説明

前照灯用エイミングスクリューおよび前照灯

【課題】エイミング機構を介してリフレクターをランプボディに組み付ける際の組み付け作業が容易な前照灯用を提供する。
【解決手段】エイミング機構を介してボディ10に組み付けられたリフレクタ14を備えた前照灯で、ボディ10の背後から挿通孔11に挿着されて回転可能に支承された筒型の回転体41と、回転体41に螺合して前方に延出し、先端玉部48がリフレクタ14側の玉受部16と係合してピボットを構成するスライダ45と、の二部材でエイミングスクリュー40を構成し、スライダ45外周に前後ガイド溝47aを設け、挿通孔11の前方においてガイド溝47aに係合してスライダ45を回り止めする平板状ガイド49をランプボディ11に延出形成した。リフレクター14をボディ10に対し押し付けるだけで、リフレクター14側の玉受け部16をエイミングスクリュー40前端の玉部48に係合できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エイミング機構を構成するエイミングスクリューおよび同エイミングスクリューを備えた前照灯に係り、特に、前照灯の配光を形成するリフレクター等の光学部材をエイミング機構を介してランプボディに組み付ける際の組み付け性に優れた前照灯に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用ヘッドランプは、特許文献1に示すように、光源を装着一体化したリフレクターがランプボディの前面側において、エイミング支点である1個の玉継ぎ手と、2本のエイミングスクリューと、エイミングスクリューにそれぞれ螺合して軸方向に進退可能なエイミング点である2個のナット部材とから構成されたエイミング機構によって支持されており、エイミングスクリューを回動させることで、リフレクター(ヘッドランプの光軸)を左右方向および上下方向に傾動調整できるように構成されている。
【0003】
特許文献1では、エイミングスクリューの基端部側ストレート部がランプボディに設けたスクリュー挿通孔に回転可能に支承されるとともに、エイミングスクリューの先端側雄ねじ部にリフレクター側のナット部材(リフレクターに対し周方向に回り止めされたナット部材)が螺合している。エイミングスクリューは、ランプボディとの間に介装したプッシュオンフィクスによって、軸方向所定位置に保持されている。また、エイミングスクリューの後端側には、ねじ回し等の工具によって回動操作できるエイミングスクリュー回動操作部が設けられている。
【0004】
そして、ランプボディの前面側にエイミング機構を介してリフレクターを組み付けるには、まず、ランプボディのスクリュー挿通孔にエイミングスクリューをランプボディの後方から挿通し、プッシュオンフィクスを配してエイミングスクリューを軸方向に固定保持する。次に、ランプボディ側とリフレクター側それぞれのエイミング支点構成部材同士(たとえば、玉部と玉受け部)を係合するとともに、エイミングスクリュー先端側雄ねじ部とリフレクター側のナット部材を位置合わせした上で、エイミングスクリューを回動してナット部材に螺合させる。
【0005】
しかし、エイミングスクリューを挟持力が強いプッシュオンフィクスでランプボディに固定保持する作業、さらには、エイミングスクリューとナット部材を位置合わせして、エイミングスクリューをナット部材に螺合させる作業が非常に面倒なため、リフレクターの組み付け作業性に難があった。
【0006】
そこで、リフレクターの組み付け作業性を改善するべく、下記特許文献2に示すエイミングスクリューが提案された。
【0007】
ここには、玉部を前端に形成した雄ねじ部本体と、該雄ねじ部本体が螺合するとともに、ランプボディに設けたスクリュー挿通孔に回転可能に支承される円筒型軸部本体の二部材で構成したエイミングスクリューが記載されている。雄ねじ部本体の玉部には、リフレクター側の玉受け部と係合する回り止め用の突起が設けられている。円筒型軸部本体の前端側には、スクリュー挿通孔を画成する円筒部の前端面に係合可能なフックが設けられ、円筒型軸部本体の後端側には、エイミングスクリュー回動操作部が設けられている。
【0008】
そして、ランプボディにエイミング機構を介してリフレクターを組み付けるには、まず、雄ねじ部本体と円筒型軸部本体を螺合させた状態で、ランプボディのスクリュー挿通孔にエイミングスクリュー(の円筒型軸部本体)をランプボディの後方から挿通すれば、円筒型軸部本体のフックがスクリュー挿通孔を画成する円筒部の前端面に係合して、エイミングスクリュー(の円筒型軸部本体)がスクリュー挿通孔に対し抜け止め保持される。次に、ランプボディとリフレクターそれぞれのエイミング支点構成部材同士(たとえば、玉部と玉受け部)を係合するとともに、エイミングスクリュー(の雄ねじ部本体)の玉部の回り止め用の突起とリフレクター側の玉受け部とを周方向に位置決めした上で、リフレクターをランプボディに対し押し込んで、エイミングスクリュー(の円筒型軸部本体)の玉部とリフレクター側の玉受け部を係合させる。
【0009】
この特許文献2に示すエイミングスクリュー(雄ねじ部本体と円筒型軸部本体)では、プッシュオンフィクスを使用することなく、ランプボディのスクリュー挿通孔に簡単に固定保持できるという点において、リフレクターのランプボディへの組み付け作業性が改善されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】実開平7−26917号
【特許文献1】特開2006−131022号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、特許文献2に示すエイミングスクリューでは、ランプボディにリフレクターを組み付けるに際し、ランプボディ(のスクリュー挿通孔)にエイミングスクリューを組み付けた後に、エイミングスクリュー(雄ねじ部本体)の玉部(の回り止め用の突起)とリフレクター側の玉受け部とを周方向に位置合わせして軸方向に係合させるが、両部材は作業者が肉眼で確認できない位置にあるため、どうしても周方向の位置合わせが難しく、これがランプボディにリフレクターを組み付ける作業性を低下させる原因となっていた。すなわち、ランプボディにリフレクターを組み付ける作業性を高めるためには、まだまだエイミングスクリューの構造に改善の余地があると考えられていた。
【0012】
本発明は前記従来技術の問題点に鑑みなされたもので、その目的は、エイミング機構を介して配光形成用の光学部材をランプボディに組み付ける際の組み付け作業が容易な前照灯用エイミングスクリューおよび前照灯を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成するために、請求項1に係る前照灯用エイミングスクリューにおいては、
回動操作部が後端側に形成され、ランプボディに設けたスクリュー挿通孔にランプボディの背面側から挿着されて、該スクリュー挿通孔を形成する筒状部と凹凸ランス係合して軸方向に抜け止めされかつ周方向に回転可能に支承された回転体と、
前記回転体と同軸状に螺合して該回転体の前方に延出し、その先端に形成された玉部が前照灯の配光を形成する光学部材に設けた玉受け部と係合してピボットを構成するスライダと、の二部材で構成されるとともに、
前記スライダの外周には、前記ランプボディに延出形成されて前記スクリュー挿通孔の前方において前後方向に延在する平板状ガイドに係合する、前後に延びる少なくとも1本のガイド溝が設けられて、
前記回転体の回動に連携して前記スライダが前記平板状ガイドに案内されて進退動作するように構成した。
【0014】
請求項2に係る前照灯においては、
前面側が開口する容器状のランプボディと、
エイミングスクリューを含むエイミング機構を介して前記ランプボディに対し傾動可能に支持された配光形成用の光学部材とを備えた前照灯において、
前記エイミングスクリューを、
回動操作部が後端側に形成され、ランプボディに設けたスクリュー挿通孔にランプボディの背面側から挿着されて、該スクリュー挿通孔を形成する筒状部と凹凸ランス係合して軸方向に抜け止めされかつ周方向に回転可能に支承された回転体と、
前記回転体と同軸状に螺合して該回転体の前方に延出し、その先端に形成された玉部が前照灯の配光を形成する光学部材に設けた玉受け部と係合してピボットを構成する棒状のスライダと、の二部材で構成するとともに、
前記スライダの外周には、前後に延びる少なくとも1本のガイド溝を設け、
一方、前記ランプボディには、前記スクリュー挿通孔の前方において前後方向に延在して、前記スライダに設けたガイド溝に係合する平板状ガイドを延出形成し、
前記回転体の回動に連携して前記スライダが前記平板状ガイドに案内されて進退動作するように構成した。
【0015】
(作用)回動操作部を介して回転体を回動させると、平板状ガイドと係合して回転体に対し回り止めされているスライダが、回転体の回動に連携して平板状ガイドに案内されて進退動作する。
【0016】
回転体とスライダを螺合させてエイミングスクリューとして一体化した後、スライダのガイド溝がスクリュー挿通孔の前方において前後方向に延在する平板状ガイドと前後方向に一致するように、エイミングスクリューを周方向に位置決めした上で、ランプボディの背面側からスクリュー挿通孔に挿入すると、スクリュー挿通孔の前方においてスライダのガイド溝が平板状ガイド(の側縁部)に係合するとともに、回転体側の凸条部(凹状部)が筒状部側の凸条部(凹状部)と凹凸ランス係合して、エイミングスクリュー(の回転体)は、スクリュー挿通孔に対し軸方向に抜け止め固定されかつ周方向に回転可能に支承された形態となる。
【0017】
ランプボディにエイミング機構を介して前照灯の配光形成用光学部材を組み付けるには、作業者が肉眼で確認できない状態で、エイミング機構を構成するエイミングスクリュー(のスライダ)前端の玉部と配光形成用の光学部材側の玉受け部とを係合させる作業を行うが、両者は周方向の位置決めを伴うことなく軸方向に押圧されることで簡単に係合するので、スクリュー挿通孔に挿着されたエイミングスクリュー(スライダ)前端の玉部に対し、ランプボディの前面側から配光形成用の光学部材(側の玉受け部)を押圧することで、配光形成用の光学部材をピボット(玉部と玉受け部)で支持する形態に組み付けることができる。
【0018】
請求項3においては、請求項2に記載の前照灯において、前記平板状ガイドを前記スクリュー挿通孔の下側に設けるように構成した。
(作用)平板状ガイドは、スライダのガイド溝と係合してスライダを回転体に対し回り止めする部材として機能することに加えて、前照灯の配光形成用光学部材の重量負荷を下方から担持するので、それだけエイミングスクリュー支承部(スクリュー挿通孔)に作用する重量負荷が軽減される。すなわち、リフレクター等の配光形成用光学部材は、エイミングスクリュー等のエイミング機構によって片持ち支持されているので、配光形成用光学部材の重量がそのままエイミングスクリュー支承部(スクリュー挿通孔)に作用する。特に、エイミングスクリュー支承部(スクリュー挿通孔)には、自動車の走行時の振動やエンジンの震動に伴って大きな重量負荷が作用し、エイミングスクリュー支承部の耐久性が低下する一因となっている。しかるに、請求項3では、スクリュー挿通孔の前方において平板状ガイドが配光形成用光学部材の重量を担持するので、エイミングスクリュー支承部(スクリュー挿通孔)に作用する重量負荷が大幅に軽減される。
請求項4においては、前記平板状ガイドの左右両側に、前記スライダの外周面に摺接する断面円弧状の摺接部を延出形成した。
(作用)左右一対の断面円弧状の摺接部は、配光形成用の光学部材の重量が作用する平板状ガイドの側縁部近傍の断面係数を大きくすることで、平板状ガイドの曲げや捩じりに対する剛性を高めるべく作用する。
【0019】
また、左右一対の断面円弧状の摺接部は、スライダの外周面に摺接してスライダの左右方向への移動を規制する。
【0020】
請求項5においては、請求項2〜4のいずれかに記載の前照灯において、前記スライダの外周面の周方向等分2箇所に前記ガイド溝を設け、一方、前記ランプボディには、前記スクリュー挿通孔の前方において前後方向に延在して、前記スライダに設けたガイド溝にそれぞれ係合する前記平板状ガイドを周方向等分2箇所に設けるように構成した。
【0021】
(作用)回動操作部を介して回転体を回動させると、一対の平板状ガイドと係合して回転体に対し回り止めされているスライダが、回転体の回動に連携して一対の平板状ガイドに案内されて進退動作する。
【発明の効果】
【0022】
請求項1および2によれば、回転体の回動操作により、スライダが前後方向にスムーズに進退動作するので、前照灯のエイミング操作をスムーズに遂行できる。
【0023】
また、エイミングスクリューを周方向に位置合わせしてスクリュー挿通孔に挿入するだけで、エイミングスクリューをスクリュー挿通孔に挿着でき、その後、ランプボディの前面側から前照灯の配光形成用光学部材を押し込むことで、配光形成用の光学部材側の玉受け部をエイミングスクリュー前端の玉部にスムーズに係合させることができるので、配光形成用光学部材をエイミング機構を介してランプボディへの組み付ける作業が容易となって、配光形成用光学部材のエイミング機構を介したランプボディへの組み付け作業効率が大幅に改善される。
請求項3によれば、エイミングスクリュー支承部であるスクリュー挿通孔に作用する重量負荷が大幅に軽減されるので、エイミングスクリュー支承部の耐久性が保証される。
【0024】
請求項4によれば、曲げや捩じりに対する剛性が高く耐久性に優れた平板状ガイドによって、スライダは左右方向にがたつくことなく案内されるので、長期間にわたりスライダのスムーズな進退動作が保証される。
【0025】
請求項5によれば、スライダが一対の平板状ガイドに案内されてスムーズに進退動作するので、前照灯のエイミング操作がスムーズとなる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1の実施例である自動車用ヘッドランプの正面図である。
【図2】同ランプの縦断面図(図1に示す線II−IIに沿う断面図)である。
【図3】スクリュー挿通孔に支承された形態のエイミングスクリューの縦断面図である。
【図4】スクリュー挿通孔に支承された形態のエイミングスクリューの水平断面図である。
【図5】スクリュー挿通孔に支承された形態のエイミングスクリューの側面図である。
【図6】スクリュー挿通孔に支承された形態のエイミングスクリューの斜視図である。
【図7】スクリュー挿通孔に支承された形態のエイミングスクリューの正面図である。
【図8】エイミングスクリューの断面図(図5に示す線VIII−VIIIに沿う断面図)である。
【図9】リフレクター側の玉受け部をエイミングスクリュー先端の玉部に係合する作業を示す斜視図である。
【図10】リフレクター側の玉受け部とエイミングスクリュー先端の玉部が係合した形態を示す斜視図である。
【図11】本発明の第2の実施例である自動車用ヘッドランプの要部であるエイミングスクリューがスクリュー挿通孔に支承された形態の水平断面図で、図4に対応する図ある。
【図12】本発明の第3の実施例である自動車用ヘッドランプの要部であるエイミングスクリューがスクリュー挿通孔に支承された形態の水平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
次に、本発明の実施の形態を、実施例に基づいて説明する。
【0028】
図1,2は本発明の第1の実施例である自動車用ヘッドランプを示し、図3〜8は要部であるエイミングスクリューを示し、図9,10はリフレクターをランプボディに組み付ける作業を示す図である。
【0029】
これらの図において、符号10は、ポリプロピレン樹脂製の容器状ランプボディで、ランプボディ10の前面開口部には透明な前面カバー12が組み付けられて、ヘッドランプの灯室Sが画成されている。灯室S内には、光源であるバルブ18を装着一体化した配光形成用の光学部材であるリフレクター14が、エイミング機構Eによって傾動可能に設けられている。
【0030】
エイミング機構Eは、主に図1,2,10に示すように、ランプボディ10とリフレクター14間に介装されたエイミング支点Pを構成する玉継手(ピボット)30と、ランプボディ10に設けられたスクリュー挿通孔11,11にそれぞれ回転可能に支承された一対のエイミングスクリュー40,50と、リフレクター14の背面側に突出するブラケット15,15に一体的に形成され、エイミングスクリュー40,50先端の玉部48,58に係合してエイミング点P1,P2(上下エイミング点P1,左右エイミング点P2)を構成する一対の玉受け部(ベアリング部)16,16と、を備えて構成されている。
【0031】
符号32は、ランプボディ10の背面壁前面側に突設された合成樹脂製の玉部材で、リフレクター14の背面側に突設されたブラケット16に一体に形成された玉受け部(ベアリング部)34に玉部材32の玉部32aが支承されて、エイミング支点Pである玉継手(ピボット)30が構成されている。
【0032】
エイミングスクリュー40(50)は、図3,4に示すように、回動操作部44(54)が後端側外周に形成され、ランプボディ10の背面壁に設けたスクリュー挿通孔11にランプボディ10の背面側から挿着されて、該スクリュー挿通孔11を形成する円筒形状の筒状部20と凹凸ランス係合して軸方向に抜け止めされかつ周方向に回転可能に支承された、ナイロン樹脂製の回転体である筒型の雌ねじ部本体41(51)と、基端側雄ねじ部46(56)が雌ねじ部本体41(51)内周側の雌ねじ部42(52)に螺合して該雌ねじ部本体41(51)の前方に延出し、その先端に形成された玉部48(58)がリフレクター14側の玉受け部16,16と係合してエイミング点P1(P2)である玉継手(ピボット)を構成する、ナイロン樹脂製の棒状のスライダである雄ねじ部本体41(51)と、の二部材で構成されている。なお、図3は、エイミングスクリュー40の縦断面図、図4は、エイミングスクリュー40(50)の水平断面図である。
【0033】
また、スクリュー挿通孔11を形成する円筒形状の筒状部20と雌ねじ部本体41(51)間の凹凸ランス係合部は、雌ねじ部本体41(51)前端部寄りの外周に周設された凹条43(53)と、筒状部20の内周に対設された左右一対の凸部である爪22,22で構成されている。すなわち、爪22は、図4に示すように、スクリュー挿通孔11の灯室側開口部に向かうほど突出量が大きくなる傾斜面を有するとともに、雌ねじ部本体41(51)を構成するナイロン樹脂に比べてランプボディ10を構成するポリプロピレン樹脂の方が柔らかいので、ランプボディ10の背面壁に設けたスクリュー挿通孔11に後方から雌ねじ部本体41(51)を挿入すると、筒状部20側の爪22,22を含む領域が雌ねじ部本体41(51)の前端側球面部41a(51a)に無理やり押し拡げられて拡径し、雌ねじ部本体41(51)の前進が許容されるので、筒状部20側の爪22,22が雌ねじ部本体41(51)側の凹条41a(51a)に係合して、雌ねじ部本体41(51)がスクリュー挿通孔11に対し軸方向に抜け止めされかつ周方向に回転可能に支承された形態となる。
【0034】
また、雌ねじ部本体41(51)は、前方に開口(後端側が閉塞)する筒型に形成されるとともに、雌ねじ部本体41(51)とスクリュー挿通孔11間にOリング24が介装されて、エイミングスクリュー40(50)の回転支承部であるスクリュー挿通孔11における防水が確保されている。
【0035】
また、雄ねじ部本体45(55)の玉部48(58)と基端側雄ねじ部46(56)との間には、スクリュー挿通孔11より小径で、基端側雄ねじ部46(56)より大径の膨径部47(57)が形成されるとともに、該膨径部47(57)の外周には、前後に延びる所定幅のガイド溝47a(57a)が周方向等分4箇所に設けられている。
【0036】
周方向等分4箇所のガイド溝47a(57a)のうち、半径方向に対向する1組は、後述する平板状ガイド49,49に係合するためのもので、半径方向に対向する他の1組は、スクリュー挿通孔11に雄ねじ部本体45(55)を挿通する際、筒状部20側の爪22,22と干渉しないようにするためのもので、ガイド溝47a(57a)の幅は、平板状ガイド49の板厚および爪22の幅に対応している。
【0037】
すなわち、雌ねじ部本体41(51)と雄ねじ部本体45(55)を螺合一体化したエイミングスクリュー40(50)をランプボディ10の背後からスクリュー挿通孔11に挿着する際に、雄ねじ部本体45(55)の1組のガイド溝47a(57a)と筒状部20側の爪22,22とが周方向(前後方向)に一致すれば、雄ねじ部本体45(55)の膨径部47(57)を、スクリュー挿通孔11内側に突出する一対の爪22,22と干渉させることなく、スクリュー挿通孔11の前方に貫通させることができる。
【0038】
一方、ランプボディ10の背面壁における筒状部20を挟む上下位置(一対の爪22,22形成位置と直交する上下位置)には、スクリュー挿通孔11の前方まで延出し、前後方向に延在するその側縁部が雄ねじ部本体45(55)の膨径部47(57)に設けたガイド溝47a(57a)にそれぞれ係合して、雄ねじ部本体45(55)を回り止めする上下一対の垂直な平板状ガイド49(上側ガイド49A,下側ガイド49B)が筒状部20と一体に形成されている。
【0039】
平板状ガイド49A,49Bは、いずれも雄ねじ部本体45(55)のガイド溝の対向する1組47a,47a(57a,57a)と係合して、雄ねじ部本体45(55)を雌ねじ部本体41(51)に対し回り止めする部材として機能する。
【0040】
さらに、下側の平板状ガイド49Bは、リフレクター14側の重量負荷を下方から担持するため、それだけエイミングスクリュー支承部であるスクリュー挿通孔11に作用する重量負荷が軽減される。すなわち、リフレクター側の重量負荷は、エイミング機構Eによって片持ち支持されており、エイミングスクリュー支承部であるスクリュー挿通孔11には、自動車の走行時の振動やエンジンの震動によって大きな重量負荷が作用し、スクリュー挿通孔11の耐久性が低下するおそれがあるが、リフレクター14側の重量負荷がスクリュー挿通孔11の前方において平板状ガイド49Bによって担持されるので、エイミングスクリュー40(50)を介してエイミングスクリュー支承部であるスクリュー挿通孔11に作用する重量負荷が大幅に軽減され、スクリュー挿通孔11の長期にわたる耐久性が保証されている。
【0041】
また、リフレクター14側の重量負荷が作用する平板状ガイド49Bの側縁部の左右両側には、雄ねじ部本体45(55)の膨径部47(57)の外周面に摺接する断面円弧状の摺接部80が延出形成されている。この摺接部80が設けられることで、重量負荷が作用する平板状ガイド49Bの側縁部近傍の断面係数が大きくなって、平板状ガイド49Bの曲げや捩じりに対する剛性強度が高められている。
【0042】
また、左右一対の断面円弧状の摺接部80は、雄ねじ部本体45の外周面に摺接して雄ねじ部本体45の左右方向への移動を確実に規制するので、雄ねじ部本体45は左右方向にがたつくことなくスムーズに進退動作できる。
【0043】
また、雌ねじ部本体41(51)の回動操作部44(54)は、ランプボディ10の背面壁後方に露呈しており、プラスドライバー等の工具70(図3参照)の先端を回動操作部44(54)の傘歯部44a(54a)に噛み合うように配して、雌ねじ部本体41(51)を回動させることができる。
【0044】
そして、雌ねじ部本体41(51)が回動すると、平板状ガイド49の側縁部と係合して雌ねじ部本体41(51)に対し回り止めされている雄ねじ部本体45(55)が、雌ねじ部本体41(51)の回動に連携して平板状ガイド49A,49Bの側縁部に案内されて進退動作し、ピボットで構成されたエイミング点P1(P2)が進退動作する。
【0045】
すなわち、エイミングスクリュー40(雌ねじ部本体41)の回動操作により、エイミング支点P(玉継手30)と左右エイミング点P2(玉継手)を結ぶ水平傾動軸Lx周りにリフレクター14が傾動し、ヘッドランプの光軸を上下方向に傾動調整できる。
【0046】
一方、エイミングスクリュー50(雌ねじ部本体51)の回動操作により、エイミング支点P(玉継手20)と上下エイミング点P1(玉継手)を結ぶ垂直傾動軸Ly周りにリフレクター14が傾動し、ヘッドランプの光軸を左右方向に傾動調整できる。
【0047】
次に、ランプボディ10の前面側にエイミング機構Eを介してリフレクター14を組み付ける作業を説明する。
【0048】
まず、雌ねじ部本体41(51)と雄ねじ部本体45(55)を螺合させてエイミングスクリュー40(50)として一体化しておく。そして、ランプボディ10の背面壁の所定位置に玉部材32を取着し、雄ねじ部本体45(55)のガイド溝47a(57a)の半径方向に対向する1組がスクリュー挿通孔11前方に延在する平板状ガイド47A,47B(の側縁部)と前後方向に一致する(ガイド溝47a(57a)の半径方向に対向する1組がスクリュー挿通孔11内に突出する一対の爪22,22と前後方向に一致する)ようにエイミングスクリュー40(50)を周方向に位置決めして、ランプボディ10の後方からスクリュー挿通孔11にそれぞれ挿入すると、スクリュー挿通孔11内の爪22,22と干渉することなく、エイミングスクリュー40(50)をスムーズに挿入でき、雌ねじ部本体41(51)側の凹条43(53)が筒状部20側の一対の凸部(爪)22,22に凹凸ランス係合して、エイミングスクリュー40(50)がスクリュー挿通孔11,11にそれぞれ回転可能に支承された形態となる。
【0049】
特に、本実施例では、雄ねじ部本体45(55)には、ガイド溝47a(57a)が周方向等分4箇所に設けられているので、エイミングスクリュー40(50)を周方向に最大45度回せば、ガイド溝47a(57a)と一対の平板状ガイド49A,49B(一対の爪222,22)が整合する位置となるので、エイミングスクリュー40,50のスクリュー挿通孔11に対する周方向の位置決めが容易である。
【0050】
ついで、リフレクター14背面側の玉受け部(ベアリング部)34,16,16がランプボディ10側の玉部材32先端の玉部32,エイミングスクリュー40(50)先端の玉部48(58)に合わせて、図9,10に示すように、リフレクター14をランプボディ10内に押し込めば、玉受け部(ベアリング部)34,16,16とランプボディ10側の玉部34,48,58がそれぞれスムーズに係合して、リフレクター14がエイミング機構Eを介してランプボディ10(の背面壁)に組み付けられた形態となる。
【0051】
図11は、本発明の第2の実施例である自動車用ヘッドランプの要部であるエイミングスクリューの水平断面図である。
【0052】
前記した実施例では、スクリュー挿通孔11を形成する筒状部20と、雌ねじ部本体41との凹凸ランス係合部が、雌ねじ部本体41外周側に周設された凹条43と、円筒部20の内周側に形成された一対の爪22,22で構成されていたが、この第2の実施例では、筒状部20先端側の内周に周設された凹条23と、雌ねじ部本体41先端側外周の周方向等分複数箇所に形成された凸部41bで構成されている。
【0053】
その他は前記した第1の実施例と同一であり、同一の符号を付すことで、重複した説明は省略する。
【0054】
図12は、本発明の第3の実施例である自動車用ヘッドランプの要部であるエイミングスクリューの水平断面図である。
【0055】
前記した第1、第2の実施例のエイミングスクリュー40(50)は、スクリュー挿通孔11(筒状部20)に回転可能に支承された回転体である筒型の雌ねじ部本体41(51)と、回転体41(51)に同軸状に螺合して該回転体41(51)の前方に配置されたスライダである棒状の雄ねじ部本体45(55)の二部材で構成され、すなわち、回転体41(51)とスライダ45(55)間の螺合部が、回転体41(51)側の雌ねじ部42(52)とスライダ45(55)側の雄ねじ部46(56)で構成されているのに対し、この第3の実施例のエイミングスクリュー40A(50A)は、スクリュー挿通孔11(筒状部20)に回転可能に支承された回転体である雄ねじ部本体41A(51A)と、回転体41A(51A)に同軸状に螺合して該回転体41A(51A)の前方に配置されたスライダである筒型の雌ねじ部本体45A(55A)の二部材で構成され、すなわち、回転体41A(51A)とスライダ45A(55A)間の螺合部が、回転体である雄ねじ部本体41A(51A)側の雄ねじ部42A(52A)とスライダである雌ねじ部本体45A(55A)側の雌ねじ部46A(56A)で構成されている。
【0056】
その他は、前記した第1の実施例と同一であり、同一の符号を付すことで、その重複した説明は省略する。
【0057】
また、前記した第1〜第3の実施例では、雄ねじ部本体45,45A(55,51A)を回り止めする平板状ガイド49A,49Bが、筒状部20の上下2箇所に垂直方向に設けられていたが、雄ねじ部本体45,45A(55,51A)を回り止めする機能だけを考えると、周方向の少なくとも1箇所に設けられていればよい。
【符号の説明】
【0058】
10 ランプボディ
11 スクリュー挿通孔
12 前面カバー
14 配光形成用の光学部材であるリフレクター
16,34 玉受け部
18 光源であるバルブ
20 筒状部
22 凹凸ランス係合部の凸部である爪
23 凹凸ランス係合部の凹部である凹条
40,50,40A,50A エイミングスクリュー
41,51 回転体である筒型の雌ねじ部本体
41A,51A 回転体である雄ねじ部本体
41b 凹凸ランス係合部の凸部
42,52 雌ねじ部
42A,52A 雄ねじ部
43 凹凸ランス係合部の凹部である凹条
44,54 回動操作部
45,55 スライダである雄ねじ部本体
45A,55A スライダである筒型の雌ねじ部本体
46,56 基端側雄ねじ部
46A,56A 雌ねじ部
47,57 膨径部
47a,57a ガイド溝
48,58 玉部
49A 上側の平板状ガイド
49B 下側の平板状ガイド
E エイミング機構
P エイミング支点
P1 上下エイミング点
P2 左右エイミング点
S 灯室
Lx 水平傾動軸
Ly 垂直傾動軸
80 断面円弧状の摺接部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回動操作部が後端側に形成され、ランプボディに設けたスクリュー挿通孔にランプボディの背面側から挿着されて、該スクリュー挿通孔を形成する筒状部と凹凸ランス係合して軸方向に抜け止めされかつ周方向に回転可能に支承された回転体と、
前記回転体と同軸状に螺合して該回転体の前方に延出し、その先端に形成された玉部が前照灯の配光を形成する光学部材に設けた玉受け部と係合してピボットを構成するスライダと、の二部材で構成されるとともに、
前記スライダの外周には、前記ランプボディに延出形成されて前記スクリュー挿通孔の前方において前後方向に延在する平板状ガイドに係合する、前後に延びる少なくとも1本のガイド溝が設けられて、
前記回転体の回動に連携して前記スライダが前記平板状ガイドに案内されて進退動作するように構成されたことを特徴とする前照灯用エイミングスクリュー。
【請求項2】
前面側が開口する容器状のランプボディと、
エイミングスクリューを含むエイミング機構を介して前記ランプボディに対し傾動可能に支持された配光形成用の光学部材とを備えた前照灯において、
前記エイミングスクリューは、
回動操作部が後端側に形成され、ランプボディに設けたスクリュー挿通孔にランプボディの背面側から挿着されて、該スクリュー挿通孔を形成する筒状部と凹凸ランス係合して軸方向に抜け止めされかつ周方向に回転可能に支承された回転体と、
前記回転体と同軸状に螺合して該回転体の前方に延出し、その先端に形成された玉部が前照灯の配光を形成する光学部材に設けた玉受け部と係合してピボットを構成する棒状のスライダと、の二部材で構成されるとともに、
前記スライダの外周には、前後に延びる少なくとも1本のガイド溝が設けられ、
一方、前記ランプボディには、前記スクリュー挿通孔の前方において前後方向に延在して、前記スライダに設けたガイド溝に係合する平板状ガイドが延出形成され、
前記回転体の回動に連携して前記スライダが前記平板状ガイドに案内されて進退動作するように構成されたことを特徴とする前照灯。
【請求項3】
前記平板状ガイドは、前記スクリュー挿通孔の下側に設けられたことを特徴とする請求項2に記載の前照灯。
【請求項4】
前記平板状ガイドの左右両側には、前記スライダの外周面に摺接する断面円弧状の摺接部が延出形成されたことを特徴とする請求項3に記載の前照灯。
【請求項5】
前記スライダの外周面の周方向等分2箇所に前記ガイド溝が設けられ、一方、前記ランプボディには、前記スクリュー挿通孔の前方において前後方向に延在して、前記スライダに設けたガイド溝にそれぞれ係合する前記平板状ガイドが周方向等分2箇所に設けられたことを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の前照灯。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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