説明

制御可能な粘度を有する機能材料

本発明は、例えば接着剤配合物または塗料の粘度を制御するための新しい種類の方法に関する。この粘度制御方法は、室温であっても配合物の急速な熱可塑的硬化を可能にし、および比較的高い温度で粘度の明らかな減少を可能にし、したがって簡単に加工能を取り戻し、例えば元々接着された基体を簡単に再び互いに引き離すことができる。これに関連して、1つの特殊な視点は、熱可塑的硬化と明らかな粘度減少の複数のサイクルが本発明の系で可能であることにある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、例えば接着剤配合物または塗料の粘度を制御するための新しい種類の方法に関する。
【0002】
この粘度制御方法は、室温であっても配合物の急速な熱可塑的硬化を可能にし、および比較的高い温度で粘度の明らかな減少を可能にし、したがって簡単に加工能を取り戻し、例えば元々接着された基体を簡単に再び互いに引き離すことができる。
【0003】
これに関連して、1つの特殊な視点は、熱可塑的硬化と明らかな粘度減少の複数のサイクルが本発明の系で可能であることにある。
【0004】
先行技術
ポリマーを可逆的に結合させる方法は、幅広い分野の用途にとって大いに興味深い。 例えば、接着剤の用途において、自動車産業または半導体産業のための種々の方法が記載されている。しかし、機械構造、精密機械機器または建築産業においても、このような接着剤は、興味がもたれている。接着剤の用途と共に、可逆的に結合可能なポリマーは、シーラント、塗料、例えばワニスまたはペイントにおいて、または成形品の製造においても興味がもたれている。
【0005】
ドイツ連邦共和国特許第19832629号明細書およびドイツ連邦共和国特許第19961940号明細書には、エポキシ、尿素、(メタ)アクリレートまたはイソシアネートをベースとする接着剤を熱分解させる方法が記載されている。この目的のために、ドイツ連邦共和国特許第19961940号明細書に記載の接着剤配合物は、加熱時に活性化される、熱的に不安定な物質を含有する。ドイツ連邦共和国特許第19832629号明細書中の接着剤層は、特に高いエネルギー入力によって破壊される。接着剤層の不活性化は、双方の場合に不可逆的である。
【0006】
米国特許第2005/0159521号明細書または米国特許第2009/0090461号明細書には、化学線での照射によってラジカル架橋され、および超音波によって破壊される接着剤系が記載されている。また、この方法は、接着サイクル後に不可逆的にもはや実施することができない。
【0007】
欧州特許第2062926号明細書においては、接着用途のためのポリウレタンの鎖中に熱的に不安定な立体障害尿素基が組み入れられ、この尿素基は、熱エネルギーの導入によって破壊され、それによって接着剤の結合効果は、十分に減少され、結合部を引き離すのに十分である。
【0008】
米国特許第2009/0280330号明細書には、二層構造を有する、明らかに複数回使用可能な接着剤系が記載されている。1つの層は、形状記憶層であり、この形状記憶層は、熱的に可撓性であってもよいし、硬化されてもよい。他の層は、構造の1つの機能として異なる接着剤濃度を有する乾式接着剤である。
【0009】
しかし、このような系の問題は、形成するのが困難である二層構造および形状記憶層の加熱後の期待すべき戻りにある。
【0010】
"クリックケミストリー(click chemistry)"の総称の下、数年来、特に学界内でブロックコポリマーを形成させる方法が研究されてきた。これに関連して、結合可能な末端基を有する2つの異なるホモポリマーが互いに結合され、例えばディールス・アルダー反応、ディールス・アルダー反応に類似の反応または別の環化付加反応により互いに結合される。この反応の目的は、熱的に安定した、直鎖状および場合により高分子量のポリマー鎖を形成させることである。例えば、Inglis他(Macromolecules 2010,43,第33−36頁)には、この目的のために、ATRPにより製造されたポリマーから得られる、シクロペンタジエニル末端基を有するポリマーが記載されている。このシクロペンタジエン基は、ヘテロ・ディールス・アルダー反応において、電子貧有のジチオエステルを末端基として有するポリマーと極めて急速に反応しうる(Inglis et al.Angew.Chem.Int.Ed.48,第2411−2414頁)。
【0011】
ヘテロ・ディールス・アルダー反応を介してジヒドロチオピラン基を有する一官能性ポリマーと結合させるための一官能性RAFTポリマーの使用は、Sinnwell他(Chem.Comm.2008,2052−2054)中に見出せる。この方法でABジブロックコポリマーを実現させることができる。RAFT重合後に存在するジチオエステル基およびジエニル末端基を有するABブロックコポリマーを合成させるための前記ヘテロ・ディールス・アルダー結合の高速型の変法は、Inglis他(Angew.Chem.Int.Ed.2009,第2411−14頁)およびInglis他(Macromol.Rapd Commun.2009,30,第1792−98頁)中に記載されている。マルチアーム型星形ポリマーの類似の製造は、Sinnwell他(J.Pol.Sei.:Part A;Pol.Chem.2009,47,第2207−13頁)中に見出せる。
【0012】
米国特許第6933361号明細書中には、簡単に修復されうる透明成形品を製造するための系が記載されている。この系は、ディールス・アルダー反応により高密度の網状組織に重合される、2つの多官能性モノマーからなる。この系中の1個の官能基は、マレイン酸イミドであり、他の官能基は、フランである。このような高密度の網状組織の熱的なスイッチングは、この網状組織の修復のために使用される。架橋は、100℃を上廻る温度で行なわれる。部分的な逆反応は、なおいっそう高い温度で行なわれる。
【0013】
Syrett他(Polym.Chem.2010,DOI:10.1039/b9py00316a)には、油中の流れ調整剤としての使用のための星形ポリマーが記載されている。この星形ポリマーは、可逆的なディールス・アルダー反応により制御可能な自己修復特性を有する。この目的のために、一官能性ポリメタクリレート鎖は、鎖の中心部で、使用される開始剤の断片として可逆的なディールス・アルダー反応で使用されうる1個の基を有するポリメタクリレートと結合される。
【0014】
課題
本発明の課題は、異なる用途で幅広い配合物スペクトルで使用しうる粘度を制御するための新規の可逆的に使用しうる方法を提供することである。
【0015】
殊に、多数回、即ち少なくとも5回性質の実質的な損失なしにスイッチングすることができる、可逆的に使用可能な方法を提供するという課題が課された。
【0016】
更に、低い温度で極めて急速に活性化することができ、および配合物および場合により被覆された基体に対して無害である条件下で再び不活性化することができる、可逆的に使用可能な方法を提供するという課題が課された。
【0017】
明示されていない更なる課題は、以下の発明の詳細な説明、特許請求の範囲および実施例の全体の脈絡から明らかである。
【0018】
課題の解決方法
この課題は、配合物成分、例えば結合剤とは無関係に種々のポリマーに使用することができる、新しい種類の可逆的にスイッチング可能な機構を開発することによって解決された。この機構で新しい可逆的にスイッチング可能な配合物が提供される。意外なことに、課された課題は、ディールス・アルダー反応またはヘテロ・ディールス・アルダー反応によりスイッチング可能である配合物によって解決されうることが見い出された。本発明によるスイッチングは、ポリマーおよび/またはオリゴマーおよび/または低分子量化合物のカップリングによって行なわれ、例えば第1の低い温度のような第1の条件下で高分子量のポリマー鎖を形成する。更に、本発明によるスイッチングは、例えば第2の、比較的高い温度のような第2の条件下での前記カップリングの復元を含む。 本発明による配合物は、2個の親ジエン体二重結合(dienophilic double bonds)を有する成分Aおよび2個のジエン官能基を有する成分Bを含有する。付加的に、成分AまたはBの少なくとも1つは、ポリマーとして存在しなければならない。
【0019】
成分AおよびBがそれぞれポリマーである場合には、これらのポリマーは、異なるポリマーであってよいか、または官能基に関連してのみ異なる、同じポリマーであってよい。
【0020】
前記ポリマーは、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリスチレン、アクリレートとメタクリレートおよび/またはスチレンとからなるコポリマー、ポリアクリルニトリル、ポリエーテル、ポリエステル、ポリ乳酸、ポリアミド、ポリエステルアミド、ポリウレタン、ポリカーボネート、非晶質または部分結晶性のポリ−α−オレフィン、EPDM、EPM、水素化された、または水素化されていないポリブタジエン、ABS、SBR、ポリシロキサンおよび/または前記ポリマーのブロックコポリマー、櫛形コポリマーおよび/または星形コポリマーであることができる。この星形ポリマーは、30個を上廻るアームを有することができる。アームの組成は、変動することができ、および種々のポリマーから構成することができる。また、前記アームは、その上、分枝鎖を有していてよい。櫛形ポリマーは、ブロック構造を有することができ、ならびに変動しうる櫛形アームを有することができる。
【0021】
下記で使用される(メタ)アクリレートの表示法は、アクリル酸および/またはメタクリル酸のアルキルエステルを表わす。
【0022】
本発明の1つの特殊な視点は、配合物が室温でスイッチング可能であり、およびカップリングが比較的高い温度で少なくとも50%の程度再び引き離されることにある。殊に、配合物は、室温で高分子量のポリマー鎖の形で存在する。この高分子量のポリマー鎖は、比較的高い温度で少なくとも50%が再び分解し、反応体および/または比較的短い鎖セグメントに変わる。それによって、例えば結合部を引き離すかまたは成形材料を後加工するための熱可塑的加工性が復元される。
【0023】
好ましくは、親ジエン体は、炭素−硫黄二重結合を有する化合物であり、それによって、好ましい架橋反応は、ヘテロ・ディールス・アルダー反応である。特に好ましくは、親ジエン体は、ジチオエステルである。殊に、好ましくは、親ジエン体は、構造式
【化1】

〔式中、Zは、強電子求引性基であり、Rmは、有利に分枝鎖状または直鎖状のアルキル系二価アルコール、芳香族に価アルコール、またはアルキル系二価アルコールと芳香族に価アルコールとの組合せ、二価ハロゲン化化合物、二価カルボン酸または二価アミンをベースとする、二価有機基である〕を有する化合物である。それとは別に、Rmは、ポリマーでもある。これに関連して、電子求引性基は、有利に2個の鎖端上に存在する。
【0024】
1つの好ましい実施態様において、基Zは、2−ピリジル基、ホスホリル基またはスルホニル基である。更に、シアノ基またはトリフルオロメチル基ならびにC=S二重結合の電子密度を極めて強く減少させ、ひいては急速なディールス・アルダー反応を可能にする、全ての別の基Zがこれに該当する。
【0025】
意外なことに、前記系は、既に室温で触媒の場合による添加下に極めて急速にカップリングすることが見い出された。同様に、意外なことに、前記の生じる長鎖状熱可塑性樹脂は、既に例えば80℃を上廻る極めて低い温度で再び簡単に殆ど完全に短鎖状熱可塑性樹脂に帰因しうることが見い出された。更に、極めて意外なことに、そのようなわけで長鎖状熱可塑性樹脂への再度のカップリングは、双方の成分および/または触媒の一方のさらなる添加なしに、例えば純粋な冷却によって再び行なうことができることが見い出された。更に、カップリングおよび短鎖状熱可塑性樹脂への逆変換の前記サイクルを少なくとも3回、有利に少なくとも5回、配合物の性質の大きな損失なしに実施することができるという特に驚異的な効果が存在する。
【0026】
1つの好ましい実施態様において、成分Bは、原子移動ラジカル重合(ATRP)により製造された二官能性ポリマーである。これに関連して、ジエン基での官能化は、ポリマー類似の置換によって行なわれるか、または中断中に実施される、末位のハロゲン原子の置換によって行なわれる。前記の置換は、例えばジエン基で官能化されたメルカプタンを添加することによって行なうことができる。
【0027】
同じ好ましい実施態様において、2個のジチオエステル基を有し、および上記の実施態様に相応して、C=S二重結合の電子密度を強く減少させる基Zを有する低分子量の有機化合物を成分Aとして使用することができる。
【0028】
本発明のもう1つの視点は、可逆的に架橋する方法である。前記方法を実施する場合、少なくとも2つの異なる成分AおよびBからなる配合物は、室温でディールス・アルダー反応またはヘテロ・ディールス・アルダー反応によりカップリングされる。第2の処理工程において、比較的高い温度で結合部の少なくとも50%、有利に少なくとも90%、特に有利に少なくとも99%は、逆ディールス・アルダー反応または逆ヘテロ・ディールス・アルダー反応により再び引き離される。
【0029】
長鎖状熱可塑性樹脂の形成により、配合物の粘度は、インタールーピングによって誘発された、デューロマーまたはエラストマーの性質を有する物理的網状組織になるまで増加する。これに関連して、本発明の機構の利点は、前記の硬化において可逆的にスイッチング可能配合物が公知技術水準の系とは異なり同時に熱可塑的性質を維持することにある。更に、可逆的に硬化するが、しかし、架橋しない系の利点は、脱カップリングまたは"スイッチングバック(switching back)"において、ゲル粒子が脱網状組織化されなかった成分の形のままであることである。従って、2つの異なる熱可塑的状態間の可逆的なスイッチングのための本発明による方法にとって、可逆的な架橋系の場合よりも高い数の可能なサイクルが期待される。
【0030】
"配合物"の表現およびそれに関連した全ての百分率の記載は、この場合成分AおよびBにだけ関連する。例えば、塗料または接着剤配合物中に添加されてよい他の配合物成分は、この考察から無視される。更に、"配合物"の表現については、本明細書中の範囲内で専ら成分AおよびBならびに場合による架橋触媒が記述される。これに対して、"組成"の表現には、配合物と共に付加的に添加された成分が含まれる。この付加的な成分は、それぞれの用途のために特に選択された添加剤、例えば充填剤、顔料、添加物、相容化剤、共結合剤、可塑剤、衝撃変性剤、増粘剤、消泡剤、分散添加剤、レオロジー変性剤、付着助剤、耐引掻性添加剤、触媒または安定化剤であってよい。
【0031】
既述された配合物に相応して、前記方法で最初に成分AおよびB、ならびに場合により他の添加剤が一緒にもたらされる。成分Aおよび/またはBは、さらに上記にリストアップした、少なくとも1つのポリマーである。
【0032】
カップリング反応は、室温で10分間以内、有利に5分間以内、特に有利に2分間以内、殊に有利に1分間以内で行なうことができる。カップリングを促進するために、成分AとBとの混合後に、触媒が添加されてよい。この触媒は、一般的に強酸、例えばトリフルオロ酢酸または硫酸または強ルイス酸、例えば三フッ化ホウ素、二塩化亜鉛、二塩化チタン−ジイソプロピラートまたは三塩化アルミニウムである。
【0033】
他の選択可能な実施態様によれば、カップリングは、触媒なしでも、例えば熱的に促進させることができる。これに関連して、活性化温度は、逆(ヘテロ)・ディールス・アルダー反応に必要とされる温度を下廻る。
【0034】
更に、他の選択可能な実施態様によれば、配合物は、カップリング反応の活性化とは無関係に、逆ディールス・アルダー反応または逆ヘテロ・ディールス・アルダー反応の活性化温度を低下させる他の触媒を含有する。この触媒は、例えば鉄または鉄化合物であってよい。
【0035】
本発明による配合物または本発明による方法は、多種多様な使用分野で使用されてよい。次のリストは、若干の好ましい使用分野を例示的に示すが、これに関連して、本発明は、如何なる形でも制限されるものではない。このような好ましい使用分野は、接着剤、シーラント、成形材料、ワニス、ペイント、塗料、複合材料、インキまたは油添加剤、例えば流れ調整剤である。このインキは、例えば熱的に塗布され、および基体上で硬化する組成物である。導電性のオリゴマーを使用するかまたは一般的に導電性を形成させるための添加剤を使用する場合には、例えばバブルジェット法で加工されてよい導電性のインキが得られる。
【0036】
使用分野のワニス、塗料およびペイントからの例は、例えば多孔質材料を低粘稠な状態で特に良好に含浸または湿潤させることができ、および続くカップリング反応により高度に粘着性の材料をもたらす組成物である。
【0037】
類似した特性は、高い粘着性を有するべきであるが、接着すべき材料の表面を簡単に湿潤させるべき接着剤には重要である。接着剤の結合領域内でのさらなる用途は、例えば一時的にのみ必要とされ、その後に再び引き離さなければなければならない接合面であり、例えばこの接合面は、種々の生産プロセス、例えば自動車の組立または機械の製造において現れうる。
【0038】
別の考えられ得る用途は、建築部材の接着であり、この建築部材は、全製品の寿命を通して見て交換の高い可能性を有し、したがってできるだけ簡単に残滓なしに再び除去可能でなければならない。このような用途の1つの例は、自動車の風防ガラスの接着である。更に、例は、エレクトロニクス、情報産業、建築工業または家具工業の分野での製造プロセスである。本発明による低温での脱カップリングにとってさらに興味深い用途は、医療技術の範囲内、殊に整形外科医療技術の範囲内にありうる。
【0039】
接着剤またはシーラントの1つの特殊な例は、加熱時に、例えばマイクロ波中で自動的に引き離しうるかまたは開かれる食品用包装品での使用である。
【0040】
本明細書中に記載された架橋性材料および解架橋性材料のためのラピッドプロトタイピング分野における用途の例は、FDM(Fused Deposition Modeling熱溶融樹脂法)または低粘稠な溶融液を用いるインキジェット法による3Dプリンティングの範囲内に見出せる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】上記の平行平板粘度測定法による粘度と温度との関係を示す略図。
【実施例】
【0042】

ポリマーの数平均分子量Mnおよび多分散指数PDIをGPC(gel permeation chromatographyゲル浸透クロマトグラフィー)により測定した。この測定をPolymer Laboratories Inc.社のPL−GPC 50 Plusを用いて30℃でテトラヒドロフラン(THF)中で一連のポリスチレン標準に対して実施した(約200〜1・106g/mol)。
【0043】
NMR分析をBruker AM 400MHz分光計で実施した。
【0044】
レオロジー測定をISO6721 第10部、温度勾配=2K/分による平行平板粘度測定法(plate−plate measurements)として行なった。充填された測定点は、−5℃〜+150℃の測定範囲に相応し、充填されていない測定点は、100℃〜200℃の測定範囲を有する測定法に相応する。
【0045】
実施例1:ビス(ブロモ)ポリメチルメタクリレートの合成
メチルメタクリレート50当量(MMA)、1,2−ビス(ブロモイソブチリルオキシ)エタン1当量、臭化銅(I)0.105当量、臭化銅(II)0.0125当量および2,2’−ビピリジン0.25当量を、電磁攪拌機、窒素供給管および還流冷却器を備えた1 lの三口フラスコ中に予め装入する。アセトンを、50%(容量)の溶液500mlが存在するように前記混合物に添加する。存在する酸素を、40分間窒素を通過させることによって除去する。更に、この混合物を窒素の下で油浴中で50℃に加熱する。重合を氷浴中での冷却および空気酸素の供給によって2時間後に停止させる。銅触媒を、中性の酸化アルミニウムで充填された、短いカラム上での濾過により除去する。ブロムにより停止されたポリ(メチルメタクリレート)(PMMA−Br2)を2回冷たいヘキサン中で沈殿させ、そうこうする間にこのポリ(メチルメタクリレート)は、僅かなアセトン中に溶解する。分子量をGPC(THF)により測定する:Mn=3500g・mol-1、PDI=1.2。
【0046】
実施例2:ビス(シクロペンタジエニル)ポリメチルメタクリレートの合成:
第1段階からのPMMA−Br21当量、ヨウ化ナトリウム12当量、トリブチルホスファン4当量およびニッケロセン8当量を、電磁攪拌機、還流冷却器および滴下漏斗を備えた50mlの三口フラスコ中で窒素の下で無水テトラヒドロフラン(THF)中に溶解し、したがってポリマーに対して0.1モルの溶液25mlが形成される。この溶液を室温で12時間攪拌し、引続きこの反応溶液をカラムクロマトグラフィーにより、塩基性の酸化アルミニウムで充填された、短いカラム上で精製する。シクロペンタジエニルにより停止されたポリ(メチルメタクリレート)(PMMA−CP2)を2回冷たいヘキサン中で沈殿させる。シクロペンタジエニル基を用いて、95%を上廻り行なわれる2回の官能化をESI−MSにより検出する。m/z値は、それぞれ実施例1からの生成物の測定と比較して約29.6g・mol-1だけ少ない。
【0047】
実施例3:Br官能性ポリ(n−ブチルアクリレート)の合成
n−ブチルメタクリレート80当量(MMA)、1,2−ビス(ブロモイソブチリルオキシ)エタン1当量、臭化銅(I)0.105当量、臭化銅(II)0.0125当量および2,2’−ビピリジン0.25当量を、電磁攪拌機、窒素供給管および還流冷却器を備えた1 lの三口フラスコ中に予め装入する。アセトンを、50容量%の溶液500mlが存在するように前記混合物に添加する。存在する酸素を、40分間窒素を通過させることによって除去する。更に、この混合物を窒素の下で油浴中で60℃に加熱する。重合を室温への冷却および空気酸素の供給によって3時間後に停止させる。銅触媒を、中性の酸化アルミニウムで充填された、短いカラム上での濾過により除去する。ブロムにより停止されたポリ(n−ブチルメタクリレート)を溶剤の蒸発によって取得する。分子量をGPC(THF)により測定する: Mn=12000g・mol-1, PDI=1.3。
【0048】
実施例4:Br官能性ポリ(イソボルニルメタクリレート−コ−ブチルアクリレート)の合成
イソボルニルアクリレート32当量(iBoMA)、n−ブチルアクリレート25当量(nBA)、1,2−ビス(ブロモイソブチリルオキシ)エタン1当量、臭化銅(I)0.105当量、臭化銅(II)0.0125当量および2,2’−ビピリジン0.25当量を、電磁攪拌機、窒素供給管および還流冷却器を備えた1 lの三口フラスコ中に予め装入する。アセトンを、50容量%の溶液500mlが存在するように前記混合物に添加する。存在する酸素を、40分間窒素を通過させることによって除去する。更に、この混合物を窒素の下で油浴中で60℃に加熱する。重合を室温への冷却および空気酸素の供給によって3時間後に停止させる。銅触媒を、中性の酸化アルミニウムで充填された、短いカラム上での濾過により除去する。ブロムにより停止されたコポリマーを溶剤の蒸発によって取得する。分子量をGPC(THF)により測定する:Mn=10000g・mol-1、PDI=1.3。
【0049】
実施例5:ビス(シクロペンタジエニル)−ポリ(n−ブチルアクリレート)の合成
実施例3からのポリマー1当量、ヨウ化ナトリウム6当量、トリブチルホスファン2当量およびニッケロセン2当量を、電磁攪拌機、還流冷却器および滴下漏斗を備えた50mlの三口フラスコ中で窒素の下でアセトン中に溶解し、したがってポリマーに対して0.1モルの溶液25mlが形成される。この溶液を室温で12時間攪拌し、引続きこの反応溶液をカラムクロマトグラフィーにより、塩基性の酸化アルミニウムで充填された、短いカラム上で精製する。シクロペンタジエニルで停止されたポリマーを2回冷たいエタノール中で水の添加によって沈殿させる。90%を上廻るBr末端基からCp末端基への反応を核磁気共鳴分光分析法により検出する。
【0050】
実施例6:ビス(シクロペンタジエニル)−ポリ(イソボルニルメタクリレート−コ−ブチルアクリレート)の合成
実施例4からのポリマーの反応を実施例5と同様にして行なう。この反応は、同様に90%を上廻り行なわれた。
【0051】
実施例7:燐−ジチオエステル(PDI)の合成
【化2】

【0052】
無水THF(20ml)中のジエチルホスファイト(5.3ml、41.2mmol)の溶液を、THF(40ml)中の水素化ナトリウム(1.64g、41.2mmol)の懸濁液に還流冷却器および電磁攪拌機を備えた二口フラスコ中で徐々に窒素雰囲気下で滴加する。
【0053】
水素の発生が終結した後、この混合物を10分間還流する。室温への冷却後、反応混合物をさらにアセトンおよび液体窒素からなる冷却浴中で−20℃で冷却し、その間に二硫化炭素(12.26ml、203.6mmol)を滴下法で添加した。添加の終結後、この混合物を30分間に亘って室温に昇温させることによって融解する。その後、この混合物に無水THF(40ml)中の1,4−ビス(ブロモメチルベンゼン)の溶液(5.44g)を滴下法で室温で添加し、さらに3時間攪拌する。引続き、ヘキサン200mlを添加し、この混合物を濾過する。紫色の濾液を捕集し、溶剤を真空下で除去する。生成物をカラムクロマトグラフィーによってシリカ上で溶離剤としてのヘキサンおよび酢酸エステルを用いて精製する。第2の紫色の画分を生成物画分として捕集し、溶剤を除去する。純度は、核磁気共鳴分光分析法によれば、95%を上廻る。
【0054】
1H NMR(250MHz,CDCl3,25℃):δ=7.20(s,4H),4.40(s,4H),4.30−4.11(m,8H),1.27(t,J=7Hz,12H)。
【0055】
実施例8:ジチオエステルリンカー(PDI)との反応
攪拌しながら、実施例7からのジチオエステル化合物の一部分と混合した、実施例5からのCp官能化されたポリマーの一部分の50%溶液を製造し、したがって溶液20mlを得る。この混合物を室温で1時間攪拌し、その後に溶剤を真空下に除去する。
【0056】
実施例9:BMIリンカーとの反応
実施例6からのポリマーを、ジクロロメタン中のビスマレインイミドの一部分を混合した、Cp官能化されたポリマーの一部分の50%の溶液を攪拌することによって製造し、したがって溶液20mlを得る。この混合物にZnCl2の一部分を混合し、この混合物を室温で2時間攪拌し、その後に溶剤を真空下に除去する。
【0057】
スイッチング可能な粘度の効果は、表示された温度範囲に亘って材料の粘度の測定曲線に確認することができる。実施例5および6の測定曲線は、実施例8および9の結合されていない低分子量のポリマーを表わす。実施例8および9における材料の成果を収めた鎖結合は、低い温度で測定曲線の開始時に10倍高められた粘度から明らかである。この粘度差は、逆HDA(ヘテロ・ディールス・アルダー)反応が起こる温度で開始して失われ、すなわち形成された鎖結合は、破壊される。この点から開始して、ポリマーが実施例5および6の出発材料の粘度に到達するまで、ポリマーの粘度は不均衡に減少する。
【符号の説明】
【0058】
(1)実施例5に記載の材料、(2)実施例8に記載の材料、(3)実施例6に記載の材料、(4)実施例9に記載の材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
室温で可逆的にスイッチング可能な配合物において、
この配合物がディールス・アルダー反応またはヘテロ・ディールス・アルダー反応によりスイッチング可能であり、
この配合物が2個の親ジエン体二重結合を有する成分Aを含有し、
この配合物が2個のジエン官能基を有する成分Bを含有し、
成分AまたはBの少なくとも1つが、ポリマーとして存在し、
および親ジエン体が炭素−硫黄二重結合を有する化合物であることを特徴とする、室温で可逆的にスイッチング可能な配合物。
【請求項2】
親ジエン体がジチオエステルである、請求項1記載の配合物。
【請求項3】
親ジエン体が構造式
【化1】

〔式中、Zは、電子求引性基であり、Rmは、多価有機基であるかまたはポリマーである〕を有する化合物である、請求項2記載の配合物。
【請求項4】
基Zが2−ピリジル基である、請求項3記載の配合物。
【請求項5】
成分AおよびBがそれぞれポリマーであり、前記ポリマーが同一かまたは異なるポリマーであってよい、請求項1記載の配合物。
【請求項6】
前記ポリマーが、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリスチレン、アクリレートとメタクリレートおよび/またはスチレンとからなるコポリマー、ポリアクリルニトリル、ポリエーテル、ポリエステル、ポリ乳酸、ポリアミド、ポリエステルアミド、ポリウレタン、ポリカーボネート、非晶質または部分結晶性のポリ−α−オレフィン、EPDM、EPM、水素化された、または水素化されていないポリブタジエン、ABS、SBR、ポリシロキサンおよび/または前記ポリマーのブロックコポリマー、櫛形コポリマーおよび/または星形コポリマーである、請求項1から5までのいずれか1項に記載の配合物。
【請求項7】
成分BがATRPにより製造された二官能性ポリマーであり、およびジエン末端基での官能化が末位のハロゲン原子の置換によって行なわれた、請求項1から6までのいずれか1項に記載の配合物。
【請求項8】
成分Aが請求項3記載の2個のジチオエステル基を有する低分子量の有機化合物であり、および基Zが2−ピリジル基、ホスホリル基またはスルホニル基である、請求項1から7までのいずれか1項に記載の配合物。
【請求項9】
可逆的なスイッチング法において、
少なくとも2つの異なる成分AおよびBからなる配合物を、ディールス・アルダー反応またはヘテロ・ディールス・アルダー反応により、室温で分子量の増加を伴ないながらカップリングし、比較的高い温度でカップリングの少なくとも50%を逆ディールス・アルダー反応または逆ヘテロ・ディールス・アルダー反応により再び引き離し、および成分Aは、炭素−硫黄二重結合を有する化合物であることを特徴とする、可逆的なスイッチング法。
【請求項10】
成分Aおよび/またはBは、請求項5または6記載のポリマーである、請求項9記載の方法。
【請求項11】
分子量の増加は、成分AとBとの混合後に2分間以内に起こる、請求項9または10記載の方法。
【請求項12】
分子量の増加は、成分AおよびBと触媒との混合後に2分間以内に起こる、請求項9または10記載の方法。
【請求項13】
接着剤、シーラント、成形材料、ワニス、ペイント、塗料、油添加剤、インキまたは複合材料での、請求項1から8までのいずれか1項に記載の配合物の使用。

【図1】
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【公表番号】特表2013−519763(P2013−519763A)
【公表日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−553235(P2012−553235)
【出願日】平成23年1月4日(2011.1.4)
【国際出願番号】PCT/EP2011/050041
【国際公開番号】WO2011/101175
【国際公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.バブルジェット
【出願人】(390009128)エボニック レーム ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (293)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Roehm GmbH
【住所又は居所原語表記】Kirschenallee, D−64293 Darmstadt, Germany
【Fターム(参考)】