説明

制御された薬剤放出速度を有するプロドラッグ及び薬剤−高分子のコンジュゲート

【課題】制御され、そして延長されたインビトロでの薬剤放出を可能にする方法、及び、そのような薬剤放出が可能な組成物を提供する。
【解決手段】本発明の化合物は、調節可能な放出速度を有するプロドラッグ、あるいは、調節可能であり、制御された放出速度を発揮する高分子と薬剤とのコンジュゲートのいずれかである。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互引用】
【0001】
本願は、2008年9月15日に出願された米国仮出願シリアル番号61/192,050、及び2008年6月26日に出願された61/133,148の利益を主張する(該出願は全体が引用によって本願に組み込まれる)。
【技術分野】
【0002】
本発明は、薬剤の送達における薬物動態学的な制御について設計された化合物に関する。特に、本発明は、所望の薬剤放出の速度を有するプロドラッグ及び薬剤−高分子のコンジュゲート(ないし抱合体)に関する。
【背景技術】
【0003】
多くの薬剤は、それらの有効性を制限する不都合な薬物動態学的パラメータに苦しめられている。生理学的な区画からのそのような薬剤の急速な排除(代謝又は排泄のいずれかを介する)は、短い寿命、及びターゲットへの減少した曝露をもたらす。例えば、ペプチドベースの薬剤及びタンパク質ベースの薬剤の治療上のポテンシャルは莫大であるが、ペプチド−及びタンパク質−ベースの薬剤は、しばしば、代謝の不安定性及び腎臓での排除に起因する急速な全身性の排除に苦しめられる。同様に、アンチセンスDNAなどの核酸や低分子干渉RNAs(siRNAs)は大きな治療上のポテンシャルを有するが、代謝の不安定性、及び細胞の不透過性に苦しめられている。ついには、多くの小有機分子(small organic molecules)も、それらの治療上の有効性を制限する急速な排除に苦しめられている。
【0004】
従って、病気の処置において改良された薬剤ベースの治療法及び遺伝子ベースの治療法を提供するために、全身性の循環路及び/又は他の生理学的な区画における半減期を延長し、小分子や、ペプチド、タンパク質及び核酸ベースの治療剤の有用性そして細胞取込みを改良する方法を有することが強く望まれているだろう。
【0005】
薬剤の生理学的な半減期を増加させる1つの方法は、それらを高分子に結合することによってそれらの水力学的なサイズ(hydrodynamic size)を増加させることである。全身性の循環路からの大分子(例えば、高分子量のタンパク質、抗体、ポリマー、ポリ(エチレングリコール)(PEG))の除去は、非常に遅くすることができる。>5000(mw:分子量)を有するPEGの代謝は顕著ではないし、そして〜50kDa(mw)を有するPEGの糸球体濾過及び胆汁排泄の双方にはほとんど効果がない。例えば、非コンジュゲート型のSODの半減期は0.08時間であったが、その一方では、いくつかのPEG−スーパーオキシドジスムターゼ(PEG−SOD)コンジュゲートのラット又はマウスにおける血漿半減期は、分子量1900のPEGを使用するコンジュゲートについての1.5時間から、分子量72,000のPEGを使用するコンジュゲートについての36時間まで変化することが報告されている。Veroneseの「Peptide and protein PEGylation:a review of problems and solutions」Biomaterials (2001) 22:405-417を参照されたし。モノクローナル抗体及び血清アルブミンは同様に全身性及び他の生理学的な区画において非常に長期の常在期間を有し、高分子コンジュゲート型薬剤の全身の/区画の半減期を大幅に延長させることを導出する(大部分はコンジュゲートの分子量に依存する)。
【0006】
ペプチドベースの薬剤及びタンパク質ベースの薬剤に関して、ポリマー残基の共有結合、例えば、PEGの共有結合(「ペグ化(PEGylation)」として知られる)は、薬物動態学的なパラメータの改良に有効であるし、代謝及び免疫システムから薬剤をマスクすることもでき、減少した免疫原性を導出する。ペグ化は、以下のような改変型薬剤をもたらしている:X連鎖性の重篤な複合型免疫原性症候群の処置のためのPEG−ウシアデノシンデアミナーゼ(ADAGEN(登録商標)、Enzon)、C型肝炎の処置のためのPEG−アルファインターフェロン(PEGASYS(登録商標)、Hoffman-LaRoche;PEG-Intron(登録商標)、Schering-Plough/Enzon)、急性リンパ性白血病の処置のためのPEG−L−アスパラギナーゼ(Oncaspar(登録商標)、Enzon)、好中球減少の処置のためのPEG−組み換え型ヒト顆粒球コロニー刺激因子(Neulasta(登録商標)、Amgen)、クローン病の処置のためのPEG−抗腫瘍壊死因子アルファ(Cimzia(登録商標)、Enzon)、先端巨大症の処置のためのPEG−成長ホルモン受容体アンタゴニスト(Somavert(登録商標)、Pfizer)、及びリウマチ性関節炎のためのPEG−抗TNF Fab(CD870, Pfizer)。
【0007】
ペグ化は、核酸の細胞への送達を改良することも示されている。例えば、米国特許公報2008/0064863は、核酸薬剤の細胞への送達において使用するためのポリカチオンとの複合体の状態の二本鎖の核酸(1方の鎖がポリ(エチレンオキシド)ユニットに共有結合している)を開示する。PCT公開WO2007/021142は、共有結合的にペグ化したsiRNA分子を開示する。PEG−抗VEGFアプタマー(Macugen(登録商標)、OSI/Pfizer)は、加齢性黄斑変性症の眼球内処置に関して認証されている。
【0008】
小分子のペグ化も報告されている。EZN−2208(イリノテカンの活性代謝物であるSN−38のPEGコンジュゲート)は、前臨床の腫瘍モデルにおいて有効であることが示されている。この場合には、ペグ化は小分子薬剤の溶解性を改良する。
【0009】
ペプチド薬剤及びタンパク質薬剤のPEG以外の高分子への共有結合は開示されている。例えば、トロンボスポンジン−1模倣ペプチド、アンジオポエチン−2アンタゴニスト、グルカゴン様ペプチド−1(GLP−I)やエキセンディンなどの種々のペプチド薬剤とモノクローナル抗体とのコンジュゲートが報告されている。
【0010】
しかしながら、ペプチド、タンパク質及び小分子と、PEG又は他の高分子との共有性の改変(Covalent modification)は、しばしば、有害な、親薬剤の生物学的な活性の喪失を生じる。そのため、いくつかの近年の研究活動は、可逆性の(あるいは一過性の)ペグ化(ポリマー鎖が切断可能なリンカーユニットを介して薬剤に対してコンジュゲート化される)の開発に焦点を当てている。最終的なペグ化コンジュゲートは、好ましい全身性の保持を有することに十分な分子サイズである。生理学的な条件の下では、酵素又は化学作用によるリンカーユニットの切断は、活性薬剤へ急速に転換させられた薬剤又はプロドラッグの放出を導出する。プロドラッグ又は遊離薬剤(free drug)の排除速度に関連するリンカーユニットの切断速度に依存して、生物学的な活性に関して十分に定常状態の活性薬剤の濃度を、このアプローチを利用して実現することができる。
【0011】
このアプローチを使用すること、例えば、リシン残基を介してPEGに可逆的にコンジュゲート化された免疫毒素SS1Pを使用することについて、成功が報告されている。Filpulaらの「Releasable PEGylation of Mesothelin Targeted Immunotoxin SS1P Achieves Single Dosage Complete regression of a Human Carcinoma in Mice」 Bioconjugate Chemistry (2007) 18:773-784を参照されたし。非改変SS1Pは約26分間の半減期でマウスの血漿から排除されたが、その一方では、可逆性のペグ化は半減期を2.5−5時間まで延長させた。心房性ナトリウム利尿ペプチド(2−5分間の血漿半減期を有する)の可逆性のペグ化は、アドレナリン処置ラットの血圧に対して、延長かつ遅延した[血圧抑制]作用をもたらすこと示されている(Nesher, et al., Bioconjugate Chem (2008) 19:342-348)。
【0012】
ほとんどの可逆性ペグ化薬剤又は他の高分子のコンジュゲート型薬剤に関する方法は、ポテンシャルの欠落(drawbacks)に苦しめられている。例えば、いくつかは血清プロテアーゼ又はエステラーゼによる酵素加水分解を必要とし、他のものはジスルフィドリンカーを切断するための還元性環境を必要とし、そして、ほとんどのものは、活性薬剤と小さく潜在的に有毒性のアルキル化剤とへの自発的な切断を起こす「自己犠牲的な(self-immolative)」プロドラッグを放出する。酵素などの制御が困難な物質や酸化還元環境を必要とせず、かかる物質や酸化還元環境によっては影響をうけない可逆性のペグ化物又は高分子の薬剤結合物のバージョンを設計することは有益であるだろう。
【0013】
米国特許6,504,005は、pH依存的なベータ脱離部門(beta elimination department)のおかげで生理学的な条件下で活性薬剤を放出するプロドラッグ分子を開示する。このアプローチの特異的な実施形態は、WO2004/089279に記載される。このアプローチは米国特許出願2006/0171920に記載されており、範囲(scope)及び例が限定されるけれども、コンジュゲートが生理学的なpHに曝されているときに開始したPEG担体からの薬剤の切断の自発的で一次関数的な速度(first-order rate)を利用している。生理学的な条件の下で予測可能であり制御可能な種々の自発的で一次関数的な放出速度を有する高分子―薬剤のコンジュゲートを提供するための一般的な戦略は、病気の処置のために価値の在る治療上のツールを提供するだろう。
【発明の概要】
【0014】
[発明の開示]
本発明は、治療剤(「薬剤」)での処置を必要とする患者に投与する場合の、治療剤の送達速度(rate)の制御に関するプロドラッグ及び薬剤−高分子のコンジュゲートを提供する。本発明のプロドラッグ及び薬剤−高分子のコンジュゲートは、全身(system)から急速に排除される治療剤であっても持続化した期間に渡って治療剤を送達し、治療剤の治療上の効果を延長させる手段を提供する。
【0015】
1つの視点において、本発明は、式(3)の薬剤−高分子のコンジュゲートである化合物に向けられる:

[式(3)において、mは1−10の整数であり;
Zは、高分子の残基であり;
L’は、リンカーの残基であり;
Dは、薬剤又はプロドラッグの残基であり;
Xは、O又はSであり;
Aは、アルケニル(C)、アリールであるか、もしくは存在せず;
各R及びRは、独立して、CN;
NO
任意に置換されるアリール;
任意に置換されるヘテロアリール;
任意に置換されるアルケニル;
任意に置換されるアルキニルであるか;あるいは、
各R及びRは、独立して、COR又はSOR又はSO
(Rは、H、又は任意に置換されるアルキル;
任意に置換されるアリール;
任意に置換されるヘテロアリール;
任意に置換されるアルケニル;
任意に置換されるアルキニルであるか;あるいは、
OR又はNR(各Rは、独立して、H、又は任意に置換されるアルキル))
であるか;あるいは、
各R及びRは独立してSR
(Rは、任意に置換されるアルキル、
任意に置換されるアリール;
任意に置換されるヘテロアリール;
任意に置換されるアルケニル;
任意に置換されるアルキニル)であり、
式(3)において、R及びRは、結合して3―8員環を形成することができ;そして、
及びRの両方がHではあり得ず、
は、H又はアルキル(C1−6)である]。
【0016】
典型的には、リンカー残基は、14Da及び20kDaの間の分子量を有し、不飽和、ヘテロ原子、環状構造、芳香族部分、及び/又はヘテロ芳香族部分を含むことができ、Zを残りの分子に共有的に結合させる二価の鎖である。リンカーは、ペプチドの主鎖、擬似ペプチドの主鎖、トリアゾール、フェニレン又はマレイミド残基、あるいはそれらの組み合わせを含むことができる。いくつかの実施形態では、式(3)に示されるカルボニルは、薬剤自体を起源とする。いくつかの実施形態では、mは1であり、及び/又は、RはHである。mの値は、1及び10の間の任意の中間の整数であってもよく、従って、mは2、5、7又は任意の中間の整数であり得る。
【0017】
他の視点では、本発明は、式(2)を有するプロドラッグを提供する:

[式(2)において、m、X、A、R、R及びRは、上記定義のものであり、Lは高分子に結合することが可能な連結基であり、そして、Dは、薬剤又はプロドラッグの残基である]。いくつかの実施形態では、mは1であり、及び/又は、RはHである。
【0018】
式(3)及び式(2)の化合物は、薬剤又はプロドラッグを、体内の生理学的な条件の下で制御された速度で非酵素的な脱離(elimination)によって放出する。薬剤放出の速度は、基R及びRの適切な選択によって調節可能である。いくつかの実施形態では、基R及びRの各々を電子供与性及び/又は電子吸引性の置換基によって独立的に置換し、介在性のR−CH−Rプロトンの酸性度を変化させて、薬剤脱離の速度に関する大幅な弾力性ないし可調節性(flexibility)及び制御を達成することができる。本発明のある実施形態では、処置が必要な患者に対して仕立てられた(tailored)薬剤送達のプロファイルを提供するために、式(3)又は式(2)の化合物(各々が生理学的な条件の下で異なる薬剤放出の速度を有する)の混合物を使用することができる。
【0019】
本発明は、式(3)及び(2)の化合物、並びに、それらの形成における中間体である化合物の調製方法にも向けられる。従って、他の視点において、本発明は、式(1)の化合物にも向けられる:

[式(1)において、A、X、L、R、R及びRは、上記定義のものである]。
【0020】
本発明は、式(4)の化合物も提供する:

[式(4)において、X、A、L’、Z、R、R及びRは、上記定義のものである]。
【0021】
本発明は、式(2)又は(3)の化合物を含む医薬的に許容可能な組成物、そして、これらのプロドラッグ又は高分子のコンジュゲートの調製方法にも向けられる。一般的には、出発点は、薬剤化合物との適切な反応によって式(2)のプロドラッグへ直接的に転換させることができる式(1)の化合物である。次に、Lと高分子Zとの反応によって、式(2)のプロドラッグを式(3)の高分子コンジュゲートに転換することができる。あるいは、式(3)の化合物は、式(1)の化合物を式(4)の化合物へ転換し、次に、式(4)の化合物と薬剤と反応させることによって調製することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、本発明の高分子担体−薬剤のコンジュゲートからの薬剤の塩基性触媒による脱離を示す。
【0023】
【図2】図2は、R及びRに関する種々の官能基、及びそれらの隣接するプロトンの酸性度に対する影響を示す。酸性度が増加すると(pKaがより低くなると)、脱プロトン化の速度が増加し、それ故に、プロドラッグ又は薬剤−高分子のコンジュゲートからの薬剤放出の速度が増加することが予測される。
【0024】
【図3】図3は、種々の2−置換フルオレンにおける9−プロトンの酸性度に対する置換の影響を示す。図3に示すように、該影響は、予測されるハメットの直線自由エネルギー関係(Hammett linear free energy correlation)に従うので、任意の2−置換フルオレンの酸性度を置換基のシグマ−パラメータに基づいて厳密に見積もることができる。
【0025】
【図4】図4は、全身からの排除を一日に0.5(投与された薬剤の総量の分率(fraction)として表現される)の固定速度として算出した、異なる放出速度を有する一連のプロドラッグに関する薬剤放出のプロファイルを示す。相対的に早い放出速度(例えば、一日に5の放出速度)は、より短期間にわたる、より高い放出された薬剤の最大濃度を示す。相対的に遅い放出速度(例えば、一日に0.1の放出速度)は、より長期間にわたる、より低い放出された薬剤の最大濃度を示す。
【0026】
【図5】図5は、全身からの排除を一日に0.5(最大濃度の時間に対するパーセント(%Cmax)として表現される)の固定速度として算出した、異なる放出速度を有する一連のプロドラッグに関する薬剤放出のプロファイルを示す。プロドラッグ又は薬剤−高分子のコンジュゲートからの薬剤放出の速度が遅くなるに従い、遊離薬剤の濃度を最大濃度の上記所与のパーセントとした場合の投与後の期間が延長される。
【発明を実施するための形態】
【0027】
式(2)及び(3)の化合物は、「D」として定義される薬剤又はプロドラッグの薬物動態を制御するように設計される。薬剤又はプロドラッグ「D」が放出されるメカニズムは、図示のために式(3)を使用した図1に示される。速度は、pH依存的な脱離のメカニズムに従って制御される。図2に部分的に示されるように、基R及びRは、介在するプロトンR−CH−Rの適切な反応性を提供するように選択され、プロドラッグ又はコンジュゲートからの薬剤又はプロドラッグの放出の速度の制御を提供する。連結基及び基Aの性質もこのプロセスに影響を与えるので、結果として生成されるコンジュゲートからの薬剤放出の速度を制御する複数の(multiple)ポイントが提供される。図3に示すように、R及びRの性質を、電子供与性又は電子吸引性の置換基の任意的な追加によって調節することができる。
【0028】
本発明の特別な利点は連結基の結合の位置である。連結基を基R又はRの一方に結合する(attach)ことは可能であるが、そのようにすることは、更なるR又はRの置換化学を複雑化し、連結基と電子供与性又は電子吸引性の置換基との間の電子の相互作用をもたらし、かくて放出速度の調節許容性を制限し得る。
【0029】
典型的には、活性化状態の薬剤は本発明のコンジュゲートから直接的に放出されるが、いくつかのケースでは、プロドラッグの形態の活性薬剤を放出することも可能である。そのようなシステムの一例について、以下に示される:

[当該システムにおいて、Q=O又はNHであり、D’は活性化状態の薬剤であり、M=通常のアリール置換基である]。
【0030】
上述のように式(2)及び(3)の化合物は、これらの薬剤の薬物動態を制御するように、調節可能な薬剤又はプロドラッグの放出速度を提供する。これらの化合物を調製するための種々の中間体は式(1)、(2)及び(4)であり;上述のように、式(2)の化合物も調節可能な放出速度を有するプロドラッグである。式(1)の化合物は、薬剤/プロドラッグも、結合される高分子も有しておらず、出発物質とみなすことができる。
【0031】
置換基R、R、R、A及びXがこれらの化合物の全てによって共有されるので、式(1)の化合物と関連付けて以下に示す代替物において示されるように、これらの置換基の種々の実施形態は式(2)、(3)及び(4)の化合物に外挿され得る(extrapolated)。更に、式(1)及び(2)におけるLの性質は、式(4)及び(3)におけるL’の性質を決定する。従って、式(1)に関して以下に記載される代替物は、これをもって、式(2)、(3)及び(4)に代替物として移入される。
【0032】
[定義]
用語「電子供与性の基」とは、ベンジルのH基(benzylic H group)の酸性度に減少をもたらす置換基を意味する。適切な電子供与性の置換基の例は、低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルキルチオ、アミノ、アルキルアミノ及びジアルキルアミノを含むが、それらに限定されない。用語「電子吸引性の基」(electron-withdrawing group)とは、ベンジルのH基の酸性度に増加をもたらす置換基を意味する。適切な電子吸引性の置換基の例は、ハロゲン、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、ニトロ、シアノ、C(=O)−R(Rは、H、低級アルキル、低級アルコキシ又はアミノである)、又はSORあるいはSOR(Rは、低級アルキル、アリール又はヘテロアリールである)を含むがそれらに限定されない。非水素の電子供与性又は電子吸引性の置換基は、それらが結合する環上の複数の(multiple)位置に存在することができる。便宜上、ほとんどの例では、単環上に単一の非水素置換が出現する場合のみが示されるが、複数の置換も存在することができ、本発明の範囲内である。置換基は同一であっても良いし、異なっても良い。
【0033】
用語「アルキル」とは、1−8炭素(あるいは、いくつかの実施形態では、1−6又は1−4炭素原子)の直線状、分枝状又は環状の飽和炭化水素基を含むことを意味する。
【0034】
用語「アルケニル」とは、炭素−炭素二重結合を有する非芳香族の不飽和炭化水素を含むことを意味する。用語「アルケニル(C)」とは、任意の幾何学的な立体配置のモノ−、ジ−、トリ−又はテトラ−の置換炭素−炭素二重結合を意味する。
【0035】
用語「アルキニル」は、炭素−炭素三重結合を有する非芳香族の不飽和炭化水素を含むことを意味する。用語「アルキニル(C)」とは、モノ−、又はジ−の置換炭素−炭素三重結合を意味する。
【0036】
用語「アルコキシ」とは、酸素に結合したアルキル基を含むことを意味し、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、シクロプロポキシ、シクロブトキシ及び類似のものを含む。
【0037】
用語「アリール」とは、6−18炭素(好ましくは、6−10炭素)の芳香族の炭化水素基を含むことを意味し、フェニル、ナフチル及びアントラセニルなどの基を含む。用語「ヘテロアリール」とは、少なくとも1つのN、O又はS原子を含有し、3−15炭素を含む(好ましくは少なくとも1つのN、O又はS原子を含有し、好ましくは3−7炭素を含む)芳香族の環を含むことを意味し、ピロリル、ピリジル、ピリミジル、イミダゾリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、キノーリル、インドーリル、インデニル及び類似のものなどの基を含む。
【0038】
用語「ハロゲン」は、ブロモ、フルオロ、クロロ及びヨードを含む。
【0039】
用語「マレイミド」とは、以下の式の基を意味する:

【0040】
用語「タンパク質」及び「ペプチド」は、鎖の長さに関わらず、本願において互換的に使用され、これらの用語は、更に、アミド結合以外のリンケージ(CHNHリンケージなど)を含む擬似ペプチド、並びに模倣ペプチド(peptidomimetics)を含む。
【0041】
用語「核酸」及び「オリゴヌクレオチド」も、鎖の長さに関わらず、互換的に使用される。核酸又はオリゴヌクレオチドは、単鎖又は二重鎖であっても良いし、あるいは、DNA、RNAであっても良いし、又は改変したリンケージ(リン酸ジエステル、ホスホロアミド酸、及び同様のものなど)を有するそれらの改変形であっても良い。本発明における薬剤として有用なタンパク質及び核酸の両方に関しては、これらの用語は、天然には発見されていない側鎖を有するもの(タンパク質のケースにおいて)、そして、天然には発見されていない塩基を有するもの(核酸のケースにおいて)も含む。
【0042】
薬剤の文脈における小分子(small molecules)は、本発明の分野において良く理解されている用語であり、合成された、あるいは天然から単離されたタンパク質及び核酸以外の化合物(一般的にはタンパク質又は核酸には似ていない)を含むことを意味する。典型的には、それらは、分子量<1,000を有するが、認知された特定のカットオフは存在しない。それにもかかわらず、該用語は、薬学及び医学の分野で良く理解されている。
【0043】
用語「高分子(macromolecule)」とは、約10,000及び100,000の間の分子量を有する高分子を意味し、それ自体本質的に細胞毒性、ホルモン性又は細胞シグナリング性の活性を欠くが、全身性の循環(路)において活性薬剤分子を輸送する役割を果たすように活性薬剤分子へのコンジュゲーション(共役)が可能であり、そして、経時的に放出される活性薬剤のリザーバーを提供する。
【0044】
及びRが結合して環状構造を形成する場合には、これは、R−CH−R部分(モイエティ)が、サブストラクチャー(例えば、

や、該式を上述の電子吸引性及び/又は電子供与性の基で任意に置換したものなど)を形成する基を含む。なお、上記式において、Gは、結合(bond);C=O;SO、SO、CX又はCXCX(各Xは、独立してH又はCl)である。
【0045】
式(1)の変化形態
以下に記載の実施例(複数)においては、例えば、典型的には、ただ1つの置換基を含有するアリール基が記載されるだろう。このことは単純化のみのためであり、環状システムが複数の非水素置換基を含有するR及びRの実施形態が含まれることが理解されるだろう。好ましくは、単環上の置換基の数は、1、2又は3である。
【0046】
本発明のいくつかの実施形態では、式(1)の化合物は、より具体的な以下の式を有する:

又は、

[これらの式において、n=1−6である]。
【0047】
いくつかの実施形態では、式(1)の分子は、より具体的な式(1a)を有する:

[式(1a)において、R及びRは、各々独立して、H、電子供与性の基、又は電子吸引性の基であり、電子供与性及び/又は電子吸引性の形態のR及びRは、フェニル部分(モイエティ)上の1−5箇所(好ましくは、3箇所以下)において存在し;Xは、O又はSであり;Aは、アルケニル(C)、アリールであるか、もしくは存在せず;Lは高分子に結合することが可能な連結基であり;RはH又はアルキル(C1−6)である]。式(1a)の分子は、例えば、以下の式である:


、例えば、


、例えば、




【0048】
本発明のより特別な実施形態において、式(1)の分子はより具体的な構造(1b)を有する:

[式(1b)において、上記のように、R及びRは、各々独立して、H、電子供与性の基、又は電子吸引性の基であり、電子供与性及び/又は電子吸引性の形態のR及びRは、フェニル部分上の1−5箇所において存在し;Rは、H又はアルキル(C1−6)であり、n=1−6である]。
【0049】
構造(1b)の例は、以下の式を含む:

、並びに、


【0050】
本発明のある実施形態において、式(1)の分子は、より具体的な式(1c)を有する:

[式(1c)において、Xは、O又はSであり;Aは、アルケニル(C)、アリールであるか、もしくは存在せず;Lは高分子へ結合することが可能な連結基であり;Rは、H又はアルキル(C1−6)であり、R10及びR11は、各々独立して、H、電子供与性の基又は電子吸引性の基であり、R10及びR11は、それらの各々の環における1−4箇所又は1−2箇所で非水素置換基として存在することができる]。式(1c)の分子の例は、以下の式を含む:




【0051】
本発明のより特別な実施形態において、式(1c)の分子は、以下の式を含む:


【0052】
本発明の特別な実施形態において、式(1)の分子は、より具体的な式(1d)を有する:

[式(1d)において、R10及びR11は、各々独立してH、電子供与性の基又は電子吸引性の基であり、R10及びR11は、それらの各々の環における1−4箇所又は1−2箇所で非水素置換基として存在することができ、n=1−6であり、そしてRは、H又はアルキル(C1−6)である]。式(1d)は、例えば、以下の式である




【0053】
ある実施形態において、本発明の分子は式(1e)を有する:

[式(1e)において、R10及びR11は、各々独立してH、電子供与性の基又は電子吸引性の基であり、R10及びR11は、それらの各々の環における1−4箇所で非水素置換基であることができ;Xは、O又はSであり;Aは、アルケニル(C)、アリールであるか、もしくは存在せず;Lは、高分子に結合することが可能な連結基であり;Gは、結合、C=O、O、SO、SO、CX又はCXCX(各Xは、独立してH又はCl)であり、Rは、H又はアルキル(C1−6)である]。
【0054】
式(1e)の例は、以下の式を含む:




【0055】
本発明のある実施形態において、式(1)の分子は、より具体的な式(1f)を有する:

[式(1f)において、Rは、H、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、アルケニル、アルキニル、CN、NO、C(=O)−R、SOR;SO、SRであり、 Xは、O又はSであり;Aは、アルケニル(C)、アリールであるか、もしくは存在せず;Lは、高分子に結合することが可能な連結基であり;Rは、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、アルケニル又はアルキニルであり、Rは、H又はアルキル(C1−6)である]。
【0056】
1つの実施形態において、Rは、Hである。他の実施形態において、Rは、アリール、置換アリール、ヘテロアリール又は置換ヘテロアリールである。他の実施形態においてRは、CNである。
【0057】
式(1f)の例は、以下の式を含む:



[当該式において、R10は、H又は電子吸引性あるいは電子供与性の基である]。
【0058】
本発明のより特別な実施形態ですら、式(1f)の分子は、以下の式を含む;


【0059】
10による置換の1つの例のみが示されているが、電子吸引性又は電子供与性の置換基としてのR10は、それが結合するフェニル環の1−5箇所に存在することができる。
【0060】
本発明の1つの特別な実施形態において、式(1f)の分子は、以下の式を含む:



[当該式において、R10及びR11は、各々独立して、H、又は電子吸引性もしくは電子供与性の基であり、非水素置換基としてのR10及びR11は、それら各々のフェニル環の1−5箇所において存在することができる]。
【0061】
他のより特別な実施形態において、本発明の化合物は、以下の式を有する:


【0062】
本発明のある実施形態において、式(1)の分子は、より具体的な式(1g)を有する:

[式(1g)において、Rは、H、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、アルケニル、アルキニル、CN、NO、C(O)−R、SOR、SO、又はSRであり;Rはアルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、アルケニル又はアルキニルであり;n=1−6であり、そしてRは、H又はアルキル(C1−6)である]。
【0063】
式(1g)の分子は、以下の式を含む:



[当該式において、R10は、H、又は電子吸引性もしくは電子供与性の基である]。
【0064】
非水素置換基としてのR10は、1箇所のみで示されているが、そのような非水素置換基は、図示されるフェニル部分上の1−5箇所において存在することができる。
【0065】
本発明のある実施形態において、式(1)の分子は、より具体的な式(1h)を有する:

[式(1h)において、Rは、H、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、アルケニル、アルキニル、CN、NO、C(=O)−R、SOR、SO又はSRであり;Xは、O又はSであり;Aは、アルケニル(C)、アリールであるか、もしくは存在せず;Lは、高分子に結合することが可能な連結基であり、そしてRは、H又はアルキル(C1−6)である]。
【0066】
1つの実施形態において、Rは、Hである。他の実施形態において、Rは、アリール、置換アリール、ヘテロアリール又は置換ヘテロアリールである。
【0067】
式(1h)の分子は、以下の式を含む:

[当該式において、R10は、H、電子吸引性の基又は電子供与性の基である]。R10は、上記式のフェニル環において1箇所のみで特異的に示されているが、非水素形態のR10は、1−5箇所において(好ましくは、フェニル環の3箇所以下において)存在することができる。
【0068】
式(1h)の分子は、以下の式も含む:



[当該式において、n=1−6である]。
【0069】
本発明のある実施形態において、式(1)の分子は、より具体的な式(1k)を有する:

[式(1k)において、Rは、H、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、アルケニル、アルキニル、CN、NO、C(=O)−R、SOR、SO又はSRであり;Xは、O又はSであり;Aは、アルケニル(C)、アリールであるか、もしくは存在せず;かつ、Lは、高分子に結合することが可能な連結基であり、かつ、Rは、H又はアルキル(C1−6)である]。
【0070】
本発明の特別な実施形態において、式(1k)の分子は、R=Hを有し、式(1m)の分子を提供する:

[式(1m)において、R11は、H、又は電子吸引性あるいは電子供与性の基であり、非水素置換基としてのR11は、1−5箇所において(好ましくは、フェニル部分上の3箇所未満において)存在することができる]。
【0071】
式(1m)の分子は、以下の式を含む:




【0072】
本発明の特別な実施形態において、式(1m)の分子は、式(1n)を有する:

[式(1n)において、n=1−6であり、R11はH、電子吸引性の基又は電子供与性の基であり、非水素置換基としてのR11はフェニル部分(モイエティ)の1−5箇所(好ましくは、3箇所未満)において存在することができ、かつ、Rは、H又はアルキル(C1−6)である]。
【0073】
式(1n)の分子は、以下の式を含む:


【0074】
本発明の特別な実施形態において、式(1k)の分子は、R=アリールを有し、そして、式(1p)を有する:

[式(1p)において、Xは、O又はSであり;Aは、アルケニル(C)、アリールであるか、もしくは存在せず;Lは、高分子に結合することが可能な連結基であり;R10及びR11は、各々独立して、H、電子吸引性の基又は電子供与性の基であり、非水素形態のR10及びR11は、フェニル部分の1−5箇所(好ましくは、3箇所以下)で存在することができ、Rは、H又はアルキル(C1−6)である]。
【0075】
式(1p)の分子は、以下の式を含む:




【0076】
本発明の特別な実施形態において、式(1)の分子は、より具体的な式(1q)を有する:

[式(1q)において、Xは、O又はSであり;Aは、アルケニル(C)、アリールであるか、もしくは存在せず;Lは高分子に結合することが可能な連結基であり;R10はH、電子吸引性の基又は電子供与性の基であり、非水素形態のR10は、それが結合する環の1−4箇所(好ましくは、2箇所以下)で存在することができ、Rは、H又はアルキル(C1−6)である]。
【0077】
式(1q)の分子は、以下の式を含む:


【0078】
式(1q)の分子は、以下の式を含む:




【0079】
式(1q)の分子は、以下の式も含む:






【0080】
Lは、高分子に結合することが可能な連結基である。用語「高分子に結合することが可能な連結基」とは、官能性(functionality)を含む基を意味し、当該官能性を介してLを高分子に化学的に結合させることができることを意味する。適切な官能性の例は、アミン、アルコール、チオール、クロリド、イオディド、ブロミド、アジド、マレイミド、アルケン、アルキン、アルデヒド、カルボキシラート、ホスファートの[官能性]を含むがそれらに限定されない。従って、1つの実施形態において、Lは、(CH12

である。なお、上記式において、n=1−6であり、R12は、NH、N、Cl、Br、I、SH、COOH、CHO、CH=CH、CCH又はマレイミドである。
【0081】
特別な実施形態において、Lは、(CH12(n=1−6であり、かつ、R12が、NH、N、I、SH、COOH、CHO、CCH又はマレイミドであるか、あるいは、R12が、N、SH、CHO、CCH又はマレイミドであるか、あるいは、R12が、N又はCCHである。
【0082】
ある実施形態において、Lは(CHCCHであり、以下の式を有する本発明の化合物を提供する:

[当該式において、X、R、R、R、A及びXは上記定義のものである]。
【0083】
従って、模範的な式(1)の分子は、以下の式を有する:




【0084】
より特別な実施形態において、 式(1)の分子は、以下の式を含む:













[当該式において、n=1−6である]。より特別な実施形態において、n=3である。
【0085】
全ての上記化合物(1a)−(1q)の例において、環システム上の非水素形態の置換基は、複数の位置(好ましくは、2又3箇所以下)に存在することができる。単環上の非水素置換基は、同一であってもよいし、異なっても良い。
【0086】
他の実施形態において、Lは、

である。なお、上記式において、R12は、NH、N、Cl、Br、I、SH、OH、COOH、CHO、CH=CH、CCH又はマレイミドである。
【0087】
他の実施形態において、Lは式

の基である。
なお、上記式において、n=1−6である。これらの化合物は、化合物(L=(CHNH)から出発して、縮合剤(例えば、カルボジイミド(DCC,EDCI)又はウロニウム試薬(例えば、HATC、HBTA、TATU))の存在中に、4−[4−(3,5−ジオキソ−ヘキシル)-フェニルカルバモイル]−ブチル酸と反応させることによって調製することができる
【0088】
L’の性質は上述のLの実施形態の性質によって決定されるため、これらの実施形態は式(3)及び(4)を説明する。
【0089】
式(1)の化合物の調製
Aが存在しない式(1)の化合物は、RCHを強塩基(例えば、ブチルリチウム、NaH、リチウムジイソプロピルアミド、リチウムビス(トリメチルシリルアミド)又は類似のもの)と反応させることによって形成されたカルボアニオンRCHを、分子L−C(=X)Rに添加して式(1x)の化合物を生成することによって調製することができる:

【0090】
あるいは、Aが存在せず、かつX=Oである式(1x)の化合物は、2つのステップのプロセスによって調製することができる。第1のステップにおいて、RCHを強塩基(例えば、ブチルリチウム、NaH、リチウムジイソプロピルアミド、リチウムビス(トリメチルシリルアミド)又は類似のもの)と反応させることによって形成されたカルボアニオンRCHを、エステルL−C(=O)OR(Rは、低級アルキル)に添加すると、中間体であるケトンRCH−C(=O)−Lを生成し、第2のステップにおいて、[当該ケトンRCH−C(=O)−Lを]適切な還元剤(例えば、NaBH又はNaBHCN)と反応させて、X=Oである式(1)の化合物を提供することができる。
【0091】
例えば、L−CHOが5−ヘキセナール(hexenal)である場合には、X=Oであり、かつ、Lが(CHCH=CHである式(1a)の化合物が得られる。L−CHOが5−ヘキシナール(hexynal)である場合には、X=Oであり、かつ、Lが(CHCCHである式(1a)の化合物が得られる。Lが6−アジドヘキサナールである場合には、X=Oであり、かつ、Lが(CHである式(1a)の化合物が得られる。Lが3−アジドベンズアルデヒドである場合には、X=Oであり、かつ、Lが3−アジドフェニルである式(1a)の化合物が得られる。L=4−ブロモベンズアルデヒドである場合には、X=Oであり、かつ、Lが4−ブロモフェニルである式(1a)の化合物が得られる。
【0092】
例えば、RCH=フルオレンを強塩基(例えば、ブチルリチウム、NaH又はリチウムジイソプロピルアミド)と反応させてフルオレニルカルボアニオンを形成させ、次に、[当該フルオレニルカルボアニオン]をL−CHOと反応させる場合には、反応は以下のようである:


【0093】
X=Sである対応する化合物は、適切な類似体Z−C(=S)Rを使用して同様に調製することができるし、あるいは、本発明の分野において知られた方法を使用して化合物(1a)の[調製]後の化学的な変換(subsequent chemical transformation)によって調製することもできる:例えば、(1a)におけるアルコール基の活性化(例えば、PBr又はPhPBrを使用したブロマイドへの転換(conversion)、あるいは、トシラートもしくはトリフラートへの転換による活性化)、そして、式(1b)の化合物を形成する置換(displacement)(チオウレア(thiourea)又はチオスルファート(thiosulfate)などの適切な求核性の基による置換)によって調製することもできる。好ましい実施形態において、チオスルファートを使用して中間体を形成し、当該中間体を酸処置によって加水分解してチオールを形成することができる。。
【0094】
本発明のある実施形態において、A=アルケニレン(C)である。A=アルケニル(C)である化合物は、例えば、強塩基(NaH、ブチルリチウム、リチウムビス(トリメチルシリルアミド)、又は類似のもの)を使用するRCHのリチオ化に由来する不飽和カルボアニオンの、不飽和化合物(メチル3−(ジメチルアミノ)−アクリレートなど)への添加によって中間体エステルを提供し、[当該中間体エステルを、]ワンステップを介して、あるいは複数のステップを介して、対応する不飽和のアルデヒドに還元することによって調製することができる:


【0095】
パラジウム触媒の存在下における、不飽和のアルデヒドと、アリールボロン酸R12−アリール−B(OH)との反応(例えば、Org. Letts. (2005) 7:4153-5に記載されているような反応)は、A=アルケニル(C)であり、L=置換アリールであり、かつ、X=Oである式(1c)の化合物を提供する:


【0096】
あるいは、Soderquistの方法に従った不飽和アルデヒドと、アリルボランとの反応は、A=アルケニル(C)であり、X=Oであり、かつ、L=CHCH=CHである式(1d)の化合物、及びA=アルケニル(C)であり、X=Oであり、かつ、L=CHCCHである式(1e)の化合物を提供する。Burgos, C. H., et al., J. Am. Chem. Soc. (2005) 127:8044を参照されたし。

【0097】
式(2)、(3)及び(4)の化合物の調製
次に、式(1)の出発物質を、薬剤に対する誘導体化を最初に行うか、あるいは高分子に対する誘導体化を最初に行うかのいずれかを行って、式(3)の化合物の形成における中間体を得る。これらの中間体及び式(3)の生成物において、多くの図示された式(1)の形態に由来する全ての実施形態、及び特にL、A、X、R、R及びRの実施形態は、Lが高分子と反応させた場合に、この反応の結果としてL’になることを除いて、中間体又は式(3)の最終生成物において保持される。
【0098】
従って、薬剤が最初に添加される中間体の以下の説明(illustrations)において、式(1)について上記定義のR、R、R、A、X及びLの全ての実施形態は、式(2)の化合物の説明として含まれる:

[式(2)において、mは1−10の整数であり;
Zは、高分子の残基であり;
Lは、反応して高分子をカップルすることができる連結部分(モイエティ)であり;
Dは、薬剤又はプロドラッグの残基であり;
Xは、O又はSであり;
Aは、アルケニル(C)、アリールであるか、もしくは存在せず;
各R及びRは、独立して、CN;
NO
任意に置換されるアリール;
任意に置換されるヘテロアリール;
任意に置換されるアルケニル;
任意に置換されるアルキニルであるか;あるいは、
各R及びRは、独立して、COR又はSOR又はSO
(Rは、H、又は任意に置換されるアルキル;
任意に置換されるアリール;
任意に置換されるヘテロアリール;
任意に置換されるアルケニル;
任意に置換されるアルキニルであるか;あるいは、
OR又はNR(各Rは、独立して、H、又は任意に置換されるアルキル))
であるか;あるいは、
各R及びRは独立してSR
(Rは、任意に置換されるアルキル、
任意に置換されるアリール;
任意に置換されるヘテロアリール;
任意に置換されるアルケニル;
任意に置換されるアルキニル)であり、
式(3)において、R及びRは、結合して3―8員環を形成することができ;そして、
及びRの両方がHではあり得ず、
は、H又はアルキル(C1−6)である]。
【0099】
従って、L、A、R、R及びR、並びにXは、式(1)の化合物についての上記の一般的な定義のものであり、式(1)に関して上述のこれらの置換基の特定の実施形態が、式(2)の化合物の例として、引用によって本願明細書に組み込まれる。
【0100】
式(2)の化合物は、それ自体、制御された速度で治療剤を放出することができるし、あるいは、それらを中間体として使用して、治療剤と高分子とを結合することもできる。式(2)及び(3)の両方は、pH−依存的な脱離のメカニズムに従って制御された速度で治療剤を放出する。
【0101】
上述のように、R、R、A及びLの性質は、全て、放出の速度に影響を与える。
【0102】
式(2)の化合物は、上述のように、式(1)の分子と薬剤分子Dとの縮合によって一般的に調製することができる。本発明の1つの実施形態において、式(1)の化合物は、最初に、縮合のために、適切な試薬での反応によって活性化される(例えば、ホスゲン又はトリホスゲン、任意に、N−ヒドロキシスクシンイミド(N-hydroxysuccinimide);1,1−カルボニルジイミダゾール;1,1−カルボニルジトリアゾールの存在下で;あるいは、活性化された式(1)の化合物(W=F、Cl、イミダゾリル、トリアゾリル又はO−スクシンイミジルである)への式(1)の化合物の転換のための類似の試薬の存在下で活性化される)。

【0103】
例えば、トリホスゲン及びN−ヒドロキシスクシンイミドを用いた式(1)の化合物(X=O)の反応は、式(1)の化合物(X=Oであり、かつ、W=O−スクシンイミジルである)を産出する。

【0104】
コンジュゲート化されるべき薬剤分子(D−H)がアミノ基を有する場合には、式(1)の化合物(X=Oであり、かつ、W=O−スクシンイミジルである)は、特に好ましい。このケースでは、結果として生成される式(2)のプロドラッグがカルバマート(carbamate)リンケージを含む。D−Hがペプチド又はタンパク質薬剤である場合について、式(1)の化合物と反応するアミノ基は、末端のアルファ−アミノ基、又は側鎖のアミノ基(例えば、リジン、オルニチン又は非天然アミノ酸残基の側鎖のアミノ基)であり得る。
【0105】
あるいは、活性化試薬は、置換フェニルクロロホルマート(phenyl chloroformate)(例えば、4−ニトロフェニルクロロホルマート、2,4−ジニトロフェニルクロロホルマート、又はペンタフルオロフェニルクロロホルマート)であり得、結果として中間体である置換フェニルカルボナートを形成することができる。
【0106】
コンジュゲート化されるべき薬剤分子(D−H)がアミノ基を有さないが、そのかわりにヒドロキシ基を有する場合(例えば、D−Hがぺプチド又はタンパク質の薬剤であり、チロシン、セリン又はスレオニン残基の側差に由来するヒドロキシ基を有する場合)や、あるいは、D−Hがデオキシ核酸又はリボ核酸などの核酸ベースの薬剤である場合には、式(1)の化合物(X=Oであり、かつW=F又はClである)は、特に好ましい。
【0107】
ペプチド−、タンパク質−又は核酸ベースの薬剤のケースにおいては、複数の反応基が存在し得、式(1*)の化合物と、複数の反応を導出し得る。この複数の反応の度合いは、所望の反応生成物を得るために、本発明の分野において知られた標準的な条件を使用して(例えば、反応温度、濃度(concentrations)及び化学当量数(stoichiometrics)を変化させることによって)制御することができる。
【0108】
本発明の1つの実施形態においては、Dはペプチド薬剤であり、Dを式(1)の分子にコンジュゲート化して、式(2)の分子を生成する。本発明の他の実施形態においては、Dはペプチド薬剤であり、Dの合成の間に式(1)の分子を結合させる方法によって式(2)の分子を調製する。例えば、本発明の分野において周知の固相ペプチド合成法によるDの合成における最終ステップは、ペプチドDの配列のN−末端アミノ酸(保護化された形態)の結合を含む。本実施形態では、この最終ステップにおいて、保護基として式(1)の化合物が使用された態様のN−末端アミノ酸が使用される。

[当該式において、Rは、アミノ酸の側鎖である]。
【0109】
この実施形態は、誘導体化の位置及び化学当量数が完全に制御されるという点で有利である。
【0110】
上述のように、薬剤は、XH基(OHまたはSHである)を介してコンジュゲート化される。薬剤は、互換性の(compatible)官能基(例えば、カルボキシル、OH、NH、アルキル−NH(MeNH、EtNH及びPrNHなど)、アリール−NH(フェニル−NH、又は置換フェニル−NHなど)そしてSH)を含むだろう。担体上の官能基と、薬剤上の官能基とが、カルボニル(C=O)基を使用してコンジュゲート化される。
【0111】
一般的には、目的の薬剤は、ペプチド、タンパク質、核酸(アプタマーやアンチセンスオリゴマーなど)又は小分子である。
【0112】
適切な薬剤の例は、ヒトのため、あるいは獣医学のための以下の薬剤を含むがこれらに限定されない:抗糖尿病剤(例えば、インスリン);成長促進因子(例えば、ヒト又はウシの成長ホルモン);抗菌剤(アミノグリコシド(例えば、ゲンタマイシン、ネオマイシン及びストレプトマイシン)、ペニシリン、(アモキシリン、アンピシリン、ピペラシリン)、セファロスポリン、(例えば、セファクロル、セフミノクス及びセファレキシン)、マクロライド系抗生物質(例えば、カルボマイシン、エリスロマイシン、テリスロマイシン)、ペプチド(例えば、バシトラシン、グラミシジンおよびポリミキシン)、トリメトプリム、ピロミド酸及びスルファメタジンを含む);鎮痛剤及び抗炎症剤(例えば、アセトアミノフェン、アスピリン、イブフェナク、インドメタシン)、抗アレルギー剤及び抗喘息剤(例えば、アムレキサノクスおよびクロモリン)、抗高コレステロール血症剤(例えば、クロフィブリン酸、オキシニアシン酸(oxiniacic acid)およびトリパラノール)、ベータ- アドレナリン遮断薬および抗高血圧剤(例えば、ブプラノロール、カプトプリル、インデノロール、プロプラノロール及び4−アミノブタン酸)、抗悪性腫瘍剤(例えば、ダウノルビシン、アザシチジン、メルカプトプリン、インターフェロン、インターロイキン-2 、メトトレキセート、タキソール5−フルオロウリジン、5 - フルオロウラシル、 カプシチビン及びビンブラスチン)、抗ウイルス薬(例えば、アシクロビル、ガンシクロビル、アマンタジン、インターフェロン、アジドチミジン(AZT)及びリバビリンなど)。
【0113】
ペプチド、タンパク質及び核酸の薬剤が特に好ましい。本発明における使用に適するペプチド薬剤の例は、以下のものを含むが、これらに限定されない:グルカゴン様ペプチド1(GLP-1), エキセンディン−2, エキセンディン−3, エキセンディン−4, 心房性ナトリウム利尿因子(ANF), ghrellin, バソプレシン, 成長ホルモン,成長ホルモン放出ホルモン(GHRH), RC-3095, ソマトスタチン,ボンベシン, PCK-3145, Phe-His-Ser-Cys-Asn (PHSCN), IGF1, B型ナトリウム利尿ペプチド, peptide YY (PYY), interferons, トロンボスポンジン,アンジオポエチン,カルシトニン,生殖腺刺激ホルモン放出ホルモン,ヒルジン,グルカゴン, anti-TNF-alpha, 線維芽細胞増殖因子,顆粒球コロニー刺激因子, obinepitide, pituitary thyroid hormone (PTH), リュープロリド,セルモレリン, pramorelin, ネシリチド,ロチガプチド, cilengitide, MBP-8298, AL-108, エンフビルチド, thymalfasin, daptamycin, HLFl-I l, ラクトフェリン, Delmitide, グルタチオン, T-cell epitope PR1, Protease-3 peptides 1-11, B-cell epitope P3, lutenizing hormone-releasing hormone (LHRH), substance P, nニューロキニンA, ニューロキニンB, CCK-8,エンケファリン(ロイシンエンケファリン及びメチオニンエンケファリンを含む), dermaseptin, [des-Ala20, Gln34]-dermaseptin, surfactant-associated antimicrobial anionic peptide, Apidaecin IA; Apidaecin IB; OV-2 ; 1025, Acetyl-Adhesin Peptide (1025 - 1044) amide; Theromacin (49 - 63); Pexiganan (MSI-78); インドリシジン; Apelin - 15 (63-77); CFPlO (71-85); Lethal Factor (LF) Inhibitor Anthrax related; Bactenecin; Hepatitis Virus C NS3 Protease Inhibitor 2; Hepatitis Virus C NS3 Protease Inhibitor 3; Hepatitis Virus NS3 Protease Inhibitor 4; NS4A-NS4B Hepatitis Virus C (NS3 Protease Inhibitor 1); HIV-I, HIV-2 Protease Substrate; Anti-Fltl Peptide; Bak - BH3; Bax BH3 peptide (55-74) (wild type); Bid BH3 - r8; CTT (Gelatinase Inhibitor); E75 (Her -2/neu) (369 - 377); GRP78 Binding Chimeric Peptide Motif; p53(17-26); EGFR2/KDR Antagonist; Colivelin AGA-(C8R) HNGl 7 (Humanin derivative); Activity - Dependent Neurotrophic Factor (ADNF); Beta - Secretase Inhibitor 1; Beta - Secretase Inhibitor 2; ch[beta] - Amyloid (30-16); Humanun (HN) sHNG, [Glyl4] - HN, [Glyl 4] -Humanin; アンジオテンシン変換酵素阻害薬(BPP); Renin Inhibitor III; Annexin 1 (ANXA - 1; Ac2-12); Anti-Inflammatory Peptide 1; Anti-Inflammatory Peptide 2; Anti-Inflammatory Apelin 12; [D - Phel2, Leul4]-Bombesin; Antennapedia Peptide (acid) (penetratin); Antennepedia Leader Peptide (CT); マストパラン; [Thr28, Nle31]-Cholecystokinin (25-33) sulfated; Nociceptin (1-13) (amide); Fibrinolysis Inhibiting Factor; Gamma - Fibrinogen (377-395); Xenin; Obestatin (human); [Hisl, Lys6]-GHRP (GHRP-6); [Ala5, [beta]-Ala8] -Neurokinin A (4-10); Neuromedin B; Neuromedin C; Neuromedin N; Activity-Dependent Neurotrophic Factor (ADNF-14); Acetalin 1 (Opioid Receptor Antagonist 1); Acetalin 2 (Opioid Receptor Antagonist 2); Acetalin 3 (Opioid Receptor Antagonist 3); ACTH (1-39) (human); ACTH (7-38) (human); ソーバジン; Adipokinetic Hormone (Locusta Migratoria); Myristoylated ADP-Ribosylation Factor 6, myr-ARF6 (2-13); PAMP (1-20) (Proadrenomedullin (1-20) human); AGRP (25-51); Amylin (8-37) (human); Angiotensin I (human); Angiotensin II (human); Apstatin (Aminopeptidase P Inhibitor); Brevinin - 1; Magainin 1; RL-37; LL-37 (Antimicrobial Peptide) (human); Cecropin A; Antioxidant peptide A; Antioxidant peptide B; L-Carnosine; BcI 9-2; NPVF; Neuropeptide AF (hNPAF) (Human); Bax BH3 peptide (55-74); bFGF Inhibitory Peptide; bFGF inhibitory Peptide II; ブラジキニン; [Des-Argl O]-HOE 140; Caspase 1 Inhibitor II; Caspase 1 Inhibitor VIII; Smac N7 Protein (; MEKl Derived Peptide Inhibitor 1; hBD-1 ([beta]-Defensin-1) (human); hBD-3 ([beta]-Defensin-3) (human); hBD-4 ([beta]-Defensin-4) (human); HNP-I (Defensin Human Neutrophil Peptide 1); HNP-2 (Defensin Human neutrophil Peptide -2 Dynorphin A (1-17)); Endomorphin- 1; [beta]-Endorphin (human porcine); Endothelin 2 (human); Fibrinogen Binding Inhibitor Peptide; Cyclo(-GRGDSP); TP508 (Thrombin-derived Peptide); Galanin (human); GIP (human); Gastrin Releasing Peptide (human); Gastrin - 1 (human); Ghrelin (human); PDGF-BB peptide; [D-Lys3] - GHRP - 6; HCV Core Protein (1-20); a3Bl Integrin Peptide Fragment (325) (amide); Laminin Pentapeptide (amide) Melanotropin - Potentiating Factor (MPF); VA-[beta]-MSH, Lipotropin - Y (Proopiomelanocortin - derived); Atrial Natriuretic Peptide (1-28) (human); Vasonatrin Peptide (1-27); [Ala5, B - Ala8] -Neurokinin A (4-10); Neuromedin L (NKA ); Ac-(Leu28, 31)-Neuropeptide Y (24-26); Alytesin; Brain Neuropeptide II; [D-tyrll]-Neurotensin; IKKy NEMO Binding Domain (NBD) Inhibitory Peptide; PTD-p50 (NLS) Inhibitory Peptide; Orexin A (bovine, human, mouse, rat); Orexin B (human); Aquaporin - 2(254-267) (human Pancreastatin )(37-52); Pancreatic Polypeptide (human); Neuropeptide; Peptide YY (3-36) (human); Hydroxymethyl-Phytochelatin 2; PACAP (1-27) (amide, human, bovine, rat); Prolactin Releasing Peptide (1-31) (human); Salusin-alpha; Salusin-beta; Saposin C22; Secretin (human); L-Selectin; Endokinin A/B; Endokinin C (Human); Endokinin D (Human); Thrombin Receptor (42-48) Agonist (human); LSKL (Inhibitor of Thrombospondin); 甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH); P55-TNFR Fragment; Urotensin II (human); VIP (human, porcine, rat); VIP Antagonist; Helodermin; エクセナチド; ZPlO (AVEOOlOO); Pramlinitide; AC162352 (PYY)(3-36); PYY; Obinepitide; グルカゴン; GRP; Ghrelin (GHRP6); リュープロリド;ヒストレリン;オキシトシン; Atosiban (RWJ22164); セルモレリン;ネシリチド; bivalirudin (Hirulog); Icatibant; Aviptadin; Rotigaptide (ZP123, GAP486); Cilengitide (EMD-121924, RGD Peptides); AlbuBNP; BN-054; Angiotensin II; MBP-8298; Peptide Leucine Arginine; Ziconotide; AL-208; AL-108; Carbeticon; トリペプチド; SAL; Coliven; ヒューマニン; ADNF-14; VIP (Vasoactive Intestinal Peptide); Thymalfasin; バシトラシン; Gramidicin; Pexiganan (MSI-78); Pl 13; PAC-113; SCV- 07; HLFl-I l (Lactoferrin); DAPTA; TRI-1144; Tritrpticin; Antiflammin 2; Gattex (Teduglutide, ALX-0600); Stimuvax (L-BLP25); Chrysalin (TP508); Melanonan II; Spantide II; Ceruletide; Sincalide; Pentagastin; セクレチン; Endostatin peptide; E-selectin; HER2; IL-6; IL-8; IL-10; PDGF; トロンボスポンジン; uPA (1); uPA (2); VEGF; VEGF (2); Pentapeptide-3; XXLRR; Beta - Amyloid Fibrillogenesis; Endomorphin - 2; TIP 39 (Tuberoinfundibular Neuropeptide); PACAP (1-38) (amide, human, bovine, rat); TGFB activating peptide; Insulin sensitizing factor (ISF402); Transforming Growth Factor Bl Peptide (TGF-Bl); Caerulein Releasing Factor; IELLQAR (8- branch MAPS); Tigapotide PK3145; ゴセレリン;アバレリックス;セトロレリクス;ガニレリクス; Degarelix (Triptorelin); Barusiban (FE 200440); プラルモレリン;オクトレオチド;エプチフィバチド; Netamiftide (INN-00835); Daptamycin; Spantide II; Delmitide (RDP-58); AL-209; エンフビルチド; IDR-I; Hexapeptide-6; Insulin- A chain; ランレオチド; Hexa[rho]eptide-3; Insulin B-chain; Glargine- A chain; Glargine- B chain; Insulin- LisPro B- chain analog; Insulin- Aspart B- chain analog; Insulin- Glulisine B chain analog; Insulin- Determir B chain analog; Somatostatin Tumor Inhibiting Analog; Pancreastatin (37-52); Vasoactive Intestinal Peptide fragment (KKYL-NH2); 及びダイノルフィンA。こららの、そして、例えば、PCT公開公報WO2008/058016A1にリストされた他のペプチド及びタンパク質薬剤(アイデンティティー及び配列については引用によって本願に組み込まれる)は本発明での使用に適する。
【0114】
本発明における適切なタンパク質薬剤の例は、以下のものを含むがそれらに限定されない:免疫毒素SS1P、アデノシンデアミナーゼ、アルギナーゼ(argininase)及びその他のもの。
【0115】
本発明における使用に適する核酸ベースの薬剤の例は、動物、そして特に哺乳動物由来の任意の遺伝子のセンスストランド及びアンチセンスストランドを含むがそれらに限定されない。そのような遺伝子は、既に種々の病気を処置することを目的として提供されているアンチセンスDNAsのもの(subjects)の遺伝子であり得、例えば、以下に関する遺伝子を含む:プロテインキナーゼC−アルファ(アプリノカルセン(Aprinocarsen)、非小細胞肺癌(non small cell lung cancers))、BCL−2(オブリメルセン、悪性メラノーマ、肺癌)、ICAM−1 (ISIS-3082, クローン病、HCV関連C型肝炎、移植片における虚血性/再灌流傷害)、腫瘍壊死因子アルファ(関節リウマチ、SARS及び乾癬)、アデノシンA1受容体(喘息)、c−rafキナーゼ(卵巣癌)、H−ras(膵臓癌)、c−myc(冠動脈疾患)、プロテインキナーゼA RIアルファ(結腸癌(colon cancer)、AIDS)、DNAメチルトランスフェラーゼ(固形癌)、VEGF受容体(癌)、リボヌクレオチドレダクターゼ(腎臓癌)、サイトメガロウイルスIE2(CMV網膜炎)、マトリックスメタロプロテイナーゼ−9(前立腺癌)、TGFベータ2(悪性グリオーマ)、CD49d(多発性硬化症)、PTP−1B(糖尿病)、c−myb(癌)、EGFR(乳癌)、mdr1(癌)、オータキシン(癌)、ホスファチジルイノシトールグリカンアンカークラスF(PIGF、癌)、及びGLUT−1(癌)。核酸薬剤は、DNA、修飾DNA(ホスホロチオエートDNAなど)、RNA、修飾RNA(2’−OMe−RNAなど)、ロックド核酸、ペプチド核酸、あるいはハイブリッドであり得る。
【0116】
本発明の1つの実施形態において、Dは、オリゴヌクレオチド薬剤である。式(2)の化合物(Dがオリゴヌクレオチドである)は、式(1)の分子とのコンジュゲートを可能にする5’末端の修飾(modification)を含むオリゴヌクレオチド薬剤の化学的な合成によって調製することができる。例えば、当該オリゴヌクレオチドは、アミノ−アルキル基を含有するように修飾したリン酸基を、合成の最終ラウンドで添加される5’−末端のヌクレオチドユニットが含むようにして、化学的に合成することができる。次に、結果として生成されるアミン修飾オリゴヌクレオチドを、式(1)の分子にコンジュゲート化して、式(2)の分子(Dはオリゴヌクレオチド薬剤である)を形成する。例えば、Zhao, et al., Bioconjugate Chemistry (2005) 16(4):758-766を参照されたし。
【0117】
式(2)のプロドラッグからの薬剤の放出速度を変化させる予想された効果は、図4及び図5に示される。図4は、全身からの排除を一日に0.5(投与された薬剤の総量の分率(fraction)として表現される)の固定速度として算出した、異なる放出速度を有する一連のプロドラッグに関する薬剤放出のプロファイルを示し、プロドラッグの緩やかな排出(clearance)が予測される。相対的に早い放出速度(例えば、一日に5の放出速度)は、より短期間にわたる、より高い放出された薬剤の最大濃度を示す。相対的に遅い放出速度(例えば、一日に0.1の放出速度)は、より長期間にわたる、より低い放出された薬剤の最大濃度を示す。
【0118】
投与される薬剤の総量を必要に応じて変えることができるので、達成される遊離薬剤の最大レベルに関する観点において式(2)の化合物からの薬剤の放出を考察することは有意義である。図5は、全身からの排除を一日に0.5(最大濃度の時間に対するパーセント(%Cmax)として表現される)の固定速度として算出した、異なる放出速度を有する一連のプロドラッグに関する薬剤放出のプロファイルを示す。プロドラッグ又は薬剤−高分子のコンジュゲートからの薬剤放出の速度が遅くなるに従い、遊離薬剤の濃度を最大濃度の上記所与のパーセントとした場合の投与後の期間が延長される。
【0119】
図4及び図5に示したモデルは、種々の薬剤の時間−濃度のプロファイルを全身からの薬剤の排除速度に対し(ないし関連して)式(2)のプロドラッグからの適切な薬剤放出の速度を選択することによって達成することができることを実証する役割を果たす。
【0120】
本発明は、2つ以上の式(2)のプロドラッグ(薬剤(D)(2つ以上)は、同一であってもよいし、あるいは異なってもよい)を含む混合物を含有する組成物も含む。1つの実施形態において、そのような混合物における式(2)のプロドラッグの各々は、生理学的な条件の下で、異なる速度の薬剤放出を有する。
【0121】
薬物動態は、式(3)の高分子を含むことによっても更に制御される:

[前記式(3)において、mは1−10の整数であり;
Zは、高分子の残基であり;
L’は、リンカーの残基であり;
Dは、薬剤又はプロドラッグの残基であり;
Xは、O又はSであり;
Aは、アルケニル(C)、アリールであるか、もしくは存在せず;
各R及びRは、独立して、CN;
NO
任意に置換されるアリール;
任意に置換されるヘテロアリール;
任意に置換されるアルケニル;
任意に置換されるアルキニルであるか;あるいは、
各R及びRは、独立して、COR又はSOR又はSO
(Rは、H、又は任意に置換されるアルキル;
任意に置換されるアリール;
任意に置換されるヘテロアリール;
任意に置換されるアルケニル;
任意に置換されるアルキニルであるか;あるいは、
OR又はNR(各Rは、独立して、H、又は任意に置換されるアルキル))であるか;あるいは
各R及びRは独立してSR
(Rは、任意に置換されるアルキル、
任意に置換されるアリール;
任意に置換されるヘテロアリール;
任意に置換されるアルケニル;
任意に置換されるアルキニル)であり、
前記式(3)において、R及びRは、結合して3―8員環を形成することができ;そして、
前記式(3)において、R及びRの両方がHではあり得ず、
は、H又はアルキル(C1−6)である]。
【0122】
m=1である場合には、式(3)の薬剤−高分子のコンジュゲートは、より具体的な 以下の式を有する:



【0123】
多くの実施形態において、RはHである。
【0124】
式(2)の化合物のケースのように、式(1)のケースで説明したR、R、A、X、R及びLについて定義の実施形態は、式(3)の適切な置換基として適用される(これらの実施形態は当該記載により引用によって組み込まれる)。L’のケースにおいて、Lの性質はその構造を決定するため、式(1)及び(2)との関係において記載の変形例も同様に適用される。
【0125】
式(2)との関係において説明され、そしてリストされた薬剤は式(3)にも同様に適用される。
【0126】
非酵素的脱離による式(3)からの薬剤の放出の際には、連結基は、高分子に結合したままである。体(body)からの分子の排除速度(clearance rate)はそれらの水力学的な半径に依存し、そのため分子量に依存する。例えば、マウスにおけるスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)の半減期が、遊離SODについての0.08時間から、1,900Da(分子量)のPEGにコンジュゲート化されたSODについての1.5時間まで、あるいは72,000Da(分子量)のPEGにコンジュゲート化されたSODについての36時間まで増加することを示す、Veronese, Biomaterials (2001) 22:405-417を参照されたし。従って、式(2)のプロドラッグを高分子へコンジュゲーション化して、式(3)の分子提供することは、プロドラッグの循環寿命を増加させることに使用することができる。
【0127】
薬剤の送達のための高分子の担体は、式(3)の化合物の形成における他の中間体でもある。
【0128】
式(2)及び(3)の化合物のケースのように、式(1)について記載された全ての変形例(特に、R、R、R、X及びLに関して記載された変形例)は、式(4)の化合物の特別な実施形態に組み込まれる:


【0129】
いくつかの実施形態では、Zは、タンパク質、オリゴ糖又は10,000及び250,000の間の分子量を有する合成ポリマーである。
【0130】
ある実施形態において、高分子Zは、10,000及び250,000の間の分子量を有する合成ポリマーである。より具体的な実施形態において、高分子Zは、10,000及び100,000の間の分子量を有する合成ポリマーである。本発明のある実施形態において、Zは、誘導体化した直線状、分枝状、デンドリマー状のポリ(エチレングリコール)(PEG)、モノメトキシ―PEG(mPEG)、ポリ(エチレンイミン)(PEI)、又はPEG−PEIコポリマーである。ヒドロキシル、アミン、アジド、カルボキシル、アルデヒド、N−ヒドロキシスクシンイミジルエステル、イミダゾリルカルボアミノ、イミダゾリルカルボキシ、ニトロフェニルカルボナート、イソシアナート、マレイミド、チオール又はエポキシドの官能基を含む分子を結果として形成する種々の末端の官能基を有する種々のサイズの誘導体化合成ポリマー(PEG及びmPEGなど)は、商業的に入手可能である。他の合成ポリマーの誘導体は、本発明の分野において公知の方法を使用して、例えば、ブロモメチル−置換芳香族(あるいはヘテロ芳香族)のアルデヒド、又はアリル(あるいはプロパジル)ハライドを使用して誘導体化することによって、調製することができる。
【0131】
他の実施形態において、高分子Zは、分子量10,000及び250,000の間のタンパク質である。本発明のさらに具体的な実施形態において、Zは、抗体又は抗体フラグメント(モノクローナル又はポリクローナルのいずれか)である。タンパク質の配列に依存して、種々の反応性の官能基(アミン及びチオールなど)が存在するだろう。あるいは、タンパク質には、本発明の分野において公知の方法を使用して化学的に誘導体化して、チオール及びマレイミドなどの基を付加することができる。
【0132】
他の実施形態において、Zは、10,000及び250,000の間の分子量を有するオリゴ糖である。ある実施形態において、Zは10,000及び250,000の間の分子量を有するデキストランである。より具体的な実施形態において、Zは10,000及び100,000の間の分子量を有するデキストランである。
【0133】
高分子Zは、式(1)又は(2)の分子との反応に適する少なくとも1つの官能基R13を含むだろう。本発明の化合物に関して、適切なR13の基は、以下の基を含むがそれらに限定されない:ヒドロキシル、アミン、アジド、カルボキシル、アルデヒド、N−ヒドロキシスクシンイミジルエステル、イミダゾリルカルボアミノ、イミダゾリルカルボキシ、ニトロフェニルカルボナート、イソシアナート、マレイミド、チオール、エポキシド、CCH(末端のアルキン)、及びグアニジノの基。
【0134】
本発明の特別な実施形態において、Zは、抗体m38c2、又はそのヒトに適合させたバージョンである(米国特許出願2006/0205670、本願に引用によって組み込まれる)。
【0135】
式(3)又は(4)の化合物のある実施形態において、Zは、抗体;アルブミン;直線状、分枝状、もしくはデンドリマー状のポリエチレングリコール(PEG);直線状、分枝状、もしくはデンドリマー状のモノメトキシポリエチレングリコール(mPEG);直線状、分枝状、もしくはデンドリマー状のポリエチレンイミン(PEI);直線状、分枝状、もしくはデンドリマー状のPEG−PEIコポリマー;直線状、分枝状、もしくはデンドリマー状のデキストラン;及びナノ粒子から構成される群から選択される。本発明の特別な実施形態において、薬剤−高分子のコンジュゲートは、式(3a)(Zは、抗体である)を有する。本発明の他の特別な実施形態において、薬剤−高分子のコンジュゲートは、式(3a)(Zは、線状、分枝状、もしくはデンドリマー状のポリエチレングリコール(PEG)である)を有する。本発明の他の特別な実施形態において、薬剤−高分子のコンジュゲートは、式(3a)(Zは、直線状、分枝状、もしくはデンドリマー状のモノメトキシポリエチレングリコール(mPEG)である)を有する。
【0136】
本発明の式(3)及び(4)の化合物において、L’は、以下の式であり得る:(CHNHCO、(CHNHCH、(CHNHCONH、(CHトリアゾリル、(CHチオスクシンイミドイル、(CH(ヒドロキシエチルチオ)、(CHスクシンイミドイルチオ、(CHCONH、

[当該式において、n=1−6である]。
【0137】
高分子へのカップリング
式(4)の化合物は、下記のように調製され、高分子Zにカップル化されるべき反応物質は、式(1)の化合物である。式(2)の化合物が採用された場合には、結果として式(3)の化合物が形成される。同様に、式(4)の化合物は、上記の適切な薬剤を用いた反応によって、上述のように式(3)の化合物に転換することができる。
【0138】
各ケースにおいて、連結基L’は、コンジュゲーションプロセスの間に、高分子Zの官能基R13と、式(1)又は(2)の分子のリンカー基Lの官能基R12との反応によって形成される。上述のように、式(1)及び(2)の化合物において、Lは、(CH12

である。なお、当該式において、n=1−6であり、かつ、R12はNH、N、Cl、Br、I、SH、COOH、CHO、CH=CH、CCH又はマレイミドである。
【0139】
式(3)又は(4)の化合物はいくつかのルートの内の任意のルートによって調製することができ、最も適切なルートは基Lの基R12の性質に主に依存するだろう。適切な方法及び結果として形成される連結基L’の性質は、図示されるようにm=1である場合には、以下のように、(式(2)の化合物との反応を用いて官能基の選択によって決定される。
【0140】
12がNHである場合には、誘導体化された高分子Z−R13は、R13=COOHを介して、カルボジイミドなどの縮合剤を使用して式(1)又は(2)の化合物にコンジュゲート化されるか、あるいは、直接的にR13=CO−O−スクシンイミドイル(N−ヒドロキシスクシンイミドイルエステル)、CO−イミダゾリル、又は CO−O−(ニトロフェニル)を使用して、アミドリンケージL’=(CHNHCO又は

が提供される:



[当該式において、Z、X、A、D、R及びRは上記定義のものである]。
【0141】
あるいは、R12がNHである場合には、誘導体化高分子Z−R13は、R13=CHOを介して、還元的アミノ化を使用して式(1)又は(4)の化合物にコンジュゲート化され、例えば、NaBHCNを使用して、アミンリンケージL’=(CHNH−CH又は

が提供される:

[当該式において、Z、X、A、D、R及びRは上記定義のものである]。
【0142】
あるいは、R12がNHである場合には、誘導体化高分子Z−R13は、R13=イソシアナートを介して、式(1)又は(2)の化合物にコンジュゲート化され、尿素リンケージL’=(CH)NH−CO−NH−、又は

が提供される:

[当該式において、Z、X、A、D、R及びRは上記定義のものである]。
【0143】
12がNである場合には、誘導体化高分子Z−R13は、R13=CCHを介して、「クリックケミストリー(click chemistry)、1,3−二極性環状構造付加反応(dipolarcyclo addition reaction)」に関する条件を使用して、式(2)の化合物にコンジュゲート化して、W=(CH−トリアゾリルにおける1,2,3−トリアゾールリンケージ又は

を形成することができる:

[当該式において、Z、X、A、D、R及びRは上記定義のものである]。
【0144】
12がSHである場合には、誘導体化高分子Z−R13は、R13=マレイミド又はエポキシドを介して式(1)又は(2)の化合物にコンジュゲート化され、L’= (CH)(ヒドロキシエチルチオ)、

(CH−(スクシンイミドイルチオ)、又は

が形成される:



[当該式において、Z、X、A、D、R及びRは上記定義のものである]。
【0145】
12がCOOHである場合には、誘導体化高分子Z−R13は、R13=アミンを介して、縮合剤(カルボジイミドなど)を使用して、式(1)又は(2)の化合物にコンジュゲート化され、L’=(CH−CONH又は

が提供される:

[当該式において、Z、X、A、D、R及びRは上記定義のものである]。
【0146】
12がCCHである場合には、誘導体化高分子Z−R13は、R13=Nを介して、「クリックケミストリー」を使用して式(1)又は(2)の化合物にコンジュゲート化され、L’=(CH−トリアゾリル又は

を形成する:

[当該式において、Z、X、A、D、R及びRは上記定義のものである]。
【0147】
12がマレイミドである場合には、誘導体化高分子Z−R13は、R13=SHを介して式(2)の化合物にコンジュゲート化され、L’=(CH−スクシンイミドイルチオ又は

を提供する:

[当該式において、Z、X、A、D、R及びRは上記定義のものである]。
【0148】
本発明の1つの実施形態において、Lは、式

を有する基である。この実施形態において、プロドラッグ及び高分子のコンジュゲーションは、エナミノ−ケトンリンケージを提供する:

[当該式において、n=1−6であり、Zは、R13=NHとなるように反応性のリジン残基を含む抗体である]。
【0149】
いくつかの実施形態では、式(3)の薬剤−高分子のコンジュゲートは、以下の式を有する:

又は

[当該式において、R、R、Z、A及びDは上記定義のものであり、かつ、nは1−6である]。
【0150】
1つの実施形態において、式(3)のコンジュゲートはより具体的な式(3a)を有する:

[式(3a)において、
Zは、高分子の残基であり;
Dは、薬剤分子の残基であり;
Xは、O又はSであり;
L’は連結基の残基であり;
Aは、アルケニル(C)、アリールであるか、もしくは存在せず;
及びRは、各々独立して、H、電子供与性の基又は電子吸引性の基であり、そして、非水素置換基の形態のR及びRはそれらが結合する環上の1−5箇所(好ましくは、3箇所以下)で存在してもよく、かつ、Rは、H又はアルキル(C1−6)である]。
【0151】
式(3a)のいくつかの実施形態では、Z及びL’は上記のものであり、及び/又は、XはOであり、及び/又は、Aは存在しないか、あるいはアルケニル(C)である。
【0152】
式(3a)の化合物は、

によって図示され、以下のものを含む例を含む:


【0153】
他の実施形態において、式(3)の薬剤−高分子のコンジュゲートは、より具体的な式(3b)を有する:

[式(3b)において、
Zは、高分子の残基であり;
Dは、薬剤分子の残基であり;
Xは、O又はSであり;
L’は連結基の残基であり;
Aは、アルケニル(C)、アリールであるか、もしくは存在せず;
Gは、結合、C=O、O、S、SO、SO、CX又はCXCX(各Xは、独立してH又はCl)であり;そして、
10及びR11は、各々独立して、H、電子供与性の基又は電子吸引性の基であり、R10及びR11の各々は、それらが結合する環上の1−4箇所(好ましくは、2箇所以下)で存在することができる]。
【0154】
本発明のある実施形態において、薬剤−高分子のコンジュゲートは、式(3b)(Z及びL’は上記説明のものである)を有する。
【0155】
式(3b)において、XはOであり得、及び/又は、Aは存在しないか、あるいはアルケニル(C)である。
【0156】
本発明の特別な実施形態において、式(3b)の薬剤−高分子のコンジュゲートは、より具体的な以下の式を有する:


【0157】
本発明の説明的な実施形態において、式(3b)の薬剤−高分子のコンジュゲートは、以下の式を含む:




【0158】
本発明の他の実施形態において、式(3)のコンジュゲートは、式(3c)を有する:

[式(3c)において、上述のように、
Zは、高分子の残基であり;
Dは薬剤分子の残基であり;
Xは、O又はSであり;
L’は連結基の残基であり;
Aは、アルケニル(C)、アリールであるか、もしくは存在せず;
はH、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、アルケニル、アルキニル、CN、NO、COR、SOR又はSOであり:
は、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、アルケニル又はアルキニルであり、そしてR及びRは結合して環構造を形成することができる]。
【0159】
式(3c)のコンジュゲートは、上記説明のZ及びL’の実施形態を含むことができる。
【0160】
式(3c)のいくつかの実施形態では、XはOであり、及び/又は、Aは存在しないか、あるいはアルケニル(C)である。
【0161】
式(3c)の薬剤−高分子のコンジュゲートは、以下の式を含むことができる:


【0162】
例示した分子の各々において、非水素置換基は、フェニル環に示される1−5箇所(好ましくは、3箇所以下)で存在することができる。
【0163】
他の実施形態において、式(3)のコンジュゲートは、より具体的な式(3d)を有する:

[式(3d)において、
Zは、高分子の残基であり;
Dは薬剤分子の残基であり;
Xは、O又はSであり;
L’は連結基の残基であり;
Aは、アルケニル(C)、アリールであるか、もしくは存在せず;そして、
は、H、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、アルケニル、アルキニル、CN,NO、COR、SOR又はSOである]。
【0164】
式(3d)を有する薬剤−高分子のコンジュゲートは、上記リストされたようなZ及びL’の実施形態を含むことができる。
【0165】
式(3d)は、実施形態(XはOであり、及び/又は、Aは存在しないか、あるいはアルケニル(C))を含む。
【0166】
本発明のある特別な実施形態において、式(3d)の薬剤−高分子のコンジュゲートは、以下の式を含む:


【0167】
他の実施形態において、式(3)のコンジュゲートは、より具体的な 式(3e)を有する:

[式(3e)において、
Zは、高分子の残基であり;
Dは、薬剤分子の残基であり;
Xは、O又はSであり;
L’は、連結基の残基であり;
Aは、アルケニル(C)、アリールであるか、もしくは存在せず;
は、H、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、アルケニル、アルキニル、CN、NO、COR、SOR又はSOであり;そして
はアルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、アルケニル又はアルキニルであり、そして、R及びRは結合して環構造を形成してもよい]。
【0168】
式(3e)のコンジュゲートは、上記リストされたようなZ及びL’の実施形態を含有する。
【0169】
式(3e)において、XはOであり得、及び/又は、Aは、存在しないか、もしくはアルケニル(C)である。
【0170】
本発明のある特別な実施形態において、式(3e)の薬剤−高分子のコンジュゲートは、以下の式を含む:


【0171】
上述の式(3a)−(3e)の説明は、次の実施形態(即ち、式(3)において、mが2−10(全ての中間の整数を含む)であり、非水素置換基を示す任意の環がその環上の複数の位置で置換され得るもの)を更に含む。置換基は、同一であっても良いし、異なってもよい。
【0172】
医薬的な組成物
本発明は、式(2)又は式(3)の化合物(あるいは医薬的に許容可能なそれらの塩、もしくはそれらの混合物)と、医薬的に許容可能な担体とを含む、医薬的な組成物及び獣医学のための組成物を提供する。本発明によれば、ヒト及び動物への薬剤投与の任意の適したルートは、例えば、従来の注射可能な投与、移植可能な投与、経口の投与、眼球内の投与、くも膜下の投与、直腸の投与又は局所の投与が想定される。これらの調製物は、当業者に知られる従来の方法(例えば、Remington's Pharmaceutical Science, A. R. Gennaro, ed., 17th edition, 1985, Mack Publishing Company, Easton, Penn., USAに記載される方法)によって調製することができる。
【0173】
式(2)又は式(3)の化合物や、それらの組成物で処置され得る被検体(subjects)は、ヒト、獣医学的な動物(veterinary animals)、家畜、そして、マウス及びラットのような実験動物を含む。
【0174】
本発明の組成物は、式(3)又は式(2)の化合物(2つ以上)を含む混合物を含み得る。1つの実施形態において、本発明の混合物は、式(2)又は式(3)の化合物(2つ以上の)を含み、当該実施形態において、式(2)又は式(3)の化合物は、各々、同一の薬剤Dを有するが、薬剤Dに関して生理学的な条件下で異なる薬剤放出の速度も有する(かくて、薬剤Dに関して仕立てられた薬剤放出プロファイルが提供される)。
【0175】
他の実施形態において、本発明の混合物は、式(2)又は式(3)の化合物(2つ以上)を含み、当該実施形態において、式(2)又は式(3)の化合物は、各々、異なる薬剤Dを有し、そして、任意的であるが、各薬剤Dに関して生理学的な条件下における異なる薬剤放出の速度も有する(かくて、仕立てられた併用治療が提供される)。単一の薬剤の放出を制御することに加えて、2つ以上の薬剤の放出速度を制御するために‐それによって、定常状態の濃度及び作用の継続時間を制御するために‐本発明を使用することができる。従って、2つの薬剤の組み合わせ物において、1つの薬剤は、2つの薬剤の濃度及び継続時間を最適化することができる。1つの実施形態において、第1の薬剤Aについての最適なコンジュゲートは、実験的に決定される。そのような最適なコンジュゲートは、最適な薬剤濃度対時間(drug concentration versus time)のプロファイル(すなわち、最適な暴露薬剤濃度及び暴露時間)を有するものとして、特徴付けられる。当該実施形態においては、最適化された第1の薬剤Aのコンジュゲートと、第2の薬剤Bのコンジュゲート(複数)(各薬剤Bのコンジュゲートは、異なる薬剤放出プロファイルを有する)とを一緒に使用することで、もっとも有効な組み合わせが実験的に決定される。次に、最適な混合物が決定されていることを確認するために、最適な薬剤Bのコンジュゲートと、複数の(multiple)第2の薬剤Aのコンジュゲートとを一緒に使用して、逆の(converse)実験を行っても良い。
【0176】
他の実施形態において、薬剤A及び薬剤Bの各々は、コンジュゲートからの薬剤の放出に関して、1セットの半減期(例えば:1、2、4及び8時間の半減期)を有するコンジュゲートに調製(made)される。次に、これらコンジュゲートの組み合わせ(薬剤A及び薬剤Bのコンジュゲートに関して存在し得る全ての変形例(possible permutations)に渡る)がテストされる。
【0177】
本発明の1つの特別な実施形態においては、GLP‐1、又はそのアナログ(例えば、エキセンディンなど)がコンジュゲート化されて、式(3)の第1の薬剤‐高分子のコンジュゲートを形成し、そしてガストリンがコンジュゲート化されて、式(3)の第2の薬剤‐高分子のコンジュゲートを形成する。他の本発明の特別な実施形態において、インスリンがコンジュゲート化されて、式(3)の第1の薬剤‐高分子のコンジュゲートを形成し、そしてインスリンC‐ペプチドがコンジュゲート化されて、式(3)の第2の薬剤‐高分子のコンジュゲートを形成する。
【0178】
本発明は、以下に概要する実施例によって説明されるが、当該実施例によっては限定されない。
【実施例1】
【0179】
一般的な手順、式(1)、A=存在せず、X=O
CH(1.0当量)のテトラヒドロフラン(THF)溶液を、リチウムジイソプロピルアミド(LDA)溶液又はブチルリチウム溶液(1.0当量)に−78℃で添加する。混合物を、0℃までゆっくりと温まるようにし、次にアルデヒドL‐CHO(1.0当量)の添加の前に、−78℃に再冷却する。30分後、混合物を環境温度までゆっくりと温まるようにし、飽和NHCl水溶液の添加によって反応を抑え(quweched)、そしてエーテルで抽出する。抽出物を1N HCl、飽和NaHCO水溶液及び鹹水で逐次的に洗浄し、次にMgSOで乾燥し、ろ過し、そして蒸発乾燥する(evaporated)。必要に応じて、生成物をシリカゲルでのクロマトグラフィーにより精製する。
【実施例2】
【0180】
一般的な手順、式(1)、A=存在せず、X=S
Aが存在せず、そしてX=Oである式(1)の化合物(1.0当量)のTHF溶液を、1Mのリチウムビス(トリメチルシリルアミド)(LiHMDS)(1.0当量)の溶液に−78℃で添加する。15分後、p‐トルエンスルホニルクロリド(1.0当量)溶液を加え、そして混合物を環境温度までゆっくりと温まるようにし、飽和NHCl水溶液の添加によって反応を抑え、そしてエーテルで抽出する。抽出物を1N HCl、飽和NaHCO水溶液及び鹹水で逐次的に洗浄し、次にMgSOで乾燥し、ろ過し、そして蒸発乾燥する。結果として生成される粗(crude)のトシラート(tosylate)をイソプロパノールに溶解し、そしてチオ硫酸(ないしチオスルファート)ナトリウム水溶液と50℃で反応させてブンテ塩(Bunte salt)を形成し、HCl水溶液での処理により加水分解する。メルカプタン生成物を、シリカゲルでのクロマトグラフィーにより精製する。
【実施例3】
【0181】
一般的な手順、式(1)、A=アルケニル(C)、X=O、L=置換アリール
CH(1.0当量)のテトラヒドロフラン(THF)溶液を、リチウムジイソプロピルアミド(LDA)溶液又はブチルリチウム溶液(1.0当量)に−78℃で添加する。混合物を、0℃までゆっくりと温まるようにし、次に、メチル3‐(ジメチルアミノ)プロペノアート(1.0当量)の添加の前に、−78℃に再冷却する。混合物を環境温度までゆっくりと温まるようにし、1N HClの添加によって反応を抑え、そしてエーテルで抽出する。抽出物を1N HCl、飽和NaHCO水溶液及び鹹水で逐次的に洗浄し、次に、MgSOで乾燥し、ろ過し、そして蒸発乾燥する。生成されるエステルをシリカゲルでのクロマトグラフィーにより精製する。
【0182】
当該エステル(1.0当量)のTHF溶液を、過剰の水素化リチウムアルミニウムで処理し、次に、シュウ酸の添加によって反応を抑え、そしてエーテルで抽出する。抽出物を1N HCl、飽和NaHCO水溶液及び鹹水で逐次的に洗浄し、次にMgSOで乾燥し、ろ過し、そして蒸発乾燥する。生成されるアルコールを、シリカゲルでのクロマトグラフィーにより精製する。
【0183】
該アルコール(1.0当量)を、ジクロロメタン溶液の中でデス‐マーチン ペルヨージナン(Dess-Martin periodinane)(1.5当量)と反応させることにより酸化して、アルデヒドとする。溶液をろ過し、そして1N HCl、飽和NaHCO水溶液及び鹹水で逐次的に洗浄し、次にMgSOで乾燥し、ろ過し、そして蒸発乾燥する。生成されるアルデヒドをシリカゲルでのクロマトグラフィーにより精製する。
【0184】
該アルデヒドを、Organic Letters (2005) 7:4153-4155(引用により本願明細書に組み込まれる)に記載される、置換アリールボロン酸と反応させる。かくて、アルデヒド(1.0当量)、アリールボロン酸(2.0当量)、CsCO(2.0当量)、Pd(dba)・CHCl(0.025当量)及びPhP(0.05当量)をトルエンに含む混合物は、80℃で24時間加熱される。環境温度まで冷却させた後、混合物を濃縮し、そして生成物をシリカゲルでのクロマトグラフィーにより精製する。
【実施例4】
【0185】
一般的な手順、式(1)、A=アルケニル(C)、X=S、L=置換アリール
実施例3の生成物を、実施例2の手順を使用して、対応する化合物(X=Sである)に変換する。
【実施例5】
【0186】
一般的な手順、X=Oであり、4‐ニトロフェニルカルボナートである式(1)の化合物の活性化
式(1)の化合物(1.0当量)のTHF溶液をLiHMDS(1.0当量)の1.0M THF溶液に、−78℃で添加する。15分後、ビス(4‐ニトロフェニル)カルボナート(1.5当量)溶液を添加する。混合物を、環境温度までゆっくりと温まるようにし、1N HClの添加によって反応を抑え、そしてエーテルで抽出する。抽出物を1N HCl、水及び鹹水で逐次的に洗浄し、そして、MgSOで乾燥し、ろ過し、そして蒸発乾燥する。生成される4‐ニトロフェニルカルボナートを、シリカゲルでのクロマトグラフィーにより精製する。
【実施例6】
【0187】
一般的な手順、X=Oであり、中間体であるクロロホルマートを経由するN‐ヒドロキシスクシンイミドイルカルボナートである式(1)の化合物の活性化
式(1)の化合物(1当量)のクロロホルム溶液を、トリホスゲン(5当量)で24時間、環境温度で処理する。溶媒を蒸発乾燥により除去し、クルードのクロロホルマートを提供する。
【0188】
クロロホルマートをTHFに溶解し、そしてN‐ヒドロキシスクシンイミド(4当量)及び2,6‐ルチジン(6当量)で環境温度で処理する。HPLC分析により[反応]が完了したと判断したとき、混合物を酢酸エチルで希釈し、そして1N HCl、水及び鹹水で逐次的に洗浄し、次に、MgSOで乾燥し、ろ過し、そして蒸発乾燥する。生成されるN‐ヒドロキシスクシンイミドイルカルボナート(N-hydroxysuccinimoyl carbonate [sic, N-hydroxysuccinimidoyl carbonate])を、HPLCクロマトグラフィーにより精製する。
【実施例7】
【0189】
一般的な手順、式(2)、X=O、D=コンジュゲーションによるペプチド
ペプチドの水溶性緩衝液の溶液(pH7.5)を、実施例5又は実施例6の活性化化合物(1当量)のDMSO溶液で処理する。必要に応じて、pHを、1N NaOHの添加により維持する。反応の進行をHPLCによりモニターする。[反応が]完了したと判断したとき、混合物を分取用HPLC(preparative HPLC)により精製する。
【実施例8】
【0190】
一般的な手順、式(2)、X=O、D=コンジュゲーションによる核酸
核酸の水溶性緩衝液の溶液(pH7.5)を、実施例5又は実施例6の活性化化合物(1当量)のDMSO溶液で処理する。必要に応じて、pHを、1N NaOHの添加により維持する。反応の進行をHPLCによりモニターする。[反応が]完了したと判断したとき、混合物を分取用HPLCにより精製する。
【実施例9】
【0191】
一般的な手順、式(2)、X=O、D=合成によるペプチド
本発明の分野で知られる標準条件を使用して(例えば、FMOC化学を使用して)、ペプチドを合成する。最後の(final)アミノ酸のカップリングの際、末端FMOC保護基を、標準条件下での処理により除去する。次に、レジン結合ペプチドを、過剰の実施例5又は実施例6の化合物と反応させ、N末端をキャップする。次に、ペプチドを脱保護し、そしてTFA/トリエチルシランを使用してレジンから切断し、そして逆相HPLCにより精製する。
【実施例10】
【0192】
一般的な手順、式(3)、X=OH、D=ペプチド、Z=mPEG
X=Oであり、Aは存在せず、そしてL=HCC‐(CH(n=0−6)である式(1)の化合物を、適切な末端アルキニルアルデヒドHCC-(CHCHOを使用して、実施例1の方法に従って調製する。この化合物を、実施例5又は実施例6の方法に従って活性化し、そして実施例7又は実施例9の方法に従ってペプチドDとカップル化し、X=O、D=ペプチド、及びL=HCC-(CHである式(2)の化合物を提供する。
【0193】
あるいは、X=Oであり、Aが存在せず、そしてL=エチニルフェニルである式(1)の化合物を、適切なアルキニルベンズアルデヒドを使用して、実施例1の方法に従って調製する。この化合物を、実施例5又は実施例6の方法に従って活性化し、そして実施例7又は実施例9の方法に従ってペプチドDとカップル化し、X=O、D=ペプチド、及びL=アルキニルフェニルである式(2)の化合物を提供する。
【0194】
mPEG-N(1当量)及び上記式(2)のアルキニル化合物(1当量)のTHF溶液をCuSO・5HO(0.1当量)及びアスコルビン酸ナトリウム(0.5当量)水溶液で処理し、[当該溶液を]24時間環境温度で撹拌する。混合物を凍結乾燥し、次に分取用逆相HPLCにより精製する。
【実施例11】
【0195】
(4―エチニルフェニル)(9H-フルオレン‐9-イル)メタノール
式(1):A=存在せず;X=O;RCH=9‐フルオレニル;L=4‐エチニルフェニル

フルオレン(1.0当量)のテトラヒドロフラン(THF)溶液をリチウムジイソプロピルアミド(LDA)(1.0当量)溶液に−78℃で添加する。混合物を、0℃までゆっくりと温まるようにし、次に、4‐エチニル‐ベンズアルデヒド(1.0当量)の添加の前に、−78℃に再冷却する。30分後、混合物を環境温度までゆっくりと温まるようにし、NHClの飽和水溶液の添加によって反応を抑え、そしてエーテルで抽出する。抽出物を1N HCl、飽和NaHCO水溶液及び鹹水で逐次的に洗浄し、次に、MgSOで乾燥し、ろ過し、そして蒸発乾燥する。生成物をシリカゲルでのクロマトグラフィーにより精製する。
【実施例12】
【0196】
1‐(3‐(tert-ブトキシカルボニルアミノ)フェニル)‐3‐(9H‐フルオレン‐9‐イル)アリルアルコール)](1-(3-(tert-butoxycarbonylamino)phenyl-3-(9H-fluoren-9-yl)allyl alcohol)
式(1):A=CH=CH;X=O;RCH=9‐フルオレニル;L=3‐(N‐BOC‐アミノ)フェニル

フルオレン(1.0当量)のテトラヒドロフラン(THF)溶液をリチウムジイソプロピルアミド(LDA)の溶液(1.0当量)に−78℃で添加する。混合物を、0℃までゆっくりと温まるようにし、次に、メチル3‐(ジメチルアミノ)プロペノアート(1.0当量)の添加の前に、−78℃に再冷却する。混合物を環境温度までゆっくりと温まるようにし、1N HClの添加によって反応を抑え、そしてエーテルで抽出する。抽出物を1N HCl、飽和NaHCO水溶液及び鹹水で逐次的に洗浄し、次にMgSOで乾燥し、ろ過し、そして蒸発乾燥する。生成されるエステルをシリカゲルでのクロマトグラフィーにより精製する。
【0197】
該エステル(1.0当量)のTHF溶液を、過剰の水素化リチウムアルミニウムで処理し、次にシュウ酸の添加によって反応を抑え、そしてエーテルで抽出する。抽出物を1N HCl、飽和NaHCO水溶液及び鹹水で逐次的に洗浄し、次にMgSOで乾燥し、ろ過し、そして蒸発乾燥する。生成されるアルコールをシリカゲルでのクロマトグラフィーにより精製する。
【0198】
該アルコール(1.0当量)を、デス‐マーチン ペルヨージナン(Dess-Martin periodinane)(1.5当量)を含むジクロロメタン溶液と反応させることにより酸化し、アルデヒドとする。溶液をろ過し、1N HCl、飽和NaHCO水溶液及び鹹水で逐次的に洗浄し、次にMgSOで乾燥し、ろ過し、そして蒸発乾燥する。生成されるアルデヒドをシリカゲルでのクロマトグラフィーにより精製する。
【0199】
上記アルデヒド(1.0当量)、3‐(N-BOC-アミノ)フェニルボロン酸(2.0当量)、CsCO(2.0当量)、Pd(dba)3・CHCl(0.025当量)及びPhP(0.05当量)をトルエンに含む混合物を80℃で24時間加熱する。環境温度まで冷却させた後、混合物を濃縮し、そして生成物をシリカゲルでのクロマトグラフィーにより精製する。
【実施例13】
【0200】
(4-エチニルフェニル)(9H-フルオレン-9-イル)メチル 4‐ニトロフェニルカルボナート

(4‐エチニルフェニル)(9H‐フルオレン‐9‐イル)メタノール(1.0当量)のTHF溶液をLiHMDS(1.0当量)の1.0M THF溶液に−78℃で添加する。15分後、ビス(4‐ニトロフェニル)カルボナート(1.5当量)溶液を添加する。混合物を環境温度までゆっくりと温まるようにし、1N HClの添加によって反応を抑え、そしてエーテルで抽出する。抽出物を1N HCl、水及び鹹水で逐次的に洗浄し、次にMgSOで乾燥し、ろ過し、そして蒸発乾燥する。生成される4‐ニトロフェニルカルボナートをシリカゲルでのクロマトグラフィーにより精製する。
【実施例14】
【0201】
1‐(3‐(tert‐ブトキシカルボニルアミノ)フェニル)‐3‐(9H‐フルオレン‐9‐イル)アリル N‐ヒドロキシスクシンイミドイルカルボナート

1‐(3‐(tert‐ブトキシカルボニルアミノ)フェニル)‐3‐(9H‐フルオレン‐9‐イル)アリルアルコール(1当量)のクロロホルム溶液をトリホスゲン(5当量)及びピリジン(2当量)で、24時間、環境温度で処理する。溶液を蒸発乾燥により除去し、クルードのクロロホルマートを提供する。
【0202】
クロロホルマートをTHFに溶解し、そしてN‐ヒドロキシスクシンイミド(4当量)及び2,6‐ルチジン(6当量)で、環境温度で処理する。HPLC分析により[反応が]完了したと判断した時、混合物を酢酸エチルで希釈し、そして1N HCl、水及び鹹水で逐次的に洗浄し、次に、MgSOで乾燥し、ろ過し、そして蒸発乾燥する。生成物 N‐ヒドロキシスクシンイミドイルカルボナートをシリカゲルでのHPLCクロマトグラフィーにより精製する。
【実施例15】
【0203】
[(4‐エチニルフェニル)(9H‐フルオレン‐9‐イル)メトキシカルボニル]誘導体化エキセンディン4
エキセンディン4(HGEGTFTSDL SKQMEEEAVR LFIEWLKNGG PSSGAPPPS)の水溶性緩衝液の溶液(pH7.5)を、実施例13の活性化した化合物(1当量)のDMSO溶液で処理する。必要に応じてpHを、1N NaOHの添加により維持する。反応の進行をHPLCによりモニターする。[反応が]完了したと判断した時、混合物を分取用HPLCにより精製する。
【実施例16】
【0204】
N‐[(4‐エチニルフェニル)(9H‐フルオレン‐9‐イル)メトキシカルボニル]‐エキセンディン4
エキセンディン4(HGEGTFTSDL SKQMEEEAVR LFIEWLKNGG PSSGAPPPS)のペプチド配列を、標準のFMOC化学を使用して合成する。最後のヒスチジンアミノ酸のカップリングの際、末端FMOC保護基を、標準条件下での処理により除去する。次に、レジン結合ペプチドを過剰の実施例13の化合物と反応させ、N末端をキャップする。次に、ペプチドを脱保護し、そして、TFA/トリエチルシランを使用してレジンから切断し、そして標準の手順(methodology)を使用して逆相HPLCにより精製する。
【実施例17】
【0205】
N‐[(4‐(mPEG‐トリアゾリル)フェニル)(9H‐フルオレン‐9‐イル)メトキシカルボニル]‐エキセンディン4

mPEG-N(1当量)及び実施例16のアルキニル化合物(1当量)のTHF溶液をCuSO・5HO(0.1当量)及びアスコルビン酸ナトリウム(0.5当量)水溶液で処理し、[当該溶液を]24時間環境温度で撹拌する。混合物を乾燥し、次に、分取用逆相HPLCにより精製する。
【実施例18】
【0206】
1‐(3‐(tert‐ブトキシカルボニルアミノ)フェニル)‐3‐(9H‐フルオレン‐9‐イル)アリルオキシカルボニル‐誘導体化エキセンディン4
エキセンディン4(HGEGTFTSDLSKQMEEEAVRLFIEWLKNGGPSSGAPPPS)の水溶性緩衝液の溶液(pH7.5)を実施例14の活性化した化合物(1当量)のDMSO溶液で処理する。必要に応じて、pHを、1N NaOHの添加により維持する。反応の進行をHPLCによりモニターする。[反応が]完了したと判断した時、混合物を分取用HPLCにより精製する。
【実施例19】
【0207】
N‐[1‐(3‐(tert‐ブトキシカルボニルアミノ)フェニル)‐3‐(9H‐フルオレン‐9‐イル)アリルオキシカルボニル]‐エキセンディン4

エキセンディン4(HGEGTFTSDLSKQMEEEAVRLFIEWLKNGGPSSGAPPPS)のペプチド配列を、標準のFMOC化学を使用して合成する。最後のヒスチジンアミノ酸のカップリングの際、末端FMOC保護基を、標準条件下での処理により除去する。次に、レジン結合ペプチドを過剰の実施例14の化合物と反応させ、N末端をキャップする。次に、ペプチドを脱保護し、そして、TFA/トリエチルシランを使用してレジンから切断し、そして標準の手順(methodology)を使用して逆相HPLCにより精製する。
【実施例20】
【0208】
N‐[1‐(3‐(mPEG‐カルボアミド)フェニル)‐3‐(9H‐フルオレン‐9‐イル)アリルオキシカルボニル]‐エキセンディン4

実施例19の化合物をTFA/トリエチルシランに溶解し、tert‐ブトキシカルボニル基を除去し、次に、蒸発乾燥し、乾燥させる。結果として生成される化合物をアセトニトリルに溶解し、そして、mPEG‐カルボキシラート N‐ヒドロキシスクシンイミドエステルと、pH6の緩衝溶液の存在下で反応させる。混合物を終夜環境温度で撹拌し、次に、乾燥する。生成物を逆相HPLCにより精製する。
【実施例21】
【0209】
5‐ヘキシナール
窒素雰囲気下で、5‐ヘキシン‐1‐オール(3mL、27.5mmol、1.0当量)を、0℃の酢酸ナトリウム(4.5g、27.4mmol、2.0当量)及びMgSO(1.48g)の乾燥(dry)CHCl混合物(50mL)に加え、次にクロロクロム酸・ピリジニウム(PCC)(11.85g、27.5mmol、2.0当量)を添加した。反応混合物を室温で3時間撹拌し、そしてエチルエーテル(EtO)(20mL)を添加した。結果として生成される混合物を、シリカゲルの短いパッド(short pad)を通してろ過し、そして残余物(residue)を40mLのEtO/石油エーテル(petroleum ether)(1:1)で洗浄した。クリアなろ過物をオリジナルの体積の半分に濃縮し、次に分子篩(molecular sieves)で乾燥し、そして、冷蔵庫中で次のステップの間、保存した。
【実施例22】
【0210】

窒素の保護の下、n‐ブチルリチウム(2.7mL、7.8mmol)をN,N‐ジイソプロピルアミン(1.1mL、7.8mmol)の20mlの無水テトラヒドロフラン(THF)の溶液に55℃で添加し、反応混合物を15分間撹拌し、そして−78℃で冷却(チルド)した。THF中のインダノン(0.95g、7.2mmol)(10mL)を上記混合物にカニューレを通して添加した。同じ温度で30分間撹拌した後、5‐ヘキシナールの溶液を、フラスコに添加し、そして3時間撹拌した。反応をNaHSO(水10mL中1g)溶液の添加によって反応を抑え、そして反応混合物を室温まで温めた。水層を酢酸エチル(EtOAc)(15mL×2)で抽出し、そして合わせた有機溶液をMgSOで乾燥し、そして減圧下で濃縮した。残余物(residue)を、シリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィーにより精製し、赤い固体の生成物(0.52g、収率 38.3%)を得た。
【実施例23】
【0211】

窒素雰囲気下で、n‐ブチルリチウム(ヘキサン中2.5M、1.0mL、3.0mmol)をN,N‐ジイソプロピルアミン(0.42mL、3.0mmol)の無水テトラヒドロフラン(THF)溶液(6mL)に、0℃で添加した。結果として生成された混合物を同じ温度で15分間撹拌し、次に−78℃まで冷却した。5‐クロロ‐2,3‐ジヒドロインデン‐1‐オン(0.5g、3.0mmol)のTHF(3mL)を添加した。−78℃で30分間撹拌の後、5‐ヘキシナール溶液を添加した。次に、反応混合物を−78℃で2時間撹拌し、飽和NHCl水溶液の添加によって反応を抑え、そして室温まで温めた。水相を酢酸エチル(EtOAc)で抽出し、そして合わせた有機溶液を鹹水で洗浄し、無水MgSOで乾燥し、ろ過し、そして減圧下で濃縮した。残余物をシリカゲルでのカラムクロマトグラフィーにより精製し、淡い黄色(pale yellow)の固体の所望の生成物(0.29g、収率 41.3%)を得た。
【実施例24】
【0212】

窒素の保護下で、n‐ブチルリチウム(ヘキサン中2.5M、2.7mL、7.8mmol)をN,N‐ジイソプロピルアミン(1.1mL、7.8mmol)の無水THF溶液(20mL)に、0℃で添加した。反応混合物を15分間撹拌し、そして次に、−78℃まで冷却(チルド)した。THF中の5‐メトキシ‐2,3‐ジヒドロインデン‐1‐オン(1.17g、7.2mmol)(10mL)を上記混合物にカニューレを介して添加した。同じ温度で30分間撹拌した後、5‐ヘキシナール(およそ6mmol)の溶液を、フラスコに添加し、そして、反応混合物を−78℃で3時間撹拌した。反応を飽和NHCl溶液(10mL)の添加によって反応を抑え、そして次に室温まで温めた。混合物を酢酸エチル(EtOAc)(15mL×2)で抽出し、そして合わせた有機溶液をMgSOで乾燥し、そして減圧下で濃縮した。残余物をシリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィーにより精製し、白い固体の生成物(0.58g、収率 31.2%)を得た。
【実施例25】
【0213】

窒素の保護下で、n‐ブチルリチウム(ヘキサン中2.5M、0.39mL、1.13mmol)をN,N‐ジイソプロピルアミン(0.17mL、1.13mmol)の無水THF溶液(4mL)に、0℃で添加した。反応混合物を0℃で20分間撹拌し、−78℃まで冷却(チルド)し、そして、THF中の5‐ニトロ‐2,3‐ジヒドロインデン‐1‐オン(0.2g、1.13mmol)(4mL)を針により添加した。同じ温度で30分間撹拌した後、5‐ヘキシナール(およそ1mmol)の溶液を添加し、そして次に、−78℃で3時間撹拌した。反応をNaHSO(水5mL中0.24g)の添加によって抑え、そして室温まで温めた。水層を酢酸エチル(EtOAc)(15mL×2)で抽出し、そして合わせた有機溶液を無水MgSOで乾燥し、ろ過し、濃縮し、そして、残余物をシリカゲルでのカラムクロマトグラフィーで精製し、薄い黄色(light yellow)の固体の生成物(0.117g、収率 38%)を得た。
【実施例26】
【0214】

窒素雰囲気下で、n‐ブチルリチウム(ヘキサン中2.5M、0.47mL、1.35mmol)をフルオレン(0.24g、1.48mmol)の無水THF溶液(2mL)に、−78℃で添加し、そして反応混合物を同じ温度で2.5時間撹拌した。5‐ヘキシナールの溶液を添加し、そして反応を−78℃で3時間撹拌し、飽和NHCl水溶液の添加によって抑え、そして室温まで温めた。混合物を酢酸エチル(EtOAc)で抽出し、そして次に合わせた有機相を鹹水で洗浄し、無水MgSOで乾燥し、ろ過し、そして減圧下で濃縮した。クルードの生成物をシリカゲルでのカラムクロマトグラフィーにより精製し、淡い黄色の固体の所望の生成物を得た(0.040g、収率 11.9%)。
【実施例27】
【0215】

窒素雰囲気下で、n‐ブチルリチウム(ヘキサン中2.5M、0.47mL、1.35mmol)をフルオレン(0.24g、1.48mmol)の無水THF溶液(2mL)に、−78℃で添加し、そして反応混合物を同じ温度で2.5時間撹拌する。6‐アジドヘキサナールの溶液を添加し、そして反応を−78℃で3時間撹拌し、飽和NHCl水溶液の添加によって反応を抑え、そして室温まで温める。混合物をEtOAcで抽出し、そして次に、合わせた有機相を鹹水で洗浄し、無水MgSOで乾燥し、ろ過し、そして減圧下で濃縮する。クルードの生成物をシリカゲルでのカラムクロマトグラフィーにより精製し、所望の生成物を得る。
【実施例28】
【0216】

9‐(6‐アジド‐1‐ヒドロキシヘキシル)フルオレン(1当量)のジメチルホルムアミド/水(9:1)の溶液をトリメチルホスフィン(10当量)で、1時間、環境温度で処理する。結果として生成される溶液に4‐[4‐(3,5‐ジオキソ‐ヘキシル)‐フェニルカルバモイル]‐酪酸(1当量)及びジメチルアミノプロピル‐エチル‐カルボジイミド(EDCI)(5当量)を添加する。終夜撹拌した後、混合物を酢酸エチルで希釈し、そして、水、1N HCl、飽和NaHCO水溶液及び鹹水で逐次的に洗浄し、次に、MgSOで乾燥し、ろ過し、そして濃縮する。生成物をシリカゲルでのクロマトグラフィーにより分離する。
【実施例29】
【0217】

実施例28の化合物(1当量)のクロロホルム溶液をトリホスゲン(5当量)で24時間、環境温度で処理する。溶媒を蒸発乾燥により除去し、クルードのクロロホルマートを提供する。
【0218】
クロロホルマートをTHFに溶解し、そしてN‐ヒドロキシスクシンイミド(4当量)及び2,6‐ルチジン(6当量)で、環境温度で処理する。HPLC分析により[反応が]完了したと判断したとき、混合物を酢酸エチルで希釈し、そして1N HCl、水及び鹹水で逐次的に洗浄し、次に、MgSOで乾燥し、ろ過し、そして蒸発乾燥する。生成物 N‐ヒドロキシスクシンイミドイルカルボナートをHPLCクロマトグラフィーにより精製する。
【実施例30】
【0219】

エキセンディン4(HGEGTFTSDL SKQMEEEAVR LFIEWLKNGG PSSGAPPPS)の水溶性緩衝溶液(pH7.5)を実施例29の活性化化合物(1当量)のDMSO溶液で処理する。必要に応じて、pHを、1N NaOHの添加により維持する。反応の進行をHPLCによりモニターする。[反応が]完了したと判断したとき、混合物を分取用HPLCにより精製する。
【実施例31】
【0220】
抗体‐エキセンディン コンジュゲートの形成
抗体(例えば、h38C2 IgG1又はb12 IgG1;米国特許公報2006/0205670 A1参照)を実施例30の化合物の溶液に添加し、終濃度(25 nM antibody binding site and 125 nM (2))にする。混合物を室温で10分間インキュベートする。コンジュゲートの形成を318nmでのUV吸光度での形成により決定する。
【実施例32】
【0221】
コンジュゲート混合物の使用
単一の薬剤の放出を制御することに加えて、2つ以上の薬剤の放出速度を制御するために‐それによって、定常状態の濃度及び作用の継続時間を制御するために‐本発明を使用することができる。従って、2つの薬剤の組み合わせ物において、1つの薬剤は、2つの薬剤の濃度及び継続時間を最適化することができる。1つの実施形態において、第1の薬剤Aについての最適な薬剤‐高分子のコンジュゲートは、実験的に決定される。そのような最適な薬剤‐高分子のコンジュゲートは、最適な薬剤濃度対時間(drug concentration versus time)のプロファイル(すなわち、最適な暴露薬剤濃度及び暴露時間)を有するものとして、特徴付けられる。当該実施形態においては、最適化された第1の薬剤Aの薬剤‐高分子コンジュゲートと、第2の薬剤Bの薬剤‐高分子コンジュゲート(複数)(各薬剤Bのコンジュゲートは、異なる薬剤放出プロファイルを有する)とを一緒に使用することで、もっとも有効な組み合わせが実験的に決定される。次に、最適な混合物が決定されていることを確認するために、最適な薬剤bのコンジュゲートと、複数の(multiple)第2の薬剤aの薬剤‐高分子コンジュゲートとを一緒に使用して、逆の(converse)実験を行っても良い。
【0222】
本発明の他の実施形態において、薬剤A及びBの各々は、薬剤‐高分子のコンジュゲートからの薬剤の放出に関して、1セットの半減期(例えば:1、2、4及び、8時間の半減期)を有するコンジュゲートに加工される。次に、これらコンジュゲートの組み合わせ(薬剤A及び薬剤Bのコンジュゲートに関して存在し得る全ての変形例(possible permutations)に渡る)がテストされる(表1)。
[表1]
最適な組み合わせを決定するためにテストされるべき薬剤組み合せコンジュゲートの例(Exemplary permutations)。コンジュゲートからの第1の薬剤Aの放出の半減期=w、x、y及びz時間である。コンジュゲートからの第2の薬剤Bの放出の半減期=a、b、c及びd時間である。



【実施例33】
【0223】
スルホンリンカーの調製に関する一般的な手順

スルホンリンカーは一般的に、最初に適切なチオールとブロモケトンとを反応させてベータ‐ケトスルフィドを生成し、続いて、酸化してベータケトスルホンを生成し、次にカルボニルを還元(reduction)してベータヒドロキシスルホンを生成することにより調製することができる。
【0224】
該調製手順は、1つの実施例において、以下のチオフェノール及びブロモ‐アセトフェノンの反応により説明される:


【0225】
適切なチオフェノール(1当量)及び適切な2‐ブロモアセトフェノン(1当量)のテトラヒドロフラン(THF)溶液にトリエチルアミン(EtN)(1.2当量)を添加する。反応を環境温度で1時間撹拌する。酢酸エチル(EtOAc)で希釈した後、反応を飽和NHCl(水溶液)で抑える。層を分離し、そして水相をEtOAcで抽出する(2×)。合わせた有機層をMgSOで乾燥し、ろ過し、そしてロータリーエバポレーションにより濃縮して、クルードのメルカプトケトンを提供する。
【0226】
メルカプトケトン(1当量)の溶液に、3‐クロロペルオキシ安息香酸(mCPBA)(3当量)を段階的に添加する。スルホキシドの発生を目的とするシーケンス(sequences)に関して、1当量のmCPBAの使用で、十分である。反応[溶液]を環境温度で、TLC分析が反応の進行が完了したことを示すまで撹拌する。EtOAcで希釈した後、反応[溶液]をNaHCO(水溶液)で洗浄する。層を分離し、そして水相をEtOAcで抽出する(2×)。合わせた有機層をMgSOで乾燥し、ろ過し、そして濃縮して、クルードのケトスルホンを提供する。シリカゲルクロマトグラフィーによる精製(ヘキサン中のEtOAcで抽出する)は、所望のケトスルホンを提供する。
【0227】
ケトスルホン(1当量)のメタノール懸濁液に、固体のNaBH(1当量)を段階的に添加する。反応[溶液]を環境温度で、TLC分析が反応の進行が完了したことを指し示すまで(典型的には30分間である)撹拌する。NHCl(水溶液)で慎重に(careful)反応を抑えた後に、EtOAcで希釈する。層を分離しそして、水相をEtOAcで抽出する(2×)。合わせた有機層をMgSOで乾燥し、ろ過し、そして、濃縮して、クルードのヒドロキシスルホンを提供する(当該ヒドロキシスルホンは、シリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン中のEtOAcで抽出する)又は結晶化(EtOAc/ヘキサン)のどちらかにより精製できる)。
【0228】
この方法を使用して調製される化合物:

【0229】
ブロモアセトフェノンの適切な脂肪族ブロモケトンへの置き換え(replacement)は、対応する脂肪族セグメントを有するリンカーの調製を可能にする。
【実施例34】
【0230】
2機能性の(bifunctional)スルホンリンカーの調製

ステップ1.
4‐メトキシチオフェノール(615μL)を、2‐ブロモ‐3’‐ニトロアセトフェノン(1.22g)のアセトニトリル/水(1:1、10mL)混合物に、炭酸水素ナトリウム(0.84g)と共に添加した。1時間後、結果として生成された混合物を水で希釈し、そして酢酸エチルで抽出した。抽出物を、MgSO4で乾燥し、ろ過し、そして蒸発乾燥し、オレンジオイル(orange oil)とし、ヘキサン/酢酸エチル(3:1)の添加によって結晶化した。オレンジの結晶を回収し、そして乾燥して、ベータ‐ケトスルフィド、1.1gを提供した。
【0231】
ステップ2.
湿性(wet)3‐クロロペルオキシ安息香酸(2.0g、50%まで)を、ケトスルフィド(670mg)のジクロロメタン溶液(10mL)に、慎重に少量ずつ添加した。混合物を温めた。2時間撹拌した後、懸濁液を酢酸エチルで希釈し、そして、飽和NaHCO、水及び、鹹水で慎重に洗浄し、次にMgSOで乾燥し、ろ過し、そして、蒸発乾燥して、630mgの固体のケトスルホンを取得し、酢酸エチルから結晶化した。
【0232】
ステップ3.
水素化ホウ素ナトリウム(100mg)をケトスルホン(400mg)のメタノール懸濁液(5mL)に添加した。30分後、飽和、NHCl水溶液を添加し、そして混合物を濃縮した。残余物を酢酸エチルと水とに分画し(partition)、次に有機相を鹹水で洗浄し、MgSOで乾燥し、ろ過し、そして蒸発乾燥して、クルードの生成物を取得し、酢酸エチル/ヘキサンから結晶化して360mgのニトロアルコールを得た。
【0233】
ステップ4.
固体のアンモニウムホルマート(200mg)を、ニトロアルコール(217mg)と10%パラジウム担持炭素(50mg)とをメタノール(5mL)に含む混合物に添加した。混合物を1時間激しく撹拌し、次に、追加の50mgの触媒を添加した。更に30分[撹拌した]後、混合物をろ過し、蒸発乾燥した。残余物を酢酸エチルに溶解し、そして、飽和NaHCO、水及び鹹水で慎重に洗浄し、次に、MgSOで乾燥し、シリカゲルのプラグを通してろ過し、そして蒸発乾燥して、180mgのクリアなガラス(clear glass)のアミノアルコールを得た。
【0234】
ステップ5.
アミノアルコールは、当該技術分野に知られる方法を使用して、アミンをアシル化して、より簡単な高分子の担体への結合手段を提供することができる。例えば、アミノアルコールの溶液は、2-アミノフルオレンに関して記載されたように(Tsubery, H., et al., J. Biological Chem. (2004) 279: 38118-38124)、3-マレイミドプロピオン酸無水物と反応させることができる。あるいは、アミノアルコールは、アジド‐酸誘導体(例えば、6‐アジドヘキサノイルクロリド又は6‐アジドヘキサン酸無水物など)を使用してアミンをアシル化することができる。あるいは、アミノアルコールは、アルキニル‐酸誘導体(例えば、5‐ヘキシノイルクロリド又は5‐ヘキシン酸無水物(5-hexynoic anhydride)など)を使用してアミンをアシル化することができる。
【0235】
ステップ6.
アシル化アミノアルコールを、上記の又は当該技術分野に知られる方法を使用して、N‐ヒドロキシスクシンイミジルカルボナート(N-hydroxysuccinimdyl carbonate)として、薬剤の結合のために活性化する。
【実施例35】
【0236】
ニトリルリンカーの調製に関する一般的な手順

1つの方法において、ニトリルリンカーは、Sun and Shi, J. Chem. Research (S) (1999), 318-319の方法(引用によって本願に組み込まれる)に従って、ブロモアセトニトリルとアルデヒドとのスズ媒介反応に従って調製され得る。
【0237】
他の方法において、適切なケトンから、ベータ‐ケトアルデヒドエノラートとヒドロキシアミンヒドロクロリドとの反応によって調製されるベータ‐ケトニトリルの還元によって、ニトリルリンカーを調製することができる:



【0238】
例えば、ベンゾイルアセトニトリルの調製[方法]は、米国特許6,861,162に提供されている。
【実施例36】
【0239】
3‐(4‐ブロモフェニル)‐3‐ヒドロキシプロパンニトリルの調製

4‐ブロモベンゾイルアセトニトリル(500mg)のエタノール(5mL)及び酢酸(300μL)懸濁液を80℃のホットプレートを使用し、シアノ水素化ほう素ナトリウム(280mg)と共に2時間加熱した。環境温度まで冷却させた後、混合物を水で希釈し、そして濃縮してシロップ状態にし、酢酸エチルで希釈し、水、飽和NaHCO及び鹹水で洗浄した。抽出物をMgSOで乾燥し、ろ過し、そして蒸発乾燥して、510mgの濁った(cloudy)オイルを提供し、酢酸エチル/ヘキサン(1:1)を使用するシリカゲルを通してろ過し、濃いオイル状態の生成物(496mg)を提供した。
【実施例37】
【0240】

窒素の保護の下、n‐ブチルリチウム(1.8mL、5.2mmol)をN,N‐ジイソプロピルアミン(0.75mL、5.2mmol)の無水THFの溶液(10mL)に0℃で添加した。反応混合物を30分間撹拌し、そして次に−78℃で冷却(チルド)した。2‐(4‐メトキシフェニル)アセトニトリル(0.6mL、4.34mmol)を上記混合物にシリンジを介して添加した。同じ温度で30分間撹拌した後、5‐ヘキシナール(およそ4mmol)の溶液をフラスコにシリンジにより添加し、そして反応混合物を−78℃で1.5時間撹拌した。飽和NHCl溶液の添加によって反応を抑え、そして次に室温まで温めた。混合物をEtOAc(3×30mL)で抽出し、そして合わせた有機溶液をMgSOで乾燥し、そして減圧下で濃縮した。生成物をシリカゲルクロマトグラフィーにより精製した。1H-NMR (CDCl3): δ 7.18 (d, 2H, J = 5.4 Hz), 6.83 (d, 2H, J = 5.4 Hz), 3.72-3.76 (s+m, 5H), 2.47 (1H, s), 2.13 (m, 2H), 1.88 (t, 1H), 1.51-1.68 (m, 4H)。
【実施例38】
【0241】

2‐(4‐メトキシフェニル)アセトニトリルの代わりに2‐(4‐ニトロフェニル)アセトニトリルを用いて、この生成物を実施例33[sic, 実施例37]の方法に従って調製した。1H-NMR (CDCl3): δ 8.20 (d, 2H, J = 5.6 Hz), 7.51 (d, 2H, J = 5.6 Hz), 3.99 (m, 2H), 2.17 (m, 2H), 1.89 (br s, 1H), 1.65 (m, 2H), 1.55 (m, 2H)。
【実施例39】
【0242】

2‐(4‐メトキシフェニル)アセトニトリルの代わりに2‐フェニルアセトニトリルを用いて、この生成物を実施例37の方法に従って調製した。1H-NMR (CDCl3): δ 7.3 (m, 5H), 3.9 (m, 2H), 2.23 (m, 2H), 1.96 (br s, 1H), 1.77 (m, 2H), 1.60 (m, 2H)。
【実施例40】
【0243】

2‐(4‐メトキシフェニル)アセトニトリルの代わりに2‐(4‐クロロフェニル)‐アセトニトリルを用いて、この生成物を実施例37の方法に従って調製した。1H-NMR (CDCl3): δ 7.2-7.3 (m, 4H), 3.8 (m, 2H), 2.23 (m, 2H), 1.96 (br s, 1H), 1.8-1.5 (m, 4H)。
【実施例41】
【0244】
N,N’‐ジスクシンイミジルカルボナートを使用する活性化に関する一般的な手順
実施例33で調製した化合物(1mmol)と、N,N’‐ジスクシンイミジルカルボナート(2mmol)と、4‐(ジメチルアミノ)ピリジン(0.1mmol)とを乾燥(dry)アセトニトリル(2mL)に含む混合物を、1時間撹拌するか(一級アルコール(primary alcohols)に関して)、あるいは、16時間撹拌し(二級アルコール(secondary alcohols)に関して)、次に、1N HCl(0.2mL)を含む水(5mL)で希釈し、そして酢酸エチルで抽出する。有機相を水及び鹹水で洗浄し、次にMgSOで乾燥し、ろ過し、そして濃縮し、更なる使用に適したクルードの混合されたカルボナートを提供する。混合されたカルボナートを、更に酢酸エチル/ヘキサンを使用するシリカゲルクロマトグラフィーにより精製をしても良い。
【0245】
この方法に従って調製される化合物は、以下の化合物を含む:




【実施例42】
【0246】
トリホスゲン及びN‐ヒドロキシスクシンイミドを使用する活性化に関する一般的な手順
式(1)のアルコール(0.5mmol)とトリホスゲン(0.72mmol)とを無水テトラヒドロフラン(THF)(5mL)に含む溶液を不活性雰囲気(inert atmosphere)の下で撹拌し、そしてピリジン(84μL)を滴加し(added dropwise)、白い沈殿物を提供する。10分後、混合物を、窒素圧力を使用してろ過し、そして濃縮し、余剰のホスゲンを除去する。残余物を5mLのTHFに溶解し、そしてN‐ヒドロキシスクシンイミド(2.65mmol)及びピリジン(130μL)で20分間処理し、次に、乾燥状態まで蒸発乾燥する。残余物を酢酸エチルに溶解し、水、0.1N HCl、飽和NaHCO及び鹹水で順次洗浄し、次にMgSOで乾燥し、ろ過し、そして蒸発乾燥し、クルードのカルボナートを提供する。シリカゲルでのクロマトグラフィーによる精製(酢酸エチル/ヘキサン)は、生成物を提供する。
【実施例43】
【0247】
トリホスゲン及びN‐ヒドロキシスクシンイミドを使用する(4‐ブロモフェニル)‐(9‐フルオレニル)メタノールの活性化

(4‐ブロモフェニル)‐(9‐フルオレニル)メタノール(175mg、0.5mmol)とトリホスゲン(212mg、0.72mmol)との無水THF溶液(5mL)をピリジン(84μL)で10分間、不活性雰囲気下で処理し、次にろ過し、そして蒸発乾燥した。残余物を5mLのTHFに溶解し、そしてN‐ヒドロキシスクシンイミド(310mg、2.65mmol)及びピリジン(130μL)で209分間処理し、次に乾燥状態まで蒸発乾燥した。残余物を酢酸エチルに溶解し、水、0.1N HCl、飽和NaHCO及び鹹水で順次洗浄し、次にMgSOで乾燥し、ろ過し、そして蒸発乾燥し、クルードのカルボナートを提供した。クルードの生成物を1mLのジクロロメタンに溶解し、そしてヘキサンで平衡化したシリカゲルの5‐mLカラムの上にロードした。ヘキサンを使用する最初の抽出で、いくつかの着色物質を除去した。次に、カラムをヘキサン/酢酸エチル(3:1)で、そして最終的にヘキサン/酢酸エチル(1:1)で抽出し、精製された生成物(206mg、92%)を抽出した。
【実施例44】
【0248】

実施例のクルードの混合されたカルボナートをDMSO(0.5mL)に溶解し、そして4‐(アミノメチル)安息香酸ナトリウム(sodium 4-(aminomethyl) benzoate)(1.0M 水溶液(0.1mL))と混合した。5分後、混合物を水(5mL)で希釈し、そして白濁溶液(milky solution)をジクロロメタンで3回洗浄した。1N HClを使用し、水相を酸性にし、次に酢酸エチルで3回抽出した。酢酸エチル抽出物を合わせ、水で洗浄し、MgSOで乾燥し、ろ過し、そして乾燥状態まで蒸発乾燥した。残余物をEtOAc/ヘキサン(1:1)で1回洗浄し、次にEtOAcに溶解し、そして再濃縮して、精製された生成物を提供する(7mg)。
【実施例45】
【0249】
ε‐(2,4‐ジニトロフェニル)‐L‐リジン誘導体の調製に関する一般的な方法

水(600μL)にNε‐(2,4‐ジニトロフェニル)‐L‐リジン ヒドロクロリド(35mg)を含むものと1.0N NaOH(200μL)の溶液を、1.0M NaHCO(200μL)そして、0.1mmolのN‐ヒドロキシスクシンイミドカルボナートのアセトニトリル溶液(1.0mL)で順次処理する。結果として生成される黄色い溶液を環境温度で1時間撹拌し、次に水(10mL)の添加により希釈し、そしてC18固相抽出カラム(Varian BondElut、1g)の上にロードした。カラムを水(3mL)、1%CFCOHを含む水(1mL)、水(3mL)、次に50%含水メタノール(3mL)で洗浄し、全ての未反応のリジンアナログを抽出する。生成物を100%メタノールで抽出し、そして黄色い溶液を蒸発乾燥し、乾燥する。
【実施例46】
【0250】
式(2)の化合物からの薬剤放出速度の測定に関する一般的な方法
これは、式(2)の化合物からの薬剤放出速度を測定する方法の1つの例を例示する。式(2)の化合物の保存溶液を、例えば、DMSO又はアセトニトリル等の適切な水混和性溶剤(water-miscible solvent)に化合物を溶解することにより調製する。次に、適切な容量のこの保存溶液を、水溶性緩衝液(任意的にHPLC分析用の内部標準、例えば、安息香酸ナトリウム、を含んでも良い)に希釈してクリアな(clear)溶液を提供し、規定温度(a set temperature)で維持する。可溶性の乏しい化合物は、DMSOのような共溶媒の添加を必要とし得る。アリコット分画(aliquots)を定期的に摂取し(removed)、そして、即座にHPLCにより分析するか、あるいは、後の分析のために、1%のトリフルオロ酢酸(TFA)を含むアセトニトリル(当量)の添加によって反応を抑えて保存する。アリコットの一部(a portion)を分析用HPLCカラムに注入する。次に、残留している式(2)の化合物に関するピークの領域、及び、薬剤自体に関するピークの領域(可能であれば)を測定し、そして内部標準に関するピークの領域と比較する。あるケース、例えば、HPLCで検出するのに十分に強いUV光吸収度(UV light absorbance)を有しない薬剤を使用するケースでは、遊離薬剤の濃度は、質量スペクトル分析により測定され得る。
【0251】
1つの例として、様々な化合物からのNε‐(2,4‐ジニトロフェニル)‐L‐リジン(「H‐Lys(DNP)‐OH」)の放出の速度を以下のように決定した。0.1M 緩衝液、0.05% NaN、及びおよそ0.1mg/mLの出発化合物を含むように反応混合物を調製し、そして37℃で保持した。アリコット分画を定期的に摂取し、そして、0.8mL/minの流速で水/メタノール(50:50)(それぞれが、0.5%酢酸を含む)で平衡化したVarian Polaris 3μm C18‐A 逆相HPLCカラム(150×4.6mm)へ注入することによって分析した。100%メタノール+0.5%酢酸までの勾配を使用して化合物をカラムから抽出し、そして350nmの吸光度により検出した。ピーク積分(peak integration)は、残留出発物質に関する面積(A)、及び放出されたH‐Lys(DNP)‐OHに関する面積(A)を示し、そしてパーセント反応(%反応:percent reaction)は、以下の式に従って算出した。
%反応=A/(A+A100。
【0252】
次に、放出速度を、ln(100−%反応):時間(ln(100 - %reaction) versus time、ln:自然体数値)のプロット(plot)の傾斜(slope)から算出し、そして半減期を、次の式で算出した:T1/2=ln(2)/速度。
【0253】
以下の化合物について、PBS中、pH7.4、37℃という条件で、薬剤放出のモデルとしてのNε‐(2,4‐ジニトロフェニル)‐L‐リジン(H‐Lys(DNP)‐OH)の放出に関する半減期を決定した。その決定結果を以下に示す。R、R、及びそれら(R、R)の上の置換基の性質が、広範囲の放出速度を提供することは明らかである。
【0254】
下記の図は、PBS中、pH7.4、37℃という条件での、スルホニルリンカーからのNε‐(2,4‐ジニトロフェニル)‐L‐リジン(H‐Lys(DNP)‐OH)の放出に関する半減期を示す。

【0255】
下記の図は、PBS中、pH7.4、37℃という条件、又は0.1M Tris・HCl中、pH8.3、37℃という条件でのニトリルリンカーからのNε‐(2,4‐ジニトロフェニル)‐L‐リジン(H‐Lys(DNP)‐OH)の放出に関する半減期を示す。

【0256】
下記の図は、PBS中、pH7.4、37℃という条件、又は0.1M Tris・HCl中、pH8.3、37℃という条件での、フルオレニルリンカーからのNε‐(2,4‐ジニトロフェニル)‐L‐リジン(H‐Lys(DNP)‐OH)の放出に関する半減期を示す。

【実施例47】
【0257】
リンクした(linked)4‐ヒドロキシベンジルプロドラッグの調製

ステップ1.
ピリジン(1.5mmol)を、リンカー(1.0mmol)と4‐ホルミルフェニルクロロホルマート(1.2mmol)とを乾燥テトラヒドロフランに含む混合物に添加し、そして反応を薄層クロマトグラフィーによりモニターする。[反応の]完了の際、混合物を酢酸エチルで希釈し、水及び鹹水で洗浄し、乾燥し、そして濃縮する。クルードのアルデヒド生成物をシリカゲルでのクロマトグラフィーにより精製する。
【0258】
ステップ2.
シアノ水素化ほう素ナトリウム(2mmol)を、ステップ1からのアルデヒド(1mmol)を含む5%酢酸とエタノールとの混合物(2mL)に添加する。混合物を75℃まで2時間温め、次に冷却し、濃縮する。残余物を酢酸エチルに溶解し、水及び鹹水で洗浄し、次に乾燥し、そして蒸発乾燥して、クルードのベンジルアルコールを提供し、シリカゲルでのクロマトグラフィーにより精製する。
【0259】
ステップ3.
ピリジン(2mmol)を、ステップ2のベンジルアルコール(1mmol)とトリホスゲン(3mmol)とを乾燥テトラヒドロフランに含む混合物に滴加する。1時間の撹拌の後、混合物をろ過し、そして乾燥状態まで蒸発乾燥して、クルードのクロロホルマートを提供し、更に精製すること無しに使用する。
【0260】
ステップ4.
ピリジン(2mmol)をステップ3からのクルードのクロロホルマートとN‐ヒドロキシスクシンイミド(5mmol)の混合物に添加する。30分間撹拌した後、混合物をろ過し、そして濃縮する。残余物を酢酸エチルに溶解し、水及び鹹水で洗浄し、次に乾燥し、そして蒸発乾燥して、クルードのスクシンイミジルカルボナートを提供し、シリカゲルでのクロマトグラフィーにより精製する。
【0261】
ステップ5.
ステップ4からのスクシンイミジルカルボナートのアセトニトリル溶液(1当量)を、アミノ含有薬剤の0.1M NaHCO溶液に添加する。1時間後、混合物を水で希釈し、そしてC18固相抽出カートリッジの上にロードする。カートリッジを水で洗浄し、次に水及びアセトニトリルのステップ勾配(step gradient)で抽出する。生成物含有フラクションをプールし(pooled)、そして乾燥状態まで蒸発乾燥し、そして任意に分取用HPLCを使用して精製する。
【実施例48】
【0262】
リンクした4‐アミノベンジルプロドラッグの調製

ステップ1.
ピリジン(1.5mmol)を、リンカー(1.0mmol)とトリホスゲン(3mmol)とを乾燥テトラヒドロフランに含む混合物に添加する。1時間の撹拌後、混合物をろ過し、そして乾燥状態まで蒸発乾燥して、クルードのクロロホルマートを提供し、更に精製すること無しに使用する。
【0263】
ステップ2.
ステップ1からのクルードのクロロホルマートと、4‐アミノベンジルアルコール(1mmol)と、ピリジン(2mmol)とを乾燥テトラヒドロフランに含む混合物(5mL)を環境温度で撹拌する。[反応が]完了したとき、混合物を蒸発乾燥し、そして残余物を酢酸エチルに溶解し、そして水及び鹹水で洗浄し、次に乾燥し、そして蒸発乾燥し、クルードのカルバマートを提供し、シリカゲルでのクロマトグラフィーにより精製する。
【0264】
ステップ3.
ピリジン(2mmol)をステップ2のカルバマート(1mmol)とトリホスゲン(3mmol)とを乾燥テトラヒドロフランに含む混合物に滴加する。1時間撹拌した後、混合物をろ過し、そして蒸発により乾燥し、クルードのクロロホルマートを提供し、更に精製すること無しに使用する。
【0265】
ステップ4.
ピリジン(2mmol)を、ステップ3のクロロホルマートとN‐ヒドロキシスクシンイミド(5mmol)の混合物に添加する。30分間撹拌した後、混合物をろ過し、そして濃縮する。残余物を酢酸エチルに溶解し、水及び鹹水で洗浄し、次に乾燥し、蒸発乾燥し、クルードのスクシンイミジルカルボナートを提供し、シリカゲルでのクロマトグラフィーにより精製する。
【0266】
ステップ5.
ステップ4からのスクシンイミジルカルボナートのアセトニトリル溶液(1当量)を、アミン含有薬剤の0.1M NaHCO溶液に添加する。1時間後、混合物を水で希釈し、そしてC18固相抽出カートリッジの上にロードする。カートリッジを水で洗浄し、次に水及びアセトニトリルのステップ勾配で抽出する。生成物含有フラクションをプールし、そして乾燥状態まで蒸発乾燥し、そして任意に分取用HPLCを使用して精製する。
【0267】
上記の全ての引用文献は、特別に断りが無い限り、その全てが引用により本願に組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(3)の化合物:

[式(3)において、mは1−10の整数であり;
Zは、高分子の残基であり;
L’は、リンカーの残基であり;
Dは、薬剤又はプロドラッグの残基であり;
Xは、O又はSであり;
Aは、アルケニル(C)、アリールであるか、もしくは存在せず;
各R及びRは、独立して、CN;
NO
任意に置換されるアリール;
任意に置換されるヘテロアリール;
任意に置換されるアルケニル;
任意に置換されるアルキニルであるか;あるいは、
各R及びRは、独立して、COR又はSOR又はSO
(Rは、H、又は任意に置換されるアルキル;
任意に置換されるアリール;
任意に置換されるヘテロアリール;
任意に置換されるアルケニル;
任意に置換されるアルキニルであるか;あるいは、
OR又はNR(各Rは、独立して、H、又は任意に置換されるアルキル))
であるか;あるいは、
各R及びRは独立してSR
(Rは、任意に置換されるアルキル、
任意に置換されるアリール;
任意に置換されるヘテロアリール;
任意に置換されるアルケニル;
任意に置換されるアルキニル)であり、
式(3)において、R及びRは、結合して3―8員環を形成することができ;そして、
及びRの両方がHではあり得ず、
は、H又はアルキル(C1−6)である]。
【請求項2】
mが1であることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
がHであることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
リンカー残基が、14Da及び20kDaの間の分子量を有し、不飽和、ヘテロ原子、環状構造、芳香族部分、及び/又はヘテロ芳香族部分を含むことができ、Zを残りの分子に共有的に結合させる二価の鎖であることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
前記リンカーが、ペプチド又は擬似ペプチドであり、及び/又は、トリアゾール、フェニレン及び/又はマレイミドの残基を含むことを特徴とする請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
前記高分子が抗体、多糖、アルブミン又は合成ポリマーであることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
合成ポリマーがポリエチレングリコール(PEG)であることを特徴とする請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
薬剤がペプチド、核酸又は小分子であることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
及びRの一方がCNであることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項10】
及びRの少なくとも1つがフェニル又はフェニレンを含むことを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項11】
及びRの一方がSOであり、他方がH、アルキル又はフェニルであることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項12】
Aが存在しないことを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項13】
式(2)の化合物:

[式(2)において、m、R、R、R、A、X及びDは、請求項1において定義されたものであり、Lは、高分子に結合することが可能な連結基である]。
【請求項14】
式(4)の化合物:

[式(4)において、R、R、R、A、X、Z及びL’は、請求項1において定義されたものである]。
【請求項15】
式(1)の化合物:

[式(1)において、R1、R2、R5、A及びXは、請求項1において定義されたものであり、Lは、高分子に結合することが可能な連結基である]。
【請求項16】
請求項1−13のいずれか1項に記載の化合物を含む医薬的に許容可能な組成物。
【請求項17】
薬剤として使用するための請求項1−13のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項18】
式(2)の化合物を高分子と反応させることを含む式(3)の化合物の調製方法。
【請求項19】
薬剤が式(4)の化合物にカップル化される条件の下で、式(4)の化合物を薬剤と反応させることを含む式(3)の化合物の調製方法。
【請求項20】
薬剤が式(1)の化合物にカップル化される条件の下で、式(1)の化合物を薬剤と反応させることを含む式(2)の化合物の調製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2011−528654(P2011−528654A)
【公表日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−516733(P2011−516733)
【出願日】平成21年6月26日(2009.6.26)
【国際出願番号】PCT/US2009/048943
【国際公開番号】WO2009/158668
【国際公開日】平成21年12月30日(2009.12.30)
【出願人】(510340997)プロリンクス エルエルシー (1)
【Fターム(参考)】