説明

制御装置

【課題】 エンジンが停止中であっても冷凍サイクル装置を制御でき、かつ電力消費を低減することができる制御装置を提供する。
【解決手段】 エアコンECU18は、第2バルブ11を制御するための制御情報を生成し、生成した制御情報をセキュリティECU19に与え、エンジンが停止すると電力の供給状態を通常状態から省電力状態または停止状態に移行し、セキュリティECU19は、エアコンECU18から与えられる制御情報に基づいて、第2バルブ11を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍サイクル装置を有する車両を制御する制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車両が有する冷凍サイクル装置は、自動車用空調装置に用いられ、アイドルストップ車両のように走行中の停車時にエンジンが停止される車両の場合、冷凍サイクル内には蓄冷材が設けられる(たとえば特許文献1参照)。エンジン作動時においては、蒸発器で空調空気が冷却されるとともに、冷媒によって蓄冷材に蓄冷する。また、アイドルストップ機能によりエンジンが停止されて冷凍サイクル内の圧縮機も停止されると、空調空気は蓄冷材の冷熱によって冷却されるように構成される。
【特許文献1】特開2007−1485号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前述の従来の冷凍サイクル装置では、エンジンが停止している間に蓄冷部に蓄冷されている冷熱を放冷するように制御される。したがってエンジンが停止している間も冷凍サイクル装置を制御する必要がある。これによってエンジンを停止中は、冷凍サイクル装置の制御装置が起動しているので、電力を多大に消費するという問題がある。
【0004】
そこで、本発明は前述の問題点を鑑みてなされたものであり、エンジンが停止中であっても冷凍サイクル装置を制御でき、かつ電力消費を低減することができる制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は前述の目的を達成するために以下の技術的手段を採用する。
【0006】
本発明は、冷凍サイクル装置(1)を有する車両を制御する制御装置(2)であって、
冷凍サイクル装置は、
駆動源によって駆動され、冷媒流路(8,14〜16)を循環する冷媒を圧縮して吐出する圧縮機(3)と、
圧縮機で圧縮された冷媒を凝縮する凝縮器(4)と、
凝縮器で凝縮された冷媒を減圧する減圧手段(5)と、
減圧手段で減圧された冷媒を蒸発させ、蒸発させた冷媒を圧縮機に与える蒸発器(6)と、
冷媒流路に設けられ、冷媒の冷熱を蓄える蓄冷部(13)と、
冷媒流路に設けられ、蓄冷部への蓄冷および蓄冷部からの放冷とを切替えるための弁手段(15)と、を含み、
制御装置は、
冷媒の循環量を制御する制御部であって、駆動源が停止すると、与えられる電力の供給状態を通常状態から通常状態より電力の消費が小さい省電力状態または動作を停止している停止状態に切替える第1制御部(18)と、
車両を制御する制御部であって、第1制御部と電気的に接続され、弁手段の開度を制御するとともに、車両を構成する他の制御対象物を制御する第2制御部(19)と、を含み、
第1制御部は、弁手段を制御するための制御情報を生成し、生成した制御情報を第2制御部に与え、駆動源が停止すると電力の供給状態を通常状態から省電力状態または停止状態に移行し、
第2制御部は、第1制御部から与えられる制御情報に基づいて、弁手段を制御することを特徴とする制御装置である。
【0007】
本発明に従えば、制御装置は、第1制御部と第2制御部とを含む。第1制御部は、駆動源が停止すると省電力状態または停止状態に移行するので、駆動源が停止中の消費電力を通常状態よりも小さくすることができる。また第2制御部は、冷凍サイクル装置の制御に関して、駆動源が停止中に実行すべき弁手段の制御だけを実行するので、第1制御部が動作していなくとも冷凍サイクル装置の制御には問題がない。これによって駆動源が停止中であっても、蓄冷部の冷熱を効率良く用いて、蒸発器による空調空気の冷却を継続することができる。さらに第2制御部は、第1制御部が生成した制御情報に基づいて弁手段を制御するので、弁手段を制御するための高度な演算能力が必要なく、与えられる単純な制御情報に基づいて弁手段を制御することができる。このように駆動源が停止中は、制御装置全体に電力を供給することなく、必要な制御部である第2制御部だけに電力を供給することによって、制御装置全体の消費電流を低減することができる。したがって車両の燃費を向上することができる。
【0008】
また本発明は、第1制御部は、駆動源が停止後、弁手段を制御するための制御情報を生成し、生成した制御情報を第2制御部に与えるとともに、制御情報を与えた後に起動状態から省電力状態または停止状態に切替えることを特徴とする。
【0009】
本発明に従えば、第1制御部は、駆動源が停止後に第2制御部に制御情報を与えた後に、省電力状態または停止状態に切り替えられる。したがって第1制御部は、駆動源の停止中の冷凍サイクル装置に冷媒の状態などに基づいて、制御情報を生成することができる。これによって第1制御部は、より適切なタイミングで弁手段を制御するなどの高度な制御に基づく制御情報を生成することができる。したがって弁手段をより適切に制御することができるので、操作者により快適な空調空間を提供することができる。
【0010】
さらに本発明は、第2制御部は、情報を記憶する記憶部分(30)を有し、第1制御部から与えられる制御情報を記憶部分に記憶し、記憶部分に記憶される制御情報に基づいて、駆動源が停止中に弁手段を制御することを特徴とする。
【0011】
本発明に従えば、第2制御部は、制御情報を記憶可能な記憶部分を有するので、記憶される制御情報に基づいて弁手段をより高度に制御することができる。
【0012】
さらに本発明は、第2制御部は、駆動源が停止中に車両が不正に操作されること防ぐ盗難防止機能を制御することを特徴とする。
【0013】
本発明に従えば、第2制御部は、盗難防止機能をさらに制御するので、駆動源が停止中に実行すべき制御を1つの第2制御部に実行させることができる。これによって各機能または制御毎に制御部を起動している場合よりも、1つの制御部である第2制御部に駆動源が停止中に実行すべき制御が集約されることによって、全体の消費電力を低減することができる。
【0014】
さらに本発明は、第2制御部は、弁手段に駆動電流を与えることによって、開状態と閉状態とを切替え、
弁手段は、通電状態では、開状態および閉状態のいずれか一方となり、非通電状態では、開状態および閉状態のいずれか他方となることを特徴とする。
【0015】
本発明に従えば、弁手段は、通電の有無によって開状態と閉状態とが切替えられるので、駆動源が停止中に弁手段を制御するときに、通電を止めるだけで弁手段の状態を制御することができる。このように弁手段への通電を止めることによって弁手段を制御するので、さらに消費電力を低減することができる。
【0016】
さらに本発明は、時刻を計時する計時手段(32)をさらに含み、
制御情報は、弁手段の開度を予め定める開度に調節する時刻に基づく時刻情報を含み、
第2制御部は、計時手段から与えられる時刻と、時刻情報を含む制御情報とに基づいて、弁手段を制御することを特徴とする。
【0017】
本発明に従えば、第2制御部は、計時手段から与えられる時刻と制御情報とに基づいて、弁手段を制御するので、弁手段を制御すべき時刻に確実に制御することができる。
【0018】
さらに本発明は、冷媒の状態量を検出する検出手段(34)をさらに含み、
制御情報は、弁手段の開度を予め定める開度に調節する冷媒の状態量に基づく情報を含み、
第2制御部は、検出手段から与えられる冷媒の状態量と制御情報とに基づいて、弁手段を制御することを特徴とする。
【0019】
本発明に従えば、第2制御部は、冷媒の状態量と制御情報とに基づいて、弁手段を制御するので、弁手段を冷媒の状態量に基づいて高精度に制御することができる。
【0020】
なお、前述の各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら本発明を実施するための形態を、複数の形態について説明する。各形態で先行する形態で説明している事項に対応している部分には同一の参照符を付し、重複する説明を略する場合がある。構成の一部のみを説明している場合、構成の他の部分は、先行して説明している形態と同様とする。実施の各形態で具体的に説明している部分の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、実施の形態同士を部分的に組合せることも可能である。
【0022】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態を図1〜図4を用いて説明する。図1は、本実施の形態の車両用の冷凍サイクル装置1および制御装置2を簡略化して示すシステム図である。図2は、制御装置2を簡略化して示す回路図である。本実施の形態の冷凍サイクル装置1および制御装置2は、アイドリングストップ車両に適用される。アイドリングストップ車両は、たとえば信号待ちなどのように走行状態からアイドリングでの停車状態に移行した際にエンジンが停止される車両である。
【0023】
先ず、冷凍サイクル装置1に関して説明する。冷凍サイクル装置1は、低温側の熱を高温側に移動させて冷熱および温熱を空調に利用する。冷凍サイクル装置1は、図1に示すように、圧縮機3、凝縮器4、第1膨張弁5、蒸発器6、および流路抵抗部7が順次環状の環状冷媒流路8に設けられる。また冷凍サイクル装置1は、第2膨張弁9、第1バルブ10〜第3バルブ12、および蓄冷タンク13が環状冷媒流路8に連結される第1冷媒流路14〜第3冷媒流路16に付加されて構成される。
【0024】
圧縮機3は、車両のエンジン(図示せず)を駆動源として駆動され、冷凍サイクル装置1内の冷媒を高温高圧に圧縮して吐出する流体機械である。圧縮機3は、たとえば外部電磁制御弁を有する斜板可変容量型の圧縮機3によって実現される。
【0025】
凝縮器4は、圧縮機3の冷媒吐出側に設けられ、圧縮機3にて高温高圧に圧縮された冷媒を冷却して凝縮液化する熱交換器である。第1膨張弁5は、減圧手段であって、凝縮器4で凝縮された液相冷媒を等エンタルピ的に減圧膨脹させる。
【0026】
蒸発器6は、第1膨張弁5にて減圧された冷媒を蒸発させて吸熱作用を発揮する熱交換器である。蒸発器6は、たとえば車両の空調ケース(図示せず)内に設けられ、空調ケース内に供給される空調空気を冷却、換言すると空調空気から吸熱する。空調ケース内には、たとえばこの他に図示しない空調空気送風用の送風機、空調空気加熱用の熱交換器、冷却空気および加熱空気の混合割合を調整するエアミックスドア機構などが設けられ、これらによって室内ユニット(図示せず)が構成される。室内ユニットは、たとえば車室内のインストルメントパネル内に設けられる。
【0027】
流路抵抗部7は、他の冷媒流路よりも流路抵抗が大きい流路であって、冷媒が流れにくい部分である。流路抵抗部7は、環状冷媒流路8であって蒸発器6と圧縮機3との間、換言すると蒸発器6に対して直列となるように設けられる。
【0028】
蓄冷タンク13は、蓄冷部であって、サイクルを循環する冷媒の冷熱を蓄える。蓄冷タンク13は、蒸発器6と圧縮機3との間であって、流路抵抗部7と並列となるように設けられる。したがって蒸発器6からの冷媒は、流路抵抗部7と蓄冷タンク13とに分岐して流下する。また流路抵抗部7と蓄冷タンク13とからの冷媒は、合流して圧縮機3に流下する。蒸発器6と流路抵抗部7との間の環状冷媒流路8には、冷媒が分岐する第2冷媒流路15が設けられる。第2冷媒流路15は、環状冷媒流路8から分岐した冷媒が第1冷媒流路14に合流するように設けられる。第1冷媒流路14は、蓄冷タンク13に連結される。したがって蒸発器6から冷媒は、第2冷媒流路15および第1冷媒流路14を介して蓄冷タンク13に流下する。また流路抵抗部7と圧縮機3との間の環状冷媒流路8には、冷媒が合流する第3冷媒流路16が設けられる。第3冷媒流路16は、蓄冷タンク13に連結される。したがって蓄冷タンク13からの冷媒は、第3冷媒流路16を介して圧縮機3に流下する。
【0029】
蓄冷タンク13は、冷熱の冷媒を蓄える具体的な構成として、内部に蓄冷熱交換器17を有する。蓄冷熱交換器17は、蒸発器6から流出される冷媒と、内部に設けられた蓄冷材との間で熱交換を行う熱交換器である。蓄冷材としては、たとえばパラフィンおよび氷などが用いられる。蓄冷タンク13は、蓄冷熱交換器17で蓄冷材が放冷する際に凝縮液化される冷媒を溜めるための貯留空間を規定する。蓄冷タンク13は、蓄冷熱交換器17の鉛直方向下方側に配置される。
【0030】
また凝縮器4と第1膨張弁5との間の環状冷媒流路8には、冷媒が分岐する第1冷媒流路14が設けられる。第1冷媒流路14は、蓄冷タンク13に連結される。また第1冷媒流路1には第2膨張弁9が設けられる。第2膨張弁9は、第1膨張弁5と同様の構成であって、凝縮器4で凝縮された液相冷媒を等エンタルピ的に減圧膨脹させ、減圧膨張した冷媒を蓄冷タンク13に与える。
【0031】
第1バルブ10〜第3バルブ12は、第1冷媒流路14〜第3冷媒流路16にそれぞれ設けられる。各バルブ10〜12は、開度が制御装置2によって制御される。各バルブ10〜12は、たとえば電磁制御弁によって実現され、電磁駆動力を利用して開状態と閉状態とが切替えられる。各バルブ10〜12が電磁制御弁の場合、たとえばソレノイドへの通電によって開閉が制御される。第1バルブ10は、第1冷媒流路14に設けられ、第2膨張弁9と蓄冷タンク13との間に設けられる。第2冷媒流路15は、第1冷媒流路14の第1バルブ10と蓄冷タンク13との間に連結される。第2バルブ11は、弁手段であって、第2冷媒流路15に設けられ、蒸発器6と蓄冷タンク13との間に設けられる。第3バルブ12は、第3冷媒流路16に設けられ、蓄冷タンク13と圧縮機3との間に設けられる。これら第1バルブ10から第3バルブ12の開閉状態によって冷媒の流路が切替えられる。表1に、各バルブ10〜12の開閉状態と、冷凍サイクル装置1の3つのモードである貯冷モード、蓄冷モードおよび放冷モードとの関係を示す。
【0032】
【表1】

【0033】
貯冷モードとは、蓄冷タンク13の冷熱を用いることなく冷媒が循環するモードである。貯冷モードでは、表1に示すように冷媒は環状冷媒流路8に沿って循環する。したがって冷媒は、第1膨張弁5、蒸発器6、流路抵抗部7、圧縮機3および凝縮器4の順に順次循環する。これによって、前述したように空調ケース内に供給される空調空気を冷却する。また冷媒は、蓄冷タンク13に流下せず、また蓄冷タンク13から圧縮機3に流れないので、蓄冷タンク13に蓄えられている冷熱が放出しない。したがって蓄冷タンク13の断熱構成によって蓄えられている冷熱は放出することなく保存、換言すると貯冷される。
【0034】
蓄冷モードとは、蓄冷タンク13に冷熱を蓄えるモードである。蓄冷モードでは、表1に示すように冷媒は2つの経路に沿って巡回する。第1の経路は、第1冷媒流路14および第3冷媒流路16を介して、第2膨張弁9、蓄冷タンク13、圧縮機3および凝縮器4の順に順次循環する経路である。これによって蓄冷タンク13には、冷熱が蓄えられる。第2の経路は、環状冷媒流路8を介して、第1膨張弁5、蒸発器6、流路抵抗部7、圧縮機3および凝縮器4の順に順次循環する経路である。これによって通常モードよりは冷却効果は小さいが、空調空気を冷却することができる。
【0035】
放冷モードとは、圧縮機3を用いることなく、蓄冷タンク13に蓄えられている冷熱を用いて冷媒を蓄冷タンク13に流下させるモードである。放冷モードでは、表1および図1に示すように冷媒は、凝縮器4から蒸発器6へ流れ、さらに蓄冷タンク13に流入する。換言すると、冷媒は、高圧側となる凝縮器4から低圧側となる蒸発器6に第1膨張弁5および第2冷媒流路15を介して蓄冷タンク13に流入する。したがって蒸発器6に流入した冷媒は、空調空気との熱交換によって空調空気を冷却し、圧縮機3が停止していても冷却が継続される。蒸発器6を通過した冷媒は、過熱ガス冷媒となるが、第2冷媒流路15から蓄冷タンク13に流入して蓄冷材の蓄冷熱により冷却されて凝縮液化し、重力によって蓄冷タンク13に液冷媒として溜められる。したがって蒸発器6からの過熱ガス冷媒は、蓄冷熱交換器17で凝縮されて体積を縮小させて、圧力を低圧に維持する。このように放冷モードでは、圧縮機3が停止されても蓄冷タンク13に冷熱が保持される間は凝縮器4と蒸発器6との間の残圧により、冷媒は継続して蒸発器6に流入可能となり、蒸発器6による空調空気の冷却を継続することができる。
【0036】
このような3つのモードは、車両の走行燃費を向上させるために適宜切替えられる。たとえばエンジン動作中において、放冷モードと蓄冷モードとを切替えて、冷房能力の一部を蓄冷タンク13に蓄えることができる。換言すると、エンジンの運転効率の良い時に圧縮機3が生成した熱エネルギーを使用して充分に空調した上で、余剰の熱エネルギーをエンジン効率が悪い場合の担保とすることができる。またエンジン停止中において、貯冷モードから放冷モードに切替えて、蓄冷タンク13に蓄えられた冷房能力を活用することができる。換言すると、エンジン動作中に蓄えた熱エネルギーを活用して、エンジン停止中に必要する冷房能力を賄うような目的を達成することができる。
【0037】
次に、制御装置2に関して説明する。制御装置2は、冷凍サイクル装置1を含む車両全体を制御し、たとえば前述の冷凍サイクル装置1のモードを切替える。制御装置2は、3つのモードを切替えて省エネおよび快適性を実現するために、第1バルブ10〜第3バルブ12の開閉状態を一貫して制御し、かつエンジン停止中にも冷凍サイクル装置1のモードを放冷モードに切替えるために第2バルブ11を閉状態から開状態へと切替える。
【0038】
制御装置2は、車両を制御するための複数の電子制御装置(Electronic Control Unit:略称ECU)を含む。図1および図2では、理解を容易にするため制御装置2を構成するECUとして、エアコンECU18とセキュリティECU19とを図示し、他のECUに関しては図示を省略する。エアコンECU18は、セキュリティECU19と電気的に接続される。
【0039】
先ず、エアコンECU18に関して説明する。エアコンECU18は、第1制御部であって、室内ユニット(図示せず)および冷凍サイクル装置1を制御する。エアコンECU18は、たとえば圧縮機3の駆動出力を制御することによって、冷媒の循環量を制御して空調能力を制御する。またエアコンECU18は、車室内の空調要求に応じて、室内ユニットを構成するブロワの送風量、ならびにエアミックス用ドアの開度を個別に調整する。
【0040】
エアコンECU18は、CPU、ROMおよびRAMなどを含むエアコン用マイクロコンピュータ20、エアコン通信部21、リレー回路22、エアコン電源部23、第1バルブ駆動回路24、および第3バルブ駆動回路25を含む。エアコン用マイクロコンピュータ20は、ROMおよびRAMに空調制御のための制御プログラムが記憶され、CPUが制御プログラムに基づいて各種演算および処理を実行する。
【0041】
エアコン通信部21は、通信手段であって、セキュリティECU19と通信する。エアコン通信部21は、エアコン用マイクロコンピュータ20から与えられる情報をセキュリティECU19に与え、セキュリティECU19から与えられる情報をエアコン用マイクロコンピュータ20に与える。エアコンECU18とセキュリティECU19との通信方式は、たとえばポイントtoポイント方式およびバス方式によって実現される。またエアコンECU18とセキュリティECU19とは、有線の信号ラインによって接続してもよく、無線でしてもよい。
【0042】
エアコン電源部23は、車両が有する電源26、たとえばキャパシタ、太陽電池およびバッテリなどから与えられる電力をエアコンECU18に供給する。リレー回路22は、セキュリティECU19への電力供給状態を制御する手段である。リレー回路22は、スイッチング様態を切替えることによって、エアコン電源部23と電源26との通電状態と非通電状態とを切替える。リレー回路22は、エアコンECU18から与えられる指令に基づいて、スイッチング態様を切り替える。
【0043】
第1バルブ駆動回路24および第3バルブ駆動回路25は、それぞれ第1バルブ10および第3バルブ12の電気駆動手段に電気的に接続される。第1バルブ駆動回路24および第3バルブ駆動回路25は、エアコン用マイクロコンピュータ20から与えられる制御情報に基づいてこれらバルブ10,12の開閉を制御する。
【0044】
またエアコンECU18は、各機器、たとえば圧縮機3の吐出量可変手段、および電気駆動手段をなすサーボモータおよびモータなどが電気的に接続される。エアコンECU18には、各種のセンサ(図示せず)、たとえば内気センサ、外気センサ、日射センサ、圧力センサ、蒸発器温度センサ、蒸発器後温度センサ、および水温センサからの各種センサ検出信号、および空調コントロールパネル(図示せず)からの操作信号が入力される。エアコンECU18は、各種センサ検出信号に基づいて各部を制御する。エアコンECU18は、たとえば検出された蒸発器6下流の空気温度と、操作者によって設定される設定温度から求められた蒸発器6下流の目標空気温度(目標蒸発器後温度)とに基づいて、PID制御によって圧縮機3の容量可変機構に供給される制御電流を求め、圧縮機3の制御値を決定して能力制御する。
【0045】
またエアコンECU18は、同様に第1バルブ10〜第3バルブ12の開閉を制御する。エアコン用マイクロコンピュータ20は、図1および図2に示すように、第1バルブ駆動回路24および第3バルブ駆動回路25を介して第1バルブ10および第3バルブ12と電気的に接続されるが、第2バルブ11とはセキュリティECU19を介して電気的に接続される。したがってエアコンECU18は、第1バルブ10〜第3バルブ12の開閉を制御するための制御情報を生成するが、第2バルブ11に関してはエアコンECU18が生成した制御情報に基づいてセキュリティECU19が開閉を制御する。
【0046】
またエアコンECU18は、エンジンの動作状態に基づいて、与えられる電力の供給状態を通常状態から動作を停止している停止状態に切替える。エアコンECU18は、エンジンが動作中は、リレー回路22を通電状態となるように制御する。これによって電源26からの電力がエアコン電源部23に与えられる。またエアコンECU18は、エンジンが停止すると予め定める処理を実行後、リレー回路22が非通電状態となるように制御する。これによって電源26からの電力がエアコン電源部23に与えられず、エアコンECU18は停止状態に切替えられる。
【0047】
次に、セキュリティECU19に関して説明する。セキュリティECU19は、車両を制御する第2制御部であって、第2バルブ11を制御し、かつ車両に搭載されて防犯動作を行う。セキュリティECU19は、車両を構成する他の制御対象物を制御し、具体的には防犯動作として防犯センサ(図示せず)から与えられる情報に基づいて防犯装置(図示せず)を制御する。セキュリティECU19は、警戒モードと非警戒モードの2つの動作モードを有し、警戒モードに設定されたとき、車両に対する防犯動作を行う。
【0048】
セキュリティECU19は、警戒モード中には防犯センサ、たとえばアプローチセンサ、ガラス割れセンサ、侵入センサおよび傾斜センサからの出力を常時監視する。セキュリティECU19は、防犯センサの出力に基づいて第三者によってドアおよびトランクが不正に開けられたり、フロントガラスが割られたりしたことを検出すると、防犯装置(図示せず)である始動ロック装置および警報装置に対して動作を指示する。これによって始動ロック装置はタイヤに始動ロックを施して車両を走行不能とし、警報装置は警報を発して周囲に異常の発生を知らせる。また非警戒モード中は、これらの防犯動作は行わない。
【0049】
セキュリティECU19は、CPU、ROMおよびRAMなどを含むセキュリティ用マイクロコンピュータ27、セキュリティ通信部28、セキュリティ電源部29、メモリ30および第2バルブ駆動回路31を含む。セキュリティ用マイクロコンピュータ27は、ROMおよびRAMに防犯動作のための制御プログラムが記憶され、CPUが制御プログラムに基づいて各種演算および処理を実行する。
【0050】
セキュリティ通信部28は、通信手段であって、エアコンECU18と通信する。セキュリティ通信部28は、セキュリティ用マイクロコンピュータ27から与えられる情報をエアコンECU18に与え、エアコンECU18から与えられる情報をセキュリティ用マイクロコンピュータ27に与える。セキュリティ電源部29は、電源26から与えられる電力をセキュリティECU19に供給する。したがってセキュリティECU19は、エンジンが停止中であっても動作する。またメモリ30は、記憶部分であって、セキュリティ用マイクロコンピュータ27から与えられる情報を記憶する。第2バルブ駆動回路31は、第2バルブ11の電気駆動手段に電気的に接続される。第2バルブ駆動回路31は、セキュリティ用マイクロコンピュータ27から与えられる制御情報に基づいて開閉を制御する。
【0051】
セキュリティ用マイクロコンピュータ27は、図1および図2に示すように、第2バルブ駆動回路31を介して第2バルブ11の電気駆動手段に電気的に接続される。セキュリティECU19は、セキュリティ通信部28を介してエアコンECU18から与えられる第2バルブ11の制御情報をメモリ30に記憶し、メモリ30に記憶される制御情報に基づいて第2バルブ11の開閉を制御する。このようにセキュリティECU19は、エンジンが停止中であっても動作するので、第2バルブ11の開閉状態をエンジンが停止中であっても制御することができる。
【0052】
次に、制御装置2による空調制御処理に関して説明する。図3は、エアコンECU18およびセキュリティECU19の空調制御処理を示すフローチャートである。図3(1)に示すエアコンECU18の空調制御処理と図3(2)に示すセキュリティECU19の空調制御処理とは並行して実行される。先ず、エアコンECU18の空調制御処理に関して説明する。
【0053】
本フローは、イグニッションスイッチがオンされて制御装置2に電力が供給されると開始される。ステップa1では、エアコンECU18の通常制御を実行し、ステップa2に移る。通常制御とは、エアコンECU18が前述したように各種センサ検出信号に基づいて操作者によって設定される設定温度となるように圧縮機3の制御値を決定する制御である。また通常制御は、前述の3つのモードを切替えて、快適性と省エネとを両立するための制御を含み、エンジンが駆動中の第2バルブ11を制御するための制御情報の生成を含む。ステップa2では、エコラン中、換言するとエンジンが停止中であるか否かを判断し、エコラン中であると、ステップa3に移り、エコラン中でないとステップa1の処理を繰り返す。
【0054】
ステップa3では、エコラン中であるので、第2バルブ11をエコラン中に制御するための制御情報を生成し、ステップa4に移る。ステップa4では、生成した制御情報をセキュリティECU19に送信し、ステップa5に移る。ステップa5では、セキュリティECU19から送信した制御情報に対する確認応答を受信したか否かを判断し、受信するとステップa6に移り、受信するまでステップa5の処理を繰り返す。
【0055】
ステップa6では、エアコンECU18は、エコラン移行前後の制御状態、たとえば冷媒の状態および蓄冷の状態に基づき、第2バルブ11を閉状態から開状態として放冷モードに移行するトリガ条件を演算し、ステップa7に移る。ステップa7では、演算したトリガ条件が成立したか否かを判断し、成立した場合、ステップa8に移り、トリガ条件が成立するまでステップa7の処理を繰り返す。
【0056】
ステップa8では、トリガ条件が成立したので、トリガ条件が成立したことを示すトリガ情報をセキュリティECU19に送信し、ステップa9に移る。ステップa9では、放冷モードに移行するために、第1バルブ10および第3バルブ12を閉状態に制御し、ステップa10に移る。ステップa10では、リレー回路22を制御してエアコンECU18への電源からの電力の供給を停止し、本フローを終了する。
【0057】
次に、セキュリティECU19の空調制御処理に関して説明する。本フローは、電源供給状態で短時間に繰り返し実行される。ステップb1では、セキュリティECU19の通常制御を実行し、ステップb2に移る。通常制御とは、セキュリティECU19が前述したように警戒モードであるか非警戒モードであるかに基づいて、実行する制御である。またセキュリティECU19の通常制御には、第2バルブ11の制御状態がエアコンECU18から与えられると、制御情報に基づいて第2バルブ11を開閉する制御を含む。
【0058】
ステップb2では、エアコンECU18から第2バルブ11の制御情報を受信した否かを判断し、受信した場合、ステップb3に移り、受信していない場合、ステップb5に移る。ステップb3では、制御情報を受信したので、受信した制御情報をメモリ30に記憶し、ステップb4に移る。ステップb4では、制御情報を受信したことを示す確認応答をエアコンECU18に送信し、ステップb5に移る。
【0059】
ステップb5では、エアコンECU18からのトリガ情報を受信したか否かを判断し、受信した場合、ステップb6に移り、受信していない場合、ステップb1に戻る。ステップb6では、トリガ情報を受信したのでメモリ30に記憶している制御情報に基づいて、第2バルブ11の開状態に制御し、本フローを終了する。
【0060】
このようにエアコンECU18は、ステップa2にてエコラン中であると判断すると、ステップa4で第2バルブ11の制御情報をセキュリティECU19に送信する。その後、セキュリティECU19は、エアコンECU18からのトリガ情報を受信すると、制御情報に基づいて第2バルブ11を制御する。
【0061】
次に、このような空調制御処理による消費電力削減の効果に関して、タイミングチャートを用いて説明する。図4は、エンジン、エアコンECU18、セキュリティECU19および冷凍サイクル装置1の動作状態を示すタイミングチャートである。時刻t0では、エンジンは動作しており、エアコンECU18、セキュリティECU19および冷凍サイクル装置1は、通常制御の状態である。エンジンが動作している状態からエンジンが時刻t1に停止すると、エコラン状態となる。
【0062】
エアコンECU18は、各種のセンサからエンジンが停止したことを示すエコラン信号が検出されると、エコラン移行準備のための処理を実行する。エコラン信号は、たとえばイグニッションスイッチがオフとなったことを示す信号である。エアコンECU18は、エコラン移行準備のため、セキュリティECU19と通信し、前述したステップa4、ステップa8〜ステップa10の処理を実行する。これによってエアコンECU18は、エコラン移行準備が終了した時刻t2では、第1バルブ10および第3バルブ12を閉状態に制御し、リレー回路22を制御してエアコンECU18への電源からの電力の供給が停止される。したがって時刻t2では、冷凍サイクル装置1のモードが3つのモードが適宜切替わる通常制御から貯冷モードに移行する。
【0063】
セキュリティECU19は、時刻t1から時刻t2の間にトリガ情報を受信しているので、メモリ30に記憶されている制御情報に基づいて第2バルブ11を制御する。トリガ情報を受信してから実際に第2バルブ11を制御するまでにはタイムラグが生じるので、時刻t2からタイムラグが経過した時刻t3にて冷凍サイクル装置1は貯冷モードから放冷モードに切替えられる。このようにエアコンECU18が時刻t2にて停止した後の時刻t3にて、セキュリティECU19が第2バルブ11を制御することによって、冷凍サイクル装置1の状態を制御することができる。
【0064】
これによって時刻t2から時刻t3の時間は、先行停止期間としてエアコンECU18は動作しておらず、電力を消費していない。たとえば比較例として第1バルブ10から第3バルブ12を直接制御するエアコンECU(以下、「比較例のエアコンECU」ということがある)では、冷凍サイクル装置1を制御するための期間(時刻t0から時刻t3まで:図4のエアコンECU18にて破線で示す期間)にわたって動作している必要がある。これに対して本実施の形態のエアコンECU18では、第2バルブ11はセキュリティECU19が制御するので、前述したように時刻t2からエアコンECU18の制御を停止することができる。これによって時刻t2から時刻t3までのエアコンECU18の消費電力を低減することができる。
【0065】
比較例のエアコンECUでは、消費電力を削減するためにエンジンが動作状態から停止状態へと移行するのと同時に、第2バルブ11を切り替えて放冷モードに移行し、速やかにエアコンECU18の電源を遮断することも考えられる。このような比較例のエアコンECUの制御では、たとえばエンジン停止前に充分な冷房効果が得られておりエンジン停止後もその効果が持続している場合、または、エンジン停止前にエアコンオフでありエンジン停止後に冷房能力を必要としない場合などにおいて、蓄積エネルギーを無駄に消費される。したがって本実施の形態のエアコンECU18のようにエンジン停止後に貯冷モードから放冷モードに遷移するまでのタイミングをより最適に制御することによって、消費電力を削減できかつ第2バルブ11を適切な時刻に制御することができる。
【0066】
以上説明したように本実施の形態の制御装置2は、エアコンECU18とセキュリティECU19とを含む。エアコンECU18は、エンジンが停止すると停止状態に移行するので、エンジンが停止中の消費電力を通常状態よりも小さくすることができる。またセキュリティECU19は、冷凍サイクル装置1の制御に関して、エンジンが停止中に実行すべき第2バルブ11の制御だけを実行するので、エアコンECU18が動作していなくとも冷凍サイクル装置1の制御には問題がない。これによってエンジンが停止中であっても、蓄冷タンク13の冷熱を効率良く用いて、蒸発器6による空調空気の冷却を継続することができる。
【0067】
さらにセキュリティECU19は、エアコンECU18が生成した制御情報に基づいて第2バルブ11を制御するので、第2バルブ11を制御するための演算能力が必要なく、与えられる単純な制御情報に基づいて第2バルブ11を制御することができる。このようにエンジンが停止中は、制御装置2全体に電力を供給することなく、必要な制御部であるセキュリティECU19だけに電力を供給することによって、制御装置2全体の消費電流を低減することができる。したがって車両の燃費を向上することができる。
【0068】
次に、それぞれの構成による効果を分説する。(1)本実施の形態では、エアコンECU18とセキュリティECU19とは、電気的に接続されており通信可能であるので、物理的に分離されたエアコンECU18とセキュリティECU19とは制御情報を互いに送受信することができる。これによってエアコンECU18によって演算される制御情報を送信することによって、セキュリティECU19は第2バルブ11を制御することができる。したがってエンジン動作中のみならず停止中をも含んだ動作範囲で制御可能であり、エアコンECU18は、冷凍サイクル装置1全体を一貫して制御することができる。
【0069】
(2)エンジン停止中に電流消費する制御部であるセキュリティECU19は、エアコンECU18とは物理的に分離した構成である。したがってエンジン停止中に動作の必要がなくなったエアコンECU18への給電を停止することができる。これによってエンジン停止中における制御装置2自体の消費電流を低減することができる。
【0070】
(3)エアコンECU18は、各種センサによってエンジンが停止したことを検出すると、エンジン停止中に実施すべき制御を演算し、演算した制御情報をセキュリティECU19に送信する。セキュリティECU19は、送信された制御情報をメモリ30に記憶し、エアコンECU18から与えられるトリガ情報に従い、メモリ30された制御を開始することができる。これによってセキュリティECU19は、エンジン停止中に第2バルブ11をより最適に制御できる。換言すると、エアコンECU18は、エンジン停止中の冷凍サイクル装置1の冷媒の状態などに基づいて、制御情報を生成することができる。これによってエアコンECU18は、より適切なタイミングで第2バルブ11を制御するなどの高度な制御に基づく制御情報を生成することができる。したがって第2バルブ11をより適切に制御することができるので、操作者により快適な空調空間を提供することができる。
【0071】
これら(1)から(3)に記載した効果によって、前述したように本実施の形態のエアコンECU18では、エンジン動作中のみならず停止中をも含んだ動作範囲で制御可能である。また本実施の形態のエアコンECU18では、エンジン停止中の快適性を制御しかつ省エネ効果を得るために、エンジン停止中における制御装置2自体の消費電流を低減することができ、かつエンジン停止中の第2バルブ11の開閉制御をより最適に制御できることを実現することができる。
【0072】
またセキュリティECU19は、車両に搭載され盗難防止機能を実行するための制御部である。このようなセキュリティECU19に、第2バルブ11を制御させることができるので、比較例のエアコンECUの物理的な構成を変更することなくソフトウェアの変更などの軽微な変更によって本実施の形態の構成および効果を実現することができる。したがってセキュリティECU19は、第2バルブ11の制御情報を生成することがなく、エアコンECU18が演算した制御情報に従って制御するだけであるので、たとえば車種により異なる室内熱負荷および冷房能力などに起因する制御バリエーションの影響を受けないので、セキュリティECU19は車種によらず共用化できるという利点がある。
【0073】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態に関して、図5を用いて説明する。図5は、本実施の形態のエアコンECU18およびセキュリティECU19の空調制御処理を示すフローチャートである。本実施の形態ではエアコンECU18は、定期的に制御情報をセキュリティECU19に送信する点に特徴を有する。また第2バルブ11は、ノーマリーオープンのバルブである点に特徴を有する。ノーマリーオープンのバルブとは、通電状態で閉状態となり、非通電状態では開状態となるバルブである。
【0074】
第2バルブ11は、ノーマリーオープンであるので、通電状態では閉状態であり、非通電状態では開状態となる。換言すると、第2バルブ11は、非通電のときバルブ状態が所望する状態となるようにそのバルブタイプが予め選定された構成である。第2バルブ11は、たとえば非通電状態、換言すると自然状態ではばねなどの弾発手段によって開状態が維持されるように構成される。このような第2バルブ11に通電することによって、弾発手段の押圧力に抗して電磁駆動力が作用することによって、開状態から閉状態に切替えられる。
【0075】
次に、制御装置2の空調制御処理に関して説明する。本フローは、イグニッションスイッチがオンされて制御装置2に電力が供給されて起動されると開始される。図5(1)に示すエアコンECU18の空調制御処理と図5(2)に示すセキュリティECU19の空調制御処理とは並行して実行される。先ず、エアコンECU18の空調制御処理に関して説明する。
【0076】
ステップc1では、エアコンECU18の通常制御を実行し、定期的に第2バルブ11の制御情報を送信し、ステップc2に移る。ステップc2では、エコラン中であるか否かを判断し、エコラン中であると、ステップc3に移り、エコラン中でないとステップc1の処理を繰り返す。ステップc3では、エコラン中であるので、放冷モードに移行するために、第1バルブ10および第3バルブ12を閉状態に制御し、ステップc4に移る。ステップc4では、リレー回路22を制御してエアコンECU18への電源からの電力の供給を停止し、本フローを終了する。
【0077】
このようにエアコンECU18は、定期的に生成した第2バルブ11を制御するため制御情報をセキュリティECU19に送信する。そしてエンジンが停止すると、エアコンECU18は、第1バルブ10および第3バルブ12を閉状態となるように制御して放冷モードに移行するための準備をし、停止する。
【0078】
次に、セキュリティECU19の空調制御処理に関して説明する。本フローは、セキュリティECU19が通常制御を実行している状態で短時間に繰り返し実行される。ステップd1では、エアコンECU18から第2バルブ11の制御情報を受信した否かを判断し、受信した場合、ステップd4に移り、受信していない場合、ステップd2に移る。ステップd2では、制御情報を受信していないので、エアコンECU18による制御情報の送信が途絶されたか否かを判断し、途絶していると判断した場合、ステップd3に移り、途絶していないと判断した場合、ステップd4に移る。このような途絶の判定は、たとえば制御情報を受信していない期間が予め定める途絶期間より長いが否かによって判定する。
【0079】
ステップd3では、エアコンECU18が途絶していると判定されたので、第2バルブ11を開状態となるように制御し、本フローを終了する。本実施の形態では第2バルブ11は、ノーマリーオープンであるので、第2バルブ11への通電を停止する。ステップd4では、エアコンECU18が途絶していないので、第2バルブ11を受信した制御情報に基づいて制御し、本フローを終了する。
【0080】
このようにセキュリティECU19は、常にエアコンECU18から与えられる制御情報に基づいて第2バルブ11を制御し、通信が途絶すると第2バルブ11に通電を停止する。
【0081】
したがってエンジンが停止してから、エコラン移行準備をするのでなく、通常制御中に定期的に制御情報を送信することによって、常に予めエコラン移行準備している状態となる。これによってエコラン移行準備を短くすることができ、第1実施形態と比較すると図3(1)のステップa3〜ステップa8の処理をすることないので、その分だけくエコラン移行準備を短くすることができ、エアコンECU18が停止状態に移行するのを更に早めることができる。
【0082】
また本実施の形態では、第2バルブ11は、ノーマリーオープンであるので放冷モードに移行した後は第2バルブ11への通電は必要ない。これによって第2バルブ11の駆動電流を低減することができ、さらに消費電力を低減することができる。
【0083】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態に関して、図6および図7を用いて説明する。図6は、本実施の形態の制御装置2を簡略化して示す回路図である。本実施の形態のセキュリティECU19Aは、さらにカウンタ回路32を備える点に特徴を有する。カウンタ回路32は、計時手段であって、時刻を計時し、計時した時刻情報をセキュリティ用マイクロコンピュータ27に与える。セキュリティECU19Aは、時刻情報を用いて各部を制御するとき、カウンタ回路32から与えられる時刻情報を用いる。
【0084】
次に、制御装置2の空調制御処理に関して説明する。図7は、本実施の形態のエアコンECU18およびセキュリティECU19Aの空調制御処理を示すフローチャートである。本フローは、イグニッションスイッチがオンされて制御装置2に電力が供給されて起動されると開始される。図7(1)に示すエアコンECU18の空調制御処理と図7(2)に示すセキュリティECU19Aの空調制御処理とは並行して実行される。先ず、エアコンECU18の空調制御処理に関して説明する。
【0085】
ステップe1では、エアコンECU18の通常制御を実行し、定期的に第2バルブ11の制御情報を送信し、ステップe2に移る。ステップe2では、エコラン中であるか否かを判断し、エコラン中であると、ステップe3に移り、エコラン中でないとステップe1の処理を繰り返す。ステップe3では、エコラン中であるので、放冷モードに移行する条件であるトリガ条件を制御情報として送信し、ステップe4に移る。トリガ条件は、たとえば制御情報を送信してから3秒後に第2バルブ11を開状態にするという時刻情報を用いる条件である。ステップe4では、エコラン中であるので、放冷モードに移行するために、第1バルブ10および第3バルブ12を閉状態に制御し、ステップe5に移る。ステップe5では、リレー回路22を制御してエアコンECU18への電源からの電力の供給を停止し、本フローを終了する。
【0086】
このようにエアコンECU18は、エコラン中になると放冷モードに切替えためのトリガ条件を送信する。その後、エアコンECU18は、第1バルブ10および第3バルブ12を閉状態となるように制御して放冷モードに移行するための準備をし、停止する。
【0087】
次に、セキュリティECU19Aの空調制御処理に関して説明する。本フローは、セキュリティECU19Aが通常制御を実行している状態で短時間に繰り返し実行される。ステップf1では、エアコンECU18から第2バルブ11の制御情報を受信した否かを判断し、受信した場合、ステップf2に移り、受信していない場合、本フローを終了する。
【0088】
ステップf2では、受信した制御情報をメモリ30に記憶し、メモリ30に記憶される制御情報に基づいて、通常制御のための制御情報であるか否かを判断し、通常制御のための制御情報である場合、ステップf5に移り、通常制御のための制御情報でない場合、ステップf3に移る。換言すると、ステップf2では、制御情報にトリガ条件を含むか否かを判断し、トリガ条件を含む制御情報を通常制御のための制御情報でないと判断する。
【0089】
ステップf3では、通常制御のための制御情報ではなくトリガ条件に基づく制御情報であるので、メモリ30記憶されるトリガ条件を満足しているか否かを判断し、トリガ条件を満足した場合、ステップf4に移り、トリガ条件を満足していない場合、本フローを終了する。トリガ条件は、前述したように時刻情報が条件に含まれるので、カウンタ回路32から与えられる時刻情報を用いて、トリガ条件を満足した否かを判断する。ステップf4では、トリガ条件を満足しているので、第2バルブ11を開状態となるように制御し、本フローを終了する。またステップf5では、通常制御のための制御情報であるので、第2バルブ11を受信した制御情報に基づいて制御し、本フローを終了する。
【0090】
このようにセキュリティECU19Aは、常にエアコンECU18から与えられる制御情報をトリガ条件が含むか否かを判断し、トリガ条件を含む場合、トリガ条件を満足すると第2バルブ11を開状態にする。したがってトリガ条件に基づいて第2バルブ11を制御するので、セキュリティECU19Aは、状況に応じた切替えタイミングの動的な変更に対応することができる。これによってセキュリティECU19Aによるエコラン中の制御性をさらに向上することができる。
【0091】
またセキュリティECU19Aは、制御情報を記憶可能なメモリ30を有するので、記憶される制御情報に基づいて前述のように第2バルブ11をより高度に制御することができる。このように動作タイミング(アクティベート期間)の異なる他のECUであるセキュリティECU19Aのメモリ30を利用することによって、エアコンECU18は所望のタイミングで第2バルブ11の制御を実行することができる。
【0092】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4の実施形態に関して、図8を用いて説明する。図8は、本実施の形態の制御装置2を簡略化して示す回路図である。本実施の形態のセキュリティECU19Bは、さらにセンサ34からの情報をA/D変換するA/D変換部33を備える点に特徴を有する。センサ34は、前述したエアコンECU18に接続される各種のセンサのうち、冷媒の状態量を検出する検出手段であって、たとえば蒸発器温度センサおよび蒸発器後温度センサである。このようなセンサ34が検出したセンサ検出信号は、A/D変換部33を介してセキュリティ用マイクロコンピュータ27に与えられる。セキュリティECU19Bは、センサ検出信号を用いて各部を制御するとき、A/D変換部33から与えられるセンサ検出信号を用いる。
【0093】
このような制御装置2の空調制御処理は、前述した図7と同様の処理によって実現され、トリガ条件が前述した第3の実施形態とは異なる。トリガ条件は、検出した冷媒の状態量に基づく条件であって、たとえば蒸発器後温度センサ34が4℃を検出したときに第2バルブ11を開状態にするというセンサ検出信号を用いる条件である。このようにセキュリティECU19Bは、センサ検出信号の値とトリガ条件となるしきい値との比較などによって、第2バルブ11の切替えタイミングを制御する。
【0094】
したがってトリガ条件に基づいて第2バルブ11を制御するので、セキュリティECU19Bは、状況に応じた切替えタイミングの動的な変更に対応することができる。これによってセキュリティECU19Bによるエコラン中の制御性をさらに向上することができる。
【0095】
(その他の実施形態)
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々変形して実施することが可能である。
【0096】
前述の実施の形態では、第2制御部は、セキュリティECU19によって実現されたがセキュリティECU19に限ることはなく、他のECUであってもよい。第2制御部は、エアコンECU18が機能を停止している間も機能しつづけることができ、かつエアコンECU18が生成する制御情報に基づいて、第2バルブ11を制御することができる構成であればよい。
【0097】
また前述の実施の形態では、弁手段は第2バルブ11によって実現されるが、第2バルブ11に限ることはなく、駆動源が停止中に冷媒の流路を変更して、いわゆる放冷モードにすべき弁手段であればよい。また前述の実施の形態では、駆動源としてエンジンを用いたが、たとえばモータなど他の駆動源であってもよい。
【0098】
また前述の実施の形態では、エアコンECU18は、電力を削減するために停止状態に切替えられるが、停止状態に限ることはなく、通常状態より電力の消費が小さい省電力状態であってもよい。省電力状態は、たとえばエアコン用マイクロコンピュータ20の動作用クロックを抑制することによって実現される。
【0099】
また前述の実施の形態では、第2実施形態だけノーマリーオープンのバルブを用いたが、他の実施形態で用いてもよく、冷媒の流路に応じて、ノーマリーオープンのバルブとは逆の構成のノーマリークローズのバルブを用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】第1実施形態の車両用の冷凍サイクル装置1および制御装置2を簡略化して示すシステム図である。
【図2】制御装置2を簡略化して示す回路図である。
【図3】エアコンECU18およびセキュリティECU19の空調制御処理を示すフローチャートである。
【図4】エンジン、エアコンECU18、セキュリティECU19および冷凍サイクル装置1の動作状態を示すタイミングチャートである。
【図5】第2実施形態のエアコンECU18およびセキュリティECU19の空調制御処理を示すフローチャートである。
【図6】第3実施形態の制御装置2を簡略化して示す回路図である。
【図7】第3実施形態のエアコンECU18およびセキュリティECU19Aの空調制御処理を示すフローチャートである。
【図8】第4実施形態の制御装置2を簡略化して示す回路図である。
【符号の説明】
【0101】
1…冷凍サイクル装置
2…制御装置
3…圧縮機
4…凝縮器
5…第1膨張弁(減圧手段)
6…蒸発器
10…第1バルブ
11…第2バルブ(弁手段)
12…第3バルブ
13…蓄冷タンク(蓄冷部)
18…エアコンECU(第1制御部)
19…セキュリティECU(第2制御部)
30…メモリ(記憶部分)
32…カウンタ回路(計時手段)
34…センサ(検出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷凍サイクル装置(1)を有する車両を制御する制御装置(2)であって、
前記冷凍サイクル装置は、
駆動源によって駆動され、冷媒流路(8,14〜16)を循環する冷媒を圧縮して吐出する圧縮機(3)と、
前記圧縮機で圧縮された冷媒を凝縮する凝縮器(4)と、
前記凝縮器で凝縮された冷媒を減圧する減圧手段(5)と、
前記減圧手段で減圧された冷媒を蒸発させ、蒸発させた冷媒を前記圧縮機に与える蒸発器(6)と、
前記冷媒流路に設けられ、冷媒の冷熱を蓄える蓄冷部(13)と、
前記冷媒流路に設けられ、前記蓄冷部への蓄冷および前記蓄冷部からの放冷とを切替えるための弁手段(15)と、を含み、
前記制御装置は、
冷媒の循環量を制御する制御部であって、前記駆動源が停止すると、与えられる電力の供給状態を通常状態から通常状態より電力の消費が小さい省電力状態または動作を停止している停止状態に切替える第1制御部(18)と、
車両を制御する制御部であって、前記第1制御部と電気的に接続され、前記弁手段の開度を制御するとともに、車両を構成する他の制御対象物を制御する第2制御部(19)と、を含み、
前記第1制御部は、前記弁手段を制御するための制御情報を生成し、生成した前記制御情報を前記第2制御部に与え、前記駆動源が停止すると電力の供給状態を通常状態から省電力状態または停止状態に移行し、
前記第2制御部は、前記第1制御部から与えられる制御情報に基づいて、前記弁手段を制御することを特徴とする制御装置。
【請求項2】
前記第1制御部は、前記駆動源が停止後、前記弁手段を制御するための前記制御情報を生成し、生成した前記制御情報を前記第2制御部に与えるとともに、前記制御情報を与えた後に起動状態から省電力状態または停止状態に切替えることを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記第2制御部は、情報を記憶する記憶部分(30)を有し、前記第1制御部から与えられる前記制御情報を前記記憶部分に記憶し、前記記憶部分に記憶される前記制御情報に基づいて、前記駆動源が停止中に前記弁手段を制御することを特徴とする請求項1または2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記第2制御部は、前記駆動源が停止中に前記車両が不正に操作されること防ぐ盗難防止機能を制御することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の制御装置。
【請求項5】
前記第2制御部は、前記弁手段に駆動電流を与えることによって、開状態と閉状態とを切替え、
前記弁手段は、通電状態では、開状態および閉状態のいずれか一方となり、非通電状態では、開状態および閉状態のいずれか他方となることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の制御装置。
【請求項6】
時刻を計時する計時手段(32)をさらに含み、
前記制御情報は、前記弁手段の開度を予め定める開度に調節する時刻に基づく時刻情報を含み、
前記第2制御部は、前記計時手段から与えられる時刻と、前記時刻情報を含む前記制御情報とに基づいて、前記弁手段を制御することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の制御装置。
【請求項7】
前記冷媒の状態量を検出する検出手段(34)をさらに含み、
前記制御情報は、前記弁手段の開度を予め定める開度に調節する冷媒の状態量に基づく情報を含み、
前記第2制御部は、前記検出手段から与えられる冷媒の状態量と前記制御情報とに基づいて、前記弁手段を制御することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−298391(P2009−298391A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−158486(P2008−158486)
【出願日】平成20年6月17日(2008.6.17)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】