説明

制御弁

【課題】作動流体が流れる流体通路を切り替える制御弁に嵩むコストをトータル的に抑制する。
【解決手段】制御弁1は、作動流体を順方向または逆方向に流通させる共用の内部通路が形成されたボディ104と、内部通路に設けられた弁部の開度を電気的に制御するためのモータユニット102と、モータユニット102の軸線方向の駆動力を弁部に伝達する弁作動体136と、モータユニット102による弁作動体136の軸線方向への駆動量に対して、作動流体が順方向に流れる場合と逆方向に流れる場合とで弁部の大きさが異なるように切り替える作動切替機構と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は制御弁に関し、特に作動流体が流れる流体通路の切り替えに好適な制御弁に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、内燃機関を搭載した車両においてはエンジンの燃焼効率が向上したこともあり、熱源として利用してきた冷却水が暖房に必要な温度にまで上昇し難くなっている。一方、内燃機関と電動機を併用したハイブリッド車両においては内燃機関の稼働率が低いため、そのような冷却水の利用がさらに難しい。電気自動車に至っては内燃機関による熱源そのものがない。このため、冷房のみならず暖房にも冷媒を用いたサイクル運転を行い、車室内を除湿暖房可能なヒートポンプ式の車両用冷暖房装置が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
このような車両用冷暖房装置は、圧縮機、室外熱交換器、蒸発器、室内熱交換器等を含む冷凍サイクルを有し、暖房運転時と冷房運転時とで室外熱交換器の機能が切り替えられる。暖房運転時においては室外熱交換器が蒸発器として機能する。その際、冷凍サイクルを冷媒が循環する過程で室内熱交換器が放熱し、その熱により車室内の空気が加熱される。一方、冷房運転時においては室外熱交換器が凝縮器として機能する。その際、室外熱交換器にて凝縮された冷媒が蒸発器にて蒸発し、その蒸発潜熱により車室内の空気が冷却される。その際、除湿も行われる。そして、このように暖房運転時と冷房運転時とで装置の機能を切り替えるために、冷凍サイクルには複数の冷媒循環通路が設けられ、各冷媒循環通路の冷媒の流れを切り替えるための種々の制御弁が設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−240266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、このような車両用冷暖房装置において制御弁が数多く用いられると、当然にコストが嵩み、また設置スペース上の問題も生じる。このため、制御弁のトータルの数や部品コストをできる限り少なくするのが望ましい。一方、そのように制御弁の数やコストを抑えつつも、その各種機能を確保する必要がある。
【0006】
本発明の目的は、作動流体が流れる流体通路の切り替える制御弁に嵩むコストをトータル的に抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の制御弁は、作動流体を順方向または逆方向に流通させる共用の内部通路が形成されたボディと、内部通路に設けられた弁部の開度を電気的に制御するためのアクチュエータと、アクチュエータの軸線方向の駆動力を弁部に伝達する弁作動体と、アクチュエータによる弁作動体の軸線方向への駆動量に対して、作動流体が順方向に流れる場合と逆方向に流れる場合とで弁部の大きさが異なるように切り替える作動切替機構と、を備える。
【0008】
この態様によると、ボディに作動流体の双方向の流れを許容する内部通路が形成される。そして、作動流体の流れが順方向から逆方向または逆方向から順方向へ変化することにより、作動切替機構が動作して弁部の大きさを切り替える。すなわち、弁部の順方向および逆方向のいずれの開度も弁作動体の駆動量により調整されるところ、同じ駆動量に対して弁部の大きさが異なるようになる。この態様の制御弁は、流れ方向により流量を異ならせるシステムに好適であり、弁機能の数に対してボディやアクチュエータの数を抑えることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、作動流体が流れる流体通路を切り替える制御弁に嵩むコストをトータル的に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1実施形態に係る制御弁の構成および動作を表す断面図である。
【図2】第1実施形態に係る制御弁の構成および動作を表す断面図である。
【図3】第1実施形態に係る制御弁の構成および動作を表す断面図である。
【図4】第1実施形態に係る制御弁の構成および動作を表す断面図である。
【図5】制御弁による比例制御を示す図である。
【図6】第2実施形態に係る制御弁の構成および動作を表す断面図である。
【図7】第2実施形態に係る制御弁の構成および動作を表す断面図である。
【図8】第2実施形態に係る制御弁の構成および動作を表す断面図である。
【図9】第2実施形態に係る制御弁の構成および動作を表す断面図である。
【図10】第2実施形態に係る制御弁の構成および動作を表す断面図である。
【図11】制御弁による比例制御を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。
[第1実施形態]
図1〜図4は、第1実施形態に係る制御弁の構成および動作を表す断面図である。なお、本実施形態の制御弁は、例えば電気自動車に搭載されるヒートポンプ式の冷暖房装置への適用を想定して構成されたものである。
【0012】
すなわち、車両用冷暖房装置には、圧縮機、室内凝縮器、室外熱交換器、蒸発器およびアキュムレータ等を配管にて接続した冷凍サイクル(冷媒循環回路)が設けられ、冷媒が冷凍サイクル内を状態変化しながら循環する過程でなされる熱交換により車室内の空調が行われる。冷媒循環回路には冷暖房を適切に制御するための各種制御弁が配設されており、制御弁1はその一つを構成する。制御弁1は、例えば複数の冷媒循環通路の共用通路に設けられ、その冷媒循環通路が切り替えられることにより冷媒の流れ方向が切り替わるシステムに適用される。
【0013】
図1に示すように、制御弁1は、ステッピングモータ駆動式の電動弁として構成され、弁本体101とモータユニット102とを組み付けて構成されている。弁本体101は、有底筒状のボディ104に大口径の比例弁51(「第1弁」を構成する)と、小口径の比例弁52(「第2弁」を構成する)とを同軸状に収容して構成される。比例弁51および比例弁52は、1つのモータユニット102により開閉駆動される。
【0014】
ボディ104の一方の側部には導入出ポート110が設けられ、他方の側部には導入出ポート112が設けられている。これらの導入出ポート110,112は、その一方が冷媒を導入する導入ポートとして機能するときに他方が冷媒を導出する導出ポートとして機能する。すなわち、導入出ポート110と導入出ポート112とをつなぐ内部通路は、冷媒を導入出ポート110から導入出ポート112へ向かう順方向、または導入出ポート112から導入出ポート110へ向かう逆方向に流通させる共用の通路となっている。
【0015】
ボディ104の上半部には、有底円筒状の区画部材120が配設されている。区画部材120は、その上底部が弁本体101の内部とモータユニット102の内部とを区画する。区画部材120の底部中央には、円ボス状の軸受部122が設けられている。軸受部122の内周面には雌ねじ部が設けられ、外周面は滑り軸受として機能する。区画部材120は、下方に延出する円筒状のガイド部124を有し、そのガイド部124の内周面によりガイド孔126が形成されている。ボディ104の下部には弁孔128が設けられ、その上端開口端縁により弁座130が形成されている。
【0016】
ボディ104の内方には、弁体132、弁体134、弁作動体136が同軸状に配設されている。弁体132は、大径の本体に弁座130に着脱可能な環状の弾性体(本実施形態ではゴム)を有する。弁体132の下端部には弁孔128に摺動しつつ支持される複数の脚部(同図には1つのみ表示)が延設されている。弁体132は、弁孔128に接離して比例弁51の開度を調整する。
【0017】
弁体132の内方には、小径の弁孔138が設けられ、その上端開口端縁により弁座140が形成されている。また、弁体132には上方に延出する円筒状のガイド部142を有し、そのガイド部142の内周面によりガイド孔144が形成されている。弁体132と区画部材120との間には、弁体132を閉弁方向に付勢するスプリング146(「付勢部材」として機能する)が介装されている。
【0018】
弁体134は段付円筒状をなし、いわゆるニードル弁体として構成されている。弁体134の尖った先端部が弁孔138に挿抜されて比例弁52を開閉する。弁体134は、弁座140に着脱可能な環状の弾性体(本実施形態ではゴム)を有し、弁孔138に接離して比例弁52の開度を調整する。弁体134の中間部には半径方向外向きに突出したガイド部148が設けられ、ガイド孔144に摺動可能に支持されている。弁体134の上端部は弁作動体136に連結されている。
【0019】
弁体132と区画部材120との間には背圧伝達部材150が配設されている。背圧伝達部材150は段付円筒状をなし、ガイド孔126に摺動可能に内挿される一方、弁体134の上半部を貫通させている。背圧伝達部材150の外周面および内周面には、シール部材としてのOリング152,154がそれぞれ嵌着されている。弁体134の上半部はOリング154に摺動可能に支持されている。すなわち、弁体134は、Oリング154およびガイド孔144に摺動しつつ軸線方向に安定に動作することができる。
【0020】
背圧伝達部材150と区画部材120との間には背圧室156が形成される。また、弁体134を軸線方向に貫通する連通路158が形成されている。連通路158は、導入出ポート110に連通している。このため、背圧室156には常に、導入出ポート110から導入または導出される圧力P1が満たされる。
【0021】
本実施形態においては、弁孔128の有効径Aとガイド孔126の有効径Bとが等しく設定されている。また、弁孔138の有効径Cと背圧伝達部材150の内側摺動部の有効径D(Oリング154の内径)とが等しく設定されている。このため、弁体132および弁体134に作用する冷媒圧力の影響がそれぞれキャンセル可能となっている。この背圧キャンセル構造の機能の詳細については後述する。
【0022】
弁作動体136は、段付円筒状をなし、その外周部に雄ねじ部が形成されている。雄ねじ部は、軸受部122の雌ねじ部に螺合する。弁作動体136の上端部には半径方向外向きに延出する複数(本実施形態では4つ)の脚部160が設けられており、モータユニット102のロータに嵌合している。
【0023】
弁作動体136は、モータユニット102の回転駆動力を受けて回転し、その回転力を並進力に変換する。すなわち、弁作動体136が回転すると、ねじ機構(「作動変換機構」として機能する)によって弁作動体136が軸線方向に変位し、各弁体を開閉方向に駆動する。弁体134の上端部は弁作動体136の底部を貫通し、その先端部が外方に加締められて係止部162となり、その係止部162にて弁作動体136に係止されるように連結されている。
【0024】
なお、図示のように、弁作動体136の底部と係止部162との間には、所定量の相対変位を許容する遊びが形成されている。弁作動体136の上端部と係止部162との間には、弁体134を下方に付勢するスプリング164(「付勢部材」として機能する)が介装されている。すなわち、弁体134と弁作動体136とは、比例弁51および比例弁52の少なくとも一方が開弁状態であるときはスプリング164の付勢力により突っ張った状態で一体変位するが、比例弁51および比例弁52が共に閉弁状態になれば軸線方向に所定量相対変位可能となる。比例弁51の閉弁状態において弁作動体136が下方に動作して比例弁52が閉弁する際、弁体134が弁座140に着座すると、弁体134の下方への変位は規制される。このため、弁作動体136にはその閉弁時の反力が作用することになるが、スプリング164が縮むことによりその反力が緩和される。
【0025】
なお、スプリング164は、その荷重が弁体134とOリング154との間の摺動抵抗(弁体134の摺動力)よりも大きくなるように設定されている。それにより、弁作動体136と弁体134とが一体動作しているときにスプリング164が縮むことなく、比例弁52の弁開度を正確に制御できるようになっている。
【0026】
一方、モータユニット102は、ロータ172とステータ173とを含むステッピングモータとして構成されている。モータユニット102は、有底円筒状のスリーブ170の内方にロータ172を回転自在に支持するようにして構成されている。スリーブ170の外周には、励磁コイル171を収容したステータ173が設けられている。スリーブ170は、その下端開口部がボディ104に組み付けられており、ボディ104とともに制御弁1のボディを構成する。
【0027】
ロータ172は、円筒状に形成された回転軸174と、その回転軸174の外周に配設されたマグネット176を備える。本実施形態では、マグネット176はその円周方向に複数極(本実施形態では24極)に磁化(着磁)されている。回転軸174の内方にはモータユニット102のほぼ全長にわたる内部空間が形成されている。回転軸174の内周面の特定箇所には、軸線に平行に延びるガイド部178が設けられている。ガイド部178は、後述する回転ストッパと係合するための突部を形成するものであり、軸線に平行に延びる一つの突条により構成されている。
【0028】
回転軸174の下端部はやや縮径され、その内周面に軸線に平行に延びる4つのガイド部180が設けられている。ガイド部180は、軸線に平行に延びる一対の突条により構成され、回転軸174の内周面に90度おきに設けられている。この4つのガイド部180には、弁作動体136の4つの脚部160が嵌合し、ロータ172と弁作動体136とが一体に回転できるようになっている。ただし、弁作動体136は、ロータ172に対する回転方向の相対変位は規制されるものの、そのガイド部180にそった軸線方向の変位は許容される。すなわち、弁作動体136は、ロータ172とともに回転しつつ各弁体の開閉方向に駆動される。
【0029】
ロータ172の内方には、その軸線に沿って長尺状のシャフト182が配設されている。シャフト182は、その上端部がスリーブ170の底部中央に圧入されることにより片持ち状に固定され、ガイド部178に平行に内部空間に延在している。シャフト182は、弁作動体136と同一軸線上に配置されている。シャフト182には、そのほぼ全長にわたって延在する螺旋状のガイド部184が設けられている。ガイド部184は、コイル状の部材からなり、シャフト182の外面に嵌着されている。ガイド部184の上端部は折り返されて係止部186となっている。
【0030】
ガイド部184には、螺旋状の回転ストッパ188が回転可能に係合している。回転ストッパ188は、ガイド部184に係合する螺旋状の係合部190と、回転軸174に支持される動力伝達部192とを有する。係合部190は一巻きコイルの形状をなし、その下端部に半径方向外向きに延出する動力伝達部192が連設されている。動力伝達部192の先端部がガイド部178に係合している。すなわち、動力伝達部192は、ガイド部178の一つの突条に当接して係止される。このため、回転ストッパ188は、回転軸174により回転方向の相対変位は規制されるが、ガイド部178に摺動しつつその軸線方向の変位が許容される。
【0031】
すなわち、回転ストッパ188は、ロータ172と一体に回転し、その係合部190がガイド部184にそってガイドされることで、軸線方向に駆動される。ただし、回転ストッパ188の軸線方向の駆動範囲はガイド部178の両端に形成された係止部により規制される。回転ストッパ188が上方へ変位して係止部186に係止されると、その位置が上死点となる。回転ストッパ188が下方へ変位すると、その下死点にて係止される。
【0032】
ロータ172は、その上端部がスリーブ170に回転自在に支持され、下端部が軸受部122に回転自在に支持されている。具体的には、回転軸174の上端開口部を封止するように有底円筒状の端部部材194が設けられている。そして、その端部部材194の中央に設けられた円筒軸196の部分が、スリーブ170の底部に突設された円ボス部に支持されている。すなわち、軸受部122が一端側の軸受部となり、スリーブ170における円筒軸196との摺動部が他端側の軸受部となっている。なお、本実施形態ではこのように、スリーブ170の底部を軸受部としているが、シャフト182の端部を軸受部として構成してもよい。
【0033】
ステータ173は、例えば特開2000−152593号公報に記載された構成またはそれに類似した構成を有する。すなわち、ステータ173は、ロータ172をスリーブ170を介して周囲から包囲するように軸線方向に並設された複数相のヨーク175と、各相のヨーク175に画成される巻回部に巻回される励磁コイル171(171a〜171d)とを含む。この複数相のヨーク175は導電性金属材料からなるが、樹脂モールドにより一体化され、金属製のケース177に収容されている。
【0034】
各相のヨーク175は、一対のヨーク部材を組み合わせて構成される。すなわち、ヨーク部材175aとヨーク部材175bとを組み合わせて第1相のヨーク175が構成され、ヨーク部材175cとヨーク部材175dとを組み合わせて第2相のヨーク175が構成され、ヨーク部材175eとヨーク部材175fとを組み合わせて第3相のヨーク175が構成され、ヨーク部材175gとヨーク部材175hとを組み合わせて第4相のヨーク175が構成されている。第1相のヨーク175には励磁コイル171aが巻回され、第2相のヨーク175には励磁コイル171bが巻回され、第3相のヨーク175には励磁コイル171cが巻回され、第4相のヨーク175には励磁コイル171dが巻回されている。
【0035】
各相のヨーク175は、一対のヨーク部材が互いの極歯を交互に組み合わされるようにして構成される。すなわち、ヨーク部材は、円環状の本体の内周部に周方向に等間隔に設けられた複数の極歯を有する。各極歯は、ヨーク部材の内端部を軸線方向に櫛歯状に切り起こすようにして形成されている。
【0036】
そして、ヨーク175が二相一組となり、二組設けられている。すなわち、第1相のヨーク175と第2相のヨーク175が第1組を構成し、第3相のヨーク175と第4相のヨーク175が第2組を構成する。各組の二相のヨーク175は互いに逆位相となり、その各相のヨーク175に巻回される励磁コイル171は、互いに直列に且つ逆向きの磁界を発生させるように接続されている。また、隣接するヨーク175は、互いにそのヨーク部材の平坦面(極歯と反対側面)が対向するように配置されている。
【0037】
一方、第1組のヨーク175と第2組のヨーク175とは、互いに位相が90度ずれるように配設されている。第1組のヨーク175と第2組のヨーク175との間には所定間隔(本実施形態では1mm)の間隙179が形成され、その間隙179には樹脂材が満たされている。このため、第1組のヨーク175と第2組のヨーク175の対向部に互いに逆向きの磁界が形成される場合であっても、相互の磁気干渉が低減される。また、二相一組のヨーク175を複数組設けたため、軸線方向の比較的長い範囲にわたって磁力を均一化することができ、ロータ172を高速化しても高精度な回転制御が実現される。
【0038】
以上のように構成された制御弁1は、モータユニット102の駆動制御によってその弁開度を調整可能なステッピングモータ作動式の制御弁として機能する。図示しない制御部は、設定開度に応じたステッピングモータの駆動ステップ数を演算し、励磁コイル171に駆動電流(駆動パルス)を供給する。それによりロータ172が回転し、一方で弁作動体136が回転駆動されて比例弁51,52の開閉状態および開度が調整される。
【0039】
図1は、冷媒の流れが順方向のときに比例弁51,52が共に閉弁状態となる場合を示している。すなわち、冷媒の流れが導入出ポート110から導入出ポート112へ向かう方向である場合に、図示のように弁作動体136が下死点となる位置に駆動されると、弁体134が弁座140に着座して比例弁52が閉弁状態になると共に、弁体132が弁座130に着座して比例弁51が閉弁状態となる。このとき、背圧室156には導入出ポート110から導入された高圧の冷媒が満たされるため、背圧伝達部材150は弁体132と一体化された状態となる。
【0040】
図2は、冷媒の流れが順方向のときに比例弁51が開弁状態となり、比例弁52が閉弁状態となる場合を示している。すなわち、図1の状態からロータ172が一方向に回転駆動(正転)されると、弁作動体136により弁体132が吊り上げられる。このとき、その上方への駆動力がガイド部148を介して背圧伝達部材150に伝達され、背圧伝達部材150と一体化した弁体132が弁座130から離間し、比例弁51を開弁させる。このとき、背圧室156の圧力が高いため、背圧伝達部材150と弁体132が一体化した状態を維持する。その結果、弁体134は弁体132と背圧伝達部材150とに挟まれる状態となり、比例弁52の閉弁状態が維持される。この状態で弁作動体136の駆動量を制御することで、比例弁51の開度を調整することができる。
【0041】
図3は、冷媒の流れが逆方向のときに比例弁51,52が共に閉弁状態となる場合を示している。すなわち、冷媒の流れが導入出ポート112から導入出ポート110へ向かう方向である場合に、図示のように弁作動体136が下死点となる位置に駆動されると、弁体134が弁座140に着座して比例弁52が閉弁状態になる。このとき、背圧室156には導入出ポート110から導入された低圧の冷媒が満たされるため、背圧伝達部材150はその前後差圧により上方に押し上げられて区画部材120に係止される。このため、弁体132は、背圧キャンセル機構が解除された状態となり、その前後差圧により弁座130に付勢されて比例弁51の閉弁状態を維持する。
【0042】
図4は、冷媒の流れが逆方向のときに比例弁51が閉弁状態となり、比例弁52が開弁状態となる場合を示している。すなわち、図3の状態からロータ172が一方向に回転駆動(正転)されると、弁作動体136により弁体132が吊り上げられる。その結果、弁体132が弁座140から離間して比例弁52を開弁させる。このとき、背圧室156が低圧であるため、背圧伝達部材150は区画部材120に係止された状態を維持する。一方、弁体132は、その前後差圧により弁座130に付勢されて比例弁51の閉弁状態を維持する。この状態で弁作動体136の駆動量を制御することで、比例弁52の開度を調整することができる。比例弁52は、膨張装置として機能する。
【0043】
図5は、制御弁1による比例制御を示す図である。(A)は冷媒の流れが順方向の場合の比例制御を示し、(B)は冷媒の流れが逆方向の場合の比例制御を示している。各図の横軸は基準位置からの駆動ステップ数を示し、縦軸は弁部の開口面積を示している。
すなわち、図1および図2に示したように冷媒の流れが順方向のときに比例弁51の開度を制御すると、図5(A)のようになり、図3および図4に示したように冷媒の流れが逆方向のときに比例弁52の開度を制御すると図5(B)のようになる。いずれの場合もステップ数にほぼ比例して開口面積が大きくなるが、比例弁51が大口径であり、比例弁52が小口径であるため、弁部の開口面積は異なる。すなわち、弁作動体136の軸線方向への駆動量に対して、冷媒が順方向に流れる場合と逆方向に流れる場合とで弁部の大きさが異なり、弁開度(弁体の弁座からのリフト量)に対する冷媒流量も異なるようになる。言い換えれば、弁作動体136の軸線方向への駆動量に対して、冷媒が順方向に流れる場合と逆方向に流れる場合とで弁開度特性が異なるようになる。
【0044】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態に係る制御弁は、弁部およびアクチュエータの構成が第1実施形態と若干異なる。以下、第1実施形態との相違点を中心に説明し、第1実施形態とほぼ同様の構成部分については同一の符号を付す等して適宜その説明を省略する。図6〜図10は、第2実施形態に係る制御弁の構成および動作を表す断面図である。
【0045】
図6に示すように、制御弁2は、ステッピングモータ駆動式の電動弁として構成され、弁本体201とモータユニット202とを組み付けて構成されている。弁体132に設けられるガイド部242は、第1実施形態のガイド部142よりも軸線方向に大きく構成されている。一方、弁体134に設けられるガイド部248は、その厚みが第1実施形態のガイド部148よりも小さく構成されている。その結果、図示のように、比例弁51,52が閉弁状態にあっても背圧伝達部材150とガイド部248とが離間した状態となる。スプリング146は、弁体132と弁体134との間に介装されている。一方、モータユニット202においては、第1組のヨーク175と第2組のヨーク175との間に第1実施形態のような間隙179は設けられていない。
【0046】
以上のように構成された制御弁2は、モータユニット202の駆動制御によってその弁開度を調整可能なステッピングモータ作動式の制御弁として機能する。図示しない制御部は、設定開度に応じたステッピングモータの駆動ステップ数を演算し、励磁コイル171に駆動電流(駆動パルス)を供給する。それによりロータ172が回転し、一方で弁作動体136が回転駆動されて比例弁51,52の開閉状態および開度が調整される。
【0047】
図6は、冷媒の流れが順方向のときに比例弁51,52が共に閉弁状態となる場合を示している。すなわち、冷媒の流れが順方向のときに弁作動体136が下死点となる位置に駆動されると、弁体134が弁座140に着座して比例弁52が閉弁状態になると共に、弁体132が弁座130に着座して比例弁51が閉弁状態となる。このとき、背圧室156には導入出ポート110から導入された高圧の冷媒が満たされるため、背圧伝達部材150は弁体132に一体化された状態となる。
【0048】
図7は、冷媒の流れが順方向のときに比例弁51が閉弁状態となり、比例弁52が開弁状態となる場合を示している。すなわち、図6の状態からロータ172が一方向に回転駆動(正転)されると、弁作動体136により弁体132が吊り上げられる。それにより、弁体134が弁座140から離間し、比例弁52を開弁させる。
【0049】
図8は、冷媒の流れが順方向のときに比例弁51,52が共に開弁状態となる場合を示している。すなわち、図7の状態からロータ172が一方向にさらに回転駆動されると、その上方への駆動力がガイド部248を介して背圧伝達部材150に伝達され、背圧伝達部材150と一体化した弁体132が弁座130から離間し、比例弁51を開弁させる。このとき、背圧室156の圧力が高いため、背圧伝達部材150と弁体132が一体化した状態を維持する。ただし、この場合、比例弁51の開口面積と比較して比例弁52の開口面積は相当小さいため、実質的には比例弁51の開度と考えることもできる。
【0050】
図9は、冷媒の流れが逆方向のときに比例弁51,52が共に閉弁状態となる場合を示している。すなわち、冷媒の流れが逆方向のときに弁作動体136が下死点となる位置に駆動されると、弁体134が弁座140に着座して比例弁52が閉弁状態になる。このとき、背圧室156には導入出ポート110から導入された低圧の冷媒が満たされるため、背圧伝達部材150はその前後差圧により上方に押し上げられる。このため、弁体132は、背圧キャンセル機構が解除された状態となり、その前後差圧により弁座130に付勢されて比例弁51の閉弁状態を維持する。
【0051】
図10は、冷媒の流れが逆方向のときに比例弁51が閉弁状態となり、比例弁52が開弁状態となる場合を示している。すなわち、図9の状態からロータ172が一方向に回転駆動されると、弁作動体136により弁体132が吊り上げられる。その結果、弁体132が弁座140から離間して比例弁52を開弁させる。このとき、背圧室156が低圧であるため、背圧伝達部材150は区画部材120に係止された状態を維持する。一方、弁体132は、その前後差圧により弁座130に付勢されて比例弁51の閉弁状態を維持する。この状態で弁作動体136の駆動量を制御することで、比例弁52の開度を調整することができる。比例弁52は、膨張装置として機能する。
【0052】
図11は、制御弁2による比例制御を示す図である。(A)は冷媒の流れが順方向の場合の比例制御を示し、(B)は冷媒の流れが逆方向の場合の比例制御を示している。各図の横軸は基準位置からの駆動ステップ数を示し、縦軸は弁部の開口面積を示している。
すなわち、図6〜図8に示したように冷媒の流れが順方向の場合、図11(a)に示すように、まず小口径の比例弁52の開度がステップ数にほぼ比例して大きくなる。そして、あるステップ数を超えると、大口径の比例弁51も開弁するため、ステップ数に対する開口面積の増加割合が大きくなる。
【0053】
一方、図9および図10に示したように冷媒の流れが逆方向の場合、図11(b)に示すように、小口径の比例弁52の開度がステップ数にほぼ比例して大きくなるが、全開状態となって以降は冷媒流量は飽和する。すなわち、弁作動体136の軸線方向への駆動量に対して、冷媒が順方向に流れる場合と逆方向に流れる場合とで弁部の大きさが異なり、弁開度に対する冷媒流量も異なるようになる。言い換えれば、弁作動体136の軸線方向への駆動量に対して、冷媒が順方向に流れる場合と逆方向に流れる場合とで弁開度特性が異なるようになる。
【0054】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はその特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内で種々の変形が可能であることはいうまでもない。
【0055】
上記実施形態では、本発明の制御弁を電気自動車の車両用冷暖房装置に適用した例を示したが、内燃機関を搭載した自動車や、内燃機関と電動機を同載したハイブリッド式の自動車の車両用冷暖房装置に提供することが可能であることは言うまでもない。また、車両以外の冷暖房装置に適用することも可能である。さらに、冷媒以外の作動流体の流れを双方向に制御する用途に適用することもできる。
【0056】
上記実施形態では、複合弁のアクチュエータとしてステッピングモータを採用する例を示したが、ソレノイド等により構成してもよい。
【0057】
上記実施形態では、モータユニット102において、各相のヨーク175に巻回される励磁コイル171が、互いに直列に且つ逆向きの磁界を発生させるように接続される例を示した。変形例においては、各相のヨーク175に巻回される励磁コイル171が、互いに並列に且つ逆向きの磁界を発生させるように接続されるよう構成してもよい。
【符号の説明】
【0058】
1,2 制御弁、 51,52 比例弁、 101 弁本体、 102 モータユニット、 104 ボディ、 110,112 導入出ポート、 128 弁孔、 132,134 弁体、 136 弁作動体、 138 弁孔、 150 背圧伝達部材、 156 背圧室、 170 スリーブ、 171 励磁コイル、 172 ロータ、 173 ステータ、 174 回転軸、 175 ヨーク、 176 マグネット、 179 間隙、 182 シャフト、 188 回転ストッパ、 201 弁本体、 202 モータユニット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動流体を順方向または逆方向に流通させる共用の内部通路が形成されたボディと、
前記内部通路に設けられた弁部の開度を電気的に制御するためのアクチュエータと、
前記アクチュエータの軸線方向の駆動力を前記弁部に伝達する弁作動体と、
前記アクチュエータによる前記弁作動体の軸線方向への駆動量に対して、作動流体が順方向に流れる場合と逆方向に流れる場合とで前記弁部の大きさが異なるように切り替える作動切替機構と、
を備えることを特徴とする制御弁。
【請求項2】
前記ボディに設けられ、作動流体を導入または導出する第1導入出ポートと、
前記ボディに設けられて前記第1導入出ポートとの間に前記内部通路を形成し、前記第1導入出ポートが導入ポートとして機能するときには導出ポートとなり、前記第1導入出ポートが導出ポートとして機能するときには導入ポートとなる第2導入出ポートと、
前記内部通路に設けられた第1弁孔に接離して第1弁の開度を調整する第1弁体と、
前記第1弁孔よりも小さな第2弁孔に接離して第2弁の開度を調整する第2弁体と、
を備え、
前記作動切替機構は、
作動流体が順方向に流れる場合には、前記弁作動体と前記第1弁体とを一体変位可能に作動連結することにより前記第1弁の開度を調整可能とし、
作動流体が逆方向に流れる場合には、前記弁作動体と前記第2弁体とを作動連結する一方、前記弁作動体と前記第1弁体とを相対変位可能に連結解除することにより前記第2弁の開度を調整可能とすることを特徴とする請求項1に記載の制御弁。
【請求項3】
前記ボディに形成された背圧室に作動流体を導入することにより前記第1弁体に作用する流体圧力の影響をキャンセルする第1背圧キャンセル機構と、
前記ボディに形成された背圧室に作動流体を導入することにより前記第2弁体に作用する流体圧力の影響をキャンセルする第2背圧キャンセル機構と、
前記第1弁の開度が調整される際には前記第1背圧キャンセル機構を作動させる一方、前記第2弁の開度が調整される際には前記第1背圧キャンセル機構の作動を解除するとともに第2背圧キャンセル機構を作動させる背圧キャンセル切替機構と、
を備えることを特徴とする請求項2に記載の制御弁。
【請求項4】
前記背圧キャンセル切替機構は、前記ボディと前記第1弁体との間に配置され、前記ボディに摺動可能に支持されるとともに前記第2弁体を摺動可能に挿通し、前記第1弁体とは反対側にて前記ボディとの間に前記背圧室を形成する背圧伝達部材を含み、
前記背圧伝達部材は、
前記第1弁の開度が調整される際には、その前後差圧により前記第1弁体に近接する方向に付勢されることで前記第1弁体と一体変位可能に連結状態が維持され、
前記第2弁の開度が調整される際には、その前後差圧により前記第1弁体から離間する方向に付勢されることで前記第1弁体と相対変位可能に連結状態が解除されることを特徴とする請求項3に記載の制御弁。
【請求項5】
前記第1弁の開度が調整される際には、前記弁作動体の駆動力が前記第2弁体を介して前記背圧伝達部材に伝達されることにより、前記第1弁体が軸線方向に駆動され、前記第1弁の開度が調整されることを特徴とする請求項4に記載の制御弁。
【請求項6】
前記アクチュエータとして、回転駆動されるロータを含むステッピングモータと、
前記ロータとともに回転し、その軸線周りの回転運動を前記弁作動体の軸線方向の並進運動に変換する作動変換機構と、
を備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の制御弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−237342(P2012−237342A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−105419(P2011−105419)
【出願日】平成23年5月10日(2011.5.10)
【出願人】(000133652)株式会社テージーケー (280)
【Fターム(参考)】