説明

前照灯

本発明は、ランプ容器(10)に囲繞されている少なくとも1つの白熱フィラメント(14)を備えた前照灯であって、少なくとも1つの白熱フィラメント(14)が、それがランプ作動の期間に、ランプの光束に対する予め定めた許容最大値より大きい値を有する光束を生成するように構成されており、かつランプ容器(10)は透光性の低減されている領域(103,104)を有しており、該領域を用いて、ランプ作動の期間に前照灯から出る光束が前記予め定めた許容最大値より小さいかまたは該許容最大値に等しい値に低減されるようにした前照灯に関する。これによりランプの輝度および前照灯前方の重要な距離における照明強度は高められる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に記載の前照灯、例えば車両用前照灯のハロゲン白熱灯に関する。
【0002】
I.従来の技術
この種の前照灯は、例えば、EP0461508A2に開示されている。この刊行物には、その中に配置されている白熱フィラメントを備えたガラス製のランプ容器を有している自動車用前照灯のハロゲン白熱灯が記載されている。ランプ容器は、ランプの接続部を備えているメタルベースに固定されている。この前照灯はいわゆるH1ランプである。
【0003】
WO96/05610A1には、メタルベースに固定されているガラス製のランプ容器によって囲繞されている2つの白熱フィラメントを備えているH4型ランプの前照灯が記載されている。ランプ容器の、メタルベースとは反対の方の側のドーム部に黒の、不透明な被膜を備えていて、ドーム部からの眩暈光および散乱光が回避されるようになっている。
【0004】
II.発明の開示
本発明の課題は、従来の前照灯と比較して比較的高い輝度を有しておりかつその光束がECU規則37に従った許容上限値を上回らない前照灯を提供することである。
【0005】
本発明によればこの課題は、請求項1の特徴部分に記載の構成により解決される。従属請求項には本発明の特に有利な実施形態が示されている。
【0006】
本発明の前照灯は、ランプ作動の期間に、ランプの光束に対する予め定めた許容最大値より大きな値を有する光束を生成するように構成されている、ランプ容器によって囲繞されている少なくとも1つの白熱フィラメントを有している。付加的にランプ容器は本願発明によれば、ランプ作動の期間に、前照灯から出る光束をランプの光束に対する予め定めた許容最大値より小さいまたは該許容最大値に等しい値に低減する透光性が下げられている領域を有している。これにより本発明の前照灯においては従来の前照灯に比べて輝度が著しく高められる。
【0007】
図1および図2には、タイプH1の前照灯の例に基づいた相応の比較値が、従来のH1ランプ1および本発明のH1ランプ2に対して参照のために図示されている。図1によれば従来のH1ランプ1は13.2Vにおいて1475 lmを生成し、一方本発明のH1ランプ2は同じ給電電圧において1715 lmの光束を生成する。光束の規定平均値は従来の技術によればH1ランプに対して1550 lmである。本発明のH1前照灯において白熱フィラメントは、規格ECE規則37により予め定めた許容最大値より著しく大きい、1782.5 lmという値を有する光束を生成するように構成されている。有利には本発明のH1ランプでは白熱フィラメントは、それが2000 lmより大きな光束を生成するように構成されているが、この光束は、上に説明した透明性が下げられているランプ容器領域を用いて、1782.5 lmという、H1ランプに対する光束の許容最大値より小さいかまたは許容最大値に等しい値に、図1の例に示すように1715 lmの値に低減される。すなわち、本発明のH1ランプ2は従来のH1ランプ1に比べて16%だけ高められた光束を生成する。
【0008】
図2はこの前照灯に対してこれら輝度の比較を示している。従来のH1ランプ1は2.3・10cd/mの輝度を有しておりかつ本発明のH1ランプ2は3.7・10cd/mの輝度を有している。従って本発明のH1ランプ2の輝度は従来のH1ランプ1の輝度より61%だけ高い。比較的高い輝度に基づいて、本発明の前照灯は従来の前照灯の減光前照灯(ロアービームヘッドライト)への使用にもハイビーム前照灯への使用に構想されている。というのは、これは前照灯前方の重要な距離点もしくは到達距離値において比較的高い照明強度を提供するからである。
【0009】
図3には例として、規定ECE/324レギュレーションNo.112に従った右側交通に対する減光前照灯の重要な距離点における照明強度の比較を、従来のH1ランプおよび本発明のH1ランプを自動車の減光前照灯における光源として使用した場合について示している。
【0010】
図4は同じランプを、別の自動車の減光前照灯における光源として使用した場合の同じ比較を示している。
【0011】
図3および図4の比較値から、本発明の前照灯2が2つの車両タイプの減光前照灯において従来の前照灯1に比べて、規定ECE/324レギュレーションNo.112に従った重要な距離点75R、50R、50V、25L、25RおよびゾーンIVにおいて前照灯前方25mの距離におけるスクリーンにおいて照明強度の著しい高まりを保証していることが分かる。
【0012】
図5は、従来のH1ランプ1および本発明のH1ランプ2を自動車のハイビーム前照灯に使用した場合の、光軸H/Vおよび最大値での照明強度の比較を示している。
【0013】
図6は別の自動車のハイビーム前照灯における同じランプに対する同じ比較を示している。
【0014】
図5および図6における比較値から、本発明のH1ランプ2が従来のH1ランプ1に比べて、2つの自動車のハイビーム前照灯において光軸H/Vでも照明強度の最大値でも照明強度の著しい高まりを可能にしていることが分かる。
【0015】
本発明は、例えばH2およびH3ランプに使用されるような、通例は光を透過しないドーム部を有していない別の前照灯にも使用することができる。H2ランプに対しては、13.2Vの給電電圧においてECE規則37に従った光束に対する許容最大値は例えば2070 lmであり、一方H3ランプのECE規則37に従った光束に対する許容最大値は13.2Vの給電電圧において例えば1667.5 lmである。
【0016】
有利には本発明の前照灯の少なくとも1つの白熱フィラメントは、ランプ作動期間に、少なくとも10%だけランプの光束に対する許容最大値の上方にある光束を生成するように構成されているが、ランプ容器の透光性が下げられている領域は、本発明のランプから出る光束がランプの光束に対する上に述べた許容最大値より小さいかまたは許容最大値に等しい値に低減され、ひいてはECE規則37に従った規定が厳守されるようにしている。
【0017】
本発明の有利な実施形態によれば、透光性が下げられているランプ容器の領域はランプ容器の、ベースとは反対側の端部であって、有利にはドーム部として実現されている端部に配置されている。有利には、透光性が下げられているランプ領域はランプ容器のドーム部にわたってのみならず、付加的に、ドーム部に接している、ランプ容器の軸対称な区間の一部にもわたって延在している。
【0018】
透光性が下げられているランプ容器のランプ領域は有利にはこのランプ容器領域の上表面における光を透過しない被膜として実現されている。というのはこの被膜は比較的簡単な手段によって形成可能であるからである。この被膜に対して例えば、H4ランプおよびH7ランプにおけるドーム部被膜から公知であるカルボニル鉄を使用することができる。
【0019】
本発明の有利な実施形態によれば、透光性が下げられているランプ容器の領域の、少なくとも1つの白熱フィラメントがそれに基づいて調整されている、ランプベースの基準レベルからの距離は、31.50mm±0.30mmである。
【0020】
III.有利な実施例の説明
以下では有利な実施例に基づいて本発明を詳細に説明する。その際:
図1は本発明のH1ランプの光束の、従来技術による慣用のH1ランプとの比較を示し、
図2は本発明のH1ランプの輝度の、従来技術による慣用のH1ランプとの比較を示し、
図3は本発明のH1ランプおよび従来技術による慣用のH1ランプを自動車の減光前照灯における光源として使用した場合の照明強度の比較を示し、
図4は本発明のH1ランプおよび従来技術による慣用のH1ランプを別の自動車の減光前照灯における光源として使用した場合の照明強度の比較を示し、
図5は本発明のH1ランプおよび従来技術による慣用のH1ランプを自動車のハイビーム前照灯における光源として使用した場合の照明強度の比較を示し、
図6は本発明のH1ランプおよび従来技術による慣用のH1ランプを別の自動車のハイビーム前照灯における光源として使用した場合の照明強度の比較を示し、
図7は本発明の前照灯の側面を略示し、
図8は図7の前照灯の側面図をその長手軸線を中心に90°回転した側面を略示している。
【0021】
図7および図8において、本発明の前照灯の2つの異なった側面が略示されている。この前照灯は、12Vの定格電圧および55Wの電力消費を有しているタイプH1のハロゲン白熱灯である。この前照灯はシールされた端部101を有するガラスのランプ容器10を有している。端部はランプベース12の金属のベーススリーブに固定されている。ランプベース12はベースフランジ13を備えている。ベースフランジに関して、ランプ容器10によって囲繞されている白熱フィラメント14の空間位置が調整されている。ベースフランジレベルが白熱フィラメント14の調整の基準レベルを定めている。ランプ容器10はシールされた端部101とは反対の側にドーム部103を有している。シールされた端部101とドーム部103との間で、白熱フィラメント14を取り囲んでいるランプ容器10の部分102は軸対称に、殊に円筒形に形成されている。ドーム部103およびそこに接続されている円筒形のランプ容器部分102は外表面に光を透過しない被膜105を備えている。被膜は例えばカルボニル鉄から成っている。この被膜105の、ランプベース12のベースフランジ13までの距離は31.50mm±0.30mmである。白熱フィラメント14はシングルフィラメントで、15ターン、652.3μmのコア直径、3.922のコアファクター、288.9μmのピッチ、1.737のピッチファクター、102.29mΩのコールドレジスタンスおよび39.84mmの有効ワイヤ長を有している。有効ワイヤ長は白熱フィラメント14の巻き部分のワイヤ長を表している。従来のH1ランプに比べて、本発明の有利な実施例によるH1ランプでは、約17.4%だけ低減されたコールドレジスタンスを有している。白熱フィラメント14は13.2Vの給電電圧による作動期間に2012 lmの光束を生成するが、これは被膜105を用いて1715 lmの値に低減される。
【0022】
本発明は本発明の上に説明した実施例に制限されず、別の前照灯、例えばH2ランプおよびH3ランプに適用することができる。更に、本発明はツゥー・フィラメント形式のランプ、例えばH15ランプにも適用することができる。H15ランプはデイタイムドライビングライトを生成するための白熱フィラメントおよびハイビームを生成するための別の白熱フィラメントを有している。ハイビーム使用に対する輝度を高めるために、ハイビームフィラメントは、作動期間中に、H15ランプの光束に対する予め定めた許容最大値より大きな値を有する光束を生成し、かつ例えばランプ容器のドーム部は光を透過しない被膜を有していて、それを用いてハイビームフィラメントから出る光束は予め定めた許容最大値に等しいかまたは許容最大値より小さい値に低減される。
【0023】
更に本発明は、12Vとは別の搭載電源電圧、例えば24Vの搭載電源電圧に構想されている前照灯にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明のH1ランプの光束の、従来技術による慣用のH1ランプとの比較の略図
【図2】本発明のH1ランプの輝度の、従来技術による慣用のH1ランプとの比較の略図
【図3】本発明のH1ランプおよび従来技術による慣用のH1ランプを自動車の減光前照灯における光源として使用した場合の照明強度の比較の略図
【図4】本発明のH1ランプおよび従来技術による慣用のH1ランプを別の自動車の減光前照灯における光源として使用した場合の照明強度の比較の略図
【図5】本発明のH1ランプおよび従来技術による慣用のH1ランプを自動車のハイビーム前照灯における光源として使用した場合の照明強度の比較の略図
【図6】本発明のH1ランプおよび従来技術による慣用のH1ランプを別の自動車のハイビーム前照灯における光源として使用した場合の照明強度の比較の略図
【図7】本発明の前照灯の側面略図
【図8】本発明の前照灯の別の側面略図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ランプ容器(10)に囲繞されている少なくとも1つの白熱フィラメントを備えた前照灯において、
少なくとも1つの白熱フィラメント(14)が、それがランプ作動の期間に、ランプの光束に対する予め定めた許容最大値より大きい値を有する光束を生成するように構成されており、かつ
ランプ容器(10)は透光性の低減されている領域(103,104)を有しており、該領域を用いて、ランプ作動の期間に前照灯から出る光束が前記予め定めた許容最大値より小さいかまたは該許容最大値に等しい値に低減される
ことを特徴とする前照灯。
【請求項2】
前照灯はランプベース(12)を有しておりかつ
前記透光性の低減されている領域(103,104)は、ランプ容器(10)の、ランプベース(12)とは反対側の端部に配置されている
請求項1記載の前照灯。
【請求項3】
前記透光性の低減されているランプ容器の領域は、ランプ容器(10)の、ランプベース(12)とは反対側のドーム部(13)を形成している
請求項2記載の前照灯。
【請求項4】
前記透光性の低減されているランプ容器(10)の領域は付加的に、ランプ容器(10)の軸対称の部分の、前記ドーム部(103)に接している部分(104)に延在している
請求項3記載の前照灯。
【請求項5】
前記ランプ容器(10)は前記ランプベース(12)に固定されているシールされた端部(101)および該シールされた端部(101)とは反対側のドーム部(103)並びに該ドーム部(103)と該シールされた端部(101)との間に配置されている前記軸対称の部分(102)を有しており、ここで
前記透光性の低減されている領域は前記ドーム部(103)および前記軸対称のランプ容器部分(102)の該ドーム部に接している部分(104)を介して延在している
請求項1から4までのいずれか1項記載の前照灯。
【請求項6】
前記透光性の低減されているランプ容器(10)の領域(103,104)は、該ランプ容器(10)の該領域(103,104)の上表面に光を透過しない被膜(105)によって形成されている
請求項1から5までのいずれか1項記載の前照灯。
【請求項7】
前記透光性の低減されているランプ容器(10)の領域(103,104)の、少なくとも1つの白熱フィラメント(14)の位置がそれを基準に調整される基準レベルに対する距離は、31.50mm±0.3mmの領域にある
請求項2から6までのいずれか1項記載の前照灯。
【請求項8】
少なくとも1つの白熱フィラメント(14)は、それが作動期間に、前記予め定めた許容最大値の上方少なくとも10%にある値の光束を生成するように設計されている
請求項1から7までのいずれか1項記載の前照灯。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2009−512125(P2009−512125A)
【公表日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−534022(P2008−534022)
【出願日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際出願番号】PCT/EP2006/067115
【国際公開番号】WO2007/042464
【国際公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【出願人】(390009472)パテント−トロイハント−ゲゼルシヤフト フユール エレクトリツシエ グリユーラムペン ミツト ベシユレンクテル ハフツング (152)
【氏名又は名称原語表記】Patent−Treuhand−Gesellschaft fuer elektrische Gluehlampen mbH
【住所又は居所原語表記】Hellabrunner Strasse 1, Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】