説明

制汗スプレー組成物

【課題】制汗成分アルミニウムヒドロキシクロライドを使用したときに、制汗スプレー原液の再分散性が良好で充填を容易にし、かつ使用したときに白くならない制汗スプレー組成物を提供することである。
【解決手段】1.(A)制汗成分アルミニウムヒドロキシクロライド10〜40重量%、親油性非イオン界面活性剤0.1〜10重量%、油剤55〜90重量%からなる制汗スプレー原液であり、
(B)液化石油ガス及びジメチルエーテルからなる群から選ばれた少なくとも一種の成分からなるエアゾール噴射剤を、
(A):(B)=3:97〜15:85の重量比で混合してなる、制汗スプレー組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制汗スプレー組成物に関し、更に詳しくは、制汗スプレー原液が長期間安定であり、再分散性が良好な制汗スプレー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】特公平5−79642号公報
【特許文献2】特開2004−292446号公報
【特許文献3】特許第3785664号公報
【0003】
発汗を抑制し、汗によるべたつきや臭いの発生を防止する制汗剤が広く知られており、その中でもパウダーを配合したエアゾールタイプの制汗スプレーが数多く発明されている。制汗成分であるアルミニウムヒドロキシクロライドは粉末であり、塗布後に白く残らないように特許文献1、2などが提案されている。
【0004】
しかしながら、このようなアルミニウムヒドロキシクロライドを多く含む制汗スプレー原液は、原液の状態を均一に保つのが難しいため、粉末成分と油剤成分を分けて、別々に充填する必要があった。
【0005】
また、特許文献3のように制汗スプレーを安定するための組成物が提案されているが、エタノールを含むため、制汗スプレー原液を長期保管した場合はアルミニウムヒドロキシクロライドが下部に溜まり、粘土状となって再分散が困難となる問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記した従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、その主な目的は制汗成分アルミニウムヒドロキシクロライドを使用したときに、長期保管した場合でも制汗スプレー原液の再分散性が良好で充填を容易にし、かつ使用したときに白くならない制汗スプレー組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねてきた。その結果、制汗成分アルミニウムヒドロキシクロライドと親油性非イオン界面活性剤、油剤を特定の割合で含むことで長期の保管においても再分散性が良好な制汗スプレー原液が得られ、液化石油ガス及びジメチルエーテルからなる群から選ばれた少なくとも一種の成分を噴射剤として、これらを特定の割合で混合した制汗スプレー組成物によれば、肌に塗布後白くならないことを見出し、ここに本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は、下記の制汗スプレー組成物を提供するものである。
1.(A)制汗成分アルミニウムヒドロキシクロライド10〜40重量%、親油性非イオン界面活性剤0.1〜10重量%、油剤55〜90重量%からなる制汗スプレー原液であり、
(B)液化石油ガス及びジメチルエーテルからなる群から選ばれた少なくとも一種の成分からなるエアゾール噴射剤を、
(A):(B)=3:97〜15:85の重量比で混合してなる、制汗スプレー組成物。
2.親油性非イオン界面活性剤がソルビタン脂肪酸エステルである上記1項に記載の制汗スプレー組成物。
3.エアゾール噴射剤中にイソペンタンが5〜40重量%含まることからなる上記1又は2項に記載の制汗スプレー組成物。
【0009】
本発明の制汗スプレー組成物は、(A)制汗成分アルミニウムヒドロキシクロライド10〜40重量%、親油性非イオン界面活性剤0.1〜10重量%、油剤55〜90重量%からなる制汗スプレー原液と、(B)液化石油ガス及びジメチルエーテルからなる群から選ばれた少なくとも一種の成分からなるエアゾール噴射剤を、(A):(B)=3:97〜15:85の重量比で混合してなるものである。以下、本発明の制汗スプレー組成物について具体的に説明する。
【0010】
制汗成分はアルミニウムヒドロキシクロライドが必須であり、その他としてアルミニウムジルコニウム複合塩、塩化アルミニウムなどが使用できる。
【0011】
制汗スプレー原液中における制汗成分の配合割合は、10〜40重量%程度、好ましくは15〜35重量%程度とする。アルミニウムヒドロキシクロライドの配合量が不足すると制汗効果を得難くなる。また制汗成分の配合量が多すぎると、製品を塗布したときに肌が白くなるので好ましくない。
【0012】
親油性非イオン界面活性剤は、主として、制汗スプレー原液中の制汗成分アルミニウムヒドロキシクロライドが油剤中長期保管しても再分散性を良くする働きがある。
【0013】
親油性非イオン界面活性剤としては、油剤に溶解するものであれば特に限定なく使用できる。親油性非イオン界面活性剤の具体例としては、モノラウリン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、セスキステアリン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン、セスキイソステアリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタンなどのソルビタン脂肪酸エステル、ミリスチン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、モノイソステアリン酸グリセリル、モノオレイン酸グリセリルなどのグリセリン脂肪酸エステル、ペンタステアリン酸デカグリセリル、ペンタヒドロキシステアリン酸デカグリセリル、ペンタイソステアリン酸デカグリセリル、ペンタオレイン酸デカグリセリル、モノステアリン酸ジグリセリル、モノオレイン酸ジグリセリル、ジオレイン酸ジグリセリル、イソステアリン酸ポリグリセリルなどのポリグリセリン脂肪酸エステル等を例示できる。
【0014】
これらの中で、特に常温で液状のものが扱いやすく、モノラウリン酸ソルビタン、セスキイソステアリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタンなどのソルビタン脂肪酸エステルが好ましい。
【0015】
制汗スプレー原液中における親油性非イオン界面活性剤の配合割合は、0.1〜10重量%程度、好ましくは0.2〜5重量%程度とすればよい。親油性非イオン界面活性剤の配合量が0.1重量%未満であると、アルミニウムヒドロキシクロライドの再分散性が悪くなるので好ましくない。一方、親油性非イオン界面活性剤の配合量が10重量%を超えると、使用したときにべたつきが多く、制汗スプレーとして好ましくない。
【0016】
油剤は化粧品に用いられる常温で液状の油剤であれば特に規定しないが、粉体への濡れや噴射剤への溶解性が良いもので、肌へ塗布したときにべたつきが少ないものが好ましい。
【0017】
特に限定されないが炭化水素(ノルマルパラフィン、イソパラフィンなど)、エステル油(ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ミリスチル、ステアリン酸イソセチル、乳酸セチルなど)、シリコーン油(ジメチルシリコーン、環状シリコーン)、油脂(オリーブ油、ナタネ油、ヒマシ油、ツバキ油、アマニ油、ホホバ油など)が例示でき、これらを1種又は2種以上混合して使用しても良い。
【0018】
油剤は、55〜90重量%の範囲内で配合することが適当であり、更に好ましくは65〜75重量%である。
【0019】
噴射剤としては、公知の噴射剤を使用することができるもので、好ましくは、炭酸ガス、窒素、亜酸化窒素、液化石油ガス(LPG)、ジメチルエーテル(DME)、フロンガス、圧縮空気等を使用することができる。
【0020】
噴射剤の配合割合は制汗スプレー原液に対して85〜97重量%が好ましく、更に88〜95重量%がより好ましい。噴射剤が85重量%未満であると制汗スプレー原液が多くべたつきの原因となり、97重量%を超えると制汗スプレー原液が少なすぎて制汗効果が得られない。
【0021】
また、これらの中にイソペンタンが含まれても良い。イソペンタンの働きとしては、肌に塗布したときに冷涼感を与えるとともに、制汗組成物の圧力を下げる働きがあり、粉体の舞い散りを抑えることができる。
【0022】
イソペンタンの配合割合は噴射剤に対して5〜40重量%が好ましく、更に10〜20重量%がより好ましい。
【0023】
本発明の制汗スプレー組成物には、上記の必須構成成分に加え、本発明の効果を損なわない範囲で酸化防止剤、殺菌剤、香料等を添加することができる。
【0024】
本発明の制汗スプレー組成物は、上記(A)制汗成分アルミニウムヒドロキシクロライド10〜40重量%、親油性非イオン界面活性剤0.1〜10重量%、油剤〜90重量%からなる制汗スプレー原液であり、(B)液化石油ガス及びジメチルエーテルからなる群から選ばれた少なくとも一種の成分からなるエアゾール噴射剤を、(A):(B)=3:97〜15:85の重量比で混合してなるしたものであり、通常は、常法に従って、これらの成分を公知のエアゾール容器に封入することによって得ることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の制汗スプレー原液は長期保管した場合でも再分散性が良好で充填を容易にし、かつ制汗スプレー組成物は使用したときに白くならないものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
【実施例及び比較例】
【0027】
実施例1〜3及び比較例1〜3
下記表1に示す原液組成にて制汗スプレー原液及び制汗スプレー組成物を下記製造方法により調整し、下記評価方法により(イ)原液の再分散性、(ロ)組成物の使用感(白さの状態)、(ハ)組成物の使用感(べたつき感)について評価を行った。その評価結果を併せて表1に示す。実施例及び比較例中の%は重量%を示す。
【0028】
【表1】

【0029】
(製造方法)
成分1〜6を混合し、ホモミキサーにて20分間攪拌して制汗スプレー原液を調整した。更に制汗スプレー原液をエアゾール容器に充填し、エアゾールバルブをクリンプして、噴射剤を充填し制汗スプレー組成物を得た。
【0030】
(イ)原液の再分散性
(評価方法)
実施例1〜3及び比較例1〜3で得られた制汗スプレー原液を140mlのガラス瓶に入れた。それを25度で48時間放置させたものをプロペラ攪拌で20分間攪拌し、目視により下記の基準により評価した。
○:粉体の凝集が見られない均一なもの
△:わずかに粉体の凝集が見られるもの
×:粉体のほとんどが凝集して、再分散してないもの
【0031】
(ロ)組成物の使用感(白さの状態)
(評価方法)
男性10名、女性20名からなる30名のモニターを用いて実施例1〜3及び比較例1〜3で得られた制汗スプレー組成物を試料として、肌に噴射した時の状態に関して下記の基準により評価した。
○:白さがないと回答した人数が25名以上のもの
△:白さがないと回答した人数が20名以上24名以下のもの
×:白さがないと回答した人数が19名以下のもの
【0032】
(ハ)組成物の使用感(べたつき感)
(評価方法)
男性10名、女性20名からなる30名のモニターを用いて実施例1〜3及び比較例1〜3で得られた制汗スプレー組成物を試料として、肌に噴射した時の状態に関して下記の基準により評価した。
○:べたつき感があると回答した人数が5名以下のもの
△:べたつき感があると回答した人数が6名以上10名以下のもの
×:べたつき感があると回答した人数が11名以上のもの
【発明の効果】
【0033】
本発明の制汗スプレー組成物は、制汗スプレー原液の再分散性が長期保管においても良好であり、従来のような原液を粉末成分と液状成分の2剤に分けて別々に充填するような装置を使用することがなく、長期保管においても1剤充填を可能にした。また、得られた制汗スプレー組成物は白さやべたつき感がなく、制汗スプレーとして良好である。
【0034】
また、イソペンタンを配合したものは、配合してないものと比較して製品の圧力が下がっていることが確認され、勢いを軽減されているので良好であることが確認できた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)制汗成分アルミニウムヒドロキシクロライド10〜40重量%、親油性非イオン界面活性剤0.1〜10重量%、油剤55〜90重量%からなる制汗スプレー原液であり、
(B)液化石油ガス及びジメチルエーテルからなる群から選ばれた少なくとも一種の成分からなるエアゾール噴射剤を、
(A):(B)=3:97〜15:85の重量比で混合してなる、制汗スプレー組成物。
【請求項2】
親油性非イオン界面活性剤がソルビタン脂肪酸エステルである請求項1に記載の制汗スプレー組成物。
【請求項3】
(B)エアゾール噴射剤中にイソペンタンが5〜40重量%含まることからなる請求項1又は2に記載の制汗スプレー組成物。

【公開番号】特開2009−161474(P2009−161474A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−342023(P2007−342023)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(393008821)日進化学株式会社 (16)
【Fターム(参考)】