制御されたフローエレクトロポレーションチャンバーに関連した方法および装置
エレクトロポレーションチャンバーおよびその関連した装置は、制御されたフローエレクトロポレーション装置を形成するため、試料の流れを制御するためマニホールドの機能を果たすエレクトロポレーションチャンバーの特徴と、フローエレクトロポレーション装置の特徴とを組み合わせる。本発明はさらに、試料が十分に閉鎖的(滅菌)な系において個々の画分または塊で均一に処理される条件を可能にする新規の制御されたエレクトロポレーションチャンバーを含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
I.発明の分野
本発明は、概して一時的な電界による細胞処理の分野、および特に細胞のエレクトロポレーションに関する。より具体的には、制御されたフローエレクトロポレーションのための方法、エレクトロポレーションチャンバー、および関連装置に関する。なお、本出願は、2004年3月12日付で出願された米国特許仮出願第60/570,317号の優先権を主張するものであり、その全体は参照により本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
II.関連技術の説明
エレクトロポレーションは、1970年代初頭以来、動物または植物の細胞中に分子を挿入するために使用されている。研究者たちは、短時間、高圧電場へ細胞を曝すことにより、タンパク質およびDNAなどの高分子を含む分子が細胞の中に入ることができる開口部が細胞膜において形成されることを明らかにしてきた。電気穿孔(electropore)と呼ばれるこれらの開口部は、高圧電場に起因する細胞膜における局所的な破壊によって生じる透過性の増大領域である。これらの孔は、一時的だが、プラスミドDNA分子などの高分子が細胞の中に入るには十分な時間存在する。細胞は、これらの孔ができるのを許容することができるが、それらを作り出して分子を導入する処理は、もし過度に実施されると細胞を殺す可能性がある。このエレクトロポレーションは、導電性細胞懸濁液への電流の(一時的ではあるが)通過を伴うため、電極はジュールの法則に従って発熱する。この熱は、細胞懸濁液の温度を上昇させることができ、もし過度になると、細胞温度を細胞が死ぬところまで引き上げる。エレクトロポレーションの最も早期の適用では、実質的に一様な電場がこれらの間に発生可能なように、互いに対して置かれた電極を含む特殊化したキュベットを使用して実施された。最も好都合なことには、これは、長方形のキュベットまたはチャンバーの対壁に取り付けられた2つの平板電極によって提供される。操作者が細胞中への導入を意図する1つの分子または複数の分子と混合された電気穿孔すべき細胞の懸濁液を、キュベットまたはチャンバーの中に配置し、次にそれを細胞懸濁液が電極と液体中で接触するよう電極間に設置する。細胞の中へエレクトロポレーションによる分子の導入を達成するため、高圧および短時間の電場パルスを、電極、およびそれによって電極間の細胞懸濁液に1回または複数回加えた。最も多く市販されているエレクトロポレーション用キュベットは、容量が制限されており、一度に少量の細胞懸濁液しか処理できない(通常1 ml未満)。キュベットの充填ごとにエレクトロポレーション処理されうる少容量の細胞を前提とすると、大量の細胞懸濁液のエレクトロポレーションは実用可能ではなかった。
【0003】
通常は、滅菌状態の維持が、大量の細胞でエレクトロポレーションのほとんどすべての使用において極めて重要である。滅菌状態の維持に関連して、キュベットで繰り返し充填すること、およびエレクトロポレーションされた細胞をプールすることは、特に実用可能ではない。このエレクトロポレーション法は、使いやすく、簡便で、かつ細胞の小規模なエレクトロポレーションを実施している多くの研究者たちのニーズを満たしているが、さらなる方法、特に滅菌環境を維持しつつ、大量の細胞のエレクトロポレーションを適宜促進する方法が必要とされていた。閉鎖した滅菌システムにおける大量の細胞のエレクトロポレーションによって、エレクトロポレーションを、細胞に基づいたヒトの治療のために使用することが可能になる。操作の間中、閉鎖した滅菌液の流路を作り出し、維持する方法および器具が、したがって最も望ましい。
【0004】
1980年代において、大量の細胞を処理するフローエレクトロポレーションについての研究が何人かの研究者たちによって開始された(それぞれ、その全体が参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第4,752,586号(特許文献1)、第5,612,207号(特許文献2)、第6,074,605号(特許文献3)、第6,090,617号(特許文献4))。エレクトロポレーション用の流通装置は、一般的に、その間を、エレクトロポレーション処理すべき細胞懸濁液が、細胞の全部の量がエレクトロポレーション処理されるまで連続的かつ安定して流れる、平行電極で構成されていた。細胞懸濁液が電極間を安定して流れたため、高電圧パルスが細胞に加えられた。電極へ高電圧パルスを繰り返し加えることにより、熱の発生が生じ、この熱を、電極および細胞懸濁液が過度に高い温度に達するのを防止する冷却手段によって除去する必要があることが判明した。フローエレクトロポレーション用の器具は、電極、および細胞懸濁液をポンピングさせることが可能なポートを有するエレクトロポレーションチャンバーを含む。この電極は、電極に高電圧パルスを供給することが可能な電子回路と電気的に接続されている。高電圧パルスは、プログラム可能なコンピュータによって制御することができる。より大量の細胞をエレクトロポレーション処理できるフローエレクトロポレーションシステムが開発され、所望の分子が導入された生細胞を生成することが可能になった。
【0005】
エレクトロポレーションの条件は、細胞型によって異なり、細胞内への導入を意図する分子の種類によって異なる可能性がある。任意の特定の細胞型に関して、最適な方法は、最適電圧での最適パルス数、および最適な間隔をあけた継続時間から成って存在する。細胞に最適数の電気パルスを加えるため、当技術分野において記載されているフローエレクトロポレーション用の器具を使用する場合、エレクトロポレーションチャンバーを通って電極の間を流れる細胞懸濁液の流速、およびパルスの割合は、多量の細胞懸濁液に最適パルス数を供給するよう選択される。例えば、もし細胞当たりの最適パルス数が、特定の細胞に対して単位時間当たり2であると分かっており、エレクトロポレーションチャンバーを通過した量が1ミリリットルであるなら、流速は単位時間当たり1ミリリットルとなり、2回のパルスが単位時間当たりに加えられる。このように、平均して、それぞれの細胞は、この例において2回のパルスを受ける。しかし、エレクトロポレーションチャンバーを通過した細胞懸濁液の流体力学的流れは、すべての細胞が同じ速度でチャンバーを通ってプレート間を移動するという結果をもたらすわけではない。流速は、チャンバー壁近くよりチャンバー壁から離れたほうが速いため、壁の近くを流れる細胞が、電極間を通過するのは単位時間より長く、その結果2つより多くのパルス受ける一方で、液体の流れの中心に向かって電極間を流れる細胞は、単位時間よりも短い時間で電極間を通過し、2つより少ないパルスを受ける可能性がある。この例において、2つのパルスがいずれの細胞にとって最適であるため、明らかにすべての細胞が最適な回数のパルスを受けるわけではなく、細胞懸濁液の全体的なエレクトロポレーションは決して最適とはいえない。
【0006】
上記のように、エレクトロポレーションは、本質的にジュールの法則にしたがって細胞懸濁液において熱産生をもたらす。流れが安定し、かつ連続的なフローエレクトロポレーション法では、加熱が実質的に続くため、熱をエレクトロポレーションチャンバーから取り除く手段は、チャンバーの温度が許容できない温度まで上昇するのを避けるため、熱産生の平衡を保つことができるようにしなければならない。処理が連続して行われるという性質上、エレクトロポレーションを行なう合間に冷却を行う時間を置くことができない。
【0007】
上記したように、エレクトロポレーションに必要な最適条件は、エレクトロポレーション処理される特定の細胞型、およびエレクトロポレーションによる細胞内への導入が意図される分子の種類により異なる可能性が高い。静的キュベットを使用したエレクトロポレーションの条件を体系的に変化させることによって、この問題を実験的に扱い、次にこれらの実験からフローエレクトロポレーションシステムまで決定された最適条件を適用することが可能である。このやり方には、2つの欠点がある。第1に、多数の試料の静的キュベットによるエレクトロポレーションは時間がかかるため、それぞれの静的なエレクトロポレーションで使用される細胞は、実験を通して変化すると考えられる。第2に、このやり方を用いると、多数の試料を静的キュベットでエレクトロポレーションするのに最適な条件は、フローエレクトロポレーションと同じであると仮定されるが、それは明らかではない。治療または他の用途のための細胞の大規模なエレクトロポレーションに後で使用されるものと同一の器具も使用しながら、単一の細胞試料をすべての実験的エレクトロポレーション条件に使用して、迅速にエレクトロポレーションの条件を最適化できることが望ましいと考えられる。
【0008】
ある種の分子、最も顕著にはmRNAは、エレクトロポレーションによって分子の導入が意図される細胞の存在下では不安定である可能性がある。mRNAの場合、これは、細胞培地中、または細胞の表面上に存在するリボヌクレアーゼの結果である可能性が高い。このような場合、分子が、細胞中に導入される前のこの不安定な状態で存在する時間を最小限に抑えることが望ましい。静的キュベットを基にしたエレクトロポレーションでは、分子(例えば、mRNA)は、細胞と混合され、その後手動でキュベットに充填されて、エレクトロポレーション用器具に据え付けられた後エレクトロポレーションが実施される。これらの手動の工程を実施するのに要する時間の間、細胞に加えられる分子のいくらかは破壊される可能性がある。導入される分子を、エレクトロポレーションの直前に、かつ閉鎖的な滅菌環境において細胞と自動的に混合できる方法が望ましい。
【0009】
当技術分野において記載されている連続的なフローシステムにおいて、電極間での細胞の流動の開始により電極へのパルスの適用を調整することは別として、パルスと細胞の流動との間に「処理中」の調整はない。
【0010】
連続的なフローエレクトロポレーションの利点、特に、いかなる細胞も最適パルス数を受けることを保証しつつ、滅菌した閉鎖系において大量の細胞をエレクトロポレーション処理する能力を組み合わせる方法および器具が望ましい。
【0011】
【特許文献1】米国特許第4,752,586号
【特許文献2】米国特許第5,612,207号
【特許文献3】米国特許第6,074,605号
【特許文献4】米国特許第6,090,617号
【発明の開示】
【0012】
発明の概要
本発明の態様は、エレクトロポレーション法、ならびに大量のエレクトロポレーションが可能な関連したエレクトロポレーション用装置および器具を含む。ある局面において、本発明は、チャンバーの温度が許容できない温度まで上昇するのを避けるため、熱産生の平衡を保つことが可能である。さらに、電気パルスは、個々の単位体積の処理、および/または対象とする試料のすべて、もしくは一部の処理のために最適化することができる。本明細書において使用される場合、「単位体積」または「単位」は、エレクトロポレーションチャンバーを満たす、または部分的に満たす試料または流体の塊である。単位とは、通常、特定の電気パルスまたは一連のパルスに曝される試料の部分である。それぞれの単位は、試料の画分または部分として見なすことができる。この単位は、操作者によって決めることができ、エレクトロポレーションチャンバーを充填および空にする事によって、またはチャンバーを通る流速を変えることによって制御される。それぞれの単位は、2つまたはそれ以上の試料の単位の間に試料でない気体または液体を導入することによって生成される異なった個々の試料画分であることも可能である。様々な態様において、試料の処理は、閉鎖系、すなわち装置または器具の容器の内側、流路、およびエレクトロポレーション用装置のチャンバーの外部となる環境に対し限定的に曝露される系で実施される。このような閉鎖系は、試料の無菌性および完全性を維持するのに使用され得る。
【0013】
本発明の態様は、エレクトロポレーションチャンバーを通じた試料の流れを制御することを含むフロー-エレクトロポレーション法を含む。通常、試料は、エレクトロポレーションチャンバーを繰り返し周期的に充填および空にする事によって生成される単位で処理される。エレクトロポレーションチャンバーを通じて循環するそれぞれの試料単位は、同じまたは異なる電気パルスまたは条件に曝すことが可能である。ある局面において、試料の単位は、試料の未処理量と処理量との間の境界を提供することによって生成される。この境界は、試料の2つまたはそれ以上の単位または画分の間で、チャンバー内に試料でない気体または流体を循環させることによって提供してもよい。試料でない気体または液体は、通常は未処理試料の塊毎にチャンバーから移動させる。試料でない流体または気体は、エレクトロポレーションチャンバーからの処理試料の排出、試料のエレクトロポレーションチャンバー中への活発なポンピング、試料でない流体もしくは気体をエレクトロポレーションチャンバー中に活発にポンピングさせる、またはこれらの様々な組合せによってチャンバーに流入させることができる。
【0014】
「ポンピング」とは、原動力を流体または気体に与える圧力勾配を提供することを意味する。このような原動力は、例えば、重力、またはポンピングさせている流体の表面張力と関連した力によって提供することができる。特に細胞懸濁液を移動させるために、気体または液体に原動力を与える手段は、ポンピング手段として見なされる。ポンピング手段は、流路の中で流体または気体の流れを制御するためシステムにおいて圧力差を引き起こす様々な機構を含む。様々なポンピング手段が公知であり、回転式、往復式、遠心式、空気揚水式、またはジェット式のポンプを非制限的に含む。ポンピング手段は、流体または気体の制御された流れを生成するため、ピストン、プランジャ、蠕動、振動板、容量可変の容器、圧縮ガス、プロペラ、タービン、ネジ、または歯車式の機構を含み得る。
【0015】
特定の局面において、循環は、エレクトロポレーションチャンバーにおいて、1、2、3、4、またはそれ以上のポートを通じた試料の流れを交互に変えることによって生み出される。「ポート」とは、流体が、エレクトロポレーションチャンバーに流入、または流出することが可能な任意の開口部を意味する。エレクトロポレーションチャンバーは、流体の流れを方向づけるマニホールドとして使用してもよいことが企図されるが、他の考えられる態様では、エレクトロポレーションチャンバーの部分ではないマニホールドを使用してもしなくてもよい事が企図される。試料、および試料でない流体または気体の循環は、通常、1、2、3、4、5、6、もしくはそれ以上のポンピング手段、バルブ、または他の流体を制御する機構の様々な組合せによって制御される。一例を挙げれば、境界は、チャンバーを通じて試料を滴下することによって提供することができ、そこでは少量の試料が、2つの電極間を通過する際に1つまたは複数の電気パルスに曝される。
【0016】
本発明のさらなる態様は、少なくとも2つの電極を含むチャンバー;ならびに、(i)第1のポートはチャンバーへの試料流入用であり、(ii)第2のポートは、チャンバーからの処理試料流出用であり、および(iii)第3のポートは、試料でない流体または気体のチャンバーへの流入用またはチャンバーからの流出用であって、試料がチャンバーに流入する際、試料でない流体または気体がチャンバーから流出し、処理試料がチャンバーから流出する際、試料でない流体または気体がチャンバーに流入する、少なくとも3つのポートを含むフローエレクトロポレーションチャンバーを含む。第1のポートは、1つまたは複数の試料用容器と流体連絡することが可能である。第2のポートは、1つまたは複数の処理試料用容器と流体連絡することが可能である。第3のポートは、貯蔵用容器と流体連絡することが可能であって、貯蔵用容器は、チャンバーが試料の塊で満たされている、または部分的に満たされているとき、試料でない流体または気体の塊のすべてまたは一部を含む。ある態様において、チャンバーは、少なくとも4つのポートを有することが可能である。第4のポートは、試料用容器、処理試料用容器、試料でない気体もしくは流体用の貯蔵器、試薬用容器(例えば、洗浄バッファー、清浄液、冷却液など)、またはこれらの様々な組合せと流体連絡することが可能である。
【0017】
さらなる態様において、フローエレクトロポレーション装置は、第1の流路を形成する、第1のチャンバーポートを通じてエレクトロポレーションチャンバーと流体連絡する少なくとも1、2、3、4、またはそれ以上の試料用容器;第2の流路を形成する、第2のチャンバーポートを通じてエレクトロポレーションチャンバーと流体連絡する少なくとも1、2、3、4、またはそれ以上の処理試料用容器;および第3の流路を形成する、第3のチャンバーポートを通じてエレクトロポレーションチャンバーと流体連絡する少なくとも1つの試料でない流体または気体の貯蔵器を含むことが可能である。試料でない気体または流体用の貯蔵器は、試料でない気体または流体用容器、試料用容器の一部、処理試料用容器の一部、エレクトロポレーションチャンバーの一部、またはこれらの様々な組合せであることが可能である。第2の流路は、第2の流路における処理試料用容器に関してエレクトロポレーションチャンバーの位置に対して末端側にある、第1の流路の1つまたは複数の試料用容器、および第3の流路の試料でないもの用の貯蔵器と流体連絡することが可能である。ある局面において、装置は、さらに、少なくとも1、2、3、4、またはそれ以上の流路と動作可能なように連結している、少なくとも1、2、3、4、またはそれ以上のポンプを含むことが可能である。試料用容器、処理試料用容器、試料でない流体または気体の貯蔵器、またはこれらの様々な組合せは、折り畳み可能な、拡張可能な、または固定した容量の容器であることが可能である。本発明のさらなる局面において、装置における流体の流れは、装置の1、2、3、4、5、6、もしくはそれ以上の流路の開閉によって方向づけることができる。様々な流路は、二者択一的に開閉することができるが、好ましくは試料用容器からエレクトロポレーションチャンバーまでの流路、およびエレクトロポレーションチャンバーから処理試料用容器までの流路が、二者択一的に開閉され、エレクトロポレーションの循環の間どちらも同時には開かない。流体の流れは、1、2、3、4、5、6、もしくはそれ以上のバルブ、1、2、3、4、5、6、もしくはそれ以上のポンピング手段、またはこれらの様々な組合せによって変調することができる。好適な態様において、ポンプは蠕動ポンプであり、より好ましくは、蠕動ポンプは、十分に圧縮された蠕動ポンプである。
【0018】
またさらなる態様において、フローエレクトロポレーション装置は、第1のチャンバーポートを通じてエレクトロポレーションチャンバーと流体連絡する少なくとも1、2、3、4、またはそれ以上の試料用容器であって、このエレクトロポレーションチャンバーは、第1の流路を形成する、第2のチャンバーポートを通じて試料用容器と流体連絡する、試料用容器;第3のチャンバーポートを通じてエレクトロポレーションチャンバーと流体連絡する少なくとも1、2、3、4、またはそれ以上の処理試料用容器であって、このエレクトロポレーションチャンバーは、第2の流路を形成する、第4のチャンバーポートを通じて処理試料用容器と流体連絡する処理試料用容器を含むことが可能である。1、2、3、4、またはそれ以上の処理試料用容器は、試料でない気体または流体用の貯蔵器として使用することもできる。ある局面において、試料でない気体または流体用の貯蔵器を、試料用容器、処理試料用容器、または試料用容器および処理試料用容器の両方と組み合わせる。装置は、少なくとも1、2、3、4、5、6、またはそれ以上の流路と動作可能なように連結している、少なくとも1、2、3、4、またはそれ以上のポンピング手段を含むことも可能である。試料用容器、処理試料用容器、または両方の容器は、折り畳み可能な、拡張可能な、または固定した容量の容器であることが可能である。様々な局面において、装置における流体の流れは、装置の1つまたは複数の流路の開閉によって方向づけられる。ある態様において、第1および第2の流路は、二者択一的に開閉する。流体の流れは、通常は1つまたは複数のポンピング手段、好ましくはポンプ、より好ましくは蠕動ポンプ、およびさらにより好ましくは十分に圧縮された蠕動ポンプである蠕動ポンプによって変調または制御される。流体の流れは、バルブ、ポンピング手段、またはこれらの組合せからなる様々な組合せによって変調または制御することもできる。
【0019】
本明細書において記載されている任意の方法または配合は、本明細書に記載されている任意の他の方法または配合について実施可能であることが企図される。
【0020】
特許請求の範囲、および/または明細書において「含む」という用語と共に使用する場合、「1つの(a)」または「1つの(an)」という単語を使用は、「1つ(one)」を意味し得るが、「1つまたは複数」、「少なくとも1つ」、および「1つまたは1つ以上」の意味とも矛盾しない。
【0021】
本開示は、二者択一のみ、および「および/または」を意味する定義に対応するが、特許請求の範囲における「または」という用語の使用は、二者択一のみを意味するか、または選択肢が互いを排除すると明示されていない限り、「および/または」を意味するものとして使用される。
【0022】
本発明の他の目的、特徴、および利点は、以下の詳細な説明から明らかになると考えられる。しかし、本発明の精神および範囲内での様々な変更および修正が、この詳細な説明から当業者に明らかになるため、詳細な説明および具体例は、本発明の具体的な態様を示しているが、それらは例示のためだけに示されていると理解されるべきである。
【0023】
例示的態様の説明
本発明の態様は、エレクトロポレーションのための様々な新しい器具および方法を含む。特に、ある態様は、分子、化合物、または組成物を、バクテリア、菌類、植物細胞、動物細胞、培養細胞、初代細胞、赤血球、白血球、血小板、幹細胞、遺伝子組み換え幹細胞、または幹細胞の拡大させた集団を含むがこれらに限定されない細胞または細胞の断片に導入するフローエレクトロポレーション用の装置および方法を提供する。ある局面において、一時的な高圧電場は、細胞の代謝を妨害し、高すぎる電圧、または長すぎる時間で加えられると一部の細胞を殺すことが可能である。異なった細胞型は、一時的な電場による一時的な電場処理で区別されて影響されうるため、エレクトロポレーションによって分子を細胞に取り込んだ、または導入したものなど、細胞の集団における異なった細胞は、区別されて殺され、それによってその集団から取り除くことができる。他の局面において、分子は導入される必要はないが電場への曝露によって、試料は処理される必要がある。さらに他の態様において、目的は外来の分子を細胞内に導入することではなく、むしろ処理された細胞、すなわち電場への曝露の前、間、または後にいくつかの他の薬理学的な作用物質または条件に曝された細胞の変容 - 変容の極端な例は殺すことである - である。1つの態様において、本発明の装置は、中で細胞がエレクトロポレーション処理されるエレクトロポレーションチャンバーと、器具中における細胞懸濁液の調節された、または可変的な流動とを組み合わせ、これにより電気パルスで調整されるエレクトロポレーションチャンバーを繰り返し充填するおよび空にする事を可能とする。好ましくは、チャンバーならびにその関連した流路および容器は、閉鎖的な滅菌環境を形成することができる。本発明によってもたらされる他の利点は、細胞のより均一なパルスを提供する器具の能力を含む。新規の制御されたフローエレクトロポレーションチャンバーによって、大量の細胞懸濁液が単位体積でエレクトロポレーション処理することができる。試料でない気体もしくは流体によって物理的に分離することができ、またはバルブの開閉などの他の手段によって互いから分離することができる、エレクトロポレーションチャンバーを流れた試料の量を、個々の画分または単位体積によって定義する。試料の塊の間の本分離は、連続した塊が同じエレクトロポレーションの条件を経験していない、または連続した塊がエレクトロポレーションによる取り込みのための細胞および分子の異なる組合せを含むことが可能な場合に、各分離した塊の分離した収集を促進する。本発明のエレクトロポレーションチャンバーを含む方法および器具は、薬理学的な作用物質または条件に曝された、曝されている、または曝される予定の細胞を電場へ十分に曝露するとき、様々な細胞集団への様々な物質の封入に使用され得る。電場への曝露によって、それ自体で、およびそれだけで細胞の処理を行うことができる。
【0024】
本発明のある態様は、チャンバーを通る、流体または気体の制御された流動が存在する処理法を含む。したがって、この処理法は、連続流と呼ぶことができる。しかし、ある態様において、試料または処理試料の流動は、連続性が全体としてチャンバーを通った流体または気体の流動を表すように、処理している間断続的に遅らせる、または止めることができるが、必ずしも任意の特定の試料、流体、または気体でない。エレクトロポレーション処理は、通常、試料が定義された個々の画分または単位体積において処理される、チャンバーを通った試料の流動を含む。それぞれの個々の画分は、細胞懸濁液の異なる部分のエレクトロポレーション処理の間にエレクトロポレーションチャンバー内に流入した試料でない流体または気体の量によって境界を決めることができる。
【0025】
ある態様において、試料は、複数の生成物画分に処理することが可能である。その上、それぞれの処理試料の画分は、個別に、または特定の集団に貯蔵、収集、および/または貯蔵することができる。生成物、または処理試料の画分は、一緒に、または一つずつ処理したいくつかの試料の組合せであってもよい。本技術の使用者がチャンバーを1つの試料で部分的に満たし、次に追加の溶液を加え、エレクトロポレーションを実行し、および結果として生じる生成物を収集することを妨げるものは、本発明には存在しない。
【0026】
本発明のある局面において、個々の試料の画分は、異なったパルスまたは試薬に曝すことができる。例えば、最初に試料のすべてもしくは一部、または類似の組成物の試料を、エレクトロポレーションの条件を直ちに最適化する一連の条件を使用して処理することができる。あるいは、使用者は、様々なエレクトロポレーションの条件に曝された細胞を含む、細胞集団または細胞の個々の画分を生成することを望むことができる。
【0027】
ある態様において、試料成分の「オンライン混合(online mixing)」が企図された。例えば、ある試薬は、エレクトロポレーションされた混合物における細胞、または他のエレクトロポレーションされる標的もしくは試薬に対し不安定または有害のいずれかである可能性がある。したがって、電気パルスが加えられる直前、すなわちさらなる混合をしない、またはエレクトロポレーションの前にエレクトロポレーションされる試料の1つまたは複数の成分を混合する間のほんの短時間にこのような成分を共に持ってくるのが望ましい。
【0028】
本発明のさらなる態様は、細胞が、パルス間または一連のパルスの間よりも高圧のパルスを受けるとき、チャンバーへの流入、およびチャンバーからの流出が実質的により低率であるエレクトロポレーションチャンバーに流入、およびエレクトロポレーションチャンバーから流出する細胞の制御された流動を可能にする新規の制御されたフローエレクトロポレーションチャンバーを含む。細胞の流動は、制御された流動の利点を得るために必ずしもゼロまで減らす必要はないが、エレクトロポレーション処理が求められる間は流れを減らすことは望ましい。本発明の態様は、さらに、電極に高圧パルスを提供する電子部品、および電極間に細胞懸濁液を流す手段の間の時間整合を提供する。細胞懸濁液を流す(流体または気体に原動力を提供する)手段は、ポンピング手段と呼ばれる。ポンピング手段は、流路の中で流体または気体の流れを制御するため、系において圧力差を引き起こす様々な機構を含む。様々なポンピング手段が公知であり、重力式、回転式、往復式、遠心式、空気揚水式、またはジェット式のポンプを含むがこれらに限定されない。これらはまた、流体または気体の制御された流れを発生させるため、ピストン、プランジャ、蠕動、振動板、容量可変の容器、圧縮ガス、プロペラ、タービン、ネジ、または歯車式の機構を含むことも可能である。
【0029】
本発明は、さらに、細胞懸濁液の塊のクトロポレーション処理の間にエレクトロポレーションチャンバーを冷却する便利な手段を提供することが可能である。細胞懸濁液でエレクトロポレーションチャンバーを充填してからエレクトロポレーションチャンバーを空にする間の時間は、エレクトロポレーションチャンバーの温度がエレクトロポレーション用細胞懸濁液導入前に一定の温度を超えない事を確実にするように調節してもよい。
【0030】
基本設計に対する追加の修正も、本明細書に記載されている主要な法則にしたがって含まれ得る。様々な態様において、試料および生成物のラインまたは流路は、チャンバーの空洞においてのみ接触し、すなわちチャンバーは、試料が流れるためのマニホールドとしての機能を果たし、チャンバーは、新しい試料の画分が到達する前に完全にまたは部分的に空になることが可能である。本明細書において使用される場合、「流路」とは、液体または気体などの流体が通過できる任意の導管、チューブ、パイプ、および/または経路の手段によって流体連絡するこれらの構成部品または部分の集合を意味する。本明細書において使用される場合、「流体連絡」とは、流体が構成要素間および流路の中を通過するのを可能にする流路の2つまたはそれ以上の構成要素間の、直接的または間接的のいずれか一方での機能的結合を意味する。例えば、試料用容器は、もし流体が試料用容器からチャンバーへ通過することができるなら、チャンバーと「流体連絡」する。
【0031】
流体連絡することが可能な流路の例は、経路を通過する流体または気体の流れを制御する装置と管類によって結合した容器およびチャンバーを含む経路であって、このような装置は、十分に圧縮された蠕動ポンプ、または容器とチャンバーとの間に置かれたバルブを含むことができる。制御装置は、容器とチャンバーとの間の任意の位置で動作可能なように連結することができる。流れを制御する装置の文脈で使用される場合、「動作可能なように連結される」という用語は、流体または気体の流れが、ある様式、例えば流動を許可または阻害する様式で制御される、制御装置と流体または気体との間の、間接的または直接的な連絡を意味する。制御装置は、例えば、フレキシブルチューブ上のピンチバルブ(例えば図15参照)のように、流体または気体と直接接触している必要はない。
【0032】
ある態様において、装置の1つまたは複数の流路は、無菌の経路であることが可能である。すなわち、試料供給源からの試料の流れ、およびチャンバーから処理試料用容器までの処理試料の流れが、閉鎖系であることが可能である。閉鎖系は、試料を処理している間無菌のままであるよう適切な無菌状態下で準備することができる。その上、容器、チューブ、エレクトロポレーションチャンバーなどは、使い捨てにすることができる。本明細書において使用される場合、「使い捨て」とは、最もとまではいかないが多くの使用者が、構成部品を再利用せず、1回の使用後に構成部品を廃棄するのが経済的に効率的であると考えるよう、設計および製造上の利点から十分に安価にすることができる構成部品を意味する。
【0033】
様々な他の処理をする構成部品は、本発明の装置および方法に含むことができる。例えば、溶液の供給源、例えばフラッシュバッファー(flush buffer)の供給源は、循環の間、またはある回数の循環の後、チャンバーを一気に流しだし、清掃し、または冷却するために加えることができる。フラッシングバッファー(flushing buffer)は、周期的に電極およびチャンバーを冷却するために使用することもできる。
【0034】
I.フローエレクトロポレーション法の説明
図1は、本明細書において記載されている制御された、または断続的なフローエレクトロポレーション法の例示的なエレクトロポレーションの循環を表した概略図である。パネル2が、チャンバーをエレクトロポレーション処理する試料で同時に満たすことを図解するとともに、パネル1は、チャンバーから試料でない流体または気体を除去することを図解する。パネル3および4は、試料が流入してから流出するまで移行する間の試料のエレクトロポレーションを図解する。パネル5および6は、処理試料がチャンバーから除去されるよう、試料でない流体または気体が同時に流入することを図解する。本発明の局面は、1、2、3、4、5、6、またはそれ以上のエレクトロポレーションチャンバーポートを通じて生じる流入、流出、または流入および流出両方を含む。流入および流出は、同じまたは異なるポートを通してであることができる。チャンバー自体は、マニホールドとして使用することが可能であり、または分かれたマニホールドは、試料供給源とチャンバーとの間、収集地点とチャンバーとの間、または試料供給源および収集地点両方の間のチャンバーの外側に置くことができる。マニホールドは、本発明のすべての態様に必須ではない。
【0035】
チャンバーを試料で充填する過程おいて、流体は、しぶきをあげ、チャンバーの空気中に浸透する可能性がある。このようなしぶきは、細胞に流体力学的ストレスを引き起こし、または細胞懸濁液において泡立ちまたは気泡の生成をもたらす可能性がある。流体力学的ストレス、および泡立ちまたは気泡のどちらも、生細胞を扱うときは避けたほうがよいことは一般的に認められている。液体のしぶき、および流体力学的ストレス、および気泡の形成は、エレクトロポレーション処理の高い処理能力が望ましい場合において問題になる可能性がある。使用者がチャンバーを細胞懸濁液で満たし、かつ空にする時間を最小限にすることを意図する場合、流速は、液体のしぶきおよびその否定的な結果に至るものが選択され得、これはより速い充填速度で得られる任意の利点よりも重大である。以下で示されるように、ある条件下で、液体は、入口ポートからチャンバー内に噴出し、その存在が不要である系の他の区画内に浸透することができる。この問題を避ける1つの方法は、流体力学の十分に開発された技術を利用することによって、または例えばチャンバーの表面を透明な材料で作ることによって流入する細胞懸濁液の流れが観察できるテストチャンバーを構築することによって、直接的な方法で達成することができる。このようなテストチャンバーで、しぶきもしくは気泡の生成、または泡を観察することが可能であり、しぶき、または気泡、または泡立ちをもたらす流れは避けることができる。
【0036】
可能性のあるしぶき問題の1つの処理において、直立位置に置かれた円形のパイプの開口部をそのままにしている少容量(分かれた滴)の液体が検討される。パイプ内にある間、液体は、ポンプまたはある他の手段によって生み出されているパイプの端にわたった圧力差によって進む。パイプから出たとき、液体は、慣性により流れの方向に動き続ける。もし流れが上方を向いており、自由落下に作用する力がないと仮定するなら、本発明者らは、滴の運動エネルギーおよび位置エネルギーの合計が不変であると述べているエネルギー保存則を用いて、空中をどれほど移動するのか推定することが可能である(方程式1):
式中、
mは、滴の質量であり、
V(t)は、その速度であり、
gは、重力加速度であり、および
h(t)は、パイプ開口部より上の滴の高度である。
【0037】
実質的にパイプから離れた瞬間の滴に関する全力学的エネルギーは運動エネルギーであるため、定数は、1/2 mV02と等しく、V0は流体の流れの平均線速度であり、導管断面に対する体積流量比と等しい。滴がその最高点に達するときその速度はゼロとなり、その高度はその関係から求めることができる(方程式2)。これらの力を考慮に入れることができ、システムの設計は、流路の寸法、エレクトロポレーションチャンバーの配置、およびシステム内の流体の流れを制御するのに使用される圧力を変更することによって最適化できる。
【0038】
例えば、細胞懸濁液を、5 mL/sで、1/8インチ内径(ID)のパイプを通してポンピングさせる。その平均線速度は、その後最大63 cm/sに達し、層流の法則にしたがって、パイプ中心における最大線速度は、V0値126 cm/sを加えると平均の2倍になる。g値が980 cm/s2で、h最大 = 8 cmになる。この距離は、処理されたチャンバーの特徴的な寸法と同程度であり、したがって、しぶきは表示された条件で起こりうる可能性がある。
【0039】
可能性のあるしぶき問題の解決法は、以下の例に限定されるものではないが含む。流速の2倍の増加によって、h最大が4倍増加する:上記例の噴流の高さは、流速10 mL/sで30 cmより高くなり、細胞懸濁液が、チャンバーに噴流を通してもたらされ、静かな流れによるものではないことを意味している。他方では、管類断面における2倍増によって、噴流の高さが4倍減少するため、必要流速を考えると、しぶきおよび懸濁液における細胞の撹乱を最小化するため、手頃でかつ広い供給管類および入口ポートの直径を選択すべきである。この問題の理論的な取り扱いを考えると、より実験に基づいた解決法は、流速、ポート寸法、流路などの様々な組合せによって特定することができる。
【0040】
本発明の方法は、様々な装置構成を使用して実施することが可能である。最初の例において、装置構成は、図5もしくは図8のエレクトロポレーションチャンバー、またはこれらの変形を含むことが可能である。図2に関して、試料供給源30は、第1の流路31によってチャンバー11と流体連絡するが、チャンバーポート17を通じてチャンバーと連結する。試料供給源30からチャンバー11への流れは、バルブ32によって例示されているように制御する。チャンバー11は、第2のポート18を経て第2の流路37によって処理試料の貯蔵所36と連結する。流路37の中の流れは、第2のバルブ38によって制御することが可能である。試料でない流体または気体の供給源35は、第3の流路33によってチャンバー11と流体連絡する。流路33は、試料でない気体または流体の貯蔵所35とチャンバー11との間で流体連絡を提供する。第3の流路33は、ポンプ34、またはこれに動作可能なように連結した流路の中で流体を移動させる原動力のための他の手段を含む。第3の流路33は、第3のポート19によってチャンバー11と連結する。
【0041】
図2に示された系の例示的な初期構成は、チャンバー11が試料でない流体または気体を含み、試料供給源30が標的細胞、標的物質、試薬、またはこれらの様々な組合せの溶液を含むことができる。バルブ32を開き、かつバルブ38を閉じると、ポンプ34は、試料でない流体または気体をチャンバー11から排出することができる。または、試料は、試料でない流体または気体を移動または圧縮することでチャンバー内にポンピングすることができる。試料でない気体がチャンバー11を出る、またはチャンバーにおいて圧縮されるため、試料供給源30からの試料は、チャンバー11に流入する。チャンバー11が十分に試料で充填された時点で、電気パルスが、電極の使用によってチャンバーを通じて送られる。いったん電流に曝されると、試料は処理試料と見なされる。バルブ32を閉じ、かつバルブ38を開けると、試料でない流体または気体は、チャンバー11内にポンプで送り込まれ、または移動する。試料でない流体または気体は、活発にチャンバー内にポンプで送り込み、または処理試料の排出によってチャンバー内に吸い込むことができる。処理試料は、収集袋36によって例示された貯蔵所または収集地点に流路37を通して流れる。この処理は、電気パルス特性の修正を加えて、または修正なしに、出発試料の量のすべてまたは一部が処理されるまで、何回か通して循環させることが可能である。
【0042】
図3に関して、本発明のさらなる態様は、流路31によってチャンバー11と流体連絡する試料供給源30を含むことができるが、チャンバーポート17を通じてチャンバー11と連結する。試料供給源30からチャンバー11への流れは、バルブ32によって例示されているように制御される。試料でない流体または気体の供給源は、試料でない流体または気体/処理試料の貯蔵所39を形成するため、処理試料の貯蔵所または収集地点と組み合わされる。チャンバー11は、第2のポート18を経て第2の流路37によって試料でない流体または気体/処理試料の貯蔵所39と連結する。第2のバルブ38は、流路37の中で流れを制御することができる。試料でない流体または気体/処理試料の貯蔵所39は、第3の流路41によってチャンバー11と流体連絡する。流路41は、試料でない流体または気体/処理試料の貯蔵所39と、および第4の流路42を形成するポンプ34との間で分岐する。第3の流路41は、ポンプ34または流路の中で流体を移動させる他の手段と動作可能なように連結する。第3の流路41は、第3のポート19によってチャンバー11と連結する。
【0043】
図3に示された系の例示的な初期構成は、チャンバー11および試料でない流体または気体/処理試料の貯蔵所39が試料でない流体または気体を含み、試料供給源30が標的細胞、標的物質、試薬、またはこれらの様々な組合せの溶液を含むことができる。バルブ32を開き、かつバルブ38を閉じると、ポンプ34は、流路42を経てチャンバー11から試料でない流体または気体を移動させ、試料供給源30内に移動させる。試料でない気体がチャンバー11から出るため、試料供給源30からの試料は、チャンバー11に流入する。チャンバーが十分に試料で充填された時点で、電気パルスが、電極の使用によってチャンバーを通じて送られる。いったん電流に曝されると、試料は、処理試料と見なされる。バルブ32を閉じ、かつバルブ38を開けると、試料でない流体または気体は、試料でない流体または気体/処理試料の貯蔵所39から流路41を経てチャンバー11内にポンプで送り込まれる。処理試料は、試料でない流体または気体/処理試料の貯蔵所39に流路37を通して流れる。この処理は、出発試料の量のすべてまたは一部が処理されるまで、何回か通して循環させることが可能である。
【0044】
まださらなる態様において、エレクトロポレーションチャンバー10は、図4に描かれている構成に含まれることができる。図4に関して、試料供給源30は、流路31によってチャンバー11と流体連絡しているが、チャンバーポート17を通じてチャンバーと連結する。試料供給源30からチャンバー11への流れは、バルブ32は任意であるが、バルブ32またはポンプ43によって制御することができる。チャンバー11は、第2のポート18を経て第2の流路37によって試料でない流体または気体/処理試料の貯蔵所39と連結する。流路37の中の流れは、第2のバルブ38(任意)によって、または第1のポンプ34によって制御することが可能である。試料でない流体または気体の供給源は、試料でない流体または気体/処理試料の貯蔵所39を形成するため、処理試料の貯蔵所または収集地点と組み合わされる。試料でない流体または気体/処理試料の貯蔵所39は、第3の流路44によってチャンバー11と流体連絡する。第3の流路44は、第1のポンプ34または流路の中で流体を移動させる他の手段と動作可能なように連結する。第3の流路44は、第4のポート20によってチャンバー11と連結する。チャンバー11は、ポート19および第4の流路45を通じて試料供給源30と連結する。第2のポンプ43は、第4の流路45と動作可能なように連結する。
【0045】
図4に示された系の例示的な初期構成は、チャンバー11および試料でない流体または気体/処理試料の貯蔵所39が試料でない流体または気体を含み、試料供給源30が標的細胞、標的物質、試薬、またはこれらの様々な組合せの溶液を含むことができる。バルブ32を開き、かつバルブ38を閉じ、または第1のポンプ34が第2の37流路および第3の44流路において流れを妨げると、第2のポンプ43は、流路45を経てチャンバー11から試料でない流体または気体を移動させ、試料供給源30内に移動することができる。試料でない気体がチャンバー11から出るため、試料供給源30からの試料は、流路31を通じてチャンバー11に流入する。チャンバーが試料の所望の量で充填された時点で、電気パルスが、電極の使用によってチャンバーを通じて送られる。いったん電流に曝されると、試料は、処理試料と見なされる。バルブ32を閉じ、または第2のポンプ43が第1の31流路および第4の45流路において流れを妨げ、かつバルブ38を開けると、気体の試料でない流れが、試料でない流体または気体/処理試料の貯蔵所39から流路44を経てチャンバー11内に第1のポンプ34で送り込まれる。処理試料は、試料でない流体または気体/処理試料の貯蔵所39に流路37を通して流れる。この処理は、出発試料の量のすべてまたは一部が処理されるまで、何回か通して循環させることが可能である。
【0046】
II.フローエレクトロポレーション装置の説明
エレクトロポレーションチャンバーの組立部品は、外部の供給源からエレクトロポレーションチャンバー組立部品に導入される細胞などの、選択的に分画された生物学的単位に対して使用することができる。生物学的な単位は、次に、生物学的または科学的な物質の存在下でエレクトロポレーションに供し、物質を生物学的単位の膜に一時的に開けられた孔に侵入させてもよい。いったんエレクトロポレーションされると、生物学的な単位は、エレクトロポレーション処理された細胞のさらなる操作を可能にし、かつ細胞懸濁液の新たな画分、部位、または単位体積についてエレクトロポレーションを可能にするため、エレクトロポレーションチャンバーから除去される。本発明の例示的な態様に係るエレクトロポレーションチャンバーの構造および構成の詳細な説明は、以下で提供される。
【0047】
本発明のある態様は、1つまたは複数の流入ポート、1つまたは複数の流出ポートを有するエレクトロポレーションチャンバーを含む、微粒子、特に生細胞の懸濁液を電気的処理するためのエレクトロポレーションチャンバーを含む。エレクトロポレーションチャンバーは、チャンバーがさらに、例えば懸濁液中の細胞、または1つもしくは複数の流入ポートからの試料でない流体もしくは気体などの試料を受け取り、かつ一時的に含むよう構成される2つまたはそれ以上の壁に含まれる。チャンバーは、各電極が少なくとも1つのチャンバー壁を形成するようチャンバーに関して配置された対になった電極も含む。それぞれの電極は、電気エネルギー供給源と電気的に連絡し、それによってチャンバーを流れる細胞の懸濁液を、電極間で形成される電場に供することができる。
【0048】
本発明の例示的なエレクトロポレーションチャンバーは、図5に示される。 図5に関して、エレクトロポレーションチャンバー10は、チャンバー11を含む。壁12は、壁12の間に置かれたチャンバーおよびガスケット13を定義する。壁12は、電極板であることができる。ガスケット13は、チャンバー11を形成するため、壁12の間に隙間を提供するように設計される。壁12およびガスケット13は、固定手段14によって固定されるが、結合した電極ギャップスペーサ15を有することが可能である。固定手段14は、ボルト、クリップ、ピン、成型プラスチックなどの成形物を非制限的に含むことが可能である。図5に示される態様において、エレクトロポレーションチャンバー10は、4つのポート:第1のポート17、第2のポート18、第3のポート19、および第4のポート20を有し、ある態様において、第4のポート20は任意である。それぞれのポートは、試料供給源、試料でない流体または気体、試薬の供給源、処理試料の貯蔵所、または様々な溶液および試薬用の様々な容器と流体連絡することができる。
【0049】
図5に図解されたエレクトロポレーションチャンバー10の分解立体図は、図6において提供される。図6に関して、エレクトロポレーションチャンバー10は、チャンバー11を含む。チャンバー11は、壁の間に置かれたチャンバーおよびガスケット13の壁/電極12によって定義される。ガスケット13は、チャンバー11を形成するため、壁12の間に隙間を提供するように設計される。壁12およびガスケット13は、固定手段14によって固定されるが、結合スペーサ15を有することが可能である。固定手段14は、ボルト、クリップ、ピン、成型プラスチックなどの成形物を非制限的に含むことが可能である。図6に示される態様において、チャンバーは、4つのポート:第1のポート17、第2のポート18、第3のポート19、および第4のポート20を有し、ある態様において、第4のポート20は任意である。各ポートは、試料供給源、試料でない流体または気体、試薬の供給源、処理試料の貯蔵所、または様々な容器と流体連絡することができる。
【0050】
エレクトロポレーションチャンバー10の他の態様の分解立体図は、図7において提供される。 図7に関して、エレクトロポーションチャンバー10は、チャンバー11を含む。チャンバー11は、壁の間に置かれたチャンバーおよびガスケット13の壁/電極12によって定義される。ガスケット13は、チャンバー11を形成するため、壁12の間に隙間を提供するように設計される。壁12およびガスケット13は、固定手段14によって固定されるが、結合スペーサ15を有することが可能である。固定手段14は、ボルト、クリップ、ピン、成型プラスチックなどの成形物を非制限的に含むことが可能である。図5に示される態様において、チャンバーは、4つのポート:第1のポート17、第2のポート18、第3のポート19、および第4のポート20を有し、ある態様において、第4のポート20は任意である。この態様において、ポート(17、18、19、20)孔の平面は、チャンバー11の壁12の平面と同一平面上にある。それぞれのポートは、試料供給源、試料でない流体または気体、試薬の供給源、処理試料の貯蔵所、または様々な容器と流体連絡することができる。
【0051】
エレクトロポーションチャンバーの別の態様は、図8に示される。図8に関して、エレクトロポーションチャンバー21は、3つのポート(17、18、および19)を含む。壁12は、壁12の間に置かれたチャンバーおよびガスケット13を定義する。壁12は、電極であってもよく、または中に組み込まれた電極を有してもよい。ガスケット13は、チャンバー11を形成するため、壁12の間に隙間を提供するように設計される。壁12およびガスケット13は、固定手段14によって固定されるが、これは結合スペーサ15を有することが可能である。固定手段14は、ボルト、クリップ、ピン、成型プラスチックなどの成形物を非制限的に含むことが可能である。図8に示される態様において、チャンバーは、3つのポート:第1のポート17、第2のポート18、および第3のポート19を有する。それぞれのポートは、試料供給源、試料でない流体または気体、試薬供給源、処理試料の貯蔵所、または以下に記載のような様々な容器と流体連絡することができる。
【0052】
図8の分解立体図である図9に関して、エレクトロポーションチャンバー21は、チャンバー11ならびに3つのポート(17、18、および19)を含む。チャンバーは、壁12の間に置かれた壁12およびガスケット13によって定義される。壁12は、電極であってもよく、またはその中に組み込まれた電極を有してもよい。ガスケット13は、チャンバー11を形成するため、壁12の間に隙間を提供するように設計される。壁12およびガスケット13は、固定手段14によって固定されるが、結合スペーサ15を有することが可能である。固定手段14は、ボルト、クリップ、ピン、成型プラスチックなどの成形物を非制限的に含むことが可能である。図5に示される態様において、チャンバーは、3つのポート:第1のポート17、第2のポート18、および第3のポート19を有する。それぞれのポートは、試料供給源、試料でない流体または気体、試薬供給源、処理試料の貯蔵所、または様々な容器と流体連絡することができる。
【0053】
図5〜9に示される本発明の態様において、チャンバー11を含むガスケット13は、電極ギャップスペーサ15の厚さと等しいのガスケット13の厚さを持った電極板12の間に置くことができる。ガスケット13は、通常、対立する電極板12と密閉状態を形成する。ガスケット13は、シリコーン、他の合成もしくは天然のゴム、または他のポリマー、または他の非導電材料から構築することができる。ガスケット13の中に一体となって、1つまたは複数のチャンバー11を提供することが可能である。ガスケット13の中の正方形、長方形、導管、または他の切り抜きが、チャンバー11を定義する。チャンバー11の大きさおよび形状は、電極板12の大きさおよび形状と比例する。
【0054】
また図5〜9を参照すると、エレクトロポーションチャンバー10または21は、2つの対立した電極板12から作ることができる。通常は、電極板12は、鉄、鋼、銅、アルミニウム、または他の導電性金属あるいは合金から作ることができる。電極板12は、さらに、導電率を高めるため、金、白金、亜鉛、炭素、または他のめっき材料でコーティングすることができる。各電極板12は、全体的なフローエレクトロポーションシステムの電源回路と接続する1つまたは複数の電気端子22と共に提供することができる。
【0055】
電極板12は、通常、1つまたは複数の電極ギャップスペーサ15によって分離することができる。電極ギャップスペーサ15の厚さは、電極12の間の隙間を定義、および固定する。電極12の間の隙間は、単にギャップスペーサ15を変更することによって任意の所望の寸法に簡単に調節することができる。このような1つの隙間の厚さは、流量および電場の強さによって変わるが、一般的に3 mmより長く、好ましくは約0.01 mmから約2 cm、特に好ましくは約0.1 mmから1 cmになる。他の態様において、隙間は、3 mmより長く、好ましくは約4 mmから約2 cm、特に約5 mmから約1 cmであることができる。図14は、少なくとも1つのポートを持ったプランジャ装置が、本明細書において記載されているようにエレクトロポーションチャンバーとして使用される本発明の他の態様の例を図解する。この特定の種類の装置において、プランジャは、試料の塊を移動させるのに使用することができる。試料でない気体または液体は、図解された基本原理に基づいた装置または方法には必要とされない。
【0056】
電極ギャップスペーサ15は、通常は電気的に絶縁された材料から作られ、プラスチック、セラミック、ゴム、または他の非導電性ポリマー材料、もしくは他の材料のような材料から作り出すことが可能である。
【0057】
一つの態様において、エレクトロポーションチャンバーの組立部品は、1つまたは複数の入口穴を含むことができる電極板12を含む。それぞれの入口穴は、さらに、流入口、流出口、または試料でない流体もしくは気体の入口/出口のいずれかを含むことができ、これらは全体的なフローエレクトロポーション装置のそれぞれの流入/流出する流体の経路と接続し、かつ相互作用する働きをする。
【0058】
エレクトロポーションチャンバーは、安全に組み立てができるようにする1つまたは複数の取付け手段を含むこともできる。本発明の様々な態様において、取付け手段14は、電極板12の所望の位置とその中に入れるガスケット13およびチャンバー11とを固定するために用いることが可能なネジ、ボルト、リベット、棒、またはクリップなどの留め具を含むことができる。エレクトロポーションのさらに他の代わりになる態様、本発明に係るエレクトロポーションチャンバー11において、取付け手段14は、接着、他の結合技術、またはカプセル化によって固定することができる。
【0059】
取付け手段は、受け入れるボルトに大きさおよび位置を合わせた取付け穴であることができる。このようなボルトは、取付け穴を通じて直接配置することができ、またはプレートブッシング中に収容することができ、かつこのボルトは、エレクトロポーションチャンバーを固定する働きをするナットによって固定することができる。導電性の電極ギャップスペーサを用いる態様において、対立する平板電極の電気絶縁性は、絶縁板ブッシングを使用することによって得ることができる。
【0060】
さらなる態様において、1つまたは両方の対立する電極板12に、さらに冷却要素を有するインターフェースを提供することができる。冷却要素は、熱電気の冷却要素であることができ、または直接的な水もしくは他の冷却液の接触、放熱板を通じた換気、もしくは通常は発熱過程であるエレクトロポーション処理において生じた熱を放散するための他の冷却手段による冷却を提供することができる。
【0061】
本発明のまださらなる局面において、エレクトロポレーションチャンバーは、図15に例示されているように、逆止めバルブを必要としない閉鎖した使い捨て可能な一行程のポンピングシステムと操作可能なように連結することができる。多くの空気ポンプは、振動した弾性膜を使用し、指向性の空気の流れを確立するため逆止めバルブを必要とする。可変的なフローシステムの様々な態様が、システムの一部として逆止めバルブを有するため、エレクトロポレーションチャンバーを充填する/空にする工程は、弾性膜を曲げたピストンの1回のストロークで達成することができる。
【0062】
このような特徴を含む処理チャンバーはしたがって、可変的な流れの処理において極めて正確な試料の動作が可能である、安価でかつ十分に閉じた単位となり得る。外部のポンプは必要とされない。図15に関して、処理チャンバーの構成部品は、シリコーンガスケット13、電極12、プラスチック本体50;および弾性膜52を含むがこれらに限定されない。エレクトロポレーションチャンバー11および試料でない流体または気体用の容器35の壁(図2参照)は、ガスケットによって形成することができる。ガスケット13は、一続きの構築物であることが可能である。このような態様には、ピストン54;ステッピングモーターによって調節された小型線形アクチュエータ56、および機器の表面にあるコンピュータが存在する。このような1ストロークのピストン機構が組み込まれた本発明の態様は、すでに図2に記載されていたように(バルブ32および38)、2つのピンチバルブを含むことが可能である。ポート17、18、および19の例示的な位置付けはまた、図15に示される。
【0063】
図解されている具体的な態様は、本発明の例示的なものであり、本発明を具体例に制限すると解釈してはならない。
【0064】
本発明のある局面は、エレクトロポレーション装置中に、本発明のエレクトロポレーションチャンバーの組み込み、および様々な処理をする構造を含む(図10)。本発明のある態様において、本発明のフローエレクトロポレーション装置は、以下のものを含むことが可能である:エレクトロポレーションチャンバーを含むことができる部品組立品;試料、処理試料、および試料でない流体または気体用の様々な容器、ならびに本発明と共に使用することができる他の試薬;ならびに様々な流路を提供する管類;高圧パルスを提供する電子部品および電子回路;電子回路および流体の動きを調節することができるコンピュータ;ならびに操作者がデータにアクセスし、コンピュータに入力またはプログラムを与えることを可能にするコンピュータと接続されたモニター。
【0065】
本発明は、新しいエレクトロポレーション法およびエレクトロポレーション装置を開発するための、制御されたフローエレクトロポレーションを使用する。本明細書において例示および記載されている方法は、制御された流れおよび細胞懸濁液のエレクトロポレーションを含む。本発明のチャンバーは、その費用が、使い捨て可能な単位として使用することができるくらい十分安くなるよう製造することが可能である。エレクトロポレーションチャンバーの様々に異なった構造は、本明細書において記載されている例を本発明において使用することができる。細胞懸濁液が電極間に存在している時間の間、細胞懸濁液は、電圧、継続時間、および一時的な間隔(1つより多く使用される場合)を含む、所定の電気パラメータを有する1つまたは複数の電気パルスを受ける。最適な電気パラメータは、特定の細胞型、および場合によってはエレクトロポレーションにより細胞への導入を意図する分子に特有である。適切な電気パラメータは、当技術分野において周知であり、新しい細胞型に最適なパラメータを実験的に決定する方法が公知である。多くの種類の哺乳類細胞に適したパラメータの例は、1 kV/cm、1 msパルス幅である。対象とする分子、化合物、または組成物は、次に濃度および/または電気勾配にしたがって細胞中に拡散する。本発明は、任意で細胞を電場のある強さの範囲に供するができる。一般的に言えば、本発明において有用な場の強さは、約0.5 kV/cmより大きく;好ましくは約1 kV/cmから3.5 kV/cmである。
【0066】
この処理は、エレクトロポレーションチャンバーを容器中の溶液および細胞懸濁液と繋げられた管類に取り付けることによって開始されるが、これは無菌または滅菌環境において実施することができる。エレクトロポレーションチャンバーは、器具に固定した位置にはめ込むことができ、ヒンジで連結されたパネルを閉じることによって固定することができる。細胞懸濁液および/または他の試薬は、細胞懸濁液が適切な時間および速度でエレクトロポレーションチャンバーに流入するよう、1つまたは複数のポンプ、バルブ、またはこれらの組合せに要求された命令を与えることによって導入することができる。一部の細胞懸濁液が、電極間のエレクトロポレーションチャンバーにあるとき、選択された電圧の電気パルス、継続時間、および間隔が、電極、およびそれによって懸濁液中の細胞に加えられる。必要不可欠な電気パルスを加えた後に、命令が、細胞懸濁液をエレクトロポレーションチャンバーから除去するため、1つまたは複数のポンプ、バルブ、またはこれらの組合せに与えられる。これらの命令は、細胞懸濁液の新しい一部をエレクトロポレーションチャンバー内に導入するために与えることもできる。エレクトロポレーションされている細胞懸濁液は、まだエレクトロポレーションされていない細胞から分離して収集される。先行する一連の事象は、エレクトロポレーションチャンバーに流入、およびエレクトロポレーションチャンバーから流出する細胞懸濁液の流れをもたらし、かつ調節する、電気パルスを提供する電子回路、および任意のポンピング手段、バルブ、またはこれらの組合せに操作可能なように接続されたコンピュータによって適宜時間的に調整することが可能である。細胞懸濁液に加えられる電気パルス、ならびにエレクトロポレーションチャンバーに流入、およびエレクトロポレーションチャンバーから流出する細胞懸濁液の流速および流下時間は、共に操作可能なようにコンピュータに接続されたモニターおよびキーボード上のグラフィックを用いたインターフェースを通して操作者によってコンピュータに与えることができる。本発明のフローエレクトロポレーションシステムの例は、これから詳細に記載される。
【0067】
A.使い捨て可能なエレクトロポレーションチャンバーおよび関連した構成部品(使い捨てセット)
使い捨てセットは、様々な容器(例えば、PVCバッグ)、PVC管類、連結装置、シリコーンポンプ管類、および本明細書において記載されているエレクトロポレーションチャンバーを含むことができる。血液または他の細胞物質と接触するすべてのプラスチック構成部品は、医療グレードクラス(Medical Grade Class)VIの材料であることが可能である。
【0068】
エレクトロポレーションチャンバー(図5参照)は、約100 μインチの純金(99.9 %)でエレクトロポレーションした2つの低炭素鋼(鉄 99+%)の電極を含むことができる。電極は、通常、それらの全長に渡って77 μm以内までの20 mmである。電極が平行に設置される場合、154 μmの棒電極間の距離において最大偏差が存在する。組立工程の間、電極は、通常、電極ガスケットに挿入され、次に固定器具およびプレート板の間に挟まれる。平行な棒電極間のわずかな隔たりは、3 mmである。エレクトロポレーションチャンバーは、約1.6 mLの内部体積を有することが可能である。
【0069】
電極は、金属または他の導電性化合物の層でコーティングされた任意の非導電性の材料から作ることができる。
【0070】
ある態様において、使い捨てセットに取り付けられた1、2、3、4、5、6、またはそれ以上の容器または供給源があることができる。容器は、折り畳み可能な、拡張可能な、または固定した容量の容器を含むがこれらに限定されない。本明細書において試料供給源または試料用容器と呼ばれる第1の容器は、細胞懸濁液を含み、エレクトロポレーション処理を経由して細胞に挿入される物質を含むことも含まないことも可能である。挿入される物質が含まれない場合、この物質を含む第2の容器があるが、これはエレクトロポレーションチャンバーの中に入る前に、またはエレクトロポレーションチャンバー中で、一列にに並んで混合される。第1の(任意で第2の容器)ものは、バルブが構造に含まれる場合、任意の指定されたピンチバルブを通過するPVCまたは他の適切な管類ラインと接続され、エレクトロポレーションチャンバーの第1のポート(入口ポート)に流入する。ある態様において、1つのポートを備えるエレクトロポレーションチャンバーが本発明の実施に際して使用することができると考えられる。本発明のさらなる局面は、試料用容器からの管類と接続した他の容器を含むことができ、試薬または他の試料をチャンバーに供給することができる。変換溶液は、エレクトロポレーションチャンバーに達する前に、達する間、または達した後、混合することができる。
【0071】
またさらなる態様において、エレクトロポレーションチャンバーの第2のポート(出口ポート)は、少なくとも1、2、3、4、またはそれ以上の取り付けられた容器を有し、エレクトロポレーションチャンバーから適当な容器への流れを方向づける1つまたは複数の介在装置を有することができる。追加の構造において、廃棄用の容器を取り付けることができるが、それは使用者が廃棄を意図しうるある任意の流体を保持する。第2もしくは第3の容器または袋は、処理試料または生成物用の容器として見なされる。処理試料または生成物用の容器は、エレクトロポレーション処理の細胞または他の生成物を保持する。
【0072】
第3または第4の容器は、試料を別々の塊または単位体積に分離するよう利用される様々な試料でない流体または気体を保持することができる。試料でない流体または気体の容器は、通常、第3および/または第4のポートによってエレクトロポレーションチャンバーと接続される。試料でない流体または気体用の容器は、処理試料用容器または試料用容器に組み込むことができ、そのため試料でない流体または気体は、処理試料用容器から別の容器まで移動されるが、これは試料を処理している間、試料供給源用容器を含むことができる。ある局面において、試料でない流体または気体を入れるための貯蔵器は、試料でない流体または気体の圧縮によって、電極がエレクトロポレーションを達成するよう適切に配置する事が可能である限り、チャンバーに組み込むことができる。
【0073】
前述のように、様々な他の容器は、本明細書において例示された構造に組み込むことができる。これらの追加の容器は、追加の試薬、細胞などを供給することができる。追加の容器は、廃棄用容器、または処理試料を分離する容器を提供することもできる。様々な態様において、本発明に係るエレクトロポレーションチャンバーは、1、2、3、またはそれ以上の電極対を含むことができる。チャンバーが1対よりも多い電極を有する場合、パルスが加えられる際に実質的に1対の電極の間にある細胞懸濁液のみが、効果的にエレクトロポレーションされる、またはエレクトロポレーションされる。望ましい場合、複数のエレクトロポレーションチャンバーが、より速く、より高容量でのエレクトロポレーションを達成するために提供され得る。本明細書において使用される場合、エレクトロポレーション領域という用語は、物質がその中を流れるチャンバーの一部が、エレクトロポレーションを達成するのに十分な強さの電場に曝されることを意味する。本発明によると、エレクトロポレーションチャンバーのエレクトロポレーション領域の対向壁の少なくとも一部を定義する2対の電極が、エレクトロポレーション領域においてこれら対向壁の実質的な部分を形成することが望ましい。本明細書において使用される場合、電極は、電圧差が対に対して加えられている場合にそれらの間に実質的に均一な電場が存在できるようにそれらが配置されていれば、1対であると考えられる。本明細書において使用される場合、実質的な部分という用語は、約50 %より大きい;好ましくは約60 %より大きい、より好ましくは約70 %より大きい、より好ましくは約80 %より大きい、より好ましくは約90 %より大きいこと、最も好ましくは約100 %を意味するものとする。
【0074】
好ましくは、エレクトロポレーションチャンバーは、使い捨ての、1回の使用で利用するための滅菌単位として提供することができる。エレクトロポレーションチャンバーの構成部品はそのため、好ましくは高圧蒸気殺菌、照射殺菌、または化学殺菌などの滅菌手順に耐える能力がある物質で作ることができる。
【0075】
本明細書に記載されている任意の器具の構成部品で用いる適切な物質は、生体適合性があり、体内液との接触を伴う医学的応用に認可された物質を含み、かつUSPV1またはISO 10993標準を満たすべきである。さらに、物質は、少なくとも1回の使用の間、例えば本発明において使用される溶剤への曝露から実質的には分解しない。物質は、通常、放射線またはエチレンオキシド(EtO)滅菌いずれか一方によって殺菌される。このような適切な物質は、例えば管類に使用されるならば押し出し可能な、および/または例えば硬い容器に使用されるなら射出成形可能な物質を含む。本発明に係る器具の様々な構成部品を形成するのに有用な物質は、ナイロン、ポリプロピレン、ポリカーボナート、アクリル、ポリスルホン、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、DuPont Dow Elastomers L.L.C.から入手できるバイトン(VITON)などのフルオロエラストマー、Monsantoから入手可能なサントプレーン(SANTOPRENE)などの熱可塑性エラストマー、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル(PVC)、リテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフェニレンエーテル(PFE)、テフロン(TEFLON)PFAとしてE. I. du Pont de Nemours and Companyから入手可能なペルフルオロアルコキシコポリマー(PFA)、およびこれらの組合せを含むがこれらに限定されない。
【0076】
多くの場合、エレクトロポレーション処理の処理能力、または一定の時間に処理された細胞懸濁液の量に言及することは重要である。単位体積の細胞懸濁液をエレクトロポレーションするのに一定量のエネルギーが要るので、所定の時間でエレクトロポレーションされる細胞懸濁液の量が多くなるほど、同じ時間でより多くのエネルギーが消費される。細胞懸濁液へ電圧を印加えることによって、懸濁液に電流の流れが起こり、これは電気抵抗を有する。この電流の流れは、ジュールの法則にしたがった熱を発生する。チャンバーおよびその中身に供給される電気エネルギーの大部分は熱に変換されるため、時間およびチャンバーにおいて生じる熱の関数としてチャンバーおよびその中身に供給される電力(P)の関係は、Qを熱、およびtを時間としてP=Q/tである。
【0077】
エレクトロポレーションによって生じる熱によって、少なくとも一時的に細胞懸濁液の温度が上昇する。細胞が45℃を超えた温度に達するのは望ましくないため、細胞が許容できない温度に達するのを避けるために、細胞懸濁液およびエレクトロポレーションチャンバーを冷却する手段を提供することは都合が良い。このような高温への曝露の損傷効果は曝露時間の関数であり、エレクトロポレーション後できる限り速やに提供される冷却が望ましい。フローエレクトロポレーション処理ではエレクトロポレーションチャンバーが繰り返し高圧パルスを受け、その結果電気的に熱を帯びるため、エレクトロポレーションチャンバーおよびエレクトロポレーションされた細胞を冷却する手段が特に重要である。しかし、冷却はペルチェ素子、または空気もしくは流体の流れによって順番に冷却される金属部品と直接接触する細胞懸濁液をもたらすことによって通常提供されるものの、冷却過程にいくつかの重要な制限が存在する。多くの場合、エレクトロポレーション処理の設計者は、流路から冷却器までの熱の移動が、常に水、または同等に細胞懸濁液自身の熱伝導率によって制限されるということを意味する、金属の熱伝導率が水(または生理的緩衝液)の熱伝導率よりも著しく高いという事実を無視するかまたは見落とすかのいずれかである。このような状況においては、熱移動が最も効率的な方法で達成されるよう、流路の適切な形状を選択することが重要である。
【0078】
B.試料の流れの制御
本発明と関連するであろう様々な流体および/または気体の流れは、1つまたは複数のポンピング手段、バルブ、または流れを引き起こし、抑制し、もしくは全体的には遮断するかでなければ流れを制御するように設計された他の手段によって制御することができる。これは、細胞懸濁液もしくは他の流体をエレクトロポレーションチャンバーにポンプで注入する1つまたは複数のポンプ、細胞懸濁液もしくは他の流体をエレクトロポレーションチャンバーからポンプで排出する1つまたは複数のポンプ、またはこれらの組み合わせによって達成することができる。細胞懸濁液は、エレクトロポレーションチャンバー内部の空気圧または空気量を変化させるポンプまたは他の機械装置によってエレクトロポレーションに流入、およびエレクトロポレーションから流出されうる。ある態様において、重力は、1対の電極間で試料の単位を移動させるのに使用することができる。使用されうるバルブはピンチバルブ、バタフライバルブ、および/またはボールバルブを含み、完全または部分的に流路を開閉するために使用することができる。様々な態様において、ポンプは、装置内の流体の流れを制御かつ測定するために用いることができる。流体のポンピングは、多くの装置で一般的である。試験試料から様々な試薬まで及ぶ流体、および洗浄液は、用途に応じて移動、分配、または測定されなければならない。これらの装置は、より少ない量の流体を使用するよう設計されているので、極めて正確な定量ポンプに対する要求は、さらに大きくなっている。
【0079】
流体の移動は、時に、遠心力ポンプまたは容積移送式ポンプいずれか一方を使用することで達成される。遠心力ポンプは、羽根車のエネルギーを流体圧力に変換している回転している羽根車を経由して流体にエネルギーを伝達し、流体を動かす。これらの種類のポンプは、非常に圧迫および流体依存的であり、入口の変更をうけて極めて正確に流れを維持し、状況を解放することができないことが原因で測定には通常は利用されない。それらの利点は、低圧で高い流速を提供することにある。
【0080】
容積移送式ポンプは、固定した量の流体を捕捉すること、および歯車、ピストン、振動板、羽根、または他の装置を経由してこの流体を移動させることによって動作する。これらのポンプは通常、より低い速度で動作し、解放および吸込状態における変化の影響を受けにくく、ならびに速度および移送を調節することによって流れの制御を可能にする。これらの特徴は、容積移送式ポンプを流体を測定するのに当然の選択とすることであろう。定量ポンプは、そのため規定の容量範囲内で極めて正確な、かつ繰り返し可能な流れを提供するために設計された容積移送式装置として定義することができる。容積移送式定量ポンプは、普通は回転式または往復式として分類される。回転ポンプは、歯車、ローブ、羽根、およびローラー(蠕動)ポンプを含む。往復ポンプは、振動板、ピストン、およびベローズポンプを含む。
【0081】
C.他の構成部品
本明細書において記載されているようなエレクトロポレーション装置は、1つまたは複数の電子モジュールインターフェース、コンピュータ、モニター、および他の電子回路、および当業者が容易に供給するソフトフェアなどの様々な他の構成部品を含む。エレクトロポレーションシステムの一般的な構成、およびこのようなシステムの様々な他の構成部品の説明は、参照により本明細書に組み入れられる米国特許出願第200400292240号、第20030073238号、第20030059945号、および第20010001064号に見出すことが可能である。
【0082】
実施例
以下の例は、本発明の好ましい態様をこと証明するために含まれる。以下に続く例に開示されている技術が、本発明の実施に際してうまく機能するよう本発明者らによって発見された技術を説明し、したがってその実施のための好適な様式を構成するとみなすことができる事が、当業者に認識されるべきである。しかし、当業者は、本発明の開示の観点から、多くの変更が開示される具体的な態様において成され、かつ本発明の精神および範囲から逸脱することなしに同等のものまたは同様の結果が以前として得ることができると認識すべきである。
【0083】
実施例1 可変的なフローエレクトロポレーション
例示的なエレクトロポレーションの研究が、制御された、または可変的なフローエレクトロポレーションを使用して実施された。ジャーカット細胞は、モデル系として使用され、GFP発現ベクターが形質転換のためにモデル化合物として使用された。全細胞密度は、4×107 ジャーカット細胞/mLであり、プラスミド濃度は、eGFP(green fluorescent protein)を発現することができるpTM2 プラスミドのDNA(〜5 Kb)が、100 μg/mLだった。この処理は、試料でない流体または気体をチャンバーから除去することを含み;同時にジャーカット細胞およびGFPベクターを含む試料でチャンバーを充填した。単位試料は、試料が流入してから流出するまで移行する間エレクトロポレーションされた。処理試料は、試料でない流体または気体を同時に流入させてチャンバーから除去された。図11は、ヨウ化プロピジウム蛍光またはGFP蛍光で評価された、対照細胞、400 μLの静的な処理を使用して処理された細胞、および100 mLの可変的な流れによる処理を使用して処理された細胞を示す。図12は、対照細胞(図12A)、400 μLの静的な処理を使用して処理された細胞(図12B)、および100 mLの可変的な流れによる処理を使用して処理された細胞(図12C)におけるGFP蛍光でのFACS分析の結果を図解したヒストグラムを示す。図13は、14の連続的な試料画分を通じた単位試料ごとの可変的なフローエレクトロポレーションを使用した結果の整合性を示す。細胞は、GFPトランスフェクションおよび生存度で評価され、死細胞、トランスフェクションに対して陰性の生細胞、およびトランスフェクションに対して陽性の生細胞の順でソートされた。
【0084】
参考文献
以下の参考文献は、本明細書に示したものに対して例示的な手順、または他の詳細の補足を提供する限りにおいて、具体的には参照により本明細書に組み入れられる。
米国特許第4,752,586号
米国特許第5,612,207号
米国特許第6,074,605号
米国特許第6,090,617号
米国特許出願第20010001064号
米国特許出願第20030059945号
米国特許出願第20030073238号
米国特許出願第200400292240号
【図面の簡単な説明】
【0085】
以下の図面は、本明細書の一部を形成するものであり、本発明のある局面をさらに示すために含まれている。本発明は、本明細書に示される具体的な態様の詳細な説明と組み合わせてこれらの図面の1つまたは複数を参照することによって、より適切に理解することができる。
【0086】
【図1】エレクトロポレーション処理の例示的な循環の概略図である。
【図2】エレクトロポレーション処理の第1の例示的な構成の概略図である。
【図3】エレクトロポレーション処理の第2の例示的な構成の概略図である。
【図4】エレクトロポレーション処理の第3の例示的な構成の概略図である。
【図5】エレクトロポレーションチャンバーの1つの態様の図である。
【図6】エレクトロポレーションチャンバーの1つの態様の分解立体図である。
【図7】エレクトロポレーションチャンバーの他の態様の分解立体図である。
【図8】本発明のエレクトロポレーションチャンバーの別の開示された態様の透視図である。
【図9】本発明のエレクトロポレーションチャンバーの別の開示された態様の分解立体斜視図である。
【図10】エレクトロポレーション装置に組み込まれたエレクトロポレーションチャンバーの概略図である。
【図11】エレクトロポレーション後24時間目における、ジャーカット細胞のヨウ化プロピジウム(PI)およびGFPによる蛍光分析を図解する。
【図12】図12A〜12Cは、FACSによって測定された、エレクトロポレーション後24時間目のジャーカット細胞における、蛍光のヒストグラムを図解する。図12Aは、対照のトランスフェクションである。図12Bは、400 μL の静的なトランスフェクションである。図12Cは、100 mLの可変的なフロートランスフェクションである。
【図13】エレクトロポレーションの連続的な循環で収集された個々の画分の分析を図解する。
【図14】プランジャ型のポンピング手段を含む本発明の他の態様を図解する。
【図15】閉鎖的で使い捨て可能な1ストロークのポンプ装置を図解する。
【技術分野】
【0001】
I.発明の分野
本発明は、概して一時的な電界による細胞処理の分野、および特に細胞のエレクトロポレーションに関する。より具体的には、制御されたフローエレクトロポレーションのための方法、エレクトロポレーションチャンバー、および関連装置に関する。なお、本出願は、2004年3月12日付で出願された米国特許仮出願第60/570,317号の優先権を主張するものであり、その全体は参照により本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
II.関連技術の説明
エレクトロポレーションは、1970年代初頭以来、動物または植物の細胞中に分子を挿入するために使用されている。研究者たちは、短時間、高圧電場へ細胞を曝すことにより、タンパク質およびDNAなどの高分子を含む分子が細胞の中に入ることができる開口部が細胞膜において形成されることを明らかにしてきた。電気穿孔(electropore)と呼ばれるこれらの開口部は、高圧電場に起因する細胞膜における局所的な破壊によって生じる透過性の増大領域である。これらの孔は、一時的だが、プラスミドDNA分子などの高分子が細胞の中に入るには十分な時間存在する。細胞は、これらの孔ができるのを許容することができるが、それらを作り出して分子を導入する処理は、もし過度に実施されると細胞を殺す可能性がある。このエレクトロポレーションは、導電性細胞懸濁液への電流の(一時的ではあるが)通過を伴うため、電極はジュールの法則に従って発熱する。この熱は、細胞懸濁液の温度を上昇させることができ、もし過度になると、細胞温度を細胞が死ぬところまで引き上げる。エレクトロポレーションの最も早期の適用では、実質的に一様な電場がこれらの間に発生可能なように、互いに対して置かれた電極を含む特殊化したキュベットを使用して実施された。最も好都合なことには、これは、長方形のキュベットまたはチャンバーの対壁に取り付けられた2つの平板電極によって提供される。操作者が細胞中への導入を意図する1つの分子または複数の分子と混合された電気穿孔すべき細胞の懸濁液を、キュベットまたはチャンバーの中に配置し、次にそれを細胞懸濁液が電極と液体中で接触するよう電極間に設置する。細胞の中へエレクトロポレーションによる分子の導入を達成するため、高圧および短時間の電場パルスを、電極、およびそれによって電極間の細胞懸濁液に1回または複数回加えた。最も多く市販されているエレクトロポレーション用キュベットは、容量が制限されており、一度に少量の細胞懸濁液しか処理できない(通常1 ml未満)。キュベットの充填ごとにエレクトロポレーション処理されうる少容量の細胞を前提とすると、大量の細胞懸濁液のエレクトロポレーションは実用可能ではなかった。
【0003】
通常は、滅菌状態の維持が、大量の細胞でエレクトロポレーションのほとんどすべての使用において極めて重要である。滅菌状態の維持に関連して、キュベットで繰り返し充填すること、およびエレクトロポレーションされた細胞をプールすることは、特に実用可能ではない。このエレクトロポレーション法は、使いやすく、簡便で、かつ細胞の小規模なエレクトロポレーションを実施している多くの研究者たちのニーズを満たしているが、さらなる方法、特に滅菌環境を維持しつつ、大量の細胞のエレクトロポレーションを適宜促進する方法が必要とされていた。閉鎖した滅菌システムにおける大量の細胞のエレクトロポレーションによって、エレクトロポレーションを、細胞に基づいたヒトの治療のために使用することが可能になる。操作の間中、閉鎖した滅菌液の流路を作り出し、維持する方法および器具が、したがって最も望ましい。
【0004】
1980年代において、大量の細胞を処理するフローエレクトロポレーションについての研究が何人かの研究者たちによって開始された(それぞれ、その全体が参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第4,752,586号(特許文献1)、第5,612,207号(特許文献2)、第6,074,605号(特許文献3)、第6,090,617号(特許文献4))。エレクトロポレーション用の流通装置は、一般的に、その間を、エレクトロポレーション処理すべき細胞懸濁液が、細胞の全部の量がエレクトロポレーション処理されるまで連続的かつ安定して流れる、平行電極で構成されていた。細胞懸濁液が電極間を安定して流れたため、高電圧パルスが細胞に加えられた。電極へ高電圧パルスを繰り返し加えることにより、熱の発生が生じ、この熱を、電極および細胞懸濁液が過度に高い温度に達するのを防止する冷却手段によって除去する必要があることが判明した。フローエレクトロポレーション用の器具は、電極、および細胞懸濁液をポンピングさせることが可能なポートを有するエレクトロポレーションチャンバーを含む。この電極は、電極に高電圧パルスを供給することが可能な電子回路と電気的に接続されている。高電圧パルスは、プログラム可能なコンピュータによって制御することができる。より大量の細胞をエレクトロポレーション処理できるフローエレクトロポレーションシステムが開発され、所望の分子が導入された生細胞を生成することが可能になった。
【0005】
エレクトロポレーションの条件は、細胞型によって異なり、細胞内への導入を意図する分子の種類によって異なる可能性がある。任意の特定の細胞型に関して、最適な方法は、最適電圧での最適パルス数、および最適な間隔をあけた継続時間から成って存在する。細胞に最適数の電気パルスを加えるため、当技術分野において記載されているフローエレクトロポレーション用の器具を使用する場合、エレクトロポレーションチャンバーを通って電極の間を流れる細胞懸濁液の流速、およびパルスの割合は、多量の細胞懸濁液に最適パルス数を供給するよう選択される。例えば、もし細胞当たりの最適パルス数が、特定の細胞に対して単位時間当たり2であると分かっており、エレクトロポレーションチャンバーを通過した量が1ミリリットルであるなら、流速は単位時間当たり1ミリリットルとなり、2回のパルスが単位時間当たりに加えられる。このように、平均して、それぞれの細胞は、この例において2回のパルスを受ける。しかし、エレクトロポレーションチャンバーを通過した細胞懸濁液の流体力学的流れは、すべての細胞が同じ速度でチャンバーを通ってプレート間を移動するという結果をもたらすわけではない。流速は、チャンバー壁近くよりチャンバー壁から離れたほうが速いため、壁の近くを流れる細胞が、電極間を通過するのは単位時間より長く、その結果2つより多くのパルス受ける一方で、液体の流れの中心に向かって電極間を流れる細胞は、単位時間よりも短い時間で電極間を通過し、2つより少ないパルスを受ける可能性がある。この例において、2つのパルスがいずれの細胞にとって最適であるため、明らかにすべての細胞が最適な回数のパルスを受けるわけではなく、細胞懸濁液の全体的なエレクトロポレーションは決して最適とはいえない。
【0006】
上記のように、エレクトロポレーションは、本質的にジュールの法則にしたがって細胞懸濁液において熱産生をもたらす。流れが安定し、かつ連続的なフローエレクトロポレーション法では、加熱が実質的に続くため、熱をエレクトロポレーションチャンバーから取り除く手段は、チャンバーの温度が許容できない温度まで上昇するのを避けるため、熱産生の平衡を保つことができるようにしなければならない。処理が連続して行われるという性質上、エレクトロポレーションを行なう合間に冷却を行う時間を置くことができない。
【0007】
上記したように、エレクトロポレーションに必要な最適条件は、エレクトロポレーション処理される特定の細胞型、およびエレクトロポレーションによる細胞内への導入が意図される分子の種類により異なる可能性が高い。静的キュベットを使用したエレクトロポレーションの条件を体系的に変化させることによって、この問題を実験的に扱い、次にこれらの実験からフローエレクトロポレーションシステムまで決定された最適条件を適用することが可能である。このやり方には、2つの欠点がある。第1に、多数の試料の静的キュベットによるエレクトロポレーションは時間がかかるため、それぞれの静的なエレクトロポレーションで使用される細胞は、実験を通して変化すると考えられる。第2に、このやり方を用いると、多数の試料を静的キュベットでエレクトロポレーションするのに最適な条件は、フローエレクトロポレーションと同じであると仮定されるが、それは明らかではない。治療または他の用途のための細胞の大規模なエレクトロポレーションに後で使用されるものと同一の器具も使用しながら、単一の細胞試料をすべての実験的エレクトロポレーション条件に使用して、迅速にエレクトロポレーションの条件を最適化できることが望ましいと考えられる。
【0008】
ある種の分子、最も顕著にはmRNAは、エレクトロポレーションによって分子の導入が意図される細胞の存在下では不安定である可能性がある。mRNAの場合、これは、細胞培地中、または細胞の表面上に存在するリボヌクレアーゼの結果である可能性が高い。このような場合、分子が、細胞中に導入される前のこの不安定な状態で存在する時間を最小限に抑えることが望ましい。静的キュベットを基にしたエレクトロポレーションでは、分子(例えば、mRNA)は、細胞と混合され、その後手動でキュベットに充填されて、エレクトロポレーション用器具に据え付けられた後エレクトロポレーションが実施される。これらの手動の工程を実施するのに要する時間の間、細胞に加えられる分子のいくらかは破壊される可能性がある。導入される分子を、エレクトロポレーションの直前に、かつ閉鎖的な滅菌環境において細胞と自動的に混合できる方法が望ましい。
【0009】
当技術分野において記載されている連続的なフローシステムにおいて、電極間での細胞の流動の開始により電極へのパルスの適用を調整することは別として、パルスと細胞の流動との間に「処理中」の調整はない。
【0010】
連続的なフローエレクトロポレーションの利点、特に、いかなる細胞も最適パルス数を受けることを保証しつつ、滅菌した閉鎖系において大量の細胞をエレクトロポレーション処理する能力を組み合わせる方法および器具が望ましい。
【0011】
【特許文献1】米国特許第4,752,586号
【特許文献2】米国特許第5,612,207号
【特許文献3】米国特許第6,074,605号
【特許文献4】米国特許第6,090,617号
【発明の開示】
【0012】
発明の概要
本発明の態様は、エレクトロポレーション法、ならびに大量のエレクトロポレーションが可能な関連したエレクトロポレーション用装置および器具を含む。ある局面において、本発明は、チャンバーの温度が許容できない温度まで上昇するのを避けるため、熱産生の平衡を保つことが可能である。さらに、電気パルスは、個々の単位体積の処理、および/または対象とする試料のすべて、もしくは一部の処理のために最適化することができる。本明細書において使用される場合、「単位体積」または「単位」は、エレクトロポレーションチャンバーを満たす、または部分的に満たす試料または流体の塊である。単位とは、通常、特定の電気パルスまたは一連のパルスに曝される試料の部分である。それぞれの単位は、試料の画分または部分として見なすことができる。この単位は、操作者によって決めることができ、エレクトロポレーションチャンバーを充填および空にする事によって、またはチャンバーを通る流速を変えることによって制御される。それぞれの単位は、2つまたはそれ以上の試料の単位の間に試料でない気体または液体を導入することによって生成される異なった個々の試料画分であることも可能である。様々な態様において、試料の処理は、閉鎖系、すなわち装置または器具の容器の内側、流路、およびエレクトロポレーション用装置のチャンバーの外部となる環境に対し限定的に曝露される系で実施される。このような閉鎖系は、試料の無菌性および完全性を維持するのに使用され得る。
【0013】
本発明の態様は、エレクトロポレーションチャンバーを通じた試料の流れを制御することを含むフロー-エレクトロポレーション法を含む。通常、試料は、エレクトロポレーションチャンバーを繰り返し周期的に充填および空にする事によって生成される単位で処理される。エレクトロポレーションチャンバーを通じて循環するそれぞれの試料単位は、同じまたは異なる電気パルスまたは条件に曝すことが可能である。ある局面において、試料の単位は、試料の未処理量と処理量との間の境界を提供することによって生成される。この境界は、試料の2つまたはそれ以上の単位または画分の間で、チャンバー内に試料でない気体または流体を循環させることによって提供してもよい。試料でない気体または液体は、通常は未処理試料の塊毎にチャンバーから移動させる。試料でない流体または気体は、エレクトロポレーションチャンバーからの処理試料の排出、試料のエレクトロポレーションチャンバー中への活発なポンピング、試料でない流体もしくは気体をエレクトロポレーションチャンバー中に活発にポンピングさせる、またはこれらの様々な組合せによってチャンバーに流入させることができる。
【0014】
「ポンピング」とは、原動力を流体または気体に与える圧力勾配を提供することを意味する。このような原動力は、例えば、重力、またはポンピングさせている流体の表面張力と関連した力によって提供することができる。特に細胞懸濁液を移動させるために、気体または液体に原動力を与える手段は、ポンピング手段として見なされる。ポンピング手段は、流路の中で流体または気体の流れを制御するためシステムにおいて圧力差を引き起こす様々な機構を含む。様々なポンピング手段が公知であり、回転式、往復式、遠心式、空気揚水式、またはジェット式のポンプを非制限的に含む。ポンピング手段は、流体または気体の制御された流れを生成するため、ピストン、プランジャ、蠕動、振動板、容量可変の容器、圧縮ガス、プロペラ、タービン、ネジ、または歯車式の機構を含み得る。
【0015】
特定の局面において、循環は、エレクトロポレーションチャンバーにおいて、1、2、3、4、またはそれ以上のポートを通じた試料の流れを交互に変えることによって生み出される。「ポート」とは、流体が、エレクトロポレーションチャンバーに流入、または流出することが可能な任意の開口部を意味する。エレクトロポレーションチャンバーは、流体の流れを方向づけるマニホールドとして使用してもよいことが企図されるが、他の考えられる態様では、エレクトロポレーションチャンバーの部分ではないマニホールドを使用してもしなくてもよい事が企図される。試料、および試料でない流体または気体の循環は、通常、1、2、3、4、5、6、もしくはそれ以上のポンピング手段、バルブ、または他の流体を制御する機構の様々な組合せによって制御される。一例を挙げれば、境界は、チャンバーを通じて試料を滴下することによって提供することができ、そこでは少量の試料が、2つの電極間を通過する際に1つまたは複数の電気パルスに曝される。
【0016】
本発明のさらなる態様は、少なくとも2つの電極を含むチャンバー;ならびに、(i)第1のポートはチャンバーへの試料流入用であり、(ii)第2のポートは、チャンバーからの処理試料流出用であり、および(iii)第3のポートは、試料でない流体または気体のチャンバーへの流入用またはチャンバーからの流出用であって、試料がチャンバーに流入する際、試料でない流体または気体がチャンバーから流出し、処理試料がチャンバーから流出する際、試料でない流体または気体がチャンバーに流入する、少なくとも3つのポートを含むフローエレクトロポレーションチャンバーを含む。第1のポートは、1つまたは複数の試料用容器と流体連絡することが可能である。第2のポートは、1つまたは複数の処理試料用容器と流体連絡することが可能である。第3のポートは、貯蔵用容器と流体連絡することが可能であって、貯蔵用容器は、チャンバーが試料の塊で満たされている、または部分的に満たされているとき、試料でない流体または気体の塊のすべてまたは一部を含む。ある態様において、チャンバーは、少なくとも4つのポートを有することが可能である。第4のポートは、試料用容器、処理試料用容器、試料でない気体もしくは流体用の貯蔵器、試薬用容器(例えば、洗浄バッファー、清浄液、冷却液など)、またはこれらの様々な組合せと流体連絡することが可能である。
【0017】
さらなる態様において、フローエレクトロポレーション装置は、第1の流路を形成する、第1のチャンバーポートを通じてエレクトロポレーションチャンバーと流体連絡する少なくとも1、2、3、4、またはそれ以上の試料用容器;第2の流路を形成する、第2のチャンバーポートを通じてエレクトロポレーションチャンバーと流体連絡する少なくとも1、2、3、4、またはそれ以上の処理試料用容器;および第3の流路を形成する、第3のチャンバーポートを通じてエレクトロポレーションチャンバーと流体連絡する少なくとも1つの試料でない流体または気体の貯蔵器を含むことが可能である。試料でない気体または流体用の貯蔵器は、試料でない気体または流体用容器、試料用容器の一部、処理試料用容器の一部、エレクトロポレーションチャンバーの一部、またはこれらの様々な組合せであることが可能である。第2の流路は、第2の流路における処理試料用容器に関してエレクトロポレーションチャンバーの位置に対して末端側にある、第1の流路の1つまたは複数の試料用容器、および第3の流路の試料でないもの用の貯蔵器と流体連絡することが可能である。ある局面において、装置は、さらに、少なくとも1、2、3、4、またはそれ以上の流路と動作可能なように連結している、少なくとも1、2、3、4、またはそれ以上のポンプを含むことが可能である。試料用容器、処理試料用容器、試料でない流体または気体の貯蔵器、またはこれらの様々な組合せは、折り畳み可能な、拡張可能な、または固定した容量の容器であることが可能である。本発明のさらなる局面において、装置における流体の流れは、装置の1、2、3、4、5、6、もしくはそれ以上の流路の開閉によって方向づけることができる。様々な流路は、二者択一的に開閉することができるが、好ましくは試料用容器からエレクトロポレーションチャンバーまでの流路、およびエレクトロポレーションチャンバーから処理試料用容器までの流路が、二者択一的に開閉され、エレクトロポレーションの循環の間どちらも同時には開かない。流体の流れは、1、2、3、4、5、6、もしくはそれ以上のバルブ、1、2、3、4、5、6、もしくはそれ以上のポンピング手段、またはこれらの様々な組合せによって変調することができる。好適な態様において、ポンプは蠕動ポンプであり、より好ましくは、蠕動ポンプは、十分に圧縮された蠕動ポンプである。
【0018】
またさらなる態様において、フローエレクトロポレーション装置は、第1のチャンバーポートを通じてエレクトロポレーションチャンバーと流体連絡する少なくとも1、2、3、4、またはそれ以上の試料用容器であって、このエレクトロポレーションチャンバーは、第1の流路を形成する、第2のチャンバーポートを通じて試料用容器と流体連絡する、試料用容器;第3のチャンバーポートを通じてエレクトロポレーションチャンバーと流体連絡する少なくとも1、2、3、4、またはそれ以上の処理試料用容器であって、このエレクトロポレーションチャンバーは、第2の流路を形成する、第4のチャンバーポートを通じて処理試料用容器と流体連絡する処理試料用容器を含むことが可能である。1、2、3、4、またはそれ以上の処理試料用容器は、試料でない気体または流体用の貯蔵器として使用することもできる。ある局面において、試料でない気体または流体用の貯蔵器を、試料用容器、処理試料用容器、または試料用容器および処理試料用容器の両方と組み合わせる。装置は、少なくとも1、2、3、4、5、6、またはそれ以上の流路と動作可能なように連結している、少なくとも1、2、3、4、またはそれ以上のポンピング手段を含むことも可能である。試料用容器、処理試料用容器、または両方の容器は、折り畳み可能な、拡張可能な、または固定した容量の容器であることが可能である。様々な局面において、装置における流体の流れは、装置の1つまたは複数の流路の開閉によって方向づけられる。ある態様において、第1および第2の流路は、二者択一的に開閉する。流体の流れは、通常は1つまたは複数のポンピング手段、好ましくはポンプ、より好ましくは蠕動ポンプ、およびさらにより好ましくは十分に圧縮された蠕動ポンプである蠕動ポンプによって変調または制御される。流体の流れは、バルブ、ポンピング手段、またはこれらの組合せからなる様々な組合せによって変調または制御することもできる。
【0019】
本明細書において記載されている任意の方法または配合は、本明細書に記載されている任意の他の方法または配合について実施可能であることが企図される。
【0020】
特許請求の範囲、および/または明細書において「含む」という用語と共に使用する場合、「1つの(a)」または「1つの(an)」という単語を使用は、「1つ(one)」を意味し得るが、「1つまたは複数」、「少なくとも1つ」、および「1つまたは1つ以上」の意味とも矛盾しない。
【0021】
本開示は、二者択一のみ、および「および/または」を意味する定義に対応するが、特許請求の範囲における「または」という用語の使用は、二者択一のみを意味するか、または選択肢が互いを排除すると明示されていない限り、「および/または」を意味するものとして使用される。
【0022】
本発明の他の目的、特徴、および利点は、以下の詳細な説明から明らかになると考えられる。しかし、本発明の精神および範囲内での様々な変更および修正が、この詳細な説明から当業者に明らかになるため、詳細な説明および具体例は、本発明の具体的な態様を示しているが、それらは例示のためだけに示されていると理解されるべきである。
【0023】
例示的態様の説明
本発明の態様は、エレクトロポレーションのための様々な新しい器具および方法を含む。特に、ある態様は、分子、化合物、または組成物を、バクテリア、菌類、植物細胞、動物細胞、培養細胞、初代細胞、赤血球、白血球、血小板、幹細胞、遺伝子組み換え幹細胞、または幹細胞の拡大させた集団を含むがこれらに限定されない細胞または細胞の断片に導入するフローエレクトロポレーション用の装置および方法を提供する。ある局面において、一時的な高圧電場は、細胞の代謝を妨害し、高すぎる電圧、または長すぎる時間で加えられると一部の細胞を殺すことが可能である。異なった細胞型は、一時的な電場による一時的な電場処理で区別されて影響されうるため、エレクトロポレーションによって分子を細胞に取り込んだ、または導入したものなど、細胞の集団における異なった細胞は、区別されて殺され、それによってその集団から取り除くことができる。他の局面において、分子は導入される必要はないが電場への曝露によって、試料は処理される必要がある。さらに他の態様において、目的は外来の分子を細胞内に導入することではなく、むしろ処理された細胞、すなわち電場への曝露の前、間、または後にいくつかの他の薬理学的な作用物質または条件に曝された細胞の変容 - 変容の極端な例は殺すことである - である。1つの態様において、本発明の装置は、中で細胞がエレクトロポレーション処理されるエレクトロポレーションチャンバーと、器具中における細胞懸濁液の調節された、または可変的な流動とを組み合わせ、これにより電気パルスで調整されるエレクトロポレーションチャンバーを繰り返し充填するおよび空にする事を可能とする。好ましくは、チャンバーならびにその関連した流路および容器は、閉鎖的な滅菌環境を形成することができる。本発明によってもたらされる他の利点は、細胞のより均一なパルスを提供する器具の能力を含む。新規の制御されたフローエレクトロポレーションチャンバーによって、大量の細胞懸濁液が単位体積でエレクトロポレーション処理することができる。試料でない気体もしくは流体によって物理的に分離することができ、またはバルブの開閉などの他の手段によって互いから分離することができる、エレクトロポレーションチャンバーを流れた試料の量を、個々の画分または単位体積によって定義する。試料の塊の間の本分離は、連続した塊が同じエレクトロポレーションの条件を経験していない、または連続した塊がエレクトロポレーションによる取り込みのための細胞および分子の異なる組合せを含むことが可能な場合に、各分離した塊の分離した収集を促進する。本発明のエレクトロポレーションチャンバーを含む方法および器具は、薬理学的な作用物質または条件に曝された、曝されている、または曝される予定の細胞を電場へ十分に曝露するとき、様々な細胞集団への様々な物質の封入に使用され得る。電場への曝露によって、それ自体で、およびそれだけで細胞の処理を行うことができる。
【0024】
本発明のある態様は、チャンバーを通る、流体または気体の制御された流動が存在する処理法を含む。したがって、この処理法は、連続流と呼ぶことができる。しかし、ある態様において、試料または処理試料の流動は、連続性が全体としてチャンバーを通った流体または気体の流動を表すように、処理している間断続的に遅らせる、または止めることができるが、必ずしも任意の特定の試料、流体、または気体でない。エレクトロポレーション処理は、通常、試料が定義された個々の画分または単位体積において処理される、チャンバーを通った試料の流動を含む。それぞれの個々の画分は、細胞懸濁液の異なる部分のエレクトロポレーション処理の間にエレクトロポレーションチャンバー内に流入した試料でない流体または気体の量によって境界を決めることができる。
【0025】
ある態様において、試料は、複数の生成物画分に処理することが可能である。その上、それぞれの処理試料の画分は、個別に、または特定の集団に貯蔵、収集、および/または貯蔵することができる。生成物、または処理試料の画分は、一緒に、または一つずつ処理したいくつかの試料の組合せであってもよい。本技術の使用者がチャンバーを1つの試料で部分的に満たし、次に追加の溶液を加え、エレクトロポレーションを実行し、および結果として生じる生成物を収集することを妨げるものは、本発明には存在しない。
【0026】
本発明のある局面において、個々の試料の画分は、異なったパルスまたは試薬に曝すことができる。例えば、最初に試料のすべてもしくは一部、または類似の組成物の試料を、エレクトロポレーションの条件を直ちに最適化する一連の条件を使用して処理することができる。あるいは、使用者は、様々なエレクトロポレーションの条件に曝された細胞を含む、細胞集団または細胞の個々の画分を生成することを望むことができる。
【0027】
ある態様において、試料成分の「オンライン混合(online mixing)」が企図された。例えば、ある試薬は、エレクトロポレーションされた混合物における細胞、または他のエレクトロポレーションされる標的もしくは試薬に対し不安定または有害のいずれかである可能性がある。したがって、電気パルスが加えられる直前、すなわちさらなる混合をしない、またはエレクトロポレーションの前にエレクトロポレーションされる試料の1つまたは複数の成分を混合する間のほんの短時間にこのような成分を共に持ってくるのが望ましい。
【0028】
本発明のさらなる態様は、細胞が、パルス間または一連のパルスの間よりも高圧のパルスを受けるとき、チャンバーへの流入、およびチャンバーからの流出が実質的により低率であるエレクトロポレーションチャンバーに流入、およびエレクトロポレーションチャンバーから流出する細胞の制御された流動を可能にする新規の制御されたフローエレクトロポレーションチャンバーを含む。細胞の流動は、制御された流動の利点を得るために必ずしもゼロまで減らす必要はないが、エレクトロポレーション処理が求められる間は流れを減らすことは望ましい。本発明の態様は、さらに、電極に高圧パルスを提供する電子部品、および電極間に細胞懸濁液を流す手段の間の時間整合を提供する。細胞懸濁液を流す(流体または気体に原動力を提供する)手段は、ポンピング手段と呼ばれる。ポンピング手段は、流路の中で流体または気体の流れを制御するため、系において圧力差を引き起こす様々な機構を含む。様々なポンピング手段が公知であり、重力式、回転式、往復式、遠心式、空気揚水式、またはジェット式のポンプを含むがこれらに限定されない。これらはまた、流体または気体の制御された流れを発生させるため、ピストン、プランジャ、蠕動、振動板、容量可変の容器、圧縮ガス、プロペラ、タービン、ネジ、または歯車式の機構を含むことも可能である。
【0029】
本発明は、さらに、細胞懸濁液の塊のクトロポレーション処理の間にエレクトロポレーションチャンバーを冷却する便利な手段を提供することが可能である。細胞懸濁液でエレクトロポレーションチャンバーを充填してからエレクトロポレーションチャンバーを空にする間の時間は、エレクトロポレーションチャンバーの温度がエレクトロポレーション用細胞懸濁液導入前に一定の温度を超えない事を確実にするように調節してもよい。
【0030】
基本設計に対する追加の修正も、本明細書に記載されている主要な法則にしたがって含まれ得る。様々な態様において、試料および生成物のラインまたは流路は、チャンバーの空洞においてのみ接触し、すなわちチャンバーは、試料が流れるためのマニホールドとしての機能を果たし、チャンバーは、新しい試料の画分が到達する前に完全にまたは部分的に空になることが可能である。本明細書において使用される場合、「流路」とは、液体または気体などの流体が通過できる任意の導管、チューブ、パイプ、および/または経路の手段によって流体連絡するこれらの構成部品または部分の集合を意味する。本明細書において使用される場合、「流体連絡」とは、流体が構成要素間および流路の中を通過するのを可能にする流路の2つまたはそれ以上の構成要素間の、直接的または間接的のいずれか一方での機能的結合を意味する。例えば、試料用容器は、もし流体が試料用容器からチャンバーへ通過することができるなら、チャンバーと「流体連絡」する。
【0031】
流体連絡することが可能な流路の例は、経路を通過する流体または気体の流れを制御する装置と管類によって結合した容器およびチャンバーを含む経路であって、このような装置は、十分に圧縮された蠕動ポンプ、または容器とチャンバーとの間に置かれたバルブを含むことができる。制御装置は、容器とチャンバーとの間の任意の位置で動作可能なように連結することができる。流れを制御する装置の文脈で使用される場合、「動作可能なように連結される」という用語は、流体または気体の流れが、ある様式、例えば流動を許可または阻害する様式で制御される、制御装置と流体または気体との間の、間接的または直接的な連絡を意味する。制御装置は、例えば、フレキシブルチューブ上のピンチバルブ(例えば図15参照)のように、流体または気体と直接接触している必要はない。
【0032】
ある態様において、装置の1つまたは複数の流路は、無菌の経路であることが可能である。すなわち、試料供給源からの試料の流れ、およびチャンバーから処理試料用容器までの処理試料の流れが、閉鎖系であることが可能である。閉鎖系は、試料を処理している間無菌のままであるよう適切な無菌状態下で準備することができる。その上、容器、チューブ、エレクトロポレーションチャンバーなどは、使い捨てにすることができる。本明細書において使用される場合、「使い捨て」とは、最もとまではいかないが多くの使用者が、構成部品を再利用せず、1回の使用後に構成部品を廃棄するのが経済的に効率的であると考えるよう、設計および製造上の利点から十分に安価にすることができる構成部品を意味する。
【0033】
様々な他の処理をする構成部品は、本発明の装置および方法に含むことができる。例えば、溶液の供給源、例えばフラッシュバッファー(flush buffer)の供給源は、循環の間、またはある回数の循環の後、チャンバーを一気に流しだし、清掃し、または冷却するために加えることができる。フラッシングバッファー(flushing buffer)は、周期的に電極およびチャンバーを冷却するために使用することもできる。
【0034】
I.フローエレクトロポレーション法の説明
図1は、本明細書において記載されている制御された、または断続的なフローエレクトロポレーション法の例示的なエレクトロポレーションの循環を表した概略図である。パネル2が、チャンバーをエレクトロポレーション処理する試料で同時に満たすことを図解するとともに、パネル1は、チャンバーから試料でない流体または気体を除去することを図解する。パネル3および4は、試料が流入してから流出するまで移行する間の試料のエレクトロポレーションを図解する。パネル5および6は、処理試料がチャンバーから除去されるよう、試料でない流体または気体が同時に流入することを図解する。本発明の局面は、1、2、3、4、5、6、またはそれ以上のエレクトロポレーションチャンバーポートを通じて生じる流入、流出、または流入および流出両方を含む。流入および流出は、同じまたは異なるポートを通してであることができる。チャンバー自体は、マニホールドとして使用することが可能であり、または分かれたマニホールドは、試料供給源とチャンバーとの間、収集地点とチャンバーとの間、または試料供給源および収集地点両方の間のチャンバーの外側に置くことができる。マニホールドは、本発明のすべての態様に必須ではない。
【0035】
チャンバーを試料で充填する過程おいて、流体は、しぶきをあげ、チャンバーの空気中に浸透する可能性がある。このようなしぶきは、細胞に流体力学的ストレスを引き起こし、または細胞懸濁液において泡立ちまたは気泡の生成をもたらす可能性がある。流体力学的ストレス、および泡立ちまたは気泡のどちらも、生細胞を扱うときは避けたほうがよいことは一般的に認められている。液体のしぶき、および流体力学的ストレス、および気泡の形成は、エレクトロポレーション処理の高い処理能力が望ましい場合において問題になる可能性がある。使用者がチャンバーを細胞懸濁液で満たし、かつ空にする時間を最小限にすることを意図する場合、流速は、液体のしぶきおよびその否定的な結果に至るものが選択され得、これはより速い充填速度で得られる任意の利点よりも重大である。以下で示されるように、ある条件下で、液体は、入口ポートからチャンバー内に噴出し、その存在が不要である系の他の区画内に浸透することができる。この問題を避ける1つの方法は、流体力学の十分に開発された技術を利用することによって、または例えばチャンバーの表面を透明な材料で作ることによって流入する細胞懸濁液の流れが観察できるテストチャンバーを構築することによって、直接的な方法で達成することができる。このようなテストチャンバーで、しぶきもしくは気泡の生成、または泡を観察することが可能であり、しぶき、または気泡、または泡立ちをもたらす流れは避けることができる。
【0036】
可能性のあるしぶき問題の1つの処理において、直立位置に置かれた円形のパイプの開口部をそのままにしている少容量(分かれた滴)の液体が検討される。パイプ内にある間、液体は、ポンプまたはある他の手段によって生み出されているパイプの端にわたった圧力差によって進む。パイプから出たとき、液体は、慣性により流れの方向に動き続ける。もし流れが上方を向いており、自由落下に作用する力がないと仮定するなら、本発明者らは、滴の運動エネルギーおよび位置エネルギーの合計が不変であると述べているエネルギー保存則を用いて、空中をどれほど移動するのか推定することが可能である(方程式1):
式中、
mは、滴の質量であり、
V(t)は、その速度であり、
gは、重力加速度であり、および
h(t)は、パイプ開口部より上の滴の高度である。
【0037】
実質的にパイプから離れた瞬間の滴に関する全力学的エネルギーは運動エネルギーであるため、定数は、1/2 mV02と等しく、V0は流体の流れの平均線速度であり、導管断面に対する体積流量比と等しい。滴がその最高点に達するときその速度はゼロとなり、その高度はその関係から求めることができる(方程式2)。これらの力を考慮に入れることができ、システムの設計は、流路の寸法、エレクトロポレーションチャンバーの配置、およびシステム内の流体の流れを制御するのに使用される圧力を変更することによって最適化できる。
【0038】
例えば、細胞懸濁液を、5 mL/sで、1/8インチ内径(ID)のパイプを通してポンピングさせる。その平均線速度は、その後最大63 cm/sに達し、層流の法則にしたがって、パイプ中心における最大線速度は、V0値126 cm/sを加えると平均の2倍になる。g値が980 cm/s2で、h最大 = 8 cmになる。この距離は、処理されたチャンバーの特徴的な寸法と同程度であり、したがって、しぶきは表示された条件で起こりうる可能性がある。
【0039】
可能性のあるしぶき問題の解決法は、以下の例に限定されるものではないが含む。流速の2倍の増加によって、h最大が4倍増加する:上記例の噴流の高さは、流速10 mL/sで30 cmより高くなり、細胞懸濁液が、チャンバーに噴流を通してもたらされ、静かな流れによるものではないことを意味している。他方では、管類断面における2倍増によって、噴流の高さが4倍減少するため、必要流速を考えると、しぶきおよび懸濁液における細胞の撹乱を最小化するため、手頃でかつ広い供給管類および入口ポートの直径を選択すべきである。この問題の理論的な取り扱いを考えると、より実験に基づいた解決法は、流速、ポート寸法、流路などの様々な組合せによって特定することができる。
【0040】
本発明の方法は、様々な装置構成を使用して実施することが可能である。最初の例において、装置構成は、図5もしくは図8のエレクトロポレーションチャンバー、またはこれらの変形を含むことが可能である。図2に関して、試料供給源30は、第1の流路31によってチャンバー11と流体連絡するが、チャンバーポート17を通じてチャンバーと連結する。試料供給源30からチャンバー11への流れは、バルブ32によって例示されているように制御する。チャンバー11は、第2のポート18を経て第2の流路37によって処理試料の貯蔵所36と連結する。流路37の中の流れは、第2のバルブ38によって制御することが可能である。試料でない流体または気体の供給源35は、第3の流路33によってチャンバー11と流体連絡する。流路33は、試料でない気体または流体の貯蔵所35とチャンバー11との間で流体連絡を提供する。第3の流路33は、ポンプ34、またはこれに動作可能なように連結した流路の中で流体を移動させる原動力のための他の手段を含む。第3の流路33は、第3のポート19によってチャンバー11と連結する。
【0041】
図2に示された系の例示的な初期構成は、チャンバー11が試料でない流体または気体を含み、試料供給源30が標的細胞、標的物質、試薬、またはこれらの様々な組合せの溶液を含むことができる。バルブ32を開き、かつバルブ38を閉じると、ポンプ34は、試料でない流体または気体をチャンバー11から排出することができる。または、試料は、試料でない流体または気体を移動または圧縮することでチャンバー内にポンピングすることができる。試料でない気体がチャンバー11を出る、またはチャンバーにおいて圧縮されるため、試料供給源30からの試料は、チャンバー11に流入する。チャンバー11が十分に試料で充填された時点で、電気パルスが、電極の使用によってチャンバーを通じて送られる。いったん電流に曝されると、試料は処理試料と見なされる。バルブ32を閉じ、かつバルブ38を開けると、試料でない流体または気体は、チャンバー11内にポンプで送り込まれ、または移動する。試料でない流体または気体は、活発にチャンバー内にポンプで送り込み、または処理試料の排出によってチャンバー内に吸い込むことができる。処理試料は、収集袋36によって例示された貯蔵所または収集地点に流路37を通して流れる。この処理は、電気パルス特性の修正を加えて、または修正なしに、出発試料の量のすべてまたは一部が処理されるまで、何回か通して循環させることが可能である。
【0042】
図3に関して、本発明のさらなる態様は、流路31によってチャンバー11と流体連絡する試料供給源30を含むことができるが、チャンバーポート17を通じてチャンバー11と連結する。試料供給源30からチャンバー11への流れは、バルブ32によって例示されているように制御される。試料でない流体または気体の供給源は、試料でない流体または気体/処理試料の貯蔵所39を形成するため、処理試料の貯蔵所または収集地点と組み合わされる。チャンバー11は、第2のポート18を経て第2の流路37によって試料でない流体または気体/処理試料の貯蔵所39と連結する。第2のバルブ38は、流路37の中で流れを制御することができる。試料でない流体または気体/処理試料の貯蔵所39は、第3の流路41によってチャンバー11と流体連絡する。流路41は、試料でない流体または気体/処理試料の貯蔵所39と、および第4の流路42を形成するポンプ34との間で分岐する。第3の流路41は、ポンプ34または流路の中で流体を移動させる他の手段と動作可能なように連結する。第3の流路41は、第3のポート19によってチャンバー11と連結する。
【0043】
図3に示された系の例示的な初期構成は、チャンバー11および試料でない流体または気体/処理試料の貯蔵所39が試料でない流体または気体を含み、試料供給源30が標的細胞、標的物質、試薬、またはこれらの様々な組合せの溶液を含むことができる。バルブ32を開き、かつバルブ38を閉じると、ポンプ34は、流路42を経てチャンバー11から試料でない流体または気体を移動させ、試料供給源30内に移動させる。試料でない気体がチャンバー11から出るため、試料供給源30からの試料は、チャンバー11に流入する。チャンバーが十分に試料で充填された時点で、電気パルスが、電極の使用によってチャンバーを通じて送られる。いったん電流に曝されると、試料は、処理試料と見なされる。バルブ32を閉じ、かつバルブ38を開けると、試料でない流体または気体は、試料でない流体または気体/処理試料の貯蔵所39から流路41を経てチャンバー11内にポンプで送り込まれる。処理試料は、試料でない流体または気体/処理試料の貯蔵所39に流路37を通して流れる。この処理は、出発試料の量のすべてまたは一部が処理されるまで、何回か通して循環させることが可能である。
【0044】
まださらなる態様において、エレクトロポレーションチャンバー10は、図4に描かれている構成に含まれることができる。図4に関して、試料供給源30は、流路31によってチャンバー11と流体連絡しているが、チャンバーポート17を通じてチャンバーと連結する。試料供給源30からチャンバー11への流れは、バルブ32は任意であるが、バルブ32またはポンプ43によって制御することができる。チャンバー11は、第2のポート18を経て第2の流路37によって試料でない流体または気体/処理試料の貯蔵所39と連結する。流路37の中の流れは、第2のバルブ38(任意)によって、または第1のポンプ34によって制御することが可能である。試料でない流体または気体の供給源は、試料でない流体または気体/処理試料の貯蔵所39を形成するため、処理試料の貯蔵所または収集地点と組み合わされる。試料でない流体または気体/処理試料の貯蔵所39は、第3の流路44によってチャンバー11と流体連絡する。第3の流路44は、第1のポンプ34または流路の中で流体を移動させる他の手段と動作可能なように連結する。第3の流路44は、第4のポート20によってチャンバー11と連結する。チャンバー11は、ポート19および第4の流路45を通じて試料供給源30と連結する。第2のポンプ43は、第4の流路45と動作可能なように連結する。
【0045】
図4に示された系の例示的な初期構成は、チャンバー11および試料でない流体または気体/処理試料の貯蔵所39が試料でない流体または気体を含み、試料供給源30が標的細胞、標的物質、試薬、またはこれらの様々な組合せの溶液を含むことができる。バルブ32を開き、かつバルブ38を閉じ、または第1のポンプ34が第2の37流路および第3の44流路において流れを妨げると、第2のポンプ43は、流路45を経てチャンバー11から試料でない流体または気体を移動させ、試料供給源30内に移動することができる。試料でない気体がチャンバー11から出るため、試料供給源30からの試料は、流路31を通じてチャンバー11に流入する。チャンバーが試料の所望の量で充填された時点で、電気パルスが、電極の使用によってチャンバーを通じて送られる。いったん電流に曝されると、試料は、処理試料と見なされる。バルブ32を閉じ、または第2のポンプ43が第1の31流路および第4の45流路において流れを妨げ、かつバルブ38を開けると、気体の試料でない流れが、試料でない流体または気体/処理試料の貯蔵所39から流路44を経てチャンバー11内に第1のポンプ34で送り込まれる。処理試料は、試料でない流体または気体/処理試料の貯蔵所39に流路37を通して流れる。この処理は、出発試料の量のすべてまたは一部が処理されるまで、何回か通して循環させることが可能である。
【0046】
II.フローエレクトロポレーション装置の説明
エレクトロポレーションチャンバーの組立部品は、外部の供給源からエレクトロポレーションチャンバー組立部品に導入される細胞などの、選択的に分画された生物学的単位に対して使用することができる。生物学的な単位は、次に、生物学的または科学的な物質の存在下でエレクトロポレーションに供し、物質を生物学的単位の膜に一時的に開けられた孔に侵入させてもよい。いったんエレクトロポレーションされると、生物学的な単位は、エレクトロポレーション処理された細胞のさらなる操作を可能にし、かつ細胞懸濁液の新たな画分、部位、または単位体積についてエレクトロポレーションを可能にするため、エレクトロポレーションチャンバーから除去される。本発明の例示的な態様に係るエレクトロポレーションチャンバーの構造および構成の詳細な説明は、以下で提供される。
【0047】
本発明のある態様は、1つまたは複数の流入ポート、1つまたは複数の流出ポートを有するエレクトロポレーションチャンバーを含む、微粒子、特に生細胞の懸濁液を電気的処理するためのエレクトロポレーションチャンバーを含む。エレクトロポレーションチャンバーは、チャンバーがさらに、例えば懸濁液中の細胞、または1つもしくは複数の流入ポートからの試料でない流体もしくは気体などの試料を受け取り、かつ一時的に含むよう構成される2つまたはそれ以上の壁に含まれる。チャンバーは、各電極が少なくとも1つのチャンバー壁を形成するようチャンバーに関して配置された対になった電極も含む。それぞれの電極は、電気エネルギー供給源と電気的に連絡し、それによってチャンバーを流れる細胞の懸濁液を、電極間で形成される電場に供することができる。
【0048】
本発明の例示的なエレクトロポレーションチャンバーは、図5に示される。 図5に関して、エレクトロポレーションチャンバー10は、チャンバー11を含む。壁12は、壁12の間に置かれたチャンバーおよびガスケット13を定義する。壁12は、電極板であることができる。ガスケット13は、チャンバー11を形成するため、壁12の間に隙間を提供するように設計される。壁12およびガスケット13は、固定手段14によって固定されるが、結合した電極ギャップスペーサ15を有することが可能である。固定手段14は、ボルト、クリップ、ピン、成型プラスチックなどの成形物を非制限的に含むことが可能である。図5に示される態様において、エレクトロポレーションチャンバー10は、4つのポート:第1のポート17、第2のポート18、第3のポート19、および第4のポート20を有し、ある態様において、第4のポート20は任意である。それぞれのポートは、試料供給源、試料でない流体または気体、試薬の供給源、処理試料の貯蔵所、または様々な溶液および試薬用の様々な容器と流体連絡することができる。
【0049】
図5に図解されたエレクトロポレーションチャンバー10の分解立体図は、図6において提供される。図6に関して、エレクトロポレーションチャンバー10は、チャンバー11を含む。チャンバー11は、壁の間に置かれたチャンバーおよびガスケット13の壁/電極12によって定義される。ガスケット13は、チャンバー11を形成するため、壁12の間に隙間を提供するように設計される。壁12およびガスケット13は、固定手段14によって固定されるが、結合スペーサ15を有することが可能である。固定手段14は、ボルト、クリップ、ピン、成型プラスチックなどの成形物を非制限的に含むことが可能である。図6に示される態様において、チャンバーは、4つのポート:第1のポート17、第2のポート18、第3のポート19、および第4のポート20を有し、ある態様において、第4のポート20は任意である。各ポートは、試料供給源、試料でない流体または気体、試薬の供給源、処理試料の貯蔵所、または様々な容器と流体連絡することができる。
【0050】
エレクトロポレーションチャンバー10の他の態様の分解立体図は、図7において提供される。 図7に関して、エレクトロポーションチャンバー10は、チャンバー11を含む。チャンバー11は、壁の間に置かれたチャンバーおよびガスケット13の壁/電極12によって定義される。ガスケット13は、チャンバー11を形成するため、壁12の間に隙間を提供するように設計される。壁12およびガスケット13は、固定手段14によって固定されるが、結合スペーサ15を有することが可能である。固定手段14は、ボルト、クリップ、ピン、成型プラスチックなどの成形物を非制限的に含むことが可能である。図5に示される態様において、チャンバーは、4つのポート:第1のポート17、第2のポート18、第3のポート19、および第4のポート20を有し、ある態様において、第4のポート20は任意である。この態様において、ポート(17、18、19、20)孔の平面は、チャンバー11の壁12の平面と同一平面上にある。それぞれのポートは、試料供給源、試料でない流体または気体、試薬の供給源、処理試料の貯蔵所、または様々な容器と流体連絡することができる。
【0051】
エレクトロポーションチャンバーの別の態様は、図8に示される。図8に関して、エレクトロポーションチャンバー21は、3つのポート(17、18、および19)を含む。壁12は、壁12の間に置かれたチャンバーおよびガスケット13を定義する。壁12は、電極であってもよく、または中に組み込まれた電極を有してもよい。ガスケット13は、チャンバー11を形成するため、壁12の間に隙間を提供するように設計される。壁12およびガスケット13は、固定手段14によって固定されるが、これは結合スペーサ15を有することが可能である。固定手段14は、ボルト、クリップ、ピン、成型プラスチックなどの成形物を非制限的に含むことが可能である。図8に示される態様において、チャンバーは、3つのポート:第1のポート17、第2のポート18、および第3のポート19を有する。それぞれのポートは、試料供給源、試料でない流体または気体、試薬供給源、処理試料の貯蔵所、または以下に記載のような様々な容器と流体連絡することができる。
【0052】
図8の分解立体図である図9に関して、エレクトロポーションチャンバー21は、チャンバー11ならびに3つのポート(17、18、および19)を含む。チャンバーは、壁12の間に置かれた壁12およびガスケット13によって定義される。壁12は、電極であってもよく、またはその中に組み込まれた電極を有してもよい。ガスケット13は、チャンバー11を形成するため、壁12の間に隙間を提供するように設計される。壁12およびガスケット13は、固定手段14によって固定されるが、結合スペーサ15を有することが可能である。固定手段14は、ボルト、クリップ、ピン、成型プラスチックなどの成形物を非制限的に含むことが可能である。図5に示される態様において、チャンバーは、3つのポート:第1のポート17、第2のポート18、および第3のポート19を有する。それぞれのポートは、試料供給源、試料でない流体または気体、試薬供給源、処理試料の貯蔵所、または様々な容器と流体連絡することができる。
【0053】
図5〜9に示される本発明の態様において、チャンバー11を含むガスケット13は、電極ギャップスペーサ15の厚さと等しいのガスケット13の厚さを持った電極板12の間に置くことができる。ガスケット13は、通常、対立する電極板12と密閉状態を形成する。ガスケット13は、シリコーン、他の合成もしくは天然のゴム、または他のポリマー、または他の非導電材料から構築することができる。ガスケット13の中に一体となって、1つまたは複数のチャンバー11を提供することが可能である。ガスケット13の中の正方形、長方形、導管、または他の切り抜きが、チャンバー11を定義する。チャンバー11の大きさおよび形状は、電極板12の大きさおよび形状と比例する。
【0054】
また図5〜9を参照すると、エレクトロポーションチャンバー10または21は、2つの対立した電極板12から作ることができる。通常は、電極板12は、鉄、鋼、銅、アルミニウム、または他の導電性金属あるいは合金から作ることができる。電極板12は、さらに、導電率を高めるため、金、白金、亜鉛、炭素、または他のめっき材料でコーティングすることができる。各電極板12は、全体的なフローエレクトロポーションシステムの電源回路と接続する1つまたは複数の電気端子22と共に提供することができる。
【0055】
電極板12は、通常、1つまたは複数の電極ギャップスペーサ15によって分離することができる。電極ギャップスペーサ15の厚さは、電極12の間の隙間を定義、および固定する。電極12の間の隙間は、単にギャップスペーサ15を変更することによって任意の所望の寸法に簡単に調節することができる。このような1つの隙間の厚さは、流量および電場の強さによって変わるが、一般的に3 mmより長く、好ましくは約0.01 mmから約2 cm、特に好ましくは約0.1 mmから1 cmになる。他の態様において、隙間は、3 mmより長く、好ましくは約4 mmから約2 cm、特に約5 mmから約1 cmであることができる。図14は、少なくとも1つのポートを持ったプランジャ装置が、本明細書において記載されているようにエレクトロポーションチャンバーとして使用される本発明の他の態様の例を図解する。この特定の種類の装置において、プランジャは、試料の塊を移動させるのに使用することができる。試料でない気体または液体は、図解された基本原理に基づいた装置または方法には必要とされない。
【0056】
電極ギャップスペーサ15は、通常は電気的に絶縁された材料から作られ、プラスチック、セラミック、ゴム、または他の非導電性ポリマー材料、もしくは他の材料のような材料から作り出すことが可能である。
【0057】
一つの態様において、エレクトロポーションチャンバーの組立部品は、1つまたは複数の入口穴を含むことができる電極板12を含む。それぞれの入口穴は、さらに、流入口、流出口、または試料でない流体もしくは気体の入口/出口のいずれかを含むことができ、これらは全体的なフローエレクトロポーション装置のそれぞれの流入/流出する流体の経路と接続し、かつ相互作用する働きをする。
【0058】
エレクトロポーションチャンバーは、安全に組み立てができるようにする1つまたは複数の取付け手段を含むこともできる。本発明の様々な態様において、取付け手段14は、電極板12の所望の位置とその中に入れるガスケット13およびチャンバー11とを固定するために用いることが可能なネジ、ボルト、リベット、棒、またはクリップなどの留め具を含むことができる。エレクトロポーションのさらに他の代わりになる態様、本発明に係るエレクトロポーションチャンバー11において、取付け手段14は、接着、他の結合技術、またはカプセル化によって固定することができる。
【0059】
取付け手段は、受け入れるボルトに大きさおよび位置を合わせた取付け穴であることができる。このようなボルトは、取付け穴を通じて直接配置することができ、またはプレートブッシング中に収容することができ、かつこのボルトは、エレクトロポーションチャンバーを固定する働きをするナットによって固定することができる。導電性の電極ギャップスペーサを用いる態様において、対立する平板電極の電気絶縁性は、絶縁板ブッシングを使用することによって得ることができる。
【0060】
さらなる態様において、1つまたは両方の対立する電極板12に、さらに冷却要素を有するインターフェースを提供することができる。冷却要素は、熱電気の冷却要素であることができ、または直接的な水もしくは他の冷却液の接触、放熱板を通じた換気、もしくは通常は発熱過程であるエレクトロポーション処理において生じた熱を放散するための他の冷却手段による冷却を提供することができる。
【0061】
本発明のまださらなる局面において、エレクトロポレーションチャンバーは、図15に例示されているように、逆止めバルブを必要としない閉鎖した使い捨て可能な一行程のポンピングシステムと操作可能なように連結することができる。多くの空気ポンプは、振動した弾性膜を使用し、指向性の空気の流れを確立するため逆止めバルブを必要とする。可変的なフローシステムの様々な態様が、システムの一部として逆止めバルブを有するため、エレクトロポレーションチャンバーを充填する/空にする工程は、弾性膜を曲げたピストンの1回のストロークで達成することができる。
【0062】
このような特徴を含む処理チャンバーはしたがって、可変的な流れの処理において極めて正確な試料の動作が可能である、安価でかつ十分に閉じた単位となり得る。外部のポンプは必要とされない。図15に関して、処理チャンバーの構成部品は、シリコーンガスケット13、電極12、プラスチック本体50;および弾性膜52を含むがこれらに限定されない。エレクトロポレーションチャンバー11および試料でない流体または気体用の容器35の壁(図2参照)は、ガスケットによって形成することができる。ガスケット13は、一続きの構築物であることが可能である。このような態様には、ピストン54;ステッピングモーターによって調節された小型線形アクチュエータ56、および機器の表面にあるコンピュータが存在する。このような1ストロークのピストン機構が組み込まれた本発明の態様は、すでに図2に記載されていたように(バルブ32および38)、2つのピンチバルブを含むことが可能である。ポート17、18、および19の例示的な位置付けはまた、図15に示される。
【0063】
図解されている具体的な態様は、本発明の例示的なものであり、本発明を具体例に制限すると解釈してはならない。
【0064】
本発明のある局面は、エレクトロポレーション装置中に、本発明のエレクトロポレーションチャンバーの組み込み、および様々な処理をする構造を含む(図10)。本発明のある態様において、本発明のフローエレクトロポレーション装置は、以下のものを含むことが可能である:エレクトロポレーションチャンバーを含むことができる部品組立品;試料、処理試料、および試料でない流体または気体用の様々な容器、ならびに本発明と共に使用することができる他の試薬;ならびに様々な流路を提供する管類;高圧パルスを提供する電子部品および電子回路;電子回路および流体の動きを調節することができるコンピュータ;ならびに操作者がデータにアクセスし、コンピュータに入力またはプログラムを与えることを可能にするコンピュータと接続されたモニター。
【0065】
本発明は、新しいエレクトロポレーション法およびエレクトロポレーション装置を開発するための、制御されたフローエレクトロポレーションを使用する。本明細書において例示および記載されている方法は、制御された流れおよび細胞懸濁液のエレクトロポレーションを含む。本発明のチャンバーは、その費用が、使い捨て可能な単位として使用することができるくらい十分安くなるよう製造することが可能である。エレクトロポレーションチャンバーの様々に異なった構造は、本明細書において記載されている例を本発明において使用することができる。細胞懸濁液が電極間に存在している時間の間、細胞懸濁液は、電圧、継続時間、および一時的な間隔(1つより多く使用される場合)を含む、所定の電気パラメータを有する1つまたは複数の電気パルスを受ける。最適な電気パラメータは、特定の細胞型、および場合によってはエレクトロポレーションにより細胞への導入を意図する分子に特有である。適切な電気パラメータは、当技術分野において周知であり、新しい細胞型に最適なパラメータを実験的に決定する方法が公知である。多くの種類の哺乳類細胞に適したパラメータの例は、1 kV/cm、1 msパルス幅である。対象とする分子、化合物、または組成物は、次に濃度および/または電気勾配にしたがって細胞中に拡散する。本発明は、任意で細胞を電場のある強さの範囲に供するができる。一般的に言えば、本発明において有用な場の強さは、約0.5 kV/cmより大きく;好ましくは約1 kV/cmから3.5 kV/cmである。
【0066】
この処理は、エレクトロポレーションチャンバーを容器中の溶液および細胞懸濁液と繋げられた管類に取り付けることによって開始されるが、これは無菌または滅菌環境において実施することができる。エレクトロポレーションチャンバーは、器具に固定した位置にはめ込むことができ、ヒンジで連結されたパネルを閉じることによって固定することができる。細胞懸濁液および/または他の試薬は、細胞懸濁液が適切な時間および速度でエレクトロポレーションチャンバーに流入するよう、1つまたは複数のポンプ、バルブ、またはこれらの組合せに要求された命令を与えることによって導入することができる。一部の細胞懸濁液が、電極間のエレクトロポレーションチャンバーにあるとき、選択された電圧の電気パルス、継続時間、および間隔が、電極、およびそれによって懸濁液中の細胞に加えられる。必要不可欠な電気パルスを加えた後に、命令が、細胞懸濁液をエレクトロポレーションチャンバーから除去するため、1つまたは複数のポンプ、バルブ、またはこれらの組合せに与えられる。これらの命令は、細胞懸濁液の新しい一部をエレクトロポレーションチャンバー内に導入するために与えることもできる。エレクトロポレーションされている細胞懸濁液は、まだエレクトロポレーションされていない細胞から分離して収集される。先行する一連の事象は、エレクトロポレーションチャンバーに流入、およびエレクトロポレーションチャンバーから流出する細胞懸濁液の流れをもたらし、かつ調節する、電気パルスを提供する電子回路、および任意のポンピング手段、バルブ、またはこれらの組合せに操作可能なように接続されたコンピュータによって適宜時間的に調整することが可能である。細胞懸濁液に加えられる電気パルス、ならびにエレクトロポレーションチャンバーに流入、およびエレクトロポレーションチャンバーから流出する細胞懸濁液の流速および流下時間は、共に操作可能なようにコンピュータに接続されたモニターおよびキーボード上のグラフィックを用いたインターフェースを通して操作者によってコンピュータに与えることができる。本発明のフローエレクトロポレーションシステムの例は、これから詳細に記載される。
【0067】
A.使い捨て可能なエレクトロポレーションチャンバーおよび関連した構成部品(使い捨てセット)
使い捨てセットは、様々な容器(例えば、PVCバッグ)、PVC管類、連結装置、シリコーンポンプ管類、および本明細書において記載されているエレクトロポレーションチャンバーを含むことができる。血液または他の細胞物質と接触するすべてのプラスチック構成部品は、医療グレードクラス(Medical Grade Class)VIの材料であることが可能である。
【0068】
エレクトロポレーションチャンバー(図5参照)は、約100 μインチの純金(99.9 %)でエレクトロポレーションした2つの低炭素鋼(鉄 99+%)の電極を含むことができる。電極は、通常、それらの全長に渡って77 μm以内までの20 mmである。電極が平行に設置される場合、154 μmの棒電極間の距離において最大偏差が存在する。組立工程の間、電極は、通常、電極ガスケットに挿入され、次に固定器具およびプレート板の間に挟まれる。平行な棒電極間のわずかな隔たりは、3 mmである。エレクトロポレーションチャンバーは、約1.6 mLの内部体積を有することが可能である。
【0069】
電極は、金属または他の導電性化合物の層でコーティングされた任意の非導電性の材料から作ることができる。
【0070】
ある態様において、使い捨てセットに取り付けられた1、2、3、4、5、6、またはそれ以上の容器または供給源があることができる。容器は、折り畳み可能な、拡張可能な、または固定した容量の容器を含むがこれらに限定されない。本明細書において試料供給源または試料用容器と呼ばれる第1の容器は、細胞懸濁液を含み、エレクトロポレーション処理を経由して細胞に挿入される物質を含むことも含まないことも可能である。挿入される物質が含まれない場合、この物質を含む第2の容器があるが、これはエレクトロポレーションチャンバーの中に入る前に、またはエレクトロポレーションチャンバー中で、一列にに並んで混合される。第1の(任意で第2の容器)ものは、バルブが構造に含まれる場合、任意の指定されたピンチバルブを通過するPVCまたは他の適切な管類ラインと接続され、エレクトロポレーションチャンバーの第1のポート(入口ポート)に流入する。ある態様において、1つのポートを備えるエレクトロポレーションチャンバーが本発明の実施に際して使用することができると考えられる。本発明のさらなる局面は、試料用容器からの管類と接続した他の容器を含むことができ、試薬または他の試料をチャンバーに供給することができる。変換溶液は、エレクトロポレーションチャンバーに達する前に、達する間、または達した後、混合することができる。
【0071】
またさらなる態様において、エレクトロポレーションチャンバーの第2のポート(出口ポート)は、少なくとも1、2、3、4、またはそれ以上の取り付けられた容器を有し、エレクトロポレーションチャンバーから適当な容器への流れを方向づける1つまたは複数の介在装置を有することができる。追加の構造において、廃棄用の容器を取り付けることができるが、それは使用者が廃棄を意図しうるある任意の流体を保持する。第2もしくは第3の容器または袋は、処理試料または生成物用の容器として見なされる。処理試料または生成物用の容器は、エレクトロポレーション処理の細胞または他の生成物を保持する。
【0072】
第3または第4の容器は、試料を別々の塊または単位体積に分離するよう利用される様々な試料でない流体または気体を保持することができる。試料でない流体または気体の容器は、通常、第3および/または第4のポートによってエレクトロポレーションチャンバーと接続される。試料でない流体または気体用の容器は、処理試料用容器または試料用容器に組み込むことができ、そのため試料でない流体または気体は、処理試料用容器から別の容器まで移動されるが、これは試料を処理している間、試料供給源用容器を含むことができる。ある局面において、試料でない流体または気体を入れるための貯蔵器は、試料でない流体または気体の圧縮によって、電極がエレクトロポレーションを達成するよう適切に配置する事が可能である限り、チャンバーに組み込むことができる。
【0073】
前述のように、様々な他の容器は、本明細書において例示された構造に組み込むことができる。これらの追加の容器は、追加の試薬、細胞などを供給することができる。追加の容器は、廃棄用容器、または処理試料を分離する容器を提供することもできる。様々な態様において、本発明に係るエレクトロポレーションチャンバーは、1、2、3、またはそれ以上の電極対を含むことができる。チャンバーが1対よりも多い電極を有する場合、パルスが加えられる際に実質的に1対の電極の間にある細胞懸濁液のみが、効果的にエレクトロポレーションされる、またはエレクトロポレーションされる。望ましい場合、複数のエレクトロポレーションチャンバーが、より速く、より高容量でのエレクトロポレーションを達成するために提供され得る。本明細書において使用される場合、エレクトロポレーション領域という用語は、物質がその中を流れるチャンバーの一部が、エレクトロポレーションを達成するのに十分な強さの電場に曝されることを意味する。本発明によると、エレクトロポレーションチャンバーのエレクトロポレーション領域の対向壁の少なくとも一部を定義する2対の電極が、エレクトロポレーション領域においてこれら対向壁の実質的な部分を形成することが望ましい。本明細書において使用される場合、電極は、電圧差が対に対して加えられている場合にそれらの間に実質的に均一な電場が存在できるようにそれらが配置されていれば、1対であると考えられる。本明細書において使用される場合、実質的な部分という用語は、約50 %より大きい;好ましくは約60 %より大きい、より好ましくは約70 %より大きい、より好ましくは約80 %より大きい、より好ましくは約90 %より大きいこと、最も好ましくは約100 %を意味するものとする。
【0074】
好ましくは、エレクトロポレーションチャンバーは、使い捨ての、1回の使用で利用するための滅菌単位として提供することができる。エレクトロポレーションチャンバーの構成部品はそのため、好ましくは高圧蒸気殺菌、照射殺菌、または化学殺菌などの滅菌手順に耐える能力がある物質で作ることができる。
【0075】
本明細書に記載されている任意の器具の構成部品で用いる適切な物質は、生体適合性があり、体内液との接触を伴う医学的応用に認可された物質を含み、かつUSPV1またはISO 10993標準を満たすべきである。さらに、物質は、少なくとも1回の使用の間、例えば本発明において使用される溶剤への曝露から実質的には分解しない。物質は、通常、放射線またはエチレンオキシド(EtO)滅菌いずれか一方によって殺菌される。このような適切な物質は、例えば管類に使用されるならば押し出し可能な、および/または例えば硬い容器に使用されるなら射出成形可能な物質を含む。本発明に係る器具の様々な構成部品を形成するのに有用な物質は、ナイロン、ポリプロピレン、ポリカーボナート、アクリル、ポリスルホン、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、DuPont Dow Elastomers L.L.C.から入手できるバイトン(VITON)などのフルオロエラストマー、Monsantoから入手可能なサントプレーン(SANTOPRENE)などの熱可塑性エラストマー、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル(PVC)、リテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフェニレンエーテル(PFE)、テフロン(TEFLON)PFAとしてE. I. du Pont de Nemours and Companyから入手可能なペルフルオロアルコキシコポリマー(PFA)、およびこれらの組合せを含むがこれらに限定されない。
【0076】
多くの場合、エレクトロポレーション処理の処理能力、または一定の時間に処理された細胞懸濁液の量に言及することは重要である。単位体積の細胞懸濁液をエレクトロポレーションするのに一定量のエネルギーが要るので、所定の時間でエレクトロポレーションされる細胞懸濁液の量が多くなるほど、同じ時間でより多くのエネルギーが消費される。細胞懸濁液へ電圧を印加えることによって、懸濁液に電流の流れが起こり、これは電気抵抗を有する。この電流の流れは、ジュールの法則にしたがった熱を発生する。チャンバーおよびその中身に供給される電気エネルギーの大部分は熱に変換されるため、時間およびチャンバーにおいて生じる熱の関数としてチャンバーおよびその中身に供給される電力(P)の関係は、Qを熱、およびtを時間としてP=Q/tである。
【0077】
エレクトロポレーションによって生じる熱によって、少なくとも一時的に細胞懸濁液の温度が上昇する。細胞が45℃を超えた温度に達するのは望ましくないため、細胞が許容できない温度に達するのを避けるために、細胞懸濁液およびエレクトロポレーションチャンバーを冷却する手段を提供することは都合が良い。このような高温への曝露の損傷効果は曝露時間の関数であり、エレクトロポレーション後できる限り速やに提供される冷却が望ましい。フローエレクトロポレーション処理ではエレクトロポレーションチャンバーが繰り返し高圧パルスを受け、その結果電気的に熱を帯びるため、エレクトロポレーションチャンバーおよびエレクトロポレーションされた細胞を冷却する手段が特に重要である。しかし、冷却はペルチェ素子、または空気もしくは流体の流れによって順番に冷却される金属部品と直接接触する細胞懸濁液をもたらすことによって通常提供されるものの、冷却過程にいくつかの重要な制限が存在する。多くの場合、エレクトロポレーション処理の設計者は、流路から冷却器までの熱の移動が、常に水、または同等に細胞懸濁液自身の熱伝導率によって制限されるということを意味する、金属の熱伝導率が水(または生理的緩衝液)の熱伝導率よりも著しく高いという事実を無視するかまたは見落とすかのいずれかである。このような状況においては、熱移動が最も効率的な方法で達成されるよう、流路の適切な形状を選択することが重要である。
【0078】
B.試料の流れの制御
本発明と関連するであろう様々な流体および/または気体の流れは、1つまたは複数のポンピング手段、バルブ、または流れを引き起こし、抑制し、もしくは全体的には遮断するかでなければ流れを制御するように設計された他の手段によって制御することができる。これは、細胞懸濁液もしくは他の流体をエレクトロポレーションチャンバーにポンプで注入する1つまたは複数のポンプ、細胞懸濁液もしくは他の流体をエレクトロポレーションチャンバーからポンプで排出する1つまたは複数のポンプ、またはこれらの組み合わせによって達成することができる。細胞懸濁液は、エレクトロポレーションチャンバー内部の空気圧または空気量を変化させるポンプまたは他の機械装置によってエレクトロポレーションに流入、およびエレクトロポレーションから流出されうる。ある態様において、重力は、1対の電極間で試料の単位を移動させるのに使用することができる。使用されうるバルブはピンチバルブ、バタフライバルブ、および/またはボールバルブを含み、完全または部分的に流路を開閉するために使用することができる。様々な態様において、ポンプは、装置内の流体の流れを制御かつ測定するために用いることができる。流体のポンピングは、多くの装置で一般的である。試験試料から様々な試薬まで及ぶ流体、および洗浄液は、用途に応じて移動、分配、または測定されなければならない。これらの装置は、より少ない量の流体を使用するよう設計されているので、極めて正確な定量ポンプに対する要求は、さらに大きくなっている。
【0079】
流体の移動は、時に、遠心力ポンプまたは容積移送式ポンプいずれか一方を使用することで達成される。遠心力ポンプは、羽根車のエネルギーを流体圧力に変換している回転している羽根車を経由して流体にエネルギーを伝達し、流体を動かす。これらの種類のポンプは、非常に圧迫および流体依存的であり、入口の変更をうけて極めて正確に流れを維持し、状況を解放することができないことが原因で測定には通常は利用されない。それらの利点は、低圧で高い流速を提供することにある。
【0080】
容積移送式ポンプは、固定した量の流体を捕捉すること、および歯車、ピストン、振動板、羽根、または他の装置を経由してこの流体を移動させることによって動作する。これらのポンプは通常、より低い速度で動作し、解放および吸込状態における変化の影響を受けにくく、ならびに速度および移送を調節することによって流れの制御を可能にする。これらの特徴は、容積移送式ポンプを流体を測定するのに当然の選択とすることであろう。定量ポンプは、そのため規定の容量範囲内で極めて正確な、かつ繰り返し可能な流れを提供するために設計された容積移送式装置として定義することができる。容積移送式定量ポンプは、普通は回転式または往復式として分類される。回転ポンプは、歯車、ローブ、羽根、およびローラー(蠕動)ポンプを含む。往復ポンプは、振動板、ピストン、およびベローズポンプを含む。
【0081】
C.他の構成部品
本明細書において記載されているようなエレクトロポレーション装置は、1つまたは複数の電子モジュールインターフェース、コンピュータ、モニター、および他の電子回路、および当業者が容易に供給するソフトフェアなどの様々な他の構成部品を含む。エレクトロポレーションシステムの一般的な構成、およびこのようなシステムの様々な他の構成部品の説明は、参照により本明細書に組み入れられる米国特許出願第200400292240号、第20030073238号、第20030059945号、および第20010001064号に見出すことが可能である。
【0082】
実施例
以下の例は、本発明の好ましい態様をこと証明するために含まれる。以下に続く例に開示されている技術が、本発明の実施に際してうまく機能するよう本発明者らによって発見された技術を説明し、したがってその実施のための好適な様式を構成するとみなすことができる事が、当業者に認識されるべきである。しかし、当業者は、本発明の開示の観点から、多くの変更が開示される具体的な態様において成され、かつ本発明の精神および範囲から逸脱することなしに同等のものまたは同様の結果が以前として得ることができると認識すべきである。
【0083】
実施例1 可変的なフローエレクトロポレーション
例示的なエレクトロポレーションの研究が、制御された、または可変的なフローエレクトロポレーションを使用して実施された。ジャーカット細胞は、モデル系として使用され、GFP発現ベクターが形質転換のためにモデル化合物として使用された。全細胞密度は、4×107 ジャーカット細胞/mLであり、プラスミド濃度は、eGFP(green fluorescent protein)を発現することができるpTM2 プラスミドのDNA(〜5 Kb)が、100 μg/mLだった。この処理は、試料でない流体または気体をチャンバーから除去することを含み;同時にジャーカット細胞およびGFPベクターを含む試料でチャンバーを充填した。単位試料は、試料が流入してから流出するまで移行する間エレクトロポレーションされた。処理試料は、試料でない流体または気体を同時に流入させてチャンバーから除去された。図11は、ヨウ化プロピジウム蛍光またはGFP蛍光で評価された、対照細胞、400 μLの静的な処理を使用して処理された細胞、および100 mLの可変的な流れによる処理を使用して処理された細胞を示す。図12は、対照細胞(図12A)、400 μLの静的な処理を使用して処理された細胞(図12B)、および100 mLの可変的な流れによる処理を使用して処理された細胞(図12C)におけるGFP蛍光でのFACS分析の結果を図解したヒストグラムを示す。図13は、14の連続的な試料画分を通じた単位試料ごとの可変的なフローエレクトロポレーションを使用した結果の整合性を示す。細胞は、GFPトランスフェクションおよび生存度で評価され、死細胞、トランスフェクションに対して陰性の生細胞、およびトランスフェクションに対して陽性の生細胞の順でソートされた。
【0084】
参考文献
以下の参考文献は、本明細書に示したものに対して例示的な手順、または他の詳細の補足を提供する限りにおいて、具体的には参照により本明細書に組み入れられる。
米国特許第4,752,586号
米国特許第5,612,207号
米国特許第6,074,605号
米国特許第6,090,617号
米国特許出願第20010001064号
米国特許出願第20030059945号
米国特許出願第20030073238号
米国特許出願第200400292240号
【図面の簡単な説明】
【0085】
以下の図面は、本明細書の一部を形成するものであり、本発明のある局面をさらに示すために含まれている。本発明は、本明細書に示される具体的な態様の詳細な説明と組み合わせてこれらの図面の1つまたは複数を参照することによって、より適切に理解することができる。
【0086】
【図1】エレクトロポレーション処理の例示的な循環の概略図である。
【図2】エレクトロポレーション処理の第1の例示的な構成の概略図である。
【図3】エレクトロポレーション処理の第2の例示的な構成の概略図である。
【図4】エレクトロポレーション処理の第3の例示的な構成の概略図である。
【図5】エレクトロポレーションチャンバーの1つの態様の図である。
【図6】エレクトロポレーションチャンバーの1つの態様の分解立体図である。
【図7】エレクトロポレーションチャンバーの他の態様の分解立体図である。
【図8】本発明のエレクトロポレーションチャンバーの別の開示された態様の透視図である。
【図9】本発明のエレクトロポレーションチャンバーの別の開示された態様の分解立体斜視図である。
【図10】エレクトロポレーション装置に組み込まれたエレクトロポレーションチャンバーの概略図である。
【図11】エレクトロポレーション後24時間目における、ジャーカット細胞のヨウ化プロピジウム(PI)およびGFPによる蛍光分析を図解する。
【図12】図12A〜12Cは、FACSによって測定された、エレクトロポレーション後24時間目のジャーカット細胞における、蛍光のヒストグラムを図解する。図12Aは、対照のトランスフェクションである。図12Bは、400 μL の静的なトランスフェクションである。図12Cは、100 mLの可変的なフロートランスフェクションである。
【図13】エレクトロポレーションの連続的な循環で収集された個々の画分の分析を図解する。
【図14】プランジャ型のポンピング手段を含む本発明の他の態様を図解する。
【図15】閉鎖的で使い捨て可能な1ストロークのポンプ装置を図解する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料が別の単位で処理される、エレクトロポレーションチャンバーを通じた試料の流れを制御することを含むフローエレクトロポレーション法。
【請求項2】
試料の流れが少なくとも1つの閉鎖した流路を通じてである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
単位がエレクトロポレーションチャンバーを通じた試料の流速を減じることによって生成される、請求項1記載の方法。
【請求項4】
単位が、試料の未処理量と処理量との間の境界を提供することによって生成される、請求項1記載の方法。
【請求項5】
境界が気体または液体である、請求項4記載の方法。
【請求項6】
境界が、試料の2つまたはそれ以上の画分間で、試料でない気体または流体をチャンバー内に循環させることによって提供される、請求項4記載の方法。
【請求項7】
試料でない気体または液体が、未処理試料の塊毎にチャンバーから移動される、請求項6記載の方法。
【請求項8】
試料でない気体または液体が、チャンバーからの処理試料の排出によってチャンバーに流れ込む、請求項6記載の方法。
【請求項9】
循環が、第1および第2のポートを通じた試料の流れを交互に変えることによって行われる、請求項6記載の方法。
【請求項10】
循環が、1つまたは複数のバルブによって制御される、請求項9記載の方法。
【請求項11】
試料においてエレクトロポレーションチャンバー内に入る前または入る間に混合される、請求項1記載の方法。
【請求項12】
(a)少なくとも2つの電極を含むチャンバーと;
(b)(i)第1のポートはチャンバーへの試料流入用であり;
(ii)第2のポートは、チャンバーからの処理試料流出用であり;かつ
(iii)第3のポートは、試料でない流体または気体のチャンバーへの流入またはチャンバーからの流出用であり、
試料がチャンバーに流入する際、試料でない流体または気体がチャンバーから流出し、処理試料がチャンバーから流出する際、試料でない流体または気体がチャンバーに流入する、
少なくとも3つのポートとを含む、
フローエレクトロポレーションチャンバー。
【請求項13】
第1のポートが1つまたは複数の試料用容器と流体連絡する、請求項12記載のチャンバー。
【請求項14】
第2のポートが1つまたは複数の処理試料用容器と流体連絡する、請求項12記載のチャンバー。
【請求項15】
第3のポートが貯蔵用容器と流体連絡し、貯蔵用容器が、チャンバーが試料の塊で満たされているかまたは部分的に満たされているとき、試料でない流体または気体の塊のすべてまたは一部を含む、請求項12記載のチャンバー。
【請求項16】
少なくとも4つのポートを有する、請求項12記載のチャンバー。
【請求項17】
少なくとも第4のポートが、試料用容器、処理試料用容器、試料でない気体もしくは流体用の貯蔵器、または試薬用容器と流体連絡する、請求項16記載のチャンバー。
【請求項18】
(a)第1の流路を形成する、第1のチャンバーポートを通じてエレクトロポレーションチャンバーと流体連絡する少なくとも1つの試料用容器と;
(b)第2の流路を形成する、第2のチャンバーポートを通じてエレクトロポレーションチャンバーと流体連絡する少なくとも1つの処理試料用容器とを含む、
フローエレクトロポレーション装置。
【請求項19】
第3の流路を形成する、第3のチャンバーポートを通じてエレクトロポレーションチャンバーと流体連絡する少なくとも1つの試料でない流体または気体の貯蔵器をさらに含む、請求項18記載の装置。
【請求項20】
第1および第2のポートが同じポートである、請求項18記載の装置。
【請求項21】
少なくとも1つの流路が閉鎖的な流路である、請求項19記載の装置。
【請求項22】
第1、第2、および第3の流路が閉鎖的な流路である、請求項21記載の装置。
【請求項23】
試料でない気体または流体用の貯蔵器が、試料でない気体または流体用容器である、請求項19記載の装置。
【請求項24】
試料でない気体または流体用の貯蔵器が、試料用容器、処理試料用容器、または試料用容器および処理試料用容器の両方である、請求項19記載の装置。
【請求項25】
第2の流路が、第2の流路における処理試料用容器に関してエレクトロポレーションチャンバーの位置に対して末端側にある、第1の流路の試料用容器、および第3の流路の試料でないもの用の貯蔵器と流体連絡する、請求項19記載の装置。
【請求項26】
少なくとも1つの流路と動作可能なように連結した少なくとも1つのポンピング手段をさらに含む、請求項19記載の装置。
【請求項27】
試料用容器が、折り畳み可能な、拡張できる、または固定した容量である、請求項19記載の装置。
【請求項28】
処理試料用容器が、折り畳み可能な、拡張できる、または固定した容量である、請求項19記載の装置。
【請求項29】
試料でない気体または流体用の容器が、折り畳み可能な、拡張可能な、または固定した容量である、請求項23記載の装置。
【請求項30】
装置における流体の流れが、装置の1つまたは複数の流路の開口部または閉口部によって方向づけられる、請求項19記載の装置。
【請求項31】
第1および第2の流路が、二者択一的に開閉する、請求項19記載の装置。
【請求項32】
流体の流れが、1つまたは複数のバルブによって調節される、請求項19記載の装置。
【請求項33】
流体の流れが、1つまたは複数のポンピング手段によって調節される、請求項19記載の装置。
【請求項34】
ポンピング手段がポンプである、請求項33記載の装置。
【請求項35】
ポンプが蠕動ポンプである、請求項34記載の装置。
【請求項36】
蠕動ポンプが十分に圧縮された蠕動ポンプである、請求項35記載の装置。
【請求項37】
流体の流れがバルブによって調節される、請求項19記載の装置。
【請求項38】
流体の流れがポンピング手段によって調節される、請求項37記載の装置。
【請求項39】
(a)第1のチャンバーポートを通じてエレクトロポレーションチャンバーと流体連絡し、エレクトロポレーションチャンバーが、第1の流路を形成する、第2のチャンバーポートを通じて試料用容器と流体連絡する、少なくとも1つの試料用容器と;
(b)第3のチャンバーポートを通じてエレクトロポレーションチャンバーと流体連絡し、エレクトロポレーションチャンバーが、第2の流路を形成する、第4のチャンバーポートを通じて処理試料用容器と流体連絡する、少なくとも1つの処理試料用容器とを含む、
フローエレクトロポレーション装置。
【請求項40】
処理試料用容器が、試料でない気体または流体用の貯蔵器としても使用される、請求項39記載の装置。
【請求項41】
試料でない気体または流体用の貯蔵器が、試料用容器、処理試料用容器、または試料用容器および処理試料用容器の両方である、請求項40記載の装置。
【請求項42】
少なくとも1つの流路と動作可能なように連結した少なくとも1つのポンプをさらに含む、請求項39記載の装置。
【請求項43】
試料用容器が、折り畳み可能な、拡張可能な、または固定した容量である、請求項39記載の装置。
【請求項44】
処理試料用容器が、折り畳み可能な、拡張可能な、または固定した容量である、請求項39記載の装置。
【請求項45】
装置における流体の流れが、装置の1つまたは複数の流路の開口部または閉口部によって方向づけられる、請求項39記載の装置。
【請求項46】
第1および第2の流路が、二者択一的に開閉する、請求項39記載の装置。
【請求項47】
流体の流れが、1つまたは複数のポンピング手段によって調節される、請求項39記載の装置。
【請求項48】
ポンピング手段がポンプである、請求項47記載の装置。
【請求項49】
ポンプが蠕動ポンプである、請求項48記載の装置。
【請求項50】
蠕動ポンプが十分に圧縮された蠕動ポンプである、請求項49記載の装置。
【請求項51】
流体の流れがバルブによって調節される、請求項39記載の装置。
【請求項52】
流体の流れがポンピング手段によって調節される、請求項51記載の装置。
【請求項1】
試料が別の単位で処理される、エレクトロポレーションチャンバーを通じた試料の流れを制御することを含むフローエレクトロポレーション法。
【請求項2】
試料の流れが少なくとも1つの閉鎖した流路を通じてである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
単位がエレクトロポレーションチャンバーを通じた試料の流速を減じることによって生成される、請求項1記載の方法。
【請求項4】
単位が、試料の未処理量と処理量との間の境界を提供することによって生成される、請求項1記載の方法。
【請求項5】
境界が気体または液体である、請求項4記載の方法。
【請求項6】
境界が、試料の2つまたはそれ以上の画分間で、試料でない気体または流体をチャンバー内に循環させることによって提供される、請求項4記載の方法。
【請求項7】
試料でない気体または液体が、未処理試料の塊毎にチャンバーから移動される、請求項6記載の方法。
【請求項8】
試料でない気体または液体が、チャンバーからの処理試料の排出によってチャンバーに流れ込む、請求項6記載の方法。
【請求項9】
循環が、第1および第2のポートを通じた試料の流れを交互に変えることによって行われる、請求項6記載の方法。
【請求項10】
循環が、1つまたは複数のバルブによって制御される、請求項9記載の方法。
【請求項11】
試料においてエレクトロポレーションチャンバー内に入る前または入る間に混合される、請求項1記載の方法。
【請求項12】
(a)少なくとも2つの電極を含むチャンバーと;
(b)(i)第1のポートはチャンバーへの試料流入用であり;
(ii)第2のポートは、チャンバーからの処理試料流出用であり;かつ
(iii)第3のポートは、試料でない流体または気体のチャンバーへの流入またはチャンバーからの流出用であり、
試料がチャンバーに流入する際、試料でない流体または気体がチャンバーから流出し、処理試料がチャンバーから流出する際、試料でない流体または気体がチャンバーに流入する、
少なくとも3つのポートとを含む、
フローエレクトロポレーションチャンバー。
【請求項13】
第1のポートが1つまたは複数の試料用容器と流体連絡する、請求項12記載のチャンバー。
【請求項14】
第2のポートが1つまたは複数の処理試料用容器と流体連絡する、請求項12記載のチャンバー。
【請求項15】
第3のポートが貯蔵用容器と流体連絡し、貯蔵用容器が、チャンバーが試料の塊で満たされているかまたは部分的に満たされているとき、試料でない流体または気体の塊のすべてまたは一部を含む、請求項12記載のチャンバー。
【請求項16】
少なくとも4つのポートを有する、請求項12記載のチャンバー。
【請求項17】
少なくとも第4のポートが、試料用容器、処理試料用容器、試料でない気体もしくは流体用の貯蔵器、または試薬用容器と流体連絡する、請求項16記載のチャンバー。
【請求項18】
(a)第1の流路を形成する、第1のチャンバーポートを通じてエレクトロポレーションチャンバーと流体連絡する少なくとも1つの試料用容器と;
(b)第2の流路を形成する、第2のチャンバーポートを通じてエレクトロポレーションチャンバーと流体連絡する少なくとも1つの処理試料用容器とを含む、
フローエレクトロポレーション装置。
【請求項19】
第3の流路を形成する、第3のチャンバーポートを通じてエレクトロポレーションチャンバーと流体連絡する少なくとも1つの試料でない流体または気体の貯蔵器をさらに含む、請求項18記載の装置。
【請求項20】
第1および第2のポートが同じポートである、請求項18記載の装置。
【請求項21】
少なくとも1つの流路が閉鎖的な流路である、請求項19記載の装置。
【請求項22】
第1、第2、および第3の流路が閉鎖的な流路である、請求項21記載の装置。
【請求項23】
試料でない気体または流体用の貯蔵器が、試料でない気体または流体用容器である、請求項19記載の装置。
【請求項24】
試料でない気体または流体用の貯蔵器が、試料用容器、処理試料用容器、または試料用容器および処理試料用容器の両方である、請求項19記載の装置。
【請求項25】
第2の流路が、第2の流路における処理試料用容器に関してエレクトロポレーションチャンバーの位置に対して末端側にある、第1の流路の試料用容器、および第3の流路の試料でないもの用の貯蔵器と流体連絡する、請求項19記載の装置。
【請求項26】
少なくとも1つの流路と動作可能なように連結した少なくとも1つのポンピング手段をさらに含む、請求項19記載の装置。
【請求項27】
試料用容器が、折り畳み可能な、拡張できる、または固定した容量である、請求項19記載の装置。
【請求項28】
処理試料用容器が、折り畳み可能な、拡張できる、または固定した容量である、請求項19記載の装置。
【請求項29】
試料でない気体または流体用の容器が、折り畳み可能な、拡張可能な、または固定した容量である、請求項23記載の装置。
【請求項30】
装置における流体の流れが、装置の1つまたは複数の流路の開口部または閉口部によって方向づけられる、請求項19記載の装置。
【請求項31】
第1および第2の流路が、二者択一的に開閉する、請求項19記載の装置。
【請求項32】
流体の流れが、1つまたは複数のバルブによって調節される、請求項19記載の装置。
【請求項33】
流体の流れが、1つまたは複数のポンピング手段によって調節される、請求項19記載の装置。
【請求項34】
ポンピング手段がポンプである、請求項33記載の装置。
【請求項35】
ポンプが蠕動ポンプである、請求項34記載の装置。
【請求項36】
蠕動ポンプが十分に圧縮された蠕動ポンプである、請求項35記載の装置。
【請求項37】
流体の流れがバルブによって調節される、請求項19記載の装置。
【請求項38】
流体の流れがポンピング手段によって調節される、請求項37記載の装置。
【請求項39】
(a)第1のチャンバーポートを通じてエレクトロポレーションチャンバーと流体連絡し、エレクトロポレーションチャンバーが、第1の流路を形成する、第2のチャンバーポートを通じて試料用容器と流体連絡する、少なくとも1つの試料用容器と;
(b)第3のチャンバーポートを通じてエレクトロポレーションチャンバーと流体連絡し、エレクトロポレーションチャンバーが、第2の流路を形成する、第4のチャンバーポートを通じて処理試料用容器と流体連絡する、少なくとも1つの処理試料用容器とを含む、
フローエレクトロポレーション装置。
【請求項40】
処理試料用容器が、試料でない気体または流体用の貯蔵器としても使用される、請求項39記載の装置。
【請求項41】
試料でない気体または流体用の貯蔵器が、試料用容器、処理試料用容器、または試料用容器および処理試料用容器の両方である、請求項40記載の装置。
【請求項42】
少なくとも1つの流路と動作可能なように連結した少なくとも1つのポンプをさらに含む、請求項39記載の装置。
【請求項43】
試料用容器が、折り畳み可能な、拡張可能な、または固定した容量である、請求項39記載の装置。
【請求項44】
処理試料用容器が、折り畳み可能な、拡張可能な、または固定した容量である、請求項39記載の装置。
【請求項45】
装置における流体の流れが、装置の1つまたは複数の流路の開口部または閉口部によって方向づけられる、請求項39記載の装置。
【請求項46】
第1および第2の流路が、二者択一的に開閉する、請求項39記載の装置。
【請求項47】
流体の流れが、1つまたは複数のポンピング手段によって調節される、請求項39記載の装置。
【請求項48】
ポンピング手段がポンプである、請求項47記載の装置。
【請求項49】
ポンプが蠕動ポンプである、請求項48記載の装置。
【請求項50】
蠕動ポンプが十分に圧縮された蠕動ポンプである、請求項49記載の装置。
【請求項51】
流体の流れがバルブによって調節される、請求項39記載の装置。
【請求項52】
流体の流れがポンピング手段によって調節される、請求項51記載の装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公表番号】特表2008−509653(P2008−509653A)
【公表日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−513390(P2007−513390)
【出願日】平成17年5月12日(2005.5.12)
【国際出願番号】PCT/US2005/016728
【国際公開番号】WO2005/113820
【国際公開日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
2.TEFLON
【出願人】(505311928)マックスサイト インコーポレーティッド (4)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年5月12日(2005.5.12)
【国際出願番号】PCT/US2005/016728
【国際公開番号】WO2005/113820
【国際公開日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
2.TEFLON
【出願人】(505311928)マックスサイト インコーポレーティッド (4)
【Fターム(参考)】
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