制御装置
【課題】制御対象モデルが非線形であったり、従来の制御モデルで表現できなかったりする場合においても、制御対象とそれを制御する制御器のフィードバック結合の応答特性を調整することができる制御装置を提供する。
【解決手段】制御装置100の中に制御対象モデルと制御演算を模擬する閉ループ応答模擬部20が設けられる。そして閉ループ応答模擬部20に、調整パラメータと制御性能評価を関連付けるマップを作成する機能をもたせる。こうすることで、制御対象50が非線形性を含む場合などで、従来の線形制御理論がそのまま適用できないケースであっても、適切に制御演算部10における調整パラメータを調整することができる。
【解決手段】制御装置100の中に制御対象モデルと制御演算を模擬する閉ループ応答模擬部20が設けられる。そして閉ループ応答模擬部20に、調整パラメータと制御性能評価を関連付けるマップを作成する機能をもたせる。こうすることで、制御対象50が非線形性を含む場合などで、従来の線形制御理論がそのまま適用できないケースであっても、適切に制御演算部10における調整パラメータを調整することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御対象モデルが非線形であったり、従来の制御モデルで表現できなかったりする場合においても、制御対象と制御器のフィードバック結合の応答特性を調整することができる制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
制御対象のモデルを用いて制御パラメータを設計する技術が知られている。例えば、周波数応答モデルに基づくループ整形や、伝達関数モデルや状態空間モデルに基づく最適制御、ロバスト制御などが挙げられる。
【0003】
これらの技術は、対象モデルを数式上で表現し、制御対象と制御器とを結合した開ループ応答や閉ループ応答が、より望ましい特性となるような制御器を設計する技術である。
また、PID制御の比例ゲイン、微分ゲイン、積分ゲインの3つのパラメータを調整する方法として、Ziegler-Nicholsの限界感度法やステップ応答法、CHR法などが知られている。これらの方法は閉ループのリミットサイクル応答や制御対象のステップ応答などからパラメータを調整する技術である。
【0004】
また、特許文献1には、制御対象が無駄時間と一次遅れ関数で近似でき、かつ制御装置がPID制御である場合において、ステップ状の外乱を加えた場合の波形を画面表示することで適切なPIDパラメータを調整する技術が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、制御対象が一次遅れ関数で近似でき、かつ制御装置がPID制御である場合において、閉ループ応答の特徴量からファジー推論を用いることで適切なPIDパラメータを調整する技術が開示されている。
【0006】
上記いずれの技術においても、制御対象が線形であり、周波数応答が一意に定まることを前提としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−31920号公報
【特許文献2】特開平2−308303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
制御対象モデルが非線形であったり、従来の制御モデルで容易に表現できなかったりする場合、制御対象と制御器をフィードバック結合した際の閉ループの特性を解析することは困難であるという課題があった。
【0009】
例えば、動作点によってゲインが変化する制御対象に対してPID制御を適用した場合、閉ループが安定となるPIDパラメータを求めることは従来のZiegler-Nicholsの限界感度法などのPIDパラメータ調整法では困難である。
【0010】
そのため、ある動作点付近で制御対象が線形であることを仮定してPIDパラメータを求めることが行われているが、設定値などの動作点が変わると制御性能の低下が生じ、制御対象の操業に影響を与えてしまうことがある。
【0011】
また、制御対象がスイッチのON/OFFなどの離散的な動作を含んでいる場合、伝達関数などの形式で表現することができず、伝達関数や状態空間モデルに基づいた設計法が適用困難である。
【0012】
そこで本発明の目的は、制御対象モデルが非線形であったり、従来の制御モデルで表現できなかったりする場合においても、制御対象とそれを制御する制御器のフィードバック結合の応答特性を調整可能な制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した課題を解決するために請求項1に係る発明は、
内部に調整パラメータを有する制御装置において、
前記制御装置は、制御演算部と、閉ループ応答模擬部と、性能評価部と、調整パラメータマップ作成部とを有し、
前記制御演算部は、
前記調整パラメータに基づき制御演算を行う機能を有し、
前記閉ループ応答模擬部は、
制御量目標値を生成する目標値生成手段と、
擬似外乱を生成する擬似外乱生成手段と、
制御対象の応答を模擬するモデル応答模擬手段と、
前記制御演算部の制御演算を模擬する制御演算模擬手段によって構成し、
前記調整パラメータを前記制御演算模擬手段に設定して、前記制御対象と前記制御演算部とが構成する閉ループの前記擬似外乱に対する応答信号を繰り返し演算により生成する機能を有し、
前記性能評価部は、
前記閉ループ応答模擬部により生成された応答信号から制御性能評価を計算する機能を有し、
前記調整パラメータマップ作成部は、
前記調整パラメータを順次変化させて前記制御性能評価を繰り返すことで、
調整パラメータ毎の前記制御性能評価を対応づける調整パラメータマップを作成し、
調整パラメータの推奨値を前記制御演算部に出力する機能を有する、
ことを特徴とする。
【0014】
また請求項2に係る発明は、
請求項1記載の制御装置において、前記閉ループ応答模擬部は、
前記調整パラメータが設定された前記制御演算模擬手段の出力と前記擬似外乱生成手段が生成する擬似外乱との偏差を前記モデル応答模擬手段に入力し、
前記モデル応答模擬手段の出力と前記目標値生成手段が生成する制御量目標値とを前記制御演算模擬手段に入力することで、
前記制御対象と前記制御演算部とが構成する閉ループの前記擬似外乱に対する応答信号を繰り返し演算により生成する
ことを特徴とする。
【0015】
また請求項3に係る発明は、
請求項1記載の制御装置において、前記制御性能評価として、
操作量および制御量の重み付き2ノルム評価を用いる
ことを特徴とする。
【0016】
また請求項4に係る発明は、
請求項1記載の制御装置において、前記制御性能評価として、
初期時刻0から最終時刻Tまでの間において、
適当な時刻T0を設定し、
時刻0から時刻T0までの前記応答信号の絶対値の最大値の対数をA1、
時刻0から時刻Tまでの前記応答信号の絶対値の最大値の対数をA2、
として、
(A2−A1)/(T−T0)
で定義される値を用いることを特徴とする。
【0017】
また請求項5に係る発明は、
請求項1から請求項4のいずれかに記載の制御装置において、
前記調整パラメータマップを、
テキストの表形式、または、
3次元の図形式、または、
2次元もしくは3次元の等高線形式、または、
2次元もしくは3次元の濃淡画像形式、
で出力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、制御対象モデルが非線形であったり、従来の制御モデルで表現できなかったりする場合においても、制御対象と制御器のフィードバック結合の応答特性を調整することができ、かつ、外乱に対する閉ループ応答がわかるため、調整パラメータごとの制御性能評価を得ることができる。
【0019】
また、制御性能評価と調整パラメータとの関係が調整パラメータマップにより分かるため、調整パラメータが適切となる範囲や最適値を明確化することができる。
例えば、調整パラメータによって閉ループの安定性が保たれるパラメータの範囲が分かるため、安定性に余裕をもたせたロバストな調整パラメータを選択することができる。
【0020】
さらに、調整パラメータと制御性能評価との関係が視覚的に表示されることにより、制御装置を扱う現場のオペレータの作業を支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態に係る制御装置の全体構成を示す図である。
【図2】図1に示した擬似外乱生成手段で生成される外乱の詳細例を示す図である。
【図3】図1に示した閉ループ応答模擬部が有する機能およびその機能により実行される動作内容を示す図である。
【図4】図1に示した調整パラメータマップ作成部が有する機能およびその機能により実行される動作内容を示す図である。
【図5】図1に示した性能評価部における具体的な性能評価値の計算方法を説明する図である。
【図6】図1に示した性能評価部における具体的な性能評価値の図5に示すものとは異なる計算方法を説明する図である。
【図7】図6に示した性能評価部における性能評価値の算出方法の説明を補足する図である。
【図8】図1に示したモデル応答模擬手段におけるモデル応答の模擬内容を説明する図である。
【図9】図1に示した制御演算模擬手段における制御演算の内容を説明する図である。
【図10】図1に示した閉ループ応答模擬部における、モデル応答模擬手段,制御演算模擬手段の具体的な模擬演算の内容、および、調整パラメータとパラメータの範囲を示す図である。
【図11】図5に示した性能評価部で用いる評価式J1と計算条件の具体例を示す図である。
【図12】図1に示した疑似外乱生成手段で生成した外乱dと目標値生成手段で生成した制御量目標値rの値を示すグラフである。
【図13】パラメータα,βを(α、β=(7、0.25)に固定した場合の閉ループ応答模擬部によって計算された閉ループ応答と評価式J1の値を説明する図(その1)である。
【図14】パラメータα,βを(α、β=(7、0.25)に固定した場合の閉ループ応答模擬部によって計算された閉ループ応答と評価式J1の値を説明する図(その2)である。
【図15】図1に示した調整パラメータマップ作成部で作成したテキスト形式の調整パラメータマップを示す表(マトリクス)である。
【図16】図1に示した調整パラメータマップ作成部で作成した3次元形式の調整パラメータマップを示すグラフである。
【図17】図1に示した調整パラメータマップ作成部で作成した等高線形式の調整パラメータマップを示すグラフである。
【図18】図1に示した閉ループ応答模擬部における、モデル応答模擬手段,制御演算模擬手段の図10とは異なる具体的な模擬演算の内容、および、調整パラメータとパラメータの範囲を示す図である。
【図19】図6に示した性能評価部で用いる評価式J3と計算条件の具体例を示す図である。
【図20】図1に示した調整パラメータマップ作成部で作成した図15に示すものとは異なるテキスト形式の調整パラメータマップを示す表(マトリクス)である。
【図21】図1に示した調整パラメータマップ作成部で作成した図16に示すものとは異なる3次元形式の調整パラメータマップを示すグラフである。
【図22】図19に示した評価式で求めた評価値J3が0である、(P、TI)=(4、0.025)のときの応答を示すグラフである。
【図23】図19に示した評価式で求めた評価値J3が正の値である、(P、TI)=(2、0.015)のときの応答を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る制御装置の全体構成を示す図である。
図1に示すように本発明の実施形態に係る制御装置は、制御演算部10と閉ループ応答模擬部20と性能評価部30と調整パラメータマップ作成部40とを有する。制御演算部10は制御対象50から制御量110を観測し、外部から入力された制御量目標値120と、内部に保持する調整パラメータ(図示せず)を用いて制御演算を行い、操作量140を出力する。制御演算部10が内部に保持する調整パラメータは、調整パラメータマップ作成部40が記憶する推奨値が設定される。
【0023】
閉ループ応答模擬部20は、目標値生成手段21と擬似外乱生成手段22とモデル応答模擬手段23と制御演算模擬手段24を有する。制御演算模擬手段24は、制御演算部10を模擬したものであり、調整パラメータマップ作成部40が記憶する値が調整パラメータとして設定される。閉ループ応答模擬部20によって、制御対象50と制御演算部10の閉ループ動作を模擬する。閉ループ応答模擬部20による閉ループ動作模擬の際には、制御量目標値rを目標値生成手段21で発生し、制御対象50に加わる外乱130を想定した擬似外乱dを擬似外乱生成手段22で発生し、擬似外乱dから操作量uを減じた値を操作入力量hとし、モデル応答模擬手段23で操作入力量hに基づく制御量yを計算し、制御演算模擬手段24で制御量目標値rと制御量yに基づく操作量uを計算するという演算ループを繰り返し実行する。
【0024】
図2は、図1に示した擬似外乱生成手段で生成される外乱の詳細例を示す図である。擬似外乱生成手段22によって生成される擬似外乱は、インパルス外乱(図上段)、ステップ外乱(図中段)、高周波外乱(図下段)などとして用いることができる。また、予め制御対象50の振動モードが既知である場合、対応する振動モードの周波数信号(正弦波など)を外乱として用いても構わない。
【0025】
図3は、図1に示した閉ループ応答模擬部が有する機能およびその機能により実行される動作内容を示す図である。
図3において閉ループ応答模擬部20は、まず、制御量目標値rおよび擬似外乱dを生成する(ステップS31〜S32)。次に閉ループ応答模擬部20は、時刻、操作量u、制御量y、制御量目標値r、操作入力量h、モデル応答模擬手段23の状態変数、制御演算模擬手段24の各初期値を設定する(ステップS33)。ここでモデル応答模擬手段23の状態変数の初期値は0ベクトルに設定しておいて構わない。また制御量yの初期値は制御量目標値rに設定しておいて構わない。さらに操作量uの初期値は制御対象50の定常となる値に設定しておいて構わない。定常となる値は制御量yが一定とした場合の制御演算部10の操作量を用いることができる。そして操作入力量hの初期値は操作量uに−1を乗じた値に設定しておいて構わない。制御演算模擬手段24が保持する調整パラメータの初期値は、調整パラメータマップ作成部40が記憶する値が設定される。
【0026】
次に閉ループ応答模擬部20は、操作入力量hの計算(ステップS34)、モデル応答の計算(ステップS35)、制御演算の計算(ステップS36)、時刻の更新(ステップS37)、終了条件の判定(ステップS38)という一連の動作を終了条件が満たされるまで繰り返す。これについては後で詳しく説明する。
【0027】
上記において終了条件は、時刻が予め決めておいた期間に達したかどうかや操作量u、制御量y、操作入力量hの大きさが閾値を越えたかどうかによって判定できる。
図1に示した調整パラメータマップ作成部40では、調整パラメータθを変化させた場合の性能評価値Jを対応づけるマップを作成するため、閉ループ応答模擬部20の制御演算模擬手段24の調整パラメータθを変化させて性能評価値Jを得る処理を繰り返す。これについても後で詳しく説明する。
【0028】
図4は、図1に示した調整パラメータマップ作成部が有する機能およびその機能により実行される動作内容を示す図である。
図4において調整パラメータマップ作成部40は、まず、調整パラメータθの初期値を制御演算模擬手段24に設定する(ステップS41)。次に調整パラメータマップ作成部40は、調整パラメータの設定(ステップS42)、閉ループ応答模擬(ステップS43)、性能評価(ステップS44)、終了条件の判定(ステップS45)という一連の動作を終了条件が満たされるまで繰り返す。
【0029】
上記において終了条件は、時刻が予め決めておいた期間に達したかどうかや調整パラメータθが予め決めておいた探索範囲に達したかどうかによって判定できる。
調整パラメータマップ作成部40では、終了条件が満たされたら調整パラメータマップを作成し(ステップS46)、作成された調整パラメータマップに基づき、性能評価値Jが最適となるような調整パラメータを推奨パラメータθ*として出力する。
【0030】
推奨パラメータθ*は図1に示される制御演算部10に入力され、制御演算部10の演算に用いる。
以上における閉ループ応答模擬部20の閉ループ動作模擬の結果、得られた閉ループの操作量uおよび操作入力量hおよび制御量yの信号系列は、性能評価部30に入力され、性能評価部30では、入力信号系列に基づいた性能評価値Jを計算する。これについては後で詳しく説明する。
【0031】
図5は、図1に示した性能評価部における具体的な性能評価値の計算方法を説明する図である。
図5に示されるように性能を評価する評価式として、
制御量と制御量目標値との偏差および操作量の重み付き2次積分形式の評価式(評価式1)(以下に示す式1参照。式中のQ・Wは重み)と、
【0032】
【数1】
制御量と制御量目標値との偏差および操作変化量の重み付き2次積分形式の評価式(評価式2)(以下に示す式2参照。式中のQ・Rは重み)と、
【0033】
【数2】
を用いる。なお操作変化量は操作量の1時刻毎の変化量に基づき算出する。
【0034】
上述した評価式1及び2に基づいて性能評価部30は性能評価値を算出する。
図6は、図1に示した性能評価部における具体的な性能評価値の図5に示すものとは異なる計算方法を説明する図である。
【0035】
図6に示されるように性能を評価する評価式として、
時刻0から時刻T0までを第1の評価区間とし、
時刻0から最終時刻Tを第2の評価区間とし、
操作入力量hのノルムの
第1の評価区間での最大値の対数と
第2の評価区間での最大値の対数との差を
T−T0で割った第1の値と、
操作量uのノルムの
第1の評価区間での最大値の対数と
第2の評価区間での最大値の対数との差を
T−T0で割った第2の値と、
制御量yのノルムの
第1の評価区間での最大値の対数と
第2の評価区間での最大値の対数との差を
T−T0で割った第3の値と、
の3つの値のうちの最大値を性能評価値とする評価式3(以下に示す式3参照)を用いるものである。
【0036】
【数3】
図7は、図6に示した性能評価部における性能評価値の算出方法の説明を補足する図である。
【0037】
図7に示されるように操作入力量系列が時刻0から時刻Tまである場合、第1の評価区間[0、T0]での操作入力量のノルムの最大値がlaで与えられ、第2の評価区間[0、T]での操作入力量のノルムの最大値がlbで与えられるものとする。このとき、前記第1の値は、(ln(lb)−ln(la))/(T−T0)で求められる。
【0038】
図8は、図1に示したモデル応答模擬手段におけるモデル応答の模擬内容を説明する図である。
図8に示されるようにモデル応答模擬手段23は、操作入力量hを入力として、以下の式4に基づいて制御量yを出力する。
【0039】
【数4】
すなわち、まず、出力モデル関数Hと1時刻前の状態変数xpと操作入力量hに基づき制御量を計算する。
【0040】
次に、状態更新モデル関数Gと1時刻前の状態変数xpと操作入力量hに基づき、状態変数を更新する。
図9は、図1に示した制御演算模擬手段における制御演算の内容を説明する図である。
【0041】
図9に示されるように制御演算模擬手段24は、制御量yと制御量目標値rと調整パラメータθを入力として以下の式5に基づいて操作量uを出力する。
【0042】
【数5】
すなわち、まず、制御量yと制御量目標値rとの差を制御偏差eとして計算する。
【0043】
次に、出力制御関数Rと1時刻前の状態変数xcと制御偏差eに基づき操作量uを計算する。
次に、状態更新制御関数Qと1時刻前の状態変数xcと制御偏差eに基づき、状態変数を更新する。出力制御関数Rと状態更新制御関数Qは調整パラメータθに依存する汎関数である。
【実施例1】
【0044】
本発明に係る第1の実施例を、図10ないし図17を用いて説明する。
図10は、図1に示した閉ループ応答模擬部における、モデル応答模擬手段,制御演算模擬手段の具体的な模擬演算の内容、および、調整パラメータとパラメータの範囲を示す図である。
【0045】
モデル応答模擬手段23におけるモデル応答は、以下の式6に示すように1次の状態変数x(t)を有するが、操作入力量hが正の場合と負の場合でゲインが異なっている。
【0046】
【数6】
また、制御演算模擬手段24における制御演算は、以下の式7に示すように+α、0、−αの3レベルの出力であり、かつ±βの不感帯を有している。
【0047】
【数7】
また、上述したαおよびβは制御演算の調整パラメータθのパラメータで且つαおよびβは以下の式8に示すように、それぞれ図10の右下に示す範囲に設定されている。
【0048】
【数8】
この場合、図1に示す制御演算部10は従来の制御理論で扱われる形式に帰着されず、かつ、制御対象モデルが非線形特性を持つため、従来法によるパラメータ調整が適用できないものであっても本発明の第1の実施例に示す手法を適用することができる。
【0049】
図11は、図5に示した性能評価部で用いる評価式J1と計算条件の具体例を示す図である。図11において評価式J1は以下の式9で表される。
【0050】
【数9】
すなわち、上記式9で表される評価式J1は、
制御量yと制御量目標値rとの制御偏差eの2乗に重み30をかけた値と、
操作量uの2乗
との和を
時間区間T0〜Tに渡って積分した値
によって表現されたものを用いている。この場合、計算条件としては、時間刻みdtは10[ms]で、最大時刻Tは2000[ms]である。
【0051】
図12は、図1に示した疑似外乱生成手段で生成した外乱dと目標値生成手段で生成した制御量目標値rの値を示すグラフである。
制御対象が非線形である場合は、図1に示した閉ループ応答模擬部20の目標値生成手段21は複数の段階の目標値を生成することが好適である。
【0052】
図13は、パラメータα,βを(α、β=(7、0.25)に固定した場合の閉ループ応答模擬部によって計算された閉ループ応答と評価式J1の値を説明する図(その1)である。図14は、パラメータα,βを(α、β=(7、0.25)に固定した場合の閉ループ応答模擬部によって計算された閉ループ応答と評価式J1の値を説明する図(その2)である。
【0053】
図12ないし図14を概観すれば、外乱dおよび制御量目標値rの変更に対して、操作量uが変化し、結果として制御量yが制御量目標値rに漸近していく様子が分かる。しかし、不感帯の影響により、制御偏差eは0に収束はしない。
【0054】
図15は、図1に示した調整パラメータマップ作成部で作成したテキスト形式の調整パラメータマップを示す表(マトリクス)である。
図15に示されているように、パラメータαおよびβを調整範囲の中で変化させた場合の図11に示した評価式J1の値を表(マトリクス)の形で示している。
【0055】
ここで推奨調整パラメータは、図11の表中で最も評価値が良いパラメータとすることができる。
図13に示しているように、(α、β)=(7、0.25)はJ1=80.49であり、図15の表(マトリクス)中で最小であるため、推奨パラメータθ*とすることができる。
【0056】
図16は、図1に示した調整パラメータマップ作成部で作成した3次元形式の調整パラメータマップを示すグラフである。
図16に示されているように、パラメータαおよびβを調整範囲の中で変化させた場合の図11に示した評価式J1の値を3次元図の形で示したものである。
【0057】
図17は、図1に示した調整パラメータマップ作成部で作成した等高線形式の調整パラメータマップを示すグラフである。
図17に示されているように、パラメータαおよびβを調整範囲の中で変化させた場合の図11に示した評価式J1の値を等高線図の形で示したものである。
【実施例2】
【0058】
本発明に係る第2の実施例を、図18ないし図23を用いて説明する。
図18は、図1に示した閉ループ応答模擬部における、モデル応答模擬手段,制御演算模擬手段の図10とは異なる具体的な模擬演算の内容、および、調整パラメータとパラメータの範囲を示す図である。
【0059】
モデル応答模擬手段23におけるモデル応答は、以下の式10に示すように1次の状態変数x(t)を有するが、操作入力量hが正の場合と負の場合でゲインが異なっている。
【0060】
【数10】
また、制御演算模擬手段24における制御演算は、以下の式11に示すように比例帯をP、積分時間をTIとするPI制御である。
【0061】
【数11】
また、上述したPおよびTIは制御演算の調整パラメータθのパラメータで且つPおよびTIは以下の式12に示すように、それぞれ図18の右下に示す範囲に設定されている。
【0062】
【数12】
図19は、図6に示した性能評価部で用いる評価式J3と計算条件の具体例を示す図である。図19において評価式J3は以下の式13で表される。
【0063】
【数13】
すなわち、上記式13で表される評価式J3は、制御量yに関して図6に示した評価値J3を求めるためのものである。
【0064】
この場合、計算条件としては、時間刻みdtは10[ms]で、適当な時刻T0はTの半分の値である1000[ms]とした。
図20は、図1に示した調整パラメータマップ作成部で作成した図15に示すものとは異なるテキスト形式の調整パラメータマップを示す表(マトリクス)である。
【0065】
図20に示されているように、パラメータPおよびTIを調整範囲の中で変化させた場合の図19に示した評価式J3の値を表(マトリクス)の形で示したものである。
図21は、図1に示した調整パラメータマップ作成部で作成した図16に示すものとは異なる3次元形式の調整パラメータマップを示すグラフである。
【0066】
図21に示されているように、パラメータPおよびTIを調整範囲の中で変化させた場合の図19に示した評価式J3の値を3次元図の形で示したものである。
上述した図20および図21に示されるように、
評価値J3は,
PおよびTIが十分大きい範囲では0であり、
PおよびTIが十分小さい範囲では正の値をとる。
【0067】
これは
PおよびTIが十分大きい範囲では閉ループが安定であり、
PおよびTIが十分小さい範囲では閉ループが不安定である、
ことを示している。
【0068】
図22は、図19に示した評価式で求めた評価値J3が0である、(P、TI)=(4、0.025)のときの応答を示すグラフである。図23は、図19に示した評価式で求めた評価値J3が正の値である、(P、TI)=(2、0.015)のときの応答を示すグラフである。
【0069】
図22では、操作入力量hおよび制御量yが0に収束しており安定であるのに対し、図23では、操作入力量hおよび制御量yが発散しており不安定である。
したがって、図19に示した評価式で求めた求められた評価値J3が
0である場合には安定、
正である場合には不安定として、
パラメータPおよびTIが安定となる領域を判定することができる。
【0070】
したがって、推奨パラメータは、図20で示した表(マトリクス)のうち、評価値J3が0であり、かつ評価値J3が正である不安定領域から十分な距離を保った領域の中から選択することができる。
【0071】
例えば、評価値J3が0であり、かつ評価値J3が正である不安定領域から十分な距離を保った領域として
4≦P≦10、0.025≦TI≦0.05
が推奨パラメータを選定する領域の候補となることを示すものである。
【0072】
以上について付言すれば、制御器の調整パラメータは可能な限り少なくしておく方がよい。できれば2個までにしておくことで、3次元図等に図示することができ、視覚的にどの点が最適であるかを把握しやすい。
【0073】
また制御対象モデルと制御演算部に共に直達項がある場合、代数ループが発生するが、閉ループに微小な無駄時間を挿入し、閉ループ応答模擬部の時刻更新幅を十分微小にしておくことで近似的に回避することができる。
【0074】
また上述した適当な時刻T0として、最終時刻Tの1/3〜2/3の範囲の値を用いるとよい。
また、閉ループ応答模擬部の応答模擬の時間Tは、プラントモデルの時定数に対して倍以上の十分長い値としておくことが望ましい。
【符号の説明】
【0075】
10 制御演算部
20 閉ループ応答模擬部
21 目標値生成手段
22 擬似外乱生成手段
23 モデル応答模擬手段
24 制御演算模擬手段
30 性能評価部
40 調整パラメータマップ作成部
50 制御対象
100 制御装置
110 制御量
120 制御量目標値
130 外乱
140 操作量
d 擬似外乱
e 制御偏差
h 操作入力量
J 性能評価値
r 制御量目標値
u 操作量
y 制御量
θ 調整パラメータ
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御対象モデルが非線形であったり、従来の制御モデルで表現できなかったりする場合においても、制御対象と制御器のフィードバック結合の応答特性を調整することができる制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
制御対象のモデルを用いて制御パラメータを設計する技術が知られている。例えば、周波数応答モデルに基づくループ整形や、伝達関数モデルや状態空間モデルに基づく最適制御、ロバスト制御などが挙げられる。
【0003】
これらの技術は、対象モデルを数式上で表現し、制御対象と制御器とを結合した開ループ応答や閉ループ応答が、より望ましい特性となるような制御器を設計する技術である。
また、PID制御の比例ゲイン、微分ゲイン、積分ゲインの3つのパラメータを調整する方法として、Ziegler-Nicholsの限界感度法やステップ応答法、CHR法などが知られている。これらの方法は閉ループのリミットサイクル応答や制御対象のステップ応答などからパラメータを調整する技術である。
【0004】
また、特許文献1には、制御対象が無駄時間と一次遅れ関数で近似でき、かつ制御装置がPID制御である場合において、ステップ状の外乱を加えた場合の波形を画面表示することで適切なPIDパラメータを調整する技術が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、制御対象が一次遅れ関数で近似でき、かつ制御装置がPID制御である場合において、閉ループ応答の特徴量からファジー推論を用いることで適切なPIDパラメータを調整する技術が開示されている。
【0006】
上記いずれの技術においても、制御対象が線形であり、周波数応答が一意に定まることを前提としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−31920号公報
【特許文献2】特開平2−308303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
制御対象モデルが非線形であったり、従来の制御モデルで容易に表現できなかったりする場合、制御対象と制御器をフィードバック結合した際の閉ループの特性を解析することは困難であるという課題があった。
【0009】
例えば、動作点によってゲインが変化する制御対象に対してPID制御を適用した場合、閉ループが安定となるPIDパラメータを求めることは従来のZiegler-Nicholsの限界感度法などのPIDパラメータ調整法では困難である。
【0010】
そのため、ある動作点付近で制御対象が線形であることを仮定してPIDパラメータを求めることが行われているが、設定値などの動作点が変わると制御性能の低下が生じ、制御対象の操業に影響を与えてしまうことがある。
【0011】
また、制御対象がスイッチのON/OFFなどの離散的な動作を含んでいる場合、伝達関数などの形式で表現することができず、伝達関数や状態空間モデルに基づいた設計法が適用困難である。
【0012】
そこで本発明の目的は、制御対象モデルが非線形であったり、従来の制御モデルで表現できなかったりする場合においても、制御対象とそれを制御する制御器のフィードバック結合の応答特性を調整可能な制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した課題を解決するために請求項1に係る発明は、
内部に調整パラメータを有する制御装置において、
前記制御装置は、制御演算部と、閉ループ応答模擬部と、性能評価部と、調整パラメータマップ作成部とを有し、
前記制御演算部は、
前記調整パラメータに基づき制御演算を行う機能を有し、
前記閉ループ応答模擬部は、
制御量目標値を生成する目標値生成手段と、
擬似外乱を生成する擬似外乱生成手段と、
制御対象の応答を模擬するモデル応答模擬手段と、
前記制御演算部の制御演算を模擬する制御演算模擬手段によって構成し、
前記調整パラメータを前記制御演算模擬手段に設定して、前記制御対象と前記制御演算部とが構成する閉ループの前記擬似外乱に対する応答信号を繰り返し演算により生成する機能を有し、
前記性能評価部は、
前記閉ループ応答模擬部により生成された応答信号から制御性能評価を計算する機能を有し、
前記調整パラメータマップ作成部は、
前記調整パラメータを順次変化させて前記制御性能評価を繰り返すことで、
調整パラメータ毎の前記制御性能評価を対応づける調整パラメータマップを作成し、
調整パラメータの推奨値を前記制御演算部に出力する機能を有する、
ことを特徴とする。
【0014】
また請求項2に係る発明は、
請求項1記載の制御装置において、前記閉ループ応答模擬部は、
前記調整パラメータが設定された前記制御演算模擬手段の出力と前記擬似外乱生成手段が生成する擬似外乱との偏差を前記モデル応答模擬手段に入力し、
前記モデル応答模擬手段の出力と前記目標値生成手段が生成する制御量目標値とを前記制御演算模擬手段に入力することで、
前記制御対象と前記制御演算部とが構成する閉ループの前記擬似外乱に対する応答信号を繰り返し演算により生成する
ことを特徴とする。
【0015】
また請求項3に係る発明は、
請求項1記載の制御装置において、前記制御性能評価として、
操作量および制御量の重み付き2ノルム評価を用いる
ことを特徴とする。
【0016】
また請求項4に係る発明は、
請求項1記載の制御装置において、前記制御性能評価として、
初期時刻0から最終時刻Tまでの間において、
適当な時刻T0を設定し、
時刻0から時刻T0までの前記応答信号の絶対値の最大値の対数をA1、
時刻0から時刻Tまでの前記応答信号の絶対値の最大値の対数をA2、
として、
(A2−A1)/(T−T0)
で定義される値を用いることを特徴とする。
【0017】
また請求項5に係る発明は、
請求項1から請求項4のいずれかに記載の制御装置において、
前記調整パラメータマップを、
テキストの表形式、または、
3次元の図形式、または、
2次元もしくは3次元の等高線形式、または、
2次元もしくは3次元の濃淡画像形式、
で出力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、制御対象モデルが非線形であったり、従来の制御モデルで表現できなかったりする場合においても、制御対象と制御器のフィードバック結合の応答特性を調整することができ、かつ、外乱に対する閉ループ応答がわかるため、調整パラメータごとの制御性能評価を得ることができる。
【0019】
また、制御性能評価と調整パラメータとの関係が調整パラメータマップにより分かるため、調整パラメータが適切となる範囲や最適値を明確化することができる。
例えば、調整パラメータによって閉ループの安定性が保たれるパラメータの範囲が分かるため、安定性に余裕をもたせたロバストな調整パラメータを選択することができる。
【0020】
さらに、調整パラメータと制御性能評価との関係が視覚的に表示されることにより、制御装置を扱う現場のオペレータの作業を支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態に係る制御装置の全体構成を示す図である。
【図2】図1に示した擬似外乱生成手段で生成される外乱の詳細例を示す図である。
【図3】図1に示した閉ループ応答模擬部が有する機能およびその機能により実行される動作内容を示す図である。
【図4】図1に示した調整パラメータマップ作成部が有する機能およびその機能により実行される動作内容を示す図である。
【図5】図1に示した性能評価部における具体的な性能評価値の計算方法を説明する図である。
【図6】図1に示した性能評価部における具体的な性能評価値の図5に示すものとは異なる計算方法を説明する図である。
【図7】図6に示した性能評価部における性能評価値の算出方法の説明を補足する図である。
【図8】図1に示したモデル応答模擬手段におけるモデル応答の模擬内容を説明する図である。
【図9】図1に示した制御演算模擬手段における制御演算の内容を説明する図である。
【図10】図1に示した閉ループ応答模擬部における、モデル応答模擬手段,制御演算模擬手段の具体的な模擬演算の内容、および、調整パラメータとパラメータの範囲を示す図である。
【図11】図5に示した性能評価部で用いる評価式J1と計算条件の具体例を示す図である。
【図12】図1に示した疑似外乱生成手段で生成した外乱dと目標値生成手段で生成した制御量目標値rの値を示すグラフである。
【図13】パラメータα,βを(α、β=(7、0.25)に固定した場合の閉ループ応答模擬部によって計算された閉ループ応答と評価式J1の値を説明する図(その1)である。
【図14】パラメータα,βを(α、β=(7、0.25)に固定した場合の閉ループ応答模擬部によって計算された閉ループ応答と評価式J1の値を説明する図(その2)である。
【図15】図1に示した調整パラメータマップ作成部で作成したテキスト形式の調整パラメータマップを示す表(マトリクス)である。
【図16】図1に示した調整パラメータマップ作成部で作成した3次元形式の調整パラメータマップを示すグラフである。
【図17】図1に示した調整パラメータマップ作成部で作成した等高線形式の調整パラメータマップを示すグラフである。
【図18】図1に示した閉ループ応答模擬部における、モデル応答模擬手段,制御演算模擬手段の図10とは異なる具体的な模擬演算の内容、および、調整パラメータとパラメータの範囲を示す図である。
【図19】図6に示した性能評価部で用いる評価式J3と計算条件の具体例を示す図である。
【図20】図1に示した調整パラメータマップ作成部で作成した図15に示すものとは異なるテキスト形式の調整パラメータマップを示す表(マトリクス)である。
【図21】図1に示した調整パラメータマップ作成部で作成した図16に示すものとは異なる3次元形式の調整パラメータマップを示すグラフである。
【図22】図19に示した評価式で求めた評価値J3が0である、(P、TI)=(4、0.025)のときの応答を示すグラフである。
【図23】図19に示した評価式で求めた評価値J3が正の値である、(P、TI)=(2、0.015)のときの応答を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る制御装置の全体構成を示す図である。
図1に示すように本発明の実施形態に係る制御装置は、制御演算部10と閉ループ応答模擬部20と性能評価部30と調整パラメータマップ作成部40とを有する。制御演算部10は制御対象50から制御量110を観測し、外部から入力された制御量目標値120と、内部に保持する調整パラメータ(図示せず)を用いて制御演算を行い、操作量140を出力する。制御演算部10が内部に保持する調整パラメータは、調整パラメータマップ作成部40が記憶する推奨値が設定される。
【0023】
閉ループ応答模擬部20は、目標値生成手段21と擬似外乱生成手段22とモデル応答模擬手段23と制御演算模擬手段24を有する。制御演算模擬手段24は、制御演算部10を模擬したものであり、調整パラメータマップ作成部40が記憶する値が調整パラメータとして設定される。閉ループ応答模擬部20によって、制御対象50と制御演算部10の閉ループ動作を模擬する。閉ループ応答模擬部20による閉ループ動作模擬の際には、制御量目標値rを目標値生成手段21で発生し、制御対象50に加わる外乱130を想定した擬似外乱dを擬似外乱生成手段22で発生し、擬似外乱dから操作量uを減じた値を操作入力量hとし、モデル応答模擬手段23で操作入力量hに基づく制御量yを計算し、制御演算模擬手段24で制御量目標値rと制御量yに基づく操作量uを計算するという演算ループを繰り返し実行する。
【0024】
図2は、図1に示した擬似外乱生成手段で生成される外乱の詳細例を示す図である。擬似外乱生成手段22によって生成される擬似外乱は、インパルス外乱(図上段)、ステップ外乱(図中段)、高周波外乱(図下段)などとして用いることができる。また、予め制御対象50の振動モードが既知である場合、対応する振動モードの周波数信号(正弦波など)を外乱として用いても構わない。
【0025】
図3は、図1に示した閉ループ応答模擬部が有する機能およびその機能により実行される動作内容を示す図である。
図3において閉ループ応答模擬部20は、まず、制御量目標値rおよび擬似外乱dを生成する(ステップS31〜S32)。次に閉ループ応答模擬部20は、時刻、操作量u、制御量y、制御量目標値r、操作入力量h、モデル応答模擬手段23の状態変数、制御演算模擬手段24の各初期値を設定する(ステップS33)。ここでモデル応答模擬手段23の状態変数の初期値は0ベクトルに設定しておいて構わない。また制御量yの初期値は制御量目標値rに設定しておいて構わない。さらに操作量uの初期値は制御対象50の定常となる値に設定しておいて構わない。定常となる値は制御量yが一定とした場合の制御演算部10の操作量を用いることができる。そして操作入力量hの初期値は操作量uに−1を乗じた値に設定しておいて構わない。制御演算模擬手段24が保持する調整パラメータの初期値は、調整パラメータマップ作成部40が記憶する値が設定される。
【0026】
次に閉ループ応答模擬部20は、操作入力量hの計算(ステップS34)、モデル応答の計算(ステップS35)、制御演算の計算(ステップS36)、時刻の更新(ステップS37)、終了条件の判定(ステップS38)という一連の動作を終了条件が満たされるまで繰り返す。これについては後で詳しく説明する。
【0027】
上記において終了条件は、時刻が予め決めておいた期間に達したかどうかや操作量u、制御量y、操作入力量hの大きさが閾値を越えたかどうかによって判定できる。
図1に示した調整パラメータマップ作成部40では、調整パラメータθを変化させた場合の性能評価値Jを対応づけるマップを作成するため、閉ループ応答模擬部20の制御演算模擬手段24の調整パラメータθを変化させて性能評価値Jを得る処理を繰り返す。これについても後で詳しく説明する。
【0028】
図4は、図1に示した調整パラメータマップ作成部が有する機能およびその機能により実行される動作内容を示す図である。
図4において調整パラメータマップ作成部40は、まず、調整パラメータθの初期値を制御演算模擬手段24に設定する(ステップS41)。次に調整パラメータマップ作成部40は、調整パラメータの設定(ステップS42)、閉ループ応答模擬(ステップS43)、性能評価(ステップS44)、終了条件の判定(ステップS45)という一連の動作を終了条件が満たされるまで繰り返す。
【0029】
上記において終了条件は、時刻が予め決めておいた期間に達したかどうかや調整パラメータθが予め決めておいた探索範囲に達したかどうかによって判定できる。
調整パラメータマップ作成部40では、終了条件が満たされたら調整パラメータマップを作成し(ステップS46)、作成された調整パラメータマップに基づき、性能評価値Jが最適となるような調整パラメータを推奨パラメータθ*として出力する。
【0030】
推奨パラメータθ*は図1に示される制御演算部10に入力され、制御演算部10の演算に用いる。
以上における閉ループ応答模擬部20の閉ループ動作模擬の結果、得られた閉ループの操作量uおよび操作入力量hおよび制御量yの信号系列は、性能評価部30に入力され、性能評価部30では、入力信号系列に基づいた性能評価値Jを計算する。これについては後で詳しく説明する。
【0031】
図5は、図1に示した性能評価部における具体的な性能評価値の計算方法を説明する図である。
図5に示されるように性能を評価する評価式として、
制御量と制御量目標値との偏差および操作量の重み付き2次積分形式の評価式(評価式1)(以下に示す式1参照。式中のQ・Wは重み)と、
【0032】
【数1】
制御量と制御量目標値との偏差および操作変化量の重み付き2次積分形式の評価式(評価式2)(以下に示す式2参照。式中のQ・Rは重み)と、
【0033】
【数2】
を用いる。なお操作変化量は操作量の1時刻毎の変化量に基づき算出する。
【0034】
上述した評価式1及び2に基づいて性能評価部30は性能評価値を算出する。
図6は、図1に示した性能評価部における具体的な性能評価値の図5に示すものとは異なる計算方法を説明する図である。
【0035】
図6に示されるように性能を評価する評価式として、
時刻0から時刻T0までを第1の評価区間とし、
時刻0から最終時刻Tを第2の評価区間とし、
操作入力量hのノルムの
第1の評価区間での最大値の対数と
第2の評価区間での最大値の対数との差を
T−T0で割った第1の値と、
操作量uのノルムの
第1の評価区間での最大値の対数と
第2の評価区間での最大値の対数との差を
T−T0で割った第2の値と、
制御量yのノルムの
第1の評価区間での最大値の対数と
第2の評価区間での最大値の対数との差を
T−T0で割った第3の値と、
の3つの値のうちの最大値を性能評価値とする評価式3(以下に示す式3参照)を用いるものである。
【0036】
【数3】
図7は、図6に示した性能評価部における性能評価値の算出方法の説明を補足する図である。
【0037】
図7に示されるように操作入力量系列が時刻0から時刻Tまである場合、第1の評価区間[0、T0]での操作入力量のノルムの最大値がlaで与えられ、第2の評価区間[0、T]での操作入力量のノルムの最大値がlbで与えられるものとする。このとき、前記第1の値は、(ln(lb)−ln(la))/(T−T0)で求められる。
【0038】
図8は、図1に示したモデル応答模擬手段におけるモデル応答の模擬内容を説明する図である。
図8に示されるようにモデル応答模擬手段23は、操作入力量hを入力として、以下の式4に基づいて制御量yを出力する。
【0039】
【数4】
すなわち、まず、出力モデル関数Hと1時刻前の状態変数xpと操作入力量hに基づき制御量を計算する。
【0040】
次に、状態更新モデル関数Gと1時刻前の状態変数xpと操作入力量hに基づき、状態変数を更新する。
図9は、図1に示した制御演算模擬手段における制御演算の内容を説明する図である。
【0041】
図9に示されるように制御演算模擬手段24は、制御量yと制御量目標値rと調整パラメータθを入力として以下の式5に基づいて操作量uを出力する。
【0042】
【数5】
すなわち、まず、制御量yと制御量目標値rとの差を制御偏差eとして計算する。
【0043】
次に、出力制御関数Rと1時刻前の状態変数xcと制御偏差eに基づき操作量uを計算する。
次に、状態更新制御関数Qと1時刻前の状態変数xcと制御偏差eに基づき、状態変数を更新する。出力制御関数Rと状態更新制御関数Qは調整パラメータθに依存する汎関数である。
【実施例1】
【0044】
本発明に係る第1の実施例を、図10ないし図17を用いて説明する。
図10は、図1に示した閉ループ応答模擬部における、モデル応答模擬手段,制御演算模擬手段の具体的な模擬演算の内容、および、調整パラメータとパラメータの範囲を示す図である。
【0045】
モデル応答模擬手段23におけるモデル応答は、以下の式6に示すように1次の状態変数x(t)を有するが、操作入力量hが正の場合と負の場合でゲインが異なっている。
【0046】
【数6】
また、制御演算模擬手段24における制御演算は、以下の式7に示すように+α、0、−αの3レベルの出力であり、かつ±βの不感帯を有している。
【0047】
【数7】
また、上述したαおよびβは制御演算の調整パラメータθのパラメータで且つαおよびβは以下の式8に示すように、それぞれ図10の右下に示す範囲に設定されている。
【0048】
【数8】
この場合、図1に示す制御演算部10は従来の制御理論で扱われる形式に帰着されず、かつ、制御対象モデルが非線形特性を持つため、従来法によるパラメータ調整が適用できないものであっても本発明の第1の実施例に示す手法を適用することができる。
【0049】
図11は、図5に示した性能評価部で用いる評価式J1と計算条件の具体例を示す図である。図11において評価式J1は以下の式9で表される。
【0050】
【数9】
すなわち、上記式9で表される評価式J1は、
制御量yと制御量目標値rとの制御偏差eの2乗に重み30をかけた値と、
操作量uの2乗
との和を
時間区間T0〜Tに渡って積分した値
によって表現されたものを用いている。この場合、計算条件としては、時間刻みdtは10[ms]で、最大時刻Tは2000[ms]である。
【0051】
図12は、図1に示した疑似外乱生成手段で生成した外乱dと目標値生成手段で生成した制御量目標値rの値を示すグラフである。
制御対象が非線形である場合は、図1に示した閉ループ応答模擬部20の目標値生成手段21は複数の段階の目標値を生成することが好適である。
【0052】
図13は、パラメータα,βを(α、β=(7、0.25)に固定した場合の閉ループ応答模擬部によって計算された閉ループ応答と評価式J1の値を説明する図(その1)である。図14は、パラメータα,βを(α、β=(7、0.25)に固定した場合の閉ループ応答模擬部によって計算された閉ループ応答と評価式J1の値を説明する図(その2)である。
【0053】
図12ないし図14を概観すれば、外乱dおよび制御量目標値rの変更に対して、操作量uが変化し、結果として制御量yが制御量目標値rに漸近していく様子が分かる。しかし、不感帯の影響により、制御偏差eは0に収束はしない。
【0054】
図15は、図1に示した調整パラメータマップ作成部で作成したテキスト形式の調整パラメータマップを示す表(マトリクス)である。
図15に示されているように、パラメータαおよびβを調整範囲の中で変化させた場合の図11に示した評価式J1の値を表(マトリクス)の形で示している。
【0055】
ここで推奨調整パラメータは、図11の表中で最も評価値が良いパラメータとすることができる。
図13に示しているように、(α、β)=(7、0.25)はJ1=80.49であり、図15の表(マトリクス)中で最小であるため、推奨パラメータθ*とすることができる。
【0056】
図16は、図1に示した調整パラメータマップ作成部で作成した3次元形式の調整パラメータマップを示すグラフである。
図16に示されているように、パラメータαおよびβを調整範囲の中で変化させた場合の図11に示した評価式J1の値を3次元図の形で示したものである。
【0057】
図17は、図1に示した調整パラメータマップ作成部で作成した等高線形式の調整パラメータマップを示すグラフである。
図17に示されているように、パラメータαおよびβを調整範囲の中で変化させた場合の図11に示した評価式J1の値を等高線図の形で示したものである。
【実施例2】
【0058】
本発明に係る第2の実施例を、図18ないし図23を用いて説明する。
図18は、図1に示した閉ループ応答模擬部における、モデル応答模擬手段,制御演算模擬手段の図10とは異なる具体的な模擬演算の内容、および、調整パラメータとパラメータの範囲を示す図である。
【0059】
モデル応答模擬手段23におけるモデル応答は、以下の式10に示すように1次の状態変数x(t)を有するが、操作入力量hが正の場合と負の場合でゲインが異なっている。
【0060】
【数10】
また、制御演算模擬手段24における制御演算は、以下の式11に示すように比例帯をP、積分時間をTIとするPI制御である。
【0061】
【数11】
また、上述したPおよびTIは制御演算の調整パラメータθのパラメータで且つPおよびTIは以下の式12に示すように、それぞれ図18の右下に示す範囲に設定されている。
【0062】
【数12】
図19は、図6に示した性能評価部で用いる評価式J3と計算条件の具体例を示す図である。図19において評価式J3は以下の式13で表される。
【0063】
【数13】
すなわち、上記式13で表される評価式J3は、制御量yに関して図6に示した評価値J3を求めるためのものである。
【0064】
この場合、計算条件としては、時間刻みdtは10[ms]で、適当な時刻T0はTの半分の値である1000[ms]とした。
図20は、図1に示した調整パラメータマップ作成部で作成した図15に示すものとは異なるテキスト形式の調整パラメータマップを示す表(マトリクス)である。
【0065】
図20に示されているように、パラメータPおよびTIを調整範囲の中で変化させた場合の図19に示した評価式J3の値を表(マトリクス)の形で示したものである。
図21は、図1に示した調整パラメータマップ作成部で作成した図16に示すものとは異なる3次元形式の調整パラメータマップを示すグラフである。
【0066】
図21に示されているように、パラメータPおよびTIを調整範囲の中で変化させた場合の図19に示した評価式J3の値を3次元図の形で示したものである。
上述した図20および図21に示されるように、
評価値J3は,
PおよびTIが十分大きい範囲では0であり、
PおよびTIが十分小さい範囲では正の値をとる。
【0067】
これは
PおよびTIが十分大きい範囲では閉ループが安定であり、
PおよびTIが十分小さい範囲では閉ループが不安定である、
ことを示している。
【0068】
図22は、図19に示した評価式で求めた評価値J3が0である、(P、TI)=(4、0.025)のときの応答を示すグラフである。図23は、図19に示した評価式で求めた評価値J3が正の値である、(P、TI)=(2、0.015)のときの応答を示すグラフである。
【0069】
図22では、操作入力量hおよび制御量yが0に収束しており安定であるのに対し、図23では、操作入力量hおよび制御量yが発散しており不安定である。
したがって、図19に示した評価式で求めた求められた評価値J3が
0である場合には安定、
正である場合には不安定として、
パラメータPおよびTIが安定となる領域を判定することができる。
【0070】
したがって、推奨パラメータは、図20で示した表(マトリクス)のうち、評価値J3が0であり、かつ評価値J3が正である不安定領域から十分な距離を保った領域の中から選択することができる。
【0071】
例えば、評価値J3が0であり、かつ評価値J3が正である不安定領域から十分な距離を保った領域として
4≦P≦10、0.025≦TI≦0.05
が推奨パラメータを選定する領域の候補となることを示すものである。
【0072】
以上について付言すれば、制御器の調整パラメータは可能な限り少なくしておく方がよい。できれば2個までにしておくことで、3次元図等に図示することができ、視覚的にどの点が最適であるかを把握しやすい。
【0073】
また制御対象モデルと制御演算部に共に直達項がある場合、代数ループが発生するが、閉ループに微小な無駄時間を挿入し、閉ループ応答模擬部の時刻更新幅を十分微小にしておくことで近似的に回避することができる。
【0074】
また上述した適当な時刻T0として、最終時刻Tの1/3〜2/3の範囲の値を用いるとよい。
また、閉ループ応答模擬部の応答模擬の時間Tは、プラントモデルの時定数に対して倍以上の十分長い値としておくことが望ましい。
【符号の説明】
【0075】
10 制御演算部
20 閉ループ応答模擬部
21 目標値生成手段
22 擬似外乱生成手段
23 モデル応答模擬手段
24 制御演算模擬手段
30 性能評価部
40 調整パラメータマップ作成部
50 制御対象
100 制御装置
110 制御量
120 制御量目標値
130 外乱
140 操作量
d 擬似外乱
e 制御偏差
h 操作入力量
J 性能評価値
r 制御量目標値
u 操作量
y 制御量
θ 調整パラメータ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に調整パラメータを有する制御装置において、
前記制御装置は、制御演算部と、閉ループ応答模擬部と、性能評価部と、調整パラメータマップ作成部とを有し、
前記制御演算部は、
前記調整パラメータに基づき制御演算を行う機能を有し、
前記閉ループ応答模擬部は、
制御量目標値を生成する目標値生成手段と、
擬似外乱を生成する擬似外乱生成手段と、
制御対象の応答を模擬するモデル応答模擬手段と、
前記制御演算部の制御演算を模擬する制御演算模擬手段によって構成し、
前記調整パラメータを前記制御演算模擬手段に設定して、前記制御対象と前記制御演算部とが構成する閉ループの前記擬似外乱に対する応答信号を繰り返し演算により生成する機能を有し、
前記性能評価部は、
前記閉ループ応答模擬部により生成された応答信号から制御性能評価を計算する機能を有し、
前記調整パラメータマップ作成部は、
前記調整パラメータを順次変化させて前記制御性能評価を繰り返すことで、
調整パラメータ毎の前記制御性能評価を対応づける調整パラメータマップを作成し、
調整パラメータの推奨値を前記制御演算部に出力する機能を有する、
ことを特徴とする制御装置。
【請求項2】
請求項1記載の制御装置において、前記閉ループ応答模擬部は、
前記調整パラメータが設定された前記制御演算模擬手段の出力と前記擬似外乱生成手段が生成する擬似外乱との偏差を前記モデル応答模擬手段に入力し、
前記モデル応答模擬手段の出力と前記目標値生成手段が生成する制御量目標値とを前記制御演算模擬手段に入力することで、
前記制御対象と前記制御演算部とが構成する閉ループの前記擬似外乱に対する応答信号を繰り返し演算により生成する
ことを特徴とする制御装置。
【請求項3】
請求項1記載の制御装置において、前記制御性能評価として、
操作量および制御量の重み付き2ノルム評価を用いる、
ことを特徴とする制御装置。
【請求項4】
請求項1記載の制御装置において、前記制御性能評価として、
初期時刻0から最終時刻Tまでの間において、
適当な時刻T0を設定し、
時刻0から時刻T0までの前記応答信号の絶対値の最大値の対数をA1、
時刻0から時刻Tまでの前記応答信号の絶対値の最大値の対数をA2、
として、
(A2−A1)/(T−T0)
で定義される値を用いることを特徴とする制御装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の制御装置において、
前記調整パラメータマップを、
テキストの表形式、または、
3次元の図形式、または、
2次元もしくは3次元の等高線形式、または、
2次元もしくは3次元の濃淡画像形式、
で出力することを特徴とする制御装置。
【請求項1】
内部に調整パラメータを有する制御装置において、
前記制御装置は、制御演算部と、閉ループ応答模擬部と、性能評価部と、調整パラメータマップ作成部とを有し、
前記制御演算部は、
前記調整パラメータに基づき制御演算を行う機能を有し、
前記閉ループ応答模擬部は、
制御量目標値を生成する目標値生成手段と、
擬似外乱を生成する擬似外乱生成手段と、
制御対象の応答を模擬するモデル応答模擬手段と、
前記制御演算部の制御演算を模擬する制御演算模擬手段によって構成し、
前記調整パラメータを前記制御演算模擬手段に設定して、前記制御対象と前記制御演算部とが構成する閉ループの前記擬似外乱に対する応答信号を繰り返し演算により生成する機能を有し、
前記性能評価部は、
前記閉ループ応答模擬部により生成された応答信号から制御性能評価を計算する機能を有し、
前記調整パラメータマップ作成部は、
前記調整パラメータを順次変化させて前記制御性能評価を繰り返すことで、
調整パラメータ毎の前記制御性能評価を対応づける調整パラメータマップを作成し、
調整パラメータの推奨値を前記制御演算部に出力する機能を有する、
ことを特徴とする制御装置。
【請求項2】
請求項1記載の制御装置において、前記閉ループ応答模擬部は、
前記調整パラメータが設定された前記制御演算模擬手段の出力と前記擬似外乱生成手段が生成する擬似外乱との偏差を前記モデル応答模擬手段に入力し、
前記モデル応答模擬手段の出力と前記目標値生成手段が生成する制御量目標値とを前記制御演算模擬手段に入力することで、
前記制御対象と前記制御演算部とが構成する閉ループの前記擬似外乱に対する応答信号を繰り返し演算により生成する
ことを特徴とする制御装置。
【請求項3】
請求項1記載の制御装置において、前記制御性能評価として、
操作量および制御量の重み付き2ノルム評価を用いる、
ことを特徴とする制御装置。
【請求項4】
請求項1記載の制御装置において、前記制御性能評価として、
初期時刻0から最終時刻Tまでの間において、
適当な時刻T0を設定し、
時刻0から時刻T0までの前記応答信号の絶対値の最大値の対数をA1、
時刻0から時刻Tまでの前記応答信号の絶対値の最大値の対数をA2、
として、
(A2−A1)/(T−T0)
で定義される値を用いることを特徴とする制御装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の制御装置において、
前記調整パラメータマップを、
テキストの表形式、または、
3次元の図形式、または、
2次元もしくは3次元の等高線形式、または、
2次元もしくは3次元の濃淡画像形式、
で出力することを特徴とする制御装置。
【図1】
【図3】
【図4】
【図8】
【図10】
【図15】
【図17】
【図19】
【図20】
【図2】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図16】
【図18】
【図21】
【図22】
【図23】
【図3】
【図4】
【図8】
【図10】
【図15】
【図17】
【図19】
【図20】
【図2】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図16】
【図18】
【図21】
【図22】
【図23】
【公開番号】特開2012−173889(P2012−173889A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−33906(P2011−33906)
【出願日】平成23年2月18日(2011.2.18)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月18日(2011.2.18)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】
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