説明

制御されたデリバリーシステム

本発明は、非ポリマー性キャリア材料および麻酔薬を含有する新規麻酔組成物に関するが、この組成物は、初期バーストがなく、約24時間以上持続する、持続性局所麻酔を与えるのに適している。第1の麻酔薬および第2の麻酔薬を包含する、一定の組成物も与えられる。こうした組成物において、第2の麻酔薬は、第1の麻酔薬のための溶媒であり、被験体への投与時に、初発の麻酔効果を与える。非ポリマー性キャリアは、状況に応じて、適切な糖エステルのような、高粘性液体キャリア材料とすることができる。組成物はさらに、活性物質および不活性物質を含めて、1つもしくは複数の追加成分を含めることができる。本発明の組成物を使用する、被験体の部位で持続性麻酔効果を生じる方法も、与えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、制御されたデリバリーシステムの分野、より詳細には、局所麻酔効果を与えることができる活性物質を含有する、制御されたデリバリーシステムの分野に関するものであって、このシステムは外科療法および薬物療法に関わる使用に適しており、薬剤として術後回復処置に使用するのに適している。
【背景技術】
【0002】
活性物質の制御された生分解性デリバリーシステムは、当技術分野でよく知られている。ドラッグデリバリーのための生分解性キャリアは、薬物を使い尽くしたデバイスを除去する必要性をあらかじめ回避するので有用である。
【0003】
制御されたデリバリーシステムに使用されるもっとも一般的なキャリア材料はポリマーである。生分解性ポリマー分野は、ポリ乳酸の合成および生分解性がKulkarniら、(1966) Arch. Surg. 93:839によって報告されて以来、急速に発展してきた。制御されたデリバリーシステムのためのマトリクス材料として同様に有用であると報告されている他のポリマーの例には、ポリ酸無水物、ポリグリコリドおよびラクチド-グリコリドコポリマーといったポリエステル、ポリリジンのようなポリアミノ酸、ポリエチレンオキシドのポリマーおよびコポリマー、アクリル酸末端ポリエチレンオキシド、ポリアミド、ポリウレタン、ポリオルトエステル、ポリアクリロニトリル、ならびにポリホスファゼンがある。たとえば、米国特許第4,891,225号および第4,906,474号(ポリ酸無水物);第4,767,628号(ポリラクチド、ラクチド-グリコリドコポリマー);第 4,530,840号(ポリラクチド、ポリグリコリド、およびコポリマー);ならびに第5,234,520号(歯周病治療における制御されたデリバリーのための生分解性ポリマー)を参照されたい。
【0004】
生体起源の生分解性材料はよく知られており、たとえば、架橋ゼラチンがある。ヒアルロン酸は、架橋され、生体医学用の分解性膨潤ポリマーとして使用されている(たとえば、米国特許第4,957,744号、およびDella Valleら、(1991) Polym. Mater. Sci . Eng., 62:731-735)。
【0005】
生分解性ヒドロゲルも、制御されたデリバリーシステムにおいて使用するために開発され、ホルモン、酵素、抗生物質、抗腫瘍薬、および細胞懸濁液といった、生物学的に活性のある物質のキャリアとして機能する。たとえば、米国特許第5,149,543号を参照されたい。
【0006】
ヒドロゲル組成物はまた、細胞培養および組織培養の基質、補綴用印象材、創傷パッキング材として、またはサイズ排除もしくはアフィニティクロマトグラフィー用の固相材料としても一般に使用されている。たとえば、無孔の、変形した、および/または誘導体化された、アガロースヒドロゲル組成物が、高速液体クロマトグラフィーおよびアフィニティクロマトグラフィー法に使用され(Liら、(1990) Preparative Biochem. 20:107-121)、超多孔質アガロースヒドロゲルビーズは、疎水性相互作用クロマトグラフィーの担体として使用されている(Gustavssonら、(1999) J. Chromatography 830:275-284)。
【0007】
多くの分散系も、現在、物質、とりわけ生物学的に活性な化合物のキャリアとして用いられている。医薬品および化粧品製剤に使用される分散系は、懸濁液か乳濁液のいずれかに類別することができる。懸濁液は、懸濁化剤によって液体媒体中に分散した、数ナノメートルから数百ミクロンまでのサイズの固体粒子からなる。固体粒子は、マイクロスフェア、マイクロカプセル、およびナノスフェアなどである。乳濁液は一般に、ある液体が別の液体中に分散したものであり、界面活性剤や脂質のような乳化剤の界面フィルムによって安定化されている。乳剤には、油中水型および水中油型エマルション、多重エマルション、マイクロエマルション、微小滴、およびリポソームがある。微小滴は、内側に油相のある球形の脂質層からなる単層リン脂質ベシクルであり、たとえば、米国特許第4,622,219号および第4,725,442号に記載されている。リポソームは、水に不溶性の極性脂質を水溶液と混合することによって調製される、リン脂質ベシクルである。不溶性脂質を水と混合することによって生じる、好ましくないエントロピーが、水溶液を封入した、リン脂質からなる包囲閉鎖膜の非常に規則正しいアセンブリーを形成する。
【0008】
in situでインプラントを形成する多くの系が報告されている。たとえば、米国特許第4,938,763号には、非反応性で水に不溶性の熱可塑性ポリマーを、生体適合性水溶性溶媒に溶解して液体とし、その液体を体内に入れ、溶媒を分散させて固体インプラントを生じさせることによって、インプラントを形成する方法が記載されている。ポリマー溶液は、注射器によって体内に入れることができる。このインプラントは、その周囲の空洞の形となることができる。あるいはまた、インプラントは、反応性の液体オリゴマー性ポリマーから形成することができるが、このポリマーは溶媒を含有せず、通常は硬化触媒の添加により、所定の位置で硬化して固体となる。
【0009】
局所麻酔薬送達のための、多くの、ポリマーによる制御されたデリバリーシステムが、当技術分野で報告されている。こうしたポリマーによるデリバリーシステムは、麻酔薬に適した放出制御特性を与えることができ、さらに無希釈の麻酔薬を注射することに伴う不利益(たとえば、標的部位から離れて分散すること、血流に入ること、および全身毒性)を克服することはできるが、麻酔薬の全身性の初期バースト放出を回避できないこと、またはシステムからの少なすぎる麻酔薬放出を打開するために促進剤を与える必要があることといった、ポリマーによるシステムに伴うある種の不都合を、克服することは困難である。
【発明の開示】
【0010】
(発明の概要)
目的とする麻酔薬を投与するための、非ポリマー性の制御されたデリバリーキャリアシステムが与えられる。したがって、本発明の目的は、長期間にわたって麻酔薬を放出する、長時間作用型の制御されたデリバリーシステムを提供することであり、それは、投与後少なくとも約24時間、好ましくは、投与後少なくとも約36-48時間、さらに好ましくは投与後約48-72時間、投与部位にて局所麻酔効果を与えるのに十分なシステムである。長時間作用型麻酔薬組成物からの活性麻酔薬の放出が初期バーストなしに生じることも、本発明の目的である。
【0011】
より詳細には、本発明の目的は、麻酔薬、および製薬上許容される非ポリマー性キャリアを含有する組成物を提供することである。この非ポリマー性キャリアは、麻酔薬の放出を制御して、被験体への投与後に初期バーストのない持続性局所麻酔、ならびに、少なくとも投与後約24時間、好ましくは少なくとも投与後約36-48時間、さらに好ましくは少なくとも投与後約48-72時間の持続時間を特徴とする、麻酔効果を与える。
【0012】
本発明のある態様において、非ポリマー性キャリアは、麻酔薬の一次放出制御プロフィール、または麻酔薬の擬ゼロ次放出プロフィールを与えることができる。ある実施形態において、麻酔薬は、局所麻酔薬、たとえば、アミド型もしくはエステル型局所麻酔薬である。好ましい実施形態において、麻酔薬はブピバカインであり、これはさらに遊離塩基の形で与えらることも可能である。他の実施形態において、この組成物は、その組成物を皮下投与したとき少なくとも約24時間にわたって、少なくとも約200 ng/mLの麻酔薬の持続性定常状態平均血漿中濃度(Css)を与えることができるが、好ましくは、少なくとも約250 ng/mL、もしくは少なくとも約300 ng/mL、もしくは少なくとも約350 ng/mLを与えることができる。
【0013】
本発明の別の態様において、非ポリマー性キャリアは、実質的に、水もしくは水性の生物システムに不溶性である。このような組成物において、医薬品はさらに、水もしくは水性システムにおいて分散性、溶解性、もしくは混和性である溶媒を含有することができる。したがって、この溶媒は、生物システム内に配置したとき、組成物から離れて分散、拡散、あるいは浸出することが可能な有機溶媒とすることができ、それによってキャリアはその後、凝固または沈澱して、in sisuで固体インプラントを形成することができる。
【0014】
本発明のまた別の態様において、非ポリマー性キャリアは、液体キャリア材料、好ましくは高粘性液体キャリア材料("HVLCM")であって、これは37℃で少なくとも約5,000 cPの粘度を有し、外界条件または生理的条件下でそのままでは結晶化しない。こうした液体キャリア材料は、そのキャリア材料が溶解する溶媒と混合することができる。HVLCMを使用する場合、溶媒はHVLCMの粘度を下げるのに十分なものであることが好ましい。ある実施形態において、溶媒は、ベンジルアルコールのような第2の麻酔薬であってもよい。組成物は、任意の適切な形態で、たとえば、乳濁液、ペースト、ゲル、スラリー、クリーム、フィルム、スプレー、固体、粒子、微粒子、粉末、インプラント、もしくは液体として、与えることができる。ある実施形態において、組成物は、たとえばその組成物が乳濁液である場合、非ポリマー性キャリアと混和しない材料をさらに含有する。このような組成物において、キャリアは乳濁液の分散相または連続相のいずれかに存在することができる。
【0015】
麻酔薬および製薬上許容される非ポリマー性キャリアを含有する組成物を提供することも、本発明の目的である。非ポリマー性キャリアは、麻酔薬の放出を制御して、被験体への投与後に持続性局所麻酔として特徴付けられる麻酔効果を与えるが、この場合組成物はさらに、その組成物を皮下投与したとき少なくとも約24時間にわたって、少なくとも約200 ng/mLの麻酔薬の持続性定常状態平均血漿中濃度(Css)を与えることができ、好ましくは、少なくとも約250 ng/mL、もしくは少なくとも約300 ng/mL、もしくは少なくとも約350 ng/mLを与えることができる。
【0016】
本発明のある態様において、組成物は少なくとも48時間にわたって、持続性定常状態平均血漿中濃度(Css)を与えることができる。別の態様において、組成物はさらに、実質的な初期バーストがないという特徴を有する。さらに他の態様において、非ポリマー性キャリアは、麻酔薬の一次放出制御プロフィール、または麻酔薬の擬ゼロ次放出プロフィールを与えることができる。ある実施形態において、麻酔薬は、局所麻酔薬、たとえば、アミド型もしくはエステル型局所麻酔薬である。好ましい実施形態において、麻酔薬はブピバカインであり、これはさらに遊離塩基の形で与えられてもよい。
【0017】
本発明の別の態様において、非ポリマー性キャリアは、実質的に、水もしくは水性の生物システムに不溶性である。このような組成物において、医薬品はさらに、水もしくは水性システムにおいて分散性、溶解性、もしくは混和性である溶媒を含有することができる。したがって、この溶媒は、生物システム内に配置したとき、組成物から離れて分散、拡散、あるいは浸出することが可能な有機溶媒とすることができ、それによってキャリアはその後、凝集または沈澱して、in sisuで固体インプラントを形成することができる。
【0018】
本発明のまた別の態様において、非ポリマー性キャリアは、液体キャリア材料、好ましくは高粘性液体キャリア材料("HVLCM")であって、これは37℃で少なくとも約5,000 cPの粘度を有し、外界条件または生理的条件下でそのままでは結晶化しない。こうした液体キャリア材料は、そのキャリア材料が溶解する溶媒と混合することができる。HVLCMを使用する場合、溶媒はHVLCMの粘度を下げるのに十分なものであることが好ましい。ある実施形態において、溶媒は、ベンジルアルコールのような第2の麻酔薬であってもよい。組成物は、任意の適切な形態で、たとえば、乳濁液、ペースト、ゲル、スラリー、クリーム、フィルム、スプレー、固体、粒子、微粒子、粉末、インプラント、もしくは液体として、与えることができる。ある実施形態において、組成物は、たとえばその組成物が乳濁液である場合、非ポリマー性キャリアと混和しない材料をさらに含有する。このような組成物において、キャリアは乳濁液の分散相または連続相のいずれかに存在することができる。
【0019】
第1の麻酔薬、第2の麻酔薬、および製薬上許容される非ポリマー性キャリアを含有する組成物を提供することが、本発明の関連目的である。組成物において、第2の麻酔薬は、第1の麻酔薬の溶媒であり、被験体に投与したとき初発の麻酔効果を与える。非ポリマー性キャリアは、第1の麻酔薬の放出を制御して、持続性局所麻酔という特徴を有する後発の麻酔効果を与えるが、それは被験体に投与して約2時間以内に、初期バーストなしに発現し、少なくとも投与後約24時間、好ましくは少なくとも投与後約36-48時間、さらに好ましくは少なくとも投与後約48-72時間、持続する。
【0020】
本発明のある態様において、非ポリマー性キャリアは、麻酔薬の一次放出制御プロフィール、または麻酔薬の擬ゼロ次放出プロフィールを与えることができる。他の実施形態において、組成物は、その組成物を皮下投与したとき少なくとも約24時間にわたって、少なくとも約200 ng/mLの麻酔薬の持続性定常状態平均血漿中濃度(Css)を与えることができ、好ましくは、少なくとも約250 ng/mL、もしくは少なくとも約300 ng/mL、もしくは少なくとも約350 ng/mLを与えることができる。他のある実施形態において、第1の麻酔薬は局所麻酔薬、たとえば、アミド型もしくはエステル型局所麻酔薬である。さらに他の実施形態において、第2の麻酔薬は、非ポリマー性キャリアのための溶媒でもある。第2の麻酔薬はアルコール、芳香族アルコール、酸もしくは酸誘導体溶媒、または前記溶媒の任意の組み合わせとすることができる。好ましい実施形態において、第2の麻酔薬はベンジルアルコールである。別の好ましい実施形態において、第1の麻酔薬はブピバカインであり、これはさらに遊離塩基の形で与えられてもよい。
【0021】
本発明のもう一つの態様において、非ポリマー性キャリアは、実質的に、水もしくは水性の生物システムに不溶性である。こうした組成物において、医薬品はさらに、水もしくは水性システムにおいて分散性、溶解性、もしくは混和性である溶媒を含有することができる。したがって、この溶媒は、生物システム内に配置したとき、組成物から離れて分散、拡散、あるいは浸出することが可能な有機溶媒とすることができ、それによってキャリアはその後、凝集または沈澱して、in sisuで固体インプラントを形成することができる。
【0022】
本発明のまた別の態様において、非ポリマー性キャリアは、液体キャリア材料、好ましくは高粘性液体キャリア材料("HVLCM")であって、これは37℃で少なくとも約5,000 cPの粘度を有し、外界条件または生理的条件下でそのままでは結晶化しない。こうした液体キャリア材料は、そのキャリア材料が溶解する溶媒と混合することができる。HVLCMを使用する場合、溶媒はHVLCMの粘性を下げるのに十分なものであることが好ましい。ある実施形態において、溶媒は、ベンジルアルコールのような第2の麻酔薬であってもよい。組成物は、任意の適切な形態で、たとえば、乳濁液、ペースト、ゲル、スラリー、クリーム、フィルム、スプレー、固体、粒子、微粒子、粉末、インプラント、もしくは液体として、与えることができる。ある実施形態において、組成物は、たとえばその組成物が乳濁液である場合、非ポリマー性キャリアと混和しない材料をさらに含有する。このような組成物において、キャリアは乳濁液の分散相または連続相のいずれかに存在することができる。
【0023】
37℃で少なくとも約5,000 cPの粘度を有し、外界条件または生理的条件下でそのままでは結晶化しない、非ポリマー性、非水溶性、高粘性液体キャリア材料("HVLCM")、第1の麻酔薬、および第2の麻酔薬を含んでなる組成物を提供することも、本発明の関連目的である。ここで、繰り返すが、第2の麻酔薬は、第1の麻酔薬のための溶媒であり、被験体に投与時に初発の麻酔効果を与える。HVLCMは、第1の麻酔薬の放出を制御して、初期バーストなしに、被験体に投与して約2時間以内に発現する持続性局所麻酔として特徴付けられる後発の麻酔効果を与え、その持続時間は投与後少なくとも約24時間、好ましくは投与後少なくとも約36-48時間、さらに好ましくは投与後少なくとも約48-72時間である。ある実施形態において、組成物は、その組成物が皮下投与されたとき、少なくとも約24時間にわたって、少なくとも約200 ng/mLの、麻酔薬の持続性定常状態平均血漿中濃度(Css)を与えることができるが、好ましくは少なくとも約250 ng/mlであり、または少なくとも約300 ng/mlであり、または少なくとも約350 ng/mlである。
【0024】
本発明のある態様において、第1の麻酔薬は、局所麻酔薬、たとえば、アミド型、もしくはエステル型局所麻酔薬である。他の実施形態において、第2の麻酔薬は、HVLCMの溶媒でもある。第2の麻酔薬は、アルコール、芳香族アルコール、酸もしくは酸誘導体溶媒、または前記溶媒の任意の組み合わせとすることができる。好ましい実施形態において、第2の麻酔薬はベンジルアルコールである。別の好ましい実施形態において、第1の麻酔薬は、遊離塩基としても提供されるブピバカインである。さらに他の好ましい実施形態において、HVLCMは、エステル、たとえば、ショ糖酢酸イソ酪酸エステルのような糖エステルである。このような組成物において、HVLCMが溶解する溶媒を提供することは有用であると考えられる。
【0025】
37℃で少なくとも約5,000 cPの粘度を有し、外界条件または生理的条件下でそのままでは結晶化しない、非ポリマー性、非水溶性、高粘性液体キャリア材料("HVLCM")、第1の麻酔薬、および第2の麻酔薬を含んでなる組成物を提供することも、本発明の関連する目的である。ここで、繰り返すが、第2の麻酔薬は、第1の麻酔薬のための溶媒であり、被験体への投与時に、初発の麻酔効果を与える。HVLCMは、第1の麻酔薬の放出を制御して、持続性局所麻酔を特徴とする後発の麻酔効果をもたらすが、この組成物はさらに、その組成物が皮下投与されたとき、少なくとも約24時間にわたって、少なくとも約200 ng/mLの、麻酔薬の持続性定常状態平均血漿中濃度(Css)を与え、好ましくは少なくとも約250 ng/ml、または少なくとも約300 ng/ml、または少なくとも約350 ng/mlのCssを与えることができる。
【0026】
本発明のある態様において、組成物は、少なくとも約48時間にわたって、持続性定常状態平均血漿中濃度(Css)を与えることができる。別の態様において、組成物はさらに、実質的な初期バーストを示さないという特徴を有する。
【0027】
本発明の別の態様において、第1の麻酔薬は、局所麻酔薬、たとえば、アミド型もしくはエステル型麻酔薬である。他の実施形態において、第2の麻酔薬はHVLCMのための溶媒でもある。第2の麻酔薬は、アルコール、芳香族アルコール、酸もしくは酸誘導体溶媒、または前記溶媒の任意の組み合わせとすることができる。好ましい実施形態において、第2の麻酔薬は、HVLCMの溶媒でもある。第2の麻酔薬は、アルコール、芳香族アルコール、酸もしくは酸誘導体溶媒、または前記溶媒の任意の組み合わせとすることができる。好ましい実施形態において、第2の麻酔薬はベンジルアルコールである。別の好ましい実施形態において、第1の麻酔薬は、遊離塩基としても提供されるブピバカインである。さらに他の好ましい実施形態において、HVLCMは、エステル、たとえば、ショ糖酢酸イソ酪酸エステルのような糖エステルである。このような組成物において、HVLCMが溶解する溶媒を提供することは有用であると考えられる。
【0028】
被験体の部位に麻酔効果を与える方法を提供することも本発明の目的である。その方法は、当該部位に、その付近に、その中に、またはそのすぐ近傍に、組成物を投与することを含んでなり、この組成物は、麻酔薬および製薬上許容される非ポリマー性キャリアを含有する。非ポリマー性キャリアは、麻酔薬の放出を制御して麻酔効果をもたらすが、それは、被験体に投与後、初期バーストのない、持続性局所麻酔という特徴を有し、ならびに投与後少なくとも約24時間の持続時間を有する。
【0029】
ある態様において、麻酔薬は、局所麻酔薬、たとえば、アミド型もしくはエステル型麻酔薬である。
【0030】
被験体の部位に麻酔効果を与える方法を提供することは、本発明の関連目的である。その方法は、当該部位に、その付近に、その中に、またはそのすぐ近傍に、組成物を投与することを含んでなり、この組成物は、麻酔薬および製薬上許容される非ポリマー性キャリアを含有する。非ポリマー性キャリアは、麻酔薬の放出を制御して、被験体に投与後に持続する局所麻酔という特徴を有する麻酔効果をもたらすが、この組成物はさらに、その組成物が皮下投与されたとき、少なくとも約24時間にわたって、少なくとも約200 ng/mLの、麻酔薬の持続性定常状態平均血漿中濃度(Css)を与えることができる。
【0031】
本発明のある態様において、麻酔薬は、局所麻酔薬、たとえば、アミド型もしくはエステル型麻酔薬である。
【0032】
被験体の部位に麻酔効果を与える方法を提供することは、さらにもう一つの本発明の目的である。その方法は、当該部位に、その付近に、その中に、またはそのすぐ近傍に、組成物を投与することを含んでなり、この組成物は、第1の麻酔薬、第2の麻酔薬、および製薬上許容される非ポリマー性キャリアを含有する。第2の麻酔薬は、第1の麻酔薬のための溶媒であり、被験体に投与したとき、その部位で初発の麻酔効果を与える。非ポリマー性キャリアは、第1の麻酔薬の放出を制御して、その部位で、持続性局所麻酔という特徴を有する、後発の麻酔効果を与えるが、その効果は初期バーストなしに投与の約2時間以内に発現し、投与後少なくとも約24時間、好ましくは、投与後少なくとも約36-48時間、さらに好ましくは投与後少なくとも約48-72時間持続する。
【0033】
本発明のある態様において、非ポリマー性キャリアは、液体キャリア材料、好ましくは高粘性液体キャリア材料("HVLCM")であって、これは非水溶性であり、37℃で少なくとも約5,000 cPの粘度を有し、さらに外界条件または生理的条件下でそのままでは結晶化しない。こうした液体キャリア材料は、そのキャリア材料が溶解する溶媒と混合することができる。HVLCMを使用する場合、溶媒はHVLCMの粘性を下げるのに十分なものであることが好ましい。ある実施形態において、溶媒は、ベンジルアルコールのような第2の麻酔薬であってもよい。
【0034】
本発明の別の態様において、第1の麻酔薬は、局所麻酔薬、たとえば、アミド型もしくはエステル型局所麻酔薬である。他の実施形態において、第2の麻酔薬はHVLCMのための溶媒でもある。第2の麻酔薬は、アルコール、芳香族アルコール、酸もしくは酸誘導体溶媒、または前記溶媒の任意の組み合わせとすることができる。好ましい実施形態において、第2の麻酔薬はベンジルアルコールである。別の好ましい実施形態において、第1の麻酔薬は、遊離塩基としても提供されるブピバカインである。さらに他の好ましい実施形態において、HVLCMは、エステル、たとえば、ショ糖酢酸イソ酪酸エステルのような糖エステルである。このような組成物において、HVLCMが溶解する溶媒を提供することは有用であると考えられる。
【0035】
本発明のさらに別の態様において、組成物は、局所投与、経皮投与、注射によって、またはインプラントとして、部位に投与される。ある実施形態において、組成物は手術創である部位に投与され、さらに組成物は、創傷内に、および/または創傷に隣接して投与される。
【0036】
被験体の部位に麻酔効果を与える方法を提供することは、さらにもう一つの本発明の目的である。その方法は、当該部位に、その付近に、その中に、またはそのすぐ近傍に、組成物を投与することを含んでなり、この組成物は、第1の麻酔薬、第2の麻酔薬、および製薬上許容される非ポリマー性キャリアを含有する。第2の麻酔薬は、第1の麻酔薬のための溶媒であり、被験体に投与したとき、その部位で初発の麻酔効果を与える。非ポリマー性キャリアは、第1の麻酔薬の放出を制御して、その部位で、持続性局所麻酔という特徴を有する、後発の麻酔効果を与えるが、この組成物はさらに、その組成物が皮下投与されたとき、少なくとも約24時間にわたって、少なくとも約200 ng/mLの、麻酔薬の持続性定常状態平均血漿中濃度(Css)を与えることができる。
【0037】
本発明のある態様において、非ポリマー性キャリアは、液体キャリア材料、好ましくは高粘性液体キャリア材料("HVLCM")であり、これは非水溶性であって、37℃で少なくとも約5,000 cPの粘度を有し、さらに外界条件または生理的条件下でそのままでは結晶化しない。こうした液体キャリア材料は、そのキャリア材料が溶解する溶媒と混合することができる。HVLCMを使用する場合、溶媒はHVLCMの粘性を下げるのに十分なものであることが好ましい。ある実施形態において、溶媒は、ベンジルアルコールのような第2の麻酔作用物質であってもよい。
【0038】
本発明の別の態様において、第1の麻酔薬は、局所麻酔薬、たとえば、アミド型もしくはエステル型局所麻酔薬である。他の実施形態において、第2の麻酔薬はHVLCMのための溶媒でもある。第2の麻酔薬は、アルコール、芳香族アルコール、酸もしくは酸誘導体溶媒、または前記溶媒の任意の組み合わせとすることができる。好ましい実施形態において、第2の麻酔薬はベンジルアルコールである。別の好ましい実施形態において、第1の麻酔薬は、遊離塩基としても提供されるブピバカインである。さらに他の好ましい実施形態において、HVLCMは、エステル、たとえば、ショ糖酢酸イソ酪酸エステルのような糖エステルである。このような組成物において、HVLCMが溶解する溶媒を提供することは有用であると考えられる。
【0039】
本発明のさらに別の態様において、組成物は、局所投与、経皮投与、注射によって、またはインプラントとして、部位に投与される。ある実施形態において、組成物は外科創傷である部位に投与されるが、さらに組成物は、創傷内に、および/または創傷に隣接して投与される。
【0040】
非ポリマー性キャリア材料が麻酔薬の放出を制御して、初期バースト放出を回避することができ、しかも少なくとも24時間、持続性麻酔効果を与えることができることは、本発明の利点である。本発明のもう一つの利点は、組成物が、目的とする投与部位および医学的応用に応じて、いくつもの異なる医薬品形態を与えるように、さらに広範なさまざまな薬理学的放出特性を与えるように、容易に構築されることである。
【0041】
当該開示および明細書を読むと、上記および他の本発明の目的、態様および利点が、当業者に想起されるものと思われる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
(具体的な実施形態の詳細な説明)
本発明を詳細に説明する前に、当然のことながら、本発明は、特に例示されたキャリア材料にも、プロセスパラメーターにも(これらは当然変動する可能性があるので)限定されない。やはり当然のことながら、本明細書で使用される専門用語は、本発明の特定の実施形態を説明することのみを目的とするものであって、限定することを意図するものではない。
【0043】
本明細書に記載のすべての刊行物、特許、および特許出願は、上記、下記のいずれであろうと、参考としてその全体を本明細書に含めるものとする。
【0044】
本明細書および添付の請求の範囲で使用されるとき、単数形の"a", "an"および"the"は、明確に他の内容を指示する場合を除き、複数の指示対象を包含することに留意すべきである。したがって、たとえば、「非ポリマー性キャリア(単数)」についての言及は、2つ以上のそうしたキャリアの混合物を包含し、「溶媒(単数)」への言及は、2つ以上のそうした溶媒の混合物を包含し、「麻酔薬(単数)」への言及は、2つ以上のそうした薬剤の混合物を包含するが、他も同様である。
【0045】
長期間にわたって麻酔薬を放出する長時間作用型放出制御システムであって、投与後少なくとも約24時間、好ましくは投与後少なくとも36-48時間、さらに好ましくは投与後少なくとも48-72時間、投与部位に局所麻酔効果をもたらすことができる、前記システムを与えることが本発明の目的である。長時間作用型麻酔薬組成物からの活性のある麻酔薬の放出が、初期バーストなしに起こることも本発明の目的である。本発明のもう一つの目的は、組成物が、長時間作用型麻酔薬組成物から活性麻酔薬を放出し、その組成物が皮下投与されたときに、少なくとも約24時間にわたって、少なくとも約200 ng/ml、好ましくは少なくとも約250 ng/mL、もしくは少なくとも約300 ng/mL、もしくは少なくとも約350 ng/mLの麻酔薬の持続性定常状態平均血漿中濃度(Css)を与えることである。
【0046】
麻酔薬および製薬上許容される非ポリマー性キャリアを含有する組成物を提供することもまた、本発明の目的である。非ポリマー性キャリアは、麻酔薬の放出を制御して、被験体に投与後、初期バーストなしに持続性局所麻酔という特徴を有する麻酔効果を与え、その持続時間は投与後少なくとも約24時間、好ましくは投与後少なくとも約36-48時間、さらに好ましくは投与後少なくとも約48-72時間である。
【0047】
麻酔薬および製薬上許容される非ポリマー性キャリアを含有する組成物を提供することもまた、本発明の目的である。非ポリマー性キャリアは、麻酔薬の放出を制御して、被験体に投与後、持続性局所麻酔という特徴を有する麻酔効果を与えるが、その組成物は、組成物が皮下投与されたとき、少なくとも約24時間にわたって、少なくとも約200 ng/ml、好ましくは少なくとも約250 ng/mL、もしくは少なくとも約300 ng/mL、もしくは少なくとも約350 ng/mLの麻酔薬の持続性定常状態平均血漿中濃度(Css)を与える。
【0048】
第1の麻酔薬、第2の麻酔薬、および製薬上許容される非ポリマー性キャリアを含有する組成物を与えることは、本発明の関連目的である。この組成物において、第2の麻酔薬は第1の麻酔薬のための溶媒であり、被験体に投与時に、初発の麻酔効果を与える。非ポリマー性キャリアは、第1の麻酔薬の放出を制御して、初期バーストなしに、被験体への投与の約2時間以内に発現する持続性局所麻酔という特徴を有する後発の麻酔効果を与え、その持続時間は、投与後少なくとも約24時間、好ましくは投与後少なくとも約36-48時間、さらに好ましくは投与後少なくとも約48-72時間である。
【0049】
37℃にて少なくとも5,000 cPの粘度を有し、外界条件もしくは生理的条件下で、そのままでは結晶化しない、非ポリマー性、非水溶性、高粘性液体キャリア材料("HVLCM")、第1の麻酔薬、ならびに第2の麻酔薬を含有する組成物を与えることも、本発明の関連目的である。ここで、繰り返すが、第2の麻酔薬は、第1の麻酔薬のための溶媒であり、被験体に投与時に初発の麻酔効果を与える。HVLCMは、第1の麻酔薬の放出を制御して、初期バーストなしに、被験体に投与して約2時間以内に発現する持続性局所麻酔という特徴を有する後発の麻酔効果を与え、その持続時間は投与後少なくとも約24時間、好ましくは投与後少なくとも約36-48時間、さらに好ましくは投与後少なくとも約48-72時間である。
【0050】
37℃にて少なくとも5,000 cPの粘度を有し、外界条件もしくは生理的条件下で、そのままでは結晶化しない、非ポリマー性、非水溶性、高粘性液体キャリア材料("HVLCM")、第1の麻酔薬、ならびに第2の麻酔薬を含有する組成物を与えることは、本発明のもう一つの関連目的である。ここで、繰り返すが、第2の麻酔薬は、第1の麻酔薬のための溶媒であり、被験体に投与時に初発の麻酔効果を与える。HVLCMは、第1の麻酔薬の放出を制御して、持続性局所麻酔という特徴を有する後発の麻酔効果を与え、さらにその組成物は、皮下投与されたとき、少なくとも約24時間にわたって、少なくとも約200 ng/ml、好ましくは少なくとも約250 ng/mL、もしくは少なくとも約300 ng/mL、もしくは少なくとも約350 ng/mLの麻酔薬の持続性定常状態平均血漿中濃度(Css)を与える。
【0051】
被験体の部位に麻酔効果を与える方法を提供することは、本発明のもう一つの目的である。その方法は、当該部位に、その付近に、その中に、またはそのすぐ近傍に、組成物を投与することを含んでなり、この組成物は、麻酔薬および製薬上許容される非ポリマー性キャリアを含有する。非ポリマー性キャリアは、麻酔薬の放出を制御して、初期バーストなしに、被験体に投与後に、持続性局所麻酔という特徴を有する麻酔効果をもたらし、その効果は投与後少なくとも約24時間持続する。
【0052】
被験体の部位に麻酔効果を与える方法を提供することは、本発明のさらにもう一つの目的である。その方法は、当該部位に、その付近に、その中に、またはそのすぐ近傍に、組成物を投与することを含んでなり、この組成物は、麻酔薬および製薬上許容される非ポリマー性キャリアを含有する。非ポリマー性キャリアは、麻酔薬の放出を制御して、被験体に投与後に、持続性局所麻酔という特徴を有する麻酔効果をもたらし、この組成物は、皮下投与されたとき、少なくとも約24時間にわたって、少なくとも約200 ng/mlの麻酔薬の持続性定常状態平均血漿中濃度(Css)を与える。
【0053】
被験体の部位に麻酔効果を与える方法を提供することは、本発明のやはりもう一つの目的である。その方法は、当該部位に、その付近に、その中に、またはそのすぐ近傍に、組成物を投与することを含んでなり、この組成物は、第1の麻酔薬、第2の麻酔薬、および製薬上許容される非ポリマー性キャリアを含有する。第2の麻酔薬は、第1の麻酔薬のための溶媒であり、投与時に当該部位に初発の麻酔効果を与える。非ポリマー性キャリアは、第1の麻酔薬の放出を制御して、当該部位に、持続性局所麻酔という特徴を有する後発の麻酔効果を与えるが、その効果は、初期バーストなしに、投与して約2時間以内に発現し、投与後少なくとも約24時間、好ましくは投与後少なくとも約36-48時間、さらに好ましくは投与後少なくとも約48-72時間持続する。
【0054】
被験体の部位に麻酔効果を与える方法を提供することは、やはり本発明の目的である。その方法は、当該部位に、その付近に、その中に、またはそのすぐ近傍に、組成物を投与することを含んでなり、この組成物は、第1の麻酔薬、第2の麻酔薬、および製薬上許容される非ポリマー性キャリアを含有する。第2の麻酔薬は、第1の麻酔薬のための溶媒であり、投与時に当該部位に初発の麻酔効果を与える。非ポリマー性キャリアは、第1の麻酔薬の放出を制御して、当該部位に、持続性局所麻酔という特徴を有する後発の麻酔効果を与えるが、その組成物は、組成物が皮下投与されたとき、少なくとも約24時間にわたって、少なくとも約200 ng/mlの麻酔薬の持続性定常状態平均血漿中濃度(Css)を与える。
【0055】
「初期バーストなしに」というフレーズは、本明細書で使用される場合、言及されている特定の作用物質が、通常の投与では組成物から離れず、所定の最初の時期にさほどの量が薬理学的に利用できるようにはならないことを意味する。当業者は、所定の組成物からの、作用物質の初期バーストの存在およびレベルを、当技術分野でよく知られている標準的な薬理試験法を用いて、容易に測定することができる。適当なin vitroバースト放出評価法には、標準バッファー、混合および加熱条件を用いたUSP II Paddle法がある。当該組成物のバースト放出特性はまた、標準的なin vivo試験法、たとえば動物被験体において対象となる作用物質の血漿中濃度を所定の期間にわたってモニターすることによって、容易に測定することができる。本発明の組成物において、好ましくは麻酔薬の約40-60%未満が最初の24時間以内に放出されるが、さらに好ましくは約30-50%未満であり、なおいっそう好ましくは約20-40%未満がこの最初の期間のうちに放出される。他のある好ましい実施形態において、麻酔作用物質の約5-10%未満が1時間以内に放出され、より好ましくは、約3-7%未満がこの最初の時間内に放出される。
【0056】
したがって、本発明の組成物は、長期間にわたって麻酔薬を放出する放出制御システム中に、少なくとも1つの麻酔薬を含有するものである。ある実施形態において、麻酔薬は、麻酔薬の種類およびその使用目的に応じて、当該組成物中に、組成物の総重量に対する重量比(wt%)で約95から1パーセントまでの量、約30から1 wt%までの量、約25から5 wt%までの量、または約20から10 wt%までの量存在する。
【0057】
本明細書で使用される場合、「麻酔薬」という用語は、可逆的な局所麻痺をもたらし、疼痛を緩和し、たとえば侵害受容経路(求心性および/または遠心性)の局所的遮断のように、神経軸索および他の興奮性膜に沿ったインパルス伝達をブロックし、無痛および/または麻酔をもたらす、任意の作用物質を意味する。たとえば、Strichartz, G.R. (Ed.) Local Anesthetics, Handbook of Experimental Pharmacology, vol. 81, Springer, Berlin/New York, (1987) を参照されたい。この用語はまた、局所投与したときに、知覚および/または運動機能を、局部的に(局所で)、全面的もしくは部分的に阻害する、任意の作用物質を包含する。本発明の実施に際して麻酔薬として使用するのに適した、一般的に使用される薬剤の例としては下記のものがあるが、それに限定されない:アンブカイン、アモラノン、アミロカイン、ベノキシネート、ベンジルアルコール、ベンゾカイン、ベトキシカイン、ビフェナミン、ブピバカイン、ブタカイン、ブタンベン、ブタニリカイン、ブテサミン、ブトキシカイン(butoxycaine)、カルチカイン、クロロプロカイン、コカエチレン、コカイン、シクロメチルカイン、ジブカイン、ジメチソキン、ジメトカイン、ジペロドン、ジクロニン、エクゴニジン、エクゴニン、エチドカイン、(ユープロシン)euprocin、フェナルコミン、ホルモカイン(formocaine)、ヘキシルカイン、ヒドロキシテトラカイン、イソブアニン(isobuanine)、p-アミノ安息香酸イソブチル、ロイシノカイン、レボブピバカイン、レボキサドロール、リドカイン、メピバカイン、メプリルカイン、メタブトキシカイン、塩化メチル、塩化メチル、ミルテカイン、ナエパイン(naepaine)、オクタカイン、オルトカイン、オキセサゼイン、パレントキシカイン(parenthoxycaine)、フェナカイン、フェノール、ピペロカイン、ピリドカイン、ポリドカノール、プラモキシン、プリロカイン、プロカイン、プロパノカイン、プロパラカイン、プロピポカイン、プロポキシカイン、シュードコカイン(pseudococaine)、ピロカイン、ロピバカイン、サリチルアルコール、テトラカイン
、トリカイン、トリメカイン、キシロカイン、ゾラミン、これらの麻酔活性誘導体、類似体、および任意の製薬上許容される塩、ならびにそれらの任意の混合物。
【0058】
本発明での使用にはアミド型およびエステル型局所麻酔薬が好ましい。アミド型局所麻酔薬は、アミド官能性を有することを特徴とし、エステル型局所麻酔薬はエステル官能性を有する。好ましいアミド型局所麻酔薬には、リドカイン、ブピバカイン、プリロカイン、メピバカイン、エチドカイン、ロピバカイン、およびジブカインがある。好ましいエステル型麻酔薬としては、テトラカイン、プロカイン、ベンゾカイン、およびクロロプロカインが挙げられる。もっとも好ましい局所麻酔薬はブピバカインである。
【0059】
麻酔薬は、組成物において、中性型で、遊離塩基型として、または製薬上許容される塩の形で与えられる。「製薬上許容される塩」という用語は、本明細書で使用される場合、生物学的な有効性および中性麻酔薬の特性を保持し、その他に医薬用途のために許容できないことのない塩を意味する。製薬上許容される塩には、酸性もしくは塩基性基の塩があるが、そうした基は麻酔薬中に存在することもある。もともと塩基性の麻酔薬は、さまざまな無機酸および有機酸とともに、多種多様な塩を形成することができる。本明細書での使用に適した塩基性麻酔薬の、製薬上許容される酸付加塩は、無毒の酸付加塩となるもの、すなわち、製薬上許容されるアニオンを含んでなる塩であり、これはたとえば、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硝酸塩、硫酸塩、硫酸水素塩、リン酸塩、過リン酸塩、イソニコチン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、パントテン酸塩、酒石酸水素塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ゲンチシン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、糖酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、およびパモ酸(すなわち1,1'-メチレン-ビス-(2-ヒドロキシ-3-ナフトエ酸))塩である。アミノ部分を含む麻酔薬は、上記の酸に加えて、さまざまなアミノ酸と、製薬上許容される塩を形成することができる。適当な塩基塩は、無毒な塩、たとえば、アルミニウム塩、カルシウム塩、リチウム塩、マグネシウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩、亜鉛塩およびジエタノールアミン塩を形成する塩基から形成することができる。たとえば、Berge et al. (1977) J. Pharm. Sci. 66:1-19を参照されたい。
【0060】
麻酔薬が持続性局所麻酔の状態をもたらすことができるということは、主題の麻酔薬が、知覚および/または運動機能を、局部的に(局所で)、全面的もしくは部分的に阻害する評価可能な状態を確立することができるということを意味する。こうした評価を行うための多くの方法および手段は、当業者にとって容易に思い浮かぶものである。ヒト以外の動物被験体について、こうした方法は、被験ラットにおける自発性移動運動の測定(たとえば、Med Associates Inc., St. Albans, VTから市販されている装置およびソフトウェアを使用する)を包含し、そのデータは、総移動距離、歩数、常同行動、立ち上がり、被験動物のさまざまな動きに費やす時間および安静に過ごす時間、ラットにおけるピンプリック反応の可視化、ならびにラットが足をホットプレートから引き離すモデル(たとえば、IACUC No 9511-2199に詳細に記載の手順による)について収集することができる。
【0061】
ヒト被験体の知覚検査も局所麻酔効果を評価する有用な方法である。検査は、3つの一般領域、機械的検査(ピンプリック、von Frey Hairs)、温度覚(温、熱、冷)および触覚検査(接触)を中心とすることが多い。こうした検査法は文献に記載されている。たとえば、Dahlら、(1993) Pain 53:43-51; Moinicheら、(1993) Brit. J. of Anaesthesia 71:201-205; Moinicheら、(1993) Regional Anesthesia 18:300-303; Pedersenら、(1996) Anesthesiology 84(5):1020-1026; Pedersenら、(1996) Brit. J. of Anaesthesia 76(6):806-810; およびPedersenら、(1998) Pain 74:139-151を参照されたい。たとえば、試験物質の局所麻酔活性は、効果の発現、ピークの強さおよび持続時間について個別の方法を用いて調べることができる:1)機械的知覚検査(von Frey hairsを用いた機械的痛覚の検知閾値);2)単一のvon Frey hairを用いた閾値上(機械的)検査;3)温度覚検査(温覚検知閾値);4)熱痛覚検知閾値;5)閾値上(熱覚)検査;6)冷覚検知閾値;および7)触覚検査(機械的接触検知閾値)。これらのデータは、試験麻酔薬の投与に反応して、局所疼痛緩和、局所麻痺、および/または局所神経遮断を経験する被験体を示す。疼痛反応は、0-10のVerbal Rank Scale(口頭式ランクスケール)(たとえば、0 = 無痛、および10 = 想像できる限り最悪の痛み)または0から100 mmまでのVisual Analog Scale(視覚的アナログスケール)(たとえば、0 = 無痛、および100 mm = 想像できる限り最悪の痛み)を用いて位置付けることができる。
【0062】
個別の麻酔薬の選択に関して、当業者はまた、各候補薬の薬理学的特性が、たとえば麻酔効果の発現および強度、持続時間などについて、さまざまであることを認識する。ある物質は、軽い麻酔効果を与え、活性の発現はきわめて速いが、持続時間は短い。こうした物質は、「初発麻酔効果」を与えるために、本発明の組成物とともに使用することができるが、この場合、これらの物質は典型的には、もっとゆっくり発現するが効果は強く、持続時間が長いという特徴を有する、持続性局所麻酔を与える別の麻酔作用物質との2つの組み合わせとする。初発麻酔効果を与えるために使用することができる麻酔薬の例は、ベンジルアルコールである。持続性局所麻酔を与えるために使用することができる麻酔薬の例は、ブピバカインである。初発麻酔効果を与えるために使用することができる、上記以外の物質は、溶媒および/または浸透剤として通常使用される有機物質、たとえばエタノール、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン、ポリエチレングリコールおよびある種の脂肪酸エステルを含めることができる。上記および他の類似物質は、非常に弱い初発麻酔効果を与えることができ、たとえば、適用時に、組織の部位を冷却し、そうでなければ感覚を減じ/無感覚にすることができ、それによってその部位で知覚を抑制することができる。本発明の実施に際して、初発の麻酔効果を与えるために作用物質が使用される場合は必ず、その物質は、当該効果を与えるのに十分な量を適当な組成物中に含んで与えられ、目的の効果を与えるために、その物質が速やかに組成物から放出されるように提供される。こうした適切な組成物(初発麻酔効果を与えるための作用物質を含有する)を構成することは、本明細書により与えられる指針および教示と併せて行うならば、当業界の技術の範囲に含まれる。
【0063】
本発明のある実施形態において、2つの麻酔薬、第1の麻酔薬および第2の麻酔薬、を含有する組成物が与えられるが、この第2の麻酔薬は第1の麻酔薬のための溶媒である。このような特定の組成物において、第2の麻酔薬は典型的には、初発の麻酔効果を与えるために使用され、第1の麻酔薬は、初期バーストなしに、被験体への投与の約2時間以内に発現し、投与後少なくとも約24時間、もしくはさらに長時間持続する、持続性局所麻酔という特徴を有する、後発の麻酔効果を与えるために使用される。ある好ましい実施形態において、第1の麻酔薬は、投与の約1-2時間以内に発現する、持続性局所麻酔を与え、他の好ましい実施形態において、第1の麻酔薬は、投与の約30分-1時間以内に発現する、持続性局所麻酔を与える。他のある実施形態において、第2の麻酔薬は、放出制御キャリアシステムのための溶媒でもある。
【0064】
組成物を製造する際に、ある物質が他の溶媒物質に少なくとも部分的に溶解する場合、麻酔薬は、もう一つの麻酔薬のための溶媒として機能することが考えられる。さらに、この麻酔作用溶媒は、初発麻酔作用を与えること、およびもう一つの麻酔薬を少なくとも部分的に溶解することをいずれも満たす量として、組成物中に存在する。ある実施形態において、第2の麻酔薬はしたがって、組成物の総重量に対する重量比で、約95から1パーセント(wt%)、または約75から10 wt%、または約50から15 wt%までの量存在する。
【0065】
他の麻酔薬に対して溶媒としても機能する、いくつかの適当な麻酔薬を、本発明の実施に際して使用することができる。適当な物質としては、芳香族アルコール、酸および酸誘導体、ならびにそれらの組み合わせがある。他の麻酔薬のための溶媒として使用することができる、特に好ましい麻酔作用物質は、ベンジルアルコールである。
【0066】
本発明の組成物において使用される放出制御キャリアシステムは、非ポリマー性キャリアとして分類される。製薬上許容される非ポリマー性キャリアは、一般的には生体適合性であり、好ましくは生分解性、生体内分解性、もしくは生体吸収性である。生きた組織に与えられたとき、物質およびそのいかなる分解産物も、有意な影響、有害な影響、もしくは悪影響を何ら示さず、実質的な組織刺激も壊死も引き起こすことがないならば、その物質は生体適合性である。「生分解性」もしくは「生体内分解性」はここでは同じ意味で使用され、主題の非ポリマー性材料が、in vivoで分解もしくは生物分解して、小さな化学種となることを意味し、こうした分解は、たとえば、酵素的、化学的、および物理的プロセスの結果生じるものである。「生体吸収性」は、所定の非ポリマー性材料が、動物被験体内で、たとえば細胞、組織などによって、分解および吸収されることを意味する。
【0067】
投与の約2時間以内に発現し、少なくとも24時間またはそれ以上持続する持続性局所麻酔を与えるように、非ポリマー性キャリア材料を用いて、本発明の組成物からの、少なくとも1つの麻酔薬の放出を制御する。本発明の一部の組成物において、非ポリマー性キャリア材料は、少なくとも1つの麻酔薬の一次放出制御プロフィール、または擬ゼロ次放出プロフィールのいずれかを与えることができる。したがって、非ポリマー性キャリアは、組成物の総重量に対する重量比で、約99.5から1パーセント(wt%)、または約95から10 wt%、または約75から25 wt%までの量として、組成物中に存在することができる。
【0068】
適当な非ポリマー性キャリアの選択は、本明細書により与えられる教示および指針を使用して、当技術分野の一般技術の範囲に含まれる。たとえば、液体、スプレー、クリーム、ローション、軟膏、ゲル、スラリー、油、エマルション、マイクロエマルション、固体、硬膏、フィルム、粒子、微粒子、粉末、または他の適当な形態の医薬組成物を作製するために、多くの製薬上許容される非ポリマー性キャリアシステムが、当業者に利用可能である。上記および他のキャリアシステムは、たとえば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第16版、1980、および第17版、1985、いずれもMack Publishing Company, Easton, PAより刊行、に記載されている。
【0069】
本発明の組成物はさらに、1つもしくは複数の追加成分、たとえば、製薬上許容される添加剤を含有することができるが、この添加剤は、分散剤、増量剤、結合剤、キャリア、安定化剤、流動促進剤、抗酸化剤、pH調整剤、抗刺激剤などとして機能しうるものである。当業者には当然のことであるが、ある種の添加剤は、どのような個別の製剤においても、上記機能のうち複数の機能を果たすことができる。したがって、適当な添加剤をいくつでも本発明の組成物と混合し、もしくはその組成物に組み込んで、増量特性を与え、活性物質の放出速度を変化させ、水の取り込みを増加させ、もしくは阻害し、pHを制御し、構造的な支持を与え、製造プロセスを容易にし、当業者に知られている他の利用を促進することができる。「添加剤」という用語は、一般に、無毒であって、有害な様式で組成物の他の成分と反応しない、実質的に不活性な材料を表す。特定の添加剤が組成物中に存在する場合の特性は、その添加剤が与えられる目的および添加剤の個別特性によって左右される。
【0070】
たとえば、活性物質のための安定化剤として作用しうる、適当な添加剤には、医薬品グレードのブドウ糖、ショ糖、乳糖、トレハロース、マンニトール、ソルビトール、イノシトール、デキストランなどがある。こうした安定化剤は、したがって、単糖、二糖、多糖、もしくは糖アルコールといった糖類とすることができる。他の適当な添加剤としては、デンプン、セルロース、リン酸ナトリウムもしくはカリウム、硫酸カルシウム、クエン酸、酒石酸、グリシンおよびそれらの組み合わせが挙げられる。水和および溶解速度を遅くするために添加することができる疎水性添加剤の例には、脂肪酸および製薬上許容されるその塩(たとえば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ステアリン酸亜鉛、パルミチン酸、およびパルミチン酸ナトリウム)が含まれる。
【0071】
本発明の組成物において、荷電脂質および/または界面活性剤添加剤を使用することも有用と考えられる。適当な荷電脂質には、ホスファチジルコリン(レシチン)などがあるがそれに限定されない。界面活性剤は、一般的に、非イオン性、陰イオン性、陽イオン性、もしくは両性界面活性剤とすることができる。適当な界面活性剤の例としては、たとえば、Tergitol(登録商標)およびTriton(登録商標)界面活性剤(Union Carbide Chemicals and Plastics); ポリオキシエチレンソルビタン、たとえば、TWEEN(登録商標)界面活性剤(Atlas Chemical Industries); ポリソルベート; ポリオキシエチレンエーテル、たとえば、Brij; 製薬上許容される脂肪酸エステル、たとえば、ラウリル硫酸およびその塩、両親媒性界面活性剤(グリセリドなど); ならびに同様の材料が挙げられる。
【0072】
他の添加剤、たとえば、ショ糖、デキストロース、塩化ナトリウム、ソルビトール、乳糖、ポリエチレングリコール、マンニトール、果糖、ポリビニルピロリドン、もしくはそれらの適当な組み合わせ、といった材料を加えて、空隙率を変えることができる。それに加えて、1つもしくは複数の麻酔薬を、油(たとえば、ゴマ油、コーン油、植物油)、または前記油とリン脂質(たとえば、レシチン)もしくは中鎖脂肪酸トリグリセリド(たとえば、Miglyol 812)との混合物を用いて分散させて、油性懸濁液を作製することができる。
【0073】
本発明の組成物に組み入れることができる、さらに他の添加剤には、さまざまなバッファー成分(たとえば、Tris-HCl、酢酸)からなる賦形剤;pHおよびイオン強度を変化させる物質;抗酸化剤(たとえば、アスコルビン酸、グルタチオン、メタ重亜硫酸ナトリウム)のような添加物;保存剤(たとえば、Thimersol、ベンジルアルコール、メチルパラベン、プロピルパラベン);ならびに分散剤、たとえば、水溶性多糖(マンニトール、乳糖、ブドウ糖、デンプンなど)、ヒアルロン酸、グリシン、フィブリン、コラーゲンおよび無機塩(塩化ナトリウムなど)がある。
【0074】
本発明のある実施形態において、非ポリマー性キャリアは、実質的に、水もしくは水性の生物システムに不溶性である。こうした非ポリマー性キャリア材料の例には下記が含まれるが、それらに限定されない:ステロール類、たとえばコレステロール、スチグマステロール、β-シトステロールおよびエストラジオール;コレステリルエステル、たとえばステアリン酸コレステリル;C12-C24脂肪酸、たとえば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、およびリグノセリン酸;C18-C36モノ-、ジ-、およびトリ-アシルグリセリド、たとえば、モノオレイン酸グリセリル、モノリノール酸グリセリル、モノラウリン酸グリセリル、モノドコサン酸グリセリル、モノミリスチン酸グリセリル、モノデセン酸グリセリル、ジパルミチン酸グリセリル、ジドコサン酸グリセリル、ジミリスチン酸グリセリル、ジデセン酸グリセリル、トリドコサン酸グリセリル、トリミリスチン酸グリセリル、トリデセン酸グリセリル、トリステアリン酸グリセリン、およびそれらの混合物;ショ糖脂肪酸エステル、たとえば、ショ糖ステアリン酸エステルおよびショ糖パルミチン酸エステル;ソルビタン脂肪酸エステル、たとえば、 モノステアリン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、およびトリステアリン酸ソルビタン;C16-C18脂肪アルコール、たとえば、セチルアルコール、ミリスチルアルコール、ステアリルアルコール、およびセトステアリルアルコール;脂肪アルコールと脂肪酸のエステル、たとえば、パルミチン酸セチルおよびパルミチン酸セテアリル;脂肪酸の無水物、たとえば無水ステアリン酸;リン脂質、たとえばホスファチジルコリン(レシチン)、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、およびそのリゾ誘導体; スフィンゴシンおよびその誘導体;スフィンゴミエリン、たとえば、ステアリル、パルミトイル、およびトリコサノイル スフィンゴミエリン;セラミド、たとえば、ステアリルおよびパルミトイルセラミド;スフィンゴ糖脂質;ラノリンおよびラノリンアルコール;ならびに、それらの組み合わせ、および混合物。特定の好ましい非ポリマー性キャリアとしては、コレステロール、モノステアリン酸グリセリル、トリステアリン酸グリセリン、ステアリン酸、無水ステアリン酸、モノオレイン酸グリセリル、モノリノール酸グリセリル、およびアセチル化モノグリセリドが挙げられる。
【0075】
本発明の組成物に使用するために、上記の非ポリマー性キャリア材料の1つを選択すると、典型的にはその材料を、そのキャリア材料のための、適合性のある適切な有機溶媒と混合し、水様から粘稠まで多様な粘稠度を有する組成物を形成して、拡散可能なパテもしくはペーストとすることができる。組成物の粘稠度は、非ポリマー性キャリアの溶媒への溶解性、非ポリマー性キャリアの濃度、麻酔薬の濃度、ならびに/または、追加の麻酔薬、添加物および添加剤の存在、といった要因によって変化しうる。特定の溶媒中での非ポリマー性キャリアの溶解性は、その結晶化度、親水性、イオン性、および親油性といった要因に応じて変化する。したがって、溶媒中の非ポリマー性キャリアのイオン性および濃度を、望ましい溶解性を達成するように調整することができる。好ましい非ポリマー性キャリア材料は、結晶化度が低く、非極性の特性を有し、疎水性の比較的高いものである。
【0076】
組成物で使用するのに適した有機溶媒は、概して、生体適合性で、製薬上許容され、少なくともある程度は非ポリマー性キャリアを溶解することができる溶媒である。この有機溶媒は、さらに、混和性から、可溶性、分散性までさまざまな水への溶解性を有する。ある実施形態において、溶媒は、水性の系においてin situで組成物から離れて、投与部位に存在する液体中に、拡散、分散、もしくは浸出することができるように選択され、それによって固体インプラントを形成する。好ましくは、溶媒は、約9-13(cal/cm3)1/2のヒルデブラント(HLB)の溶解比を有する。好ましくは、溶媒の極性度は、少なくとも約5%の水への溶解度を与えるのに有効である。
【0077】
したがって、適当な有機溶媒には下記が含まれるがそれに限定されない:置換された複素環式化合物、たとえば、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)および2-ピロリドン (2-ピロール);炭酸とアルキルアルコールのエステル、たとえば、炭酸プロピレン、炭酸エチレン、および炭酸ジメチル;脂肪酸、たとえば、酢酸、乳酸およびヘプタン酸;モノ-、ジ-、およびトリ-カルボン酸のアルキルエステル、たとえば、酢酸2-エトキシエチル、酢酸エチル、酢酸メチル、乳酸エチル、酪酸エチル、マロン酸ジエチル、グルタル酸ジエチル、クエン酸トリブチル、コハク酸ジエチル、トリブチリン、ミリスチン酸イソプロピル、アジピン酸ジメチル、コハク酸ジメチル、シュウ酸ジメチル、クエン酸ジメチル、クエン酸トリエチル、クエン酸アセチルトリブチル、三酢酸グリセリル;アルキルケトン、たとえば、アセトンおよびメチルエチルケトン;エーテルアルコール、たとえば、2-エトキシエタノール、エチレングリコールジメチルエーテル、グリコフロールおよびグリセリンホルマール;アルコール、たとえばエタノールおよびプロパノール;ポリヒドロキシアルコール、たとえば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール (PEG)、グリセリン(グリセロール)、1,3-ブチレングリコール、およびイソプロピリデングリコール;Solketal(ソルケタール)(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-メタノール);ジアルキルアミド、たとえば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド;ジメチルスルホキシド(DMSO)およびジメチルスルホン;テトラヒドロフラン;ラクトン、たとえば、ε-カプロラクトンおよびブチロラクトン;環状アルキルアミド、たとえば、カプロラクタム;芳香族アミド、たとえば、N,N-ジメチル-m-トルアミド、および1-ドデシルアザシクロヘプタン-2-オン;および同様のもの;ならびにこれらの混合物および組み合わせ。好ましい溶媒には、N-メチル-2-ピロリドン、2-ピロリドン、ジメチルスルホキシド、乳酸エチル、炭酸プロピレン、グリコフロール、グリセリンホルマール、およびイソプロピリデングリコールがある。
【0078】
有機溶媒は、組成物中で使用されるべき、選択された非ポリマー性キャリア、有機溶媒、麻酔薬、添加物、および/または添加剤に応じて、組成物の総重量に対する重量比(wt%)で約99.5から約1パーセントの量として、約95-10 wt%の量として、約75-25 wt%の量として、または約60-40 wt%の量として、組成物中に与えられる。ある実施形態において、有機溶媒は、生物学的系の内部に置かれると、組成物から離れて水性媒体中に拡散、もしくは浸出し、それによって非ポリマー性キャリア材料は凝固して、固体マトリクスを形成する。好ましくは、非ポリマー性キャリアは、投与(埋め込み)後約1-5日以内に、好ましくは約1-3日以内に、好ましくは約2時間以内に、in situで凝固して固体マトリクスとなる。
【0079】
特定の性質を組成物に付与するために、いくつかの適当な添加物を組成物に含めることができる。たとえば、組成物は、より凝集性の高い固体インプラントを与えるために、または、凝固の間適切な位置に保持できるように、より粘性の高い組成物を与えるために、少量の生分解性、熱可塑性ポリマー、たとえば、ポリラクチド、ポリカプロラクトン、ポリグリコリド、またはこれらのコポリマーを含有することができる。こうした熱可塑性ポリマーは、Dunnらの米国特許第4,938,763号に記載されている。
【0080】
状況に応じて、孔形成剤を組成物中に含めることができる。孔形成剤は、実質的に水もしくは体液に溶解する、有機もしくは無機の製薬上許容される任意の物質とすることができ、インプラント部位で、非ポリマー性キャリア材料および/またはインプラントの固体マトリクスから周囲の体液中に拡散するものである。孔形成剤は、好ましくは有機溶媒に不溶性であって、非ポリマー性キャリア材料と均一な混合物を形成する。孔形成剤はまた、速やかに分解して水溶性物質となる、水と混和しない物質であってもよい。ある組成物において、孔形成剤は、非ポリマー性キャリアおよび有機溶媒と混合して併用される。組成物に使用することができる、適当な孔形成剤には、たとえば、ショ糖およびデキストロースといった糖類、塩化ナトリウムおよび炭酸ナトリウムといった塩類、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコールおよびポリビニルピロリドンといったポリマーなどが含まれる。決まった孔径を与える固体結晶、たとえば、塩もしくは糖が好ましい。
【0081】
本発明の他の実施形態において、非ポリマー性キャリアが液体であるような組成物が与えられる。液体非ポリマー性キャリアは、好ましくは、非水溶性で、37℃で少なくとも5,000 cP(状況に応じて少なくとも10,000, 15,000; 20,000; 25,000もしくは50,000 cP)の粘度を有し、外界条件もしくは生理的条件下でそのままでは結晶化しない、高粘性液体キャリア材料("HVLCM")である。「非水溶性」という用語は、外界条件下で重量比1%未満程度まで、水に溶解する物質を意味する。「非ポリマー性」という用語は、エステルの酸部分に、基本的に繰り返しユニットのないエステルもしくは混合エステル、ならびに、酸部分の機能ユニットが少ない回数反復される(すなわち、オリゴマー)、そういった酸部分を有するエステルもしくは混合エステルを意味する。一般に、エステルの酸部分に、6以上の同一で隣接する繰り返しユニットもしくは単位(mer)を有する物質は、本明細書で使用される「非ポリマー性」という用語から除外されるが、二量体、三量体、四量体、または五量体はこの用語の範囲に含まれる。エステルが、乳酸もしくはグリコール酸のように、さらにエステル化することができる、ヒドロキシル基を有するカルボン酸から形成される場合、繰り返しユニットの数は、乳酸もしくはグリコール酸部分の数ではなく、ラクチドもしくはグリコリド部分に基づいて算出され、この場合、1つのラクチド繰り返しユニットは、それぞれのヒドロキシおよびカルボキシ部分によってエステル化された2つの乳酸部分を含有し、1つのグリコリド繰り返しユニットは、それぞれのヒドロキシおよびカルボキシ部分によってエステル化された2つのグリコール酸部分を含有する。エステルのアルコール部分に1から約20個のエーテル化されたポリオールを有する、またはそのアルコール部分に1から約10個のグリセロール部分を有するエステルは、本明細書で使用される場合、非ポリマー性と見なされる。
【0082】
特定の実施形態において、HVLCMは、溶媒と混合すると、場合によってはかなり粘性が低下し、標準的な医療用具で投与することができる低粘性液体キャリア材料(“LVLCM”)となる。LVLCM組成物は、一般的には、注射器もしくは他の注入装置に、より容易に流入および流出するため、HVLCM組成物よりも体内に入れやすい。これはまた、乳濁液として容易に調剤することができる。LVLCMは、望ましいどのような粘性を有することもできるが、その粘性は概して、対応するHVLCMより低い。一例として、約6,000 cP未満、約4,000 cP未満、約1,000 cP未満、もしくは200 cP未満のLVLCMの粘度範囲が、一般にin vivo適用に有用である。
【0083】
本発明の組成物に使用される特定のHVLCMは、1つもしくは複数のさまざまな材料とすることができる。適当な材料としては、1つもしくは複数のカルボン酸の非ポリマー性エステルもしくは混合エステルがある。特定の実施形態において、エステルはカルボン酸から形成されるが、このカルボン酸は約2から約20個のヒドロキシ部分を有するポリオールでエステル化されており、1から20個のエーテル化されたポリオールを有することができる。HVLCMのエステルの酸部分を形成するのに特に適したカルボン酸には、1つもしくは複数のヒドロキシ基を有するカルボン酸、たとえば、ラクトンもしくは環状カーボネートの開環アルコリシスによって、またはカルボン酸無水物のアルコリシスによって得られるカルボン酸が含まれる。ポリオールを有するエステルを形成するために、アミノ酸も適している。特定の実施形態において、エステルもしくは混合エステルは、環状無水物のようなカルボン酸無水物のアルコリシスによって得られる、1つもしくは複数のカルボン酸でエステル化されている、1つもしくは複数の末端ヒドロキシ部分を有するアルコール部分を含有する。
【0084】
エステル化してHVLCMを形成することができる、適当なカルボン酸の、限定的でない例としては、グリコール酸、乳酸、ε-ヒドロキシカプロン酸、セリン、および任意の対応するラクトンもしくはラクタム、トリメチレンカーボネート、ならびにジオキサノンが挙げられる。ヒドロキシル基を有する酸は、それ自体、そのヒドロキシ部分と追加のカルボン酸との反応によってさらにエステル化することができるが、このカルボン酸は当該材料の他のカルボン酸部分と同一でも、異なっていてもよい。適当なラクトンには、グリコリド、ラクチド、ε-カプロラクトン、ブチロラクトン、およびバレロラクトンが含まれるがそれに限定されない。適当なカーボネートには、トリメチレンカーボネート、およびプロピレンカーボネートがあるがそれに限定されない。
【0085】
エステルもしくは混合エステルのアルコール部分は、約2から約20までのヒドロキシ基を有するポリヒドロキシアルコールから誘導することができるが、さらに上記のように、1から20のポリオール分子をエーテル化することによって作製することができる。適当なアルコール部分としては、下記のアルコールから1つもしくは複数の水素原子を取り除くことによって誘導された部分が挙げられる:単官能C1-C20アルコール、二官能C1-C20アルコール、三官能アルコール、ヒドロキシ基を有するカルボン酸、ヒドロキシ基を有するアミノ酸、リン酸基を有するアルコール、四官能アルコール、糖アルコール、単糖および二糖、糖酸、ならびにポリエーテルポリオール。より具体的には、アルコール部分は、下記のうち1つもしくは複数を包含することができる;ドデカノール、ヘキサンジオール、より詳細には、1,6-ヘキサンジオール、グリセロール、グリコール酸、乳酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシカプロン酸、セリン、ATP、ペンタエリトリトール、マンニトール、ソルビトール、グルコース、果糖、ショ糖、グルクロン酸、1から約10までのグリセロール単位を有するポリグリセロールエーテル、1から約20までのエチレングリコール単位を有するポリエチレングリコール。
【0086】
本発明の特定の実施形態において、HVLCMのエステルもしくは混合エステルの少なくとも1つのカルボン酸部分は、少なくとも1つのオキシ部分を含んでなる。さらにより特別な実施形態において、各カルボン酸部分が、少なくとも1つのオキシ部分をふくんでなる。
【0087】
別の特定の実施形態において、本発明のエステルもしくは混合エステルの、少なくとも1つのカルボン酸部分は、2-4個の炭素原子を含有する。さらにより特別な実施形態において、本発明のエステルもしくは混合エステルの各カルボン酸部分が、2-4個の炭素原子を含有する。
【0088】
本発明の別のより特別な実施形態において、本発明のエステルもしくは混合エステルの、少なくとも1つのカルボン酸部分は、2-4個の炭素原子を有し、少なくとも1つのオキシ部分を含有する。本発明の別のより特別な実施形態において、本発明のエステルもしくは混合エステルの各カルボン酸部分は、2-4個の炭素原子を有し、少なくとも1つのオキシ部分を含有する。
【0089】
ある特定の実施形態において、HVLCMは、ショ糖酢酸イソ酪酸エステル(SAIB)、または糖アルコール部分と、1つもしくは複数のアルカン酸部分との、他の何らかのエステルとすることができる。
【0090】
ある特定の実施形態において、本発明は組成物を包含するが、その組成物においてHVLCMは下記からなる一群から選択される構造を有する:
【化1】

【0091】
式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、およびR8は、水素、アルカノイル、ヒドロキシ置換アルカノイル、およびアシルオキシ置換アルカノイルからなる一群から、個別に選択される;
式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、およびR8のうち少なくとも3つは、水素以外である;ならびに
式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、およびR8がアセチルおよびイソブチリルからなる一群から選択されるとき、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、およびR8のうち少なくとも3つは、アセチルである;
【化2】

【0092】
式中、R1、R2、およびR3は、水素、アルカノイル、ヒドロキシ置換アルカノイル、およびアシルオキシ置換アルカノイルからなる一群から個別に選択され、nは1から20までである;
【化3】

【0093】
式中、nは4から8までの整数であり、R1およびR2は、水素、アルカノイル、ヒドロキシ置換アルカノイル、およびアシルオキシ置換アルカノイルからなる一群から個別に選択される;
【化4】

【化5】

【0094】
式IVおよびVにおいて、R1、R2、R3、R4、およびR5は、水素、アルカノイル、ヒドロキシ置換アルカノイル、およびアシルオキシ置換アルカノイルからなる一群から個別に選択される;
【化6】

【化7】

【0095】
式VIおよびVIIにおいて、R1、R2、R3、R4、R5、およびR6は、水素、アルカノイル、ヒドロキシ置換アルカノイル、およびアシルオキシ置換アルカノイルからなる一群から個別に選択される;
【化8】

【0096】
式中、R1、R2、R3、およびR4は、水素、アルカノイル、ヒドロキシ置換アルカノイル、およびアシルオキシ置換アルカノイルからなる一群から個別に選択される。
【0097】
式IからVIIIまでの各式において、アルカノイル、ヒドロキシ置換アルカノイル、およびアシルオキシ置換アルカノイル基のうち1つもしくは複数は、2-6個の炭素原子を有しカルボニル炭素を含む、アルカノイル部分を含んでなることができる。さらに、本発明の別のより特別な実施形態において、式IからVIIIまでの各式は、少なくとも1つのヒドロキシ置換、もしくはアシルオキシ置換アルカノイル部分を有する。さらにより特別な実施形態において、上記ヒドロキシ置換、もしくはアシルオキシ置換アルカノイル部分のうち少なくとも1つは、2-6個の炭素原子を有しカルボニル炭素を含む、アルカノイル部分を含んでなる。
【0098】
HVLCMのアシルオキシ置換基を形成するアシル基は、「アシル」という用語の一般に認められている定義にしたがって、カルボン酸から誘導される任意の部分とすることができる。より詳細には、本発明の組成物のアシル基はR9CO-の形をとることができ、R9は、2-6個の炭素原子からなる、状況に応じてオキシ置換されたアルキルである。このオキシ置換は、ヒドロキシ置換、または追加のアシル部分による置換の形をとることができる。たとえば、R9は、一方の酸のヒドロキシと別の酸のカルボキシとの間のエステル結合によって連結された、オキシ置換カルボン酸のオリゴマーとすることができる。より特別な例において、R9は、1-5個のラクチドもしくはグリコリド単位を含んでなることができるが、この場合ラクチド単位は、エステル化して一体となった2つの乳酸部分を含有し、グリコリド単位はエステル化して一体となった2つのグリコール酸部分を含有する。あるいはまた、R9は、混合されたラクチドおよびグリコリド単位を含有し、またはラクチドもしくはグリコリド単位は存在せず、混合された乳酸およびグリコール酸を含有することができる。
【0099】
特定のHVLCM材料は、式IIもしくはIIIに従う成分を包含するが、この場合、R1、R2、およびR3は、互いに無関係に、ラクトイル、ポリラクトイル、ε-カプロイル、ヒドロキシアセチル、またはポリヒドロキシアセチルであるが、特に、ポリラクトイルおよびε-カプロイル、またはポリラクトイルおよびポリヒドロキシアセチルである。
【0100】
本発明のエステルもしくは混合エステルにおいて、比較的短鎖(2-6炭素原子)のオキシ置換カルボン酸部分を使用することは有利である。こうした酸部分が、オリゴマーエステルの形で存在するとき(すなわち、後ろの酸部分が前の酸部分に、後ろのカルボキシと前のオキシとのエステル化によって結合している)、その物質の加水分解は、7以上の炭素原子で作られたオリゴマーよりかなり容易であるが、これはその物質の親水性がより高いためである。概して、ドラッグデリバリーのためには、HVLCMは非水溶性であるが、いくぶん親水性であることが望ましい。一般に、より親水性の高いユニット(より高いO:C比によって決定される)で合成されたHVLCMは、より速やかに水を吸収し、より迅速に分解することが予想される。たとえば、グリコリド4モルをグリセロール1モルと共有結合することによって作製されたHVLCMは、グリコリド2モルおよびラクチド2モルをグリセロール1モルと共有結合することによって作製されたHVLCMよりも、速やかに水を吸収し、迅速に分解することが予想される。よりフレキシブルな分子、およびより分枝した球状分子について、自由体積の論拠に基づいて、同様の増加を予想することができる。フレキシブルで分枝した分子を使用することは、LVLCMの粘性を低下させるという利点もあると思われる。鎖長の異なるカルボン酸および/またはポリオールを使用すること、およびオキシ置換を有するカルボン酸を使用することによって、その結果得られるエステルの親水性および溶解性の程度を正確に制御することが可能になる。こうした材料は、in vivoで、溶解に対して十分抵抗性であり、in vivoでのオキシ結合の加水分解に伴って、もしくはそれに引き続いて、運搬された麻酔薬の体内への制御放出をもたらすことができる。
【0101】
さらにより特別な実施形態において、HVLCMは、イソ酪酸部分に対する酢酸部分の比が2:6である、ショ糖の酢酸およびイソ酪酸エステルを除外する。しかしながら、イソ酪酸部分に対する酢酸部分の比が2:6である、ショ糖酢酸イソ酪酸エステルは、エアロゾル製剤に使用するため、本発明の範囲に含まれる。この物質は、米国特許第2,931,802号に記載の手順にしたがって作製することができる。
【0102】
一般に、適当なHVLCMエステルは、結果として得られるエステルのアルコール部分を形成することになる、1つもしくは複数のアルコール、特に1つもしくは複数のポリオールを、結果的に得られるエステルの酸部分となるべき、1つもしくは複数のカルボン酸、ラクトン、ラクタム、炭酸、もしくはカルボン酸無水物と反応させることによって、作製することができる。エステル化反応は、加熱によって簡単に行うことができるが、ただし、場合によっては、強酸もしくは強塩基のエステル化触媒添加を用いることができる。あるいはまた、2-エチルヘキサン酸スズのようなエステル化触媒を使用することができる。触媒とともに、または触媒なしで、加熱した反応混合物は、撹拌しながら加熱した後、たとえば、減圧下で乾燥し、未反応出発材料を除去して液体産物を生成する。ショ糖酢酸イソ酪酸エステルは、米国特許第2,931,802号に記載の手順にしたがって、生成することができる。
【0103】
これに関して、ポリオールは、それがカルボン酸の、より詳細には、ラクチド、グリコリド、もしくは他のエステル化されたヒドロキシ置換カルボン酸のオリゴマーの、エステル化のための基質を与えるという意味で、オリゴマー化の開始剤と見なすことができる。
【0104】
ある実施形態において、HVLCMは、粘性を低下させる溶媒と混合して、低粘性液体キャリア材料(LVLCM)とすることができるが、これを次に、投与に先だって、送達されるべき1つもしくは複数の麻酔薬と混合することができる。こうした溶媒は、水溶性、非水溶性、または水混和性とすることができ、アセトン、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、N-(β-ヒドロキシエチル)ラクトアミドブチレングリコール、カプロラクタム、カプロラクトン、コーン油、デシルメチルスルホキシド、ジメチルエーテル、ジメチルスルホキシド、1-ドデシルアザシクロヘプタン-2-オン、エタノール、酢酸エチル、乳酸エチル、オレイン酸エチル、グリセロール、グリコフロール(テトラグリコール)、ミリスチン酸イソプロピル、酢酸メチル、メチルエチルケトン、N-メチル-2-ピロリドン、MIGLYOL(登録商標)(カプリル酸および/またはカプリン酸と、グリセロールもしくはアルキレングリコールとのエステル、たとえば、MIGLYOL(登録商標)810もしくは812 (カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド)、MIGLYOL(登録商標)818 (カプリル酸/カプリン酸/リノール酸トリグリセリド)、MIGLYOL(登録商標)829 (カプリル酸/カプリン酸/コハク酸トリグリセリド)、MIGLYOL(登録商標)840 (ジカプリル/カプリン酸プロピレングリコール))、オレイン酸、ピーナッツ油、ポリエチレングリコール、炭酸プロピレン、2-ピロリドン、ゴマ油、SOLKETAL ([±]-2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-メタノール)、テトラヒドロフラン、TRANSCUTOL(登録商標)(ジエチレングリコールモノエチルエーテル、カービトール)、トリアセチン、クエン酸トリエチル、フタル酸ジフェニル、およびこれらの組み合わせを含めることができる。さらに、組成物が、たとえば局所適用のために、エアロゾルとして使用されるならば、溶媒は、1つもしくは複数の噴射剤、たとえば、トリクロロフルオロメタンおよびジクロロフルオロメタンのようなCFC噴射剤、テトラフルオロエタン(R-134a)、1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン(R-227)、ジメチルエーテル、プロパン、およびブタンといった非CFC噴射剤である、またはそれらを含有することができる。
【0105】
特に好適な溶媒、および/または噴射剤には、安息香酸ベンジル、ベンジルアルコール、トリアセチン、クエン酸トリエチル、ジメチルスルホキシド、エタノール、乳酸エチル、グリセロール、グリコフロール(テトラグリコール)、N-メチル-2-ピロリドン、MIGLYOL(登録商標)810、ポリエチレングリコール、炭酸プロピレン、2-ピロリドン、およびテトラフルオロエタンがある。
【0106】
他に考えられる溶媒としては、パーフルオロデカリン、パーフルオロトリブチルアミン、メトキシフルラン、グリセロールホルマール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ジグリム、およびジメチルイソソルバイドが挙げられる。
【0107】
組成物をLVLCMとして使用して麻酔薬を投与するとき、HVLCMが溶解する溶媒を含有すべきである。ある特定の場合に、麻酔薬もその溶媒に可溶性である。さらに他の場合には、溶媒は、第1の麻酔薬が溶解する、第2の麻酔薬である。溶媒は好ましくは無毒で、そうでなくても生体適合性である。
【0108】
ある実施形態において、溶媒は、投与時に体液または他の水性環境中に速やかに拡散し、組成物を凝固させる、および/またはより粘稠にすることができるように、少なくとも水溶性である。別の実施形態において、溶媒は、組成物からの溶媒の拡散、およびそれに対応する組成物の粘性増加を遅くするように、水もしくは体液と完全には混和しない。こうした特性を少なくともある程度は有する、適当な溶媒には、安息香酸ベンジル、MIGLYOL(登録商標)810、ベンジルアルコール、およびクエン酸トリエチルが含まれる。ベンジルアルコールは、麻酔作用物質でもあるため、特に好適であるとすることができる。
【0109】
1,6-ヘキサンジオールまたはグリセロールのエステルをHVLCMとして使用する場合、考えられる溶媒は、エタノール、N-メチルピロリドン、炭酸プロピレン、およびPEG 400である。
【0110】
溶媒は、概して、組成物の総重量に対する重量比(wt%)として約99.7パーセントから約0.5パーセントまで、約95から約1 wt%まで、約75から約10 wt%まで、または約50から15 wt%までの量が組成物に加えられる。溶媒は、典型的には、約55から10 wt%までの量が組成物中に存在する。
【0111】
本発明のさらに他の実施形態において、組成物はHVLCMと混和しない材料を含有するが、それは、HVLCMと単独で混合したとき、またはHVLCM用の溶媒と併せて混合したときに、結果として得られる組成物が乳濁液となるようにするためである。このような乳濁液は、水中もしくはグリセロール中で乳化されたSAIB/MIGLYOL(登録商標)混合物の場合のように、HVLCMを分散相に含有することができるが、HVLCM中で乳化された水溶液、もしくは水混和性溶媒中のHVLCM溶液の場合のように、HVLCMを連続相の成分として含有してもよい。
【0112】
上記の非ポリマー性の制御されたデリバリーシステムは、いずれも、本発明の方法で使用するのに適した、液体、スプレー、クリーム、ローション、軟膏、ゲル、スラリー、油、エマルション、マイクロエマルション、固体、 硬膏、フィルム、粒子、微粒子、粉末、または他の形態の医薬組成物として製剤することができる。このような組成物において、麻酔薬(たとえば、第1の麻酔薬)は、治療すべき被験体に、望ましい効果の達成に有効な量を送達するのに十分な量が含まれる。組成物に組み入れられる麻酔薬の量は、最終的な望ましい放出持続期間および放出特性、ならびに目的とする効果に必要とされる麻酔薬の濃度によって左右される。
【0113】
組成物中の麻酔薬の濃度はまた、当該物質の吸収、不活化および排泄率、ならびに当業者に知られている他の要因によっても左右されるものである。投薬量の値も、軽減すべき症状の重さによって変化しうることに留意すべきである。さらに当然のことながら、どのような特定の被験体についても、投与計画は、個々人の必要性、および組成物を投与する、もしくはその投与を指導する人物の専門的な判断にしたがって、長い時間をかけて調整されるべきであり、さらに、本明細書に記載の濃度範囲はほんの一例であって、請求される組成物の範囲もしくは実施を制限することを意図するものではない。組成物は、1回投与で与えることができるが、いくつかのより少ない用量に分割して、逐次もしくは同時に、さまざまな時間間隔で投与することもできる。
【0114】
1つもしくは複数の麻酔薬は、典型的には、組成物中に、組成物の総重量に対する重量比で約0.1-約99.5パーセント(wt%)、約0.5-約70 wt%、または約1-約50 wt%の範囲で存在する。しかしながら、約40%、30%、20%、もしくは10%ほどの低い上限を有する範囲を用いることも可能であり、同様に5%、3%、もしくは2%ほどの高い下限を有する範囲を用いることもできる。高活性の麻酔薬については、その範囲は重量比で1%未満とすることができ、場合によっては0.0001%未満ということもある。
【0115】
可溶性および不溶性の麻酔薬はいずれも、制御されたデリバリーのための非ポリマー性キャリア材料を用いて送達することができる。その上、組成物はさらに、ポリマー性添加剤とともに調剤され、修正された性質、たとえば、より速いもしくは遅い分解速度を有するデリバリーマトリクスを与えることができる。結果として生じる組成物は、当技術分野で知られている技術によって、マイクロスフェアに形作られ、または肉眼的インプラントに、または他の形状およびサイズに形作ることができる。あるいはまた、1つもしくは複数の麻酔薬を中に組み込んであらかじめ形成されたマイクロスフェア、インプラントもしくはポリマー粒子を、非ポリマー性キャリアと組み合わせることができる。
【0116】
マイクロスフェアは、当技術分野で知られているいくつかの方法、ならびに米国特許第6,291,013号および第6,440,493号に記載の方法によって調製することができる。ポリマー粒子は、溶融押出成形、造粒、溶媒混合、吸収もしくは同様の技術によって形成することができるが、麻酔薬はイオン交換樹脂のようなポリマーマトリクス上に吸着させることができる。結果として生じる材料は、適当な非ポリマー性キャリア材料と組み合わせて、非経口投与することができる。他の実施形態において、麻酔薬を、リン酸カルシウムもしくはショ糖といった非ポリマー性キャリア材料と組み合わせて、分解を延長する層形成/バリア特性を与えることができる。非ポリマー性キャリアはその後、派生的なバリアを形成して、デリバリー特性を高めることができる。非ポリマー性キャリア相は、選択された適用の個別の要求にしたがって、生物学的に活性な他の物質を含有しても、しなくてもよい。こうした他の生物学的活性物質は、任意の適当な治療および/または予防医薬品とすることができる。ただし、添加される物質が、当技術分野で知られている技術によってマイクロスフェアもしくはインプラントに組み込むことに適していることが条件である。
【0117】
上記で検討したように、さまざまな添加物を本発明の組成物に状況に応じて添加して、組成物の性質を修正し、より詳細には、組成物に含まれる麻酔薬に関する、組成物の放出特性を修正することができる。添加物は、組成物に望ましい特性を与えることができるよう任意の十分な量が存在することができる。使用される添加物の量は、一般に、添加物の性質および達成されるべき効果の関数であり、型どおりに容易に決定することができる。適当な添加物は米国特許第5,747,058号に記載されており、その内容全体を、参考として本明細書に含めるものとする。より詳細には、適当な添加物には、水、生分解性ポリマー、非生分解性ポリマー、天然油、合成油、炭水化物もしくは炭水化物誘導体、無機塩、BSA (ウシ血清アルブミン)、界面活性剤、有機化合物、たとえば、糖類、および有機塩、たとえば、クエン酸ナトリウムが含まれる。概して、添加物が、水溶性の低いほど、すなわち親油性であるほど、添加物のない同じ組成物と比較して、添加物は麻酔薬の放出速度を低下させることになる。それに加えて、組成物の強度もしくは空隙率といった特性を高める添加物を含有することは望ましいと考えられる。
【0118】
添加物の添加を利用して、麻酔薬のデリバリー時間を延ばし、長期間投与を必要とするもしくは長期間投与に対応する医学的応用に、組成物を適合させることもできる。この点に関して適当な添加物としては、米国特許第5,747,058号および第5,736,152号に記載のものがある。特に、上記目的に適した添加物には、ポリマー性添加物、たとえば、セルロースポリマーおよび生分解性ポリマーが含まれる。適当なセルロースポリマーとしては、酢酸セルロース、セルロースエーテル、および酢酸酪酸セルロースがある。適当な生分解性ポリマーには、ポリラクトン、ポリ酸無水物、およびポリオルトエステル、より詳細には、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、およびそれらのコポリマーが含まれる。
【0119】
添加物は、存在する場合、典型的には、組成物の総重量に対して重量で約0.01-約20パーセント、より特定すると重量で約0.01-約20パーセントの範囲の量が組成物中に存在し、より典型的には、重量比約1、2、もしくは5パーセントから約10パーセントまでの量が組成物中に存在する。バッファーのようなある特定の添加物は、組成物中に少量存在するのみである。
【0120】
下記のカテゴリーは、本発明の組成物で使用することができる添加物の種類の、限定的でない例である。
【0121】
添加物の1つのカテゴリーは、生分解性ポリマーおよびオリゴマーである。ポリマーを使用して、送達されるべき麻酔薬の放出特性を変更し、組成物に完全性を加え、そうでなくとも組成物の性質を修正することができる。適当な生分解性ポリマーおよびオリゴマーの限定的でない例には下記が含まれる:ポリ(ラクチド)、(ラクチド-グリコリド)コポリマー、ポリ(グリコリド)、ポリ(カプロラクトン)、ポリアミド、ポリ酸無水物、ポリアミノ酸、ポリオルトエステル、ポリシアノアクリル酸、ポリ(ホスファジン)、ポリ(ホスホエステル)、ポリエステルアミド、ポリジオキサノン、ポリアセタール、ポリケタール、ポリカーボネート、ポリオルトカーボネート、分解性ポリウレタン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリヒドロキシ吉草酸、ポリシュウ酸アルキレン、コハク酸ポリアルキレン、ポリ(リンゴ酸)、キチン、キトサン、およびコポリマー、ターポリマー、酸化セルロース、または上記材料の組み合わせもしくは混合物。
【0122】
ポリ(α-ヒドロキシ酸)の例としては、ポリ(グリコール酸)、ポリ(DL-乳酸)、およびポリ(L-乳酸)、ならびにそのコポリマーがある。ポリラクトンの例には、ポリ(ε-カプロラクトン)、ポリ(δ-バレロラクトン)およびポリ(γ-ブチロラクトン)が含まれる。
【0123】
どのような理論にも制約されたくはないが、組成物が生分解性ポリマーを含有するとき、ポリマーの一部は、含まれている溶媒が被験体に投与後に材料から離れて拡散するため、組成物の表面で沈澱もしくは凝固することがあると考えられる。したがって、ポリマーは、放出調整剤として添加され、1つもしくは複数の麻酔薬の放出に影響を及ぼすことができるが、あるいは、あらかじめ形成されたマイクロスフェア、インプラント、もしくは粉末状ポリマー粒子を含有する組成物の一部として加えられることもある。ポリマーの沈澱もしくは凝固は、こうした組成物の液体コアを少なくとも部分的に取り巻く皮膜を形成する。こうした皮膜は多孔質で、溶媒が皮膜を通して周囲の組織の中に引き続き拡散することを可能にする。溶媒放出の速度、および皮膜形成の程度、ならびにその多孔性は、組成物に使用される溶媒およびポリマーの量およびタイプによって制御することができる。
【0124】
本発明の組成物とともに使用するための他の添加物は、非生分解性ポリマーである。添加物として使用することができる、非生分解性ポリマーの限定的でない例としては、ポリアクリル酸、エチレン-酢酸ビニルポリマー、セルロースおよびセルロース誘導体、アシル置換酢酸セルロースおよびその誘導体、非生分解性ポリウレタン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、ポリビニル(イミダゾール)、クロロスルホン化ポリオレフィン、ポリエチレンオキシドおよびポリエチレンがある。
【0125】
好ましい非生分解性ポリマーには、ポリビニルピロリドン、エチレン酢酸ビニル、ポリエチレングリコール、酢酸酪酸セルロース (“CAB”) および酢酸プロピオン酸セルロース (“CAP”)が含まれる。
【0126】
本発明の組成物に使用することができる添加物のもう一つのクラスは、天然および合成の油脂である。動物起源、もしくはナッツの植物種子起源の油には、脂肪酸、主としてオレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸およびリノール酸のグリセリドが含まれる。原則として、分子が水素を多く含有するほど、油は高粘性となる。
【0127】
適当な天然および合成油の限定的でない例には、植物油、ピーナッツ油、中鎖トリグリセリド、ダイズ油、アーモンド油、オリーブ油、ゴマ油、ウイキョウ油、ツバキ油、コーン油、ヒマシ油、綿実油、およびダイズ油、粗製もしくは精製のいずれか、ならびに中鎖脂肪酸トリグリセリドが含まれる。
【0128】
脂肪は、一般に、ステアリン酸およびパルミチン酸といった高級脂肪酸のグリセリルエステルである。こうしたエステルおよびその混合物は室温で固体であり、結晶構造を示す。ラードおよび獣脂がその例である。概して、油脂は非ポリマー性キャリアシステムの疎水性を高め、分解および水の取り込みを遅くする。
【0129】
上記組成物はいずれも、標的部位で持続性局所麻酔を与えるために、本発明の方法において使用することができる。詳細には、組成物は、液体、スプレー、クリーム、ローション、軟膏、ゲル、スラリー、油、エマルション、マイクロエマルション、固体、硬膏、フィルム、粒子、微粒子、粉末、または他の適当な任意の医薬組成物の形態として、調剤することができ、その後被験体に、局所、経皮、非経口(たとえば、注射、インプラントなど)もしくは同様のデリバリー技術によって投与することができる。組成物は、麻酔薬および製薬上許容される非ポリマー性キャリアを含有し、これを使用して、被験体に投与後初期バーストのない、持続性局所麻酔という特徴を有し、投与後少なくとも約24時間、好ましくは投与後少なくとも約36-48時間、さらにより好ましくは投与後少なくとも約48-72時間の持続時間を特徴とする、麻酔効果が与えられる。ある実施形態において、局所麻酔の発現は、被験体への投与の約2時間以内に起こるが、好ましくは投与の約1時間以内であり、場合によっては、被験体への投与の約30分以内に起こる。
【0130】
「被験体」という用語は、本明細書で使用される場合、局所麻酔状態を与えることが求められる、何らかの脊椎動物を指す。したがってこの用語は、概して、本発明の組成物で処置されるべき動物、たとえば、鳥類、魚類、およびヒトを含めた哺乳類を指す。ある実施形態において、本発明の方法は、局所麻酔の長期間持続する状態が好都合であり、または望ましいいかなる場合にも、獣医学診療および畜産業、たとえば、鳥類および哺乳類において、持続麻酔を与えるのに適している。ある特定の場合において、組成物は、イヌまたはネコといったペットに使用するのに特に適しており、それに加えて、ウマにも使用することができる。好ましい実施形態において、「被験体」という用語は、ヒト被験者を意味する。さらに、「被験体」という用語は、特定の年齢を意味しないので、組成物は、あらゆる年齢の被験体、たとえば、乳幼児、青年、成人、および高齢の被験体に使用するのに適している。
【0131】
好ましい実施形態において、本発明の組成物は、創傷治療に使用するのに特に適している。非ポリマー性キャリアシステムによって、1つもしくは複数の麻酔薬を創傷に、創傷内に直接であれ、および/または創傷に隣接してであれ、容易に適用することが可能になるが、それは、非常に簡単な適用方法、たとえば、液体、スプレー、クリーム、ローション、軟膏、ゲル、スラリー、油、エマルション、マイクロエマルション、成形しやすい固体もしくは硬膏、フィルム、粒子、微粒子、または粉末の組成物を、創傷内に滴下する、噴霧する、塗布する、散布する、成形して入れる、またはそうでなければ、手で扱う、といった方法を使用する。したがって、組成物はどのような大きさの創傷にも、いかなる形状の創傷にも使用可能であって、よりすぐれた保持および有効性のために、創傷の全範囲にわたって、1つもしくは複数の麻酔薬の均一な分布を与えることができる。このような方法によって処置することができる創傷は、もっとも浅い表在性創傷から深い創傷まで、表面創傷から切開創傷まで、さらに手術(または、故意の)創傷から不慮の創傷にまで及ぶ。組成物が注入される場合、創傷に並行して、あらゆる面に、あるいは境界の外側に、トレイリング注入(trailing injection)を用いて組成物を皮下スペースに適用できる。たとえば、創傷の外科的縫合の前に、創傷の中に組成物を直接埋め込み、さらに追加として創傷のそばに加えるというように、組み合わせた方法も使用することができる。特に好ましい実施形態において、本発明の方法は、切開による術後疼痛の治療のために、局所麻酔薬として本発明の組成物を使用することに関する。こうした本発明の組成物の使用は、上記の術後疼痛を治療するために全身的な麻薬性鎮痛薬を投与するといった補助療法を与える必要性を未然に防ぎ、少なくとも緩和する。したがって、この組成物を使用して、あらゆるタイプの医療処置、たとえば、大手術(例、開胸術、大動脈修復術、腸管切除)、中程度の手術(例、帝王切開、子宮摘出および虫垂切除)、および小手術(腹腔鏡検査、関節鏡検査、および生検法)に伴う術後疼痛を治療することができるが、そうしないとこの疼痛は身体を衰弱させる可能性があり、術後3-5日間疼痛治療を必要とすることがある。
【0132】
したがって、本明細書に記載の組成物は、本発明の実施に際して、さまざまな方法によって投与することができる。たとえば、組成物は、局所的に、全身的に(たとえば、粘膜に(経口、直腸、膣、もしくは鼻で))、非経口的に(静脈内、皮下、筋肉内、もしくは腹腔内)、または同様の他の経路で投与することができる。組成物は、注射、注入、スプレーディップ、噴霧器、もしくは塗布装置によって適用することができる。組成物のエアロゾルもしくはミストは、たとえば局所投与用には、エアゾール噴射剤を使用し、または、たとえば鼻粘膜もしくは口腔粘膜投与用には、適当なネブライザーを使用して投与することができる。
【0133】
好ましくは、組成物は液体として注射によって投与され、またはエアゾール剤、ペースト剤もしくは乳剤として投与される。エアゾール剤として使用される場合、エアゾール溶液中に存在するいかなる溶媒も通常は、適用時に蒸発し、それによって組成物をフィルムとして構築することが可能となる。あるいはまた、エアゾール剤もしくは乳剤は、溶媒なしで調製することができる。この場合、エアゾール噴射剤が溶媒として機能することができる。エアゾール剤および乳剤の生成は、当業者に知られている技法を用いて行うことができる。たとえば、Ansel, H.C.ら、Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems, Sixth Edition (1995)を参照されたい。
【0134】
上記の使用法に加えて、本発明の組成物は浸透圧ポンプによって投与することができる。ある実施形態において、デバイスは被験体の組織中に埋め込まれるように、しかも長期間にわたって持続的な放出をもたらすようにデザインされる。
【0135】
多孔質もしくは非多孔質チューブ(望ましくは、押出生分解性ポリマー製)を用いて、本発明の組成物を投与することも可能である。組成物の特性および求める放出特性に応じて、さまざまな程度の多孔性を有するチューブを調製することができる。本発明の組成物をチューブ内に挿入して、チューブの末端は開けたままにしておいてもよく、それによって生物学的に活性な化合物がチューブの末端から外へ拡散することが可能となるが、あるいは、別の多孔質もしくは非多孔質ポリマーで閉鎖してもよい。多孔質エンドキャップおよび多孔質チューブは、時間経過とともに孔を通じて、活性化合物が拡散することを可能にする。非多孔質エンドキャップ、ならびに非多孔質チューブは、そのポリマーに可溶性である麻酔薬がそれを通じて周辺の組織内へ拡散することを可能にする。麻酔薬のための溶媒ではないが生分解性である非多孔質材料は、それが十分に分解したとき、麻酔薬を放出することができる。本発明の組成物は、投与できる状態となるまで、多成分系として調製して保存することができる。異なる成分の数は、一部、組成物の特性によって決まる。投与に先立って、組成物は、たとえば均一な組成物を達成するために、組み合わせて混合され、これをその後被験体に投与することができる。溶媒もしくは添加物は、成分のうちの1つもしくはすべてに加えることができるが、あるいは別個の成分を形成することもあり、これも、投与の前に他の成分と混合される。組成物を分離して多成分混合物とすることによって、各成分の保存条件を最適化することができ、時間経過に伴う成分間のあらゆる有害な相互作用が最小となる。結果として保存安定性が高まった。
【0136】
(実施例)
下記は、本発明を実施するための具体的な実施形態の例である。実施例は説明目的のためにのみ提供されるのであって、いかなる場合も本発明の範囲を制限することを意図するものではない。
【0137】
一般的方法
本発明の組成物および方法のin vivoでの有効性は、ラットでホットプレートモデルを用いて評価することができるが、たとえば、IACUC No 9511-2199に詳細に記載された手順による。本発明の組成物のために設定された有効性の基準は、平均潜時が約2秒より大で、カットオフは12秒である(このカットオフは、動物にできる限りダメージを生じないよう課される)。2秒の潜時は、局所麻酔薬の統計的に有意な効果を示す。ラットホットプレートモデルでの平均潜時は、好ましくは7秒を上回る。パーセント応答個体は、好ましくは、50%以上である。好ましくは、本発明の組成物は、ラットホットプレートモデルのもとで、約7秒を超えて約12秒までの平均潜時を与え、効果を示すラットの割合は、テストしたラットの約50%以上である。
【0138】
ラットホットプレート法は、次のように要約される。平均体重275 gの雄Sprague Dawleyラット(Harlan Laboratories, Indianapolis, Ind.)を使用する。ホットプレート実験では、後足の足底表面を56℃に加熱したホットプレート上に載せている間、動物の胴体を軽く保持する。ベースライン潜時は、麻酔薬組成物をラットの座骨神経の周囲に一側性に注入する前に、測定される。
【0139】
ヒトモデルにおける知覚検査も、本発明の組成物のテストに有用である。局所麻酔活性は、7つのモダリティを用いて、効果の発現、ピークの強さおよび持続時間について調べることができる:(a)機械的知覚検査(von Frey hairによる機械的痛覚の検知閾値);(b)単一のvon Frey hairを用いた閾値上(機械的)検査;(c)温度覚検査(温覚検知閾値);(d)熱痛覚検知閾値;(e)閾値上(熱覚)検査;(f)冷覚検知閾値;および7)触覚検査(機械的接触検知閾値)。さまざまな結果の程度もしくはレベルは、局所疼痛緩和、局所麻痺、および/または局所神経遮断を経験する被験体を示す。本発明の組成物および方法の麻酔活性はさらに、局所部位に投与した後に到達する全身血漿中濃度といった活性の様々な指標によって、安全性について特徴付けることができる。
【0140】
機械的痛覚検知閾値は、痛みまたは不快の明確な感覚を生じる、von Frey Hairのもっとも弱い力、もしくは数と定義され、機械的接触検知閾値は、接触もしくは圧迫の感覚を生じる、von Frey Hairのもっとも弱い力、もしくは数と定義される。機械的接触検知閾値および機械的痛覚検知閾値は、von Frey Hairs (VFH) (Somedic A/B, Stockholm, Swedenより入手可能)をだんだんに硬くしていって、同時に測定することができる。わずかに曲がるまで秤に押しつけた各VFHが、3から402ミリニュートン(mN)までの全範囲にわたって、VFHごとに対数的に増加する力に対応することは、あらかじめ測定されている(VFH No. 7=3 mN; VFH No. 8=13 mN; VFH No. 9=20 mN; VFH No. 10=39 mN; VFH No. 11=59 mN; VFH No. 12=98 mN; VFH No. 13=128 mN; VFH No. 14=133 mN; VFH No. 15=314 mN; VFH No. 16=350 mN; VFH No. 17=402 mN)。
【0141】
したがって、ヒト被験者において、本発明にしたがって製造された組成物を注射した部位を、VHF No.7から始めて、VHF No.17に至るまで、1秒当たり約2回刺激の割合で、各VFHについて8回刺激することができる。接触もしくは圧迫として感じられる最も低いVFH数(機械的接触検知閾値)、および8回の刺激のうち半分が痛みを伴い、もしくは不快であるようなhairの最も低いVFH数(機械的痛覚検知閾値)を記録する。この手順をあと2回繰り返し、3回の測定値の平均を報告する。VFH No. 17が接触もしくは圧迫の感覚を生じないならば、機械的接触検知閾値18が割り当てられることになる。VFH No. 17が痛覚もしくは不快をなんら生じないならば、機械的痛覚検知閾値18が割り当てられることになる。単一のvon Frey Hair に対する閾値上機械的痛覚応答は、注射部位をVFH No. 17 (402 mN)で5回刺激することによって測定される。被験者は0-10のVRSスケールによって痛みを評価するが、このVRSスケールでは(0)は無痛であり、(10)は想像できる限り強烈な痛みである。
【0142】
上記のように、この検査は、被験者に痛みを伴う反応を生じることが明らかになっている、1本の硬いvon Frey Hairを用いて行われる。痛覚応答は、注射もしくは他の処置をした部位を、VFH No. 17で5回刺激することによって測定される。被験者は上記のように、0-10までのVerbal Rank Scale (VRS)で痛みを評価する。
【0143】
処置部位における温度覚検査(閾値上熱痛覚応答)は、処置部位でコンピューター制御サーモード(Thermostest, Somedic A/B, Stockholm, Swedenより入手可能)を用いて、5秒持続する45℃の刺激によって測定する。被験者は0-10のVerbal Rank Scale (VRS)で評価する。
【0144】
温覚検知閾値は、感知される、32℃からの最も少ない温度増加として定義され、熱痛覚検知閾値は、痛みとして感知される最も低い温度として定義され、さらに冷覚検知閾値は、感知される、32℃からの最も少ない温度低下として定義される。温覚検知閾値、熱痛覚検知閾値、および冷覚検知閾値は、処置された部位でコンピューター制御サーモード(Thermostest, Somedic A/B, Stockholm, Swedenより入手可能)を用いて測定される。被験者は、指定された知覚に達するやいなやボタンを押すよう指示される。温度覚閾値は、ベースラインの32℃から測定し、1秒につき1℃変化する割合で、増加(温覚検知閾値および熱痛覚検知閾値)もしくは低下(冷覚検知閾値)させる。上限カットオフは、温覚検知閾値および熱痛覚検知閾値について52℃である。下限カットオフは、冷覚検知閾値について25℃である。
【0145】
温覚検知閾値、熱痛覚検知閾値、および冷覚検知閾値は、それぞれの刺激の間に10秒の間をおいて、3回の測定値の平均として算出される。被験者が52℃で温かさもしくは痛みを感知しなかった場合、53℃という値が温覚検知閾値として記録される;被験者が52℃で痛みを感知しなかった場合、53℃という値が熱痛覚検知閾値として記録される:ならびに、被験者が25℃で冷たさ、もしくは痛みを感知しなかった場合、24℃という値が冷覚検知閾値として記録される
【実施例1】
【0146】
麻酔薬を含有する非ポリマー性キャリアシステムを、次のように製造した。ショ糖酢酸イソ酪酸エステル(SAIB)を、SAIBキャリア用のN-メチルピロリドン(NMP)溶媒と組み合わせて、70:30混合物を作製した。この混合物に2.5%(w/v)もしくは5%ブピバカイン(遊離塩基)を加えて、2つの試験組成物を作製した。
【0147】
雄Sprague Dawleyラット(275-300 g)を8匹ずつ2つのテスト群に分けた。試験製剤を、針付き注射器を用いて動物に投与し、25または50 mg用量のブピバカインを送達した。次に皮膚フリンチ応答テストを用いて、局所麻酔効果の存在を測定したが、ピンによる皮膚刺激時のこの不随意フリンチは、注射部位のベースの1 cm以内の10箇所のランダムな部位に適用された。その後、ピン知覚のパーセント阻害を、ベースライン応答からテスト応答を引いてベースライン応答で割り、100をかけることによって計算した。
【0148】
得られた結果は、2つの試験組成物はいずれも、約60-72時間までの持続時間の間、局所麻酔効果を与え、活性の発現は投与の1時間以内であることを示した。
【実施例2】
【0149】
被験体。雄Fisher 344ラット(Charles River Laboratories) (N=96)をこの実験のために使用した。動物は温度と湿度が制御された飼育ケース内で、逆転した明暗サイクル(5:00から17:00まで暗い)を維持した。ラットは、実験期間中以外は、食物および水に自由にアクセスした。実験はすべて、明暗サイクルの暗期に行われた。すべての手順は、Institutional Animal Care and Use Committee of Wake Forest University Health Sciences Centerによって承認された。
【0150】
外科的処置。酸素中5%イソフルラン吸入薬で麻酔を導入した後、動物の左下腹部を剃毛した。酸素中2.0-2.5%イソフルラン吸入薬を用いて、外科的処置の間麻酔を維持した。左側の一番下の肋骨の0.5 cm下にそれと平行して3 cmの切開を入れ、腹腔に貫通した。腹腔内に人差し指を5-7 cm挿入し、筋肉組織を広げることによって、内臓および筋肉組織は、強く取り扱われた。小腸の約10 cmを体外に出し、軽く手で操作した。この小腸を腹腔の内側に戻し、4.0 chromic gut縫合糸を用いて、腹膜の内層、腹筋、および皮膚からなる3層で創を縫合した。外側の創傷は、抗生物質散剤(Polysporin(登録商標)、Glaxo-Wellcome, Research Triangle Park, NC)で手当てし、動物には75.000 UのペニシリンGプロカインが筋肉注射で与えられた。偽処置動物は、麻酔し、剃毛し、イソフルラン麻酔下に20分間維持し、ペニシリンGプロカインが筋肉注射で与えられた。
【0151】
放出制御ブピバカイン組成物の投与。試験動物は表1にしたがって、ビヒクル(ベヒクル)(70:30, SAIB:NMP)、1.25% (w/v)、2.5%または5%ブピバカインのいずれかの投与を受けた。組成物は、皮膚の縫合後に、トレイリング注入法によって、1.0 mlシリンジおよび22ゲージ1.5の針で投与され、組成物0.25 mlが傷口の約0.5 cm上で切開部位のまわりに均一に分布するようにした。2回目の投与は、傷口の0.5 cm下に、同様に施された。KおよびL群については、1.25% (w/v)もしくは5%ブピバカイン0.1 mlの追加投与を、外側の筋肉層を縫合する前にトレイリング注入法によって、腹膜内層の上部に与えた。ブピバカイン組成物は、十分な粘性を得て、外側の筋肉を縫合する前に、腹膜内層に1-2分留まることが可能になり、それによって組成物が縫合プロセスの間に外側の筋肉から浸出しないようにすることが可能となった。
【表1】

【0152】
自発的移動の測定。市販の装置およびソフトウェア(Med Associates Inc., St. Albans, VT)を用いて、開腹手術の24時間後から、探索行動を評価した。活動チャンバーは、アクリルの囲いで構成され、17” x 17”の大きさであって、その高さは15'で上部は開放とした。1インチ間隔で16個の赤外線送信器の列を2つ、XおよびYの2方向に床上1"の高さで設置し、位置合わせした赤外線検出器をチャンバーの向かい側に設置した。3列目の赤外線送信器および検出器は、床上7 cmの高さでX方向に設置したが、本実験に使用するラットは、この赤外線を遮るために後ろ足で立つことが必要であった。それぞれの活動チャンバーは、光および音を減衰させる構内に収められた。セッションは術後16, 24, 40, 48および72時間に行われ、持続時間は60分とした。集められた測定は、全移動距離、XおよびY2方向の全ビーム遮断(歩行カウント)、移動なしでの動物の3 cm以内での繰り返しビーム遮断(常同行動)、上側のX方向の全ビーム遮断(立ち上がり)、歩行に費やされる時間、常同行動に費やされる時間、立ち上がり時間、および休息時間である。すべての計測はセッションを通じて6 min binsで集められ、セッション全体について合計された。
【0153】
ピンプリックテストによる感覚の回復の測定。手術の96時間後に、動物を、腹部へのアクセスを可能にする透明なアクリル保持チャンバー内に軽く拘束した。やや先を鈍らせた20ゲージ注射針を、腹部組織をはっきりとくぼませるのに十分な力で腹部創傷部位の0.5 cm以内の部位に押し当てた。10秒間、または動物がビクッと反応する、もしくは針から離れることによって反応するまで、針をその場所に保持した。それぞれの動物は、創傷部位で2-3回テストした。創傷部位から少なくとも10 cm離れた部位を、ポジティブコントロール測定として、同様にテストした。
【0154】
データ解析。繰り返し測定のための二元配置分散分析法(2-factor ANOVA)を用いてデータを解析したが、個々の行動指標は独立した測定として機能し、処置群および術後時間の2つは従属変数として機能した。事後解析は、偽手術群を対照として、多重比較のためのBonferroni-Dunn t−検定を用いて、ならびに全対比較のために制約付き最小有意差検定(Fisher’s Protected LSD)を用いて実施した。
【0155】
結果(移動距離)。ビヒクルもしくはブピバカインによる、手術および周術期処置の効果を、それぞれの時点について図1-5に示す。移動距離に関して、術後の処置群および時間の有意な主効果が存在したが、これら2つの変数の間に有意な相互関係はなかった(表1)。
【表2】

【0156】
対照群に対する多重比較のためのBonferroni-Dunn t−検定を用いた事後解析から、ブピバカインを投与されたすべての群が、偽処置と有意差があるとは言えないが、無処置の切開動物、もしくはビヒクル処置動物は、研究を通じて、偽対照とは依然として有意差があることを明らかになった(表2)。制約付き最小有意差検定(Fisher’s Protected LSD)を用いた全対比較の事後解析によって、腹膜内層の部位と外側の筋肉の両方に、5%ブピバカインもしくは1.25%ブピバカインを投与された群のみが、偽群と有意差があるとは言えないことが明らかになった(表3)。
【表3】

【0157】
歩行カウント。歩行カウントデータの統計的な結果は、上記の移動距離について記載された結果と、定性的には類似している。歩行カウントのデータは、術後のそれぞれの時点について評価した。セッション中の移動距離と同様に、歩行カウントに関して、術後の処置群および時間の有意な主効果が存在したが、これら2つの変数の間に有意な相互関係はなかった(表4)。
【表4】

【0158】
歩行カウントを独立した測定として用いた、Bonferroni-Dunn t検定による事後解析は、移動距離のデータと類似した結果を生じた(表5)。
【表5】

【0159】
制約付き最小有意差検定(Fisher’s Protected LSD)による全対比較の解析から、偽群は、対照切開群、ビヒクル処置群、および最低用量のブピバカイン(1.25%)で処置した群とのみ有意差があることが明らかになった(表6)。
【表6】

【0160】
常同行動カウント。ひっきりなしの運動(常同行動)について群の間に有意差は認められなかったが、術後時間の有意な主効果、ならびに、処置群と術後時間の間に有意な相互作用が存在した(表7、図11-15)。Bonferroni-Dunn t−検定による事後解析から、40時間の時点が、この測定について他の時点と有意差があることが明らかになった(表8)。40時間時点の除外、および残りのデータの二元配置分散分析法(2-factor ANOVA)による再解析は、処置群の、常同行動に対するわずかに有意な効果、術後時間の有意な主効果、ならびに処置群と術後時間の間の有意な相互作用を明らかにした(表9)。Bonferroni-Dunnによる事後解析は、処置群の間の有意差を少しも示さなかったが、制約付き最小有意差検定(Fisher’s Protected LSD)t検定は、腹膜内層のレベル、および腹部筋肉層の両者での、最高用量のブピバカイン(5%)、ならびに1.25%ブピバカイン処置群を除いて、すべての群が偽対照とは有意に異なることを明らかにした(表10)。

【表7】

【表8】

【表9】

【表10】

【0161】
垂直カウント(立ち上がり)。立ち上がりについて、処置群および術後時間に有意な主効果があり、これらの変数の間に有意な相互作用があった(表11)。Bonferroni/Dunn t−検定による事後解析から、偽対照と全処置群の間の有意差が明らかになった(表12)。制約付き最小有意差検定(Fisher’s Protected LSD)は、一貫性のある研究結果を与え、他の全処置群に対する偽群を除くと、有意差は認められなかった(表13)。
【表11】

【表12】

【表13】

【0162】
ピンプリック刺激。動物は、手術の96時間後に、切開部から0.5 cm以内の部位にピンプリック刺激を受けた。HH群(1.25%ブピバカインを、腹部筋肉層および腹膜内層の両方に投与)の動物1個体を除き、全動物がこの刺激に反応した。前記動物は、切開部から約3 cmの部位に投与された場合は、ピンクリック刺激に正常に反応した。
【0163】
結果。持続放出組成物に使用されたビヒクルによる周術期処置(対照)は、他の処置を受けない腹部切開群と比較して、活性測定に有意な効果はなかった。後期の時点の一部で、常同行動に対して、見かけのベヒクル効果は存在した。データは、一貫して、持続放出組成物中5%ブピバカインの有意な鎮痛効果を支持し、この効果は検討された後期の時点で存在すると思われた。5%ブピバカインの放出制御組成物は一貫して、かなりの痛覚消失をもたらし、垂直方向の活動を除いて、あらゆる行動計測に対する腹部切開の影響を打ち消した。ある程度の鎮痛効果が、腹膜内層面および外側の腹部筋肉層の両方に1.25%ブピバカインを投与した後に認められたが、その効果は5%ブピバカインを外側の腹部筋肉層にのみ投与した後の効果ほど一貫性のあるものではなかった。5%ブピバカインの効果は、48および72時間の時点でより強かった。これらの動物が最初期の時点でより低い活動性を示した理由は、前記動物がホームケージでは正常な摂食行動および身繕い行動を示し苦痛があるように見えなかったので、容易にはわからない。これらのデータは、ブピバカイン麻酔薬を含有する本発明の放出制御組成物を用いた、術後の痛みを制御するのに十分な局所麻酔効果を立証する。
【実施例3】
【0164】
下記の用量増加、安全性、および薬物動態学的評価は、ショ糖酢酸イソ酪酸エステルの非ポリマー性キャリアを含んでなる放出制御ブピバカイン組成物の、安全性/忍容性、および予備的な薬物動態学的性能を評価するために、参加を希望する健康なヒト被験者で実施した。
【0165】
組成物は、ショ糖酢酸イソ酪酸エステル(SAIB)非ポリマー性キャリア中に調合されたブピバカイン遊離塩基を用いて調剤されたが、このキャリアはさらに、ブピバカインおよびSAIBに対する溶媒として作用するN-メチル-2-ピロリドン(NMP)を含有する。組成物は、SAIBキャリアおよびNMP溶媒(70:30 ベヒクル)を5 wt%のブピバカインと混合することによって調製し、注射量2.5 ml中にブピバカイン137.5 mgを含有する個別製剤を生成した。組成物は注射液として与えられた。
【0166】
この研究では2つのコホート研究を行った。コホート1は、年齢22-38歳の健康な男性被験者6人で構成された。コホート1のために、全被験者は、第1の投与部位に全量2.5mlのSAIB/NMP/ブピバカイン組成物(ブピバカイン137.5 mgを含有)の注射を受け、腹部皮下スペース内に5 cmのトレイリング注入として投与された;さらにベヒクル(SAIB/NMP)のみを含む2.5 mlプラセボ注射を第2の投与部位に受け、やはり腹部皮下スペース内に5 cmのトレイリング注入として投与された。投与後、被験体は、投与部位の局所組織の状態をモニターして8時間までを評価し、血漿サンプルを採取した。追加血漿サンプルは、第1、2、3、4および28日に採取した。標準的な方法を用いて、すべての血漿サンプルの血中ブピバカイン濃度を調べた。
【0167】
コホート2も、年齢22-38歳の健康な男性被験者6人で構成された。コホート2はさらに2群に分割し、第1群(n = 3)は、全量5 mlのSAIB/NMP/ブピバカイン組成物(ブピバカイン275 mgを含有)の注射を受け、腹部皮下スペース内にそれぞれ2.5 mlの2つの5 cm トレイリング注入として投与された。第2群(n = 3)は、ベヒクル(SAIB/NMP)のみを含有する全量2.5 mlプラセボ注射を受け、やはり腹部皮下スペース内にそれぞれ1.25 mlの2つの5 cmトレイリング注入として投与された。ここで繰り返すが、投与後、被験体は、投与部位の局所組織の状態をモニターして8時間までを評価し、血漿サンプルを採取した。追加血漿サンプルは、第1、2、3、4および28日に採取した。
【0168】
研究の結果として、SAIBキャリアおよびSAIB/NMP/ブピバカイン組成物は、良好な忍容性を示し、この注射は、結果として、注射部位において観察可能な発赤、腫脹、掻痒、変色、もしくは他の有害症状をなにも生じることなく、あるいは研究期間を通じて容認できない組織反応も生じないことが明らかになった。それに加えて、ブピバカインの薬物動態評価は、活性のあるブピバカインのSAIBキャリアからの適切な徐放(持続放出)を示し、3-4日間にわたって活性のあるブピバカインを放出した。これらの薬物動態学的結果を図1に示す。見てわかるとおり、コホート1(84 ng/mL)およびコホート2(174 ng/mL)注射後のCmax血漿中ブピバカイン濃度は、公表された毒性のある推定血漿中濃度範囲(約1-4 μg/mL)をはるかに下回っていた。それに加えて、コホート1とコホート2曲線の比較は、ブピバカインの血漿中濃度が用量増加に伴ってほぼ直線的に増加することを示す。さらに、AUCの評価は、100%のブピバカインバイオアベイラビリティが存在したことを示す。
【実施例4】
【0169】
下記の用量増加、薬物動態、薬力学的(有効性)評価は、ショ糖酢酸イソ酪酸エステル非ポリマー性キャリアを含有し、本発明にしたがって調製された放出制御ブピバカイン組成物の有効性および医薬品性能を評価するために、鼠径ヘルニアの外科的修復術を受けるヒト患者において実施した。この研究では、開放鼠径ヘルニア修復患者において、生理食塩水(プラセボ)もしくは塩酸ブピバカイン(Marcain(登録商標)創傷浸潤物と組み合わせた、皮下投与された本発明のSAIB/ブピバカイン組成物の有効性を、皮下および浸潤物として投与された市販のブピバカイン溶液(Marcain(登録商標)、塩酸ブピバカインBP、5.28 mg/mL、塩酸ブピバカイン無水物5 mg/mLに相当する)に対して比較する。
【0170】
試験組成物は、ショ糖酢酸イソ酪酸エステル(SAIB)非ポリマー性キャリア中に調合されたブピバカイン遊離塩基を用いて調剤され、さらにブピバカインおよびSAIBキャリアに対して溶媒として機能するベンジルアルコールを含有する。ベンジルアルコールは麻酔作用物質でもある。組成物は、約66 wt%のSAIBキャリア、22 wt%のベンジルアルコール溶媒/麻酔薬、および12 wt%ブピバカインを混合することによって調製し、注射量1.25 mL中に159.5 mgブピバカインを含有する個別製剤が与えられた(全量2.5 mL中に319 mg)。組成物は透明な注射液として与えられた。
【0171】
この研究は、91人までの患者とともに3つのコホートを含めるように計画されている(コホート1には患者6人;コホート2には患者15人;ならびにコホート3には最大で患者70人)。詳細には、コホート1は、年齢23-52歳の健康な6人の男性被験者から構成された。コホート1について、全患者がSAIB/BA/ブピバカイン組成物(319 mgブピバカイン含有)の全量2.5 mLの注射を受けたが、これは手術創傷の両側に沿って2回の皮下トレイリング注入として投与され(示唆された全長5 cmの切開創傷に沿って0.5 mL/cm)、創傷を閉じる前に切開創内に(筋膜下を含める)10 mL生理食塩水を浸潤させた。トレイリング注入は、切開創傷縁から0.5-1.0 cm離して、創傷縁に平行に投与され、針を皮下に、切開の長さに平行して、切開に沿って前進させ、針を引きながら連続的に注入することによって実施された。麻酔/鎮痛効果は、最初の追加鎮痛薬投薬までの時間、および全追加鎮痛薬消費(4日間)テストによって評価した。血漿中ブピバカイン濃度は、研究期間を通じて、特に最初の24時間を通じて、定期的に測定し、SAIB放出制御組成物からの初期のブピバカイン放出の程度を評価した。
【0172】
最初の追加鎮痛薬投薬までの時間に関する結果を下記の表14で報告する。
【表14】

【0173】
全追加鎮痛薬消費(4日間)の結果を下記の表15に記載する。
【表15】

【0174】
実施例3の研究と同様に、SAIB/BA/ブピバカイン組成物が良好な忍容性を示し、この注射は、結果として、注射部位において観察可能な発赤、腫脹、掻痒、変色、もしくは他の有害症状をなにも生じることなく、あるいは研究期間を通じて容認できない組織反応も生じないことがあらためて明らかになった。それに加えて、ブピバカインの薬物動態評価は、SAIBキャリアからの活性のあるブピバカインの持続放出を示し、4日間にわたって活性のあるブピバカインを放出した。薬物動態学的結果を図2および3に示す。図に示すように、SAIB/BA/ブピバカイン組成物は、活性のあるブピバカインを、初期バーストなしに速やかに(投与の約1時間以内に)放出し、少なくとも処置の最初の3日間は、ほぼ一定の、定常状態の放出を示した。測定された平均Cmaxは277 ng/mL ± 109;Tmaxは23時間 ± 21;ならびにCssは191 ng/mL ± 13であった。
【0175】
コホート2は、年齢26-54歳の健康な15人の男性被験者から構成された。コホート2はさらに3群に分割し、第1群(n = 5)はSAIB/BA/ブピバカイン組成物の全量5.0 mLの注入を受けたが(638 mgブピバカイン含有)、これは手術創傷の両側に沿って2回の皮下トレイリング注入として投与され(示唆された全長5 cmの切開創傷に沿って0.5 mL/cm)、創傷を閉じる前に切開創傷内に(筋膜下を含める)10 mL生理食塩水を浸潤させた。第2群(n = 5)は、SAIB/BA/ブピバカイン組成物の全量5.0 mLの注入を受けたが(638 mgブピバカイン含有)、これは手術創傷の両側に沿って2回のトレイリング皮下注入として投与され(示唆された全長5 cmの切開創傷に沿って0.5 mL/cm)、創傷を閉じる前に切開創傷内に(筋膜下を含める)10 mL Marcain(登録商標)(0.5% ブピバカイン-HCl)を浸潤させて、患者当たり投与されたブピバカインは全体として688 mgとなった。第3群(n = 5)はMarcain(登録商標)(0.5% ブピバカイン-HCl)の全量5.0 mLの注入を受けたが、これは手術創傷の両側に沿って2回のトレイリング皮下注入として投与され(示唆された全長5 cmの切開創傷に沿って0.5 mL/cm)、創傷を閉じる前に切開創傷内に(筋膜下を含める)10 mL Marcain(登録商標)を浸潤させて、患者当たり投与されたブピバカインは全体として75 mgとなった。
【0176】
麻酔/鎮痛効果は、最初の追加鎮痛薬投薬までの時間、安静時切開部疼痛スコア、および全追加鎮痛薬消費(4日間)テストによって評価した。血漿中ブピバカイン濃度は、研究期間を通じて、特に最初の24時間まで、定期的に測定し、SAIB放出制御組成物からの初期ブピバカイン放出の程度を評価した。
【0177】
コホート2の全3群に関する「最初の追加鎮痛薬投薬までの時間」テスト、および「全追加鎮痛薬消費」(4日間)テストの結果は、下記の表16に記載する。
【表16】

【0178】
また繰り返すが、SAIB/BA/ブピバカイン組成物は良好な忍容性を示し(第1群および第2群の患者)、この注射は、結果として、注射部位において観察可能な発赤、腫脹、掻痒、変色、もしくは他の有害症状をなにも生じることなく、あるいは研究期間を通じて容認できない組織反応も生じなかった。それに加えて、ブピバカインの薬物動態評価は、SAIBキャリアからの活性のあるブピバカインの持続放出を示し、4日間にわたって活性のあるブピバカインを放出した。薬物動態学的結果を図4および5に示す。図に示すように、SAIB/BA/ブピバカイン組成物は、活性のあるブピバカインを、初期バーストなしに速やかに(投与の約1時間以内に)放出し、少なくとも処置の最初の3日間は、ほぼ一定の、定常状態の放出を示した。
【0179】
コホート2の全3群に関する薬力学を、下記表17に示す。
【表17】

【0180】
コホート2の研究からわかるように、本発明の放出制御組成物は、術後少なくとも4日間にわたって、有効な局所麻酔効果を与え、追加の鎮痛薬投薬の必要性をおおいに低下させる。実際、本発明のSAIB/BA/ブピバカイン組成物の投与を受けた患者の50%(第1群および第2群の患者10人のうち5人)は、4日間のすべてにわたって追加の鎮痛薬を必要としなかった。追加の鎮痛薬を必要とした第1群および第2群の患者は、最初の鎮痛薬投薬をまだ約2-3日間待つことができ、術後約2日間にわたって有効な局所麻酔効果を示した。それに加えて、第1群および第2群の追加鎮痛薬の投与量は、4日間のテスト期間に平均11回の投与を必要とした対照(第3群)患者と比べて、同じ期間に2.4-2.6回投与と対照的で、大幅に低下した。
【0181】
さらにコホート2から得られた薬物動態学的データの再検討から、効果的な皮下用量であるブピバカイン638-688 mgは、本発明の放出制御組成物によって再現性よく投与することが可能であり、約300 mg/mLの有効な定常状態血漿中ブピバカイン濃度を与えることが示唆された。
【0182】
コホート2の3群すべてに関する安静時切開部疼痛スコアテストの結果は、図6に示す。第3群のデータは、一番上の曲線(黒い三角)、第2群のデータは、真ん中の曲線(■)、さらに第1群のデータは一番下の曲線(◆)で示す。便宜上、初回鎮痛薬追加の平均時間を各曲線上に示す。切開疼痛強度は、0(無痛)から100(想像しうる最悪の痛み)までの範囲のスコアを有する、0から100mmまでの視覚的アナログスケール(VAS)を用いて記録した。それぞれのVASスコアは、一本の縦線として記録された。テストは次のように実施した。手術当日(第0日)、試験組成物投与の(上記のように、第1群はSAIB/BA/ブピバカインおよび生理食塩水;第2群はSAIB/BA/ブピバカインおよびMarcain(登録商標);ならびに第3群はMarcain(登録商標)およびMarcain(登録商標)の投与を受けた)60分後に最初に切開疼痛スコアを記録した。以後、4時間の評価時点までは30分毎に、その後8時間時点までは毎時、そして最後に12時間時点で、切開疼痛スコアを記録した。後続の第1日から第3日までは、第0日に試験組成物が投与された時間に基づいて朝に切開疼痛スコアを記録した。こうした後続の測定は、12時間の間に4時間間隔で行った(測定4回)。何らかの併用(追加)薬を用いた時間も、この4日間の評価期間中に記録した。
【0183】
図6に示す切開部疼痛スコアテストの結果を振り返ってわかるとおり、SAIB/BA/ブピバカイン試験組成物を投与した2つの群(第1群および第2群)はいずれも、Marcain(登録商標)試験組成物投与群(第3群)と比較して、試験期間を通じてどの時点でもより低い平均VASスコアを示した。これらの結果は、本発明の組成物が、被験体に投与後少なくとも約36-48時間継続して、切開創傷部位に持続性局所麻酔を与えることを示す。
【0184】
コホート3の患者は、2つの治療群に分けられる。第1群は、SAIB/BA/ブピバカイン組成物の全量7.5 mLの注入を受けたが(958 mgブピバカイン含有)、これは手術創傷の両側に沿って2回のトレイリング皮下注入として投与され(示唆された全長5 cmの切開創傷に沿って0.75 mL/cm)、創傷を閉じる前に切開創傷内に(筋膜下を含める)10 mL Marcain(登録商標)(0.5% ブピバカイン-HCl)を浸潤させて、患者当たり投与されたブピバカインは全体として1,008 mg となった。第2群は、Marcain(登録商標)(0.5% ブピバカイン-HCl) の全量7.5 mLの注入を受けたが、これは手術創傷の両側に沿って2回のトレイリング皮下注入として投与され(示唆された全長5 cmの切開創に沿って0.75 mL/cm)、創傷を閉じる前に切開創傷内に(筋膜下を含める)10 mL Marcain(登録商標)(0.5% ブピバカイン-HCl)を浸潤させて、患者当たり投与されたブピバカインは全体で87.5 mg となった。
【0185】
麻酔/鎮痛効果は、初回追加鎮痛薬投薬までの時間、全追加鎮痛薬消費(4日間)テストによって評価することができる。血漿中ブピバカイン濃度は、研究期間を通じて、特に最初の24時間まで、定期的に測定し、SAIB放出制御組成物からの初期のブピバカイン放出の程度を評価する。より高用量の、本発明にしたがって調製されたSAIB/BA/ブピバカイン組成物が、コホート2テスト被験者と比較して、同様もしくはさらに大きな有効性の結果をもたらすことが予想される。
【0186】
このように説明してきた本発明、当業者に明白なその変形物および修正は、当然のことながら添付の請求の範囲に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0187】
【図1】図1は、実施例3から得られた7日間の平均血漿中ブピバカイン濃度(薬力学的結果)を示すが、図においてコホート1のデータは下の曲線で、コホート2のデータは上の曲線で表される。
【図2】図2は、実施例4、コホート1から得られた0-144時間にわたる平均血漿中ブピバカイン濃度(薬力学的結果)を示す。
【図3】図3は、実施例4、コホート1から得られた0-12時間にわたる平均血漿中ブピバカイン濃度(薬力学的結果)を示す。
【図4】図4は、実施例4、コホート2から得られた0-300時間にわたる平均血漿中ブピバカイン濃度(薬力学的結果)を示すが、図において第3群のデータは下の曲線(黒い三角)、第2群のデータは真ん中の曲線(■)、さらに第1群のデータは上の曲線(◆)で表される。
【図5】図5は、実施例4、コホート2から得られた0-12時間にわたる平均血漿中ブピバカイン濃度(薬力学的結果)を示すが、図において第3群のデータは下の曲線(黒い三角)、第2群のデータは真ん中の曲線(■)、さらに第1群のデータは上の曲線(◆)で表される。
【図6】図6は、実施例4、コホート2から、0-100mm視覚的アナログスケール(VAS)を用いて記録された、安静時切開部疼痛スコアの平均を示すが、図において、第3群のデータは上の曲線(黒い三角)、第2群のデータは真ん中の曲線(■)、さらに第1群のデータは下の曲線(◆)で表される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
麻酔薬および製薬上許容される非ポリマー性キャリアを含んでなる組成物であって、この非ポリマー性キャリアが、麻酔薬の放出を制御して、被験体に投与後に初期バーストなしに持続する局所麻酔という特徴を有し、投与後少なくとも約24時間の持続時間を有する麻酔効果を与える、前記組成物。
【請求項2】
非ポリマー性キャリアが麻酔薬の一次放出制御プロフィール、もしくは前記麻酔薬の擬ゼロ次放出プロフィールを与えることができる、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
麻酔薬が、被験体に投与後少なくとも約36-48時間、持続性局所麻酔を与える、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
麻酔薬が、被験体に投与後少なくとも約48-72時間、持続性局所麻酔を与える、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
麻酔薬が局所麻酔薬である、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
麻酔薬が、アミド型、もしくはエステル型局所麻酔薬である、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
麻酔薬がブピバカインである、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
麻酔薬が遊離塩基型として存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
非ポリマー性キャリアが、実質的に、水または水性の生物システムに不溶性である、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
水または水性システムに分散性、可溶性、もしくは混和性である溶媒をさらに含んでなる、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
溶媒が有機溶媒である、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
溶媒が、生物システムの内部に置かれたときに、組成物から離れて分散、拡散、もしくは浸出する能力を有し、それによって非ポリマー性キャリアが凝固もしくは沈澱して、in situで固体インプラントを形成することができる、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
非ポリマー性キャリアが液体である、請求項9に記載の組成物。
【請求項14】
非ポリマー性キャリアが、37℃で少なくとも約5,000 cPの粘度を有し、外界条件もしくは生理的条件下でそのままでは結晶化しない、高粘性液体キャリア材料(“HVLCM”)である、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
非ポリマー性キャリアが溶解する溶媒をさらに含んでなる、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
溶媒が、エタノール、ジメチルスルホキシド、クエン酸トリエチル、乳酸エチル、酢酸エチル、安息香酸ベンジル、ベンジルアルコール、トリアセチン、N-メチルピロリドン、炭酸プロピレン、ポリエチレングリコール、グリセロール、グリコフロール、2-ピロリドン、テトラフルオロエタン、カプリル酸および/またはカプリン酸の、グリセロールもしくはアルキレングリコールとのエステル、ならびにそれらの組み合わせからなる一群から選択される、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
溶媒がHVLCMの粘性を十分に低下させることができる、請求項15に記載の組成物。
【請求項18】
溶媒が第2の麻酔作用物質である、請求項15に記載の組成物。
【請求項19】
溶媒がベンジルアルコールである、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
HVLCMがエステルである、請求項14に記載の組成物。
【請求項21】
HVLCMが糖エステルである、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
HVLCMがショ糖酢酸イソ酪酸エステルである、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
非ポリマー性キャリアが組成物中に、組成物の全重量に対して、重量で約99.5パーセントから約1パーセントまでの量存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項24】
非ポリマー性キャリアが組成物中に、組成物の全重量に対して、重量で約95パーセントから約10パーセントまでの量存在する、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
非ポリマー性キャリアが組成物中に、組成物の全重量に対して、重量で約75パーセントから約25パーセントまでの量存在する、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
麻酔薬が組成物中に、組成物の全重量に対して、重量で約30パーセントから約1パーセントまでの量存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項27】
第1の麻酔薬が組成物中に、組成物の全重量に対して、重量で約25パーセントから約5パーセントまでの量存在する、請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
第1の麻酔薬が組成物中に、組成物の全重量に対して、重量で約20パーセントから約10パーセントまでの量存在する、請求項27に記載の組成物。
【請求項29】
組成物が、乳濁液、ペースト、ゲル、スラリー、クリーム、フィルム、スプレー、固体、粒子、微粒子、粉末、インプラント、もしくは液体の形で与えられる、請求項1に記載の組成物。
【請求項30】
非ポリマー性キャリアと混和しない材料をさらに含んでなる、請求項1に記載の組成物。
【請求項31】
組成物が乳濁液である、請求項30に記載の組成物。
【請求項32】
非ポリマー性キャリアが乳濁液の分散相に存在する、請求項31に記載の組成物。
【請求項33】
非ポリマー性キャリアが乳濁液の連続相に存在する、請求項31に記載の組成物。
【請求項34】
添加物をさらに含んでなる、請求項1に記載の組成物。
【請求項35】
麻酔効果が、被験体に投与して約2時間以内に発現するという特徴をさらに有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項36】
麻酔効果が、被験体に投与して約30分以内に発現する、請求項35に記載の組成物。
【請求項37】
組成物が、皮下投与されたとき、少なくとも約24時間の間、少なくとも約200 ng/mLの麻酔薬の持続性定常状態平均血漿中濃度(Css)を与えることができる、請求項1に記載の組成物。
【請求項38】
組成物が、少なくとも約250 ng/mLの麻酔薬の持続性定常状態平均血漿中濃度(Css)を与えることができる、請求項37に記載の組成物。
【請求項39】
組成物が、少なくとも約300 ng/mLの麻酔薬の持続性定常状態平均血漿中濃度(Css)を与えることができる、請求項37に記載の組成物。
【請求項40】
組成物が、少なくとも約350 ng/mLの麻酔薬の持続性定常状態平均血漿中濃度(Css)を与えることができる、請求項37に記載の組成物。
【請求項41】
麻酔薬および製薬上許容される非ポリマー性キャリアを含んでなる組成物であって、この非ポリマー性キャリアが、麻酔薬の放出を制御して、被験体に投与後に持続性局所麻酔を特徴とする麻酔効果を与え、しかもこの組成物がさらに、皮下投与されたとき、少なくとも約24時間の間、少なくとも約200 ng/mLの麻酔薬の持続性定常状態平均血漿中濃度(Css)を与えることができる、前記組成物。
【請求項42】
組成物が、少なくとも約250 ng/mLの麻酔薬の持続性定常状態平均血漿中濃度(Css)を与えることができる、請求項41に記載の組成物。
【請求項43】
組成物が、少なくとも約300 ng/mLの麻酔薬の持続性定常状態平均血漿中濃度(Css)を与えることができる、請求項41に記載の組成物。
【請求項44】
組成物が、少なくとも約350 ng/mLの麻酔薬の持続性定常状態平均血漿中濃度(Css)を与えることができる、請求項41に記載の組成物。
【請求項45】
組成物が、少なくとも約48時間の間、前記の持続性定常状態平均血漿中濃度(Css)を与えることができる、請求項41に記載の組成物。
【請求項46】
組成物が、実質的な初期バーストのないことをさらに特徴とする、請求項41に記載の組成物。
【請求項47】
非ポリマー性キャリアが麻酔薬の一次放出制御プロフィール、もしくは前記麻酔薬の擬ゼロ次放出プロフィールを与えることができる、請求項41に記載の組成物。
【請求項48】
麻酔薬が、被験体に投与後少なくとも約36-48時間、持続性局所麻酔を与える、請求項41に記載の組成物。
【請求項49】
麻酔薬が、被験体に投与後少なくとも約48-72時間、持続性局所麻酔を与える、請求項48に記載の組成物。
【請求項50】
麻酔薬が局所麻酔薬である、請求項41に記載の組成物。
【請求項51】
麻酔薬が、アミド型、もしくはエステル型局所麻酔薬である、請求項50に記載の組成物。
【請求項52】
麻酔薬がブピバカインである、請求項51に記載の組成物。
【請求項53】
麻酔薬が遊離塩基型として存在する、請求項41に記載の組成物。
【請求項54】
非ポリマー性キャリアが、実質的に、水または水性の生物システムに不溶性である、請求項41に記載の組成物。
【請求項55】
水または水性システムに分散性、可溶性、もしくは混和性である溶媒をさらに含んでなる、請求項54に記載の組成物。
【請求項56】
溶媒が有機溶媒である、請求項55に記載の組成物。
【請求項57】
溶媒が、生物システムの内部に置かれたときに、組成物から離れて分散、拡散、もしくは浸出する能力を有し、それによって非ポリマー性キャリアが凝固もしくは沈澱して、in situで固体インプラントを形成することができる、請求項56に記載の組成物。
【請求項58】
非ポリマー性キャリアが液体である、請求項54に記載の組成物。
【請求項59】
非ポリマー性キャリアが、37℃で少なくとも約5,000 cPの粘度を有し、外界条件もしくは生理的条件下でそのままでは結晶化しない、高粘性液体キャリア材料(“HVLCM”)である、請求項58に記載の組成物。
【請求項60】
非ポリマー性キャリアが溶解する溶媒をさらに含んでなる、請求項59に記載の組成物。
【請求項61】
溶媒が、エタノール、ジメチルスルホキシド、クエン酸トリエチル、乳酸エチル、酢酸エチル、安息香酸ベンジル、ベンジルアルコール、トリアセチン、N-メチルピロリドン、炭酸プロピレン、ポリエチレングリコール、グリセロール、グリコフロール、2-ピロリドン、テトラフルオロエタン、カプリル酸および/またはカプリン酸の、グリセロールもしくはアルキレングリコールとのエステル、ならびにそれらの組み合わせからなる一群から選択される、請求項60に記載の組成物。
【請求項62】
溶媒がHVLCMの粘性を十分に低下させることができる、請求項60に記載の組成物。
【請求項63】
溶媒が第2の麻酔作用物質である、請求項60に記載の組成物。
【請求項64】
溶媒がベンジルアルコールである、請求項63に記載の組成物。
【請求項65】
HVLCMがエステルである、請求項59に記載の組成物。
【請求項66】
HVLCMが糖エステルである、請求項65に記載の組成物。
【請求項67】
HVLCMがショ糖酢酸イソ酪酸エステルである、請求項66に記載の組成物。
【請求項68】
非ポリマー性キャリアが組成物中に、組成物の全重量に対して、重量で約99.5パーセントから約1パーセントまでの量存在する、請求項41に記載の組成物。
【請求項69】
非ポリマー性キャリアが組成物中に、組成物の全重量に対して、重量で約95パーセントから約10パーセントまでの量存在する、請求項68に記載の組成物。
【請求項70】
非ポリマー性キャリアが組成物中に、組成物の全重量に対して、重量で約75パーセントから約25パーセントまでの量存在する、請求項69に記載の組成物。
【請求項71】
麻酔薬が組成物中に、組成物の全重量に対して、重量で約30パーセントから約1パーセントまでの量存在する、請求項41に記載の組成物。
【請求項72】
第1の麻酔薬が組成物中に、組成物の全重量に対して、重量で約25パーセントから約5パーセントまでの量存在する、請求項71に記載の組成物。
【請求項73】
第1の麻酔薬が組成物中に、組成物の全重量に対して、重量で約20パーセントから約10パーセントまでの量存在する、請求項72に記載の組成物。
【請求項74】
組成物が、乳濁液、ペースト、ゲル、スラリー、クリーム、フィルム、スプレー、固体、粒子、微粒子、粉末、インプラント、もしくは液体の形で与えられる、請求項41に記載の組成物。
【請求項75】
非ポリマー性キャリアと混和しない材料をさらに含んでなる、請求項41に記載の組成物。
【請求項76】
組成物が乳濁液である、請求項75に記載の組成物。
【請求項77】
非ポリマー性キャリアが乳濁液の分散相に存在する、請求項76に記載の組成物。
【請求項78】
非ポリマー性キャリアが乳濁液の連続相に存在する、請求項76に記載の組成物。
【請求項79】
添加物をさらに含んでなる、請求項41に記載の組成物。
【請求項80】
麻酔効果が、被験体に投与して約2時間以内に発現するという特徴をさらに有する、請求項41に記載の組成物。
【請求項81】
麻酔効果が、被験体に投与して約30分以内に発現する、請求項80に記載の組成物。
【請求項82】
第1の麻酔薬、第2の麻酔薬、および製薬上許容される非ポリマー性キャリアを含んでなる組成物であって、ここで、第2の麻酔薬は第1の麻酔薬のための溶媒であり、被験体に投与時に初発の麻酔効果を与え、さらにまた、このキャリアは第1の麻酔薬の放出を制御して後発の麻酔効果を与えるが、その効果は、初期バーストなしに被験体への投与の約2時間以内に発現し、投与後少なくとも約24時間持続する持続性局所麻酔という特徴を有する、前記組成物。
【請求項83】
非ポリマー性キャリアが第1の麻酔薬の一次放出制御プロフィール、もしくは前記第1の麻酔薬の擬ゼロ次放出プロフィールを与えることができる、請求項82に記載の組成物。
【請求項84】
第2の麻酔薬が、非ポリマー性キャリアのための溶媒でもある、請求項82に記載の組成物。
【請求項85】
第1の麻酔薬が、被験体に投与後少なくとも約36-48時間、持続性局所麻酔を与える、請求項82に記載の組成物。
【請求項86】
第1の麻酔薬が、被験体に投与後少なくとも約48-72時間、持続性局所麻酔を与える、請求項85に記載の組成物。
【請求項87】
第1の麻酔薬が局所麻酔薬である、請求項82に記載の組成物。
【請求項88】
第1の麻酔薬が、アミド型、もしくはエステル型局所麻酔薬である、請求項87に記載の組成物。
【請求項89】
第1の麻酔薬がブピバカインである、請求項88に記載の組成物。
【請求項90】
第1の麻酔薬が遊離塩基型として存在する、請求項82に記載の組成物。
【請求項91】
第2の麻酔薬が、アルコール、芳香族アルコール、酸、酸誘導体、およびそれらの組み合わせからなる一群から選択される溶媒である、請求項82に記載の組成物。
【請求項92】
第2の麻酔薬がベンジルアルコールである、請求項91に記載の組成物。
【請求項93】
非ポリマー性キャリアが、実質的に、水または水性の生物システムに不溶性である、請求項82に記載の組成物。
【請求項94】
水または水性システムに分散性、可溶性、もしくは混和性である溶媒をさらに含んでなる、請求項93に記載の組成物。
【請求項95】
溶媒が有機溶媒である、請求項94に記載の組成物。
【請求項96】
溶媒が、生物システムの内部に置かれたときに、組成物から離れて分散、拡散、もしくは浸出する能力を有し、それによって非ポリマー性キャリアが凝固もしくは沈澱して、in situで固体インプラントを形成することができる、請求項95に記載の組成物。
【請求項97】
非ポリマー性キャリアが液体である、請求項93に記載の組成物。
【請求項98】
非ポリマー性キャリアが、37℃で少なくとも約5,000 cPの粘度を有し、外界条件もしくは生理的条件下でそのままでは結晶化しない、高粘性液体キャリア材料(“HVLCM”)である、請求項97に記載の組成物。
【請求項99】
非ポリマー性キャリアが溶解する溶媒をさらに含んでなる、請求項98に記載の組成物。
【請求項100】
溶媒が、エタノール、ジメチルスルホキシド、クエン酸トリエチル、乳酸エチル、酢酸エチル、安息香酸ベンジル、ベンジルアルコール、トリアセチン、N-メチルピロリドン、炭酸プロピレン、ポリエチレングリコール、グリセロール、グリコフロール、2-ピロリドン、テトラフルオロエタン、カプリル酸および/またはカプリン酸の、グリセロールもしくはアルキレングリコールとのエステル、ならびにそれらの組み合わせからなる一群から選択される、請求項99に記載の組成物。
【請求項101】
溶媒がHVLCMの粘性を十分に低下させることができる、請求項98に記載の組成物。
【請求項102】
溶媒が第2の麻酔薬である、請求項101に記載の組成物。
【請求項103】
第2の麻酔薬がベンジルアルコールである、請求項102に記載の組成物。
【請求項104】
HVLCMがエステルである、請求項98に記載の組成物。
【請求項105】
HVLCMが糖エステルである、請求項104に記載の組成物。
【請求項106】
HVLCMがショ糖酢酸イソ酪酸エステルである、請求項105に記載の組成物。
【請求項107】
非ポリマー性キャリアが組成物中に、組成物の全重量に対して、重量で約99.5パーセントから約1パーセントまでの量存在する、請求項82に記載の組成物。
【請求項108】
非ポリマー性キャリアが組成物中に、組成物の全重量に対して、重量で約95パーセントから約10パーセントまでの量存在する、請求項107に記載の組成物。
【請求項109】
非ポリマー性キャリアが組成物中に、組成物の全重量に対して、重量で約75パーセントから約25パーセントまでの量存在する、請求項108に記載の組成物。
【請求項110】
第1の麻酔薬が組成物中に、組成物の全重量に対して、重量で約30パーセントから約1パーセントまでの量存在する、請求項82に記載の組成物。
【請求項111】
第1の麻酔薬が組成物中に、組成物の全重量に対して、重量で約25パーセントから約5パーセントまでの量存在する、請求項110に記載の組成物。
【請求項112】
第1の麻酔薬が組成物中に、組成物の全重量に対して、重量で約20パーセントから約10パーセントまでの量存在する、請求項111に記載の組成物。
【請求項113】
第2の麻酔薬が組成物中に、組成物の全重量に対して、重量で約95パーセントから約1パーセントまでの量存在する、請求項82に記載の組成物。
【請求項114】
第2の麻酔薬が組成物中に、組成物の全重量に対して、重量で約75パーセントから約10パーセントまでの量存在する、請求項113に記載の組成物。
【請求項115】
第2の麻酔薬が組成物中に、組成物の全重量に対して、重量で約50パーセントから約15パーセントまでの量存在する、請求項114に記載の組成物。
【請求項116】
組成物が、乳濁液、ペースト、ゲル、スラリー、クリーム、フィルム、スプレー、固体、粒子、微粒子、粉末、インプラント、もしくは液体の形で与えられる、請求項82に記載の組成物。
【請求項117】
非ポリマー性キャリアと混和しない材料をさらに含んでなる、請求項82に記載の組成物。
【請求項118】
組成物が乳濁液である、請求項117に記載の組成物。
【請求項119】
非ポリマー性キャリアが乳濁液の分散相に存在する、請求項118に記載の組成物。
【請求項120】
非ポリマー性キャリアが乳濁液の連続相に存在する、請求項118に記載の組成物。
【請求項121】
添加物をさらに含んでなる、請求項82に記載の組成物。
【請求項122】
組成物が、皮下投与されたとき、少なくとも約24時間の間、少なくとも約200 ng/mLの麻酔薬の持続性定常状態平均血漿中濃度(Css)を与えることができる、請求項82に記載の組成物。
【請求項123】
組成物が、少なくとも約250 ng/mLの麻酔薬の持続性定常状態平均血漿中濃度(Css)を与えることができる、請求項122に記載の組成物。
【請求項124】
組成物が、少なくとも約300 ng/mLの麻酔薬の持続性定常状態平均血漿中濃度(Css)を与えることができる、請求項122に記載の組成物。
【請求項125】
組成物が、少なくとも約350 ng/mLの麻酔薬の持続性定常状態平均血漿中濃度(Css)を与えることができる、請求項122に記載の組成物。
【請求項126】
(a) 37℃で少なくとも約5,000 cPの粘度を有し、外界条件または生理的条件下でそのままでは結晶化しない、非ポリマー性、非水溶性、高粘性液体キャリア材料("HVLCM");
(b) 第1の麻酔薬;および
(c) 第2の麻酔薬、
を含んでなる液体医薬組成物であって、
ここで、第2の麻酔薬は、第1の麻酔薬のための溶媒であり、被験体への投与時に、初発の麻酔効果を与え、さらにまた、HVLCMは、第1の麻酔薬の放出を制御して、後発の麻酔効果をもたらすが、この効果は、初期バーストなしに被験体への投与の約2時間以内に発現し、投与後少なくとも約24時間持続する持続性局所麻酔という特徴を有する、
前記液体医薬組成物。
【請求項127】
第2の麻酔薬が、HVLCMのための溶媒でもある、請求項126に記載の組成物。
【請求項128】
第1の麻酔薬が、被験体に投与後少なくとも約36-48時間、持続性局所麻酔を与える、請求項126に記載の組成物。
【請求項129】
第1の麻酔薬が、被験体に投与後少なくとも約48-72時間、持続性局所麻酔を与える、請求項128に記載の組成物。
【請求項130】
第1の麻酔薬が局所麻酔薬である、請求項126に記載の組成物。
【請求項131】
第1の麻酔薬が、アミド型、もしくはエステル型局所麻酔薬である、請求項130に記載の組成物。
【請求項132】
第1の麻酔薬がブピバカインである、請求項131に記載の組成物。
【請求項133】
第1の麻酔薬が遊離塩基型として存在する、請求項126に記載の組成物。
【請求項134】
第2の麻酔薬が、アルコール、芳香族アルコール、酸、酸誘導体、およびそれらの組み合わせからなる一群から選択される溶媒である、請求項126に記載の組成物。
【請求項135】
第2の麻酔薬がベンジルアルコールである、請求項134に記載の組成物。
【請求項136】
第1の麻酔薬が組成物中に、組成物の全重量に対して、重量で約30パーセントから約1パーセントまでの量存在する、請求項126に記載の組成物。
【請求項137】
第1の麻酔薬が組成物中に、組成物の全重量に対して、重量で約25パーセントから約10パーセントまでの量存在する、請求項136に記載の組成物。
【請求項138】
HVLCMがエステルである、請求項126に記載の組成物。
【請求項139】
HVLCMが糖エステルである、請求項138に記載の組成物。
【請求項140】
HVLCMがショ糖酢酸イソ酪酸エステルである、請求項139に記載の組成物。
【請求項141】
HVLCMが溶解する溶媒をさらに含んでなる、請求項126に記載の組成物。
【請求項142】
HVLCMのための溶媒が、エタノール、ジメチルスルホキシド、クエン酸トリエチル、乳酸エチル、酢酸エチル、安息香酸ベンジル、ベンジルアルコール、トリアセチン、N-メチルピロリドン、炭酸プロピレン、ポリエチレングリコール、グリセロール、グリコフロール、2-ピロリドン、テトラフルオロエタン、カプリル酸および/またはカプリン酸の、グリセロールもしくはアルキレングリコールとのエステル、ならびにそれらの組み合わせからなる一群から選択される、請求項141に記載の組成物。
【請求項143】
HVLCMのための溶媒がMIGLYOL(登録商標)である、請求項142に記載の組成物。
【請求項144】
(a) 37℃で少なくとも約5,000 cPの粘度を有し、外界条件または生理的条件下でそのままでは結晶化しない、非ポリマー性、非水溶性、高粘性液体キャリア材料("HVLCM");
(b) 第1の麻酔薬;および
(c) 第2の麻酔薬、
を含んでなる液体医薬組成物であって、
ここで、第2の麻酔薬は、第1の麻酔薬のための溶媒であり、被験体への投与時に、初発の麻酔効果を与え、さらにまた、HVLCMは、第1の麻酔薬の放出を制御して、持続性局所麻酔を特徴とする後発の麻酔効果をもたらすが、この組成物はさらに、皮下投与されたとき、少なくとも約24時間の間、少なくとも約200 ng/mLの麻酔薬の持続性定常状態平均血漿中濃度(Css)を与えることができる、
前記液体医薬組成物。
【請求項145】
組成物が、少なくとも約250 ng/mLの麻酔薬の持続性定常状態平均血漿中濃度(Css)を与えることができる、請求項144に記載の組成物。
【請求項146】
組成物が、少なくとも約300 ng/mLの麻酔薬の持続性定常状態平均血漿中濃度(Css)を与えることができる、請求項144に記載の組成物。
【請求項147】
組成物が、少なくとも約350 ng/mLの麻酔薬の持続性定常状態平均血漿中濃度(Css)を与えることができる、請求項144に記載の組成物。
【請求項148】
組成物が、少なくとも約48時間の間、前記持続性定常状態平均血漿中濃度(Css)を与えることができる、請求項144に記載の組成物。
【請求項149】
組成物が、実質的な初期バーストのないことをさらに特徴とする、請求項144に記載の組成物。
【請求項150】
第2の麻酔薬が、HVLCMのための溶媒でもある、請求項144に記載の組成物。
【請求項151】
第1の麻酔薬が、被験体に投与後少なくとも約36-48時間、持続性局所麻酔を与える、請求項144に記載の組成物。
【請求項152】
第1の麻酔薬が、被験体に投与後少なくとも約48-72時間、持続性局所麻酔を与える、請求項151に記載の組成物。
【請求項153】
第1の麻酔薬が局所麻酔薬である、請求項144に記載の組成物。
【請求項154】
第1の麻酔薬が、アミド型、もしくはエステル型局所麻酔薬である、請求項153に記載の組成物。
【請求項155】
第1の麻酔薬がブピバカインである、請求項154に記載の組成物。
【請求項156】
第1の麻酔薬が遊離塩基型として存在する、請求項144に記載の組成物。
【請求項157】
第2の麻酔薬が、アルコール、芳香族アルコール、酸、酸誘導体、およびそれらの組み合わせからなる一群から選択される溶媒である、請求項144に記載の組成物。
【請求項158】
第2の麻酔薬がベンジルアルコールである、請求項157に記載の組成物。
【請求項159】
第1の麻酔薬が組成物中に、組成物の全重量に対して、重量で約30パーセントから約1パーセントまでの量存在する、請求項144に記載の組成物。
【請求項160】
第1の麻酔薬が組成物中に、組成物の全重量に対して、重量で約25パーセントから約10パーセントまでの量存在する、請求項159に記載の組成物。
【請求項161】
HVLCMがエステルである、請求項144に記載の組成物。
【請求項162】
HVLCMが糖エステルである、請求項161に記載の組成物。
【請求項163】
HVLCMがショ糖酢酸イソ酪酸エステルである、請求項162に記載の組成物。
【請求項164】
HVLCMが溶解する溶媒をさらに含んでなる、請求項144に記載の組成物。
【請求項165】
HVLCMのための溶媒が、エタノール、ジメチルスルホキシド、クエン酸トリエチル、乳酸エチル、酢酸エチル、安息香酸ベンジル、ベンジルアルコール、トリアセチン、N-メチルピロリドン、炭酸プロピレン、ポリエチレングリコール、グリセロール、グリコフロール、2-ピロリドン、テトラフルオロエタン、カプリル酸および/またはカプリン酸の、グリセロールもしくはアルキレングリコールとのエステル、ならびにそれらの組み合わせからなる一群から選択される、請求項164に記載の組成物。
【請求項166】
HVLCMのための溶媒がMIGLYOL(登録商標)である、請求項165に記載の組成物。
【請求項167】
被験体の部位に麻酔効果を与える方法であって、その方法は、当該部位に、その付近に、その中に、またはそのすぐ近傍に、組成物を投与することを含んでなり、この組成物は、麻酔薬および製薬上許容される非ポリマー性キャリアを含有し、さらにまた、非ポリマー性キャリアは、麻酔薬の放出を制御して、被験体に投与後に初期バーストなしに、持続性局所麻酔という特徴を有し、投与後少なくとも約24時間持続する麻酔効果をもたらす、
前記方法。
【請求項168】
被験体の部位に麻酔効果を与える方法であって、その方法は、当該部位に、その付近に、その中に、またはそのすぐ近傍に、組成物を投与することを含んでなり、この組成物は、麻酔薬および製薬上許容される非ポリマー性キャリアを含有するが、さらにまた、非ポリマー性キャリアは、麻酔薬の放出を制御して、被験体に投与後に、持続性局所麻酔という特徴を有する麻酔効果をもたらし、この組成物が、皮下投与されたとき、少なくとも約24時間にわたって、少なくとも約200 ng/mlの麻酔薬の持続性定常状態平均血漿中濃度(Css)を与えることができる、前記方法。
【請求項169】
被験体の部位に麻酔効果を与える方法であって、その方法は、当該部位に、その付近に、その中に、またはそのすぐ近傍に、組成物を投与することを含んでなり、この組成物は、第1の麻酔薬、第2の麻酔薬、および製薬上許容される非ポリマー性キャリアを含有するが、この第2の麻酔薬は、第1の麻酔薬のための溶媒であって、被験体に投与したとき、その部位で初発の麻酔効果を与え、さらにまた、このキャリアは、第1の麻酔薬の放出を制御して、その部位で、持続性局所麻酔という特徴を有する後発の麻酔効果を与えるが、その効果は初期バーストなしに投与の約2時間以内に発現し、投与後少なくとも約24時間時間持続する、前記方法。
【請求項170】
被験体の部位に麻酔効果を与える方法であって、その方法は、当該部位に、その付近に、その中に、またはそのすぐ近傍に、組成物を投与することを含んでなるが、この組成物は:
(a) 37℃で少なくとも約5,000 cPの粘度を有し、外界条件または生理的条件下でそのままでは結晶化しない、非ポリマー性、非水溶性、高粘性液体キャリア材料("HVLCM");
(b) 第1の麻酔薬;および
(c) 第2の麻酔薬、
を含んでなり、
ここで、第2の麻酔薬は、第1の麻酔薬のための溶媒であり、被験体への投与時に、初発の麻酔効果を与え、さらにまた、HVLCMは、第1の麻酔薬の放出を制御して、後発の麻酔効果をもたらすが、この効果は、初期バーストなしに被験体への投与の約2時間以内に発現し、投与後少なくとも約24時間持続する持続性局所麻酔という特徴を有する、
前記方法。
【請求項171】
被験体の部位に麻酔効果を与える方法であって、その方法は、当該部位に、その付近に、その中に、またはそのすぐ近傍に、組成物を投与することを含んでなるが、この組成物は:
(a) 37℃で少なくとも約5,000 cPの粘度を有し、外界条件または生理的条件下でそのままでは結晶化しない、非ポリマー性、非水溶性、高粘性液体キャリア材料("HVLCM");
(b) 第1の麻酔薬;および
(c) 第2の麻酔薬、
を含んでなり、
ここで、第2の麻酔薬は、第1の麻酔薬のための溶媒であり、被験体への投与時に、当該部位に初発の麻酔効果を与え、また、この組成物はさらに、皮下投与されたとき、少なくとも約24時間の間、少なくとも約200 ng/mLの麻酔薬の持続性定常状態平均血漿中濃度(Css)を与えることができる、
前記方法。
【請求項172】
麻酔薬がブピバカインである、請求項167または168に記載の方法。
【請求項173】
第1の麻酔薬がブピバカインである、請求項169〜171のいずれか1つに記載の方法。
【請求項174】
第2の麻酔薬がベンジルアルコールである、請求項169〜171のいずれか1つに記載の方法。
【請求項175】
非ポリマー性キャリアがショ糖酢酸イソ酪酸エステルである、請求項167, 168, 169, 172, 173 または174のいずれか1つに記載の方法。
【請求項176】
HVLCMがショ糖酢酸イソ酪酸エステルである、請求項170または171に記載の方法。
【請求項177】
組成物が当該部位への局所適用によって投与される、請求項167〜176のいずれか1つに記載の方法。
【請求項178】
組成物が当該部位に経皮的に投与される、請求項167〜176のいずれか1つに記載の方法。
【請求項179】
組成物が注射によって投与される、請求項167〜176のいずれか1つに記載の方法。
【請求項180】
組成物がインプラントとして投与される、請求項167〜176のいずれか1つに記載の方法。
【請求項181】
当該部位が外科創傷であり、組成物が創傷内および/または創傷のすぐ近くに投与される、請求項167〜180のいずれか1つに記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−513467(P2008−513467A)
【公表日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−532447(P2007−532447)
【出願日】平成17年9月15日(2005.9.15)
【国際出願番号】PCT/US2005/032863
【国際公開番号】WO2006/033948
【国際公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(505080839)デュレクト コーポレーション (8)
【Fターム(参考)】