説明

制御モジュール製造方法

【課題】封止のための樹脂量を削減することができるとともに、次工程への搬送を容易にすること。
【解決手段】電子部品32及びアルミ電界コンデンサ33が実装された基板本体31を上面に開口部21aを有するケース21に配置し、ケース21内に充填材50を注入し、基板本体31を基準にして高いアルミ電界コンデンサ33に対応し上に凸の凹部62を有するとともに、開口部21aを覆う治具60により充填材50をその表面側から押圧し、充填材50を硬化させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、バイクや自転車、洗濯機等に搭載される電流制御モジュールについての制御モジュール製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
大型の電池が搭載された電動バイクや電動自転車には、電池の電圧や温度をモニタするための制御モジュールが用いられている。また、洗濯機等にも電流を制御する制御モジュールが用いられている。このような制御モジュールは、水がかかる可能性があるため、防水性が求められている。このため、プリント基板を樹脂で封止する構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、防水性をさらに高めるため、図3に示すように、プリント基板と共に実装されている電子部品を樹脂(充填材)で封止する制御モジュール100も知られている。このような制御モジュール100は、電気絶縁性のケース101に配線102、電子部品103が実装された制御基板104を載置し、液状の充填材105を注入する。なお、充填材105は防水性・電気絶縁性を有している。なお、湿気の要因となるボイド発生を防止するため充填材105の注入は減圧チャンバ(不図示)内において減圧下で行われる。なお、電子部品103としてアルミ電界コンデンサを用いる場合、その性質上減圧下に保持すると不具合が生じる。このため、常圧下で充填材105の注入を行う必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平2−28993号公報(第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したような減圧チャンバを用いた制御モジュール製造方法では、次のような問題があった。すなわち、充填材105の封止は、電子部品103の中で最も大型の電子部品に合わせるため、ケース101の縁いっぱいまで充填材を注入する必要がある。このため、次工程等への搬送する際に、充填材105がケース101から溢れる虞があった。また、封止が必要ない部分Gまで充填材105を注入する必要があるため、軽量化の障害になったり、材料コストが余計にかかる等の問題があった。
【0006】
そこで、樹脂量を削減することができるとともに、次工程への搬送を容易にすることができる制御モジュール製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
電子部品が実装された基板を上面に開口部を有するケースに配置し、このケース内に充填材を注入し、前記電子部品のうち、前記基板を基準にして高い電子部品に対応し上に凸の凹部を有するとともに、前記開口部を覆う治具により前記充填材をその表面側から押圧し、前記充填材を硬化させる。
【0008】
電子部品が実装された基板を上面に開口部を有するケースに配置し、前記電子部品のうち、前記基板を基準にして高い電子部品に対応し上に凸の凹部を有するとともに、前記開口部を覆う治具を配置し、前記ケースと前記治具との間に前記充填材を注入し、前記充填材を硬化させる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】一実施の形態に係る制御モジュール製造方法により製造された制御モジュールが用いられる電池パックを模式的に示す斜視図。
【図2】同制御モジュールを模式的に示す縦断面図。
【図3】制御モジュールの一例を模式的に示す縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は第1の実施形態に係る制御モジュール製造方法により製造された制御モジュール20が用いられる電池パック10を模式的に示す斜視図、図2は制御モジュール20を模式的に示す縦断面図である。
【0011】
図1中10は、電動自転車等に搭載される電池パックを示している。電池パック10は、筐体11と、筐体11内に収容された複数の電池12と、これら電池12の電圧・温度管理を行う制御モジュール20と、制御モジュール20からの情報を外部に伝達するインターフェース部13とを備えている。なお、図1中14はリード線を示している。
【0012】
図2に示すように、制御モジュール20は、電気絶縁性の材質で形成され、上部に開口部21aを有するケース21を備えている。ケース21には、制御基板30と、この制御基板30と外部との間で電流・信号の入出力を行うケーブル40とが取り付けられ、制御基板30及びケーブル40とは充填材50により封止されている。充填材50は例えば、ウレタンを用いる。なお、充填材50はウレタンに限らず、防水性を有する熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂を用いることができる。
【0013】
制御基板30は、プリント基板等の基板本体31と、この基板本体31の上面に実装された電子部品32と、アルミ電界コンデンサ33とを備えている。アルミ電界コンデンサ33は電子部品32に対して基板本体31を基準にして高く形成されている。
【0014】
制御モジュール20の製造方法について説明する。最初に、ケース21に、制御基板30及びケーブル40を取り付ける。
【0015】
次に、充填材ノズル70から液状の充填材50をケース21内に注入する。充填材50は、電子部品32を十分に覆うとともに、アルミ電界コンデンサ33の高さには足りない量を注入する。
【0016】
次に、治具60とケース21の開口部21aを蓋するように設置する。なお、治具60は、円板状に形成された治具本体61と、この治具本体61の中央部に上に凸に形成された凹部62と、治具本体61の外周にわたって形成された鍔部63とを備えている。凹部62は、上述したアルミ電界コンデンサ33に対応し、充填材50により封止された際に、アルミ電界コンデンサ33の頂部33aと凹部62の底部62aとの間に十分に充填材50が入るような隙間Sが形成されている。さらに、治具60の材質は、ウレタンに対しての離型性に優れたポリプロピレンが好ましい。
【0017】
このような治具60を充填材50が注入されたケース21に被せると、治具本体61の下面が充填材50の表面に当接し、その圧力で充填材50の一部が凹部62に流入する。ここで、治具60を叩く等して振動させると円滑に充填材50が凹部62の底部62a側に向けて流れ込む。そして、最終的には凹部62の内部全体に充填材50が充填される。なお、アルミ電界コンデンサ33と凹部62との隙間を適正に設定することで毛細管現象により充填材50の充填を行うこともできる。
【0018】
そして、治具60を取り付けた状態で次工程、例えば硬化炉(不図示)へ搬送する。治具60はケース21の開口部21aを蓋しているので、硬化前の充填材50であっても溢れることがなく、容易に搬送を行うことができる。
【0019】
最終的に、充填材50を硬化炉において過熱し、熱硬化させる。なお、充填材50の硬化方法は熱硬化に限定されるものではなく、紫外線照射による硬化でも良い。これにより、背の高いアルミ電界コンデンサ33のみを厚く封止し、背の低いその他の電子部品32を薄く封止することとなる。
【0020】
なお、充填材50と治具60とは、互いに離型しやすい材質を適宜選択することが好ましい。また、治具60の凹部62の底部62aに充填時に閉じ込められた空気を逃がすための開口孔62bを設けるようにしても良い。
【0021】
上述したように、本実施形態に係る制御モジュール製造方法によれば、治具60を用いて背の高い電子部品のみを厚く封止し、背の低い電子部品は薄く封止することができるため、使用する樹脂量を削減して軽量化を図ることができる。また、ケースから充填材が溢れることを防止できるため、次工程への搬送を容易にすることが可能となる。
【0022】
なお、上述した実施形態では、充填材50を注入してから治具60を配置するようにしたが、治具60を設置してから熱可塑性樹脂を注入して硬化炉を用いずに硬化させ封止するようにしてもよい。
【0023】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0024】
10…電池パック、20…制御モジュール、21…ケース、30…制御基板、31…基板本体、32…電子部品、33…アルミ電界コンデンサ、50…充填材、60…治具、61…治具本体、62…凹部、70…充填材ノズル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品が実装された基板を上面に開口部を有するケースに配置し、
このケース内に充填材を注入し、
前記電子部品のうち、前記基板を基準にして高い電子部品に対応し上に凸の凹部を有するとともに、前記開口部を覆う治具により前記充填材をその表面側から押圧し、
前記充填材を硬化させることを特徴とする制御モジュール製造方法。
【請求項2】
前記充填材を注入する際に、前記治具を振動させることを特徴とする請求項1に記載の制御モジュール製造方法。
【請求項3】
前記治具は、その凹部の底部に開口孔が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の制御モジュール製造方法。
【請求項4】
前記治具と前記充填材とは、互いに離型しやすい材質で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の制御モジュール製造方法。
【請求項5】
電子部品が実装された基板を上面に開口部を有するケースに配置し、
前記電子部品のうち、前記基板を基準にして高い電子部品に対応し上に凸の凹部を有するとともに、前記開口部を覆う治具を配置し、
前記ケースと前記治具との間に前記充填材を注入し、
前記充填材を硬化させることを特徴とする制御モジュール製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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