説明

利得制御回路

【課題】 周囲温度の影響を受けずに利得を一定に抑えられる利得制御回路を提供する。
【解決手段】 電源端子Bに接続された可変抵抗手段21と、利得制御用電圧によって可変抵抗手段21の抵抗値を制御する制御手段25と、可変抵抗手段21を介して電源電圧が供給される増幅用トランジスタ22とを備え、可変抵抗手段21と増幅用トランジスタ22のコレクタとの間に電流検出用抵抗23を介挿し、電流検出用抵抗23に生じる降下電圧を検出する電圧検出手段26を設け、電圧検出手段26によって検出した降下電圧を制御手段25に帰還して電流検出用抵抗23に流れる電流の増減を抑えるように可変抵抗手段21の抵抗値を制御した

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に携帯電話のパワーアンプ等に好適な利得制御回路に関する。
【背景技術】
【0002】
図2に示す従来の利得制御回路はエミッタ接地の増幅回路の差動回路を組み合わせたものである。エミッタ接地の増幅回路はトランジスタ1と、ピンダイオードの可変抵抗素子5と、抵抗7とから構成される。トランジスタ1のエミッタ電流のうち、直流バイアス分はトランジスタ2、3で差動的に分流する。トランジスタ4によってエミッタ電流は定まる。入力信号はトランジスタ1によって増幅される。トランジスタ1のエミッタ側で信号分はインダクタンス6で阻止されるので利得はコレクタ抵抗7と可変抵抗素子5の交流抵抗の比で定まる。
【0003】
可変抵抗素子5の交流抵抗は可変抵抗素子5に流れる直流バイアス電流に反比例して変わる。よって、可変抵抗素子5に流れる直流バイアス電流でトランジスタ1の利得を可変できる。
【0004】
可変抵抗素子5に流す直流バイアス電流はトランジスタ2のベースに入る制御電圧と抵抗10、11によって設定したトランジスタ3のベース電圧との差によって定めた。制御電圧で可変抵抗素子5に流れる直流バイアス電流を変えてもトランジスタ2と3に流れる電流の和であるトランジスタ1に流れる直流バイアス電流は、トランジスタ4における抵抗12、13、14によって設定でき、一定である。
【0005】
この構成によれば、制御電圧を変えることで利得を変えることができる(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
【特許文献1】特公平07−040652号公報(第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
制御電圧が一定であっても、周囲温度が変化すると可変抵抗素子5に流れる直流バイアス電流が変化してトランジスタ1の利得が変化してしまうという問題がある。
【0008】
本発明は、周囲温度の影響を受けずに利得を一定に抑えられる利得制御回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の解決手段として、電源端子に接続された可変抵抗手段と、利得制御用電圧によって前記可変抵抗手段の抵抗値を制御する制御手段と、前記可変抵抗手段を介して電源電圧が供給される増幅用トランジスタとを備え、前記可変抵抗手段と前記増幅用トランジスタのコレクタとの間に電流検出用抵抗を介挿し、前記電流検出用抵抗に生じる降下電圧を検出する電圧検出手段を設け、前記電圧検出手段によって検出した降下電圧を前記制御手段に帰還して前記電流検出用抵抗に流れる電流の増減を抑えるように前記可変抵抗手段の抵抗値を制御した。
【0010】
また、第2の解決手段として、前記可変抵抗手段を第1のPチャンネル電界効果トランジスタで構成し、前記制御手段を第1のオペアンプで構成すると共に、前記電圧検出手段を第2のオペアンプで構成し、第2のオペアンプによって検出した前記降下電圧に比例する出力電圧と前記制御電圧とを前記第1のオペアンプに入力し、前記第2のオペアンプの出力電圧を前記第1のPチャンネル電界効果トランジスのゲートに入力した。
【0011】
また、第3の解決手段として、前記電源端子に接続されると共に、前記増幅用トランジスタのコレクタに前記電源電圧を供給する第2のPチャンネル電界効果トランジスタを設け、前記増幅用トランジスタのコレクタと前記第2のPチャンネル電界効果トランジスタとを接続し、前記第1のオペアンプの出力電圧を前記第2のPチャンネル電界効果トランジスタのゲートに入力した。
【0012】
また、第4の解決手段として、前記第2のPチャンネル電界効果トランジスタのゲート幅を前記第1のPチャンネル電界効果トランジスタのゲート幅よりも大きくした。
【0013】
また、第5の解決手段として、前記第2のPチャンネル電界効果トランジスタのゲート幅を前記第1のPチャンネル電界効果トランジスタのゲート幅の100倍以上にした。
【発明の効果】
【0014】
第1の解決手段によれば、電源端子に接続された可変抵抗手段と、利得制御用電圧によって可変抵抗手段の抵抗値を制御する制御手段と、可変抵抗手段を介して電源電圧が供給される増幅用トランジスタとを備え、可変抵抗手段と増幅用トランジスタのコレクタとの間に電流検出用抵抗を介挿し、電流検出用抵抗に生じる降下電圧を検出する電圧検出手段を設け、電圧検出手段によって検出した降下電圧を制御手段に帰還して電流検出用抵抗に流れる電流の増減を抑えるように可変抵抗手段の抵抗値を制御したので、温度変化によって増幅用トランジスタの電流が変化しようとしてもその変化が抑えられる。
【0015】
また、第2の解決手段によれば、可変抵抗手段を第1のPチャンネル電界効果トランジスタで構成し、制御手段を第1のオペアンプで構成すると共に、電圧検出手段を第2のオペアンプで構成し、第2のオペアンプによって検出した降下電圧に比例する出力電圧と制御電圧とを第1のオペアンプに入力し、第2のオペアンプの出力電圧を前記第1のPチャンネル電界効果トランジスのゲートに入力したので、汎用の部品を使用して簡単な構成で増幅用トランジスタの電流変化を抑えられる。
【0016】
また、第3の解決手段によれば、電源端子に接続されると共に、増幅用トランジスタのコレクタに電源電圧を供給する第2のPチャンネル電界効果トランジスタを設け、増幅用トランジスタのコレクタと第2のPチャンネル電界効果トランジスタとを接続し、第1のオペアンプの出力電圧を第2のPチャンネル電界効果トランジスタのゲートに入力したので、増幅用トランジスタのコレクタ電圧を高くできる。
【0017】
また、第4の解決手段によれば、第2のPチャンネル電界効果トランジスタのゲート幅を第1のPチャンネル電界効果トランジスタのゲート幅よりも大きくしたので、増幅用トランジスタのコレクタ電圧を一層高くでき、携帯用機器に好適である。
【0018】
また、第5の解決手段によれば、第2のPチャンネル電界効果トランジスタのゲート幅を第1のPチャンネル電界効果トランジスタのゲート幅の100倍以上にしたので、増幅用トランジスタのコレクタ電流の大部分を第2のPチャンネル電界効果トランジスタから流すことになり、コレクタ電圧を最大限に高くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1に本発明の第1実施形態を示す。電源端子Bに接続された第1の可変抵抗手段21を介して増幅用トランジスタ22に電源電圧が供給される。第1の可変抵抗手段21と増幅用トランジスタ22との間には、抵抗値の小さな電流検出用抵抗23が介挿され、さらに、電流検出用抵抗23と増幅用トランジスタ22のコレクタとの間には負荷24が介挿される。第1の可変抵抗手段21は電流入力端と、電流出力端と、制御端とを有する3端子型の半導体部品で構成され、電流入力端と制御端との間の電圧差によって流れる電流が制御され、例えば、C−MOSで構成された第1のPチャンネル電界効果トランジスタがそれである。そして、電流入力端であるソースが電源端子Bに接続され、電流出力端であるドレインが電流検出用抵抗23に接続される。ゲートは制御端となる。増幅用トランジスタ22のエミッタは接地され、ベースには高周波信号が入力され、増幅された高周波信号はコレクタから出力される。
【0020】
第1の可変抵抗手段21の抵抗値は制御手段25によって制御される。制御手段25は第1のオペアンプで構成され、一方の入力端(反転入力端)にが制御電圧が入力される。制御手段25の出力電圧は可変抵抗手段21の制御端であるゲートに入力される。
【0021】
電流検出抵抗23に生じる降下電圧は電圧検出手段26によって検出される。電圧検出手段26は第2のオペアンプによって構成され、その出力電圧は制御手段25の他方の入力端(非反転入力端)に入力される。
【0022】
従って、電圧検出手段26の出力電圧が制御手段に帰還されるので、制御電圧を一定に保持した場合は増幅トランジスタ22のコレクタ電圧は一定値になるように制御される。制御電圧を変えれば、第1の可変抵抗手段21の抵抗値が変えられることで増幅用トランジスタ22のコレクタ電圧が変えられ、これによって増幅用トランジスタ22の利得が変えられる。
【0023】
ここで、制御電圧が一定に保たれている条件下で、周囲温度が変化した場合の動作について説明する。通常、PN接合を有する半導体部品に流れる電流は周囲温度が上昇すると増加する。増幅用トランジスタ22のコレクタ電流がそれである。コレクタ電流の増加に伴って電流検出抵抗23の両端間の電圧は大きくなるので。電圧検出手段26の出力電圧は高くなる。この出力電圧が制御手段25に入力されることで、制御手段25の出力電圧も高くなる。この出力電圧は第1の可変抵抗手段21の制御端に入力されることでソースとゲート間の電圧差が小さくなり、流れる電流が減少する。すなわち、抵抗値が大きくなる。この結果、増幅用トランジスタ22のコレクタ電流が減少する方向に制御され、温度による電流変化を抑える。
【0024】
図2は第2実施形態を示す。第2実施形態では第2の可変抵抗手段27が追加される。第2の可変抵抗手段27も第2のPチャンネル電界効果トランジスタで構成される。第2の可変抵抗手段27の電流入力端は電源端子Bに接続され、電流出力端は増幅用トランジスタ22のコレクタに接続される。すなわち、電流出力端と増幅用トランジスタ22のコレクタとの間には、増幅トランジスタ22の負荷以外には電流が流れることで電圧降下を発生する部品が介在されていない。そして、制御手段25の出力電圧は第2の可変抵抗手段27の制御端にも入力される。
【0025】
この実施形態においても、図1と同様に温度による電流変化が抑えられるが、第2の可変抵抗手段27から直接に増幅用トランジスタ22に給電されるので、コレクタ電圧を高くすることができる。電池駆動される携帯用機器に好適である。
【0026】
なお、第1の可変抵抗手段21と第2の可変抵抗手段27としてそれぞれ第1のPチャンネル電界効果トランジスタ、第2のPチャンネル電界効果トランジスタを使用した場合、第2のPチャンネル電界効果トランジスタのゲート幅を第1のPチャンネル電界効果トランジスタのゲート幅よりも、例えば100倍以上大きくすることで、増幅用トランジスタ22のコレクタ電流の大部分は第2のPチャンネル電界効果トランジスタから流れることになり、コレクタ電圧を一層高くすることができる。第1のPチャンネル電界効果トランジスタには温度による電流変化を検出するのに必要な最小限の電流を流せばよい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の利得制御回路における第1の実施形態の構成を示す回路図である。
【図2】本発明の利得制御回路における第2の実施形態の構成を示す回路図である。
【図3】従来の利得制御回路の構成を示す回路図である。
【符号の説明】
【0028】
21:第1の可変抵抗手段
22:増幅用トランジスタ
23:電流検出抵抗
24:負荷
25:制御手段
26:電圧検出手段
27:第2の可変抵抗手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源端子に接続された可変抵抗手段と、利得制御用電圧によって前記可変抵抗手段の抵抗値を制御する制御手段と、前記可変抵抗手段を介して電源電圧が供給される増幅用トランジスタとを備え、前記可変抵抗手段と前記増幅用トランジスタのコレクタとの間に電流検出用抵抗を介挿し、前記電流検出用抵抗に生じる降下電圧を検出する電圧検出手段を設け、前記電圧検出手段によって検出した降下電圧を前記制御手段に帰還して前記電流検出用抵抗に流れる電流の増減を抑えるように前記可変抵抗手段の抵抗値を制御したことを特徴とする利得制御回路。
【請求項2】
前記可変抵抗手段を第1のPチャンネル電界効果トランジスタで構成し、前記制御手段を第1のオペアンプで構成すると共に、前記電圧検出手段を第2のオペアンプで構成し、第2のオペアンプによって検出した前記降下電圧に比例する出力電圧と前記制御電圧とを前記第1のオペアンプに入力し、前記第2のオペアンプの出力電圧を前記第1のPチャンネル電界効果トランジスのゲートに入力したことを特徴とする請求項1に記載の利得制御回路。
【請求項3】
前記電源端子に接続されると共に、前記増幅用トランジスタのコレクタに前記電源電圧を供給する第2のPチャンネル電界効果トランジスタを設け、前記増幅用トランジスタのコレクタと前記第2のPチャンネル電界効果トランジスタとを接続し、前記第1のオペアンプの出力電圧を前記第2のPチャンネル電界効果トランジスタのゲートに入力したことを特徴とする請求項2に記載の利得制御回路。
【請求項4】
前記第2のPチャンネル電界効果トランジスタのゲート幅を前記第1のPチャンネル電界効果トランジスタのゲート幅よりも大きくしたことを特徴とする請求項3に記載の利得制御回路。
【請求項5】
前記第2のPチャンネル電界効果トランジスタのゲート幅を前記第1のPチャンネル電界効果トランジスタのゲート幅の100倍以上にしたことを特徴とする請求項4に記載の利得制御回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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