説明

制御可能な熱絶縁ケーシングおよび該ケーシングの制御方法

本発明による熱絶縁ケーシングシステムのケーシングには二重壁が含まれており、二重壁内に中間スペースが存在し、これは二重壁の内壁区間を介して内部スペースと熱伝導性結合され、二重壁の外壁区間を介してケーシング周囲と結合されており、これは液体接続口を除いて密閉されている。さらに液体接続口と接続された液体ポンプと、液体を有する液体タンクが設けられている。液体タンクは、液体ポンプを介して内部スペースと接続されている。液体ポンプは、二重壁の各壁区間の間における中間スペース内の液体充填レベルを制御する。高出力蓄電池は内部スペース内に配置され、高出力蓄電池は二重壁の内壁区間と熱伝導性結合される。高出力蓄電池から二重壁の内壁区間を介して、さらにケーシングの周囲に隣接する二重壁の外壁区間を介して周囲へ至る熱伝達が、中間スペース内の液体の充填レベルを変化させることによって制御される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば高出力蓄電池のための、蓄電池を制御可能に温度調節するための熱絶縁ケーシングシステムに関する。本発明は殊に、本発明によるケーシングシステムの使用ならびに電気により駆動される車両の牽引用蓄電池を冷却するための方法に関する。
【0002】
背景技術
バッテリのような電気的なエネルギー蓄積器は、電気化学的な変換プロセスに基づくものであり、それゆえこれは殊に熱の影響を受けやすい。温度が低すぎると出力の落ち込みが激しくなる一方、温度が高い場合には、持続的な出力の損失に付随して早めに老化することで損傷が引き起こされる。バッテリの温度は通常、周囲環境ならびに自身の損失熱によって決まる。温度を制御するために、ペルチエ素子のような能動素子あるいはコンプレッサ駆動型の能動的な冷却機器を使用することが知られている。しかしながらこのような解決策であると、それに伴ってシステムが複雑になり、ないしはコストのかかるシステムになってしまう。
【0003】
さらに知られているのは、媒体流と相応のヒートシンクを利用してバッテリを冷却することであり、たとえば空気流あるいは冷却液を用いた冷却循環路などにより冷却が行われる。若干のハイブリッド車両には空気冷却または冷却循環路が組み込まれており、これはエアコンディショナにつなげられていて、それにより冷却媒体の圧縮と気化を行おうというものである。しかしながらこのやり方の場合には十分な媒体流が必要とされ、このような媒体流は必要に応じてコンプレッサによりアシストされるので、媒体流が少ないと冷却能力が低くなってしまう一方、殊にエアコンディショナにより冷却が行われるケースでは、既存のコンポーネントに余分に負荷を加えざるを得なくなり、あるいはかなりコストのかかる仕様にしなければならない。
【0004】
刊行物FR 2 869 722にはバッテリの熱絶縁のためのシステムが開示されており、これによれば、周囲の空気圧に依存する熱抵抗を有する材料がケーシング内に配置されている。したがって空気圧が変化すると材料の熱伝導性が変化し、このことによってケーシング壁を介した熱伝達を調節することができる。とはいうものの、この材料の固有の熱伝導率の調節幅は小さい。
【0005】
刊行物US 3,450,196には、宇宙飛行で用いられるバッテリのためのケーシングが開示されており、これによればケーシング内で水素が用いられる。圧力の変化により、水素を通して熱伝達が制御される。FR 2 869 722の場合と同様、US 3,450,196による装置も、殊に水素の熱伝導性が制約されることに起因して、熱伝達の調節幅はごく僅かである。このように、従来技術により知られている措置によっても、制御可能な熱伝導率についてごく僅かな調節幅しか実現できない。
【0006】
したがって本発明の課題は、簡単に広い範囲にわたって調節可能な温度制御によってバッテリの温度を温度調節することのできる装置および方法を提供することにある。
【0007】
発明の概要
本発明によればこの課題は、独立請求項記載の熱絶縁ケーシングシステムおよび方法によって解決される。
【0008】
本発明によれば、簡単なやり方で温度調節が可能となり、すなわち牽引バッテリあるいは他の高出力蓄積器の加熱または冷却を簡単なやり方で実現することができ、その際、必要に応じて温度を大幅に低下させたり上昇させたりすることができる。本発明により提供される温度調節によれば、熱伝達が従来技術よりも著しく上昇させられており、とはいえこの熱伝達を最小まで低下させることも可能である。本発明のためにまえもって必要とされる措置は簡単に実現可能なものであり、殊に自動車の他の温度調節システムの負担にはならない。さらに本発明によるケーシングシステムは、省スペースで自動車内に取り付けることができ、気体をベースとする慣用のシステムでは不可能であった著しく高い放熱または加熱を実現することができる。これと同時に本発明によれば効率的な熱絶縁が可能となり、これによってたとえば、蓄電池の動作温度を上昇させようとするときに、蓄電池内で生じる熱が蓄電池内部に残るのを回避することができる。
【0009】
本発明が基礎とする着想は、気体だけではなく液体も熱伝達調節体として利用することであり、その際、液体は相応の中間スペースからきわめて簡単に導出したり供給したりすることが可能であり、さらに気体では実現できない高い熱伝導率値を得ることができる。したがって、たとえば熱量を外部へ放出させようとする場合、あるいは蓄電池を加熱するために周囲の熱を利用しようとする場合、ポンピングにより液体を供給することによって、ケーシングを急激に熱伝導性にすることができる。ただし、ケーシングの熱伝導率最大値が著しく上昇させられることに加え、ケーシングを高度に熱絶縁性として機能させることも可能であり、したがって熱絶縁性としてのケーシングの動作範囲が、中間スペースが真空排気されている従来技術で想定されるよりも僅かな熱絶縁性となってしまうことはない。
【0010】
本発明によるケーシングは二重壁によって構成されており、この二重壁は実質的に密閉されていて、絶縁性能もしくは熱伝達性能を調節できるようにする目的で、二重壁の中味が変化させられる。ケーシングは、蓄電池の収容に適した内部スペースを有しており、この場合、内壁によって、内部スペースひいては蓄電池に対する熱接触が実現される。内壁区間は二重壁に属するので、中間スペースと内部スペースないしは蓄電池とのダイレクトなヒートブリッジが生じる。同様にケーシングシステムは、二重壁に属する外壁区間を有しており、この外壁区間は、熱源もしくはヒートシンク(たとえば周囲)に対するダイレクトなヒートブリッジとして用いるために設けられている。中間スペースは、液体接続口を除いて完全に密閉されており、この液体接続口を介して中間スペースの充填具合を変化させることができる。必要に応じて、二重壁に圧力補償弁を設けることができ、これによって排出時と充填時に周囲に対する圧力補償を行うことができる。
【0011】
ケーシングシステムの液体タンクには液体が充填され、ケーシングシステムの液体ポンプを介して、この液体を中間スペースに送り込むことができ、あるいは中間スペースから液体を排出させることができる。液体ポンプは、二重壁の各壁区間の間における中間スペース内の液体充填レベル(および場合によっては中間スペース内の気体圧力)を制御するように構成されている。これにより、内壁区間と外壁区間との間の熱伝達を広い範囲にわたり制御できるようになる。液体としてたとえば水が利用され、その際、水とともにグリコールのような不凍剤を(水とグリコールの混合物として)用いると有利であり、これによって著しく高い熱伝達を確実に実現することができる。たとえば水を利用した場合、約0.6W/(mK)の比較的高い熱伝導率によって、たとえば約0.02W/(mK)の熱伝導率である空気と比べて、周囲と蓄電池との間の熱伝達が著しく改善される。したがって水を利用することで、従来技術よりも10,20あるいはそれ以上のファクタで熱伝達が上昇させられる。殊に高出力蓄電池を用いる場合には高い最大熱伝達が必要とされる。なぜならば蓄電池が高出力であるということだけで、高い損失熱量が生じるからである。
【0012】
殊に熱絶縁ケーシングシステムには、二重壁の内壁区間と有利にはダイレクトに熱伝導性結合された外面を有する高出力蓄電池自体も含まれ、たとえばこれは内部スペースに接した面のところで結合されている。熱伝導性ペースト層またはヒートパッドを含む熱結合も、ダイレクトな結合とみなされる。これに加えて、熱伝達面を拡げる目的で、ヒートブリッジ内部に熱拡散体を設けることができる。
【0013】
調節作用を及ぼす熱伝導媒体は、中間スペースに充填され中間スペースから排出されるが、この熱伝導媒体として水を用いることができ、これには場合によって添加物が混合される。二重壁の中間スペースには固体が存在しないようにしてもよいし、あるいは熱絶縁性の固体を含ませることもでき、そのような固体はダクト、孔または開口を有しており、それらは中間スペースに向かって開放されているので、それらに液体を充填することができる。同様にダクト、孔または開口は、熱絶縁性の固体から水を排出できるようにするためにも用いられる。熱絶縁性の固体にはたとえば、珪酸、ポリスチレンフォーム、ポリウレタンフォームまたはガラス繊維織物が含まれる。熱絶縁性の固体を、中間スペース内部全体にわたって延在させてもよいし、あるいはある区間内で延在させてもよく、この場合、外壁区間または内壁区間と熱絶縁性の固体が存在する区間との間に間隙が残されている。熱伝導を支援するため、壁区間をプラスチック層または金属層の形態で設けることができる。プラスチック層の場合には、この層を薄く構成すると有利であり、たとえば5mm、3mmまたは2mmよりも薄く構成すること有利であり、これによってプラスチック材料の特性に起因する望ましくない熱の滞留を回避することができる。ケーシング全体を実質的に同じ材料から形成すると有利であり、たとえば射出成形されたプラスチックにより形成すると有利である。択一的に、壁区間が付加的な金属プレート、金属層または金属シートを含むようにすることができ、これらは熱伝達を向上させる目的で壁区間に設けられている。プラスチックから成るケーシングに加熱層を組み込むことができ、あるいはプラスチックケーシングの対応する壁区間に加熱層を取り付けることができる。
【0014】
さらに有利には、ケーシングシステムには制御装置が含まれている。この制御装置は、温度センサと接続するための入力端を有しており、温度センサ自体は、高出力蓄電池とケーシングシステムの外側とに配置されている。択一的にケーシングシステム自体が、制御装置と接続されたセンサを有するように構成することができ、それらのセンサは高出力蓄電池の温度と周囲温度を測定する。制御装置はさらに、液体ポンプと接続された出力端を有している。この場合、制御装置は、中間スペースの充填および排出のためにポンプを制御するように構成されている。蓄電池の温度を外部温度に整合させるべきか否かに応じて、充填レベルを上昇させたり低下させたりする。蓄電池の温度を周囲温度の方向に動かすべきであるならば、充填レベルを上昇させ、そうでなければ充填レベルを低下させる。
【0015】
有利であるのは、蓄電池温度に対する目標量として用いられる設定温度を適用することである。蓄電池温度と周囲との差が、蓄電池温度と設定温度との差と同じ極性符号を有しているならば、制御装置は液体を制御して充填レベルを上昇させるように構成されている。これらの差が異なる極性符号を有しているならば、充填レベルを低下させる。制御装置は設定温度を受け取ることができ、蓄電池温度と周囲温度との比較ならびに蓄電池温度と設定温度との比較を行う目的で、制御装置に比較器が設けられていると有利である。蓄電池温度と周囲温度との差ならびに殊にその極性符号によって、周囲温度との熱伝導結合が生じたときに蓄電池温度がいずれの方向に変化していくのかが表される。変化していく方向が、蓄電池温度と設定温度との差により表される目標方向と一致しているのであれば、充填レベルを上昇させ、つまりは熱伝達が行われるようにする。充填レベルがバイナリで設定されるように制御装置が構成されている有利であり、つまりこの場合、中間スペースが液体で完全に充填されているか、または中間スペースから液体が完全に排出されているかのいずれかである。このようなケースで有利であるのは、充填レベルがゼロになったときまたはフル充填レベルに達したときに、ポンプを停止させる自動遮断機構を制御装置が有することである。
【0016】
液体充填レベルによって調節を行うことに加えて本発明によればさらに、中間スペースの少なくとも部分的な真空排気が行われるように構成されている。この目的でケーシングシステムは、中間スペースに接続された真空ポンプを有しており、この真空ポンプは、中間スペース内に存在する空気の圧力を低減するように構成されていて、たとえば常圧(20℃のときに1.01325バール)の50%、20%、10%、5%、1%または0.5%となるように構成されている。この真空ポンプを液体ポンプとは別個に設けることができる。択一的な実施形態によれば、液体ポンプが中間スペースの真空排気も行うように構成されている。この場合には、真空ポンプと液体ポンプは同一のポンプを成しており、これはたとえばピストンポンプ等である。液体の充填レベルは、0%〜100%の間で制御される。0%の液体充填レベルには、中間スペースにまだ数滴の液体あるいは古い液体の残留物が含まれているにしても、(実質的に気体で充填された)空の中間スペースが含まれる。
【0017】
ケーシングシステムは有利には、上述のように二重壁で取り囲まれた複数の内部スペースを有している。ケーシングは有利には平行六面体の形状であり、少なくとも1つの面が二重壁として構成されている。ケーシングシステムが複数の内部スペースを含んでいる場合には、それらの内部スペースは二重壁によって互いに分離されている。ここで有利であるのは、複数の二重壁の中間スペースが互いに結合されていることである。1つの有利な実施形態によればケーシングシステムは平行六面体状であり、この場合、周方向に相前後して続くすべての面が二重壁として構成されているが、底面は、あるいはカバーも、二重壁としては構成されていない。ただし、それ相応の冷却を実現するために、底面を二重壁として構成するのも有利である。蓄電池と壁区間との間に熱伝導性部材を設けることができ、このようにすることでバッテリを内部スペースにぴったりと嵌め込む必要がなくなり、蓄電池の組み込み後にこのような熱伝導性部材を挿入し、それによってヒートブリッジを完成させることができる。さらに別の有利な実施形態によれば、弾性の壁区間が含まれており、この弾性の壁区間は水圧によって少なくともいくらか膨らみ、このことでプレス嵌めにより蓄電池を押圧することができる。
【0018】
別の実施形態によれば、水の熱容量が考慮される。液体自体の温度が蓄電池の温度調節に本質的な影響を及ぼすことは、場合によっては望ましくない。このような実施形態によれば、1つの中間スペースもしくはすべての中間スペースの容積は、内部スペースの容積の一部分にすぎない。有利には中間スペースは5cm、2cm、1cmまたは0.5cmよりも小さい僅かな幅を有しているのに対し、内部スペースは長さまたは幅の尺度として中間スペースの数倍から数10倍である。したがって内部スペースは有利には10cmよりも長く、または20cmよりも長く、あるいは50cmよりも長い。すべての内部スペースとすべての中間スペースとの容積比は、有利には50:1、100:1、200:1、500:1、1000:1よりも大きく、あるいはそれ以上である。ただし択一的な実施形態によれば所期のように、液体の熱容量、それに付随する冷却、加熱ならびに、殊に中間スペースが真空排気(または部分的に排気)されたときに気化する液体による冷却効果が考慮される。
【0019】
さらに本発明は、以下のように冷却を制御する方法によって実現される。すなわちこの場合、最初に少なくとも1つの高出力蓄電池が内部スペースに配置され、これが二重壁のうち内壁区間と熱伝導性結合される。その際、(内壁区間と外壁区間を介し中間スペースすなわち二重壁を通して行われる)高出力蓄電池と周囲との熱伝達が、中間スペースにおける液体の充填レベルを変化させることによって制御される。
【0020】
充填レベルは、液体のポンピングまたは弁を介した液体の排出によって、中間スペースに液体を充填したり中間スペースから液体を排出したりすることによって変化させられる。たとえば弁のタンクが二重壁の上に設けられているならば、中間スペースを満たすためには弁を開放すれば十分である。タンクは有利には換気機構を有しており、これによって中間スペース充填時に空気がタンクに案内され、中間スペースが空にされるときにはタンクから空気が案内され、有利にはワンウェイバルブを介して案内される。中間スペースは、たとえば1〜5リットルといった比較的僅かな容積しか有しておらず、したがって中間スペースは実質的に薄い層の形状で設けられているので、それに応じてタンクも小さく構成することができ、ひいてはポンプはタンクの液体全体を短期間でタンクから中間スペースへ、およびその逆へ搬送することができる。したがって、中間スペースに接続されたタンクから中間スペースへ、または中間スペースからタンクへ、本発明による方法に従って案内することができる。液体充填レベルによる調節に加え、補助的に空気圧を常圧に対し低減することによって、熱の伝達を制御することもできる。その際、液体が中間スペースから完全に排出された後に空気が排出される。この場合、液体を搬送するときと同じポンプを使用してもよいし、それぞれ異なるポンプを使用してもよい。別個のポンプを使用した場合、中間スペース内に液体がまだ存在しているときに真空ポンプが作動してしまうのを防止する目的で、中間スペース内にセンサを設けることができ、本発明によればこのセンサに対し、中間スペース内に液体がまだ存在しているのか否かについての問い合わせが行われる。
【0021】
水のほかにも、0.03W/m−Kまたは0.05W/m−Kあるいは0.1W/m−Kよりも大きい比熱容量を有しているならば、任意の液体を熱伝達媒体として利用することができる。さらに純粋な水を使用してもよいし、添加物を含む水を使用してもよく、この場合、添加物はたとえば塩であり、これによって熱伝導性がさらに上昇させられ、および/または添加物は保存剤であり、これによって長期にわたりシステムの動作を確実に維持できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明による熱絶縁ケーシングシステムを示す図
【0023】
発明を実施するための形態
図1には、ケーシング10とポンプ20とタンク30を備えた本発明によるケーシングシステムが示されている。ケーシング10は内部スペース12を有しており、この内部スペースの質量およびプロポーションは、たとえば特定の蓄電池タイプの蓄電池を収容するように設定されている。さらにケーシング10は二重壁14,14′を有しており、二重壁の内壁14′は内壁区間16′を含み、二重壁の外壁14は外壁区間16を含んでいる。この二重壁は周囲を循環しており、この二重壁によって、内壁14′と外壁14の間に形成されていて空間的につながっている中間スペース18が規定される。中間スペース18は実質的に密閉されているが、開口部19が設けられており、この開口部19が、中間スペース18の充填および排出のための液体接続口を成している。
【0024】
接続口19にはポンプ20が接続されており、さらにこのポンプ20自体はタンク30と接続されている。ポンプ20は双方向で駆動可能であり、したがってタンク30の水32が中間スペース18へ向けてポンピングされる一方、中間スペース18からタンク30へ水32がポンピングされる。
【0025】
さらに圧力補償のためにタンク30には圧力補償弁34が設けられており、このようにすることで、ポンピングによる液体32の供給によって生じる空間占有に起因するタンク30内部の圧力上昇を補償することができる一方、ポンピングにより液体32を排出したときに外部から空気を供給することにより圧力補償を行うことができる。ここではポンプ20はハイドロリックポンプとして示されているけれども、このポンプが、気体のポンピングたとえば中間スペース18からタンク30あるいは有利には周囲への気体のポンピングにも適していると有利であり、これによって中間スペース18を真空排気することができ、熱流をなおいっそう十分に阻止することができる。
【0026】
ポンプ20は制御装置40によって制御され、この制御装置40は、内部スペース12内に配置された第1の温度センサ42と接続されており、さらにこの制御装置40には、周囲温度を測定する外部センサ44が設けられている。制御装置にはさらに、比較器ならびに入力端あるいは記憶装置(図示せず)が温度設定のために設けられており、本発明によればこれによって、中間スペースを水で充填すべきか、あるいは熱絶縁性を見込むべきか、すなわち充填レベルゼロとすべきかが求められる。設定温度をたとえば制御装置40のリードオンリメモリに格納しておくことができ、これは内部スペース12内に配置された蓄電池の最低動作温度に対応する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高出力蓄電池(11)を収容するように構成された内部スペース(12)を含むケーシング(10)を備えた熱絶縁ケーシングシステムであって、
前記ケーシングは二重壁を有し、該二重壁内に中間スペース(18)が設けられており、
該中間スペースは、前記二重壁の少なくとも1つの内壁区間(14′)を介して、前記内部スペースと熱伝導性結合されており、該中間スペースは、前記二重壁の少なくとも1つの外壁区間(14)を介して、前記ケーシングの周囲と結合されており、該中間スペースは、液体接続口(19)を除いて完全に密閉されている、
熱絶縁ケーシングシステムにおいて、
前記液体接続口と接続された液体ポンプ(20)と、液体(32)を有する液体タンク(30)が設けられており、該液体タンク(30)は、前記液体ポンプ(20)を介して前記中間スペース(18)と接続されており、
前記液体ポンプ(20)は、前記二重壁の壁区間(16,16′)の間における中間スペース内の液体充填レベルを制御するように構成されていることを特徴とする、
熱絶縁ケーシングシステム。
【請求項2】
高出力蓄電池が設けられており、該高出力蓄電池の外面は、前記二重壁の内壁区間(14′)と熱伝導性結合されており、前記液体充填レベルによって、前記中間スペース(18)を通した前記高出力蓄電池と周囲との熱伝達が調整される、請求項1記載の熱絶縁ケーシングシステム。
【請求項3】
液体(32)は水であり、中間スペースには固体は含まれておらず、
または該中間スペースは、該中間スペースに向かって開放されているダクトまたは孔または開口を有する熱絶縁性の固体によって充填されており、充填レベルが上昇させられると、前記ダクトまたは孔または開口に水が浸入可能であり、
壁区間(14,14′)は、薄い熱伝導性のプラスチック層または金属層を含む、
熱絶縁ケーシングシステム。
【請求項4】
制御装置(40)が設けられており、該制御装置(40)は、高出力蓄電池(11)の蓄電池温度と周囲温度を測定するように構成されており、
前記制御装置は、液体ポンプ(20)を制御し、設定温度を考慮するように構成されており、
前記制御装置は、蓄電池温度と周囲温度との差が、蓄電池温度と設定温度との差と同じ極性符号を有しているならば、前記液体ポンプを制御して充填レベルを上昇させ、
蓄電池温度と周囲温度との差が、蓄電池温度と設定温度との差とは逆の極性符号を有しているならば、前記液体ポンプを制御して充填レベルを低下させる、
熱絶縁ケーシングシステム。
【請求項5】
前記中間スペース(18)に接続された真空ポンプ(20)が設けられており、該真空ポンプ(20)は、前記中間スペース内に存在する空気の圧力を低減するように構成されており、たとえば常圧の50%、20%、10%、5%、1%または0.1%よりも低くするように構成されている、請求項1から4のいずれか1項記載のケーシングシステム。
【請求項6】
高出力蓄電池の冷却を制御する方法であって、
高出力蓄電池を、二重壁を備えたケーシング(10)の内部スペース(12)に配置するステップを有しており、
前記二重壁内に中間スペースが延在していて、前記高出力蓄電池は前記内部スペースへの配置によって、前記二重壁の内壁区間と熱伝導性結合されており、
前記高出力蓄電池(11)から前記二重壁の内壁区間(14′)を介し、さらに前記ケーシングの周囲と接する前記二重壁の外壁区間(14)を介して、周囲へと至る熱伝達を制御するステップを有しており、
該熱伝達を、前記内壁区間と前記外壁区間との間に延在する前記中間スペース(18)内における液体の充填レベルを変化させることにより制御することを特徴とする、
高出力蓄電池の冷却を制御する方法。
【請求項7】
前記制御ステップにおいて、液体のポンピングにより、および/または弁の開放状態の変更により、液体を充填して充填レベルを上昇させ、液体を排出して充填レベルを低下させる、請求項6記載の方法。
【請求項8】
熱伝達を制御するために、前記中間スペース(18)に接続されたタンク(30)から前記中間スペースへ液体を案内し、または前記中間スペースからタンク(30)へ液体を案内する、請求項6または7記載の方法。
【請求項9】
前記熱伝達を制御するステップにおいて、前記中間スペース内部の空気圧を、ポンピングにより該中間スペース(18)から空気を排出して空気圧を低下させることで変化させ、たとえば常圧の50%、20%、10%、5%、1%または0.1%よりも低くなるよう変化させる、請求項6、7または8記載の方法。
【請求項10】
前記中間スペース内に実質的に液体が存在しない場合にのみ空気圧を低下させる、請求項9記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2013−513909(P2013−513909A)
【公表日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−542412(P2012−542412)
【出願日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際出願番号】PCT/EP2010/065442
【国際公開番号】WO2011/069723
【国際公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(390023711)ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング (2,908)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
【Fターム(参考)】