説明

前照灯制御装置

【課題】眩しさの原因となる反射光が自車の前照灯に由来する場合に限り反射光の眩しさを抑えるよう前照灯を制御する前照灯制御装置を提供すること。
【解決手段】前照灯制御装置100は、自車前方を撮像する撮像手段2と、撮像手段2が撮像した画像における光が自車の前照灯6によるものであるか否かを判定する自他光判定手段11と、自他光判定手段11が前照灯6によるものであると判定した場合にその画像における光の輝度に基づいて前照灯6を制御する前照灯制御手段12と、を備える。また、自他光判定手段11は、前照灯6が発する光の変化と撮像手段2が撮像した画像における光の変化との間の連動性、又は、その画像における光の位置に基づいて、その光が前照灯6によるものであるか否かを判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前照灯制御装置に関し、特に、自車前方にある物体で反射する前照灯の反射光による眩しさを低減させる前照灯制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、信号待ちや渋滞中に自車の前照灯が先行車の後面に反射して眩しくなるのを抑えながら、再発進時の点灯忘れを防止する前照灯制御装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この前照灯制御装置は、自車前方から入射する光の強度と自車の速度と自車前方の障害物までの距離とを検出し、自車前方の光が強く、自車の速度が遅く、かつ、障害物までの距離が小さくなった場合に自車の前照灯を自動的に消灯させ先行車の後面で反射する光による眩しさを抑え、一方で、自車前方の光が弱く、自車の速度が速く、かつ、障害物までの距離が大きくなった場合に自車の前照灯を自動的に点灯させ点灯忘れを発生させないようにする。
【特許文献1】特開2003−312357号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の前照灯制御装置は、単に自車前方から入射する光の強度を一判断要素として前照灯を制御するので、自車の前照灯の反射光と対向車の前照灯からの入射光とを区別することができず、対向車の前照灯からの入射光を受けて自車の前照灯を誤って消灯させてしまう場合があり、信頼性に欠けると言わざるを得ない。
【0005】
上述の点に鑑み、本発明は、眩しさの原因となる反射光が自車の前照灯に由来する場合に限り反射光の眩しさを抑えるよう前照灯を制御する前照灯制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の目的を達成するために、第一の発明に係る前照灯制御装置は、自車前方を撮像する撮像手段と、前記撮像手段が撮像した画像における光が自車の前照灯によるものであるか否かを判定する自他光判定手段と、前記自他光判定手段が前記前照灯によるものであると判定した場合に前記画像における光の輝度に基づいて前照灯を制御する前照灯制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0007】
また、第二の発明は、第一の発明に係る前照灯制御装置であって、前記自他光判定手段は、前照灯が発する光の変化と前記画像における光の変化との間の連動性に基づいて、該光が前記前照灯によるものであるか否かを判定することを特徴とする。
【0008】
また、第三の発明は、第一の発明に係る前照灯制御装置であって、前記自他光判定手段は、前記画像における光の位置に基づいて、該光が前記前照灯によるものであるか否かを判定することを特徴とする。
【0009】
また、第四の発明は、第三の発明に係る前照灯制御装置であって、前記自他光判定手段は、前記画像における一対の光が前記画像の中央鉛直線に対して偏倚している場合に、該光が前記前照灯によるものでないと判定することを特徴とする。
【0010】
また、第五の発明は、第三の発明に係る前照灯制御装置であって、前記自他光判定手段は、前記画像における一対の光のそれぞれが前記画像の中央鉛直線を挟んで左右に存在する場合に、該光が前記前照灯によるものであると判定することを特徴とする。
【0011】
また、第六の発明は、第一乃至第五の何れかの発明に係る前照灯制御装置であって、自車の車速を検出する車速検出手段を更に備え、前記前照灯制御手段は、前記車速検出手段が検出した車速が閾値未満の場合に、前記前照灯を制御することを特徴とする。
【0012】
また、第七の発明に係る前照灯制御装置は、自車前方から入射する光を検出する光検出手段と、前照灯が発する光の変化と前記光検出手段が検出する光の変化との間の連動性に基づいて、該光が自車の前照灯によるものであるか否かを判定する自他光判定手段と、前記自他光判定手段が前記前照灯によるものであると判定した場合に前記光検出手段が検出する光の強度に基づいて前記前照灯を制御する前照灯制御手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
上述の手段により、本発明は、眩しさの原因となる反射光が自車の前照灯に由来する場合に限り反射光の眩しさを抑えるよう前照灯を制御する前照灯制御装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ、本発明を実施するための最良の形態の説明を行う。
【実施例1】
【0015】
図1は、本発明に係る前照灯制御装置の構成例を示す図であり、前照灯制御装置100は、制御部1、カメラ2、車速センサ3、前照灯スイッチ4、ナビゲーションシステム5及び前照灯6から構成される。
【0016】
前照灯制御装置100は、カメラ2が撮影した自車前方の画像(以下、「自車前方画像」とする。)から運転者を眩しがらせるような光を特定し、その光が自車の前照灯6に由来するものである場合に、前照灯6の照射角度を狭めたり、照射方向を変更したり、光量を低減させたり、或いは、消灯させたりする。
【0017】
制御部1は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等を備えたコンピュータであって、例えば、光源位置抽出手段10、自他光判定手段11及び前照灯制御手段12のそれぞれに対応するプログラムをROMに記憶しながら、各手段に対応する処理をCPUに実行させる。
【0018】
カメラ2は、自車周辺を撮像するための装置であり、例えば、CMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)やCCD(Charge-Coupled Device)等の撮像素子を備えたカメラであって、自車の前後方向の中心線上における所定位置(例えば、車室内のルームミラー付近である。)に取り付けられ、自車前方正面を撮像する。
【0019】
なお、カメラ2は、夜間での撮像を可能とする赤外線カメラが用いられるが、カラーカメラや白黒カメラであってもよい。
【0020】
車速センサ3は、自車速を測定するためのセンサであり、例えば、各車輪に取り付けられ各車輪とともに回転する磁石による磁界の変化をMR(Magnetic Resistance)素子が磁気抵抗として読み取り、これを回転速度に比例したパルス信号として取り出すことで車輪の回転速度および自車速を検出する。
【0021】
前照灯スイッチ4は、前照灯6を手動操作するためのスイッチであり、例えば、ステアリングコラムに取り付けられたレバースイッチであって、制御部1を介して制御信号を前照灯6に送信することにより、前照灯6の点灯と消灯とを切り替えたり、ハイビームとロービームとを切り替えたり、或いは、前照灯6の照射角度、照射方向、光量等を調節したりする。
【0022】
ナビゲーションシステム5は、地図画像を表示させながら目的地までの経路を案内する装置であり、例えば、ダイクストラ法を用いて現在地から目的地までの最適(最短)経路を探索し、探索した最短経路を表示装置に表示させながら自車を目的地に導くよう経路案内を実行する。
【0023】
なお、現在地は、自車に搭載されたGPS(Global Positioning System)が取得する位置情報に基づいて特定され、目的地は、タッチパネル等の操作入力装置を介して運転者により入力される。
【0024】
GPSは、自車の現在位置を検出するための自車位置検出手段であり、例えば、GPS受信機によりGPSアンテナを介してGPS衛星が出力するGPS信号に基づいて自車の現在位置を測位・演算する。測位方法は、単独測位又は相対測位(干渉測位を含む。)等の如何なる方法であってもよいが、好ましくは精度の高い相対測位が用いられる。
【0025】
この際、自車の現在位置は、操舵角センサ、車速センサ3、ジャイロセンサ等の各種センサの出力や、ビーコン受信機またはFM多重受信機等を介して受信される各種情報に基づいて補正されてもよい。
【0026】
前照灯6は、自車の前方を照射するための装置であり、例えば、ハロゲンランプ、HID(High Intensity Discharge)ランプ、LED(Light Emitting Diode)ランプ等であって、制御部1から送信される制御信号に応じて自車前方を照射する。
【0027】
また、前照灯6は、照射光の強度を複数段階でステップ状に変化させたり、照射光の強度を無段階でリニアに変化させたりする機能を有していてもよく、或いは、照射角度や照射方向を変化させる機能を有していてもよい。
【0028】
次に、制御部1が有する各種手段について説明する。
【0029】
光源位置抽出手段10は、カメラ2が撮像した自車前方画像から光源の位置を抽出するための手段であり、例えば、輝度が閾値以上となった領域における最大輝度を有する画素又は画素群を光源位置として抽出する。なお、光源位置抽出手段10は、一つの光源位置を抽出してもよく、複数の光源位置を抽出してもよい。
【0030】
また、光源位置抽出手段10は、一般的な車両の前照灯が左右一対で構成されることから、自車前方画像において水平方向に所定の距離を隔てた、輝度が略等しい一対の光を一対の光源位置として抽出するようにしてもよい。
【0031】
自他光判定手段11は、光源位置抽出手段10が抽出した光源位置にある光が自車の前照灯6に由来するものであるか否かを判定するための手段であり、例えば、自車前方画像における一対の光源位置のそれぞれが自車前方画像の中央鉛直線の左右両側に存在する場合に、自車前方画像の光が前照灯6に由来するものであると判定する。自車のルームミラー付近に取り付けられたカメラ2の位置と自車の前照灯6との相対位置に基づいて、自車の前照灯6に由来する光源位置を特定できるからである。
【0032】
一方、自他光判定手段11は、自車前方画像における一対の光源位置のそれぞれが自車前方画像の中央鉛直線の片側に偏倚して存在する場合には、自車前方画像の光が前照灯6に由来するものでないと判定する。カメラ2の取り付け位置と前照灯6の位置とを考慮すると、自車の前照灯6に由来する光源位置が左右に偏倚することはなく、対向車の前照灯又は街灯等が発した光が斜めから入射しているものと考えられるからである。
【0033】
また、自他光判定手段11は、光源位置抽出手段10が抽出した一対の光源位置間の距離に基づいて光源と自車との間の距離を算出し、算出した距離に基づいて光源位置抽出手段10が抽出した光源位置にある光が自車の前照灯6に由来するものであるか否かを判定するようにしてもよい。
【0034】
光源と自車との間の距離が大きいほど、一対の光源位置間の距離は小さくなるからであり、光源と自車との間の距離が大きければ、自車の前照灯6の反射光が運転者を眩しがらせる程に至ることはなく、自車の前照灯6に由来するものではないと判定できるからである。
【0035】
さらに、自他光判定手段11は、光源位置抽出手段10が抽出した一対の光源位置間の距離と自車前方画像におけるその上下位置とに基づいて、光源位置抽出手段10が抽出した光源位置にある光が自車の前照灯6に由来するものであるか否かを判定するようにしてもよい。
【0036】
この場合、自他光判定手段11は、自車の前照灯6に由来する反射光が存在し得ない位置(例えば、自車前方画像の上部位置である。)にある光源を判定対象から除外するようにしてもよい。自車の前照灯6に由来しないことが明らかであり、判定処理の負荷を低減させるためである。
【0037】
前照灯制御手段12は、前照灯6を制御するための手段であり、例えば、自他光判定手段11により眩しさの原因となる光が自車の前照灯6であると判定された場合に、前照灯6の照射角度を狭めたり、照射方向を下に向けたり、光量を低減させたり、或いは、消灯させたりする。
【0038】
なお、前照灯制御手段12は、車速センサ3が測定した自車速が閾値(例えば、10km/h)未満である場合に限り前照灯6を制御するようにし、自他光判定手段11により眩しさの原因となる光が自車の前照灯6であると判定された場合であっても、自車速が閾値以上であれば、前照灯6の状態を変化させないようにしてもよい。
【0039】
自車が夜間に前照灯6を点灯させながら走行している場合に、誤って前照灯6を消灯させてしまうことがないようにするためであり、また、自車速に基づいて運転者が自車を駐車させようとしていることを確認した上で、前照灯の制御を開始させることができるようにするためである。
【0040】
また、前照灯制御手段12は、ナビゲーションシステム5の出力に基づいて自車が所定の走行環境(例えば、高速道路や交差点付近である。)を走行していると認識した場合には、自車速が閾値未満で、かつ、自他光判定手段11により眩しさの原因となる光が自車の前照灯6であると判定された場合であっても、前照灯6の制御を禁止するようにしてもよい。
【0041】
自車が夜間に前照灯6を点灯させながら高速道路や交差点付近を走行している場合に、誤って前照灯6を消灯させてしまうことがないようにするためであり、また、カーナビゲーションの出力に基づいて自車が自宅や店舗の駐車場付近等(前照灯6を消灯させても運転に影響がないとされる運転環境である。)にいることを確認した上で、前照灯の制御を開始させることができるようにするためである。
【0042】
次に、図2乃至図5を参照しながら、前照灯制御装置100が前照灯6の光量を低減させる処理(以下、「前照灯減光処理」とする。)について説明する。
【0043】
図2は、自車Vの周辺環境とカメラ2が撮像する自車前方画像との関係を示す図であり、自車Vが夜間に前照灯6を点灯させながら先行車(大型トラック)Fの後方を走行している状態の上方視と、そのときにカメラ2が撮像した自車前方画像G1とを示す。なお、自車Vの前方にある点線で示す領域は、前照灯6の照射範囲を示す。
【0044】
図2に示すように、自車Vの前照灯6が照射する光は、先行車Fの後面で反射し、自車Vと先行車Fとの間の車間距離が短いほど、その反射光の強度を大きくさせ、運転者に眩しさを感じさせる。
【0045】
この場合、光源位置抽出手段10は、輝度が閾値以上となった領域における最大輝度を有する画素を光源位置として抽出し、自車Vの左前照灯に由来する光源位置LP1と自車Vの右前照灯に由来する光源位置RP1とを抽出する。
【0046】
その後、自他光判定手段11は、自車前方画像G1における一対の光源位置LP1、RP1のそれぞれが自車前方画像G1の中央鉛直線CL1の左右両側に存在することから、自車前方画像G1の光が前照灯6に由来するものであると判定する。
【0047】
その後、前照灯制御手段12は、前照灯6の照射方向を下に向けたり、光量を低減させたりして、先行車Fで反射する光の強度を抑え、運転者に眩しさを感じさせないようにする。
【0048】
また、図3は、運転者が壁面W1に対面させて自車Vを駐車させようとしている状態の上方視と、そのときにカメラ2が撮像した自車前方画像G2とを示す。なお、自車Vの前方にある点線で示す領域は、前照灯6の照射範囲を示す。
【0049】
図3に示すように、自車Vの前照灯6が照射する光は、壁面W1で反射し、自車Vと壁面W1との間の距離が短いほどその反射光の強度を大きくさせ、運転者に眩しさを感じさせる。
【0050】
この場合、光源位置抽出手段10は、輝度が閾値以上となった領域における最大輝度を有する画素を光源位置として抽出し、自車Vの左前照灯に由来する光源位置LP2と自車Vの右前照灯に由来する光源位置RP2とを抽出する。
【0051】
その後、自他光判定手段11は、自車前方画像G2における一対の光源位置LP2、RP2のそれぞれが自車前方画像G2の中央鉛直線CL2の左右両側に存在することから、自車前方画像G2の光が前照灯6に由来するものであると判定し、前照灯制御手段12は、前照灯6の照射方向を下に向けたり、光量を低減させたりして、壁面W1で反射する光の強度を抑え、運転者に眩しさを感じさせないようにする。
【0052】
なお、壁面W1は、図3に示すように角度θで傾斜し、自車Vから見て左側に向かうほど接近し、かつ、自車Vから見て右側に向かうほど遠ざかるが、光源位置LP2、RP2は、壁面W1の傾斜に関わらず、前照灯6の正面に位置するようになるので、壁面W1の傾斜が自他光判定手段11の判定に影響を与えることはない。壁面W1が自車Vから見て右側に向かうほど接近し、かつ、自車Vから見て左側に向かうほど遠ざかる場合も同様である。
【0053】
また、図4は、自車Vと対向車Tとが対面している状態の上方視と、そのときにカメラ2が撮像した自車前方画像G3とを示す。なお、自車Vの前方にある点線で示す領域、及び、対向車Tの前方にある点線で示す領域は、それぞれの車両における前照灯の照射範囲を示す。
【0054】
図3に示すように、自車Vの前照灯6が照射する光は、何れの物体にも反射しないが、対向車Tの前照灯が照射する光は、フロントガラスを通して自車Vの内部に入射し、運転者に眩しさを感じさせる。
【0055】
この場合、光源位置抽出手段10は、輝度が閾値以上となった領域における最大輝度を有する画素を光源位置として抽出し、対向車Tの左前照灯に由来する光源位置LP3と対向車Tの右前照灯に由来する光源位置RP3とを抽出する。
【0056】
その後、自他光判定手段11は、自車前方画像G3における一対の光源位置LP3、RP3のそれぞれが自車前方画像G3の中央鉛直線CL3の左側に偏倚して存在することから、自車前方画像G3の光が自車Vの前照灯6に由来するものではないと判定し、前照灯制御手段12は、自車Vの前照灯6の状態を変化させないようにする。
【0057】
自車前方画像G3の光は、対向車Tの前照灯に由来するものであるため制御不能だからであり、また、誤って自車Vの前照灯6の照射方向を下に向けたり、光量を低減させたりして、対向車Tの運転者を混乱させたり、自車Vの運転者の視界を悪化させたりしないようにするためである。
【0058】
なお、対向車Tの前照灯に由来する一対の光源位置LP3、RP3が一時的に自車前方画像G3の中央鉛直線CL3の左右両側に存在してしまう場合も考えられるが、そのような場合であっても、自他光判定手段11は、一対の光源位置間の距離に基づいてその光が自車Vの前照灯6に由来するか否かを判定することができる。
【0059】
一対の光源位置間の距離が大きい場合、すなわち、自車Vと対向車Tとの間の距離が小さい場合には、対向車Tが自車Vの正面に存在するとは考えられないからであり、自他光判定手段11は、一対の光源位置間の距離が所定距離未満である場合に限り、光源位置LP3、RP3が自車前方画像G3の中央鉛直線CL3の左右両側に存在している場合であっても、自車Vの前照灯6に由来するものではないと判定する。
【0060】
また、対向車Tの前照灯に由来する一対の光源位置LP3、RP3が自車前方画像G3の中央鉛直線CL3の左右両側に存在するような状態が長時間継続することはないという事実から、自他光判定手段11は、一対の光源位置LP3、RP3を所定期間にわたって継続的に監視した上で、その光が自車Vの前照灯6に由来するか否かを判定するようにしてもよい。
【0061】
また、図5は、前照灯減光処理の流れを示すフローチャートであり、前照灯制御装置100は、前照灯スイッチ4により前照灯6が点灯された時点から前照灯スイッチ4により前照灯6が消灯される時点まで、周期的に前照灯減光処理を実行するものとする。
【0062】
最初に、制御部1は、前照灯スイッチ4の出力に基づいて前照灯6が点灯しているか否かを判定し(ステップS1)、前照灯6が点灯していない場合には(ステップS1のNO)、直ちに前照灯減光処理を終了させる。前照灯6を制御する必要がないからである。
【0063】
前照灯6が点灯している場合(ステップS1のYES)、制御部1は、車速センサ3の出力に基づいて自車速を取得し(ステップS2)、自車速が閾値未満であるか否かを判定する(ステップS3)。
【0064】
自車速が閾値以上である場合(ステップS3のNO)、制御部1は、直ちに前照灯減光処理を終了させる。誤って前照灯6の状態を変化させないようにするためである。
【0065】
自車速が閾値未満である場合(ステップS3のYES)、制御部1は、カメラ2が撮像した自車前方画像を取得し(ステップS4)、光源位置抽出手段10により光源位置を特定する。
【0066】
その後、制御部1は、特定した光源位置の輝度が閾値以上であるか否かを判定し(ステップS5)、光源位置の輝度が閾値未満である場合(ステップS5のNO)、直ちに前照灯減光処理を終了させる。特定した光源位置にある光が運転者を眩しがらせるまでに至っていないからである。
【0067】
光源位置の輝度が閾値以上である場合(ステップS5のYES)、制御部1は、自他光判定手段11により光源が自車Vの前照灯6に由来するものであるか否かを判定し(ステップS6)、自車Vの前照灯6に由来するものではないと判定した場合には(ステップS6のNO)、直ちに前照灯減光処理を終了させる。自車Vの前照灯6以外の光源を制御することはできないからである。
【0068】
自車Vの前照灯6に由来するものであると判定した場合(ステップS6のYES)、制御部1は、前照灯制御手段12により前照灯6の光量を低減させ、運転者に眩しさを感じさせないようにした上で前照灯減光処理を終了させる。
【0069】
以上の構成により、前照灯制御装置100は、壁やガラスに反射する光が自車Vの前照灯6に由来する場合に、自車Vの前照灯6の照射角度を狭めたり、照射方向を変更したり、光量を低減させたり、或いは、消灯させたりするので、運転者やガラスの向こう側にいる人に眩しい思いをさせてしまうのを防止することができる。
【0070】
また、前照灯制御装置100は、前照灯6の制御を自車Vが低速で走行している場合、或いは、自車が停車している場合に限るので、運転操作に影響を与えることなく、反射光により運転者が眩しさを感じてしまうのを防止することができる。
【実施例2】
【0071】
図6は、本発明に係る前照灯制御装置の別の構成例を示す図であり、前照灯制御装置200は、明るさセンサ7を備える点において、カメラ2を備える前照灯制御装置100と相違する。また、前照灯制御装置200は、光源位置抽出手段10を省略している点においても、前照灯制御装置100と相違する。なお、他の構成要素は前照灯制御装置100と共通するため、それら構成要素の説明を省略する。
【0072】
明るさセンサ7は、自車前方から入射する光の明るさを測定するためのセンサであり、例えば、受ける光によって内部電気抵抗が変化するCdS(硫化カドニウム)を用いたセンサがある。
【0073】
明るさセンサ7は、運転者の目に入射する光の明るさを測定できるよう、例えば、運転席側ダッシュボード上に自車前方を向くよう取り付けられる。
【0074】
前照灯制御装置200は、明るさセンサ7が検出した、自車前方から入射する光の明るさに基づいて運転者を眩しがらせるような光が存在するか否かを検知し、その光が自車Vの前照灯6に由来するものである場合に、前照灯6の照射角度を狭めたり、照射方向を変更したり、光量を低減させたり、或いは、消灯させたりする。
【0075】
ここで、自他光判定手段11は、前照灯6が発する光の変化と自車前方画像における光の変化との間の連動性に基づいて、明るさセンサ7が検出した光が自車Vの前照灯6に由来するものであるか否かを判定するようにする。
【0076】
前照灯6が発する光の変化とは、例えば、制御部1が自律的に前照灯6の光を明滅させたり、照射角度、照射方向、又は、光量等を連続的若しくは段階的に変化させたりすることをいう。
【0077】
自他光判定手段11は、例えば、制御部1が前照灯6の光を明滅させた場合に、明るさセンサ7が検出した光が前照灯6の光に同期して明滅したとき、その検出した光が前照灯6に由来するものであると判定する。
【0078】
図7は、運転者が壁面W2に対面させて自車Vを駐車させようとしている状態の上方視と、そのときに運転者がフロントガラスを介して視認できる車両前方の景色を示す。なお、自車Vの前方にある点線で示す領域は、前照灯6の照射範囲を示す。
【0079】
図7に示すように、自車Vの前照灯6が照射する光は、壁面W2で反射し、自車Vと壁面W2との間の距離が短いほどその反射光の強度を大きくさせ、運転者に眩しさを感じさせる。
【0080】
この場合、自他光判定手段11は、明るさセンサ7が検出した光(壁面W2で反射した自車Vの右前照灯に由来する光である。)が自車Vの右前照灯が発する光の変化に連動して変化するか否かを監視し、連動する場合には、その検出した光が右前照灯に由来するものであると判定する。
【0081】
その後、前照灯制御手段12は、自車Vの右前照灯の照射方向を下に向けたり、光量を低減させたりして、壁面W2で反射する光の強度を抑え、運転者に眩しさを感じさせないようにする。
【0082】
このように、前照灯制御装置200は、前照灯6の左右何れか一方の光のみが車両前方の物体に反射している場合であっても、その反射光が前照灯6に由来するものであるか否かを判定した上で、運転者に眩しさを感じさせないよう前照灯6を制御することができる。
【0083】
また、前照灯制御装置200は、対向車が備える一対の前照灯が発する光ばかりでなく、二輪車等が備える単一の前照灯が発する光と自車Vの前照灯6に由来する光(反射光)とを確実に区別することができる。
【0084】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなしに上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0085】
例えば、上述の実施例では、前照灯制御装置は、カメラ2又は明るさセンサ7の何れかを備えるが、カメラ2及び明るさセンサ7の双方を備えるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】前照灯制御装置の構成例を示す図(その1)である。
【図2】自車の周辺環境とカメラが撮像する自車前方画像との関係を示す図(その1)である。
【図3】自車の周辺環境とカメラが撮像する自車前方画像との関係を示す図(その2)である。
【図4】自車の周辺環境とカメラが撮像する自車前方画像との関係を示す図(その3)である。
【図5】前照灯減光処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】前照灯制御装置の構成例を示す図(その2)である。
【図7】自車の周辺環境とカメラが撮像する自車前方画像との関係を示す図(その4)である。
【符号の説明】
【0087】
1 制御部
2 カメラ
3 車速センサ
4 前照灯スイッチ
5 ナビゲーションシステム
6 前照灯
7 明るさセンサ
10 光源位置抽出手段
11 自他光判定手段
12 前照灯制御手段
100、200 前照灯制御装置
CL1〜CL3 中央鉛直線
F 先行車
G1〜G3 自車前方画像
LP1〜LP3 左前照灯由来の光源位置
RP1〜RP3 右前照灯由来の光源位置
T 対向車
V 自車
W1、W2 壁面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車前方を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段が撮像した画像における光が自車の前照灯によるものであるか否かを判定する自他光判定手段と、
前記自他光判定手段が前記前照灯によるものであると判定した場合に前記画像における光の輝度に基づいて前照灯を制御する前照灯制御手段と、
を備える前照灯制御装置。
【請求項2】
前記自他光判定手段は、前照灯が発する光の変化と前記画像における光の変化との間の連動性に基づいて、該光が前記前照灯によるものであるか否かを判定する、
請求項1に記載の前照灯制御装置。
【請求項3】
前記自他光判定手段は、前記画像における光の位置に基づいて、該光が前記前照灯によるものであるか否かを判定する、
請求項1に記載の前照灯制御装置。
【請求項4】
前記自他光判定手段は、前記画像における一対の光が前記画像の中央鉛直線に対して偏倚している場合に、該光が前記前照灯によるものでないと判定する、
請求項3に記載の前照灯制御装置。
【請求項5】
前記自他光判定手段は、前記画像における一対の光のそれぞれが前記画像の中央鉛直線を挟んで左右に存在する場合に、該光が前記前照灯によるものであると判定する、
請求項3に記載の前照灯制御装置。
【請求項6】
自車の車速を検出する車速検出手段を更に備え、
前記前照灯制御手段は、前記車速検出手段が検出した車速が閾値未満の場合に、前記前照灯を制御する、
請求項1乃至5の何れか一項に記載の前照灯制御装置。
【請求項7】
自車前方から入射する光を検出する光検出手段と、
前照灯が発する光の変化と前記光検出手段が検出する光の変化との間の連動性に基づいて、該光が自車の前照灯によるものであるか否かを判定する自他光判定手段と、
前記自他光判定手段が前記前照灯によるものであると判定した場合に前記光検出手段が検出する光の強度に基づいて前記前照灯を制御する前照灯制御手段と、
を備える前照灯制御装置。

【図1】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図7】
image rotate