説明

制限されたバス・アクセスを伴う時間領域分離を実装する通信装置

無線周波数信号で動作する無線周波数回路と、無線周波数回路に結合されたデジタル処理回路とを含む通信装置。デジタル処理回路は、共有バスに結合された複数のバス・マスタを含む。バス・アービタが、第1のバス・マスタと1つまたは複数の他のバス・マスタによるバスへのアクセス要求の間を調停するために提供される。1つまたは複数の他のバス・マスタによるバスへのアクセスが、RF回路の動作モードの変更を示す信号に応答して制限される。特定の一実装では、通信装置は、無線周波数回路がアクティブなときにデジタル処理回路がシャットダウン・モードに置かれ得る、時間領域分離を使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許文献は、一般には、無線周波数(RF)回路を含む通信装置に関し、より詳細には、時間領域分離技術を実装する通信装置のデジタル処理回路内のバス・マスタのバス調停に関する。
【背景技術】
【0002】
RF受信機や、送信機、トランシーバなど、高性能の無線通信システム装置は一般に、受信または送信されるRF信号で動作するRFフロントエンド回路を含む。例えば、フロントエンド回路は、受信されたRF信号をベースバンドにダウンコンバートし、かつ/またはベースバンド信号をRF送信用にアップコンバートし得る。
【0003】
RFフロントエンド回路は一般に、ノイズや干渉に対して比較的高い感度を有する低ノイズの振幅器とミキサなどのアナログ回路を含む。RF回路は、移動通信セルラ・ハンドセットなどの一部の応用例では、振幅が数マイクロボルト以下という小さい信号を検出することが必要である。したがって、通信装置の外部、さらには内部のソースからのノイズと干渉を最小限に抑えることがしばしば肝要である。
【0004】
一般的な無線通信装置は、RFフロントエンド回路に加えて、例えば低レベルのベースバンド信号処理、通信プロトコル・スタックの実装、様々なユーザ・インターフェース機能などを含む、様々なデジタル機能を実施するデジタル処理回路をも含む。デジタル処理回路は、数ある特定ハードウェア・デバイスの中でも特に挙げると、DSP(digital signal processor:デジタル信号プロセッサ)、MCU(microcontroller unit:マイクロコントローラ・ユニット)、ハードウェア・アクセラレータ、メモリおよび/またはI/Oインターフェースなど、様々な特定ハードウェアを含む。
【0005】
残念ながら、一般的な通信装置のデジタル処理回路は、有害なノイズやび干渉の重大な源である。より具体的には、一般的な高性能通信装置内のデジタル処理回路は、比較的小さい立上り時間と立下り時間、あるいは速い遷移または鋭いエッジを伴うデジタル信号を生成する。さらに、それらの信号はしばしば、比較的高い周波数を有する。結果として、そのフーリエ級数または変換は、豊富な高周波成分を有する。高調波すなわち高周波フーリエ級数の成分は、スプリアス放射を引き起こし、このスプリアス放射は、RFフロントエンド回路の性能に干渉することがあり、またそれに悪影響を及ぼすことがある。したがって、多くのシステムでは、RFフロントエンド回路は、デジタル処理回路が実装された集積回路チップとは別個の集積回路チップに実装される。さらに、RFフロントエンド回路とデジタル処理回路はしばしば別個の電気的キャビティ内に置かれる。キャビティの遮蔽が電気結合や磁気結合を分離する助けとなる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、RFフロントエンド回路とデジタル処理回路を別個のチップに実装することには、部品数、サイズ、総コストの増加、さらには信頼性の減少と製造の失敗の増加に対するより高い可能性など、複数の欠点がある。したがって、干渉に基づく重大な劣化や性能低下なしに、RFフロントエンド回路とデジタル処理回路を単一の集積回路チップに統合できるようにすることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
制限されたバス・アクセスを伴う通信装置の様々な実施態様が開示される。ある実施態様では、通信装置は、無線周波数信号で動作する無線周波数回路と、無線周波数回路に結合されたデジタル処理回路とを含む。デジタル処理回路は、共有バスに結合された複数のバス・マスタを含む。第1のバス・マスタや、1つまたは複数の他のバス・マスタによるバス・アクセス要求の間を調停するために、バス・アービタが設けられる。1つまたは複数の他のバス・マスタによるバスへのアクセスが、RF回路の動作モードの変更を示す信号に応答して制限される。
【0008】
ある特定の実装では、通信装置が時間領域分離を使用し、無線周波数回路がアクティブである(受信または送信中である)ときにデジタル処理回路がシャットダウン・モードに置かれる。シャットダウン・モードの前にタイム・クリティカルな機能が、MCUなどの第1のバス・マスタによって実施される必要がある。したがって、タイム・クリティカル機能の実施中、バス競合を防ぐために、他のバス・マスタによる共有バスへのアクセスをバス制限信号に応答して制限させることができ、このバス制限信号は、無線アクティビティ(radio activity)の所定時間前にアサートされ、無線アクティビティの所定時間後にディアサートされる。
【0009】
大まかに述べると、本発明は、無線周波数信号で動作する無線周波数(RF)回路を備える通信装置を意図している。デジタル処理回路は、RF回路とデジタル処理回路に結合される。デジタル処理回路は、バスに結合された第1のバス・マスタと、そのバスに結合された1つまたは複数の他のバス・マスタとを含む。デジタル処理回路は、第1のバス・マスタと1つまたは複数の他のバス・マスタによるバスへのアクセス要求の間を調停するように構成され、1つまたは複数の他のバス・マスタによるバスへのアクセスが、RF回路の動作モードの変更を示す信号に応答して制限される。
【0010】
本発明は、無線周波数(RF)回路とデジタル処理回路とを含む通信装置を動作させる方法をも意図している。この方法は、第1のバス・マスタと1つまたは複数の他のバス・マスタによるバスへのアクセス要求の間を調停することを含む。この方法は、RF回路の動作モードの変更を示す信号を受信すること、信号に応答して1つまたは複数の他のバス・マスタによるバスへのアクセスを制限することをも含む。
【0011】
本発明はさらに、無線周波数信号で動作する無線周波数(RF)トランシーバと、RFトランシーバに結合されたデジタル処理回路とからなる携帯電話を意図している。デジタル処理回路は、バスに結合された第1のバス・マスタと、そのバスに結合された1つまたは複数の他のバス・マスタと、第1のバス・マスタと1つまたは複数の他のバス・マスタによるバスへのアクセス要求の間を調停するように構成されたバス・アービタとを含む。1つまたは複数の他のバス・マスタによるバスへのアクセスが、RFトランシーバの動作モードの変更を示す信号に応答して制限される。
【0012】
本発明はさらに、無線周波数信号で動作する無線周波数(RF)フロントエンド回路と、RFフロントエンド回路に結合されたデジタル処理回路とからなる通信デバイスを意図しており、デジタル処理回路が、バスに結合された第1のバス・マスタと、そのバスに結合された1つまたは複数の他のバス・マスタとを含む。デジタル処理回路は、第1のバス・マスタと1つまたは複数の他のバス・マスタによるバスへのアクセス要求の間を調停するように構成されたバス・アービタをも含み、1つまたは複数の他のバス・マスタによるバスへのアクセスが、RFフロントエンド回路の動作モードの変更を示す信号に応答して制限され、RFフロントエンド回路とデジタル処理回路が単一の集積回路チップ上に組み立てられる。
【0013】
本発明はさらに、無線周波数信号で動作する無線周波数(RF)回路と、RF回路に結合されたデジタル処理回路とを備える通信装置を意図している。デジタル処理回路は、バスに結合された第1のバス・マスタと、そのバスに結合された1つまたは複数の他のバス・マスタと、第1のバス・マスタや1つまたは複数の他のバス・マスタによるバスへのアクセス要求の間を調停するように構成されたバス・アービタとを含む。1つまたは複数の他のバス・マスタによるバスへのアクセスは、デジタル処理回路のシャットダウン動作モードの所定時間前にアサートされる信号に応答して制限される。
【0014】
本発明はさらに、無線周波数信号で動作する無線周波数(RF)回路と、RF回路に結合されたデジタル処理回路とからなる通信装置を意図している。デジタル処理回路は、バスに結合された第1のバス・マスタと、そのバスに結合された1つまたは複数の他のバス・マスタと、RF回路の非アクティブ動作モードの継続時間の少なくとも一部の間、調停ポリシーに従って第1のバス・マスタと1つまたは複数の他のバス・マスタによるバスへのアクセス要求の間を調停するように構成されたバス・アービタとを含む。バス・アービタはさらに、RF回路のアクティブ動作モードへの変更を示す信号に応答して、1つまたは複数の他のバス・マスタにとって不利な(less favorable)調停ポリシーを実施するように構成される。
【0015】
本発明はさらに、無線周波数信号で動作する無線周波数(RF)トランシーバと、RFトランシーバに結合されたデジタル処理回路とからなる携帯電話を意図している。デジタル処理回路は、バスに結合された第1のバス・マスタと、そのバスに結合された1つまたは複数の他のバス・マスタと、第1の動作期間の間に実施される調停ポリシーに従って第1のバス・マスタと1つまたは複数の他のバス・マスタによるバスへのアクセスを許可するように構成されたバス・アービタとを含む。デジタル処理回路のシャットダウン動作モードの所定時間前にアサートされる信号に応答して、1つまたは複数の他のバス・マスタによるバスへのアクセスが、第2の動作期間の間、制限される。
【0016】
本発明は最後に、無線周波数信号で動作する無線周波数(RF)回路と、RF回路に結合されたデジタル処理回路とからなる通信装置を意図している。デジタル処理回路は、バスに結合された第1のバス・マスタと、そのバスに結合された1つまたは複数の他のバス・マスタと、第1の動作期間の間に実施される調停ポリシーに従って第1のバス・マスタと1つまたは複数の他のバス・マスタによるバスへのアクセスを許可するように構成されたバス・アービタとを含む。RF回路のアクティブ・モードの所定時間前に開始する第2の動作期間の間、1つまたは複数の他のバス・マスタによるアクセスが制限される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明は、様々な修正および代替の形が可能であるが、例示するため特定の実施形態が図面に示されており、また本明細書で詳細に述べられている。しかし、図面やそれの詳細な説明は、本発明を開示された特定の形に限定するものではなく、それとは逆に、本発明は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の精神と範囲内に含まれるすべての修正物、均等物、代替物を網羅するものであることを理解されたい。
【0018】
図1は、デジタル処理回路120に結合されたRFフロントエンド回路110を含む通信装置100の一般化されたブロック図を示している。図示するように、ディスプレイ122、キーパッド124、マイク126、スピーカ128を含めて様々なユーザ・インターフェースが、通信装置100の特定の応用例やその所望の機能に応じてデジタル処理回路120に結合される。RFフロントエンド回路110に結合されたアンテナ130も示されている。
【0019】
通信装置100は、例えばモバイル電話ハンドセット、セルラ電話ハンドセット、マシン間(M2M:machine-to-machine)通信ネットワーク(自動販売機用の無線通信など)、いわゆる「911電話」(911緊急応答サービスを呼び出すように構成されたモバイル・ハンドセット)、さらには3G、衛星通信などの新たな応用例において使用される装置などを含めて、様々な無線通信デバイスを例示するものである。したがって、通信装置100は、RF受信機能、RF送信機能またはその両方(すなわちRFトランシーバ機能)を提供する。
【0020】
通信装置100は、望むなら、1つまたは複数の特定の通信プロトコルまたは規格を実装するように構成される。例えば、様々な実施形態における通信装置100は、特に挙げると、モバイル通信用グローバル・システム(GSM:Global System for Mobile Communications)規格、パーソナル通信サービス(PCS:Personal Communications Service)規格、デジタル・セルラ・システム(DCS:Digital Cellular System)規格、汎用パケット無線サービス(GPRS:General Packet Radio Service)規格、および/またはGSM進化型拡張データ(EDGE:Enhanced Data for GSM Evolution)規格とも称される拡張型汎用パケット無線サービス(E−GPRS:Enhanced General Packet Radio Service)規格を実装することができる。
【0021】
したがって、RFフロントエンド回路110は、RF受信能力および/またはRF送信能力を提供するための回路を含む。一実施形態では、フロントエンド回路110は、受信されたRF信号をベースバンドにダウンコンバートし、かつ/またはベースバンド信号をRF送信用にアップコンバートする。RFフロントエンド回路110は、望むなら、例えば低IF受信機回路、直接変換受信機回路、直接アップコンバージョン送信機回路および/またはオフセット・フェーズ・ロックド・ループ(OPLL:offset-phase locked loop)送信機回路など、様々なアーキテクチュアや回路構成のいずれかを使用できる。RFフロントエンド回路110はさらに、アンテナ130で受信されるRF信号を増幅するための低ノイズ増幅器(LNA:low noise amplifier)および/またはアンテナ130から送信される信号を振幅するための電力増幅器を使用できる。代替の実施形態では、電力増幅器は、RFフロントエンド回路110の外部に設けてもよい。
【0022】
デジタル処理回路120は、望むなら、ベースバンド機能を含めて、様々な信号処理機能を提供することができる。例えば、デジタル処理回路120は、フィルタリング、デシメーション、変調、復調、符号化、復号、相関および/または信号のスケーリングを実施するように構成できる。さらに、デジタル処理回路120は、通信プロトコル・スタックの実装、および/またはユーザ入出力操作やアプリケーションの制御など、他のデジタル処理機能を実施できる。こうした機能を実施するためにデジタル処理回路120は様々な特定の回路を含む。その中には、ソフトウェア・プログラマブルMCUおよび/またはDSPだけでなく、メモリ・コントローラ、直接メモリ・アクセス(DMA:direct memory access)コントローラ、ハードウェア・アクセラレータ、音声コーダ・デコーダ(CODEC)、UART(universal asynchronous receiver transmitter:ユニバーサル非同期送受信機)、ユーザ・インターフェース回路などの様々な周辺回路が含まれる。デジタル処理ハードウェア(さらに、含まれる場合にはファームウェア/ソフトウェア)の選択は、所与の所望の実装についての設計仕様や性能仕様に依存し、また実施形態によって異なってもよい。
【0023】
一実施形態では、RFフロントエンド回路110とデジタル処理回路120は、同じ集積回路チップ140上に組み込まれる。干渉を低減させ、したがって高性能機能を収容するために、通信装置100は、時間領域分離、すなわちTDIと称される技術を実装する。図2は、時間領域分離に従って通信装置100内で発生する1組のイベントを示している。大まかに述べると、2つの代替のイベント、すなわちRF受信または送信と、信号処理がこうしたシステム内で発生する。システムは、RFフロントエンド回路110とデジタル処理回路120の間の干渉を回避しまたは低減させるために、RF受信または送信アクティビティと信号処理アクティビティを時間順に並べる。
【0024】
図2に示すように、通信装置100は、複数のタイムスロット210A〜210Fなどを使用する。RFタイムスロット210A、210C、210Eの間、RFフロントエンド回路110は、RF信号を受信し、受信された信号を処理し、結果を格納する。それに引き続いて、それぞれ信号処理タイムスロット210B、210D、210Fの間に、デジタル処理回路120は、格納された結果に対して信号処理タスクを実施できる。
【0025】
あるいは、RFタイムスロット210A、210C、210Eの間、RFフロントエンド回路110は、RF信号を送信する。したがって、この動作モードでは、信号処理タイムスロット210B、210Dの間、デジタル処理回路120は、入力データ(音声、データなど)に対して信号処理タスクを実施し、結果を格納する。それに引き続いて、それぞれRFタイムスロット210C、210Eの間に、RFフロントエンド回路110は、格納された結果に対してRF操作(例えばアップコンバージョンなど)を実施し、RF信号を送信する。
【0026】
使用される特定のプロトコル、アーキテクチュアと回路に応じて、通信装置は、望むなら送信と受信を同時に行うことができることに留意されたい。しかし、より一般には、システムは、RFタイムスロット210A、210C、210Eなどのうちのいずれか1つの間に信号を送信し、または信号を受信する。例えば、GSM仕様に準拠した携帯電話などのGSM準拠のシステムまたは装置は、RFタイムスロット210A、210C、210Eなどのそれぞれの間に、アクティビティの1つまたは複数のバーストでRF信号を送信しまたは受信する。
【0027】
RFタイムスロットは、望むなら、同じ継続時間を有することも、異なる継続時間を有することもできることにさらに留意されたい。RFタイムスロットは、望むなら、多種多様な回路、システム、プロトコル、仕様に対処するために、それぞれ異なる長さを有してもよい。
【0028】
同様に信号処理タイムスロットは、望むなら、類似の継続時間を有することも、異なる継続時間を有することもできる。信号処理タイムスロット210B、210D、210Fなどはそれぞれ、特定の通信プロトコルおよび/または信号処理技術、および使用される特定の回路や技術に応じて、他の複数のタイムスロットまたは時間分割を含む。例えば、信号処理タイムスロットは複数のタイムスロットを含むことができ、タイムスロットのうちの1つまたは複数の間にデジタル処理回路120の一部または特定の回路が信号をアクティブに処理する。
【0029】
時間領域分離を実装するために、デジタル処理回路120は、RFタイムスロットが開始すると(すなわち無線がアクティブなとき)、シャットダウン動作モードに置かれる。一実施形態では、シャットダウン動作モードの間、デジタル処理回路120内の1つまたは複数のクロック信号がディセーブルされまたは抑制される。より具体的には、例えばスタティック金属酸化膜半導体(MOS)回路を使用することによってデジタル処理回路120内の1つまたは複数のクロック信号は、その回路内に存在するデータを失うことなくシャットダウンできる。したがって、デジタル処理回路120は、RFフロントエンド回路110がアクティブな間、その中のデータを保存することができる。RFフロントエンド回路110がその受信または送信を完了(例えばRFタイムスロットが終了)すると、デジタル処理回路120のシャットダウン・モードは、1つまたは複数のクロック信号を再びイネーブルすることによって中断される。次いで、データに対するデジタル処理操作が、継続しまたは開始する。フロントエンド回路110がアクティブである(すなわち受信または送信している)間にデジタル処理回路120内の1つまたは複数のクロックをディセーブルすることによって、対象となるRF帯のデジタル・ノイズ、したがってスプリアス信号の量が減少し、したがって高性能に対処することができる。
【0030】
図2は代替のイベントとしてRFフロントエンド回路110とデジタル処理回路120の動作を示しているが、これらの動作は相互排他的である必要はないことに留意されたい。一般に、RFフロントエンド回路110とデジタル処理回路120の動作間の重複の量を減らしまたは最小限に抑えることが望まれる。しかし、複数の要因に応じて、RFフロントエンド回路110のアクティブ動作とデジタル処理回路120の信号処理動作は、ある程度重複可能である。
【0031】
一部の代替実施形態では、デジタル処理回路120のシャットダウン・モードが、回路部分を非アクティブに保させ、または他の技術(すなわちクロック信号のディセーブル以外)を使用することによって別の方法で抑制させることによって実施されることにも留意されたい。例えば、デジタル処理回路120内の特定の回路から電力を除いてもよい。同様に、フリップ・フロップまたは他の回路を(例えばイネーブル入力によって)ディセーブルできる。さらに、シャットダウン・モードの間、デジタル処理回路120を備える回路のうちの必ずしもすべてがディセーブルまたは抑制される必要はない(すなわちデジタル処理回路120の回路はシャットダウン・モードの間、部分的に電力が切られ、ディセーブルされまたは抑制され得る)ことに留意されたい。したがって、デジタル処理回路120の一部の回路(動的メモリなど)は、シャットダウン・モードの間でもクロック制御できる。
【0032】
上述したように、デジタル処理回路120は、MCUおよび/またはDSPコアなどの処理ユニットや、様々な周辺デバイスを含む。一実施形態では、この回路の少なくとも一部は、共有バスを介して相互接続される。例えば、図3は、デジタル処理回路120内の例示的な回路実装を示している。図示する例では、MCU302は、AHB(Advanced High Performance Bus:拡張型高性能バス)310を介してスレーブ・デバイス304〜306に結合されている。1つまたは複数の追加のバス・マスタ312も同様に、AHBバス310に結合される。バス・マスタ312は、AHBバス310のマスタになる(すなわち所有権を取得する)ことができる任意の回路を例示するものである。例えば、図5に関連して以下で述べる一実装では、バス・マスタ312のうちの1つはDMAコントローラによって実施され、別のバス・マスタ312はホスト・インターフェースによって実施される。代替の実施形態では、マスタ312はそれぞれ、望むなら、他の特定のタイプの機能ユニットによって実施されることに留意されたい。
【0033】
同様にスレーブ304〜306は、バス・マスタによってアクセス可能な様々な特定のリソースを例示するものである。例えば、図5に関連して以下で述べる実施形態では、スレーブ304〜306は、例えばメモリ・コントローラ、他のスレーブ・メモリ・デバイス(ブートROMなど)、1つまたは複数のバス・ブリッジ、ホスト・インターフェースによって実施される。他の実施形態では、スレーブ304〜306は、インターフェース・コントローラ、割込みコントローラ、タイマ、クロックなどを含めて、他の特定のタイプのスレーブ・デバイスによって実施できることに留意されたい。
【0034】
図3は、MCU302と他のバス・マスタ312からのAHBバス310の所有権の要求の間を調停するアービタ315をも示している。単一層のAHBバス実装では、アービタ315は、一度にバスの単一のマスタ所有権だけを与える。マスタは、アービタ315に要求信号をアサートすることによってAHBバス310の所有権を要求する。アービタ315は、望むなら、ラウンド・ロビンや他の任意の調停手法などの特定の調停ポリシーに基づいて、AHBバス310の特定のマスタ所有権を与える。許可されるとマスタは、その所望のトランザクションを実施する。AHBバス310は、4、8、16ビートのバーストや、未定義の長さのバーストを含めて、単一の転送とバースト転送の両方をサポートすることに留意されたい。
【0035】
上述したように、TDIの結果として、無線がオンの間、シャットダウン・モード中にデジタル処理回路120内のデジタル論理の大部分がゲート制御される。これは、MCUコア302を含む。デジタル処理回路120がシャットダウン・モードに遷移する前に、シャットダウン・モードに備えてシステムを準備するために、特定の「ハウスキーピング」タスクを実施することが重要である。こうしたハウスキーピング・タスクには、例えばメモリ・バッファ(RFフロントエンド回路110にデータを供給し、またはそこからデータを受信するメモリ・バッファなど)を満たしたり、または空にすること、外部メモリへのサイクルの完了と、デジタル処理回路120が手際よくまたは周知の状態でシャットダウンされることを可能にするための他のタスクも含まれる。
【0036】
シャットダウン・モードに備えてシステムを準備するのに必要なタスクは、デジタル処理回路120が実際にシャットダウン・モードに遷移する前に(または無線がアクティブになる前に)完了される必要がある。したがって、一実施形態では、シャットダウン動作モードの前に、割込みサービス・ルーチンを呼び出す高優先度の割込みが、MCUコア302に与えられる。それに応じてこのサービス・ルーチンは必要なタスクを実施する。
【0037】
無線アクティビティに続いて、デジタル処理回路120がシャットダウン・モードから通常のモードに遷移した直後に特定のタスクを実施することもまた重要である。したがって、一実施形態では、無線がオフになると、所望のタスクを実施するために別のサービス・ルーチンを呼び出すより高い優先度の割込みが、MCUコア302に与えられる。図4Aは、これらの割込み処理アクティビティを示している。
【0038】
割込み処理の間に実施されるタスクは、システムの適切なまたは所望の全体的な性能を保証するために、無線アクティビティの前および/または直後に完了される必要があるという点でタイム・クリティカルなものである。しかし、図4Aにさらに示すように、割込み処理時間を最小限に抑え、それによってデジタル処理回路120内の他の処理アクティビティに使用可能な処理時間のウィンドウを最大にすることもまた重要である。
【0039】
割込み処理時間を減少させるために、割込みサービス・ルーチンを含む命令の総数を減少させることが有益である。例えば、割込みサービス・ルーチンは、コンパイラを用いるのではなく、アセンブリ・コードで効率的に書かれる。
【0040】
しかし、割込みサービス・ルーチンを含む命令以外の要因もまた、割込み処理期間の一因となる。例えば、MCU302や他のマスタ312は、AHBバス310へのアクセスを求めて争う。他のマスタ312にAHBバス310の所有権が与えられる場合、MCU302によるアクセスは遅延され、したがって実行が行き詰る。この問題は、別のマスタ312がバースト・アクセスを実施しており、再調停が行われる前にMCUがバースト全体の完了を待つように求められる場合には、特に重大なものになる。
【0041】
したがって、図4Bに示すように、ある実施形態では、他のマスタ312によるAHBバス310へのアクセスを制限するために、MCU302が割込みを処理するときに(または直前に)、無線アクティブ・モードに変化する所定の時間前にバス・アクセス制限信号がアサートされる。バス・アクセス制限信号のアサーションに応答して、アービタ315は、他のバス・マスタ312によって実施されているいずれのバースト転送をも早く終了させる。さらに、MCU302以外のマスタによるAHBバス312へのさらなるアクセスの要求がアービタ315によって付与されることができず、したがって、バス・アクセス制限信号がアサートされている間、MCU302がAHBバス310と関連のスレーブ・リソースへの排他的アクセスを有するままである。
【0042】
バス・アクセス制限信号は、割込み処理が完了するときに(または直後に)、無線アクティビティ完了の所定時間後にディアサートされる。バス・アクセス制限信号がディアサートされると、アービタ315は、アクセス制限を取り除き、その標準の調停シーケンスを継続する。このようにして、他のマスタ312がAHBバス310へのアクセスが再び許可される。これらの動作の具体的な実装に関するさらなる詳細について以下で述べる。
【0043】
図5は、図1のデジタル処理回路120に一般に合致するデジタル処理回路500の一実施形態のより詳細なブロック図を示している。図5の構成は、例えば携帯電話および/またはモデムのベースバンド回路の具体化である。一実施形態では、デジタル処理回路500は、GSM通信規格とGPRS規格の両方を実装する。
【0044】
デジタル処理回路500は、DSPサブセクション510とMCUサブセクション550とを含む。図示するように、DSPサブセクション510は、関連するメモリ514に結合されたDSPコア512を含む。様々な周辺デバイスが、1つまたは複数のバス516とバス・ブリッジ518を介してDSPコア512に結合される。図示する実施形態では、周辺デバイスは、ハードウェア・アクセラレータ520、オーディオCODEC522、受信バッファ524、送信バッファ526を含む。DSPサブセクション510内に設けられた特定の数とタイプの周辺デバイスは、応用例や、所望の機能と性能に応じて変化してもよいことに留意されたい。
【0045】
MCUサブセクション550は、関連するメモリ554に結合されたMCUコア552を含む。DMAコントローラ556と外部メモリ・コントローラ558を含めて、AHBバス560を介してMCU552に結合された様々な周辺デバイスが示されている。ブリッジ562を介してAHBバス560に結合された追加の周辺デバイスがさらに示されている。図示する実施形態では、これらの追加の周辺デバイスは、UART564、リアルタイムクロック566、キーパッドI/F568、割込みコントローラ570を含む。望むなら、所望の機能に応じて様々な代替の周辺デバイスが設けることができることに留意されたい。他の実施形態では、AHBバス以外の共有バスが使用できることにも留意されたい。
【0046】
DSPサブセクション510とMCUサブセクション550の間の通信に対処するためのホスト・インターフェース572がさらに示されている。外部メモリ・コントローラ558に結合された外部メモリ580が示されている。外部メモリ580には、例えばSRAM、フラッシュ、EEPROMおよび/または他のタイプのメモリが含まれる。例えばキーパッド、ディスプレイ、SIMカードなどのインターフェース・カードなどを含めて、様々な追加の外部構成要素(図5に図示せず)をデジタル処理回路500に結合できることに留意されたい。
【0047】
動作中、DSPサブセクション510は、受信バッファ524を介してRFフロントエンド110から受信されるデータを処理する。同様にDSPサブセクション510は、処理されたデータを送信バッファ526に提供し、次いでこの処理済データは、デジタル・アナログ変換器(DAC)582を介してRFフロントエンド回路110に伝達される。オーディオCODEC522は、外部マイク(図5に図示せず)からオーディオ信号を受信し、またはオーディオ信号をスピーカ(やはり図5に図示せず)に供給する。DSP512やハードウェア・アクセラレータ520は、設けられている場合には、望むなら、例えばフィルタリング、デシメーション、変調、復調、符号化、復号、相関および/または信号スケーリングなど、様々な低レベル信号処理機能を実施できる。
【0048】
一実施形態では、MCUサブセクション550が、高レベル処理機能を実施するために設けられる。例えば、一実装では、MCUサブセクション550は、上述したように通信プロトコル・スタックとハウスキーピング・タスクをサポートするための機能を提供する。MCUサブセクション550はさらに、MMI(man-machine-interface:マン・マシン・インターフェース)などのインターフェースを実装することができ、またシステム内で実行されるアプリケーション用の実行環境を提供することができる。
【0049】
MCUサブセクション550は、図3、4A、4Bに関連して上述した機能を実現するように動作可能である。より具体的には、図示する実施形態では、MCUコア552、DMAコントローラ556、ホスト・インターフェース572は、マスタ・デバイスとしてAHBバス560内に常駐する。したがって、これらのバス・マスタのいずれもが、AHBバス560の所有権の取得要求を開始する。バス要求は、ラウンド・ロビンなどの調停手法に従ってAHBバス560の所有権付与を制御するアービタ590に提供される。一実施形態では、MCUコア552がハーバード・アーキテクチュアを有するプロセッサ・コアを実装することに留意されたい。したがって、MCUコア552は、コードとデータについて別個のバス要求論理を備える。
【0050】
図5に示すように、デジタル処理回路500は、システム・タイマ595をも含む。一実施形態では、システム・タイマ595が、上記で論じた時間領域分離機能に関連する様々なシステム・イベントのタイミングを含めて、全体的なシステム・タイミングを制御するために設けられる。したがって、システム・タイマ595は、無線がアクティブである時間ウィンドウ(とデジタル処理回路500がシャットダウン・モードに置かれるとき)を決める。一実施形態では、システム・タイマ595は、無線アクティブ・ウィンドウ(またはタイムスロット)へのまたはそこからの変更を示しており、またそれに関してタイミングが合わされている追加の時限イベントまたは信号を生成する。
【0051】
より具体的には、一実施形態では、アクティブ無線モードへの変更の所定時間前に、システム・タイマ595は、アービタ590に提供される上記で論じたバス・アクセス制限信号のアサーションを引き起こす。システム・タイマ595は、(バス・アクセス制限信号のアサーションと同時にまたはその直後に)MCUコア552に提供される高優先度割込みのアサーションをさらに引き起こす。上記説明によれば、MCU552は、デジタル処理回路500のシャットダウン動作モードに備えて準備するためにハウスキーピング・タスクを実施する割込みサービス・ルーチンを実行することによって割込みに応答する。これらのハウスキーピング・タスクには、例えば送信バッファ526にデータを満たすこと、受信バッファ524内のデータを空にすること、外部メモリに対するサイクルを完了すること、回路が手際よくまたは知られている状態でシャットダウンすることを可能にする他のタスクが含まれる。一実装では、割込みサービス・ルーチンは、割込み命令待ちの実行で終了する。直後にシステム・タイマ595は、(例えば1つまたは複数のクロック信号をゲート制御することによって)デジタル処理回路500にシャットダウン動作モードに入らせるための信号を生成する。さらに、システム・タイマ595は、(短い整定時間の後に開始される)無線アクティビティの開始を引き起こす。
【0052】
無線アクティビティが完了するときに(またはその所定時間後に)、システム・タイマ595は、(例えば1つまたは複数のクロック信号を再びイネーブルすることによって)デジタル処理回路500のシャットダウン動作モードを中断するための信号を生成する。次いで、システム・タイマ595は、MCUコア552へのより高い優先度の割込みのアサーションを引き起こす。したがって、このより高い優先度の割込みは、無線アクティビティ後の動作を実施するためのサービス・ルーチンを呼び出す。引き続いてシステム・タイマ595は、この割込みサービス・ルーチンの完了とほぼ同時に、所定時間後にバス・アクセス制限信号をディアサートする。
【0053】
上述したように、バス・アクセス制限信号のアサーションは、MCUコア552以外のマスタによるAHBバス560へのアクセスを制限する。例えば、一実施形態では、バス・アクセス制限信号のアサーションに応答して、アービタ590は、DMAコントローラ556またはホスト・インターフェース572によって実施されている任意のバースト・サイクルを早く停止させる。図6は、DMAコントローラ556によって開始されるバースト・トランザクションの例示的な早期終了を示すタイミング図である。図示するように、バス・アクセス制限信号がアサートされると、アービタ590は、DMAコントローラ556への許可信号をディアサートする。図示する例では、バースト転送の第4のビートは完了しないことに留意されたい。DMAコントローラ556は、その後、バス・アクセス制限信号のディアサート後にバスの所有権を再取得するときにこの転送を完了する。
【0054】
一実施形態では、アービタ590はさらに、バス・アクセス制限信号がアサートされる間、MCU552だけに所有権要求を許可することによってAHBバス560へのアクセスを制限する。例えば、図7に示すように、バス・アクセス制限信号がアサートされる間のMCU552によるAHBバス560への要求は、DMAコントローラ556による競合した要求が不成功のままである間、繰返し許可される。バス・アクセス制限信号がディアサートされると、DMAコントローラ556またはホスト・インターフェース572からの要求は、通常の調停手法に従ってアービタ590によって許可される。バス・アクセス制限信号がディアサートされるときに、一部の実装では通常の1サイクルの調停遅延が回避されることに留意されたい。
【0055】
上記説明によれば、割込みサービス・ルーチンによって実施されるタイム・クリティカルなハウスキーピング・タスクは、AHBバス560へのアクセスを制限することによって比較的短い期間の間に決定論的に開始され、完了される。このようにして、他のタスクに使用可能な処理時間のウィンドウが増加する。
【0056】
多数の代替実施形態もある。例えば、バス・アクセス制限信号がアサートされる間、特定のバス・マスタによるアクセスを制限するために様々な他の技術が使用される。例えば、代替の一実施形態では、共有バスの所有権付与を制限するためバス・アービタを制御するのではなく、特定のバス・マスタが、バス・アクセス制限信号のアサート時に共有バスの所有権を要求しないように構成できる。
【0057】
別の代替実施形態では、デジタル処理回路500は、上記で論じたように、バス・アクセスを制限させるソフトウェア制御のもとで生成される信号に応答して設定されるプログラマブル・レジスタを含む。例えば、構成レジスタは、上述の割込みサービス・ルーチン内のソフトウェア命令の実行に応答してバス・アクセスを選択的に制限するように設定される。割込みコントローラや汎用タイマなど他のデバイスが、バス・アクセス制限信号を生成することにさらに留意されたい。
【0058】
さらに、上述の諸実施形態では、マイクロコントローラ・ユニットが(例えばバス・アクセス制限信号がアサートされる間、)排他的バス・アクセスが与えられるタイム・クリティカル機能を実施するが、代替のバス・マスタがこうしたタイム・クリティカル機能を実施する(また排他的バス・アクセスが与えられる)他の実施形態が可能である。さらに、上述の諸実施形態ではタイム・クリティカル・タスクが割込みサービス・ルーチンの実行によって実施されるが、他の実施形態も可能である。例えば、1組のタイム・クリティカル・タスクが、バス・マスタ内で実行される非割込み駆動型のソフトウェアまたはバス・マスタ内のハードウェアによって実施される代替の実施形態が可能である。こうした実施形態は、RFフロントエンド回路110の動作モードの変更を示す信号に応答して、他のバス・マスタによる共有バスへのアクセスを制限する。
【0059】
さらに、一部の代替実施形態では、バス310(またはバス560)は、マルチレイヤ・バスとして実装される。マルチレイヤ・バスは、複数のマスタが別個のスレーブに同時にアクセスすることを可能にする。例えば、図3に示すように、マルチレイヤAHBバス310の実装は、MCU302によるスレーブ304へのアクセスと、マスタ312によるスレーブ305または306へのアクセスを同時に行うことを可能にする。層の数により、同時にトランザクションを実施できるマスタの数が決まる。
【0060】
マルチレイヤAHBバスを使用する一実施形態では、マルチレイヤ・バスへのアクセスが、バス・アクセス制限信号がアサートされるときに、MCU302(またはMCU552)以外のマスタについて制限される。したがって、バス・アクセス制限信号がアサートされるときに、非MCUマスタによって実施されているバーストが終了され、マルチレイヤAHBバスの所有権の付与は、バス・アクセス制限信号がアサートされる間、MCUだけに限定される。
【0061】
マルチレイヤ・バスを使用する代替の一実施形態では、アービタは、ある層をMCU(またはタイム・クリティカル機能を実施する別のマスタ)の専用とし、バス・アクセス制限信号がアサートされているときでも、他のマスタが他の層にアクセスすることを可能にする。こうした実施形態ではアービタは、MCUによって必要なスレーブでトランザクションを実施するマスタのバーストを終了させるように構成できる。マルチレイヤ・バスを使用するさらなる代替実施形態では、それぞれ異なる高優先度マスタに、それぞれ個々の層への排他的アクセスが付与される。例えば、こうした一実施形態ではDMAコントローラ556には、(例えばUART564などの周辺デバイスへのまたはそこからのデータをロードしまたはアンロードするために)バスのある層への排他的アクセスが付与され、MCU552にはバスの別の層への排他的アクセスが付与される。このようにして、高優先度マスタ(MCU552とDMAコントローラ556など)の両方によって実施される動作は、決定論的な時間内で完了される。
【0062】
最後に、様々な代替実施形態において、バス・アクセス制限信号に応答して特定のマスタ(MCU302やMCU552など)に排他的アクセスを与えるのではなく、他のやり方でバス・アクセスを制限できることに留意されたい。例えば、バス・アクセス制限信号がアサートされている間、他のマスタが共有バスにアクセスすることを許可し続ける実施形態がある。こうした一実施形態では、調停手法は、通常の調停ポリシーによって実現される相対的公平さと比べてより不利な調停ポリシーが他のバス・マスタに提供されるように、バス・アクセス制限信号がアサートされるときに変更される。同様にアービタは、バス・アクセス制限信号がアサートされる間に他のマスタがバスにアクセスすることを許可するが、MCUがそのバスへのアクセスを必要とする場合にはそのバーストを中断するように構成できる。このようにして、MCUは依然として優先されるが、他のマスタは、競合なしに得られる場合に、リソースの取得が許される。
【0063】
さらに、図5の実施形態はDSP512とMCU552とを含むが、他のデジタル処理回路を使用する実施形態も可能である。例えば、一部の実施形態は、MCU552の代わりにDSPを使用できる。同様に、DSPなしで単一のMCU(またはCPU)を使用する実施形態が可能である。さらなる実施形態は、MCU552の代わりに、プログラマブル論理デバイス(PLD:programmable logic device)または他のハードウェア回路を使用できる。
【0064】
諸実施形態についてかなり詳細に上述したが、上記開示が完全に理解されると、当業者には複数の追加の変形形態や修正形態が明らかになろう。特許請求の範囲は、こうしたすべての変形形態および修正形態を包含すると解釈されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】RFフロントエンド回路とデジタル処理回路とを含む通信装置の一般化されたブロック図である。
【図2】時間領域分離に従って通信装置内で発生する1組のイベントを示す図である。
【図3】共有バスを介して複数のスレーブ装置に結合された複数のバス・マスタを示す図である。
【図4A】割込み処理アクティビティを示す図である。
【図4B】バス・アクセス制限信号のアサーションを示す図である。
【図5】デジタル処理回路の一実施形態の詳細なブロック図である。
【図6】デジタル処理回路の一実施形態におけるバースト・サイクルの早期終了を示すタイミング図である。
【図7】デジタル処理回路の一実施形態におけるバス要求処理を示すタイミング図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線周波数信号で動作する無線周波数(RF)回路と、
前記RF回路に結合されたデジタル処理回路とを備えた通信装置であって、そのデジタル処理回路が、
バスに結合された第1のバス・マスタと、
前記バスに結合された1つまたは複数の他のバス・マスタとを含み、
前記第1のバス・マスタと前記1つまたは複数の他のバス・マスタによる前記バスへのアクセス要求の間を調停するように構成され、
前記1つまたは複数の他のバス・マスタによる前記バスへのアクセスが、前記RF回路の動作モードの変更を示す信号に応答して制限される通信装置。
【請求項2】
前記信号が前記RF回路のアクティブ動作モードへの変更を示す請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記信号が前記RF回路の送信動作モードへの変更を示す請求項2に記載の通信装置。
【請求項4】
前記信号が前記RF回路の受信動作モードへの変更を示す請求項2に記載の通信装置。
【請求項5】
前記信号が前記RF回路の前記アクティブ動作モードへの変更の所定時間前にアサートされる請求項2に記載の通信装置。
【請求項6】
前記信号が前記デジタル処理回路のシャットダウン動作モードの所定時間前にアサートされる請求項1に記載の通信装置。
【請求項7】
前記信号が、タイミング回路によって生成される前記RF回路の動作モードの変更を示す請求項1に記載の通信装置。
【請求項8】
前記信号のアサーションに応答して、前記第1のバス・マスタに前記バスへの排他的アクセスが提供される請求項1に記載の通信装置。
【請求項9】
前記バスがマルチレイヤ・バスであり、前記信号のアサーションに応答して前記第1のバス・マスタには前記バスのある層への排他的アクセスが提供され、前記1つまたは複数の他のバス・マスタは前記マルチレイヤ・バスの別の層へのアクセスが許可される請求項1に記載の通信装置。
【請求項10】
前記バス・アービタが、前記信号に応答して前記1つまたは複数の他のバス・マスタへの前記バスの所有権の付与を制限するように構成される請求項1に記載の通信装置。
【請求項11】
前記1つまたは複数の他のバス・マスタが、前記信号に応答して前記バスの所有権取得要求を抑制するように構成される請求項1に記載の通信装置。
【請求項12】
前記1つまたは複数の他のバス・マスタによるアクセスが、前記信号に応答して、前記1つまたは複数の他のバス・マスタにとって不利な調停ポリシーを実施することによって制限される請求項1に記載の通信装置。
【請求項13】
無線周波数(RF)回路とデジタル処理回路とを含む通信装置を動作させる方法であって、
第1のバス・マスタと1つまたは複数の他のバス・マスタによるバスへのアクセス要求の間を調停するステップと、
前記RF回路の動作モードの変更を示す信号を受信するステップと、
前記信号に応答して、前記1つまたは複数の他のバス・マスタによる前記バスへのアクセスを制限するステップとを含む方法。
【請求項14】
前記1つまたは複数のバス・マスタによるアクセスが、前記信号に応答して、前記1つまたは複数のバス・マスタにとって不利な調停ポリシーを実施することによって制限される請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記信号が前記RF回路のアクティブ動作モードへの変更を示す請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記信号が前記RF回路の前記アクティブ動作モードへの前記変更の所定時間前にアサートされる請求項13に記載の方法。
【請求項17】
無線周波数信号で動作する無線周波数(RF)トランシーバと、
前記RFトランシーバに結合されたデジタル処理回路とを備えた携帯電話であって、そのデジタル処理回路が、
バスに結合された第1バス・マスタと、
前記バスに結合された1つまたは複数の他のバス・マスタと、
前記第1のバス・マスタおよび前記1つまたは複数の他のバス・マスタによる前記バスへのアクセス要求の間を調停するように構成されたバス・アービタとを含み、
前記1つまたは複数の他のバス・マスタによる前記バスへのアクセスが、前記RFトランシーバの動作モードの変更を示す信号に応答して制限される携帯電話。
【請求項18】
前記信号が前記RFトランシーバのアクティブ動作モードへの変更を示す請求項17に記載の携帯電話。
【請求項19】
前記信号が前記RFトランシーバの前記アクティブ動作モードへの前記変更の所定時間前にアサートされる請求項18に記載の携帯電話。
【請求項20】
前記信号が前記デジタル処理回路のシャットダウン動作モードの所定時間前にアサートされる請求項17に記載の携帯電話。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2007−532066(P2007−532066A)
【公表日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−506502(P2007−506502)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【国際出願番号】PCT/US2005/010641
【国際公開番号】WO2005/099108
【国際公開日】平成17年10月20日(2005.10.20)
【出願人】(506326811)シリコン ラボラトリーズ インコーポレーテッド (4)
【Fターム(参考)】