制御された深さへの注入装置及び方法
侵入装置が臓器又は組織塊内を進む深さを制限する装置及び方法。装置は、一般に、第1部材と第2部材とを含む。侵入装置は第2部材に取り付けられ、かつ第2部材から延びる。第1部材は、侵入装置覆いと前記侵入装置覆いを通り抜けて延びる中空ボアとを有する。第2部材は、侵入装置の遠位部分が侵入装置覆いを通り抜けて延びるように、第1部材と係合可能である。侵入装置が侵入装置覆いの遠位端を越えて突き出る距離は、所望の侵入深さに従って調節することができる。侵入装置は、次に、覆いの遠位端が臓器又は組織塊に接触するまで、臓器又は組織塊内を進むことができ、それにより、侵入装置が更に進むことは、防止される。侵入装置は、物質を吸引又は注入するための1つ以上の管腔を有することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概略的には、医療装置及び方法に関し、より詳細には、対象となる人又は動物の組織塊又は臓器内に診断用物質又は治療物質を注入する深さを制御する装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医療及び手術では、多くの場合において、針又は他の細長い侵入装置が臓器又は組織塊に入り込む深さを制限するのが望ましい場合が数多くある。この点に関して、針又は他の装置が入り込む深さを制限するために、様々な装置が利用されてきた。例えば、米国特許第5,141,496号明細書では、針が侵入する深さを調節する機構を備えた注射器ガイド装置が記載されている。注射器ガイド装置の一端は、ねじ手段により調節可能な摺動基材を有し、他端は、注射器に固着され、所与の注入深さに針を進ませる、ばね付きの摺動部分を含む。
【0003】
米国特許第5,250,026号明細書(Ehrlichら)には、注入深さ調節可能機構を有するインプラント注入器が記載されている。注入深さは、注入器の鼻部の先に延びるカニューレの先端に対してその鼻部を移動させることにより調節される。注入深さの調節に加えて、注入器のハンドルに対してカニューレ又は針を複数の位置に回転させることもできる。ばね付きのプランジャは、解除ボタンにより解除されると、操作者が動物からカニューレを引き出すにつれて、カニューレ末端の外にインプラントを押し出すことになる。解除ボタンは、針を挿入する間にプランジャを早まって作動することを防止するための安全引き金として設計されている。様々な直径及び長さの針又はカニューレは、注入器内で交換することができる。その上、インプラントを放出するためのばね付勢プランジャを取り外すことができ、操作者は、所望の場合、異なる寸法のカニューレに適合するように、プランジャを、直径及び長さが異なるプランジャに交換することができる。
【0004】
米国特許第5,102,393号明細書(Sarnoffら)には、筋肉内注射モードと皮下注射モードとを有する自動式注入器が記載されている。注射モード変更構造は、注入部位で実質的に皮下組織を越えて延びることのない第1深さに針を進めることを可能にする皮下モードと、皮下組織の下にある筋肉内にある第2深さに針を進めることを可能にする筋肉内モードとを交互に装置を変更するために有用である。
【0005】
米国特許第3,538,916号明細書では、筋肉内に、カプセルに包まれた液体又は固体化学物質を埋め込むための注入ピストルが記載されている。針の注入深さは、注射針上に備え付けられた注入深度計により制御される。シャフトは、そのシャフトと一体化された摺動可能なプランジャを有し、フレーム上に備え付けられ、針が筋肉内に進んだ後に針から物質を放出するのに利用される。注射針内のプランジャの移動距離は、プランジャと反対側のシャフトの末端に備え付けられた、ねじで深さを調節可能な深さ停止具により制限されている。
【0006】
米国特許第4,270,537号(Romaine)には、針が収納位置にあるときに引き金に対して注射器が付勢される、皮下注射器及び自動針挿入装置が記載されている。引き金が解放された後、注射器と針が前方に移動し、針は、下にある組織に延びる。挿入深さは、交換可能な停止具の取り付けにより事前に定めることができる。
【0007】
特に重要であるのは、心臓の心筋内に薬物、細胞(例えば、筋芽細胞)又は他の物質を注入しているときに、注入深さを制限することである。そのような手段では、注入器は、深く侵入すぎると、心筋壁を通り抜け、心房内に達することがある。物質が、心筋壁内ではなく、不注意に心房に注入された場合、心筋組織内に注入することを意図された治療上の利便性は失われ、患者の血流内に物質を意図せず注入することにより、深刻な結果をもたらされることがある。目下のところ開発中であるそのような手段の1つは、心筋の梗塞領域内に血小板ゲル(PG)を注入し、心筋機能を向上させ、及び/又は、心筋梗塞又は心筋の他の損傷に続く有害な心室リモデリングを防止することである。この治療では、血小板含有成分(例えば、多血小板血漿(PRP))がトロンビン含有成分(例えば、トロンビン溶液)と結合するのは、心筋内に、梗塞又は他の心筋損傷内の又はその近くの1つ以上の場所で注入する直前、その間又はその後である。血小板含有成分(例えば、PRP)は、トロンビン含有成分と結合して、血小板ゲル(PG)を形成し、所望の治療効果をもたらす。そのようなPGは、血小板含有成分内に含まれる成分(フィブリノゲン等)がトロンビン含有成分内に含まれるトロンビンにより活性されるときに、形成される。被験体自身の血液から、自己PRPを得ることができ、それにより、有害な反応又は感染のおそれは、著しく削減される。自己PRPを血小板含有成分として利用する場合、その結果得られるPGは、自己血小板ゲル(APG)と呼ばれる。PRP等の血小板含有血漿産物へのトロンビンの添加は、米国特許第6,444,228号明細書並びに米国特許出願公開第2007/0014784号公報、第2006/0041242号公報及び第2005/209564号公報に詳細に記載され、そのような各々の特許及び特許出願の開示は、参照により本明細書に明確に組み込まれる。PG又はAPGは針の管腔を通過させるのが難しいので、血小板含有成分及びトロンビン含有成分を、針を通じての注入の直前、その間に又はその後に混合されるように、注入するのが望ましい。加えて、血小板含有成分及びトロンビン含有成分を個別に又は混合直後に注入することにより、PG又はAPGに完全にゲル化する前に、注入液を広い領域に分配することができ、従って、この治療の効果を高めることができる。米国特許出願第11/969,094号には、心筋組織内にPG治療を与えるのに適切であり、注入器が心筋に入り込む深さを制限する任意選択の深さ停止具を含んでいる、多成分注入器が記載され、その開示も、参照により本明細書に援用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
注入器又は他の細長い侵入装置が臓器又は組織塊に入り込む深さを制御又は制限する新たな装置及び方法を開発する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、侵入装置が臓器又は組織塊に入り込む深さを制御する新たな装置及び方法を提供する。本明細書内で用いられる場合、用語「角度注入」及び「角度侵入」は、針が入り込む表面に垂直又は直角でない角度で、針が注入部位に侵入するような、針又は侵入装置の注入又は侵入を指す。従って、角度注入又は角度侵入が生じる場合、針は、注入点での表面に接する仮想平面に対して直角には、注入部位に侵入しないことになる。
【0010】
本発明の一実施形態によれば、細長い侵入装置が臓器又は他の組織塊内に入り込む深さを制御する装置であって、そのような装置は、その中を通り抜けて延びる中空ボアを有する侵入装置覆い及び遠位端とを含む第1部材と、侵入装置が取り付けられる第2部材とを備える装置が提供される。侵入装置は、第2部材から遠位方向に延びる。第2部材は、侵入装置が侵入装置覆いのボアを通り抜けて延びるように、第1部材と係合可能である。侵入装置が侵入装置覆いの遠位端を越えて延びる距離は調節できる。そのとき、侵入装置は、覆いの遠位端が臓器又は組織塊の表面に接触するまで、臓器又は組織塊内に進むことができ、それにより、侵入装置が入り込むことができる深さは、制限される。任意選択的に、侵入装置覆いの遠位端は、角度注入を可能にするような、侵入装置の長手方向軸に対する所望の角度で斜めになってもよい。侵入装置は、所望の侵入深さに挿入された後に物質を吸引又は注入することができる1つ以上の管腔を有してもよい。
【0011】
更に、本発明に従って、幾つかの実施形態では、侵入装置は、少なくとも2つの同軸の管腔を有してもよく、2つの成分物質をその場で混合して混合物を形成するように、それらの成分物質を同時に注入するのに利用されてもよい。例えば、多血小板血漿(PRP)を含む成分は、一方の管腔を通じて注入されてもよく、トロンビン含有成分は、もう一方の管腔を通じて注入されてもよく、それにより、血小板とトロンビンは、混合し、臓器又は組織内の注入部位で血小板ゲル(PG)を形成する。幾つかの場合では、少なくともPRPは、移植患者自身の血液から産出することができ、その結果得られるPGは、自己血漿ゲル(APG)である。注入部位は、損傷した心筋機能の領域内又はその近くであってもよく、PG又はAPGには、心筋機能を向上させ、及び/又は、心室リモデリングを防止する効果がありえる。
【0012】
本発明の更なる又は代わりの要素、態様、目的及び利点は、付属の図面を検討し、以下に説明される詳細な記述と実施例を読んだ後に、当業者により理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の深さ制御注入装置の一実施形態の斜視図である。
【図2】図1の装置の分解斜視図である。
【図2A】図2の線2A−2Aでの断面図である。
【図3】心臓の左心室壁内の所望の位置に、PGを形成するためのPRP及びトロンビン溶液を注入するのに利用される図1の装置を伴う、人の心臓の矢状方向の断面図である。
【図4A】図1の注入装置の、針の侵入深さを調節する方法の工程を示す図である。
【図4B】図1の注入装置の、針の侵入深さを調節する方法の工程を示す図である。
【図4C】図1の注入装置の、針の侵入深さを調節する方法の工程を示す図である。
【図4D】図1の注入装置の、針の侵入深さを調節する方法の工程を示す図である。
【図5】本発明の深さが制御される注入装置の別の実施形態の斜視図である。
【図6】本発明の深さが制御される注入装置の更に別の実施形態の斜視図である。
【図7】本発明の深さが制御される注入装置の更に別の実施形態の上面図である。
【図7A】図7の装置の正面斜視図である。
【図7B】図7の線7B−7Bでの長手方向断面図である。
【図7C】図7の領域7Cの拡大部分図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下の発明を実施するための形態、付属の図面は、幾つかの、しかし必ずしも全てではない、本発明の実施例又は実施形態を記述するために意図されたものである。この詳細な記述及び付属図面の内容は、本発明の範囲をいかようにも限定しない。
【0015】
図1〜図4Bは、本発明の深さ制御多成分注入装置10の一実施形態を示す。この装置10は、第1すなわち遠位部材12と第2すなわち近位部材14とを備える。侵入装置覆い16が、第1部材12から遠位方向に延びている。侵入装置覆い16には、遠位端DEがある。中空ボア17は、第1部材12を貫通し、侵入装置覆い16の遠位端DEを通り抜けて開口している。
【0016】
侵入装置18は、近位部材14から遠位方向に延びている。細長い本体20が、侵入装置18の近位部分を取り囲んでいる。一連の上下方向のスロット22が、細長い本体20の片側に形成されている。平面24が、細長い本体20の頂部に形成されている。中心からずれている固定部材26が、第1部材12のボア17の片側を通り上下方向に貫通している。細長い本体は、その平らな面24が固定部材26と同じ側になるように90度回転された場合、平面24が固定部材26のそばを通り抜けるような寸法に作られ、それにより、侵入装置18の遠位部分と細長い本体20は、第1部材12のボア17の中に自由に進むことができる。その後、平面24が細長い本体20の上方にある場所に戻るように、近位部材14を回転させると、固定部材26は、スロット22の1つに嵌り、それにより、第1部材12は、第1部材12と近位部材14との間に固定距離Dがあるように、近位部材14に結合される。所望の場合、近位部材14を、細長い本体20の平面24が固定部材26と同じ側にあるように、再び90度回転させ、平面24を固定部材26のそばを通過させることにより、近位部材を、異なった位置に後退または前進させることができる。新たな位置に達した後、近位部材14は、その以前の回転配向に戻るように90度回転させ、固定部材26を、スロット22の異なるスロットに嵌る。そのように、近位部材12と第1部材14との間の距離D、及び、侵入装置が覆い16の遠位端DEを越えて延びる程度を調節することができる。任意選択的に、覆い16の遠位端DEは、図示されるように、角度を付けて切られるか又は斜めに切られてもよく、それにより、侵入装置18が組織を通して進む角度又は軌道は、制御される。一実施形態では、針と、覆いの遠位端の面との間の角度Aは、30度である。
【0017】
任意選択的に、水平方向に延びる翼部28a,28bが、近位部材14上に形成されてもよく、水平方向に延びる翼部30a,30bが、第1部材12上に形成されてもよく、近位部材14と第1部材12を握りやすく、操作しやすくする。
【0018】
図面に示される装置10の特定の実施例は、2つの成分を注入するように設計されている。従って、侵入装置18は、第1管腔32と、前記第1管腔を通って延びる第2管腔34とを有する。第1成分管38は、近位部材14に接続され、侵入装置18の第1管腔32を通じて第1成分を注入することができ、第2成分管36は、近位部材14に接続され、侵入装置18の第2管腔34を通じて第2成分を注入することができる。
【0019】
図4A〜図4Dは、人の心臓の左心室心筋壁の梗塞領域内に注入物を送達するために、装置10を準備する方法の実施例を示す。最初に、図4Aに示されているように、第1部材12と近位部材14は、距離D1だけ離間し、侵入装置18は、侵入装置18の部分が覆い16の近位端DEから全く突き出ないように、覆い16内にある。これにより、装置10は、実質的に、装置10を取り扱っている人を不注意に針で刺すことができないようになる。
【0020】
手術前の画像検討に基づいて、注入物の送達が望まれる梗塞組織の特定場所と同様に、梗塞領域での心筋の壁厚が識別される。それに基づいて、内科医は、所望の注入深さ(即ち、心臓の心外膜表面と梗塞領域の中心との間の距離)を定めることになる。所望の注入深さは、必然的に、意図された針軌道上での心筋壁の全厚未満であり、それにより、心室内に処置物質を不注意に注入する可能性が排除される。図4Bに示されている、次に、近位部材14は、90度左に回転され、固定部材16は、スロット22から分離され、細長い本体20の平面24がスロット22の上方にあるようになる。図4Cに示されるように、これにより近位部材14が進むことができる位置は、侵入装置18が、心筋への意図された侵入深さに等しい距離だけ、覆い16の遠位端から越えて突き出る位置である。
【0021】
図4Dに示されるように、新たな位置に到達した後、近位部材14は、その以前の回転配向に戻るように90度回転され、固定部材26は、スロット22のうちの異なるスロットの内側に嵌る。これにより、所望の侵入深さを与えるような、覆い16に対する侵入装置18の位置を固定し、第1部材12と第2部材14との間の距離D2は、侵入装置18が覆いにより完全に覆われたときの元の距離D1と比較して低減する。
【0022】
図3は、装置10が、上記のように準備された後に、左心室壁LVWの梗塞領域内のその場で一定量のPGを形成するのに使用される方法を示す。この実施例では、第1供給管36は、PRP源に接続され、その遠位端は、侵入装置18の内部同軸管腔34を通じてPRPを注入するために、近位部材14の管継手に接続される。第2供給管38は、トロンビン溶液源に接続され、その遠位端は、侵入装置18の外部同軸管腔32を通じてトロンビン溶液を注入するために、近位部材14の管継手に接続される。装置10は、覆いの斜めに切られた遠位端DEの角度が心臓の心外膜表面ESに平行であるような角度に保持され、侵入装置18の突出部分は、治療物の送達が意図された梗塞領域に位置合わせされる。侵入装置18は、次に、心外膜表面ESを通って、覆い16の遠位端DEが心外膜表面ESに接触するまで心筋内に進められ、それにより、侵入装置18の前進を停止する。侵入深さは、事前に設定されているので、これにより、侵入装置18の遠位端は、意図された梗塞領域内にあることになり、意図された梗塞領域外の誤った場所への注入、又は、左心室LVへの不注意な侵入にさえなり得るように、侵入装置18が不注意にあまりにも深くに進められるのを防止することになる。その上、侵入装置の遠位端が、斜めに切られているか、又は侵入装置の長手方向軸LAに対して角度がつけられているので、侵入装置18の突出遠位部分は、図示されるように、注入点で、その表面に対して角度をもって心筋に侵入されるようになる。角度侵入により、侵入路は、侵入装置18が心外膜表面に直角に心筋内に単に進むことにより同じ深さに挿入される場合よりも、長くなる。そのような長い侵入路は、侵入装置18が取り除かれるとき、注入された一種の物質又は複数の物質が侵入路から不要に逆流するのを防止又は阻止することができる。
【0023】
その後、侵入装置18をそのように配置することにより、PRP及びトロンビン溶液は、同軸管腔32、34を通じて、侵入装置18の末端の外に同時に注入され、PRPとトロンビン溶液が混合し、上に組み込まれた米国特許出願整理番号第11/969,094号内に詳細に記載されるように、梗塞領域内で一定量のPGをその場で形成することになる。少なくとも幾つかの実施形態では、PRP及びトロンビン溶液は、PRP対トロンビン溶液が約10対1の比率で送達され得る。可撓性の供給管36,38又は他の可撓性の部材が装置10に取り付けられる実施形態では、操作者は、装置10が、鼓動する心臓の自然な心筋の動きに伴うある程度の動きに耐えるほど十分に自由度を持たせながら、角度注入のために心臓に侵入装置を挿入することができる。装置は、いずれの注射器又は他の注入装置にも堅く接続されていないので、注入装置は、心臓の動きにより発生するいずれの動きも被ることはない。これにより、注入機器とは別に注入装置を操作することができるので、臨床医は、注入をより良く制御することができる。
【0024】
治療物質を注入した後に、装置10を取り除くことができ、図4A〜図4Bに示される手順は、覆い16内の完全に遮蔽された位置に侵入装置18を戻すために、反対に行うことができ、それにより、続いて装置10を処理又は処分する人が不注意に侵入装置で外傷することは、防止される。
【0025】
当業者は、同軸管腔32,34を備えた侵入装置18を有する装置10のこの実施形態は、その潜在的利用が、心筋にPG治療物を送達することに限定されず、任意の臓器、組織塊、空洞、内腔又は他の標的場所に、あらゆる2成分の治療又は診療物質を実質的に送達するのに利用され得ると理解するであろう。この装置10を利用して送達され得る他の例の2成分物質としては、2成分組織接着剤及び充填剤(例えば、米国イリノイ州、ディアフィールドのBaxter Healthcare Corporationから入手可能な、Tisseel VH(商標)フィブリン充填剤)及び組織増量剤、組織増量、充填又は膨張等の様々な治療又は美容用途のための、その場で形成され得る又は膨張され得る、組織増量剤、充填剤又は高分子材料(例えば、ヒドロゲル)及び様々なプロドラッグプラス活性化剤の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0026】
また、本発明の装置は、必ずしも2成分送達のみに利用されるわけではない。代わりに、侵入装置18は、単一物質を送達するための単一の管腔を、又は、2つより多い成分を有する多成分治療剤を送達するための任意の数(3以上)の追加の管腔を有してもよい。
【0027】
また、図1〜図4Dに示される装置10の特定の構成および構造は、単なる一例であり、様々な代替の構成又は構造を採用してもよい。代わりの構成および構造の1つが、図5に示された装置10aである。この装置10aは、図示されるように、曲がりを付けられ、重ね合わされた翼部材40a,40b,42a,42bを有する点で、図1〜図4Dの装置10と異なる。加えて、この装置10aは、意図されない回転により、固定部材26が溝22から外れ、第1部材12aに対する近位部材14aの不要な近位又は遠位の動きを許すことがあるような、第1部材すなわち遠位部材12aに対する、第2部材すなわち近位部材14aの不注意な又は偶発的な回転を阻止する回転止め固定器を含んでいる。具体的には、近位部材14aが、第1部材12aに向かって前進するとき、近位翼部材40aの遠位部分は、遠位部材42aの上に重なり合い、近位翼部材40bの遠位部分は、遠位翼部材42bの下に重なり合う。特定の実施形態に示される回転止め固定器は、遠位翼部材42aの上面に形成される溝44と、溝44にスナップ嵌合する、近位翼部材40aの下側の突起(図示されず)との組み合わせを含み、それにより、第1部材12aに対する近位部材14aの意図されない又は偶発的な回転は、防止される。
【0028】
別の代替的な構成および構造は、図6に示された装置10bである。この装置10bは、第1部材すなわち遠位部材12bと第2部材すなわち近位部材14bとを含んでいる。第1部材12bは、図示されるように遠位方向に延びる侵入装置覆い60を含んでいる。侵入装置覆い60は、その覆いを通り抜けるように長手方向に延びる中空ボアを有する。任意選択的に、侵入装置覆い60の遠位端表面は、上記のように、斜めになっているか又は角度を付けられている。第1翼部材52aと第2翼部材52bは、侵入装置覆い60の両側で横方向に延び、列状に並んだ離間した窪み又は固定開口54が、各翼部材52a,52b内に形成される。滑らかな表面の、ねじ山のない突起58(例えば、円筒状突起部)は、第2部材14bの中心から遠位方向に延び、侵入装置18(上記のもの)は、ねじ山のない突起58から遠位方向に延びている。ねじ山のない突起58は、侵入装置覆い60の中空ボアの中に受容され、そのボアの中を前後に自在に滑動する。図示されているように、上方に曲がった翼部材50aは、第2部材14bの一方の側に形成され、下方に曲がった翼部材50bは、第2部材14bの他方の側に形成されている。第1固定突起(図6には見られない)は、第1翼部材50aの下面から下方に突き出て、第2固定突起56は、第2翼部材50bの上面から上方に突き出ている。これらの固定突起56は、第1部材12bの翼部52a,52b内に形成される固定開口54のうちの各固定具内に挿入され、その固定具に摩擦係合する(例えば、「スナップ嵌合する」)ような寸法に作られている。第1部材12bは、実質的に固定された回転方位に保持されるのに対し、第2部材14bは、固定開口54から固定突起56を引き出し、分離させるほど十分に反時計方向に回転することができる。次に、ねじ山のない突起58は、侵入装置18の所望の長さが侵入装置覆い60の遠位端から越えて突き出るまで、侵入装置覆い60のボアを通じて遠位方向に進めることができる。そのような所望の位置に達した後、第2部材50bは、固定突起56が固定開口54のうちの隣接する1つの内に受容され、その固定開口に摩擦係合する(例えば、「スナップ嵌合する」)ように、時計回り方向に反対に回転することができる。これにより、第1部材12bと第2部材14bとは、侵入装置18の所望の長さが侵入装置覆い60の遠位端から越えて突き出るように、互いに対して固定された位置に保持され、それにより、臓器又は組織内への侵入深さは、上に詳細に記載されるように制御される。
【0029】
別の代替的な構成および構造は、図7〜図7Cに示された装置10cである。この装置は、第1部材62と第2部材64とを含んでいる。第1部材62は、側面が開いたスロット65と開いた遠位端とを有する侵入装置覆い66を含んでいる。翼部材72は、第2部材64の両側から横方向に延びている。第2部材64は、その翼部材72が側面スロット65を通って外側に突き出るように、第1部材62内に配置される。上記の種類の侵入装置18は、第2部材64に固着され、その第2部材から遠位方向に延びている。直線状の一連の歯又は突起74は、第2部材64上に形成され、第1部材62は、対応する一連の刻み目又は窪み78を有するラック76を含んでいる。突起74は、隣接する窪み78内に嵌るように付勢されている。侵入装置18が入り込む深さを調節することが望まれる場合、第1部材62は、相対的に固定された長手方向の位置に保持され、第2部材64は、遠位方向に進められるか、及び/又は、近位方向に引き戻され、突起74の付勢を乗り越えるのに十分な力により、突起74は、侵入装置18の所望の長さが侵入装置覆いの遠位端から越えて延びるまで、窪み78の上をスライドする。そのような位置に達したときに、突起は、再び、窪み78のうちの隣接する1つの内に嵌り、それにより、第1部材62と第2部材64は、侵入装置18の所望の長さが侵入装置覆い66の遠位端から越えて突き出るように、互いに対して固定された位置に実質的に保持され、それにより、臓器又は組織内への侵入深さは、上に詳細に記載されるように制御される。この例では、侵入装置18では、2つの管腔および可撓性管36,38が、装置10cに取り付けられている。注射器又は他の注入装置は、可撓性管36,38の近位端上のルアーコネクタ68,70に取り付けられ、上記のような侵入装置18の管腔を通じて、所望の量の物質を注入することができる。
【0030】
更に、本発明は、以上に、本発明の特定の実施例又は実施形態を参照して記載されたが、それらの実施例及び実施形態に対して、本発明の意図された趣旨及び範囲から逸脱することなく、様々な追加、削除、変更及び修正を行うことができることを理解すべきである。例えば、そうすることによって、実施形態又は実施例は、その意図された利用に適していないことにならない限り、一実施形態又は実施例の任意の要素又は特質を、別の実施形態又は実施例に組み込む、又はそれとともに利用することができる。また、方法又はプロセスの工程は、特定の順序で記載され、列挙され、又は請求されているが、そのような工程は、そうすることによって、実施形態又は実施例が、当業者にとって新規ではないか、明らかでないか、又は、その意図された利用に適していないことにならない限り、任意の他の順序で行うことができる。全ての合理的な追加、削除、修正及び変更は、記載された実施例及び実施形態の均等物と考えられ、以下の請求項の範囲内に含まれる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、概略的には、医療装置及び方法に関し、より詳細には、対象となる人又は動物の組織塊又は臓器内に診断用物質又は治療物質を注入する深さを制御する装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医療及び手術では、多くの場合において、針又は他の細長い侵入装置が臓器又は組織塊に入り込む深さを制限するのが望ましい場合が数多くある。この点に関して、針又は他の装置が入り込む深さを制限するために、様々な装置が利用されてきた。例えば、米国特許第5,141,496号明細書では、針が侵入する深さを調節する機構を備えた注射器ガイド装置が記載されている。注射器ガイド装置の一端は、ねじ手段により調節可能な摺動基材を有し、他端は、注射器に固着され、所与の注入深さに針を進ませる、ばね付きの摺動部分を含む。
【0003】
米国特許第5,250,026号明細書(Ehrlichら)には、注入深さ調節可能機構を有するインプラント注入器が記載されている。注入深さは、注入器の鼻部の先に延びるカニューレの先端に対してその鼻部を移動させることにより調節される。注入深さの調節に加えて、注入器のハンドルに対してカニューレ又は針を複数の位置に回転させることもできる。ばね付きのプランジャは、解除ボタンにより解除されると、操作者が動物からカニューレを引き出すにつれて、カニューレ末端の外にインプラントを押し出すことになる。解除ボタンは、針を挿入する間にプランジャを早まって作動することを防止するための安全引き金として設計されている。様々な直径及び長さの針又はカニューレは、注入器内で交換することができる。その上、インプラントを放出するためのばね付勢プランジャを取り外すことができ、操作者は、所望の場合、異なる寸法のカニューレに適合するように、プランジャを、直径及び長さが異なるプランジャに交換することができる。
【0004】
米国特許第5,102,393号明細書(Sarnoffら)には、筋肉内注射モードと皮下注射モードとを有する自動式注入器が記載されている。注射モード変更構造は、注入部位で実質的に皮下組織を越えて延びることのない第1深さに針を進めることを可能にする皮下モードと、皮下組織の下にある筋肉内にある第2深さに針を進めることを可能にする筋肉内モードとを交互に装置を変更するために有用である。
【0005】
米国特許第3,538,916号明細書では、筋肉内に、カプセルに包まれた液体又は固体化学物質を埋め込むための注入ピストルが記載されている。針の注入深さは、注射針上に備え付けられた注入深度計により制御される。シャフトは、そのシャフトと一体化された摺動可能なプランジャを有し、フレーム上に備え付けられ、針が筋肉内に進んだ後に針から物質を放出するのに利用される。注射針内のプランジャの移動距離は、プランジャと反対側のシャフトの末端に備え付けられた、ねじで深さを調節可能な深さ停止具により制限されている。
【0006】
米国特許第4,270,537号(Romaine)には、針が収納位置にあるときに引き金に対して注射器が付勢される、皮下注射器及び自動針挿入装置が記載されている。引き金が解放された後、注射器と針が前方に移動し、針は、下にある組織に延びる。挿入深さは、交換可能な停止具の取り付けにより事前に定めることができる。
【0007】
特に重要であるのは、心臓の心筋内に薬物、細胞(例えば、筋芽細胞)又は他の物質を注入しているときに、注入深さを制限することである。そのような手段では、注入器は、深く侵入すぎると、心筋壁を通り抜け、心房内に達することがある。物質が、心筋壁内ではなく、不注意に心房に注入された場合、心筋組織内に注入することを意図された治療上の利便性は失われ、患者の血流内に物質を意図せず注入することにより、深刻な結果をもたらされることがある。目下のところ開発中であるそのような手段の1つは、心筋の梗塞領域内に血小板ゲル(PG)を注入し、心筋機能を向上させ、及び/又は、心筋梗塞又は心筋の他の損傷に続く有害な心室リモデリングを防止することである。この治療では、血小板含有成分(例えば、多血小板血漿(PRP))がトロンビン含有成分(例えば、トロンビン溶液)と結合するのは、心筋内に、梗塞又は他の心筋損傷内の又はその近くの1つ以上の場所で注入する直前、その間又はその後である。血小板含有成分(例えば、PRP)は、トロンビン含有成分と結合して、血小板ゲル(PG)を形成し、所望の治療効果をもたらす。そのようなPGは、血小板含有成分内に含まれる成分(フィブリノゲン等)がトロンビン含有成分内に含まれるトロンビンにより活性されるときに、形成される。被験体自身の血液から、自己PRPを得ることができ、それにより、有害な反応又は感染のおそれは、著しく削減される。自己PRPを血小板含有成分として利用する場合、その結果得られるPGは、自己血小板ゲル(APG)と呼ばれる。PRP等の血小板含有血漿産物へのトロンビンの添加は、米国特許第6,444,228号明細書並びに米国特許出願公開第2007/0014784号公報、第2006/0041242号公報及び第2005/209564号公報に詳細に記載され、そのような各々の特許及び特許出願の開示は、参照により本明細書に明確に組み込まれる。PG又はAPGは針の管腔を通過させるのが難しいので、血小板含有成分及びトロンビン含有成分を、針を通じての注入の直前、その間に又はその後に混合されるように、注入するのが望ましい。加えて、血小板含有成分及びトロンビン含有成分を個別に又は混合直後に注入することにより、PG又はAPGに完全にゲル化する前に、注入液を広い領域に分配することができ、従って、この治療の効果を高めることができる。米国特許出願第11/969,094号には、心筋組織内にPG治療を与えるのに適切であり、注入器が心筋に入り込む深さを制限する任意選択の深さ停止具を含んでいる、多成分注入器が記載され、その開示も、参照により本明細書に援用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
注入器又は他の細長い侵入装置が臓器又は組織塊に入り込む深さを制御又は制限する新たな装置及び方法を開発する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、侵入装置が臓器又は組織塊に入り込む深さを制御する新たな装置及び方法を提供する。本明細書内で用いられる場合、用語「角度注入」及び「角度侵入」は、針が入り込む表面に垂直又は直角でない角度で、針が注入部位に侵入するような、針又は侵入装置の注入又は侵入を指す。従って、角度注入又は角度侵入が生じる場合、針は、注入点での表面に接する仮想平面に対して直角には、注入部位に侵入しないことになる。
【0010】
本発明の一実施形態によれば、細長い侵入装置が臓器又は他の組織塊内に入り込む深さを制御する装置であって、そのような装置は、その中を通り抜けて延びる中空ボアを有する侵入装置覆い及び遠位端とを含む第1部材と、侵入装置が取り付けられる第2部材とを備える装置が提供される。侵入装置は、第2部材から遠位方向に延びる。第2部材は、侵入装置が侵入装置覆いのボアを通り抜けて延びるように、第1部材と係合可能である。侵入装置が侵入装置覆いの遠位端を越えて延びる距離は調節できる。そのとき、侵入装置は、覆いの遠位端が臓器又は組織塊の表面に接触するまで、臓器又は組織塊内に進むことができ、それにより、侵入装置が入り込むことができる深さは、制限される。任意選択的に、侵入装置覆いの遠位端は、角度注入を可能にするような、侵入装置の長手方向軸に対する所望の角度で斜めになってもよい。侵入装置は、所望の侵入深さに挿入された後に物質を吸引又は注入することができる1つ以上の管腔を有してもよい。
【0011】
更に、本発明に従って、幾つかの実施形態では、侵入装置は、少なくとも2つの同軸の管腔を有してもよく、2つの成分物質をその場で混合して混合物を形成するように、それらの成分物質を同時に注入するのに利用されてもよい。例えば、多血小板血漿(PRP)を含む成分は、一方の管腔を通じて注入されてもよく、トロンビン含有成分は、もう一方の管腔を通じて注入されてもよく、それにより、血小板とトロンビンは、混合し、臓器又は組織内の注入部位で血小板ゲル(PG)を形成する。幾つかの場合では、少なくともPRPは、移植患者自身の血液から産出することができ、その結果得られるPGは、自己血漿ゲル(APG)である。注入部位は、損傷した心筋機能の領域内又はその近くであってもよく、PG又はAPGには、心筋機能を向上させ、及び/又は、心室リモデリングを防止する効果がありえる。
【0012】
本発明の更なる又は代わりの要素、態様、目的及び利点は、付属の図面を検討し、以下に説明される詳細な記述と実施例を読んだ後に、当業者により理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の深さ制御注入装置の一実施形態の斜視図である。
【図2】図1の装置の分解斜視図である。
【図2A】図2の線2A−2Aでの断面図である。
【図3】心臓の左心室壁内の所望の位置に、PGを形成するためのPRP及びトロンビン溶液を注入するのに利用される図1の装置を伴う、人の心臓の矢状方向の断面図である。
【図4A】図1の注入装置の、針の侵入深さを調節する方法の工程を示す図である。
【図4B】図1の注入装置の、針の侵入深さを調節する方法の工程を示す図である。
【図4C】図1の注入装置の、針の侵入深さを調節する方法の工程を示す図である。
【図4D】図1の注入装置の、針の侵入深さを調節する方法の工程を示す図である。
【図5】本発明の深さが制御される注入装置の別の実施形態の斜視図である。
【図6】本発明の深さが制御される注入装置の更に別の実施形態の斜視図である。
【図7】本発明の深さが制御される注入装置の更に別の実施形態の上面図である。
【図7A】図7の装置の正面斜視図である。
【図7B】図7の線7B−7Bでの長手方向断面図である。
【図7C】図7の領域7Cの拡大部分図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下の発明を実施するための形態、付属の図面は、幾つかの、しかし必ずしも全てではない、本発明の実施例又は実施形態を記述するために意図されたものである。この詳細な記述及び付属図面の内容は、本発明の範囲をいかようにも限定しない。
【0015】
図1〜図4Bは、本発明の深さ制御多成分注入装置10の一実施形態を示す。この装置10は、第1すなわち遠位部材12と第2すなわち近位部材14とを備える。侵入装置覆い16が、第1部材12から遠位方向に延びている。侵入装置覆い16には、遠位端DEがある。中空ボア17は、第1部材12を貫通し、侵入装置覆い16の遠位端DEを通り抜けて開口している。
【0016】
侵入装置18は、近位部材14から遠位方向に延びている。細長い本体20が、侵入装置18の近位部分を取り囲んでいる。一連の上下方向のスロット22が、細長い本体20の片側に形成されている。平面24が、細長い本体20の頂部に形成されている。中心からずれている固定部材26が、第1部材12のボア17の片側を通り上下方向に貫通している。細長い本体は、その平らな面24が固定部材26と同じ側になるように90度回転された場合、平面24が固定部材26のそばを通り抜けるような寸法に作られ、それにより、侵入装置18の遠位部分と細長い本体20は、第1部材12のボア17の中に自由に進むことができる。その後、平面24が細長い本体20の上方にある場所に戻るように、近位部材14を回転させると、固定部材26は、スロット22の1つに嵌り、それにより、第1部材12は、第1部材12と近位部材14との間に固定距離Dがあるように、近位部材14に結合される。所望の場合、近位部材14を、細長い本体20の平面24が固定部材26と同じ側にあるように、再び90度回転させ、平面24を固定部材26のそばを通過させることにより、近位部材を、異なった位置に後退または前進させることができる。新たな位置に達した後、近位部材14は、その以前の回転配向に戻るように90度回転させ、固定部材26を、スロット22の異なるスロットに嵌る。そのように、近位部材12と第1部材14との間の距離D、及び、侵入装置が覆い16の遠位端DEを越えて延びる程度を調節することができる。任意選択的に、覆い16の遠位端DEは、図示されるように、角度を付けて切られるか又は斜めに切られてもよく、それにより、侵入装置18が組織を通して進む角度又は軌道は、制御される。一実施形態では、針と、覆いの遠位端の面との間の角度Aは、30度である。
【0017】
任意選択的に、水平方向に延びる翼部28a,28bが、近位部材14上に形成されてもよく、水平方向に延びる翼部30a,30bが、第1部材12上に形成されてもよく、近位部材14と第1部材12を握りやすく、操作しやすくする。
【0018】
図面に示される装置10の特定の実施例は、2つの成分を注入するように設計されている。従って、侵入装置18は、第1管腔32と、前記第1管腔を通って延びる第2管腔34とを有する。第1成分管38は、近位部材14に接続され、侵入装置18の第1管腔32を通じて第1成分を注入することができ、第2成分管36は、近位部材14に接続され、侵入装置18の第2管腔34を通じて第2成分を注入することができる。
【0019】
図4A〜図4Dは、人の心臓の左心室心筋壁の梗塞領域内に注入物を送達するために、装置10を準備する方法の実施例を示す。最初に、図4Aに示されているように、第1部材12と近位部材14は、距離D1だけ離間し、侵入装置18は、侵入装置18の部分が覆い16の近位端DEから全く突き出ないように、覆い16内にある。これにより、装置10は、実質的に、装置10を取り扱っている人を不注意に針で刺すことができないようになる。
【0020】
手術前の画像検討に基づいて、注入物の送達が望まれる梗塞組織の特定場所と同様に、梗塞領域での心筋の壁厚が識別される。それに基づいて、内科医は、所望の注入深さ(即ち、心臓の心外膜表面と梗塞領域の中心との間の距離)を定めることになる。所望の注入深さは、必然的に、意図された針軌道上での心筋壁の全厚未満であり、それにより、心室内に処置物質を不注意に注入する可能性が排除される。図4Bに示されている、次に、近位部材14は、90度左に回転され、固定部材16は、スロット22から分離され、細長い本体20の平面24がスロット22の上方にあるようになる。図4Cに示されるように、これにより近位部材14が進むことができる位置は、侵入装置18が、心筋への意図された侵入深さに等しい距離だけ、覆い16の遠位端から越えて突き出る位置である。
【0021】
図4Dに示されるように、新たな位置に到達した後、近位部材14は、その以前の回転配向に戻るように90度回転され、固定部材26は、スロット22のうちの異なるスロットの内側に嵌る。これにより、所望の侵入深さを与えるような、覆い16に対する侵入装置18の位置を固定し、第1部材12と第2部材14との間の距離D2は、侵入装置18が覆いにより完全に覆われたときの元の距離D1と比較して低減する。
【0022】
図3は、装置10が、上記のように準備された後に、左心室壁LVWの梗塞領域内のその場で一定量のPGを形成するのに使用される方法を示す。この実施例では、第1供給管36は、PRP源に接続され、その遠位端は、侵入装置18の内部同軸管腔34を通じてPRPを注入するために、近位部材14の管継手に接続される。第2供給管38は、トロンビン溶液源に接続され、その遠位端は、侵入装置18の外部同軸管腔32を通じてトロンビン溶液を注入するために、近位部材14の管継手に接続される。装置10は、覆いの斜めに切られた遠位端DEの角度が心臓の心外膜表面ESに平行であるような角度に保持され、侵入装置18の突出部分は、治療物の送達が意図された梗塞領域に位置合わせされる。侵入装置18は、次に、心外膜表面ESを通って、覆い16の遠位端DEが心外膜表面ESに接触するまで心筋内に進められ、それにより、侵入装置18の前進を停止する。侵入深さは、事前に設定されているので、これにより、侵入装置18の遠位端は、意図された梗塞領域内にあることになり、意図された梗塞領域外の誤った場所への注入、又は、左心室LVへの不注意な侵入にさえなり得るように、侵入装置18が不注意にあまりにも深くに進められるのを防止することになる。その上、侵入装置の遠位端が、斜めに切られているか、又は侵入装置の長手方向軸LAに対して角度がつけられているので、侵入装置18の突出遠位部分は、図示されるように、注入点で、その表面に対して角度をもって心筋に侵入されるようになる。角度侵入により、侵入路は、侵入装置18が心外膜表面に直角に心筋内に単に進むことにより同じ深さに挿入される場合よりも、長くなる。そのような長い侵入路は、侵入装置18が取り除かれるとき、注入された一種の物質又は複数の物質が侵入路から不要に逆流するのを防止又は阻止することができる。
【0023】
その後、侵入装置18をそのように配置することにより、PRP及びトロンビン溶液は、同軸管腔32、34を通じて、侵入装置18の末端の外に同時に注入され、PRPとトロンビン溶液が混合し、上に組み込まれた米国特許出願整理番号第11/969,094号内に詳細に記載されるように、梗塞領域内で一定量のPGをその場で形成することになる。少なくとも幾つかの実施形態では、PRP及びトロンビン溶液は、PRP対トロンビン溶液が約10対1の比率で送達され得る。可撓性の供給管36,38又は他の可撓性の部材が装置10に取り付けられる実施形態では、操作者は、装置10が、鼓動する心臓の自然な心筋の動きに伴うある程度の動きに耐えるほど十分に自由度を持たせながら、角度注入のために心臓に侵入装置を挿入することができる。装置は、いずれの注射器又は他の注入装置にも堅く接続されていないので、注入装置は、心臓の動きにより発生するいずれの動きも被ることはない。これにより、注入機器とは別に注入装置を操作することができるので、臨床医は、注入をより良く制御することができる。
【0024】
治療物質を注入した後に、装置10を取り除くことができ、図4A〜図4Bに示される手順は、覆い16内の完全に遮蔽された位置に侵入装置18を戻すために、反対に行うことができ、それにより、続いて装置10を処理又は処分する人が不注意に侵入装置で外傷することは、防止される。
【0025】
当業者は、同軸管腔32,34を備えた侵入装置18を有する装置10のこの実施形態は、その潜在的利用が、心筋にPG治療物を送達することに限定されず、任意の臓器、組織塊、空洞、内腔又は他の標的場所に、あらゆる2成分の治療又は診療物質を実質的に送達するのに利用され得ると理解するであろう。この装置10を利用して送達され得る他の例の2成分物質としては、2成分組織接着剤及び充填剤(例えば、米国イリノイ州、ディアフィールドのBaxter Healthcare Corporationから入手可能な、Tisseel VH(商標)フィブリン充填剤)及び組織増量剤、組織増量、充填又は膨張等の様々な治療又は美容用途のための、その場で形成され得る又は膨張され得る、組織増量剤、充填剤又は高分子材料(例えば、ヒドロゲル)及び様々なプロドラッグプラス活性化剤の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0026】
また、本発明の装置は、必ずしも2成分送達のみに利用されるわけではない。代わりに、侵入装置18は、単一物質を送達するための単一の管腔を、又は、2つより多い成分を有する多成分治療剤を送達するための任意の数(3以上)の追加の管腔を有してもよい。
【0027】
また、図1〜図4Dに示される装置10の特定の構成および構造は、単なる一例であり、様々な代替の構成又は構造を採用してもよい。代わりの構成および構造の1つが、図5に示された装置10aである。この装置10aは、図示されるように、曲がりを付けられ、重ね合わされた翼部材40a,40b,42a,42bを有する点で、図1〜図4Dの装置10と異なる。加えて、この装置10aは、意図されない回転により、固定部材26が溝22から外れ、第1部材12aに対する近位部材14aの不要な近位又は遠位の動きを許すことがあるような、第1部材すなわち遠位部材12aに対する、第2部材すなわち近位部材14aの不注意な又は偶発的な回転を阻止する回転止め固定器を含んでいる。具体的には、近位部材14aが、第1部材12aに向かって前進するとき、近位翼部材40aの遠位部分は、遠位部材42aの上に重なり合い、近位翼部材40bの遠位部分は、遠位翼部材42bの下に重なり合う。特定の実施形態に示される回転止め固定器は、遠位翼部材42aの上面に形成される溝44と、溝44にスナップ嵌合する、近位翼部材40aの下側の突起(図示されず)との組み合わせを含み、それにより、第1部材12aに対する近位部材14aの意図されない又は偶発的な回転は、防止される。
【0028】
別の代替的な構成および構造は、図6に示された装置10bである。この装置10bは、第1部材すなわち遠位部材12bと第2部材すなわち近位部材14bとを含んでいる。第1部材12bは、図示されるように遠位方向に延びる侵入装置覆い60を含んでいる。侵入装置覆い60は、その覆いを通り抜けるように長手方向に延びる中空ボアを有する。任意選択的に、侵入装置覆い60の遠位端表面は、上記のように、斜めになっているか又は角度を付けられている。第1翼部材52aと第2翼部材52bは、侵入装置覆い60の両側で横方向に延び、列状に並んだ離間した窪み又は固定開口54が、各翼部材52a,52b内に形成される。滑らかな表面の、ねじ山のない突起58(例えば、円筒状突起部)は、第2部材14bの中心から遠位方向に延び、侵入装置18(上記のもの)は、ねじ山のない突起58から遠位方向に延びている。ねじ山のない突起58は、侵入装置覆い60の中空ボアの中に受容され、そのボアの中を前後に自在に滑動する。図示されているように、上方に曲がった翼部材50aは、第2部材14bの一方の側に形成され、下方に曲がった翼部材50bは、第2部材14bの他方の側に形成されている。第1固定突起(図6には見られない)は、第1翼部材50aの下面から下方に突き出て、第2固定突起56は、第2翼部材50bの上面から上方に突き出ている。これらの固定突起56は、第1部材12bの翼部52a,52b内に形成される固定開口54のうちの各固定具内に挿入され、その固定具に摩擦係合する(例えば、「スナップ嵌合する」)ような寸法に作られている。第1部材12bは、実質的に固定された回転方位に保持されるのに対し、第2部材14bは、固定開口54から固定突起56を引き出し、分離させるほど十分に反時計方向に回転することができる。次に、ねじ山のない突起58は、侵入装置18の所望の長さが侵入装置覆い60の遠位端から越えて突き出るまで、侵入装置覆い60のボアを通じて遠位方向に進めることができる。そのような所望の位置に達した後、第2部材50bは、固定突起56が固定開口54のうちの隣接する1つの内に受容され、その固定開口に摩擦係合する(例えば、「スナップ嵌合する」)ように、時計回り方向に反対に回転することができる。これにより、第1部材12bと第2部材14bとは、侵入装置18の所望の長さが侵入装置覆い60の遠位端から越えて突き出るように、互いに対して固定された位置に保持され、それにより、臓器又は組織内への侵入深さは、上に詳細に記載されるように制御される。
【0029】
別の代替的な構成および構造は、図7〜図7Cに示された装置10cである。この装置は、第1部材62と第2部材64とを含んでいる。第1部材62は、側面が開いたスロット65と開いた遠位端とを有する侵入装置覆い66を含んでいる。翼部材72は、第2部材64の両側から横方向に延びている。第2部材64は、その翼部材72が側面スロット65を通って外側に突き出るように、第1部材62内に配置される。上記の種類の侵入装置18は、第2部材64に固着され、その第2部材から遠位方向に延びている。直線状の一連の歯又は突起74は、第2部材64上に形成され、第1部材62は、対応する一連の刻み目又は窪み78を有するラック76を含んでいる。突起74は、隣接する窪み78内に嵌るように付勢されている。侵入装置18が入り込む深さを調節することが望まれる場合、第1部材62は、相対的に固定された長手方向の位置に保持され、第2部材64は、遠位方向に進められるか、及び/又は、近位方向に引き戻され、突起74の付勢を乗り越えるのに十分な力により、突起74は、侵入装置18の所望の長さが侵入装置覆いの遠位端から越えて延びるまで、窪み78の上をスライドする。そのような位置に達したときに、突起は、再び、窪み78のうちの隣接する1つの内に嵌り、それにより、第1部材62と第2部材64は、侵入装置18の所望の長さが侵入装置覆い66の遠位端から越えて突き出るように、互いに対して固定された位置に実質的に保持され、それにより、臓器又は組織内への侵入深さは、上に詳細に記載されるように制御される。この例では、侵入装置18では、2つの管腔および可撓性管36,38が、装置10cに取り付けられている。注射器又は他の注入装置は、可撓性管36,38の近位端上のルアーコネクタ68,70に取り付けられ、上記のような侵入装置18の管腔を通じて、所望の量の物質を注入することができる。
【0030】
更に、本発明は、以上に、本発明の特定の実施例又は実施形態を参照して記載されたが、それらの実施例及び実施形態に対して、本発明の意図された趣旨及び範囲から逸脱することなく、様々な追加、削除、変更及び修正を行うことができることを理解すべきである。例えば、そうすることによって、実施形態又は実施例は、その意図された利用に適していないことにならない限り、一実施形態又は実施例の任意の要素又は特質を、別の実施形態又は実施例に組み込む、又はそれとともに利用することができる。また、方法又はプロセスの工程は、特定の順序で記載され、列挙され、又は請求されているが、そのような工程は、そうすることによって、実施形態又は実施例が、当業者にとって新規ではないか、明らかでないか、又は、その意図された利用に適していないことにならない限り、任意の他の順序で行うことができる。全ての合理的な追加、削除、修正及び変更は、記載された実施例及び実施形態の均等物と考えられ、以下の請求項の範囲内に含まれる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細長い侵入装置が臓器又は他の組織塊に入り込む深さを制御する装置であって、
その中を貫通する中空ボアと遠位端とを有する侵入装置覆いを備える第1部材と、
前記侵入装置が取り付けられる第2部材であって、前記侵入装置は、前記第2部材から遠位方向に延び、前記第2部材は、前記侵入装置が前記侵入装置覆いの前記ボアを通って延びるように、前記第1部材と係合する、第2部材と、を備え、
前記侵入装置が前記侵入装置覆いの前記遠位端を越えて延びる距離を調節可能である、
ことを特徴とする装置。
【請求項2】
前記侵入装置が、物体の吸引又は物質の送達に使用可能である、少なくとも1つの管腔を有する、
請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記侵入装置が、2つの物質の同時注入に使用可能である、少なくとも2つの管腔を有する、
請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記侵入装置の1つの管腔が、第1の可撓性供給管に接続している、
請求項2に記載の装置。
【請求項5】
前記侵入装置の第2管腔が第2の可撓性供給管に接続されている、
請求項4に記載の装置。
【請求項6】
1つの可撓性供給管を通じて送達される物質が、第2の供給管を通じて送達される物質から、両物質が前記侵入装置から排出されるまで、分離されたままである、
請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記装置に取り付けられる可撓性部材を更に備え、前記装置が、前記侵入装置が挿入された鼓動する心臓又は他の動く解剖学的構造の動きと同時に起こる何らかの動きに耐えられるようにしている間に、前記可撓性部材により、前記侵入装置が、心臓又は他の解剖学的構造内に挿入される、
請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記覆いの前記遠位端が臓器又は組織塊に接触するとき、前記臓器又は組織塊に対する角度注入を可能にするように、前記覆いの前記遠位端が、前記侵入装置軸に対して角度を有する、
請求項1に記載の装置。
【請求項9】
少なくとも1つの翼部が、前記第2部材上に形成される、
請求項1に記載の装置。
【請求項10】
第1翼部材と第2翼部材が、前記第2部材上の直径に対して反対側の場所で形成される、
請求項9に記載の装置。
【請求項11】
少なくとも1つの翼部が、前記第1部材上に形成される、
請求項1に記載の装置。
【請求項12】
第1翼部材と第2翼部材が、前記第1部材上の直径に対して反対側の場所に形成される、
請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記侵入装置が前記覆いに対して固定された長手方向の位置に保持される第1回転位置と、前記侵入装置が前記覆いに対して長手方向に進むか又は引き戻される第2回転位置との間で、前記第1部材に対して前記第2部材を回転することができる、
請求項1に記載の装置。
【請求項14】
前記第1回転位置に前記第2部材を固定する回転止め固定器をさらに備え、それにより、前記覆いに対する前記侵入装置の不注意な長手方向の動きを阻止する、
請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記第1部材及び第2部材は、前記第2部材が前記第1回転位置にあるときに互いに重なり合う翼部を有し、前記回転止め固定器が、前記翼部の一方の上には溝を、前記翼部の他方の上には突起を備え、前記突起は、前記溝にスナップ嵌合可能であり、前記第2部材が、前記第1部材に対して前記第1回転位置に摩擦で保持される、
請求項14に記載の装置。
【請求項16】
臓器又は組織塊内の所望の深さに細長い侵入装置を進める方法であって、
(A)第1部材と第2部材とを備える装置を与えるステップであって、前記侵入装置は、前記第2部材に取り付けられ、前記第2部材から遠位方向に延び、前記第1部材は、遠位端とこれを通り抜けて延びる中空ボアとを備えた侵入装置覆いを有し、前記第2部材は、前記侵入装置が前記中空ボアを通り抜けて延びるように前記第1部材と係合可能であり、前記侵入装置が前記侵入装置覆いの前記遠位端を越えて突き出る距離を調節できる、装置を与えるステップと、
(B)臓器又は組織塊への所望の侵入深さを決めるステップと、
(C)前記侵入装置が、前記覆いのベイの前記遠位端を越えて、前記所望の侵入深さに実質的に等しい距離だけ延びるように、前記装置を調節するステップと、
(D)前記覆いの前記遠位端が前記臓器又は組織塊に接触するまで、前記臓器又は組織塊内に前記侵入装置を進めるステップとを備えている、
ことを特徴とする方法。
【請求項17】
前記侵入装置が管腔を有し、前記方法が、前記侵入装置管腔内へ又はそれを通じて物体を吸引するステップを更に含む、
請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記侵入装置が管腔を有し、前記方法が、前記侵入装置管腔を通じて物質を注入するステップを更に含む、
請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記侵入装置が複数の管腔を有し、複数の物質が前記侵入装置を通じて注入される、
請求項18に記載の方法。
【請求項20】
血小板を含む第1成分が、1つの侵入装置管腔を通じて注入され、トロンビンを含む第2成分が、別の侵入装置管腔を通じて注入され、血小板ゲル(PG)又は自己血小板ゲル(APG)を形成するために、前記血小板及びトロンビンを結合させる、
請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記第1成分が、多血小板血漿(PRP)を含み、前記第2成分が、トロンビン含有溶液を含む、
請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記注入器は、PRPとトロンビン溶液が、PRP対トロンビン溶液が約10対1の比率で混合するように寸法設定される、
請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
前記侵入装置は、前記覆いの前記遠位端が心臓の心外膜表面に接触するまで、心筋内に進められる、
請求項18に記載の方法。
【請求項24】
前記侵入装置が、損傷した心筋機能の領域内の又はその近くの位置に進められ、注入される物質に、前記損傷した心筋機能の領域内で治療効果がある、
請求項23に記載の方法。
【請求項25】
ステップDで行われる前記調節は、前記侵入装置が、前記心臓の心室内に進められるのを実質的に防止する、
請求項23に記載の方法。
【請求項26】
ステップAで与えられる前記装置が、前記覆いに対して実質的に固定された長手方向の位置に前記侵入装置を保持する固定具を更に備え、前記方法が、工程Cにおける前記調節を行った後に、前記覆いに対して実質的に固定された長手方向の位置に前記侵入装置を保持するために、前記固定具を使用することを更に含む、
請求項16に記載の方法。
【請求項27】
ステップBが、画像検査を行い、前記画像検査から、所望の侵入深さを定めることを含む、
請求項16に記載の方法。
【請求項28】
前記装置が、前記装置に取り付けられる少なくとも1つの可撓性部材を更に備え、前記少なくとも1つの可撓性部材により、前記侵入装置を心臓内に挿入することができ、少なくとも1つの物質が前記侵入装置を通って注入され、かつ前記装置が、心臓の鼓動に加えて何等かの動きに耐える間に、鼓動する心臓上で行なわれる請求項23に記載の方法。
【請求項29】
前記少なくとも1つの可撓性部材が、少なくとも1つの可撓性物質供給管を供え、前記供給管を通じて、少なくとも1つの物質が侵入装置を通って送達される、
請求項28に記載の方法。
【請求項1】
細長い侵入装置が臓器又は他の組織塊に入り込む深さを制御する装置であって、
その中を貫通する中空ボアと遠位端とを有する侵入装置覆いを備える第1部材と、
前記侵入装置が取り付けられる第2部材であって、前記侵入装置は、前記第2部材から遠位方向に延び、前記第2部材は、前記侵入装置が前記侵入装置覆いの前記ボアを通って延びるように、前記第1部材と係合する、第2部材と、を備え、
前記侵入装置が前記侵入装置覆いの前記遠位端を越えて延びる距離を調節可能である、
ことを特徴とする装置。
【請求項2】
前記侵入装置が、物体の吸引又は物質の送達に使用可能である、少なくとも1つの管腔を有する、
請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記侵入装置が、2つの物質の同時注入に使用可能である、少なくとも2つの管腔を有する、
請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記侵入装置の1つの管腔が、第1の可撓性供給管に接続している、
請求項2に記載の装置。
【請求項5】
前記侵入装置の第2管腔が第2の可撓性供給管に接続されている、
請求項4に記載の装置。
【請求項6】
1つの可撓性供給管を通じて送達される物質が、第2の供給管を通じて送達される物質から、両物質が前記侵入装置から排出されるまで、分離されたままである、
請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記装置に取り付けられる可撓性部材を更に備え、前記装置が、前記侵入装置が挿入された鼓動する心臓又は他の動く解剖学的構造の動きと同時に起こる何らかの動きに耐えられるようにしている間に、前記可撓性部材により、前記侵入装置が、心臓又は他の解剖学的構造内に挿入される、
請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記覆いの前記遠位端が臓器又は組織塊に接触するとき、前記臓器又は組織塊に対する角度注入を可能にするように、前記覆いの前記遠位端が、前記侵入装置軸に対して角度を有する、
請求項1に記載の装置。
【請求項9】
少なくとも1つの翼部が、前記第2部材上に形成される、
請求項1に記載の装置。
【請求項10】
第1翼部材と第2翼部材が、前記第2部材上の直径に対して反対側の場所で形成される、
請求項9に記載の装置。
【請求項11】
少なくとも1つの翼部が、前記第1部材上に形成される、
請求項1に記載の装置。
【請求項12】
第1翼部材と第2翼部材が、前記第1部材上の直径に対して反対側の場所に形成される、
請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記侵入装置が前記覆いに対して固定された長手方向の位置に保持される第1回転位置と、前記侵入装置が前記覆いに対して長手方向に進むか又は引き戻される第2回転位置との間で、前記第1部材に対して前記第2部材を回転することができる、
請求項1に記載の装置。
【請求項14】
前記第1回転位置に前記第2部材を固定する回転止め固定器をさらに備え、それにより、前記覆いに対する前記侵入装置の不注意な長手方向の動きを阻止する、
請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記第1部材及び第2部材は、前記第2部材が前記第1回転位置にあるときに互いに重なり合う翼部を有し、前記回転止め固定器が、前記翼部の一方の上には溝を、前記翼部の他方の上には突起を備え、前記突起は、前記溝にスナップ嵌合可能であり、前記第2部材が、前記第1部材に対して前記第1回転位置に摩擦で保持される、
請求項14に記載の装置。
【請求項16】
臓器又は組織塊内の所望の深さに細長い侵入装置を進める方法であって、
(A)第1部材と第2部材とを備える装置を与えるステップであって、前記侵入装置は、前記第2部材に取り付けられ、前記第2部材から遠位方向に延び、前記第1部材は、遠位端とこれを通り抜けて延びる中空ボアとを備えた侵入装置覆いを有し、前記第2部材は、前記侵入装置が前記中空ボアを通り抜けて延びるように前記第1部材と係合可能であり、前記侵入装置が前記侵入装置覆いの前記遠位端を越えて突き出る距離を調節できる、装置を与えるステップと、
(B)臓器又は組織塊への所望の侵入深さを決めるステップと、
(C)前記侵入装置が、前記覆いのベイの前記遠位端を越えて、前記所望の侵入深さに実質的に等しい距離だけ延びるように、前記装置を調節するステップと、
(D)前記覆いの前記遠位端が前記臓器又は組織塊に接触するまで、前記臓器又は組織塊内に前記侵入装置を進めるステップとを備えている、
ことを特徴とする方法。
【請求項17】
前記侵入装置が管腔を有し、前記方法が、前記侵入装置管腔内へ又はそれを通じて物体を吸引するステップを更に含む、
請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記侵入装置が管腔を有し、前記方法が、前記侵入装置管腔を通じて物質を注入するステップを更に含む、
請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記侵入装置が複数の管腔を有し、複数の物質が前記侵入装置を通じて注入される、
請求項18に記載の方法。
【請求項20】
血小板を含む第1成分が、1つの侵入装置管腔を通じて注入され、トロンビンを含む第2成分が、別の侵入装置管腔を通じて注入され、血小板ゲル(PG)又は自己血小板ゲル(APG)を形成するために、前記血小板及びトロンビンを結合させる、
請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記第1成分が、多血小板血漿(PRP)を含み、前記第2成分が、トロンビン含有溶液を含む、
請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記注入器は、PRPとトロンビン溶液が、PRP対トロンビン溶液が約10対1の比率で混合するように寸法設定される、
請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
前記侵入装置は、前記覆いの前記遠位端が心臓の心外膜表面に接触するまで、心筋内に進められる、
請求項18に記載の方法。
【請求項24】
前記侵入装置が、損傷した心筋機能の領域内の又はその近くの位置に進められ、注入される物質に、前記損傷した心筋機能の領域内で治療効果がある、
請求項23に記載の方法。
【請求項25】
ステップDで行われる前記調節は、前記侵入装置が、前記心臓の心室内に進められるのを実質的に防止する、
請求項23に記載の方法。
【請求項26】
ステップAで与えられる前記装置が、前記覆いに対して実質的に固定された長手方向の位置に前記侵入装置を保持する固定具を更に備え、前記方法が、工程Cにおける前記調節を行った後に、前記覆いに対して実質的に固定された長手方向の位置に前記侵入装置を保持するために、前記固定具を使用することを更に含む、
請求項16に記載の方法。
【請求項27】
ステップBが、画像検査を行い、前記画像検査から、所望の侵入深さを定めることを含む、
請求項16に記載の方法。
【請求項28】
前記装置が、前記装置に取り付けられる少なくとも1つの可撓性部材を更に備え、前記少なくとも1つの可撓性部材により、前記侵入装置を心臓内に挿入することができ、少なくとも1つの物質が前記侵入装置を通って注入され、かつ前記装置が、心臓の鼓動に加えて何等かの動きに耐える間に、鼓動する心臓上で行なわれる請求項23に記載の方法。
【請求項29】
前記少なくとも1つの可撓性部材が、少なくとも1つの可撓性物質供給管を供え、前記供給管を通じて、少なくとも1つの物質が侵入装置を通って送達される、
請求項28に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図2A】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図5】
【図6】
【図7】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図2】
【図2A】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図5】
【図6】
【図7】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【公表番号】特表2011−518607(P2011−518607A)
【公表日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−506319(P2011−506319)
【出願日】平成21年3月18日(2009.3.18)
【国際出願番号】PCT/US2009/037573
【国際公開番号】WO2009/131774
【国際公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(502129357)メドトロニック カルディオ ヴァスキュラー インコーポレイテッド (125)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月18日(2009.3.18)
【国際出願番号】PCT/US2009/037573
【国際公開番号】WO2009/131774
【国際公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(502129357)メドトロニック カルディオ ヴァスキュラー インコーポレイテッド (125)
【Fターム(参考)】
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