によって出力される駆動力が刈取部に伝達され、刈取部が許容速度を超えた高速で駆動される問題が発生することがある。
本第3発明の構成によると、走行変速装置が減速操作目標の速度位置に切り換わり、走行装置を作業走行の速度で駆度する駆動力が走行変速装置によって出力されるようになってから刈取クラッチが入り状態に切り換わるから、走行変速装置の出力が刈取部に伝達されるものであっても、かつ刈取クラッチを入り状態に切り換える操作に連係させて走行変速装置が減速操作されても、刈取部に適切な速度の駆動力が伝達されて刈取部の駆動速度が許容速度を超えるなどの駆動トラブルが発生しない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】刈取収穫機の全体を示す側面図である。
【図2】伝動装置を示す説明図である。
【図3】操作装置を示すブロック図である。
【図4】走行変速装置の油圧回路図である。
【図5】移動走行状態、標準刈取状態、低速刈取状態を示す説明図である。
【図6】オートスイッチ及び刈取クラッチレバーの操作状態とオートクラッチ手段の状態との関係を示す説明図である。
【図7】刈取部制御を示すフロー図である。
【図8】オートクラッチ制御を示すフロー図である。
【図9】刈取部昇降制御を示すフロー図である。
【図10】刈取クラッチ制御を示すフロー図である。
【図11】走行制御を示すフロー図である。
【図12】標準制御を示すフロー図である。
【図13】移動制御を示すフロー図である。
【図14】低速制御を示すフロー図である。
【図15】変速制御を示すフロー図である。
【図16】収穫作業の作業形態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施例に係る刈取収穫機の全体を示す側面図である。この図に示すように、本発明の実施例に係る刈取収穫機は、左右一対のクローラ式の走行装置1,1によって自走するように構成され、かつ運転座席3aが装備された運転部3を有した走行機体を備え、この走行機体の機体フレームの前部に連結された刈取部2を備え、走行機体の機体フレームの後部側に走行機体横方向に並べて設けた脱穀装置4と穀粒タンク5を備えて構成されている。
【0020】
この刈取収穫機は、稲、麦などの収穫作業を行う。
つまり、刈取部2は、機体フレームに軸芯P1まわりに上下揺動自在に支持された刈取部フレーム20、この刈取部フレーム20に支持された分草具21、引起し装置22、バリカン形の刈取装置23、供給装置24を備えている。この刈取部2は、刈取部フレーム20が油圧式でかつ単動形の昇降シリンダ27によって上下に揺動操作されることにより、分草具21が地面の近くに下降した下降作業高さと、分草具21が地面から高く上昇した上昇非作業高さとに昇降する。
【0021】
刈取部2を下降作業高さに下降させて走行機体を走行させると、刈取部2は、分草具21によって植立穀稈を刈取り対象と非刈取り対象とに分草し、刈取り対象の植立穀稈を引起し装置22によって引起し処理するとともに刈取装置23によって刈取処理し、刈取り穀稈を供給装置24によって脱穀装置4の前部に搬送して脱穀フィードチェーン28の始端部に供給する。
【0022】
脱穀装置4は、脱穀フィードチェーン28によって刈取穀稈の株元側を挟持して走行機体後方向きに搬送しながら、刈取穀稈の穂先側を扱室(図示せず)に供給して脱穀処理する。穀粒タンク5は、脱穀装置4から搬送された脱穀粒を回収して貯留していく。
【0023】
走行機体は、運転座席3aの下方に設けたエンジン6を備え、このエンジン6が出力する駆動力を機体フレームの前端部に設けたミッションケース8を介して左右一対の走行装置1,1及び刈取部2に伝達する伝動装置を備えている。
【0024】
図2は、伝動装置の説明図である。この図に示すように、伝動装置は、前記ミッションケース8を備える他、このミッションケース8の上端部に連設された走行変速装置7を備えている。伝動装置は、エンジン6の出力軸6aの駆動力を、ベルトテンションクラッチで成る主クラッチ9を介して走行変速装置7の入力軸7aに伝達し、この走行変速装置7の出力軸7bの駆動力を、ミッションケース8の内部に位置するミッション(図示せず)を介して左右の走行装置1,1のクローラ駆動軸1aに伝達する。ミッションケース8の内部に位置するミッションは、走行変速装置7の出力軸7bに一体回転自在に連動した第1伝動ギヤ10に噛み合った入力ギヤ19を備え、この入力ギヤ19の駆動力を左右のクローラ駆動軸1a,1aに伝達する操向機構(図示せず)を備えている。操向機構は、入力ギヤ19の駆動力を左右のクローラ駆動軸1a,1aに伝達し、あるいは左右のクローラ駆動軸1a,1aに対する伝動を各別に絶ったり変速したりして左右の走行装置1,1を各別に駆動、停止、変速し、これによって走行機体の操向操作を行う。
【0025】
伝動装置は、走行変速装置7の出力軸7bの駆動力を、ミッションケース8の上端部に内装された刈取変速装置18に入力し、この刈取変速装置18の出力軸13の駆動力を、ベルトテンションクラッチで成る刈取クラッチ17を介して刈取部2の入力軸2aに伝達する。これにより、伝動装置は、走行変速装置7の出力軸7bの駆動力を刈取部2に伝達し、走行変速装置7による走行装置1の変速が行なわれると、走行装置1の変速に同調させて刈取部2を変速する。
【0026】
図2に示すように、刈取変速装置18は、前記第1伝動ギヤ10に噛み合った低速伝動ギヤ14、走行変速装置7の出力軸7bに第1伝動ギヤ10及び伝動軸12を介して一体回転自在に連動した第2伝動ギヤ11、この第2伝動ギヤ11に噛み合った高速伝動ギヤ15、出力軸13に一体回転自在に支持されたシフトギヤ16を備えて構成してある。
刈取変速装置18は、シフトギヤ16が摺動操作されて低速伝動ギヤ14に噛み合うことによって低速位置に切り換わり、シフトギヤ16が摺動操作されて高速伝動ギヤ15に噛み合うことによって高速位置に切り換わる。
【0027】
図2,3に示すように、走行変速装置7は、入力軸7aをポンプ軸として備えた可変容量形の油圧ポンプ7Pを備え、出力軸7bをモータ軸として備えた油圧モータ7Mを備えて構成してある。油圧モータ7Mは、油圧ポンプ7Pによって供給される圧油によって駆動される。この油圧モータ7Mは、可変容量形の油圧モータに構成してある。
【0028】
走行変速装置7は、静油圧式無段変速装置に構成されており、油圧ポンプ7Pの斜板角の変更操作が行われることにより、エンジン6からの駆動力を前進側と後進側の駆動力に変換して、かつ前進側においても後進側においても無段階に変速して左右の走行装置1,1に伝達する。
【0029】
走行変速装置7は、油圧モータ7Mの斜板角の変更操作が行われることにより、高速位置と標準速位置と低速位置とに切り換わって左右の走行装置1,1の副変速を行なう。
すなわち、走行変速装置7は、標準位置に切り換えられると、左右の走行装置1,1を植立穀稈の倒伏が無いとか少ない場合の作業走行に適切な標準速度で駆動する。走行変速装置7は、低速位置に切り換えられると、左右の走行装置1,1を標準速度よりも低速であって、植立穀稈の倒伏が激しい場合の作業走行に適切な速度で駆動する。走行変速装置7は、高速位置に切り換えられると、左右の走行装置1,1を標準速度よりも高速であって、移動走行に適切な速度で駆動する。
【0030】
図3に示すように、走行変速装置7の油圧モータ7Mの斜板角を変更する操作軸は、揺動リンクなどを利用した機械式の連係機構33を介して変速レバー43に連動されている。変速レバー43は、運転部3に走行機体の前後方向に揺動自在に設けられている。
【0031】
つまり、走行変速装置7は、変速レバー43が中立位置Nに操作されることにより、中立状態に切り換わり、油圧モータ7Mを停止させて左右の走行装置1,1に対する伝動を絶つ。走行変速装置7は、変速レバー43が中立位置Nから走行機体前方側に揺動した前進域Fに操作されることにより、前進駆動状態に切り換わり、エンジン6からの駆動力を前進駆動力に変換して左右の走行装置1,1に伝達する。走行変速装置7は、変速レバー43が中立位置Nから走行機体後方側に揺動した後進域Rに操作されることにより、後進駆動状態に切り換わり、エンジン6からの駆動力を後進駆動力に変換して左右の走行装置1,1に伝達する。
【0032】
図3に示すように、走行変速装置7は、油圧モータ7Mの斜板角を変更する操作軸に連動された油圧式の操作シリンダ56を備えており、この操作シリンダ56が制御弁58によって操作されることにより、高速位置と標準速位置と低速位置とに切り換わる。
【0033】
図4は、走行変速装置7の油圧回路図である。この図に示すように、油圧ポンプ7Pと油圧モータ7Mとは、一対の油路7cで接続されている。走行変速装置7の入力軸7aにチャージポンプ44及び油圧ポンプ60が接続されて、入力軸7aによりチャージポンプ44及び油圧ポンプ60が駆動される。チャージポンプ44から延出されたチャージ油路45が油路7cに接続され、チャージ油路45にフィルタ49が備えられている。オイルタンク46とチャージポンプ44とに亘って油路47が接続されており、油路47にフィルタ48が備えられている。油圧ポンプ60の作動油が昇降シリンダ27の制御弁に供給される。オイルタンク46はミッションケース8とは別に設けられている。
【0034】
チャージ油路45から油路57が分岐しており、制御弁58は、操作シリンダ56に対して油路57の作動油を給排操作して操作シリンダ56を操作する。チャージ油路45にリリーフ弁50が接続されている。このリリーフ弁50は、走行変速装置7を収容するケース51に接続されている。ケース51とオイルタンク46とに亘って油路52が接続され、油路52にオイルクーラー53が備えられている。
【0035】
以上の構造により、オイルタンク46の作動油が、フィルタ48、油路47、チャージポンプ44、フィルタ49及びチャージ油路45を介して走行変速装置7の油路7cに供給される。チャージ油路45の作動油が油路57及び制御弁58を介して操作シリンダ56に給排操作される。余剰の作動油がリリーフ弁50を介してケース51に排出される。走行変速装置7の各部からの作動油及び制御弁58の作動油がケース51に排出され、ケース51の作動油が油路52及びオイルクーラー53を通過してオイルタンク46に戻される。
【0036】
図3は、走行変速装置7及び刈取変速装置18の変速操作、刈取クラッチ17の入り切り操作、刈取部2の昇降操作を行う操作装置を示すブロック図である。この図に示すように、操作装置は、刈取クラッチ17を入り切り操作する電動式の操作モータ36、刈取変速装置18を変速操作する電動式の操作モータ37を備え、油圧シリンダ56の制御弁58の電磁操作部と刈取クラッチ17の操作モータ36と刈取変速装置18の操作モータ37と昇降シリンダ27とに連係された制御装置31を備え、この制御装置31に連係された刈取変速スイッチ35、走行変速スイッチ34、オートスイッチ30、刈取クラッチレバー26、昇降レバー29を備えている。制御装置31は、走行変速センサ38、刈取変速センサ40、昇降センサ61、刈取クラッチセンサ62にも連係されている。
【0037】
刈取クラッチ17の操作モータ36は、テンションアームを揺動操作することによって刈取クラッチ17を入り状態と切り状態とに切り換え操作する。刈取変速装置18の操作モータ37は、シフトフォークに連動されており、このシフトフォークを移動操作することによってシフトギヤ16を低速伝動ギヤ14に噛み合わせたり、高速伝動ギヤ15に噛み合わせたりする。
【0038】
刈取変速スイッチ35は、変速レバー43の背部に設けられている。走行変速スイッチ34は、変速レバー43の横側部に設けられている。刈取変速スイッチ35及び走行変速スイッチ34は、押し操作されると、オンに切り換わって変速指令を制御装置31に出力する。
【0039】
刈取クラッチレバー26は、運転部3に設けられており、入りスイッチ65及び切りスイッチ66を介して制御装置31に連係されている。刈取クラッチレバー26は、走行機体の前後方向に揺動操作されることにより、入り位置[ON]と切り位置[OFF]とに切り換わる。この刈取クラッチレバー26は、入り位置[ON]に操作されると、入りスイッチ65をオン操作してこの入りスイッチ65によって入り指令を制御装置31に出力する。刈取クラッチレバー26は、切り位置[OFF]に操作されると、切りスイッチ66をオン操作してこの切りスイッチ66によって切り指令を制御装置31に出力する。
【0040】
昇降レバー29は、運転部3に設けられており、上げスイッチ67及び下げスイッチ68を介して制御装置31に連係されている。昇降レバー29は、走行機体の前後方向に揺動操作されることにより、上げ位置[U]と下げ位置[D]とに切り換わる。この昇降レバー29は、上げ位置[U]に操作されると、上げスイッチ67をオン操作してこの上げスイッチ67によって上げ指令を制御装置31に出力する。昇降レバー29は、下げ位置[D]に操作されると、下げスイッチ68をオン操作してこの下げスイッチ68によって下げ指令を制御装置31に出力する。
【0041】
昇降レバー29は、走行機体の横方向にも揺動自在に支持されており、走行機体の操向操作を行うレバーにもなっている。すなわち、昇降レバー29は、中立位置に操作されると、ミッションケース8に内装の操向機構を中立状態に操作して走行機体を直進走行するように操向操作する。昇降レバー29は、中立位置から走行機体左横側に揺動操作されると、操向機構を左旋回状態に操作して走行機体を左向きに旋回走行するように操向操作する。昇降レバー29は、中立位置から走行機体右横向きに揺動操作されると、操向機構を右旋回状態に操作して走行機体を右向きに旋回走行するように操向操作する。
【0042】
走行変速センサ38は、走行変速装置7の油圧モータ7Mの斜板の操作位置を走行変速装置7の高速位置、標準速位置、低速位置として検出し、この検出結果を制御装置31に出力する。
【0043】
刈取変速センサ40は、刈取変速装置7の操作モータ37の回転位置を刈取変速装置18の低速位置、高速位置として検出し、この検出結果を制御装置31に出力する。
【0044】
オートスイッチ30は、オン状態[ON]とオフ状態[OFF]とに切り換え操作でき、オン状態[ON]に操作されると、オートクラッチ手段70をオンに切り換え操作させる指令を制御装置31に出力し、オフ状態[OFF]に切り換え操作されると、オートクラッチ手段70をオフに切り換え操作させる指令を制御装置31に出力する。
【0045】
昇降センサ61は、刈取部フレーム20の機体フレームに対する揺動位置を刈取部2の走行機体に対する連結高さとして検出し、この検出連結高さを制御装置31に出力する。
【0046】
刈取クラッチセンサ62は、刈取クラッチ17の操作モータ36の回転位置を刈取クラッチ17の入り状態及び切り状態として検出し、この検出結果を制御装置31に出力する。
【0047】
制御装置31は、マイクロコンピュータを利用して構成してあり、連係手段71、オートクラッチ手段70、刈取部昇降手段72、刈取クラッチ制御手段73、走行制御手段74、状態設定手段75を備えている。
【0048】
図6は、オートスイッチ30及び刈取クラッチレバー26の操作状態とオートクラッチ手段70の状態との関係を示す説明図である。図7は、刈取部制御を示すフロー図である。
【0049】
これらの図に示すように、制御装置31は、入りスイッチ65及び切りスイッチ66からの指令を基に、刈取クラッチレバー26が入り位置[ON]に操作されているか、切り位置[OFF]に操作されているかを判断する。制御装置31は、オートスイッチ30がオン状態[ON]に切り換え操作され、かつ刈取クラッチレバー26が入り位置[ON]に操作された場合、オートクラッチ手段74をオンに切り換え、オートクラッチ手段74によるオートクラッチ制御を行なわせる。制御装置31は、オートスイッチ30がオフ状態[OFF]に切り換え操作された場合、及びオートスイッチ30がオン状態[ON]に切り換え操作されていても刈取クラッチレバー26が切り位置[OFF]に操作されている場合、オートクラッチ手段70をオフに切り換え、刈取部昇降手段72による刈取部昇降制御、刈取クラッチ制御手段73による刈取クラッチ制御を行なわせる。
【0050】
図8は、オートクラッチ手段70によるオートクラッチ制御を示すフロー図である。この図に示すように、オートクラッチ手段70は、昇降センサ61及び操作モータ36に連係されていることによって刈取部2と刈取クラッチ17とを連係させており、オンに切り換えられると、刈取部2の昇降制御を行なうに加え、刈取部2の昇降に連係させた刈取クラッチ17の制御を行う。
すなわち、オートクラッチ手段70は、上げスイッチ67及び下げスイッチ68からの情報を基に昇降レバー29が上げ位置[U]に操作されたか、下げ位置[D]に操作されたかを判断する。
オートクラッチ手段70は、昇降レバー29が上げ位置[U]に操作されたと判断した場合、昇降シリンダ27を上げ側に切り換え操作し、昇降レバー29の上げ位置[U]への操作が解除されるまで、あるいは刈取部2が上限高さに上昇するまで刈取部2を上げ操作する。このとき、オートクラッチ手段70は、昇降センサ61による検出情報と、制御装置31が備える連結高さ設定手段76による設定連結高さとを基に、刈取部2の連結高さが設定連結高さよりも高くなったか否かを判断し、刈取部2の連結高さが設定連結高さよりも高くなったと判断した場合、刈取クラッチ17の操作シリンダ27を切り側に操作して刈取クラッチ17を切り状態に切り換え操作する。
【0051】
オートクラッチ手段70は、昇降レバー29が下げ位置[D]に操作されたと判断した場合、昇降シリンダ27を下げ側に切り換え操作し、昇降レバー29の下げ位置[D]への操作が解除されるまで、あるいは刈取部2が下限高さに下降するまで刈取部2を下げ操作する。このとき、オートクラッチ手段70は、昇降センサ61による検出情報と連結高さ設定手段76による設定連結高さとを基に、刈取部2の連結高さが設定連結高さ以下の高さになったか否かを判断し、刈取部2の連結高さが設定連結高さ以下の高さになったと判断した場合、刈取クラッチ17の操作モータ36を入り側に操作して刈取クラッチ17を入り状態に切り換え操作し、後述する変速制御に移行する(図15参照)。
設定連結高さとして、作業走行に使用される連結高さのうちの最も高い連結高さよりもやや高い連結高さであって、下限の連結高さと上限の連結高さとの間に位置する連結高さを設定してある。
【0052】
図9は、刈取部昇降手段72による刈取部昇降制御を示すフロー図である。この図に示すように、刈取部昇降手段72は、上げスイッチ67及び下げスイッチ68からの情報を基に昇降レバー29が上げ位置[U]に操作されたか、下げ位置[D]に操作されたかを判断する。
刈取部昇降手段72は、昇降レバー29が上げ位置[U]に操作されたと判断した場合、昇降シリンダ27を上げ側に切り換え操作し、昇降レバー29の上げ位置[U]への操作が解除されるまで、あるいは刈取部2が上限高さに上昇するまで刈取部2を上げ操作する。
刈取部昇降手段72は、昇降レバー29が下げ位置[D]に操作されたと判断した場合、昇降シリンダ27を下げ側に切り換え操作し、昇降レバー29の下げ位置[D]への操作が解除されるまで、あるいは刈取部2が下限高さに下降するまで刈取部2を下げ操作する。
【0053】
図10は、刈取クラッチ制御手段73による刈取クラッチ制御を示すフロー図である。この図に示すように、刈取クラッチ制御手段73は、入りスイッチ65及び切りスイッチ66からの情報を基に刈取クラッチレバー26が入り位置[ON]に操作されたか、切り位置[OFF]に操作されたかを判断する。
刈取クラッチ制御手段73は、刈取クラッチレバー26が入り位置[ON]に操作されたと判断した場合、操作モータ36を入り側に切り換え操作して刈取クラッチ17を入り状態に切り換え操作する。
刈取クラッチ制御手段73は、刈取クラッチレバー26が切り位置[OFF]に操作されたと判断した場合、操作モータ36を切り側に切り換え操作して刈取クラッチ17を切り状態に切り換え操作し、後述する変速制御に移行する(図15参照)。
【0054】
状態設定手段75は、走行機体に設定する状態としての移動走行状態、標準刈取状態、低速刈取状態を設定している。図5は、移動走行状態、標準刈取状態、低速刈取状態を示す説明図である。この図に示すように、移動走行状態は、走行変速装置7の油圧モータ7Mを高速位置に切り換え操作し、刈取クラッチ17を切り状態に切り換え操作し、刈取変速装置18を低速位置に切り換え操作した状態を設定している。標準刈取状態は、走行変速装置7の油圧モータ7Mを標準速位置に切り換え操作し、刈取クラッチ17を入り状態に切り換え操作し、刈取変速装置18を低速位置に切り換え操作した状態を設定している。低速刈取状態は、走行変速装置7の油圧モータ7Mを低速位置に切り換え操作し、刈取クラッチ17を入り状態に切り換え操作し、刈取変速装置18を高速位置に切り換え操作した状態を設定している。
【0055】
制御装置31は、刈取変速スイッチ35及び走行変速スイッチ34が操作されると、刈取変速スイッチ35及び走行変速スイッチ34からの指令を基に走行制御手段74による走行制御を行なわせる。
【0056】
図11は、走行制御手段74による走行制御を示すフロー図である。この図に示すように、走行制御手段74は、走行変速スイッチ34及び刈取変速スイッチ35が操作されると、走行変速センサ38、刈取変速センサ40、刈取クラッチセンサ62による検出情報を基に、移動走行状態と標準刈取状態と低速刈取状態のいずれが設定されているかを判断する。
【0057】
走行制御手段74は、走行変速スイッチ34が操作されたと判断し、かつ走行機体に移動走行状態が設定されていると判断した場合、標準制御を行なう。走行制御手段74は、走行変速スイッチ34が操作されたと判断し、かつ走行機体に標準刈取状態が設定されていると判断した場合、移動制御を行なう。走行制御手段74は、走行変速スイッチ34が操作されたと判断し、かつ走行機体に低速刈取状態が設定されていると判断した場合、移動制御を行なう。
【0058】
走行制御手段74は、刈取変速スイッチ35が操作されたと判断し、かつ走行機体に標準刈取状態が設定されていると判断した場合、低速制御を行なう。走行制御手段74は、刈取変速スイッチ35が操作されたと判断し、かつ走行機体に低速刈取状態が設定されていると判断した場合、標準制御を行なう。走行制御手段74は、刈取変速スイッチ35が操作されたと判断し、かつ走行機体に移動走行状態が設定されていると判断した場合、低速刈取制御を行なう。
【0059】
図12は、走行制御手段74による標準制御を示すフロー図である。この図に示すように、走行制御手段74による標準制御では、走行変速装置7の油圧モータ7Mを標準速位置に切り換え操作し、刈取クラッチ17を入り状態に切り換え操作し、刈取変速装置18を低速位置に切り換え操作する。
【0060】
図13は、走行制御手段74による移動制御を示すフロー図である。この図に示すように、走行制御手段74による移動制御では、走行変速装置7の油圧モータ7Mを高速位置に切り換え操作し、刈取クラッチ17を切り状態に切り換え操作し、刈取変速装置18を低速位置に切り換え操作する。
【0061】
図14は、走行制御手段74による低速制御を示すフロー図である。この図に示すように、走行制御手段74による低速制御では、走行変速装置7の油圧モータ7Mを低速位置に切り換え操作し、刈取クラッチ17を入り状態に切り換え操作し、刈取変速装置18を高速位置に切り換え操作する。
【0062】
連係手段71は、オートクラッチ手段70、刈取クラッチ制御手段73、制御弁58の電磁操作部に連係されていることによって刈取クラッチ17と走行変速装置7とを連係させており、図8,10に示す如くオートクラッチ手段70による刈取クラッチ制御と刈取クラッチ制御手段73による刈取クラッチ制御とのいずれにおいても刈取クラッチ17を入り状態に切り換える操作が行われると、刈取クラッチ17の入り操作に連係させて走行変速装置7の変速制御を行なう。
【0063】
図15は、連係手段71による変速制御を示すフロー図である。この図に示すように、連係手段15は、オートクラッチ手段70が刈取部2の下降操作に伴って操作モータ36を入り側に操作した情報を入力することにより、あるいは刈取クラッチ制御手段73が刈取クラッチレバー26の入り位置[ON]への操作に伴って操作モータ36を入り側に操作した情報を入力することにより、刈取クラッチ17を入り状態に切り換える操作が行われたと検出する。
【0064】
連係手段71は、刈取クラッチ17を入り状態に切り換える操作が行われたことを検出し、かつ走行変速センサ38による検出情報を基に走行変速装置7の油圧モータ7Mが高速位置にあると判別した場合、オートクラッチ手段70や刈取クラッチ制御手段73に牽制信号を出力して刈取クラッチ17の入り状態への切り換わりを牽制しながら、制御弁58を切り換え操作して走行変速装置7の油圧モータ7Mを標準速位置に減速操作する。
【0065】
連係手段71は、走行変速センサ38による検出情報を基に、走行変速装置7の油圧モータ7Mが標準速位置に切り換わったと判断すると、刈取クラッチ17の入り状態への切り換わりに対する牽制を解除し、オートクラッチ手段70や刈取クラッチ制御手段73の操作による刈取クラッチ17の切り状態への切り換わりを許容する。
【0066】
すなわち、連係手段17は、昇降レバー29の下げ位置[D]への操作によってオートクラッチ手段70が刈取クラッチ17を入り状態に切り換え操作する場合においても、刈取クラッチレバー26の入り位置[ON]への操作によって刈取クラッチ制御手段73が刈取クラッチ17を入り状態に切り換え操作する場合においても、刈取クラッチ17が入り状態に切り換わるに先立って走行変速装置7の油圧モータ7Mが減速操作目標である標準速位置に切り換わるようにして走行変速装置7を高速位置から標準速位置に減速操作する。
【0067】
つまり、図16に示す作業形態を採用して収穫作業を行うに当たり、走行変速スイッチ34あるいは刈取変速スイッチ35を操作する。すると、走行制御手段74によって刈取クラッチ17が入り状態に切り換え操作され、走行制御手段74によって刈取変速装置18が低速位置あるいは高速位置に切り換え操作されて刈取部2を駆動することができる。さらに、走行制御手段74によって走行変速装置7の油圧モータ7Mが標準速位置あるいは低速位置に切り換えられて走行装置1が標準速度あるいは低速度で駆動され、倒伏が無いとか少ない植立穀稈の刈取りに適切な標準速度、あるいは倒伏が激しい植立穀稈の刈取りに適切な低速度で作業走行を行うことができる。
【0068】
未刈り地81の一端側及び他端側での作業対象列に対する作業走行を終えて移動走行地82に至ると、オートスイッチ30をオン状態[ON]に操作し、刈取クラッチレバー26をオン状態[ON]状態に操作している(オートクラッチ手段70がオンになっている)場合、昇降レバー29を上げ位置[U]に操作する。すると、オートクラッチ手段70によって刈取部2が上昇操作されるとともに刈取クラッチ17が切り状態に切り換えられ、刈取部2を上昇非作業高さにするとともに停止させながら移動走行を行なうことができる。このとき、走行変速スイッチ34あるいは刈取変速スイッチ35を操作すると、走行制御手段74によって走行変速装置7の油圧モータ7Mが高速位置に切り換えられ、走行装置1が高速で駆動されて作業走行よりも高速で移動走行を行なうことができる。
【0069】
作業走行を終えて移動走行地82に至ると、オートスイッチ30をオフ状態[OFF]に操作している(オートクラッチ手段70がオフになっている)場合、昇降レバー29を上げ位置[U]に操作し、走行変速スイッチ34あるいは刈取変速スイッチ35を操作する。すると、刈取部昇降手段72によって刈取部2が上昇操作され、走行制御手段74によって刈取クラッチ17が切り状態に切り換えられ、刈取部2を上昇非作業高さにするとともに停止させながら移動走行を行なうことができる。このとき、走行制御手段74によって走行変速装置7の油圧モータ7Mが高速位置に切り換えられ、走行装置1が高速で駆動されて作業走行よりも高速で移動走行を行なうことができる。
【0070】
移送走行地82での移動走行を終えて未刈り地81の一端側及び他端側の作業対象列に対する作業走行に入る際、オートスイッチ30をオン状態[ON]に操作し、刈取クラッチレバー26をオン状態[ON]に操作している(オートクラッチ手段70がオンになっている)場合、昇降レバー29を下げ位置[D]に操作する。すると、オートクラッチ手段70によって刈取部2が下降操作されるとともに刈取クラッチ17が入り状態に切り換えられ、刈取部2が下降作業高さになるとともに駆動されて作業走行を行なうことができる。オートクラッチ手段70が刈取クラッチ17を入り状態に切り換える操作を行うことにより、この切り換え操作を基に連係手段71が走行変速装置7の油圧モータ7Mを高速位置から標準速位置に減速操作する。このとき、連係手段71が刈取クラッチ17の入り状態への切り換わりに先立って油圧モータ7Mを標準速位置に切り換え操作することにより、油圧モータ7Mが標準速位置に切り換わってから刈取クラッチ17が入り状態に切り換わり、走行変速装置7の油圧モータ7Mが高速位置にあって刈取部2が高速駆動される事態の発生を回避しながら走行装置1を高速から標準速度に減速して駆動でき、刈取部2による刈取りに適切な標準速度で作業走行を行うことができる。
【0071】
移動走行を終えて作業走行に入る際、オートスイッチ30をオフ状態[OFF]に操作している(オートクラッチ手段70がオフになっている)場合、オートスイッチ30をオン状態[ON]に操作するとともに刈取クラッチレバー26を入り位置[ON]に操作し、かつ昇降レバー29を下げ位置[D]に操作するか、あるいは昇降レバー29を下げ位置[D]に操作するとともに走行変速スイッチ34を操作する。
【0072】
オートスイッチ30をオン状態[ON]に操作するとともに刈取クラッチレバー26を入り位置[ON]に操作し、昇降レバー29を下げ位置[D]に操作した場合、オートクラッチ手段70によって刈取部2が下降操作されるとともに刈取クラッチ17が入り状態に切り換えられ、刈取部2が下降作業高さになるとともに駆動されて作業走行を行なうことができる。オートクラッチ手段70が刈取クラッチ17を入り状態に切り換える操作を行うことにより、この切り換え操作を基に連係手段71が走行変速装置7の油圧モータ7Mを高速位置から標準速位置に減速操作する。このとき、連係手段71が刈取クラッチ17の入り状態への切り換わりに先立って油圧モータ7Mを標準速位置に切り換え操作することにより、油圧モータ7Mが標準速位置に切り換わってから刈取クラッチ17が入り状態に切り換わり、走行変速装置7の油圧モータ7Mが高速位置にあって刈取部2が高速駆動される事態の発生を回避しながら走行装置1を高速から標準速度に減速して駆動でき、刈取部2による刈取りに適切な標準速度で作業走行を行うことができる。
【0073】
昇降レバー29を下げ位置[D]に操作し、走行変速スイッチ34を操作した場合、刈取部昇降手段72によって刈取部2が下降操作され、走行制御手段74によって刈取クラッチ17が入り状態に切り換え操作され、走行制御手段74によって刈取変速装置18が低速位置に操作され、刈取部2が下降作業高さになるとともに駆動されて作業走行を行なうことができる。走行制御手段74が刈取クラッチ17を入り状態に切り換える操作を行うことにより、この切り換え操作を基に連係手段71が走行変速装置7の油圧モータ7Mを高速位置から標準速位置に減速操作する。このとき、連係手段71が刈取クラッチ17の入り状態への切り換わりに先立って油圧モータ7Mを標準速位置に切り換え操作することにより、油圧モータ7Mが標準速位置に切り換わってから刈取クラッチ17が入り状態に切り換わり、走行変速装置7の油圧モータ7Mが高速位置にあって刈取部2が高速駆動される事態の発生を回避しながら走行装置1を高速から標準速度に減速して駆動でき、刈取部2による刈取りに適切な標準速度で作業走行を行うことができる。
【0074】
図3に示すように、制御装置31は、変速牽制手段77を備えるとともに株元センサ78および刈取回転センサ79に連係されている。
【0075】
株元センサ78は、刈取部2に設けられており、供給装置24によって搬送される刈取穀稈の株元側に接触して刈取部2に穀稈が存在することを検出し、この検出結果を制御装置31に出力する。
【0076】
刈取回転センサ79は、刈取部2に設けられており、引起し装置22に動力伝達されていることを検出し、この検出結果を制御装置31に出力する。
【0077】
変速牽制手段77は、株元センサ78及び刈取回転センサ79による検出結果を基に刈取部2が作業状態にあるか否かを判断し、かつ入りスイッチ65及び切りスイッチ66による情報を基に刈取クラッチレバー26が入り位置[ON]に操作されているか否かを判断し、さらに昇降センサ61による検出情報を基に刈取部2の連結高さが連結高さ設定手段76による設定連結高さ以下の連結高さであるか、設定連結高さよりも高い連結高さであるかを判断し、これらの判断結果を基に、走行制御手段74に対して牽制作用して走行制御手段74が走行変速装置7の油圧モータ7Mを標準速位置及び低速位置から高速位置に切り換え操作することを牽制したり、走行制御手段74に対する牽制作用を解除したりする。
【0078】
つまり、作業中の場合、刈取クラッチレバー26が入り位置[ON]に操作されていると、走行変速スイッチ34及び刈取変速スイッチ35を操作しても、油圧モータ7Mが標準速位置及び低速位置から高速位置に切り換え操作されず、走行装置1を走行変速装置7によって増速側に副変速することができない。
【0079】
刈取部2が設定連結高さ以下の連結高さに下降されている場合、走行変速スイッチ34及び刈取変速スイッチ35を操作しても、油圧モータ7Mが標準速位置及び低速位置から高速位置に切り換え操作されず、走行装置1を走行変速装置7によって増速側に副変速することができない。
【0080】
刈取部2が設定連結高さよりも高い連結高さに上昇されている場合、刈取部2が作業中でなければ、走行変速スイッチ34及び刈取変速スイッチ35を操作すると、油圧モータ7Mが標準速位置及び低速位置から高速位置に切り換え操作され、走行装置1を走行変速装置7によって増速側に副変速することができる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明は、稲、麦などの穀稈を収穫対象とする刈取収穫機の他、い草などの各種の作物を収穫対象とする刈取収穫機にも利用できる。
【符号の説明】
【0082】
1 走行装置
2 刈取部
7 走行変速装置
17 刈取クラッチ
70 オートクラッチ手段
71 連係手段
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行機体に刈取部が上昇非作業高さと下降作業高さとに昇降操作自在に連結され、前記刈取部に対する伝動を入り切りする刈取クラッチ、前記走行機体の走行装置を変速駆動する走行変速装置を備えた刈取収穫機に関する。
【背景技術】
【0002】
上記した刈取収穫機では、刈取部による刈り取りを行いながらの走行、いわゆる作業走行を行なう場合、走行速度の速すぎに起因した茎稈の押し倒しなどの刈取り不良が発生することを防止できるように、走行装置を走行変速装置によって低速側に変速して駆動することが可能となり、刈取部を上昇非作業高さに上昇させて行う走行、いわゆる移動走行を行なう場合、作業走行時よりも高速で迅速に移動できるように、走行装置を走行変速装置によって高速側に変速して駆動することが可能となったものである。
この種の刈取収穫機として、従来、たとえば特許文献1に記載されたコンバインがあった。特許文献1に記載されたコンバインでは、エンジン8の出力軸8aの回動力を、伝動ベルト17を介して走行用変速装置18の入力軸18aに伝達し、この走行用変速装置18の出力軸18bの回動力を、走行用ミッションMを介して左右の走行装置1に伝達する。走行用変速装置18の出力軸18bの回動力を、刈取クラッチ19を介して刈取部3の入力軸3dに伝達する。(各符号は、公報に記載されたものである。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−262643号公報(段落〔0021〕、図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図16は、コンバインによる収穫作業において採用されることがある作業形態を示す説明図である。
この図に示すように、畦80に沿った作業走行を行なって未刈り地81の一辺側および他辺側と畦80との間に移動走行地82ができると、未刈り地81の移動走行地82に沿った方向での一端部に位置する作業対象列に対する作業走行を行なう。この作業走行を終えて一方の移動走行地82に至ると、この移動走行地82を未刈り地81の他端部に向けて移動走行する。未刈り地81の他端部に到達すると、この端部に位置する作業対象列に対する作業走行を行う。この作業走行を終えて他方の移動走行地82に至ると、この移動走行地82を未刈り地81の一端部に向けて移動走行してこの端部に位置する作業対象列に対する作業走行を行う。このように、未刈り地81の両端部での作業走行と、各移動走行地82での移動走行とを繰り返して行なうという作業形態を採用されることがある。
つまり、作業走行を終えて枕地に至ると、枕地で旋回を行なって先の作業走行箇所に隣り合って位置する次の作業対象列に対する作業走行を行なうという作業形態を採用した場合、枕地での旋回に前後進の繰り返しが必要になるなどによって時間が掛かりがちになる。これに対し、上記した如く未刈り地の一端部と他端部の間を移動走行する作業形態を採用した場合、枕地での煩わしい旋回が不要になる。
【0005】
上記した如き移動走行を行なう作業形態を採用した場合、走行装置を作業走行時よりも高速側に変速して駆動して移動走行すれば、移動走行を迅速に行なって作業をより能率よく行なうことができる。
【0006】
しかし、移動走行を作業走行よりも高速で行なった場合、移動走行を終えて作業走行に入る際、走行装置を減速して駆動する必要がある。この減速を専用の操作によって行なう必要があるとなれば、煩わしい減速操作のために良好な作業能率を得にくくなる。
【0007】
本発明の目的は、上記した如き移動走行を採用して作業を行うに当たり、能率よくかつ操作簡単に行なうことができる刈取収穫機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本第1発明は、走行機体に刈取部が上昇非作業高さと下降作業高さとに昇降操作自在に連結され、前記刈取部に対する伝動を入り切りする刈取クラッチ、前記走行機体の走行装置を変速駆動する走行変速装置を備えた刈取収穫機であって、
前記刈取クラッチを入り状態に切り換える操作によって前記走行変速装置が設定高速位置から減速操作されるように、前記刈取クラッチと前記走行変速装置とを連係させた連係手段を備えてある。
【0009】
本第1発明の構成によると、刈取クラッチを入り状態に切り換える操作が行われると、連係手段による刈取クラッチと走行変速装置との連係により、走行変速装置が自ずと設定高速位置から減速操作される。上記した作業形態での作業を行なわれる場合、移動走行を終えて作業走行に入る際、刈取部を移動走行の停止状態から駆動状態に切り換えるように、刈取クラッチの入り状態への切り換えが行われる。これにより、本第1発明の構成によると、設定高速位置を適切に設定しておけば、移動走行を作業走行よりも高速で行なっても、移動走行を終えた際、刈取クラッチを入り状態に切り換える操作を行えば、走行変速装置を減速するための特別な変速操作を行わなくとも、走行装置が移動走行の速度よりも減速して駆動されて作業走行に適切な走行速度で入ることができる。
【0010】
したがって、上記した作業形態での作業を行う場合、移動走行を作業走行よりも高速で迅速に行なって、さらに移動走行を終えて走行速度を移動用から作業用に減速するのに刈取クラッチを入り状態に切り換える操作を行うだけで済ませて、能率よくかつ操作簡単に行なうことができる。
【0011】
本第2発明は、前記刈取部を前記上昇非作業高さから前記下降作業高さに下降させる操作によって前記刈取クラッチが入り状態に切換え操作されるように、前記刈取部と前記刈取クラッチとを連係させたオートクラッチ手段を備えている。
【0012】
本第2発明の構成によると、刈取部を上昇非作業高さから下降作業高さに下降させる操作が行われると、オートクラッチ手段による刈取部と刈取クラッチとの連係により、刈取クラッチが自ずと入り状態に切り換え操作される。上記した作業形態での作業が行なわれる場合、移動走行を終えて作業走行に入る際、刈取部を移動走行の上昇非作業高さから下降作業高さに切り換えるように、刈取部を下降させる操作が行われる。これにより、本第2発明の構成によると、上記した作業形態での作業が行なわれる場合、移動走行を終えて作業走行に入る際、刈取部を移動走行時の上昇非作業高さから作業用の下降作業高さに切り換えるように刈取部を下降させる操作を行えば、刈取クラッチを入り状態に切り換えるための特別な切り換え操作を行わなくとも、刈取クラッチが移動走行の切り状態から作業用の入り状態に切り換えられ、刈取部が駆動されて作業走行に入ることができる。
【0013】
本第2発明の構成によると、刈取部を下降させる操作によって刈取クラッチが入り状態に切り換え操作されるものだから、刈取部を下降させる操作を行えば、この操作を基に行われる刈取クラッチの入り状態への切り換え操作が行われ、この切り換え操作を基に、連係手段による刈取クラッチと走行変速装置との連係によって走行変速装置が自ずと設定高速位置から減速操作される。
【0014】
したがって、上記した作業形態での作業を行う場合、移動走行を作業走行よりも高速で迅速に行なって、さらに移動走行を終えて走行速度を移動用から作業用に減速し、かつ刈取部を切り状態から入り状態に切り換えるのに刈取部を下降させる操作を行うだけで済ませて、能率よくかつ操作簡単に行なうことができる。
【0015】
本第3発明では、前記連係手段は、前記刈取クラッチが入り状態に切り換わるに先立って前記走行変速装置が減速操作目標の速度位置に切り換わるように、前記刈取クラッチと前記走行変速装置とを連係させている。
【0016】
本第3発明の構成によると、刈取クラッチを入り状態に切り換える操作によって走行変速装置が減速操作されるものでありながら、移動走行を終えて刈取走行に入る際、刈取部の駆動トラブルの発生を回避しながら刈取走行に入ることができる。
【0017】
つまり、走行装置の変速に同調して刈取部が変速されるように、走行変速装置の出力が刈取部に伝達されるものにあっては、走行変速装置が減速位置に切り換わるよりも先に刈取クラッチが入り状態に切り換わる事態が発生した場合、走行装置を移動走行の速度で駆動するよう走行変速装置によって出力される駆動力が刈取部に伝達され、刈取部が許容速度を超えた高速で駆動される問題が発生することがある。
本第3発明の構成によると、走行変速装置が減速操作目標の速度位置に切り換わり、走行装置を作業走行の速度で駆度する駆動力が走行変速装置によって出力されるようになってから刈取クラッチが入り状態に切り換わるから、走行変速装置の出力が刈取部に伝達されるものであっても、かつ刈取クラッチを入り状態に切り換える操作に連係させて走行変速装置が減速操作されても、刈取部に適切な速度の駆動力が伝達されて刈取部の駆動速度が許容速度を超えるなどの駆動トラブルが発生しない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】刈取収穫機の全体を示す側面図である。
【図2】伝動装置を示す説明図である。
【図3】操作装置を示すブロック図である。
【図4】走行変速装置の油圧回路図である。
【図5】移動走行状態、標準刈取状態、低速刈取状態を示す説明図である。
【図6】オートスイッチ及び刈取クラッチレバーの操作状態とオートクラッチ手段の状態との関係を示す説明図である。
【図7】刈取部制御を示すフロー図である。
【図8】オートクラッチ制御を示すフロー図である。
【図9】刈取部昇降制御を示すフロー図である。
【図10】刈取クラッチ制御を示すフロー図である。
【図11】走行制御を示すフロー図である。
【図12】標準制御を示すフロー図である。
【図13】移動制御を示すフロー図である。
【図14】低速制御を示すフロー図である。
【図15】変速制御を示すフロー図である。
【図16】収穫作業の作業形態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施例に係る刈取収穫機の全体を示す側面図である。この図に示すように、本発明の実施例に係る刈取収穫機は、左右一対のクローラ式の走行装置1,1によって自走するように構成され、かつ運転座席3aが装備された運転部3を有した走行機体を備え、この走行機体の機体フレームの前部に連結された刈取部2を備え、走行機体の機体フレームの後部側に走行機体横方向に並べて設けた脱穀装置4と穀粒タンク5を備えて構成されている。
【0020】
この刈取収穫機は、稲、麦などの収穫作業を行う。
つまり、刈取部2は、機体フレームに軸芯P1まわりに上下揺動自在に支持された刈取部フレーム20、この刈取部フレーム20に支持された分草具21、引起し装置22、バリカン形の刈取装置23、供給装置24を備えている。この刈取部2は、刈取部フレーム20が油圧式でかつ単動形の昇降シリンダ27によって上下に揺動操作されることにより、分草具21が地面の近くに下降した下降作業高さと、分草具21が地面から高く上昇した上昇非作業高さとに昇降する。
【0021】
刈取部2を下降作業高さに下降させて走行機体を走行させると、刈取部2は、分草具21によって植立穀稈を刈取り対象と非刈取り対象とに分草し、刈取り対象の植立穀稈を引起し装置22によって引起し処理するとともに刈取装置23によって刈取処理し、刈取り穀稈を供給装置24によって脱穀装置4の前部に搬送して脱穀フィードチェーン28の始端部に供給する。
【0022】
脱穀装置4は、脱穀フィードチェーン28によって刈取穀稈の株元側を挟持して走行機体後方向きに搬送しながら、刈取穀稈の穂先側を扱室(図示せず)に供給して脱穀処理する。穀粒タンク5は、脱穀装置4から搬送された脱穀粒を回収して貯留していく。
【0023】
走行機体は、運転座席3aの下方に設けたエンジン6を備え、このエンジン6が出力する駆動力を機体フレームの前端部に設けたミッションケース8を介して左右一対の走行装置1,1及び刈取部2に伝達する伝動装置を備えている。
【0024】
図2は、伝動装置の説明図である。この図に示すように、伝動装置は、前記ミッションケース8を備える他、このミッションケース8の上端部に連設された走行変速装置7を備えている。伝動装置は、エンジン6の出力軸6aの駆動力を、ベルトテンションクラッチで成る主クラッチ9を介して走行変速装置7の入力軸7aに伝達し、この走行変速装置7の出力軸7bの駆動力を、ミッションケース8の内部に位置するミッション(図示せず)を介して左右の走行装置1,1のクローラ駆動軸1aに伝達する。ミッションケース8の内部に位置するミッションは、走行変速装置7の出力軸7bに一体回転自在に連動した第1伝動ギヤ10に噛み合った入力ギヤ19を備え、この入力ギヤ19の駆動力を左右のクローラ駆動軸1a,1aに伝達する操向機構(図示せず)を備えている。操向機構は、入力ギヤ19の駆動力を左右のクローラ駆動軸1a,1aに伝達し、あるいは左右のクローラ駆動軸1a,1aに対する伝動を各別に絶ったり変速したりして左右の走行装置1,1を各別に駆動、停止、変速し、これによって走行機体の操向操作を行う。
【0025】
伝動装置は、走行変速装置7の出力軸7bの駆動力を、ミッションケース8の上端部に内装された刈取変速装置18に入力し、この刈取変速装置18の出力軸13の駆動力を、ベルトテンションクラッチで成る刈取クラッチ17を介して刈取部2の入力軸2aに伝達する。これにより、伝動装置は、走行変速装置7の出力軸7bの駆動力を刈取部2に伝達し、走行変速装置7による走行装置1の変速が行なわれると、走行装置1の変速に同調させて刈取部2を変速する。
【0026】
図2に示すように、刈取変速装置18は、前記第1伝動ギヤ10に噛み合った低速伝動ギヤ14、走行変速装置7の出力軸7bに第1伝動ギヤ10及び伝動軸12を介して一体回転自在に連動した第2伝動ギヤ11、この第2伝動ギヤ11に噛み合った高速伝動ギヤ15、出力軸13に一体回転自在に支持されたシフトギヤ16を備えて構成してある。
刈取変速装置18は、シフトギヤ16が摺動操作されて低速伝動ギヤ14に噛み合うことによって低速位置に切り換わり、シフトギヤ16が摺動操作されて高速伝動ギヤ15に噛み合うことによって高速位置に切り換わる。
【0027】
図2,3に示すように、走行変速装置7は、入力軸7aをポンプ軸として備えた可変容量形の油圧ポンプ7Pを備え、出力軸7bをモータ軸として備えた油圧モータ7Mを備えて構成してある。油圧モータ7Mは、油圧ポンプ7Pによって供給される圧油によって駆動される。この油圧モータ7Mは、可変容量形の油圧モータに構成してある。
【0028】
走行変速装置7は、静油圧式無段変速装置に構成されており、油圧ポンプ7Pの斜板角の変更操作が行われることにより、エンジン6からの駆動力を前進側と後進側の駆動力に変換して、かつ前進側においても後進側においても無段階に変速して左右の走行装置1,1に伝達する。
【0029】
走行変速装置7は、油圧モータ7Mの斜板角の変更操作が行われることにより、高速位置と標準速位置と低速位置とに切り換わって左右の走行装置1,1の副変速を行なう。
すなわち、走行変速装置7は、標準位置に切り換えられると、左右の走行装置1,1を植立穀稈の倒伏が無いとか少ない場合の作業走行に適切な標準速度で駆動する。走行変速装置7は、低速位置に切り換えられると、左右の走行装置1,1を標準速度よりも低速であって、植立穀稈の倒伏が激しい場合の作業走行に適切な速度で駆動する。走行変速装置7は、高速位置に切り換えられると、左右の走行装置1,1を標準速度よりも高速であって、移動走行に適切な速度で駆動する。
【0030】
図3に示すように、走行変速装置7の油圧モータ7Mの斜板角を変更する操作軸は、揺動リンクなどを利用した機械式の連係機構33を介して変速レバー43に連動されている。変速レバー43は、運転部3に走行機体の前後方向に揺動自在に設けられている。
【0031】
つまり、走行変速装置7は、変速レバー43が中立位置Nに操作されることにより、中立状態に切り換わり、油圧モータ7Mを停止させて左右の走行装置1,1に対する伝動を絶つ。走行変速装置7は、変速レバー43が中立位置Nから走行機体前方側に揺動した前進域Fに操作されることにより、前進駆動状態に切り換わり、エンジン6からの駆動力を前進駆動力に変換して左右の走行装置1,1に伝達する。走行変速装置7は、変速レバー43が中立位置Nから走行機体後方側に揺動した後進域Rに操作されることにより、後進駆動状態に切り換わり、エンジン6からの駆動力を後進駆動力に変換して左右の走行装置1,1に伝達する。
【0032】
図3に示すように、走行変速装置7は、油圧モータ7Mの斜板角を変更する操作軸に連動された油圧式の操作シリンダ56を備えており、この操作シリンダ56が制御弁58によって操作されることにより、高速位置と標準速位置と低速位置とに切り換わる。
【0033】
図4は、走行変速装置7の油圧回路図である。この図に示すように、油圧ポンプ7Pと油圧モータ7Mとは、一対の油路7cで接続されている。走行変速装置7の入力軸7aにチャージポンプ44及び油圧ポンプ60が接続されて、入力軸7aによりチャージポンプ44及び油圧ポンプ60が駆動される。チャージポンプ44から延出されたチャージ油路45が油路7cに接続され、チャージ油路45にフィルタ49が備えられている。オイルタンク46とチャージポンプ44とに亘って油路47が接続されており、油路47にフィルタ48が備えられている。油圧ポンプ60の作動油が昇降シリンダ27の制御弁に供給される。オイルタンク46はミッションケース8とは別に設けられている。
【0034】
チャージ油路45から油路57が分岐しており、制御弁58は、操作シリンダ56に対して油路57の作動油を給排操作して操作シリンダ56を操作する。チャージ油路45にリリーフ弁50が接続されている。このリリーフ弁50は、走行変速装置7を収容するケース51に接続されている。ケース51とオイルタンク46とに亘って油路52が接続され、油路52にオイルクーラー53が備えられている。
【0035】
以上の構造により、オイルタンク46の作動油が、フィルタ48、油路47、チャージポンプ44、フィルタ49及びチャージ油路45を介して走行変速装置7の油路7cに供給される。チャージ油路45の作動油が油路57及び制御弁58を介して操作シリンダ56に給排操作される。余剰の作動油がリリーフ弁50を介してケース51に排出される。走行変速装置7の各部からの作動油及び制御弁58の作動油がケース51に排出され、ケース51の作動油が油路52及びオイルクーラー53を通過してオイルタンク46に戻される。
【0036】
図3は、走行変速装置7及び刈取変速装置18の変速操作、刈取クラッチ17の入り切り操作、刈取部2の昇降操作を行う操作装置を示すブロック図である。この図に示すように、操作装置は、刈取クラッチ17を入り切り操作する電動式の操作モータ36、刈取変速装置18を変速操作する電動式の操作モータ37を備え、油圧シリンダ56の制御弁58の電磁操作部と刈取クラッチ17の操作モータ36と刈取変速装置18の操作モータ37と昇降シリンダ27とに連係された制御装置31を備え、この制御装置31に連係された刈取変速スイッチ35、走行変速スイッチ34、オートスイッチ30、刈取クラッチレバー26、昇降レバー29を備えている。制御装置31は、走行変速センサ38、刈取変速センサ40、昇降センサ61、刈取クラッチセンサ62にも連係されている。
【0037】
刈取クラッチ17の操作モータ36は、テンションアームを揺動操作することによって刈取クラッチ17を入り状態と切り状態とに切り換え操作する。刈取変速装置18の操作モータ37は、シフトフォークに連動されており、このシフトフォークを移動操作することによってシフトギヤ16を低速伝動ギヤ14に噛み合わせたり、高速伝動ギヤ15に噛み合わせたりする。
【0038】
刈取変速スイッチ35は、変速レバー43の背部に設けられている。走行変速スイッチ34は、変速レバー43の横側部に設けられている。刈取変速スイッチ35及び走行変速スイッチ34は、押し操作されると、オンに切り換わって変速指令を制御装置31に出力する。
【0039】
刈取クラッチレバー26は、運転部3に設けられており、入りスイッチ65及び切りスイッチ66を介して制御装置31に連係されている。刈取クラッチレバー26は、走行機体の前後方向に揺動操作されることにより、入り位置[ON]と切り位置[OFF]とに切り換わる。この刈取クラッチレバー26は、入り位置[ON]に操作されると、入りスイッチ65をオン操作してこの入りスイッチ65によって入り指令を制御装置31に出力する。刈取クラッチレバー26は、切り位置[OFF]に操作されると、切りスイッチ66をオン操作してこの切りスイッチ66によって切り指令を制御装置31に出力する。
【0040】
昇降レバー29は、運転部3に設けられており、上げスイッチ67及び下げスイッチ68を介して制御装置31に連係されている。昇降レバー29は、走行機体の前後方向に揺動操作されることにより、上げ位置[U]と下げ位置[D]とに切り換わる。この昇降レバー29は、上げ位置[U]に操作されると、上げスイッチ67をオン操作してこの上げスイッチ67によって上げ指令を制御装置31に出力する。昇降レバー29は、下げ位置[D]に操作されると、下げスイッチ68をオン操作してこの下げスイッチ68によって下げ指令を制御装置31に出力する。
【0041】
昇降レバー29は、走行機体の横方向にも揺動自在に支持されており、走行機体の操向操作を行うレバーにもなっている。すなわち、昇降レバー29は、中立位置に操作されると、ミッションケース8に内装の操向機構を中立状態に操作して走行機体を直進走行するように操向操作する。昇降レバー29は、中立位置から走行機体左横側に揺動操作されると、操向機構を左旋回状態に操作して走行機体を左向きに旋回走行するように操向操作する。昇降レバー29は、中立位置から走行機体右横向きに揺動操作されると、操向機構を右旋回状態に操作して走行機体を右向きに旋回走行するように操向操作する。
【0042】
走行変速センサ38は、走行変速装置7の油圧モータ7Mの斜板の操作位置を走行変速装置7の高速位置、標準速位置、低速位置として検出し、この検出結果を制御装置31に出力する。
【0043】
刈取変速センサ40は、刈取変速装置7の操作モータ37の回転位置を刈取変速装置18の低速位置、高速位置として検出し、この検出結果を制御装置31に出力する。
【0044】
オートスイッチ30は、オン状態[ON]とオフ状態[OFF]とに切り換え操作でき、オン状態[ON]に操作されると、オートクラッチ手段70をオンに切り換え操作させる指令を制御装置31に出力し、オフ状態[OFF]に切り換え操作されると、オートクラッチ手段70をオフに切り換え操作させる指令を制御装置31に出力する。
【0045】
昇降センサ61は、刈取部フレーム20の機体フレームに対する揺動位置を刈取部2の走行機体に対する連結高さとして検出し、この検出連結高さを制御装置31に出力する。
【0046】
刈取クラッチセンサ62は、刈取クラッチ17の操作モータ36の回転位置を刈取クラッチ17の入り状態及び切り状態として検出し、この検出結果を制御装置31に出力する。
【0047】
制御装置31は、マイクロコンピュータを利用して構成してあり、連係手段71、オートクラッチ手段70、刈取部昇降手段72、刈取クラッチ制御手段73、走行制御手段74、状態設定手段75を備えている。
【0048】
図6は、オートスイッチ30及び刈取クラッチレバー26の操作状態とオートクラッチ手段70の状態との関係を示す説明図である。図7は、刈取部制御を示すフロー図である。
【0049】
これらの図に示すように、制御装置31は、入りスイッチ65及び切りスイッチ66からの指令を基に、刈取クラッチレバー26が入り位置[ON]に操作されているか、切り位置[OFF]に操作されているかを判断する。制御装置31は、オートスイッチ30がオン状態[ON]に切り換え操作され、かつ刈取クラッチレバー26が入り位置[ON]に操作された場合、オートクラッチ手段74をオンに切り換え、オートクラッチ手段74によるオートクラッチ制御を行なわせる。制御装置31は、オートスイッチ30がオフ状態[OFF]に切り換え操作された場合、及びオートスイッチ30がオン状態[ON]に切り換え操作されていても刈取クラッチレバー26が切り位置[OFF]に操作されている場合、オートクラッチ手段70をオフに切り換え、刈取部昇降手段72による刈取部昇降制御、刈取クラッチ制御手段73による刈取クラッチ制御を行なわせる。
【0050】
図8は、オートクラッチ手段70によるオートクラッチ制御を示すフロー図である。この図に示すように、オートクラッチ手段70は、昇降センサ61及び操作モータ36に連係されていることによって刈取部2と刈取クラッチ17とを連係させており、オンに切り換えられると、刈取部2の昇降制御を行なうに加え、刈取部2の昇降に連係させた刈取クラッチ17の制御を行う。
すなわち、オートクラッチ手段70は、上げスイッチ67及び下げスイッチ68からの情報を基に昇降レバー29が上げ位置[U]に操作されたか、下げ位置[D]に操作されたかを判断する。
オートクラッチ手段70は、昇降レバー29が上げ位置[U]に操作されたと判断した場合、昇降シリンダ27を上げ側に切り換え操作し、昇降レバー29の上げ位置[U]への操作が解除されるまで、あるいは刈取部2が上限高さに上昇するまで刈取部2を上げ操作する。このとき、オートクラッチ手段70は、昇降センサ61による検出情報と、制御装置31が備える連結高さ設定手段76による設定連結高さとを基に、刈取部2の連結高さが設定連結高さよりも高くなったか否かを判断し、刈取部2の連結高さが設定連結高さよりも高くなったと判断した場合、刈取クラッチ17の操作シリンダ27を切り側に操作して刈取クラッチ17を切り状態に切り換え操作する。
【0051】
オートクラッチ手段70は、昇降レバー29が下げ位置[D]に操作されたと判断した場合、昇降シリンダ27を下げ側に切り換え操作し、昇降レバー29の下げ位置[D]への操作が解除されるまで、あるいは刈取部2が下限高さに下降するまで刈取部2を下げ操作する。このとき、オートクラッチ手段70は、昇降センサ61による検出情報と連結高さ設定手段76による設定連結高さとを基に、刈取部2の連結高さが設定連結高さ以下の高さになったか否かを判断し、刈取部2の連結高さが設定連結高さ以下の高さになったと判断した場合、刈取クラッチ17の操作モータ36を入り側に操作して刈取クラッチ17を入り状態に切り換え操作し、後述する変速制御に移行する(図15参照)。
設定連結高さとして、作業走行に使用される連結高さのうちの最も高い連結高さよりもやや高い連結高さであって、下限の連結高さと上限の連結高さとの間に位置する連結高さを設定してある。
【0052】
図9は、刈取部昇降手段72による刈取部昇降制御を示すフロー図である。この図に示すように、刈取部昇降手段72は、上げスイッチ67及び下げスイッチ68からの情報を基に昇降レバー29が上げ位置[U]に操作されたか、下げ位置[D]に操作されたかを判断する。
刈取部昇降手段72は、昇降レバー29が上げ位置[U]に操作されたと判断した場合、昇降シリンダ27を上げ側に切り換え操作し、昇降レバー29の上げ位置[U]への操作が解除されるまで、あるいは刈取部2が上限高さに上昇するまで刈取部2を上げ操作する。
刈取部昇降手段72は、昇降レバー29が下げ位置[D]に操作されたと判断した場合、昇降シリンダ27を下げ側に切り換え操作し、昇降レバー29の下げ位置[D]への操作が解除されるまで、あるいは刈取部2が下限高さに下降するまで刈取部2を下げ操作する。
【0053】
図10は、刈取クラッチ制御手段73による刈取クラッチ制御を示すフロー図である。この図に示すように、刈取クラッチ制御手段73は、入りスイッチ65及び切りスイッチ66からの情報を基に刈取クラッチレバー26が入り位置[ON]に操作されたか、切り位置[OFF]に操作されたかを判断する。
刈取クラッチ制御手段73は、刈取クラッチレバー26が入り位置[ON]に操作されたと判断した場合、操作モータ36を入り側に切り換え操作して刈取クラッチ17を入り状態に切り換え操作する。
刈取クラッチ制御手段73は、刈取クラッチレバー26が切り位置[OFF]に操作されたと判断した場合、操作モータ36を切り側に切り換え操作して刈取クラッチ17を切り状態に切り換え操作し、後述する変速制御に移行する(図15参照)。
【0054】
状態設定手段75は、走行機体に設定する状態としての移動走行状態、標準刈取状態、低速刈取状態を設定している。図5は、移動走行状態、標準刈取状態、低速刈取状態を示す説明図である。この図に示すように、移動走行状態は、走行変速装置7の油圧モータ7Mを高速位置に切り換え操作し、刈取クラッチ17を切り状態に切り換え操作し、刈取変速装置18を低速位置に切り換え操作した状態を設定している。標準刈取状態は、走行変速装置7の油圧モータ7Mを標準速位置に切り換え操作し、刈取クラッチ17を入り状態に切り換え操作し、刈取変速装置18を低速位置に切り換え操作した状態を設定している。低速刈取状態は、走行変速装置7の油圧モータ7Mを低速位置に切り換え操作し、刈取クラッチ17を入り状態に切り換え操作し、刈取変速装置18を高速位置に切り換え操作した状態を設定している。
【0055】
制御装置31は、刈取変速スイッチ35及び走行変速スイッチ34が操作されると、刈取変速スイッチ35及び走行変速スイッチ34からの指令を基に走行制御手段74による走行制御を行なわせる。
【0056】
図11は、走行制御手段74による走行制御を示すフロー図である。この図に示すように、走行制御手段74は、走行変速スイッチ34及び刈取変速スイッチ35が操作されると、走行変速センサ38、刈取変速センサ40、刈取クラッチセンサ62による検出情報を基に、移動走行状態と標準刈取状態と低速刈取状態のいずれが設定されているかを判断する。
【0057】
走行制御手段74は、走行変速スイッチ34が操作されたと判断し、かつ走行機体に移動走行状態が設定されていると判断した場合、標準制御を行なう。走行制御手段74は、走行変速スイッチ34が操作されたと判断し、かつ走行機体に標準刈取状態が設定されていると判断した場合、移動制御を行なう。走行制御手段74は、走行変速スイッチ34が操作されたと判断し、かつ走行機体に低速刈取状態が設定されていると判断した場合、移動制御を行なう。
【0058】
走行制御手段74は、刈取変速スイッチ35が操作されたと判断し、かつ走行機体に標準刈取状態が設定されていると判断した場合、低速制御を行なう。走行制御手段74は、刈取変速スイッチ35が操作されたと判断し、かつ走行機体に低速刈取状態が設定されていると判断した場合、標準制御を行なう。走行制御手段74は、刈取変速スイッチ35が操作されたと判断し、かつ走行機体に移動走行状態が設定されていると判断した場合、低速刈取制御を行なう。
【0059】
図12は、走行制御手段74による標準制御を示すフロー図である。この図に示すように、走行制御手段74による標準制御では、走行変速装置7の油圧モータ7Mを標準速位置に切り換え操作し、刈取クラッチ17を入り状態に切り換え操作し、刈取変速装置18を低速位置に切り換え操作する。
【0060】
図13は、走行制御手段74による移動制御を示すフロー図である。この図に示すように、走行制御手段74による移動制御では、走行変速装置7の油圧モータ7Mを高速位置に切り換え操作し、刈取クラッチ17を切り状態に切り換え操作し、刈取変速装置18を低速位置に切り換え操作する。
【0061】
図14は、走行制御手段74による低速制御を示すフロー図である。この図に示すように、走行制御手段74による低速制御では、走行変速装置7の油圧モータ7Mを低速位置に切り換え操作し、刈取クラッチ17を入り状態に切り換え操作し、刈取変速装置18を高速位置に切り換え操作する。
【0062】
連係手段71は、オートクラッチ手段70、刈取クラッチ制御手段73、制御弁58の電磁操作部に連係されていることによって刈取クラッチ17と走行変速装置7とを連係させており、図8,10に示す如くオートクラッチ手段70による刈取クラッチ制御と刈取クラッチ制御手段73による刈取クラッチ制御とのいずれにおいても刈取クラッチ17を入り状態に切り換える操作が行われると、刈取クラッチ17の入り操作に連係させて走行変速装置7の変速制御を行なう。
【0063】
図15は、連係手段71による変速制御を示すフロー図である。この図に示すように、連係手段15は、オートクラッチ手段70が刈取部2の下降操作に伴って操作モータ36を入り側に操作した情報を入力することにより、あるいは刈取クラッチ制御手段73が刈取クラッチレバー26の入り位置[ON]への操作に伴って操作モータ36を入り側に操作した情報を入力することにより、刈取クラッチ17を入り状態に切り換える操作が行われたと検出する。
【0064】
連係手段71は、刈取クラッチ17を入り状態に切り換える操作が行われたことを検出し、かつ走行変速センサ38による検出情報を基に走行変速装置7の油圧モータ7Mが高速位置にあると判別した場合、オートクラッチ手段70や刈取クラッチ制御手段73に牽制信号を出力して刈取クラッチ17の入り状態への切り換わりを牽制しながら、制御弁58を切り換え操作して走行変速装置7の油圧モータ7Mを標準速位置に減速操作する。
【0065】
連係手段71は、走行変速センサ38による検出情報を基に、走行変速装置7の油圧モータ7Mが標準速位置に切り換わったと判断すると、刈取クラッチ17の入り状態への切り換わりに対する牽制を解除し、オートクラッチ手段70や刈取クラッチ制御手段73の操作による刈取クラッチ17の切り状態への切り換わりを許容する。
【0066】
すなわち、連係手段17は、昇降レバー29の下げ位置[D]への操作によってオートクラッチ手段70が刈取クラッチ17を入り状態に切り換え操作する場合においても、刈取クラッチレバー26の入り位置[ON]への操作によって刈取クラッチ制御手段73が刈取クラッチ17を入り状態に切り換え操作する場合においても、刈取クラッチ17が入り状態に切り換わるに先立って走行変速装置7の油圧モータ7Mが減速操作目標である標準速位置に切り換わるようにして走行変速装置7を高速位置から標準速位置に減速操作する。
【0067】
つまり、図16に示す作業形態を採用して収穫作業を行うに当たり、走行変速スイッチ34あるいは刈取変速スイッチ35を操作する。すると、走行制御手段74によって刈取クラッチ17が入り状態に切り換え操作され、走行制御手段74によって刈取変速装置18が低速位置あるいは高速位置に切り換え操作されて刈取部2を駆動することができる。さらに、走行制御手段74によって走行変速装置7の油圧モータ7Mが標準速位置あるいは低速位置に切り換えられて走行装置1が標準速度あるいは低速度で駆動され、倒伏が無いとか少ない植立穀稈の刈取りに適切な標準速度、あるいは倒伏が激しい植立穀稈の刈取りに適切な低速度で作業走行を行うことができる。
【0068】
未刈り地81の一端側及び他端側での作業対象列に対する作業走行を終えて移動走行地82に至ると、オートスイッチ30をオン状態[ON]に操作し、刈取クラッチレバー26をオン状態[ON]状態に操作している(オートクラッチ手段70がオンになっている)場合、昇降レバー29を上げ位置[U]に操作する。すると、オートクラッチ手段70によって刈取部2が上昇操作されるとともに刈取クラッチ17が切り状態に切り換えられ、刈取部2を上昇非作業高さにするとともに停止させながら移動走行を行なうことができる。このとき、走行変速スイッチ34あるいは刈取変速スイッチ35を操作すると、走行制御手段74によって走行変速装置7の油圧モータ7Mが高速位置に切り換えられ、走行装置1が高速で駆動されて作業走行よりも高速で移動走行を行なうことができる。
【0069】
作業走行を終えて移動走行地82に至ると、オートスイッチ30をオフ状態[OFF]に操作している(オートクラッチ手段70がオフになっている)場合、昇降レバー29を上げ位置[U]に操作し、走行変速スイッチ34あるいは刈取変速スイッチ35を操作する。すると、刈取部昇降手段72によって刈取部2が上昇操作され、走行制御手段74によって刈取クラッチ17が切り状態に切り換えられ、刈取部2を上昇非作業高さにするとともに停止させながら移動走行を行なうことができる。このとき、走行制御手段74によって走行変速装置7の油圧モータ7Mが高速位置に切り換えられ、走行装置1が高速で駆動されて作業走行よりも高速で移動走行を行なうことができる。
【0070】
移送走行地82での移動走行を終えて未刈り地81の一端側及び他端側の作業対象列に対する作業走行に入る際、オートスイッチ30をオン状態[ON]に操作し、刈取クラッチレバー26をオン状態[ON]に操作している(オートクラッチ手段70がオンになっている)場合、昇降レバー29を下げ位置[D]に操作する。すると、オートクラッチ手段70によって刈取部2が下降操作されるとともに刈取クラッチ17が入り状態に切り換えられ、刈取部2が下降作業高さになるとともに駆動されて作業走行を行なうことができる。オートクラッチ手段70が刈取クラッチ17を入り状態に切り換える操作を行うことにより、この切り換え操作を基に連係手段71が走行変速装置7の油圧モータ7Mを高速位置から標準速位置に減速操作する。このとき、連係手段71が刈取クラッチ17の入り状態への切り換わりに先立って油圧モータ7Mを標準速位置に切り換え操作することにより、油圧モータ7Mが標準速位置に切り換わってから刈取クラッチ17が入り状態に切り換わり、走行変速装置7の油圧モータ7Mが高速位置にあって刈取部2が高速駆動される事態の発生を回避しながら走行装置1を高速から標準速度に減速して駆動でき、刈取部2による刈取りに適切な標準速度で作業走行を行うことができる。
【0071】
移動走行を終えて作業走行に入る際、オートスイッチ30をオフ状態[OFF]に操作している(オートクラッチ手段70がオフになっている)場合、オートスイッチ30をオン状態[ON]に操作するとともに刈取クラッチレバー26を入り位置[ON]に操作し、かつ昇降レバー29を下げ位置[D]に操作するか、あるいは昇降レバー29を下げ位置[D]に操作するとともに走行変速スイッチ34を操作する。
【0072】
オートスイッチ30をオン状態[ON]に操作するとともに刈取クラッチレバー26を入り位置[ON]に操作し、昇降レバー29を下げ位置[D]に操作した場合、オートクラッチ手段70によって刈取部2が下降操作されるとともに刈取クラッチ17が入り状態に切り換えられ、刈取部2が下降作業高さになるとともに駆動されて作業走行を行なうことができる。オートクラッチ手段70が刈取クラッチ17を入り状態に切り換える操作を行うことにより、この切り換え操作を基に連係手段71が走行変速装置7の油圧モータ7Mを高速位置から標準速位置に減速操作する。このとき、連係手段71が刈取クラッチ17の入り状態への切り換わりに先立って油圧モータ7Mを標準速位置に切り換え操作することにより、油圧モータ7Mが標準速位置に切り換わってから刈取クラッチ17が入り状態に切り換わり、走行変速装置7の油圧モータ7Mが高速位置にあって刈取部2が高速駆動される事態の発生を回避しながら走行装置1を高速から標準速度に減速して駆動でき、刈取部2による刈取りに適切な標準速度で作業走行を行うことができる。
【0073】
昇降レバー29を下げ位置[D]に操作し、走行変速スイッチ34を操作した場合、刈取部昇降手段72によって刈取部2が下降操作され、走行制御手段74によって刈取クラッチ17が入り状態に切り換え操作され、走行制御手段74によって刈取変速装置18が低速位置に操作され、刈取部2が下降作業高さになるとともに駆動されて作業走行を行なうことができる。走行制御手段74が刈取クラッチ17を入り状態に切り換える操作を行うことにより、この切り換え操作を基に連係手段71が走行変速装置7の油圧モータ7Mを高速位置から標準速位置に減速操作する。このとき、連係手段71が刈取クラッチ17の入り状態への切り換わりに先立って油圧モータ7Mを標準速位置に切り換え操作することにより、油圧モータ7Mが標準速位置に切り換わってから刈取クラッチ17が入り状態に切り換わり、走行変速装置7の油圧モータ7Mが高速位置にあって刈取部2が高速駆動される事態の発生を回避しながら走行装置1を高速から標準速度に減速して駆動でき、刈取部2による刈取りに適切な標準速度で作業走行を行うことができる。
【0074】
図3に示すように、制御装置31は、変速牽制手段77を備えるとともに株元センサ78および刈取回転センサ79に連係されている。
【0075】
株元センサ78は、刈取部2に設けられており、供給装置24によって搬送される刈取穀稈の株元側に接触して刈取部2に穀稈が存在することを検出し、この検出結果を制御装置31に出力する。
【0076】
刈取回転センサ79は、刈取部2に設けられており、引起し装置22に動力伝達されていることを検出し、この検出結果を制御装置31に出力する。
【0077】
変速牽制手段77は、株元センサ78及び刈取回転センサ79による検出結果を基に刈取部2が作業状態にあるか否かを判断し、かつ入りスイッチ65及び切りスイッチ66による情報を基に刈取クラッチレバー26が入り位置[ON]に操作されているか否かを判断し、さらに昇降センサ61による検出情報を基に刈取部2の連結高さが連結高さ設定手段76による設定連結高さ以下の連結高さであるか、設定連結高さよりも高い連結高さであるかを判断し、これらの判断結果を基に、走行制御手段74に対して牽制作用して走行制御手段74が走行変速装置7の油圧モータ7Mを標準速位置及び低速位置から高速位置に切り換え操作することを牽制したり、走行制御手段74に対する牽制作用を解除したりする。
【0078】
つまり、作業中の場合、刈取クラッチレバー26が入り位置[ON]に操作されていると、走行変速スイッチ34及び刈取変速スイッチ35を操作しても、油圧モータ7Mが標準速位置及び低速位置から高速位置に切り換え操作されず、走行装置1を走行変速装置7によって増速側に副変速することができない。
【0079】
刈取部2が設定連結高さ以下の連結高さに下降されている場合、走行変速スイッチ34及び刈取変速スイッチ35を操作しても、油圧モータ7Mが標準速位置及び低速位置から高速位置に切り換え操作されず、走行装置1を走行変速装置7によって増速側に副変速することができない。
【0080】
刈取部2が設定連結高さよりも高い連結高さに上昇されている場合、刈取部2が作業中でなければ、走行変速スイッチ34及び刈取変速スイッチ35を操作すると、油圧モータ7Mが標準速位置及び低速位置から高速位置に切り換え操作され、走行装置1を走行変速装置7によって増速側に副変速することができる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明は、稲、麦などの穀稈を収穫対象とする刈取収穫機の他、い草などの各種の作物を収穫対象とする刈取収穫機にも利用できる。
【符号の説明】
【0082】
1 走行装置
2 刈取部
7 走行変速装置
17 刈取クラッチ
70 オートクラッチ手段
71 連係手段
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体に刈取部が上昇非作業高さと下降作業高さとに昇降操作自在に連結され、前記刈取部に対する伝動を入り切りする刈取クラッチ、前記走行機体の走行装置を変速駆動する走行変速装置を備えた刈取収穫機であって、
前記刈取クラッチを入り状態に切り換える操作によって前記走行変速装置が設定高速位置から減速操作されるように、前記刈取クラッチと前記走行変速装置とを連係させた連係手段を備えてある刈取収穫機。
【請求項2】
前記刈取部を前記上昇非作業高さから前記下降作業高さに下降させる操作によって前記刈取クラッチが入り状態に切換え操作されるように、前記刈取部と前記刈取クラッチとを連係させたオートクラッチ手段を備えている請求項1記載の刈取収穫機。
【請求項3】
前記連係手段は、前記刈取クラッチが入り状態に切り換わるに先立って前記走行変速装置が減速操作目標の速度位置に切り換わるように、前記刈取クラッチと前記走行変速装置とを連係させている請求項1又は2記載の刈取収穫機。
【請求項1】
走行機体に刈取部が上昇非作業高さと下降作業高さとに昇降操作自在に連結され、前記刈取部に対する伝動を入り切りする刈取クラッチ、前記走行機体の走行装置を変速駆動する走行変速装置を備えた刈取収穫機であって、
前記刈取クラッチを入り状態に切り換える操作によって前記走行変速装置が設定高速位置から減速操作されるように、前記刈取クラッチと前記走行変速装置とを連係させた連係手段を備えてある刈取収穫機。
【請求項2】
前記刈取部を前記上昇非作業高さから前記下降作業高さに下降させる操作によって前記刈取クラッチが入り状態に切換え操作されるように、前記刈取部と前記刈取クラッチとを連係させたオートクラッチ手段を備えている請求項1記載の刈取収穫機。
【請求項3】
前記連係手段は、前記刈取クラッチが入り状態に切り換わるに先立って前記走行変速装置が減速操作目標の速度位置に切り換わるように、前記刈取クラッチと前記走行変速装置とを連係させている請求項1又は2記載の刈取収穫機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2010−166838(P2010−166838A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−11020(P2009−11020)
【出願日】平成21年1月21日(2009.1.21)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年1月21日(2009.1.21)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
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