説明

制電性樹脂組成物および制電性樹脂成形品

【課題】植物由来材料に置き換えが可能な脂肪族ポリエステルを含有し、制電性に優れ、更に、耐衝撃性に優れ、その破壊形態が延性破壊である熱可塑性重合体組成物の提供。
【解決手段】脂肪族ポリエステル系樹脂(A)100質量部と、オレフィン系樹脂(B)5〜300質量部と、常温で液体のイオン性化合物(C)0.01〜10質量部と、以下の芳香族ビニル系重合体(D1)及び/又は芳香族ビニル系重合体(D2)から成る芳香族ビニル系重合体(D)2〜300質量部とを含有する制電性樹脂組成物。上記の芳香族ビニル系重合体(D1)は、芳香族ビニル化合物から主としてなる重合体ブロックと共役ジエン化合物から主としてなる重合体ブロックとを含有するエラストマーであり、上記の芳香族ビニル系重合体(D2)は芳香族ビニル系重合体(D1)を水素添加してなるエラストマーである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制電性および耐衝撃性に優れた制電性樹脂組成物ならびに制電性樹脂成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
化石由来資源を原料とするプラスチックが大量に生産され消費される昨今、地球温暖化や廃棄物処理の観点から、これらプラスチックが環境汚染の元凶とまで言われるようになって来ている。そのような背景から生分解ポリマーや植物由来原料を使用したポリマーへの期待が高まり、研究、開発が活発に行われている。特に、脂肪族ポリエステルは、生分解性を有する材料として注目を集めており、また、植物由来原料の使用により環境負荷低減効果が見込まれることから各種分野への展開が期待されている(特許文献1)。しかしながら、脂肪族ポリエステルを積極的に制電性樹脂として活用した例は知られていない。
【0003】
ところで、ポリオレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリカーボネート等の熱可塑性重合体は、機械的特性、物理的特性、成形加工性などに優れることから、車両分野、電気・電子分野、OA・家電分野、建材分野及びサニタリー分野等の幅広い分野で使用されているが、上記の脂肪族ポリエステルと同様に、帯電し易い欠点を有していることから、静電気障害の問題が発生する液晶を使用した表示装置、半導体周辺、プラズマディスプレイ、クリーンルーム内などで使用される各種パーツ、シート、フィルム等に使用することは困難である。斯かる欠点を改良する目的から、例えば、塩化ビニル系樹脂に界面活性剤、導電性カーボン、金属粉、導電性繊維などを配合した組成物が開示されている(特許文献2及び3)。しかしながら、界面活性剤を配合した場合、制電性が発現し難い、また、持続性が得られない等の問題がある。一方、導電性カーボン、金属粉、導電性繊維などを配合した場合、これらの導電性物質が脱落、スパークを起し部品などを損傷させることが問題となっている。
【0004】
これらの課題を解決する方法として、ポリオレフィン系樹脂に帯電防止剤としてポリオレフィンブロックと親水性ポリマーブロックから成るブロック共重合体を配合することが提案され(特許文献4)、また、ゴム強化スチレン系樹脂に帯電防止剤として特定のポリアミドエラストマーを配合した組成物が提案されている(特許文献5及び6)。しかしながら、これらの提案された組成物は、上記した持続性、スパーク等の問題は解決されるものの、制電性が十分でないこと及び電気特性の湿度依存性が大きいという問題を有している。また、熱可塑性樹脂に常温で液体のイオン性化合物を配合した帯電防止性樹脂組成物が提案されている(特許文献7)。しかしながら、通常、熱可塑性樹脂に常温で液体のイオン性化合物を配合した場合、制電性が発現し難いという課題がある。なお、常温で液体のイオン性化合物は、「イオン性液体」、「イオン液体」、「常温溶融塩」とも呼ばれている。他方、脂肪族ポリエステルを成形材料として使用する場合、耐衝撃性が不足する場合がある。これに対しては耐衝撃性を改良する熱可塑性樹脂を添加することにより対処可能であるが、その場合、制電性の低下が懸念され、結局、制電性と耐衝撃性の改良された脂肪族ポリエステルは得られていない。
【0005】
【特許文献1】特開2007−197654号公報
【特許文献2】特開昭59−49967号公報
【特許文献3】特開昭59−18734号公報
【特許文献4】特開2001−278985号公報
【特許文献5】特開平4−309547号公報
【特許文献6】特開平2−292353号公報
【特許文献7】特開2005−15573号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、その目的は、植物由来材料に置き換えが可能な脂肪族ポリエステルを含有し、制電性に優れ、更に、耐衝撃性に優れ、その破壊形態が延性破壊である制電性樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明の第1の要旨は、繰り返し単位として、脂肪族ジオール及び/または脂環式ジオールから形成される単位と脂肪族ジカルボン酸(その誘導体を含む)及び/または脂環式ジカルボン酸(その誘導体)から形成される単位とを有する脂肪族ポリエステル系樹脂(A)100質量部と、オレフィン系樹脂(B)5〜300質量部と、常温で液体のイオン性化合物(C)0.01〜10質量部と、以下の芳香族ビニル系重合体(D1)及び/又は芳香族ビニル系重合体(D2)から成る芳香族ビニル系重合体(D)2〜300質量部とを含有することを特徴とする制電性樹脂組成物に存する。
【0008】
上記の芳香族ビニル系重合体(D1)は、芳香族ビニル化合物から主としてなる重合体ブロックと共役ジエン化合物から主としてなる重合体ブロックとを含有するエラストマーであり、上記の芳香族ビニル系重合体(D2)は芳香族ビニル系重合体(D1)を水素添加してなるエラストマーである。
【0009】
そして、本発明の第2の要旨は、上記の制電性樹脂組成物から成ることを特徴とする樹脂成形品に存する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、植物由来材料に置き換えが可能な脂肪族ポリエステルを含有し、制電性に優れ、更に耐衝撃性に優れ、その破壊形態が延性破壊である制電性樹脂組成物から成る樹脂成形品が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を説明する。なお、本明細書において、「(共)重合」とは単独重合および共重合を意味し、「(メタ)アクリル」とはアクリル及び/又はメタクリルを意味し、「(メタ)アクリレート」とはアクリレート及び/又はメタクリレートを意味する。
【0012】
本発明の組成物においては、必須成分として脂肪族ポリエステル系樹脂(A)、オレフィン系樹脂(B)、常温で液体であるイオン化合物(C)及び芳香族ビニル系重合体(D)を使用し、好ましい態様においては、更に、特定のブロック重合体(E)及びリチウム化合物(F)を使用する。
【0013】
<脂肪族ポリエステル系樹脂(A)>
本発明で使用する脂肪族ポリエステル系樹脂(A)は、繰り返し単位として、脂肪族ジオール及び/又は脂環式ジオールから形成される単位と脂肪族ジカルボン酸(その誘導体を含む)及び/又は脂環式ジカルボン酸(その誘導体を含む)から形成される単位とを有する。
【0014】
上記のジオールは以下の一般式(1)で表すことが出来る。
【0015】
【化1】

【0016】
一般式(1)中、Rは、2価の脂肪族炭化水素基を表す。Rの炭素数しては、通常2〜11、好ましくは2〜6である。Rはシクロアルキレン基を包含し、また、分岐鎖を有していてもよい。Rは、好ましくは「−(CH)n−」であり、ここで、nは2〜11の整数、好ましくは2〜6の整数を示す。
【0017】
上記のジオールの具体例としては、エチレングリコール、トリメチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,6−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。これらの中では、得られる脂肪族ポリエステルの物性の面から、1,4−ブタンジオールが好ましい。上記のジオールは2種以上を併用してもよい。
【0018】
上記のジカルボン酸は以下の一般式(2)で表すことが出来る。
【0019】
【化2】

【0020】
一般式(2)中、Rは直接結合または2価の脂肪族炭化水素基を表す。Rの炭素数は、通常2〜11、好ましくは2〜6である。Rはシクロアルキレン基を包含し、また、分岐鎖を有していてもよい。Rは、好ましくは「−(CH)m−」であり、ここで、mは0又は1〜11の整数、好ましくは0又は1〜6の整数を示す。
【0021】
ジカルボン酸の具体例としては、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、スバリン酸、ドデカン二酸などが挙げられ、その誘導体としては、これらの低級アルキルエステル及び酸無水物が挙げられる。誘導体としては、2個のカルボキシル基の双方が例えばエステル基などに変換されている化合物が好ましい。これらの中では、得られる脂肪族ポリエステルの物性の面から、コハク酸またはアジピン酸が好ましく、特にコハク酸が好ましい。上記のジカルボン酸は2種以上を併用してもよい。
【0022】
脂肪族ポリエステル系樹脂(A)には、2官能脂肪族オキシカルボン酸および3官能性脂肪族オキシカルボン酸を共重合することが出来る。
【0023】
2官能脂肪族オキシカルボン酸としては、分子中に1個の水酸基と1個のカルボン酸基を有するものであれば、特に制限されないが、以下の一般式(3)で表される脂肪族オキシカルボン酸が好適である。
【0024】
【化3】

【0025】
一般式(3)中、Rは2価の脂肪族炭化水素基を表す。Rの炭素数は、通常1〜11、好ましくは1〜16である。Rはシクロアルキレン基を包含し、また、分岐鎖を有していてもよい。
【0026】
2官能脂肪族オキシカルボン酸は、好ましくは、1つの炭素原子に水酸基とカルボキシル基を持つ化合物であり、特に、以下の一般式(4)で表される化合物を使用すると重合速度が増大するので好ましい。
【0027】
【化4】

【0028】
一般式(4)中、zは0又は1以上の整数、好ましくは0又は1〜10、更に好ましくは0又は1〜5である。
【0029】
2官能脂肪族オキシカルボン酸の具体例としては、乳酸、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシ−n−酪酸、2−ヒドロキシ−3,3−ジメチル酪酸、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸、2−メチル乳酸、2−ヒドロキシカプロン酸、これらの混合物などが挙げられる。これらに光学異性体が存在する場合には、D体、L体、ラセミ体の何れでもよく、形状としては、固体、液体、水溶液の何れであってもよい。特に、使用時の重合速度の増大が顕著であり且つ入手が容易である、乳酸またはグリコール酸およびこれらの水溶液が好ましい。乳酸やグリコール酸は、50%、70%、90%の水溶液が一般に市販されており、入手が容易である。
【0030】
3官能脂肪族オキシカルボン酸としては、水酸基とカルボキシル基の両方を合わせて3個有する化合物、すなわち、(a)分子中にカルボキシル基2個と水酸基1個を有する化合物、(b)分子中にカルボキシル基1個と水酸基2個を有する化合物がある。市場からの入手性が容易であり且つ低コストである点から、上記の(a)が好ましい。また、比較的低分子量のものが好ましく、具体的にはリンゴ酸が好適である。
【0031】
脂肪族ポリエステル系樹脂(A)は、前記の成分を使用し、ポリエステル生成条件下に反応させて得ることが出来る。ここで、ポリエステル生成条件とは、(a)単純な脱水反応によるエステル結合生成、(b)他の縮合である脱アルコール(即ちエステル交換)、(c)酸無水物を使用した場合は付加を生じさせる条件を意味する。脱水または脱アルコール促進のために共沸剤の使用してもよく、減圧条件を採用してもよい。更に、触媒を使用してもよい。
【0032】
ジオール成分の使用割合は、ジカルボン成分(誘導体を含む)に対して実質的に等モルであるが、実際の製造過程においてはエステル化反応中に留出することがあることから、ジカルボン成分に対して通常1〜20モル%過剰に使用する。2官能脂肪族オキシカルボン酸の使用量は、ジカルボン成分100モルに対し、通常60モル以下、好ましくは0.04〜20モル、更に好ましくは3〜10モルである。斯かる使用量により、より高分子量の脂肪族ポリエステル系樹脂(A)を得ることが出来る。2官能脂肪族オキシカルボン酸の使用量は、ジカルボン成分100モルに対し、通常5モル以下、好ましくは1モル以下である。使用量が5モルを超えると反応中ゲル化の危険性が大きくなる。
【0033】
2官能脂肪族オキシカルボン酸の添加時期は、ポリエステル生成反応以前であれば特に限定されないが、(a)予め脂肪族オキシカルボン酸溶液に触媒を溶解させた状態で原料仕込時またはエステル化反応中に添加する方法、または(b)原料仕込時に触媒を添加すると同時に添加する方法が好ましい。
【0034】
エステル化反応に使用される触媒としては、ゲルマニウム、チタン、アンチモン、スズ、マグネシウム、カルシウム、亜鉛などの反応系に可溶の金属化合物が挙げられる。これらの中では、ゲルマニウム化合物が好ましく、その具体例としては、テトラアルコキシゲルマニウム等の有機ゲルマニウム化合物、酸化ゲルマニウム、塩化ゲルマニウム等の無機ゲルマニウム化合物が挙げられる。価格や入手の容易性から、酸化ゲルマニウム、テトラエトキシゲルマニウム又はテトラブチキシゲルマニウムが特に好ましい。
【0035】
触媒の使用量は、使用するモノマー量の合計量に対し、通常0.001〜3重量%、好ましくは0.005〜1.5重量%である。触媒の添加時期は、ポリエステル生成以前であれば特に制限されないが、原料仕込み時に添加してもよく、減圧開始時に添加してもよい。原料仕込み時に2官能脂肪族オキシカルボン酸と同時に添加するか、または2官能性脂肪族オキシカルボン酸およびその水溶液に触媒を溶解して添加するのが特に好ましい。
【0036】
エステル化反応の温度、時間、圧力などの条件は、目的物である脂肪族ポリエステルが得られる条件でれば特に限定されないが、反応温度は、通常150〜260℃、好ましくは180〜230℃、反応時間は、通常1時間以上、好ましくは2〜15時間、反応圧力は、通常10mmHg以下、好ましくは2mmHg以下である。
【0037】
脂肪族ポリエステル系樹脂(A)の数平均分子量(Mn)は、本発明の目的である耐衝撃性の面から、通常1〜20万、好ましくは3〜20万である。また、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比、Mw/Mnは、通常3以上、好ましくは4以上である。
【0038】
本発明においては、本発明の目的の1つである環境負荷低減をより向上させる観点から、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)を構成するジオール成分およびジカルボン成分(誘導体を含む)の少なくとも何れかが植物由来であることが好ましく、両原料とも植物由来であることが更に好ましい。
【0039】
脂肪族ポリエステル系樹脂(A)には、本発明の効果を損なわない限り、他の共重合成分を導入することが出来る。他の共重合成分としては、ヒドロキシ安息香酸などの芳香族オキシカルボン酸;ビスフェノールA等の芳香族ジオール類;テレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸;3官能以上の脂肪族ポリオール、脂肪族ポリカルボン酸、芳香族ポリカルボン酸;4官能以上のオキシカルボン酸などが挙げられる。これらの成分の使用量は、使用するモノマー量の合計量に対し、通常50モル%以下、好ましくは20モル%以下である。
【0040】
<オレフィン系樹脂(B)>
本発明で使用するオレフィン系樹脂(B)は、炭素数2〜10のオレフィン類の少なくとも1種から成る。オレフィン系樹脂(B)の形成に使用するオレフィン類の例としては、エチレンの他、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、3−メチルブテン−1、4−メチルペンテン−1、3−メチルヘキセン−1等のα−オレフィンがあり、これらは2種以上を併用してもよい。また、これらの中では、エチレン、プロピレン、ブテン−1、3−メチル−ブテン−1、4−メチルペンテン−1が好ましく、特にエチレン及びプロピレンが好ましい。
【0041】
また、上記オレフィン類として環状オレフィンを使用することが出来る。環状オレフィンは、通常、上記非環状オレフィンと併用して使用される。環状オレフィンとしては、二重結合を1つ有する脂環式化合物であれば特に限定されず、例えば、特開平5−310845号公報などに例示された化合物が挙げられる。好ましい環状オレフィンは、炭素数が11以下の化合物である。上記環状オレフィンとしては、ノルボルネン類が好ましく、炭素数11以下のノルボルネン類(ノルボルネン及び/又はノルボルネン誘導体)が環状オレフィン全体の50質量%以上を占めることが好ましい。
【0042】
ノルボルネン類としては、具体的には、ビシクロ〔2.2.1〕ヘプト−2−エン、6−メチルビシクロ〔2.2.1〕ヘプト−2−エン、5,6−ジメチルビシクロ〔2.2.1〕ヘプト−2−エン、1−メチルビシクロ〔2.2.1〕ヘプト−2−エン、6−エチルビシクロ〔2.2.1〕ヘプト−2−エン、6−n−ブチルビシクロ〔2.2.1〕ヘプト−2−エン、6−イソブチルビシクロ〔2.2.1〕ヘプト−2−エン、7−メチルビシクロ〔2.2.1〕ヘプト−2−エン等のビシクロ〔2.2.1〕ヘプト−2−エン誘導体、トリシクロ〔4.3.0.12.5〕−3−デセン、2−メチルトリシクロ〔4.3.0.12.5〕−3−デセン、5−メチルトリシクロ〔4.3.0.12.5〕―3−デセン等のトリシクロ〔4.3.0.12.5〕−3−デセン誘導体、トリシクロ〔4.4.0.12.5〕―3−ウンデセン等が挙げられる。これらは2種以上を併用してもよい。なお、炭素数12以上の環状オレフィンは単独で又は上記の炭素数11以下の化合物と併用することが出来る。
【0043】
オレフィン系樹脂(B)の形成において必要に応じて使用することの出来る他の単量体としては、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン、1,9−デカジエン等の非共役ジエン等が挙げられる。
【0044】
オレフィン系樹脂(B)として好ましいものは、ポリプロピレン、プロピレン−エチレン共重合体等のプロピレン単位を主として含む重合体、ポリエチレン、エチレン−ノルボルネン共重合体が好ましく、更に好ましくはポリプロピレン、プロピレン−エチレン共重合体等のプロピレン単位を主として含む重合体である。これらは、単独で使用してもよいし、組み合わせて使用してもよい。組み合わせ使用する場合の特に好ましい組み合わせは、ポリプロピレンとポリエチレン、ポリエチレンとエチレン−ノルボルネン共重合体の組み合わせである。なお、上記プロピレン−エチレン共重合体としては、ランダム共重合体、ブロック共重合体等があり何れも使用できるが、表面外観性からはランダムタイプを使用することが特に好ましい。また、ポリエチレンとしては、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン等の何れのものも使用できる。
【0045】
本発明のオレフィン系樹脂(B)は、公知の重合法で製造されたものが使用でき、例えば、高圧重合法、低圧重合法、メタロセン触媒重合法等がある。更に、本発明で使用されるオレフィン系樹脂としては、重合触媒を脱触媒化したもの、低分子化合物を除去したもの、更に、酸無水物基、カルボキシル基及びエポキシ基等で変性したものを使用することが出来る。
【0046】
オレフィン系樹脂(B)の結晶性の有無は問わないが、室温下、X線回折による結晶化度が10%以上であるものを少なくとも1種使用することが好ましい。また、オレフィン系樹脂(B)のJISK7121に準拠して測定した融点が40℃以上であるものを少なくとも1種使用することが好ましい。オレフィン系樹脂(B)としてポリプロピレン系樹脂を使用する場合、JISK7210:1999(230℃、荷重2.16kg)に準拠して測定したメルトフローレートは、好ましくは0.01〜500g/10分、より好ましくは0.05〜100g/10分であり、ポリエチレン系樹脂を使用する場合は、JISK6922−2(190℃、荷重2.16kg)に準拠して測定したメルトフローレートは、好ましくは0.01〜500g/10分、より好ましくは0.05〜100g/10分である。
【0047】
オレフィン系樹脂(B)は、酸化防止剤、熱安定剤、滑剤等の各種添加剤を配合したものを使用することも出来るし、未配合のものを使用することも出来る。また、使用される用途によっては、成形品から発生ガス成分となる前記各種添加剤を配合していないオレフィン系樹脂(B)、低分子量の炭化水素化合物の少ないものまたは除去したもの、更に脱触媒したもの等を使用した方が好ましい場合がある。
【0048】
オレフィン系樹脂(B)の使用量は、成分(A)100質量部に対し、5〜300質量部、好ましくは10〜250質量部、更に好ましくは10〜150質量部、特に好ましくは15〜100質量部の範囲である。オレフィン系樹脂(B)の使用量が5質量部未満の場合は得られる樹脂組成物の耐衝撃性が劣り、300質量部を超える場合は制電性が劣る。
【0049】
<ポリ乳酸>
本発明においては、植物由来度および力学物性の低下を補完する目的から、ポリ乳酸を使用することが出来る。ポリ乳酸の種類は特に限定されないが、十分な強度を有するために必要な数平均分子量は、通常3万以上、好ましくは10万以上である。得られるポリ乳酸の物性から、ポリ乳酸を構成するL体とD体のモル比(L/D)は100/0〜0/100の全ての組成で使用できる。弾性率の高いものが好ましい場合には、L体が95%以上であることが好ましい。ポリ乳酸の製造法は特に限定されるものではなく、ラクチドを経由する開環重合法や乳酸の直接重縮合法が挙げられる。
【0050】
また、乳酸以外の単量体単位は、全単量体単位中の割合として、通常30モル%以下、好ましくは10モル%以下、更に好ましくは5モル%以下である。ここで乳酸以外の単量体単位としては、脂肪族ポリエステルポリエーテル共重合体における脂肪族ジオール単位、脂肪族ジカルボン酸単位および脂肪族オキシカルボン酸単位のうち任意のものを使用することが出来る。容易に入手し得る市販のポリ乳酸としてはユニチカ製「テラマック」のシリーズがある。
【0051】
ポリ乳酸の使用割合は、前述の脂肪族ポリエステル系樹脂(A)100質量部に対し、通常20〜1000質量部である。
【0052】
<常温で液体のイオン性化合物(C)>
本発明で使用する常温で液体のイオン性化合物(C)(以下「イオン液体」と記載する)は、基本的に室温付近で液体状態のカチオンとアニオンから成る塩類であり、広義には、100℃以下の温度で液体のイオン性化合物である。本発明で使用するイオン液体は、窒素原子含有オニウム塩系化合物、イオウ原子含有オニウム塩系化合物、リン原子含有オニウム塩系化合物の群から選択される少なくとも1種のオニウム塩系化合物を含有していることが好ましい。以下に上記のオニウム塩系化合物を例示する。
【0053】
カチオン種としては、テトラアルキルアンモニウムイオン、イミダゾリウムイオン、ピリジウムイオン、ピラゾリウムイオン、ピロリウムイオン、ピロリニウムイオン、ピロリジニウムイオン、ピペリジニウムイオン、ホスホニウムカチオン等が挙げられ、制電性の発現からイミダゾリウムカチオン、ピリジニウムカチオン、ピロリジニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、アンモニウムカチオン等が好ましい。これらは2種以上を組み合わせて使用することも出来る。
【0054】
アニオン種の具体例としては、AlCl、AlCl、PF、BF、SbF、AsF、TaF、BFCl、BFCl、SbFCl、AsFCl、BFBr、BFBr、SbFBr、AsFBr、TaFBr、BF、BF、SbF、AsF、TaF、CFSO、(CFSO、(CFSO、Cl、Br、RCO(Rは有機基)等が挙げらる。これらは2種以上を組み合わせて使用することも出来る。
【0055】
本発明で好適に使用することの出来るイオン性液体は、イミダゾリウム塩、ピリジウム塩、ピロリジウム塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩などから選ばれた少なくとも1種である。
【0056】
上記のイミダゾリウム塩としては、例えば、1-エチル3−メチルイミダゾリニウムブロマイド、1−エチル3−メチルイミダゾリニウムヘキサフルオロフォスフェイト、1−エチル3−メチルイミダゾリニウムヘキサフルオロアンチモネイト、1−エチル3−メチルイミダゾリニウムテトラフルオロボレート、1−エチル3−メチルイミダゾリニウムトリフルオロメタンスルホネイト、1−エチル3−メチルイミダゾリニウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド、1−エチル3−メチルイミダゾリニウムメタンスルフェイト、1−エチル3−メチルイミダゾリニウムトシレイト、1−エチル3−メチルイミダゾリニウムビス〔サリシレート(2)〕ボレート、1−エチル3−メチルイミダゾリニウムコバルトテトラカルボニル、1−ブチル3−メチルイミダゾリニウムクロライド、1−ブチル3−メチルイミダゾリニウムヘキサフルオロフォスフェート、1−ブチル3−メチルイミダゾリニウムヘキサフルオロアンチモネート、1−ブチル3−メチルイミダゾリニウムテトラフルオロボレート、1−ブチル3−メチルイミダゾリニウムトリフルオロメタンスルホネイト、1−ブチル3−メチルイミダゾリニウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド、1−ブチル3−メチルイミダゾリニウムメタンスルフェイト、1−ブチル3―メチルイミダゾリニウムトシレイト、1−ブチル3−メチルイミダゾリニウムビス〔サリシレート(2)〕ボレート、1−ブチル3−メチルイミダゾリニウムコバルトテトラカルボニル、1−ヘキシル3−メチルイミダゾリニウムクロライド、1−ヘキシル3−メチルイミダゾリニウムヘキサフルオロフォスフェート、1−ヘキシル3−メチルイミダゾリニウムヘキサフルオロアンチモネート、1−ヘキシル3−メチルイミダゾリニウムテトラフルオロボレート、1−ヘキシル3−メチルイミダゾリニウムトリフルオロメタンスルホネイト、1−ヘキシル3−メチルイミダゾリニウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド、1−ヘキシル3−メチルイミダゾリニウムメタンスルフェイト、1−メチル3−オクチルイミダゾリニウムクロライド、1−メチル3−オクチルイミダゾリニウムヘキサフルオロアンチモネート、1−メチル3−オクチルイミダゾリニウムテトラフルオロボレート、1−メチル3−オクチルイミダゾリニウムトリフルオロメタンスルホネイト、1−メチル3−オクチルイミダゾリニウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド、1−メチル3−オクチルイミダゾリニウムメタンスルフェイト、1−メチルN―ベンゾイルイミダゾリニウムクロライド、1−メチルN−ベンジルイミダゾリニウムヘキサフルオロフォスフェート、1−メチルN―ベンジルイミダゾリニウムヘキサフルオロアンチモネート、1−メチルN―ベンジルイミダゾリニウムテトラフルオロボレート、1−メチルN―ベンジルイミダゾリニウムトリフルオロメタンスルホネイト、1−メチルN−ベンジルイミダゾリニウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド、1−メチルN―ベンジルイミダゾリニウムメタンスルフェイト、1−メチル3−(3−フェニルプロピル)イミダゾリニウムクロライド、1−メチル3−(3−フェニルプロピル)イミダゾリニウムヘキサフルオロフォスフェート、1−メチル3−(3−フェニルプロピル)イミダゾリニウムヘキサフルオロアンチモネート、1−メチル3−(3−フェニルプロピル)イミダゾリニウムテトラフルオロボレート、1−メチル3−(3−フェニルプロピル)イミダゾリニウムトリフルオロメタンスルホネイト、1−メチル3−(3−フェニルプロピル)イミダゾリニウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド、1−メチル3−(3−フェニルプロピル)イミダゾリニウムメタンスルフェイト、1−2,3−ジメチルイミダゾリニウムクロライド、1−ブチル2,3−ジメチルイミダゾリニウムヘキサフルオロフォスフェート、1−ブチル2,3−ジメチルイミダゾリニウムヘキサフルオロアンチモネート、1−ブチル2,3−ジメチルイミダゾリニウムテトラフルオロボレート、1−ブチル2,3−ジメチルイミダゾリニウムトリフルオロメタンスルホネイト、1−ブチル2,3−ジメチルイミダゾリニウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド、1−ブチル2,3−ジメチルイミダゾリニウムメタンスルフェイト、1−エチル2,3−ジメチルイミダゾリニウムクロライド、1−エチル2,3−ジメチルイミダゾリニウムヘキサフルオロフォスフェート、1−エチル2,3−ジメチルイミダゾリニウムヘキサフルオロアンチモネート、1−エチル2,3−ジメチルイミダゾリニウムテトラフルオロボレート、1−エチル2,3−ジメチルイミダゾリニウムトリフルオロメタンスルホネイト、1−エチル2,3−ジメチルイミダゾリニウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド、1―エチル2,3−ジメチルイミダゾリニウムメタンスルフェイト等が挙げられる。
【0057】
上記のピリジニウム塩としては、例えば、N―ブチルピリジニウムクロライド、N―ブチルピリジニウムヘキサフルオロフォスフェート、N―ブチルピリジニウムヘキサフルオロアンチモネート、N−ブチルピリジニウムテトラフルオロボレート、N―ブチルピリジニウムトリフルオロメタンスルホネイト、N−ブチルピリジニウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド、N−ブチルピリジニウムメタンスルフェイト、3−メチル−N―ブチルピリジニウムクロライド、3−メチル−N―ブチルピリジニウムヘキサフルオロフォスフェート、3−メチル−N−ブチルピリジニウムヘキサフルオロアンチモネート、3−メチル−N−ブチルピリジニウムテトラフルオロボレート、3−メチル−N―ブチルピリジニウムトリフルオロメタンスルホネイト、3−メチル−N−ブチルピリジニウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド、3−メチル−N−ブチルピリジニウムメタンスルフェート等が挙げられる。
【0058】
上記のピロリジニウム塩としては、例えば、1−エチル1−メチルピロリジニウムブロマイド、1−エチル1−メチルピロリジニウムヘキサフルオロフォスフェイト、1−エチル1−メチルピロリジニウムヘキサフルオロアンチモネイト、1−エチル1−メチルピロリジニウムヘキサフルオロアンチモネイト、1−エチルピロリジニウムテトラフルオロボレート、1−エチル1−メチルピロリジニウムトリフルオロメタンスルホネイト、1−エチル1−メチルピロリジニウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド、1−エチル1−メチルピロリジニウムスルフェイト、1−ブチル1−メチルピロリジニウムブロマイド、1−ブチル1−メチルピロリジニウムヘキサフルオロフォスフェイト、1−ブチル1−メチルピロリジニウムヘキサフルオロアンチモネイト、1−ブチル1−メチルピロリジニウムテトラフルオロボレート、1−ブチル1−メチルピロリジニウムトリフルオロメタンスルホネイト、1−ブチルピロリジニウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド、1−ブチルピロリジニウムメタンスルフェイト等が挙げられる。
【0059】
上記のアンモニウム塩としては、例えば、テトラ−nブチルアンモニウムクロライド、テトラ−nブチルアンモニウムブロマイド等が挙げられる。
【0060】
上記のホスホニウム塩としては、例えば、テトラ−nブチルフォスフォニウムブロマイド等が挙げられる。
【0061】
上記のイオン液体の中ではピリジニウム塩が好ましい。ピリジニウム塩の中で好ましいものは、スルホネイト化合物およびスルホニルイミド化合物であり、特に好ましいものは、3−メチル−N−ブチルピリジニウムトリフルオロメタンスルホネイト及び/又は3−メチル−N−ブチルピリジニウムビストリフルオロメタンスルホニルイミドである。制電性の持続性から、3−メチル−N−ブチルピリジニウムビストリフルオロメタンスルホニルイミドが特に好ましい。
【0062】
イオン液体(C)の使用量は、成分(A)100質量部に対し、0.01〜10質量部、好ましくは0.05〜10質量部、更に好ましくは0.5〜5質量部の範囲である。イオン液体(C)の使用量が0.01質量部未満の場合は、得られる樹脂組成物の制電性が劣り、10質量部を超える場合は耐衝撃性が劣る。
【0063】
<芳香族ビニル系重合体(D)>
本発明で使用する芳香族ビニル系重合体(D)は以下の芳香族ビニル系重合体(D1)及び/又は芳香族ビニル系重合体(D2)から成る。上記の芳香族ビニル系重合体(D1)は、芳香族ビニル化合物から主としてなる重合体ブロック(D−a)と共役ジエン化合物から主としてなる重合体ブロック(D−b)とを含有するエラストマーであり、上記の芳香族ビニル系重合体(D2)は芳香族ビニル系重合体(D1)を水素添加してなるエラストマーである。
【0064】
重合体ブロック(D−a)に使用される芳香族ビニル化合物としては、スチレン、α―メチルスチレン、ヒドロキシスチレン等が挙げられるが、好ましくはスチレン、α―メチルスチレンであり、特に好ましくはスチレンである。また、重合体ブロック(D−b)に使用される共役ジエン化合物としては、ブタジエン、イソプレン、ヘキサジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン等が挙げられるが、好ましくはブタジエン、イソプレンである。これらは2種以上を併用してもよい。更に、ブロック(D−b)は、2種以上の共役ジエン化合物を使用し、それらがランダム状、ブロック状、テーパー状の何れの形態で結合したブロックであってもよい。また、(D−b)は、芳香族ビニル化合物が漸増するテーパーブロックを1〜10個の範囲で含有していてもよく、重合体ブロック(D−b)の共役ジエン化合物に由来するビニル結合含有量の異なる重合体ブロック等が適宜共重合していてもよい。
【0065】
芳香族ビニル系重合体(D)の好ましい構造は下記式(6)〜(8)で表される重合体またはその水素添加物(D2)である。
【0066】
【化5】

【0067】
構造式(6)〜(8)中、Aは芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックで、実質的に芳香族ビニル化合物から成る重合体ブロックであれば、一部共役ジエン化合物が含まれていてもよい。好ましくは芳香族ビニル化合物を90質量%以上、更に好ましくは99質量%以上含有する重合体ブロックである。Bは共役ジエン化合物の単独重合体または芳香族ビニル化合物等の他の単量体と共役ジエン化合物との共重合体であり、Xはカップリング剤の残基であり、Yは1〜5の整数、Zは1〜5の整数をそれぞれ表す。Bが芳香族ビニル化合物などの他の単量体と共役ジエン化合物との共重合体である場合、B中の当該他の単量体の含有量は、共役ジエン化合物と当該他の単量体との合計に対して50質量%以下であることが好ましい。
【0068】
芳香族ビニル系重合体(D1)における、芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物との使用割合は、芳香族ビニル化合物/共役ジエン化合物として、通常10〜70/30〜90質量%、好ましくは15〜65/35〜85質量%、更に好ましくは20〜60/40〜80質量%の範囲である。
【0069】
芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とから成るブロック共重合体は、アニオン重合の技術分野で公知のものであり、例えば、特公昭47−28915号公報、特公昭47−3252号公報、特公昭48−2423号公報、特公昭48−20038号公報などに開示されている。また、テーパーブロックを有する重合体ブロックの製造方法については、特開昭60−81217号公報に開示されている。
【0070】
芳香族ビニル系重合体(D1)の共役ジエン化合物に由来するビニル結合量(1,2−及び3,4−結合)含有量は、通常5〜80%の範囲であり、芳香族ビニル系重合体(D1)の数平均分子量は、通常10,000〜1,000,000、好ましくは20,000〜500,000、更に好ましくは20,000〜200,000である。そして、上記構造式(6)〜(8)で表したA部の数平均分子量は3,000〜150,000、B部の数平均分子量は5,000〜200,000の範囲であることが好ましい。
【0071】
共役ジエン化合物のビニル結合量の調節は、N,N,N´,N´−テトラメチルエチレンジアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジアゾシクロ(2,2,2)オクタアミン等のアミン類、テトラヒドロフラン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル等のエーテル類、チオエーテル類、ホスフィン類、ホスホアミド類、アルキルベンゼンスルホン酸塩、カリウムやナトリウムのアルコキシド等を使用して行うことが出来る。
【0072】
上記方法で重合体を得た後、カップリング剤を使用して重合体鎖がカップリング剤残基を介して延長または分岐された重合体も芳香族ビニル系重合体(D1)として好適に使用される。ここで使用されるカップリング剤としては、アジピン酸ジエチル、ジビニルベンゼン、メチルジクロロシラン、四塩化珪素、ブチルトリクロロ珪素、テトラクロロ錫、ブチルトリクロロ錫、ジメチルクロロ珪素、テトラクロロゲルマニウム、1,2−ジブロモエタン、1,4−クロロメチルベンゼン、ビス(トリクロロシリル)エタン、エポキシ化アマニ油、トリレンジイソシアネート、1,2,4−ベンゼントリイソシアネート等が挙げられる。
【0073】
耐衝撃性の観点から好ましい芳香族ビニル系重合体(D1)は、ブロック(D−b)に芳香族ビニル化合物が漸増するテーパーブロックを1〜10個の範囲で有する重合体、及び/又は、カップリング処理されたラジアルブロックタイプのものである。
【0074】
また、芳香族ビニル系重合体(D2)としては、共役ジエン部分の炭素―炭素二重結合の50%以上が水素添加された部分水素添加物または完全水素添加物を使用することが出来る。水素添加反応は、公知の方法で行うことが出来るし、また、公知の方法で水素添加率を調節することにより、目的の重合体を得ることが出来る。具体的な方法としては、特公昭42−8704号公報、特公昭43−6636号公報、特公昭63−4841号公報、特公昭63−5401号公報、特開平2−133406号公報、特開平1−297413号公報などに開示されている方法がある。
【0075】
芳香族ビニル系重合体(D1)及び(D2)は、他の重合体がブロック重合体及び/又はグラフト重合体として化学的に結合したものであってもよい。ここで、他の重合体は、100質量%が化学的に結合している必要はなく、他の重合体の少なくとも10質量%が化学的に結合しておればよい。また、上記の他の重合体としては、芳香族ポリカーボネート及び/又はポリウレタンであり、好ましくは芳香族ポリカーボネートである。芳香族ポリカーボネートブロック共重合体混合物は、例えば、特開2001−220506号公報に記載の方法などで製造することが出来る。更に、クラレ社製「TMポリマーシリーズ」の「TM−S4L77」、「TM−H4L77」(商品名)等として入手することが出来る。
【0076】
また、上記の他の重合体をグラフト重合させるための好ましい方法は、芳香族ビニル系重合体(D1)及び/又は(D2)の存在下にビニル系単量体をグラフト重合する方法である。グラフト重合する方法としては、乳化重合、溶液重合、塊状重合、懸濁重合などが全て使用できるが、好ましくは溶液重合および塊状重合である。
【0077】
芳香族ビニル系重合体(D)の使用量は、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)100質量部に対し、2〜300質量部、好ましくは10〜150質量部、更に好ましくは15〜100質量部である。芳香族ビニル系重合体(D)の使用量が2質量部未満の場合は得られる樹脂組成物の耐衝撃性が劣り、300質量部を超える場合は制電性が劣る。
【0078】
<ブロック共重合体(E)>
本発明で使用するブロック共重合体(E)は、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル及びポリウレタンの群から選ばれた少なくとも1種の重合体ブロック(a1)と親水性基を有する重合体ブロック(a2)とを有する。そして、ジブロックでもよいし、トリブロック以上のマルチブロックでもよい。
【0079】
〔重合体ブロック(a1)〕
(ポリオレフィン)
上記の重合体(a1)のポリオレフィンとは、オレフィン類の(共)重合体であり、ここで使用されるオレフィン類の例としては、エチレン、及びプロピレン、ブテン−1、ヘキセン−1、3−メチルブテン−1、4−メチルペンテン−1、3−メチルへキセン−1等のα−オレフィンの他、更にノルボルネン等の環状オレフィン等が挙げられる。これらは2種以上を併用してもよい。これらの中で、エチレン、プロピレン、ブテン−1、3−メチルブテン−1、4−メチルペンテン−1、ノルボルネンが好ましい。また、他の単量体として、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,5−ヘキサジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン、1,9−デカジエン等の非共役ジエンを使用することも出来る。オレフィン重合体ブロックのゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の数平均分子量は、通常800〜20,000、好ましくは1,000〜10,000、更に好ましくは1,200〜6,000である。
【0080】
上記ポリオレフィンは、重合法、熱減成法などにより得ることが出来る。重合法の場合、触媒の存在下でオレフィンを(共)重合させるが、触媒としては、例えば、ラジカル触媒、金属酸化物触媒、チーグラー触媒、チーグラー・ナッタ触媒、メタロセン触媒などが使用される。一方、高分子量のポリオレフィンの熱減成法による低分子量ポリオレフィンは、例えば、特開平3−62804号公報の方法によって容易に得ることが出来る。ブロック共重合体(E)を得る場合、ポリオレフィンの分子末端を変性する必要があるが、この分子末端の変性のし易さから、熱減成法で得られるポリオレフィンが好適である。
【0081】
熱減成法で得られるポリオレフィンは、通常、分子末端が変性可能なポリオレフィン、片末端が変性可能なポリオレフィンおよび変性可能な末端基を持たないポリオレフィンの混合物であるが、両末端が変性可能なポリオレフィンが主成分であることが好ましい。
【0082】
熱減成法で得られるポリオレフィン中の二重結合量は、耐衝撃性と制電性の観点から、炭素数1,000当たり、通常1〜40個、好ましくは2〜30個、更に好ましくは4〜20個である。1分子当たりの二重結合の平均数は、繰り返し構造の形成性および制電性、耐衝撃性の観点から、通常1.1〜5.0、好ましくは1.3〜3.0、更に好ましくは1.8〜2.2である。熱減成法においては、数平均分子量が800〜6,000の範囲で、1分子当たりの平均二重結合数が、1.5〜2個の低分子量ポリオレフィンが容易に得られる〔例えば、村田勝英、牧野忠彦、日本化学会報、192頁(1975)参照〕。
【0083】
ポリオレフィンに官能基を付与する方法としては、熱減成法により得られる分子末端に、炭素−炭素二重結合を有するポリオレフィンに官能基を有する炭素−炭素不飽和化合物を付加させる方法が好ましい。
【0084】
(ポリアミド)
前記重合体ブロック(a1)のポリアミドとしては、ジアミン成分とジカルボン酸成分から導かれるポリアミド、ラクタム類の開環重合により導かれるポリアミド、アミノカルボン酸から導かれるポリアミド、これらの共重合ポリアミド、これらの混合ポリアミドの何れでもよい。
【0085】
上記ジアミン成分としては、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、2,3,4−もしくは4,4,4−トリメチレンヘキサメチレンジアミン、1,3−もしくは1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ビス(p−アミノヘキシル)メタン、フェニルジアミン、m−キシレンジアミン、p−キシレンジアミン等の脂肪族、脂環族または芳香族のジアミン等が挙げられ、ジカルボン酸成分としては、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸などの脂肪族、脂環族または芳香族のジカルボン酸が挙げられる。上記ラクタム類としては、カプロラクタム、ラウリルラクタム等が挙げられる。また、上記アミノカルボン酸類としては、ω−アミノカプロン酸、ω―アミノウンデカン酸、1,2−アミノドデカン酸等が挙げられ、これらのジアミン類、ジカルボン酸類、ラクタム類及びアミノカルボン酸類は、適宜組合わせて使用することが出来る。
【0086】
(ポリエステル)
前記重合体ブロック(a1)のポリエステルとしては、(1)炭素数4〜20のジカルボン酸及び/又はそのエステル形成誘導体と(2)ジオール成分から得られる重合体、2官能オキシカルボン酸化合物から得られる重合体、カプロラクトン化合物から得られる重合体、上記(1)、(2)、2官能オキシカルボン酸化合物、カプロラクトン化合物から選ばれた化合物から成る共重合体などがあり、共重合体としては、上記(1)、(2)、2官能オキシカルボン酸化合物から成る共重合体が好ましい。ここで、炭素数とは、カルボキシル基の炭素数及びカルボキシル基の炭素に直結する鎖や環を構成する炭素数の総数をいう。
【0087】
炭素数4〜20のジカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、α、ω−ドデカンジカルボン酸、ドデセニルコハク酸、オクタデセニルジカルボン酸などの炭素数4〜20の脂肪族ジカルボン酸;1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの炭素数8〜20の脂環族ジカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸などの炭素数8〜12の芳香族ジカルボン酸;5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−カリウムスルホイソフタル酸、5−テトラブチルホスホニウムスルホイソフタル酸などのスルホン酸基が芳香環に結合した炭素数8〜12の置換芳香族ジカルボン酸;上記ジカルボン酸のメチルエステル等のエステル形成誘導体等がある。これらは2種以上併用してもよい。これらの中では、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、コハク酸およびこれらのエステル形成誘導体が好ましい。
【0088】
ジオール成分としては、炭素数2〜11の脂肪族ジオール又は脂環族ジオールが好ましく、具体的には、エチレングリコール、トリメチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロへキサンジオール、1,6−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられ、これらは2種以上を混合して使用することも出来る。これらの中で特に、エチレングリコール又は1,4−ブタンジオールが好ましい。
【0089】
また、2官能脂肪族オキシカルボン酸としては、カプロラクトン等のラクトン化合物、および、乳酸、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシ−n―酪酸、2−ヒドロキシ−3,3−ジメチル酪酸、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸、2−メチル乳酸、2−ヒドロキシカプロン酸等があり、これらは2種以上を併用してもよい。
【0090】
(ポリウレタン)
前記重合体ブロック(a1)のポリウレタンとしては、イソシアネート化合物と鎖延長剤から成るものであり、イソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,5−ナフチレンジイソシアネート(NDI)、トリジンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、キシレンジイソシアネート(XDI)、水素添加XDI、トリイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート(TMXDI)、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、1,8−ジイソシアネートメチルオクタン、リジンエステルトリイソシアネート、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネート等が挙げられる。これらの中では、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)又はジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水素添加MDI;HMDI)が好ましい。
【0091】
鎖延長剤としては、低分子ポリオールが使用され、例えば、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、グリセリン等の脂肪族ポリオール、1,4−ジメチロールベンゼン、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、プロピレンオキサイド付加物などの芳香族グリコール等が挙げられる。
【0092】
重合体ブロック(a1)であるポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル及びポリウレタンは、2種以上を組合わせて使用することが出来る。重合体ブロック(a1)と後述する重合体ブロック(a2)との結合は、エステル結合、アミド結合、エーテル結合、ウレタン結合、イミド結合等から選ばれた少なくとも1種の結合が好ましい。このため、重合体ブロック(a1)の分子末端は、重合体ブロック(a2)の分子末端官能基と反応性を有する官脳能基で変性されている必要があり、これらの官能基としては、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、酸無水物基、オキサゾリン基、エポキシ基、イソシアネート基、ウレア基などがある
【0093】
親水性基を有する重合体ブロック(a2)の親水性ポリマーとしては、ポリエーテル、ポリエーテル含有親水性ポリマー、アニオン性ポリマー等が挙がられる。
【0094】
ポリエーテルとしては、ポリエーテルジオール、ポリエーテルジアミン、及びこれらの変性物等が挙げられる。ポリエーテル含有親水性ポリマーとしては、ポリエーテルジオールのセグメントを有するポリエーテルエステルアミド、ポリエーテルエステルアミドイミド、ポリエーテルエステル、ポリエーテルジアミンのセグメントを有するポリエーテルアミド、ポリエーテルジオール又はポリエーテルジアミンのセグメントを有するポリエーテルウレタンが挙げられる。アニオン性ポリマーとしては、スルホニル基を有するジカルボン酸と上記ポリエーテルとを必須成分単位とし、且つスルホニル基を有するアニオン性ポリマーが挙げられる。1分子中のスルホニル基の数は、通常2〜80個、好ましくは3〜60個である。親水性基を有する重合体ブロック(a2)は、直鎖状であっても、分岐状であってもよい。親水性基を有する重合体ブロック(a2)としては、ポリエーテルが好ましい。
【0095】
ポリエーテルのうちポリエーテルジオールとしては、次の一般式(9)、(10)で表わされたもの等が挙げられる。
【0096】
【化6】

【0097】
一般式(9)中、Eは二価の水酸基含有化合物から水酸基を除いた残基、A1は炭素数2〜4のアルキレン基、nおよびn´は前記二価の水酸基含有化合物の水酸基1個当たりのアルキレンオキサイド付加数を表わす。n個の(OA)とn´個の(AO)とは、同一であっても異なっていてもよく、また、これらが2種以上のオキシアルキレン基で構成される場合の結合形式は、ブロック若しくはランダム又はこれらの組み合わせの何れでもよい。nおよびn´は、通常1〜300、好ましくは2〜250、更に好ましくは10〜100の整数である。また、nとn´は、同一であっても異なっていてもよい。
【0098】
上記の二価の水酸基含有化合物としては、一分子中にアルコール性またはフェノール性の水酸基を2個含む化合物、すなわち、ジヒドロキシ化合物が挙げられ、具体的には、二価アルコール(例えば炭素数2〜12の脂肪族、脂環式または芳香族の二価アルコール)、炭素数6〜18の二価フェノール、第3級アミノ基含有ジオール等が挙げられる。
【0099】
脂肪族二価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルキレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,12−ドデカンジオール等が挙げられる。脂環式二価アルコールとしては、例えば、1,2−および1,3―シクロペンタンジオール、1,2−、1,3−及び1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が上げられ、芳香族二価アルコールとしては、例えば、キシレンジオール等が挙げられる。
【0100】
二価フェノールとしては、ハイドロキノン、カテコール、レゾルシン、ウルシオール等の単環二価フェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、4、4´―ジヒドロキシジフェニル−2,2−ブタン、ジヒドロキシビフェニル、ジヒドロキシジフェニルエーテル等のビスフェノール、ジヒドロキシナフタレン、ビナフトール等の縮合多環二価フェノール等が挙げられる。
【0101】
一般式(10)中、Eは、一般式(9)で記載した二価の水酸基含有化合物から水酸基を除いた残基、Aは、少なくとも一部が次の一般式(11)で表わされる置換アルキレン基であり、残りは炭素数2〜4のアルキレン基であってもよい。
【0102】
【化7】

【0103】
ただし、一般式(11)中、R、R´の一方は、一般式(12)で表わされる基、他方はHである。
【0104】
【化8】

【0105】
一般式(12)中、xは1〜10の整数、R″はHまたは炭素数1〜10のアルキル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基またはアシル基、A3は炭素数2〜4のアルキレン基である。
【0106】
一般式(10)中、m個の(OA)とm´個の(AO)とは同一であっても異なっていてもよい。mおよびm´は整数であり、通常1〜300、好ましくは2〜250、更に好ましくは10〜100である。また、mとm´とは、同一でも異なっていてもよい。
【0107】
上記一般式(9)で示されるポリエーテルジオールは、二価の水酸基含有化合物にアルキレンオキサイドを付加反応させることにより製造することが出来る。アルキレンオキサイドとしては、炭素数2〜4のアルキレンオキサイド、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、1,2―ブチレンオキサイド、1,4−ブチレンオキサイド、2,3―ブチレンオキサイド、および1,3−ブチレンオキサイドおよびこれらの2種以上の併用系が用いられる。2種以上のアルキレンオキサイドを併用するときの結合形式はランダム及び/又はブロックの何れでもよい。アルキレンオキサイドとして好ましいものは、エチレンオキサイド単独およびエチレンオキサイドと他のアルキレンオキサイドとの併用によるブロック及び/又はランダム付加である。アルキレンオキサイドの付加数は、前記二価の水酸基含有化合物の水酸基1個当たり、好ましくは1〜300、更に好ましくは2〜250、特に好ましくは10〜100の整数である。
【0108】
上記一般式(10)で示されるポリエーテルジオールの好ましい製造方法としては下記の(A)、(B)方法などが挙げられる。
【0109】
(A)前記の二価の水酸基含有化合物を出発物質として、以下の一般式(13)で表されるグリシジルエーテルを重合するか、または、炭素数2〜4のアルキレンオキサイドと共重合する方法。
【0110】
【化9】

【0111】
一般式(13)中のAは炭素数2〜4のアルキレン基、pは1〜10の整数、Rは水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基またはアシル基である。
【0112】
(B)前記の二価の水酸基含有化合物を出発物質として、側鎖にクロロメチル基を有するポリエーテルを経由する方法。具体的には、エピクロルヒドリン又はエピクロルヒドリンとアルキレンオキサイドとを付加共重合し、側鎖にクロロメチル基を有するポリエーテルを得た後、当該ポリエーテルと炭素数2〜4のポリアルキレングリコールとR1X(R1は上記と同一意義を有、Xは、Cl、BrまたはI)をアルカリ存在下で反応させるか、または、当該ポリエーテルと炭素数2〜4のポリアルキレングリコールモノカルビルエーテルとをアルカリ存在下で反応させる方法。ここで使用される炭素数2〜4のアルキレンオキサイドとしては、前記したものが全て使用できる。
【0113】
また、本発明の好ましいブロック共重合体(E)は、前記のブロック(a1)と親水性ポリマーブロック(a2)を公知の方法で重合することによって得ることがでる。例えば、前記のブロック(a1)と親水性ポリマーブロック(a2)を減圧下200〜250℃で重合反応を行うことにより製造することが出来る。また、重合反応に際し公知の重合触媒を使用することが出来る。
【0114】
重合触媒としては、モノブチルスズオキサイド等のスズ系触媒、三酸化アンチモン、二酸化アンチモン等のアンチモン系触媒、テトラブチルチタネート等のチタン系触媒、ジルコニウム水酸化物、酸化ジルコニウム、酢酸ジルコニル等のジルコニウム系触媒、周期表第IIB族金属の有機酸塩から成る触媒の群から選ばれる1種または2種以上の組み合わせである。
【0115】
ブロック共重合体(E)におけるブロック(a1)/ブロック(a2)の比率は、通常10〜90/10〜90質量%、好ましくは20〜80/20〜80質量%、更に好ましくは30〜70/30〜70質量%の範囲である。
【0116】
前記のブロック(a1)の成分にポリオレフィンを使用したブロック共重合体(E)は、例えば、特開2001−278985号公報、特開2003−48990号公報などに記載の方法で製造することが出来、また、三洋化成工業社製「ペレスタット300シリーズ」の「300」、「303」、「ペレスタット200シリーズ」の「230」、「201」等として入手することが出来る。
【0117】
また、前記のブロック(a1)の成分にポリアミドを使用したブロック共重合体(E)におけるポリアミドの数平均分子量は、通常500〜20,000、好ましくは500〜10,000、更に好ましくは500〜5,000である。斯かるブロック共重合体(E)の分子量は、特に限定されないが、還元粘度(ηsp/C)として、通常1.0〜3.0、好ましくは1.2〜2.5である。上記の還元粘度は、ギ酸溶液中、濃度0.5g/100ml、温度25℃の条件で測定した値である。斯かるブロック共重合体(E)の特に好ましい例は、ポリアミドとポリ(アルキレンオキシド)グリコールブロックとがエステル結合で結合されたポリエーテルエステルアミドであり、三洋化成工業社製の「ペレスタットNC6321」、「M−140」、「6500」(商品名)として入手できる。
【0118】
前記のブロック(a1)の成分にポリエステルを使用したブロック共重合体(E)の分子量は、特に限定されないが、還元粘度(ηsp/C)として、通常0.3〜2.5、好ましくは0.5〜2.5である。上記の還元粘度は、フェノール/テトラクロロエタン=40/60質量比の混合溶媒を使用し、濃度1.0g/100ml、温度35℃の条件で測定した値である。斯かるブロック共重合体(E)の特に好ましい例は、例えば、竹本油脂社製「TEP004」、「TEP010」、「TEP008」(商品名)として入手できる。
【0119】
前記のブロック(a1)の成分にポリウレタンを使用したブロック共重合体(E)としては、JISK7311に準拠して測定した100%モジュラスが2〜30MPaのものが好適に使用される。斯かるブロック共重合体(B)は、例えば、ディーアイシーバイエルポリマー社製の「パンデックスT−8000シリーズ」の「T−8175」、「T−8180」、「T−8185」、「T8190」、「T8195」、「T−8198」、「T8166D」、「デスモント500シリーズ」の「KU2−8659」、「デスモント700シリーズ」の「786」、「デスモント900シリーズ」の「KU2−8670」及び「DP88586A」、「DP7−3007」、「テキシン985」、「990」、「950」、「DP7−1198」、「4210」(何れも商品名)等として入手できる。
【0120】
ブロック共重合体(E)には,制電性を向上させる目的から、公知の電解質、公知の酸化防止剤および熱安定剤を含有させることが出来る。これらは、ブロック共重合体(E)を得るための重合の前や重合時に含有させることも出来るし、重合後にブロック共重合体(E)に含有させることも出来る。また、本発明の熱可塑性重合体組成物製造時に添加することが出来る。
【0121】
電解質としては、ナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属の無機化合物や有機化合物が挙げられるが、好ましくは有機化合物であり、更に好ましくは有機のスルホン酸塩化合物である。
【0122】
上記電解質の配合量は、ブロック共重合体(E)中のアルカリ金属の量として、通常10,000ppm以下、好ましくは5,000ppm以下、更に好ましくは100ppm以下である。
【0123】
また、ナトリウム化合物および/またはカリウム化合物を電解質として使用した場合、例えば、本発明の熱可塑性重合体組成物から成る部品搬送用トレイ成形品からナトリウム、カリウムがイオンとして溶出し使用用途によっては、搬送部品を腐食させる等の好ましくない結果となる場合がある。また、これらの電解質を多く使用すると制電性の湿度に対する変化が大きくなり使用用途によっては好ましくない結果となる。このことから、本発明の熱可塑性重合体組成物からのナトリウム及びカリウムイオンの溶出量(80℃超純水、60分間)は、通常1.0μg/cm以下、好ましくは0.5μg/cm以下、更に好ましくは0.1μg/cm以下とされる(ここで、「cm」は成形品の表面積を表わす)。
【0124】
ブロック共重合体(E)の使用量は、脂肪族ポリエステル樹脂(A)100質量部に対し、通常5〜150質量部、好ましくは10〜100質量部、更に好ましくは20〜50質量部である。ブロック共重合体(E)の使用量が5質量部未満の場合は得られる樹脂組成物の制電性が劣る傾向にあり、150質量部を超える場合は耐衝撃性が劣ることがある。
【0125】
<リチウム化合物(F)>
リチウム化合物(F)は、本発明の制電性樹脂組成物の制電性を向上させることを目的で使用される。リチウム化合物としては、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、過塩素酸リチウム、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム及びトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メタンリチウムから選ばれた少なくとも1種である。これらの中では、トリフルオロメタンスルホン酸リチウムが好ましい。斯かるリチウム化合物は、例えば、三光化学工業社製の「サンコノール0862−13T」、「サンコノールAQ−50T」、「サンコノールAQ−75T」等として、溶液状態で入手できる。
【0126】
リチウム化合物(F)の使用量は、前記の成分(A)、(B)、(C)、(D)、(E)の合計量100質量部に対し、通常0.01〜2質量部、好ましくは0.01〜1.8質量部、更に好ましくは0.05〜1.5質量部である。リチウム化合物(F)の使用量が0.01質量部未満の場合は制電性が向上に寄与しない場合があり、2質量部を超える場合は機械的強度が低下する場合がある。リチウム化合物(F)は、本発明の組成物を製造する任意の過程で使用することが出来る。例えば、成分(A)に成分(B)を配合した後に成分(F)を配合してもよく、また、成分(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)を溶融混練する際の任意の段階で成分(F)配合してもよい。
【0127】
本発明の熱可塑性重合体組成物には、公知の耐候(光)剤、酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、可塑剤、非イオン系界面活性剤、防滴剤、防霧剤、摺動剤、着色剤、染料、発泡剤、加工助剤(超高分子量アクリル系重合体、超高分子量スチレン系重合体)、難燃剤、結晶核剤、シリコーンオイル等を適宜配合することが出来る。
【0128】
本発明の組成物は、前述の各構成成分を、各種押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、連続ニーダー、ロール等により溶融混練することにより得ることが出来る。混練りに際し、各成分を一括添加して混練してもよく、分割して添加してもよい。
【0129】
本発明の樹脂組成物は、射出成形、プレス成形、カレンダー成形、Tダイ押出成形、インフレーション成形、ラミネーション成形、真空成形、異形押出成形などの公知の成形法により樹脂成形品とされる。樹脂成形品としては、射出成形品、シート成形品(多層シートを含む)、フィルム成形品(多層フィルムを含む)、異形押出成形品、真空成形品などがある。
【0130】
成形品としては、射出成形品、シート成形品(多層シートを含む)、フィルム成形品(多層フィルムを含む)、異形押出成形品、真空成形品などがある。本発明の組成物は、シート、フィルムの製造に好適に使用される。更に、多層シート、多層フィルムの少なくとも1面に表層として本発明の組成物を使用した積層体は、制電性の観点から好ましい。
【0131】
本発明の組成物を使用して多層シートまたは多層フィルムを成形する場合、本発明の組成物は、他材との2層シート若しくはフィルム、または、他材を中間層とする3層シート若しくはフィルム等とすることが出来る。上記の他材としては、公知の重合体から成るものを必要に応じて2種以上を組み合わせて使用することが出来る。このような多層シート又はフィルムは層間が接着せていることが好ましい。従って、接着を考慮した重合体の選定および組み合わせが重要であるが、層間の接着が不十分な材料を使用する場合は、公知の接着層を介在させることが出来る。
【0132】
また、シートやフィルムの剛性および耐熱性を向上させる目的から、前記の無機または有機の充填材を配合したものを使用することも出来る。
【0133】
上記の多層シートにおいて、本発明の組成物から成る層の厚みは、通常10μm以上、好ましくは20μm以上、更に好ましくは30μm以上である。このような多層シート及びフィルムを得る好ましい方法は、Tダイによる共押出またはインフレーションによる共押出である。このようにして得られたシートは、必要に応じて真空成形など加工してトレイ等の成形品を得ることが出来る。
【0134】
本発明の組成物から成るシート又はフィルムを基材として、粘着シート又はフィルムを製造する場合、粘着剤との接着性またはプライマー層との接着性を向上させる目的から、本発明の組成物から成るシート又はフィルムの表面に公知の種々の処理、例えば、コロナ放電処理、火炎処理、酸化処理、プラズマ処理,UV処理、イオンボンバード処理、溶剤処理などを行うことが出来る。
【0135】
更に、本発明の組成物から成るシート又はフィルムの表面に直接または上記の表面処理した面にプライマー層を形成させることが出来る。具体的には、上記の表面に、ポリエチレンイミン、ポリウレタン、アクリル樹脂などの樹脂を極薄い度の厚みの層(0.1μm〜10μm程度)を形成させる。通常は、溶剤(水を含む)溶液として塗布し、乾燥することにより形成できる。
【0136】
粘着剤としては、スクリーン法、グラビア法、メッシュ法、バー塗工法などで塗工して粘着層を形成させるエマルジョンタイプ及び有機溶剤タイプのものの他に、押出ラミネート法、ドライラミネート法、共押出法などで粘着層を形成させる熱溶融タイプのもの等があり、何れも使用できる。また、粘着剤の厚みは、特に制限されないが、通常1〜100μm程度の範囲である。
【0137】
本発明の多層シートの各層の構造は、特に限定されず、例えば、発泡したものであっても、中空になったものであってもよい。
【0138】
上記のようにして得られた成形品は、リレーケース、ウエハーケース、レチクルケース、マスクケース等のケース類;液晶トレイ、チップトレイ、ハードディスク(HDD)トレイ、CCDトレイ、ICトレイ、有機ELトレイ、光ピックアップ関連トレイ、LEDトレイ、メモリトレイ等のトレイ類;ICキャリアー等のキャリアー類;偏光フィルム、導光板、各種レンズ等の保護フィルム;偏光フィルム切断時の下敷きシート;エアーコントロールカーテン;仕切り板等のクリーンルーム内で使用されるシート及びフィルム類;自動販売機内部部材;液晶パネル、ハードディスク、プラズマパネル等に使用される制電バッグ;プラスチックダンボール、液晶パネル、プラズマパネル等の搬送用ソフトケース;その他各種部品搬送用関連部材などの分野に使用することが出来る。
【0139】
以上説明した本発明の熱可塑性重合体脂組成物は、優れた制電性、制電性の持続性、耐衝撃性を有し、制電性の湿度による変化が少ないことから、高度な性能が要求される、車両分野、電気・電子分野、OA・家電分野、サニタリー分野等の各種部品として適用できる。
【実施例】
【0140】
以下、本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例中、「部」及び「%」は、特に断らない限り、質量基準である。
【0141】
<評価方法>
【0142】
(1)制電性:
JISK6911に準拠して、三菱化学社製ハイレスターUPMCP−HT450を用い、印加電圧500、100Vで、23℃×50%RH下での表面抵抗(Ω)を測定した値を常用対数で表示した。
【0143】
(2)耐衝撃性:
高速パンクチャー衝撃試験機(島津製作所/ハイドロショットHITS-P10)を使用してパンクチャー衝撃試験を実施。ストライカ径=15.9(mm)、落錘速度=2.4(m/s)条件で実施した。
【0144】
(3)破壊形態:
上記(2)の評価において、破壊された場所を観察し、延性破壊を「○」。脆性破壊を「×」として評価した。
【0145】
<成分(A):脂肪族ポリエステル系樹脂>
AI;三菱化学社製の「GSPla AZ91T」
AI I;三菱化学社製の「GSPla AD92W」
【0146】
<成分(B):オレフィン系樹脂>
B1;日本ポリプロ社製「ノバテックPPEA9」
B2;日本ポリプロ社製「ノバテックPPEG7F」
B3;日本ポリプロ社製「ノバテックPPFW4BM」
B4;日本ポリエチレン社製「カーネルKF290」
【0147】
<成分(C):イオン性化合物>
C1;N−ブチル−3−メチルピリジニウム ビストリフルオロメタンスルホニルイミド(日本カーリット社製「CIL−312」)
C2;N−ブチル−3−メチルピリジニウム トリフルオロメタンスルホネート(日本カーリット社製「CIL−313」)
【0148】
<成分(D):芳香族ビニル系重合体>
D1;スチレン−ブタジエンースチレンブロック共重合体(スチレン含有量35%)(JSR社製「TR2500」)
D2;スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体の水素添加物(スチレン含有量30%)(旭化成ケミカルズ社製「タフテックH1041」)
D3;スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体の水素添加物(スチレン含有量67%)(旭化成ケミカルズ社製「タフテックH1043」)
D4;スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体の水素添加物(スチレン含有量30%:上記D−2の高分子量品)(旭化成ケミカルズ社製「タフテックH1053」)
【0149】
<成分(E):ブロック共重合体>
E1;ポリオレフィン−ポリエチレングリコール系ブロック共重合体(電解質未配合)(三洋化成工業社製「ペレスタット201」)
【0150】
<成分(F):リチウム化合物>
F1;トリフルオロメタンスルホン酸リチウムの50%水溶液(三光化学工業社製「サンコノールAQ−50T」)
F2;トリフルオロメタンスルホン酸リチウムの20%アジピン酸ジブトキシエトキシエチル溶液(三光化学工業社製「サンコノール0862−20T」)
【0151】
実施例1〜16及び比較例1〜13:
表1〜3に記載の配合割合で、ヘンシエルミキサーにより混合した後、二軸押出機(シリンダー設定温度220〜260℃の範囲で適宜設定)を使用して溶融混練し、ペレット化した。得られたペレットを十分に乾燥した後、射出成形(シリンダー設定度160℃〜250℃の範囲で適宜設定)により試験片(厚さ=2.4mm)を得た。得られた試験片を使用して制電性及び耐衝撃性について前記方法で評価した。評価結果を表1〜3に示した。
【0152】
【表1】

【0153】
【表2】

【0154】
【表3】

【0155】
実施例17:
前記実施例2で得られたペレットを充分に乾燥した制電性樹脂組成物を両表層とし、前記B8を中間層として使用して、多層Tダイ押出装置を使用して三層シートを得た。シートの肉厚は0.8mm、両表層はそれぞれ50μmであった。前述の方法で評価した結果、制電性は10log(Ω)であった。また、20cm×3cmの上記シートを、手で引っ張り、引き裂き強度を調べたが、実用上問題のない強度を示した。
【0156】
実施例18:
実施例6で得られたペレットを充分に乾燥した制電性樹脂組成物を表層とし、前記B9を中間層として、多層インフレーション装置を使用してフィルムを得た。フィルム厚は50μm、両表層は10μmであった。前述の方法で評価した結果、制電性は9.5log(Ω)であった。また、20cm×3cmの上記フィルムを、手で引っ張り、引き裂き強度を調べたが、実用上問題のない強度を示した。
【0157】
表1〜表3に記載された結果から、以下のことが明らかである。
【0158】
(1)比較例1は、成分(A)が配合されていないため、制電性に劣る。
(2)比較例2は、成分(C)、成分(D)が配合されていないため、制電性、耐衝撃性、破壊形態に劣る。
(3)比較例3は、成分(B)、成分(D)が配合されていないため、耐衝撃性、破壊形態に劣る。
(4)比較例4は、成分(C)の配合量が本発明の範囲外で多く、成分(D)が配合されていないため、耐衝撃性、破壊形態に劣る。
(5)比較例5は、成分(B)の配合量が本発明の範囲外で多いため、制電性に劣る。
(6)比較例6は、成分(D)が配合されていないため、耐衝撃性、破壊形態に劣る。
(7)比較例7は、成分(B)、成分(D)が配合されておらず、成分(C)の配合量が本発明の範囲外で多いため、耐衝撃性、破壊形態に劣る。
(8)比較例8は、成分(B)の配合量が本発明の範囲外で少ないため、耐衝撃性、破壊形態に劣る。
(9)比較例9は、成分(B)の配合量が本発明の範囲外で多いため、制電性に劣る。
(10)比較例10は、成分(C)の配合量が本発明の範囲外で少ないため、制電性に劣る。
(11)比較例11は、成分(C)の配合量が本発明の範囲外で多いため、耐衝撃性、破壊形態に劣る。
(12)比較例12は、成分(D)の配合量が本発明の範囲外で少ないため、耐衝撃性、破壊形態に劣る。
(13)比較例13は、成分(D)の配合量が本発明の範囲外で多いため、制電性に劣る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繰り返し単位として、脂肪族ジオール及び/または脂環式ジオールから形成される単位と脂肪族ジカルボン酸(その誘導体を含む)及び/または脂環式ジカルボン酸(その誘導体)から形成される単位とを有する脂肪族ポリエステル系樹脂(A)100質量部と、オレフィン系樹脂(B)5〜300質量部と、常温で液体のイオン性化合物(C)0.01〜10質量部と、以下の芳香族ビニル系重合体(D1)及び/又は芳香族ビニル系重合体(D2)から成る芳香族ビニル系重合体(D)2〜300質量部とを含有することを特徴とする制電性樹脂組成物。
上記の芳香族ビニル系重合体(D1)は、芳香族ビニル化合物から主としてなる重合体ブロックと共役ジエン化合物から主としてなる重合体ブロックとを含有するエラストマーであり、上記の芳香族ビニル系重合体(D2)は芳香族ビニル系重合体(D1)を水素添加してなるエラストマーである。
【請求項2】
更に、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル及びポリウレタンの群から選ばれた少なくとも1種の重合体ブロック(a1)と親水性基を有する重合体ブロック(a2)とを有するブロック共重合体(E)を含有し、その割合が上記脂肪族ポリエステル系樹脂(A)100質量部に対し、5〜150質量部である請求項1に記載の制電性樹脂組成物。
【請求項3】
更に、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、過塩素酸リチウム、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム及びトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メタンリチウムの群から選ばれた少なくとも1種のリチウム化合物(F)を含有し、その割合が上記成分(A)100質量部に対し、0.05〜1.5質量部である請求項1又は2に記載の制電性樹脂組成物。
【請求項4】
脂肪族ポリエステル系樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)が0℃以下で且つ融点(Tm)が130℃以下である請求項1〜3の何れかに記載の制電性樹脂組成物。
【請求項5】
脂肪族ポリエステル系樹脂(A)の脂肪族ジオールが1,4−ブタンジオールであり、脂肪族ジカルボン酸がコハク酸および/またはアジピン酸である請求項1〜4の何れかに記載の制電性樹脂組成物。
【請求項6】
脂肪族ポリエステル系樹脂(A)が乳酸を共重合した脂肪族ポリエステル共重合体である請求項1〜5の何れかに記載の制電性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1〜6の何れかに記載の制電性樹脂組成物から成ることを特徴とする制電性樹脂成形品。
【請求項8】
シート又はフィルムである請求項7に記載の成形品。
【請求項9】
請求項1〜6に記載の制電性樹脂組成物から成るシート又はフィルムを少なくとも片面に有することを特徴とする積層シート又はフィルム。

【公開番号】特開2009−197181(P2009−197181A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−42786(P2008−42786)
【出願日】平成20年2月25日(2008.2.25)
【出願人】(396021575)テクノポリマー株式会社 (278)
【Fターム(参考)】