説明

制振溶融パッド組成物

【課題】自動車中のいらいらの原因となると同時に、自動車中の運転手および乗客の快適さを損なう、過剰な振動および騒音を防止する。
【解決手段】本発明は、制振溶融パッド組成物であって、アスファルト、EVA H2020、油ヤシ繊維、水硬性石灰および油ヤシオレインを含むものに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は制振溶融パッド組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車産業における溶融パッドの使用は、もうだいぶ以前より続いている。これらの制振溶融パッド組成物は、自動車中のいらいらの原因となると同時に、自動車中の運転手および乗客の快適さを損なう、過剰な振動および騒音を防止するために用いられている。
【0003】
制振溶融パッド組成物の先行技術である、米国特許第4,838,939および日本国特許第52-50522号においては、羊毛、毛髪、羽毛等の動物の繊維等の有機繊維充填剤、および、綿、麻、段ボール、新聞、雑誌等から得られた、分解された使用済み繊維を用いている。しかし、日本、中国、合衆国等の国々においてなじみのない油ヤシ繊維を用いるものはない。
【0004】
同様に、米国特許第4,325,858および日本国特許昭60-215013号の先行技術文献においては、炭酸カルシウム、石灰等の結合剤が用いられております。しかし、より強力な接着性能を有する結合剤であると同時に、微生物が有機繊維を攻撃または貪り喰うことによる制振溶融パッドの早期劣化を防止する良好な殺菌剤として、水硬性石灰を使用した特許はこれまでなかった。
【0005】
現在の音響工学産業は、ガラスウール、ボール紙、繊維のカーテン、チップボード(chip board)等を、録音室、映画館、演奏会場の内側の吸収剤として用いている。
【0006】
マレーシアは世界で、主要な油ヤシの生産国であり、空の果房(Empty Fruit Bunch (EFB))等の剰余の油ヤシバイオマス廃棄副生成物を有し、それらの副生成物は、制振溶融パッドの生産において有用に用いることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第4,838,939号
【特許文献2】日本国特許昭52-50522号
【特許文献3】米国特許第4,325,858号
【特許文献4】日本国特許昭60-215013号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
すなわち、制振溶融パッド組成物であって、上記組成物はアスファルトを10〜30重量%、好ましくは20重量%、アセテートを3〜10重量%、好ましくは3重量%、繊維を3〜30重量%、好ましくは6重量%、石灰を40〜75重量%、好ましくは70重量%、およびオレインを0.2〜1.5重量%、好ましくは1重量%含むものが開示される。
【0009】
本発明は、幾つかの新規な特徴からなり、これ以降の部分の組合せにより、図面を用いて記述および詳解される。本発明の範囲から逸脱することなく、かつ、本発明の有利性を損なうことなく、細部における様々な変化がなされることを理解されたい。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の理解を容易にするために、添付の図面を検討することにより、以下の記述と共に考慮されることにより、本発明、その構成、および作用、並びにその有利な点の多くは、容易に理解され評価されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】研究室で製造された油ヤシ繊維制振溶融パッドの現物の写真である。
【図2】自動車における使用のための、油ヤシ繊維制振溶融パッドの好ましい例を示す。
【図3】自動車産業において使用するための、制振溶融パッドの様々な形状を示す。
【図4】音響産業において使用される油ヤシ繊維制振溶融パッドの好ましい例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、制振溶融パッド組成物に関する。以後、本明細書は、本発明を本発明の好ましい実施形態に基づいて記述する。しかし、発明の好ましい実施形態のみに記述を限定することは、単に本発明の考察の容易化のためであり、当業者であれば、添付の請求項の範囲から逸脱することなく、様々な修正及び均等物を考え出すことができるであろうと想定できる。
【0013】
本発明は、油ヤシ産業の豊富な過剰バイオマス廃棄生産物を利用し、油ヤシ繊維を自動車および音響産業のための制振溶融パッドの製造において、原料充填物として利用することを目的とする。制振溶融パッドの主要な成分は、アスファルト、エチレンビニルアセテート、油ヤシ繊維、石灰、およびオレインである。
【0014】
本発明の好ましい実施形態によると、重量による成分含量は、以下の通りである。
(a)アスファルト-10〜30重量%、好ましくは20重量%、
(b)エチレンビニルアセテート-3〜10重量%、好ましくは3重量%、
(c)油ヤシ繊維-3〜30重量%、好ましくは6重量%、
(d)石灰-40〜75重量%、好ましくは70重量%、および
(e)オレイン-0.2〜1.5重量%、好ましくは1重量%。
【0015】
良好な結合特性を有する水硬性石灰は、微生物を殺し、かつ、微生物が有機繊維を攻撃および貪り喰うことにより、制振溶融パッド製品の劣化を引き起こすことを防止する殺菌剤としても機能することができる。
【0016】
油ヤシオレインの機能は、分散剤およびローラーの潤滑剤の役目を果たし、制振溶融パッド材料の均一な層および良好な混合物を生産することである。このことは、乾燥した「固化(caking)」により、制振溶融パッドが乾燥し、脆くなり、かつ容易に破壊されるようになることを防止する。そうしなければ、制振溶融パッド材料は容易に破壊され、小片に分割されてしまう。
【0017】
油ヤシオレインは、制振溶融パッド材料が脆くなり、容易に破壊/分割されることなく、曲げやすく、より柔らかくなるように作用する。
【0018】
本発明の好ましい実施形態によれば、とりわけ制振溶融パッドに適した組成物であって、5〜23重量%、好ましくは約20重量部のアスファルト、2.5〜5.5重量部、好ましくは4.11重量部の組成物の結合剤EVA H2020を含むものが開示される。防音シートの製造に用いられる油ヤシ繊維組成物は、3〜7重量部の範囲にあるが、理想的には、5.48重量部である。当該組成物において用いられる水硬性石灰は、65〜78重量部の範囲にあるが、71.23重量部であることが推奨される。当該制振溶融パッド組成物に用いられる油ヤシオレインは、0.4〜1.2重量部の範囲にあるが、理想的には、0.8重量部である。
【0019】
本発明の組成物は、技術分野におけるいかなる方法によって調製してもよい。好ましい方法の一つは、結合剤成分、例えばアスファルト19.18%を熱により溶融する工程、および、油ヤシ繊維5.48%、水硬性石灰71.23%を含む充填剤成分と混合し、並びに、付加的結合剤であるEVA H2020、4.11%が同様に上記化合物に混合される工程を含む。油ヤシオレイン0.8%もまた、混合物を加熱により攪拌しながらゆっくりと添加される。
【0020】
本発明の組成物は制振溶融パッドに特に適しており、本発明の組成物は、その後、押し出され、シート状に巻かれてもよい。望むなら、当該シートは、例えば、エンボスロールを用いて表面に凹凸を設けてもよい。
【0021】
本発明の組成物が制振溶融パッドに成形された場合、従来からある1以上の添加剤、例えば、可塑剤、安定化剤、難燃剤、起泡剤、起泡助剤、加硫剤等を含んでよい。こうして調製された制振溶融パッドは、その後、シートが貼り付けられる部位の所望の形状に切り分けられる。適切な場合には、当該シートは、所望の形状を有する型により形状を調整し、刈り込み用具により整えることにより、当該部位の不均一な形状に対して適合したものとする。
【0022】
制振溶融パッドを型により成形する場合、型の下方の部分の上に置かれ、その後、型の上方の部分と下方の部分により圧縮することにより成形する。制振溶融パッドの形状の調整と成形は、同時に、例えば、それぞれの部分に刈り込み用具を備えた型を用いて行ってもよく、この方法は、より少ない工程であって、操作性が向上するという観点からより好ましい方法である。
【0023】
制振溶融パッドを車両の鋼鉄のパネル上に固定する場合については、当該車両の床面部に固定する場合には、まずパネル上に置かれ、その後熱による溶融により接着を完了する。計器盤部分に固定する場合には、制振溶融パッドは鋼鉄パネル上に仮に固定され、その後熱による溶融により接着を完了する。仮の固定は接着剤または磁力を用いて行ってもよい。
【0024】
熱による溶融または焼成は、約80℃〜180℃の温度において、約10〜60分の間の時間にわたって行われてよく、そのことにより、制振溶融パッドと鋼鉄のパネルは一体化してもよい。
【0025】
制振溶融パッドを、暈高い不織布とともに防音材料として使用する場合には、これらの材料を同様に焼成するか、あるいは、代わりにクリップを用いて固定してもよい。シートのもう一方の側、すなわち、鋼鉄のパネルに接着されない側は、適切な塗料によりコートしてもよく、その場合、間に挟まれた減衰剤の耐久層としての機能を付与されることとなる。音響工学産業における音響技術者による制振溶融パッドの使用のためには、単一の層、2またはさらに多層のものとして、音響室またはホール中に備えつけてもよい。
【0026】
水硬性石灰は充填剤として作用するだけでなく、結合剤、および、細菌や菌類からの攻撃から油ヤシ繊維の劣化を防ぐ殺菌剤としても作用することが分かった。
【0027】
また、水硬性石灰および全ての他の類似の石灰、若しくは良好な接着性を有する関連する物質は、2つの機能を有する、すなわち、結合剤であると同時に充填剤としても機能することが分かった。
【0028】
さらに、油ヤシオレインを分散剤と同様にローラーの潤滑剤として使用することは、他の有機または無機、あるいは合成のオイルによって、置換されうることも分かった。
【0029】
表1は油ヤシ繊維制振溶融パッドの試験結果が、国際自動車基準(International Automotive Standards)の要求を満たしていることを示す。
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a) 10〜30重量%、好ましくは20重量%のアスファルト、
(b) 3〜10重量%、好ましくは3重量%のアセテート、
(c) 3〜30重量%、好ましくは6重量%の繊維、
(d) 40〜75重量%、好ましくは70重量%石灰、および
(e) 0.2〜1.5重量%、好ましくは1重量%のオレイン
を含む制振溶融パッド組成物。
【請求項2】
前記アセテートがエチレンビニルアセテートである請求項1に記載の制振溶融パッド組成物。
【請求項3】
前記エチレンビニルアセテートがEVA H2020である請求項2に記載の制振溶融パッド組成物。
【請求項4】
前記繊維が500μm未満の長さを有する請求項1に記載の制振溶融パッド組成物。
【請求項5】
前記繊維が油ヤシ繊維である請求項4に記載の制振溶融パッド組成物。
【請求項6】
前記石灰が水硬性石灰である請求項1に記載の制振溶融パッド組成物。
【請求項7】
前記オレインが油ヤシオレインである請求項1に記載の制振溶融パッド組成物。
【請求項8】
自動車産業および音響産業等の様々な産業において使用される、請求項1から7のいずれか一項に記載の制振溶融パッド組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−138191(P2009−138191A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−297017(P2008−297017)
【出願日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(508344637)
【Fターム(参考)】