説明

制御可能な空隙寸法を備えた自立型ナノ粒子網状組織/スキャフォルド

本発明は、500nm〜1mmの制御可能な可変性メッシュサイズ、0.5〜50%の粒子体積率を有する、ナノ粒子の自立型網状組織またはスキャフォルドを開示する。該網状組織は、ナノ粒子、規則正しい構造化相を形成する能力のある界面活性剤、および架橋剤を含み、ここで、該界面活性剤は、洗い流されて、自立型スキャフォルドを残す。本発明は、さらに、自立型スキャフォルドの調製方法、およびその使用を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノ粒子の自立型網状組織/スキャフォルド、および制御可能な可変メッシュサイズを備えたナノ粒子の自立型網状組織/スキャフォルドの調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多孔性スキャフォルド、特に、ナノ多孔性からミクロ多孔性のスキャフォルドには、数ある中でも、触媒、光学、電気、電子、電磁デバイス、細胞増殖、薬物送達、およびクロマトグラフィーなどの多様な応用領域がある。
「Microporous and mesoporous materials」と題する雑誌(ISSN−1387−1811)における、2006年、91巻、172〜180頁の、森寛、魚田将史らによる「リオトロピック混合界面活性剤液晶鋳型を使用するミクロ−メソ多孔性二元シリカの合成(Synthesis of micro-mesoporous bimodal silica nanoparticles using lyotropic mixed surfactant liquid-crystal templates)」と題する論文を参照することができ、該論文には、ノナエチレングリコールドデシルエーテル(C12EO9)およびモノステアリン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(Tween60)またはエイコサエチレン−グリコールオクタデシルエーテル(C18EO20)の混合界面活性剤の六方晶系構造の液晶(LC)鋳型に閉じ込められる、シリケート(TEOS)種の重合をベースにした2段階反応によって合成される40〜90nm程度の小さな粒子直径を有するミクロ−メソ多孔性二元シリカナノ粒子が開示されている。
【0003】
2000年8月15日発行の「EJB Electronic Journal of Biotechnology」(ISSN:0717−3458)、3巻、2号中のAntonios G.MikosおよびJohnna S.Temenoffによる「生体組織工学のための高多孔性生分解性スキャフォルドの形成(Formation of highly porous biodegradable scaffolds for tissue engineering)」と題する論文を参照することができ、該論文には、繊維結合、溶媒鋳込み/粒子溶脱、気体発泡、および相分離を含む種々の技術を使用するスキャフォルドの形成が開示されている。細孔形態に影響を及ぼす種々のパラメータが、ポリマー濃度、冷却の方法および時間、溶媒/非溶媒の比率、界面活性剤の存在などであることが見出された。ほぼ100μmの細孔を備えた空隙率が90%までの発泡物が開示された。
異なる電子親和性を有する2種以上の材料を含む太陽電池デバイス、2種以上の材料が規則的に配列され、かつ2種以上の材料の存在が約1nm〜約100nmの距離の範囲内で互い違いになる構成によって特徴付けられる太陽電池デバイスに関する米国特許第6852920号を参照することができ、該構成は、細孔を含む伝導性または半伝導性無機媒体を有するメソ多孔性鋳型によって特徴付けられ、ここで、該細孔は、取り囲んでいる伝導性または半伝導性無機媒体と比べて異なる電子親和性を有する伝導性または半伝導性ポリマー材料で満たされる。
【0004】
2005年9月25日発行の「Nature Materials」4巻、787〜793頁(2005年)中のHaifei Zhangらによる「ポリマーおよびナノ粒子の方向凍結による整列された2および3次元構造(Aligned two- and three-dimensional structures by directional freezing of polymers and nanoparticles)」と題する論文を参照することができ、該論文には、マイクロメーター領域の整列された空隙を備えた多孔性ポリマー材料の調製が、有機エレクトロニクス、ミクロ流体工学、分子濾過、および生体材料における広範な応用にとって技術的に重要であることが開示されている。これは、ポリマー、ナノ粒子、またはこれらの成分の混合物を構成ブロックとして使用する整列された材料の調製のための、方向凍結をベースにした一般的な方法をさらに示す。
【0005】
先行技術の方法によるナノ粒子は、さまざまな特性を所持する。しかし、ナノ粒子が架橋され、その結果、多孔性スキャフォルドが自立性である、ナノ粒子のスキャフォルドを開示している先行技術は存在しない。さらに、種々の一般に入手可能な材料から細孔サイズを制御したスキャフォルドを作り出す、利用が容易な一般的方法に関する先行技術は存在しない。また、先行文献は、スキャフォルドを自立性にし、それによって、触媒、電子もしくは電磁デバイス、クロマトグラフィーなど領域で広範に応用され得るようなナノ多孔性スキャフォルドの架橋を教示していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の目的は、制御可能な空隙を有し、かつ細孔サイズおよび方向性に関して精密な制御性を有する自立型スキャフォルドを形成することである。長期的目標は、細胞増殖基体として、太陽電池用材料、電気および熱の絶縁材、さらにはいくつかの応用分野のための触媒として使用されるこれらのスキャフォルドを探求する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
したがって、本発明は、500nm〜1mmの制御可能な可変性メッシュサイズを備え、0.5〜50%の粒子体積率を有するナノ粒子の自立型網状組織またはスキャフォルドの調製方法を提供する。該網状組織は、ナノ粒子、規則正しい構造化相を形成する能力のある界面活性剤、および架橋剤を含み、ここで該界面活性剤は洗い流されて、自立型スキャフォルドを残す。
本発明の実施形態において、ナノ粒子は、金属粒子好ましくは金粒子、無機粒子好ましくはシリカ粒子、有機化合物の粒子、ポリマー化合物、半伝導性粒子、および磁性粒子からなる群から選択される。
本発明の別の実施形態において、有機化合物のナノ粒子は界面活性剤のメソ相に溶解せず、該メソ相は、結晶相と等方性液体相との間の、すなわちメソスケール(ほぼ2nm〜100nm)の次元の規則配列を有する液晶性化合物の相と定義される。
本発明の別の実施形態において、ナノ粒子は、等方性、異方性、または規則的に形づくられる。
本発明の別の実施形態において、非イオン性界面活性剤は、Cnmであり、ここで、n>1、好ましくは>10であり、m>1、好ましくは9である。
本発明の別の実施形態において、界面活性剤は、規則正しい構造化相、層状、海綿状の立方晶系網状組織、好ましくは六方晶系網状組織を形成する能力がある。
本発明の別の実施形態において、前記スキャフォルドは、0.5〜50%の粒子体積率を有する。
【0008】
本発明の別の実施形態において、ナノ粒子の自立型スキャフォルドまたは網状組織の調製方法であって、
(i)5〜500nmの範囲の大きさのナノ粒子を、規則相−等方相の転移温度より高い温度の界面活性剤相(界面活性剤と水との50/50組成物)中に分散させて、界面活性剤−粒子の分散液を得るステップ:
(ii)ステップ(i)の界面活性剤−粒子の分散液を、界面活性剤のメソ相が形成されるような温度まで冷却するステップ;
(iii)ステップ(ii)のメソ相−粒子の分散液に流れを強要して、粒子網状組織の制御可能な配向を得てもよいステップ、および
(iv)ステップ(ii)または(iii)で得られるような粒子を架橋し、網状組織を形成するステップを含む調製方法。
本発明の別の実施形態において、規則相−等方相の転移温度は、規則正しいメソ相から乱れた等方相への転移が起こる温度、すなわち40〜45℃である。
本発明の別の実施形態において、前記の架橋は、物理的、化学的、および物理−化学的な方法から選択される方法によりもたらされる。
本発明の別の実施形態において、架橋法は、粒子−粒子の相互作用および粒子の一体化、粒子の焼結、架橋可能なポリマーの層を吸収することによって粒子を被覆すること、それらの表面に架橋可能な基を有する粒子を調製すること、粒子を融合すること、イオン強度を変えること、塩を添加すること、pHおよび温度を変えることから選択される。
【0009】
本発明の別の実施形態において、架橋可能なポリマーは、ポリビニルアルコール(PVA)およびポリエチレンイミン(PEI)からなる群から選択される。
本発明の別の実施形態において、架橋可能なポリマーとナノ粒子との比率は、質量で1:100〜100:1の範囲にある。
本発明の別の実施形態において、冷却は、0.5〜300℃/分の速度で行われる。
本発明のさらに別の実施形態において、冷却は、500nmのメッシュサイズをもたらす300℃/分で行われる。
本発明の別の実施形態において、冷却は、200μm領域のメッシュサイズを得るように0.5℃/分で実施される。
【0010】
本発明の別の実施形態において、このようなスキャフォルドは、触媒、電子デバイス、電磁デバイス、薬物送達、クロマトグラフィー、生体組織工学、および細胞増殖において使用される。
本発明のさらに別の実施形態において、本発明の方法は、特定の相対的配向を備えた異方性粒子の架橋をもたらす。
本発明のさらに別の実施形態において、本発明の方法は、粒子を架橋する前に流れを強制することによって方向性をもつ細孔の形成をもたらす。
本発明のさらに別の実施形態において、粒子を架橋する前に流れを強制することは、方向性をもって配向された細孔の形成をもたらす。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】例10のような方法によって調製されるナノスキャフォルドのSEMを示す図である。12nmのシリカを、100:1の比にてポリエチレンイミン(MW=2000g/モル)で被覆し、5℃/分で冷却する。界面活性剤は調製後に洗い流され、走査電子顕微鏡法(SEM)を実施する前に材料を乾燥する。
【図2】100:1の比率にてポリエチレンイミン(MW=2000g/モル)で被覆され、40℃/分で冷却された12nmシリカのSEMを示す図である。界面活性剤は調製後に洗い流され、走査電子顕微鏡法(SEM)を実施する前に材料を乾燥する。
【図3】100:1の比率にてポリエチレンイミン(MW=750,000g/モル)で被覆され、0.5℃/分で冷却され、かつN2中で4時間続いて空気中で6時間仮焼された12nmシリカ粒子のSEMを示す図である。
【図4】100:1の比率にてポリエチレンイミン(MW=750,000g/モル)で被覆され、5℃/分で冷却され、かつN2中で4時間そして空気中で6時間仮焼された500nmシリカのSEMを示す図である。
【図5】剪断セル中、0.1rad/sで1分間剪断することによって形成される配向型スキャフォルドの光学顕微鏡写真を示す図である。該スキャフォルドは、ポリマー(ポリエチレンイミン)で被覆され、続いて架橋された15nmのシリカ粒子からなる。
【図6】ポリマー(分子量が25000g/モルのポリエチレンイミン)で被覆された15nmシリカ粒子の集合からなる仮焼済みスキャフォルドのSEM画像を示す図である。該ポリマーは架橋され、続いて、サンプルを、空気中700℃で6時間、続いて窒素中700℃で6時間仮焼された。
【図7】粒子相が分離する間の冷却速度を変えることによるスキャフォルドの細孔サイズの調節を示す図である。左の画像は、ポリマー(2000g/モルのPEI)で被覆され、50℃から25℃まで10℃/分で冷却された15nmシリカサンプルを示す。該ポリマーは、続いて、グルタルアルデヒド(gluteraldehyde)を使用して架橋され、界面活性剤は洗い流される。右の画像は、約2倍大きい細孔を示す。このサンプルは、それを50℃から25℃まで5℃/分で冷却することを除いて、厳密に前記サンプルのように作製される。
【図8】C129−H2O六方晶系相中の網状組織の形態で自己集合した、サイズが〜10nmの2wt%のFe34ナノ粒子の光学顕微鏡写真を示す図である。該網状組織は、粒子をポリエチレンイミンで被覆すること、および続いてグルタルアルデヒドで架橋することによって架橋される。
【図9】蛍光染料でタグ化された12nmシリカ粒子スキャフォルドの共焦点顕微鏡写真を示す図である。該スキャフォルドは、ポリエチレンイミン(M.W.2000g/モル)で被覆された12nm粒子を50℃のC129:H2O(1:1)系中に分散させること、次いで、それを25℃まで5℃/分で冷却することによって作製された。このように形成された網状組織を、グルタルアルデヒドで架橋し、続いて界面活性剤を洗浄によって除去した。50mgのスキャフォルドを0.2mgのFITCの50mLエタノール溶液と共に一夜撹拌することによって、染料(フルオレセイン、FITC)をタグ化した。次いで、反応後、過剰な染料を遠心分離で除去した。図中で、タグ化された多孔性スキャフォルドを明瞭に認めることができる。
【図10】2%PNIPAMミクロゲル(サイズ320nm)によって形成されるスキャフォルドの光学顕微鏡写真を示す図である。PNIPAMミクロゲル粒子は、ポリエチレンイミン(M.W.25000g/モル)で被覆され、被覆された粒子のpHは8に調整された。これらのミクロゲル粒子を、次いで、50℃のC129:H2O(1:1)中に投入し、25℃まで5℃/分で冷却した。このように形成されるミクロゲル網状組織を、グルタルアルデヒドで架橋し、続いて、界面活性剤を水で洗浄した。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、500nm〜1mmの独立に制御できる可変性網状組織メッシュサイズを備えた、ナノ粒子の自立型網状組織またはスキャフォルドを提供する。該網状組織は、ナノ粒子、規則正しい構造化相を形成する能力のある界面活性剤、および架橋剤を含み、該界面活性剤は、洗い流されて自立型スキャフォルドを残す。
本発明のナノ粒子は、金属粒子、無機粒子、界面活性剤のメソ相に可溶性でない有機化合物粒子、ポリマー性化合物、半伝導性粒子、磁性ナノ粒子などから選択される。粒子は、種々の幾何学的配列からなり、等方性(球状)または異方性(限定はされないが、例えば、ロッド状、プレート状を含む)でよく、あるいは不規則に形づくられてよい。
本発明の界面活性剤は、規則正しい構造化相−六方晶系、層状、海綿状、立方晶系の網状組織など、好ましくは六方晶系を形成する能力がある。該界面活性剤は、Cnmであり、ここで、n>1、好ましくは>10、m>1である。
【0013】
本発明の自立型スキャフォルドは、制御可能な可変性空隙を備え、かつ0.5〜50%の粒子体積率を有する粒子ストランドの網状組織からなる。自立型スキャフォルドは、粒子ストランドの内部に、異なるサイズの粒子を使用して制御して変えられる粒子間空間である空隙、および粒子体積率を変えることによっておよび/または処理パラメータを変えることによって制御して変えられるストランド間の空隙を提示する。空隙率を制御するために変えるべきパラメータは、冷却速度である。粒子を架橋することに先立つ流動の強制は、方向性をもって配向された細孔の形成をもたらす。
【0014】
本発明は、5〜500nmのサイズを有するシリカまたは金のナノ粒子および非イオン性C129の六方晶系界面活性剤相(界面活性剤と水との50/50組成物)を使用する、界面活性剤のメソ相中での、粒子からなる自立型網状組織の調製について説明する。限定はされないが、CdS、CdSe、ZnSなどの量子ドット、磁気特性を有する粒子、強磁性ナノ粒子から選択される機能性粒子が、このような網状組織を形成するのに使用される。網状組織の形成は、メソ相からの粒子の排除によって駆動されるので、結晶化、またはメソ相を形成するマトリックスが、本発明の自立型スキャフォルドを形成するのに適している。
【0015】
制御可能な可変性メッシュサイズを備えた、本発明のナノ粒子の自立型網状組織を調製する方法は、
i.粒子を、規則相−等方相の転移温度より高い温度で界面活性剤中に分散させるステップ、
ii.界面活性剤−粒子の分散液を、界面活性剤のメソ相が形成されるような温度まで冷却するステップ、
iii.メソ相−粒子の分散液に流れを強制して、粒子網状組織の制御可能な配向を得てもよいステップ、および
iv.粒子を架橋して、自立型スキャフォルドを得るステップ、を含む。
【0016】
冷却速度は、自立型スキャフォルドの空隙率を決定する。急速な冷却速度は、より微細な空隙をもたらし、より遅い速度は、より粗い空隙をもたらす。冷却速度は、0.5℃/分〜300℃/分の範囲に及ぶ。等方相からの冷却速度が、0.5℃/分から5℃/分へ、20℃/分へと増大するにつれて、ドメイン構造(および結果として粒子網状組織)のサイズ尺度は、約25μmから2〜3μmへ減少する。同様に、急速な冷却速度は、およそ500nmのさらにより微細な網状組織メッシュをもたらす。したがって、冷却速度を制御することは、本発明の自立型スキャフォルドの粒子網状組織のメッシュサイズを操作する手軽な方策である。
さらに、粒子の架橋は、物理的、化学的、または物理−化学的である方法によってもたらされる。架橋方法は、限定はされないが、架橋可能なポリマーの層を吸着することによって被覆された粒子を使用する、粒子の焼結によって、それらの表面に架橋可能な基を有する粒子を調製することによって、粒子−粒子の相互作用および粒子の一体化を促進すること、イオン強度を変えること、塩を添加すること、pH、温度などを変えることによって粒子を融合することから選択される。
粒子の架橋は、本発明の自立型スキャフォルドをもたらす。スキャフォルドは、先行技術文献中に記載されているが、本明細書に記載のようないずれかのナノ粒子から、記載および例示のような各種の粒子に適用可能である単純な方法によって調製される自立型スキャフォルドは、これまで開示されていない。空隙率を制御するための冷却速度、および500nm〜1mmの独立に制御可能な可変性網状組織のメッシュサイズを備えた自立型スキャフォルドを調製するための単純な方法をもたらす架橋法の選択は、これまで知られていない。
粒子の空間的組織化は、界面活性剤相によって仲介される粒子間相互作用の結果である。ミセル状界面活性剤相中の粒子分散液を六方晶系メソ相に冷却することは、メソ相からの排除によって粒子の局所的相分離をもたらして、粒子を動力学的に決定される網状組織構造に押しやる。
【0017】
本発明は、5nmから500nmまでの種々のサイズの粒子を利用したので、粒子壁内に、「メッシュ」の長さ尺度に加えて、粒子直径と類似の細孔の長さ尺度を有する空隙が存在する。作製される材料は、1〜20%(体積当たり質量)の粒子からなる。これは、約0.5〜10%の体積率に相当する。架橋、溶媒除去などの結果としての変化を伴わないで、90〜99.5%の空隙率が得られる。溶媒除去後の乾燥は、場合によっては、材料の収縮、および時には構造の部分的崩壊をもたらす。0.5〜50%の粒子体積率は、調製に使用されるポリマー量およびスキャフォルド中で得られる空隙率を考慮することによって達成される。
【0018】
本発明の実施形態において、ポリマーで被覆された粒子の架橋が用意される。シリカ粒子は、その上へ架橋可能なポリマーの相を吸着することによって被覆され、前記の架橋可能なポリマーは、ポリビニルアルコール、ポリエチレンイミンなどである。この被覆は、シリカ粒子の水中分散液を準備すること、および該分散液に撹拌/超音波処理しながらPVAまたはPEIの希釈溶液を添加する方法を付加することによって行われる。ポリマーの濃度は、ナノ粒子に関して1:100〜100:1(質量で)であるように計算される。ポリマーの分子量は、複数粒子間のブリッジ形成、すなわち、1つのポリマー鎖が複数粒子に一緒に固着することを防ぐように調節される。ポリマー被覆の完結に続いて、被覆された該粒子の分散液に界面活性剤を添加して、粒子網状組織を形成する。続いて、グルタルアルデヒドなどの薬剤を使用してポリマーを架橋してもよい。架橋の完結に続いて、界面活性剤/水を、水および有機溶媒での繰り返し洗浄を利用して洗い流して、自立型粒子網状組織を得る。
このようなスキャフォルドは、触媒、電子デバイス、電磁デバイス、薬物送達、クロマトグラフィー、生体組織工学、および細胞増殖で使用される。
【実施例】
【0019】
以下の例は、本発明の方法を例示するために提供され、本発明の範囲を限定するものと解釈すべきでない。
【0020】
(例1)
5mLの25wt%シリカ粒子水性分散液を1mLの100mg/mL PEI/PVA溶液と混合することによって、ポリエチレンイミン(PEI)およびポリビニルアルコール(PVA)で被覆されたシリカ粒子を調製した。過剰なポリマーを、遠心分離および水洗浄ステップにより除去する。被覆された粒子を、ゼータ電位測定によって特徴付ける。ポリエチレンイミンで粒子を被覆すると、負(およそ−30mV)から正(およそ+8mV)への粒子表面電荷の変化が起こった。
(例2)
サイズが50nm金粒子を、50℃の水に分散させ(0.1Mの濃度で)、ノナエチレングリコールドデシルエーテル(C129)を、界面活性剤:水の比率が質量で1:1であるように添加し、50℃から室温まで5℃/分の速度で冷却した。金の大きなHamaker定数(金ナノ粒子間の大きな引力)のため、金粒子は、さらなるどんな外部作用もなしに組織化し、網状組織を形成し、かつ一体化した。次いで、界面活性剤を、1:1の水とエタノールとの混合物で洗い流した。これらの洗浄ステップを4回繰り返し、最後にサンプルをアセトンで洗浄して、自立型スキャフォルドを得た。
【0021】
(例3)
20nmの直径および3のアスペクト比を有するロッド状金ナノ粒子を(質量で0.1%、0.5%および0.85%の濃度で)、50℃の水中に分散させ、C129(等部の水およびC129)を添加し、室温まで5℃/分の速度で冷却した。金粒子は、金の間の強い引力のため一体化することが観察された。そのようにして生じたナノ粒子網状組織は、可視/近赤外分光法から観察されるように末端同士で連結されている金のロッドを有する。金ナノ粒子の出発濃度の増加と共に、UV−可視スペクトル中の長さ方向のプラスモンピークは、0.1%の場合の632nmから、0.5%の場合は686nmへ、0.85%の場合は720nmへ移動し、ロッドの末端同士の集合を示している。
(例4)
12nmシリカ粒子の30w/v%水性液1mLをポリビニルアルコールの水溶液と混合した(ポリビニルアルコール対シリカの質量比1:1;ポリビニルアルコールのMW=9000g/モル)。ポリマーで覆われたこれらの粒子を50℃の水に分散させ、水と同量のC129を添加し、室温まで300℃/分の速度で冷却した。これを、グルタルアルデヒドの蒸気に24時間暴露し、ポリマーで覆われた粒子を架橋して、ナノ粒子スキャフォルドを得た。
【0022】
(例5)
12nmシリカ粒子の30w/v%水性液1mLをポリビニルアルコールの水溶液と混合した(ポリビニルアルコール対シリカの質量比1:100;ポリビニルアルコールのMW=9000g/モル)。ポリマーで覆われたこれらの粒子を50℃の水に分散させ、水と同量のC129を添加し、室温まで300℃/分の速度で冷却した。これを、グルタルアルデヒドの蒸気に24時間暴露し、ポリマーで覆われた粒子を架橋して、ナノ粒子スキャフォルドを得た。
(例6)
12nmシリカ粒子の30w/v%水性液1mLをポリビニルアルコールの水溶液と混合した(ポリビニルアルコール対シリカの質量比1:1;ポリビニルアルコールのMW=9000g/モル)。ポリマーで覆われたこれらの粒子を50℃の水に分散させ、水と同量のC129を添加し、室温まで20℃/分の速度で冷却した。これを、グルタルアルデヒドの蒸気に24時間暴露し、ポリマーで覆われた粒子を架橋して、ナノ粒子スキャフォルドを得た。
【0023】
(例7)
12nmシリカ粒子の30w/v%水性液1mLをポリビニルアルコールの水溶液と混合した(ポリビニルアルコール対シリカの質量比1:1;ポリビニルアルコールのMW=9000g/モル)。ポリマーで覆われたこれらの粒子を50℃の水に分散させ、水と同量のC129を添加し、室温まで5℃/分の速度で冷却した。これを、グルタルアルデヒドの蒸気に24時間暴露し、ポリマーで覆われた粒子を架橋して、ナノ粒子スキャフォルドを得た。
(例8)
12nmシリカ粒子の30w/v%水性液1mLをポリビニルアルコールの水溶液と混合した(ポリビニルアルコール対シリカの質量比1:1;ポリビニルアルコールのMW=9000g/モル)。ポリマーで覆われたこれらの粒子を50℃の水に分散させ、水と同量のC129を添加し、室温まで0.5℃/分の速度で冷却した。これを、グルタルアルデヒドの蒸気に24時間暴露し、ポリマーで覆われた粒子を架橋して、ナノ粒子スキャフォルドを得た。
【0024】
(例9)
12nmシリカ粒子の30w/v%水性液1mLをポリビニルアルコールの水溶液と混合した(ポリビニルアルコール対シリカの質量比1:100;ポリビニルアルコールのMW=9000g/モル)。ポリマーで覆われたこれらの粒子を50℃の水に分散させ、水と同量のC129を添加し、室温まで5℃/分の速度で冷却した。これを、グルタルアルデヒドの蒸気に24時間暴露し、ポリマーで覆われた粒子を架橋して、ナノ粒子スキャフォルドを得た。
(例10)
12nmシリカ粒子の30w/v%水性液1mLをポリエチレンイミンの水溶液と混合した(ポリエチレンイミン対シリカの質量比1:25;ポリエチレンイミンのMW=9000g/モル)。ポリマーで覆われたこれらの粒子を50℃の水に分散させ、水と同量のC129を添加し、室温まで5℃/分の速度で冷却した。これを、グルタルアルデヒドの蒸気に24時間暴露し、ポリマーで覆われた粒子を架橋して、ナノ粒子スキャフォルドを得た。
【0025】
(例11)
12nmシリカ粒子の30w/v%水性液1mLをポリエチレンイミンの水溶液と混合した(ポリエチレンイミン対シリカの質量比1:100;ポリエチレンイミンのMW=9000g/モル)。ポリマーで覆われたこれらの粒子を50℃の水に分散させ、水と同量のC129を添加し、室温まで5℃/分の速度で冷却した。これを、グルタルアルデヒドの蒸気に24時間暴露し、ポリマーで覆われた粒子を架橋して、ナノ粒子スキャフォルドを得た。
(例12)
12nmシリカ粒子の30w/v%水性液1mLをポリエチレンイミンの水溶液と混合した(ポリエチレンイミン対シリカの質量比1:100;ポリエチレンイミンのMW=1000g/モル)。ポリマーで覆われたこれらの粒子を50℃の水に分散させ、水と同量のC129を添加し、室温まで5℃/分の速度で冷却した。これを、グルタルアルデヒドの蒸気に24時間暴露し、ポリマーで覆われた粒子を架橋して、ナノ粒子スキャフォルドを得た。
【0026】
(例13)
12nmシリカ粒子の30w/v%水性液1mLをポリエチレンイミンの水溶液と混合した(ポリエチレンイミン対シリカの質量比1:100;ポリエチレンイミンのMW=750000g/モル)。ポリマーで覆われたこれらの粒子を50℃の水に分散させ、水と同量のC129を添加し、室温まで5℃/分の速度で冷却した。これを、グルタルアルデヒドの蒸気に24時間暴露し、ポリマーで覆われた粒子を架橋して、ナノ粒子スキャフォルドを得た。
(例14)
40nmシリカを5wt%で100mLのエタノールに分散させること、および2mLのアミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)液と共に一夜撹拌することによって、アクリルアミドで被覆されたシリカ粒子を調製した。APTESで被覆された粒子を、次いで、0.01Mアクリル酸溶液に共有結合で結合させ、アクリルアミドで被覆されたシリカ粒子の形成をもたらした。これらの粒子を、光架橋に使用した。
これらを、50℃の水に分散させ、C12E9(等部の水およびC129)を添加し、室温まで5℃/分の速度で冷却した。この複合体を、表面基の架橋をもたらす強力なUV照射線に暴露して、ナノ粒子網状組織を形成した。
【0027】
(例15)
12nmシリカ粒子の30w/v%水性液1mLをポリエチレンイミンの水溶液と混合した(ポリエチレンイミン対シリカの質量比1:100;ポリエチレンイミンのMW=9000g/モル)。ポリマーで覆われたこれらの粒子を50℃の水に分散させ、C129(等部の水およびC129)を添加し、これをシリコン基板上でスピン注型した。これを、グルタルアルデヒドの蒸気に暴露して、表面上に架橋シリカ粒子のスキャフォルドを作り出した。
(例16)
ポリビニルアルコールで覆われた(1g/平方メートル)大きさが10nmのセレン化カドミウムナノ粒子を50℃の水に分散させ、C129(等部の水およびC129)を添加し、室温まで5℃/分の速度で冷却した。これを、グルタルアルデヒド蒸気に暴露し、ポリマーで被覆された粒子を架橋してナノ粒子スキャフォルドを得た。界面活性剤を洗い流して、自立型CdSeスキャフォルドを得た。このスキャフォルドにチオフェンを浸透させて、チオフェン中にCdSe粒子の自立型スキャフォルドを作り出した。
【0028】
(例17)
12nmシリカ粒子の30w/v%水性液1mLをポリビニルアルコールの水溶液と混合した(ポリビニルアルコール対シリカの質量比1:1;ポリビニルアルコールのMW=750000g/モル)。ポリマーで覆われたこれらの粒子を50℃の水に分散させ、水と同量のC129を添加し、室温まで20℃/分の速度で冷却した。これをグルタルアルデヒドの蒸気に24時間暴露して、ポリマーで覆われた粒子を架橋して、ナノ粒子スキャフォルドを得た。
(例18)
12nmシリカ粒子の30w/v%水性液1mLをポリビニルアルコールの水溶液と混合した(ポリビニルアルコール対シリカの質量比1:1;ポリビニルアルコールのMW=1000g/モル)。ポリマーで覆われたこれらの粒子を50℃の水に分散させ、水と同量のC129を添加し、室温まで20℃/分の速度で冷却した。これをグルタルアルデヒドの蒸気に24時間暴露して、ポリマーで覆われた粒子を架橋して、ナノ粒子スキャフォルドを得た。
【0029】
本発明の利点
i.本発明は、制御可能な空隙率を有し、かつ細孔サイズおよび方向性を精密に制御された自立型スキャフォルドを提供する。
ii.本発明は、細胞増殖基板として、太陽電池、電気および熱の絶縁材、さらにはいくつかの分野のための触媒のための材料として使用される自立型スキャフォルドを提供する。
iii.本発明は、ナノ多孔性スキャフォルドの架橋を提供し、その結果、スキャフォルドを、自立型にすることができ、それによって、触媒、電子もしくは電磁デバイス、クロマトグラフィーなどの分野で広範に応用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノ粒子、界面活性剤、および架橋剤を含み、500nm〜1mmの範囲の制御可能な可変メッシュサイズを備えた、ナノ粒子の自立型スキャフォルドまたは網状組織。
【請求項2】
前記ナノ粒子が、金属粒子好ましくは金粒子、無機粒子好ましくはシリカ粒子、有機化合物の粒子、ポリマー性化合物、半伝導性粒子、および磁性粒子からなる群から選択される、請求項1に記載のナノ粒子の自立型スキャフォルドまたは網状組織。
【請求項3】
前記有機化合物のナノ粒子が、界面活性剤のメソ相に可溶性でない、請求項2に記載のナノ粒子の自立型スキャフォルドまたは網状組織。
【請求項4】
前記ナノ粒子が、等方性、異方性、または不規則形状である、請求項1に記載のナノ粒子の自立型スキャフォルドまたは網状組織。
【請求項5】
前記非イオン性界面活性剤が、Cnmであり、ここで、n>1、好ましくは>10、かつm>1、好ましくは9である、請求項1に記載のナノ粒子の自立型スキャフォルドまたは網状組織。
【請求項6】
前記界面活性剤が、規則正しい構造化相、層状、海綿状、立方晶系の網状組織、好ましくは六方晶系網状組織を形成する能力がある、請求項1に記載のナノ粒子の自立型スキャフォルドまたは網状組織。
【請求項7】
前記スキャフォルドが、0.5〜50%の粒子体積率を有する、請求項1に記載のナノ粒子の自立型スキャフォルドまたは網状組織。
【請求項8】
請求項1に記載のナノ粒子の自立型スキャフォルドまたは網状組織の調製方法であって、
i.5〜500nmの範囲の大きさのナノ粒子を、界面活性剤相(界面活性剤と水との50/50組成物)中に規則相−等方相の転移温度より高い温度で分散させて界面活性剤−粒子の分散液を得るステップ;および
ii.ステップ(i)の界面活性剤−粒子の分散液を、界面活性剤のメソ相が形成されるような温度まで冷却するステップを含み、
iii.ステップ(ii)のメソ相−粒子の分散液に流れを強要して、粒子網状組織の制御可能な配向を得るステップを含んでもよく、および
iv.ステップ(ii)または(iii)で得られるような粒子を架橋して、網状組織を形成するステップを含む、調製方法。
【請求項9】
前記架橋が、物理的、化学的、および物理−化学的方法から選択される方法によってもたらされる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
架橋法が、粒子−粒子相互作用および粒子の一体化、粒子の焼結、架橋可能なポリマーの層を吸着することによって粒子を被覆すること、それらの表面に架橋可能な基を有する粒子を調製すること、粒子を融合すること、イオン強度を変えること、塩を添加すること、pHおよび温度を変えることから選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
架橋可能なポリマーが、ポリビニルアルコール(PVA)およびポリエチレンイミン(PEI)からなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
架橋可能なポリマーとナノ粒子との比率が、質量で1:100〜100:1の範囲にある、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
冷却が、0.5〜300℃/分の速度で行われる、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
デバイス、薬物送達、クロマトグラフィー、生体組織工学、または細胞増殖用である、請求項1に記載のナノ粒子の自立型スキャフォルドまたは網状組織。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2012−512241(P2012−512241A)
【公表日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−541718(P2011−541718)
【出願日】平成21年12月15日(2009.12.15)
【国際出願番号】PCT/IN2009/000723
【国際公開番号】WO2010/070679
【国際公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(508176500)カウンシル オブ サイエンティフィック アンド インダストリアル リサーチ (27)
【Fターム(参考)】