説明

制御装置及びボイラシステム

【課題】差分蒸発量の異なる複数の燃焼位置を有するボイラを備えたボイラ群において、安定したバックアップを行うことが可能な制御装置及びボイラシステムを提供すること。
【解決手段】複数の段階的な燃焼位置を有するボイラを備えたボイラ群を制御する制御装置であって、前記ボイラのいずれかが蒸発量の増加を指示されることによりバックアップが必要とされ、バックアップに適用可能な燃焼位置が複数ある場合に、前記バックアップに適用可能な燃焼位置のなかから、バックアップに適用する燃焼位置を組合せたバックアップ蒸発量と、前記蒸発量の増加を指示されたボイラにより必要とされるバックアップ必要蒸発量との差が最小となるように、前記バックアップに適用する燃焼位置を組合せるように構成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数のボイラからなるボイラ群を制御する制御装置及びこの制御装置を備えたボイラシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、三位置制御ボイラからなるボイラ群において低燃焼位置にあるボイラの燃焼位置を一時的に上位の燃焼位置に移行してバックアップする技術が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。かかる従来のボイラ群をバックアップ制御する場合、例えば、バックアップに適用可能な燃焼位置のなかから、(バックアップが必要なバックアップ必要蒸発量)≦(バックアップ蒸発量)を満足する最少の燃焼位置を、優先順位にしたがって選択するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平1−256704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、近年、ターンダウン比(最大蒸発量/最小蒸発量)が大きなボイラが増加するなか、バックアップに適用する燃焼位置を優先順位にしたがって選択した場合、例えば、差分蒸発量が小さいバックアップ必要燃焼位置を、差分蒸発量が大きい燃焼位置でバックアップする場合があり、過剰な蒸発量のバックアップが台数制御に影響を及ぼす可能性がある。
【0005】
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、定格蒸発量や差分蒸発量が異なる燃焼位置を有するボイラを備えたボイラ群において、バックアップを安定して行うことが可能な制御装置及びボイラシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
請求項1に記載の発明は、複数の段階的な燃焼位置を有するボイラを備えたボイラ群を制御する制御装置であって、前記ボイラのいずれかが蒸発量の増加を指示されることによりバックアップが必要とされ、バックアップに適用可能な燃焼位置が複数ある場合に、前記バックアップに適用可能な燃焼位置のなかから、バックアップに適用する燃焼位置を組合せたバックアップ蒸発量と、前記蒸発量の増加を指示されたボイラにより必要とされるバックアップ必要蒸発量との差が最小となるように、前記バックアップに適用する燃焼位置を組合せるように構成されていることを特徴とする。
【0007】
請求項5に記載の発明は、ボイラシステムであって、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の制御装置を備えることを特徴とする。
【0008】
この発明に係る制御装置、ボイラシステムによれば、バックアップに適用可能な燃焼位置のなかから、バックアップ蒸発量とバックアップ必要蒸発量との差を最小とする燃焼位置の組合せによりバックアップするので、定格蒸発量が異なるボイラや差分蒸発量の異なる燃焼位置を有するボイラを備えていても、ボイラ群における過剰な給蒸やハンチングの発生が抑制され、ひいては安定したバックアップを行うことができる。
【0009】
この明細書において、バックアップとは、いずれかのボイラが蒸発量の増加を指示されて、燃焼停止位置から上位の燃焼位置に移行し、給蒸によって蒸発量が実際に増加するまでのボイラ缶内圧力上昇の遅延や、いずれかの燃焼位置から上位の燃焼位置に移行し、給蒸によって蒸発量が増加するまでの移行遅延が生じる場合に、他の燃焼位置が一時的に給蒸してこれらの給蒸遅延を補うことをいう。また、ボイラのいずれかが蒸発量の増加を指示されるとは、例えば、いずれかのボイラに対する燃焼停止位置から上位の燃焼位置に移行する指示のほか、下位の燃焼位置から上位の燃焼位置に移行する指示も含み、バーナの燃焼に関して、燃焼位置と対応したバーナの燃焼開始、解除による蒸発量の増減、ひとつのバーナが複数の燃焼位置と対応した場合の該バーナの燃焼量の増減による場合のいずれも含む。
また、バックアップに適用可能な燃焼位置とは、いずれかのボイラにおいて蒸発量の増加が指示された場合に、指示された燃焼位置が給蒸するよりも短時間で給蒸可能な燃焼位置を対象とすることができ、この対象とされた燃焼位置のなかから所定の条件(例えば、給蒸するまでの時間)等に基づき任意に選択してもよい。
また、バックアップに適用可能な複数の燃焼位置には、ひとつのボイラに順次移行することが可能な複数の燃焼位置が存在する場合も含まれる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の制御装置であって、前記ボイラ群のバックアップ必要蒸発量又はバックアップ蒸発量が変化して前記バックアップ蒸発量を増減する必要が生じた際に、バックアップに適用可能又はバックアップを解除可能な燃焼位置が複数ある場合は、前記バックアップに適用可能又は解除可能な燃焼位置のなかから、バックアップに適用し又は解除する燃焼位置の組合せを変更することによるバックアップ蒸発量の増減分と、前記バックアップ必要蒸発量の増減分との差が最小となるように、前記バックアップに適用し又は解除する燃焼位置を組合せるように構成されていることを特徴とする。
【0011】
この発明に係る制御装置によれば、ボイラ群のバックアップ必要蒸発量又はバックアップ蒸発量が変化してバックアップ蒸発量を増減する必要が生じた際に、バックアップに適用可能又は解除可能な燃焼位置のなかから、バックアップ蒸発量の増減分とバックアップ必要蒸発量の増減分との差を最小とするので、ボイラ群における過剰な給蒸やハンチングの発生を抑制することができる。
この明細書において、バックアップ必要蒸発量又はバックアップ蒸発量が変化するとは、バックアップが必要とされる燃焼位置に移行することによるバックアップ必要蒸発量の増加、バックアップ必要燃焼位置の燃焼指示解除又は該燃焼位置の給蒸によるバックアップ必要蒸発量の減少、バックアップに適用した燃焼位置が上位の燃焼位置に移行することによりバックアップ蒸発量が減少する場合が含まれる。なお、バックアップ必要蒸発量の増減分は、(増減後のバックアップ必要蒸発量−増減前のバックアップ必要蒸発量)により、バックアップ蒸発量の増減分は、(増減後のバックアップ蒸発量−増減前のバックアップ蒸発量)により算出される。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の制御装置であって、前記ボイラ群のバックアップ必要蒸発量又はバックアップ蒸発量が変化して前記バックアップ蒸発量を増減する必要が生じた際に、バックアップに適用可能又はバックアップを解除可能な燃焼位置が複数ある場合は、前記バックアップに適用可能又は解除可能な燃焼位置のなかから、新たな組合せによるバックアップ蒸発量と、前記増減した後のバックアップ必要蒸発量との差が最小となるように、前記バックアップに適用し又は解除する燃焼位置を組合せるように構成されていることを特徴とする。
【0013】
この発明に係る制御装置によれば、ボイラ群のバックアップ必要蒸発量又はバックアップ蒸発量が変化してバックアップ蒸発量を増減する必要が生じた際に、バックアップに適用可能又は解除可能な燃焼位置のなかから、新たな組合せによるバックアップ蒸発量とバックアップ必要蒸発量との差を最小とするので、バックアップにおける給蒸の過不足を最小とし、ひいては、省エネを確保して効率的にバックアップすることができる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の制御装置であって、前記蒸発量の増加を指示されて給蒸していない燃焼位置及びバックアップ可能な燃焼位置に対応して設定されたバックアップ組合せテーブルを備え、前記バックアップ組合せテーブルに基づいて前記バックアップに適用し又は解除する燃焼位置を組合せるように構成されていることを特徴とする。
【0015】
この発明に係る制御装置によれば、バックアップが必要な燃焼位置及びバックアップ可能な燃焼位置に対応したバックアップ組合せテーブルに基づいて、短時間で効率的にバックアップ対象の燃焼位置を選択することができる。
【発明の効果】
【0016】
この発明に係る制御装置、ボイラシステムによれば、定格蒸発量が異なるボイラや、差分蒸発量の異なる燃焼位置を有するボイラを備えたボイラ群を、安定してバックアップすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るボイラシステムの概略を示す図である。
【図2】第1の実施形態に係るボイラ群を構成するボイラの概略を説明する図である。
【図3】第1の実施形態に係るボイラにおけるバックアップ燃焼位置を選択する手順を示すブロック図である。
【図4】第1の実施形態に係る動作を説明する図であり、初期状態を説明する図である。
【図5】第1の実施形態に係るバックアップ状態における動作を説明する図である。
【図6】第2の実施形態に係るバックアップ状態における動作を説明する図である。
【図7】第3の実施形態に係るバックアップ状態における動作を説明する図である。
【図8】第4の実施形態に係るバックアップ状態における動作を説明する図であり、初期状態を説明する図である。
【図9】第4の実施形態に係るバックアップ状態における動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図1から図5を参照し、この発明の一実施形態について説明する。
図1は、本発明に係る制御器の一実施形態を示す図であり、符号1はボイラシステムを示している。
ボイラシステム1は、複数のボイラから構成されるボイラ群2と、制御部(制御装置)4と、スチームヘッダ6と、スチームヘッダ6に設けられた圧力センサ7とを備えている。
この実施形態において、ボイラ群2は5台の蒸気ボイラ、例えば、第1ボイラ21、第2ボイラ22、第3ボイラ23、第4ボイラ24、第5ボイラ25を備えている。
【0019】
スチームヘッダ6は、第1ボイラ21、・・・、第5ボイラ25と蒸気管11により接続されるとともに、蒸気使用設備18と蒸気管12により接続されており、ボイラ群2で発生させた蒸気を集合して使用設備18に供給するようになっている。
【0020】
ボイラ群2を構成している各ボイラ21、・・・、25は、例えば、図2に示すような構成とされている。図2において示した四角枠は、各ボイラ21、・・・、25及びその燃焼位置を示しており、各枠内に示した数字は各燃焼位置の差分蒸発量を、上側に示した数字は定格蒸発量を示している。
【0021】
第1の実施形態において、第1ボイラ21は、第1差分蒸発量が200(kg/h)、第2差分蒸発量が400(kg/h)、第3差分蒸発量が1200(kg/h)、第3燃焼位置で燃焼した場合の蒸発量、すなわち定格蒸発量が1800(kg/h)に設定された四位置制御ボイラとされ、燃焼停止状態(燃焼停止位置)、低燃焼状態(第1燃焼位置)、中燃焼状態(第2燃焼位置)、高燃焼状態(第3燃焼位置)での運転が可能とされている。
第2ボイラ22は、第1差分蒸発量が500(kg/h)、第2差分蒸発量が600(kg/h)、定格蒸発量が1100(kg/h)とされている。
第3ボイラ23は、第1差分蒸発量が850(kg/h)、第2差分蒸発量が1050(kg/h)、定格蒸発量が1900(kg/h)とされている。
第4ボイラ24は、第1差分蒸発量が700(kg/h)、第2差分蒸発量が1200(kg/h)、定格蒸発量が1900(kg/h)とされている。
第5ボイラ25は、第1差分蒸発量が1000(kg/h)、第2差分蒸発量が1200(kg/h)、定格蒸発量が2200(kg/h)とされている。
また、第2ボイラ22、・・・、第5ボイラ25は、上記のように三位置制御ボイラとされ、燃焼停止状態、低燃焼状態(第1燃焼位置)、高燃焼状態(第2燃焼位置)での運転が可能とされている。
【0022】
この実施形態において、差分蒸発量とは、ボイラを一段階上位の燃焼位置に移行した場合に増加する蒸発量をいい、一段階上位に移行して第N燃焼位置(Nは、1以上の整数)となることで増加する蒸発量を「第N差分蒸発量」という。
【0023】
制御部4は、圧力センサ7と信号線13により、各ボイラ21、・・・、25と信号線16、信号線14により接続されて、圧力センサ7及び各ボイラ21、・・・、25から信号が入力されるとともに各ボイラ21、・・・、25に信号を出力するようになっている。
【0024】
また、制御部4は、スチームヘッダ6の蒸気圧力から必要蒸気量を算出し、各ボイラ21、・・・、25の各燃焼位置の差分蒸発量から各ボイラ21、・・・、25の蒸発量および総蒸発量を算出するようになっており、必要蒸発量に基づいて、各ボイラ21、・・・、25に、燃焼位置又は燃焼停止位置の移行を指示するようになっている。
【0025】
また、制御部4は、図示しないデータベースに各ボイラ21、・・・、25の燃焼位置の構成、差分蒸発量を記憶し、必要蒸発量(kg/h)≦総蒸発量(kg/h)となるように、各ボイラ21、・・・、25の燃焼位置の組合せを選択し、バックアップ必要蒸発量を算出するようになっている。また、制御部4は、各ボイラ21、・・・、25において成立し得る燃焼位置の組合せを、図示しないデータベースにバックアップ組合せテーブルとして記憶し、バックアップ組合せテーブルのなかからバックアップ蒸発量とバックアップ必要蒸発量との差が最小となる燃焼位置の組合せを選択するように構成されている。なお、バックアップ必要蒸発量が減少した場合は、バックアップ必要蒸発量が増加する場合と逆の手順で、バックアップ燃焼位置の燃焼を解除してもよい。
【0026】
以下、図3を参照して、バックアップに適用する燃焼位置組合せを選択する手順について説明する。以下の動作は、必要蒸発量が変動して、燃焼位置を移行して総蒸発量を増減する必要が生じた場合に行なわれる。
(1)必要蒸発量の変動に基づいて、例えば、必要蒸発量が設定値を超えて変動した場合等に、対象となる各ボイラに蒸発量増減信号を出力する(S1)。
(2)移行した燃焼位置の特性等に基づき、バックアップ必要蒸発量を算出する。(S2)。
(3)ボイラ群において、バックアップに適用することができるバックアップ可能燃焼位置を抽出する(S3)。
(4)バックアップ可能燃焼位置、及び移行可能な燃焼位置又は燃焼停止位置の順序に基づいて、バックアップ組合せテーブルを作成する(S4)。
(5)バックアップ組合せテーブルのなかから、バックアップ蒸発量とバックアップ必要蒸発量との差が最小となる組合せを選択する(S5)。
(6)バックアップ燃焼位置組合せの対象燃焼位置に、バックアップ信号を出力して上位の燃焼位置に移行する(S6)。
【0027】
次に、図4、図5を参照して、第1の実施形態の作用について説明する。
図4(A)、図5(A)に示した枠及び付した数字は、図2と同様であり、ハッチングは燃焼中である燃焼位置を、網かけはバックアップ適用可能燃焼位置を、斜線が直交するチェックはバックアップ燃焼中の燃焼位置を、水平な線と垂直な線が直交する格子はバックアップが必要な燃焼位置を示している。
【0028】
第1の実施形態に係るボイラ群2は、総蒸発量の増加に際して燃焼停止位置にあるボイラを優先的に第1燃焼位置に移行する低燃優先ボイラ群とされ、第1ボイラ21から第5ボイラ25の順に優先順位が設定されている。
なお、便宜のため、ボイラ群2は、図4に示すように、第1ボイラ21、第2ボイラ22、第3ボイラ23がそれぞれ第1燃焼位置にあり、第4ボイラ24、第5ボイラ25が燃焼停止位置にあるものとする。ここで、ボイラ群2は必要蒸発量1550(kg/h)、総蒸発量1550(kg/h)であるものとする。
この状態で、必要蒸発量が550(kg/h)増加して、燃焼位置を移行する信号が出力されるものとする。
【0029】
(1)必要蒸発量が550(kg/h)増加すると、制御部4は、図5(A)に示すように、第4ボイラ24を第1燃焼位置(差分蒸発量700(kg/h))に移行する信号を出力する。(2)ボイラ群2のバックアップ必要蒸発量700(kg/h)を算出する。(3)バックアップ可能燃焼位置として、第1ボイラ21の第2燃焼位置、第3燃焼位置、第2ボイラ22の第2燃焼位置、第3ボイラ23の第2燃焼位置を抽出する。(4)抽出したバックアップ可能燃焼位置と、実現可能な燃焼順序とに基づいて、例えば、図5(B)に示すようなバックアップ組合せテーブルを作成する。(5)バックアップ組合せテーブル(組合せ1〜11)のなかから、バックアップ蒸発量と、バックアップ必要蒸発量(700(kg/h))との差が最小となる組合せ2(バックアップ蒸発量600(kg/h))を選択する。(6)第2ボイラ22を対して、第2燃焼位置に移行するバックアップ信号を出力する。
【0030】
その結果、ボイラ群2の必要蒸発量2100(kg/h)、第4ボイラ24を第1燃焼位置に移行して給蒸した後のボイラ群2の総蒸発量2250(kg/h)、バックアップ必要蒸発量700(kg/h)、バックアップ蒸発量600(kg/h)となる。
第1の実施形態に係るボイラ群2によれば、定格蒸発量が異なるボイラ、及び差分蒸発量の異なる燃焼位置を有するボイラを備えている場合でも、ボイラ群2における過剰な給蒸やハンチングの発生を抑制して、安定したバックアップをすることができる。
また、例えば、各ボイラ21、・・・、25の第1燃焼位置が高効率燃焼位置である場合に、ボイラ群2の燃焼効率を向上することができる。
【0031】
次に、図4、図6を参照して、第2の実施形態の作用について説明する。
第2の実施形態に係るボイラ群2は、必要蒸発量が増加した場合に、ボイラ群の必要蒸発量≦総蒸発量を満足する範囲で、いずれかのボイラを上位の燃焼位置に移行して総蒸発量が最小となるように燃焼位置を選択するように構成されている。その他は、第1の実施形態と同様であるため、説明を省略する。なお、第2の実施形態は、低燃焼位置から高燃焼位置への移行が指示されても、高燃焼位置と対応する蒸発量がすぐに給蒸できないボイラに対して有利である。
【0032】
(1)必要蒸発量が550(kg/h)増加すると、制御部4は、図6(A)に示すように、第2ボイラ22を第2燃焼位置(差分蒸発量600(kg/h))に移行する信号を出力する。(2)ボイラ群2のバックアップ必要蒸発量600(kg/h)を算出する。(3)バックアップ可能燃焼位置として、第1ボイラ21の第2燃焼位置、第3燃焼位置、第3ボイラ23の第2燃焼位置を抽出する。(4)抽出したバックアップ可能燃焼位置と、実現可能な燃焼順序とに基づいて、例えば、図6(B)に示すようなバックアップ組合せテーブルを作成する。(5)バックアップ組合せテーブル(組合せ1〜5)のなかから、バックアップ蒸発量と、バックアップ必要蒸発量(600(kg/h))との差が最小となる組合せ1(バックアップ蒸発量400(kg/h))を選択する。(6)第1ボイラ21を対して、第2燃焼位置に移行するバックアップ信号を出力する。
【0033】
その結果、ボイラ群2の必要蒸発量2100(kg/h)、第2ボイラ22を第2燃焼位置に移行して給蒸した後のボイラ群2の総蒸発量2150(kg/h)、バックアップ必要蒸発量600(kg/h)、バックアップ蒸発量400(kg/h)となる。
第2の実施形態に係るボイラ群2によれば、いずれかのボイラを上位の燃焼位置に移行してボイラ群2の総蒸発量を増加するので、ボイラ群2における発停を少なくしてボイラ群2の燃焼を安定させることができる。
【0034】
次に、図5、図7を参照して、第3の実施形態の作用について説明する。
第4の実施形態に係るボイラ群2は、必要蒸発量の増加に対応して総蒸発量を増加して、すでにバックアップされている場合に、バックアップ蒸発量と、バックアップ必要蒸発量との差が最小となるように構成されている。その他は、第1の実施形態と同様であるため、説明を省略する。なお、第3実施形態は、上記第1〜第3の実施形態に適用することができる。
【0035】
(1)必要蒸発量が1000(kg/h)増加すると、制御部4は、図7(A)に示すように、第5ボイラ25を第1燃焼位置(差分蒸発量1000(kg/h))に移行する信号を出力する。(2)ボイラ群2のバックアップ必要蒸発量1700(kg/h)を算出する。(3)バックアップ可能燃焼位置として、第1ボイラ21の第2燃焼位置、第3燃焼位置、第2ボイラ22の第2燃焼位置、第3ボイラ23の第2燃焼位置を抽出する。(4)抽出したバックアップ可能燃焼位置と、実現可能な燃焼順序とに基づいて、例えば、図7(B)に示すようなバックアップ組合せテーブルを作成する。(5)バックアップ組合せテーブル(組合せ1〜11)のなかから、ボイラ群2のバックアップ蒸発量と、ボイラ群2のバックアップ必要蒸発量(1700(kg/h))との差が最小となる組合せ7(バックアップ蒸発量1650(kg/h))を選択する。(6)第3ボイラ23に対して、第2燃焼位置を燃焼状態とするバックアップ信号を出力する。
【0036】
その結果、ボイラ群2の必要蒸発量3100(kg/h)、第4ボイラ24、第5ボイラ25を第1燃焼位置に移行して給蒸した後のボイラ群2の総蒸発量3250(kg/h)、バックアップ必要蒸発量1700(kg/h)、バックアップ蒸発量1650(kg/h)となる。
第3の実施形態に係るボイラ群2によれば、ボイラ群2のバックアップ必要蒸発量とボイラ群2のバックアップ蒸発量との差を最小とすることにより、省エネを実現しつつ効率的にバックアップすることができる。
【0037】
次に、図8、図9を参照して、第4の実施形態の作用について説明する。
第4の実施形態に係るボイラ群2は、必要蒸発量が減少した場合のバックアップ蒸発量を減少させる場合の例を示すものであり、第1の実施形態とは、図3のブロック図において、バックアップ必要蒸発量、バックアップ可能燃焼位置、バックアップ組合せテーブル、バックアップ蒸発量に代えて、減少するバックアップ必要蒸発量、バックアップ燃焼位置、解除対象燃焼位置の組合せテーブル、解除により減少するバックアップ蒸発量が適用される点である。その他は、第1の実施形態と同様であるため、説明を省略する。ここでは、第4ボイラ24が給蒸することにより必要蒸発量が700(kg/h)減少するものとする。なお、図8は、必要蒸発量が減少する前の初期状態を示す図である。
【0038】
(1)制御部4は、図9に示すように、第4ボイラ24の第1燃焼位置(差分蒸発量700(kg/h))が給蒸したことを取得する。(2)ボイラ群2のバックアップ必要蒸発量700(kg/h)を算出する。(3)バックアップ燃焼位置として、第2ボイラ22の第2燃焼位置、第3ボイラ23の第2燃焼位置を抽出する。(4)抽出したバックアップ燃焼位置と、実現可能な燃焼解除順序とに基づいて、例えば、図8(B)に示すような解除対象燃焼位置の組合せテーブルを作成する。(5)解除対象燃焼位置の組合せテーブル(組合せ1〜3)のなかから、解除により減少するバックアップ蒸発量と、減少したバックアップ必要蒸発量(700(kg/h))との差が最小となる組合せ1(減少する蒸発量600(kg/h))を選択する。(6)第2ボイラ22に対して、第1燃焼位置に移行するバックアップ解除信号を出力する。
【0039】
その結果、ボイラ群2の必要蒸発量3100(kg/h)、ボイラ群2の総蒸発量3250(kg/h)、バックアップ必要蒸発量1000(kg/h)、バックアップ蒸発量1050(kg/h)となる。
第4の実施形態に係るボイラ群2によれば、減少するバックアップ必要蒸発量と解除することにより減少するバックアップ蒸発量との差を最小に制御することができる。
その結果、ボイラ群2における過剰な給蒸やハンチングの発生を抑制することができる。
【0040】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変更をすることが可能である。
例えば、上記実施の形態においては、ボイラ群2が5台のボイラから構成される場合について説明したが、ボイラ群2を形成するボイラの構成、及びボイラの台数、燃料の種類等は任意に設定することができる。
【0041】
また、上記実施の形態に記載の発明を、ボイラ群2の総蒸発量とボイラ群2の必要蒸発量との差が最小となるように、各ボイラ21、・・・、25の燃焼位置を移行させつつ制御してもよいことはいうまでもない。
また、バックアップ蒸発量を減少させる場合に、解除により減少するバックアップ蒸発量とバックアップ必要蒸発量の減少分との差を最小とするか、解除した後のバックアップ蒸発量と必要蒸発量との差を最小とするかは任意に設定することができる。
【0042】
また、上記実施の形態においては、制御部4が、各燃焼位置の組合せに対応して、バックアップ組合せテーブルを予め格納している場合について説明したが、例えば、ボイラ群2の蒸発量に応じて変化したバックアップ適用可能燃焼位置に基づいて、その都度、バックアップ組合せテーブルを生成してもよいし、バックアップ組合せテーブルを作成せずに、バックアップ適用可能燃焼位置を順次組合せて、差を最小となる燃焼位置組合せを選択してもよい。
【0043】
また、上記実施の形態においては、第1〜3の実施形態において、必要蒸発量が増加する場合について説明し、第4の実施形態において、必要蒸発量が減少する場合について説明したが、バックアップ組合せテーブルに加えて、制御部4に解除対象燃焼位置の組合せテーブルを格納するかどうかは任意に設定することができる。また、解除対象燃焼位置の組合せテーブルを、解除する燃焼位置の組合せを、バックアップ燃焼位置を順次組合わせて選択するように構成してもよい。
【0044】
また、例えば、燃焼を解除されて短時間経過後、以下の第1〜第4状態の給蒸移行過程にあり、バックアップが必要な燃焼位置よりも短時間で給蒸可能なボイラをバックアップに適用してもよい。
第1状態:低燃焼を解除後、パージ又はパイロット燃焼状態となり、給蒸していないが圧力を保持している状態
第2状態:低燃焼を解除して待機状態となり、給蒸していないが圧力を保持している状態
第3状態:燃焼停止位置から低燃焼位置に移行して水を加熱しているが圧力を保持していない状態(無圧状態)
第4状態:パージ又はパイロット燃焼状態であるが圧力を保持していない状態(無圧状態)
なお、第4状態には、第1状態から圧力低下した場合と、燃焼停止位置においてパージ又はパイロット燃焼状態となった場合を含む。
また、上記圧力保持状態(第1、第2状態)によるバックアップは、短時間で給蒸するうえで好適であり、第1〜第4状態のいずれを対象とするかは任意に設定可能である。
【0045】
また、上記実施の形態においては、総蒸発量が必要蒸発量を確保するように、燃焼位置又は燃焼停止位置を選択する場合について説明したが、総蒸発量が必要蒸発量を確保する構成とするかどうかは、任意に設定することができる。
また、必要蒸発量を確保するのに代えて、必要蒸発量に対して所定の範囲の蒸発量を確保するよう構成してもよい。
【0046】
また、上記実施の形態においては、蒸気量をスチームヘッダ6内の蒸気の圧力により算出する場合について説明したが、蒸発量の算出については、任意に設定してもよい。
【符号の説明】
【0047】
1 ボイラシステム
2 ボイラ群
4 制御部(制御装置)
21、22、23、24、25 ボイラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の段階的な燃焼位置を有するボイラを備えたボイラ群を制御する制御装置であって、
前記ボイラのいずれかが蒸発量の増加を指示されることによりバックアップが必要とされ、バックアップに適用可能な燃焼位置が複数ある場合に、
前記バックアップに適用可能な燃焼位置のなかから、バックアップに適用する燃焼位置を組合せたバックアップ蒸発量と、前記蒸発量の増加を指示されたボイラにより必要とされるバックアップ必要蒸発量との差が最小となるように、前記バックアップに適用する燃焼位置を組合せるように構成されていることを特徴とする制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の制御装置であって、
前記ボイラ群のバックアップ必要蒸発量又はバックアップ蒸発量が変化して前記バックアップ蒸発量を増減する必要が生じた際に、バックアップに適用可能又はバックアップを解除可能な燃焼位置が複数ある場合は、
前記バックアップに適用可能又は解除可能な燃焼位置のなかから、バックアップに適用し又は解除する燃焼位置の組合せを変更することによるバックアップ蒸発量の増減分と、前記バックアップ必要蒸発量の増減分との差が最小となるように、前記バックアップに適用し又は解除する燃焼位置を組合せるように構成されていることを特徴とする制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載の制御装置であって、
前記ボイラ群のバックアップ必要蒸発量又はバックアップ蒸発量が変化して前記バックアップ蒸発量を増減する必要が生じた際に、バックアップに適用可能又はバックアップを解除可能な燃焼位置が複数ある場合は、
前記バックアップに適用可能又は解除可能な燃焼位置のなかから、新たな組合せによるバックアップ蒸発量と、前記増減した後のバックアップ必要蒸発量との差が最小となるように、前記バックアップに適用し又は解除する燃焼位置を組合せるように構成されていることを特徴とする制御装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の制御装置であって、前記蒸発量の増加を指示されて給蒸していない燃焼位置及びバックアップ可能な燃焼位置に対応して設定されたバックアップ組合せテーブルを備え、前記バックアップ組合せテーブルに基づいて前記バックアップに適用し又は解除する燃焼位置を組合せるように構成されていることを特徴とする制御装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の制御装置を備えることを特徴とするボイラシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−72631(P2013−72631A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−214284(P2011−214284)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【Fターム(参考)】