説明

券売機、および駅務システム

【課題】駅務処理にかかる利用者の信頼性を低下させることがなく、また、自動改札機における改札効率の低下が十分に抑えられる券売機を提供する。
【解決手段】券売機2は、発券する企画券の有効期間に、当日(今日)が含まれていれば、同じ駅に設置されている自動改札機1に対して、非接触IC券の識別番号IDiを識別番号記憶部13に記憶することを指示する通知を行う(s6)。券売機2は、通信部26において、この通知を自動改札機1に対して直接行う。また、券売機2は、今回発券した企画券の発券情報を自駅の駅サーバ3を介してセンタサーバ5に通知する(s9)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、鉄道の利用回数に関係なく運賃が一定である企画券(所謂、フリーパス)を発券する券売機、およびこの券売機を備えた駅務システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄道の駅では、駅構内に入場する利用者や、駅構内から出場する利用者に対する改札処理を自動改札機で行っている。自動改札機は、周知のように、改札通路を通って駅構内に入場する利用者や、駅構内から出場する利用者が所持している乗車券に記録されている乗車券情報を読み取る。自動改札機は、読み取った乗車券情報を用いて、改札通路における利用者の通行(駅構内への入場や駅構内からの出場)を許可するかどうかを判定する。自動改札機は、改札通路における利用者の通行を許可する場合、その利用者にとって出口側に設けられた扉を開し、反対に許可しない場合、この扉を閉する。
【0003】
乗車券は、媒体の種類で分類すると、磁気券、非接触IC券、2次元バーコード券(以下、QR券と言う。)等がある。磁気券は、乗車券情報を磁気データで記録している。非接触IC券は、近距離の無線通信機能を有し、乗車券情報を電子データでメモリに記憶している。QR券は、乗車券情報を券面に2次元バーコード(例えば、QRコード)で印刷している。また、非接触IC券は、磁気券を廃止するために、磁気券に代わる乗車券としての利用をすすめている。QR券は、キップとしての利用を前提にしている。
【0004】
このQR券は、コピーすることで、簡単に偽造できるという欠点がある。QR券の偽造に対するセキュリティを向上させる提案が特許文献1に記載されている。具体的には、券売機が、キップとして発券したQR券の発券番号を含む発券情報を上位装置に通知する。この発券番号は、発券した券の券面に2次元バーコードで印刷されている乗車券情報に含まれている。上位装置は、券売機が発券したQR券毎に、そのQR券が使用される可能性の高い駅の自動改札機に対して発券情報を通知する。各自動改札機は、上位装置から通知された発券情報を記憶する。
【0005】
自動改札機は、2次元バーコードで印刷されている乗車券情報を読み取ると、読み取った乗車券情報と、記憶している発券情報と、を照合し、適正なQR券であるかどうかを判定する。また、自動改札機は、通行を許可したQR券について乗車券情報を上位装置に通知し、上位装置が各自動改札機に対して、この乗車券情報を、これ以降入場を拒否するネガ情報として他の自動改札機に通知する。各自動改札機は、読み取った乗車券情報と、記憶している発券情報と、を照合するときに、ネガ情報が登録されているQR券については通行を拒否する。
【0006】
なお、自動改札機は、改札処理の際に、QR券に対して入出場情報を書き込むことができない(2次元バーコードで記録されている乗車券情報を読み取るだけである。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006− 59249号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、多くの利用者は、券売機でQR券等の乗車券を購入すると、すぐに駅構内に入場する。一方で、特許文献1の構成では、券売機が発行したQR券の発行番号を含む発券情報を上位装置に通知し、この上位装置が券売機からの発券情報の通知に対応し、そのQR券が使用される可能性の高い駅の自動改札機に対して発券情報を通知している。このため、自動改札機においてQR券の発券情報を記憶されるタイミングは、券売機がそのQR券を発券したタイミングよりも時間的に遅れる。この遅れによって、自動改札機が、直前に券売機でQR券を購入した利用者に対して、改札通路における通行を許可しないという事態が生じ、駅務処理かかる信頼性を低下させるという問題があった。この問題は、券売機が以下に示す企画券を発券した場合も、同様に生じる。
【0009】
また、乗車券には、鉄道の利用回数に関係なく運賃が一定である企画券(所謂、フリーパス)がある。この企画券は、予め定められている有効区間内に位置する駅であれば何度でも入出場できる。QR券は、偽造に対するセキュリティを確保するため、特許文献1に記載されているように、駅での入出場回数を制限する必要がある。したがって、特許文献1等に記載されている従来の構成では、企画券をQR券で発券することはできない。
【0010】
また、自動改札機は、磁気券を処理する場合、投入された磁気券を搬送する構成を備えなければならず、自動改札機本体の小型化やコストダウンを妨げる。このことから、最近では、上述したように磁気券の廃止が検討されている。
【0011】
このような理由から、非接触IC券が企画券としても利用できるシステムが望まれている。非接触IC券は、料金先払いのプリペイド方式や、料金後払いのポストペイ方式等により、キップを購入することなく、任意の駅間において鉄道が利用できる。一般に、この非接触IC券の利用形態は、SF(Stored Fare)券利用と呼ばれている。非接触IC券は、任意の2駅間の乗車券(キップ)として繰り返し利用できるので、利用者は非接触IC券を1枚所有しておけばよい。
【0012】
一方で、非接触IC券を上述のSF券利用だけでなく、企画券利用も行えるようにするには、自動改札機が、改札処理時に、非接触IC券をSF券利用で改札処理を行うか、企画券利用で改札処理を行うか、を迅速に判定しなければならない。すなわち、この判定にかかる時間が長くなると、その分だけ改札処理にかかる時間が増大し、その結果、改札効率を低下させてしまう。また、改札処理時における、非接触IC券に対する入出場情報等の読み取りや、書き込みに要する時間の増加も抑える必要がある。
【0013】
なお、キップについても、上述したQR券だけでなく、非接触IC券で発券することがすでに検討されている。
【0014】
この発明の目的は、駅務処理にかかる利用者の信頼性を低下させることがなく、また、自動改札機における改札効率の低下が十分に抑えられる券売機、および、この券売機を備える駅務システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この発明の券売機は、上記課題を解決し、その目的を達するために以下のように構成している。
【0016】
この券売機は、鉄道の利用回数に関係なく運賃が一定である企画券を、無線通信機能を有する乗車券媒体で発券する。ここで言う企画券とは、鉄道の利用料金が一定で、有効区間内に位置する駅であれば何度でも入出場できる乗車券(所謂、フリーパス)である。この企画券は、有効区間内に位置しない駅では入出場できない。
【0017】
無線通信機能を有する乗車券媒体は、すでにSF(Stored Fare)券として利用されている。SF券は、任意の2つの駅間における鉄道の利用に対して、その区間の運賃(乗車料金)をプリペイド方式や、ポストペイ方式で精算する乗車券である。
【0018】
この券売機は、利用者が所有する無線通信機能を有する乗車券媒体を受け付ける。乗車券情報読取/書込部が、受け付けた乗車券との間で無線通信を行い、この乗車券媒体が記憶する乗車券情報の読み取り、および、この乗車券媒体に対する乗車券情報の書き込みを行う。
【0019】
また、発券部が、乗車券情報読取/書込部を制御し、受け付けた乗車券媒体に対して、発券する企画券の有効期間を書き込む。乗車券媒体は、書き込まれた企画券の有効期間内であれば、企画券として利用できる。
【0020】
なお、乗車券媒体は、有効期間外においては、SF券として利用できる。
【0021】
第1の通知部が、発券部が企画券の有効期間を書き込んだ乗車券媒体の識別番号を予め定めた自動改札機に通知する。また、第2の通知部が、発券部が乗車券媒体に有効期間を書き込んだ企画券の発券情報を上位装置に通知する。
【0022】
上位装置は、企画券の有効期間を書き込んだ乗車券媒体の識別番号を、この企画券の有効区間内に位置する全ての駅(この企画券で入出場できる全ての駅)の自動改札機に通知すればよい。また、自動改札機は、乗車券として受け付けた乗車券媒体の識別番号が券売機、または上位装置から通知されているかどうかどうかにより、その乗車券媒体の利用が企画券としての利用であるか、SF券としての利用であるかを判断すればよい。これにより、自動改札機は、改札効率の低下を十分に抑えることができる。
【0023】
また、第1の通知部が、乗車券媒体の識別番号を通知する自動改札機を、企画券の有効期間を書き込んだ乗車券媒体の所有者が、この乗車券媒体をすぐに企画券として利用して入場する可能性が高い駅(、または改札口)すなわち、この券売機本体と同じ駅(、または同じ改札口)に設置されている自動改札機にすればよい。これにより、券売機本体で企画券を購入した利用者が所有する乗車券媒体の識別番号を、この利用者がすぐに利用する可能性が高い自動改札機については、速やかに自動改札機に通知できる。したがって、企画券を購入し、すぐに駅構内に入場する利用者に対しても、自動改札機が改札処理を適正に行うことができ、駅務処理にかかる利用者の信頼性を低下させることがない。
【0024】
また、第1の通知部は、発券部が乗車券媒体に書き込んだ企画券の有効期間に、当日が含まれていなければ、予め定めた自動改札機に対する通知を行わないようにしてもよい。このようにすれば、券売機の処理負荷が抑えられる。
【発明の効果】
【0025】
この発明によれば、駅務処理にかかる利用者の信頼性を低下させることがなく、また、自動改札機における改札効率の低下が十分に抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】駅務システムの構成を示す概略図である。
【図2】自動改札機の主要部の構成を示すブロック図である。
【図3】非接触IC券が記憶する乗車券情報を示す図である。
【図4】券売機の主要部の構成を示すブロック図である。
【図5】駅サーバが記憶している情報を説明する図である。
【図6】券売機が企画券を発券する処理を示すフローチャートである。
【図7】センタサーバの動作を示すフローチャートである。
【図8】駅サーバの動作を示すフローチャートである。
【図9】自動改札機における改札処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、この発明の実施形態について説明する。
【0028】
図1は、この発明の実施形態にかかる駅務システムの構成を示す概略図である。鉄道網に設けられた各駅には、自動改札機1、券売機2、精算機(不図示)等の駅務機器、および駅サーバ3が設置されている。また、センタにはセンタサーバ5が設置されている。図1では、2つの駅(駅X,駅Y)を例示している。
【0029】
駅毎に、その駅に設置されている自動改札機1、券売機2等の駅務機器、駅サーバ3をLAN等のネットワークで接続している。自動改札機1や券売機2等の駅務機器は、各駅に1台以上設置されている。また、各駅の駅サーバ3は、専用回線や公衆回線等のネットワーク6を介してセンタサーバ5に接続している。各駅の駅サーバ3は、ネットワーク6を介してセンタサーバ5と通信できる。
【0030】
自動改札機1は、周知のように駅の改札口に設置し、駅構内に入場する利用者や、駅構内から出場する利用者に対して改札処理を行う。自動改札機1は、利用者に対して改札処理を行う毎に、その改札処理にかかる情報(以下、改札情報と言う。)を自駅の駅サーバ3に通知する。
【0031】
券売機2は、改札口周辺に設置し、駅構内に入場する利用者に対して、キップや企画券等の乗車券を販売する。ここで言う企画券とは、所謂フリーパスである。企画券は、有効期間、および有効区間が定められている。企画券は、有効期間であれば、有効区間内に位置する駅で何度でも入出場でき、また鉄道の利用料金が一定である乗車券である。企画券は、有効区間内に位置しない駅では入出場できない。企画券は、有効期間が1日のものもあれば、複数日のものもある。また、有効区間は、鉄道網において連続する1つの区間のものもあれば、不連続の複数の区間のものもある。券売機2は、キップや企画券等の乗車券を発券する毎に、乗車券の発券にかかる情報(以下、発券情報と言う。)を自駅の駅サーバ3等に通知する。
【0032】
駅サーバ3は、自動改札機1や券売機2等の駅務機器から通知された情報(改札情報や発券情報)を、適当なタイミングでセンタサーバ5に通知する。また、駅サーバ3は、センタサーバ5から通知された情報(後述する、企画券利用許可情報等)を、必要に応じて自駅に設置されている自動改札機1や券売機2等の駅務機器に通知する。
【0033】
図2は、自動改札機の主要部の構成を示すブロック図である。自動改札機1は、制御部11と、乗車券処理部12と、識別番号記憶部13と、利用者検知部14と、扉開閉部15と、出力部16と、通信部17と、を備えている。
【0034】
制御部11は、自動改札機1本体の動作を制御する。
【0035】
乗車券処理部12は、乗車券である非接触IC券と近距離無線通信を行う無線通信部である。乗車券処理部12の無線通信エリアは、利用者にとっての改札通路の入口側に位置する。改札通路に進入する利用者が、所有している非接触IC券を乗車券処理部12の無線通信エリア内に翳す。非接触IC券は、公知のように、近距離の無線通信機能を有し、乗車券情報を電子データでメモリに記憶した乗車券である。
【0036】
この非接触IC券が記憶する乗車券情報を図3に示す。乗車券情報には、この非接触IC券を識別する識別番号IDi、発券された企画券の有効期間を示す期間情報、および、非接触IC券を利用した改札処理の履歴である入出場履歴情報等が含まれている。
【0037】
期間情報は、発券された企画券の有効期間の開始日と、有効期間の終了日とで構成される。有効期間が1日である企画券の場合、有効期間の開始日と、有効期間の終了日とは同日である。利用者が企画券の購入にかかる操作を行った機器(ここでは、券売機2を例にする。)が、企画券の発券処理として、この期間情報を非接触IC券に書き込む。入出場履歴情報は、利用日時、利用駅、利用区分(入場、または出場)、その時点の残高(プリペイド方式の場合)等を含む入出場情報を蓄積したものである。自動改札機1は、改札通路の通行を許可したときに、入出場情報を非接触IC券に書き込む。
【0038】
識別番号記憶部13は、企画券としての利用(企画券利用)で改札通路の通行を許可する非接触IC券毎に、その非接触IC券の識別番号IDiを記憶する。この識別番号記憶部13に記憶する非接触IC券の識別番号IDiは、センタサーバ5から駅サーバ3を介して通知されることもあれば、券売機2から直接通知されることもある。詳細については、後述する。
【0039】
利用者検知部14は、改札通路に沿って配置した複数のセンサにより、改札通路内における利用者の位置を検出する処理を一定時間間隔で繰り返し、改札通路内における利用者の移動を追跡する。
【0040】
扉開閉部15は、改札通路に進入した利用者に対する改札通路の通行可否の判定結果に応じて、この利用者にとっての改札通路の出口側に位置する扉を開閉する。
【0041】
出力部16は、改札通路に進入した利用者に対して改札通路の通行を許可しないとする判定をしたときに、警告音による報知を行う。また、出力部16は、改札通路に進入した利用者にとっての改札通路の出口側に位置する表示器(不図示)の画面表示の制御も行う。
【0042】
通信部17は、自駅に設置されている券売機2や、駅サーバ3との間におけるデータ通信を制御する。
【0043】
図4は、この発明の実施形態にかかる券売機の主要部の構成を示すブロック図である。券売機2は、制御部21と、無線通信部22と、貨幣処理部23と、操作部24と、発券部25と、通信部26と、を備えている。
【0044】
制御部21は、券売機2本体の動作を制御する。
【0045】
無線通信部22は、本体に投入された乗車券である非接触IC券と近距離無線通信を行う無線通信部である。非接触IC券は、上述のように、近距離の無線通信機能を有し、乗車券情報を電子データでメモリに記憶した乗車券である。
【0046】
貨幣処理部23は、利用者が投入した入金紙幣や入金硬貨を処理するとともに、利用者に対して釣銭を放出する処理を行う、この貨幣処理部は、紙幣、および貨幣について、その真偽や金種を識別する公知の貨幣識別ユニットを有する。
【0047】
操作部24は、利用者による入力操作を受け付ける。操作部24は、利用者に対して入力操作を案内する案内画面を表示する表示器や、この表示器の画面上に貼付したタッチパネルを有する。
【0048】
発券部25は、利用者の入力操作に応じた乗車券を発券する。発券部25における乗車券の発券は、乗車券情報を記録した媒体(乗車券)の新規発行や、券売機2本体に投入された非接触IC券に対する乗車券情報の書き込み(記録)により行われる。発券部25は、非接触IC券に対する乗車券情報の書き込みを無線通信部22に指示する。
【0049】
通信部26は、自駅に設置されている自動改札機1や、駅サーバ3との間におけるデータ通信を制御する。
【0050】
また、駅サーバ3は、図5に示す企画券利用許可情報を記憶する。この企画券利用許可情報は、日付毎に、自駅において、企画券利用で改札通路の通行を許可する非接触IC券の識別番号IDiを登録したものである。この企画券利用許可情報は、後述するように、企画券を購入した利用者が所有する非接触IC券の識別番号IDiを記憶するための構成である。駅サーバ3は、毎日、始発の発車前に、記憶している企画券利用許可情報における、当日分の非接触IC券の識別番号IDiを自駅の各自動改札機1に通知する。また、自動改札機1は、識別番号記憶部13に記憶している非接触IC券の識別番号IDi(前日分)を全て消去し、今回駅サーバ3から通知された非接触IC券の識別番号IDi(当日分)を識別番号記憶部13に記憶する。
【0051】
なお、この図5に示す企画券利用許可情報は、各駅の駅サーバ3ではなく、センタサーバ5で駅毎に分けて記憶しておき、毎日、センタサーバ5が、始発が発車する前に、各駅の駅サーバ3を介して自動改札機1に通知する構成としてもよい。
【0052】
また、センタサーバ5は、企画券の種類毎に、その企画券の利用で、入出場できる駅を抽出するのに用いる乗降可能駅情報等も記憶している。
【0053】
次に、利用者が企画券を券売機2で購入する処理について説明する。利用者が企画券を購入できる機器は、ここで説明する券売機2だけでなく、非接触IC券に対して、発券した企画券の有効期間を示す期間情報(有効期間の開始日と、有効期間の終了日)を書き込むことができ、且つ、企画券の発券にかかる発券情報をセンタサーバ5に通知できる機器であれば行える。
【0054】
なお、券売機2における企画券以外のキップ等の発券処理は、公知の券売機と同じであるので、ここでは、その説明を省略する。
【0055】
図6は、券売機が企画券を発券する処理を示すフローチャートである。
【0056】
企画券を購入する利用者は、所有する非接触IC券を券売機2に投入し、操作部24において購入する企画券の種類や、その企画券の有効期間(有効期間の開始日と、有効期間の終了日)等を指定する入力操作を行う。
【0057】
券売機2は、利用者が投入した非接触IC券を受け付けるとともに、購入する企画券の種類や、その企画券の有効期間等にかかる入力操作を受け付ける(s1)。s1では、無線通信部22が、投入された非接触IC券と近距離の無線通信を行い、この非接触IC券が記憶する乗車券情報を読み取る。
【0058】
券売機2は、企画券の発券にかかる料金(企画券の販売金額)の精算が、今回投入された非接触IC券で行えるかどうかを判定する(s2)。券売機2は、s2において、残高不足等で精算できないと判定すると、利用者に対して現金での精算を要求する(s3)。
【0059】
現金での精算が要求された利用者は、券売機2に貨幣を投入する。貨幣処理部23が、利用者が投入した貨幣の真偽や金種を識別し、投入金額を算出する。
【0060】
券売機2は、s2において精算できると判定した場合、または、s4で精算金額以上の貨幣が投入されたと判定すると、利用者が今回指定した企画券の有効期間に、当日(今日)が含まれているかどうかを判定する(s5)。券売機2は、s5で企画券の有効期間に当日が含まれていると判定すると、同じ駅に設置されている自動改札機1に対して、s1で受け付けた非接触IC券の識別番号IDiを識別番号記憶部13に記憶することを指示する通知を行う(s6)。券売機2は、通信部26において、この通知を自動改札機1に対して直接行う。
【0061】
自動改札機1は、券売機2から、この通知を受信すると、通知された非接触IC券の識別番号IDiを識別番号記憶部13に追加記憶する。
【0062】
なお、s6では、券売機2本体と同じ改札口に設置されている自動改札機1に絞って、非接触IC券の識別番号IDiを通知してもよい。このように構成すれば、券売機2が非接触IC券の識別番号IDiを直接通知する自動改札機1の総台数を抑えることができ、券売機2にかかる負荷が抑えられる。
【0063】
券売機2は、s5で企画券の有効期間に当日が含まれていないと判定したとき、またはs6で非接触IC券の識別番号IDiを自駅の自動改札機1に通知すると、利用者が今回指定した企画券の有効期間を示す期間情報を、投入された非接触IC券に書き込む(s7)。また、s7では、企画券の発券にかかる料金の精算も行う。そして、券売機2は、今回投入された非接触IC券を放出し(s8)、利用者に返却する。
【0064】
上述の処理により、非接触IC券には、今回購入した企画券の有効期間を示す期間情報が乗車券情報として書き込まれる。
【0065】
さらに、券売機2は、今回発券した企画券の発券情報を自駅の駅サーバ3を介してセンタサーバ5に通知し(s9)、s1に戻る。s9でセンタサーバ5に通知する企画券の発券情報には、企画券を発券した券売機2が設置されている駅を示す発券駅情報、企画券の発券に使用された非接触IC券の識別番号IDi、発券した企画券の有効期間を示す期間情報、発券した企画券の種類等が含まれている。
【0066】
このように、券売機2は、今回発券する企画券の有効期間に当日(今日)が含まれている場合、自駅の自動改札機1に対して非接触IC券の識別番号IDiを直接通知する。また、券売機2は、発券する企画券の精算が可能になった状態で、s7で精算処理を行う前に、発券当日に企画券として利用できる非接触IC券の識別番号IDiを自駅の自動改札機1に通知する。したがって、s8で返却された非接触IC券を受け取って、すぐに自駅の構内に入場する利用者であっても、この利用者が自動改札機1に達するまえに、企画券を発券した非接触IC券の識別番号IDiを自動改札機1の識別番号記憶部13に略確実に記憶させておくことができる。
【0067】
次に、企画券の発券情報が通知されたセンタサーバ5の動作について説明する。図7は、センタサーバの動作を示すフローチャートである。センタサーバ5は、企画券の発券情報を受信すると(s11)、この企画券の発券情報に含まれている企画券の種類に基づき、今回発券された企画券で入出場を許可する駅を全て抽出する(s12)。
【0068】
センタサーバ5は、s12で抽出した駅毎に、その駅に設置されている駅サーバ3に対して、今回受信した企画券の発券情報を転送し(s13)、s11に戻る。
【0069】
次に、センタサーバ5から、企画券の発券情報が転送されてきた駅サーバ3の動作について説明する。図8は、駅サーバの動作を示すフローチャートである。駅サーバ3は、センタサーバ5から転送されてきた企画券の発券情報を受信すると(s21)、その企画券の有効期間内の対応する日毎に、非接触IC券の識別番号IDiを企画券利用許可情報(図4参照)に追加記憶する(s22)。
【0070】
また、駅サーバ3は、今回発券情報を受信した企画券が自駅で発券されたものであるかどうかを判定し(s23)、自駅で発券された企画券であれば、s21に戻る。
【0071】
駅サーバ3は、s23で自駅で発券された企画券でなければ、その企画券の有効期間が今日を含んでいるかどうかを判定する(s24)。駅サーバ3は、有効期間が今日を含んでいないと判定すると、s21に戻る。
【0072】
駅サーバ3は、有効期間が今日を含んでいると判定すると、自駅の各自動改札機1に対して、この非接触IC券の識別番号IDiを通知し、識別番号記憶部13に追加記憶させ(s25)、s21に戻る。このs23〜s25にかかる処理を行うことで、企画券を利用する当日に購入した利用者であっても、その利用者が所有する非接触IC券の識別番号IDiを、購入した企画券で入出場が許可される各駅の自動改札機1の識別番号記憶部13に記憶させることができる。
【0073】
なお、s23にかかる判定は、すでに券売機2が企画券を発券したときに、非接触IC券の識別番号IDiを通知した自動改札機1(券売機2と同じ駅に設置されている自動改札機1)に対して、同じ非接触IC券の識別番号IDiを再通知するのを制限するための処理である。
【0074】
次に、自動改札機1における改札処理について説明する。図9は、自動改札機における改札処理を示すフローチャートである。自動改札機1は、乗車券処理部12が無線通信エリア内に翳された非接触IC券から乗車券情報を読み取る(s31)。s31では、非接触IC券の識別番号IDi、期間情報、前回の入出場情報を乗車券情報をとして読み取る。企画券の有効期間を示す期間情報は、非接触IC券が期間情報を記憶していなければ、s31で読み取った乗車券情報に含まれない。
【0075】
自動改札機1は、s31で読み取った乗車券情報に、企画券の有効期間を示す期間情報が含まれているかどうかを判定する(s32)。自動改札機1は、s32で読み取った乗車券情報に期間情報が含まれていなければ、今回の非接触IC券の利用をSF券利用と判定し、SF券利用にかかる改札処理を行う(s33)。
【0076】
s33では、公知の自動改札機と同様に、s31で読み取った乗車券情報に含まれている前回の入出場情報に基づきサイクルエラーであるかどうかを判定する。自動改札機1は、今回の改札処理が、駅への入場が連続したり、駅からの出場が連続したりする処理であれば、サイクルエラーであると判定する。また、自動改札機1は、サイクルエラーでないと判定すると、運賃の精算可否を判定する。この判定は、通常、利用者が駅から出場する出場時に行い、駅に入場する入場時には行わない。自動改札機1は、サイクルエラー、または運賃の精算不可と判定すると、改札通路における利用者の通行を許可しない。具体的には、扉開閉部15が利用者の出口側に位置する扉を閉し、出力部16が改札通路の通行を許可しない旨を利用者に認識させる警告報知を行う。
【0077】
自動改札機1は、サイクルエラーでなく、運賃の精算可と判定すると、改札通路における利用者の通行を許可する。具体的には、今回の改札処理にかかる入場情報、または出場情報を非接触IC券に書き込むとともに、扉開閉部15が利用者の出口側に位置する扉を開する。
【0078】
また、自動改札機1は、s32で読み取った乗車券情報に企画券の有効期間を示す期間情報が含まれていれば、今日が、その期間情報が示す有効期間内であるかどうかを判定する(s34)。自動改札機1は、s34で今日が有効期間内でないと判定すると、期間情報が示す有効期間がすでに過ぎているかどうかを判定する(s35)。自動改札機1は、期間情報が示す有効期間がまだ過ぎていなければ、上述したs33でSF券利用にかかる改札処理を行う。
【0079】
また、自動改札機1は、期間情報が示す有効期間がすでに過ぎていれば、s36でSF券利用にかかる改札処理を行う。s36では、s33で説明した改札処理を行うとともに、通行不可と判定した場合に、非接触IC券に対して有効期間がすでに過ぎている期間情報を消去する書き込みを行う。また、通行可と判定した場合にも、非接触IC券に対して有効期間がすでに過ぎている期間情報を消去する書き込みを、入出場情報の書き込みとともに行う。
【0080】
自動改札機1がs35、およびs36にかかる処理を行うことで、非接触IC券が有効期間が過ぎた(利用することできない)企画券の期間情報をいつまでも記憶しつづけることがない。
【0081】
自動改札機1は、s34で今日が有効期間内であると判定すると、識別番号記憶部13に記憶している識別番号IDiの中に、s31で読み取った乗車券情報に含まれている非接触IC券の識別番号IDiがあるかどうかを判定する(s37)。自動改札機1は、上述した処理が適正に行われていれば、企画券で入出場を許可する全ての非接触IC券の識別番号IDiを識別番号記憶部13に記憶している。しかし、ネットワーク6で生じた通信障害等、様々な原因による処理不良によって、識別番号IDiが購入した企画券で入出場を許可する駅の自動改札機1に通知されていないことも考えられる。すなわち、自動改札機1が、企画券で入出場を許可する全ての非接触IC券の識別番号IDiを識別番号記憶部13に記憶していない場合が考えられる。
【0082】
自動改札機1は、s37で、識別番号記憶部13に記憶している識別番号IDiの中に、s31で読み取った乗車券情報に含まれている非接触IC券の識別番号IDiがないと判定すると、SF券利用、または企画券利用を選択することなく、改札通路における利用者の通行を許可しないと判定する(s38)。具体的には、扉開閉部15が利用者の出口側に位置する扉を閉し、出力部16が改札通路の通行を許可しない旨を利用者に認識させる警告報知を行う。また、利用者の出口側に位置する表示器に、企画券利用が適正でない旨を利用者に通知するメッセージを表示する。
【0083】
これにより、ネットワーク6で生じた通信障害等、様々な原因による処理不良によって、識別番号IDiが自動改札機1の識別番号記憶部13に適正に記憶されなかった非接触IC券を所有している利用者に対して、誤って行ったSF券利用としての改札処理により、運賃の誤収受が発生するのを防止できる。
【0084】
また、乗車券情報(期間情報)が偽造された非接触IC券を所有する利用者に対して、改札通路の通行を誤って許可することもない。
【0085】
自動改札機1は、s37で、識別番号記憶部13に記憶している識別番号IDiの中に、s31で読み取った乗車券情報に含まれている非接触IC券の識別番号IDiがあると判定すると、企画券利用にかかる改札処理を行う(s39)。s39では、s31で読み取った乗車券情報に含まれている前回の入出場情報に基づきサイクルエラーであるかどうかを判定する。自動改札機1は、サイクルエラーであると判定すると、改札通路における利用者の通行を許可しない。具体的には、扉開閉部15が利用者の出口側に位置する扉を閉し、出力部16が改札通路の通行を許可しない旨を利用者に認識させる警告報知を行う。また、自動改札機1は、サイクルエラーでないと判定すると、改札通路における利用者の通行を許可する。具体的には、今回の改札処理にかかる入場情報、または出場情報を非接触IC券に書き込むとともに、扉開閉部15が利用者の出口側に位置する扉を開する。
【0086】
このように、自動改札機1が、非接触IC券から読み取る乗車券情報については、期間情報が増加するだけである。また、自動改札機1は、SF券利用にかかる改札処理、または企画券利用にかかる改札処理の選択を、非接触IC券から読み取った乗車券情報に含まれている期間情報を用いて、上述したs32、s34、およびs35にかかる判定処理を行う。したがって、自動改札機1が改札処理に要する時間の増加が抑えられ、その結果、改札効率の低下が抑えられる。
【0087】
また、s37にかかる判定で、識別番号記憶部13に記憶している識別番号IDiの中に、s31で読み取った乗車券情報に含まれている非接触IC券の識別番号IDiがないと判定すると、SF券利用、または企画券利用を選択することなく、改札通路における利用者の通行を許可しない構成としているので、システム障害にともなう運賃の誤収受を防止できるとともに、偽造券に対するセキュリティの低下も抑えられる。したがって、駅務処理にかかる利用者の信頼性を低下させることがなく、また、自動改札機1における改札効率の低下が十分に抑えられる。
【0088】
また、上述したように、券売機2が、今回発券する企画券の有効期間に当日(今日)が含まれている場合、自駅の自動改札機1に対して非接触IC券の識別番号IDiを直接通知するので、この利用者が自動改札機1に達するまえに、企画券を発券した非接触IC券の識別番号IDiを自動改札機1の識別番号記憶部13に略確実に記憶させておくことができる。これにより、自動改札機1が、直前に券売機で企画券を購入した利用者に対して、企画券としての改札処理を行わず、誤ってSF券利用として改札処理を行うという事態が生じる可能性を十分に抑えることができ、駅務処理かかる利用者の信頼性を低下させることもない。
【符号の説明】
【0089】
1…自動改札機
2…券売機
3…駅サーバ
5…センタサーバ
6…ネットワーク
11…制御部
12…乗車券処理部
13…識別番号記憶部
14…利用者検知部
15…扉開閉部
16…出力部
17…通信部
21…制御部
22…無線通信部
23…貨幣処理部
24…操作部
25…発券部
26…通信部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道の利用回数に関係なく運賃が一定である企画券を発券する券売機であって、
券売機本体が受け付けた、無線通信機能を有する乗車券媒体との間で無線通信を行って、この乗車券媒体が記憶する乗車券情報の読み取り、および、この乗車券媒体に対する乗車券情報の書き込みを行う乗車券情報読取/書込部と、
前記乗車券情報読取/書込部を制御し、受け付けた乗車券媒体に対して企画券の有効期間を書き込む発券部と、
前記発券部が企画券の有効期間を書き込んだ乗車券媒体の識別番号を予め定めた自動改札機に通知する第1の通知部と、
前記発券部が乗車券媒体に有効期間を書き込んだ企画券の発券情報を上位装置に通知する第2の通知部と、を備えている券売機。
【請求項2】
前記第1の通知部は、券売機本体と同じ駅に設置されている自動改札機に、前記発券部が企画券の有効期間を書き込んだ乗車券媒体の識別番号を通知する、請求項1に記載の券売機。
【請求項3】
前記第2の通知部は、券売機本体の設置駅、企画券の有効期間、企画券の種類、および企画券の有効期間を書き込んだ乗車券媒体の識別番号を含む発券情報を上位装置に通知する、請求項1、または2に記載の券売機。
【請求項4】
前記第1の通知部は、前記発券部が乗車券媒体に書き込んだ企画券の有効期間に、当日が含まれていなければ、予め定めた自動改札機に対する乗車券媒体の識別番号の通知を行わない、請求項1〜3のいずれかに記載の券売機。
【請求項5】
鉄道の利用回数に関係なく運賃が一定である企画券を発券する券売機と、
乗車券が記憶する乗車券情報に応じて、鉄道の利用毎に運賃が発生する通常券利用にかかる改札処理、または、鉄道の利用回数に関係なく運賃が一定である企画券利用にかかる改札処理を選択的に行う自動改札機と、
前記自動改札機に対して、前記企画券利用にかかる改札処理が行える乗車券の識別番号を通知する上位装置と、を有する駅務システムであって、
前記自動改札機は、
無線通信エリア内に位置する乗車券との無線通信により、この乗車券が記憶する乗車券情報を読み取り、および、この乗車券に対する乗車券情報の書き込みを行う改札機側乗車券情報読取/書込部と、
前記企画券利用にかかる改札処理を行う乗車券の識別番号が前記券売機、または前記上位装置から通知されたとき、その乗車券の識別番号を記憶する識別番号記憶部と、
前記改札機側乗車券情報読取/書込部が読み取った乗車券情報に、企画券利用の有効期間を示す期間情報が含まれていれば、現時点が企画券利用の有効期間内であるかどうかを判定し、その判定結果に応じて、今回の改札処理を前記通常券利用、または前記企画券利用のどちらで行うかを選択する利用形態判定部と、
前記利用形態判定部が判定した乗車券の利用形態に応じて改札処理を行う改札処理部と、を備え、
前記改札処理部は、前記利用形態判定部が今回の改札処理として前記企画券利用を選択した場合、その乗車券の識別番号を前記識別情報記憶部に記憶していれば、改札通路における利用者の通行を許可し、
前記券売機は、
券売機本体が受け付けた、無線通信機能を有する乗車券媒体との間で無線通信を行って、この乗車券媒体が記憶する乗車券情報の読み取り、および、この乗車券媒体に対する乗車券情報の書き込みを行う券売機側乗車券情報読取/書込部と、
前記券売機側乗車券情報読取/書込部を制御し、受け付けた乗車券媒体に対して企画券の有効期間を書き込む発券部と、
前記発券部が企画券の有効期間を書き込んだ乗車券媒体の識別番号を予め定めた自動改札機に通知する第1の通知部と、
前記発券部が乗車券媒体に有効期間を書き込んだ企画券の発券情報を上位装置に通知する第2の通知部と、を備えている、
駅務システム。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図1】
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【公開番号】特開2013−61838(P2013−61838A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−200296(P2011−200296)
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.QRコード
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】