説明

制御された治療薬伝達のためのコーティングを有する医療機器

【課題】制御された治療薬伝達のためのコーティングを有する医療機器を提供する。
【解決手段】本発明の態様において、基材を含む構造の少なくとも一部の上に配置されたナノ粒子-誘導無機層及び任意に基材の少なくとも一部の上に配置された治療薬-含有層を含む医療機器を提供する。ある態様において、無機層はナノ多孔質 無機層である。本発明の他の態様には前記医療機器の製造方法が含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医療機器に関し、より具体的には、特に治療薬を含む様々な種の大量を制御する無機コーティングを有する医療機器に関する。
【背景技術】
【0002】
治療薬の患者の体内におけるin-situ 伝達は現代の医学の実際において一般的である。治療薬のin-situ 伝達はしばしば体内の標的部位に一時的又は永久に設置される医療機器を用いて行われる。これらの医療機器は標的部位に治療薬を伝達するために短い期間又はもっと長い期間、必要に応じて標的部位に維持することができる。
【0003】
例えば、近年、Boston Scientific社(テキサス)、Johnson & Johnson社 (サイファー)他から入手可能な薬物溶出冠動脈ステントが、バルーン血管形成術後の血管開存性を維持するために広く使用されている。これらの製品は生物学的安定性のポリマーコーティングを備えた金属性の拡張可能なステントを基礎とし、抗再狭窄薬を制御された速度及び全容量で放出する。
【0004】
ステントのような移植または挿入可能な装置からの薬物放出のためのポリマーコーティングは長期間の血管適合性に関してあまり望ましくない。
【0005】
iMEDD社は4〜50 nmの平行なチャネルを有するシリコン膜を作り出した。いくつかの場合において、そのような膜の様々な溶質の拡散速度が測定され、0次速度式に従うことが確認された。iMeddによれば、膜はチャネルの幅を溶質の大きさに比例して調整することで拡散速度を制御するように設計することができる。適切なバランスが構築された場合、0次拡散動力学(zero-order diffusion kinetics)が可能である。iMeddはナノ多孔質膜をへて装置内部のリザーバーと外部の媒体の間の唯一の接続物として装着した薬物装填容器からなる薬物送達装置を製造した。
【発明の概要】
【0006】
本発明の態様において、基材を含む構造の少なくとも一部の上に配置されたナノ粒子-誘導無機層及び任意に少なくとも基材の一部の上に配置された治療薬-含有層を含む医療機器が提供される。いくつかの実施態様において無機層はナノ多孔質無機層である。いくつかの実施態様において、マクロ多孔質無機層は治療薬-含有層の上でかつナノ多孔質無機層の下に配置される。
【0007】
本発明の他の態様は医療機器の製造方法を含む。
【0008】
いくつかの実施態様において、これらの方法は、基材及び任意に少なくとも基材の一部の上に配置された治療薬-含有層を含む構造の上側表面上に無機ナノ粒子を加速することを含む。無機ナノ粒子は融解無機ナノ粒子を含む層が構造上に形成されるような条件下で加速される。
【0009】
本発明の有利な点は治療薬の放出が厳密に制御される医療機器が提供されることである。
【0010】
本発明の他の有利な点は、放出-制御層を有する医療機器が提供され、医療機器に治療薬を装填するために相に治療薬を注入又は通す必要がないことである。
【0011】
本発明のこれら及び他の実施態様及び有利な点は、当業者にとって以下の発明の詳細な説明及び請求項を参照することによりすぐに明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】金属性基材上に配置された非連続的パクリタキセルコーティングの電子顕微鏡写真。
【図2−7】本発明の様々な実施態様である医療機器の断面図を図示したもの。
【図7A−7E】図7の装置を形成する方法を示す断面図を図示したもの。
【図8】本発明において薬物の溶出後にその上に無機層が配置されたパクリタキセル被覆ステンレス鋼基材の走査型電子顕微鏡(SEM)写真。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の態様において、基材を含む構造の少なくとも一部の上に配置されたナノ粒子-誘導無機層、任意に少なくとも基材の一部の上に配置された治療薬-含有層 (本明細書において「治療層」ともいう)を含む医療機器が提供される。
【0014】
本発明の他の態様において、基材及び任意に少なくとも基材の部分上に配置された治療層を含む構造の上側表面上に無機 ナノ粒子を加速することを含む方法を提供する。無機ナノ粒子は無機ナノ粒子を含む無機層が構造上に形成されるような条件下で加速される。
【0015】
いくつかの実施態様において、上記無機層はナノ多孔質無機層である。例えば、多様なナノ多孔質無機層が、以下に図と組み合わせて記載される。しかしながら、本発明はナノポア無機層に制限されない。非-多孔質層を含む任意の多孔度の無機層を採用しても良い。
【0016】
本発明の利益を得る医療機器の例は多岐にわたり、移植可能な又は挿入可能な医療機器、例えばステント(冠血管ステント、末梢血管ステント、脳、尿道、尿管、胆管、気管、胃腸管及び食道ステントを含む)、ステントカバー(stent coverings)、ステントグラフト、血管グラフト、腹部大動脈瘤(AAA)装置 (例えばAAA ステント、AAA グラフト)、各管アクセスポート(血管アクセスポート、透析ポート)、カテーテル(例えば、泌尿器科用カテーテル 又はバルーンカテーテルのような血管カテーテル及び多様な中心静脈カテーテル)、ガイドワイヤー、バルーン、フィルター (例えば蒸留保護装置の為の大静脈フィルター及びメッシュフィルター)、脳動脈瘤フィルターコイル (電気式ディタッチャブルコイル(Guglielmi Detachable Coils)及び金属コイルを含む)を含む塞栓装置、中隔欠損閉鎖装置、心筋プラグ、パッチ、ペースメーカー、ペースメーカーリード、除細動リード及びコイルのためのコーティングを含むリードコーティング、左室補助心臓及びポンプを含む心室補助装置、全置換型人工心臓、シャント、心臓弁と血管弁を含む弁、吻合クリップ及びリング、人工耳、組織バルキング装置(tissue bulking devices)及び軟骨、骨、皮膚及び他のin vivoにおける組織再生の為の組織工学のスキャホルド、縫合糸、縫合鉤、組織用ステープル、手術部位における結紮クリップ、カニューレ金属ワイヤー結紮糸、尿道スリング、ヘルニア"メッシュ"、腎工靭帯、移植骨、骨板、フィン及び融合装置のような整形外科装具、人工関節(joint prostheses)、足首、膝、及び手の領域におけるインターフェランススクリュー(interference screw)などの整形外科用固定用具、靱帯付着部と半月板の修復のための鋲、骨折固定のためのロッドとピン、頭蓋顎顔面修復のためのねじ、およびプレート歯科インプラント又は体内に移植又は挿入され、治療薬が放出される他の機器を含む。
【0017】
本発明の機器はいくつかの実施態様において単に制御された種の伝達(例えば、剤形としての1以上の治療薬の放出制御、電気応答性 ポリマーへのイオンの流入及び流出の制御等)を提供する一方で、他の態様において、本発明の医療機器は、制御された種の伝達の他に治療用の機能、多くの可能な機能の中で例えば機械的、熱的、磁気的及び/又は電気的機能を体内に提供するように構成される。
【0018】
本発明の医療機器は、例えば、全身性治療に使用し、ならびに任意の哺乳類組織又は器官の局所治療に使用される移植可能な及び挿入可能な医療機器を含む。非-限定的な例としては腫瘍;心臓、冠状及び末梢性脈管系(全体として「脈管構造」と言う、を含む器官)、腎臓、膀胱、尿道、尿管、前立腺、膣、子宮、卵巣を含む泌尿生殖器系、目、耳、背骨、神経系、肺、気管、食道、腸、胃、脳、肝臓及び膵臓、骨格筋、平滑筋、胸、皮膚組織、軟骨、歯、および骨を含む器官が含まれる。
【0019】
本明細書において使用されるように「治療(treatment)」は疾患又は症状の予防、疾患又は症状に付随する徴候を低減させること又は疾患もしくは症状を実質的又は完全に消失させることを意味する。対象は、脊椎動物の対象、より典型的には人間の対象、ペット及び家畜を含む哺乳類の対象である。
【0020】
特定の態様において、医療機器は持続性の治療薬放出特性を有する。「持続性放出特性」は投与の全工程にわたり最初の1日において(又はいくつかの実施態様において、最初の2、4、8、16、32、64、128日又はそれより多い日数かけて)医療機器からの全放出量の25%未満の放出がおこる放出特性を意味する。これは、機器が同じ期間投与された後に、医療機器からの全放出の75%以上が起こることを意味する。
【0021】
本発明の医療機器の基材材料は組成において広く変動しても良く、いかなる特定の材料に制限されない。それらは生体安定性材料及び生体分解性材料 (すなわち、体内に設置した場合に、溶解し、分解し、吸収され及び/又はあるいは設置部位から取り除かれる材料)から選択することができ、(a)ポリマー性材料 (すなわちポリマー、典型的には50 wt%以上のポリマー、例えば、50 wt%〜75 wt%〜90 wt%〜95 wt%〜97.5 wt%〜99 wt%以上を含む材料)及び生体物質(biologies)のような有機材料(すなわち、有機種を典型的には50 wt%以上、例えば、50 wt%〜75 wt%〜90 wt%〜95 wt%〜97.5 wt%〜99 wt%又はそれ以上を含む材料) (b) 金属性無機物材料 (すなわち、金属を、典型的には50 wt%以上、例えば、50 wt%〜75 wt%〜90 wt%〜95 wt%〜97.5 wt%〜99 wt%以上含む材料)及び非-金属性無機物材料 (すなわち、非-金属性無機物材料、典型的には50 wt%以上、例えば、50 wt%〜75 wt%〜90 wt%〜95 wt%〜97.5 wt%〜99 wt%以上を含む材料) (例えば、炭素、半導体、ガラスをセラミックを含み、様々な金属-及び非-金属-酸化物、様々な金属-及び非-金属-窒化物、様々な金属-及び非金属-炭化物、様々な金属-及び非-金属-ホウ化物、様々な金属-及び非-金属-ホスフェート及び様々な金属-及び非-金属-硫化物等を含んでも良い)のような無機材料 (すなわち、無機種、典型的には50 wt%以上、例えば、50 wt%〜75 wt%〜90 wt%〜95 wt%〜97.5 wt%〜99 wt%以上を含む材料)及び(c) ハイブリッド材料 (例えば、ハイブリッド有機-無機材料、例えば、ポリマー/金属性無機物及び ポリマー/非-金属性無機物 混成物)を含む。
【0022】
無機非-金属性材料の具体的な例としては、例えば以下の1以上の材料から選択されても良い:アルミニウム-酸化物及び遷移金属酸化物 (例えば、チタニウム、ジルコニウム、ハフニウム、タンタル、モリブデン、タングステン、レニウム、鉄、ニオブ及びイリジウムの酸化物)を含む金属酸化物セラミック; シリコン;シリコン-窒化物、シリコン-炭化物及びシリコン-酸化物 (ガラスセラミックともいう)を含むものようなシリコン-ベースセラミック; リン酸カルシウムセラミック (例えばハイドロキシアパタイト); 炭素;及び炭素-ベース、炭素-窒化物のようなセラミック-様材料である。
【0023】
金属性材料の具体的な例は、例えば金、鉄、ニオブ、プラチナ、パラジウム、イリジウム、オスミウム、ロジウム、チタン、タンタル、タングステン、ルテニウム、亜鉛及びマグネシウム等のような金属及び鉄ならびにクロムを含む合金 (例えば、プラチナエンリッチド放射線不透過性 ステンレス鋼を含むステンレス鋼)、ニオブ合金、チタン合金、ニッケルならびにチタンを含む合金(例えば、ニチノール)、コバルト、クロムならびに 鉄 (例えば、エルジロイ(Elgiloy)合金)を含む合金を含むコバルトならびにクロムを含む合金、ニッケル、コバルトならびにクロムを含む合金(例えば、MP 35N)、コバルト、クロム、タングステンならびにニッケルを含む合金 (例えば、L605)、ニッケルならびにクロムを含む合金 (例えば、inconel 合金)及びマグネシウム、亜鉛及び/又は鉄の合金 (及びそれらのCe、Ca、Al、Zr及びLiと組み合わせた合金)を含む生体分解性合金等(例えば、1以上のFe、Ce、Al、Ca、Zn、ZrならびにLiを含む合金を含むマグネシウムの合金、1以上のMg、Ce、Al、Ca、Zn、ZrならびにLiを含む合金を含む鉄の合金、1以上のFe、Mg、Ce、Al、Ca、ZrならびにLiを含む合金を含む亜鉛の合金等)から選択されても良い。
【0024】
有機材料の具体的な例にはポリマー(生体安定性又は生体分解性)及び他の高分子量有機材料が含まれ、例えば以下のものを1以上含む適切な材料から選択されても良い: ポリアクリル酸を含むポリカルボン酸 ポリマー及びコポリマー; アセタールポリマー及びコポリマー; アクリレートならびにメタクリレートポリマー及びコポリマー (例えば、n- ブチル メタクリレート);セルロースアセテート、セルロースニトレート、セルロースプロピオネート、セルロースアセテート ブチレート、セロファン、レーヨン、レーヨントリアセテート及びカルボキシメチル セルロースならびにヒドロキシアルキル セルロースのようなセルロース エーテルを含むセルロースポリマー及びコポリマー; ポリオキシメチレン ポリマー及びコポリマー;ポリエーテル ブロック イミド, ポリアミドイミド, ポリエステルイミド及びポリエーテルイミドのようなポリイミドポリマー及びコポリマー;ポリアリールスルホン及びポリエーテルスルホンを含むポリスルホン ポリマー及びコポリマー; including ナイロン 6,6、ナイロン 12、ポリエーテル-ブロック コ-ポリアミド ポリマー (例えば、Pebax(R) 樹脂)、ポリカプロラクタム及びポリアクリルアミドを含むポリアミド ポリマー及びコポリマー;アルキド樹脂、フェノール樹脂、ウレア樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、アリル樹脂及びエポキシド樹脂を含む樹脂; ポリカーボネート;ポリアクリロニトリル; ポリビニルピロリドン (架橋及びその他);ポリビニルアルコールを含むビニルモノマーのポリマー及びコポリマー、塩化ポリビニルのようなポリビニルハライド、エチレン-ビニルアセテートコポリマー (EVA)、塩化ポリビニリデン、ポリビニルメチルエーテルのようなポリビニル エーテル、ポリジメチルのようなビニル芳香族 ポリマー及び コポリマー、ジメチル-無水マレイン酸コポリマー、ジメチル-ブタジエン コポリマーを含むビニル芳香族-炭化水素 コポリマー、ジメチル-エチレン-ブチレン コポリマー (例えば、Kraton(R) G シリーズポリマーとして入手可能なポリジメチル-ポリエチレン/ブチレン-ポリジメチル (SEBS) コポリマー)、ジメチル-イソプレンコポリマー (例えば、ポリジメチル- ポリイソプレン-ポリジメチル)、アクリロニトリル-ジメチル コポリマー、アクリロニトリル-ブタジエン- ジメチルスチレン コポリマー、ジメチル-ブタジエン コポリマー及びジメチル-イソブチレン コポリマー (例えばポリ(ジメチル-[オミクロン]-イソブチレン- 6-ジメチル)又はSIBSのようなポリイソブチレン-ポリジメチル ブロックコポリマーであって、 例えばPinchukらの米国特許第6,545,097号に記載されている)、ポリビニル ケトン、ポリビニルカルバゾール及びポリビニルアセテートのようなポリビニルエステル; ポリベンズイミダゾ-ル; イオノマー; ポリアルキル オキシド ポリマー及びポリエチレン-酸化物 (PEO)を含むコポリマー;ポリエチレン テレフタラート、ポリブチレン テレフタラート、ラクチド (乳酸 ならびに d-,1-及び meso ラクチドを含む)のポリマー及びコポリマーのような脂肪族ポリエステル、イプシロン-カプロラクトン、グリコリド (グリコール酸を含む)、ヒドロキシブチレート、ヒドロキシ吉草酸、パラ-ジオキサノン、トリメチレン カーボネート (およびそのアルキル誘導体)、1 ,4-ジオキセパン-2- オン、l,5- ジオキセパン-2- オン及び6,6-ジメチル-l,4-ジオキサン-2- オン (ポリ乳酸及びポリカプロラクトンのコポリマーは1つの具体例である)を含むポリエステル;ポリフェニレン エーテル、ポリエーテル ケトン、ポリエーテル エーテルケトンのようなポリアリールエーテルを含むポリエーテル ポリマー及びコポリマー; ポリフェニレン-硫化物; ポリイソシアネート;ポリプロピレン、ポリエチレン (低及び高密度、低及び高分子量)、ポリブチレン(ポリブタ-1-エン及びポリイソブチレンのような)、ポリオレフィン エラストマー (例えば、酸とプレーン)、エチレン プロピレンジエンモノマー(EPDM) ゴム、ポリ-4-メチル-ペン-l-エン、エチレン-α-オレフィン コポリマー、エチレン-メチル メタクリレート コポリマー及びエチレン-ビニルアセテート コポリマーのようなポリアルキレンを含むポリオレフィン ポリマー及びコポリマー;ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリ(テトラフルオロエチレン-コ-ヘキサフルオロプロペン) (FEP), 修飾エチレン- テトラフルオロエチレン コポリマー (ETFE)及びポリビニリデンフルオリド (PVDF)を含むフッ素化ポリマー及びコポリマー; シリコン ポリマー及びコポリマー; ポリウレタン; p-キシリレン ポリマー; ポリイミノカーボネート;ポリエチレン オキシド-ポリ乳酸 コポリマーのようなコ ポリ(エーテル-エステル); ポリフォスファジン; ポリアルキレンオキサレート; ポリオキサアミド及びポリオキサエステル (アミン及び/又は アミド基を含むものを含む); ポリオルトエステル; フィブリン、フィブリノーゲン、コラーゲン、エラスチン、キトサン、ゼラチン、デンプン及びヒアルロン酸のようなグリコサミノグリカンを含むポリペプチド、タンパク、ポリサッカライド及び脂肪酸 (及びそれらのエステル)のようなバイオポリマー;ならびに上記の混合物又はさらなるコポリマー。
【0025】
上に示したように、いくつかの実施態様において、本発明は少なくとも1つの治療薬-含有層 ("治療層")が少なくとも基材の一部の上に配置された医療機器を提供する。
【0026】
治療層は例えば、1 wt%以下〜2 wt%〜5 wt%〜10 wt%〜25 wt%〜50 wt%〜75 wt%〜90 wt%〜95 wt%〜97.5 wt%〜99 wt%以上の単一の治療薬又は治療薬の混合物を層中に含んでいても良い。治療層を形成する為に使用することが出来る治療薬以外の材料の例としては、上記列挙された中から選択される有機材料 (例えば、ポリマー性材料等)及び無機材料 (例えば、金属性無機物材料及び非-金属性無機物材料)及び中に治療薬が吸収されても良い多孔性の粒子 (例えば、多孔性シリカ粒子) を含む治療薬の貯蔵所/結合剤/基質として提供される材料が挙げられる。例えば、治療層は例えば有機材料、無機材料又はそれらの混成物から形成された多孔性又は非多孔性貯蔵層内に設置された1以上の治療薬を含んでも良い。
【0027】
層は基礎基材上に様々な位置、様々な形状で(例えば、所望のパターンで、 例えば適切な適用技術及び/又はマスキング技術を使用して)提供することができる。本明細書で使用するように、特定の材料の「層」は長さと幅の両方と比べて、厚さが小さいその材料の領域である。本明細書において使用されるように、層は例えば基礎基材の輪郭を呈する平面である必要は無い。層は、不連続であっても良く、基礎基材を部分的にのみカバーする。「フィルム」「層」「コーティング」のような用語は本明細書中で互換的に使用される。
【0028】
治療層の厚さは広く変化しても良く、典型的には10 nm〜25 nm〜50 nm〜100 nm〜250 nm 〜100 nm〜500 nm〜1000 nm (1 μm)又はそれ以上の厚さである。
【0029】
治療層は技術分野で知られている任意の方法を用いて基材上に配置しても良い。これらの方法は実質的に純粋な治療薬層を形成する方法、例えば基材を溶媒及び治療薬を含む液体(例えば、溶解又は分散状態)に接触させること又は基材の表面上に治療薬の乾燥もしくは半乾燥粒子を配置することを含む。この方法は例えばスプレーコーティング、インクジェット液滴付着(ink jet droplet deposition)、超音波スプレーコーティング、電気流体力学的コーティング(electrohydrodynamic coating)又は装置を治療薬の懸濁液又は溶液に浸漬又はロール-コーティングする等の方法によって行っても良い。
【0030】
具体的な例として、図1は本発明の実施態様の顕微鏡写真であり、パクリタキセル(約300 nmの直径を有するナノ粒子の形態)の不連続層がステンレス鋼 基材上に配置されている。ステントは0.005%〜10%の薬物溶液(好ましくは0.05%〜1%溶液)でスプレーコートし1〜60秒乾燥させる。より小さい薬物粒子については温風又は溶液により揮発性の溶媒を使用することにより乾燥が加速される。
【0031】
多くの実施例において、治療層は治療薬含有液体(例えば、溶液、分散液、溶解物等)から形成される。特定の態様において、層は少なくとも1つの治療薬及び少なくとも1つの付加的薬剤 (例えば、ポリマー及び/又は多孔性粒子等)を含むように形成される。例えば、付加的薬剤が熱可塑性特性を有する1以上の ポリマーである場合、治療層を形成するために様々な標準的加工方法を使用しても良い。これらの方法を用いて、例えば、(a) 最初に熱可塑性ポリマー、治療薬及び他の付加的薬剤を含む融解物を提供し、及び (b)続いて融解物を冷却することによって治療層を形成することができる。これらの方法を用い、例えば、 (a)最初に 1以上の溶媒種、治療薬及び任意の付加的薬剤を含む溶液又は分散を提供し、及び(b)続いて溶媒種を除去することにより治療層を形成することができる。
【0032】
液体(例えば、1以上の治療薬及び任意の付加的薬物を含む融解物、溶液、分散液等)を基材に適用する方法の例としては、スピンコーティング法、ウェブコーティング法、スプレー法、液浸法、ロールコーティング法、気中懸濁を含む機械的懸濁によるコーティングを含む方法、例えば、インクジェット技術のような液体を基材に選択的に適用する方法又はブラシ、ローラー、ペン等、静電気的技術及びこれらの工程の組み合わせのようなアプリケーターの使用を含む方法が挙げられる。いくつかの実施態様において、基材は治療薬-含有液に適用する前にマスクされる。
【0033】
上記のように、ある態様において、本発明は少なくとも1つの無機層が基材を含む構造の少なくとも一部の上に配置され、いくつかの実施態様において更に、少なくとも1つの治療層が基材の一部の上に配置された医療機器を提供する。本発明の医療機器において、化学種(例えば、イオン、治療薬等)の伝達は少なくとも部分的に無機層によって制御される。
【0034】
本発明において使用される無機層は構成において広く変化し、いかなる特定の無機材料に限定されない。特に金属性及び非-金属性無機物材料ならびにそれらの混成物を含む上記列挙した無機材料の適切な部材のような広い範囲の生体分解性及び生体安定性 無機材料から選択することが出来る。本発明の無機層は、例えば、生体安定性、部分的に生体分解性又は全体的に生体分解性である。
【0035】
いくつかの実施態様において、本発明の無機層はナノ多孔質である。国際純正応用化学連合(IUPAC)によれば、「ナノポア」は50 nm (例えば、0.5 nm以下から1 nm〜2.5 nm〜5 nm 〜10 nm〜25 nm〜50 nm)を超えない幅を有する孔である。本明細書で使用さえるように、ナノポアは2 nmを超えない幅を有する「マイクロポア」、2〜50 nmの幅の「メソポア」を含む。本明細書で使用されるように「マクロポア」は幅が50 nmよりも大きくしたがってナノポアでもない。本発明において、「ナノポア」は1 μm の幅までの粒子を含むがこの特定の定義は明示された場合のみである。
【0036】
本明細書で使用するように「多孔性」層は孔を含む層である。「ナノ多孔質層」はナノポアを含む層である。ナノ多孔質層はさらにナノポアでない孔を含んでも良い; 例えば, a ナノ多孔質層はさらにマクロポアを含んでも良い。典型的にはナノ多孔質層内の孔のうち少なくとも50 %はナノポアである。
【0037】
ナノポアは細胞の接着を促進することが知られている。
例えば、平滑筋細胞 及び内皮細胞はナノパターン化した表面において細胞接着及び増殖が改善されることを報告しているE.K.F. Yimらによるレビュー「Significance of synthetic nanostructures in dictating cellular response」Nanomedicine: Nanotechnology, Biology, and Medicine 1 (2005) 10- 21を参照されたい。Yim らは高さ13nmの島を有する基材上の内皮細胞の付着と成長は高さ35及び95nmの島に対して改良されたことを報告している。内皮細胞もまた界面化学に影響されやすかった。例えば、Viitala R. らの「Surface properties of in vitro bioactive and non-bioactive sol-gel derived materials」 Biomaterials. 2002 Aug; 23(15): 3073-86 及びE.E.L. Swanらの「Fabrication and evaluation of nanoporous alumina membranes for osteoblast culture」Journal of Biomedical Materials Research Part A, Volume 72A, Issue 3, Pages 288-295, Published Online: 14 Jan 2005も参照されたい。
【0038】
以下に論じるように、本願発明の態様において、無機層は無機 ナノ粒子から形成され、前記向きナノ粒子は、例えば、生体分解性 無機ナノ粒子、生体安定性 無機 ナノ粒子又は生体分解性及び生体安定性 無機 ナノ粒子の組み合わせである。
【0039】
本明細書で使用されるように、「ナノ粒子」は1μmを超えない幅を有する粒子であり、例えば、2 nm以下〜4 nm〜8 nm〜10 nm〜15 nm 〜20 nm〜25 nm〜35 nm〜 50 nm〜100 nm〜150 nm〜250 nm〜500 nm〜1000 nm である。
【0040】
例えば、理想的な態様において、多孔性構造が同じサイズの最密装填マイクロスフィアから形成される場合、作成されるポア(装填されたマイクロスフィアの間の隙間に対応している)はマイクロスフィアの約1/3の最小幅を有する。従って、特定の態様において、治療薬の水和された直径の約3倍の直径を有する粒子が選択されても良い(例えば、3倍又はそれ以上、以下に論じるように粒子の溶融によるポア収縮を説明するために)具体的な例として、パクリタキセルには、ナノ粒子の直径は特に 8〜15 nmの範囲である。
【0041】
本明細書で使用する無機層の厚さは広く変化し、例えば、特に5 nm〜20 μm の層の厚さである。特定の態様において、層の厚さは、無機層が形成される無機 ナノ粒子のサイズに依存し、ナノ粒子の直径の例えば3〜5〜7〜10〜15〜20〜50〜75〜100以上倍である。
【0042】
本発明における、無機層を形成する好ましい方法には、任意に治療層をふくむ基材構造の上側表面上に金属性及び/又は 非-金属性無機物ナノ粒子が加速され又は方向付けられ、それにより基材構造上に無機層を形成する方法が含まれる。
【0043】
例えば、いくつかの実施態様において、ナノ粒子は電場に置くことにより基材構造表面上に加速された荷電ナノ粒子である。以下に論じるように、ナノ粒子の軌道は第2電場又は磁場の使用によって、所望の場合さらに影響を及ぼされても良い。
【0044】
いくつかの実施態様において、ナノ粒子は磁気か強磁性ナノ粒子であり、適当な磁場におくことにより基材構造の表面上に加速される。以下に論じるように、所望の場合は二次磁場の使用によりナノ粒子の軌道はさらに影響を及ぼされてもよい。
【0045】
一般的に、前記方法は減圧環境下で行われる。具体的な例として、使用される正確な操作圧は採用される特定の方法及びシステムに依存して広く変化するが、以下に記載するMantis Deposition 社システムは約5x10-5mbarで操作される。
【0046】
理論によって拘束されること無しに、ナノ粒子が表面に向かって加速された場合(例えば、磁場、電場等において)、十分な運動エネルギーを伝えることによって着陸する際に融解を引き起こすことができる。上に示したように、ナノ粒子を治療薬被覆基材に向けて加速する多様な方法がある。 例えば、荷電ナノ粒子が電場を用いて加速される実施態様において、低い適用電圧により小さい電場が形成されそれらを基材上に少しの熱的影響またはまったく熱的影響無しにそれらを表面に着地させるだろう。より高い適用電圧はしかしながらより高い場の強度をもたらし、もし十分に強ければ粒子の隙間を残してナノ粒子をわずかに融解するのに十分な熱への運動エネルギーの変換を得るだろう。同様に、磁気か常磁性ナノ粒子が磁場を使用することで加速される実施態様において、低い磁場の強さは、少しの熱的影響またはまったく熱的影響無しにただナノ粒子を表面に着地させるのみだろう、一方、より高い磁場強度によれば粒子の隙間を残してナノ粒子をわずかに融解するのに十分な熱への運動エネルギーの変換を得る。さらに高い場の強度(例えば、磁性の及び電気の等)により、個々の粒子を固体材料の中に隙間無しに固化する。いくつかの実施態様において、ナノ粒子の基材への、薬物層への及び/又は互いへの接着は調整可能である(例えば加速の程度によって)。さらに、構造を強靭で粘着性または柔軟で脆く製作することができる。
【0047】
多孔性無機層が形成された場合、ナノ粒子のサイズ分布はポアサイズの分布に大きい影響を有し、より大きい粒子はより大きいポアを作成することができ、そのポアサイズはさらに場の強度を調節することにより適合させることができる。 薬物の除放は粒子の初期サイズならびに場の強度により起こる融解効果(melting effect)の両方に依存するナノ多孔質層にわたる均一な多孔性を作成することにより促進される。
【0048】
いくつかの実施態様において、ソフトプライマーコーティング(soft primer coating) (例えば金のような軟金属 又は他の軟金属又は軟金属合金から形成された)はより硬い表面材料を有する医療機器(例えば、ステンレス鋼 ステントのようなステント)の表面上に例えば特に物理気相成長法(PVD)、又はパルスレーザー堆積法によって形成され改良されたナノ粒子の浸透を達成しそれにより無機層の機器表面への接着を改良する。これらの実施態様において、ナノ粒子のより低い加速が付着に必要であり、より多孔性の構造が達成されてもよい。いくつかの場合に、相対的なソフトコーティング無しに、形成された多孔性は必要な付着によって妥協しても良い。
【0049】
具体的な例として、上記線に沿ったナノ粒子沈着を行うためのシステムは、スパッタ目標から、直径が15nmを超える最少30原子のナノ粒子を発生させることができる高圧マグネトロンスパッタリング源(high-pressure magnetron sputtering source)を扱うMantis Deposition社、Thame、オックスフォードシャー州、英国から入手可能である。ナノ粒子のサイズは、ナノ粒子材料、マグネトロン表面と出口開口部との距離(例えば、距離が長いほどより大きいナノ粒子サイズを作成する)、ガスフロー(例えば、高がスフローはより小さいナノ粒子サイズを作成する)、及び気体の種類(例えば、ヘリウムはアルゴンと比べてより小さい粒子を産生する)を含むいくつかのパラメーターにより影響を受ける。特定の設定において、マグネトロンチャンバーの出口開口部の後ろに設置された線形四重極装置(linear quadrapole device )を使用することでサイズ分布を測定できる。また、堆積のための狭いナノ粒子サイズ範囲を選択するためにインラインで四重極装置を使用することもできる。 Mantis Deposition 社システム のようなシステムはその大きい画分 (約40% 〜80%)1つの電子の電荷を有するナノ粒子を生産することができる。したがって、磁場又は第2の電場は同じような重量の粒子を互いに分離する為に使用することができる(より軽い粒子は与えられた場の中で同じ荷電のより大きい粒子に比べてより大きい角度で偏向されるので)。例えば、上記Mantis Deposition 社システムは非常に狭い分子量分布を有する荷電ナノ粒子の流れを産生することができる。さらに、負に荷電した粒子を陽性にバイアスされた表面上に加速し粒子を上昇した運動エネルギーと共に表面上に衝突させることも可能である。また、陽性にバイアスされた格子は、粒子が格子の穴を通り抜けて、表面に衝突させ、粒子を加速するのに使用されても良い。安値から高い値までバイアス電圧を変化させることにより、堆積フィルムは多孔性で緩く結合したナノ粒子から金属の固体フィルムに変化させる。Mantis システム と同様のシステムはOxford Applied Research, Witney, オックスフォード、英国から入手可能である。Mantis Deposition 社システムのようなシステムを使用する場合はバイアス電圧(例えば、10 V〜5000 Vで変動しても良い)及び粒子サイズ(例えば、0.7 nm 〜25 nmで変動しても良い)は薬物放出に有利な効果を有し、より高い電圧及びより小さい粒子サイズによりより少ない薬物放出を示すコーティングを得た。
【0050】
無機ナノ粒子を表面に加速するさらなるシステムについてはWeberらの米国特許第6,803,070号に記載されており、そこには医療機器のポリマーマトリックス中に粒子を埋め込む装置及び方法が開示されている。装置は解決策で陽性アウトレットに向かって融解ナノ粒子の流れを方向付ける為に適用された静電気のアウトレット(例えばスプレーノズル)を含んでもよい。次に、電極に取り付けられた医療機器を、電極に通電する(その結果、電場を作成する)際に荷電粒子がアウトレットから電極に向かって再び方向付けられるように、流れの中又は近接した場所に設置しても良い。この発明に示すように適切に電極を配置し、電極に通電することにより、荷電粒子は荷電粒子が自身を医療機器のポリマーマトリックスに埋め込むことを引き起こすことができる程度まで加速されても良い。
【0051】
本発明において、一方で荷電ナノ粒子は、Weberらの6,803,070に記載されたような方法を用いてナノ粒子が互いに融解するのに十分な大きさの電場強度で基礎構造上に加速することが可能である(例えば、基材及び任意に、少なくとも基材の一部の上に設置された少なくとも1つの治療薬-含有層を含む)。
【0052】
上記のように、上記のようなシステム由来のナノ粒子は荷電されるので、電場によってシステム内において加速されうる。さらに、個々のナノ粒子が融解するのに必要なエネルギーの量が基礎基材構造のバルク温度を上昇させるのに必要なエネルギーと比較して相対的に低いという事実により、この工程は室温又はそれに近い温度で効果的に行われる。
【0053】
無機層は室温又はそれに近い温度で形成することが出来るので、前記層は、特に治療薬、ポリマー性材料、金属性材料、非-金属性無機物材料又はそれらの混成物を含む広い範囲の材料上に配置することが出来る。
【0054】
後者の例として、放射線不透過性又は磁性粒子がポリマー性医療機器(例えば、生体分解性ポリマー性ステント等)内に提供され、基材として使用される。放射線不透過性又は磁性ナノ粒子が採用された場合、粒子のサイズが非常に小さいという事実により、いったんステントが崩壊するとマイナスの影響は無い。
【0055】
どんな特定のシステムを選んだとしても、結果として、相互接続されたナノ粒子の無機層を作成するのに適切なサイズ及び運動エネルギーをナノ粒子に提供するべきである。
【0056】
荷電粒子が非荷電ナノ粒子と混合される場合、非荷電ナノ粒子は例えば、第1の電場に入るナノ粒子の流れに垂直に磁場又は第2の電場をかけることによって分離されても良い。このことにより荷電ナノ粒子に力が加わり、荷電ナノ粒子の流れを曲げる。このようにして、非荷電要素よりむしろ加速された荷電要素のみによって打たれるような位置に基材構造を置くことが可能である。上記のように、この効果はさらに、サイズ分布の幅が狭いナノ粒子の流れを起こす為に使用することができる(特に粒子が全て同じ荷電の場合)。
【0057】
システムは第2の場に変化をもたらす(例えば、第1の電場又は磁場により作成された粒子の流れを偏向/曲げるように作用する電場又は磁場)ように作成することが出来ることにもさらに注目すべきである。例えば、そのようなシステムは基材への衝撃の方向を絶え間なく変化させることを誘導することが出来る(例えば、粒子の流れを曲げることにより)。システムが複雑な3-D構造のコーティングに適しているように、例えば荷電粒子が異なった角度で基材を打つのを許容することでより良い適用範囲を得られる(例えばシャドウエフェクトを減少又は回避する)。
【0058】
荷電粒子の流れに対する基材構造の方向を変化させることも望ましい。例えば、ステントのような管状の医療機器を荷電粒子の流れに暴露させながら軸方向に回転させても良い(及び任意で例えば荷電粒子の流れの大きさが小さく及び/又はそれが非均一である場合に長軸方向に往復運動しても良い)。
【0059】
上記のように、本発明の特定の態様において、装置基材上に薬物が堆積された後に無機層を堆積することができる。他の方法においては(例えば、Setagon社の米国特許公開第2004/0148015を参照されたい)、薬物を装填する前に、無機層ナノ多孔質を形成する。さもなくば、薬物が厳しい加工条件にさらされるからである。さらに、本発明において無機層が治療薬-含有層の上に配置されている場合、基本的に無機層の外側にはその形成後薬物が存在しない。他の方法でナノ多孔質無機層に後から薬物を装填した場合、薬物は層の外側に残る。本発明のこの特徴により、特定の態様(例えば、よりよい細胞応答を得るための)において薬物放出における初期の棘波を避けることが可能である。さらに以下でさらに詳細に述べるように発明の方法により、多くの他の方法で不可能であった様々な組成の複数の薬物層及び複数の無機層を可能にする。
【0060】
上記のように、いくつかの実施態様において、無機層は生体安定性 無機 ナノ粒子、例えば、特に上記の基材における使用に適切な構成成分 (例えば、酸化チタン、酸化イリジウム、酸化アルミニウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化チタン、酸窒化チタン、等)から形成された生体安定性 非-金属性無機物 ナノ粒子;特に上記基材における使用に適切な金属 (例えば、チタン、イリジウム、タンタル、プラチナ、金、ニオブ、モリブデン、レニウム等)から形成された生体安定性 金属性ナノ粒子;特に上記基材における使用に適切な金属合金(例えば、ステンレス鋼、プラチナエンリッチド放射線不透過性 ステンレス鋼、ニオブ 合金、チタン合金、ニチノール等)から形成された生体安定性 金属性ナノ粒子; 及びそれらの組み合わせから形成される。
【0061】
また上記のように、いくつかの実施態様において、無機層は生体分解性 無機 ナノ粒子、例えば、特に上記の基材における使用に適切な構成成分(例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等)から形成された生体分解性 非-金属性無機物ナノ粒子;特に上記基材における使用に適切な金属(例えば、鉄、マグネシウム、亜鉛等)から形成された生体分解性 金属性ナノ粒子; 特に上記基材における使用に適切な金属合金(例えば、1以上のFe、Ce、Al、Ca、Zn、Zr及びLiを含むその合金を含むマグネシウム合金、1以上のMg、Ce、Ca、Zn、Zr及びLiを含むその合金を含む鉄合金、1以上のFe、Mg、Ce、Ca、Zr及びLiを含むその合金を含む亜鉛合金等)から形成された生体分解性 金属性ナノ粒子; 及びそれらの組み合わせから形成される。
【0062】
いくつかの実施態様において、無機層は特に生体触媒性 ナノ粒子、例えば、イリジウム及びプラチナのような生体触媒性 金属性ナノ粒子ならびにそれらの組み合わせから形成される。
【0063】
いくつかの実施態様において、無機層は以下の2種以上を組み合わせて形成される: 生体安定性 ナノ粒子、生体分解性 ナノ粒子及び生体触媒性ナノ粒子。
【0064】
いくつかの実施態様において 少なくともいくつかのナノ粒子は基礎医療機器基材と同じ組成を有する。具体例にはイリジウム、タンタル、チタン、コバルト、鉄、亜鉛、金、これらを2以上含む合金、ステンレス鋼及びニチノールが挙げられる。本発明のいくつかの具体的実施態様をここで図と関連づけて説明する。図2には、生体安定性又は生体分解性 医療機器基材 110 (例えば、生体安定性又は生体分解性 金属性基材)、基材 110上に設置された連続治療層 120 (例えば、パクリタキセルの層)及び治療層 120上に設置された生体安定性又は生体分解性 無機 ナノ粒子-誘導性ナノ多孔質層 130を含む医療機器 100の断面図を図示する。例えば層130はマグネシウム、鉄、亜鉛又はそれらのそれら自身又は他の元素との合金のナノ粒子から形成される生体分解性層であっても良い。そのようなシステムにおいて、ポアサイズは層130が生体崩壊するにつれ、治療層 120 (生体分解性と想定される)の残余と共に、生体分解性層130の全体が最終的にin vivoにおいて除去され(例えば、溶解、崩壊、吸収及び/又は別の方法で除去される)、時間と共に増加することが予測される。
【0065】
図2と同様に、図3には、基材 110上に配置された生体安定性又は生体分解性 医療機器基材 110、治療層 120 (例えば、パクリタキセル層)及び治療層 120上に設置された生体安定性又は生体分解性 ナノ粒子-誘導性ナノ多孔質層 130を含む医療機器 100の断面図を示す。治療層 120が連続である図2とは異なり、図3の治療層 120は不連続である。そのような不連続治療層 120は直接、例えば、治療薬の非-結合クラスターを配置することによって (例えば上記図1を参照されたい)又は連続治療層を形成し、層の選択した部分を除去することによって形成されても良い。治療層 120は非-連続性なので、ナノ多孔質層 130は基材110が治療層 120でカバーされていない場所で基礎基材 110に融合する。特定の態様において、オーバー(overlying)ナノ多孔質層130は基礎基材 110と同じ材料で形成される。特定の態様において、基材は軟金属プライマーコーティングと共に提供される。
【0066】
図4は医療機器 100の断面図を図示しており、前記医療機器は生体安定性又は生体分解性 医療機器基材 110、基材 110上に配置された不連続治療層 120、及び生体安定性 ナノ粒子 130の混合物から形成されたナノ多孔質層 130及び治療層 120及び基材 110上に配置された生体分解性 ナノ粒子 130d を含む。ナノ粒子 130dの存在により、ナノ多孔質層 130は部分的に生体分解性である。この実施態様は例えば層の空隙率を時間の経過と共に増加させる(例えば、治療薬の放出率を増加させる為に等)が、しかしながら結局多孔質構造(例えば、ナノ多孔質構造)を保有する場合に有用である。
【0067】
図5は医療機器 100の断面図を図示しており前記医療機器は生体安定性又は生体分解性 医療機器基材 110、基材 110上に配置された不連続治療層 120及び生体安定性 ナノ粒子 130の混合物から形成されたナノ多孔質層 130及び治療層 120及び基材 110上に配置された触媒性ナノ粒子 130c。ナノ粒子 130cの存在により、ナノ多孔質層 130は治療薬放出機能に加えて触媒機能を有する。
【0068】
さらに本発明の実施態様は1以上の ナノ粒子-誘導無機層から分離した2以上の治療薬-含有層を含んでも良い。治療薬-含有層は同じ又は異なる治療薬、同じ又は異なる任意の薬剤 (例えば、ポリマー性材料、無機材料又はそれらの混成物から形成された多孔性又は非多孔性マトリックス/リザーバー層であって、1以上の治療薬が局在する前記層等)を含んでも良い。無機層は同じ又は異なる組成、同じ又は異なるポアサイズ等を含んでも良い。
【0069】
図6 は医療機器 100の断面図を図示しており、前記医療機器は (a)生体安定性又は生体分解性 医療機器基材 110、(b) 基材 110上に設置された第1不連続治療層 121、(c) 第1治療層 121上 (及び基材 110の一部の上)の生体安定性 及び/又は 生体分解性 第1ナノ粒子-誘導性ナノ多孔質層 131 (d) 第1不連続治療層 121と同じ組成の第1ナノ粒子-誘導性ナノ多孔質層 131上に設置された第2不連続治療層 122 (e)第1ナノ粒子-誘導性ナノ多孔質層 131と同じ組成の第2不連続治療層 122 上(及び第1ナノ粒子-誘導性ナノ多孔質層 131の一部の上)に配置された第2ナノ粒子-誘導性ナノ多孔質層 132 (f)第1及び第2 不連続治療層121、122とは異なる組成(例えば、異なる治療薬を含むため、等)の第2ナノ粒子-誘導性ナノ多孔質層 132上に設置された第3不連続 治療層 123及び(g)第1及び第2 ナノ粒子-誘導性ナノ多孔質層 131,132とは異なる組成及び/又は ポアサイズ第3不連続 治療層 123上(及び第2ナノ粒子-誘導性ナノ多孔質層 132の一部の上)に設置された第3 ナノ粒子-誘導性ナノ多孔質層 133を含む。
【0070】
具体的な例として、第3不連続治療層123中の治療薬は第1及び第2治療層121、122中のものよりも高い水和半径を有する治療薬を含んでも良く、及び第3ナノ多孔質層133は第1及び第2ナノ多孔質層131、132を形成するナノ粒子よりも大きい半径を有するナノ粒子から誘導されても良い。
【0071】
他の具体的な実施例として、第3不連続治療層123中の治療薬は第1及び第2治療層121、122中のものとは異なってもよく、及び第1、第2及び第3ナノ多孔質層131、132、133は生体分解性及び生体安定性 ナノ粒子の混合物から誘導されてもよく、第3ナノ多孔質層133における生体分解性の生体安定性ナノ粒子に対する比は第1及び第2ナノ多孔質層131、132のものより大きい。
【0072】
図7は医療機器 100の断面図を図示しており、前記医療機器は(a)生体安定性又は生体分解性 医療機器基材 110、(b) 基材上に配置された治療薬-含有層 120 (c)治療薬-含有層上に配置されたマクロ多孔質 無機層 130及び(d) マクロ多孔質 無機層 130上に配置されたナノ多孔質 無機層 132を含む。
【0073】
図7A- 7Eは、図7の装置を形成する方法を示す断面図である。図7Aについてみると、最初のステップにおいて、リザーバー前駆体層 115p が生体安定性又は生体分解性 医療機器基材 110上に提供される。リザーバー前駆体層 115pが第1材料部材 115a及び第2材料部材 115bを含むことが示されている。例えば、図示されるように、第2材料部材 115bは第1材料部材 115a内に分散していても良い。他の例として、第1及び第2 材料部材は互いに絡み合ったネットワークを構築していても良い(示さず)。以下に示すように第1及び第2 材料部材の第1の特徴は、リザーバー前駆体層少なくとも第2材料部材の1部がリザーバー前駆体層から除去され多孔性リザーバー層が形成されるような条件下に置くことが出来ることである。
【0074】
図7B、マクロ多孔質層 130は続いてリザーバー前駆体層 115p上に形成される。例えば, 無機粒子 (例えば、特に上記金属性及び非-金属性無機物材料)が、無機粒子が融合し、マクロ多孔質 無機層 130を形成する条件下、リザーバー前駆体層 115pの上側表面上に加速される本明細書に記載された方法によってマクロ多孔質層 130が形成されても良い。他の例として、マクロ多孔質 無機層 130はWeberらの米国公開特許第2004/0098089号に記載されたsol-gel法と組み合わせブロックコポリマーを用いて有機-無機複合体層を形成し、続いて複合体層を加熱しポアを形成することによって形成されても良い。A. Jain らの"Direct Access to Bicontinuous Skeletal Inorganic Plumber's Nightmare networks from Block Copolymer," [Lambda]"gew. Chem. Int. Ed. 2005, 44, 1226-1229も参照されたい。
【0075】
図7Bに示されるような構造が一旦形成されると、構造は少なくとも第2材料部材115b がリザーバー前駆体層115pから除去され(例えば、第2材料部材の体積の減少、第2材料部材等の完全な除去に対応する)、図 7Cに示されるような多孔性リザーバー層 115rが形成されるような条件下に置かれる。図7Cに示されるような実施態様においてマクロ多孔質 無機層 130に隣接する第2材料部材 115bの一部が除去されポア/空隙115v (以下に論じるように、続いて治療薬を保持することが出来る)が形成される一方で他の部分115b は多孔性リザーバー層 115r内に残る。
【0076】
ある態様において、リザーバー前駆体層 115pの第2材料部材 115bの形成に使用される材料は特に以下のものから選択されても良い: 少なくとも部分的に蒸気に変換され、マクロ多孔質 無機層を通り抜ける材料、例えば、蒸発可能なナノ粒子、可燃性材料(例えば、酸素と反応し二酸化炭素及び水のような気体状の副産物を形成する材料)、昇華可能な材料(例えば、カルシウム及びマグネシウムのような昇華可能な金属、樟脳又はナフサのような昇華可能な有機化合物等)、還元の際に体積が縮小する材料(例えば特定の金属酸化物)、昇華可能な金属の還元可能な-酸化物(例えば、還元環境下において加熱され、昇華可能な金属に変換される金属酸化物、例えば、カルシウム及びマグネシウムの酸化物)である。リザーバー前駆体層 115pの第1材料部材 115a の形成に使用する材料は実質的に前述の工程に抵抗性である (例えば、チタンのような高融点貴金属、高融点及び還元抵抗性金属酸化物等)。
【0077】
ある態様において、リザーバー前駆体層115pの2番目の材料成分115bを形成するのに使用されてもよい材料は、適当な除去工程を使用することで酸化し、取り除くことができる金属を含んでいる。リザーバー前駆体層 115pの第1材料部材 115a を形成するのに使用される材料は、実質的に酸化と除去に抵抗性である。例えば、リザーバー前駆体層は高い不活性性の第1金属成分115a(例えば、金、プラチナ等)及び低い不活性性の第2金属成分115b(例えばZn、Fe、Cu、Ag等)を含んでも良い。第2金属成分115bを酸化及び除去するために利用可能な様々な方法としては (a) 適切な酸に接触させる(例えば、硝酸)、(b) 適切な電解質に浸漬しながら、十分な強度及びバイアスの電圧を適用する、及び(c) 酸素の存在下で加熱し、得られた酸化物を溶解する事が含まれる。
【0078】
第1及び第2 材料部材 115a、115bを備えたリザーバー前駆体層115pは、例えば第1材料部材 115aを形成する材料の粒子を第2材料部材 115bを形成する材料の粒子と結合させることによって形成される。リザーバー前駆体層115pは、前記粒子混合物から、例えば、粒子を固めること(例えば、圧力などのあるなしにかかわらず粒子混合物を焼結させることによって等)によって形成されても良い。材料は上記特性を有する第1及び第2 材料部材に自然に分離されることも知られている。例えば、金属合金は自然により不活性度のより低い金属層とより高い金属層に分離することが知られている。これら及び他の金属に関するさらなる情報はHelmusらの米国特許公開第US 2006/0129215及び本明細書に引用される参考文献に記載されている。
【0079】
いったん図7Cに示すような適切な多孔性リザーバー層115rが形成されると、多孔性 リザーバー層 115rに治療薬を装填することができる。例えば、治療薬を含む層点組成物は図7Dに示すように、装置構造Eの外部からマクロ多孔質 無機層 130 を通って図7Cのポア/間隙 115vが少なくとも部分的に、治療薬を含む治療薬組成物 115tで満たされるように運搬されても良い。この工程の結果として孔性リザーバー層 115r 及び多孔性リザーバー層 115rのポアの内部の治療薬組成物 115tで構成される治療薬-含有層 120が形成される。装填組成物の例としては多孔性リザーバー層のポアの中に堆積された、少なくとも1つの治療薬を含む気相組成物が挙げられる。装填組成物の例としてはさらに、例えば少なくとも1つの治療薬を含む融解物、少なくとも1つの治療薬と溶媒種で構成される少なくとも1つの治療薬を含む溶液を含む、少なくとも1つの治療薬を含む液相組成物が挙げられる。そのような液相組成物は冷却又は溶媒種を取り除く(例えば蒸発させる)ことで多孔性リザーバー層のポアの中で凝固する。
【0080】
いったん治療薬-含有層 120が形成されると、図7Dの構造上にナノ多孔質層 132が形成され図7Eの構造を形成する。例えば、ナノ多孔質層 132は本明細書に記載された方法で形成されても良く、前記方法は無機 ナノ粒子が融合しナノ多孔質 無機層 132を形成する条件下で無機 ナノ粒子がマクロ多孔質 無機層 130の上側表面上に加速される。ナノ多孔質 無機層 132 の為の材料の例としては、特に生体安定性ナノ粒子、生体分解性ナノ粒子、生体触媒性ナノ粒子、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0081】
上記方法の利点は、マクロ多孔質無機層130は先駆体から多孔質層よりむしろ多孔質層(すなわち、リザーバー前駆体層115p)上に堆積されることである。そのような前駆体層115p は対応する多孔性のものと比較して平坦なので、マクロ多孔質無機層 130の堆積工程 及びそれに続くナノ多孔質 無機層 132 堆積工程は、治療薬が別の方法でサイドギャップを通じて出るシャドウ効果を避ける。さらに平坦な基材上への堆積は均一な治療薬放出によりよいことが期待されるコーティング層においても得られる。
【0082】
本発明の他の態様において、生体分解性金属性ステントが提供される。 例えば、装置は, (a) 第1生体分解性金属又は金属合金で形成された金属性ステント本体、 (b)ステント本体の上の治療層及び(c)治療層の上の無機-ナノ粒子-誘導性金属性層から構成される。金属性層は、第1生体分解性金属又は金属合金と同じ又は異なっても良い第2生体分解性金属又は金属合金から形成される。 例えば、無機-ナノ粒子-誘導性金属性層は、ステント本体が一時的に金属性層に電気化学的腐食を提供するように金属性ステント本体を形成している金属又は金属合金よりもより不活性な金属又は金属合金から形成されても良い。具体的な例として鉄 ナノ粒子から誘導された金属性層は、マグネシウムで形成されたステント本体の上に配置された治療層 (例えば、個々の堆積、粒子等を含む治療薬の島で形成された不連続層の形態であっても良い)の上に形成されたも良い。これらのいくつかの実施態様において、治療層を鉄層で挟むために別の付加的な 鉄層を治療層の前にマグネシウム ステント上に形成しても良い。上に示すようにあまり不活性でないステントのマグネシウムバルク材料は鉄層の未発達な腐食に対し、電気化学的腐食を提供する。その結果、基本的にはバルクステントが腐食を受ける限り、薬物含有層が存在したままで残っておりそれにより基本的にはマグネシウムステントの一生涯の間、治療薬の放出が続き、究極的には鉄層が同様に腐食するステントを提供することが可能である。
【0083】
他の具体的な実施態様において、本発明の無機 ナノ多孔質層は、特にペースメーカーのためのリード、移植可能な除細動機、脊髄電気刺激法システム、脳深部電気刺激法システム、末梢神経への刺激システム、人工耳、および網膜移植を含む移植可能な電気刺激装置のための電極上に提供される。本発明の無機 ナノ多孔質層は 例えば薬物放出の見地、電流密度の見地、または両方から望ましい。例えば、ステロイド-溶出電極 (例えば、デキサメタゾンナトリウムコルチコステロイド溶出電極)はペーシングのための刺激閾値の維持において有益である。そのようなシステムは、例えばプラチナで被覆された多孔性チタン電極で囲まれた浸透性のシリコンを含む。本発明においては、一方で伝導性 ナノ多孔質 無機層、例えばナノ多孔質 プラチナ層は直接シリコンの上に配置されていても良い。良好な感度及び刺激特性を維持しながら電極の有効性は電極の大きさを最小化する助けとなる(表面積を最大化することにより)。さらに、ナノ多孔質層の真下に供給される際において、例えば、基礎基材 (例えば、シリコン等)が治療薬-含有組成物で含浸又は被覆されている場合に電極の有孔性は同様に治療薬の放出を調整する助けとなる。
【0084】
さらに他の態様において、本発明のナノ粒子-誘導性ナノ多孔質無機層は電気応答性 ポリマー (例えば、ポリピロールは特に電気応答性 ポリマーとして知られている)の上に形成される。例えば、特に電気応答性 ポリマーを採用する医療機器の例としては、例えば、US 2005/0165439, US 2007/0043256及びUS 2006/0293563を参照されたい。そのような装置において、電気応答性 ポリマーの中及び外にイオンを通過させる (拡張及び収縮を起こし、その結果装置を作動させる)ような材料の層で、電気応答性 ポリマーを被覆することが望ましい。この機能は本発明の無機 ナノ多孔質層を使用することにより得られる。
【0085】
「生物学的活性薬」「薬剤」「治療薬」「医薬的活性薬」「医薬的活性材料」 及び他の関係ある用語は本明細書において互換的に使用されても良く、遺伝子治療薬、非-遺伝子治療薬及び細胞を含む。さまざまな疾患、症状の治療(すなわち疾患又は症状の予防又は疾患又は症状に付随する症候の消失又は疾患又は症状の実質的又は完全な消失)に使用されるものを含む本発明に関連してさまざまな治療薬を使うことができる。多数の治療薬が本明細書に記載される。
【0086】
本発明に関連する使用に適切な非-遺伝子治療薬は、例えば以下のうち1以上から選択される: (a)ヘパリン、ヘパリン誘導体、ウロキナーゼ、クロピドグレル及びPPack (デキストロフェニルアラニンプロリンアルギニンクロロメチルケトン)のような抗血栓薬; (b) デキサメサゾン、プレドニゾロン、コルチコステロン、ブデソニド、エストロゲン、スルファサラジン、およびメサラミンのような抗炎症薬; (c)パクリタキセル、5-フルオロウラシル、シスプラチン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、エポチロン、エンドスタチン、アンジオスタチン、アンジオペプチン、 平滑筋増殖を阻害することができるモノクロナール抗体及びチミジンキナーゼ阻害剤のような抗新生物/抗増殖/抗有糸分裂薬; (d) リドカイン、ブピバカイン、ロピバカインなどの麻酔薬; (e) D-Phe-Pro-Arg クロロメチルケトン、RGD ペプチド-含有化合物、ヘパリン、ヒルジン、抗トロンビン化合物、血小板レセプターアンタゴニスト、抗-トロンビン抗体、抗-血小板レセプター 抗体、アスピリン、プロスタグランジン阻害薬、血小板阻害薬及び抗血小板薬とマダニ抗血小板ペプチドのような抗-凝血薬; (f)成長因子、転写活性薬及び翻訳プロモーター及び転写プロモーターのような血管細胞成長プロモーター; (g)成長因子阻害薬、成長因子レセプター アンタゴニスト、転写抑制因子、翻訳抑制因子、複製阻害薬、阻害性抗体、成長因子に対する抗体、成長因子及びサイトトキシンからなる二官能性分子、抗体及びサイトトキシンからなる二官能性分子のような血管細胞成長阻害薬; (h) プロテインキナーゼ及びチロシンキナーゼ阻害薬(例えば、チロホスチン、ゲニステイン、キノキサリン); (i)プロスタサイクリン誘導体; (J) 高脂血治療薬; (k)アンジオポエチン; (1) トリクロサンなどの抗菌薬、セファロスポリン、マゲイニン、アミノグルコシド及びニトロフラントインなどの抗微生物ペプチド; (m)細胞毒性薬、細胞増殖抑制剤、および細胞増殖影響因子; (n) 血管拡張剤; (o)内因性の血管作動性メカニズムを阻害する薬剤, (p)モノクロナール抗体のような白血球動員阻害薬; (q) サイトカイン; (r) ホルモン; (s) ゲルダナマイシンを含むHSP90タンパク質(すなわち、分子シャペロン又はハウスキーピングタンパク質であり、細胞の成長及び生存に反応可能な他のクライアントタンパク/シグナル 変換 タンパクの安定性及び機能に必要なヒートショックタンパク質)の阻害薬 、(t)β-拮抗薬、(u)bARKct 阻害薬、(v) ホスホランバン阻害薬(w) Serca 2 遺伝子/タンパク、(x)アミノキノリン例えばレジキモド(resiquimod)及びイミキモドのようなイミダゾキノリンを含む免疫反応修飾薬(y) ヒトアポリポプロテイン(例えば、AI、All、AIII、AIV、AV) (z)ラロキシフェン、ラソフォキシフェン、アルゾキシフェン (arzoxifene)、ミプロキシフェン、オスペミフェン、PKS 3741、MF 101及びSR 16234のような選択的エストロゲンレセプター修飾薬 (SERMs) (aa)ロシグリタゾン、ピオグリタゾン、ネトグリタゾン、フェノフィブラート、ベキサオテン(bexaotene)、メタグリダセン(Metaglidasen)、リボグリタゾン及びテサグリタザルのようなPPARα、γ、およびδアゴニストを含むPPARアゴニストを含むPPAR アゴニスト (bb)アルプロスタジル又はONO 8815LyなどのPGE2アゴニストを含むプロスタグランジンEアゴニスト、 (cc)トロンビンレセプター 活性化ペプチド (TRAP)、(dd) ベナゼプリル、ホシノプリル、リシノプリル、キナプリル、ラミプリル、イミダプリル、デラプリル、モエキシプリル、およびスピラプリルを含むバソペプチダーゼ阻害薬 (ee) チロシンβ4、(ff)ホスホリルコリン、ホスファチジルイノシトール、およびホズファチジルコリンを含むリン脂質、(gg) VLA-4 アンタゴニスト及びVCAM-I アンタゴニスト.
【0087】
好ましい非-遺伝子治療薬としては、特にパクリタキセル(それらの特定の形態、 例えば、アルブミン-結合パクリタキセルナノ粒子のようなタンパク-結合パクリタキセル粒子、例えばABRAXANEを含む)、シロリムス、エベロリムス、タクロリムス、ゾタロリムス、Epo D、デキサメサゾン、エストラジオール、ハロフジノン、シロスタゾール、ゲルダナマイシン、塩化アラゲブリウム(ALT-711)、ABT-578(Abbott Laboratories)トラピジル、リプロスチンリプロスチン、アクチノマイシンD、レステン-NG、Ap17、アブシキシマブ、クロピドグレル、リドグレル、ベータブロッカー、bARKct抑制剤、ホスホランバン抑制剤、Serca2遺伝子/タンパク質、イミキモド、ヒトアポリポプロテイン(例えば、AI-AV)、成長因子(例えば、VEGF-2) のようなタキサンならびにそれらの誘導体が挙げられる。
【0088】
本発明と関連して使用する遺伝子治療薬の例としてはアンチセンスDNA及びRNAならびに DNAコーディング: (a) アンチセンスRNA, (b) 欠損又は欠乏内分泌性分子を置き換える為のtRNA又はrRNA (c)酸性及び塩基性の線維芽細胞増殖因子、血管内皮増殖因子、表皮増殖因子、変異成長因子α、β、血小板由来内皮増殖因子、血小板由来増殖因子、腫瘍壊死因子α、肝細胞成長因子、およびインスリン様増殖因子のような成長因子を含む血管新生因子 (d)CD阻害剤を含む細胞周期阻害剤及び(e)チミジンキナーゼ ("TK")及び細胞増殖を阻害するのに有用な他の薬剤。BMP-2、BMP-3、BMP-4、BMP-5、BMP-6 (Vgr-1)、BMP-7 (OP-I)、BMP-8、BMP-9、BMP-IO、BMP-1 1、BMP- 12、BMP-13、BMP-14、BMP-15及びBMP-16を含む骨形成タンパクファミリー ("BMP's")のDNAエンコーディングもまた興味深い。広く好ましいBMPはBMP2、BMP-3、BMP-4、BMP-5、BMP-6及びBMP-7のいずれかである。これらの二量体タンパクはホモダイマー、ヘテロダイマー又はそれらの組み合わせ、単独又は他の分子と組み合わせて提供することができる。 あるいは、又はさらにBMPの上流の、または、川下の効果を引き起こすことができる分子を提供することができる。そのような分子は、"ヘッジホッグ"タンパク、又はそれらをコードするDNAを含む。
【0089】
遺伝子治療薬を伝達するベクターには、アデノウイルス、gutted-アデノウイルス, アデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルス、アルファウイルス(Semliki Forest, Sindbis等)、レンチウイルス、単純ヘルペスウイルス、複製能を有するウイルス (例えば、ONYX-015) and hybrid vectorsのようなウイルス性ベクター;及び人工染色体及びミニ-染色体、プラスミドDNAベクター(例えば、pCOR)、カチオン性ポリマー (例えば、ポリエチレンイミン、ポリエチレンイミン (PEI))、グラフトコポリマー (例えば、ポリエーテル-PEI及びポリエチレンオキシド-PEI)、天然ポリマー PVP、SPlO 17 (SUPRATEK)、カチオン性脂質、リポソーム、脂質複合体(lipoplexes)のような脂質、タンパク質導入ドメイン(Protein Transduction Domain(PTD))のような標的配列を有する又は有しないナノ粒子又はマイクロ粒子のような非-ウイルス性ベクターが含まれる。
【0090】
本発明に関連して使用することが出来る細胞には、全体の骨髄、骨髄由来単核細胞、前駆細胞(例えば、内皮前駆細胞)、幹細胞(例えば、間葉系、造血性、神経性)、多能性幹細胞、線維芽細胞、筋原細胞、衛星細胞、周皮細胞、心筋細胞、骨格筋細胞又はマクロファージを含むヒト由来の細胞(自家又は同種)、又は所望であれば、目的のタンパクを誘導するために遺伝子的に操作することが出来る動物、微生物又は菌由来(異種)のものが挙げられる。
【0091】
必ずしも上記列挙されたものに限られない、多数の治療薬が血管及び他の療法(例えば、再狭窄を標的とした薬剤 (抗再狭窄薬))の候補として同定される。そのような薬剤は本発明の実施に有用であり、適切な例としては以下のうち1以上から選択されても良い: (a)ジルチアゼム及びクレンチアゼムのようなベンゾジアゼピン、ニフェジピン、アモロジピン 及びニカルダピンのようなジヒドロピリジン及びベラパミルのようなフェニルアルキルアミンを含むCa-チャネル拮抗薬(b)ケタンセリン及びナフチドロフリルのような5-HT アンタゴニスト、ならびにフルオキセチンのような5-HT取り込み阻害薬を含むセロトニン経路修飾薬(c) シロスタゾール及びジピリダモールのようなホスホジエステラーゼ阻害薬、ホルスコリンのようなアデニラーゼ/グアニラーゼシクラーゼ刺激薬、ならびにアデノシン類似薬を含む環状ヌクレオチド経路薬(d)プラゾシン及びブナゾシンのようなα- アンタゴニスト、プロプラノロールのようなβ-アンタゴニスト、ラベタロール及びカルベジロールのようなα/β- アンタゴニスト を含むカテコールアミン修飾薬 (e)ボセンタン、シタキセンタンナトリウム(sitaxsentan sodium)、アトラセンタン、エンドネンタン(endonentan)のようなエンドセリンレセプター アンタゴニスト(f)ニトログリセリン、イソソルビド、硝酸イソソルビド及び亜硝酸アミルのような有機硝酸塩/亜硝酸塩、ニトロプルシドナトリウムのような無機ニトロソ化合物、モルシドミン及びリンシドミンのようなシドノンイミン、ジアゼニウムジオレート(diazenium diolates)及びアルカンジアミンのNO付加物のようなNONOエート(NONOate)、低分子量化合物(例えば、カプトリル, グルタチオン及びN-アセチルペニシラミンのS-ニトロソ誘導体)及び高分子量化合物 (例えば、タンパク、ペプチド、オリゴサッカライド、ポリサッカライド、合成ポリマー/オリゴマー及び天然ポリマー/オリゴマーのS-ニトロソ誘導体)を含むS-ニトロソ化合物、ならびに C-ニトロソ-化合物、O-ニトロソ-化合物、N- ニトロソ-化合物及びL-アルギニンを含む一酸化窒素 供与体/放出分子、(g) シラザプリル、ホシノプリル及びエナラプリルのようなアンジオテンシン転換酵素 (ACE)阻害薬、(h) サララシン及びロサルチンのようなATII-レセプター アンタゴニスト、(i)アルブミン及びポリエチレン オキシドのような血小板粘着阻害薬、(j)シロスタゾール, アスピリン及びチエノピリジン(チクロピジン、クロピドグレル)を含む血小板凝集阻害薬及びアブシキシマブ、エピチフィバチド(epitifibatide)及びチロフィバンのようなGP Ilb[Lambda]IIa阻害薬、(k)ヘパリン、低分子量ヘパリン、デキストラン硫酸及び[β]-シクロデキストリンテトラデカサルフェートのようなヘパリノイド、ヒルジン、ヒルログ、PPACK(D-phe-L-プロピル-L-arg-クロロメチルケトン)及びアルガトロバンのようなトロンビン阻害薬、アンチスタチン 及びTAP (マダニ抗凝固ペプチド)のようなFXa阻害薬、ワーファリンのようなビタミンK阻害剤ならびに活性化タンパクC、を含む血液凝固経路経路修飾薬(1) アスピリン、イブプロフェン、フルルビプロフェン及びインドメタシンやスルフィンピラゾンなどのシクロオキシゲナーゼ経路阻害剤、(m) デキサメサゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、およびヒドロコーチゾンのような天然及び合成副腎皮質ステロイド (n) ノルジヒドログアヤレチック酸及びカフェイン酸のようなリポキシゲナーゼ経路阻害剤、(o) ロイコトリエンレセプターアンタゴニスト(p) E-及びP-セレクチンのアンタゴニスト、(q) VCAM-I及びICAM-Iの相互作用の阻害剤、(r) PGElならびにPGI2などのプロスタグランジン及びシプロステン、エポプロステノール、カルバサイクリン、イロプロストならびにベラプロストなどのプロスタサイクリン類似体を含む、プロスタグランジンとそれらの類似体 (s) ビスフォスフォネートを含むマクロファージ活性化阻害剤、(t)ロバスタチン、プラバスタチン、アトルバスタチン、フルバスタチン、シンバスタチン及びセリバスタチンのようなHMG-CoA還元酵素阻害薬、(u) 魚油及びオメガ-3-脂肪酸、(v) プロブコール、ビタミンC及びE、エブセレン、トランス-レチノイン酸、SOD(オルゴテイン)、およびSOD類似薬、ベルテポルフィン、ロスタポルフィオタン(rostaporfiotan)、 AGI 1067及びM 40419のようなフリーラジカルスカベンジャー/抗酸化剤、(w) bFGF 抗体及びキメラ融合タンパクのようなFGF 経路薬、トラピジルのようなPDGF レセプター アンタゴニストを含む様々な成長因子に影響を与える薬剤、アンジオペプチン及びオクトレオタイドのようなソマトスタチン類似薬を含むIGF 経路薬、ポリアニオン薬(ヘパリン、フコイジン)、デコリン及びTGF-[β] 抗体のようなTGF-[β] 経路薬、EGF 抗体、レセプター アンタゴニスト及びキメラ融合タンパクのようなEGF 経路薬、サリドマイド及びそれらの類似薬のようなTNF-[α]経路薬、スロトロバン、バピプロスト、ダゾキシベン及びリドグレルのようなトロンボキサン A2 (TXA2)経路修飾薬、ならびにチロホスチン、ゲニステイン及びキノキサリン誘導体のようなタンパクチロシンキナーゼ阻害薬、(x)マリマスタット、イロマスタット、メタスタット、バチマスタット、ペントサンポリサルフェート、 レビマスタット、インサイクリニド、アパラスタット、PG 116800、RO 1130830又はABT 518のようなマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)経路阻害薬、(y)サイトカラシンBのような細胞運動性阻害薬、(z)プリン類似薬 (例えば、 6-メルカプトプリン又は塩素化したプリンヌクレオシド類似薬であるクラドリビン)、ピリミジン類似薬(例えば、 シタラビン及び5-フルオロウラシル) 及びメトトレキセート のような代謝拮抗薬、ナイトロジェンマスタード、 アルキルスルホン酸、 エチレンイミン、抗生物質 (例えば、ダウノルビシン、ドキソルビシン)、ニトロソウレア、シスプラチン、微小管機能に影響する薬剤(例えば、 ビンブラスチン、ビンクリスチン、コルヒチン、Epo D、パクリタキセル及びエポチロン)、カスパーゼ活性薬、プロテオソーム阻害薬、血管新生阻害薬 (例えば、エンドスタチン、アンジオスタチン及び スクアラミン)、オリムスファミリー薬(olimus family drugs) (例えば、シロリムス、エベロリムス、タクロリムス、ゾタロリムス、等)、セリバスタチン、フラボピリドール及びスラミンを含む抗増殖性/抗増殖性薬 (aa) ハロフジノン(halofiiginone)又は他のキナゾリノン又は他のキナゾリノン誘導体及びトラニラストのようなマトリックス堆積(matrix deposition)/組織化 経路阻害薬 (bb) VEGF 及び RGDペプチドのような内皮化促進薬(endothelialization facilitators) (cc) ペントキシフィリンのような血液レオロジー修飾薬及び (dd)塩化アラゲブリウム(ALT-71 1)のようなグルコースクロスリンクブレーカー(glucose cross-link breakers)。
【0092】
本発明の実施に有用な多数のさらなる治療薬は、Kunzらの米国特許第5,733,925号にも開示されている
【0093】
本明細書において様々な実施態様が具体的に例証され、解説されるが、本発明の修正及び改変は、本発明の精神及び意思から解離することなく、上記の教示に含まれ、付属する請求項の範囲内である。
【0094】
実施例
パクリタキセルは(a)純粋パクリタキセルの連続層をTHF溶液からマスクした(地金によって囲まれた薬物の島を作成するために)基材上に堆積することにより、(b)パクリタキセル(8.8%)及びSIBS (91.2%)の連続層をTHF溶液からマスクした基材上に堆積させることにより、又は (c) THF に溶解した0.005% パクリタキセル混合物を、堆積の間に露出した地金の領域を有する表面上に小さい無定形パクリタキセルの堆積を作成するために堆積させる間基材を70℃に加熱しながら基材上にインクジェット堆積することにより、ステンレス鋼基材上に堆積させた。次に堆積したイリジウム 又はタンタル ナノ粒子の被覆層がパクリタキセル堆積上にMantis Deposition 社システムを用いて蒸気と同様に形成された。バイアス電圧は20〜4000 Vまで変化させ、粒子サイズは3〜10 nmで変化させ、厚さは20〜200 nmで変化した。データの分析によればコーティングの厚さは、比較的薬物放出にテストした厚さの範囲内では比較的小さい影響を与えることを示した。しかしながら、パクリタキセル放出はバイアス電圧の増加及び粒子サイズの減少と共に減少し、最も低い放出は4000Vのバイアス電圧及び約3 nm (コーティングの厚さ200 nm)のタンタル粒子サイズを用いてタンタル-ナノ粒子-誘導性層でオーバーコートされたインクジェット堆積パクリタキセルで観察された。得られた構造は崩壊放出機能を有し現行の市販されている薬物溶出ステントと比較して160時間で20%〜30%の薬物溶出を示した。PBS/T20 放出媒体溶液(0.01 M リン酸バッファー、0.05% T20; Sigma PN: P-3563)中で160時間薬物溶出後のそのような被覆基材の走査型電子顕微鏡写真 (SEM)を図8に示す。図8に見られるように堆積層において亀裂又は剥離の徴候は全く見られない。一般的に、パクリタキセルが溶出するにつれ、ナノ粒子-誘導性層は収縮し折りたたみを形成することが観察される。図8に示される膜は完全には収縮せず、パクリタキセルが膜の下になお存在することが示された。
【0095】
本明細書において様々な実施態様が具体的に例証され、解説されるが、本発明の修正及び改変は、本発明の精神及び意思から解離することなく、上記の教示に含まれ、付属する請求項の範囲内である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療薬放出医療機器を形成する方法であって、無機ナノ粒子構造の上側表面の上に加速すること、前記構造は(a) 基材及び(b)前記基材の上に配置された治療薬を含む治療層を含み、前記無機ナノ粒子は融合無機ナノ粒子を含む層が前記構造の上に形成される条件化で加速される前記方法。
【請求項2】
治療薬が医療機器からin vivoにおいて近似0次(near zero-order)放出特性で放出される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
ナノ粒子が磁性又は常磁性ナノ粒子であり、前記ナノ粒子 が第1磁場において加速される、請求項1記載の方法。
【請求項4】
ナノ粒子の軌道が第2磁場によって修飾される、請求項3記載の方法。
【請求項5】
ナノ粒子が荷電ナノ粒子であり、前記ナノ粒子が第1電場において加速される、請求項1記載の方法。
【請求項6】
ナノ粒子の軌道が磁場又は第2の電場によって修飾される、請求項5記載の方法。
【請求項7】
ナノ粒子の平均径が2〜250nmである、請求項1記載の方法。
【請求項8】
ナノ粒子の平均径が2〜50 nmである、請求項1記載の方法。
【請求項9】
ナノ粒子の平均径が2〜15 nmである、請求項1記載の方法。
【請求項10】
治療層がパクリタキセルを含む、請求項9記載の方法。
【請求項11】
無機層の厚さが少なくとも加速されたナノ粒子の直径の5倍である、請求項1記載の方法。
【請求項12】
ナノ粒子が非-金属性無機物ナノ粒子を含む、請求項1記載の方法。
【請求項13】
ナノ粒子が金属性ナノ粒子を含む、請求項1記載の方法。
【請求項14】
ナノ粒子が生体安定性金属性ナノ粒子を含む、請求項1記載の方法。
【請求項15】
ナノ粒子が生体分解性金属性ナノ粒子を含む、請求項1記載の方法。
【請求項16】
ナノ粒子が生体触媒性金属性ナノ粒子を含む、請求項1記載の方法。
【請求項17】
ナノ粒子が生体安定性及び生体分解性金属性ナノ粒子の混合物を含む、請求項1記載の方法。
【請求項18】
ナノ粒子が生体安定性及び生体触媒性 金属性ナノ粒子の混合物を含む、請求項1記載の方法。
【請求項19】
無機層が部分的に生体分解性である、請求項1記載の方法。
【請求項20】
無機層が完全に生体分解性である、請求項1記載の方法。
【請求項21】
治療薬-含有層が本質的に治療薬からなる、請求項1記載の方法。
【請求項22】
治療層がさらにポリマー性材料、金属性無機物材料、非-金属性無機物材料及びそれらの組み合わせから選択される材料を含む、請求項1記載の方法。
【請求項23】
治療層がさらに多孔性粒子を含む、請求項1記載の方法。
【請求項24】
治療層が連続層である、請求項1記載の方法。
【請求項25】
治療層が不連続層であり、無機層が治療層及び基材の両方に接触している、請求項1記載の方法。
【請求項26】
さらに、無機層の上に治療薬を含む追加治療層を形成することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項27】
追加治療層が治療層に含まれない治療薬を含む、請求項26記載の方法。
【請求項28】
さらに、追加治療層の上に追加無機層を形成することを含む、請求項26記載の方法。
【請求項29】
追加治療層中の治療薬が治療層中の治療薬よりも大きい分子量を有し、追加無機層が無機層のポアサイズよりも大きいポアサイズを有する、請求項28記載の方法。
【請求項30】
追加無機層が少なくとも部分的に生体分解性であり、無機層が生体安定性である、請求項28記載の方法。
【請求項31】
追加無機層及び無機層がそれぞれ生体安定性及び生体分解性 ナノ粒子の混合物から形成され、生体分解性 ナノ粒子の生体安定性 ナノ粒子に対する比が無機層におけるよりも追加無機層において大きい請求項28記載の方法。
【請求項32】
基材が、ポリマー性材料、金属性無機物材料、非-金属性無機物材料及びそれらの組み合わせから選択される材料を含む、請求項1記載の方法。
【請求項33】
基材が生体安定性である、請求項1記載の方法。
【請求項34】
基材が生体分解性である、請求項1記載の方法。
【請求項35】
基材が管状構造である、請求項1記載の方法。
【請求項36】
基材が無機層の配置の間、回転する請求項35記載の方法。
【請求項37】
医療機器がステントである、請求項1記載の方法。
【請求項38】
医療機器が移植か挿入のために脈管構造、泌尿生殖器系、消化器系、または胆管への移植又は挿入に適用される、請求項1記載の方法。
【請求項39】
治療薬は、1以上の抗-トロンビン薬、抗-増殖性薬、抗炎症薬、抗-遊走性薬、細胞外マトリックスの生産及び組織化に作用する薬剤、抗新生物薬、抗有糸分裂薬、麻酔薬、抗凝血薬、血管細胞成長促進物質、血管細胞成長抑制剤、高脂血治療薬、血管拡張剤、TGFβ活性薬、および内因性の血管作動性メカニズムを妨げる薬剤からなる群から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項40】
請求項1記載の方法によって製造される医療機器。
【請求項41】
基材、基材の上に配置された治療薬-含有層及び前記治療薬-含有層の上に配置された融合無機ナノ粒子の無機層を含む医療機器。
【請求項42】
前記無機層が基材及び治療薬-含有層の両方に接触している、請求項41記載の医療機器。
【請求項43】
前記無機層の外側表面に前記治療薬が存在しない、請求項41記載の医療機器。
【請求項44】
前記基材及び前記無機層が同じ材料で形成される、請求項41記載の医療機器。
【請求項45】
治療薬-含有層が、前記基材の上に配置された複数の治療薬-含有材料の島を含む、請求項42記載の医療機器。
【請求項46】
治療薬-放出医療機器であって、: (a)基材、(b) 基材上に配置された治療薬-含有層であって、(i) 第1材料部材を含む多孔性リザーバー層及び (ii)多孔性リザーバー層のポアの中に治療薬を含む治療薬組成物を含む前記治療薬-含有層; (c)前記治療薬-含有層上のマクロ多孔質 無機層;及び(d) 前記マクロ多孔質 無機層上のナノ多孔質 無機層を含む前記機器。
【請求項47】
無機 ナノ粒子を (a)基材、(b)基材上に配置された前記治療薬-含有層及び (c) 前記治療薬-含有層上の前記マクロ多孔質 無機層を含む構造の上側表面上に加速することを含み、 無機 ナノ粒子は無機 ナノ粒子を融合し前記ナノ多孔質 無機層を形成する条件化で加速される、請求項46記載の治療薬-放出医療機器の製造方法。
【請求項48】
前記多孔性リザーバー層が、少なくとも第2材料部材の一部を前記第1材料部材及び前記第2材料を含むリザーバー前駆体層から除去することを含む方法によって形成され、第2材料部材はマクロ多孔質無機層から除去される請求項47記載の方法。
【請求項49】
前記マクロ多孔質無機層が、無機粒子が融合し、前記マクロ多孔質無機層を形成する条件化で無機粒子を前記リザーバー前駆体層上に加速する方法によって形成される、請求項48記載の方法。
【請求項50】
マクロ多孔質無機層を通って多孔性リザーバー層のポアの中に前記治療薬を含むローディング組成物を輸送することを含む方法によって前記治療薬-含有層が形成される、請求項47記載の方法。
【請求項51】
請求項44記載の治療薬放出医療機器であって、: (a)無機粒子を(i)基材及び(ii) 前記第1材料部材及び第2材料部材を含むリザーバー前駆体層を含む構造の上側表面に加速すること、前記無機粒子が、無機粒子が融合し前記マクロ多孔質 無機層を形成する条件下によって加速され、無機粒子が融合し前記マクロ多孔質 無機層を形成する; (b)少なくとも前記第2材料部材の一部をマクロ多孔質 無機層から取り除くことによりポアを形成すること; (c)前記治療薬を含むローディング組成物のマクロ多孔質無機層を通り多孔性リザーバー層のポアへの運搬であって、それにより治療薬-含有層を形成すること; 及び(d)マクロ多孔質 無機層の上側表面上に、無機 ナノ粒子が融合し前記無機層を形成する条件下、無機ナノ粒子を加速することを含む前記医療機器。
【請求項52】
電気応答性ポリマー及び前記電気応答性ポリマー上に配置された融合無機ナノ粒子の無機 ナノ多孔質層を含む医療機器。
【請求項53】
基材及び前記基材上に配置された融合無機ナノ粒子の伝導性無機ナノ多孔質層を含む、神経刺激電極。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【図7E】
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【図8】
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【公表番号】特表2010−508975(P2010−508975A)
【公表日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−536305(P2009−536305)
【出願日】平成19年11月9日(2007.11.9)
【国際出願番号】PCT/US2007/023601
【国際公開番号】WO2008/140482
【国際公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(500332814)ボストン サイエンティフィック リミテッド (627)
【Fターム(参考)】