説明

列車運行情報報知装置

【課題】列車運行システムに影響を与えることなく実現し得る、列車運行情報の報知装置を提供する。
【解決手段】演算手段21は、計画ダイヤデータベースにアクセスして報知対象列車を特定し、特定された報知対象列車の現在位置を列車追跡の結果から取得し、実績ダイヤデータベースにアクセスして、報知対象列車について、現在位置に至る直前の駅における到着時刻又は発車時刻を取得する。そして、得られた到着時刻又は発車時刻を比較することにより、列車遅れ時間を算出する。報知手段22は、列車遅れ時間に基づいて、列車の遅れに関する情報を旅客に報知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、列車運行情報報知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、列車の運行時には、計画ダイヤと、実績ダイヤとが作成される。計画ダイヤは、予め決められた列車運行予定表であり、実績ダイヤは、列車が各駅に到着した時刻等を記録した列車運行実績表である。計画ダイヤ及び実績ダイヤは、近年の電子情報機器の発達に伴い、データベース化されているのが一般的である。
【0003】
列車運行を管理する運行管理装置では、計画ダイヤデータベースに基づいた列車運行指示を与えるとともに、線路上を走る列車を追跡し、その進行方向の信号機を制御する。
【0004】
列車運行に関する情報を旅客に知らせる手段としては、列車運行情報報知装置が知られている。従来の列車運行情報報知装置は、駅のホームを発車した列車の累積本数と、計画ダイヤデータベースとに基づいて、次に発車する列車の案内(以下、発車予告案内と称す。)を表示板又は音声で出力していた。発車予告案内の具体的な内容としては、例えば、列車の行先や、当該列車の発車時刻である。
【0005】
しかしながら、従来の列車運行情報報知装置は、駅のホームを発車した列車の累積本数と、計画ダイヤのデータベースとに基づいて、発車予告案内を出力していたので、列車ダイヤが乱れて、列車の実際の運行時刻が計画ダイヤで定められた時刻よりも遅れた場合、発車予告案内の表示板に表示される発車時刻と、実際の発車時刻とが大きくずれることになる。
【0006】
例えば、17:20に発車する予定の列車が遅れている場合、現在時刻が17:25になっても、発車予告案内の表示板には、次発列車の発車時刻が17:20である旨の表示がされる。したがって、旅客は、発車予告案内の表示板から、次発列車の発車時刻の情報を得ることができず、旅客に対するサービスが十分であるとは、言い難かった。
【0007】
また、この場合、駅員が該当遅延列車の位置を電話などで確認して、列車の到着予測時刻を構内放送で旅客に通知することとしているが、この作業は、駅員に多大な労力を強いるものであり、他の業務の遂行に支障をきたすおそれが生じるという問題があった。
【0008】
このような駅員に労力を強いる問題を解決すべく、特許文献1は、自動化された列車自動案内装置を開示している。特許文献1に開示された列車自動案内装置は、中央監視制御装置が、列車の遅れ時間を当該列車の進行方向に存在する各駅に伝送し、各駅が該当列車の到着時刻を予測し、予測した予測到着時刻等を遅延メッセージと共に表示する。
【0009】
しかしながら、特許文献1に開示された列車自動案内装置では、中央監視制御装置が、列車の遅れ情報を一方的に各駅に供給するので、各駅は、駅構内に備えられた案内装置内に、列車の遅れ情報を記憶するための新たなデータベース、及び、このデータベースの情報を処理するための情報処理装置が必要になる。したがって、新たに備えられたデータベース及び情報処理装置の分だけ、設備コストが増大するという問題があった。
【0010】
また、特許文献1に開示された列車自動案内装置は、中央監視制御装置が各駅に情報を供給する構成であるから、特許文献1に開示された列車自動案内装置を実現させるためには、中央監視制御装置のシステム構成に変更を加える必要が生じる。このため、従来から用いられている運行管理装置に影響を与えてしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平6−247308号公報 (第2−3頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の課題は、列車遅延時において、旅客に列車の遅れに関する情報を含めた出発案内情報を的確に報知し得る列車運行情報報知装置を提供することである。
【0013】
本発明のもう一つの課題は、従来から用いられている運行管理装置に影響を与えることなく実現し得る列車運行情報報知装置を提供することである。
【0014】
本発明の更にもう一つの課題は、設備コストの増大を防止し得る列車運行情報報知装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上述した課題を解決するため、本発明に係る列車運行情報報知装置は、演算部と、報知装置とを含む。本発明に係る列車運行情報報知装置は、各駅において、列車の遅れに関する情報を含めた出発案内情報を旅客に報知する装置である。
【0016】
演算部は、計画ダイヤデータベースにアクセスして報知対象列車を特定し、特定された報知対象列車の現在位置を列車追跡の結果から取得する。演算部は、また、実績ダイヤデータベースにアクセスして、報知対象列車について、現在位置に至る直前の駅における到着時刻又は発車時刻を取得する。実績ダイヤデータベースは、列車追跡により得られたデータベースである。
【0017】
演算部は、更に、実績ダイヤデータベースにアクセスして得られた直前の駅の到着時刻又は発車時刻と、計画ダイヤデータベースにアクセスして得られた直前の駅の到着時刻又は発車時刻とを比較することにより、列車遅れ時間を算出する。
【0018】
報知装置は、駅装置に備えられ、列車遅れ時間に基づいて、報知対象列車の遅れに関する情報を含めた出発案内情報を旅客に報知する。ここで、データベースとは、系統的に整理・管理された情報の集まりをいう。
【0019】
本発明に係る列車運行情報報知装置において、演算部は、計画ダイヤデータベースにアクセスして報知対象列車を特定し、特定された報知対象列車の現在位置を列車追跡の結果から得る。そして、実績ダイヤデータベースにアクセスして、報知対象列車について、現在位置に至る直前の駅における到着時刻又は発車時刻を取得する。ここで、実績ダイヤデータベースは、列車追跡により得られたデータベースであるから、各駅に発着する列車について、実際の到着時刻又は発車時刻が記録されている。従って、実績ダイヤデータベースにアクセスすることにより、現在位置に至る直前の駅における到着時刻又は発車時刻を正確に知ることができる。
【0020】
また、演算部は、実績ダイヤデータベースにアクセスして得られた直前の駅の到着時刻又は発車時刻と、計画ダイヤデータベースにアクセスして得られた直前の駅の到着時刻又は発車時刻とを比較することにより、列車遅れ時間を算出することができる。
【0021】
報知装置は、駅装置に備えられている。このため、列車遅れ時間に基づいて、駅にいる旅客に対して、報知対象列車の遅れに関する情報を報知することができる。
【0022】
また、上述した実績ダイヤデータベースにアクセスして得られた直前の駅の到着時刻又は発車時刻は、最新のデータである。このため、本発明では、最新のデータに基づいた的確な情報、及び、実際の列車運行状況に基づいた適切な情報を旅客に報知することができる。
【0023】
本発明に係る列車運行情報報知装置は、列車追跡結果と、計画ダイヤデータベース及び実績ダイヤデータベースに蓄積された情報とを用いるものである。列車追跡を行う装置、計画ダイヤデータベース及び実績ダイヤデータベースは、通常、運行管理装置に備えられているから、本発明に係る列車運行情報報知装置は、従来から用いられている設備を用いて実現できる。このため、本発明に係る列車運行情報報知装置は、設備コストの増大を防止することができる。
【0024】
また、本発明に係る列車運行情報報知装置は、列車追跡結果と、計画ダイヤデータベース及び実績ダイヤデータベースに蓄積された情報とを用いるものであり、従来から用いられている運行管理装置に変更を加えるものではない。このため、従来から用いられている運行管理装置のプログラムの変更等を行う事態が生じないので、従来から用いられている運行管理装置に影響を与えることなく実現し得る。
【0025】
更に、本発明に係る列車運行情報報知装置を電子計算機で実現することにより、報知の自動化が可能となる。このため、従来のように駅員が遅延列車の到着時刻の予測を手計算等で行う必要がなく、異常発生時における駅員の作業負担を大幅に軽減できる。
【0026】
本発明の他の特徴及びそれによる作用効果は、添付図面を参照し、実施例によって更に詳しく説明する。
【発明の効果】
【0027】
以上述べたように、本発明によれば、次のような効果を得ることができる。
(A)列車遅延時において、旅客に列車の遅れに関する情報を含めた出発案内情報を的確に報知し得る列車運行情報報知装置を提供することができる。
(B)従来から用いられている運行管理装置に影響を与えることなく実現し得る列車運行情報報知装置を提供することができる。
(C)設備コストの増大を防止し得る列車運行情報報知装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る列車運行情報報知装置の一実施例を説明するブロック図である。
【図2】本発明に係る列車運行情報報知装置の別の実施例を説明するブロック図である。
【符号の説明】
【0029】
10 中央装置
7 運行管理装置
15 指令部
11 計画ダイヤデータベース部
12 実績ダイヤデータベース部
3 駅装置
21 演算部
22 報知装置
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1は本発明に係る列車運行情報報知装置の一実施例を説明するブロック図である。図1に示された列車運行情報報知装置は、中央装置10と、駅装置3とを含む。図1に示した列車運行情報報知装置は、中央集中型の運行管理システムである。中央集中型の運行管理システムとは、駅装置3における処理負担が小さくなるように、駅装置3の制御を中央装置10が行うシステムである。
【0031】
図1において、中央装置10は、運行管理装置7と、演算部21とを含む。駅装置3は、複数であり、報知装置22を含む。それぞれの駅装置3は、それぞれの駅に設置されている。本実施例に係る列車運行情報報知装置は、演算部21と、報知装置22とを含む。
【0032】
中央装置10において、運行管理装置7は、指令部15と、計画ダイヤデータベース部11と、実績ダイヤデータベース部12とを含む。
【0033】
計画ダイヤデータベース部11には、列車の運行に必要な計画ダイヤデータベースが蓄積されている。計画ダイヤデータベースは、例えば、始業時に、予め定められた基本ダイヤを元に、当日の事情に合わせた運休や時刻変更などを加えて作成される。予め定められた基本ダイヤとしては、例えば、平日の計画ダイヤデータや、休日の計画ダイヤデータを挙げることができる。
【0034】
実績ダイヤデータベース部12は、実績ダイヤデータベースを蓄積する。実績ダイヤデータベースは、列車が走行する路線に沿って配置された列車監視装置(図示せず)を用いて、計画ダイヤに基づいて運行している列車を追跡することにより得られたデータベースであり、各駅について、実際の到着時刻又は発車時刻が記録されている。この実績ダイヤデータベースは、従来、指令部15で、指令員に対して列車運行の実績を表示したり、終業時に実績報告日報を作成するときに用いられてきた。
【0035】
列車監視装置は、例えば、駅の構内に設置することができる。また、列車が通過する駅については、例えば、通過した瞬間を到着時刻又は発車時刻として、実績ダイヤデータベースを作成することができる。
【0036】
指令部15は、運行管理装置の中核を担う部分であり、具体的には、運転指令室である。指令部15は、実績ダイヤデータベース及び計画ダイヤデータベースの情報を分析して、列車が計画ダイヤに従って運転されているか否かを監視し、マンマシン・インタフェースで必要な指示を出す。
【0037】
例えば、工事、事故等で、列車が遅れた場合、実績ダイヤデータベースを分析して、列車ダイヤが最適な状態になるように、計画ダイヤの変更を行い、変更された計画ダイヤを計画ダイヤデータベース部11に入力する。信号機や切換装置等の連動装置は、この変更された計画ダイヤに基づいて制御される。計画ダイヤの変更の具体例としては、列車の進路変更、列車運休、臨時列車の追加、および列車時刻の変更などの運転整理等を挙げることができる。
【0038】
演算部21は、運行管理装置7の既存論理に変更を加えることなく、付加する形で実現されている。演算部21は、始業時及び所定のタイミングで、運行管理装置7の計画ダイヤデータベース及び実績ダイヤデータベースにアクセスする。また、演算部21は、列車追跡結果から必要な情報を取得する。
【0039】
本実施例において、演算部21は、列車追跡結果や、計画ダイヤデータベース及び実績ダイヤデータベースから必要な情報を取得し、取得した情報を用いて、列車遅れ時間を算出し、列車の遅れを報知するための指令を出力する。演算部21は、例えば、列車遅れ時間が所定値以上になったときのみ、列車の遅れを報知するための指令を出力してもよい。
【0040】
駅装置3において、報知装置22は、演算部21から出力された指令に従って、列車の遅れに関する情報を含めた出発案内情報を旅客に報知する。報知装置22は、例えば、表示板のように旅客の視覚に作用するものであっても、構内放送のように旅客の聴覚に作用するものであってもよい。
【0041】
旅客に報知する情報としては、列車に遅れがない場合は、例えば、計画ダイヤデータベースに収められている本来の列車番号、特急、普通等の種別、到着ホーム番号、列車の目的地、到着時刻、発車時刻、列車の現在位置等を挙げることができる。
【0042】
列車に遅れがある場合は、例えば、計画ダイヤデータベースに収められている変更された列車番号、特急、普通等の種別、到着ホーム番号、列車の目的地、本来の発車予定時刻、及び、実際の発車予測時刻、列車の現在位置、遅れた理由、遅れている時間等を挙げることができる。
【0043】
また、当駅に到着するまでの更なる遅れを見越して、駅員の判断で、到着予測時刻等に余裕時間を加える構成にする等、報知する情報を手動で変更できる構成にしてもよい。
【0044】
以下、図1を参照して、列車の遅れに関する情報を報知する手順の一例を具体的に説明する。
【0045】
本実施例に係る列車運行情報報知装置を用いた報知においては、まず、演算部21が、報知する情報を更新するか否かを判断する。例えば、先発列車が出発したタイミング、計画ダイヤが変更されたタイミング、又は、駅員が報知情報の更新を指令したタイミングで、報知する情報を更新する構成にしてもよい。
【0046】
次に、演算部21は、計画ダイヤデータベースにアクセスして報知対象列車を特定し、特定された前記報知対象列車の現在位置を列車追跡の結果から取得する。次に、演算部21は、実績ダイヤデータベースにアクセスして、前記報知対象列車について、現在位置に至る直前の駅における到着時刻を取得する。次に、演算部21は、計画ダイヤデータベースにアクセスして、前記報知対象列車について、前記直前の駅における到着時刻を取得する。
【0047】
次に、演算部21は、実績ダイヤデータベースにアクセスして得られた前記直前の駅の前記到着時刻と、計画ダイヤデータベースにアクセスして得られた前記直前の駅の前記到着時刻とを比較することにより、列車遅れ時間を算出し、列車の遅れを報知するための指令を出力する。また、本発明においては、到着時刻の代りに発車時刻を用いてもよい。
【0048】
次に、演算部21は、算出した列車遅れ時間が所定値よりも大きい場合に、「遅れ時間あり」と判断し、所定値よりも小さい場合に、「遅れ時間なし」と判断する。
【0049】
報知装置22は、演算部21が「遅れ時間あり」と判断した場合、列車の遅れに関する情報を報知し、「遅れ時間なし」と判断した場合、通常の列車情報を報知する。
【0050】
上述した本実施例に係る列車運行情報報知装置は、演算部21を含む。演算部21は、計画ダイヤデータベースにアクセスして報知対象列車を特定し、特定された報知対象列車の現在位置を列車追跡の結果から得る。そして、実績ダイヤデータベースにアクセスして、報知対象列車について、現在位置に至る直前の駅における到着時刻又は発車時刻を取得する。ここで、実績ダイヤデータベースは、列車追跡により得られたデータベースであるから、各駅に発着する列車について、実際の到着時刻又は発車時刻が記録されている。従って、実績ダイヤデータベースにアクセスすることにより、現在位置に至る直前の駅における到着時刻又は発車時刻を正確に知ることができる
また、演算部21は、計画ダイヤデータベースにアクセスして、報知対象列車について、現在位置に至る直前の駅における到着時刻又は発車時刻を取得することができる。
【0051】
演算部21は、実績ダイヤデータベースにアクセスして得られた直前の駅の到着時刻又は発車時刻と、計画ダイヤデータベースにアクセスして得られた直前の駅の到着時刻又は発車時刻とを比較することにより、列車遅れ時間を算出することができる。
【0052】
報知装置22は、駅装置3に備えられている。このため、列車遅れ時間に基づいて、駅にいる旅客に対して、報知対象列車の遅れに関する情報を報知することができる。
【0053】
また、上述した実績ダイヤデータベースにアクセスして得られた直前の駅の到着時刻又は発車時刻は、最新のデータである。このため、本実施例では、最新のデータに基づいた的確な情報を旅客に報知することが可能となる。
【0054】
本実施例に係る列車運行情報報知装置は、列車追跡結果と、計画ダイヤデータベース及び実績ダイヤデータベースに蓄積された情報とを用いるものである。列車追跡を行う装置、計画ダイヤデータベース及び実績ダイヤデータベースは、通常、運行管理装置に備えられているから、本実施例に係る列車運行情報報知装置は、従来から用いられている設備を用いて実現できる。このため、本実施例に係る列車運行情報報知装置は、設備コストの増大を防止することができる。
【0055】
また、本実施例に係る列車運行情報報知装置は、列車追跡結果と、計画ダイヤデータベース及び実績ダイヤデータベースに蓄積された情報とを用いるものであり、従来から用いられている運行管理装置に変更を加えるものではない。
【0056】
すなわち、本実施例において、演算部21は、列車ダイヤの作成や列車制御指令を担当する運行管理装置7の既存論理に変更を加えることなく、付加する形で実現されている。また、演算部21は、列車追跡結果や、計画ダイヤデータベース部11及び実績ダイヤデータベース部12の情報を取得するだけで、指令部15、計画ダイヤデータベース部11及び実績ダイヤデータベース部12には、全く影響を与えない。
【0057】
このため、従来から用いられている運行管理装置のプログラムの変更等を行う事態が生じないので、従来から用いられている運行管理装置に影響を与えることなく実現し得る。
【0058】
また、運行管理装置7の既存論理に変更を加えることなく、付加する形で演算部21が実現されているので、各駅の駅員が演算部21に指令を発した場合でも、運行管理装置7は影響を受けることがない。このため、各駅の駅員は、従来から用いられている運行管理装置7に影響を与えることなく列車運行情報報知装置を操作することができる。
【0059】
従来、実績ダイヤデータベースは、指令室で、ダイヤ管理を行うためにのみ、用いられていた。これに対し、本実施例に係る列車運行情報報知装置は、運行状況を報知するにあたって、中央装置に備えられた計画ダイヤデータベースにアクセスして報知対象列車を特定し、特定された報知対象列車の現在位置を列車追跡の結果から取得し、中央装置に備えられた実績ダイヤデータベースにアクセスして、報知対象列車について、現在位置に至る直前の駅における到着時刻又は発車時刻を取得し、実績ダイヤデータベースにアクセスして得られた直前の駅の到着時刻又は発車時刻と、計画ダイヤデータベースにアクセスして得られた直前の駅の到着時刻又は発車時刻とを比較することにより、列車遅れ時間を算出する。このため、実際の列車運行状況に基づいた適切な情報を旅客に報知することができる。
【0060】
更に、本実施例に係る列車運行情報報知装置を電子計算機で実現することにより、報知の自動化が可能となる。このため、従来のように駅員が遅延列車の到着時刻の予測を手計算等で行う必要がなく、異常発生時における駅員の作業負担を大幅に軽減できる。
【0061】
また、本実施例に係る列車運行情報報知装置は、駅員が演算部21に対して報知情報の更新を指令すれば、所望するタイミングで、最新の列車状況に関する情報を取得することができ、旅客に対して適切なタイミングで報知を行なうことができる。
【0062】
図2は本発明に係る列車運行情報報知装置の別の実施例を説明するブロック図である。図2において、図1に現れた構成部分と同一の構成部分については、同一の参照符号を付し、重複説明を省略する。
【0063】
図2に示された列車運行情報報知装置は、中央装置10と、駅装置3とを含む。図2に示した列車運行情報報知装置は、駅分散型の運行管理システムである。駅分散型の運行管理システムとは、中央装置10の処理負担が小さくなるように、駅装置3での処理負担を増やしたシステムである。
【0064】
図2において、中央装置10は、運行管理装置7を含む。運行管理装置7は、指令部15と、計画ダイヤデータベース部11と、実績ダイヤデータベース部12とを含む。計画ダイヤデータベース部11には、列車の運行に必要な計画ダイヤがデータベースに蓄積されている。
【0065】
駅装置3は、複数であり、演算部21と、報知装置22と、第2の計画ダイヤデータベース部111と、第2の指令部151とを含む。それぞれの駅装置3は、それぞれの駅に設置されている。それぞれの駅装置3に含まれる第2の計画ダイヤデータベース部111は、計画ダイヤデータベース部11に蓄積された計画ダイヤデータベースのうち、当該駅装置3に必要な部分のみが蓄積されている。第2の指令部151は、指令部15の処理負担が小さくなるように、当該駅装置3に必要な処理を行なう。
【0066】
駅装置3において、演算部21は、所定のタイミングで、第2の計画ダイヤデータベース部111及び実績ダイヤデータベース部12にアクセスし、第2の計画ダイヤデータベース部111に蓄積された計画ダイヤデータベース、及び、実績ダイヤデータベースから必要な情報を取得する。また、演算部21は、通信回線を介して、必要な列車追跡結果を取得する。そして、演算部21は、取得した情報を用いて、列車遅れ時間を算出し、列車の遅れを報知するための指令を出力する。
【0067】
報知装置22は、演算部21から出力された指令に従って、列車の遅れに関する情報を含めた出発案内情報を旅客に報知する。
【0068】
本実施例に係る列車運行情報報知装置は、図1に示した本発明に係る列車運行情報報知装置と同様に、演算部と、報知装置とを含む。このため、図1に示した本発明に係る列車運行情報報知装置と同様の優れた作用効果を奏することができる。
【0069】
以上、好ましい実施例を参照して本発明の内容を具体的に説明したが、本発明の基本的技術思想及び教示に基づいて、当業者であれば、種々の変形態様を採り得ることは自明である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
演算部と、報知装置とを含み、各駅において、列車の遅れに関する情報を含めた出発案内情報を旅客に報知する装置であって、
前記演算部は、
計画ダイヤデータベースにアクセスして報知対象列車を特定し、特定された前記報知対象列車の現在位置を列車追跡の結果から取得し、
列車追跡により得られた実績ダイヤデータベースにアクセスして、前記報知対象列車について、現在位置に至る直前の駅における到着時刻又は発車時刻を取得し、
前記実績ダイヤデータベースにアクセスして得られた前記直前の駅の前記到着時刻又は発車時刻と、前記計画ダイヤデータベースにアクセスして得られた前記直前の駅の到着時刻又は発車時刻とを比較することにより、列車遅れ時間を算出し、
前記報知装置は、駅装置に備えられ、前記列車遅れ時間に基づいて、報知対象列車の遅れに関する情報を含めた出発案内情報を旅客に報知する
列車運行情報報知装置。
【請求項2】
請求項1に記載された列車運行情報報知装置であって、
前記計画ダイヤデータベース、前記実績ダイヤデータベース及び前記演算部は、中央装置に備えられている
列車運行情報報知装置。
【請求項3】
請求項1に記載された列車運行情報報知装置であって、
前記実績ダイヤデータベースは、中央装置に備えられており、
前記演算部は、駅装置に備えられており、
前記計画ダイヤデータベースは、前記中央装置及び前記駅装置に備えられている
列車運行情報報知装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−234580(P2009−234580A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−168632(P2009−168632)
【出願日】平成21年7月17日(2009.7.17)
【分割の表示】特願2003−282084(P2003−282084)の分割
【原出願日】平成15年7月29日(2003.7.29)
【出願人】(000004651)日本信号株式会社 (720)
【Fターム(参考)】